JP2021164996A - 塗膜付き基材および塗膜付き基材の製造方法 - Google Patents

塗膜付き基材および塗膜付き基材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた防錆効果を有する塗膜付き基材および塗膜付き基材の製造方法の提供。【解決手段】金属からなる基材、該基材上に形成された下塗り層、および上塗り層をこの順に有する塗膜付き基材であって、下塗り層は、亜鉛末、グラフェン、およびバインダー樹脂を含み、該下塗り層における亜鉛末に対するグラフェンの含有割合が質量比で1.0×10−4〜1.0であり、上塗り層はフッ素樹脂を含むことを特徴とする塗膜付き基材。【選択図】なし

Description

本発明は、塗膜付き基材および塗膜付き基材の製造方法に関する。
橋梁、高速道路、送電鉄塔といった屋外構造物は、過酷な環境に長期に渡って曝されるため、重防食用塗料の塗膜で保護されている。特許文献1には、金属基材表面に下地層および上塗り層を有する重防食塗装構造が開示されている。
特開2014−200997号公報
重防食用塗料の塗膜は、降雨にも長期に渡って曝されうる。この際、塗膜表面の劣化により水分が塗膜内部に浸透し、錆が発生する場合がある。錆の発生を防ぐために、基材上に形成する下塗り層に、亜鉛末を含ませる方法が採用されている。しかしながら、充分な防錆効果を付与できる下塗り層を形成しようとすると、下塗り層における亜鉛末の含有量を上げざるを得ず、下塗り層が厚膜する傾向にあった。また、下塗り層における亜鉛末の含有量を上げても、充分な防錆効果が得られない場合もあった。
本発明は、優れた防錆効果を有する塗膜付き基材および塗膜付き基材の製造方法の提供を目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の構成により課題を解決できるのを見出した。
[1]金属からなる基材、該基材上に形成された下塗り層、および上塗り層をこの順に有する塗膜付き基材であって、
上記下塗り層は、亜鉛末、グラフェン、およびバインダー樹脂を含み、該下塗り層における亜鉛末に対するグラフェンの含有割合が質量比で1.0×10−4〜1.0であり、
上記上塗り層はフッ素樹脂を含むことを特徴とする塗膜付き基材。
[2]上記グラフェンは層厚みが0.1〜100nmかつ比表面積が50〜1,500m/gである、[1]の塗膜付き基材。
[3]上記グラフェンは平均最長粒子径が0.001〜50μmである、[1]または[2]の塗膜付き基材。
[4]上記グラフェンは上記グラフェンの全質量に対して85質量%以上の炭素原子を含む、[1]〜[3]のいずれかの塗膜付き基材。
[5]上記バインダー樹脂が、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂である、[1]〜[4]のいずれかの塗膜付き基材。
[6]上記下塗り層は、上記下塗り層の全質量に対して、50〜99質量%の上記亜鉛末と、0.01〜10質量%の上記グラフェンと、0.5〜35質量%の上記バインダー樹脂とを含む、[1]〜[5]のいずれかの塗膜付き基材。
[7]上記上塗り層は、上記上塗り層の全質量に対して上記フッ素樹脂を10〜90質量%含む、[1]〜[6]のいずれかの塗膜付き基材。
[8]上記金属が鉄を含む、[1]〜[7]のいずれかの塗膜付き基材。
[9]上記フッ素樹脂は、フルオロオレフィンに基づく単位およびフッ素原子を有さない単位を含む、[1]〜[8]のいずれかの塗膜付き基材。
[10]上記フッ素樹脂は、架橋性基を有する含フッ素重合体が硬化剤を介して架橋している樹脂であり、
上記含フッ素重合体は、数平均分子量が2,000〜30,000であり、水酸基価および酸価の一方または両方が10〜150mgKOH/gである、[1]〜[9]のいずれかの塗膜付き基材。
[11]上記硬化剤は数平均分子量が100〜900である、[10]の塗膜付き基材。
[12]上記上塗り層はさらにグラフェンを含む、[1]〜[11]のいずれかの塗膜付き基材。
[13]上記下塗り層と上記上塗り層との間に中塗り層を有する、[1]〜[12]のいずれかの塗膜付き基材。
[14]基材上に、亜鉛末とグラフェンとバインダー樹脂とを含む下塗り塗料を塗布して下塗り層を形成し、次いで上記下塗り層上に、フッ素樹脂を含む上塗り塗料を塗布して上塗り層を形成する塗膜付き基材の製造方法であって、
上記下塗り塗料における、亜鉛末に対するグラフェンの含有割合が質量比で1.0×10−4〜1.0であることを特徴とする製造方法。
[15]前記下塗り塗料は、前記下塗り塗料の全質量に対して、40〜95質量%の前記亜鉛末と、0.005〜8質量%の前記グラフェンと、0.1〜30質量%の前記バインダー樹脂とを含む、[14]の製造方法。
本発明によれば、優れた防錆効果を有する塗膜付き基材および塗膜付き基材の製造方法を提供できる。
本発明における用語の意味は以下の通りである。
「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」および「メタクリレート」の総称であり、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および「メタクリル」の総称である。
「単位」とは、単量体が重合して直接形成された、上記単量体1分子に基づく原子団と、上記原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。なお、重合体が含む全単位に対する、それぞれの単位の含有量(モル%)は、重合体を核磁気共鳴スペクトル(NMR)法により分析して求められる。
「酸価」と「水酸基価」は、それぞれ、JIS K 0070−3(1992)の方法に準じて測定される値である。
「ガラス転移温度」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定される、重合体の中間点ガラス転移温度である。「ガラス転移温度」は「Tg」ともいう。
「最低造膜温度」は、含フッ素重合体を乾燥させたとき、亀裂のない均一な塗膜が形成される最低温度であり、造膜温度測定装置IMC−1535型(株式会社井元製作所製)を用いて測定される値である。「最低造膜温度」は、「MFT」ともいう。
「軟化温度」は、JIS K 7196(1991)の方法に準じて測定される値である。
「数平均分子量」および「重量平均分子量」は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される値である。「数平均分子量」は「Mn」ともいい、「重量平均分子量」は「Mw」ともいう。
塗膜の膜厚は、渦電流式膜厚計(商品名「EDY−5000」、サンコウ電子社製)を用いて測定される値である。塗膜が複数種の塗膜が積層されている積層構造を有する場合、各層の厚みは、エネルギー分散型X線分析装置を備えた走査型電子顕微鏡によって塗膜の断面を観察して得られる各層の厚みの比と、塗膜全体の膜厚とから算出される値である。
グラフェンの層厚みは、エネルギー分散型X線分析装置を備えた走査型電子顕微鏡によって測定される値の平均値である。
グラフェンの比表面積は、BET法により得られる値の平均値である。
グラフェンまたはグラファイトの平均最長粒子径は、エネルギー分散型X線分析装置を備えた走査型電子顕微鏡によって測定される、グラフェンまたはグラファイトの層厚さ方向に垂直な平面における最長長さの平均値である。
