JP2021154729A - 抗ウィルス性部材 - Google Patents

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晃章 横田
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Abstract

【課題】 過剰な抗ウィルス剤を用いることなく、効率的にウィルスを失活させることができる抗ウィルス性部材を提供する。【解決手段】 基材表面に光触媒機能を持たない粒状の抗ウィルス剤を複数含む膜状の樹脂層が形成され、前記粒状の抗ウィルス剤の少なくとも一部は、樹脂層から露出しており、前記抗ウィルス部材を平面視した場合に、隣接する抗ウィルス剤間の重心間距離の平均値が3から30μmであることを特徴とする抗ウィルス部材。【選択図】 図2

Description

本発明は、抗ウィルス性部材に関する。
近年、病原体である種々の微生物を媒介とした感染症が短時間で急激に広がる、いわゆる「パンデミック」が問題になっており、SARS(重症急性呼吸器症候群)や、ノロウィルス、鳥インフルエンザ等のウィルス感染による死者も報告されている。
そこで、様々のウィルスに対して抗ウィルス活性を発揮する抗ウィルス剤の開発が活発に行われており、実際に様々な部材に抗ウィルス活性を有するPd等の金属や有機化合物からなる抗ウィルス剤を含む樹脂等を塗布したり、抗ウィルス剤が担持された材料を含む部材を製造することが行われている。
特許文献1には、基板と、前記基板の一方面又は両面上に積層される表層樹脂層と、前記表層樹脂層上に配置され、無機抗ウィルス粒子を含む抗ウィルス機能層と、からなり、前記無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する前記抗ウィルス機能層の膜厚の比率が、0.3〜1.1倍であることを特徴とする抗ウィルス性の化粧板が開示されている。
特開2019−25918公報
しかしながら、特許文献1には、抗ウィルス粒子の配置密度で配置すれば、ウィルスを失活させることができるかについては記載されておらず、抗ウィルス剤を過剰に配置したり、逆に抗ウィルス剤が少ないため、抗ウィルス作用が不十分になる場合があった。
本発明の目的は、最小限の抗ウィルス剤を用いて、抗ウィルス作用が十分に得られるように、抗ウィルス粒子の配置密度が調整された抗ウィルス性部材を提供することである。
本発明者らは鋭意、研究した結果、隣接する抗ウィルス剤間の重心間距離の平均値を、3から30μmに調整することで、最も抗ウィルス性能が高くなることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、基材表面に光触媒機能を持たない粒状の抗ウィルス剤を複数含む膜状の樹脂層が形成され、前記粒状の抗ウィルス剤の少なくとも一部は、樹脂層から露出しており、前記抗ウィルス部材を平面視した場合に、隣接する抗ウィルス剤間の重心間距離の平均値が、3から30μmであることを特徴とする抗ウィルス部材である。
本発明の抗ウィルス性部材では、膜状の樹脂層として(メタ)アクリレート系樹脂及びポリシロキサン系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上からなる膜状の樹脂層を採用できる。
本発明の抗ウィルス性部材では、光触媒機能を持たず、粒状であれば、抗ウィルス剤としては、有機系抗ウィルス剤及び/又は無機系抗ウィルス剤を使用できる。粒状であることが必要である理由は、樹脂、例えば(メタ)アクリル系樹脂及びポリシロキサン系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂と混合して膜状に成形することで、樹脂表面から露出させやすく、ウィルスと接触させやすいからである。
本発明の抗ウィルス性部材では、抗ウィルス剤は光触媒機能を持たないので、抗ウィルス剤が光触媒機能を持つ場合と比較して、樹脂層が劣化しにくい。
本発明では、重心間距離は、次のように測定する。まず、抗ウィルス部材の表面を平面視にて電子顕微鏡で拡大撮影し、この撮影画像を二値化する。次に画像内の1つの粒状の抗ウィルス剤の重心と、その抗ウィルス剤の周囲に存在する複数の抗ウィルス剤の重心との間の距離のうち最も短いものから長いものにかけて3つ選択する。このような粒状の抗ウィルス剤間の3つの重心間距離の測定を撮影された画像内の全ての抗ウィルス剤について行い、その平均値を計算する。図1は、抗ウィルス部材の電子顕微鏡写真である。また、図2には図1を二値化して抗ウィルス剤同士の重心間距離を計測する状態を示す。
二値化、抗ウィルス剤の重心の特定、隣接する抗ウィルス剤同士の重心間距離の計測は、オープンソースでパブリックドメインの画像処理ソフトウェアであるImageJを使用する。
前記隣接する複数の抗ウィルス剤間の重心間距離の平均値を、3から30μmに調整することで、抗ウィルス剤の含有量が過剰となることを防止し、また、ウィルスを粒状の抗ウィルス剤間でトラップしてウィルスと抗ウィルス剤との接触確率を高くすることで、ウィルスを効果的に失活させることができる。
前記隣接する複数の抗ウィルス剤間の重心間距離の平均値を、4から30μmに調整することがさらに望ましい。
前記隣接する複数の抗ウィルス剤間の重心間距離の平均値の調整は、樹脂中に分散させる抗ウィルス剤の添加量によって行うことができる。
本発明においては、抗ウイルス性を持つ樹脂層部分をフィルム化してもよい。具体的には、光触媒機能を持たない粒状の抗ウィルス剤を複数含む膜状の樹脂層からなり、前記粒状の抗ウィルス剤の少なくとも一部は、樹脂層から露出しており、前記抗ウィルス部材を平面視した場合に、隣接する抗ウィルス剤間の重心間距離の平均値が3から30μmであることを特徴とする抗ウィルスフィルムとしてもよい。
前記フィルムは、基材に貼着して使用する。基材と接する面に粘着剤層や接着剤層を設けることが望ましい。また、前記粘着剤層や接着剤層に離型シートを積層してもよい。
本発明の抗ウィルス性部材では、上記抗ウィルス剤は、光触媒機能を持たない有機系抗ウィルス剤及び/又は光触媒機能を持たない無機系抗ウィルス剤であることが必要である。
本発明では、光触媒のように酸化力が高くなくても、抗ウィルス剤との接触確率を高くすることで、確実にウィルスを不活性化させることができる。
本発明の抗ウィルス性部材では、上記抗ウィルス剤は、銅イオン及び銅化合物を含まないことが望ましい。銅イオンや銅化合物を含む場合、着色しやすく、樹脂層の意匠性が低下することがあるからである。
本発明における抗ウィルス剤は光触媒機能を持たない金属化合物及び金属イオンでイオン交換されたゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
金属酸化物としては、銅イオンや銅化合物を含まないものであってもよい。銅イオンや銅化合物は有色のものが多いため、紫外線硬化樹脂の硬化物を膜状に形成すると、基材表面の色彩が損なわれるからである。抗ウィルス剤としては、抗ウィルス機能を持つ無機リン酸化合物、無機ケイ酸化合物や銀イオン置換ゼオライトなどが好適である。なお、銅イオンや銅化合物を含んでいても基材表面の色彩に影響を与えない場合は、抗ウィルス剤として銅化合物を含んでいてもよい。具体的には、酸化銅、ヨウ化銅、亜酸化銅、水酸化銅などを用いることができる。
