JP2021165110A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】氷上制動性能、雪上制動性能、及び耐久性をバランス良く改善したタイヤを提供する。【解決手段】本発明のタイヤは、トレッド表面に少なくとも1つの陸部(10)が区画形成され、陸部(10)に、延在方向に沿った長さが接地幅の5%以下である複数の短サイプ(12)が形成されたタイヤであって、短サイプ(12)は陸部(10)内で終端し、最短距離が最も小さい2つの短サイプ(12)について、2つの短サイプ(12)をそれぞれ内包する各最小外接円(14)の中心間距離Rが、最短距離rの1.00倍以上1.15倍以下であり、両接地端間のタイヤ幅方向距離をDとした場合に、複数の短サイプ(12)は、少なくとも一方の接地端からタイヤ赤道線(CL)側に向かって0.35×D以下のタイヤ幅方向領域内に形成されていることを特徴とする。【選択図】図1
Description
本発明は、氷上制動性能、雪上制動性能、及び耐偏摩耗性能をバランス良く改善した空気入りタイヤに関する。
一般に、スタッドレスタイヤの陸部表面には多数のサイプが形成されており、これによりスタッドレスタイヤは優れた氷上性能や雪上性能を実現するようにされている。しかしながら、陸部表面へのサイプの形成本数を増やすと、接地面積が減少するともに、サイプによって囲まれた陸部部分の剛性が低下するため、操縦安定性が低下するおそれがある。
例えば、特許文献1には、タイヤ赤道面付近に位置する中央周溝を挟んで位置する各陸部に、タイヤ赤道面側に位置し、かつ両端部が各陸部内で終端するサイプと、トレッド端側に位置し、かつ周溝または横溝に開口するサイプとを設けることによって氷上性能を低減させることなく耐偏摩耗性能を向上させた空気入りタイヤが開示されている。
特許文献1が開示する空気入りタイヤは、タイヤ赤道面付近における耐偏摩耗性能の向上を図っているが、タイヤ幅方向外側における耐偏摩耗性能については検討されておらず、改良の余地がある。
また、特許文献1には、サイプ間の距離については具体的に記載されておらず、サイプの延在方向に沿った長さが長い場合、及び、サイプ間距離が短い場合に、タイヤ赤道面付近に位置するサイプによって囲まれる陸部部分の剛性が不十分となるおそれがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、氷上制動性能、雪上制動性能、及び耐偏摩耗性能をバランス良く改善した空気入りタイヤを提供することにある。
本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド表面に少なくとも1つの陸部が区画形成され、上記陸部に、延在方向に沿った長さが接地幅の5%以下である複数の短サイプが形成された空気入りタイヤであって、上記短サイプは上記陸部内で終端し、最短距離が最も小さい2つの上記短サイプについて、2つの上記短サイプをそれぞれ内包する各最小外接円の中心間距離が、上記最短距離の1.00倍以上1.15倍以下であり、両接地端間のタイヤ幅方向距離をDとした場合に、前記複数の短サイプは、少なくとも一方の接地端からタイヤ赤道線側に向かって0.35×D以下のタイヤ幅方向領域内に形成されていることを特徴とする。
比較的長さの小さい短サイプを陸部に形成することを前提に、陸部内における短サイプの形成態様、及び短サイプ同士の位置関係について改良を加えている。本開示によれば、氷上制動性能、雪上制動性能、及び耐偏摩耗性能をバランス良く改善した空気入りタイヤを提供することができる。
以下、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態(以下に示す、基本形態及び付加的形態1〜5)を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施形態及び図面は、いずれも本発明を限定するものではない。また、上記実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記実施形態に含まれる各種形態は、当業者が自明の範囲内で任意に組み合わせることができる。
<基本形態>
以下に、本発明に係る空気入りタイヤについて、その基本形態を説明する。以下の説明において、「タイヤ径方向」とは、タイヤの回転軸と直交する方向を指し、「タイヤ径方向内側」とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側を指し、「タイヤ径方向外側」とは、タイヤ径方向において回転軸から離れる側を指す。また、「タイヤ周方向」とは、上記回転軸を中心軸とする周り方向を指す。さらに、「タイヤ幅方向」とは、上記回転軸と平行な方向を指し、「タイヤ幅方向内側」とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)に対する近位側を指し、「タイヤ幅方向外側」とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に対する遠位側を指す。なお、「タイヤ赤道面」とは、タイヤの回転軸に直交するとともに、タイヤのタイヤ幅の中心を通る平面である。