亜鉛末または粉体塗料の平均粒子径は、レーザー回折法を測定原理とした公知の粒度分布測定装置(Sympatec社製、商品名「Helos−Rodos」等)を用いて測定される粒度分布より体積平均を算出して求められる50%径の値である。
「全光線透過率」は、JIS K 7361−1:1997に準拠し、D光源にて測定される値である。
「紫外線透過率」は、全光線透過率のうち、波長10〜400nmにおける光線透過率の値である。
塗料の「固形分質量」とは、塗料が溶媒を含む場合に、塗料から溶媒を除去した質量である。なお、溶媒以外の組成物の固形分を構成する成分に関して、その性状が液体状であっても、固形分とみなす。塗料の固形分質量は、塗料を130℃で20分加熱した後に残存する質量として求められる。
本発明の塗膜付き基材は、優れた防錆効果を有する。この理由は必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。
本発明における塗膜付き基材は、金属からなる基材および塗膜を有し、塗膜の、基材と接する側に存在する下塗り層において、亜鉛末とグラフェンとを所定の質量比で有する。このため、亜鉛末とグラフェンとの接触面積が好適であり、下塗り層中に発生する電子がグラフェンによって下塗り層外に放出されるため、基材および亜鉛末のイオン化が抑制されると考えられ、本塗膜付き基材の防錆効果に優れる。したがって、亜鉛末の含有量を減らすこともでき、下塗り層の薄膜化も可能である。また、上塗り層に含まれるフッ素樹脂によって塗膜中に侵入する水等を抑制でき、さらに本塗膜付き基材の防錆効果に優れる。
本発明における塗膜(以下、「本塗膜」ともいう。)は、下塗り層と上塗り層とを有し、下塗り層が基材側に、上塗り層が塗膜表面側に配置されている。また、本発明の塗膜付き基材において、下塗り層は基材上に接して配置されており、上塗り層は、塗膜の最表面に配置されている。
本塗膜の膜厚は、本塗膜の耐候性の点から、50〜1,000μmが好ましく、100〜500μmがより好ましく、150〜300μmが特に好ましい。
本発明における下塗り層は、亜鉛末と、グラフェンと、バインダー樹脂とを含む。
本発明における亜鉛末は、金属亜鉛の粒子である。亜鉛末の形状は、球状であっても鱗片状であってもよく、球状が好ましい。亜鉛末の平均粒子径は、下塗り層において亜鉛末が密充填され耐水性に優れる点から、0.1〜30μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましく、1〜5μmが特に好ましい。
下塗り層における亜鉛末の含有量は、下塗り層の全質量に対して、50〜99質量%が好ましく、60〜95質量%が特に好ましい。本発明における塗膜付き基材であれば、下塗り層における亜鉛末の含有量が低くとも、良好な防錆効果を有する。
本発明におけるグラフェンは、炭素原子が結合した六角形格子構造を有するシート状物質である。グラフェンは、炭素原子1個分の層厚みを有する単層の状態であってもよく、多層の状態であってもよい。グラフェンは、炭素原子のほかに、酸素原子、水素原子等を含んでいてもよい。
グラフェンの層厚みは、0.1〜100nmであり、0.5〜80nmが好ましく、1.0〜40nmがより好ましく、3.0〜10nmが特に好ましい。グラフェンの層厚みが上記範囲にあることで、亜鉛末間にグラフェンが好適に配置される。
グラフェンの比表面積は、50〜1,500m/gであり、100〜1,000m/gが好ましく、120〜400m/gがさらに好ましく、150〜300m/gが特に好ましい。グラフェンの比表面積が上記範囲にあることで、亜鉛末とグラフェンとの接触面積が増大し、亜鉛末のイオン化がより抑制される。
グラフェンの平均最長粒子径は、グラフェンの均一分散性の点から、0.001〜50μmが好ましく、0.01〜30μmがより好ましく、0.1〜20μmが特に好ましい。
グラフェンの全質量に対する炭素原子の含有量は、耐候性の点から、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が特に好ましい。グラフェンの全質量に対する炭素原子の含有量の上限値は、通常100質量%である。
下塗り層におけるグラフェンの含有量は、下塗り層の全質量に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5.0質量%がより好ましく、0.1〜2.0質量%が特に好ましい。下塗り層がグラフェンを上記範囲で含むと、亜鉛末のイオン化がより抑制される。
本発明におけるバインダー樹脂は、下塗り層において、グラフェンおよびバインダー樹脂を保持する役割を果たす。バインダー樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂は、基材との密着性の点から、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂が好ましい。バインダー樹脂は、硬化剤を介して架橋していてもよい。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が挙げられる。
シリコーン樹脂としては、ジメチルポリシロキサン等のジアルキルポリシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等のポリアリールシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のポリアルキルアリールシロキサン等からなるシリコーン樹脂、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等の変性シリコーン樹脂等が挙げられる。
バインダー樹脂は、二種以上が用いられていてもよい。
下塗り層は、下塗り層の全質量に対して、バインダー樹脂を0.5〜35質量%含むのが好ましく、1〜30質量%含むのが特に好ましい。
下塗り層における、亜鉛末の質量に対するグラフェンの質量比(グラフェンの質量/亜鉛末の質量)は、1.0×10−4〜1.0である。亜鉛末の質量に対するグラフェンの質量比は、本塗膜付き基材の防錆効果に優れる点から、1.0〜10−3〜0.15が好ましく、0.01〜0.1が特に好ましい。
下塗り層の厚さは、1〜300μmが好ましく、10〜200μmがより好ましく、50〜100μmが特に好ましい。本塗膜付き基材であれば、下塗り層を薄くしても、防錆効果に優れる。
下塗り層は、亜鉛末とグラフェンとバインダー樹脂とを含んでいればよく、これら以外の成分を含んでいてもよい。該成分としては、添加剤が挙げられる。
添加剤としては、硬化剤、硬化触媒、フィラー(シリカ等の無機フィラー、樹脂ビーズ等の有機フィラー等)、着色剤(染料、有機顔料、無機顔料、金属またはマイカ等を用いた光輝顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、つや消し剤、レベリング剤、表面調整剤、脱ガス剤、充填剤、熱安定剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、防錆剤、シランカップリング剤、防汚剤、低汚染化処理剤、可塑剤、接着剤等が挙げられる。
下塗り層が添加剤を含む場合、本塗膜付き基材防錆効果の点から、添加剤の含有量は、下塗り層の全質量に対して10質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましく、0.1〜1質量%であるのが特に好ましい。