上記金属化合物としては、金属酸化物、無機リン酸化合物、無機ケイ酸化合物を挙げることができる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化銀、酸化鉛などを使用することができる。また、無機リン酸化合物としては、リン酸亜鉛や、リン酸ジルコニウム、リン酸ハフニウム、リン酸チタニウム等のチタン族元素のリン酸化合物、リン酸アルミニウム、ヒドロキシアパタイト(リン酸塩鉱物)等の無機リン酸化合物;ケイ酸マグネシウム、シリカゲル、アルミノケイ酸塩、セピオライト(含水ケイ酸マグネシウム)、モンモリロナイト(ケイ酸塩鉱物)、ゼオライト(アルミノケイ酸塩)等の無機ケイ酸化合物などを使用できる。なお、無機系抗ウィルス剤として、シリカに担持した銀は抗菌作用を有するが、表面積が小さく、またシリカ自身には抗ウィルス性能が無いため、銀担持シリカは抗ウィルス剤としては機能しない。一方、ゼオライトは表面積が大きく、ゼオライト自身にも抗ウィルス機能があるため、銀担持のシリカよりも銀イオンで置換したゼオライトの方が望ましい。
また、上記有機系抗ウィルス剤は、トリアジン、アゾール、スルホン酸系界面活性剤、及び、ビス型第四級アンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。上記有機系抗ウィルス剤としては、例えば、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール及びベンゾイミダゾールなどのアゾール、トリアジン、クロロフェネシン、チモール、サリチル酸及びそれらの誘導体、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ジンクピリチオン、ビス型ピリジニウム塩、ビス型キノリニウム塩、ビス型チアゾリウム塩等が挙げられる。これらの有機化合物は、使用温度である25℃付近で粒状を呈している。
本発明の抗ウィルス性部材では、樹脂としては、(メタ)アクリレート系樹脂を用いることができる。本発明の(メタ)アクリレート系樹脂は、3個以上のアクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートからなることが望ましい。このような(メタ)アクリレートは、高分子鎖が強固なネットワークを形成し、硬度が高く耐摩耗性に優れているからである。
本発明の抗ウィルス性部材では、上記膜状の樹脂層中にレべリング剤を含んでいてもよい。レベリング剤としては、シリコーン系レベリング剤、とりわけ非揮発性シリコーンを好適に用いることができる。非揮発性であることにより、レベリング効果が高く、指滑り性も優れたものになる。非揮発性シリコーンとしてはポリアルキルシロキサン、ポリアリールシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン、アミノ官能置換基のあるポリシロキサン、ポリエーテルシロキサンコポリマー及びそれらの混合物が挙げられる。非揮発性シリコーンの添加量は、全(メタ)アクリレートの固形分100重量部に対して、固形分0.002〜0.007重量部が好適である。
本発明の抗ウィルス性部材で使用される(メタ)アクリレート系樹脂としては、多官能(メタ)アクリレートであることが望ましい。特に分子内に3個以上、望ましくは5個以上のアクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートは、硬度を向上させる役目を有する。このような多官能(メタ)アクリレートとしては、具体的にはジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びこれら2種以上の混合物が挙げられる。
本発明では、上記(メタ)アクリレート系樹脂として、多官能ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を用いてもよい。多官能ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂は、硬度が高く、靱性も改善されるため、摩耗やクラックが発生しにくく、摩耗条件においても、粒状の抗ウィルス剤の脱落が無く、抗ウィルス性能の経時劣化がない。
本発明において、多官能ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂は、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーからなることが望ましく、上記多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、水酸基を持つ多官能(メタ)アクリレートモノマー及び/又は多官能アクリレートオリゴマーとイソシアネートモノマー又は有機ポリイソシアネートとからなることが望ましい。
上記イソシアネートモノマーとしてはトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられ、有機ポリイソシアネートはイソシアネートモノマーから合成されるアダクトタイプ、イソシアヌレートタイプ、ビュレットタイプのポリイソシアネートなどが挙げられる。
3個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、水酸基を持つ多官能アクリレートモノマー及び/又はオリゴマーとしてはジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。これらの多官能アクリレートモノマー及び/又はオリゴマーは、その水酸基がイソシアネートモノマー又は有機ポリイソシアネートと結合して、架橋点が多い多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを形成でき、その硬化物は3次元的な架橋を実現でき、硬度、靱性に優れるからである。上記アクリロイル基は5個以上が特に望ましい。
本発明における膜状の樹脂層を構成する樹脂としては、ポリシロキサン系樹脂が望ましい。本発明に使用できるポリシロキサン系樹脂はポリシロキサン構造を主鎖とした樹脂である。
ポリシロキサン系樹脂の製造方法としては、特に限定されず、有機合成化学協会誌 Vol.58 No.10 (2000)「シロキサン・シラノールの有機化学」にあるように、クロロアルキルシランを酸や塩基を触媒として脱水縮合させて重合させて、ポリシロキサン系樹脂を製造する方法が最もよく知られた方法である。
このような方法以外でも、例えば、ポリシロキサン構造を主鎖として末端に反応性硬化基を持ち、水によって硬化できるようなシリコーン樹脂を、後述する触媒を用いて重合させてポリシロキサン系樹脂としてもよい。なお、反応性硬化基は、水のような活性水素基含有化合物と反応することによりシラノール基を生成する構造を有する官能基である。脱離する保護基の種類によって、脱アルコール型、脱オキシム型、脱酢酸型、脱アミド型、脱アセトン型などがある。
シリコーン樹脂の硬化触媒としては、有機錫、無機錫、チタン触媒、ビスマス触媒、金属錯体、白金触媒、塩基性化合物及び有機燐酸化物などが使用される。有機錫の具体例としては、ジブチル錫ジラウリレート、ジオクチル錫ジマレート、ジブチル錫フタレート、オクチル酸第一錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫塩と正珪酸エチルとの反応生成物等が挙げられる。
本発明の膜状の樹脂層を構成する樹脂は、(メタ)アクリレート系樹脂及びポリシロキサン系樹脂を共存させてもよい。
本発明の抗ウィルス性部材において、抗ウィルス剤を含む樹脂層の厚みは、0.1μm〜20μmが望ましい。
本発明の抗ウィルス性部材では、上記膜状の樹脂層は、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートを含んでいてもよく、具体的には、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−ジヒドロホスフェート、ジ−(2−(メタ)アクリロイルオキシ)ヒドロゲンホスフェート、エチレンオキサイド変性リン酸ジメタクリレート等が挙げられる。リン酸エステル基の存在により、金属やセラミック(ガラス含む)への密着性が向上するものと推察される。
