JP2021172063A - 積層構造熱可塑性樹脂成型物 - Google Patents

積層構造熱可塑性樹脂成型物 Download PDF

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Abstract

【課題】オリゴマーの析出を抑えることで白化を防ぎ、なおかつ耐溶剤性なども付与することができる積層構造熱可塑性樹脂成型物を提供する。【解決手段】フィルム状、シート状または樹脂板状である熱可塑性樹脂の成型物と、前記熱可塑性樹脂の成型物の両面に設けたバリア層を有する積層構造熱可塑性樹脂成型物であって、前記バリア層がペルヒドロポリシラザン以外のポリシラザンの硬化物であり、前記積層構造熱可塑性樹脂成型物における180℃で1時間加熱後の波長500〜800nmの全領域での光線透過率が85%以上のものであることを特徴とする積層構造熱可塑性樹脂成型物。【選択図】なし

Description

本発明は、積層構造熱可塑性樹脂成型物に関する。
フィルムや板などに代表される熱可塑性樹脂成型物は安価に大量生産可能であり、構成されるポリマーの構造によって様々な特性を発現させることができるため、工業的に広く使用されている。金属系やセラミックス系材料と比較した場合の有機樹脂の特徴としては柔軟性や透明性が主に挙げられる。特に上記の柔軟性と透明性を両立させたものは金属やセラミックスにはなく、有機樹脂の最大の特徴であるといっても過言ではない。
しかし、有機樹脂は金属やセラミックス材料に比べて耐熱性が大幅に劣る欠点がある。これは有機樹脂を構成するポリマー主鎖中の炭素−炭素結合などが切れることや、製造の過程や使用環境中で生成するオリゴマーが表面に析出することが原因で起こる場合が多い。特に後者は100℃前後の比較的低温で発生する場合もあるため実用温度は有機樹脂の機械的特性が維持できる耐熱温度よりも低くなってしまう。
オリゴマー析出のメカニズムとして、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)について説明する。PET成型物ではPETポリマー鎖中に残っている環状三量体などのPETオリゴマーが通常は分散しているため透明性を保てるが、高温加熱時にはPETポリマーが結晶化するためPETポリマー鎖中のオリゴマーが結晶から追い出される形でPET表層に析出される。この析出したオリゴマーが凝集することで光散乱を引き起こし白化しているように見えてしまう。
オリゴマー析出による白化の問題は深刻で、ガラスの代替として使用される場合は視認性が大幅に低下する。特に窓として反対側の状況を確認するための役割を持つ部材の場合は安全性が損なわれることで最悪の場合は事故に繋がる可能性がある。
この問題への対応として、より実用耐熱温度が高い有機樹脂が代替として使用されることがある。例えば、PETフィルムの代替としてはトリアセチルセルロース(TAC)フィルムが使用される場合が多い。しかし、TACはPETに比べて高価なため価格の面で不利となり大量の使用には向かない。また、PETフィルムにガラスファイバーなど高耐熱性を持つ材料を混ぜることで融点を上昇させ、高耐熱化を謳うものも存在するがオリゴマーの析出は抑制できるわけではないため実用温度はさほど向上しない(特許文献1)。他にも表面を処理剤やハードコート材などでコーティングする方法もあるが、緻密な膜が製膜できなければオリゴマーが透過してしまうため白化は防止できない(特許文献2)。CVDなどで緻密膜を製膜する方法も一般的には知られているが大量生産に向かずコストも高いため実用的ではない。
上記の問題を解決するため、高温時にオリゴマーの析出による白化を防ぎ樹脂本来の性能を発現させることができる有機樹脂成型物の提供が待たれている。
特開2019−026752号公報 特開2018−199329号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、オリゴマーの析出を抑えることで白化を防ぎ、なおかつ耐溶剤性なども付与することができる積層構造熱可塑性樹脂成型物を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明では、フィルム状、シート状または樹脂板状である熱可塑性樹脂の成型物と、前記熱可塑性樹脂の成型物の両面に設けたバリア層を有する積層構造熱可塑性樹脂成型物であって、前記バリア層がペルヒドロポリシラザン以外のポリシラザンの硬化物であり、前記積層構造熱可塑性樹脂成型物における180℃で1時間加熱後の波長500〜800nmの全領域での光線透過率が85%以上のものであることを特徴とする積層構造熱可塑性樹脂成型物を提供する。
このような積層構造熱可塑性樹脂成型物であれば、オリゴマーの析出を抑えることで白化を防ぎ透明性を維持できるとともに、なおかつ耐溶剤性なども付与することができる。
