JP2021168828A - ゲル被覆医療用材料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】抗血栓性や耐久性等の優れた特性を保持したままで、移植後の器質化を促進させた人工血管等の医療用材料を提供することを課題とする。【解決手段】生体内に埋設して用いるための医療用材料であって、基材と、前記基材の表面を被覆する表面ゲル層と、を有し、前記表面ゲル層に含まれるゲルが、親水性高分子の放射線架橋構造を有する、該医療用材料。【選択図】なし
Description
本発明は、表面がゲルで被覆された医療用材料及びその製造方法に関する。
従来、人工血管や縫合糸、組織補強材などの埋め込み医療用材料は、生化学的に不活性な疎水性材料が用いられているため、移植後に周囲組織と一体化(器質化)せず、重篤な漿液腫や感染症を起こす場合があることが問題となっていた。
例えば、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)製の人工血管は、抗血栓性や耐久性に優れることから、心臓血管外科領域においてバイパス手術・大動脈瘤切除手術・透析用ブラッドアクセス造設術施行時の代用血管として頻用されている。しかし、移植後の器質化に乏しいことから、移植後5〜20%程度の頻度で人工血管周囲に難治性の液体貯留を来す「漿液腫(seroma、セローマ)」が発生することが知られており、時に感染も併発して患者QOLを著しく損なうものであった。特に、漿液腫が多く見られるのは頻回の人工血管穿刺を必要とする透析用ブラッドアクセスであり、透析患者数の多い我が国において、漿液腫の予防は喫緊の課題である。
ここで、細胞接着性等、生体との馴染みの改善を目的として、ePTFE表面を修飾することが報告されている(特許文献1〜4)。しかしながら、その修飾手法は煩雑であり、器質化の効果も十分とはいえなかった。そのため、安全な埋め込み治療と患者のQOL向上のため、人工血管等の医療用材料を、その優れた特性を保持したままで改良し、器質化を促進させる技術が切望されている。
そこで、本発明は、移植後の器質化を促進させた人工血管等の医療用材料を提供することを課題とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、放射線架橋構造を有するゲルによりePTFE等の基材表面を被覆することで、移植後速やかに周囲組織と親和して器質化が促進されることを見出した。また、かかる医療用材料を簡便かつ効率的に製造するために好適な方法を併せて見出した。これらの知見により本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、一態様において、ゲル被覆医療用材料に関し、より具体的には、
<1>生体内に埋設して用いるための医療用材料であって、基材と、前記基材の表面を被覆する表面ゲル層と、を有し、前記表面ゲル層に含まれるゲルが、親水性高分子の放射線架橋構造を有する、該医療用材料;
<2>前記親水性高分子がタンパク質を含む、上記<1>に記載の医療用材料;
<3>前記親水性高分子が、コラーゲン、ゼラチン、ペプチド、又はそれらの組み合わせである、上記<1>又は<2>に記載の医療用材料;
<4>前記ゲルが、前記基材の表面と共有結合により連結している、上記<1>〜<3>のいずれか1に記載の医療用材料;
<5>前記表面ゲル層が、5kPa〜500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する、上記<1>〜<4>のいずれか1に記載の医療用材料;
<6>前記表面ゲル層の厚みが、10μm〜1000μmの範囲である、上記<1>〜<5>のいずれか1に記載の医療用材料;
<7>前記表面ゲル層が、20〜95重量%の含水率を有する、上記<1>〜<6>のいずれか1に記載の医療用材料;
<8>前記ゲルの生分解性速度が、生体内と同等の環境下において14日〜28日の範囲である、上記<1>〜<7>のいずれか1に記載の医療用材料;
<9>前記基材が、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレン、又はポリウレタンよりなる、上記<1>〜<8>のいずれか1に記載の医療用材料;
<10>前記親水性高分子が、スペーサー化合物を介して前記基材の表面と共有結合により連結している、上記<4>に記載の医療用材料;及び
<11>上記<1>〜<10>のいずれか1に記載の医療用材料で構成される、人工血管。
を提供するものである。
<1>生体内に埋設して用いるための医療用材料であって、基材と、前記基材の表面を被覆する表面ゲル層と、を有し、前記表面ゲル層に含まれるゲルが、親水性高分子の放射線架橋構造を有する、該医療用材料;
<2>前記親水性高分子がタンパク質を含む、上記<1>に記載の医療用材料;
<3>前記親水性高分子が、コラーゲン、ゼラチン、ペプチド、又はそれらの組み合わせである、上記<1>又は<2>に記載の医療用材料;
<4>前記ゲルが、前記基材の表面と共有結合により連結している、上記<1>〜<3>のいずれか1に記載の医療用材料;
<5>前記表面ゲル層が、5kPa〜500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する、上記<1>〜<4>のいずれか1に記載の医療用材料;
<6>前記表面ゲル層の厚みが、10μm〜1000μmの範囲である、上記<1>〜<5>のいずれか1に記載の医療用材料;
<7>前記表面ゲル層が、20〜95重量%の含水率を有する、上記<1>〜<6>のいずれか1に記載の医療用材料;
<8>前記ゲルの生分解性速度が、生体内と同等の環境下において14日〜28日の範囲である、上記<1>〜<7>のいずれか1に記載の医療用材料;
<9>前記基材が、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレン、又はポリウレタンよりなる、上記<1>〜<8>のいずれか1に記載の医療用材料;
<10>前記親水性高分子が、スペーサー化合物を介して前記基材の表面と共有結合により連結している、上記<4>に記載の医療用材料;及び
<11>上記<1>〜<10>のいずれか1に記載の医療用材料で構成される、人工血管。
を提供するものである。
本発明は、別の態様において、上記医療用材料の製造方法を対象とするものでもあり、より具体的には、
<12>生体内に埋設して用いるための、表面がゲルで被覆された医療用材料の製造方法であって、 前記医療用材料が、基材と、前記基材の表面を被覆する表面ゲル層と、を有し、以下の工程:a)前記基材を親水性高分子の溶液に浸漬させる工程;及びb)前記親水性高分子溶液に浸漬した前記基材を当該溶液中に維持した状態で、又は当該溶液から取り出した状態で、前記基材に放射線を照射することで、前記親水性高分子をゲル化させる工程を含む、該製造方法;
