JP2021154632A - 積層体 - Google Patents

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大起 中小路
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Abstract

【課題】硬度と耐摩耗性を両立したコーティング膜を有する積層体を提供する。【解決手段】基材上に、アルコキシシランの加水分解部分縮合物を含む樹脂組成物の硬化物からなるコーティング膜を有する積層体であって、下記耐摩耗性試験(I)により測定した前記コーティング膜のΔHazeが10以下であり、鉛筆硬度が7H以上である積層体。耐摩耗性試験(I):JIS K 7204に準拠して摩耗輪(CS−10F)を用いてコーティング膜の摩耗試験(500g荷重、100回転)を行い、試験前後のコーティング膜のHazeを測定し、下記ΔHazeを算出する。ΔHaze=(摩耗試験後のHaze)−(摩耗試験前のHaze)【選択図】なし

Description

本発明は、積層体に関する。詳しくは、基材上に、アルコキシシランの加水分解部分縮合物を含む樹脂組成物の硬化物からなるコーティング膜を有する積層体に関する。
電子機器、外壁、窓などの表面には、硬度、耐摩耗性、煮沸耐性、耐酸性、耐アルカリ性等の高い耐久性が求められ、用途に応じて、密着性や親水性、撥水性等の更なる機能性が求められる。従来、電子機器の筐体部分や、窓ガラス等の用途には、硬度や耐摩耗性を付与するために、アクリレート等の有機系ポリマーや、アルコキシシランを加水分解縮合してなるケイ素含有ポリマーを硬化させた材料が用いられている。近年、用途によっては非常に高い硬度を要求されており、そのために厚膜化が必要となるが、有機系ポリマーでは硬度が不十分であり、ケイ素含有ポリマーでは厚膜での靭性不足のため製膜が困難であった。そこで、近年の品質水準を満たすためには、特に厚膜において硬度と耐摩耗性を両立することが求められていた。
特許文献1は、紫外線硬化型アクリレート系を含む組成物を硬化させた膜が、優れた硬度を有することを記載している。特許文献2は、アルコキシシランの加水分解縮合物を含む組成物を硬化させた膜が、高い耐擦傷性を有することを記載している。しかし、これらの文献には、厚膜としたときに硬度と耐摩耗性を両立できる硬化物は記載されていない。
国際公開第2013/047626 特開第2015−78338号公報
本発明は、硬度と耐摩耗性を両立したコーティング膜を有する積層体を提供することを目的とする。
本発明者らは、アルコキシシランの加水分解部分縮合物の硬化物が、高い硬度と耐摩耗性を有することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、基材上に、アルコキシシランの加水分解部分縮合物を含む樹脂組成物の硬化物からなるコーティング膜を有する積層体であって、
下記耐摩耗性試験(I)により測定した前記コーティング膜のΔHazeが10以下であり、
鉛筆硬度が7H以上である積層体に関する。
耐摩耗性試験(I):JIS K 7204に準拠して摩耗輪(CS−10F)を用いてコーティング膜の摩耗試験(500g荷重、100回転)を行い、試験前後のコーティング膜のHazeを測定し、下記ΔHazeを算出する。
ΔHaze=(摩耗試験後のHaze)−(摩耗試験前のHaze)
下記耐摩耗性試験(II)により測定した前記コーティング膜のΔHazeが10以下であることが好ましい。
耐摩耗性試験(II):JIS K 7204に準拠して摩耗輪(CS−10F)を用いてコーティング膜の摩耗試験(500g荷重、1000回転)を行い、試験前後のコーティング膜のHazeを測定し、下記ΔHazeを算出する。
ΔHaze=(摩耗試験後のHaze)−(摩耗試験前のHaze)
前記コーティング膜の基材への密着性が5B以上であることが好ましい。
アルコキシシランの加水分解部分縮合物中の、炭素原子数のケイ素原子数に対する比率(C/Si比)が2〜8であることが好ましい。
アルコキシシランが4官能以上のアルコキシシランを含むことが好ましい。
アルコキシシランが2級アミノ基を有するアルコキシシランを含むことが好ましい。
コーティング膜の膜厚が0.5〜25μmであることが好ましい。
また、本発明は、アルコキシシランの加水分解部分縮合物を含む前記積層体におけるコーティング膜を形成するための樹脂組成物に関する。
樹脂組成物は、さらに無機微粒子を含むことが好ましい。
本発明の積層体におけるコーティング膜は、厚膜としたときにも高い硬度と耐摩耗性を有する。
<<積層体>>
本発明の積層体は、基材上に、アルコキシシランの加水分解部分縮合物を含む樹脂組成物の硬化物からなるコーティング膜を有する積層体であって、下記耐摩耗性試験(I)により測定した前記コーティング膜のΔHazeが10以下であり、鉛筆硬度が7H以上である積層体に関する。
耐摩耗性試験(I):JIS K 7204に準拠して摩耗輪(CS−10F)を用いてコーティング膜の摩耗試験(500g荷重、100回転)を行い、試験前後のコーティング膜のHazeを測定し、下記ΔHazeを算出する。
ΔHaze=(摩耗試験後のHaze)−(摩耗試験前のHaze)
基材の材質は、例えば、ステンレス、鉄、銅、鋼、特殊鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、銀などの金属、コンクリート、煉瓦、砂岩、モルタル、セメント、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン樹脂、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂等が挙げられる。
<コーティング膜>
