JP2021173855A - 遠用拡大眼鏡 - Google Patents

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【課題】遠用視をする際に目視する像を拡大する機能のある遠用拡大眼鏡を提供すること。【解決手段】像倍率Sが1.027以上となるようなメニスカスレンズを両眼に備えるようにした。これによって、この遠用拡大眼鏡を装用することで遠用視した際の対象物を大きくして見ることができるようになる。【選択図】なし

Description

本発明は、遠用視をする際に目視する像を拡大する機能のある遠用拡大眼鏡に関するものである。
例えば、小さな物を拡大して見たり、老視の人が小さな文字を読んだりするために、近く見るときに対象物を拡大するために拡大鏡(ルーペ)がある。このような近くの対象物を拡大する拡大鏡の一例として特許文献1の拡大眼鏡を挙げる。
実用新案登録第3159824号公報
ところで、対象物を拡大したいという要請は、必ずしも小さな物や近く見るためだけではない。例えば、加齢に伴う生理学的変化として、水晶体の着色や、瞳孔の縮小、網膜視細胞の感度低下などがある。これらは網膜に到達する光量低下となる。また、加齢に伴い視細胞の密度が減少するため、網膜像の解像度低下につながる。これらはいずれもの現象も、視力の低下につながるものであり、屈折矯正によっては回復できないものである。
そのため、特に加齢に伴なう遠用視での視力の低下において視力の回復と同等の効果を得るために拡大眼鏡が望まれていた。しかし、近傍の対象物を拡大する場合と異なり遠用視で拡大鏡を提供することは困難であった。望遠鏡や双眼鏡のような対物レンズと接眼レンズを有するような光学系を組めば遠用視で像倍率を獲得できるものの、対物レンズと接眼レンズの間隔が必要であるため眼鏡としては大型化しすぎてしまうこと等から実現はされていなかった。本発明は、このような諸問題を解決したもので、遠用視をする際に目視する像を拡大する機能のある遠用拡大眼鏡を提供するものである。
上記課題を解決するために手段1では、下記数1の式にレンズ素材の屈折率、レンズの光学中心厚、レンズの表面の曲率半径の数値をそれぞれ代入することで、像倍率Sが1.027以上となるようなメニスカスレンズを両眼に備えるようにした。
Figure 2021173855
このように遠用拡大眼鏡を製造することで、装用者が遠用視した際の対象物を大きくして見ることができる遠用拡大眼鏡を提供することができる。
数1の式は、形状に起因した像の拡大率を表す式である。この式に基づくとレンズ素材の屈折率が同じであれば、像倍率はレンズ表面の曲率半径(あるいはレンズ表面の屈折力)とレンズの厚みによって決定されることになる。曲率半径が小さくレンズが厚いほど像倍率は高くなることとなる。但し、数1に基づくと極めて高い像倍率を得ようとしても現状で入手できる素材や曲率半径を極端に小さくしても得られる像倍率には限界がある。理論的にはレンズの厚さ(中心厚)を増やせば像倍率は上がっていくが、実際には1.2倍程度を得るためでもは30mm以上の厚みのレンズとなってしまい装用できなくなってしまう。
本発明で設計・作製されるメニスカスレンズの像倍率Sを1.027以上とした。
これは、後述する実施例にあるとおり、小数視力において、1段階(+0.1)の視力の向上が見込まれる倍率である。
また、手段2では、前記メニスカスレンズの表面と裏面のカーブの光学中心厚は3mm以上であるようにした。
数1の式によれば、光学中心厚は厚い方がより像倍率Sを大きくすることができる。光学中心厚が3mm以上は度数が0、もしくはマイナスレンズにおける中心厚としては、厚すぎることになるが、光学中心厚をこのようにすることで高い像倍率Sを獲得することができる。そして、他の条件、例えば屈折率のそれほど大きくない素材を使っても光学中心厚を厚くしていくことで像倍率を高くすることができる。
また、手段3では、レンズの表面は、屈折率1.523で換算した時の屈折力が6ディオプター以上であるようにした。
数1の式によれば、屈折力は大きい方がより像倍率Sを高くすることができる。屈折力に換算して屈折率1.523で換算した時の屈折力が6ディオプター以上は度数が0、もしくはマイナスレンズにおける中心厚としては、カーブがきついレンズに属することになるが、屈折力をこのようにすることで高い像倍率Sを獲得することができる。
また、手段4では、レンズの素材屈折率は1.60以上であるようにした。
数1の式によれば、レンズの素材屈折率は大きい方がより像倍率Sを高くすることができる。レンズの素材屈折率は高いほど値段が高くなる傾向であるため、遠用拡大眼鏡に素材屈折率が1.60以上の屈折率の素材を使用するのは過性能であるが、素材屈折率をこのようにすることで高い像倍率Sを獲得することができる。
また、手段5では、前記メニスカスレンズは着色されているようにした。
また、手段6では前記メニスカスレンズの屈折矯正度数が−0.25D〜+0.25Dであるようにした。
この眼鏡が、夜間に使用される場合、もしくは着色レンズとして装用される場合、装用者の瞳孔が開くなどして、多少の屈折誤差が発生する可能性がある。その際の視度調整を可能にするためである。
また、手段7では、屈折矯正眼鏡の上から装用できるオーバーグラスの形態とされているようにした。
屈折矯正眼鏡の上から装用できれば、裸眼ではなく遠用度数を有する装用者であってもこの遠用拡大眼鏡を装用することができることとなる。
また、手段8では、メニスカスレンズを両眼に備えた遠用拡大眼鏡を設計する際に、上記式、あるいは上記式と同義となる式にレンズ素材の屈折率、レンズの光学中心厚、レンズの表面の曲率半径の数値を適用することで像倍率Sを1.027以上となるようにした。
これによって、遠用視した際の対象物を大きくして見ることができる遠用拡大眼鏡を提供することができる。