この場合、前記ポリシラザンが下記式(1)で表される構造のものであることが好ましい。
Figure 2021172063
(式中、Rは炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、及び炭素数1〜6のアルコキシ基から選ばれる基であり、ポリシラザン1分子中でRは同一であっても異なっていてもよい。ただし、式中のxおよびyはそれぞれ0≦x<1、0<y≦1、x+y=1を満たす数とする。)
このような積層構造熱可塑性樹脂成型物であれば、より白化を防止でき、耐溶剤性も向上する。
ここで、前記ポリシラザンが、1分子中の有機基含有量が、前記式(1)におけるSi−H結合に対するSi−R(Rは上記の通りである)結合の比率Si−R/Si−Hが0.01〜1の範囲内のものであることが更に好ましい。
このような積層構造熱可塑性樹脂成型物であれば、硬化後の膜特性が好適となる。
また、本発明では、前記ポリシラザンの重量平均分子量が100〜100,000,000の範囲であることが好ましい。
このような積層構造熱可塑性樹脂成型物であれば、有機溶剤への溶解性や塗布時の作業性が良好になる。
また、本発明では、前記熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレート又はポリカーボネートであることが好ましい。
このような熱可塑性樹脂は、工業的に広く使用され、価格や光透過性、加工性などの観点から、本発明の積層構造熱可塑性樹脂成型物に好適に使用できる。
上記のように、本発明の積層構造熱可塑性樹脂成型物はオリゴマーを構造内に含む熱可塑性樹脂から形成された熱可塑性樹脂の成型物の両面にポリシラザン硬化物によるバリア層を設けているため、従来よりも白化抑制による透明性の維持、耐溶剤性が大幅に改善した積層構造熱可塑性樹脂成型物を得ることができる。
上述のように、高温時にオリゴマーの析出による白化を防ぎ樹脂本来の透明性、柔軟性等の性能を発現させることができる有機樹脂成型物の開発が求められていた。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、オリゴマーを樹脂内に含む熱可塑性樹脂の成型物の両面にポリシラザン硬化物によるバリア層を設けることで、従来よりも白化抑制、耐溶剤性が大幅に改善できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、フィルム状、シート状または樹脂板状である熱可塑性樹脂の成型物と、前記熱可塑性樹脂の成型物の両面に設けたバリア層を有する積層構造熱可塑性樹脂成型物であって、前記バリア層がペルヒドロポリシラザン以外のポリシラザンの硬化物であり、前記積層構造熱可塑性樹脂成型物における180℃で1時間加熱後の波長500〜800nmの全領域での光線透過率が85%以上のものであることを特徴とする積層構造熱可塑性樹脂成型物である。
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の積層構造熱可塑性樹脂成型物は、フィルム状、シート状または樹脂板状である熱可塑性樹脂の成型物と、前記熱可塑性樹脂の成型物の両面に設けたバリア層を有するものであって、前記バリア層がペルヒドロポリシラザン以外のポリシラザンの硬化物であり、前記成型物における180℃で1時間加熱した後の波長500〜800nmの全領域での光線透過率が85%以上のものであることを特徴とする。
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂としては特に制約はないが、可視光の光透過性が高く、使用する環境の常用温度で形状を維持できるものが好ましい。また、これら熱可塑性樹脂には低分子量重合体などのオリゴマー成分が残存している場合があり、高温時や紫外線暴露時に前記オリゴマーの析出によって樹脂表面が白化して不透明になることが知られている。
価格や汎用性の観点から、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリウレタン(PUR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、アクリル樹脂(PMMA等)などの汎用プラスチック、ポリアミド(PA)、ナイロン、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのエンジニアリングプラスチック、非晶質ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)などのスーパーエンジニアリングプラスチックなどが好ましい。その中でも価格や光透過性、加工性などの観点から工業的に広く使用されているPETやPCがより好ましい。
[ポリシラザン]