<13>前記工程a)の前に、以下の工程を行うことをさらに含む、上記<12>に記載の製造方法:i)前記基材の表面を親水化処理する工程;ii)前記親水化処理した前記基材をスペーサー化合物の溶液に浸漬させる工程;
<14>前記親水化処理が、プラズマ又は電子線を用いる、上記<12>又は<13>に記載の製造方法;
<15>前記スペーサー化合物が、親水化処理された前記基材の表面官能基と共有結合を形成し得る官能基を有し、かつ、前記親水性高分子と共有結合を形成し得る官能基を有する、上記<12>〜<14>のいずれか1に記載の製造方法;
<16>前記スペーサー化合物が、ジイソシアネート構造を有する、上記<15>に記載の製造方法;
<17>前記親水性高分子がタンパク質を含む、上記<12>〜<16>のいずれか1に記載の製造方法;
<18>前記親水性高分子が、コラーゲン、ゼラチン、ペプチド、又はそれらの組み合わせである、上記<12>〜<17>のいずれか1に記載の製造方法;
<19>前記工程a)における溶液が、0.1〜70重量%の親水性高分子を含む水溶液である、上記<12>〜<18>のいずれか1に記載の製造方法;
<20>前記工程b)において、線量1〜1000kGyの放射線を照射することを含む、上記<12>〜<19>のいずれか1に記載の製造方法;
<21>前記基材が、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレン、又はポリウレタンよりなる、上記<12>〜<20>のいずれか1に記載の製造方法;
<22>前記医療用材料が人工血管を構成する材料である、上記<12>〜<21>のいずれか1に記載の製造方法
を提供するものである。
<12>生体内に埋設して用いるための、表面がゲルで被覆された医療用材料の製造方法であって、 前記医療用材料が、基材と、前記基材の表面を被覆する表面ゲル層と、を有し、以下の工程:a)前記基材を親水性高分子の溶液に浸漬させる工程;及びb)前記親水性高分子溶液に浸漬した前記基材を当該溶液中に維持した状態で、又は当該溶液から取り出した状態で、前記基材に放射線を照射することで、前記親水性高分子をゲル化させる工程を含む、該製造方法;
<13>前記工程a)の前に、以下の工程を行うことをさらに含む、上記<12>に記載の製造方法:i)前記基材の表面を親水化処理する工程;ii)前記親水化処理した前記基材をスペーサー化合物の溶液に浸漬させる工程;
<14>前記親水化処理が、プラズマ又は電子線を用いる、上記<12>又は<13>に記載の製造方法;
<15>前記スペーサー化合物が、親水化処理された前記基材の表面官能基と共有結合を形成し得る官能基を有し、かつ、前記親水性高分子と共有結合を形成し得る官能基を有する、上記<12>〜<14>のいずれか1に記載の製造方法;
<16>前記スペーサー化合物が、ジイソシアネート構造を有する、上記<15>に記載の製造方法;
<17>前記親水性高分子がタンパク質を含む、上記<12>〜<16>のいずれか1に記載の製造方法;
<18>前記親水性高分子が、コラーゲン、ゼラチン、ペプチド、又はそれらの組み合わせである、上記<12>〜<17>のいずれか1に記載の製造方法;
<19>前記工程a)における溶液が、0.1〜70重量%の親水性高分子を含む水溶液である、上記<12>〜<18>のいずれか1に記載の製造方法;
<20>前記工程b)において、線量1〜1000kGyの放射線を照射することを含む、上記<12>〜<19>のいずれか1に記載の製造方法;
<21>前記基材が、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレン、又はポリウレタンよりなる、上記<12>〜<20>のいずれか1に記載の製造方法;
<22>前記医療用材料が人工血管を構成する材料である、上記<12>〜<21>のいずれか1に記載の製造方法
を提供するものである。
本発明によれば、移植後の器質化を促進させた人工血管等の医療用材料を提供することができる。
本発明の医療用材料によれば、移植後の周囲組織から表面ゲル層への豊富な細胞浸潤により、器質化を促進することができ、重篤な漿液腫の発生を予防し得る。
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。
1.医療用材料
本発明の医療用材料は、生体内に埋設して用いるための医療用材料であって、
基材と、前記基材の表面を被覆する表面ゲル層と、を有し、前記表面ゲル層に含まれるゲルが、親水性高分子の放射線架橋構造を有することを特徴とするものである。
本発明の医療用材料は、生体内に埋設して用いるための医療用材料であって、
基材と、前記基材の表面を被覆する表面ゲル層と、を有し、前記表面ゲル層に含まれるゲルが、親水性高分子の放射線架橋構造を有することを特徴とするものである。
生体内に埋設して用いるための医療用材料とは、治療行為において手術等により移植され、生体内で静置されて用いられる医療用の器具や部材、治具、機器等(以下、これらをまとめて「医療器具等」と呼ぶ場合もある。)を構成するための材料が広く含まれる。その形状は、典型的にはチューブ状(環状)であるが、特に限定されるものではなく、シート状やフィルム状、平板状、スポンジ状、メッシュ状、繊維状、ボルト状のものであってもよい。かかる医療用材料により構成される医療器具等としては、例えば、人工血管やステント、カテーテル、およびステントグラフト、縫合糸、組織補強材などを挙げることができる。代表的には、人工血管である。
(1−1)基材
本発明の医療用材料を構成する基材は、生体内に埋設して用いる医療用材料について当該技術分野において従来から用いられている材料であることができる。かかる材料は、一般に、生体適合性を有する天然及び非天然の材料を用いることができ、例えば、生体適合性かつ可撓性を有する高分子材料が好適である。ここで、「生体適合性」とは、生体に材料を接着あるいは移植した際に、異物として認識されたり、排除されたりせず馴染む材料を意味する。本発明に用いられる基材は、好ましくは生体適合性を有するが、一方で、生体中において一定期間安定に存在し得るものが望ましく、そのため生分解性を有さない材料であることができる。
本発明の医療用材料を構成する基材は、生体内に埋設して用いる医療用材料について当該技術分野において従来から用いられている材料であることができる。かかる材料は、一般に、生体適合性を有する天然及び非天然の材料を用いることができ、例えば、生体適合性かつ可撓性を有する高分子材料が好適である。ここで、「生体適合性」とは、生体に材料を接着あるいは移植した際に、異物として認識されたり、排除されたりせず馴染む材料を意味する。本発明に用いられる基材は、好ましくは生体適合性を有するが、一方で、生体中において一定期間安定に存在し得るものが望ましく、そのため生分解性を有さない材料であることができる。