コーティング膜は、アルコキシシランの加水分解部分縮合物を含む樹脂組成物の硬化物からなる。樹脂組成物を基材に塗布した後、加熱処理及び/又は露光処理を行うことにより、基材上にコーティング膜が積層された積層体が得られる。基材への樹脂組成物の塗布は、一般的な方法により行うことができる。硬化条件は特に限定されないが、加熱硬化の場合には70〜1000℃で1〜130分間の条件が挙げられる。露光により硬化する場合には5〜2000mJ/cmの光照射量が挙げられる。
コーティング膜の鉛筆硬度は、下記の条件により測定したときに7H以上であり、8H以上が好ましい。鉛筆硬度が7H以上であれば、幅広い用途にて適用できる。鉛筆硬度の上限は特に限定されず、一般的には9H以下である。
測定条件:コーティング膜の膜強度(鉛筆硬度)は、JIS−K5600−5−4の試験法に準じて、安田精機製作所社製鉛筆引っかき硬度試験機を用いて測定を行う。
コーティング膜は、下記耐摩耗性試験(I)により100回の回転試験を行ったときのΔHazeが10以下である。前記ΔHazeが10以下であると、高い耐久性が要求される用途にも適用できる。前記ΔHazeは、5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。下限は特に限定されない。
耐摩耗性試験(I):JIS K 7204に準拠して摩耗輪(CS−10F)を用いてコーティング膜の摩耗試験(500g荷重、100回転)を行い、試験前後のコーティング膜のHazeを測定し、下記ΔHazeを算出する。
ΔHaze=(摩耗試験後のHaze)−(摩耗試験前のHaze)
コーティング膜は、下記耐摩耗性試験(II)により1000回の回転試験を行ったときのΔHazeが10以下であることが好ましく、9以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましい。前記ΔHazeが10以下であると、表面に少しの傷が入るだけで外観上の欠点と扱われる意匠性の高い用途にも適用できる。下限は特に限定されない。
耐摩耗性試験(II):JIS K 7204に準拠して摩耗輪(CS−10F)を用いてコーティング膜の摩耗試験(500g荷重、1000回転)を行い、試験前後のコーティング膜のHazeを測定し、下記ΔHazeを算出する。
ΔHaze=(摩耗試験後のHaze)−(摩耗試験前のHaze)
耐摩耗性試験(I)〜(II)においては、試験前に摩耗輪にあらかじめリフェース処理を行うことが好ましい。リフェース処理では、例えばJIS K 7204に記載されているように摩耗粉の目詰まりを除去し、摩耗輪が試験片を垂直に圧着するように面仕上げを行う。
コーティング膜のHazeは、例えばスガ試験機株式会社製ヘイズメーターHZ−2を用いて測定できる。
コーティング膜の基材への密着性は、実施例に記載の条件により測定したときに5B以上が好ましい。
コーティング膜の膜厚は、0.5〜25μmが好ましく、1〜25μmがより好ましく、2〜9μmがさらに好ましく、3〜8μmが特に好ましい。本発明の加水分解部分縮合物を使用して作製されたコーティング膜は、厚膜としたときでも硬度と耐摩耗性を両立できる。
コーティング膜の全光線透過率は特に限定されないが、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がさらに好ましい。上記範囲内であると、視認性が求められる用途にも適用できる。
コーティング膜のヘイズ値は低いほど光学特性が良好となり好ましいが、例えば、2.5%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1.5%以下がさらに好ましい。
コーティング膜は、高温高湿条件でも大きく変化しないことが好ましい。例えば、試験片を恒温恒湿槽に入れて温度85℃、相対湿度85%で240時間保存する試験前後に、試験片の塗膜外観、膜厚、および日射透過率を評価し、その変化が下記条件1と条件2のどちらか一方を満たすことが好ましく、条件1と条件2のどちらも満たすことがより好ましい。
条件1:試験後の塗膜形状にクラックが発生しない、および/または試験前後の膜厚の変化率が5%以下である。
条件2:試験前後の日射透過率の変化率が1%以下である。
なお、塗膜外観、膜厚、および日射透過率は、実施例に記載の条件により測定するものとする。
コーティング膜は、アルカリ耐性を有することが好ましい。例えば、試験片をpH13であるNaOH液に3時間ディッピングし、100℃3分で乾燥する試験の前後に、試験片の塗膜外観、膜厚、および日射透過率を評価し、その変化が湿熱試験について前述した基準で評価分類したときに、条件1と条件2のどちらか一方を満たすことが好ましく、条件1と条件2のどちらも満たすことがより好ましい。
コーティング膜は、酸耐性を有することが好ましい。例えば、試験片をpH1である硫酸水溶液に3時間ディッピングし、100℃3分で乾燥する試験の前後に、試験片の塗膜外観、膜厚、および日射透過率を評価し、その変化が湿熱試験について前述した基準で評価分類したときに条件1と条件2のどちらか一方を満たすことが好ましく、条件1と条件2のどちらも満たすことがより好ましい。
<樹脂組成物>
樹脂組成物は、アルコキシシランの加水分解部分縮合物を含む。樹脂組成物の固形分中、加水分解部分縮合物の含有量は10〜100重量%が好ましく、20〜99重量%がより好ましく、30〜99重量%がさらに好ましい。上記範囲内であると、無機粒子等との相溶性が向上し、外観に優れる塗膜となる。
アルコキシシランの加水分解部分縮合物は、アルコキシシラン中のアルコキシ基の加水分解による水酸基の形成、及び、形成された水酸基同士の縮合反応により形成される。加水分解部分縮合物とは、アルコキシ基の加水分解反応の後、水溶性を示す程度に水酸基同士の縮合反応が進んだものをいう。加水分解と縮合の条件、及び水溶性の指標は後述する。
