JP2021158997A - 味噌及びその製造方法 - Google Patents

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友里 國武
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Abstract

【課題】本発明の目的は、従前の味噌と比べて、それ自体又は使用した料理に甘味を付与する味噌及びその製造方法を提供することにある。【解決手段】上記目的は、フェネチルアセテートの含有量が50ppb以上である味噌、フェネチルアルコールの含有量が2,500ppb以上である味噌、フェネチルアセテートの含有量が50ppb以上であり、かつ、フェネチルアルコールの含有量が2,500ppb以上である味噌、醤油諸味液汁を醤油酵母による酵母発酵に供することにより得られる醤油諸味液汁の酵母発酵物と米麹との混合物を、発酵及び熟成することにより味噌を得る工程を含む、味噌の製造法などにより解決される。【選択図】図1

Description

本発明は、味噌及び味噌の製造方法に関する。
味噌は、通常、米や麦などの穀類を蒸煮して得られる蒸煮穀類に麹菌を含む種麹を接種及び培養して製麹することにより米麹を得て、次いで得られた米麹と大豆を蒸煮して得られる蒸煮大豆との混合物を、食塩水に仕込んで発酵及び熟成することなどにより製造される。
味噌は、独特の風味を有しており、様々な料理を調理する際に用いられる優れた調味料である。このような味噌を、調味料としてより優れたものにするために種々の試みがなされている。例えば、特許文献1には、味噌にヒスチジン、乳酸、カリウム及びイノシン酸を所定量で添加してなる、呈味の改善された味噌が記載されている。
特開2000−253845号公報
しかし、特許文献1に記載の味噌の呈味改善効果は限定的であり、十分ではない。また甘味が改善された味噌や使用した料理の風味が口腔内に広がるような味噌などについてはこれまでにほとんど知られていない。
そこで、本発明は、従前の味噌と比べて、それ自体又は使用した料理に甘味を付与する味噌及び該味噌の製造方法を提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、味噌の成分や製造方法などを見直し、さらに1,000種以上あるとされている香気成分や風味成分について鋭意検討し、甘味が増強された味噌を得るべく試行錯誤を繰り返した。そして、遂に、外部添加により、又は乳酸発酵終了後の醤油諸味を固液分離処理に供して得られた醤油諸味液汁を用いて酵母発酵することにより得られる醤油諸味液汁の酵母発酵物と米麹との混合物を発酵及び熟成することなどにより、従前の味噌には含まれていない香気成分を所定の量で含む味噌を得ることに成功した。
驚くべきことに、従前の味噌には含まれていない香気成分を所定量で含む味噌は、通常の味噌に比べて、それ自体は味噌感が抑えられて甘味が増した味噌となり、さらに肉類につけて加熱調理すると、得られる料理は肉類の油が甘く感じられ、口腔内に広がり非常に嗜好性の高いものとなった。
本発明は、上記した成功例や知見に基づいて完成するに至った発明である。
したがって、本発明の各一態様によれば、以下のものが提供される:
[1]フェネチルアセテートの含有量及び/又はフェネチルアルコールの含有量が下記(1)〜(3)のいずれかの量である、味噌。
(1)フェネチルアセテートの含有量が50ppb以上である
(2)フェネチルアルコールの含有量が2,500ppb以上である
(3)フェネチルアセテートの含有量が50ppb以上であり、かつ、フェネチルアルコールの含有量が2,500ppb以上である
[2]さらにデカジエナールの含有量が50ppb以下である、[1]に記載の味噌。
[3]さらにフルフラールの含有量が60ppb以下である、[1]〜[2]のいずれか1項に記載の味噌。
[4]醤油麹と食塩水とを混合処理及び乳酸発酵処理に供して得られた醤油諸味を、固液分離処理に供して醤油諸味液汁を得る工程、及び
前記醤油諸味液汁を醤油酵母による酵母発酵に供することにより得られる醤油諸味液汁の酵母発酵物と米麹との混合物を、発酵及び熟成することにより味噌を得る工程
を含む、味噌の製造法。
[5]前記醤油諸味液汁の酵母発酵物と前記米麹との質量比が4〜6:6〜4である、[4]に記載の味噌の製造方法。
本発明の一態様の味噌によれば、所定量のフェネチルアセテート及び/又は所定量のフェネチルアルコールを含むことにより、従前の味噌を用いた料理に比べて、味噌感が抑えられて、甘味の増した嗜好性の非常に高い料理を提供することができる。
本発明の別の一態様の味噌によれば、所定量のフェネチルアセテート及び所定量のフェネチルアルコールを含むことにより、従前の味噌を用いた肉料理に比べて、肉の油が甘く感じられ、口腔内に広がり美味しくなる、嗜好性の非常に高い肉料理を提供することができる。
さらに、本発明の一態様の味噌は、予め調製した醤油諸味液汁の酵母発酵物と米麹とを混合して、発酵及び熟成することにより製造することが可能であることから、味噌の製造業者だけでなく、家庭でも手軽に作製することができるものである。
図1は、後述する実施例に記載があるとおりの、液体発酵味噌1の外観を経日的に観察した結果を表す写真である。 図2は、後述する実施例に記載があるとおりの、液体発酵味噌2A〜2Dの外観を観察した結果を表す写真である。 図3は、後述する実施例に記載があるとおりの、液体発酵味噌1を塗った状態の牛肉及び調理後の牛肉の味噌焼きを撮影した写真である。
以下、本発明の一態様である味噌及び方法の詳細について説明するが、本発明は、本項目の事項によってのみに限定されず、本発明の目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
