JP2021160527A - 重心高推定装置及び重心高推定方法 - Google Patents

重心高推定装置及び重心高推定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】サスペンション上の重心の高さを推定する精度を向上させる。【解決手段】サスペンション上のロールモーメントを複数の時刻それぞれで算出するモーメント算出部121と、幅方向の加速度である横加速度を複数の時刻それぞれで測定する横加速度測定部122と、サスペンション上の質量を測定する質量測定部123と、横加速度に対するロールモーメントの基準周波数以下の周波数領域における伝達関数のゲインを時間区分ごとに算出するゲイン算出部124と、基準周波数以下の周波数領域における、横加速度とロールモーメントとの関連度を時間区分ごとに算出する関連度算出部125と、関連度に基づいて伝達関数のゲインを重み付けする重み付け部と、伝達関数のゲインと、測定した質量とに基づいて、ロール中心からサスペンション上の重心までの高さを算出する重心高算出部128と、を備える。【選択図】図3

Description

本発明は、車両の重心高さを算出する重心高推定装置及び重心高推定方法に関する。
積荷を積載する車両では、積荷の状態によって車両全体の重心の位置が大きく変化する。このため、車両の走行の安定性を確保するには、積荷を積載した状態の車両の重心高さを推定することが重要となる。車両の重心高さの推定方法としては、平均ピリオドグラム法等を用いて、車両の幅方向の横加速度に対するサスペンション上のロールモーメントの伝達関数を求め、求めた伝達関数の低周波領域におけるゲインをサスペンション上の質量で除することにより、車両の重心高さを算出することが提案されている(例えば、特許文献1)。
特開2018−177070号公報
特許文献1に記載の発明では、伝達関数の低周波数領域におけるゲインを用いて重心高さを算出することにより、路面の凹凸に起因する高周波領域のノイズの影響を除去することができる。一方、特許文献1に記載の発明では、路面のうねりや横風外乱に起因する低周波領域のノイズの影響を除去できないという問題があった。
本発明は、サスペンション上の重心の高さを推定する精度を向上させることができる重心高推定装置及び重心高推定方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様の重心高推定装置は、車両に備えられた左右のサスペンションの支持力に基づいて、前記車両における当該サスペンション上のロールモーメントを複数の時刻それぞれで算出するモーメント算出部と、前記車両の幅方向の加速度である横加速度を複数の時刻それぞれで測定する横加速度測定部と、前記サスペンション上の質量を測定する質量測定部と、前記横加速度に対する前記ロールモーメントの基準周波数以下の周波数領域における伝達関数のゲインを時間区分ごとに算出するゲイン算出部と、前記基準周波数以下の周波数領域における、前記横加速度と前記ロールモーメントとの関連度を時間区分ごとに算出する関連度算出部と、前記関連度算出部が算出した前記関連度に基づいて当該関連度と同じ時間区分において前記ゲイン算出部が算出した前記伝達関数のゲインを重み付けする重み付け部と、前記重み付け部により重み付けされた前記伝達関数のゲインと、前記質量測定部が測定した前記質量とに基づいて、前記車両のロール中心から前記サスペンション上の重心までの高さを算出する重心高算出部と、を備える。
前記ゲイン算出部は、前記伝達関数のゲインの前記基準周波数以下の周波数領域における統計値である第1統計値を算出し、前記関連度算出部が算出した前記関連度に基づいて、当該関連度と同じ時間区分において前記ゲイン算出部が算出した前記伝達関数の前記ゲインの第1統計値を重み付けする重みを決定する重み決定部と、前記重み決定部が決定した重みを用いて複数の前記時間区分の前記ゲインの第1統計値を重み付けし、重み付け後の値の統計値である第2統計値を算出する統計算出部とをさらに備え、前記重心高算出部は、前記統計算出部が算出した前記ゲインの前記第2統計値を前記質量測定部が測定した前記質量で除することにより、前記高さを算出してもよい。
前記重み決定部は、複数の前記時間区分のそれぞれの前記ゲインの第1統計値のうち、前記関連度が所定値以下の前記ゲインの第1統計値の重みを0とし、前記関連度が所定値を超える前記ゲインの第1統計値の重みを0より大きな値としてもよい。前記関連度算出部は、コヒーレンス関数に基づいて、前記関連度を算出してもよい。