基材を構成する材料の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリウレタンポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニル系共重合体、ポリエーテルエステル、ナイロン、レーヨン、ポリプロピレン、天然ゴム、合成ゴム、ラテックス、綿、絹、不織布、又はそれらの任意の組み合わせなどを挙げることができる。基材を構成する材料は、好ましくは、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリウレタン、又はそれらの組み合わせであることができる。より好ましくは、基材は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を主体とする。
また、基材の形状は、その用途に応じて変更することが可能であり、管状、平板状等何れでもよい。さらに、そのミクロ形態は均質や多孔質、繊維状であることができる。基材は、例えば、多孔質のチューブ状、多孔質のシート状、多孔質のフィルム状、又は多孔質のスポンジ状の形状であることもできる。
本発明の医療用材料を構成する基材を製造する手段は、特に限定されるものではなく、当該技術分野において公知の手法を用いることができる。例えば、上述の高分子材料を押出成形法等により連続的に押出して成形することができ、或いは、マンドレルに高分子材料の溶液を塗布した後に乾燥することで成形することもできる。
(1−2)表面ゲル層
本発明の医療用材料は、上述のように、基材の表面を被覆する表面ゲル層を有しており、当該表面ゲル層に含まれるゲルは、親水性高分子が放射線架橋することによってゲル化した構造を有するものである。当該ゲルは、好ましくは、ハイドロゲルである。また、当該ゲルは、生体適合性と生分解性を併せ持つことが好ましい。
本発明の医療用材料は、上述のように、基材の表面を被覆する表面ゲル層を有しており、当該表面ゲル層に含まれるゲルは、親水性高分子が放射線架橋することによってゲル化した構造を有するものである。当該ゲルは、好ましくは、ハイドロゲルである。また、当該ゲルは、生体適合性と生分解性を併せ持つことが好ましい。
本明細書中において、「ゲル」とは、一般に、高粘度で流動性を失った高分子の分散系であり、貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”においてG’≧G”の関係性を有する状態をいう。また、「ハイドロゲル」は、水を含有するゲルである。
本明細書中において、「放射線架橋」とは、ゲルの母材となる親水性高分子に、電子線やガンマ線などの電離放射線を照射することにより化学架橋させることを意味する。放射線の照射によって高分子鎖上に活性点が生じ、そこを起点としての高分子鎖がX型或いはT型に結合することで、3次元網目状の高分子構造体(ネットワーク構造)を得ることができる。かかる放射線架橋は、放射線が有する固有の高いエネルギーを利用したものであり、熱架橋剤(重合開始剤)や紫外線架橋剤(光重合開始剤)などの、いわゆる架橋剤を必要としない。放射線架橋によると、室温或いはそれ以下の温度でも架橋反応を進行させることができる。また、放射線架橋は、材料のゲル化だけでなく、耐熱性の向上、形状記憶性の付与などにも応用され得る。
本明細書中において、「放射線架橋構造」とは、ゲルの母材となる親水性高分子に、電子線やガンマ線などの電離放射線を照射することにより化学架橋させ、形成される構造のことを意味する。放射線の照射によって高分子鎖上に活性点が生じ、そこを起点としての高分子鎖がX型或いはT型に結合することで、3次元網目状の高分子構造体(ネットワーク構造)を得ることができる。
なお、本発明の表面ゲル層における放射線架橋構造の形成は、親水性高分子がタンパク質の場合には、ゲルを酸加水分解し、フェニルアラニンやチロシンなどアミノ酸残基の二量体を検出することで確認することができる。
<親水性高分子>
表面ゲル層に含まれるゲルの母材となる親水性高分子は、分子中に少なくとも1以上、好ましくは2以上の親水性基を有する天然又は非天然の高分子を用いることができる。かかる親水性基としては、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エーテル基、アシル基、スルホ基などを挙げることができる。
表面ゲル層に含まれるゲルの母材となる親水性高分子は、分子中に少なくとも1以上、好ましくは2以上の親水性基を有する天然又は非天然の高分子を用いることができる。かかる親水性基としては、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エーテル基、アシル基、スルホ基などを挙げることができる。
親水性高分子の分子量は特に限定されず、例えば、150から2,000,000の範囲の高分子を適宜選択して用いればよい。典型的には、1,000から1,000,000の範囲の高分子を適宜選択して用いることができる。なお、組成が同一の高分子であれば、分子量が大きいほどハイドロゲルの弾性率が大きくなる傾向がある。なお、本明細書では、特に言及しない限り、「分子量」は重量平均分子量を意味するものとする。なお、かかる重量平均分子量は、従来公知のサイズ排除クロマトグラムにより測定することができる。
親水性高分子として、例えば、タンパク質、ペプチド、多糖類、核酸といった、天然物由来の親水性高分子、或いはその誘導体が挙げられる。なお、天然物由来とは、天然物(地球資源、典型的には生物、例えば動物、植物、菌)から抽出或いは精製することにより入手可能であることを意味し、それ自体が天然物であることに限定されない。例えば、天然物からの抽出物或いは精製物を原料として人為的に合成した合成タンパク質は、上記天然物由来の親水性高分子(以下、天然高分子ともいう)に包含される。なお、ここで合成タンパク質とは、細胞利用のタンパク質合成系で合成されたタンパク質、又は無細胞タンパク質合成系で合成されたタンパク質のいずれも包含する。
上記天然物由来の親水性高分子の具体例として、例えば、コラーゲン、変性コラーゲン、コラーゲンペプチド、ゼラチン、フィブリン、アルブミン、ラミニン、ケラチン、オボアルブミン、ミオシン、グロブリン、ペプチドなどのタンパク質;デキストリン、デキストラン、キチン、キトサン、寒天、アガロース、ジェランガム、キサンタンガム、カラヤガム、カラギーナン、セルロース、スターチなどの多糖類;DNA又はRNAなどの核酸などが挙げられる。なかでも、ゼラチンなどのタンパク質は、生体適合性や細胞接着性、生分解性を元来有しているので好ましい。
ここで、タンパク質とは、複数のアミノ酸がペプチド結合により結合されてなる高分子を意味し、当該タンパク質を構成するアミノ酸の数により限定されるものではない。例えば、2個又は3個以上のアミノ酸からなるペプチドを包含する。なお、本明細書中において、「ペプチド」という場合には、2個以上2,000個以下のアミノ酸からなる高分子をいう。