下塗り層は、本塗膜付き基材の防錆効果の点から、下塗り層の全質量に対して、亜鉛末の50〜99質量%、グラフェンの0.01〜10質量%、バインダー樹脂の0.5〜35質量%、および添加剤の0〜10質量%からなるのが好ましい。
下塗り層は、好ましくは亜鉛末とグラフェンとバインダー樹脂とを含む下塗り塗料から形成される。下塗り塗料における、亜鉛末、グラフェンおよびバインダー樹脂については、上述した下塗り層が含む、亜鉛末、グラフェンおよびバインダー樹脂と同様である。
下塗り塗料は、亜鉛末、グラフェンおよびバインダー樹脂以外の成分を含んでいてもよい。該成分としては、下塗り層が含んでいてもよい成分として上述した添加剤が挙げられる。
下塗り塗料は、バインダー樹脂のかわりに、架橋性基を有する樹脂または架橋性基を有するプレポリマーを含んでいてもよい。この場合、下塗り塗料は、硬化剤を含むのが好ましい。下塗り塗料が、架橋性基を有する樹脂または架橋性基を有するプレポリマーを含む場合、下塗り塗料を塗布して硬化させて塗膜を形成すれば、バインダー樹脂を含む下塗り層が得られる。
下塗り塗料における亜鉛末の含有量は、下塗り塗料の固形分質量に対して、50〜99質量%が好ましく、85〜95質量%が特に好ましい。
下塗り塗料におけるグラフェンの含有量は、下塗り塗料の固形分質量に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5.0質量%がより好ましく、0.1〜2.0質量%が特に好ましい。
下塗り塗料における樹脂の含有量は、下塗り塗料の固形分質量に対して、0.5〜35質量%が好ましく、1〜30質量%が特に好ましい。
下塗り塗料における、亜鉛末の質量に対するグラフェンの質量比(グラフェンの質量/亜鉛末の質量)は、防錆効果に優れる塗膜を形成できる点から、1.0×10−4〜1.0が好ましく、1.0〜10−3〜0.15がより好ましく、0.01〜0.1が特に好ましい。
下塗り塗料は、下塗り塗料が含む固形分が、溶媒(水、有機溶剤等)に溶解または分散している塗料(水系塗料、溶剤型塗料等)であってもよく、溶媒を実質的に含まない塗料(粉体塗料等)であってもよい。
下塗り塗料が溶媒を含む場合、下塗り塗料における溶媒の含有量は、下塗り塗料が含む全質量に対して、10〜90質量%が好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。
下塗り塗料は、下塗り塗料の全質量に対して、亜鉛末の40〜95質量%、グラフェンの0.005〜8質量%、バインダー樹脂の0.1〜30質量%、添加剤の0〜10質量%、溶媒の10〜60質量%からなるのが好ましい。
下塗り層は、基材上に下塗り塗料を塗布し、必要に応じて乾燥、加熱硬化して形成すればよい。
下塗り塗料が水系塗料または溶剤型塗料である場合、塗布方法としては、スプレーコート法、スキージコート法、フローコート法、バーコート法、スピンコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、ダイコート法、インクジェット法、カーテンコート法、はけやへらを用いる方法等が挙げられる。
下塗り塗料が粉体塗料である場合、塗装方法としては、静電塗装法、静電吹付法、静電浸漬法、噴霧法、流動浸漬法、吹付法、スプレー法、溶射法、プラズマ溶射法等が挙げられる。
下塗り塗料が溶媒を含む場合、塗布後に乾燥させて溶媒を除去するのが好ましい。乾燥温度は、通常、0〜50℃であり、乾燥時間は、通常、1分〜2週間である。
下塗り塗料を塗布した後に加熱硬化させる場合の加熱硬化温度は、通常50℃〜300℃であり、加熱硬化時間は、通常1分〜24時間である。
本発明における上塗り層は、フッ素樹脂を含む。本発明における上塗り層がフッ素樹脂を含むことで、塗膜の劣化および塗膜中への水分の侵入が抑制されるため、本塗膜付き基材の防錆効果に優れる。
上塗り層におけるフッ素樹脂の含有量は、本塗膜の耐候性の点から、10〜90質量%が好ましく、30〜70質量%が特に好ましい。
本発明におけるフッ素樹脂は、含フッ素重合体であるか、含フッ素重合体が硬化剤等を介して架橋してなる樹脂である。含フッ素重合体は、フルオロオレフィンに基づく単位(以下、「単位F」ともいう。)を含む含フッ素重合体である。
フルオロオレフィンは、水素原子の1個以上がフッ素原子で置換されたオレフィンである。フルオロオレフィンは、フッ素原子で置換されていない水素原子の1個以上が塩素原子で置換されていてもよい。
フルオロオレフィンの具体例としては、CF=CF、CF=CFCl、CF=CHF、CH=CF、CF=CFCF、CF=CHCF、CFCH=CHF、CFCF=CH、式CH=CXf1(CFn1f1(式中、Xf1およびYf1は、独立に水素原子またはフッ素原子であり、n1は2〜10の整数である。)で表される単量体が挙げられ、本塗膜の耐候性に優れる点から、CF=CF、CH=CF、CF=CFCl、CFCH=CHF、CFCF=CHが好ましく、CF=CFClが特に好ましい。フルオロオレフィンは、二種以上が併用されていてもよい。
含フッ素重合体は、単位Fのみを含んでいてもよく、単位Fおよびフルオロオレフィン以外のフッ素原子を有する単量体に基づく単位を含んでいてもよく、単位Fおよびフッ素原子を有さない単量体に基づく単位を含んでいてもよい。
単位Fのみを含む含フッ素重合体としては、フルオロオレフィンの単独重合体、フルオロオレフィンの二種以上の共重合体等が挙げられ、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド等が挙げられる。
単位Fおよびフルオロオレフィン以外のフッ素原子を有する単量体に基づく単位を含む含フッ素重合体としては、フルオロオレフィン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体等が挙げられ、具体的には、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体等が挙げられる。
含フッ素重合体は、耐候性、および、上塗り層と他の層との密着性の点から、単位Fおよびフッ素原子を有さない単量体に基づく単位を含む重合体であるのが好ましい。
単位Fと、フッ素原子を有さない単量体に基づく単位とを含む含フッ素重合体としては、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン−ビニルエーテル共重合体、クロロトリフルオロエチレン−ビニルエーテル−ビニルエステル共重合体、クロロトリフルオロエチレン−ビニルエステル−アリルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ビニルエステル共重合体、テトラフルオロエチレン−ビニルエステル−アリルエーテル共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。
単位Fの含有量は、本塗膜の耐候性の点から、含フッ素重合体が含む全単位に対して、20〜100モル%が好ましく、30〜70モル%がより好ましく、40〜60モル%が特に好ましい。
含フッ素重合体は、上塗り層と他の層との密着性の点から、フッ素原子を有さない単量体に基づく単位として、架橋性基を有する単位(以下、「単位1」ともいう。)を含むのが好ましい。単位1が有する架橋性基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、加水分解性シリル基が挙げられる。単位1が有する架橋性基としては、上塗り層の耐久性(耐薬品性、耐水性等)の点から、ヒドロキシ基またはカルボキシ基が好ましく、ヒドロキシ基が特に好ましい。