以下に、本発明に係る空気入りタイヤについて、その基本形態を説明する。以下の説明において、「タイヤ径方向」とは、タイヤの回転軸と直交する方向を指し、「タイヤ径方向内側」とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側を指し、「タイヤ径方向外側」とは、タイヤ径方向において回転軸から離れる側を指す。また、「タイヤ周方向」とは、上記回転軸を中心軸とする周り方向を指す。さらに、「タイヤ幅方向」とは、上記回転軸と平行な方向を指し、「タイヤ幅方向内側」とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)に対する近位側を指し、「タイヤ幅方向外側」とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に対する遠位側を指す。なお、「タイヤ赤道面」とは、タイヤの回転軸に直交するとともに、タイヤのタイヤ幅の中心を通る平面である。
図1は、基本形態に従う空気入りタイヤの陸部に形成されたサイプ同士の位置関係の一例を示す平面図である。なお、同図には、陸部を区画形成している溝は示されていない。基本形態に従う空気入りタイヤでは、図1に示すように、トレッド表面に少なくとも1つの陸部10が区画形成され、陸部10に、延在方向に沿った長さが接地幅の5%以下である複数(同図では6つ)の短サイプ12(12a、12b、12c、12d、12e、12f)が形成されている。
本明細書において、サイプの延在方向に沿った長さとは、サイプの幅方向中心点を連ねた線分の長さを意味する。実際にサイプの延在方向を定める場合には、サイプの一方の縁部の任意の点(第1の点)を選択し、第1の点からの距離が最短となる他方の縁部における点(第2の点)を定め、第1の点と第2の点との中点を第1の中点とする。このような操作を複数回行って第2の中点、第3の中点、第4の中点等を定め、第1の中点から第2の中点、第3の中点、及び第4の中点等を結んだ線分の方向をサイプの延在方向とする。この場合、サイプの延在方向を定める場合において、用いる中点の数は、サイプの形状に従って適宜決定するものとする。
また、本明細書において、接地幅は以下のように定義する。即ち、接地幅は、規定リムに組み込んで規定内圧を付与し、さらに規定荷重を加えた場合に生じる接地面のタイヤ幅方向最大長さとする。
ここで、規定リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、又はETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAで規定される「最高空気圧」、TRAで規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、又はETRTOで規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。さらに、規定荷重とは、JATMAで規定される「最大負荷能力」、TRAで規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、又はETRTOで規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
このような前提の下、本実施形態の空気入りタイヤでは、これらの短サイプ12は陸部10内で終端している。即ち、短サイプ12は陸部10を区画形成する他の溝と連通していない。
さらに、基本形態に従う空気入りタイヤでは、最短距離が最も小さい2つのサイプ(図1においては例えば、サイプ12a、12b)について、これら2つの短サイプ12a、12bをそれぞれ内包する各最小外接円14a、14bの中心間距離Rが、2つのサイプ12a、12bの最短距離rの1.00倍以上1.15倍以下である。ここで、2つのサイプの最短距離には、2つのサイプの端部同士間を測定する場合は勿論、一方のサイプの端部ではない部位と他方のサイプの端部との間を測定する場合や、両サイプの端部ではない部位同士間を測定する場合も含まれる。
加えて、基本形態に従う空気入りタイヤでは、図2に示すように、複数の陸部10a〜d及び15が、周方向主溝2a〜2d及び幅方向主溝3a〜3cによって区画形成されている。