本明細書における各用語は、別段の定めがない限り、当業者により通常用いられている意味で使用され、不当に限定的な意味を有するものとして解釈されるべきではない。また、本明細書においてなされている推測及び理論は、本発明者らのこれまでの知見及び経験によってなされたものであることから、本発明はこのような推測及び理論のみによって拘泥されるものではない。
「含有量」は、濃度と同義であり、味噌の全体量(例えば、質量)に対する成分の量(例えば、質量)の割合(例えば、質量%)を意味する。ただし、成分の含有量の総量は、100%を超えることはない。
「ppb」は、通常知られている意味のとおりの単位であり、具体的には1ppbは1ng/g(w/w)である。
「ppm」は、通常知られている意味のとおりの単位であり、具体的には1ppmは1μg/g(w/w)である。
「甘味」は、通常知られているとおりの酸味、塩味、苦味及びうま味とともに基本味として知られているものを意味する。甘味は、例えば、味覚による、スクロースなどの甘味成分を口に含んだときに感じる味と表現できる。
「広がり」は、味覚だけではなく、嗅覚が相俟って、口腔中で風味が充満して、余韻が残ることを意味する。
「発酵」及び「熟成」は、これらは同時的に生じ得ることから、厳密に区別されるものではなく、これらを合わせて発酵という場合がある。通常、発酵では乳酸菌や酵母などの微生物が原料中の成分を資化して増殖するとともに物質変換が行われ、熟成では微生物がつくった酵素などにより物質変換が行われ、結果として風味性物質、芳香性物質、着色性物質などが生成される。
「及び/又は」との用語は、列記した複数の関連項目のいずれか1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせ若しくは全ての組み合わせを意味する。
数値範囲の「〜」は、本明細書において、その前後の数値を含む範囲であり、例えば、「0質量%〜100質量%」は、0質量%以上であり、かつ、100質量%以下である範囲を意味する。
「味噌本来の風味」との用語は、飲食時の口腔内から鼻へぬける、大豆、麦及び米を原料とする通常の方法によって製造された味噌の香りを意味する。なお、単に「香り」という場合は、飲食せずに鼻だけで感じる香りを意味する。
「含む」は、含まれるものとして明示されている要素以外の要素を付加できることを意味する(「少なくとも含む」と同義である)が、「からなる」及び「から本質的になる」を包含する。すなわち、「含む」は、明示されている要素及び任意の1種若しくは2種以上の要素を含み、明示されている要素からなり、又は明示されている要素から本質的になることを意味し得る。要素としては、成分、工程、条件、パラメーターなどの制限事項などが挙げられる。
整数値の桁数と有効数字の桁数とは一致する。例えば、1の有効数字は1桁であり、10の有効数字は2桁である。また、小数値は小数点以降の桁数と有効数字の桁数は一致する。例えば、0.1の有効数字は1桁であり、0.10の有効数字は2桁である。
本発明の一態様の味噌は、所定の量のフェネチルアセテート、所定の量のフェネチルアルコール、又はこれらの両方を含むことに特徴がある。本発明の一態様の味噌は、これらにより、第1態様〜第3態様の味噌に大別される。すなわち、本発明の第1態様の味噌は、所定の量のフェネチルアセテートを含む。本発明の第2態様の味噌は、所定の量のフェネチルアルコールを含む。本発明の第3態様の味噌は、所定の量のフェネチルアセテート及び所定の量のフェネチルアルコールを含む。
また、本発明の第1態様〜第3態様の味噌は、含有するデカジエナール及び/又はフルフラールが所定の量であることが好ましい。フェネチルアセテート、フェネチルアルコール、デカジエナール及びフルフラールは、それぞれ下記式(1)〜(4)に示される化合物である。
Figure 2021158997
味噌(みそともよぶ。)は、通常知られているとおりの半固体状の調味料として用いられるものであれば特に限定されず、例えば、農林水産省告示「みそ品質表示基準」に記載されているようなものなどが挙げられ、味噌、米味噌、麦味噌、豆味噌及び調合味噌などを包含するものであるが、原料として米麹を用いて得られる味噌、米味噌及び調合味噌が好ましい。
本発明の第1態様の味噌におけるフェネチルアセテートの含有量は、本発明の第1態様の味噌が市販の味噌よりも甘味が感じられる程度の量、及び/又は本発明の第1態様の味噌を肉類の加熱調理に使用した際に、得られる肉料理の風味の広がりが市販の味噌を用いた場合よりも感じられる程度の量である。具体的には、本発明の第1態様の味噌におけるフェネチルアセテートの含有量は、50ppb以上であり、該肉料理の塩味がやわらかく、より甘味が感じられるという観点から、80ppb以上であることが好ましく、100ppb以上であることがより好ましく、150ppb以上であることがさらに好ましく、200ppb以上であることがなおさらに好ましい。フェネチルアセテートの含有量の上限は、味噌本来の風味に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、典型的には1ppm程度である。
本発明の第2態様の味噌におけるフェネチルアルコールの含有量は、本発明の第2態様の味噌が市販の味噌よりも甘味が感じられる程度の量、及び/又は本発明の第2態様の味噌を肉類の加熱調理に使用した際に、得られる肉料理の風味の広がりが市販の味噌を用いた場合よりも感じられる程度の量である。具体的には、本発明の第2態様の味噌におけるフェネチルアルコールの含有量は、2,500ppb以上であり、該肉料理の脂のふくらみを感じ、より甘味が感じられるという観点から、3,000ppb以上であることが好ましく、5,000ppb以上であることがより好ましく、8,000ppb以上であることがさらに好ましい。フェネチルアルコールの含有量の上限は、味噌本来の風味に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、典型的には100ppm程度である。
