JP2021155836A - 金属ナノ粒子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】液相法を用いて、粒子径のばらつきが低減された金属ナノ粒子を、比較的大量に、安定的に製造する方法を提供する。【解決手段】ここで開示される技術によると、液相法による金属ナノ粒子の製造方法が提供される。当該方法は、以下の工程:上記金属ナノ粒子の金属核形成のための原料化合物および還元剤を含む反応系となる溶液を準備する工程S1;上記溶液を所定の温度域まで加熱し、該温度域において上記原料化合物の還元による上記核を形成する工程S2;上記溶液をさらに加熱することにより、所定の粒子径の金属ナノ粒子となるまで上記核を成長させる工程S3;および上記核成長が実質的に停止する温度域まで上記溶液を急冷する工程S4、ここで平均急冷速度を2℃/分以上に設定する;を包含する。【選択図】図1

Description

本発明は、金属ナノ粒子の製造方法に関する。より詳しくは、液相法によって金属ナノ粒子を製造する方法に関する。
近年、種々の用途向けに金属微粒子の研究開発が行われている。例えば、金属微粒子は、その金属元素に応じて、電子機器に搭載されるセラミック電子部品(例えば回路基板や積層コンデンサ)に含まれる導電性材料として、あるいは、車両の燃焼ガス排気系統に含まれる排ガス浄化触媒として好適に使用され得る。金属微粒子をかかる用途において使用する場合は、求められる特性や性能が、安定的に実現されるように、該金属微粒子の形状や粒子径がほぼそろっていることが望ましい。
また、近年では、電子機器の小型化や高集積化にともない、上記のようなセラミック電子部品にも小型化や多層化が求められており、例えば平均粒子径が1μm未満である金属微粒子(即ち、金属ナノ粒子)を製造する技術への要求がさらに高まっている。
ところで、金属ナノ粒子を製造する方法としては、種々の化学的手法や物理的手法が挙げられる。液相法や気相法等の化学的手法が良く用いられている。例えば、以下の特許文献1〜3にみられるように、金属ナノ粒子を大量生産し得る方法の1つとして、液相法が研究されている。
特許第5706881号公報 特開2013−7082号公報 特開2013−7070号公報
かかる液相法による金属ナノ粒子の製造方法では、おおまかにいって、溶液中で、金属ナノ粒子の原料化合物を、還元剤を用いて還元することによって、所望する金属ナノ粒子を得ることができる。
しかしながら、従来の液相法による金属ナノ粒子の製造過程においては、反応液中の温度分布を均一に維持するのが重要であるところ、例えば、金属ナノ粒子を大量生産する場合においては、かかる維持が困難であった。反応液中の温度分布が不均一であると、例えば金属ナノ粒子の成長度合いを調整することができず、製造された金属ナノ粒子の粒子径にばらつきが大きくなる問題が生じ得た。金属ナノ粒子の粒子径がばらつくことは、最終的な製品の質的なばらつきへと直結するため好ましくない。そこで、粒子径のばらつきが低減された金属ナノ粒子を、比較的大量に、かつ安定的に製造することができる技術の開発が求められていた。
そこで、本発明はかかる課題を解決すべく創出されたものであり、その目的とするところは、液相法を用いて、粒子径のばらつきが低減された金属ナノ粒子を、比較的大量に、かつ、安定的に製造する方法を提供することである。
本発明者らは、液相法による金属ナノ粒子の製造において、金属ナノ粒子を形成する各々の核の成長が実質的に停止するタイミングにばらつきが生じると、金属ナノ粒子の粒子径にばらつきが生じやすいことに着目した。そこで、本発明者らは、上記製造方法に、溶液を急速に冷却するステップを備えることによって、金属ナノ粒子の粒子径のばらつきが抑制され、均一性が向上された金属ナノ粒子が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
ここで開示される技術によると、液相法による金属ナノ粒子の製造方法が提供される。
当該方法は、以下の工程:
上記金属ナノ粒子の金属核形成のための原料化合物および還元剤を含む反応系となる溶液を準備する工程;
上記溶液を所定の温度域まで加熱し、該温度域において上記原料化合物の還元による上記核を形成する工程;
上記溶液をさらに加熱することにより、所定の粒子径の金属ナノ粒子となるまで上記核を成長させる工程;および
上記核成長が実質的に停止する温度域まで上記溶液を急冷する工程、ここで平均急冷速度を2℃/分以上に設定する;
を包含する。
なお、本明細書ならびに特許請求の範囲において「金属ナノ粒子」という場合は、特に1粒単位を指している場合を除いて、多数のナノ粒子の集団(即ち、particles)を意味している。例えば、「金属ナノ粒子を含む材料」等における当該金属ナノ粒子は、1粒ではなくparticlesとしての金属ナノ粒子を指す。日本語では、単数か複数かが曖昧なため、「金属ナノ粒子」の意味を明確にするために上記のように規定する。
上記構成によると、金属ナノ粒子の粒子径のばらつきの発生が高度に抑制された、均一性が高い金属ナノ粒子を、比較的大量に、かつ安定的に製造することができる。
従来の技術では、核を成長させるために加熱処理を行い、所定の時間が経過後に、当該加熱処理を停止して、核成長を停止させている。しかしながら、上記のように、比較的大量の金属ナノ粒子を製造する場合において、液相法では、反応溶液中の温度分布に不均一さが生じやすく、加熱が停止されても、核成長が実質的に停止するタイミングは、各金属ナノ粒子によって異なり得た。このことは、金属ナノ粒子の粒子径にばらつきを生じさせる要因の一つとなり得た。ここで開示される技術によると、上記のような急冷工程を包含させることによって、核成長を実質的に停止するタイミングを調整することができる。これによって、金属ナノ粒子の成長度合いを調整して、粒子径のばらつきの発生を抑制することができる。
好ましくは、上記金属ナノ粒子は、鉄族元素および貴金属元素のうちのいずれかの金属のナノ粒子であり、上記原料化合物は該金属の塩または錯体で構成されている。
かかる構成によると、鉄族元素および貴金属元素のうちのいずれかの金属のナノ粒子の製造において、金属ナノ粒子の粒子径のばらつきの発生を抑制することができる。これによって、均質な鉄族ナノ粒子および貴金属ナノ粒子を安定的に得ることができる。