前記重み決定部は、前記関連度算出部が算出した前記関連度の時間区分ごとの最低値に基づいて、前記ゲイン算出部が算出した前記伝達関数の前記ゲインの第1統計値を重み付けする重みを決定してもよい。前記重み決定部は、前記関連度算出部が算出した前記関連度の時間区分ごとの平均値に基づいて、前記ゲイン算出部が算出した前記伝達関数の前記ゲインの第1統計値を重み付けする重みを決定してもよい。
本発明の第2の態様の重心高推定方法は、車両に備えられた左右のサスペンションの支持力に基づいて、前記車両における当該サスペンション上のロールモーメントを複数の時刻それぞれで算出するステップと、前記車両の幅方向の加速度である横加速度を複数の時刻それぞれで測定するステップと、前記サスペンション上の質量を測定するステップと、前記横加速度に対する前記ロールモーメントの基準周波数以下の周波数領域における伝達関数のゲインを時間区分ごとに算出するステップと、前記基準周波数以下の周波数領域における、前記横加速度と前記ロールモーメントとの関連度を時間区分ごとに算出するステップと、算出した前記関連度に基づいて当該関連度と同じ時間区分において算出した前記伝達関数のゲインを重み付けするステップと、重み付けされた前記伝達関数のゲインと、測定した前記質量とに基づいて、前記車両のロール中心から前記サスペンション上の重心までの高さを算出するステップと、を備える。
本発明によれば、サスペンション上の重心の高さを推定する精度を向上させるという効果を奏する。
実施形態に係る重心高推定装置が設けられた車両を後方から視た模式図である。 ロール中心まわりのモーメントについての説明図である。 車両の構成を示す図である。 関連度がコヒーレンスである場合における周波数伝達関数のゲインと、関連度との関係を示す図である。 重心高推定装置による地上からサスペンション上部分の重心までの高さの算出方法を示すフローチャートである。
[重心高推定装置の概要]
図1は、本発明の実施形態に係る重心高推定装置が設けられた車両1を後方から視た模式図である。車両1は、サスペンション下部分2と、サスペンション下部分2に取り付けられた左後輪3L及び右後輪3Rと、サスペンション下部分2の上に設けられた左右のサスペンションの一例としてのエアサスペンション4L及び4Rと、左右のエアサスペンション4L及び4Rに支持されたサスペンション上部分5と、を備える。本明細書の例では、サスペンション上部分5は、積載されている積荷6を含むものとする。
図2は、ロール中心RCまわりのモーメントについての説明図である。車両1については、図2に示すように、ロール中心RCまわりのモーメントについて、以下の式(1)が成立する。式(1)中、Mは、サスペンション上部分5のロールモーメントであり、hsmは、ロール中心RCからサスペンション上部分5の重心Qまでの高さであり、Fは、サスペンション上部分5に作用する遠心力であり、Mconstは積荷6が側方にずれて積載されることなどによる、サスペンション上部分5のロールモーメントのオフセット量である。
Figure 2021160527
サスペンション上部分5に作用する遠心力Fについて、以下の式(2)が成立する。式(2)中、msmはサスペンション上部分5の質量であり、Gは、車両1の幅方向の加速度である横加速度である。
Figure 2021160527
上記の式(1)に式(2)を代入することで式(3)が得られる。
Figure 2021160527
上記の式(3)の時刻aにおいて成立する式を、時間により変化する記号に添え字aを付けて表すと、式(4)となる。また、時刻aとは異なる時刻bにおいて成立する式を、時間により変化する記号に添え字bを付けて表すと、式(5)となる。ここで、物流拠点間の走行中であれば、積荷6の配置及び質量は変化しないと考えられるので、車両1のロール中心RCからサスペンション上部分5の重心Qまでの高さhsm、サスペンション上部分5の質量msm、サスペンション上部分5のロールモーメントのオフセット量Mconstは一定であると考えられる。
Figure 2021160527
Figure 2021160527
以上の式(4)及び式(5)の辺々の差分をとり、hsmについて変形すると、以下の式(6)となり、ロール中心RCからサスペンション上部分5の重心Qまでの高さhsmを求めることができる。式(6)中のDは、横加速度Gの変化量に対する車両1のロールモーメントMの変化量で表される比例係数である。
Figure 2021160527