ポリシラザンとしては、ペルヒドロポリシラザン以外のポリシラザンであれば特に制約はないが、下記式(1)を満たす構造のポリシラザンが好ましい。例えばメチルポリシラザン、フェニルポリシラザン、ビニルポリシラザンなどの変性ポリシラザン、ポリシラザンと化学的に反応し架橋構造を生成するヒドロキシル基、ビニル基、アミノ基、シリル基などの反応基を有する炭化水素化合物、環状飽和炭化水素化合物、環状不飽和炭化水素化合物、飽和複素環化合物、不飽和複素環化合物およびシリコーン化合物などの化合物と化学的に架橋された架橋ポリシラザンなどが挙げられ、その中から選定された1種もしくは2種以上のポリシラザン混合物、2種以上のポリシラザン構造からなるポリシラザン共重合体を含んでいても良く、1分子中にケイ素原子に直接結合した水素原子を少なくとも1つ以上含むことが特に好ましい。
Figure 2021172063
(式中、Rは炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、及び炭素数1〜6のアルコキシ基から選ばれる基であり、ポリシラザン1分子中でRは同一であっても異なっていてもよい。ただし、式中のxおよびyはそれぞれ0≦x<1、0<y≦1、x+y=1を満たす数とする。)
前記式(1)中、Rは炭素数1〜6、好ましくは1〜3の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12、好ましくは6〜8の芳香族炭化水素基、炭素数1〜6、好ましくは1〜3のアルコキシ基から選ばれる基であり、例えばメチル基、エチル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。Rはポリシラザン1分子中で繰り返し単位毎に適宜選択することができ、同一であっても異なっていてもよい。
前記式(1)中のxおよびyは、それぞれ0≦x<1、0<y≦1、x+y=1を満たす数である。繰り返し単位xと繰り返し単位yとの合計数に対する繰り返し単位yの数の比は、0.02以上0.34以下であることが好ましい。
中でも、硬化後の膜特性の観点からポリシラザン1分子中の有機基含有量はSi−H結合に対するSi−R(Rは前記と同じである)結合の比率Si−R/Si−H(y/(2x+y))が0.01〜1の範囲内であることが好ましく、0.01〜0.5であることがより好ましい。Si−R/Si−Hが0.01〜1の範囲内であれば、有機溶剤に対する溶解性が良好であり、硬化後にペルヒドロポリシラザン硬化膜と同等の特性を持つシリカガラス様の硬化物を生成することができる。この特性とは、例えば硬度、ガスバリア性、光透過性、耐熱性などが挙げられる。
また、ポリシラザン化合物は有機溶媒への溶解性や塗布時の作業性の観点から重量平均分子量が100〜100,000,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜1,000,000、更に好ましくは3,000〜500,000の範囲内である。重量平均分子量が100以上であれば有機溶媒の乾燥および硬化処理時に揮発することが少ないので、塗膜の膜質が劣化する恐れがなく好ましい。また、100,000,000以下であれば、有機溶媒に対する溶解性が良好であるため好ましい。
なお、本発明において、重量平均分子量とは、以下の条件でポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定した値を指すものとする。
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.6mL/min
検出器:UV検出器
カラム:TSK Guardcolumn SuperH−L
TSKgel SuperMultiporeHZ−M(4.6mmI.D.×15cm×4)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL(濃度0.5重量%のTHF溶液)
[積層構造熱可塑性樹脂成型物]
本発明では、上記熱可塑性樹脂の成型物の両面に、上記ポリシラザンの硬化物からなるバリア層を設けて積層構造熱可塑性樹脂成型物としている。
また、本発明の積層構造熱可塑性樹脂成型物における180℃で1時間加熱後の波長500〜800nmの全領域での光線透過率は85%以上であることを特徴とし、90%以上であることが好ましい。後述するように、光線透過率は、積層構造熱可塑性樹脂成型物を180℃×1時間熱処理した後、日立ハイテク社製分光光度計U−4100によって測定することができる。
(熱可塑性樹脂成型物)
前記熱可塑性樹脂成型物の形状は、フィルム状、シート状、又は樹脂板状である。このような形状であれば、様々な用途に用いることができる。