本発明の第3態様の味噌におけるフェネチルアセテートの含有量及びフェネチルアルコールの含有量は、上記した本発明の第1態様の味噌におけるフェネチルアセテートの含有量及び本発明の第2態様の味噌におけるフェネチルアルコールの含有量である。
フェネチルアセテート及びフェネチルアルコールは、味噌に対して好ましい風味を付与し得るものである。それに対して、デカジエナールは、油脂の酸化物であり、味噌に対して油の酸化臭を付与し得ることから、味噌の風味に対して悪影響を与え得る。同様に、フルフラールもまた、特有の香りを有し、味噌の風味に対して悪影響を与え得る。
本発明の一態様の味噌におけるデカジエナールの含有量は、本発明の一態様の味噌が市販の味噌よりも油の酸化臭が抑えられる程度の量であることが好ましく、具体的には100ppb以下であることが好ましく、味の広がりが損なわれること、及び/又は甘味が低減することを防止することという観点から、80ppb以下であることがより好ましく、60ppb以下であることがさらに好ましく、50ppb以下であることがなおさらに好ましい。本発明の一態様の味噌におけるデカジエナールの含有量の下限は特に限定されず、検出下限未満、すなわち、実質的に0ppbであってもよい。
本発明の一態様の味噌におけるフルフラールの含有量は、本発明の一態様の味噌が市販の味噌よりもフルフラール特有の香りが抑えられる程度の量であることが好ましく、具体的には150ppb以下であることが好ましく、味の広がりが損なわれること、及び/又は甘味が低減することを防止することという観点から、100ppb以下であることがより好ましく、70ppb以下であることがさらに好ましく、60ppb以下であることがなおさらに好ましい。本発明の一態様の味噌におけるフルフラールの含有量の下限は特に限定されず、検出下限未満、すなわち、実質的に0ppbであってもよい。
本発明の一態様の味噌におけるフェネチルアセテート、フェネチルアルコール、デカジエナール及びフルフラールの含有量は、後述する実施例に記載の方法によって測定できる。したがって、上記したフェネチルアセテート、フェネチルアルコール、デカジエナール及びフルフラールの含有量は、後述する実施例に記載の方法によって測定して得られる値である。
本発明の一態様の味噌は、フェネチルアセテートの含有量が上記所定の量ではない、及び/又はフェネチルアルコールの含有量が上記所定の量ではない、従前の味噌と比べて、それ自体又は使用した料理に甘味を付与することができる。本発明の一態様の味噌が有する甘味は、後述する実施例に記載の味噌官能評価、調理官能評価(1)及び/又は調理官能評価(2)によって確認することができる。
本発明の一態様の味噌の使用量は、本発明の一態様の味噌が供すべき食材及び飲食品の種類などに応じて適宜設定でき、特に限定されず、例えば、従前の味噌と同程度の量などが挙げられる。
本発明の一態様の味噌は、本発明の課題を解決し得る味噌が得られる方法によって製造し得る。すなわち、本発明の一態様の味噌は、フェネチルアセテートの含有量及び/又はフェネチルアルコールの含有量が所定の量である味噌、好ましくはフェネチルアセテートの含有量及び/又はフェネチルアルコールの含有量が所定の量であり、かつ、デカジエナール及び/又はフルフラールの含有量が所定の量である味噌が得られる方法などによって製造することができ、特に限定されない。
例えば、本発明の一態様の味噌を得るために、用いる味噌におけるフェネチルアセテートの含有量が上記した所定の量よりも少ない量である場合には、該味噌にフェネチルアセテート及び/又はフェネチルアセテート含有物を添加して所定の量に調整できる。すなわち、本発明の一態様の味噌は、市販の味噌などの通常知られている方法によって製造された味噌にフェネチルアセテートを外部添加して、これらを混合することなどによって製造することができる。フェネチルアセテート含有物は、後述する実施例に記載の方法によって測定されるフェネチルアセテートを含有するものであれば特に限定されない。同様に、味噌にフェネチルアルコール及び/又はフェネチルアルコール含有物を添加して所定の量に調整できる。さらに、用いる味噌におけるデカジエナール及び/又はフルフラールを吸着除去することなどにより、デカジエナール及び/又はフルフラールを所定の量に調整できる。
ただし、本発明の一態様の味噌は、後述する方法によって得られる醤油諸味液汁の酵母発酵物と米麹との混合物を、発酵及び熟成することにより得られるものであることが好ましい。すなわち、本発明の一態様の味噌は、味噌にフェネチルアセテート及び/又はフェネチルアルコールを外部添加して得られるものではなく、醤油諸味液汁の酵母発酵物及び米麹を原料として用いて、通常の味噌の製造方法によって得られる味噌であることが好ましい。このように、本発明の一態様の味噌におけるフェネチルアセテート及び/又はフェネチルアルコールは、外部添加されたこれらの精製品や含有物ではなく、味噌の製造過程によって生成したものであることが好ましい。
本発明の別の一態様は、フェネチルアセテート及び/又はフェネチルアルコールを所定の量で含む味噌の製造方法である。本発明の一態様の味噌の製造方法により、本発明の一態様の味噌を製造し得る。
本発明の一態様の味噌の製造方法は、醤油麹と食塩水とを混合処理及び乳酸発酵処理に供して得られた醤油諸味を、固液分離処理に供して醤油諸味液汁を得る工程、及び醤油諸味液汁を醤油酵母による酵母発酵に供することにより得られる醤油諸味液汁の酵母発酵物と米麹との混合物を、発酵及び熟成することにより味噌を得る工程を含む。