加水分解部分縮合物の原料として用いるアルコキシシランは、加水分解と縮合反応により加水分解部分縮合物を形成できれば特に限定されないが、例えば下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
SiR (1)
一般式(1)中、4つのRは、それぞれ水素、水酸基、アルコキシ基、脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基であり、4つのRのうち1以上のRがアルコキシ基である。アルコキシ基、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基は、それぞれ置換基を有してよい。
一般式(1)の4つのRのうち、1つのRがアルコキシ基である場合はモノアルコキシシラン、2つのRがアルコキシ基である場合はジアルコキシシラン、3つのRがアルコキシ基である場合はトリアルコキシシラン、4つのRがアルコキシ基である場合はテトラアルコキシシランであり、これらのいずれであってもよい。また、これらのアルコキシシランは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。トリアルコキシシランまたはテトラアルコキシシランを含有すると分岐構造の加水分解部分縮合物を得ることができ、分岐構造の加水分解部分縮合物は硬化して塗膜としたときの膜密度が高く、強度や耐湿熱性、耐熱性に優れる。ジアルコキシシランを用いることにより、加水分解部分縮合物の分子量を調整できる他、柔軟性が付与できる。モノアルコキシシランを用いることにより、加水分解部分縮合物の分子量を調整できる。
アルコキシシランを構成するアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基及びエトキシ基等のC1−4アルコキシ基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、及びt−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のC1−20アルキル基が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、及びキシリル基等のアリール基;並びにベンジル基等のアラルキル基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が有する置換基としては、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロキシ基、ビニル基、エポキシ基等の架橋性官能基、1級アミノ基、2級アミノ基、チオール基、及びスチリル基等が挙げられる。
アルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メトキシトリメチルシラン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)オクタン、ビス(トリエトキシシリル)オクタン、ビス(トリエトキシシリル)エチレン、ビス(トリメトキシシリルメチル)エチレン、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、1−(トリエトキシシリル)−2−(ジエトキシメチルシリル)エタン等の脂肪族炭化水素基を有するアルコキシシラン;フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等の芳香族炭化水素基を有するアルコキシシラン;ビス−[トリエトキシシリルプロピル]アミン、ビス−[トリメトキシシリルプロピル]アミン、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の2級アミノ基を有するアルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノフェニルトリメトキシシラン、3−アミノフェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン等の1級アミノ基を有するアルコキシシラン;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリル基を有するアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン等のビニル基を有するアルコキシシラン;β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基を有するアルコキシシラン:3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するアルコキシシラン:テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン:1,3,5−トリス(メチルジメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(メチルジエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(トリメトキシシリルエチル)イソシアヌレート、1,3−(ジ−2−プロペン−1−イル)−5−(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1−(2−プロペン−1−イル)−3,5−ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1−グリシジルメチル−3,5−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3−ビス(グリシジルメチル)−5−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1−グリシジルメチル−3−(2−プロペン−1−イル)−5−(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3−ジメチル−5−(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート基を有するアルコキシシラン等が挙げられる。