そして、両接地端間のタイヤ幅方向距離をDとした場合に、短サイプ12は、少なくとも一方の接地端からタイヤ赤道線側に向かって0.35×D以下のタイヤ幅方向領域L11、及び/又はL14内に形成されている。なお、図2には図示していないが、タイヤ幅方向領域L10のタイヤ幅方向の長さがDである。
ここで、陸部10b及び10cは、それぞれ一部分が0.35×D以下の領域であるタイヤ幅方向領域L11又はL14にあり、他の部分はタイヤ幅方向領域L12及びL13にある。この様な場合において、短サイプ12は、陸部10b及び10cのうち、それぞれ0.35×D以下のタイヤ幅方向領域L11及びL14にある部分に配置されている。
なお、図2では、簡略化のために、短サイプ以外のサイプは図示されていない。すなわち、タイヤ幅方向領域L12及びL13にはサイプが図示されていないが、サイプがあってもよい。また、図2は、タイヤ幅方向領域L12及びL13に短サイプが配置されていないことを意味するものではない。
(作用等)
従来、スタッドレスタイヤには、優れた氷上性能や雪上性能を実現するために、陸部表面に多数のサイプが形成されてきたが、近年ではこれらの性能に加えて操縦安定性能の改善も要請されている。そのため、本実施形態の空気入りタイヤでは、図1に示すように、延在方向に沿った長さが接地幅の5%以下である短サイプ12を形成し、陸部剛性の低下を抑制することで、操縦安定性能を改善することとしている(作用効果1)。
従来、スタッドレスタイヤには、優れた氷上性能や雪上性能を実現するために、陸部表面に多数のサイプが形成されてきたが、近年ではこれらの性能に加えて操縦安定性能の改善も要請されている。そのため、本実施形態の空気入りタイヤでは、図1に示すように、延在方向に沿った長さが接地幅の5%以下である短サイプ12を形成し、陸部剛性の低下を抑制することで、操縦安定性能を改善することとしている(作用効果1)。
但し、短サイプ12の延在方向に沿った長さが過度に小さい場合には、スタッドレスタイヤにそもそも必要な性能である氷上性能や雪上性能に影響を及ぼす排水性が劣化するおそれがあるため、短サイプ12の延在方向に沿った長さは接地幅の3%以上であることが望ましい。
また、本実施形態の空気入りタイヤでは、短サイプ12がいずれも陸部10内に形成されており、陸部10を区画形成する他の溝と連通していないことから、陸部剛性の低下を抑制することで、操縦安定性能を改善することができる(作用効果2)。
さらに、本実施形態の空気入りタイヤでは、図1に示すように、最短距離が最も小さい2つの短サイプ12a、12bをそれぞれ内包する各最小外接円14a、14bの中心間距離Rを、2つのサイプ12a、12bの最短距離rの1.00倍以上としている。これにより、サイプ同士の距離を過度に小さくすることなく、サイプが局所的に密となる領域が生じることを避けて優れた剛性を確保するとともに、接地圧の平準化が図られることで、操縦安定性能を改善することができる(作用効果3)。
これに対し、中心間距離Rを最短距離rの1.15倍以下とすることで、サイプ同士の距離を過度に大きくすることなく、サイプが局所的に疎となる領域が生じることを避けて優れた排水性を確保するとともに、接地圧の平準化が図られることで、氷上制動性能、雪上制動性能、及びドライ操縦安定性能のいずれをも改善することができる(作用効果4)。
なお、中心間距離Rを最短距離rの1.02倍以上1.13倍以下とした場合には、上記作用3、4がより高いレベルで奏されるため望ましく、中心間距離Rを最短距離rの1.04倍以上1.11倍以下とした場合には、上記作用3、4が極めて高いレベルで奏されるためさらに望ましい。
加えて、本実施形態の空気入りタイヤでは、図2に示すように、両接地端間のタイヤ幅方向距離をDとした場合に、複数の短サイプが、少なくとも一方の接地端からタイヤ赤道線側に向かって0.35×D以下のタイヤ幅方向領域内に形成されている。
これにより、トレッド表面の接地端周辺領域に位置する短サイプによって囲まれる陸部部分の剛性の低下を最低限に抑えることができ、氷上制動性能、雪上制動性能、及び耐偏摩耗性能のいずれも改善することができる(作用効果5)。
なお、短サイプの形成位置を少なくとも一方の接地端からタイヤ赤道線側に向かって0.30×D以下のタイヤ幅方向位置とした場合には、上記作用効果5がより高いレベルで奏されるため望ましく、短サイプの形成位置を少なくとも一方の接地端からタイヤ赤道線側に向かって0.25×D以下のタイヤ幅方向位置とした場合には、上記作用効果5が極めて高いレベルで奏されるためさらに望ましい。
以上に示すように、基本形態の空気入りタイヤでは、比較的長さの小さい短サイプを陸部に形成することを前提に、陸部内における短サイプの形成態様、短サイプ同士の位置関係、及び接地端間における短サイプのタイヤ幅方向形成領域について改良を加えることで、上記作用効果1から作用効果5が相まって、氷上制動性能、雪上制動性能、及び耐偏摩耗性能をバランス良く改善することができる。