本発明において、フィルム状、シート状、樹脂板状とは、同じ平板状の形状を指すが、フィルム状、シート状であれば180°に折り曲げ可能であり、樹脂板状であれば二つ折りしようとすると割れてしまうなど、折り曲げ不可能な厚さを有する形状を指すものとする。また、フィルム状とシート状とは厚さの違いによって区別するものとし、概ね250μm以下の厚さをフィルム状とし、250μm以上(1mm以下)の厚さをシート状というものとする。なお、平板状とは、少なくとも部分的に平板状の形状を有すればよく、フィルム等のロールや、凹凸を有する形状なども含むものとする。
(バリア層)
バリア層は、上記ポリシラザンの硬化物からなる。ポリシラザンの硬化物は、硬度、ガスバリア性、光透過性、耐熱性、耐溶剤性などに優れ、有機基含有量によっては、硬化後にペルヒドロポリシラザン硬化膜と同等の特性を持つシリカガラス様の硬化物を生成することができる。
本発明の積層構造熱可塑性樹脂成型物は、熱可塑性樹脂成型物の両面にかかるバリア層を設けているため、成型物がオリゴマーを構造内に含む熱可塑性樹脂から形成されたものであっても、オリゴマーの析出を抑えることができ、従来よりも白化抑制、耐溶剤性が大幅に改善される。
(添加剤)
本発明の積層構造熱可塑性樹脂成型物には熱可塑性樹脂とその表面のポリシラザン硬化物の他に触媒やフィラー、UV吸収剤、酸化防止剤などの添加剤が含まれていても良い。
熱可塑性樹脂の添加剤としては、UV吸収剤、UV散乱剤、酸化防止剤、重金属不活性化剤、難燃剤、帯電防止剤などが挙げられる。これらは熱可塑性樹脂の使用環境などに応じて任意の量を添加して構わない。
また、ポリシラザンの添加剤としては硬化触媒、フィラー、UV吸収剤、UV散乱剤などが挙げられる。硬化触媒としては例えば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、白金などの金属元素を含む均一もしくは不均一金属触媒、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、などの脂肪族アミン類、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノールなどの脂肪族アミノアルコール類、アニリン、フェニルエチルアミン、トルイジンなどの芳香族アミン類、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンなどの複素環式アミン類などのアミン触媒が挙げられ、使用する熱可塑性樹脂の耐熱温度などによる硬化温度の制約条件によって最適なものが選定される。
また、フィラーとしてはヒュームドシリカ、ヒュームド二酸化チタン、ヒュームドアルミナ等の補強性無機充填材、溶融シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、酸化第二鉄、酸化亜鉛等の無機充填材などが挙げられ、主にポリシラザンの硬化収縮緩和やUV吸収、UV散乱の目的で添加される。
上記に挙げた添加剤は一例であり、これ以外にも必要な特性を持たせるために任意の添加剤を任意の量で添加しても良い。
(バリア層の形成)
熱可塑性樹脂の成型物にバリア層を形成するには、塗布法が好ましい。
熱可塑性樹脂の成型物にポリシラザンを塗布する方法としては、例えば、チャンバードクターコーター、一本ロールキスコーター、リバースキスコーター、バーコーター、リバースロールコーター、正回転ロールコーター、ブレードコーター、ナイフコーターなどのロールコート法やスピンコート法、ディスペンス法、ディップ法、スプレー法、転写法、スリットコート法等が挙げられる。
塗布対象となる基材に対する濡れ性を改善するために、ポリシラザンを適切な溶剤で希釈しても良い。希釈溶剤としては例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、イソノナン、デカン、イソデカンなどの脂肪族飽和炭化水素化合物、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセンなどの脂肪族不飽和炭化水素化合物、ジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどのエーテル化合物、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、アセト酢酸エチル、カプロン酸エチルなどのエステル化合物、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ビス(2−エトキシエチル)エーテル、ビス(2−ブトキシエチル)エーテルなどのグリコールエーテル化合物が挙げられる。使用できる溶剤としては特に制約はないが、基材に対する濡れ性や作業性から適切な溶剤を選定することが好ましく、基材を溶解しないことが重要である。
また、熱可塑性樹脂の成型物をあらかじめ表面処理してからバリア層を形成しても良い。これは熱可塑性樹脂表面のゴミや吸着物を取り除いたり、表面を荒らして接着性を向上させたりする目的がある。表面処理の方法としてはArプラズマ処理、酸素プラズマ処理、オゾン処理、UV照射処理、Xeエキシマ光照射処理、ブラスト処理、溶剤による洗浄などが挙げられる。また、プライマーや表面処理剤による処理を施しても構わない。