また、4個以上アルコキシ基が存在するアルコキシシランを添加すると、より強固に架橋構造が形成されるため、硬度と耐摩耗性に優れる傾向となる。4個以上アルコキシ基が存在するアルコキシシランとしては、テトラ(トリメトキシシリル)メタン、テトラ(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)オクタン、ビス(トリエトキシシリル)オクタン、ビス(トリエトキシシリル)エチレン、ビス(トリメトキシシリルメチル)エチレン、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、1−(トリエトキシシリル)−2−(ジエトキシメチルシリル)エタン、1,3,5−トリス(メチルジメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(メチルジエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(トリメトキシシリルエチル)イソシアヌレート、1,3−(ジ−2−プロペン−1−イル)−5−(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1−(2−プロペン−1−イル)−3,5−ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1−グリシジルメチル−3,5−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3−ビス(グリシジルメチル)−5−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1−グリシジルメチル−3−(2−プロペン−1−イル)−5−(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3−ジメチル−5−(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。
これらの中でも、2級アミノ基を有するアルコキシシラン、エポキシ基を有するアルコキシシラン、4官能以上のアルコキシシランが好ましく、ビス−[トリエトキシシリルプロピル]アミン、ビス−[トリメトキシシリルプロピル]アミン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが好ましい。以上のアルコキシシランは1種類のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、その中に2級アミノ基を有するアルコキシシラン、および/または4官能以上のアルコキシシランを含むことが好ましい。
炭素原子数のケイ素原子数に対する比率は、加水分解部分縮合物に含まれる炭素原子数とケイ素原子数から算出される。ここで、炭素原子数とケイ素原子数は、原料であるアルコキシシランの加水分解物の原子の数である。2種以上のアルコキシシランを併用する場合は、さらに各アルコキシシランの分子数を掛け合わせることにより、加水分解部分縮合物に含まれる炭素原子の総数とケイ素原子の総数を算出して、炭素原子数のケイ素原子数に対する比率を導く。
炭素原子数のケイ素原子数に対する比率は2以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、3以上がさらに好ましく、4以上がさらにより好ましい。前記比率の上限は8以下であるが、7以下であることが好ましく、5.5以下であることがより好ましく、4.5以下であることがさらに好ましい。前記比率を前述の範囲とすることにより、加水分解部分縮合物に有機系の性質を付与できる。その結果、加水分解部分縮合物の硬化物は、厚膜としたときに硬度と耐摩耗性を両立することができる。
加水分解部分縮合物の液屈折率は特に限定されないが、1.4〜1.6が好ましい。上記範囲内であると、ガラスやフィルム等の一般的な透明基材と光学干渉が起こりにくい傾向がある。
<加水分解部分縮合物の製造方法>
加水分解部分縮合物の製造条件は、特に限定されないが、例えばアルコキシシランを酸性条件下で加水分解部分縮合させる条件が挙げられる。加水分解部分縮合は、アルコキシシランのアルコキシ基の加水分解による水酸基の形成、及び、形成された水酸基同士の縮合反応により行われる。これらの反応は一段階で行うことができる。アルコキシシランの加水分解部分縮合により加水分解部分縮合物が得られるが、加水分解部分縮合物には、アルコキシ基が加水分解した水酸基が一部残存してもよい。
反応時の温度条件は、特に限定されないが、好ましくは25〜200℃、より好ましくは30〜150℃、さらに好ましくは40〜120℃である。時間条件は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜24時間、より好ましくは0.1〜20時間、さらに好ましくは0.1〜15時間である。
アルコキシシランの加水分解部分縮合反応においては、使用するアルコキシシランのアルコキシ基の当量数以上の水を添加することが好ましい。水の添加量はアルコキシシランのアルコキシ基100モルに対し、100〜500,000モルが好ましく、500〜100,000モルがより好ましく、1,000〜50,000モルがさらに好ましい。