なお、以上に示す、基本形態に係る空気入りタイヤは、図示しないが、従来の空気入りタイヤと同様の子午断面形状を有していてよい。ここで、タイヤの子午断面形状とは、タイヤ赤道面CLと垂直な平面上に現れるタイヤの断面形状をいう。基本形態に係る空気入りタイヤは、タイヤ子午断面視で、タイヤ径方向内側から外側に向かって、ビード部、サイドウォール部、ショルダー部及びトレッド部を有していてよい。そして、上記空気入りタイヤは、例えば、タイヤ子午断面視で、トレッド部から両側のビード部まで延在して一対のビードコアの周りで巻回されたカーカス層と、カーカス層のタイヤ径方向外側に順次形成された、ベルト層及びベルト補強層とを備えていてよい。
また、以上に示す基本形態に係る空気入りタイヤは、通常の各製造工程、即ち、タイヤ材料の混合工程、タイヤ材料の加工工程、グリーンタイヤの成型工程、加硫工程及び加硫後の検査工程等を経て得ることができる。基本形態の空気入りタイヤを製造する場合には、加硫用金型の内壁に、例えば、図1に示すサイプに対応する凸部等を形成し、この金型を用いて加硫を行うことができる。
<付加的形態>
次に、本発明に係る空気入りタイヤの上記基本形態に対して、任意選択的に実的形態1〜5を説明する。
次に、本発明に係る空気入りタイヤの上記基本形態に対して、任意選択的に実的形態1〜5を説明する。
(付加的形態1)
基本形態においては、接地面内におけるサイプの延在方向に沿った長さの合計が、接地幅の3.3倍以上10.0倍以下であること(付加的形態1)が好ましい。なお、本形態におけるサイプとは、接地面内に含まれる全てのサイプを含む概念であり、基本形態において説明した短サイプが含まれることは勿論、短サイプ以外のサイプ(延在方向に沿った長さが接地幅の5%超であるサイプ)をも含む概念である。
基本形態においては、接地面内におけるサイプの延在方向に沿った長さの合計が、接地幅の3.3倍以上10.0倍以下であること(付加的形態1)が好ましい。なお、本形態におけるサイプとは、接地面内に含まれる全てのサイプを含む概念であり、基本形態において説明した短サイプが含まれることは勿論、短サイプ以外のサイプ(延在方向に沿った長さが接地幅の5%超であるサイプ)をも含む概念である。
接地幅に対する、接地面内におけるサイプの延在方向に沿った長さの合計(サイプ合計長さの接地幅比)を3.3倍以上とすることで、排水性能をさらに高めるとともに、陸部10内にサイプ形成により生じるエッジをさらに多く含むことができる。これにより、特に氷上制動性能と雪上制動性能とをさらに高めることができる。
これに対し、サイプ合計長さの接地幅比を10.0倍以下とすることで、陸部10の剛性を過度に低減することを抑制し、ひいては操縦安定性能をさらに高めることができる。
なお、サイプ合計長さの接地幅比を3.5倍以上7.0倍以下とした場合には、上記効果がそれぞれより高いレベルで奏されるためさらに好ましく、3.7倍以上5.0倍以下とした場合には、上記効果がそれぞれさらに一層高いレベルで奏されるため極めて好ましい。
(付加的形態2)
図3は、1つの陸部における短サイプのタイヤ幅方向形成位置を示す平面図である。図3に示す例では、周方向溝G11、G12と傾斜溝G13、G14とによって区画形成された陸部20に、上述した形状の短サイプ22が複数形成されているとともに、短サイプ以外の長サイプ23a及び23bが複数形成されている。ここで、長サイプとは、延在方向に沿った長さが接地幅の5%超であるサイプをいい、陸部を区画形成する溝に連通するか否かは問わない。また、長サイプ同士の位置関係については特に限定されない。図3に示すところでは、短サイプ22はタイヤ幅方向外側の領域に、長サイプ23a及び23bは陸部のそれ以外の領域に、それぞれ形成されている。
図3は、1つの陸部における短サイプのタイヤ幅方向形成位置を示す平面図である。図3に示す例では、周方向溝G11、G12と傾斜溝G13、G14とによって区画形成された陸部20に、上述した形状の短サイプ22が複数形成されているとともに、短サイプ以外の長サイプ23a及び23bが複数形成されている。ここで、長サイプとは、延在方向に沿った長さが接地幅の5%超であるサイプをいい、陸部を区画形成する溝に連通するか否かは問わない。また、長サイプ同士の位置関係については特に限定されない。図3に示すところでは、短サイプ22はタイヤ幅方向外側の領域に、長サイプ23a及び23bは陸部のそれ以外の領域に、それぞれ形成されている。
基本形態又は基本形態に付加的形態1を加えた形態においては、図3に示すように、陸部30における短サイプ23のタイヤ幅方向形成位置について、タイヤ幅方向内端X22を0%の位置とするとともに、タイヤ幅方向外端X21を100%の位置とした場合に、短サイプが、陸部における50%以上100%未満のタイヤ幅方向位置に形成されていること(付加的形態2)が好ましい。