後軸のサスペンションにエアサスペンションを用いる場合、ロールモーメントMは、後軸エアサスペンションの変位及び圧力から、以下の式(7)を用いても求めることができる。式(7)中、Kφ13は、エアサスペンションを用いていない、後軸以外のサスペンションロール剛性の和である統合ロール剛性である。Kφ13は、車両に固有の一定の値である。式(7)中のMは、後輪3L及び3Rのエアサスペンション4L及び4Rが支持するロールモーメントである。また、φは、サスロール角であり、左右のエアサスペンション4L及び4R間の距離と左右のエアサスペンション4L及び4Rの上下方向の変位の差分hdから求めることができる。
Figure 2021160527
ここで、式(7)中のMは、左右のエアサスペンション4L及び4R間の距離Trdとそれぞれのエアサスペンションの支持力PとPとの差分に基づいて、式(8)を用いて求めることができる。
Figure 2021160527
また、前後のサスペンションにエアサスペンションを用いず、リーフスプリングあるいはコイルスプリングなどの機械式ばねを用いた場合、式(7)中のMを0として、式(9)を用いてサスペンション上部分のロールモーメントMを求めることができる。
Figure 2021160527
また、前後のサスペンションにエアサスペンションを用いず、リーフスプリングあるいはコイルスプリングなどの機械式ばねを用いており、かつ、前後左右のサスペンションの変位が分かる場合、式(10)を用いてサスペンション上部分のロールモーメントMを求めることもできる。
式(10)は、車両が四輪の場合である。式(10)中、FZ1Lは前軸左側サスペンションの支持力であり、FZ1Rは前軸右側サスペンションの支持力であり、FZ2Lは後軸左側サスペンションの支持力であり、FZ2Rは後軸右側サスペンションの支持力である。これらサスペンションの支持力Fzは、各サスペンションの変位から、予め生成したマップなどにしたがって求められる。
Figure 2021160527
なお、式(10)は、車両が四輪の場合としたが、車両が六輪あるいは八輪の場合についても、式(10)と同様の式を用いて求めることができる。
車両1に搭載された重心高推定装置は、横加速度Gの変化量に対する車両1のロールモーメントMの変化量で表される比例係数D(式(6)参照)の代わりに、横加速度Gに対するロールモーメントMの伝達関数のゲインD’を用いる。詳細については後述するが、重心高推定装置は、所定の時間区分ごとに、基準周波数以下の周波数領域における伝達関数のゲインD’を算出する。重心高推定装置は、所定の時間区分ごとに、基準周波数以下の周波数領域における横加速度とロールモーメントとの関連度を算出する。重心高推定装置は、算出した関連度に基づいて、この関連度と同じ時間区分において算出した周波数伝達関数のゲインD’を重み付けする。
重心高推定装置は、重み付けした周波数伝達関数のゲインD’を用いて、車両1のロール中心RCからサスペンション上部分5の重心Qまでの高さhsmを算出する。このようにして、重心高推定装置は、周波数伝達関数のゲインD’を時間区分ごとに重み付けすることにより、路面のうねりや横風外乱等に起因するノイズの影響を小さくし、ロール中心RCから重心Qまでの高さhsmを算出する精度を向上させることができる。
[車両の構成]
図3は、車両1の構成を示す図である。車両1には、サスペンション上部分5の重心の高さを推定する重心高推定装置100が設けられる。重心高推定装置100は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)により実現される。重心高推定装置100は、記憶部11及び制御部12を備える。
記憶部11は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の記憶媒体を有する。記憶部11は、制御部12を機能させるための各種プログラムや各種データを記憶する。制御部12は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、モーメント算出部121、横加速度測定部122、質量測定部123、ゲイン算出部124、関連度算出部125、重み決定部126、統計算出部127及び重心高算出部128として機能する。
[ロールモーメントの算出]
モーメント算出部121は、車両1におけるサスペンション上部分5のロールモーメントMを算出する。まず、モーメント算出部121は、左右のエアサスペンション4L及び4Rの支持力P及びPをそれぞれ測定する。例えば、モーメント算出部121は、左右のエアサスペンション4L及び4R内の圧力に基づいて、左右のエアサスペンション4L及び4Rの支持力P及びPを測定する。モーメント算出部121は、車両1に備えられた左右のエアサスペンション4L及び4Rの支持力P及びPに基づいて、車両1におけるサスペンション上部分5のロールモーメントMを算出する。