単位1は、架橋性基を有する単量体(以下、「単量体1」ともいう。)に基づく単位であってもよく、単位1を含む含フッ素重合体の架橋性基を、異なる架橋性基に変換させて得られる単位であってもよい。このような単位としては、ヒドロキシ基を有する単位を含む含フッ素重合体に、ポリカルボン酸やその酸無水物等を反応させて、ヒドロキシ基の一部または全部をカルボキシ基に変換させて得られる単位が挙げられる。
単量体1が有する架橋性基は、少なくとも一部が、後述する硬化剤と架橋していてもよく、また硬化剤と架橋せず残存していてもよい。単量体1が有する架橋性基が硬化剤と架橋していると、本塗膜の耐候性がより優れる。
ヒドロキシ基を有する単量体としては、ヒドロキシ基を有する、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、アリルエステル、(メタ)アクリル酸エステル、アリルアルコール等が挙げられる。ヒドロキシ基を有する単量体は、本塗膜の耐候性の点から、ビニルエーテルが好ましい。
ヒドロキシ基を有する単量体1の具体例としては、CH=CHO−CH−cycloC10−CHOH、CH=CHCHO−CH−cycloC10−CHOH、CH=CHO−CH−cycloC10−CH−(OCHCH15OH、CH=CHOCHCHOH、CH=CHCHOCHCHOH、CH=CHOCHCHCHCHOH、およびCH=CHCHOCHCHCHCHOHが挙げられ、フルオロオレフィンとの共重合性の点から、CH=CHCHOCHCHOHまたはCH=CHOCHCHCHCHOHが好ましい。
なお、「−cycloC10−」はシクロへキシレン基を表し、「−cycloC10−」の結合部位は、通常1,4−である。
カルボキシ基を有する単量体としては、不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸、上記ヒドロキシ基を有する単量体のヒドロキシ基にカルボン酸無水物を反応させて得られる単量体等が挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、CH=CHCOOH、CH(CH)=CHCOOH、CH=C(CH)COOH、HOOCCH=CHCOOH、CH=CH(CHn11COOHで表される単量体(ただし、n11は1〜10の整数を示す。)、CH=CHO(CHn12OC(O)CHCHCOOHで表される単量体(ただし、n12は1〜10の整数を示す。)が挙げられ、フルオロオレフィンとの共重合性の点から、CH=CH(CHn11COOHで表される単量体またはCH=CHO(CHn12OC(O)CHCHCOOHで表される単量体が好ましい。
単量体1は、二種以上が併用されていてもよい。
単位1の含有量は、含フッ素重合体が含む全単位に対して、0.5〜40モル%が好ましく、10〜35モル%がより好ましく、15〜30モル%が特に好ましい。上塗り層がさらにグラフェンを含む場合、単位1の含有量が上記範囲内であると、グラフェンの均一分散性に優れる。
含フッ素重合体は、さらに、フッ素原子を有さない単量体に基づく単位として、架橋性基を有さない単量体に基づく単位を含んでよい。架橋性基を有さない単量体に基づく単位としては、アルケン、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、アリルエステル、および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される1種以上の単量体(以下、「単量体2」ともいう。)に基づく単位(以下、「単位2」ともいう。)が挙げられる。単量体2としては、フルオロオレフィンとの共重合性および含フッ素重合体の耐候性の点から、ビニルエーテルおよびビニルエステルの一方または両方が好ましく、ビニルエーテルが特に好ましい。
単量体2の具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、エチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、酢酸ビニル、ピバル酸ビニルエステル、ネオノナン酸ビニルエステル(HEXION社製、商品名「ベオバ9」)、ネオデカン酸ビニルエステル(HEXION社製、商品名「ベオバ10」)、安息香酸ビニルエステル、tert−ブチル安息香酸ビニルエステル、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
単量体2は、二種以上が併用されていてもよい。
含フッ素重合体が単量体2を含む場合、単位2の含有量は、含フッ素重合体が含む全単位に対して、5〜60モル%が好ましく、10〜50モル%が特に好ましい。
含フッ素重合体は、含フッ素重合体が含む全単位に対して、単位Fと単位1と単位2とを、この順に20〜70モル%、0.5〜40モル%、5〜60モル%含むのが好ましい。
含フッ素重合体のTgは、0〜120℃が好ましく、10〜40℃が特に好ましい。含フッ素重合体のTgが上記範囲内にあると、含フッ素重合体の流動性が向上する。
含フッ素重合体のMFTは、0〜100℃が好ましく、10〜40℃が特に好ましい。
含フッ素重合体のMnは、1,000〜100,000であり、2,000〜30,000が好ましく、2,000〜10,000がより好ましく、2,500〜4,500がさらに好ましく、3,000〜4,000が特に好ましい。含フッ素重合体のMnが上記範囲内にあると、本塗膜の耐久性(耐水性、耐薬品性等)および含フッ素重合体の流動性が向上する。
含フッ素重合体が水酸基価を有する場合、含フッ素重合体の水酸基価は、10〜150mgKOH/gが好ましく、50〜130mgKOH/gがより好ましく、70〜120mgKOH/gが特に好ましい。
含フッ素重合体が酸価を有する場合、含フッ素重合体の酸価は、10〜150mgKOH/gが好ましく、50〜130mgKOH/gがより好ましく、70〜120mgKOH/gが特に好ましい。
含フッ素重合体は、酸価または水酸基価のどちらか一方のみを有してもよく、両方を有してもよい。含フッ素重合体は、水酸基価を有することが好ましい。
含フッ素重合体が酸価および水酸基価の両方を有する場合、酸価および水酸基価の合計が、10〜150mgKOH/gであるのが好ましい。
含フッ素重合体の酸価および水酸基価の一方または両方が上記範囲内にあると、含フッ素重合体が硬化剤と反応して架橋構造を形成する場合、上塗り層の架橋密度が高くなり、上塗り層の耐久性(耐水性、耐薬品性等)に優れる。
含フッ素重合体は、公知の方法で製造される。例えば、含フッ素重合体は、溶媒とラジカル重合開始剤の存在下、各単量体を共重合させて得られる。含フッ素重合体の製造方法としては、溶液重合、乳化重合が挙げられる。含フッ素重合体の製造時または製造後には、必要に応じて、重合安定剤、重合禁止剤、界面活性剤等が使用されていてもよい。
含フッ素重合体としては、市販品を用いてもよく、具体例としては、「ルミフロン」シリーズ(旭硝子社製)、「Fluon」シリーズ(旭硝子社製)、「Kynar」シリーズ(アルケマ社製)、「ゼッフル」シリーズ(ダイキン工業社製)、「Eterflon」シリーズ(エターナル社製)、「Zendura」シリーズ(Honeywell社製)が挙げられる。
上塗り層は、フッ素樹脂以外の成分を含んでもよい。フッ素樹脂以外の成分としては、後述する添加剤、フッ素樹脂以外の樹脂等が挙げられる。