なお、上記天然物由来の親水性高分子は、単一のサブタイプのみをハイドロゲルの原料として用いてもよいし、複数の異なるサブタイプを組み合わせてハイドロゲルの原料としてもよい。例えばコラーゲンはI型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲンといったサブタイプが知られている。したがって、これらのサブタイプのうち1つ又は2つ以上のサブタイプのコラーゲンを組み合わせて用いることができる。I型コラーゲンは生体内に最も大量に存在することから、比較的安価に入手し得る点で好ましい。また、IV型コラーゲンは皮膚の基底膜に存在するコラーゲンであり、比較的簡便に入手できる点で好ましい。
上記天然物由来の親水性高分子(天然高分子)の誘導体としては、特に限定されないが、例えば当該天然物由来の高分子を低級アルキル基、低級アルコキシアルキル基、又はヒドロキシ低級アルキル基で置換した誘導体が挙げられる。具体的には、低級アルキル基置換セルロース誘導体、低級アルコキシアルキル基置換セルロース誘導体、ヒドロキシ低級アルキル基置換セルロース誘導体、低級アルコキシアルキル基置換キトサン誘導体、低級アルコキシアルキル基置換キチン誘導体、低級アルコキシアルキル基置換スターチ誘導体及び低級アルコキシアルキル基置換カラギーナン誘導体からなる群から選択される天然高分子誘導体が例示される。
また、場合により、親水性高分子は、人工的に合成した合成高分子(合成樹脂)であってもよい。この場合、従来公知の親水性高分子を使用することができるが、そのような親水性の合成高分子の例としては、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド及びポリエチレングリコールなどを挙げることができる。例えば、合成樹脂の場合、機械強度が高いため、摩耗の激しい部位の医療器具の材料に用いることが好ましい。或いはまた、人工的に設計された配列を有する高分子も当該合成分子に包含し得る。例えば、人工的に設計された配列を有する人工タンパク質(ペプチドを含む)、核酸、多糖が挙げられる。あるいはまた、人工的に合成した合成高分子(合成樹脂)と人工的に設計された配列を有する高分子を組み合わせて用いてもよい。
なお、表面ゲル層に含まれるゲルは、上記親水性高分子のうち1種のみが相互に架橋したものであってもよいし、2種又は3種以上の親水性高分子が相互に架橋(結合)したものであってもよい。
本発明の医療用材料は、生体内に埋設して用いるものであるため、親水性高分子は、生体適合性を有するものであることが望ましい。したがって、好ましくは、本発明において、表面ゲル層に含まれるゲルの母材となる親水性高分子は、生体(動物生体)から抽出又は精製して得られる親水性高分子(以下、生体由来高分子ともいう)又はその誘導体が好ましい。具体的には、親水性高分子は、好ましくは、タンパク質を含む。より好ましくは、親水性高分子は、コラーゲン、ゼラチン、ペプチド、又はそれらの組み合わせである。
<高分子含有量>
本発明の表面ゲル層に含まれるゲルにおける親水性高分子の含有量は、1重量%以上、好ましくは3重量%以上であることができる。親水性高分子の含有量の上限は80重量%以下、望ましくは50重量%以下、好ましくは40重量%以下であることができる。
本発明の表面ゲル層に含まれるゲルにおける親水性高分子の含有量は、1重量%以上、好ましくは3重量%以上であることができる。親水性高分子の含有量の上限は80重量%以下、望ましくは50重量%以下、好ましくは40重量%以下であることができる。
また、好ましい態様として、本発明の表面ゲル層におけるゲルは、従来よりも高濃度の親水性高分子を含むゲルであることができる。例えば、ゲルに対して、1〜30重量%の範囲の親水性高分子を含んでいてもよい。具体的には、コラーゲン、ゼラチン、ペプチド、又はそれらの組み合わせを、1〜30重量%の範囲で含んでいてもよい。かかる高分子含有量は、一般的な中和コラーゲンや市販の生体抽出物由来のハイドロゲル(マトリゲルなど)に含まれる濃度よりも高いが、上述の放射線架橋によって、このような高濃度の高分子を含むゲルを得ることができる。
本発明の表面ゲル層におけるゲルは、放射線架橋構造を有することにより、親水性高分子が元来有している性質をそのまま保有する。例えば、親水高分子がタンパク質の場合、生体適合性や細胞接着性、生分解性を保持することができる。その生分解速度は親水性高分子の種類や架橋密度によって調整することができる。ここで、架橋密度とは、ゲルを構成する親水性高分子の単位体積当たりの架橋点(架橋を起こした構造単位)の数であり、当該架橋密度は、主としてゲルの弾性率(硬さ)や含水率により評価することができる。典型的には、37℃のPBS (Phosphate Buffered Saline; リン酸緩衝食塩水)中で1時間静置後に、測定することができる 。
<ゲルの含水率>
本発明の表面ゲル層におけるゲルは、典型的には10重量%以上、好ましくは30重量%以上の含水率を有することができる。含水率の上限は特に限定されず、例えば99質量%以下で適宜設定すればよい。好ましくは、表面ゲル層の含水率が、50〜95重量%の範囲、より好ましくは、80〜93重量%、特に好ましくは、85〜92重量%である。
本発明の表面ゲル層におけるゲルは、典型的には10重量%以上、好ましくは30重量%以上の含水率を有することができる。含水率の上限は特に限定されず、例えば99質量%以下で適宜設定すればよい。好ましくは、表面ゲル層の含水率が、50〜95重量%の範囲、より好ましくは、80〜93重量%、特に好ましくは、85〜92重量%である。
<ゲルの弾性率>
本発明の表面ゲル層におけるゲルは、好ましくは、5kPa〜500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する。より好ましくは、10kPa〜300kPa、特に好ましくは、20kPa〜200kPaの範囲の圧縮弾性率であることができる。当該圧縮弾性率は、用いる親水性高分子の種類、後述の製造方法について述べる親水性高分子水溶液の濃度、放射線照射量によって制御することができる。
本発明の表面ゲル層におけるゲルは、好ましくは、5kPa〜500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する。より好ましくは、10kPa〜300kPa、特に好ましくは、20kPa〜200kPaの範囲の圧縮弾性率であることができる。当該圧縮弾性率は、用いる親水性高分子の種類、後述の製造方法について述べる親水性高分子水溶液の濃度、放射線照射量によって制御することができる。
圧縮弾性率は、当該技術分野において公知の手法、例えば、JIS K 6272などに準じた公知の応力−歪(Stress−Strain)曲線の測定方法によって求めることができる。典型的には、37℃のPBS中で1時間静置後に、測定することができる。
<表面ゲル層の平均厚み>