より詳しくは、モーメント算出部121は、左右のエアサスペンション4L及び4Rの支持力P及びPに基づいて、例えば、上述の式(7)及び式(8)により、サスペンション上部分5のロールモーメントMを算出する。また、モーメント算出部121は、エアサスペンションと、リーフスプリング又はコイルスプリングなどの機械式バネを併用する場合には、左右のエアサスペンションの変位から、予め生成したマップなどにしたがって機械式バネの支持力を求める。さらに、モーメント算出部121は、求めた支持力と、左右のエアサスペンション4L及び4R間の距離Trdとに基づいて、例えば、上述の式(7)〜式(10)により、サスペンション上部分5のロールモーメントMを算出する。モーメント算出部121は、ロールモーメントMを複数の時刻それぞれで算出する。
横加速度測定部122は、加速度センサ(不図示)の検出結果に基づいて、車両1の幅方向の加速度である横加速度Gを測定する。横加速度測定部122は、横加速度Gを複数の時刻それぞれで算出する。質量測定部123は、サスペンション上部分5の質量msmを測定する。質量測定部123は、車両1の各サスペンションの変位に基づいて、サスペンション上部分5の質量msmを測定する。
[伝達関数のゲインの算出]
ゲイン算出部124は、横加速度Gに対するロールモーメントMの伝達関数のゲインD’を算出する。まず、ゲイン算出部124は、横加速度Gに対するロールモーメントMの周波数伝達関数を算出する。ここでは、ゲイン算出部124が平均ピリオドグラム法により周波数伝達関数を求める場合について説明する。横加速度G及びロールモーメントMのクロススペクトルHMGは、以下の式(11)により表される。式(11)においてR(M)は、ロールモーメントMのフーリエ変換である。また、S(G)を横加速度Gのフーリエ変換とし、S(G)は、S(G)の複素共役とする。
Figure 2021160527
また、横加速度GのオートパワースペクトルHGGは、以下の式(12)により、表される。
Figure 2021160527
横加速度Gに対するロールモーメントMの周波数伝達関数Fは、以下の式(13)により、表される。
Figure 2021160527
式(13)に示す周波数伝達関数Fの絶対値であるゲインD’の高周波成分は、A/D変換時の電気的なノイズや、直進時の路面の凹凸に起因するノイズを含んでいる。そこで、ゲイン算出部124は、ノイズの影響を除去するため、基準周波数以下の周波数領域におけるゲインD’を所定の時間区分ごとに算出する。この基準周波数とは、例えば、車両1のロール中心RCからサスペンション上部分5の重心Qまでの高さhsmを精度よく求めるために利用可能であることが実験的に確認されている周波数伝達関数FのゲインD’に対応する周波数の上限値であり、例えば、最高でも1ヘルツである。例えば、ゲイン算出部124は、基準周波数以下の周波数領域におけるゲインD’の統計値(以下、第1統計値ともいう)を時間区分ごとに算出する。統計値は、例えば、平均値であるが、中央値又は最頻値であってもよい。
[関連度の算出]
関連度算出部125は、基準周波数以下の周波数領域における、横加速度GとロールモーメントMとの関連度Cを算出する。例えば、関連度算出部125は、例えば、以下の式(14)に示すコヒーレンス関数に基づいて、関連度Cを算出する。
Figure 2021160527
式(14)中、HMMは、ロールモーメントMのパワースペクトルであり、以下の式(15)により表される。式(15)中、R(M)は、R(M)の複素共役とする。
Figure 2021160527
関連度算出部125は、関連度Cを所定の時間区分ごとに算出するものとする。図4(a)及び図4(b)は、関連度Cがコヒーレンスである場合における周波数伝達関数FのゲインD’と、関連度Cとの関係を示す図である。図4(a)は、周波数伝達関数FのゲインD’と周波数との関係を示す図である。図4(b)は、関連度Cと周波数との関係を示す図である。
図4(a)の縦軸は、周波数伝達関数FのゲインD’を示し、横軸は、周波数を対数軸で示す。周波数の単位はヘルツである。実線は、周波数伝達関数FのゲインD’の変化を示し、破線の曲線は、周波数伝達関数FのゲインD’の理想的な変化を示す。周波数伝達関数FのゲインD’は、図4(a)の縦の破線で示す基準周波数B以下の周波数領域では、A/D変換時の電気的なノイズや、直進時の路面の凹凸に起因するノイズ等の影響を受けにくいが、路面のうねりや横風外乱等の比較的低い周波数のノイズの影響を受けることがある。