本発明の一態様の味噌の製造方法では、通常の味噌の製造方法と違って、乳酸発酵後の醤油諸味を連続的に酵母発酵に供するのではなく、酵母発酵に供する前に醤油諸味から油分が除去されるように不溶性固形部分(醤油諸味濃縮物)と液体部分(醤油諸味液汁)とに分けて、次いで醤油諸味液汁を酵母発酵に供することにより得られる醤油諸味液汁の酵母発酵物と米麹との混合物を発酵及び熟成することにより味噌を得ることを含む。したがって、該方法では、醤油諸味から醤油諸味液汁を得る工程と、醤油諸味液汁の酵母発酵物と米麹との混合物を発酵及び熟成することにより味噌を得る工程とを含む。このようにして得られる味噌は、例えば、フェネチルアセテートの含有量が50ppb以上である味噌、フェネチルアルコールの含有量が2,500ppb以上である味噌、又はフェネチルアセテートの含有量が50ppb以上であり、かつ、フェネチルアルコールの含有量が2,500ppb以上である味噌であり得る。本明細書では、便宜上、醤油諸味から醤油諸味液汁を得る工程の前段にあたる、醤油諸味を得る工程についても説明する。本発明の一態様の味噌の製造方法は、醤油諸味を得る工程を含んでもよいし、購入するなどして入手した醤油諸味を使用してもよい。
醤油諸味を得る工程は、通常知られているとおりの醤油の製造方法のうち醤油諸味を得るまでの工程であれば特に限定されない。なお、醤油は、本醸造方式の場合、加熱変性した大豆などのタンパク質原料及び加熱によりα化した小麦などのデンプン質原料の混合物に、麹菌を含む種麹を接種及び培養して製麹して醤油麹を得て、次いで得られた醤油麹を食塩水に仕込んで乳酸発酵及び熟成することにより醤油諸味を得て、次いで得られた醤油諸味を酵母発酵及び熟成することにより熟成諸味を得て、次いで得られた熟成諸味を圧搾処理やろ過処理に供することにより生醤油を得て、次いで得られた生醤油を火入れすることなどによって製造される。
醤油諸味を得る工程の一態様としては、例えば、蒸煮変性した大豆、又は蒸煮変性した大豆や炒熬割砕した麦などの混合物である醤油原料に種麹を接種し、20℃〜40℃で、数時間〜数日間、好ましくは1日間〜4日間程度で通風製麹して醤油麹を得て、次いで醤油麹を食塩濃度が20%(w/v)〜30%(w/v)になるように食塩を水に添加して調製した食塩水に仕込み、さらに任意に醤油乳酸菌を加えたものを、15℃〜40℃で適宜撹拌しながら10日間〜200日間、好ましくは15日間〜40日間である条件の混合処理に供することにより醤油諸味を得る工程などが挙げられる。この混合処理では、醤油麹による作用と醤油乳酸菌による乳酸発酵とが生じ得る。なお、醤油諸味を得る工程における混合処理では、醤油乳酸菌を加えることが好ましい。
醤油原料は特に限定されないが、例えば、丸大豆や脱脂加工大豆などの大豆、小麦、大麦、裸麦、はと麦などの麦、麦グルテン、米、トウモロコシなどが挙げられる。
麹菌は、通常醤油の製造の際に利用される麹菌であれば特に限定されないが、例えば、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ソーヤ(A.sojae)などが挙げられる。醤油乳酸菌は、通常醤油の製造の際に利用される醤油乳酸菌であれば特に限定されないが、例えば、テトラジェノコッカス・ハロフィルス(Tetragenococcus halophilus)などの耐塩性乳酸菌などが挙げられる。
醤油諸味を得る工程において、醤油原料のうち、小麦や米等のデンプン質原料の量が少ないと、還元糖の含有量が少なくなり、酵母発酵を適切に実施し得る醤油諸味を得ることができない可能性がある。そこで、醤油原料のうち、小麦や米等のデンプン質原料の量は、還元糖の含有量が多い醤油諸味を得ることができる程度の量であることが好ましい。ただし、醤油諸味に還元糖成分、例えば、グルコース、フルクトース、マルトース、砂糖、みりんなどを添加することにより還元糖の含有量が多い醤油諸味を得る場合は、この限りではない。すなわち、醤油麹には、大豆などのタンパク質原料に種麹を接種して製麹することにより全窒素分の多い醤油麹を得た後に、還元糖成分を添加して調整した調整醤油麹が含まれる。なお、還元糖は、農林水産省告示「しょうゆの日本農林規格」でいうところの直接還元糖を意味する。
醤油諸味液汁を得る工程では、大豆や小麦などの醤油原料由来の不溶性固形分を含む醤油諸味から不溶性固形分を除く固液分離処理により醤油諸味液汁を得る。固液分離処理は特に限定されないが、例えば、通常知られている固液分離方法などが挙げられ、具体的には醤油の製造方法で通常使用される圧搾処理やろ過処理などが挙げられ、より具体的にはろ布を用いたプレス機を用いた圧搾ろ過処理やUF膜やMF膜などの各種透過膜を用いた膜ろ過処理などが挙げられる。固液分離処理は、上記した処理や方法の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用し得る。
醤油諸味から微生物を除去するために、除菌処理を実施してもよい。除菌処理は特に限定されないが、具体的にはMF膜やUF膜などの各種透過膜を用いたろ過処理や微生物が殺滅するまでの温度に上げる加温処理などが挙げられる。除菌処理は、上記した処理や方法の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用し得る。なお、除菌処理は、微生物を系外に除く処理に加えて、系内にいる微生物を系外に除くことなく死滅させる処理であり得る。
なお、固液分離の際に微生物を透過しないような膜を用いたろ過処理を利用すれば、固液分離処理と除菌処理とを兼ねることができる。したがって、醤油諸味液汁を得る工程における固液分離処理及び除菌処理は、それぞれ個別の処理として実施してもよいし、一体的な1つの処理として実施してもよい。また、固液分離処理と除菌処理との順序は限定されず、どちらを先に行ってもよいが、固液分離処理をした後に得られる液体部分を除菌処理に供することが好ましい。
醤油諸味液汁を得る工程では、醤油諸味から、不溶性固形分に加えて、油分を除くことが好ましい。例えば、醤油諸味を圧搾処理により得た圧搾液を珪藻土を用いたろ過処理に1回又は2回以上供することにより、醤油諸味から不溶性固形分及び油分を除去し得る。