また、本発明における表面ゲル層の平均厚みは、好ましくは10μm〜1000μmの範囲であり、より好ましくは30μm〜300μmの範囲である。当該平均厚みは、典型的には、37℃のPBS中で1時間静置後に試料切片を切り出し、断面を光学顕微鏡で観察してランダムに選んだ3ヵ所を測定して平均値を出した値であり、用いる親水性高分子の種類、後述の製造方法について述べる親水性高分子水溶液の濃度や浸漬時間、放射線照射量によって制御することができる。
また、本発明における表面ゲル層の平均厚みは、好ましくは10μm〜1000μmの範囲であり、より好ましくは30μm〜300μmの範囲である。当該平均厚みは、典型的には、37℃のPBS中で1時間静置後に試料切片を切り出し、断面を光学顕微鏡で観察してランダムに選んだ3ヵ所を測定して平均値を出した値であり、用いる親水性高分子の種類、後述の製造方法について述べる親水性高分子水溶液の濃度や浸漬時間、放射線照射量によって制御することができる。
また、表面ゲル層における線維芽細胞の浸潤の度合いや速度は、表面ゲル層の厚みや架橋密度、親水性高分子の種類によって制御できるため、器質化に好適な条件を調整することが可能である。例えば、器質化に好適な条件として、本発明における表面ゲル層は、生体内に14日間にわたって残存し、28日以内に生分解されることが好ましい。
<スペーサー化合物>
好ましい態様において、表面ゲル層におけるゲルの母材である前記親水性高分子は、基材の表面と共有結合により連結していることができる。これにより、基材表面を表面ゲル層によって安定的に被覆することができる。
好ましい態様において、表面ゲル層におけるゲルの母材である前記親水性高分子は、基材の表面と共有結合により連結していることができる。これにより、基材表面を表面ゲル層によって安定的に被覆することができる。
また、別の好ましい態様として、基材表面に存在する官能基が親水性高分子中の官能基と直接共有結合し得ない場合には、スペーサー化合物を介して基材の表面と親水性高分子とを共有結合により連結させることもできる。これにより、基材表面に存在する官能基が親水性高分子中の官能基と直接共有結合し得ない場合においても、かかるスペーサー化合物を介することで、親水性高分子と基材表面を共有結合により連結させ、基材表面を表面ゲル層によって安定的に被覆することができる。この場合、親水性高分子と基材がスペーサー化合物を介して共有結合により接合されていることは、親水性高分子を酵素や酸で加水分解した後、親水性高分子が結合していた側を化学構造分析した結果、基材とは異なる官能基を有していることで確認することができる。
したがって、スペーサー化合物は、基材の表面官能基(又は、後述の親水化処理された後の基材の表面官能基)と共有結合を形成し得る官能基を有し、かつ、前記親水性高分子と共有結合を形成し得る官能基を有する。基材の表面官能基は、ヒドロキシル基、メチル基、ケトン基などが挙げられる。親水性高分子の表面官能基は、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エーテル基、アシル基、スルホ基などが挙げられる。スペーサー化合物は、基材の表面官能基と、親水性高分子の表面官能基の、それぞれ1つ以上と共有結合し得る官能基を有する化合物であることが好ましい。より具体的には、スペーサー化合物は、基材表面のヒドロキシル基及び又はアミノ基と、親水性高分子内のヒドロキシル基及び又はアミノ基の、双方と共有結合し得る官能基を有する化合物であることが好ましい。かかる官能基の具体例としては、ジイソシアネート基、シアノアクリレート、マレイミド基、ジアミン、メラミン等を挙げることができる。したがって、スペーサー化合物は、好ましくは、ジイソシアネート構造を有する化合物であり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を例示することができる。
2.医療用材料の製造方法
本発明は、別の態様において、生体内に埋設して用いるための、表面がゲルで被覆された医療用材料の製造方法にも関する。上述のように、当該医療用材料が、基材と、当該基材の表面を被覆する表面ゲル層を有することを特徴とする。
本発明は、別の態様において、生体内に埋設して用いるための、表面がゲルで被覆された医療用材料の製造方法にも関する。上述のように、当該医療用材料が、基材と、当該基材の表面を被覆する表面ゲル層を有することを特徴とする。
より具体的には、発明の製造方法は、以下の工程a)及びb)を含むことを特徴とする:
a)前記基材を親水性高分子の溶液に浸漬させる工程;及び
b)前記親水性高分子溶液に浸漬した前記基材を当該溶液中に維持した状態で、又は当該溶液から取り出し、前記基材に放射線を照射することで、前記親水性高分子をゲル化させる工程。
a)前記基材を親水性高分子の溶液に浸漬させる工程;及び
b)前記親水性高分子溶液に浸漬した前記基材を当該溶液中に維持した状態で、又は当該溶液から取り出し、前記基材に放射線を照射することで、前記親水性高分子をゲル化させる工程。
工程a)は、ゲルの母材となる親水性高分子の溶液に基材を浸漬させる工程であり、好ましくは、上述のように、この段階で、基材表面と親水性高分子は共有結合により連結される。その後、工程b)により放射線を照射することにより、親水性高分子を互いに架橋させてゲルを形成し、基材の表面を表面ゲル層によって被覆した医療用材料を得ることができる。ここで用いる基材や親水性高分子の種類等については、本発明の医療用材料について上述し説明をそのまま適用することができる
工程a)で用いる親水性高分子の溶液は、好ましくは、水溶液である。ただし、場合により、アルコール等の有機溶媒を含む混合溶媒を用いることも可能である。
親水性高分子溶液における高分子濃度は、好ましくは0.1〜70重量%、より好ましくは5〜20重量%の範囲である。なお、高濃度の親水性高分子を含む溶液を用いることで単位体積当たりに生じる放射線架橋の割合が増大するため、弾性率の高いゲルは、一般に含水率が低下する傾向となる。したがって所望の弾性率と含水率に基づき、親水性高分子溶液の濃度を適宜設定することができる
次いで、工程b)は、基材の表面に親水性高分子が付着した状態で放射線を照射することにより、in−situでゲル化を生じさせ、基材表面上に表面ゲル層を形成する工程である。したがって、工程a)で親水性高分子溶液に浸漬した基材を当該溶液中に維持した状態で放射線を照射してもよいし、或いは、
基材をいったん当該溶液から取り出した後に放射線を照射することもできる。例えば、コラーゲンの場合は溶液中に維持した状態で放射線を照射することが望ましく、ゼラチンの場合、溶液から取り出した後に放射線を照射することが好ましい。
基材をいったん当該溶液から取り出した後に放射線を照射することもできる。例えば、コラーゲンの場合は溶液中に維持した状態で放射線を照射することが望ましく、ゼラチンの場合、溶液から取り出した後に放射線を照射することが好ましい。