上記方法で塗布したポリシラザンの塗膜は硬化処理前に乾燥工程を入れることが硬化後の特性の面で好ましいが、硬化処理工程までに使用した溶剤等の揮発成分が十分に揮発していれば省略しても構わない。また、加熱硬化処理の場合は硬化処理工程中にポリシラザンが硬化するより先に溶剤が揮発するため、この場合も省略しても構わない。逆に溶剤が十分に揮発しないまま硬化処理を行うと、硬化膜中に溶剤が残留し硬化膜の物性が悪くなる場合がある。さらには再加熱した際に溶剤が気化し、ボイドやクラックなどの外観不良に繋がる恐れがある。
ポリシラザン塗膜を硬化させる方法としては主に加熱もしくはエネルギー線を照射する方法が一般的であるが、必ずしもこれに限る必要はない。また、加熱硬化処理の場合はポリシラザン自体の硬化反応温度が非常に高いため基材となる熱可塑性樹脂が耐えられないことが想定される。そこで、熱硬化用触媒をあらかじめポリシラザンに添加することが好ましい。無触媒の場合の硬化時間は、例えば150℃で約1日であるが、触媒を添加した場合は、添加量にもよるが150℃で1〜3時間程度で十分硬化する。エネルギー線照射の場合は光ラジカル発生剤などをあらかじめ添加しても構わないが、添加しなくても十分に硬化が進行する。特にXeエキシマ光のように200nm以下の波長であればほとんどポリシランザンが吸収するため短時間で硬化させることができる。
塗膜の厚さはポリシラザンが硬化時の硬化収縮で割れない厚さであれば特に制約はないが、0.01〜20μmの範囲内であることが好ましい。0.01μm以上の膜厚であれば、ポリシラザンによるオリゴマーの析出を抑える効果やガスバリア性、耐溶剤性を十分に発現できるため好ましい。また、20μm以下であれば、膜の柔軟性に優れ、熱可塑性樹脂フィルムに塗工した際にクラックや剥離が起こりにくくなるため好ましい。さらに発現する特性と膜の柔軟性のバランスから、有機基変性量が少なくSi−R/Si−Hが0.01付近のペルヒドロポリシラザンに近い組成のポリシラザンを使用する場合は0.10〜1μmの範囲内であることがより好ましい。また、ポリシラザン硬化物によるバリア膜は単層でも2層以上の複層にしても構わない。単層の場合は複層に比べて工程数が少なくなるため利点がある。一方、複層の場合は単層に比べて膜のピンホールやマイクロクラックなどの欠陥が少なく、硬化膜のガスバリア性が特に良くなる利点がある。具体的な例を挙げると、JIS Z 0208:1976もしくはJIS K 7129B:2019により測定した表面処理を施していない厚さ50μmのPETフィルムの水蒸気透過度は6.8g/m/dayであるが、前記フィルムの両面に1層ずつ本発明のバリア層を設けた場合は1.6g/m/day、両面に2層ずつ設けた場合は0.5×10−3g/m/day未満とすることができる。
このようにして得られた本発明の積層構造熱可塑性樹脂成型物は、耐白化能が向上しており、高温時にオリゴマーの析出による白化を防ぐことができる。具体的には、例えば厚さ0.2mmの熱可塑性樹脂基材の両面にバリア層(例えば厚さ0.5μm)を設けた積層構造熱可塑性樹脂成型物を180℃×1時間熱処理した後、日立ハイテク社製分光光度計U−4100によって測定した500〜800nmの全領域での光線透過率が85%以上となる。光線透過率は90%以上であることが好ましい。
また、前記と同じ条件で熱処理した前記成型物の400〜700nmの波長領域内での光透過率の最低値が熱処理前の光透過率の最低値と比べて、以下の式で得られる変化量が10%以下であることが好ましく、0〜5%であることがより好ましい。
光透過率の変化量(%)=|(熱処理前の光透過率)−(熱処理後の光透過率)|/(熱処理前の光透過率)×100
以上のように、本発明によれば、高温時等のオリゴマーの析出による樹脂フィルムや樹脂板の白化を抑制し、なおかつ耐溶剤性をも有する積層構造熱可塑性樹脂成型物が得られ、熱可塑性樹脂成型物によっては耐熱性が向上された積層構造熱可塑性樹脂成型物となる。
このように、本発明では、バリア層のオリゴマー析出抑制機能により白化防止能や、耐熱性が向上し、なおかつ耐溶剤性なども付与することができるため、熱可塑性樹脂成型物を従来では適用できないような温度で熱処理することが可能であったり、実用温度が有機樹脂の機械的特性が維持できる耐熱温度に近づいたりする。更には、ポリシラザン硬化膜の緻密性により水蒸気透過率が低減されることや、ポリシラザン硬化膜の透明性と相まって成形物の光透過性が優れることなど、有用性が高いため、様々な機能性材料を提供することができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例で部は質量部を示す。
[実施例1]