本発明の抗ウィルス性部材の製造方法は、基材表面に、光触媒機能を持たない粒状の抗ウィルス剤を含む未硬化の樹脂、例えば未硬化の(メタ)アクリレート系樹脂及びポリシロキサン系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂からなる抗ウィルス組成物を膜状に被覆した後、上記樹脂を硬化させて樹脂層とする樹脂硬化工程を含んでいる。
あるいは、基材表面に、未硬化の樹脂、例えば未硬化の(メタ)アクリレート系樹脂及びポリシロキサン系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂からなる抗ウィルス組成物を膜状に被覆した後、光触媒機能を持たない粒状の抗ウィルス剤を、未硬化の樹脂上に付着させた後、上記樹脂を硬化させて樹脂層とする樹脂硬化工程を含んでいる。
本発明の抗ウィルス性部材の製造方法において、抗ウィルス組成物は有機溶媒を含まないことが望ましい。
この場合、抗ウィルス組成物を乾燥させることなく紫外線や加熱で硬化させることができ、また、人体に有害な溶剤が揮発することが無い。
また、本発明の抗ウィルス性部材の製造方法において、抗ウィルス組成物は水を含まないことが望ましい。抗ウィルス組成物の硬化膜に孔ができたり、気泡が発生しやすく、また、硬化膜の強度も低下しやすいからである。
また、未硬化樹脂を含む抗ウィルス組成物を膜状にしていわゆるBステージ状態まで乾燥させたシートを基材上に積層させて樹脂層を形成することができる。
図1は、本発明の実施例1にかかる抗ウィルス部材の表面の電子顕微鏡写真(平面視)である。 図2は、隣接する粒状の抗ウィルス剤のうち、重心間距離の最も短いものから選ばれた3本を、重心間を結んだ線分として表現したものである。 図3は、図2の線分で表現される抗ウィルス剤の重心間距離のヒストグラムである。 図4は、本発明の実施例4にかかる抗ウィルス部材の表面の隣接する粒状の抗ウィルス剤のうち、重心間距離の最も短いものから選ばれた3本を、重心間を結んだ線分として表現したものである。 図5は、図4の線分で表現される抗ウィルス剤の重心間距離のヒストグラムである。 図6は、本発明の抗ウィルスフィルムにかかる断面模式図である。
本発明の抗ウィルス性部材は、基材表面に光触媒機能を持たない粒状の抗ウィルス剤を複数含む膜状の樹脂層が形成され、前記粒状の抗ウィルス剤の少なくとも一部は、樹脂層から露出しており、前記抗ウィルス部材を平面視した場合に、隣接する抗ウィルス剤間の重心間距離の平均値が、3から30μmであることを特徴とする。
前記隣接する抗ウィルス剤間の重心間距離の平均値が、4から30μmであることがさらに望ましい。
本発明においては、抗ウイルス性を持つ樹脂層部分をフィルム化してもよい。具体的には、光触媒機能を持たない粒状の抗ウィルス剤を複数含む膜状の樹脂層からなり、前記粒状の抗ウィルス剤の少なくとも一部は、樹脂層から露出しており、前記抗ウィルス部材を平面視した場合に、隣接する抗ウィルス剤間の重心間距離の平均値が3から30μmであることを特徴とする抗ウィルスフィルムとしてもよい。
前記フィルムは、基材に貼着して使用する。基材と接する面に粘着剤層や接着剤層を設けることが望ましい。また、前記粘着剤層や接着剤層に離型シートを積層してもよい。
以下に、本発明のウィルス部材を含む抗ウィルス性部材について図面を用いて説明する。図1は、本発明のウィルス部材を含む抗ウィルス性部材の一例を模式的に示す断面図である。
本発明の抗ウィルス性部材において、基材の材料は、特に限定されるものでなく、例えば、金属、ガラス等のセラミック、樹脂、繊維織物、木材等が挙げられる。
また、本発明の抗ウィルス性部材では、基材は、フィルム、シート、布、建築物内部の内装材、壁材、壁紙、窓ガラス、ドア、事務機器、家具等としてもよく、特に、不動産に固定された部材を基材とすることが望ましい。
本発明の抗ウィルス性部材では、膜状の樹脂層として(メタ)アクリレート系樹脂及びポリシロキサン系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上からなる膜状の樹脂層を採用し、この樹脂層中に粒状の抗ウィルス剤を含ませている。
本発明の抗ウィルス性部材では、抗ウィルス剤は、光触媒機能を持たず、粒状であればよい。抗ウィルス剤としては、有機系抗ウィルス剤及び/又は無機系抗ウィルス剤を使用できる。粒状であることが必要である理由は、抗ウィルス剤粒子間の重心間距離を制御できるからである。
本発明の抗ウィルス性部材では、抗ウィルス剤は光触媒機能を持たないので、抗ウィルス剤が光触媒機能を持つ場合と比較して、樹脂層が劣化しにくい。
また、本発明の抗ウィルス性部材において、抗ウィルス剤は、光触媒機能を持たない有機系抗ウィルス剤及び/又は光触媒機能を持たない無機系抗ウィルス剤が望ましい。
本発明の抗ウィルス性部材では、抗ウィルス剤は、銅イオン及び銅化合物を含まないことが望ましい。銅イオンや銅化合物を含む場合、着色しやすく、樹脂層の意匠性が低下することがあるからである。
また、上記無機系抗ウィルス剤は、光触媒機能を持たない金属化合物及び金属イオンで置換したゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
金属酸化物としては、銅イオンや銅化合物を含まないものであってもよい。銅イオンや銅化合物は有色のものが多いため、紫外線硬化樹脂の硬化物を膜状に形成すると、基材表面の色彩が損なわれるからである。抗ウィルス剤としては、抗ウィルス機能を持つ無機リン酸化合物、無機ケイ酸化合物や銀イオン置換ゼオライトなどが好適である。
なお、銅イオンや銅化合物を含んでいても基材表面の色彩に影響を与えない場合は、抗ウィルス剤として銅化合物を含んでいてもよい。具体的には、酸化銅、ヨウ化銅、亜酸化銅、水酸化銅などを用いることができる。ヨウ化銅は、白色粉末であり、酸化に対しても安定であり、酸化雰囲気下でも銅(I)の状態を長く維持することが可能である。
金属化合物としては、金属酸化物、無機リン酸化合物、無機ケイ酸化合物を挙げることができる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化銀、酸化鉛などを使用することができる。また、無機リン酸化合物としては、リン酸亜鉛や、リン酸ジルコニウム、リン酸ハフニウム、リン酸チタニウム等のチタン族元素のリン酸化合物、リン酸アルミニウム、ヒドロキシアパタイト(リン酸塩鉱物)等の無機リン酸化合物;ケイ酸マグネシウム、シリカゲル、アルミノケイ酸塩、セピオライト(含水ケイ酸マグネシウム)、モンモリロナイト(ケイ酸塩鉱物)、ゼオライト(アルミノケイ酸塩)等の無機ケイ酸化合物などを使用できる。なお、無機系抗ウィルス剤として、シリカに担持した銀は抗菌作用を有するが、表面積が小さく、またシリカ自身には抗ウィルス性能が無いため、銀担持シリカは抗ウィルス剤としては機能しない。一方、ゼオライトは表面積が大きく、ゼオライト自身にも抗ウィルス機能があるため、銀担持のシリカよりも銀イオンで置換したゼオライトの方が望ましい。
また、有機系抗ウィルス剤は、トリアジン、アゾール、スルホン酸系界面活性剤、及び、ビス型第四級アンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
有機系抗ウィルス剤としては、例えば、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール及びベンゾイミダゾールなどのアゾール、トリアジン、クロロフェネシン、チモール、サリチル酸及びそれらの誘導体、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ジンクピリチオン、ビス型ピリジニウム塩、ビス型キノリニウム塩、ビス型チアゾリウム塩等が挙げられる。これらの有機化合物は、使用温度である25℃付近で粒状を呈している。