短サイプ22のタイヤ幅方向形成位置を50%以上100%未満の位置とすることで、延在方向に沿った長さが比較的小さい短サイプを、他の部分よりも比較的に偏摩耗が生じやすいタイヤ幅方向外側付近に形成し、当該端部付近の剛性を高め、タイヤ幅方向外側付近の偏摩耗を抑制することができる。短サイプ22のタイヤ幅方向形成位置を80%以上の位置とした場合には、タイヤ幅方向外側付近における偏摩耗をさらに抑制することができるためより好ましく、85%以上の位置とした場合には、タイヤ幅方向外側付近における偏摩耗をさらに一層抑制することができるため極めて好ましい。
これに対し、短サイプ22のタイヤ幅方向形成位置を100%の位置に近づけ過ぎると、短サイプ22が陸部20を区画形成している溝G11と連通しないまでも、陸部20のタイヤ幅方向外側付近の剛性は低下するおそれが高い。このため、短サイプ22のタイヤ幅方向形成位置を95%以下の位置とすることがさらに好ましく、93%以下の位置とすることが極めて好ましい。このように短サイプ22を傾斜溝G11からある程度離間させることで、陸部20のタイヤ幅方向外側付近の剛性を高めて、ひいては偏摩耗を更に抑制することができる。
(付加的形態3)
図4は、1つの陸部における短サイプのタイヤ周方向形成位置を示す平面図である。図4に示す例では、回転方向が指定されており、周方向溝G21、G22と傾斜溝G23、G24とによって区画形成された陸部30に、上述した形状の短サイプ32が複数形成されているとともに、短サイプ以外の長サイプ33a及び33bが複数形成されている。ここで、長サイプとは、延在方向に沿った長さが接地幅の5%超であるサイプをいい、陸部を区画形成する溝に連通するか否かは問わない。また、長サイプ同士の位置関係については特に限定されない。図4に示すところでは、短サイプ32は陸部の蹴り出し側の領域に、長サイプ33a及び33bは陸部のそれ以外の領域に、それぞれ形成されている。
図4は、1つの陸部における短サイプのタイヤ周方向形成位置を示す平面図である。図4に示す例では、回転方向が指定されており、周方向溝G21、G22と傾斜溝G23、G24とによって区画形成された陸部30に、上述した形状の短サイプ32が複数形成されているとともに、短サイプ以外の長サイプ33a及び33bが複数形成されている。ここで、長サイプとは、延在方向に沿った長さが接地幅の5%超であるサイプをいい、陸部を区画形成する溝に連通するか否かは問わない。また、長サイプ同士の位置関係については特に限定されない。図4に示すところでは、短サイプ32は陸部の蹴り出し側の領域に、長サイプ33a及び33bは陸部のそれ以外の領域に、それぞれ形成されている。
基本形態又は基本形態に付加的形態1、2の少なくともいずれかを加えた形態においては、図4に示すように、陸部30内における短サイプ32のタイヤ周方向形成位置について、タイヤ周方向踏み込み側端部X31を0%の位置とするとともに、タイヤ周方向蹴り出し側端部X32を100%の位置とした場合に、短サイプ32が、陸部30における75%以上100%未満のタイヤ周方向位置に形成されていること(付加的形態3)が好ましい。
短サイプ32のタイヤ周方向形成位置を75%以上100%未満の位置とすることで、延在方向に沿った長さが比較的小さい短サイプを蹴り出し側端部付近に形成し、当該端部付近の剛性を高め、ひいてはヒールアンドトゥ摩耗を抑制することができる。短サイプ32のタイヤ周方向形成位置を80%以上の位置とした場合には、ヒールアンドトゥ摩耗をさらに抑制することができるためより好ましく、85%以上の位置とした場合には、ヒールアンドトゥ摩耗をさらに一層抑制することができるため極めて好ましい。
これに対し、短サイプ32のタイヤ周方向形成位置を100%の位置に近づけ過ぎると、短サイプ32が陸部30を区画形成している溝G23と連通しないまでも、陸部30の蹴り出し側端部近傍の剛性は低下するおそれが高い。このため、短サイプ32のタイヤ周方向形成位置を95%以下の位置とすることがさらに好ましく、93%以下の位置とすることが極めて好ましい。このように短サイプ32を傾斜溝G23からある程度離間させることで、陸部30の蹴り出し側端部近傍の剛性を高めて、ひいては操縦安定性能をさらに高めることができる。
(付加的形態4)
基本形態又は基本形態に付加的形態1〜3の少なくともいずれかを加えた形態においては、上記短サイプが形成された陸部に少なくとも1つの長サイプが形成されていること(付加的形態4)が、排水性をさらに高め、ひいては氷上制動性能及び雪上制動性能を高めることができる点で好ましい。