工程b)における放射線の照射は、工程a)で処理後の基材に対し、放射線照射装置を用いて、連続的に又は間欠的に線量1〜1000kGyの放射線を照射することができる。線量の下限は、2kGy以上、5kGy以上、10kGy以上、100kGy以上、500kGy以上であってよく、線量の上限は、500kGy以下、300kGy以下、200kGy以下、100kGy以下であってよい。典型的には線量1〜100kGy、好ましくは線量5〜50kGyの放射線照射を用いることができる。
ここで、「放射線」とは、紫外線より波長の短い電磁波と、電子線、イオンビームを含む概念であり、電磁波は、X線、ガンマ線を含む。放射線照射装置は、公知のこれら放射線の発生装置を用いることができる。また、「線量」とは、放射線の時間当たりの照射量を、時間積分したものであり、各々の放射線ごとに販売されている線量計によって、測定することができる。なお、放射線照射装置において、照射エネルギーは100keVから10MeV程度に設定することが望ましい。
工程a)で処理後の基材への放射線照射によって、タンパク質等の親水性高分子が部分的に開裂してラジカルを発生するとともに、架橋反応が生じることにより、溶媒を内包するようにゲル(溶媒が水の場合にはハイドロゲル)が生成する。放射線の照射が終了すると、ただちに架橋反応も停止する。反応の際の架橋密度は、照射する放射線の線量に依存するため、その結果、ゲルの弾性率も放射線の線量に依存することになる。また、親水性高分子の架橋密度が高いほど、含水率が低くなる(ゲル中の親水性高分子の含有率が高くなる)。よって、ゲル中の親水性高分子の含有率も、照射する放射線の線量に依存するということができる。
ここで、牛由来のゼラチンと、豚由来のゼラチンについて、ガンマ線の線量と、架橋したハイドロゲルの弾性率の依存性を図1に示す。ゼラチンの種類により、多少傾向は異なるが、0〜100kGyのガンマ線線量の間で、線量と弾性率とは、およそ直線関係にあることがわかる。言い換えると、所望のゲルの弾性率に応じて、放射線の線量を適宜設定することができる。
工程b)において放射線を照射する際の温度条件としては、環境温度が4〜50℃であることが望ましい。環境温度は、親水性高分子の性質に応じて適宜設定すればよく、例えばコラーゲンを用いる場合であれば4〜25℃程度の低温で放射線を照射することで効率よく放射線架橋することができる。また、ゼラチンを用いる場合であれば10〜30℃の温度環境下で放射線を照射することで効率よく放射線架橋することができる。
また、高分子溶液中の溶存酸素濃度は0〜40mg/Lであることが好ましい。放射線照射の際に溶存酸素が存在すると、ラジカルを捕捉する効果があり、例えば、溶存酸素濃度を高濃度とすることで架橋密度が低くなり、結果としてゲルの弾性率を低くすることができる。具体的な手法としては、例えば、酸素濃度が高い環境で放射線を照射する、高酸素濃度下に高分子溶液を放置する、高分子溶液に酸素をバブリングする、といった方法により、上記高分子溶液中の溶存酸素濃度を増大させることができる。
一方、高分子溶液中の溶存酸素濃度を低濃度とすることで、架橋密度が高くなり、結果としてゲルの弾性率を高くすることができる。具体的な手法としては、窒素環境下で放射線を照射する、上記高分子溶液中に窒素をバブリングするといった方法により、上記高分子溶液中の溶存酸素濃度を低減することができる。
本発明の製造方法の好ましい態様では、工程a)の前に、以下の工程i)及びii)をさらに行うことができる:
i)前記基材の表面を親水化処理する工程;
ii)前記親水化処理した前記基材をスペーサー化合物の溶液に浸漬させる工程。
i)前記基材の表面を親水化処理する工程;
ii)前記親水化処理した前記基材をスペーサー化合物の溶液に浸漬させる工程。
これは、上述のように、基材表面に存在する官能基が親水性高分子中の官能基と直接共有結合しないような場合に、スペーサー化合物を介して基材の表面と親水性高分子とを共有結合により連結させるための処理である。例えば、基材として延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を用いる場合に好適である。
工程i)は、基材表面を酸化し、ヒドロキシル基を形成することで、基材表面を親水化するものである。当該親水化処理は、当該技術分野において公知の表面処理手段を用いることができ、例えば、プラズマや低エネルギー電子線を基材に表面に照射することで行うことできる。
次いで、工程ii)は、工程i)により基材表に形成されたヒドロキシル基と、スペーサー化合物を反応させ、基材表面をスペーサー化合物で表面修飾するものである。用いられるスペーサー化合物の種類等は上述のとおりである。スペーサー化合物溶液の溶媒としては、それを溶解し得る溶媒であれば特に制限されるものではないが、例えば、スペーサー化合物としてヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を用いる場合には、テトラヒドロフラン(THF)のような非プロトン性有機溶媒を用いることができる。好ましくは、無水THFである。
なお、必要な場合には、工程ii)の後に、基材を任意の溶媒で洗浄し、余分なスペーサー化合物を除去することを行ってもよい。
工程ii)によりスペーサー化合物を表面修飾した基材を、上記工程a)により親水性高分子の溶液に浸漬させることで、スペーサー化合物と親水性高分子内のアミノ基等の官能基が反応することで、スペーサー化合物を介して基材の表面と親水性高分子とを共有結合で連結させることができる。上述のように、かかる共有結合を形成させることにより、その後のゲル化を経て、基材表面を表面ゲル層によって安定的に被覆することができる点で有益である。
図2(a)は、工程i)及びii)の表面処理を行い、その後、工程a)及びb)により表面ゲル層を形成する本発明の一態様を模式的に示したものである。すなわち、基材(ePTFE)をプラズマ処理によって酸化させ、表面にOH基を作る。スペーサー化合物(HMDI)溶液に浸漬することでアミノ基との結合部位(図中の★印)を作り、溶媒(THF)で洗浄後にタンパク質水溶液に浸漬させてタンパク質中のアミノ基の一部を基材に結合させる。この状態で放射線を照射して水溶液を架橋することで、放射線で架橋したゲルが基材表面に化学的に結合した表面ゲル層を有する医療用材料が得られる。図2(b)は、これらの工程のフロー図である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
1.放射線架橋ゲルで被覆したePTFE製人工血管の作製
<材料および方法>
ePTFE製人工血管(アドバンタPTFE人工血管VXT)を5分間真空プラズマ処理し、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)と無水THFの1:1溶液に1時間浸漬させ、THFで洗浄した。その後、豚皮由来ゼラチンを50℃で超純水に溶解させた10重量%の水溶液に複数回ディッピングした。次いで、コバルト60ガンマ線をそれぞれ10、15、20kGyの各線量で照射し、ゲル被覆人工血管を得た。