フッ素樹脂以外の樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
上塗り層は、グラフェンを含んでもよい。グラフェンとしては、下塗り層が含むグラフェンと同様である。
上塗り層がグラフェンを含む場合、上塗り層に入射した紫外線が、上記グラフェンによって熱に変換され、かつ迅速に拡散されるため、塗膜における紫外線透過率が低減すると考えられる。その結果、塗膜の耐光性が向上し、耐候性に優れると考えられる。
また、上塗り層が添加剤として無機顔料(特に、酸化チタン顔料等の光触媒活性のある無機顔料)を含む場合、無機顔料の光触媒活性により生じる電子をグラフェンが塗膜外に放出するため、上塗り層の劣化がさらに抑制できると考えられる。
上塗り層がグラフェンを含む場合、上塗り層におけるグラフェンの含有量は、上塗り層の全質量に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましく、0.1〜2.0質量%が特に好ましい。
上塗り層がグラフェンを含み、かつ酸化チタンを含む場合、上塗り層の意匠性と耐光性とがバランスする点から、無機顔料の質量に対するグラフェンの質量比(グラフェンの質量/無機顔料の質量)は、0.001〜1.0が好ましく、0.01〜0.10が特に好ましい。
上塗り層が、フッ素樹脂以外の成分を含む場合、該成分の含有量は、上塗り層の全質量に対して、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、1〜30質量%が特に好ましい。
上塗り層は、好ましくはフッ素樹脂を含む上塗り塗料から形成される。フッ素樹脂については、上述した上塗り層が含むフッ素樹脂と同様である。
上塗り塗料は、上塗り塗料の固形分質量に対して、フッ素樹脂を10〜90質量%含むのが好ましく、30〜70質量%含むのが特に好ましい。
上塗り塗料は、フッ素樹脂以外の成分を含んでもよい。フッ素樹脂以外の成分としては、上塗り層が含んでよい成分として上述した添加剤やフッ素樹脂以外の樹脂が挙げられる。
上塗り塗料は、上述した添加剤の中でも、本塗膜の耐久性(耐水性、耐薬品性等)の点から、硬化剤を含むのが好ましい。
硬化剤は、架橋性基と反応し得る基を1分子中に2以上有する化合物である。硬化剤と、含フッ素重合体が含む架橋性基および非フッ素化合物中の架橋性基とが反応すると、含フッ素重合体および非フッ素化合物が架橋し、フッ素樹脂が形成される。硬化剤は、架橋性基と反応し得る基を、通常2〜30個有する。
硬化剤としては、イソシアネート基、エポキシ基、オキサゾリン基、β−ヒドロキシアルキルアミド基等を1分子中に2以上有する化合物が挙げられる。
含フッ素重合体がヒドロキシ基を有する場合、硬化剤としては、イソシアネート基を1分子中に2以上有する化合物であるポリイソシアネートが好ましい。
含フッ素重合体がカルボキシ基を有する場合、硬化剤としては、エポキシ基、オキサゾリン基、β−ヒドロキシアルキルアミド基等を1分子中に2以上有する化合物が好ましい。
ポリイソシアネートとは、イソシアネート基またはブロック化イソシアネート基を1分子中に2以上有する化合物である。
ポリイソシアネートとしては、ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体が好ましい。
ポリイソシアネート単量体としては、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートが好ましい。ポリイソシアネート誘導体としては、ポリイソシアネート単量体の多量体または変性体(アダクト体、アロファネート体、ビウレット体、イソシアヌレート体等)が好ましい。
脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、リジントリイソシアネート、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)2−イソシアナトグルタレートが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
ポリイソシアネートは、上述したポリイソシアネート単量体またはポリイソシアネート誘導体が有する2以上のイソシアネート基が、ブロック化剤によってブロックされている化合物であってもよい。
ブロック化剤は、活性水素を有する化合物であり、具体例としては、アルコール、フェノール、活性メチレン、アミン、イミン、酸アミド、ラクタム、オキシム、ピラゾール、イミダゾール、イミダゾリン、ピリミジン、グアニジンが挙げられる。
硬化剤のMnは、100〜900であるのが好ましく、200〜500であるのが特に好ましい。
Mnが2,000〜30,000である含フッ素重合体と、Mnが100〜900である硬化剤とを用いると、含フッ素重合体と硬化剤との相溶性に優れ、含フッ素重合体と硬化剤との架橋反応が好適に進行する。また、含フッ素重合体と硬化剤の低温における流動性にも優れるため、低温硬化性にも優れる。なお、本明細書において、低温硬化性とは、5℃以下での硬化を意味する。
硬化剤の25℃における粘度は、含フッ素重合体と硬化剤との相溶性の点から、100〜900mPa・sであるのが好ましく、200〜600mPa・sであるのが特に好ましい。
上塗り塗料が硬化剤を含む場合、硬化剤の含有量は、上塗り塗料が含む含フッ素重合体の全質量に対して、2〜50質量%が好ましく、5〜30質量%が特に好ましい。硬化剤は、二種以上を併用してもよい。
上塗り塗料は、グラフェンおよびバインダー樹脂が溶媒(水、有機溶剤等)に溶解または分散している塗料(水系塗料、溶剤型塗料等)であってもよく、溶媒を実質的に含まない塗料(粉体塗料等)であってもよい。上塗り塗料は、特に耐候性が求められる重防食用途において、緻密な塗膜を形成でき耐候性に優れる点からは、溶剤型塗料であるのが好ましい。
有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤が挙げられる。
上塗り塗料が溶媒を含む場合、上塗り塗料における溶媒の含有量は、上塗り塗料の全質量に対して、10〜90質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましく、20〜35質量%が特に好ましい。つまり、上塗り塗料における固形分の含有量は、上塗り塗料の全質量に対して、10〜90質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましく、65〜80質量%が特に好ましい。
近年、環境保護の観点から、塗料から塗膜を形成する際における、揮発性有機化合物(VOC)の発生量の低減が求められている。VOCの発生量を低減させる方法としては、溶媒を含まない粉体塗料を用いる方法、溶媒が水である水系塗料を用いる方法、溶媒が有機溶剤である溶剤型塗料のうち、溶媒の含有量が少なく塗料中の固形分質量が大きい高固形分塗料を用いる方法等が挙げられる。高固形分塗料において、塗料の全質量に対する溶媒の含有量は、通常20〜35質量%であり、好ましくは28〜32質量%である。
含フッ素重合体を含む高固形分塗料は、塗料中の溶媒の含有量が少ないと塗料粘度が高くなりやすく、塗料中の各成分の均一分散性が低下する場合がある。本発明における上塗り塗料を高固形分塗料として用いる場合、含フッ素重合体のMnは、塗料粘度を下げる点から低くすることが好ましい。一方で、含フッ素重合体のMnを低くして塗料粘度を下げようとすると、得られる塗膜の耐久性(耐衝撃性や耐薬品性等)に劣る場合がある。これに対し、含フッ素重合体の酸価および水酸基価の一方または両方を高く設定し、かつ本発明における上塗り塗料にさらに硬化剤を含ませれば、架橋密度が好適となり、含フッ素重合体のMnが低くとも、耐久性に優れる塗膜を形成できる。
