JP2021161425A - 撥水性フッ素含有半透明硬化膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い撥水性と耐久性とを兼ね備え、かつ、透明性を有する硬化膜を提供する。
【解決手段】フッ素含有重合性化合物及びフッ素非含有重合性化合物を含む硬化性組成物の硬化膜中に粒径200nm以下の無機酸化物微粒子が含まれることを特徴とする撥水性フッ素含有半透明硬化膜に係る
【選択図】なし

Description

本発明は、新規な撥水性フッ素含有半透明硬化膜に関する。
電子材料、医療材料、包装材料、建材、衣料等の各種の材料表面に撥水性を付与するために各種の撥水コート剤が用いられることがある。このような撥水コート剤としては、フッ素樹脂又はフッ素化合物を含む組成物が多数知られている。この中でも、形成される塗膜表面に凹凸を付与することによって、より高い撥水性を発揮させる技術が提案されている。
例えば、乾燥により固化し得る第1のフッ素系樹脂を含む樹脂溶液と、第2のフッ素系樹脂の粒子成分とを含む撥水性コーティング用組成物が知られている(特許文献1)。
また例えば、パーフルオロポリエーテル基及び硬化性部位を有する化合物と、硬化性樹脂及び/又は硬化性モノマーとを含む硬化性組成物を用い、さらに凹凸構造を有する金型を用いて形成された凹凸表面を有する硬化膜が提案されている(特許文献2)。
特開2016−216585号公報 特開2019−2014号公報
しかし、特許文献1の方法では、コーティング被膜の耐久性が不十分で、繰り返し表面が摩擦されると、微粒子間、微粒子と樹脂マトリックス間の結合力が乏しいために、微粒子の剥落により、経時的に表面の凹凸構造が失われて撥水性が低下するおそれがある。
しかも、特許文献1の方法では、白色のマイクロサイズPTFE樹脂微粒子を用いているために、基材フィルムに透明なPETフィルム等を用いても、不透明となり、利用できる意匠に制限がある。
また、特許文献2の方法では、金型を用いて凹凸を付与する必要があるため、そのような装置がなければ、高い撥水性を有する硬化膜を形成することができない。しかも、硬化膜自体による凹凸であるため、やはり経時的に凹凸が摩耗によって低減ないしは消失するおそれもある。他方、このような硬化膜において、所定の凹凸が形成されていない場合は、高い撥水性(特に水に対する接触角150度以上)を得ることができない。
このように、高い撥水性をより確実に持続させるための技術の開発が待たれているが、その開発には至っていないのが現状である。
従って、本発明の主な目的は、高い撥水性と耐久性とを兼ね備え、かつ、透明性を有する硬化膜を提供することにある。
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有する塗膜が提供できる組成物を採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の撥水性フッ素含有半透明硬化膜に係る。
1. フッ素含有重合性化合物及びフッ素非含有重合性化合物を含む硬化性組成物の硬化膜中に粒径200nm以下の無機酸化物微粒子が含まれることを特徴とする撥水性フッ素含有半透明硬化膜。
2. 表面粗さ測定機(ハンディーサーフ)による硬化膜表面測定から求めた算術平均粗さ(R)の値が0.05μm以上1.00μm以下であり、最大高さ粗さ(R)が0.50μm以上10.00μm以下であり、要素の平均長さ(Rsm)が50.0μm以上1000.0μm以下である、前記項1に記載の撥水性フッ素含有半透明硬化膜。
3. 白色干渉顕微鏡による硬化膜表面観察から求めた555.8μm×555.8μm角の正方形面内の算術平均表面高さ(S)の値が0.01μm以上2.00μm以下であり、二乗平均平方根高さ(S)の値が0.05μm以上3.00μm以下であり、最大断面高さ(S)の値が1.00μm以上30.00μm以下である、前記項1又は2に記載の撥水性フッ素含有半透明硬化膜。
4. XPS分析による硬化膜表面フッ素濃度が5〜50atomic%である、前記項1〜3のいずれかに記載の撥水性フッ素含有半透明硬化膜。
5. フッ素含有重合性化合物がパーフルオロポリエーテル(メタ)アクリレートである、前記項1〜4のいずれかに記載の撥水性フッ素含有半透明硬化膜。
6. フッ素非含有重合性化合物が、フッ素非含有(メタ)アクリレート化合物である、前記項1〜5のいずれかに記載の撥水性フッ素含有半透明硬化膜。
7. 無機酸化物微粒子表面が(メタ)アクリロイル基で修飾されている、前記項1〜6のいずれかに記載の撥水性フッ素含有半透明硬化膜。
8. 無機酸化物微粒子の含有量が、前記硬化性組成物のうち無機酸化物微粒子を除く成分の合計100重量部に対して1〜200重量部である、前記項1〜7のいずれかに記載の撥水性フッ素含有半透明硬化膜。
9. 分光測色計(CM−5)の透過測定モードでの透過率(L値)が60以上である、前記項1〜8のいずれかに記載の撥水性フッ素含有半透明硬化膜。
本発明によれば、本発明の主な目的は、高い撥水性と耐久性とを兼ね備えつつ、比較的高い透明性を有する硬化膜を提供することができる。特に、本発明では、特定の硬化性化合物と特定の無機酸化物微粒子とを併存させ、これを活性エネルギー線により硬化させることによって、所定の凹凸表面を有する硬化膜を提供することができる。これにより、高い撥水性とともに高い耐摩耗性を付与できる結果、高い撥水性を比較的長期にわたって持続させることが可能となる。また、無機酸化物微粒子の大きさを200nm以下と制限することで、比較的高い透明性を有する硬化膜を提供することができる。
このような特徴をもつ本発明の硬化膜は、表面に撥水性を付与すべき各種の材料又は製品に幅広く適用することができる。
実施例1で得られた硬化膜の断面を電界放出型走査電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。
1.撥水性フッ素含有半透明硬化膜