<材料および方法>
ePTFE製人工血管(アドバンタPTFE人工血管VXT)を5分間真空プラズマ処理し、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)と無水THFの1:1溶液に1時間浸漬させ、THFで洗浄した。その後、豚皮由来ゼラチンを50℃で超純水に溶解させた10重量%の水溶液に複数回ディッピングした。次いで、コバルト60ガンマ線をそれぞれ10、15、20kGyの各線量で照射し、ゲル被覆人工血管を得た。
<結果>
上記方法で得られた人工血管をPBSに50℃で2時間浸漬させ、未架橋成分を取り除いてから輪切りにして観察したところ、ePTFE製人工血管表面に50℃でも溶解しない放射線架橋ゲルが形成されていることが分かった。
上記方法で得られた人工血管をPBSに50℃で2時間浸漬させ、未架橋成分を取り除いてから輪切りにして観察したところ、ePTFE製人工血管表面に50℃でも溶解しない放射線架橋ゲルが形成されていることが分かった。
ガンマ線照射量をそれぞれ10、15、20kGyとしたゲル被覆人工血管(それぞれ「試料1」「試料2」、「試料3」)について、表面ゲル層の含水率と圧縮弾性率を測定した。結果を図3及び図4に示す。その結果、ガンマ線照射量を多くすると、含水率が低下し、一方、弾性率が増加することが分かった。すなわち、照射量を多くすると、架橋密度が増加するといえる。
また、同じく試料1〜3のゲル被覆人工血管について、ディッピングを2回あるいは4回行い、表面ゲル層の平均厚みを測定した。測定は、試料1〜3を50℃、PBSで洗浄後、食紅を添加したPBSに37℃で浸漬した後、断面を切断し、食紅で染色された表面ゲル層をデジタル顕微鏡で撮像した。ImageJにより、表面ゲル層の厚みを計測した。結果を図5に示す。図5の結果から、2回ディッピング行った場合は薄く、厚み45−70μmのゲルが得られ、4回ディッピング行った場合は厚く、厚み170−195μmのゲルが得られた。
これらの結果は、本発明によりePTFE製医療用材料の表面を放射線架橋タンパク質ゲルで安定に被覆できることを示している。即ち、医療用材料の表面をゲル層で安定に被覆できることを示している。
2.放射線架橋ゲルへの細胞浸潤
ゲル表面層に用いたゲルをラット腹直筋筋膜下に移植し、周囲組織からの細胞浸潤を評価した。
ゲル表面層に用いたゲルをラット腹直筋筋膜下に移植し、周囲組織からの細胞浸潤を評価した。
<材料および方法>
ゲル表面層に用いたゲルのみで評価を行うため、豚皮由来ゼラチンを50℃で超純水に溶解させた10重量パーセントの水溶液を厚みが約1mmになるようにディッシュに流し込み、室温で物理ゲル化させた。次いで、コバルト60ガンマ線をそれぞれ10、15、20kGyの各線量で照射し、PBSに50℃で2時間浸漬させた。得られた放射線架橋ゲルを直径6mmの円形に切り出し、ラット腹直筋筋膜下に移植して、7日目、10日目、14日目に組織切片を得て観察した(図6)。 なお、細胞の浸潤の密度は、抗α―SMA抗体を用いて免疫染色を行った組織切片画像を画像解析ソフトウェア(ImageJ)を用いてバイナリー化し、残存ゲル面積を分母、αSMA陽性面積を分子として算出した。
ゲル表面層に用いたゲルのみで評価を行うため、豚皮由来ゼラチンを50℃で超純水に溶解させた10重量パーセントの水溶液を厚みが約1mmになるようにディッシュに流し込み、室温で物理ゲル化させた。次いで、コバルト60ガンマ線をそれぞれ10、15、20kGyの各線量で照射し、PBSに50℃で2時間浸漬させた。得られた放射線架橋ゲルを直径6mmの円形に切り出し、ラット腹直筋筋膜下に移植して、7日目、10日目、14日目に組織切片を得て観察した(図6)。 なお、細胞の浸潤の密度は、抗α―SMA抗体を用いて免疫染色を行った組織切片画像を画像解析ソフトウェア(ImageJ)を用いてバイナリー化し、残存ゲル面積を分母、αSMA陽性面積を分子として算出した。
<結果>
図7中、点線にて示したゲルと周囲組織の境界から分かるように、周囲組織からゲルに細胞が浸潤し、次第に分解・吸収されていく様子が見られた。また、架橋密度によって細胞の浸潤速度が異なる様子も分かった。コバルト60ガンマ線を10kGyで照射して得られた放射線架橋ゲル試料1は、7日目ですでに全体に細胞が浸潤し、分解されているが、15kGyで照射して得られた放射線架橋ゲル試料2、または20kGyで照射して得られた放射線架橋ゲル試料3は、14日目においても細胞がゲル中心に到達しなかった(図7)。一方、周囲組織からゲル部に浸潤した線維芽細胞(α―SMA陽性細胞)を染色し、ゲル表層部への細胞の浸潤の密度を評価したところ試料1〜3の間に有意差はなく(P=0.6065)、いずれの架橋密度のゲル内にも線維芽細胞が浸潤することが確認された(図8)。
図7中、点線にて示したゲルと周囲組織の境界から分かるように、周囲組織からゲルに細胞が浸潤し、次第に分解・吸収されていく様子が見られた。また、架橋密度によって細胞の浸潤速度が異なる様子も分かった。コバルト60ガンマ線を10kGyで照射して得られた放射線架橋ゲル試料1は、7日目ですでに全体に細胞が浸潤し、分解されているが、15kGyで照射して得られた放射線架橋ゲル試料2、または20kGyで照射して得られた放射線架橋ゲル試料3は、14日目においても細胞がゲル中心に到達しなかった(図7)。一方、周囲組織からゲル部に浸潤した線維芽細胞(α―SMA陽性細胞)を染色し、ゲル表層部への細胞の浸潤の密度を評価したところ試料1〜3の間に有意差はなく(P=0.6065)、いずれの架橋密度のゲル内にも線維芽細胞が浸潤することが確認された(図8)。
これらの結果は、表面ゲル層には架橋密度によらず、周囲組織から豊富に線維芽細胞が浸潤すること、その速度・到達距離はゲルの架橋密度に依存することを示している。
3.ゲル被覆ePTFE製人工血管の移植
実施例1で作製したゲル被覆ePTFE製人工血管をラット腹直筋筋膜下に移植し、周囲組織からの細胞浸潤等を評価した。
実施例1で作製したゲル被覆ePTFE製人工血管をラット腹直筋筋膜下に移植し、周囲組織からの細胞浸潤等を評価した。
<材料および方法>
ePTFE製人工血管(アドバンタPTFE人工血管VXT)を5分間真空プラズマ処理し、HMDIと無水THFの1:1溶液に1時間浸漬させ、THFで洗浄した。その後、豚皮由来ゼラチンを50℃で超純水に溶解させた10重量パーセントの水溶液に複数回ディッピングし、室温で物理ゲル化させた。この時、ディッピングの回数によって、被膜が異なる2種の厚みを持つように調整した。次いで、コバルト60ガンマ線を15kGy(試料2)、20kGy(試料3)で照射した、厚みが2種、合計4種のゲル被覆人工血管を得た。これらのゲル被覆人工血管をPBSに50℃で2時間浸漬させてから厚み約1mmのリング状に切り出し、ラット腹直筋筋膜下に移植した(図9)。移植後14日目および28日目に組織切片を得て、α−SMA染色して観察した。