次に、本発明の抗ウィルス性部材における(メタ)アクリレート系樹脂及びポリシロキサン系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上からなる膜状の樹脂層について説明する。
本発明の樹脂層については、(メタ)アクリレート系樹脂を用いた場合は、未硬化の(メタ)アクリレートモノマー/オリゴマーと光重合開始剤と各種添加剤と抗ウィルス剤とを含んだ抗ウィルス組成物を用いて基材表面に膜状に被膜形成した後、紫外線を照射することにより、光重合開始剤は、開裂反応、水素引き抜き反応、電子移動等の反応を起こし、これにより生成した光ラジカル分子、光カチオン分子、光アニオン分子等が未硬化の紫外線硬化樹脂を構成するモノマーやオリゴマーを攻撃してモノマーやオリゴマーの重合反応や架橋反応が進行し、抗ウィルス剤を含む(メタ)アクリレートの硬化物が形成される。
本発明の抗ウィルス性部材で使用される(メタ)アクリレート系樹脂としては、多官能(メタ)アクリレートであることが望ましい。特に分子内に5個以上のアクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートは、硬度を向上させる役目を有する。このような多官能(メタ)アクリレートとしては、具体的にはジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びこれら2種以上の混合物が挙げられる。
本発明では、(メタ)アクリレート系樹脂として、多官能ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を用いてもよい。多官能ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂は、硬度が高く、靱性も改善されるため、摩耗やクラックが発生しにくく、摩耗条件においても、粒状の抗ウィルス剤の脱落が無く、抗ウィルス性能の経時劣化がない。
本発明において、多官能ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂は、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーからなることが望ましく、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、水酸基を持つ多官能(メタ)アクリレートモノマー及び/又は多官能アクリレートオリゴマーとイソシアネートモノマー又は有機ポリイソシアネートとからなることが望ましい。
イソシアネートモノマーとしてはトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられ、有機ポリイソシアネートはイソシアネートモノマーから合成されるアダクトタイプ、イソシアヌレートタイプ、ビュレットタイプのポリイソシアネートなどが挙げられる。
3個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、水酸基を持つ多官能アクリレートモノマー及び/又はオリゴマーとしてはジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。これらの多官能アクリレートモノマー及び/又はオリゴマーは、その水酸基がイソシアネートモノマー又は有機ポリイソシアネートと結合して、架橋点が多い多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを形成でき、その硬化物は3次元的な架橋を実現でき、硬度、靱性に優れるからである。アクリロイル基は5個以上が特に望ましい。
また、ポリシロキサン系樹脂の未硬化のモノマーである、アルキルクロロシランを酸、塩基存在下で加水分解重合反応させてポリシロキサン系樹脂とすることもでき、また、ポリシロキサン構造を主鎖として末端に反応性硬化基を持ち、水によって硬化できるようなシリコーン樹脂を用いて、触媒により重合させて、ポリシロキサン系樹脂とすることもできる。
本発明における膜状の樹脂層を構成する樹脂としては、ポリシロキサン系樹脂が望ましい。本発明に使用できるポリシロキサン系樹脂はポリシロキサン構造を主鎖とした樹脂である。
ポリシロキサン系樹脂の製造方法としては、特に限定されず、有機合成化学協会誌 Vol.58 No.10 (2000)「シロキサン・シラノールの有機化学」にあるように、クロロアルキルシランを酸や塩基を触媒として脱水縮合させて重合させて、ポリシロキサン系樹脂を製造する方法が最もよく知られた方法である。
このような方法以外でも、例えば、ポリシロキサン構造を主鎖として末端に反応性硬化基を持ち、水によって硬化できるようなシリコーン樹脂を、後述する触媒を用いて重合させてポリシロキサン系樹脂としてもよい。なお、反応性硬化基は、水のような活性水素基含有化合物と反応することによりシラノール基を生成する構造を有する官能基である。脱離する保護基の種類によって、脱アルコール型、脱オキシム型、脱酢酸型、脱アミド型、脱アセトン型などがある。
シリコーン樹脂の硬化触媒としては、有機錫、無機錫、チタン触媒、ビスマス触媒、金属錯体、白金触媒、塩基性化合物及び有機燐酸化物などが使用される。有機錫の具体例としては、ジブチル錫ジラウリレート、ジオクチル錫ジマレート、ジブチル錫フタレート、オクチル酸第一錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫塩と正珪酸エチルとの反応生成物等が挙げられる。
本発明の膜状の樹脂層を構成する樹脂は、(メタ)アクリレート系樹脂及びポリシロキサン系樹脂を共存させてもよい。
本発明の抗ウィルス性部材において、抗ウィルス剤を含む樹脂層の厚みは、0.1μm〜20μmが望ましい。
本発明の抗ウィルス性部材では、樹脂層は、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートを含んでいてもよく、具体的には、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−ジヒドロホスフェート、ジ−(2−(メタ)アクリロイルオキシ)ヒドロゲンホスフェート、エチレンオキサイド変性リン酸ジメタクリレート等が挙げられる。リン酸エステル基の存在により、金属やセラミック(ガラス含む)への密着性が向上するものと推察される。
本発明の抗ウィルス性部材では、メチル(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート及びシクロヘキシルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1種以上の(メタ)アクリレートと、光重合開始剤を含むことが望ましい。これらの樹脂は、硬化前のアクリレート系樹脂の粘度を下げることができるからである。
本発明の(メタ)アクリレート系樹脂は、3個以上、望ましくは5個以上のアクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートからなることが望ましい。このような(メタ)アクリレートは、高分子鎖が強固なネットワークを形成し、硬度が高く耐摩耗性に優れているからである。このため、靴による踏みつけ及び擦れや、機械清掃時の回転ブラシによる過酷な摩耗条件でも抗ウィルス剤が脱落せず、抗ウィルス性能が経時劣化しにくい。