アルコキシシランの加水分解部分縮合反応においては、使用するアルコキシシランの反応性に応じて触媒を使用してもよい。触媒としては、酸性触媒が挙げられ、具体的にはギ酸、酢酸、氷酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸などの有機酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム等のハロゲン化アルミニウム、硝酸アルミニウムなどの無機酸、酸性シリカゲル、酸性シリカゾルが挙げられる。これらの中でも、成膜後に触媒が膜内に残存しない揮発性の酸が好ましく、沸点200℃以下の有機酸がより好ましく、ギ酸、酢酸がさらに好ましい。酸性触媒を使用することで、加水分解部分縮合反応が促進される、加水分解部分縮合物が安定化される、といった効果が得られる。
加水分解部分縮合反応時のpHは、1〜7が好ましく、2〜7がより好ましく、3〜4がさらに好ましい。この範囲とすることにより、所望の加水分解部分縮合物が得られる。
触媒の添加量は、アルコキシシランに対して0.0001〜20重量%であることが好ましく、0.0001〜10重量%であることがより好ましい。この範囲とすることにより、加水分解部分縮合反応が速やかに進むうえ、加熱により除去しやすい。
加水分解部分縮合反応は、溶媒を使用せずに行ってもよいが、必要に応じて溶媒を使用してもよい。このような溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール等のトリオール類;テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、3−メトキシブチル−1−アセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類を挙げることができる。これらの中では、加水分解部分縮合物を効率的に形成できることから、アルコール類、グリコール類、トリオール類等の水溶性有機溶媒が好ましく、アルコール類、グリコール類が特に好ましい。これらの溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、溶媒は、前述した水との混合液を用いてもよく、混合液として使用する場合、水と水溶性有機溶媒との混合液が好ましく、水とアルコールとの混合液がより好ましい。
溶媒の配合量としては、アルコキシシラン100質量部に対し、1〜5000質量部が好ましく、10〜500質量部がより好ましい。
アルコキシシランの加水分解縮合物が、水や水溶性有機溶媒の中で沈殿を生じない場合には、加水分解部分縮合物が得られたと判断できる。アルコキシシランの加水分解物の縮合反応が過剰に進行した場合は水溶性が低下し、水や水溶性有機溶媒の中でゲル化や懸濁が発生する。
<任意成分>
樹脂組成物には、加水分解部分縮合物に加えて、任意に他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、エポキシ樹脂やアクリレート、メラミン等の硬化性樹脂、アクリル樹脂やポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂、無機微粒子、導電性高分子、炭素材料、重合開始剤、レベリング剤、界面活性剤、光増感剤、消泡剤、中和剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、増粘剤、溶媒等が挙げられる。
硬化性樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、ベンゼン環を多数有した多官能型であるテトラキス(ヒドロキシフェニル)エタン型又はトリス(ヒドロキシフェニル)メタン型、ビフェニル型、トリフェノールメタン型、ナフタレン型、オルソノボラック型、ジシクロペンタジエン型、アミノフェノール型、脂環式等のエポキシ樹脂、シリコーンエポキシ樹脂等のエポキシ樹脂;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、レゾルシンジグリシジルエーテル、カテコールジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、t−ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテル、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルジグリシジルエーテル、ジメチルジ−t−ブチルビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィドジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物;3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド等の脂環式エポキシ化合物;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジメチロールシクロヘキサンジグリシジルエーテル、1,4−シクロヘキサンジグリシジルエーテル、1,3−シクロヘキサンジグリシジルエーテル、1,2−シクロヘキサンジグリシジルエーテル、ジメチロールジシクロペンタジエンジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロテレフタル酸ジグリシジルエステル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート等のアクリレート、メラミン等が挙げられる。
硬化性樹脂の配合量としては、加水分解部分縮合物100重量部に対して、硬化性樹脂1〜500重量部が好ましく、5〜250重量部がより好ましく、さらに好ましくは10〜200重量部である。