重量平均分子量が2,700でSi−R/Si−Hが0.08であるメチル変性ポリシラザン5部と希釈溶剤であるジブチルエーテル95部の配合比率で調製したポリシラザン溶液を、膜厚50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに約0.1μmとなるようにスピンコーターで塗布した。この塗膜を基材であるPETフィルムごと窒素ガス雰囲気下で100℃、10分間乾燥させた後に100℃で加熱したままキセノンエキシマ光を2分間照射しポリシラザン硬化膜を形成した。フィルムの反対面も同様に処理しポリシラザン硬化膜を形成した。
[実施例2]
重量平均分子量が2,700でSi−R/Si−Hが0.08であるメチル変性ポリシラザン5部と希釈溶剤であるジブチルエーテル95部の配合比率で調製したポリシラザン溶液を、膜厚50μmのPETフィルムに約0.1μmとなるようにスピンコーターで塗布した。この塗膜を基材であるPETフィルムごと窒素ガス雰囲気下で100℃、10分間乾燥させた後に100℃で加熱したままキセノンエキシマ光を2分間照射しポリシラザン硬化膜を形成した。フィルムの反対面も同様に処理しポリシラザン硬化膜を形成した。さらに上記方法でもう一度両面にポリシラザン硬化膜を形成し、両面にそれぞれ2層ずつのポリシラザン硬化膜を形成させた。
[実施例3]
重量平均分子量が2,700でSi−R/Si−Hが0.08であるメチル変性ポリシラザン5部と希釈溶剤であるジブチルエーテル95部の配合比率で調製したポリシラザン溶液を、膜厚50μmのPETフィルムに約0.1μmとなるようにスピンコーターで塗布した。この塗膜を基材であるPETフィルムごと窒素ガス雰囲気下で100℃、10分間乾燥させた後に100℃で加熱したままキセノンエキシマ光を2分間照射しポリシラザン硬化膜を形成した。フィルムの反対面も同様に処理しポリシラザン硬化膜を形成した。さらにその後、ポリシラザン硬化膜を備えたPETフィルムを150℃で熱処理を行った。
[実施例4]
重量平均分子量が2,700でSi−R/Si−Hが0.08であるメチル変性ポリシラザン5部と希釈溶剤であるジブチルエーテル95部の配合比率で調製したポリシラザン溶液を、膜厚50μmのPETフィルムに約0.1μmとなるようにスピンコーターで塗布した。この塗膜を基材であるPETフィルムごと窒素ガス雰囲気下で100℃、10分間乾燥させた後に100℃で加熱したままキセノンエキシマ光を2分間照射しポリシラザン硬化膜を形成した。フィルムの反対面も同様に処理しポリシラザン硬化膜を形成した後に、上記方法でもう一度両面にポリシラザン硬化膜を形成し、両面にそれぞれ2層ずつのポリシラザン硬化膜を形成させた。さらにその後、ポリシラザン硬化膜を備えたPETフィルムを150℃で熱処理を行った。
[実施例5]
重量平均分子量が2,700でSi−R/Si−Hが0.08であるメチル変性ポリシラザン5部と希釈溶剤であるジブチルエーテル95部の配合比率で調製したポリシラザン溶液を、厚さ2mmのポリカーボネート(PC)板に約0.1μmとなるようにスピンコーターで塗布した。この塗膜を基材であるPC板ごと窒素ガス雰囲気下で100℃、10分間乾燥させた後にキセノンエキシマ光を2分間照射しポリシラザン硬化膜を形成した。PC板の反対面も同様に処理しポリシラザン硬化膜を形成した。
[実施例6]
重量平均分子量が1,200でSi−R/Si−Hが1であるモノメチルポリシラザン20部と粒径約50nmのシリカフィラー20部、希釈溶剤であるジブチルエーテル60部、触媒であるプロピオン酸パラジウム0.1部の配合比率で調製したポリシラザン溶液を、厚さ2mmのPC板に約20μmとなるようにバーコーターで塗布した。この塗膜を基材であるPC板ごと大気雰囲気下で100℃、10分間乾燥させた後に120℃、6時間加熱しポリシラザン硬化膜を形成した。PC板の反対面も同様に処理しポリシラザン硬化膜を形成した。
[実施例7]
重量平均分子量が2,700でSi−R/Si−Hが0.08であるメチル変性ポリシラザン5部と希釈溶剤であるジブチルエーテル95部の配合比率で調製したポリシラザン溶液を、厚さ2mmのポリカーボネート(PC)板に約1μmとなるようにスピンコーターで塗布した。この塗膜を基材であるPC板ごと窒素ガス雰囲気下で100℃、10分間乾燥させた後にキセノンエキシマ光を2分間照射しポリシラザン硬化膜を形成した。PC板の反対面も同様に処理しポリシラザン硬化膜を形成した。上記方法でもう一度両面にポリシラザン硬化膜を形成し、両面にそれぞれ2層ずつのポリシラザン硬化膜を形成させた。
[比較例1]
重量平均分子量が2,700でSi−R/Si−Hが0.08であるメチル変性ポリシラザン5部と希釈溶剤であるジブチルエーテル95部の配合比率で調製したポリシラザン溶液を、膜厚50μmのPETフィルムに約0.1μmとなるようにスピンコーターで塗布した。この塗膜を基材であるPETフィルムごと窒素ガス雰囲気下で100℃、10分間乾燥させた後に100℃で加熱したままキセノンエキシマ光を2分間照射しポリシラザン硬化膜を形成した。フィルムの反対面はポリシラザン硬化膜を形成させなかった。