本発明の抗ウィルス性部材では、樹脂中にレべリング剤を含んでいてもよい。レベリング剤としては、シリコーン系レベリング剤、とりわけ非揮発性シリコーンを好適に用いることができる。非揮発性であることにより、レベリング効果が高く、指滑り性も優れたものになる。非揮発性シリコーンとしてはポリアルキルシロキサン、ポリアリールシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン、アミノ官能置換基のあるポリシロキサン、ポリエーテルシロキサンコポリマー及びそれらの混合物が挙げられる。非揮発性シリコーンの添加量は、全(メタ)アクリレートの固形分100重量部に対して、固形分0.002〜0.007重量部が好適である。
本発明の抗ウィルス性部材によれば、例えば、建築物内部の内装材、壁材、窓ガラス、ドア、台所用品等や、事務機器や家具等や、種々の用途に用いられる化粧板等に、表面に形成されたパターン、色彩、意匠、色調等を変えることなく、抗ウィルス機能を付加することができる。
次に、上記した抗ウィルス性部材の製造方法について説明する。
(1)抗ウィルス組成物調整工程
本発明の抗ウィルス性部材を製造する際には、まず、光触媒機能を有さない粒状の抗ウィルス剤と、未硬化の樹脂、例えば未硬化の(メタ)アクリレート系樹脂及びポリシロキサン系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上からなる樹脂と必要に応じて分散媒と光重合開始剤とを含む抗ウィルス組成物を調製する。抗ウィルス組成物における粒状の抗ウィルス剤の平均粒子径としては、0.01〜50μmであることが望ましい。
抗ウィルス組成物における抗ウィルス剤は、光触媒機能を持たない有機系抗ウィルス剤及び/又は光触媒機能を持たない無機系抗ウィルス剤が望ましい。
抗ウィルス組成物における抗ウィルス剤は、銅イオン及び銅化合物を含まないことが望ましい。銅イオンや銅化合物を含む場合、着色しやすく、樹脂層の意匠性が低下することがあるからである。
抗ウィルス組成物における無機系抗ウィルス剤は、光触媒機能を持たない金属化合物及び金属イオンで置換したゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
金属酸化物としては、銅イオンや銅化合物を含まないものであってもよい。銅イオンや銅化合物は有色のものが多いため、紫外線硬化樹脂の硬化物を膜状に形成すると、基材表面の色彩が損なわれるからである。抗ウィルス剤としては、抗ウィルス機能を持つ無機リン酸化合物、無機ケイ酸化合物や銀イオン置換ゼオライトなどが好適である。
なお、銅イオンや銅化合物を含んでいても基材表面の色彩に影響を与えない場合は、抗ウィルス剤として銅化合物を含んでいてもよい。具体的には、酸化銅、ヨウ化銅、亜酸化銅、水酸化銅などを用いることができる。ヨウ化銅は、白色粉末であり、酸化に対しても安定であり、酸化雰囲気下でも銅(I)の状態を長く維持することが可能である。
金属化合物としては、金属酸化物、無機リン酸化合物、無機ケイ酸化合物を挙げることができる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化銀、酸化鉛などを使用することができる。また、無機リン酸化合物としては、リン酸亜鉛や、リン酸ジルコニウム、リン酸ハフニウム、リン酸チタニウム等のチタン族元素のリン酸化合物、リン酸アルミニウム、ヒドロキシアパタイト(リン酸塩鉱物)等の無機リン酸化合物;ケイ酸マグネシウム、シリカゲル、アルミノケイ酸塩、セピオライト(含水ケイ酸マグネシウム)、モンモリロナイト(ケイ酸塩鉱物)、ゼオライト(アルミノケイ酸塩)等の無機ケイ酸化合物などを使用できる。なお、無機系抗ウィルス剤として、シリカに担持した銀は抗菌作用を有するが、表面積が小さく、またシリカ自身には抗ウィルス性能が無いため、銀担持シリカは抗ウィルス剤としては機能しない。一方、ゼオライトは表面積が大きく、ゼオライト自身にも抗ウィルス機能があるため、銀担持のシリカよりも銀イオンで置換したゼオライトの方が望ましい。
抗ウィルス組成物における有機系抗ウィルス剤は、トリアジン、アゾール、スルホン酸系界面活性剤、及び、ビス型第四級アンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
有機系抗ウィルス剤としては、例えば、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール及びベンゾイミダゾールなどのアゾール、トリアジン、クロロフェネシン、チモール、サリチル酸及びそれらの誘導体、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ジンクピリチオン、ビス型ピリジニウム塩、ビス型キノリニウム塩、ビス型チアゾリウム塩等が挙げられる。これらの有機化合物は、使用温度である25℃付近で粒状を呈している。
抗ウィルス組成物における(メタ)アクリレート系樹脂としては、多官能(メタ)アクリレートであることが望ましい。特に分子内に5個以上のアクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートは、硬度を向上させる役目を有する。このような多官能(メタ)アクリレートとしては、具体的にはジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びこれら2種以上の混合物が挙げられる。
本発明では、(メタ)アクリレート系樹脂として、多官能ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を用いてもよい。多官能ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂は、硬度が高く、靱性も改善されるため、摩耗やクラックが発生しにくく、摩耗条件においても、粒状の抗ウィルス剤の脱落が無く、抗ウィルス性能の経時劣化がない。
多官能ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂は、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーからなることが望ましく、上記多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、水酸基を持つ多官能(メタ)アクリレートモノマー及び/又は多官能アクリレートオリゴマーとイソシアネートモノマー又は有機ポリイソシアネートとからなることが望ましい。
イソシアネートモノマーとしてはトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられ、有機ポリイソシアネートはイソシアネートモノマーから合成されるアダクトタイプ、イソシアヌレートタイプ、ビュレットタイプのポリイソシアネートなどが挙げられる。
3個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、水酸基を持つ多官能アクリレートモノマー及び/又はオリゴマーとしてはジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。これらの多官能アクリレートモノマー及び/又はオリゴマーは、その水酸基がイソシアネートモノマー又は有機ポリイソシアネートと結合して、架橋点が多い多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを形成でき、その硬化物は3次元的な架橋を実現でき、硬度、靱性に優れるからである。上記アクリロイル基は5個以上が特に望ましい。