無機微粒子としては特に限定されないが、例えば、金属酸化物微粒子、窒化物、2種以上の金属元素から構成される複合酸化物、金属酸化物に異種の元素がドープされた化合物等が挙げられる。金属酸化物微粒子として、具体的には、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化鉄(Fe、FeO、Fe)、酸化銅(CuO、CuO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ニオブ(Nb)、酸化モリブデン(MoO)、酸化インジウム(In、InO)、酸化スズ(SnO)、酸化タンタル(Ta)、酸化タングステン(WO、W)、酸化鉛(PbO、PbO)、酸化ビスマス(Bi)、酸化セリウム(CeO、Ce)、酸化アンチモン(Sb、Sb)、酸化ゲルマニウム(GeO、GeO)等が挙げられる。これらの中では、加水分解部分縮合物との相溶性が良好であり硬度の向上や紫外線吸収能の付与を期待できるため、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ケイ素が好ましい。
無機微粒子の配合量は、加水分解部分縮合物100重量部に対して5〜500重量部が好ましく、10〜300重量部がより好ましく、20〜200重量部がさらに好ましい。
導電性高分子としては特に限定されず、従来公知の導電性高分子を用いることができ、具体例としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリナフタレン、これらの誘導体、及び、これらとドーパントとの複合体等が挙げられる。これらの導電性高分子は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
導電性高分子としては、分子内にチオフェン環を少なくとも1つ含む導電性高分子が好ましい。その理由は、チオフェン環を分子内に含むことで導電性が高い分子ができやすいからである。
導電性高分子としては、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、又は、ポリ(3,4−二置換チオフェン)とポリ陰イオンとの複合体がより好ましい。導電性や化学的安定性に極めて優れているからである。また、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、又は、ポリ(3,4−二置換チオフェン)とポリ陰イオンとの複合体を含有する場合、低温短時間で帯電防止層を形成することができ、生産性にも優れる。
炭素材料としては、特に限定されず、例えば、カーボンナノ材料、グラフェン、フラーレン等が挙げられる。これらの炭素材料は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、熱カチオン重合開始剤等を使用できる。これらの重合開始剤は単独で使用してもよく、併用してもよい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等を挙げることができる。
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)バラレート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルイルパーオキサイド等を挙げることができる。
光カチオン重合開始剤としては、例えば、オニウム塩、ハロゲン含有化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物などの、放射線により酸を発生する光酸発生剤を用いることができる。オニウム塩としては、例えばトリフレートあるいはヘキサフレートとのヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられ、ハロゲン含有化合物としては、ハロアルキル基含有炭化水素化合物あるいはハロアルキル基含有複素環式化合物、例えば、フェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、メトキシフェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどの(トリクロロメチル)−s−トリアジン誘導体や、トリブロモネオペンチルアルコール、ヘキサブロモヘキサンなどの臭素化合物、ヘキサヨードヘキサンなどのヨウ素化合物などが挙げられる。また、ジアゾメタン化合物としては、例えばビス(トリフルオロメチルスルホニウム)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニウム)ジアゾメタンなどが挙げられる。スルホン化合物としては、例えばβ−ケトスルホン、β−スルホニルスルホン等が挙げられ、スルホン酸化合物としては、アルキル(C1−12)スルホン酸エステル、ハロアルキル(C1−12)スルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホナート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱カチオン重合開始剤としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができ、温度に対して良好な潜在性を示す芳香族スルホニウム塩を好ましく使用することができる。熱カチオン重合開始剤の好ましい例としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロボレートが挙げられる。