[比較例2]
重量平均分子量が2,700でSi−R/Si−Hが0.08であるメチル変性ポリシラザン5部と希釈溶剤であるジブチルエーテル95部の配合比率で調製したポリシラザン溶液を、膜厚50μmのPETフィルムに約0.1μmとなるようにスピンコーターで塗布した。この塗膜を基材であるPETフィルムごと窒素ガス雰囲気下で100℃、10分間乾燥させた後に100℃で加熱したままキセノンエキシマ光を2分間照射しポリシラザン硬化膜を形成した。同一面に再度同様に処理しポリシラザン硬化膜を形成することで、片面に2層のポリシラザン硬化膜を形成させた。
[比較例3]
重量平均分子量が2,700でSi−R/Si−Hが0.08であるメチル変性ポリシラザン5部と希釈溶剤であるジブチルエーテル95部の配合比率で調製したポリシラザン溶液を、厚さ2mmのPC板に約0.1μmとなるようにスピンコーターで塗布した。この塗膜を基材であるPC板ごと窒素ガス雰囲気下で100℃、10分間乾燥させた後にキセノンエキシマ光を2分間照射しポリシラザン硬化膜を形成した。PC板の反対面はポリシラザン硬化膜を形成させなかった。
[比較例4]
重量平均分子量が1,200でSi−R/Si−Hが1であるモノメチルポリシラザン20部と粒径約50nmのシリカフィラー20部、希釈溶剤であるジブチルエーテル60部、触媒であるプロピオン酸パラジウム0.1部の配合比率で調製したポリシラザン溶液を、厚さ2mmのPC板に約20μmとなるようにバーコーターで塗布した。この塗膜を基材であるPC板ごと大気雰囲気下で100℃、10分間乾燥させた後に120℃、6時間加熱しポリシラザン硬化膜を形成した。PC板の反対面はポリシラザン硬化膜を形成させなかった。
[比較例5]
重量平均分子量が2,700でSi−R/Si−Hが0であるペルヒドロポリシラザン5部と希釈溶剤であるジブチルエーテル95部の配合比率で調製したポリシラザン溶液を、厚さ2mmのPC板に約1μmとなるようにバーコーターで塗布した。この塗膜を基材であるPC板ごと窒素ガス雰囲気下で100℃、10分間乾燥させた後に100℃で加熱したままキセノンエキシマ光を2分間照射しポリシラザン硬化膜を形成した。PC板の反対面も同様に処理しポリシラザン硬化膜を形成した。さらに上記方法でもう一度両面にポリシラザン硬化膜を形成し、両面にそれぞれ2層ずつのポリシラザン硬化膜を形成させた。
[参考例1]
両面に何も処理を施していない厚さ50μmのPETフィルムを用意した。
[参考例2]
両面に何も処理を施していない厚さ2mmのPC板を用意した。
<評価方法>
実施例、比較例および参考例で準備した熱可塑性樹脂成型物について耐熱試験、耐UV試験、水蒸気透過度測定、耐溶剤試験を行った。なお、比較例においてポリシラザン硬化膜を形成した面をA面、ポリシラザン硬化膜を形成していない面をB面とする。各試験方法は下記のとおりである。
[耐熱試験]
耐熱試験は対流式乾燥機を用い、試料1枚を10℃刻みで昇温し、各温度で20分保持しながら熱可塑性樹脂成型物を加熱して、外観不良が起こらない最も高い温度を耐熱温度とした。
[耐UV試験]
耐UV試験は365nm以下の波長のカットフィルターを設けた照度38.5mW/cmのメタルハライドランプを用い、熱可塑性樹脂成型物に対し1週間UVを照射し、外観を目視で確認した。測定はPC板についてのみ行った。
[水蒸気透過度測定]
水蒸気透過度の測定はLyssy L80‐5000(Systech Instruments製)水蒸気透過度計を用い、JIS Z 0208:1976によりカップ法40℃で測定した。また、カップ法の測定下限値に近い0.1g/m/day以下の水蒸気透過度はJIS K 7129B:2019によりモコン法で測定した。測定はPET基板についてのみ行った。
[耐溶剤試験]
耐溶剤試験はPETおよびPCを溶解させるトルエン溶剤をティッシュペーパーに染み込ませたものを用いて行った。このティッシュペーパーで基材を擦り、外観に変化があるかを目視で確認した。
[光透過率測定]
光透過率の測定は株式会社日立ハイテク社製分光光度計U―4100を用いてPET基板でのみ行った。実施例および比較例、参考例で作製した熱可塑性樹脂成型物を180℃で1時間熱処理した後に500〜800nmの全領域での全光線透過率を測定した。また、前記と同じ条件で熱処理した前記成型物の400〜700nmにおける各波長の光透過率を測定し、その最低値が熱処理前の光透過率の最低値に比べて、以下の式で得られる変化量がいずれの波長も10%以下である場合を〇、10%を超えたものを×とした。なお、PCフィルムは上記熱処理で変形するが、光透過率の測定はそのままで行った。