基本形態又は基本形態に付加的形態1〜3の少なくともいずれかを加えた形態においては、上記短サイプが形成された陸部に少なくとも1つの長サイプが形成されていること(付加的形態4)が、排水性をさらに高め、ひいては氷上制動性能及び雪上制動性能を高めることができる点で好ましい。
(付加的形態5)
基本形態又は基本形態に付加的形態1、2の少なくともいずれかを加えた形態においては、図1に示す短サイプ12及び図2に示す短サイプ22〜36が非環状サイプであること(付加的形態3)が好ましい。ここで、非環状サイプとは、短サイプが少なくとも2つの端部を有することを意味する。なお、端部は3つ以上あってもよい。
基本形態又は基本形態に付加的形態1、2の少なくともいずれかを加えた形態においては、図1に示す短サイプ12及び図2に示す短サイプ22〜36が非環状サイプであること(付加的形態3)が好ましい。ここで、非環状サイプとは、短サイプが少なくとも2つの端部を有することを意味する。なお、端部は3つ以上あってもよい。
短サイプ12を非環状サイプとすることで、踏み込み側から蹴り出し側に向かって、かつ、タイヤ幅方向内側から外側に向かって、水の流れを効率的に構築し、1つのサイプの中において水が滞留することを避けることができる。これにより、排水性がさらに高まり、ひいては、氷上制動性能、雪上制動性能をさらに高めることができる。
(使用可能な陸部例)
以上、基本形態及び付加的形態1〜5について詳述したが、以下に、本実施形態の空気入りタイヤに使用可能な陸部の例を説明する。
以上、基本形態及び付加的形態1〜5について詳述したが、以下に、本実施形態の空気入りタイヤに使用可能な陸部の例を説明する。
図5は、本実施形態の空気入りタイヤに適用可能な陸部の例を示す平面図である。なお、図示しないが、図5(a)から(h)では、いずれも、紙面の横方向がタイヤ幅方向であり、紙面の縦方向がタイヤ周方向である。また、いずれの図においても、紙面の下方が踏み込み側であって、上方が蹴り出し側である。
図5(a)に示す例では、陸部50に複数の短サイプ52が形成されており、長サイプは形成されていない。この例は、特に陸部剛性、ひいては操縦安定性能を高めた例である。
図5(b)に示す例では、陸部54に複数の短サイプ56と2種類の長サイプ58、60が形成されており、短サイプ56は蹴り出し側の領域に形成されている。この例は、特に蹴り出し側の剛性を高めて、ヒールアンドトゥ摩耗を抑制した例である。
図5(c)に示す例では、陸部62に複数の短サイプ64と2種類の長サイプ66、68が形成されており、短サイプ64は陸部62のタイヤ幅方向中央部に形成されている。この例は、特に陸部62のタイヤ幅方向中央部の剛性を高めて、サイプを起点とする破壊に対する耐久性を向上とした例である。
図5(d)に示す例では、陸部70に複数の短サイプ72と2種類の長サイプ74、76が形成されており、タイヤ周方向において短サイプ72と長サイプ74、76とが交互に形成されている。この例は、特にタイヤ周方向における接地圧を平準化して、操縦安定性能を高めた例である。
図5(e)に示す例では、陸部78に複数の短サイプ80が形成されており、短サイプ80は図5(a)の短サイプ52と全長は同じであるが形状が異なる。この例は、特にサイプの開口量(タイヤ幅方向における存在範囲とタイヤ周方向における存在範囲とにより決定される)を減少させて、サイプを起点とする破壊に対する耐久性を向上とした例である。
図5(f)に示す例では、陸部82に複数の短サイプ84が形成されており、短サイプ84は図5(a)の短サイプ52よりも延在方向に沿った長さが大きい。この例は、特に排水性、ひいては氷上制動性能、雪上制動性能を高めた例である。
図5(g)に示す例では、陸部86に複数の短サイプ88が形成されており、短サイプ88の形成数は図5(f)の短サイプ84の形成数の2倍である。この例は、特に排水性、ひいては氷上制動性能、雪上制動性能を極めて高いレベルで高めた例である。
図5(h)に示す例では、陸部90に複数の短サイプ92と2種類の長サイプ94、96が形成されており、短サイプ92は陸部62のタイヤ幅方向中央部に形成されているが、その形成数は図5(c)の形成数の半分である。この例は、特に剛性を高めて操縦安定性能を高めた例である。
タイヤサイズを205/55R16 91Hとし、発明例1〜6に係る空気入りタイヤ、及び従来例の空気入りタイヤを作製した。なお、これらの空気入りタイヤの細部の諸条件については、以下の表1に示すとおりである。但し、いずれの空気入りタイヤについても、トレッド表面に少なくとも1つの陸部が区画形成され、これら陸部に、延在方向に沿った長さが接地幅の5%以下である複数の短サイプが形成されていた。また、発明例1〜6に係る空気入りタイヤでは、短サイプは、両接地端間のタイヤ幅方向距離をDとした場合に、短サイプは、両方接地端からタイヤ赤道線側に向かって0.35×D以下のタイヤ幅方向領域内において、それぞれ陸部内で終端していた。