鉄族ナノ粒子および貴金属ナノ粒子は、例えばセラミック電子部品に含まれる導電性材料として好適に用いられている。そのため、上記構成は、セラミック電子部品、ひいては該セラミック電子部品を搭載する電子機器の品質を安定化させることができる。また、かかるナノ粒子は、車両の燃焼ガス(排ガス)の浄化触媒や、太陽電池等の電極に含まれる触媒として好適に用いられている。そのため、上記構成は、当該用途に対しても好ましいといえる。
また好ましくは、上記金属はニッケルまたは銀である。
かかる構成の製造方法によると、均質性に優れるニッケルナノ粒子または均質性に優れる銀粒子を得ることができる。
また、ここで開示される技術の好ましい一態様では、上記還元剤はアルキルアミンで構成されている。
上記の構成によると、上記の効果に加えて、金属ナノ粒子の形成効率を高めることができる。
アルキルアミンは、還元剤として機能するほか、反応溶液における溶剤となり得る。また、アルキルアミンは分散剤としても機能することができ、反応溶液における、核や金属ナノ粒子の分散性を向上させることができる。凝集・沈降しやすい金属ナノ粒子を製造する場合であっても、溶液における好適な分散性を付与して、かかる凝集や沈降を抑制することができる。
また、ここで開示される技術の好ましい一態様では、上記平均急冷速度を5℃/分以上に設定する。
かかる構成によると、比較的大きな容量であっても、反応溶液中の全体にわたってほぼ同じ時期に、核成長を停止させることができる。
また、ここで開示される技術の好ましい一態様では、冷却用の水を管内部に連続的に供給可能な冷却管を上記溶液中に配置しておき、上記急冷工程において、上記冷却管中に冷却用水を連続的に供給し、該水の潜熱による冷却によって上記平均急冷速度を実現する。
かかる構成によると、反応溶液中の温度分布の均一性をより一層向上させることができ、比較的大きな容量であっても、効率的に反応溶液の温度を均一に低下させることができる。
また、ここで開示される技術の好ましい一態様では、少なくとも上記核形成工程および上記核成長工程には、上記溶液中に不活性ガスを吹き込むことが含まれる。
かかる構成によると、上記工程において、核の表面に酸化皮膜が形成されるのを抑制することができ、効率的な核成長を実現することができる。
また、ここで開示される技術の好ましい一態様では、上記核成長工程の終了前の一定期間において、上記溶液中に吹き込むガス種を、上記不活性ガスから酸化性ガスに置換する。
酸化性ガスが溶液中に吹き込まれることによって、核の表面に酸化皮膜が形成され、核成長が停止される。上記の構成によると、核成長をより精度よく停止させることができる。
また、ここで開示される技術の好ましい一態様では、上記溶液を誘導加熱(IH)式の加熱容器に収容し、上記溶液の加熱は、該加熱容器を誘導加熱することによって行われる。
かかる構成によると、本発明の効果がより一層好適に発揮され、より均一性に優れた金属ナノ粒子を、比較的大量に、かつ安定的に製造することができる。
一実施形態に係る金属ナノ粒子の製造方法を説明するための工程図である。 一実施形態に係る金属ナノ粒子の製造方法を実施するための製造装置の概略構成図である。 一実施例に係る金属ナノ粒子(ニッケルナノ粒子)を製造する方法を実施した際の、経過時間と温度との推移を示すグラフである。 サンプル2に係るニッケルナノ粒子のFE−SEM観察画像である。 サンプル4に係るニッケルナノ粒子のFE−SEM観察画像である。 サンプル6に係るニッケルナノ粒子のFE−SEM観察画像である。 サンプル10に係るニッケルナノ粒子のFE−SEM観察画像である。 サンプル13に係る銀ナノ粒子のFE−SEM観察画像である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、本明細書において「金属ナノ粒子」とは、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM;Field Emission-Scanning Electron Microscope)の観察画像に基づいて算出される平均粒子径が、1nm以上1μm未満のものをいう。より狭義には、概ね20nm以上で300nm以下にSEM像に基づく平均粒子径が属するものをいう。例えば20〜300nm、40〜200nmあるいは50〜150nmの範囲にSEM像に基づく平均粒子径が属する微粒子は、ここでいう「ナノ粒子」に包含される典型例であり得る。また、本明細書において「平均粒子径」とは、FE−SEMの観察画像に基づく個数基準の粒度分布において、小径側から累積50%に相当する粒子径(D50粒子径ともいう。)をいう。また、本明細書において数値範囲を示す「X〜Y」の表記は、X以上Y以下の意と共に、「好ましくはXより大きい」および「好ましくはYより小さい」の意を包含するものとする。
ここで開示される技術によると、液相法による金属ナノ粒子の製造方法が提供される。
金属ナノ粒子を構成する金属としては、種々の金属元素が挙げられる。なかでも、鉄族元素(鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni))、銅(Cu)元素、貴金属元素(金(Au)、銀(Ag)、および、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)等の白金族元素)、およびこれらの合金が、金属ナノ粒子の主構成元素として好適である。これらのなかでも、金属ナノ粒子は、鉄族元素および貴金属元素のうちのいずれかの金属のナノ粒子であることが好ましい。さらに好ましくは、金属ナノ粒子は、ニッケル元素または銀元素の金属のナノ粒子である。
なお、主構成金属元素とは、金属ナノ粒子を構成する主体となる金属元素をいう。金属ナノ粒子は、理想的には金属元素のみから構成されるものであるが、不純物として他の金属元素や非金属元素を含むものであってもよい。TG−DTAに基づいて測定される金属ナノ粒子(焼成前の集合体をいう。)全体の重量(100wt%)に占める有機物含有量が、概ね3.5wt%以下、さらには3.0wt%以下であることが好ましく、2.5wt%以下であることが特に好ましい。
まず、ここで開示される製造方法において好適に使用される材料について説明する。
