以下に、本発明に係る電子楽器を実施するための形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態においては、本発明に係る電子楽器の一例として、電子鍵盤楽器(電子キーボード)を示して説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。以下の図においては、説明の便宜上、一部の構成を省略することがある。
以下の説明において、特に明示しない限り、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」は、各図において矢印で示した方向を基準として用いる。但し、以下の実施の形態での各構成の向きは、一例にすぎず、任意の向きに変更することができる。
図1Aは、実施の形態に係る電子鍵盤楽器の斜視図である。図1Bは、図1Aの分解図である。図1A及び図1Bに示すように、電子鍵盤楽器10は、ケース11と、鍵盤12と、ケース11の内部に収納される2体のスピーカ13(図1Aでは不図示)とを備え、鍵盤12の演奏操作に応じてスピーカ13から放音する。
ケース11は、スピーカ13が放音する上側(表側)の第1ケース15と、下側(裏側)の第2ケース16とを備えている。第1ケース15及び第2ケース16は、左右方向を長手方向として形成されている。
第1ケース15は、第2ケース16の概ね後半部と上から見て外縁に沿う領域とを覆うように設けられている。第1ケース15の後方における左右方向中央部は、ディスプレイやLED等の点灯部、スイッチ等の操作子が設けられた表示操作部17とされる。また、第1ケース15において、表示操作部17の左右両側は放音領域18とされ、放音領域18には、複数の孔が網目状に形成されたスピーカグリル(不図示)の上にカバー18aが設けられている。
第2ケース16の前側部には、鍵盤12の白鍵及び黒鍵が第2ケース16の長手方向(左右方向)に沿って配列された状態で搭載される。本実施の形態では、鍵盤12の配列方向及び各鍵の短手方向が左右方向とされ、各鍵の長手方向が前後方向とされる。
スピーカ13は、上方向と平行となる第1方向D1に放音するようケース11内に設置される。ここで、電子鍵盤楽器10は、ケース11の第2ケース16に固定されることによりスピーカ13を内部に収納する中間部材20(図1Aでは不図示)を備えている。スピーカ13は、第2ケース16から第1ケース15を分解した状態(第2ケース16に第1ケース15を組み合わせる前)にて、中間部材20を介して第2ケース16に装着される。中間部材20においても、第1ケース15と第2ケース16との間となるケース11内に設けられる。
図2Aは、前記電子鍵盤楽器の第1ケースを省略した斜視図である。図2Aに示すように、ケース11内において、左右に並ぶ2体のスピーカ13の間には、基板21aを含む内部部品21が収納されている。内部部品21は、表示操作部17(図1参照)の直下(上下方向に重なる位置)に配置される。基板21aは、表示操作部17の各部やスピーカ13等に配線や端子を介して接続され、電子鍵盤楽器10の各種制御に用いられる。
図2Bは、図2AのA−A線断面図である。図2Bに示すように、ケース11の第2ケース16は、第1領域S1及び第2領域S2を有している。第1領域S1は、スピーカ13の下面(背面)に対応する領域とされ、上下方向においてスピーカ13が投影する(重なる)領域とされる。第2領域S2は、内部部品21の下面(背面)に対応する領域とされ、かつスピーカ13の下面に対応しない領域、言い換えると、上下方向においてスピーカ13が投影しない(重ならない)領域とされる。よって、第2領域S2は、スピーカ13の下面に対応する第1領域S1を含まない。
ここで、本実施の形態の電子鍵盤楽器10は、後方における左右両側にスピーカ13及び中間部材20が設けられ、それらを含む構造は電子鍵盤楽器10の左右方向中央位置を挟んで概ね対称となっている。従って、以下においては、右側に位置するスピーカ13や中間部材20等について説明し、左側に位置するスピーカ13や中間部材20等についての図示、説明を省略する場合がある。
