JP2021154292A - ダイカスト金型用スプールブッシュ - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1に記載のダイカスト鋳造機用スプールブッシュによれば、冷却用流体による良好な冷却効果が得られ、しかも、熱応力による割れが生じ難くなる。
一方、前記特許文献2に記載のダイカストマシン用スプールブッシュでは、被覆層を被覆するために特殊な設備と多大なコストとが必要となる。しかも、仮に、前記被覆層自体にカジリが生じた場合、係る被覆層のみならず、スプールブッシュ本体を含む前記スプールブッシュ全体を新たなものに更新せざるを得ないため、著しく不経済となる、という問題があった。
即ち、本発明のダイカスト金型用スプールブッシュは、金属溶湯をダイカスト金型に圧入する流路に用いるスプールブッシュであって、全体が円筒形状で、且つ外周面に冷却水の流路が形成されたブッシュ本体と、該ブッシュ本体の内周面側に挿入されたインナースリーブと、上記ブッシュ本体の外周面および上記冷却水の流路の開口部を覆うアウタースリーブと、上記ブッシュ本体、インナースリーブ、およびアウタースリーブにおけるダイカスト金型側の各端面に、前記ダイカスト金型とは反対側の端面が面接触して配置されるテーパーリングと、を備えている。
(1)金属溶湯をダイカスト金型側に圧送するプランジャチップ(ピストン)の先端面や、前記金属溶湯の凝固物によってインナースリーブの内周面側にカジリが生じても、テーパーリングを取り除き、且つ前記インナースリーブに先端部が進入していたボルトを緩めた後、カジリを受けたインナースリーブの端面を、例えば、銅ハンマーなどにより軸方向に沿って打設することによって、新たなインナースリーブとの取り替え作業を短時間で且つ容易に行うことができる。
(2)前記アウタースリーブは、ブッシュ本体とテーパーリングとに挟まれているので、前述のように該テーパーリングを取り除き、且つ当該アウタースリーブを取り外すことによって、ブッシュ本体の外周面に形成された冷却水の流路や、該流路の前後(両側)に配置してあるOリングなどのシール材の点検および取り替えなどのメンテナンスを、迅速且つ確実に行うことができる。
(3)前記ブッシュ本体、アウタースリーブ、インナースリーブ、およびテーパーリングを互いに嵌合し、ボルト止めする作業により、容易に組み立てられるので、前記特許文献2のスプールブッシュに比べて比較的低コストで製作し得る。
図1は、本発明ダイカスト金型スプールブッシュ(以下、単にスプールブッシュと称する)1の使用態様を示す概略の断面図であり、同図中の矢印は、金属溶湯の流れを示す。尚、便宜上の観点から、図1,図2中では、右側を先端側と、左側を基端側と称する。
前記スプールブッシュ1は、図1に示すように、ダイカスト金型30とプランジャスリーブ35との間において、緊密に配管される。前記ダイカスト金型30は、固定側金型31と可動側金型32とからなり、両者の間には、図示しないキャビティ内に連通する上向きのスプルコアー33が位置している。
尚、前記プランジャスリーブ35の先端面は、前記スプールブッシュ1において、後述するブッシュ本体2とインナースリーブ10との基端側の端面に位置する凹部内に進入している。
スプールブッシュ1は、図2(A)に示すように、全体が円筒形状を呈し、且つ外周面4に複数(2個)の冷却水の流路5が並列に形成されたブッシュ本体2と、該ブッシュ本体2の内周面3側に密に挿入(嵌合)された円筒形状のインナースリーブ10と、前記ブッシュ本体2の外周面4側を覆う円筒形状のアウタースリーブ13と、該アウタースリーブ13、前記ブッシュ本体2、およびインナースリーブ10における先端側の端面に、基端側の端面が凹凸嵌合を含めて面接触によって配置されたテーパーリング14と、を備えている。
図2(A)に示すように、前記ブッシュ本体2における基端側の端部には、前記アウタースリーブ13における同じ基端側の端面に当接し、断面が矩形状を呈するフランジ8が放射方向に沿って突設(張り出)している。該フランジ8内には、その軸方向に沿って貫通する雌ネジ孔21が少なくとも1個刻設されている。
尚、前記雌ネジ孔21内にネジ込まれる図示しないボルトは、通常では雄ネジの先端をアウタースリーブ13の基端側の端面に当接しているが、該アウタースリーブ13の取り外し時および前記Oリング7のメンテナンス時には、前記雌ネジ孔21から取り外すか、基端側に若干緩められる。