本発明における上塗り塗料を高固形分塗料として用いる場合、塗料粘度と塗膜の耐久性とがバランスする点から、含フッ素重合体のMnが2,500〜4,500であり、酸価または水酸基価が50〜130mgKOH/gであることが好ましく、Mnが3,000〜4,000であり、酸価または水酸基価が70〜120mgKOH/gであることが特に好ましい。
本発明における上塗り塗料を高固形分塗料として用いる場合、上塗り塗料は、具体的には、上塗り塗料の全質量に対して固形分質量が70質量%である場合の塗料粘度が300〜3,000mPa・sであり、好ましくは1,000〜2,500mPa・sであり、特に好ましくは1,300〜2,000mPa・sである。塗料粘度が300mPa・s以上であれば、グラフェンの均一分散性に優れ、3,000mPa・s以下であれば、塗布が容易であるとともに均一な塗膜が形成でき、塗膜の耐久性に優れる。なお、上記塗料粘度は、25℃にて50rpmで塗料を撹拌した場合の粘度である。
なお、上記塗料粘度は、25℃にて50rpmで塗料を撹拌した場合の粘度である。
本発明における上塗り塗料を高固形分塗料として用いる場合、上塗り塗料に含まれるVOCを420g/L以下、より好ましくは400g/L以下にでき、環境にやさしい。
固形分質量が70質量%である場合の粘度が上記範囲内である上塗り塗料を高固形分塗料として用いれば、塗布が容易であるとともに、厚塗りが可能である。つまり、上塗り塗膜の膜厚を、1コートで50〜100μmの厚さにできる。したがって、例えば高耐候性が要求される重防食用の塗膜において、中塗り層を設けることなく、下塗り層と、厚塗りの上塗り層とからなる高耐候性および防錆効果を有する塗膜を形成でき、塗膜形成の工程削減も可能である。
また、上塗り塗料が上述した範囲のMnを有する硬化剤を含む場合、上記のように本塗膜を厚塗りで形成する場合でも、含フッ素重合体と硬化剤との相溶性に優れ架橋反応が好適に進行するため、上塗り層が均一に硬化する。したがって、上塗り膜を厚塗りで形成する場合でも上塗り層の硬化性および耐久性に優れる。さらには、上塗り層を厚塗りで形成し、低温硬化させる場合でも、低温硬化性および本塗膜の耐久性に優れる。
上塗り塗料の固形分は、上塗り塗料の固形分質量に対して、グラフェンの0.01〜10質量%、含フッ素重合体の30〜70質量%、グラフェンおよび含フッ素重合体以外の成分の1〜50質量%からなるのが好ましい。
上塗り塗料は、上塗り塗料の全質量に対して、グラフェンの0.001〜10質量%、含フッ素重合体の10〜70質量%、グラフェンおよび含フッ素重合体以外の成分の0.1〜50質量%、および溶媒の10〜40質量%からなるのが好ましい。
上塗り層は、下塗り層上、または下塗り層上にさらに形成された他の層上に上塗り塗料を塗布し、必要に応じて乾燥し、加熱硬化して形成すればよい。上塗り塗料の塗布方法および加熱硬化方法については、上述した下塗り塗料における方法と同様である。
本塗膜は、必要に応じて、下塗り層および上塗り層以外の層(以下、「中塗り層」ともいう。)を有していてもよい。中塗り層は、単層でもよく、複層でもよい。ただし、上述したように、上塗り層が高固形分塗料から形成される場合、上塗り層の厚膜化が可能であるため、必ずしも中塗り層を有する必要はない。
中塗り層は、任意の樹脂および樹脂以外の成分を含めばよい。中塗り層が含む樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。中塗り層は、樹脂の二種以上を含んでいてもよい。樹脂以外の成分としては、下塗り層が含んでいてもよい成分として上述した添加剤が挙げられる。
中塗り層は、グラフェンを含んでもよい。グラフェンとしては、下塗り層が含むグラフェンと同様である。
中塗り層がグラフェンを含む場合、中塗り層に入射した紫外線が、上記グラフェンによって熱に変換され、かつ迅速に拡散されるため、塗膜における紫外線透過率が低減すると考えられる。その結果、塗膜の耐光性が向上し、塗膜の耐候性にも優れると考えられる。
また、中塗り層が添加剤として無機顔料(特に、酸化チタン顔料等の光触媒活性のある無機顔料)を含む場合、無機顔料の光触媒活性により生じる電子をグラフェンが塗膜外に放出するため、中塗り層の劣化がさらに抑制できると考えられる。
中塗り層がグラフェンを含む場合、中塗り層におけるグラフェンの含有量は、中塗り層の全質量に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましく、0.1〜2.0質量%が特に好ましい。
中塗り層がグラフェンを含み、かつ無機顔料を含む場合、中塗り層の意匠性と耐光性とがバランスする点から、無機顔料の質量に対するグラフェンの質量比(グラフェンの質量/無機顔料の質量)は、0.001〜1.0が好ましく、0.01〜0.10が特に好ましい。
中塗り層は、任意の樹脂および樹脂以外の成分を含む中塗り塗料から形成されればよい。中塗り層の形成方法は、下塗り塗料にかえて中塗り塗料を用いる以外、下塗り層の形成方法として上述した方法と同様である。
本発明における基材は、金属からなる。
金属としては、鉄、アルミニウム、亜鉛、錫、チタン、鉛、銅、マグネシウム、マンガン、ケイ素、クロム、ジルコニウム、バナジウム、ニッケル、ビスマス等の金属を含む材料が挙げられる。金属としては、鉄またはアルミニウムが特に好適である。金属としては、二種以上の金属を含む合金でもよい。
金属としては、耐候性の点から、鉄合金(鉄鋼、ステンレス等)またはアルミニウム合金が好ましく、鉄鋼が特に好ましい。特に、金属が鉄を含む場合、下塗り層が基材よりも優先してイオン化されるため、本塗膜付き基材の防錆効果に優れる。
基材は、公知の表面処理がなされていてもよい。表面処理としては、金属皮膜処理、化成処理等が挙げられる。金属皮膜処理としては、電気めっき、溶融めっき、蒸着めっきが挙げられる。化成処理としては、クロメート処理、リン酸塩処理等が挙げられる。
本発明の塗膜付き基材の製造方法は、基材上に下塗り塗料を塗布して下塗り層を形成し、得られた下塗り層上に、上塗り塗料を塗布して上塗り層を形成して本塗膜を得る方法である。この場合、下塗り層を形成したのち、さらに下塗り層上に中塗り塗料を塗布して中塗り層を形成し、得られた中塗り層上に、上塗り塗料を塗布して上塗り層を形成してもよい。中塗り層は、二種以上を形成してもよい。
各塗料を塗布した後に乾燥や加熱硬化等が必要である場合、各層の塗布、乾燥、および加熱硬化の順番は制限されない。つまり、各層ごとに乾燥や加熱硬化を行ってもよく、全ての層を塗布してから同時に乾燥や加熱硬化を行ってもよい。
本発明の塗膜付き基材は、優れた防錆効果を有するため、橋梁、高速道路、送電鉄塔といった、厳しい環境に長期に渡って曝される屋外構造物の保護に使用される重防食用塗料として、好適に使用できる。
以下、例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし本発明はこれらの例に限定されない。例1〜13、21〜23および31〜78は実施例であり、例14〜16は比較例である。
<使用した成分の略称と詳細>
〔単量体〕
AV:酢酸ビニル
BMA:n−ブチルメタクリレート
CTFE:クロロトリフルオロエチレン
CHVE:シクロヘキシルビニルエーテル