<原料化合物>
金属ナノ粒子の金属核形成のための原料化合物は、金属ナノ粒子を構成する金属元素を含む金属化合物である。金属化合物としては、この種の金属ナノ粒子を作製するために使用される金属化合物を特に制限なく使用することができ、例えば塩、錯体、またはアルコキシドであり得る。なかでも、金属塩および金属錯体は、溶液中で金属イオンが解離しやすいため、好ましい。
塩は、有機酸塩および無機塩であってもよい。有機酸塩としては、例えば、シュウ酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩等のカルボン酸塩が挙げられる。無機塩としては、例えば、フッ化塩、塩化塩、臭化塩、ヨウ化塩等のハロゲン化塩;硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩等が挙げられる。なかでも、不純物が生じにくいことと、解離温度(分解温度)が比較的低いこととから、有機酸塩や炭酸塩、特にはカルボン酸塩を好ましく用いることができる。カルボン酸塩は、無水物および水和物のいずれであってもよいが、安全性の観点から、典型的には水和物を使用し得る。
<還元剤>
還元剤としては、この種の金属ナノ粒子を製造するために用いられる還元剤を特に制限なく使用することができ、例えばアミン化合物が好適例として挙げられる。
1つまたは2つ以上のアミノ基を有する化合物であればよく、この種の用途に使用し得ることが知られている従来公知のものを特に限定なく用いることができる。
アミン化合物としては、室温で固体または液体であるものを使用することができる。
アミン化合物が室温で液体の場合は、金属ナノ粒子の製造において溶媒としても機能し得るため、好ましい。また、アミン化合物が室温で液体であると、作製されたナノ粒子の洗浄を行う際に、未反応のアミン化合物をより容易に除去することができる。
アミン化合物が室温で固体の場合は、ここで開示される製造方法に包含される、加熱を含む工程において液体であればよい。あるいは、アミン化合物が室温で固体の場合は、溶媒を用いて溶解すればよい。
アミン化合物は、金属ナノ粒子が形成される際に、金属ナノ粒子の表面を保護する性質を有することが知られている。金属ナノ粒子の表面にアミン化合物が付着すると、溶液中における金属ナノ粒子の分散性が向上し得る。換言すれば、アミン化合物は溶液中において保護剤(分散剤)として機能することができる。金属ナノ粒子の表面保護作用の観点から、アミン化合物は第1級アミンが好ましい。
アミン化合物は、例えば1種または2種以上のアルキルアミンであることが好ましい。アミン化合物は、炭素数が概ね20以下のアミン化合物からなるとよい。
アミン化合物としては、従来公知のものを特に限定なく用いることができる。具体例としては、例えば、n−ブチルアミン、ペンチルアミン、2−メトキシエチルアミン、2−エトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、オクチルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ミリスチルアミン、ラウリルアミン等の第1級脂肪族アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルブチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルイソプロピルアミン、ジオクチルアミン等の第2級脂肪族アミン;トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリオクチルアミン等の第3級脂肪族アミン;等の炭素数が20以下のアミン化合物が例示される。
なかでも、オレイルアミンは、ここで開示される製造方法における温度条件では、液体状態であり、優れた還元作用を有し、優れた分散性を有する。換言すれば、オレイルアミンは、かかる方法において、溶媒、還元剤、および分散剤としての少なくとも3つの剤として機能し得るため、好ましい。
<任意の成分>
溶液は、上記した原料化合物と還元剤との2成分で構成されていてもよく、ここで開示される技術の効果を著しく低下させない限りにおいて、必要に応じてその他の任意成分を含んでもよい。任意成分としては、従来公知のもののなかから1種を単独で、または2種以上を組み合せて用いることができる。任意成分の一例として、例えば、金属ナノ粒子の反応性の調整や分散安定性の向上等を目的とした添加剤が挙げられる。具体的には、反応触媒、反応調整剤、粘度調整剤、分散剤等が挙げられる。
また、上記任意成分の他の例としては、溶媒が挙げられる。溶液には、この種の用途に使用し得ることが知られている各種の溶媒を添加することができる。また、このような溶媒は、ここで開示される技術の効果を著しく低下させない限りにおいて、不可避的な不純物を含んでいてもよい。意図的にあるいは不可避的に溶媒に含まれ得る成分として、例えば、上記以外のアルコール系溶剤、アミド系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アミン系溶剤、エーテル系溶剤、ニトリル系溶剤、炭化水素系溶剤等の有機溶剤や、水が挙げられる。
次いで、ここで開示される技術によって提供される、金属ナノ粒子の製造方法について、図1を参照しつつ説明する。
図1に示されるように、製造方法は、おおまかにいって、溶液準備工程S1、核形成工程S2、核成長工程S3、および、急冷工程S4を包含する。
<溶液準備工程>
溶液準備工程S1では、まず、金属ナノ粒子の金属核形成のための原料化合物および還元剤を含む、反応系となる溶液を準備する。
溶液の調製は、原料化合物が熱分解しない温度で行う。溶液の調製は、概ね40℃以下、典型的には室温(例えば25±10℃、好ましくは25±5℃)で行うとよい。溶液の調製は、大気雰囲気下で行ってもよく、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気下で行ってもよい。
原料化合物および還元剤を混合する順序は特に限定されない。例えば全てを同時に添加して混合してもよい。後述のように、任意成分として溶媒を使用する場合は、溶媒に、原料化合物および還元剤のうちの一方を溶媒中に溶解または分散させ、次いでもう一方を添加して混合してもよい。