光透過率の変化量(%)=|(熱処理前の光透過率)−(熱処理後の光透過率)|/(熱処理前の光透過率)×100
実施例、比較例および参考例をまとめたものを表1に示す。
Figure 2021172063
表1の結果から、実施例1〜4ではPETフィルムの耐熱温度が参考例1の未処理のPETフィルムの120℃から180℃まで向上した。これはポリシラザン硬化物によるバリア層がフィルム両面にあることで加熱時にフィルム内に分散していたPETオリゴマーがフィルム表面に析出・凝集することを防ぐことができるためと考えられる。
一方、比較例1、2ではバリア層が片面しかないためバリア層のない側にオリゴマーが析出し白化した。さらに実施例3、4ではバリア層を設けたことで耐熱性が向上し、従来であれば行えない高温で熱処理が可能になった。これにより従来のポリシラザンによるガスバリア効果がさらに高まり、耐熱性およびハイガスバリア性を示すPETフィルムを得ることができた。
また、実施例5〜7および比較例3〜5、参考例2のPC基材では、PCの耐熱温度である120℃を超えると基材の変形が起こり、評価が困難になったため、耐熱性の評価は中断した。代わりにUV照射を行い、PCを劣化させることでオリゴマーの析出を図った。参考例2の未処理のPCではUV照射4日で表面が明らかに白化し始めた。一方、実施例5〜7ではいずれもUV照射による白化は起こらなかった。また、比較例3、4ではバリア層を設けた側にUVを照射しても変化が起こらなかったが、バリア層を設けていない側に照射した場合は参考例2と同様に4日で白化が始まった。これはUVがPCに吸収されるため照射面側で劣化が激しく、裏面はUVによる劣化が少ないためオリゴマーの生成がないことが原因であると考えられる。比較例5では実施例7とは異なりポリシラザンを硬化後に硬化膜にクラックや剥離が見られ、耐UV試験や耐溶剤試験で不良が発生した。
最後に、耐溶剤試験ではバリア層を設けた面は、比較例5以外の実施例および比較例のすべてで外観の変化は起こらなかった。これらのことからバリア層を設けることにより基材の耐熱性、耐溶剤性が向上していると結論付けられる。
(産業上の利用可能性)
本発明の積層構造熱可塑性樹脂成型物は、そのまま従来の熱可塑性樹脂基材と同様に使用できる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

Claims (5)

  1. フィルム状、シート状または樹脂板状である熱可塑性樹脂の成型物と、前記熱可塑性樹脂の成型物の両面に設けたバリア層を有する積層構造熱可塑性樹脂成型物であって、前記バリア層がペルヒドロポリシラザン以外のポリシラザンの硬化物であり、前記積層構造熱可塑性樹脂成型物における180℃で1時間加熱後の波長500〜800nmの全領域での光線透過率が85%以上のものであることを特徴とする積層構造熱可塑性樹脂成型物。
  2. 前記ポリシラザンが下記式(1)で表される構造のものであることを特徴とする請求項1に記載の積層構造熱可塑性樹脂成型物。
    Figure 2021172063
    (式中、Rは炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、及び炭素数1〜6のアルコキシ基から選ばれる基であり、ポリシラザン1分子中でRは同一であっても異なっていてもよい。ただし、式中のxおよびyはそれぞれ0≦x<1、0<y≦1、x+y=1を満たす数とする。)
  3. 前記ポリシラザンが、1分子中の有機基含有量が、前記式(1)におけるSi−H結合に対するSi−R(Rは上記の通りである)結合の比率Si−R/Si−Hが0.01〜1の範囲内のものであることを特徴とする請求項2に記載の積層構造熱可塑性樹脂成型物。
  4. 前記ポリシラザンの重量平均分子量が100〜100,000,000の範囲であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の積層構造熱可塑性樹脂成型物。
  5. 前記熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレート又はポリカーボネートであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の積層構造熱可塑性樹脂成型物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012056101A (ja) * 2010-09-06 2012-03-22 Konica Minolta Holdings Inc ガスバリアフィルムおよびそれを用いた電子機器デバイス
JP2020012059A (ja) * 2018-07-18 2020-01-23 信越化学工業株式会社 ポリシラザン含有組成物

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