また、図2(A)に示すように、前記インナースリーブ10は、中空部11とテーパ付き内周面12とを内設している。該インナースリーブ10における基端側の端面には、中心軸に対して対称な位置に刻設された一対(2個)の雌ネジ孔20が刻設されている。後述するように、該雌ネジ孔20ごとに細長いボルト(図示せず)を個別にネジ込むことで、当該インナースリーブ10の取り替え時における作業の容易化に活用される。
また、図2(A)に示すように、前記アウタースリーブ13には、前記冷却水の流路5ごとの端部に個別に連通する給水・排水接続金具18が取り付けられている。
更に、前記アウタースリーブ13は、ダイブロック用鋼(例えば、JIS:STK41相当)の素材に対し、所要の塑性加工などを施した後、少なくともその内周面の表面には、無電解Niメッキによる防錆用のニッケルの皮膜層(図示せず)が被覆されている。
更に、前記冷却水の循環流路17の下端側には、図2(A)の前後方向で一組の給水・排水接続金具19が連通している。
尚、前記テーパーリング14も、前記同様の熱間金型用鋼を切削加工した後、その表面にはイソナイト処理などによる前記窒化鉄(化合物)の簿層40や前記窒素の拡散層41が被覆されている。
図3(A)に示すように、前記冷却水の循環流路17は、上半部では台形状を呈し、且つテーパーリング14の全体では、ほぼ正八角形状を呈すると共に、その底部側には水平辺がなく、仮想の該水平辺の両端に連通する左右一対の対称な傾斜辺の下端側に、一組の前記給水・排水接続金具19が個別に連通している。
尚、全体がほぼ正八角形状を呈する前記冷却水の循環流路17を得るには、軸方向の視覚で、テーパーリング14の素材であるリング形状の前記鋼材の外周面からテーパー孔16の内周面に対して、接線上に進入する7個の直線孔を45度ごとずらして穿孔し、且つ互いに途中で連通させた後、前記直線孔ごとの外周端側を水栓17zで閉塞している。
図3(B)に示すように、冷却水の循環流路17rは、上半部ではテーパー孔16に沿った半円形状を呈し、且つテーパーリング14の全体では、ほぼ円形状を呈すると共に、その最底部側で互いに接近する一対の端部に、前記一組の給水・排水接続金具19が個別に連通している。
尚、テーパーリング14に円形状である前記冷却水の循環流路17rを内設するには、例えば、予め、該冷却水の循環流路17rの外形全体と相似形状のアルミニウム合金またはマグネシウム合金などの比較的低融点の金属ロウ材によって、円弧形状の中子(図示せず)を製作する。次いで、前記中子の表面全体に対して、鋼材の被膜を溶射などにより付着させた後、該被膜付きの前記中子を、テーパーリング14専用である図示しない鋳型内にセットした状態で、前記同様の鋼種である鋳鋼の溶湯を鋳込むと同時に、上記金属ロウ材を脱ロウさせる方法が挙げられる。
前記図1中の矢印で示したように、金属溶湯は、プランジャチップ38に押されて、プランジャスリーブ35内から前記スプールブッシュ1におけるインナースリーブ10の中空部11内などを通過した後、固定側金型31と可動側金型32との間のスプルコアー33を経て、キャビティ内に圧送される。係るダイカスト鋳造を繰り返して行う間において、前記プランジャチップ38が不用意に軸心振れを生じたり、あるいは、前記インナースリーブ10の中空部11の内壁面に金属溶湯の一部が不用意に凝固し、係る凝固金属がインナースリーブ10の中空部11の内周面に衝突したり、擦ったりする場合が生じ得る。
しかし、長期間に亘って、前記プランジャチップ38の軸心振れや、前記凝固金属の衝突などを受け続けた前記インナースリーブ10の中空部11の内周面は、熱応力による熱変形を含めて、所要の平滑性を喪失する結果、例えば、前記プランジャチップ38の摺動(進退)操作が不能となり、ダイカスト鋳造の操業が停止する場合が、生じ得る。
その結果、前記ブッシュ本体2の内周面3側に挿入されていたインナースリーブ10の先端面が外部に露出する。尚、該インナースリーブ10において、一対の雌ネジ孔20が形成された基端側の端面は、既に外部に露出している。
かかる状態で、図4(B)中の実線の矢印で示すように、前記インナースリーブ10の先端面を、その軸方向に沿って、例えば、図示しない銅ハンマーなどによって、軽い圧力Pにより打設する。