また、溶液の調製に際しては、攪拌を行うことが好ましい。攪拌操作によれば、比較的短時間で均質性が高い溶液を得ることができる。
<核形成工程>
核形成工程S2では、上記溶液準備工程S1で得られた溶液を、第1の温度T1まで加熱する。
核の表面に酸化皮膜が形成されるのを抑制するため、本工程は、不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスをいう。以下同じ。)を溶液中に吹き込みながら行うことが好ましい。また、溶液内の温度分布や濃度分布の均一さを高める観点から、攪拌操作を行うことが好ましい。
溶液中には、還元剤(アミン化合物)が配位している原料化合物(金属化合物)が含まれる。この溶液を第1の温度T1まで加熱することにより、アミン化合物が配位している金属化合物の表面で均質に(バランスよく)反応を生じさせることができる。これによって、金属ナノ粒子の核(前駆体)となるクラスターや、クラスターの成長した金属ナノコロイドを生成することができる。
第1の温度T1は、溶液準備工程S1の温度よりも高い温度であって、原料化合物の熱分解温度よりも低い温度であるとよい。第1の温度T1は、溶液の組成、例えば、原料化合物の種類や配合比率、還元剤の種類や配合比率、有機溶剤の添加量ならびにその種類、水分の添加量等によっても異なり得る。第1の温度T1は、金属ナノ粒子の均質性をより高める観点から、還元剤が配位している原料化合物の熱分解温度よりも、概ね5〜90℃低い温度、典型的には10〜80℃低い温度、好ましくは15〜70℃低い温度であるとよい。
例えば、熱分解温度が250℃前後のアミン化合物が配位しているニッケル化合物を使用する場合は、第1の温度T1を概ね160〜205℃とすることができる。
また、熱分解温度が110℃前後のアミン化合物が配位している銀化合物を使用する場合は、第1の温度T1を概ね80〜90℃とすることができる。このように、製造対象とする金属元素の種類に応じてT1を決定するとよい。
第1の温度T1までは、生産効率を向上する観点から、昇温速度ΔT1を決定することができる。特に限定するものではないが、昇温速度ΔT1は、概ね0.1〜50℃/分、例えば1〜20℃/分としてもよい。
好適な一態様では、核生成を飽和させない程度に、第1の温度T1を保持する。第1の温度T1を保持する保持時間H1は、例えば、第1の温度T1や上記した溶液の組成(例えば、原料化合物の種類、溶媒の種類、水分の添加量等)等によっても異なり得るため、特に限定されない。保持時間H1は、溶液中での核の飽和濃度を超えないように設定するとよい。これにより、溶液中で核同士が融合することを抑えることができる。
下記実施例に記載されているように、原料化合物として酢酸ニッケル四水和物、還元剤としてオレイルアミンを使用する場合は、保持時間H1は、概ね240分以下、例えば10〜180分とすることができる。
下記実施例に記載されているように、原料化合物としてシュウ酸銀、還元剤としてn−ブチルアミンおよびn−オクチルアミン、溶媒としてn−ブタノールを使用して、第1の温度T1を85℃とする場合等では、保持時間H1を、概ね20分以下、例えば5〜15分とするとよい。
金属ナノ粒子の核は、後述する核成長工程で得られる金属ナノ粒子よりも平均粒子径が小さく、例えば10nm以下である。本工程における核の生成量は、金属ナノ粒子の粒子径を決定する1つの重要なパラメータとなり得る。核の生成量は、例えば、第1の温度T1や、第1の温度T1を保持する保持時間H1によって調整することができる。言い換えれば、上記パラメータを可変することによって、金属ナノ粒子の粒子径を、20nm〜300nm程度(例えば50nm〜150nm)に調整することが可能である。一般には、第1の温度T1を高く設定するほど核の生成量が多くなり、平均粒子径の小さい金属ナノ粒子が得られやすい。
核形成工程S2は、溶液中から水分を除去するための加熱処理(即ち、脱水処理)を含んでもよい。例えば、溶液中に水分が含まれる場合や、原料化合物として、金属塩の水和物を用いた場合等に、必要に応じて行うことができる。
核形成を効率的に行う観点から、当該脱水処理を行う場合は、上記第1の温度T1への昇温前に行うことが好ましい。具体的には、例えば120℃〜150℃程度の温度条件で、溶液を10分〜180分程度加熱することによって、溶液の脱水を行うことができる。
<核成長工程>
核成長工程S3では、上記第1の温度T1の溶液を、第2の温度T2まで加熱する。本工程は、核形成工程S2に引き続いて連続的に行ってもよいし、例えば溶液を一旦室温(例えば25±10℃)まで冷却した後、第2の温度T2まで加熱してもよい。
核の表面に酸化皮膜が形成されるのを抑制するため、本工程は、不活性ガスを溶液中に吹き込みながら行うことが好ましい。また、溶液内の温度分布や濃度分布の均一さを高める観点から、攪拌操作を行うことが好ましい。
溶液中には、核形成工程で生成された金属ナノ粒子の核(前駆体)が含まれる。この溶液を第2の温度T2まで加熱することにより、原料化合物の還元で新たに生成されるゼロ価の金属が核に安定して融合される。このことにより、核が均質に成長して、溶液中に金属ナノ粒子が安定的に生成される。
第2の温度T2は、原料化合物の熱分解温度以下の温度である。第2の温度T2は、原料化合物の熱分解温度よりも0〜40℃低い温度、例えば10〜30℃低い温度であるとよい。第2の温度T2は、溶液の量、溶液の組成(例えば、原料化合物の種類、溶媒の種類、水分の添加量等)等によっても異なり得る。
原料化合物がニッケル化合物であり、アミン化合物が配位している該ニッケル化合物の熱分解温度が250℃前後の場合は、第2の温度T2を、概ね210〜250℃とすることができる。
原料化合物が銀化合物であり、該銀化合物の熱分解温度が110℃前後の場合は、第2の温度T2を、概ね90〜110℃とすることができる。
特に限定されないが、第2の温度T2までは、昇温速度ΔT2で徐々に昇温するとよい。昇温速度ΔT2は、核成長を均質に生じさせる観点から、昇温速度ΔT1よりも小さいか、昇温速度ΔT1と同程度であることが好ましく、生産効率とバランスする観点からは、概ね0.1〜10℃/分、例えば1〜6℃/分とするとよい。