「数1の式と同義となる式」とは、数1の式で屈折率や曲率半径をパラメータとして代入するようにしているが、これを同義となる式において他の表現でパラメータとする場合を想定している。例えば、曲率半径は屈折力と屈折率で定義できるため曲率半径の代わりに屈折力をパラメータとした式を用いるような場合である。そのため「適用」とは上記数1のパラメータをそのまま値とするだけでなく同義のパラメータを使用するような場合も意図している。設計する主体は設計者やレンズの製作者である。
レンズ裏面カーブ(裏面屈折力)は、所望のレンズ度数(遠用度数:Dv)に応じて、下記数2の式で、近似的に計算される。
遠用拡大眼鏡のメニスカスレンズのレンズ素材屈折率、レンズ光学中心厚は数1の式と同じである。また、所望のレンズ度数は上記のように−0.25D〜+0.25Dを基準とすることが多いので、それを考慮してレンズ裏面カーブは決定される。
Figure 2021173855
本願発明は以下の実施の形態に記載の構成に限定されない。各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
また、意匠出願への変更出願により、全体意匠または部分意匠について権利取得する意思を有する。図面は本装置の全体を実線で描画しているが、全体意匠のみならず当該装置の一部の部分に対して請求する部分意匠も包含した図面である。例えば当該装置の一部の部材を部分意匠とすることはもちろんのこと、部材と関係なく当該装置の一部の部分を部分意匠として包含した図面である。当該装置の一部の部分としては、装置の一部の部材とてもよいし、その部材の部分としてもよい。
本願発明では、遠用視した際の対象物を大きくして見ることができる遠用拡大眼鏡を提供することができる。
本発明の実施の形態の遠用拡大眼鏡を裸眼装用者が装用した状態の模式的な説明図。 本発明の実施の形態の遠用拡大眼鏡を屈折矯正眼鏡を装用した装用者が装用した状態の模式的な説明図。 実施例において縦軸を対数値化した視力値とし、横軸を小数視力としてレンズAとレンズBの見え方の違いを説明したグラフ。
以下、遠用拡大眼鏡の具体的な実施の形態と実施例について説明をする。
1.実施の形態
本実施の形態及び実施例では図1及び図2に示すように、裸眼装用者用の第1の遠用拡大眼鏡1と、屈折矯正眼鏡3を装用した装用者用の第2の遠用拡大眼鏡2の2種類が用意されている。図1に示す第1の遠用拡大眼鏡1は左右眼ともに同じ設計の透明な左右一対のメニスカスレンズ4がフレーム5に取り付けられている。フレーム5は鼻当て6とつる7を備えており、図1に示すように第1の遠用拡大眼鏡1は鼻当て6とつる7によって通常の眼鏡と同様に裸眼装用者の眼の前方にメニスカスレンズ4が配置されるように装用される。つまり、遠用拡大眼鏡1は通常の眼鏡と特に変わることのない装用方法となる。
図2に示すように、第2の遠用拡大眼鏡2は、装用者が屈折矯正眼鏡3を装用した状態で屈折矯正眼鏡3の上から覆うように使用される。図2において下側となる屈折矯正眼鏡3は破線で示した。本実施の形態の第2の遠用拡大眼鏡2は左右眼ともに同じ設計の透明な左右一対のメニスカスレンズ10がフレーム11に取り付けられている。フレーム11は屈折矯正眼鏡3の上に当接する突起12とつる13を備えている。第2の遠用拡大眼鏡2の使用状態においてはこの突起12によってフレーム11が屈折矯正眼鏡3のレンズフレーム15上部に載置されることとなる。
2.実施例
被験者1〜被験者10について、遠用拡大眼鏡を装用させて視力向上効果を確認した。
遠用拡大眼鏡の左右一対のメニスカスレンズとしては2種類の異なるメニスカスレンズ(被験レンズA、B)を用意した。各レンズの設計は表1のとおりである。レンズAは、一般的なレンズであり、統制条件である。レンズBは、本発明にかかるレンズであり、1.038倍の拡大率を有している。レンズ度数はいずれも0Dとした。
表1において表カーブとはレンズの表面の屈折力であり、
屈折力=(レンズ屈折率−1)/曲率半径
で表される。例えば、4カーブという場合は「屈折力は4ディオプターとなるカーブである」という意味である。ここでは、屈折率を1.523で換算した屈折力を表している。
また、レンズBは、サングラスであることを想定し、視感透過率50%程度のブラウン色で着色した。
Figure 2021173855
具体的には、被験者1〜10に、レンズAとレンズBを順番に装用させ、遠用対象物を目視するときの像倍率が上がったかどうかを視力が向上されるかどうかで判断した。
遠用対象物として5m先に配置したETDRチャート(対数視力表)を用いた。
手法としては、被験者毎の異なる遠用度数を規準化するために、まずプラス度数又はマイナス度数の入った球面レンズを適用して、各被験者の視力が0.6に揃うように補正した。
そして、そのように屈折矯正した状態で、球面レンズの前面にレンズAとBを装用して視力を測定した。
その結果を表2に示す。表2によれば、被験者9を除く、ほとんどの被験者において、レンズBを装用した方が、視力が向上しており、小数視力に換算すると、平均して0.16の視力向上が見られている。
ここで、視力値を対数値(logMAR)として、レンズの拡大率と視力値の変化をみたとき、図3のように表すことができる。図3は被験者1〜10のレンズAとレンズBにおける小数視力のlogMAR換算した平均値と小数視力との関係を説明するグラフである。
レンズAにおける小数視力は、平均で0.547(logMAR換算で0.262)であったところ、この視力よりも1段階(0.1)の向上が見られるポイントは、0.647をlogMAR(対数)換算した0.189であるが、この視力値が得られると想定される拡大率が1.027となる。
レンズBは、拡大率1.027を超える1.038を有しており、小数視力に換算して1段階以上の視力向上が認められた。
Figure 2021173855
上記実施の形態及び実施例は本発明の原理およびその概念を例示するための具体例として記載したにすぎない。つまり、本発明は上記の実施の形態や実施例に限定されるものではない。本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・上記実施例以外の像拡大率で実施してもよい。
1、2…遠用拡大眼鏡。