本発明の撥水性フッ素含有半透明硬化膜(本発明硬化膜)は、フッ素含有重合性化合物及びフッ素非含有重合性化合物を含む硬化性組成物の硬化膜中に粒径200nm以下の無機酸化物微粒子が含まれることを特徴とする。
なお、本発明硬化膜を構成する成分(フッ素含有重合性化合物等)の種類、組成等の詳細については、後記の「2.硬化膜の製造方法」で説明する。
本発明硬化膜は、フッ素含有重合性化合物及びフッ素非含有重合性化合物を含む硬化性組成物の硬化体から構成されるものである。そのような硬化体をマトリックスとして、無機酸化物微粒子がそのマトリックス中に分散した構造を有する。
本発明硬化膜において、無機酸化物微粒子の少なくとも一部は、硬化膜表面の凹凸形状の形成に寄与する。これによって、本発明硬化膜表面に特定の凹凸形状を付与できる結果、優れた撥水性と耐久性とともに良好な透明性を得ることができる。
このような撥水性、耐久性及び透明性の見地より、前記の凹凸形状は、規格ASME2009に準じて表面粗さ測定機(ハンディーサーフ、株式会社東京精密社製)による硬化膜表面測定から求めた算術平均粗さ(R)の値が0.05μm以上1.00μm以下(特に0.10μm以上0.80μm以下)であり、最大高さ粗さ(R)が0.50μm以上10.00μm以下(特に0.60μm以上8.00μm以下)であり、要素の平均長さ(Rsm)が50.0μm以上1000.0μm以下(特に100.0μm以上800.0μm以下)の範囲内であることが望ましい。
さらには、同様の見地より、前記の凹凸形状は、ISO規格25178に準じて白色干渉顕微鏡による硬化膜表面観察から求めた555.8μm×555.8μm角の正方形面内の算術平均表面高さ(S)の値が0.01μm以上2.00μm以下(特に0.03μm以上1.00μm以下)であり、二乗平均平方根高さ(S)の値が0.05μm以上3.00μm以下(特に0.06μm以上1.50μm以下)であり、最大断面高さ(S)の値が1.00μm以上30.00μm以下(特に2.00μm以上20.00μm以下)の範囲内であることが望ましい。
上記のような硬化膜表面を形成するとともに高い透明性を発揮させるという点において、粒径が200nm以下(特に150nm以下)の無機酸化物微粒子を使用すれば良い。このような条件を満たすものであれば、例えば平均一次粒子径が1〜100nm(特に2〜50nm)であるナノ粒子を用いることもできる。
無機酸化物微粒子の形状としては、表面に微細な凹凸を形成できるものであれば限定されず、例えば球状、鱗片状、針状、不定形状等のいずれも用いることができる。
本発明硬化膜における無機酸化物微粒子の含有量は、用いる無機酸化物微粒子の種類等にもよるが、撥水性及び耐久性の見地から、一般的には無機酸化物微粒子の含有量が、前記硬化性組成物のうち無機酸化物微粒子を除く成分の合計100重量部に対して1〜200重量部程度とすれば良く、好ましくは5〜150重量部とすれば良く、より好ましくは10〜100重量部とすることができる。従って、本発明硬化膜中における無機酸化物微粒子の含有率としては、例えば0.5〜70重量%程度(特に4〜60重量%程度)とすることもできる。
本発明硬化膜は、本発明の効果を妨げない範囲内で、他の添加剤が含まれていても良い。例えば、着色材(染料、顔料)、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、分散剤、界面活性剤、レベリング剤、表面調整剤、タレ止め剤、増粘剤、消泡剤、滑剤等の添加剤が含まれていても良い。なお、これらの添加剤のうち、無機酸化物微粒子に該当する場合は、前記の無機酸化物微粒子の含有量に含めるものとする。
本発明硬化膜は、上記のようにフッ素含有重合性化合物等が硬化してなるものであるが、そのフッ素含有量の指標として、XPS分析(X線光電分光法)による硬化膜表面フッ素濃度が5〜50atomic%(特に10〜40atomic%)であることが望ましい。このような範囲内において、撥水性を有するフッ素成分を少なくとも硬化膜表面に存在させることによって、優れた撥水性をより確実に得ることができる。
本発明硬化膜は、透明ないしは半透明であれば、その透過率は特に限定されない。透過率は、分光測色計(CM−5、コニカミノルタジャパン株式会社)の透過測定モードでの透過率(L値)を用いる。また、無色透明ないしは半透明、着色透明ないしは着色半透明等のいずれも包含される。高い透明性を必要とする場合は、例えば透過率が60以上(特に65以上)であることが好ましい。なお、前記透過率の上限値は、例えば100とすることができるが、これに限定されない。
本発明硬化膜の厚みは、例えば本発明硬化膜を付与する基材の材質、所望の撥水性、透過率等に応じて適宜設定でき、例えば0.1〜10μm程度の範囲内とすることができるが、これに限定されない。
2.撥水性フッ素含有半透明硬化膜の製造方法
本発明硬化膜は、例えば(1)(a)粒径が200nm以下の無機酸化物微粒子、(b)フッ素含有重合性化合物及び(c)フッ素非含有重合性化合物を含むフッ素含有組成物(本発明組成物)による塗膜を形成する工程(塗膜形成工程)、(2)前記塗膜を硬化させることにより硬化膜を得る工程(硬化工程)を含む方法によって好適に製造することができる。
以下においては、本発明組成物を構成する各成分等について具体的に説明する。なお、本発明では、特にことわりのない限り、アクリロイル基及びメタクリロイル基を「(メタ)アクリロイル基」と総称する。アクリレート及びメタクリレートを「(メタ)アクリレート」と総称する。
(1)塗膜形成工程
塗膜形成工程では、(a)粒径が200nm以下の無機酸化物微粒子、(b)フッ素含有重合性化合物及び(c)フッ素非含有重合性化合物を含むフッ素含有組成物(本発明組成物)による塗膜を形成する。
無機酸化物微粒子
無機酸化物微粒子は、粒径が200nm以下であるものを用いる。本発明組成物では、このような無機酸化物微粒子を含有させることによって、それを塗膜化した場合に塗膜表面に極めて微細な凹凸を形成することができる結果、高い撥水性に寄与することが可能となる。