抗ウィルス組成物におけるポリシロキサン系樹脂としては、ポリシロキサン系樹脂の未硬化のモノマーである、アルキルクロロシランを酸、塩基存在下で加水分解重合反応させてポリシロキサン系樹脂とすることもでき、また、ポリシロキサン構造を主鎖として末端に反応性硬化基を持ち、水によって硬化できるようなシリコーン樹脂を用いて、触媒により重合させて、ポリシロキサン系樹脂とすることもできる。
ポリシロキサン系樹脂の製造方法としては、特に限定されず、有機合成化学協会誌 Vol.58 No.10 (2000)「シロキサン・シラノールの有機化学」にあるように、クロロアルキルシランを酸や塩基を触媒として脱水縮合させて重合させて、ポリシロキサン系樹脂を製造する方法が最もよく知られた方法である。
このような方法以外でも、例えば、ポリシロキサン構造を主鎖として末端に反応性硬化基を持ち、水によって硬化できるようなシリコーン樹脂を、後述する触媒を用いて重合させてポリシロキサン系樹脂としてもよい。なお、反応性硬化基は、水のような活性水素基含有化合物と反応することによりシラノール基を生成する構造を有する官能基である。脱離する保護基の種類によって、脱アルコール型、脱オキシム型、脱酢酸型、脱アミド型、脱アセトン型などがある。
シリコーン樹脂の硬化触媒としては、有機錫、無機錫、チタン触媒、ビスマス触媒、金属錯体、白金触媒、塩基性化合物及び有機燐酸化物などが使用される。有機錫の具体例としては、ジブチル錫ジラウリレート、ジオクチル錫ジマレート、ジブチル錫フタレート、オクチル酸第一錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫塩と正珪酸エチルとの反応生成物等が挙げられる。
本発明の膜状の樹脂層を構成する樹脂は、(メタ)アクリレート系樹脂及びポリシロキサン系樹脂を共存させてもよい。
本発明の抗ウィルス性部材に用いられる基材として金属やセラミックを使用する場合は、未硬化のアクリレート系の樹脂中には、さらにリン酸エステル基を持つ(メタ)アクリレート化合物を含有していてもよい。
抗ウィルス組成物における分散媒の種類は特に限定されるものではないが、安定性を考慮した場合にはアルコール類や水を使用できる。アルコール類としては、粘性を下げる事を考慮して、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール等のアルコール類が挙げられる。これらのアルコールのなかでは、粘度が高くなりにくいメチルアルコール、エチルアルコールが望ましく、アルコールと水との混合液が望ましい。また、メチルエチルケトンや酢酸エチルなどの有機溶媒を使用してもよい。
なお、分散媒として水を使用すると(メタ)アクリレートや光重合開始剤がエマルジョンとなってしまい、塗布した際に均一な膜を形成できないという問題が発生してしまうため、水を使用して(メタ)アクリレートや光重合開始剤等をエマルジョン化することは望ましくない。
また、抗ウィルス組成物を調製する際の、最も望ましい形態としては、分散媒を使用せずに、無溶剤で抗ウィルス組成物を調製する形態が挙げられる。
無溶剤で抗ウィルス組成物を調製した場合、後に分散媒を乾燥させる乾燥工程を行うことなく、塗布後に紫外線を照射することで、短時間に(メタ)アクリレートモノマー/オリゴマーを硬化することができる。また、分散媒として有機溶媒を使用すると、抗ウィルス組成物の塗布時及び硬化後でも有機溶媒が揮発して、作業者や抗ウィルス性部材を配置した空間に居住する人間の健康に悪影響を与える可能性がある。そのため、健康面からも無溶剤であることが望ましい。
抗ウィルス組成物の粘度を下げるために、メチル(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、及びシクロヘキシルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1種以上の(メタ)アクリレートを添加することが望ましい。
抗ウィルス組成物では、メチルメタクリレート(MMA)を粘度調整剤として含むことが望ましく、抗ウィルス組成物の粘度は10mPa・s/25℃未満に調整されることが望ましい。MMAは組成物全重量中50〜70重量%配合するのが望ましい。
また、本発明の抗ウィルス組成物及びその硬化中に2官能性(メタ)アクリレートとしてジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、単官能(メタ)アクリレートとしてシクロヘキシルメタクリレートを含んでいてよい。これらは抗ウィルス組成物の粘度を低減させることができ、また、硬化後の硬化収縮も小さくすることができる。
抗ウィルス組成物における光重合開始剤は、具体的にはアルキルフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、分子内水素引き抜き型、及び、オキシムエステル系からなる群から選択される少なくとも1種が望ましい。
アルキルフェノン系の光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホニル)フェニル]−1−ブタノン等が挙げられる。
アシルフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
分子内水素引き抜き型の光重合開始剤としては、例えば、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、オキシフェニルサクサン、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルトオキシフェニル酢酸と2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルとの混合物等が挙げられる。
オキシムエステル系の光重合開始剤としては、例えば、1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)等が挙げられる。
上記抗ウィルス組成物中の抗ウィルス剤の含有割合は、2〜30重量%が望ましく、未硬化の(メタ)アクリレート系樹脂及び/又はポリシロキサン系樹脂の含有割合は、15〜60重量%が望ましく、もし、分散媒が必要な場合は、分散媒の含有割合は、1〜80重量%が望ましい。
上記抗ウィルス組成物には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、接着促進剤、レオロジー調整剤、レベリング剤、消泡剤等が配合されていてもよい。レベリング剤としては、シリコーン系レベリング剤、とりわけ非揮発性シリコーンを好適に用いることができる。非揮発性であることにより、レベリング効果が高く、指滑り性も優れたものになる。非揮発性シリコーンとしてはポリアルキルシロキサン、ポリアリールシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン、アミノ官能置換基のあるポリシロキサン、ポリエーテルシロキサンコポリマー及びそれらの混合物が挙げられる。非揮発性シリコーンの添加量は、全(メタ)アクリレートの固形分100重量部に対して、固形分0.002〜0.007重量部が好適である。
(2)塗布工程
次に、基材表面に、抗ウィルス組成物を膜状に被覆する。
上記塗布方法としては、例えば、スポンジローラー、刷毛、モップ、スキージーなどを利用して抗ウィルス組成物を基材表面に塗布することができる。
基材としては、例えば、金属、ガラス等のセラミック、樹脂、繊維織物、木材等が挙げられる。樹脂を用いる場合は、フィルム、シート状であることが望ましい。フィルム化する場合は、抗ウィルス剤を配置する面の反対側面に粘着剤層を設けておくことが望ましい。
前記抗ウィルス組成物をフィルム基材上に塗布しておき、乾燥させて分散媒を除去してBステージとした樹脂膜の転写フィルムを製造し、これを基材上に加熱圧着して樹脂層を形成することもできる。