CHMVE:シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル
CMEOVE:CH=CHOCH−cycloC10−CHO(CHCHO)H(n=15)
EVE:エチルビニルエーテル
HEAE:2−ヒドロキシエチルアリルエーテル
HBVE:4−ヒドロキシブチルビニルエーテル
MMA:メチルメタクリレート
TFE:テトラフルオロエチレン
VdF:フッ化ビニリデン
VBn:安息香酸ビニルエステル
VV:バーサチック酸ビニルエステル
〔グラフェンおよびグラファイト〕
グラフェン1:比表面積280m/g、平均最長粒子径10μm、炭素原子含有量93質量%以上、層厚み6nmであるグラフェン
グラフェン2:比表面積350m/g、平均最長粒子径10μm、炭素原子含有量93質量%以上、層厚み4nmであるグラフェン
グラファイト:比表面積70m/g、平均最長粒子径50μm、炭素原子含有量90質量%、層厚み110nmであるグラファイト
〔含フッ素重合体〕
含フッ素重合体1:重合体が含む全単位に対して、TFEに基づく単位を45モル%、HEAEに基づく単位を14モル%、VVに基づく単位を31モル%、VBnに基づく単位を6モル%、AVに基づく単位を4モル%含む含フッ素重合体(水酸基価55mgKOH/g、酸価0mgKOH/g、Mn11,400、Tg35℃)
含フッ素重合体2:重合体が含む全単位に対して、CTFEに基づく単位を50モル%、EVEに基づく単位を24モル%、CHVEに基づく単位を15モル%、HBVEに基づく単位を11モル%含む含フッ素重合体(水酸基価52mgKOH/g、酸価0mgKOH/g、Mn20,000、Tg40℃)
含フッ素重合体3:重合体が含む全単位に対して、CFCH=CHFに基づく単位を67モル%、VVに基づく単位を12モル%、HBVEに基づく単位を7モル%、EVEに基づく単位を14モル%含む含フッ素重合体(水酸基価40mgKOH/g、酸価0mgKOH/g、Mn8,000、Tg32℃)
含フッ素重合体4:重合体が含む全単位に対して、CTFEに基づく単位を50モル%、EVEに基づく単位を19モル%、CHVEに基づく単位を15モル%、HBVEに基づく単位を16モル%含む含フッ素重合体(水酸基価80mgKOH/g、酸価0mgKOH/g、Mn3,900、Tg35℃)
含フッ素重合体5:重合体が含む全単位に対して、TFEに基づく単位を21モル%、VdFに基づく単位を54モル%、MMAに基づく単位を16モル%、BMAに基づく単位を9モル%含む含フッ素重合体(水酸基価0mgKOH/g、酸価0mgKOH/g、Tg5℃、MFT15℃)
含フッ素重合体6:重合体が含む全単位に対して、CTFEに基づく単位を50モル%、EVEに基づく単位を15モル%、CHVEに基づく単位を15モル%、HBVEに基づく単位を17モル%、HBVEに基づく単位におけるヒドロキシ基を無水コハク酸で酸変性させて得られる単位(側鎖に−O(CHOC(O)CHCHCOOHを有する単位)を3モル%含む含フッ素重合体(水酸基価85mgKOH/g、酸価14mgKOH/g、Tg20℃、MFT30℃)
含フッ素重合体7:重合体が含む全単位に対して、CTFEに基づく単位を50モル%、EVEに基づく単位を24モル%、CHVEに基づく単位を16モル%、CHMVEに基づく単位を9モル%、CMEOVEに基づく単位を1モル%含む含フッ素重合体(水酸基価49mgKOH/g、Tg35℃、MFT55℃)
含フッ素重合体8:重合体が含む全単位に対して、CTFEに基づく単位を41モル%、AVに基づく単位を37モル%、VVに基づく単位を13モル%、HEAEに基づく単位を9モル%含む含フッ素重合体(水酸基価40mgKOH/g、酸価0mgKOH/g、Mn13,000、Tg40℃)
含フッ素重合体9:重合体が含む全単位に対して、CTFEに基づく単位を50モル%、CHVEに基づく単位を40モル%、HBVEに基づく単位を10モル%含む含フッ素重合体(水酸基価52mgKOH/g、酸価0mgKOH/g、Mn10,000、Tg52℃)
〔中塗り塗料〕
中塗り塗料1:エポキシ系塗料
中塗り塗料2:ウレタン系塗料
中塗り塗料3:エポキシ系塗料(グラフェン含有量1質量%)
中塗り塗料4:ウレタン系塗料(グラフェン含有量1質量%)
〔下塗り塗料〕
下塗り塗料1:塗料の全質量に対して、亜鉛末を70質量%、シリコーン樹脂を20質量%、グラフェン1を1質量%、有機溶剤を9質量%含む塗料
下塗り塗料2:塗料の全質量に対して、亜鉛末を70質量%、エポキシ樹脂を20質量%、グラフェン1を1質量%、有機溶剤を9質量%含む塗料
下塗り塗料3:塗料の全質量に対して、亜鉛末を60質量%、エポキシ樹脂を30質量%、グラフェン1を1質量%、有機溶剤を9質量%含む塗料
下塗り塗料4:塗料の全質量に対して、亜鉛末を70質量%、エポキシ樹脂を20質量%、グラフェン2を1質量%、有機溶剤を9質量%含む塗料
下塗り塗料5:塗料の全質量に対して、亜鉛末を70質量%、シリコーン樹脂を20質量%、有機溶剤を10質量%含む塗料
下塗り塗料6:塗料の全質量に対して、亜鉛末を70質量%、エポキシ樹脂を20質量%、有機溶剤を10質量%含む塗料
下塗り塗料7:塗料の全質量に対して、亜鉛末を70質量%、エポキシ樹脂を20質量%、グラファイトを1質量%、有機溶剤を9質量%含む塗料
〔添加剤〕
顔料1:酸化チタン顔料(デュポン社商品名 Ti−Pure R960、酸化チタン含有量:89質量%)
顔料2:酸化チタン顔料(堺化学社商品名 D−918、酸化チタン含有量:85質量%)
硬化剤1:ポリイソシアネート系硬化剤(イソシアネート基の含有量22質量%、25℃における粘度3,000mPa・s)
硬化剤2:ポリイソシアネート系硬化剤(イソシアネート基の含有量18質量%、25℃における粘度2,500mPa・s)
硬化剤3:ポリイソシアネート系硬化剤(イソシアネート基の含有量23質量%、25℃における粘度500mPa・s、数平均分子量400)
硬化触媒:ジブチルスズジラウレートのキシレン溶液(10,000倍希釈品)
<塗料の製造>
表1に記載の各成分を混合して、上塗り塗料1〜7および10〜12を得た。
また、表1に記載の各成分を、2軸押出機(サーモプリズム社製、16mm押出機)を用いて、120℃のバレル設定温度にて溶融混練し、得られた混練物を冷却し、粉砕機(FRITSCH社製、製品名:ロータースピードミルP14)を用いて粉砕し、150メッシュで分級して、平均粒子径が約40μmである粉体状の上塗り塗料8および9を得た。
上塗り塗料1〜4および10〜12は溶剤型塗料であり、上塗り塗料5〜7は水系塗料であり、フッ素系塗料8および9は粉体塗料である。また、上塗り塗料11および12は高固形分塗料(固形分71質量%)であり、VOC含有量は408g/Lである。
Figure 2021164996
〔例1〜16〕
<塗膜付き基材の製造>
鉄鋼基材上に、下塗り塗料2をアプリケーターを用いて塗布し、25℃で30分間乾燥したのち、80℃で5分間保持して下塗り層(膜厚75μm)を形成した。次いで、下塗り層上に、中塗り塗料1をアプリケーターを用いて塗布し、25℃で30分間乾燥したのち、80℃で5分間保持して中塗り層(膜厚30μm)を形成した。次いで、中塗り層上に、上塗り塗料1をアプリケーターを用いて塗布し、25℃で30分間乾燥したのち、80℃で5分間保持して上塗り層(膜厚25μm)を形成した。以上により、基材、下塗り層、中塗り層、上塗り層をこの順に有する塗膜付き基材1を得た。