無機酸化物の種類としては、上記のような作用効果が得られる限り、特に限定されず、例えば酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム等の無機酸化物が挙げられる。これらの無機酸化物は、1種又は2種以上で用いることができる。なお、上記の具体例のように、本発明において、無機酸化物は、金属酸化物も包含する。
これらの無機酸化物微粒子自体は、公知又は市販のものを使用することもできる。例えば、酸化ケイ素としては、製品名「AEROSIL 50」、「AEROSIL 150」、「AEROSIL 200」、「AEROSIL 300」、「AEROSIL 380」、「AEROSIL R972」、「AEROSIL R972V」、「AEROSIL R972CF」、「AEROSIL R974」、「AEROSIL RX200」、「AEROSIL RY200」、「AEROSIL R202」、「AEROSIL R805」、「AEROSIL R812」、「AEROSIL R812S」、(いずれも日本アエロジル株式会社製)、「YA010C」、「YA050C」、「YC100C」、(いずれも株式会社アドマッテクス)等が挙げられる。酸化チタンとしては、製品名「AEROXIDE TiO T805」(日本アエロジル株式会社製)等が例示できる。酸化アルミニウムとしては、製品名「AEROXIDE Alu C」(日本アエロジル株式会社製)等を挙げることができる。
特に、本発明では、無機酸化物微粒子の各粒子の表面に官能基を有するものが好ましい。例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、アリル基、ビニル基等の重合性官能基(硬化性官能基)を有することが好ましい。これによって、活性エネルギー線硬化によって形成される硬化膜中において、無機酸化物微粒子と樹脂マトリックスとの結合がより強化される結果、より耐久性(特に耐摩耗性)に優れた硬化膜を得ることができる。これらの官能基は、表面処理されていない無機酸化物微粒子を公知の方法に従って表面処理することにより付与することができる。例えば、微粒子表面を反応性官能基、例えば(メタ)アクリロイル基等の官能基を有するシランカップリング剤等を用いて表面修飾することができる。また、このような官能基が予め付与された無機酸化物微粒子として市販品を使用することもできる。例えば、製品名「AEROSIL R711」、「AEROSIL VP RM50L」(いずれも日本アエロジル株式会社製)等が挙げられる。
無機酸化物微粒子は、上記ように粒径が200nm以下のものを使用すれば良い。例えば平均一次粒子径が1〜100nm(特に2〜50nm)であるナノ粒子を用いることもできる。
本発明組成物では、本発明の効果を妨げない範囲内において、粒径200nmを超える粒子が微量に含まれていても良いが、好ましくは粒径200nmを超える粒子は分級等により取り除いておくことが望ましい。
なお、本発明において、平均一次粒子径の測定は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)で実施することができ、走査型電子顕微鏡の分解能が低い場合には透過型電子顕微鏡等の他の電子顕微鏡を併用して実施しても良い。具体的には、粒子形状が球状の場合はその直径、非球状の場合はその最長径を直径とみなし、走査型電子顕微鏡等による観察により任意に選んだ300個分の粒子の直径の平均値を平均一次粒子径とする。
本発明組成物中における無機酸化物微粒子の含有量(固形分比)は、限定的ではないが、本発明組成物のうち無機酸化物微粒子及び溶剤を除く成分の合計(以下「重合性混合物」ともいう。)100重量部に対して1〜200重量部(特に5〜150重量部)の範囲内において適宜設定することができる。従って、本発明組成物中における無機酸化物粒子の含有率としては、例えば1〜60重量%程度(特に4〜60重量%程度)とすることができる。
なお、本発明組成物のうち無機酸化物微粒子及び溶剤を除く成分の合計とは、通常は、フッ素含有重合性化合物、フッ素非含有重合性化合物及び光重合開始剤の合計(固形分)を指す。
本発明の好ましい実施形態の一例としては、上記のような粒径の範囲内において、平均一次粒子径が互いに異なる2種以上の無機酸化物微粒子を併用する方法がある。例えば、第1の微粒子と、当該第1の微粒子より大きな平均一次粒子径を有する第2の微粒子とを用いる形態がある。この場合、第1の微粒子の平均一次粒子径は、通常1nm以上20nm以下であることが好ましく、特に5nm以上15nm以下であることがより好ましい。第2の微粒子の平均一次粒子径は、通常21nm以上100nm以下であることが好ましく、特に25nm以上50nm以下であることがより好ましい。このような大きさの異なる2種類の微粒子を使用することにより、硬化膜を形成した際に撥水性に寄与するナノスケールの凹凸構造、耐久性に寄与するマイクロスケールの凹凸構造(表面凹凸)がより確実に形成される結果、撥水性及び耐久性をよりいっそう高めることができる。
この場合の含有量は、第1の微粒子の含有量は、重合性混合物100重量部に対して、通常1重量部以上50重量部以下であることが好ましく、特に10重量部以上40重量部以下であることがより好ましい。第2の微粒子の含有量は、重合性混合物100重量部に対して、通常1重量部以上100重量部以下であることが好ましく、特に10重量部以上50重量部以下であることがより好ましい。第1の微粒子及び第2の微粒子がこのような範囲であれば、撥水性及び耐久性がよりいっそう良好となる。
第1の微粒子及び第2の微粒子の材質は特に限定されず、同一の材質でも良いし、互いに異なっていても良い。
フッ素含有重合性化合物
フッ素含有重合性化合物は、本発明組成物により形成される硬化膜に撥水性を付与するための基本成分である。