Claims (8)

  1. 下記式にレンズ素材の屈折率、レンズの光学中心厚、レンズの表面の曲率半径の数値をそれぞれ代入することで、像倍率Sが1.027以上となるようなメニスカスレンズを両眼に備えるようにした遠用拡大眼鏡。
    Figure 2021173855
  2. 前記メニスカスレンズの表面と裏面のカーブの光学中心厚は3mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の遠用拡大眼鏡。
  3. レンズの表面は、屈折率1.523で換算した時の屈折力が6ディオプター以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の遠用拡大眼鏡。
  4. レンズの素材屈折率は1.60以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の遠用拡大眼鏡。
  5. 前記メニスカスレンズは着色されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の遠用拡大眼鏡。
  6. 前記メニスカスレンズの屈折矯正度数が−0.25D〜+0.25Dである請求項1〜5のいずれかに記載の遠用拡大眼鏡
  7. 屈折矯正眼鏡の上から装用できるオーバーグラスの形態とされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の遠用拡大眼鏡。
  8. メニスカスレンズを両眼に備えた遠用拡大眼鏡を設計する際に、上記式、あるいは上記式と同義となる式にレンズ素材の屈折率、レンズの光学中心厚、レンズの表面の曲率半径の数値を適用することで像倍率Sを1.027以上となるようにしたことを特徴とする遠用拡大眼鏡の設計方法。
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