醤油諸味液汁の酵母発酵物と米麹との混合物を発酵及び熟成することにより味噌を得る工程では、まず、醤油諸味液汁について、通常知られているとおりの醤油を製造する際に使用する醤油酵母を用いて、醤油酵母の種類や菌数などに応じた条件によって常法の酵母発酵を実施する。醤油酵母は、通常醤油の製造の際に用いられる酵母であれば特に限定されないが、例えば、ジゴサッカロミセス・ルキシー(Zygosaccharomyces rouxii)、ジゴサッカロミセス・バイリー(Z.bailli)、カンディダ・エトケルシー(Candida etchellsii)、カンディダ・ヴェルスティリス(C.versatilis)などの耐塩性酵母などが挙げられる。
酵母発酵の期間は、通常の醤油の製造方法において採用される酵母発酵の期間であれば特に限定されないが、例えば、醤油酵母としてZygosaccharomyces rouxiiを用いる場合は、15℃〜30℃で、10日間〜100日間程度、好ましくは14日間〜60日間程度である。さらに、酵母発酵の期間は、エタノールの生成量が最大になる期間であることが好ましい。
なお、酵母発酵は、例えば、酵母発酵に適しており、さらに酵母発酵後に直ちに発酵液を使用し得るような醤油瓶に、醤油諸味液汁及び醤油酵母を入れて、室温で静置して酵母発酵することなどにより簡便に実施できる。
酵母発酵は、予め不溶性固形分が除かれた醤油諸味液汁を用いていることから、酵母発酵後に得られるものは固形分が少ない液体状の酵母発酵物である。醤油諸味液汁の酵母発酵物と米麹との混合物を発酵及び熟成することにより味噌を得る工程では、このようにして得られる酵母発酵物と米麹とを混合して、得られる混合物を発酵及び熟成することにより、味噌を得る。この際、醤油諸味液汁の酵母発酵物は、加熱殺菌などの殺菌処理、遠心分離やろ過などによる菌体除去処理に供せずに、米麹と混合する。
米麹は、味噌の製造において通常使用される米麹であれば特に限定されない。ただし、醤油諸味液汁の酵母発酵物は液体状にあることから、より水分の少ない乾燥した米麹であることが好ましく、水分が10%以下である乾燥米麹であることがより好ましい。
醤油諸味液汁の酵母発酵物と米麹との割合は、本発明の一態様の味噌が得られる限り特に限定されないが、これらのうちいずれか一方が過多であり、他方が過小であると、味噌を得るための発酵及び熟成が不十分になることや長期化することなどのおそれがある。そこで、醤油諸味液汁の酵母発酵物と米麹との割合は、質量比で4〜6:6〜4であることが好ましく、4.5〜5.5:5.5〜4.5であることがより好ましく、5:5であることがさらに好ましい。
醤油諸味液汁の酵母発酵物及び米麹の発酵及び熟成は、常法の味噌の製造方法に準じて実施することができ、特に限定されないが、例えば、通常の味噌の管理に準じて、15℃〜25℃、好ましくは20℃で、数日間〜数週間、好ましくは10日間〜20日間程度で、密閉容器中で適宜撹拌し、及び混和物中の空気を除くことなどにより実施することができる。
本発明の一態様の味噌は、フェネチルアセテートの含有量及び/又はフェネチルアルコールの含有量が所定の量であればよく、好ましくはフェネチルアセテートの含有量及び/又はフェネチルアルコールの含有量が所定の量であり、かつ、デカジエナール及び/又はフルフラールの含有量が所定の量であればよく、本発明の課題解決を妨げない限りは、様々なその他の成分を含むことができる。その他の成分は特に限定されないが、例えば、通常味噌の製造において用いられる成分や食材であり、具体的には砂糖類(砂糖、糖みつ及び糖類)、風味原料(かつおぶし、煮干魚類、こんぶ等の粉末及び抽出濃縮物、魚醤油、タンパク質加水分解物、酵母エキス、肉エキス(チキンエキス、ポークエキス、ビーフエキス、魚肉エキスなど)その他これらに類する食品)、野菜成分(大根、ニンジン、玉ネギ、にんにくなど)、果汁(りんご果汁など)、香辛料(生姜、唐辛子、こしょう、バジル、オレガノなど)、化学調味料(グルタミン酸ソーダ、イノシン酸ソーダなど)、フレーバーなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。その他の成分の含有量は、本発明の課題を解決し得る限り、適宜設定することができる。
本発明の一態様の味噌は、容器に詰めて密封した容器詰味噌とすることができる。容器は特に限定されないが、例えば、アルミなどの金属、紙、PETやPTPなどのプラスチック、ガラスなどを素材とする、1層又は積層(ラミネート)のフィルム袋、レトルトパウチ、真空パック、アルミ容器、プラスチック容器、瓶、缶などの包装容器が挙げられる。容器詰味噌は、それ自体で独立して、流通におかれて市販され得るものである。
本発明の一態様の味噌は、通常の味噌と同様に使用することができる。すなわち、本発明の一態様の味噌は、単独で、又は上記した砂糖類、風味原料、野菜成分、果汁、香辛料、化学調味料、フレーバー、さらにはだし、酸味料、アミノ酸、核酸、有機酸、タンパク質加水分解物、糖、酒、みりん、アルコール、増粘剤、乳化剤、無機塩類などのその他の調味成分を混合して、若しくは組み合わせて、様々な食材の調理や加工法に用いることができる。例えば、本発明の一態様の味噌は、日本食、欧米食、中華食などの各種の料理に使用することができ、具体的には肉料理、焼肉のたれ、味噌汁、味噌風味のインスタント麺、鍋料理用スープ、焼きおにぎり、甜面醤や豆板醤などの中華風調味料、味噌風味のせんべいなどの菓子類、まんじゅう、パン、スープなどに用いることができるが、これらに限定されない。
本発明の一態様の味噌の非限定的な具体的態様として、例えば、フェネチルアセテートの含有量が以下のとおりである味噌が挙げられる:
フェネチルアセテート:50ppb〜500ppb