フッ素含有重合性化合物は、フッ素を含む有機基とともに重合性(硬化性)を有する官能基(重合性二重結合)を有する化合物であれば良く、特に限定されない。なお、フッ素含有重合性化合物は、重合前のモノマーとして使用されている化合物のほか、一般にオリゴマー又はマクロモノマーと呼ばれる分子量が比較的大きい化合物も包含する。
上記のようなフッ素を含む有機基としては、例えばa)パーフルオロアルキル構造を有する有機基、b)パーフルオロポリエーテル構造を有する有機基、c)水素原子の一部がフッ素原子で置換されているアルキレン基等が挙げられる。この中でも、パーフルオロポリエーテル構造を有する有機基を好適に採用することができる。
パーフルオロポリエーテル構造は、繰り返し単位として−[C2nO]−(但し、nは、1以上の整数を示す。)の1個又は2個以上からなる有機基である。これらは、直鎖状又は分岐状のいずれであっても良い。従って、例えば、
−CF−,
−CF(CF)−,
−CFCF−,
−CFCFCF−,
−CF(CF)CF
−CF(CF)CFCF
−CF(CF)CF(CF)CF
等が挙げられるが、これに限定されない。
また、上記の繰り返し単位が2個以上から構成される場合は、各−[C2nO]−基は互いに同じであっても良いし、互いに異なっていても良い。
フッ素を含む有機基に結合している重合性官能基としては、限定的ではないが、特に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、アリル基、ビニル基等を好適に採用することができる。重合性官能基は、フッ素含有重合性化合物中に1個又は2個以上有していても良い。
また、重合性官能基は、フッ素を含む有機基の末端又は側鎖のいずれに結合していても良い。
さらに、重合性官能基は、フッ素を含む有機基に直接結合していても良いし、他の有機基(二価の有機基等)を介して結合していても良い。従って、例えばウレタン結合−COONH−,エステル結合−COO−等を介してフッ素を含む有機基に重合性官能基が結合されていても良い。従って、例えば、パーフルオロポリエーテル基にウレタン結合を介して(メタ)アクリロイル基が結合した構造をもつパーフルオロポリエーテルウレタン(メタ)アクリレートをフッ素含有重合性化合物として用いることもできる。
フッ素含有重合性化合物の分子量は、数平均分子量で100〜100,000程度の範囲内であれば良いが、これに限定されない。従って、例えば500〜20,000程度の化合物も採用することができる。
フッ素含有重合性化合物の具体例として、例えばパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、パーフルオロアルキルビニルエーテル、パーフロオロポリエーテル(メタ)アクリレート(特にパーフルオロポリエーテルウレタン(メタ)アクリレート)、1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロオクチルアクリレート等の少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、パーフロオロポリエーテル(メタ)アクリレート(特にパーフルオロポリエーテルウレタン(メタ)アクリレート)等を好適に用いることができる。これらは、反応性が高い(メタ)アクリロイル基を有するとともに、撥水撥油性、液滴除去性等に優れるパーフルオロポリエーテル基を有するので、より高い撥水性を有する硬化膜をより確実に形成することが可能となる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
本発明において、フッ素含有重合性化合物自体は、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、前記パーフルオロポリエーテルウレタン(メタ)アクリレートとして製品名「フルオロリンクAD1700」、「フルオロリンクMD700」(いずれもソルベイスペシャルティポリマーズジャパン社)」、前記1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロオクチルアクリレートとして製品名「ビスコート13F」(大阪有機化学工業社製)等を挙げることができる。
フッ素含有重合性化合物の含有量は、限定的ではないが、重合性混合物100重量部中において通常5〜95重量部であることが好ましく、特に30〜60重量部であることがより好ましい。フッ素含有重合性化合物が5重量部以上であれば硬化膜の撥水性がより高くなり、95重量部以下であれば重合開始剤等を適切に添加でき、より確実に硬化させやすくなる。
フッ素非含有重合性化合物
フッ素非含有重合性化合物は、フッ素を含まない重合性化合物であり、粘度が比較的高いパーフルオロポリエーテルアクリレート等を使用する場合に、本発明組成物の粘性をより確実に下げる効果等がある。
フッ素非含有重合性化合物の種類は、例えば(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、アリル基、ビニル基等の重合性官能基(硬化性官能基)を1個又は2個以上有し、かつ、フッ素を含まない化合物であれば特に限定されず、適用される基材への密着性、耐薬品性、可撓性、耐候性等の用途により要求される付加性能に応じて変更することができる。例えば1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)、アミン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
フッ素非含有重合性化合物の含有量は、限定的ではないが、重合性混合物100重量部中5〜90重量部となるように設定することが好ましい。
また、本発明組成物において、前記のアミン(メタ)アクリレートは、表面の硬化阻害を効果的に抑制する役割を果たす。この点からみて、アミン(メタ)アクリレートは、重合性混合物100重量部中に0.1〜5重量部のアミン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