表1中、陸部内の短サイプ形成態様、中心間距離、最短距離、接地端間の短サイプ形成領域、短サイプ合計長さの接地幅比、短サイプのタイヤ周方向形成位置、短サイプが形成された陸部に少なくとも1つの長サイプが形成されているか否か(「長サイプの有無」)、及び短サイプが環状サイプ含むか否かについては、いずれも、本明細書中で説明した記載に準拠するものである。
このように作製した、発明例1〜6に係る空気入りタイヤ、及び従来例の空気入りタイヤを、16×6.5Jのアルミニウム製のリムに250kPaで組み付け、各試験タイヤをFR方式の試験車両(排気量:2000cc)に装着し、以下の要領に従い、氷上制動性能、雪上制動性能、ドライ操縦安定性能、耐偏摩耗性能についての評価を行った。
(氷上制動性能)
試験車両に、2名乗車相当の荷重条件で、氷路面からなるテストコースにおいて速度20km/hでの走行状態からABS制動を行い、その制動距離を測定し、測定値の逆数を算出した。そして、この算出結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。評価結果を表1に併記する。この評価は、指数が大きいほど、氷上制動性能が高いことを示す。
試験車両に、2名乗車相当の荷重条件で、氷路面からなるテストコースにおいて速度20km/hでの走行状態からABS制動を行い、その制動距離を測定し、測定値の逆数を算出した。そして、この算出結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。評価結果を表1に併記する。この評価は、指数が大きいほど、氷上制動性能が高いことを示す。
(雪上制動性能)
試験車両に、2名乗車相当の荷重条件で、雪路面からなるテストコースにおいて速度20km/hでの走行状態からABS制動を行い、その制動距離を測定し、測定値の逆数を算出した。そして、この算出結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。評価結果を表1に併記する。この評価は、指数が大きいほど、雪上制動性能が高いことを示す。
試験車両に、2名乗車相当の荷重条件で、雪路面からなるテストコースにおいて速度20km/hでの走行状態からABS制動を行い、その制動距離を測定し、測定値の逆数を算出した。そして、この算出結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。評価結果を表1に併記する。この評価は、指数が大きいほど、雪上制動性能が高いことを示す。
(操縦安定性能)
各試験タイヤを装着した車両で乾燥路面のテストコースを走行した際の、テストドライバーによる官能性評価を実施した。そして、この結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。評価結果を表1に併記する。この評価は、指数が大きいほど、操縦安定性能が高いことを示す。
各試験タイヤを装着した車両で乾燥路面のテストコースを走行した際の、テストドライバーによる官能性評価を実施した。そして、この結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。評価結果を表1に併記する。この評価は、指数が大きいほど、操縦安定性能が高いことを示す。
(耐偏摩耗性能1)
試験車両について、40000kmのパターン走行を行った後の陸部の摩耗量(タイヤ赤道面付近の摩耗量に対するタイヤ接地端付近の摩耗量:ショルダー摩耗量/センター摩耗量)を測定し、測定値の逆数を算出した。この算出結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。評価結果を表1に併記する。この評価は、指数が大きいほど、タイヤ接地端付近の摩耗量が少ないことを示す。
試験車両について、40000kmのパターン走行を行った後の陸部の摩耗量(タイヤ赤道面付近の摩耗量に対するタイヤ接地端付近の摩耗量:ショルダー摩耗量/センター摩耗量)を測定し、測定値の逆数を算出した。この算出結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。評価結果を表1に併記する。この評価は、指数が大きいほど、タイヤ接地端付近の摩耗量が少ないことを示す。
(耐偏摩耗性能2)
試験車両について、40000kmのパターン走行を行った後の陸部の摩耗量(ヒールアンドトウ摩耗)を測定し、測定値の逆数を算出した。この算出結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。評価結果を表1に併記する。この評価は、指数が大きいほど、ヒールアンドトウ摩耗が少ないことを示す。