レベリング剤としては特に限定されず、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン等のシロキサン系化合物;パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール等のフッ素系化合物;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、プロピレンオキシド重合体、エチレンオキシド重合体などのポリエーテル系化合物;ヤシ油脂肪酸アミン塩、ガムロジン等のカルボン酸;ヒマシ油硫酸エステル類、リン酸エステル、アルキルエーテル硫酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、スルホン酸エステル、コハク酸エステル等のエステル系化合物;アルキルアリールスルホン酸アミン塩、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等のスルホン酸塩化合物;ラウリルリン酸ナトリウム等のリン酸塩化合物;ヤシ油脂肪酸エタノールアマイド等のアミド化合物;アクリル系化合物等が挙げられる。
レベリング剤の配合量は、樹脂組成物の固形分中0.001〜5重量%が好ましく、0.01〜1重量%がより好ましく、0.05〜0.5重量%がさらに好ましい。
溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)等のエチレングリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、マロン酸ジエチル、シュウ酸ジブチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、エチレングリコールエーテル類、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、ケトン類及びエステル類が好ましく、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及びメチルアミルケトンがより好ましい。これらの溶媒は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
樹脂組成物の固形分率は、特に限定されないが、5〜50重量%が好ましく、7〜30重量%がより好ましく、8〜20重量%がさらに好ましい。
本発明の積層体は、基材上に、高い硬度と耐摩耗性を有するコーティング膜を有するため、ディスプレイや筐体等の電子機器、建築物の窓や内装・外壁部、自動車の窓や内装・外装部等の耐久性が求められる部分の用途に好適に適用できる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
(1)以下に、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
(1−1)アルコキシシラン
ビス−[トリメトキシシリルプロピル]アミン(Evonik社製、Dynasylan1124)
ビス−[トリエトキシシリルプロピル]アミン(Evonik社製、Dynasylan1122)
ビニルトリメトキシシラン(東京化成工業株式会社製)
メチルトリエトキシシラン(信越化学工業社製)
3−グリシジルオキシ−プロピルトリメトキシシラン(東京化成工業株式会社製)
1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン(Gelest社製、SIB1824)
N,N,N−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリイソシアヌレート(Evonik社製、VPS7163)
β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、A−186)
(1−2)樹脂組成物の構成成分
シリカ微粒子1(Evonik社製、SIVO110)
シリカ微粒子2(BYK社製、NANOBYK−3620)
シリカ微粒子3(日産化学社製、スノーテックスAK)
チタン微粒子(日揮触媒化成社製、OPTOLAKE GSX−G−1130A15)
(1−3)溶媒
イソプロピルアルコール(サガネ物産社製)
(1−4)レベリング剤
ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(BYK製、BYK−333)
(2)塗膜の評価方法
(2−1)透過率
スガ試験機株式会社製ヘイズメーターHZ−2を用いて測定した。
(2−2)ヘイズ
スガ試験機株式会社製ヘイズメーターHZ−2を用いて測定した。
(2−3)鉛筆硬度
各試験片の塗膜の膜強度(鉛筆硬度)は、JIS−K5600−5−4の試験法に準じて、安田精機製作所社製鉛筆引っかき硬度試験機を用いて測定した。
(2−4)密着性
各試験片の塗膜の密着性は、クロスカット試験(ASTM D3359−09e2)により、基材と塗膜との密着性を測定した。
(2−5)耐湿熱性試験
作製した試験片の塗膜外観、膜厚、および日射透過率を測定した。次に、試験片を恒温恒湿槽に入れて温度85℃、相対湿度85%で240時間保存し、保存後の塗膜外観、膜厚、および日射透過率を同様に測定した。試験前後の変化を下記の基準で評価分類した。
◎:条件1と条件2のどちらも満たす。
〇:条件1と条件2のどちらか一方を満たす。
×:条件1と条件2のどちらも満たさない。
条件1:試験後の塗膜形状にクラックが発生しない、および/または試験前後の膜厚の変化率が5%以下である。
条件2:試験前後の日射透過率の変化率が1%以下である。
塗膜外観の評価方法:目視観察を行った。
膜厚変化率の評価方法:触針式表面形状測定器DEKTAK(アルバック社製)により膜厚を測定した。膜厚変化率は、「(試験後の膜厚)−(試験前の膜厚)」の絶対値を、試験前の膜厚で除して、百分率とすることで算出した。
日射透過率変化率の評価方法:紫外可視近赤外分光光度計V−670(日本分光株式会社製)を用い、JIS A 5759 2008に従って日射透過率を測定した(測定波長は300〜2500nm、ランプはハロゲンランプ、重水素ランプを使用)。「(試験後の日射透過率)−(試験前の日射透過率)」の絶対値を、試験前の日射透過率で除して百分率とすることで算出した。
(2−6)アルカリ耐性試験