その他の添加剤
本発明組成物において、特に活性エネルギー線として紫外線を利用する場合、光重合開始剤を用いることもできる。光重合開始剤は、紫外線照射により重合を行えるものであれば、特に限定されない。従って、例えば開裂型重合開始剤、水素引き抜き型重合開始剤等のいずれのタイプの光重合開始剤を使用することもできる。例えば、分子内開裂型としては、例えばアルキルフェノン系、オキシムエステル系等が挙げられる。水素引き抜き型としては、例えばベンゾフェノン/アミン系、チオキサントン/アミン系等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で使用することができる。これらの光重合開始剤自体は、公知又は市販のものを使用することもできる。例えば製品名「Omnirad127」(IGM Resins B.V.社製)等が挙げられる。
光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、通常はフッ素含有重合性化合物及びフッ素非含有重合性化合物の合計100重量部に対して0.1〜10重量部程度とすることができる。
本発明組成物では、必要に応じて粘度調整等の目的で溶剤を使用することができる。溶剤としては、特に限定されず、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、メチルシクロヘキサン,シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶剤、イソプロピルアルコール、変性エタノール等のアルコール系溶剤等の有機溶剤を挙げることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
溶剤を用いる場合の使用量としては、特に限定されないが、無機酸化物微粒子及び重合性混合物の合計量100重量部に対して10〜500重量部程度の範囲内において、塗工・塗装方法等に応じて、適切な粘度になるように適宜調整することができるが、これに限定されない。
本発明組成物には、本発明の効果を妨げない範囲内で、例えば、着色材(染料、顔料)、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、分散剤、界面活性剤、レベリング剤、表面調整剤、タレ止め剤、増粘剤、消泡剤、滑剤等の添加剤が含まれていても良い。なお、これらの添加剤のうち、無機酸化物微粒子にも該当するような場合は、前記の無機酸化物微粒子の含有量に含めるものとする。
本発明組成物は、これらの各成分を均一に混合することにより調製することができる。混合に際しては、公知又は市販のニーダー、ミキサー等を使用することもできる。
塗膜形成工程では、上記のような本発明組成物を用いて塗膜を形成する。通常は、基材上に本発明組成物の塗膜を形成すれば良い。
塗膜形成工程で用いる基材としては、撥水性を付与すべき材料又はその部位に硬化膜を形成すれば良い。ここで、撥水性は、水をはじく性能のほか、氷、氷水等をはじく性能も包含する。このため、水の付着を防止したり、あるいは着氷、着雪等を防止する場合にも本発明組成物を適用することができる。
基材の材質としては、特に限定されず、例えば合成樹脂、ゴム、金属、セラミックス、繊維質材料(紙、不織布、織物等)、これらの複合材料等のいずれでも良い。また、基材は、製品(最終製品)、半製品又はそれらの原材料のいずれであっても良い。前記製品として、より具体的には包装材料、日用品、建材、衣料品、化粧品、医薬品等に幅広く適用することができる。また、防水、着氷、着雪等の防止のために屋外で使用されるような製品(建材、自動車部品等)又はそのための材料等にも適用することができる。
塗膜の形成に際しては、例えば液状の本発明組成物を基材上に塗布することによって実施することができる。塗布する方法は、特に限定されず、例えばドクターブレード、バーコーター、刷毛、ローラー、スプレーガン等によって実施することができる。また、塗工に際し、本発明では、所定の厚みを得るために、上記の塗布及び乾燥を2回以上繰り返すこともできる。
塗膜の厚みは、例えば硬化膜の用途等に応じて適宜設定することができ、例えば硬化膜の厚みが0.1〜10μm程度となるように調整することができるが、これに限定されない。
塗膜の形成後、必要に応じて乾燥のために熱処理することが好ましい。熱処理の程度は、前工程の塗工量、組成物中に含まれる溶剤量によって変わるが、目視、臭気等で溶剤が揮発し終えたかどうか判断することができる。熱処理が不十分である場合は、後の硬化工程で塗膜の硬化不良を生じるおそれがある。熱処理する場合は、例えば50〜160℃程度で実施すれば良いが、これに限定されない。
(2)塗膜硬化工程
塗膜硬化工程では、前記で形成された塗膜を硬化させることにより硬化膜を得る。
硬化方法は、本発明組成物を重合させることで硬化できる限りは特に限定されず、例えば、活性エネルギー線による硬化、熱硬化等が挙げられる。本発明では、特に活性エネルギー線による硬化が望ましい。
硬化工程で用いる活性エネルギー線としては、限定的でなく、例えば電子線、紫外線、遠紫外線、可視光線、赤外線等を使用することができる。これらは、公知又は市販の活性エネルギー線照射装置が使用できる。
照射条件も、通常採用されている範囲内で設定することができる。例えば、活性エネルギー線として紫外線を利用する場合、紫外線照射条件としては、ピーク放射照度が10〜1000mW/cm程度、積算光量は100〜3000mJ/cm程度とすることができる。ただし、これは波長365nmの受光器を有する紫外線積算照度計を用いた場合である。