ePTFE製人工血管(アドバンタPTFE人工血管VXT)を5分間真空プラズマ処理し、HMDIと無水THFの1:1溶液に1時間浸漬させ、THFで洗浄した。その後、豚皮由来ゼラチンを50℃で超純水に溶解させた10重量パーセントの水溶液に複数回ディッピングし、室温で物理ゲル化させた。この時、ディッピングの回数によって、被膜が異なる2種の厚みを持つように調整した。次いで、コバルト60ガンマ線を15kGy(試料2)、20kGy(試料3)で照射した、厚みが2種、合計4種のゲル被覆人工血管を得た。これらのゲル被覆人工血管をPBSに50℃で2時間浸漬させてから厚み約1mmのリング状に切り出し、ラット腹直筋筋膜下に移植した(図9)。移植後14日目および28日目に組織切片を得て、α−SMA染色して観察した。
また、比較例としてゲル被覆を有しないePTFE製人工血管、及び、ゲル化していない既存のゼラチンコートの人工血管(Taperflo)を用いて同様の試験を行った。
<結果>
結果を図10に示す。本発明のゲル被覆人工血管は、15、20kGy照射の薄・厚ともに14日目にも残存しており、28日目では15kGy照射の薄いゲル層とした試料(図中の試料2薄)は完全に分解され、15kGy照射の厚いゲル層の試料(図中の試料2厚)は一部が残存していた。また、既存のePTFE人工血管や既存のゼラチンコート人工血管(Taperflo)では人工血管と周囲組織との間に境界が見られたが、本発明のゲル被覆人工血管ではゲル部にα−SMA陽性の繊維芽細胞が豊富に浸潤し、周囲組織と一体化している様子が見られた。
結果を図10に示す。本発明のゲル被覆人工血管は、15、20kGy照射の薄・厚ともに14日目にも残存しており、28日目では15kGy照射の薄いゲル層とした試料(図中の試料2薄)は完全に分解され、15kGy照射の厚いゲル層の試料(図中の試料2厚)は一部が残存していた。また、既存のePTFE人工血管や既存のゼラチンコート人工血管(Taperflo)では人工血管と周囲組織との間に境界が見られたが、本発明のゲル被覆人工血管ではゲル部にα−SMA陽性の繊維芽細胞が豊富に浸潤し、周囲組織と一体化している様子が見られた。
これらの結果は、被覆の厚みと架橋密度によって生体内に14日間にわたって残存し、28日以内に生分解される、器質化に好適な条件にゲル被覆部を調整することが可能であること、また、このような条件に調整したゲル被覆人工血管は、既存の人工血管とは異なり、被覆部に細胞が豊富に浸潤することによって、周囲組織と一体化することを示している。
Claims (22)
- 生体内に埋設して用いるための医療用材料であって、
基材と、
前記基材の表面を被覆する表面ゲル層と、を有し、
前記表面ゲル層に含まれるゲルが、親水性高分子の放射線架橋構造を有する、該医療用材料。 - 前記親水性高分子がタンパク質を含む、請求項1に記載の医療用材料。
- 前記親水性高分子が、コラーゲン、ゼラチン、ペプチド、又はそれらの組み合わせである、請求項1又は2に記載の医療用材料。
- 前記親水性高分子が、前記基材の表面と共有結合により連結している、請求項1〜3のいずれか1に記載の医療用材料。
- 前記表面ゲル層が、5kPa〜500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する、請求項1〜4のいずれか1に記載の医療用材料。
- 前記表面ゲル層の平均厚みが、10μm〜1000μmの範囲である、請求項1〜5のいずれか1に記載の医療用材料。
- 前記表面ゲル層の含水率が、20〜95重量%の範囲である、請求項1〜6のいずれか1に記載の医療用材料。
- 前記ゲルの生分解性速度が、生体内と同等の環境下において14日〜28日の範囲である、請求項1〜7のいずれか1に記載の医療用材料。
- 前記基材が、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、又はポリウレタンよりなる、請求項1〜8のいずれか1に記載の医療用材料。
- 前記親水性高分子が、スペーサー化合物を介して前記基材の表面と共有結合により連結している、請求項4に記載の医療用材料。
- 請求項1〜10のいずれか1に記載の医療用材料で構成される、人工血管。
- 生体内に埋設して用いるための、表面がゲルで被覆された医療用材料の製造方法であって、
前記医療用材料が、基材と、前記基材の表面を被覆する表面ゲル層と、を有し、
以下の工程:
a)前記基材を親水性高分子の溶液に浸漬させる工程;及び
b)前記親水性高分子溶液に浸漬した前記基材を当該溶液中に維持した状態で、又は当該溶液から取り出した状態で、前記基材に放射線を照射することで、前記親水性高分子をゲル化させる工程
を含む、該製造方法。 - 前記工程a)の前に、以下の工程を行うことをさらに含む、請求項12に記載の製造方法:
i)前記基材の表面を親水化処理する工程;
ii)前記親水化処理した前記基材をスペーサー化合物の溶液に浸漬させる工程。 - 前記親水化処理が、プラズマ又は電子線を用いる、請求項12又は13に記載の製造方法。
- 前記スペーサー化合物が、親水化処理された前記基材の表面官能基と共有結合を形成し得る官能基を有し、かつ、前記親水性高分子と共有結合を形成し得る官能基を有する、請求項12〜14のいずれか1に記載の製造方法。
- 前記スペーサー化合物が、ジイソシアネート構造を有する、請求項15に記載の製造方法。
- 前記親水性高分子がタンパク質を含む、請求項12〜16のいずれか1に記載の製造方法。
- 前記親水性高分子が、コラーゲン、ゼラチン、ペプチド、又はそれらの組み合わせである、請求項12〜17のいずれか1に記載の製造方法。
- 前記工程a)における溶液が、0.1〜70重量%の親水性高分子を含む水溶液である、請求項12〜18のいずれか1に記載の製造方法。
- 前記工程b)において、線量1〜1000kGyの放射線を照射することを含む、請求項12〜19のいずれか1に記載の製造方法。
- 前記基材が、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレン、又はポリウレタンよりなる、請求項12〜20のいずれか1に記載の製造方法。
- 前記医療用材料が人工血管を構成する材料である、請求項12〜21のいずれか1に記載の製造方法。
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JP2020073756A JP2021168828A (ja) | 2020-04-17 | 2020-04-17 | ゲル被覆医療用材料及びその製造方法 |
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2020
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