作製した試験片の、塗膜外観、膜厚、および日射透過率を測定した。次に、試験片をpH13であるNaOH液に3時間ディッピングし、100℃3分で乾燥後、塗膜外観、膜厚、および日射透過率を測定した。試験前後の変化を(2−5)と同様の基準で評価分類した。
(2−7)酸耐性試験
作製した試験片の、塗膜外観、膜厚、および日射透過率を測定した。次に、試験片をpH=1である硫酸水溶液に3時間ディッピングし、100℃3分で乾燥後、塗膜外観、膜厚、および日射透過率を測定した。試験前後の変化を(2−5)と同様の基準で評価分類した。
(2−8)100回の回転後のΔHaze
JIS K 7204に準拠して摩耗輪(CS−10F)を用いてコーティング膜の摩耗試験(500g荷重、100回転)を行い、試験前後のコーティング膜のHazeを測定し、下記ΔHazeを算出した。なお、測定はテーバー摩耗試験機(東洋精機株式会社製)を用いて、試験前には摩耗輪にあらかじめリフェース処理を行った。
ΔHaze=(摩耗試験後のHaze)−(摩耗試験前のHaze)
(2−9)1000回の回転後のΔHaze
JIS K 7204に準拠して摩耗輪(CS−10F)を用いてコーティング膜の摩耗試験(500g荷重、1000回転)を行い、試験前後のコーティング膜のHazeを測定し、下記ΔHazeを算出した。なお、測定はテーバー摩耗試験機(東洋精機株式会社製)を用いて、試験前には摩耗輪にあらかじめリフェース処理を行った。
ΔHaze=(摩耗試験後のHaze)−(摩耗試験前のHaze)
(合成例1〜14)
室温条件下、500mLセパラブルフラスコに、水とギ酸と、表1に記載の重量比でアルコキシシランを仕込んだ。表1記載の合成温度まで昇温後、2時間熟成させた。前記ギ酸の配合量は、表1記載のpHとなる量とし、反応液の固形分濃度は5%とした。その後、減圧加熱下(120hPa、50℃)でさらに2時間熟成した。その後、水を留去して、加水分解部分縮合物を得た。この際、期待する加水分解部分縮合物が得られている場合は懸濁がないクリアな溶液となるが、縮合が過剰に進行した場合は水溶性が低下し、ゲル化や懸濁が発生する。
Figure 2021154632
合成例1〜14で得られた加水分解部分縮合物はいずれも水とギ酸の混合溶媒に溶解しており、ゲル化や懸濁はみられなかった。
(実施例1〜15、比較例1〜3)
合成例1〜14の加水分解部分縮合物と、表2に記載の各成分を配合して樹脂組成物を作製した。この樹脂組成物をガラス製基材(AGC社製、フロートガラス)上に、バーコーターにより塗布した。200℃で120分間乾燥し、表記載の膜厚のコーティング膜を形成した。コーティング膜のTt、Haze、鉛筆硬度、密着性、耐湿熱性、アルカリ耐性、酸耐性をそれぞれ評価した。その結果を表2に示す。
Figure 2021154632
比較例1の積層体は、コーティング膜がアルコキシシランの加水分解部分縮合物の構造に起因して柔軟性に乏しいため、硬化時のクラック発生を避けるために0.5μmと比較的薄い膜厚で成膜した。そのため、100回転の耐摩耗性試験後において膜剥がれが生じた。比較例2〜3の積層体はコーティング膜が厚膜であるが、鉛筆硬度に劣っていた。実施例1〜15の積層体のコーティング膜は100回転後のΔHazeが10以下に抑えられ、鉛筆硬度、および基材への密着性も良好であった。

Claims (9)

  1. 基材上に、アルコキシシランの加水分解部分縮合物を含む樹脂組成物の硬化物からなるコーティング膜を有する積層体であって、
    下記耐摩耗性試験(I)により測定した前記コーティング膜のΔHazeが10以下であり、
    鉛筆硬度が7H以上である積層体。
    耐摩耗性試験(I):JIS K 7204に準拠して摩耗輪(CS−10F)を用いてコーティング膜の摩耗試験(500g荷重、100回転)を行い、試験前後のコーティング膜のHazeを測定し、下記ΔHazeを算出する。
    ΔHaze=(摩耗試験後のHaze)−(摩耗試験前のHaze)
  2. 下記耐摩耗性試験(II)により測定した前記コーティング膜のΔHazeが10以下である、請求項1に記載の積層体。
    耐摩耗性試験(II):JIS K 7204に準拠して摩耗輪(CS−10F)を用いてコーティング膜の摩耗試験(500g荷重、1000回転)を行い、試験前後のコーティング膜のHazeを測定し、下記ΔHazeを算出する。
    ΔHaze=(摩耗試験後のHaze)−(摩耗試験前のHaze)
  3. 前記コーティング膜の基材への密着性が5B以上である、請求項1または2に記載の積層体。
  4. アルコキシシランの加水分解部分縮合物中の、炭素原子数のケイ素原子数に対する比率(C/Si比)が2〜8である、請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
  5. アルコキシシランが4官能以上のアルコキシシランを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
  6. アルコキシシランが2級アミノ基を有するアルコキシシランを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
  7. コーティング膜の膜厚が0.5〜25μmである、請求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
  8. アルコキシシランの加水分解部分縮合物を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の積層体におけるコーティング膜を形成するための樹脂組成物。
  9. さらに無機微粒子を含む請求項8に記載の樹脂組成物。
JP2020058066A 2020-03-27 2020-03-27 積層体 Pending JP2021154632A (ja)

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