図4(b)の縦軸は、関連度Cを示し、横軸は、図4(a)と共通である。関連度Cは、ロールモーメントMが横加速度Gとの間においてどの程度相関性を有するかを示す。関連度Cがコヒーレンスである場合には、関連度Cの最小値は0であり、関連度Cの最大値は1である。理想的な変化を示す周波数伝達関数FのゲインD’に対する、ゲイン算出部124が算出した周波数伝達関数FのゲインD’の誤差が小さいほど、関連度Cが1に近くなる。一方、理想的な変化を示す周波数伝達関数FのゲインD’に対する、ゲイン算出部124が算出した周波数伝達関数のゲインD’の誤差が大きいほど、関連度Cは0に近くなる。また、関連度Cはコヒーレンスである例に限定されず、関連度Cのとり得る値は、0から1までの範囲に限定されない。
[ゲインの重みの決定]
重み決定部126は、関連度算出部125が算出した関連度Cに基づいて、関連度Cと同じ時間区分においてゲイン算出部124が算出したゲインD’を重み付けする重みを決定する。重み決定部126は、関連度算出部125が算出した関連度Cの時間区分ごとの最低値等の統計値に基づいて、ゲイン算出部124が算出したゲインD’の第1統計値を重み付けする重みを決定する。例えば、重み決定部126は、関連度算出部125が算出した関連度C又は関連度Cの統計値を、同じ時間区分においてゲイン算出部124が算出したゲインD’の重みとする。このようにして、重み決定部126は、うねり等のノイズの影響が大きいことに起因して関連度Cが小さくなった時間区分に対応するゲインD’の第1統計値を重み付けする重みを小さくする。このため、重み決定部126は、サスペンション上部分5の重心Qの高さを推定する精度がノイズの影響により低下することを抑制することができる。
[ゲインの重み付けの変形例1]
また、重み決定部126は、0及び1の2つの重みのみを、ゲインD’の第1統計値を重み付けする重みとして決定してもよい。例えば、重み決定部126は、関連度算出部125が算出した関連度Cのいずれかの時間区分における最低値が閾値以上である場合に、この時間区分に対応するゲインD’の第1統計値を重み付けする重みを1とする。重み決定部126は、例えば、車両1の走行の安定性を確保することを考慮して、車両1の積荷6の重量が大きいほど大きな値を閾値として定める。重み決定部126は、関連度算出部125が算出した関連度Cのいずれかの時間区分における最低値が閾値未満である場合に、この時間区分に対応するゲインD’の第1統計値を重み付けする重みを0としてもよい。また、重み決定部126は、関連度算出部125が算出した関連度Cの時間区分ごとの平均値に基づいて、ゲイン算出部124が算出したゲインD’の第1統計値を重み付けする重みを決定してもよい。
[ゲインの重み付けの変形例2]
重み決定部126は、複数の時間区分のそれぞれのゲインD’の第1統計値のうち、関連度算出部125が算出した関連度Cが所定値以下のゲインD’の第1統計値を重み付けする重みを0とし、関連度算出部125が算出した関連度Cが所定値を超えるゲインD’の第1統計値を重み付けする重みを0より大きな値としてもよい。重み決定部126は、例えば、車両1の走行の安定性を確保することを考慮して、車両1の積荷6の重量が大きいほど大きな値を所定値として定める。例えば、重み決定部126は、いずれかの時間区分において関連度Cの最低値が所定値未満である場合に、この時間区分に対応するゲインD’の第1統計値を重み付けする重みを0とする。
統計算出部127は、重み決定部126が決定した重みを用いて複数の時間区分のゲインD’の第1統計値を重み付けする。このとき、統計算出部127は、関連度算出部125が算出した関連度に基づく重みを用いて、この関連度と同じ時間区分においてゲイン算出部124が算出した伝達関数のゲインD’を重み付けする重み付け部として機能する。
統計算出部127は、重み付け後の値の統計値(以下、第2統計値ともいう)を算出する。統計値は、例えば、平均値であるが、中央値又は最頻値であってもよい。例えば、統計算出部127は、以下の式(16)により、複数の時間区分のゲインD’の第1統計値の重み付け平均Xを第2統計値として算出する。
Figure 2021160527
式(16)中、X、X、…、Xは、複数の時間区分のゲインD’の第1統計値であり、W、W、…、Wは、それぞれ重み決定部126が決定したX、X、…、Xの重みである。統計算出部127は、算出したゲインD’の第2統計値Xwを重心高算出部128へ出力する。