また例えば、活性エネルギー線として電子線を利用する場合、電子線照射条件としては、加速電圧が100〜300kV、線量は10〜100kGy程度とすることができる。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、実施例中の「%」は、特にことわりのない限り、「重量%」を示す。
実施例1
フルオロリンクAD1700(パーフルオロポリエーテルアクリレート、固形分70重量%、ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン社)50重量部、ビスコート#230(1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、大阪有機化学工業社)15重量部、ビスコート#150(テトラヒドロフルフリルアクリレート、大阪有機化学工業社)50重量部、Omnirad127(開裂型重合開始剤、IGM Resins B.V.社)4重量部、CN371NS(アミンアクリレート、SARTOMER社)1重量部、ベンゾフェノン(光重合開始剤、富士フィルム和光純薬社)1重量部を混合することによって重合性混合物を調製した。
得られた重合性混合物100重量部に対し、R711(メタクリル基表面修飾シリカ微粒子(平均一次粒子径:12nm)、AEROSIL社)10重量部と、VP RM50L(メタクリル基表面修飾シリカ微粒子(平均一次粒子径:40nm)、AEROSIL社)10重量部及び酢酸エチル(富士フィルム和光純薬社)100重量部加えて混合することにより混合液を得た。
得られた混合液を両面易接着PETフィルム(東洋紡社、コスモシャイン、100μm厚み)上にNo.8のバーコーターを用いて塗工した。塗工後、100℃で3分乾燥させて両面易接着PETフィルム上に塗膜を形成した。その後、高圧水銀UVランプを用いて、上記塗膜に紫外線を照射し、厚さ約1μmの硬化膜を作製した。
紫外線照射条件は、コンベアー上に塗工フィルムを置き、1回塗工フィルムがUVランプの下を通過するようにして行なった。紫外線照度は、ピーク放射照度200〜300mW/cmであり、照射した積算光量は、650〜800mJ/cmであった。このピーク放射照度及び積算光量は、アイ紫外線積算照度計(商品名:「UVPF−A1」(365nm受光器PD−365装備)、岩崎電気社製)を使用して計測した。
実施例2
実施例1と同様に調製して得られた重合性混合物100重量部に対し、R711(20重量部)、VP RM50L(20重量部)及び酢酸エチル(300重量部)を加えて混合することにより混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同様に塗工し、乾燥させ、硬化させて硬化膜を得た。
実施例3
実施例1と同様に調製して得られた重合性混合物100重量部に対し、R711(10重量部)及び酢酸エチル(100重量部)を加えて混合することにより混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同様に塗工し、乾燥させ、硬化させて硬化膜を得た。
実施例4
実施例1と同様に調製して得られた重合性混合物100重量部に対し、R711(20重量部)及び酢酸エチル(150重量部)を加えて混合することにより混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同様に塗工し、乾燥させ、硬化させて硬化膜を得た。
実施例5
実施例1と同様に調製して得られた重合性混合物100重量部に対し、R711(40重量部)及び酢酸エチル(300重量部)を加えて混合することにより混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同様に塗工し、乾燥させ、硬化させて硬化膜を得た。
実施例6
実施例1と同様に調製して得られた重合性混合物100重量部に対し、VP RM50L(20重量部)及び酢酸エチル(100重量部)を加えて混合することにより混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同様に塗工し、乾燥させ、硬化させて硬化膜を得た。
実施例7
実施例1と同様に調製して得られた重合性混合物100重量部に対し、VP RM50L(40重量部)及び酢酸エチル(166重量部)を加えて混合することにより混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同様に塗工し、乾燥させ、硬化させて硬化膜を得た。
実施例8
AD1700(10重量部)、ビスコート#230(24.2重量部)、ビスコート#150(80.8重量部)、Omnirad127(4重量部)、CN371NS(1重量部)、ベンゾフェノン(1重量部)を混合することにより重合性混合物を調製した。このとき、重合性混合物中のフッ素含有重合性化合物の割合は、5.9%となっている。
得られた重合性混合物100重量部に対し、R711(5重量部)、VP RM50L(5重量部)及び酢酸エチル(75重量部)を加えて混合することにより混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同様に塗工し、乾燥させ、硬化させて硬化膜を得た。
実施例9
実施例8と同様に調製して得られた重合性混合物100重量部に対し、R711(10重量部)、VP RM50L(10重量部)及び酢酸エチル(100重量部)を加えて混合することにより混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同様に塗工し、乾燥させ、硬化させて硬化膜を得た。
実施例10
実施例8と同様に調製して得られた重合性混合物100重量部に対し、R711(20重量部)、VP RM50L(20重量部)及び酢酸エチル(300重量部〜を加えて混合することにより混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同様に塗工し、乾燥させ、硬化させて硬化膜を得た。
実施例11