本発明の一態様の味噌の非限定的な具体的態様として、例えば、フェネチルアルコールの含有量が以下のとおりである味噌が挙げられる:
フェネチルアルコール:2,500ppb〜20,000ppb
本発明の一態様の味噌の非限定的な具体的態様として、例えば、フェネチルアセテート及びフェネチルアルコールの含有量が以下のとおりである味噌が挙げられる:
フェネチルアセテート:50ppb〜500ppb
フェネチルアルコール:2,500ppb〜20,000ppb
本発明の一態様の味噌の非限定的な具体的態様として、例えば、フェネチルアセテート、フェネチルアルコール及びデカジエナールの含有量が以下のとおりである味噌が挙げられる:
フェネチルアセテート:50ppb〜500ppb
フェネチルアルコール:2,500ppb〜20,000ppb
デカジエナール:0ppb〜50ppb
本発明の一態様の味噌の非限定的な具体的態様として、例えば、フェネチルアセテート、フェネチルアルコール、デカジエナール及びフルフラールの含有量が以下のとおりである味噌が挙げられる:
フェネチルアセテート:50ppb〜500ppb
フェネチルアルコール:2,500ppb〜20,000ppb
デカジエナール:0ppb〜50ppb
フルフラール:0ppb〜60ppb
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
[1.被験調味料の調製]
1−1.液体発酵味噌の調製
蒸煮した大豆と割砕した焙煎小麦とを6:4の割合で混合した混合物に、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)の種麹を接種し、常法により43時間製麹して醤油麹を得た。
得られた醤油麹100質量部を、94質量部の食塩水(食塩濃度24%(w/v))に仕込み、さらに醤油乳酸菌(Tetragenococcus halophilus)を加えたものを、常法に従って15〜25℃で、適宜撹拌しながら30日間で乳酸発酵処理することにより、醤油諸味を製造した。得られた醤油諸味を圧搾して固液分離し、さらに得られた圧搾液を珪藻土によるろ過処理に供し、醤油諸味液汁を得た。
得られた醤油諸味液汁に耐塩性酵母(Zygosaccharomyces rouxii)を1.0×10個/mlになるように添加し、撹拌を行わずに20℃で20日間、酵母発酵を行い、醤油諸味液汁の酵母発酵物を得た。
得られた醤油諸味液汁の酵母発酵物100質量部に、乾燥米麹(「乾燥麹;魚沼新潟物産社製)100質量部を混和し、通常の味噌の管理に準じて、密閉容器中で適宜撹拌し、及び混和物中の空気を除きながら、20℃で14日間発酵熟成させ、液体発酵味噌1を得た。
乾燥米麹として、「プラス糀米こうじ」(マルコメ社製)を用いた以外は、液体発酵味噌1と同様にして液体発酵味噌2を得た。また、乾燥米麹として、「プラス糀米こうじ」(マルコメ社製)を用い、さらに醤油諸味液汁の酵母発酵物と乾燥米麹との割合(醤油諸味液汁の酵母発酵物:乾燥米麹)をそれぞれ4:6、6:4、3:7及び7:3にして、液体発酵味噌1と同様にして液体発酵味噌2A〜2Dを得た。
1−2.米麹混合物の調製
酵母発酵する前の醤油諸味液汁と液体発酵味噌1及び2で用いた乾燥米麹とを混合して、酵母発酵していないものを、それぞれ米麹混合物1及び2として得た。
1−3.市販味噌及び醤油麹の準備
市販味噌1〜3として、それぞれ「生詰無添加あわせみそ」(フンドーキン醤油社製)、「プラス糀無添加糀美人」(マルコメ社製)及び「雪ちゃんの日本海味噌」(日本海味噌醤油社製)を用いた。醤油麹1としては、「醤油麹」(内山味噌味店社製)を用いた。
1−4.Pアセテート添加市販味噌の調製
100ml容メスフラスコに純度98%フェネチルアセテート(シグマアルドリッチ社製) 1gを入れ、95%エタノールでメスアップして、フェネチルアセテート原液を調製した(1g/100ml)。次いで、添加量が100μlになり、かつ添加後の市販味噌2におけるフェネチルアセテートの含有量が50ppb、80ppb、100ppb及び150ppbになるように、フェネチルアセテート原液を水で希釈して、各フェネチルアセテート溶液を調製した。
フェネチルアセテート溶液を市販味噌2に添加及び混合することにより、フェネチルアセテートの含有量が50ppb、80ppb、100ppb及び150ppbである、Pアセテート添加市販味噌1〜4を得た。
1−5.Pアルコール添加市販味噌の調製
100ml容メスフラスコに純度98%フェネチルアルコール(東京化成工業株式会社製) 1gを入れ、95%エタノールでメスアップして、フェネチルアルコール原液を調製した(1g/100ml)。次いで、添加量が100μlになり、かつ添加後の市販味噌2におけるフェネチルアルコールの含有量が2,500ppb、3,000ppb、5,000ppb及び8,000ppbになるように、フェネチルアルコール原液を水で希釈して、各フェネチルアルコール溶液を調製した。
フェネチルアルコール溶液を市販味噌2に添加及び混合することにより、フェネチルアルコールの含有量が2,500ppb、3,000ppb、5,000ppb及び8,000ppbである、Pアルコール添加市販味噌1〜4を得た。
1−6.デカジエナール添加液体発酵味噌の調製
100ml容メスフラスコに純度90%(E,E)−2,4−デカジエナール(東京化成工業株式会社製) 1gを入れ、95%エタノールでメスアップして、デカジエナール原液を調製した(1g/100ml)。次いで、添加量が100μlになり、かつ添加後の液体発酵味噌1におけるデカジエナールの含有量が50ppb、60ppb、80ppb及び100ppbになるように、デカジエナール原液を水で希釈して、各デカジエナール溶液を調製した。
デカジエナール溶液を液体発酵味噌1に添加及び混合することにより、デカジエナールの含有量が50ppb、60ppb、80ppb及び100ppbである、デカジエナール添加液体発酵味噌1〜4を得た。