試験車両について、40000kmのパターン走行を行った後の陸部の摩耗量(ヒールアンドトウ摩耗)を測定し、測定値の逆数を算出した。この算出結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。評価結果を表1に併記する。この評価は、指数が大きいほど、ヒールアンドトウ摩耗が少ないことを示す。
(評価結果)
空気入りタイヤの細部の諸条件及び試験結果を、以下の表1に示した。
空気入りタイヤの細部の諸条件及び試験結果を、以下の表1に示した。
表1によれば、本発明の技術的範囲に属する(即ち、比較的長さの小さい短サイプを陸部に形成することを前提に、陸部内における短サイプの形成領域、及び短サイプ同士の位置関係について改良を加えた)発明例1〜6の空気入りタイヤについては、いずれも、本発明の技術的範囲に属しない、従来例の空気入りタイヤに比べて、氷上制動性能、雪上制動性能、操縦安定性、及び耐偏摩耗性能がバランス良く改善されていることが判る。
10 陸部
12 短サイプ
14a、14b 最小外接円
R 最小外接円14a、14bの中心間距離
r 2つのサイプ12a、12bの最短距離
L11〜L13 タイヤ幅方向位置
12 短サイプ
14a、14b 最小外接円
R 最小外接円14a、14bの中心間距離
r 2つのサイプ12a、12bの最短距離
L11〜L13 タイヤ幅方向位置
Claims (6)
- トレッド表面に少なくとも1つの陸部が区画形成され、前記陸部に、延在方向に沿った長さが接地幅の5%以下である複数の短サイプが形成された空気入りタイヤであって、
前記短サイプは前記陸部内で終端し、 最短距離が最も小さい2つの前記短サイプについて、2つの前記短サイプをそれぞれ内包する各最小外接円の中心間距離が、前記最短距離の1.00倍以上1.15倍以下であり、
両接地端間のタイヤ幅方向距離をDとした場合に、前記複数の短サイプは、少なくとも一方の接地端からタイヤ赤道線側に向かって0.35×D以下のタイヤ幅方向領域内に形成されていることを特徴とする、空気入りタイヤ。 - 接地面内におけるサイプの延在方向に沿った長さの合計が、接地幅の3.3倍以上10.0倍以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記陸部内における前記短サイプのタイヤ幅方向形成位置について、タイヤ幅方向内端を0%の位置とするとともに、タイヤ幅方向外端を100%の位置とした場合に、
前記短サイプが、前記陸部における50%以上100%未満のタイヤ幅方向位置に形成されている、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。 - 回転方向が指定され、
前記陸部内における前記短サイプのタイヤ周方向形成位置について、タイヤ周方向踏み込み側端部を0%の位置とするとともに、タイヤ周方向蹴り出し側端部を100%の位置とした場合に、
前記短サイプが、前記陸部における75%以上100%未満のタイヤ周方向位置に形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 - 前記短サイプが形成された陸部に少なくとも1つの長サイプが形成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記短サイプが非環状サイプである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
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JP2020069877A JP2021165110A (ja) | 2020-04-08 | 2020-04-08 | 空気入りタイヤ |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023074028A1 (ja) * | 2021-10-28 | 2023-05-04 | 株式会社ブリヂストン | 空気入りタイヤ |
WO2023074032A1 (ja) * | 2021-10-28 | 2023-05-04 | 株式会社ブリヂストン | タイヤ |
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2020
- 2020-04-08 JP JP2020069877A patent/JP2021165110A/ja active Pending
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WO2023074028A1 (ja) * | 2021-10-28 | 2023-05-04 | 株式会社ブリヂストン | 空気入りタイヤ |
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