使用する各塗料の種類を表2のように変更し、また形成する下塗り層の膜厚を表2のように変更する以外は同様にして、塗膜付き基材2〜11、14〜16を得た。
アルミニウム基材上に、下塗り塗料1をアプリケーターを用いて塗布し、25℃で30分間乾燥したのち、80℃で5分間保持して下塗り層(膜厚75μm)を形成した。次いで、下塗り層上に、中塗り塗料1をアプリケーターを用いて塗布し、25℃で30分間乾燥したのち、80℃で5分間保持して中塗り層(膜厚30μm)を形成した。次いで、中塗り層上に、上塗り塗料8を静電塗装し、200℃雰囲気中で20分間保持したのち25℃まで冷却して上塗り層(膜厚55μm)を形成した。以上により、基材、下塗り層、中塗り層、上塗り層をこの順に有する塗膜付き基材12を得た。
上塗り塗料8にかえて上塗り塗料9を用いる以外は同様にして、塗膜付き基材13を得た。
得られた各塗膜付き基材を、後述の評価に供した。結果を表2に示す。
<塗膜付き基材の評価1>
(塗膜の防錆性)
耐塩水噴霧性試験法(JIS K5600−7−1:1999)によって判定した。塗膜をクロスカットし、塗膜面に塩水噴霧して、48時間経過後の、クロスカット部分に発生する錆の状態を観察し、以下の基準で評価した。
S:クロスカット部分に異常なし。
A:クロスカット部分の20%未満にブリスターまたは錆が発生した。
B:クロスカット部分の20%以上40%未満にブリスターまたは錆が発生した。
C:クロスカット部分の40%以上60%未満にブリスターまたは錆が発生した。
D:クロスカット部分の60%以上にブリスターまたは錆が発生した。
Figure 2021164996
〔例21〕
上塗り塗料4にかえて上塗り塗料10を用いる以外は例8と同様にして、塗膜付き基材21を得た。
〔例22〕
中塗り層を形成せず、かつ上塗り塗料4にかえて上塗り塗料11を用いて上塗り層(1コートで膜厚75μm)を形成する以外は例8と同様にして、塗膜付き基材22を得た。
〔例23〕
鉄鋼基材上に、下塗り塗料1をアプリケーターを用いて塗布し、25℃で30分間乾燥したのち、80℃で5分間保持して下塗り層(膜厚30μm)を形成した。次いで、下塗り層上に、上塗り塗料12をアプリケーターを用いて塗布し、5℃で1週間乾燥および硬化させて上塗り層(1コートで膜厚75μm)を形成した。以上により、基材、下塗り層、および上塗り層をこの順に有する塗膜付き基材23を得た。
得られた各塗膜付き基材を、上述および後述の評価に供した。結果を表3に示す。
<塗膜付き基材の評価2>
(塗膜の耐候性)
JIS K 5600−7−7に準拠し、キセノンウェザーメーターを用いてキセノンアーク放射し、試験時間を50時間として促進耐候性試験を行った。ただし、塗膜に対して水のかわりに1質量%過酸化水素水を噴霧し、ぬれを与えた。試験前の塗膜の60度鏡面光沢値を100%として、試験後の塗膜の60度鏡面光沢値の保持率(光沢保持率:%)を求め、以下の基準で評価した。60度鏡面光沢値は、光沢計(BYK社商品名 micro−TRI−gross、入反射角60度)にて測定した。光沢保持率が高いほど、耐候性が良好である。
・試験条件
相対湿度:70%RH
ブラックパネル温度:50℃
キセノンアーク放射の放射照度:80W/m(300〜400nm)
・評価基準
S:光沢保持率が90%以上である。
A:光沢保持率が80%以上90%未満である。
B:光沢保持率が80%未満である。
Figure 2021164996
〔例31〜78〕
使用する塗料の種類を表4〜6のように変更する以外は例1と同様にして、塗膜付き基材31〜78を得た。得られた各塗膜付き基材を、上述の評価に供した。結果を表4〜6に示す。
Figure 2021164996
Figure 2021164996
Figure 2021164996

Claims (15)

  1. 金属からなる基材、該基材上に形成された下塗り層、および上塗り層をこの順に有する塗膜付き基材であって、
    前記下塗り層は、亜鉛末、グラフェン、およびバインダー樹脂を含み、該下塗り層における亜鉛末に対するグラフェンの含有割合が質量比で1.0×10−4〜1.0であり、
    前記上塗り層はフッ素樹脂を含むことを特徴とする塗膜付き基材。
  2. 前記グラフェンは層厚みが0.1〜100nmかつ比表面積が50〜1,500m/gである、請求項1に記載の塗膜付き基材。
  3. 前記グラフェンは平均最長粒子径が0.001〜50μmである、請求項1または2に記載の塗膜付き基材。
  4. 前記グラフェンは前記グラフェンの全質量に対して85質量%以上の炭素原子を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗膜付き基材。
  5. 前記バインダー樹脂が、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗膜付き基材。
  6. 前記下塗り層は、前記下塗り層の全質量に対して、50〜99質量%の前記亜鉛末と、0.01〜10質量%の前記グラフェンと、0.5〜35質量%の前記バインダー樹脂とを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗膜付き基材。
  7. 前記上塗り層は、前記上塗り層の全質量に対して前記フッ素樹脂を10〜90質量%含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗膜付き基材。
  8. 前記金属が鉄を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗膜付き基材。
  9. 前記フッ素樹脂は、フルオロオレフィンに基づく単位およびフッ素原子を有さない単位を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の塗膜付き基材。
  10. 前記フッ素樹脂は、架橋性基を有する含フッ素重合体が硬化剤を介して架橋している樹脂であり、
    前記含フッ素重合体は、数平均分子量が2,000〜30,000であり、水酸基価および酸価の一方または両方が10〜150mgKOH/gである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の塗膜付き基材。
  11. 前記硬化剤は数平均分子量が100〜900である、請求項10に記載の塗膜付き基材。
  12. 前記上塗り層はさらにグラフェンを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の塗膜付き基材。
  13. 前記下塗り層と前記上塗り層との間に中塗り層を有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の塗膜付き基材。
  14. 基材上に、亜鉛末とグラフェンとバインダー樹脂とを含む下塗り塗料を塗布して下塗り層を形成し、次いで前記下塗り層上に、フッ素樹脂を含む上塗り塗料を塗布して上塗り層を形成する塗膜付き基材の製造方法であって、
    前記下塗り塗料における、亜鉛末に対するグラフェンの含有割合が質量比で1.0×10−4〜1.0であることを特徴とする製造方法。
  15. 前記下塗り塗料は、前記下塗り塗料の全質量に対して、40〜95質量%の前記亜鉛末と、0.005〜8質量%の前記グラフェンと、0.1〜30質量%の前記バインダー樹脂とを含む、請求項14に記載の製造方法。
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