1−7.フルフラール添加液体発酵味噌の調製
100ml容メスフラスコに純度98%フルフラール(東京化成工業株式会社製) 1gを入れ、95%エタノールでメスアップして、フルフラール原液を調製した(1g/100ml)。次いで、添加量が100μlになり、かつ添加後の液体発酵味噌1におけるフルフラールの含有量が60ppb、70ppb、100ppb及び150ppbになるように、フルフラール原液を水で希釈して、各フルフラール溶液を調製した。
フルフラール溶液を液体発酵味噌1に添加及び混合することにより、フルフラールの含有量が60ppb、70ppb、100ppb及び150ppbである、フルフラール添加液体発酵味噌1〜4を得た。
[2.各種方法]
2−1.Brixの測定方法
Brixは、デジタル屈折計(「RX−5000α」;アタゴ社製)を用いて測定した。
2−2.香気成分の測定方法
被験調味料中の香気成分及び内部標準物質として用いた2−オクタノンの含有量は、以下のとおりに、酢酸エチルを用いた抽出処理及び濃縮処理に供して得た香気濃縮物について、標準添加法により、GC−MSを用いて測定した。
被験調味料は超純水を用いて質量比で2倍希釈した。次いで、被験調味料希釈液 5.0gに対し、食塩 2.5g及び2−オクタノン溶液(20ppm)100μLを添加した。次いで、酢酸エチルを2mL添加し、5分間激しく撹拌した後、有機溶媒層を抽出した。この操作を3回繰り返し、得られた有機溶媒層を無水硫酸ナトリウムで脱水後、500μLまで濃縮し香気濃縮物を得た。
香気成分濃縮物をオートサンプラー「Agilent 7693A」(AgilentTechnologies社製)にて、GC−MS「Agilent 5977B MSD」(AgilentTechnologies社製)に導入して分析した。分析はn=4で実施した。GC/MSにおける条件は以下のとおりとした。
測定モード:Scan
カラム:DB−WAX(長さ60m、口径0.25mm、膜厚0.25μm)(AgilentTechnologies社製)
注入口温度:250℃
温度条件:40℃(3min)保持 → 250℃まで6℃/min昇温 → 15min保持
キャリア:高純度ヘリウム、圧力一定モード229kPa
スキャン質量範囲:m/z 30.0〜250.0
イオン化方式:EI
線流速:40 cm/min
オーブン温度:40℃(hold 3分間)→5℃/分→110℃→10℃/分→240℃(hold 5分間)
イオン源温度:240℃
移送管温度:240℃
香気成分及び内部標準物質である2−オクタノンは以下のm/zを用い、ピーク面積を求めた。
フェネチルアセテート:m/z104
フェネチルアルコール:m/z92
デカジエナール:m/z81
フルフラール:m/z86
2−オクタノン:m/z58
2−3.味噌官能評価方法
味噌官能評価は、識別能力を有する10名のパネルにより、被験調味料について、約25℃の室温下で、被験調味料を匙にとって香りを嗅がせて、及び喫食させて、味噌特有の「甘い香り」及び「甘く好ましい味」を評価項目として5段階で評価し、その平均値及び標準誤差を算出した。なお、「甘い香り」及び「甘く好ましい味」は以下の5段階で評価した。
「甘い香り」:口に含まずに鼻だけで感じる甘い香り(オルソネーザル)
1:かなり弱い、2:弱い、3:どちらでもない、4:強い、5:かなり強い
「甘く好ましい味」:口に含んだ際に舌で感じる味(呈味)
1:非常に好ましくない、2:好ましくない、3:普通、4:好ましい、5:非常に好ましい
なお、官能試験を実施するにあたり、該パネル(訓練期間:10〜20年)に対して、味噌の香味の討議並びに評価訓練を行った。具体的には、味噌の香味の特性に対しては、パネル間で討議して、摺り合わせを行うことで、各パネリストが共通認識を持つようにした。また、官能試験の妥当性を担保するために、幾つかの被験調味料を用いて、該パネルに評価訓練をさせ、各パネリストにおける評価の再現性を確認した。これらを行った後、該パネルを用いて、被験調味料について味噌の香味の評価を行った。
2−4.調理官能評価(1)方法
調理官能評価(1)は、上記2−3と同様にして、加熱調理した牛肉の味噌焼きを喫食することにより評価した。牛肉の味噌焼きは、被験調味料を塗った牛肉(切り落とし)を、200℃で予熱したオーブンで約4分間、焦げ色がつくまで加熱することにより調理した。なお、被験調味料のうち、液体発酵味噌1を塗った状態の牛肉及び調理後の牛肉の味噌焼きを撮影した写真を図3に示す。焼き上がりの様子は市販の味噌を塗って焼いたときと同等の仕上がりであった。
被験調味料を喫食して、牛肉に付与された味噌の「甘く好ましい味」を評価項目として、以下の5段階で評価し、その平均値及び標準誤差を算出した。
「甘く好ましい味」
1:非常に好ましくない、2:好ましくない、3:普通、4:好ましい、5:非常に好ましい
2−5.調理官能評価(2)方法
調理官能評価(2)は、上記2−4と同様にして、被験調味料を用いずに牛肉を同様に加熱調理したものをコントロールとして、以下の2段階で評価した。
フェネチルアセテート添加味噌・フェネチルアルコール添加味噌:
×:コントロールと比較して、甘さに変化を感じない
○:コントロールと比較して、甘さを強く感じる
デカジエナール添加味噌・フルフラール添加味噌:
○:コントロールと比較して、甘さに変化を感じない
×:コントロールと比較して、甘さを弱く感じる
[3.液体発酵味噌、市販味噌、醤油麹及び米麹混合物の評価]
3−1.Brix評価
液体発酵味噌1〜2、市販味噌1〜3及び醤油麹1について、Brixを測定した結果を表1に示す。
Figure 2021158997
表1に示すとおり、液体発酵味噌1〜2は、市販味噌と同程度のBrixを有していた。
3−2.香気成分評価