[重心の高さの算出]
重心高算出部128は、横加速度Gの変化量に対する車両1のロールモーメントMの変化量で表される比例係数D(式(6)参照)の代わりに、伝達関数のゲインD’の第2統計値を比例係数として用いて、サスペンション上部分5の重心Qの高さを推定する。重心高算出部128は、重み決定部126が決定した重みを重み付けされた伝達関数のゲインD’と、質量測定部123が測定したサスペンション上部分5の質量msmとに基づいて、車両1のロール中心RCからサスペンション上部分5の重心Qまでの高さhsmを算出する。例えば、重心高算出部128は、統計算出部127が算出した複数の時間区分のゲインD’の第2統計値をサスペンション上部分5の質量msmで除した値を、高さhsmとして算出する。
また、重心高算出部128は、伝達関数のゲインD’やゲインD’の第1統計値を比例係数として用いて、サスペンション上部分5の重心Qの高さを推定してもよい。例えば、重み決定部126は、複数の時間区のゲインD’の第1統計値のうちのいずれか1つを選択する。一例としては、重み決定部126は、関連度算出部125が算出した関連度Cの時間区分における最低値が閾値以上となった直近の時間区分に対応するゲインD’の第1統計値を選択する。重み決定部126は、選択した第1統計値の重みを1とし、選択していない第1統計値の重みを0とする。重心高算出部128は、1の重みが重み付けされた時間区分のゲインD’の第1統計値をサスペンション上部分5の質量msmで除した値を、高さhsmとして算出してもよい。
重心高算出部128は、算出した車両1のロール中心RCからサスペンション上部分5の重心Qまでの高さhsmに、地上からロール中心RCまでの高さHRCを加算し、地上からサスペンション上部分5の重心Qまでの高さHCGを算出する。
[重心高の算出の処理手順]
図5は、重心高推定装置100による地上からサスペンション上部分5の重心Qまでの高さHCGの算出方法を示すフローチャートである。この処理手順は、例えば、車両1の走行中に開始する。まず、モーメント算出部121は、左右のエアサスペンション4L及び4Rの支持力P及びPをそれぞれ測定する。モーメント算出部121は、測定した左右のサスペンションの支持力P及びPに基づいて、車両1におけるサスペンション上部分5のロールモーメントMを算出する(S101)。
横加速度測定部122は、車両1の幅方向の加速度である横加速度Gを測定する(S102)。質量測定部123は、車両1の各サスペンションの変位に基づいて、サスペンション上部分5の質量msmを測定する(S103)。ゲイン算出部124は、横加速度Gに対するロールモーメントMの周波数伝達関数FのゲインD’の基準周波数B以下の周波数領域における第1統計値を時間区分ごとに算出する(S104)。関連度算出部125は、基準周波数B以下の周波数領域において、横加速度GとロールモーメントMとの関連度Cを算出する(S105)。重み決定部126は、関連度算出部125が算出した関連度Cに基づいて、この関連度Cと同じ時間区分に対応する周波数伝達関数FのゲインD’の第1統計値を重み付けする重みを決定する(S106)。統計算出部127は、重み決定部126が決定した重みを用いて複数の時間区分のゲインD’の第1統計値を重み付けし、重み付け後の値の統計値である第2統計値を算出する。
重心高算出部128は、統計算出部127が算出したゲインD’の第2統計値をサスペンション上部分5の質量msmで除した値を、車両1のロール中心RCからサスペンション上部分5の重心Qまでの高さhsmとして算出する(S107)。重心高算出部128は、算出した車両1のロール中心RCからサスペンション上部分5の重心Qまでの高さhsmに、地上からロール中心RCまでの高さHRCを加算することにより、地上からサスペンション上部分5の重心Qまでの高さHCGを算出し(S108)、処理を終了する。
[本実施形態の重心高推定装置による効果]
本実施形態では、重み決定部126は、関連度算出部125が算出した関連度に基づいて、この関連度と同じ時間区分においてゲイン算出部124が算出した周波数伝達関数のゲインD’の第1統計値を重み付けする重みを決定する。このようにして、重み決定部126は、路面のうねりや横風外乱等の影響を受けた時間区分に対応するゲインD’がサスペンション上部分5の重心Qの高さの算出に寄与する程度を小さくし、サスペンション上部分5の重心Qの高さの算出精度を向上させることができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