また、前記抗ウィルス組成物をフィルム基材上に塗布しておき、乾燥させて分散媒を除去してBステージとした樹脂膜を熱硬化や紫外線等を照射して硬化させてフィルムを製造し、このフィルムを粘着剤や接着剤を介して基材上に貼着して樹脂層を形成することもできる。
(3)硬化工程
硬化工程では、抗ウィルス組成物中の上記未硬化の樹脂を硬化させることにより膜状の樹脂層を作成する。
樹脂を硬化させる方法としては、樹脂の種類に応じて適宜選択することが望ましく、例えば、未硬化の多官能(メタ)アクリレート樹脂の場合は、紫外線照射、加熱、ポリシロキサン樹脂の場合は、加熱、加水分解反応、20%〜100%の湿度を有する空気に接触させる方法等が挙げられる。
紫外線照射により樹脂を硬化させる場合には、紫外線を照射の条件は、1〜300mW/cm、1〜800秒であることが望ましい。
また、加熱により樹脂を硬化させる場合には、80℃〜180℃で加熱することが望ましい。
さらに、クロロアルキルシランを原料として使用して加水分解重合を行う場合は、塩酸や水酸化ナトリウムなどの酸、塩基の存在下で反応させることが望ましい。
また、末端に反応性硬化基を持ち、水によって硬化できるようなシリコーン樹脂を、触媒を用いてポリシロキサン系樹脂とする場合は、湿度20%〜100%の空気に接触させることで空気中の水と末端の反応性硬化基が反応して重合反応が進行することが望ましい。
(その他の工程)
なお、抗ウィルス組成物が分散媒を含む場合には、抗ウィルス組成物を塗布した後、乾燥させ、分散媒を蒸発、除去し、抗ウィルス組成物を基材表面に仮固定させるとともに、抗ウィルス組成物の乾燥収縮により、粒状の抗ウィルス剤を抗ウィルス組成物の表面から露出させることができる。
乾燥条件としては、60〜100℃、0.5〜5.0分が望ましい。
また、前述のように前記抗ウィルス組成物をポリエチレンテレフタレートなどの基材フィルムに塗布した後、これを乾燥させて抗ウィルス剤を含む樹脂膜の転写フィルムを製造し、抗ウィルス組成物の膜が基材に接触するように転写フィルムを載置して、加圧した後、基材フィルムを剥がして、未硬化の樹脂を硬化させることができるが、この場合は、最初にポリエチレンテレフタレートなどの基材フィルム上に粒状の抗ウィルス剤を配置し、その上に抗ウィルス組成物の膜を塗布することで樹脂膜の転写フィルムを製造することが望ましい。
(実施例1)
(1)イミダゾール系抗微生物剤((株)日本曹達 商品名:バイオカット‐BM100F))をボールミルで粉砕して、平均粒子径8.5μmに調整する。
(2)MMA(メチルメタクリレート)250重量部と、分子内に5個以上のアクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートとして、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びヘキサアクリレート混合物(商品名:KAYARAD DPHA、日本化薬株式会社製、固形分100%、ペンタ比率約40%)100重量部と、2官能(メタ)アクリレートとしてジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート(商品名:ライトアクリレートDCP−A、共栄社化学株式会社製、粘度130〜170mPa・s/25℃)を80重量部と、単官能(メタ)アクリレートとしてシクロヘキシルメタクリレート(商品名:ライトエステルCH、共栄社化学株式会社製)を20重量部と、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(商品名:Irgacure184、BASF社製、固形分100%)を13.5重量部と、レベリング剤としてアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンの溶液(商品名:BYK−UV3570、ビッグケミー・ジャパン株式会社製)を1.35重量部とを配合して、(メタ)アクリル系樹脂からなる無溶剤型紫外線硬化樹脂組成物を得る。
次に、無溶剤型紫外線硬化樹脂組成物100重量部に対して平均粒子径8.5μmのイミダゾール系抗微生物剤(抗ウィルス剤)を15重量部添加して、三本ローラーで混練して抗ウィルス組成物を得る。
得られた抗ウィルス組成物を500mm×500mmの大きさの白色光沢メラミン化粧板上に、ラバースキージを用いてコートする。膜厚は3μmである。
この後、紫外線照射装置(COATTEC社製 MP02)を用い、30mW/cmの照射強度で80秒間紫外線を照射することにより、基材である白色メラミン化粧板表面にイミダゾール系抗ウィルス剤を含むアクリル系樹脂からなる硬化物が膜状に形成された実施例1に係る抗ウィルス性部材を得る。
(実施例2)
実施例1と基本的に同じであるが、無溶剤型紫外線硬化樹脂組成物100重量部に対して平均粒子径8.5μmのイミダゾール系抗微生物剤(抗ウィルス剤)を5重量部添加して、三本ローラーで混練して抗ウィルス組成物を得る。
(実施例3)
実施例1と基本的に同じであるが、無溶剤型紫外線硬化樹脂組成物100重量部に対して平均粒子径8.5μmのイミダゾール系抗微生物剤(抗ウィルス剤)30重量部添加して、三本ローラーで混練して抗ウィルス組成物を得る。
(実施例4)
(1)市販のヨウ化第一銅(CuI)粉末をエタノールに分散後、ボールミルにて解砕・分散し、平均粒子径1.2μmのヨウ化第一銅のスラリーを得た。
(2)MMA(メチルメタクリレート)250重量部と、分子内に5個以上のアクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートとして、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びヘキサアクリレート混合物(商品名:KAYARAD DPHA、日本化薬株式会社製、固形分100%、ペンタ比率約40%)100重量部と、2官能(メタ)アクリレートとしてジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート(商品名:ライトアクリレートDCP−A、共栄社化学株式会社製、粘度130〜170mPa・s/25℃)を80重量部と、単官能(メタ)アクリレートとしてシクロヘキシルメタクリレート(商品名:ライトエステルCH、共栄社化学株式会社製)を20重量部と、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(商品名:Irgacure184、BASF社製、固形分100%)を13.5重量部と、レベリング剤としてアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンの溶液(商品名:BYK−UV3570、ビッグケミー・ジャパン株式会社製)を1.35重量部とを配合して、(メタ)アクリル系樹脂からなる無溶剤型紫外線硬化樹脂組成物を得る。
(3)次に、無溶剤型紫外線硬化樹脂組成物100重量部に対して平均粒子径1.2μmのヨウ化銅からなる抗微生物剤(抗ウィルス剤)スラリーを30重量部添加して、三本ローラーで混練して抗ウィルス組成物を得る。
(4)離型剤として、シリコーンオイルをスプレー塗布した500mm×500mmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、(3)の抗ウィルス組成物を塗布して、紫外線照射装置(COATTEC社製 MP02)を用い、30mW/cmの照射強度で80秒間紫外線を照射することにより厚さ3μmの抗ウィルスフィルムを製造する。
(5)抗ウィルスフィルムの上にシリコーン系粘着剤を塗布した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離して、粘着剤層が黒色化粧板表面に接するように抗ウィルスフィルムを貼着して、抗ウィルス部材を得る。