液体発酵味噌1〜2、市販味噌1〜3、醤油麹1及び米麹混合物1〜2について、香気成分を測定した結果を表2に示す。また、市販味噌2に対する液体発酵味噌1〜2の香気成分の比率をまとめたものを表3に示す。
Figure 2021158997
Figure 2021158997
表2及び表3に示すとおり、液体発酵味噌1〜2は、フェネチルアセテート及びフェネチルアルコールの含有量が多かった。
3−3.官能評価
液体発酵味噌1〜2、市販味噌1〜3、醤油麹1及び米麹混合物1〜2について、味噌官能評価を行った結果を、項目「甘い香り」及び「甘く好ましい味」のそれぞれについて表4及び表5に示す。また、調理官能評価(1)の結果を表6に示す。
Figure 2021158997
Figure 2021158997
Figure 2021158997
表4及び表5に示すとおり、液体発酵味噌は、市販味噌及び醤油麹と比べて、それ自体で甘い香りが強くし、かつ塩味が抑えられており甘くておいしいものであった。また、米麹混合物は、酵母発酵していないもの(乳酸発酵後の醤油諸味液汁と米麹との混合物)は、外観は味噌様ではあるものの、酵母発酵していないために原料臭が強く、液体発酵味噌と比べると風味が劣るものであった。このことから、液体発酵味噌は、酵母発酵されたものであることが肝要であることがわかった。
表6に示すとおり、液体発酵味噌を用いた調理品は、肉の脂の広がりを感じ、甘くておいしいものであった。それに対して、市販醤油及び醤油麹を用いた調理品は、塩味及び味噌の風味が強く感じ、嗜好性が劣るものであった。米麹混合物を用いた調理品は、肉につけると原料臭が多少気にならなくなるものであった。
3−4.外観評価
液体発酵味噌1の外観を経日的に観察した結果を図1に示す。図1に示すとおり、液体発酵味噌1は仕込日数が10日を過ぎたあたりから、液体発酵味噌1と同程度に、味噌様を呈し、香気成分を含有していた。
液体発酵味噌2A〜2Dの外観を観察した結果を図2に示す。図2に示すとおり、液体発酵味噌2A及び2Bは、液体発酵味噌2と同程度に、味噌様を呈し、香気成分を含有していた。しかし、液体発酵味噌2C及び2Dは、味噌様を呈するものではなかった。
これらの結果より、液体発酵味噌を製造するに際して、醤油諸味液汁の酵母発酵物と米麹との割合は4〜6:6〜4とし、醤油諸味液汁の酵母発酵物と米麹とを混和した後の発酵熟成期間は10日以上に設定することが好ましいことがわかった。
[4.フェネチルアセテート添加味噌の評価]
フェネチルアセテートを市販味噌に外部添加したPアセテート添加市販味噌1〜4の調理官能評価(2)を行った結果を表7に示す。
Figure 2021158997
表7に示すとおり、フェネチルアセテートを含有量が50ppb以上になるように外部添加した味噌を用いた調理品は、塩味がやわらかく、甘味が増したものであった。また、フェネチルアセテートを含有量が80ppb以上になるように外部添加した味噌を用いた調理品は、優れた嗜好性を有するものであった。
[5.フェネチルアルコール添加味噌の評価]
フェネチルアルコールを市販味噌に外部添加したPアルコール添加市販味噌1〜4の調理官能評価(2)を行った結果を表8に示す。
Figure 2021158997
表8に示すとおり、フェネチルアルコールを含有量が2,500ppb以上になるように外部添加した味噌を用いた調理品は、脂のふくらみを感じ、甘味が増したものであった。また、フェネチルアルコールを含有量が3,000ppb以上になるように外部添加した味噌を用いた調理品は、優れた嗜好性を有するものであった。
[6.デカジエナール添加味噌の評価]
デカジエナールを液体発酵味噌1に外部添加したデカジエナール添加液体発酵味噌1〜4の調理官能評価(2)を行った結果を表9に示す。
Figure 2021158997
表9に示すとおり、デカジエナールを含有量が60ppb以上になるように外部添加した味噌を用いた調理品は、味の広がりが損なわれて、塩味が増し、甘味が低減したものであった。
[7.フルフラール添加味噌の評価]
フルフラールを液体発酵味噌1に外部添加したフルフラール添加液体発酵味噌1〜4の調理官能評価(2)を行った結果を表10に示す。
Figure 2021158997
表10に示すとおり、フルフラールを含有量が70ppb以上になるように外部添加した味噌を用いた調理品は、味の広がりが損なわれて、塩味が増し、甘味が低減したものであった。
本発明の一態様の味噌は、種々の調味料や飲食品に供することにより、味噌本来の風味に加えて、肉料理を調理する際に使用することにより、料理に広がりのある甘味を付与するために利用することが期待できるものである。


Claims (5)

  1. フェネチルアセテートの含有量及び/又はフェネチルアルコールの含有量が下記(1)〜(3)のいずれかの量である、味噌。
    (1)フェネチルアセテートの含有量が50ppb以上である
    (2)フェネチルアルコールの含有量が2,500ppb以上である
    (3)フェネチルアセテートの含有量が50ppb以上であり、かつ、フェネチルアルコールの含有量が2,500ppb以上である
  2. さらにデカジエナールの含有量が50ppb以下である、請求項1に記載の味噌。
  3. さらにフルフラールの含有量が60ppb以下である、請求項1〜2のいずれか1項に記載の味噌。
  4. 醤油麹と食塩水とを混合処理及び乳酸発酵処理に供して得られた醤油諸味を、固液分離処理に供して醤油諸味液汁を得る工程、及び
    前記醤油諸味液汁を醤油酵母による酵母発酵に供することにより得られる醤油諸味液汁の酵母発酵物と米麹との混合物を、発酵及び熟成することにより味噌を得る工程
    を含む、味噌の製造法。
  5. 前記醤油諸味液汁の酵母発酵物と前記米麹との質量比が4〜6:6〜4である、請求項4に記載の味噌の製造方法。
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