原料化合物の分解および還元が完了するまで、第2の温度T2を保持することが好ましい。第2の温度T2を保持する保持時間H2は、例えば、昇温速度ΔT2や上記した溶液の量および組成例えば、原料化合物の種類、溶媒の種類、水分の添加量等)等によっても異なり得るため、特に限定されない。
成長した核同士の連結を抑える観点や生産効率を向上する観点からは、保持時間H2を、概ね20分以下、例えば、10〜15分とするとよい。また、保持時間H1と保持時間H2との合計は、概ね200分以下、典型的には160分以下、例えば15〜150分とするとよい。
特に限定されないが、核成長工程S3は、該工程の終了前の一定期間において、溶液中に吹き込むガス種を不活性ガスから酸化性ガス(例えば酸素ガス)に置換し、酸化性ガスを吹き込むことが含まれてもよい。これによって、溶液中に生成した金属ナノ粒子の表面に酸化皮膜を形成することができる。金属ナノ粒子の成長の停止をより確実に行うためには、当該処理を実施するとよい。
酸化性ガスを吹き込む期間は、特に限定されないが、金属ナノ粒子の表面の少なくとも一部に酸化皮膜が形成されるまでの期間であり得る。核成長を確実に停止させるためには、2〜60分程度であることが好ましい。また、核成長を停止させるタイミングを一定とするためには、温度を上記第2の温度T2から変化させずに酸化性ガスへの置換をすることが好ましい。
なお、酸化性ガス吹き込み期間の終了後は、溶液に吹き込むガス種を不活性ガスに切り替えてもよく、切り替えなくてもよい。
<急冷工程>
急冷工程S4では、第2の温度T2の溶液を、第3の温度T3まで冷却する。本工程は、核成長工程S3に引き続いて連続的に行なわれる。本工程においては、溶液内の温度分布や濃度分布の均一さを高める観点から、攪拌操作を行うことが好ましい。
溶液中には、核成長工程で生成された金属ナノ粒子が含まれる。この溶液を所定の平均急冷速度で急冷することにより、溶液中に含まれる各々の核について、成長が停止するタイミングをほぼ同じものに揃えることができる。
第3の温度T3は、少なくとも、核形成工程S2における第1の温度T1よりも低い温度である。第3の温度T3は、第1の温度T1よりも40〜180℃低い温度、例えば60〜160℃低い温度であるとよい。第3の温度T3は、溶液の量、溶液の組成(例えば、金属化合物の種類、溶媒の種類、水分の添加量等)等によっても異なり得る。
平均急冷速度ΔT3は、核成長停止のタイミングを揃える観点から、2℃/分以上(例えば2℃/分より大きい)に設定することが好ましい。平均急冷速度ΔT3は大きいほど核成長停止のタイミングを揃える効果が向上する傾向がある。本発明の効果をよりよく発揮させる観点からは、より好ましくは4℃/分以上、さらに好ましくは5℃/分以上(特に好ましくは7℃/分以上)とするとよい。なお、平均急冷速度ΔT3の上限は、概ね10℃/分程度とすることが好ましい。
以上のようにして、溶液中に金属ナノ粒子を生成させることができる。かかる製造方法によれば、所望の粒子径からのバラつきが少ない金属ナノ粒子を、高い再現性で得ることができる。例えば、平均粒子径の変動係数(CV)が、概ね0.16未満、0.15以下(例えば0以上0.15未満)に抑えられた金属ナノ粒子を得ることができる。
得られた金属ナノ粒子は、例えば溶液から静置分離あるいは遠心分離することができる。上清を取り除いた後、適当な溶媒を用いて洗浄し、乾燥させて、金属ナノ粒子を得ることができる。この金属ナノ粒子を用いて導電性ペーストを作製することができる。あるいは、上清を除去した後、湿潤状態のままで導電性ペーストの調製に用いてもよい。湿潤状態のままで導電性ペーストの調製に用いると、金属ナノ粒子の凝集を抑制して、取扱性を向上することができる。
次いで、ここで開示される技術を実施するための製造装置について、図2を適宜参照しつつ詳細に説明する。図2は、一実施形態に係る金属ナノ粒子の製造方法を実施するための製造装置の概略構成図である。
図2に示されるように、製造装置100は、おおまかにいって、容器10、攪拌装置20、配管30、加熱装置40、急冷手段50、熱電対60、および図示されない制御装置を備える。製造装置100の一連の動作(例えばバルブの開閉、加熱装置40や急冷手段50の作動等)は、時間情報および熱電対60によって取得される温度情報に基づいて、製造装置によって制御される。
容器10は、金属ナノ粒子を製造するための溶液を収容する容器である。容器10は、熱を伝導する性質を有する材質(例えばステンレス等の金属材料)で構成されている。容器10は排出バルブ10aを備え、該排出バルブ10aから、容器10の内部に収容された溶液を排出することができる。容器10の大きさは、特に限定されないが、ここで開示される技術が比較的大きな容量(例えば、仕込み溶液量が50L〜100L程度、あるいは最大で150L程度)における金属ナノ粒子の製造に適用されることを考慮すると、例えば最大100L程度またはそれ以上(例えば150L〜200L)の容量の溶液を収容可能な大きさであることが好ましい。
攪拌装置20は、容器10に収容された材料を攪拌する装置である。攪拌装置20としては、攪拌操作の簡便性の観点から、攪拌子として回転羽根を備えるものであることが好ましい。回転羽根の大きさおよび形状は、材料を十分に攪拌できるものである限りは特に限定されない。
配管30は、容器10にガスを導入できるように構成されている。配管30は分岐点を有している。これによって、複数種類のガスを容器10に導入することができる。配管30は、当該分岐点を介して容器10に不活性ガスを導入するための配管32、および、必要に応じて容器10に酸化性ガスを導入するための配管34を備える。配管32は、不活性ガスの導入量を調節するためのバルブ321を備える。配管34は、酸化性ガスの導入量を調節するためのバルブ341を備える。バルブ321が「開」の状態では、不活性ガスが配管32および配管30を介して容器10の内部(即ち、溶液中)に導入される。バルブ321が「閉」の状態では、不活性ガスは容器10に導入されない。一方、バルブ341が「開」の状態では、酸化性ガスが配管34および配管30を介して容器10の内部(即ち、溶液中)に導入される。バルブ341が「閉」の状態では、酸化性ガスは容器10に導入されない。