1 車両
2 サスペンション下部分
3L 左後輪
3R 右後輪
4L エアサスペンション
4R エアサスペンション
5 サスペンション上部分
6 積荷
11 記憶部
12 制御部
100 重心高推定装置
121 モーメント算出部
122 横加速度測定部
123 質量測定部
124 ゲイン算出部
125 関連度算出部
126 重み決定部
127 統計算出部
128 重心高算出部

Claims (7)

  1. 車両に備えられた左右のサスペンションの支持力に基づいて、前記車両における当該サスペンション上のロールモーメントを複数の時刻それぞれで算出するモーメント算出部と、
    前記車両の幅方向の加速度である横加速度を複数の時刻それぞれで測定する横加速度測定部と、
    前記サスペンション上の質量を測定する質量測定部と、
    前記横加速度に対する前記ロールモーメントの基準周波数以下の周波数領域における伝達関数のゲインを時間区分ごとに算出するゲイン算出部と、
    前記基準周波数以下の周波数領域における、前記横加速度と前記ロールモーメントとの関連度を時間区分ごとに算出する関連度算出部と、
    前記関連度算出部が算出した前記関連度に基づいて当該関連度と同じ時間区分において前記ゲイン算出部が算出した前記伝達関数のゲインを重み付けする重み付け部と、
    前記重み付け部により重み付けされた前記伝達関数のゲインと、前記質量測定部が測定した前記質量とに基づいて、前記車両のロール中心から前記サスペンション上の重心までの高さを算出する重心高算出部と、
    を備える重心高推定装置。
  2. 前記ゲイン算出部は、前記伝達関数のゲインの前記基準周波数以下の周波数領域における統計値である第1統計値を算出し、
    前記関連度算出部が算出した前記関連度に基づいて、当該関連度と同じ時間区分において前記ゲイン算出部が算出した前記伝達関数の前記ゲインの第1統計値を重み付けする重みを決定する重み決定部と、
    前記重み決定部が決定した重みを用いて複数の前記時間区分の前記ゲインの第1統計値を重み付けし、重み付け後の値の統計値である第2統計値を算出する統計算出部とをさらに備え、
    前記重心高算出部は、前記統計算出部が算出した前記ゲインの前記第2統計値を前記質量測定部が測定した前記質量で除することにより、前記高さを算出する、
    請求項1に記載の重心高推定装置。
  3. 前記重み決定部は、複数の前記時間区分のそれぞれの前記ゲインの第1統計値のうち、前記関連度が所定値以下の前記ゲインの第1統計値の重みを0とし、前記関連度が所定値を超える前記ゲインの第1統計値の重みを0より大きな値とする、
    請求項2に記載の重心高推定装置。
  4. 前記関連度算出部は、コヒーレンス関数に基づいて、前記関連度を算出する、
    請求項2又は3に記載の重心高推定装置。
  5. 前記重み決定部は、前記関連度算出部が算出した前記関連度の時間区分ごとの最低値に基づいて、前記ゲイン算出部が算出した前記伝達関数の前記ゲインの第1統計値を重み付けする重みを決定する、
    請求項4に記載の重心高推定装置。
  6. 前記重み決定部は、前記関連度算出部が算出した前記関連度の時間区分ごとの平均値に基づいて、前記ゲイン算出部が算出した前記伝達関数の前記ゲインの第1統計値を重み付けする重みを決定する、
    請求項4に記載の重心高推定装置。
  7. 車両に備えられた左右のサスペンションの支持力に基づいて、前記車両における当該サスペンション上のロールモーメントを複数の時刻それぞれで算出するステップと、
    前記車両の幅方向の加速度である横加速度を複数の時刻それぞれで測定するステップと、
    前記サスペンション上の質量を測定するステップと、
    前記横加速度に対する前記ロールモーメントの基準周波数以下の周波数領域における伝達関数のゲインを時間区分ごとに算出するステップと、
    前記基準周波数以下の周波数領域における、前記横加速度と前記ロールモーメントとの関連度を時間区分ごとに算出するステップと、
    算出した前記関連度に基づいて当該関連度と同じ時間区分において算出した前記伝達関数のゲインを重み付けするステップと、
    重み付けされた前記伝達関数のゲインと、測定した前記質量とに基づいて、前記車両のロール中心から前記サスペンション上の重心までの高さを算出するステップと、
    を備える重心高推定方法。
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