あるいは、図4(B)中の破線の矢印で示すように、インナースリーブ10の基端側の端面に刻設された一対の雌ネジ孔20に、比較的細長いボルト20bを個別にネジ込み、該一対のボルト20bを軸方向に沿って基端側に引っ張る操作を行っても良い。
仮に、何らかの原因によって、前記圧力Pによる打設では、前記インナースリーブ10がブッシュ本体2の内周面3から抜け出しにくい場合には、上記一対のボルト20bを引っ張る作業を併用しても良い。
尚、併せて、前記テーパーリング14を除去した際、前記ブッシュ本体2からアウタースリーブ13を取り外して、外部に露出する一対の冷却水の流路5や、その前後に位置する一対のOリング7を点検しても良い。この場合、特に、該Oリング7の劣化程度によっては、新たなOリング7と交換することが望ましい。
また、前記アウタースリーブ13は、前記と同じく該テーパーリング14を取り外すだけで、前記ブッシュ本体2の外周面4に形成された冷却水の流路5や、該冷却水の流路5の前後に配置したOリング7の点検および取り替えなどのメンテナンス作業を迅速にして、確実に行ない得る。
加えて、前記ブッシュ本体2、インナースリーブ10、およびテーパーリング14の表面には、耐カジリ性を含む耐摩耗性、耐熱性、耐食性、および、高い疲労強度を併有する前記窒化鉄の簿層40が形成されているので、前記スプルールブッシュ1の耐久性が高められている(効果(4))。
従って、前記スプルールブッシュ1によれば、前記効果(1)〜(4)を得られることが容易に理解される。
例えば、前記ブッシュ本体2の外周面4に設ける冷却水の流路5は、1個または3個以上の複数個を並列に設けた形態としても良い。
また、前記ブッシュ本体2、インナースリーブ10、およびアウタースリーブ13からなる先端面と、前記テーパーリング14の基端面との面接触部は、前記図2(A)で示した視覚で、ほぼ直角形状同士の凹部と凸部との嵌合形態としても良い。
加えて、前記テーパーリング14に内蔵される冷却水の循環流路17,17rは、軸方向の前後に沿って2個以上を並列に設けた形態としても良い。
2 ブッシュ本体
3 内周面
4 外周面
5 冷却水の流路
8 フランジ
10 インナースリーブ
11 中空部
13 アウタースリーブ
14 テーパーリング
16 テーパー孔
17,17r 循環流路
21,22 雌ネジ孔
30 ダイカスト金型
40 窒化鉄の薄層
d1,d2 内径
Claims (6)
- 金属溶湯をダイカスト金型に圧入する流路に用いるスプールブッシュであって、
全体が円筒形状で、且つ外周面に冷却水の流路が形成されたブッシュ本体と、
上記ブッシュ本体の内周面側に挿入されたインナースリーブと、
上記ブッシュ本体の外周面および上記冷却水の流路の開口部を覆うアウタースリーブと、
上記ブッシュ本体、インナースリーブ、およびアウタースリーブにおけるダイカスト金型側の各端面に、前記ダイカスト金型とは反対側の端面が面接触して配置されるテーパーリングと、を備えている、
ダイカスト金型用スプールブッシュ。 - 前記ブッシュ本体、インナースリーブ、およびテーパーリングの表面には、窒化鉄の簿層が被覆されている、
請求項1に記載のダイカスト金型用スプールブッシュ。 - 前記インナースリーブの中空部の内径は、前記テーパーリングを貫通するテーパー孔において最小の内径よりも小さい、
請求項1または2に記載のダイカスト金型用スプールブッシュ。 - 前記テーパーリングの内部には、軸方向の視覚で正多角形状あるいは円形状を呈する冷却水の循環流路が内蔵されている、
請求項1乃至3の何れか一項に記載のダイカスト金型用スプールブッシュ。 - 前記ブッシュ本体における前記ダイカスト金型とは反対側の端部には、前記アウタースリーブの端面に当接するフランジが放射方向に沿って突設されている、
請求項1乃至4の何れか一項に記載のダイカスト金型用スプールブッシュ。 - 前記ブッシュ本体のフランジには、前記アウタースリーブの端面および前記インナースリーブの外側面の少なくとも一方に、雄ネジの先端が当接するボルトが螺入する雌ネジ孔が形成されている、
請求項5に記載のダイカスト金型用スプールブッシュ。
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