加熱装置40は、容器10に収容された溶液を加熱できるように構成されている。加熱装置40としては、ここで開示される製造方法の実施において、所望の温度調節が実現される限り特に限定されず、溶液の量、溶液の組成(例えば、金属化合物の種類、溶媒の種類、水分の添加量等)等に応じて適当な従来の加熱装置(マイクロ波発生装置、オイルバス、マントルヒータ等)を使用することができるが、かかる加熱装置としては、誘導加熱(IH:Induction Heating)方式を採用することが特に好ましい。
溶液における温度分布の均一性を向上させる観点からは、加熱装置40は誘導加熱コイルであることが好ましい。容器10に収容された溶液を、誘導加熱することによって、加熱を含む工程を効率よく実施することができる。
急冷手段50は、容器10に収容された溶液を急速冷却できるように構成されている。急冷手段50としては、特に限定されないが、例えば水の潜熱を利用することが挙げられる。
図2に示されるように、急冷手段50は、空気導入管52、冷却用水導入管54、および、空気または冷却用水を管内部に連続的に供給可能な冷却管56を備える。空気導入管52は、冷却管56に導入する空気の量を調整するバルブ521を備える。冷却用水導入管54は、冷却管56に導入する冷却用水の量を調整するバルブ541を備える。冷却管56は、図示されるようにコイル状であり、容器10に収容された溶液中に配置される。冷却管56に導入された冷却用水は、容器10の熱によって蒸発する。冷却用水の蒸発によって、容器10内の溶液が冷却される。冷却管56に設けられたバルブ561が開栓されると、水蒸気が排出される。
熱電対60は、容器10の温度変化を検知する温度センサである。熱電対60によって取得された温度情報は製造装置100の制御装置に送られ、該制御装置によって製造装置100の動作が制御される。
以下、上記材料および上記構成の製造装置を用いて金属ナノ粒子を製造する好適な形態につき、金属ナノ粒子としてニッケルナノ粒子を製造する場合を例として具体的に説明するが、本発明における金属ナノ粒子をこれに限定する意図ではない。
<ニッケルナノ粒子の製造>
―溶液準備工程S1―
原料化合物としてのニッケル酢酸塩四水和物、および還元剤としてのオレイルアミンをそれぞれ別に、あるいは混合された状態で、容器10に投入し、ニッケルナノ粒子を形成するための反応溶液たる溶液を得る。この溶液を、攪拌装置20を用いて攪拌する。
―核形成工程S2―
バルブ321を開栓して溶液中に不活性ガスを吹き込む。加熱装置40(ここでは誘導加熱コイル)のスイッチをオンにして、溶液を加熱し、熱電対60によって検知される温度が120℃〜150℃の範囲内における目的の温度となった時点で、昇温をやめて、溶液を当該温度付近で10分〜180分程度維持する。これにより、ニッケル酢酸塩四水和物を脱水することができる。
上記脱水処理終了後、溶液を昇温速度ΔT1で加熱する。溶液の温度が、第1の温度T1となった時点で、昇温をやめて、溶液を当該温度付近で保持時間H1の期間維持する。ここで、温度T1は160〜205℃(例えば180〜200℃)であり得る。また、保持時間H1は、概ね240分以下(例えば10〜180分)とすることができる。これにより、上記ニッケル化合物を還元してニッケル核が形成される。
―核成長工程S3―
保持時間H1の経過後、溶液をさらに昇温速度ΔT2で加熱する。溶液の温度が、第2の温度T2となった時点で、昇温をやめて、溶液を当該温度付近で保持時間H2の期間維持する。ここで、温度T2は概ね210〜250℃であり得る。また、保持時間H2は、概ね10〜25分程度であり得る。これにより、所定の粒子径のニッケルナノ粒子を得ることができる。
核成長工程S3を終了する前の一定期間に酸化性ガスの吹き込みを行う場合は、バルブ321を閉栓して不活性ガスの吹き込みを停止し、バルブ341を開栓する。そうすると、酸化性ガスが配管34を通って溶液中に吹き込まれる。この状態を10〜60分程度維持する。これにより、ニッケルナノ粒子の表面に酸化皮膜が形成され、これ以上の核成長を停止することができる。
―急冷工程S4―
酸化性ガスの吹き込みを行った場合は、バルブ341を閉栓して酸化性ガスの吹き込みを停止し、バルブ321を開栓する。そうすると、不活性ガスが配管32を通って溶液中に吹き込まれるようになる。ただし、溶液に吹き込むガス種は酸化性ガスであっても不活性ガスであってもよく、不活性ガスへの置換を行わなくてもよい。
急冷工程S4では、加熱装置40のスイッチをオフにして溶液の加熱を停止する。バルブ541を開栓して、冷却用水導入管54から冷却管56へ冷却用水を供給する。冷却用水の供給速度、供給される冷却用水の温度は特に限定されず、所望の平均急冷速度ΔT3を実現するように適宜調整されればよい。冷却用水は冷却管56を通って、容器10内の溶液を冷却する。温度T3まで冷却したら、容器10の排出バルブ10aを開けて溶液を取り出す。この溶液から、最終産物であるニッケルナノ粒子を得る。温度T3は、概ね20〜50℃とすることができる。
なお、冷却用水は、容器10内の熱によって温められて冷却管56内を流れる過程において水蒸気となる。この蒸発によって、溶液が冷却される。そして、バルブ561が開けられると、かかる水蒸気(冷却管56内を流れる冷却用水)が排出される。
ここで開示される技術によると、液相法によって、金属ナノ粒子の粒子径のばらつきの発生が高度に抑制された、均一性が高い金属ナノ粒子を、比較的大量に、かつ安定的に製造することができる。金属ナノ粒子を形成するための溶液の量がリットルスケール(例えば1L以上、5L以上、10L以上、20L以上、またはそれ以上)であっても、ここで開示される技術の効果を得ることができる。
具体的には、金属ナノ粒子の製造工程に、反応溶液を所定の冷却速度(即ち、平均急冷速度ΔT3)において急速に冷却することによって、反応溶液全体において、核成長をほぼ同じタイミングで停止させることができる。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を係る実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<実施例1.ニッケルナノ粒子の製造例>
サンプル1:
サンプル1に係るニッケルナノ粒子の製造例について、図3を適宜参照しつつ説明する。なお、下記記載中の符号は、図2中に示された符号である。図3は、一実施形態に係るニッケルナノ粒子の製造を実施した際の経過時間と温度との推移を示すグラフである。横軸の「時間」は、溶液の加熱開始時点をゼロとし、かかる製造の実施における時間経過を示している。縦軸の「温度」は、かかる製造の実施における溶液の温度変化を示している。
25℃の環境下において、酢酸ニッケル四水和物10kg、オレイルアミン70Lを、製造装置100の容器10に投入し、ニッケルナノ粒子を製造するための溶液を得た。当該溶液を、攪拌装置20にて撹拌した。攪拌装置20の回転数は300rpmであった。なお、製造装置100としては、日本電熱株式会社製のIH反応釜を使用した。バルブ321を開栓して溶液中に50L/分の流量で窒素ガスを吹き込み、加熱装置40(ここでは誘導加熱コイル)のスイッチをオンにして、140℃まで昇温した。溶液を該温度において120分間加熱した。
次いで、溶液を昇温速度ΔT1(4℃/分)で加熱した。溶液の温度が、第1の温度T1(200℃)となった時点で、昇温をやめて、溶液を当該温度付近で30分間維持した。
次いで、溶液をさらに昇温速度ΔT2(3℃/分)で加熱した。溶液の温度が、第2の温度T2(230℃)となった時点で、昇温をやめて、溶液を当該温度付近で10分間維持した。次いで、この温度を維持したまま、バルブ321を閉栓して、窒素ガスの吹き込みを停止した。バルブ341を開栓し、配管34を介して、溶液に10L/分の流量で酸素ガスの吹き込みを行った。この状態を10分程度維持した。その後、バルブ341を閉栓して、酸素ガスの吹き込みを停止した。バルブ321を開栓し、配管32を介して、溶液に2L/分の流量で窒素ガスの吹き込みを行った。
次いで、加熱装置40のスイッチをオフにして溶液の加熱を停止した。バルブ541を開栓して、冷却用水導入管54から冷却管56へ10L/分の流量で冷却用水を供給した。溶液が温度T3(50℃)まで冷却したら、容器10の排出バルブ10aを開けて、溶液を取り出した。なお、平均急冷速度ΔT3は、7℃/分であった。
その後、容器10から排出バルブ10aを介して上記溶液を取り出した。これを静置して、上清を除去した。沈殿物をヘキサン中に懸濁してよく振った。これを静置して上清を除去した。得られた沈殿物を乾燥させて、サンプル1のニッケルナノ粒子を得た。
なお、得られた粒子が金属ニッケルであることは、X線回折により確認された。
サンプル2〜5:
ニッケルナノ粒子の製造に係る種々の条件を表1に示すものとした。それ以外は、サンプル1の作製における材料および方法と同様の材料および方法によって、サンプル2〜5に係るニッケルナノ粒子を作製した。
サンプル6〜9:
原料化合物として酢酸ニッケル四水和物3.4kgと、還元剤としてオレイルアミン20Lとを使用した。
ニッケルナノ粒子の製造に係る種々の条件を表1に示すものとした。それ以外は、サンプル1の作製における材料および方法と同様の材料および方法によって、サンプル6〜9に係るニッケルナノ粒子を作製した。
サンプル10〜12:
原料化合物として酢酸ニッケル四水和物100gと、還元剤としてオレイルアミン3Lとを使用した。
加熱装置40として、マントルヒータを使用した。急冷手段は、自然冷却であった。ニッケルナノ粒子の製造に係る種々の条件を表1に示すものとした。それ以外は、サンプル1の作製における材料および方法と同様の材料および方法によって、サンプル10〜12に係るニッケルナノ粒子を作製した。
Figure 2021155836
[評価]
(1)FE−SEM観察
電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM:株式会社日立ハイテクノロジーズ製、S−4700、観察倍率:50,000倍)を用いて、ニッケルナノ粒子の形状を観察した。参考として、サンプル2,4,6に係るニッケルナノ粒子、およびサンプル10に係るニッケルナノ粒子の観察画像の一部をそれぞれ図4〜7に示す。
(2)粒度分布
観察倍率50,000倍で取得したFE−SEMの観察画像をもとに、ニッケルナノ粒子の粒度分布を測定した。具体的には、画像処理ソフトを用いて、撮影した計5枚の画像から、ニッケルナノ粒子を無作為に1000個抽出して、その投影面積を求めた。これと同じ面積を有する円の直径(Heywood径)を計測した。そして、個数基準の粒度分布における積算50%粒子径(D50)を、平均粒子径(nm)として算出した。また、あわせて平均粒子径の変動係数(CV)を算出した。さらに、個数基準の粒度分布における積算5%粒子径(D5)、および、個数基準の粒度分布における積算95%粒子径(D95)を算出した。これらの結果を表2の該当欄に示す。
(3)結晶子径の測定
各サンプルに係るニッケルナノ粒子について、Scherrerの式を用いた粉末X線回折法において、2θ=44.5°に検出される回折線に基づき、平均結晶子径を算出した。XRD検出装置としては、リガク社製のSmartLabを用いた。結果を表2の該当欄に示す。
Figure 2021155836
図4〜7に示されるように、サンプル2,4,6は、形状やサイズのばらつきが抑制されていた。
表2に示されるように、サンプル1〜9の平均粒子径の変動係数(CV)は0.16未満であり、形状やサイズのばらつきが抑制されていることがわかった。また、D5、D50、D95の測定結果から、サンプル1〜9は、その粒度分布がシャープであることが確認された。
サンプル1〜12のうち、サンプル1〜5の急冷速度ΔT3は7℃/分、サンプル6〜9は2℃/分、サンプル10〜12は1℃/分であった。
上記結果より、金属ナノ粒子の製造方法において、急冷速度を2℃/分以上とすると、金属ナノ粒子の形状やサイズのばらつきが抑制されていることがわかった。また、サンプル1〜5の結果から、急冷速度をより大きくすることが好ましく、特に5℃/分以上とすると、粒度分布が狭い金属ナノ粒子が形成されることが確認された。
一方、サンプル10〜12は、平均粒子径の変動係数がサンプル1〜9よりも大きく、D5、D50、およびD95の測定結果から、粒度分布がサンプル1〜9の粒度分布よりも大きいことがわかる。即ち、急冷速度が2℃/分未満であると、金属ナノ粒子の形状やサイズのばらつきが抑制されにくいことがわかった。