実施例8と同様に調製して得られた重合性混合物100重量部に対し、R711(10重量部)及び酢酸エチル(100重量部)を加えて混合することにより混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同様に塗工し、乾燥させ、硬化させて硬化膜を得た。
実施例12
実施例8と同様に調製して得られた重合性混合物100重量部に対し、R711(20重量部)及び酢酸エチル(150重量部)を加えて混合することにより混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同様に塗工し、乾燥させ、硬化させて硬化膜を得た。
実施例13
実施例8と同様に調製して得られた重合性混合物100重量部に対し、VP RM50L(20重量部)及び酢酸エチル(100重量部)を加えて混合することにより混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同様に塗工し、乾燥させ、硬化させて硬化膜を得た。
実施例14
実施例8と同様に調製して得られた重合性混合物100重量部に対し、VP RM50L(40重量部)及び酢酸エチル(166重量部)を加えて混合することにより混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同様に塗工し、乾燥させ、硬化させて硬化膜を得た。
実施例15
AD1700(115重量部)、Omnirad127(4重量部)、CN371NS(1重量部)及びベンゾフェノン(1重量部)を混合することによって重合性混合物を調製した。
得られた重合性混合物100重量部に対し、R711(10重量部)、VP RM50L(10重量部)及び酢酸エチル(125重量部)を加えて混合することにより混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同様に塗工し、乾燥させ、硬化させて硬化膜を得た。
実施例16
実施例15と同様に調製して得られた重合性混合物100重量部に対し、R711(20重量部)及び酢酸エチル(150重量部)を加えて混合することにより混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同様に塗工し、乾燥させ、硬化させて硬化膜を得た。
実施例17
フルオロリンクAD1700(50重量部)、ビスコート#230(15重量部)、ビスコート#150(50重量部)及びCN371NS(アミンアクリレート、SARTOMER社)(1重量部)を混合することによって重合性混合物を調製した。このとき、重合性混合物中のフッ素含有重合性化合物の割合は、34.7%となっている。実施例1の重合性混合物において重合開始剤を含まないものとして実施例17の重合性混合物を調製した。実施例17の重合性混合物は電子線硬化させるため、開始剤を必要としない。
得られた混合物100重量部に対し、R711(10重量部)、VP RM50L(10重量部)及び酢酸エチル(125重量部)を加えて混合することにより混合液を得た。
得られた混合液を両面易接着PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上にNo.8のバーコーターを用いて塗工した。塗工後、100℃で3分乾燥させて両面易接着PETフィルム上に塗膜を形成した。その後、電子線照射機(CB250、アイ・エレクトロンビーム社)を用いて、上記塗膜に電子線を照射し、硬化膜を作製した。電子線照射条件は、加速電圧200kV、吸収線量30kGyで、1回照射した。
Figure 2021161425
比較例1
アモルファスフッ素樹脂( 商品名「CYTOP」、CTX−809A、旭硝子社製)の9wt%溶液をCT−solve180を用いて希釈し、1.0wt%CYTOP溶液を得た。TFW3000F、TFW1000、TFW500(平均一次粒子径が、順に、3μm、10μm、25μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末、株式会社セイシン社)をそれぞれ1:1:1(重量比)の割合で、混合してPTFE混合粉末を得た。6.0wt%PTFEとなるように1.0wt%CYTOP溶液にPTFE混合粉末を加えて攪拌し、コーティング溶液を調製した。得られたコーティング溶液を両面易接着PETフィルムにNo.24のバーコーターを用いて塗工した後、100℃で1時間、続いて150℃で3時間加熱硬化させた。なお、実施例と同様にNo.8(液膜厚18μm)のバーコーターを用いた方が良いとも考えられたが、コーティング溶液中のPTFE混合粉末が粗く、No.8のバーコーターでは、PTFE粉末を均一に含むコーティング膜を形成できなかったため、No.24のバーコーターを用いた。
比較例2
比較例1と同様にして、コーティング溶液とPTFE混合粉末を準備した。コーティング溶液を両面易接着PETフィルムにNo.24のバーコーターを用いて塗工した後、0.04m(20cm×20cm)の塗工面上に、7gのPTFE混合粉末を一様にふりかけた。つまり、175g/mの積層量となるようにPTFE混合粉末をふりかけた。その後、100℃で1時間、続いて150℃で3時間加熱硬化させた。
試験例1
各試料の処理側表面(硬化膜)を試験面とし、接触角測定装置(「DMs−401」協和界面科学株式会社製)を用いて純水2.0μLの接触角を測定した。各試料の処理側表面(硬化膜)を試験面とし、4cm角の底面をもつ50gの重りの底部に紙ワイパー(日本製紙クレシア社製,キムワイプS−200 mini)を2重にしてとりつけ、その重りを試験面表面に静置し、約20cm/秒で試験面表面に平行にして片側方向に引っ張った。引っ張って摩擦させた回数ごとに接触角を測定した。なお、測定温度は、室温(例えば20℃)とすれば良い。