(6)なお、抗ウィルスフィルムの上にシリコーン系粘着剤を塗布した後、テフロンシート(離型シート)を積層し、その後ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離することで抗ウィルスフィルムを製造する。このような抗ウィルスフィルムは、施工現場で離型シートを剥離して、抗ウィルス性が必要な部材に貼着できる。
(比較例1)
実施例1と基本的に同じであるが、無溶剤型紫外線硬化樹脂組成物100重量部に対して平均粒子径8.5μmのイミダゾール系抗微生物剤(抗ウィルス剤)を1重量部添加して、三本ローラーで混練して抗ウィルス組成物を得る。
(比較例2)
実施例1と基本的に同じであるが、無溶剤型紫外線硬化樹脂組成物100重量部に対して平均粒子径8.5μmのイミダゾール系抗微生物剤(抗ウィルス剤)を40重量部添加して、三本ローラーで混練して抗ウィルス組成物を得る。
(ネコカリシウィルスを用いた抗ウィルス性評価)
この抗ウィルス性試験は以下のように実施する。
各実施例及び各比較例で得られた抗ウィルス性部材の抗ウィルス性を評価するために、JIS Z 2801 抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果を改変した手法を用いた。改変点は、「試験菌液の接種」を「試験ウィルスの接種」に変更する点である。ウィルスを使用することによる変更点についてはすべてJIS L 1922繊維製品の抗ウィルス性試験方法に基づき変更する。測定結果は各実施例及び各比較例で得られた抗ウィルス性部材についてJIS L 1922付属書Bに基づき、CRFK細胞への感染能力を失ったネコカリシウィルス濃度をネコカリシウィルス不活度として表示する。ここで、ウィルス濃度の指標として、CRFK細胞に対して不活性化されたウィルスの濃度(ウィルス不活度)を使用し、このウィルス不活度に基づいて抗ウィルス活性値を算出する。
以下、手順を具体的に記載する。
(1)各実施例及び各比較例に係る抗ウィルス性部材を、1辺50mm角の正方形に切り出して試験試料とし、当該試験試料を滅菌済プラスチックシャーレに置き、試験ウィルス液(>10PFU/mL)を0.4mL接種する。試験ウィルス液は10PFU/mLのストックを精製水で10倍希釈したものを使用した。
(2)対照資料として50mm角のポリエチレンフイルムを用意し、試験試料と同様にウィルス液を接種した。
(3)接種したウィルスの液を、フィルムを載置することなく、そのまま、10℃で24時間反応させる。
(4)接種直後、SCDLP培地10mLを加え、ウィルス液を洗い流す。JIS L 1922付属書Bに基づいてウィルスの感染値を求める。
(5)以下の計算式を用いて抗ウィルス活性値を算出する。
Mv=Log(Vb/Vc)
Mv:抗ウィルス活性値
Log(Vb):ポリエチレンフイルムの所定時間反応後の感染値の対数値
Log(Vc):試験試料の所定時間反応後の感染値の対数値
参考規格 JIS L 1922、JIS Z 2801
測定方法は、プラーク測定法によった。
また、試験ウィルスはFeline calcivirus; Strain :F−9 ATCC VR−782を用いる。
各実施例及び各比較例に係る試験試料を用いて、上記「ネコカリシウィルスを用いた抗ウィルス性評価」と同様の方法で抗ウィルス活性値を算出する。結果を表1に示す。
(抗ウィルス剤の重心間距離の平均値)
抗ウィルス部材の表面を平面視にて電子顕微鏡で拡大撮影し(図1参照 300倍に拡大)、この撮影画像をImageJなる画像処理ソフトを用いて二値化する。なお、ImageJは、https://imagej.nih.gov/ij/からダウンロードが可能な画像処理ソフトである。次に二値化した画像内の1つの粒状の抗ウィルス剤の重心と、その抗ウィルス剤の周囲に存在する複数の抗ウィルス剤の重心との間の距離のうち最も短いものから長いものにかけて3つ選択する(図2、図4参照 線分が3つの重心間距離)。このような粒状の抗ウィルス剤間の3つの重心間距離の測定を撮影された画像内の全ての抗ウィルス剤について行う。このように測定された重心間距離について、ヒストグラムを作成したものが図3及び図5である。抗ウィルス剤の重心間距離の平均値を計算すると、実施例1の場合は、12.9μmである。また、実施例4の場合は、3.7μmである。
実施例1〜4、比較例1、2について、抗ウィルス剤の重心間距離の平均値と抗ウィルス活性の測定結果を表1に示す。抗ウィルス剤の重心間距離の平均値が3〜30μmの場合に、特に抗ウィルス活性が高くなっていることが分かる。
Figure 2021154729
以上の結果から、抗ウィルス剤の重心間距離を調整することで、高い抗ウィルス活性を得ることができ、過剰量の抗ウィルス剤を用いることなく、効率的なウィルスを失活させることができる抗ウィルス部材が得られる。

Claims (12)

  1. 基材表面に光触媒機能を持たない粒状の抗ウィルス剤を複数含む膜状の樹脂層が形成され、前記粒状の抗ウィルス剤の少なくとも一部は、樹脂層から露出しており、前記抗ウィルス部材を平面視した場合に、隣接する抗ウィルス剤間の重心間距離の平均値が3から30μmであることを特徴とする抗ウィルス部材。
  2. 前記粒状の抗ウィルス剤の平均粒子径は0.01〜50μmである請求項1に記載の抗ウィルス性部材。
  3. 前記抗ウィルス剤は、光触媒機能を持たない有機系抗ウィルス剤及び/又は光触媒機能を持たない無機系抗ウィルス剤である請求項1又は2に記載の抗ウィルス性部材。
  4. 前記抗ウィルス剤は、銅イオン及び銅化合物を含まない請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗ウィルス性部材。
  5. 前記膜状の樹脂層中に、(メタ)アクリレート系樹脂及びポリシロキサン系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上からなる樹脂を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗ウィルス性部材。
  6. 前記膜状の樹脂層中に、レベリング剤を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗ウィルス性部材。
  7. 前記膜状の樹脂層中に、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗ウィルス性部材。
  8. 前記(メタ)アクリレート系樹脂が多官能ウレタン(メタ)アクリレート樹脂である請求項1〜7のいずれか1に記載の抗ウィルス性部材。
  9. 前記基材は、フィルムもしくはシート状である請求項1〜8のいずれか1に記載の抗ウィルス性部材。
  10. 前記フィルムもしくはシート状の基材は、抗ウィルス剤が配置される側の反対側面に粘着剤層が設けられてなる請求項9に記載の抗ウィルス性部材。
  11. 前記隣接する抗ウィルス剤間の重心間距離の平均値が4から30μmであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の抗ウィルス部材。
  12. 光触媒機能を持たない粒状の抗ウィルス剤を複数含む膜状の樹脂層からなり、前記粒状の抗ウィルス剤の少なくとも一部は、樹脂層から露出しており、前記抗ウィルス部材を平面視した場合に、隣接する抗ウィルス剤間の重心間距離の平均値が3から30μmであることを特徴とする抗ウィルスフィルム。
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