<実施例2.銀ナノ粒子の製造例>
サンプル13:
25℃の環境下において、n−ブタノール3.0L、シュウ酸銀3kg、n−ブチルアミン1.6L、およびn−オクチルアミン0.5Lを、製造装置100の容器10に投入し、銀ナノ粒子を製造するための溶液を得た。当該溶液を、攪拌装置20にて撹拌した。攪拌装置20の回転数は300rpmであった。加熱装置40(ここでは誘導加熱コイル)のスイッチをオンにして、溶液を昇温速度ΔT1(4℃/分)で加熱した。溶液の温度が、第1の温度T1(85℃)となった時点で、昇温をやめて、溶液を当該温度付近で10分間維持した。
次いで、溶液をさらに昇温速度ΔT2(1℃/分)で加熱した。溶液の温度が、第2の温度T2(100℃)となった時点で、昇温をやめて、溶液を当該温度付近で10分間維持した。
次いで、加熱装置40のスイッチをオフにして溶液の加熱を停止した。バルブ541を開栓して、冷却用水導入管54から冷却管56へ10L/分の流量で冷却用水を供給した。また、溶液が温度T3(20℃)まで冷却したら、容器10の排出バルブ10aを開けて、溶液を取り出した。なお、平均急冷速度ΔT3は、4℃/分であった。
その後、容器10から排出バルブ10aを介して上記溶液を取り出した。これを静置して、上清を除去した。沈殿物をエタノール中に懸濁してよく振った。これを静置して上清を除去した。得られた沈殿物を乾燥させて、サンプル13の銀ナノ粒子を得た。
サンプル14、15:
銀ナノ粒子の製造に係る種々の条件を表3に示すものとした。それ以外は、サンプル13の作製における材料および方法と同様の材料および方法によって、サンプル14、15に係る銀ナノ粒子を作製した。
Figure 2021155836
[評価]
上記実施例1と同様の手法によって、(1)〜(3)の評価を行った。その結果を、図8および表4の該当欄に示す。
なお、実施例2における、上記実施例1の(1)および(2)の評価においては、50,000倍の倍率でFE−SEMの観察を行った。また、(2)では、撮影した5枚の画像を用いて解析を行った。また、実施例2における、上記実施例1の(3)においては、Scherrerの式を用いた粉末X線回折法において、2θ=38.2°に検出される回折線に基づき、平均結晶子径を算出した。
Figure 2021155836
図8に示されるように、サンプル13は、形状やサイズのばらつきが抑制されていた。
表4に示されるように、サンプル13,14の平均粒子径の変動係数(CV)は0.16未満であり、形状やサイズのばらつきが抑制されていることがわかった。また、D5、D50、D95の測定結果から、サンプル13,14は、その粒度分布がシャープであることが確認された。
一方、サンプル15については、平均粒子径の変動係数がサンプル13,14よりも大きく、D5、D50、およびD95の測定結果から、粒度分布がサンプル1〜9の粒度分布よりもブロードであることがわかる。即ち、急冷速度が2℃/分未満であると、金属ナノ粒子の形状やサイズのばらつきが抑制されにくいことがわかった。
以上、本発明を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明はその主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
S1 溶液準備工程
S2 核形成工程
S3 核成長工程
S4 急冷工程
10 容器
10a 排出バルブ
20 攪拌装置
30 配管
32 配管
321 バルブ
34 配管
341 バルブ
40 加熱装置
50 急冷手段
52 空気導入管
54 冷却用水導入管
56 冷却管
561 バルブ
60 熱電対
100 製造装置

Claims (9)

  1. 液相法による金属ナノ粒子の製造方法であって、以下の工程:
    前記金属ナノ粒子の金属核形成のための原料化合物および還元剤を含む反応系となる溶液を準備する工程;
    前記溶液を所定の温度域まで加熱し、該温度域において前記原料化合物の還元による前記核を形成する工程;
    前記溶液をさらに加熱することにより、所定の粒子径の金属ナノ粒子となるまで前記核を成長させる工程;および
    前記核成長が実質的に停止する温度域まで前記溶液を急冷する工程、ここで平均急冷速度を2℃/分以上に設定する;
    を包含する、金属ナノ粒子の製造方法。
  2. 前記金属ナノ粒子は、鉄族元素および貴金属元素のうちのいずれかの金属のナノ粒子であり、前記原料化合物は該金属の塩または錯体で構成されている、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記金属はニッケルまたは銀である、請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記還元剤はアルキルアミンで構成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 前記平均急冷速度を5℃/分以上に設定する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 冷却用の水を管内部に連続的に供給可能な冷却管を前記溶液中に配置しておき、
    前記急冷工程において、前記冷却管中に冷却用水を連続的に供給し、該水の潜熱による冷却によって前記平均急冷速度を実現する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 少なくとも前記核形成工程および前記核成長工程には、前記溶液中に不活性ガスを吹き込むことが含まれる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
  8. 前記核成長工程の終了前の一定期間において、前記溶液中に吹き込むガス種を、前記不活性ガスから酸化性ガスに置換する、請求項7に記載の製造方法。
  9. 前記溶液を誘導加熱(IH)式の加熱容器に収容し、前記溶液の加熱は、該加熱容器を誘導加熱することによって行われる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。

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