また、比較例2において、一回目の摩擦後、PTFE混合粉末の脱離が著しく、紙ワイパー面が二回目の摩擦時に適切な摩擦状態になっていないと判断し、二回目の摩擦時は紙ワイパーを取り換えて摩擦した。実施例は粒子の脱離がみられなかったが、実施例も比較例と条件をそろえるため、一回目の摩擦後、紙ワイパーを取り換えた。二回目以降の摩擦後は、粒子が脱離している様子もみられなかったことから、紙ワイパーは取り換えなかった。摩擦させた回数とそのときの接触角(単位:度)の結果を表2〜表3に示す。
Figure 2021161425
Figure 2021161425
表3の結果をみると、比較例1では高い撥水性は得られなかった。比較例2では、摩擦前は高い撥水性が得られたが、摩擦するとともにPTFE混合粉末が著しく脱離し、2回摩擦した時点で、大きく接触角が低下した。一方で表2に示した実施例では、3回摩擦した時点でほとんどの実施例で接触角140度以上と非常に高い撥水性を示し、また、10回摩擦した時点でも、全ての実施例で接触角135度以上と高い撥水性を示した。このことからも明らかなように、各実施例は、比較例2に比べて高い耐久性を発揮できることがわかる。以上のように、本発明によれば、高い耐久性かつ高い撥水性を有する表面を実現できることがわかる。
試験例2
規格ASME2009に準じて表面粗さ測定機(ハンディーサーフ 株式会社東京精密社製)を用いて、算術平均粗さ(R)、最大高さ粗さ(R)及び要素の平均長さ(Rsm)を測定した。測定は3回行い、その平均値を測定値とした。測定条件は、カットオフ値(λ):0.8mm、基準長さ(L):4mmとした。測定結果を表4に示す。
Figure 2021161425
試験例3
ISO規格25178に準じて白色干渉顕微鏡(VS1330、株式会社日立ハイテク)による硬化膜表面観察から、555.8μm×555.8μm角の正方形面内の算術平均表面高さ(S)、二乗平均平方根高さ(S)及び最大断面高さ(S)を測定した。測定条件は、カメラ:高画素、カメラスピード:標準、対物レンズ:10XDI、鏡筒:1X、ズームレンズ:1X、光源:530white、測定デバイス:ピエゾ、測定モード:Wave、視野サイズ:1024×1024、スキャンレンジ:スタート:10、ストップ:−85、有効ピクセル数:50%、平均回数:1、ランプ:オート、開口絞り:100%、面補正:一次、補間:完全補間、フィルタ:3×3ピクセル(境界処理:対象拡張してエッジ部を補間)、とした。測定は3回行い、その平均値を測定値とした。測定結果を表5に示す。
Figure 2021161425
試験例4
XPS分析(X線光電分光法)によって実施例12,16及び17の硬化膜表面フッ素濃度を測定した。測定条件は、装置:Quantera SXM (PHI社)、励起X線:monochromatic Al Kα1,2線 (1486.6eV)、X線径:200μm、光電子検出角度:45°(試料表面に対する検出器の傾き)、解析ソフト:MultiPak Version9.5.0.8(Ulvac−phi社)、スムージング:9−point smoothing、横軸補正:C1sメインピーク(CHx,C−C)を284.6eV、とした。その結果を表6に示す。
Figure 2021161425
試験例5
各試料について透過率の測定を行った。透過率は、分光測色計(CM−5、コニカミノルタジャパン株式会社)の透過測定モードで測定したときのL値とした。測定条件は、視野角:10°、光源:D65とし、ブランクを両面易接着PETフィルムとして、3回測定した平均値を測定値とした。測定結果を表7に示す。
Figure 2021161425
試験例6
実施例1で得られた硬化膜の断面を電界放出型走査型電子顕微鏡により観察した。その観察結果を図1に示す。
図1に示すように、硬化膜の内部に充填された無機酸化物微粒子により、マイクロスケールの表面凹凸が形成され、その上にさらにナノスケールの表面凹凸が形成されていることがわかる。

Claims (9)

  1. フッ素含有重合性化合物及びフッ素非含有重合性化合物を含む硬化性組成物の硬化膜中に粒径200nm以下の無機酸化物微粒子が含まれることを特徴とする撥水性フッ素含有半透明硬化膜。
  2. 表面粗さ測定機による硬化膜表面測定から求めた算術平均粗さ(R)の値が0.05μm以上1.00μm以下であり、最大高さ粗さ(R)が0.50μm以上10.00μm以下であり、要素の平均長さ(Rsm)が50.0μm以上1000.0μm以下である、請求項1に記載の撥水性フッ素含有半透明硬化膜。
  3. 白色干渉顕微鏡による硬化膜表面観察から求めた555.8μm×555.8μm角の正方形面内の算術平均表面高さ(S)の値が0.01μm以上2.00μm以下であり、二乗平均平方根高さ(S)の値が0.05μm以上3.00μm以下であり、最大断面高さ(S)の値が1.00μm以上30.00μm以下である、請求項1又は2に記載の撥水性フッ素含有半透明硬化膜。
  4. XPS分析による硬化膜表面フッ素濃度が5〜50atomic%である、請求項1〜3のいずれかに記載の撥水性フッ素含有半透明硬化膜。
  5. フッ素含有重合性化合物がパーフルオロポリエーテル(メタ)アクリレートである、請求項1〜4のいずれかに記載の撥水性フッ素含有半透明硬化膜。
  6. フッ素非含有重合性化合物が、フッ素非含有(メタ)アクリレート化合物である、請求項1〜5のいずれかに記載の撥水性フッ素含有半透明硬化膜。
  7. 無機酸化物微粒子表面が(メタ)アクリロイル基で修飾されている、請求項1〜6のいずれかに記載の撥水性フッ素含有半透明硬化膜。
  8. 無機酸化物微粒子の含有量が、前記硬化性組成物のうち無機酸化物微粒子を除く成分の合計100重量部に対して1〜200重量部である、請求項1〜7のいずれかに記載の撥水性フッ素含有半透明硬化膜。
  9. 分光測色計の透過測定モードでの透過率(L値)が60以上である、請求項1〜8のいずれかに記載の撥水性フッ素含有半透明硬化膜。
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