図2Aにも示すように、中間部材20は、内部にスピーカ13が配置される第1領域としての主領域23と、上方となる外部に内部部品21が配置される第2領域としての拡張領域24とを備えている。言い換えると、主領域23より鍵盤12(図2Bでは不図示)全体の左右方向中央部に近い領域に内部部品21が配置され、かかる内部部品21は拡張領域24の上方となる外部のスペースに配置される。また、拡張領域24は、左右の2体のスピーカ13の間の領域を含んで形成される。
図3は、図2Bの断面図の一部を分解した図である。図4は、前記電子鍵盤楽器の部分分解斜視図である。中間部材20は、左右方向の長さが前後方向の長さより長く形成され、主領域23及び拡張領域24も、それぞれ前後方向より左右方向の方が長く形成されている。主領域23及び拡張領域24の各下端面となる底面23c、24cは、前後方向及び左右方向と平行となる同一平面に沿って形成されている。
主領域23は、主領域23の天面(上面)23aを形成する頂壁26と、頂壁26の前端に連なる前側壁(側壁部)27(図3では不図示)と、頂壁26の後端に連なる後側壁(側壁部)28とを備えている。また、主領域23は、頂壁26、前側壁27及び後側壁28それぞれの拡張領域24側の端部に連なる中間壁30と、頂壁26、前側壁27及び後側壁28それぞれの拡張領域24とは反対側の端部に連なる外側壁(側壁部)31とを備えている。
前側壁27、後側壁28及び外側壁31の下端面によって主領域23の底面23cが形成される。従って、前側壁27、後側壁28及び外側壁31は、上下方向において天面23aの外縁部23bから底面23cまで延在する。
スピーカ13は左右方向の長さが前後方向の長さより長くなるコーン部を有し、該コーン部の形状に応じて主領域23も左右方向の長さが前後方向の長さより長くなる。主領域23内となる頂壁26は、スピーカ13に対応する位置に放音孔26aを有している。放音孔26aにおいても、主領域23と同様に左右方向の長さが前後方向の長さより長くなる。放音孔26aの形成縁付近における頂壁26の下面に対し、適宜な緩衝材を介してスピーカ13が押し当てられた状態で固定されている。
拡張領域24は、拡張領域24の天面(上面)24aを形成する上壁33と、天面24aの主領域23に隣接する部分を除く三方の外縁部24bから下方に突出するリブ側壁(側壁部)34とを備えている。リブ側壁34の下端面によって拡張領域24の底面24cが形成される。従って、リブ側壁34は、上下方向において拡張領域24の天面24aの外縁部24bから底面24cまで突出するよう延在する。
中間部材20は、上記の各構成を備えることで下側を開放する箱形状に設けられてスピーカボックスを形成する。中間部材20において、主領域23の底面23cから天面23aまでの高さは、拡張領域24の底面24cから天面24aまでの高さより高く形成される。言い換えると、主領域23と拡張領域24とでは上下幅が異なっており、拡張領域24の方が主領域23より低い位置(下方位置)に形成される。よって、拡張領域24の上方における主領域23の天面23aより低い位置にはスペースを形成することができる。なお、スピーカ13は、主領域23の頂壁26に固定された状態で主領域23の底面23cからはみ出る大きさに設けられている。
中間部材20は、主領域23と拡張領域24との境目に傾斜部36を有している。傾斜部36は、主領域23における中間壁30の下端と、拡張領域24の上壁33との間を接続するように形成されている。傾斜部36は、中間壁30との境界位置となる上端から上壁33に近付くに従い次第に中間壁30から離れて下降する傾斜方向に形成されている。
図5Aは、中間部材の平面図であり、図5Bは、中間部材の底面図である。図5A及び図5Bに示すように、中間部材20には、6つの取付孔38と、2つの固定孔39とが形成されている。
取付孔38は、上下方向から見て中間部材20の四隅の近傍と、中間部材20の左右方向中間の傾斜部36に重なる位置における前後両側とに形成されている。各取付孔38は、取付孔用ボス40の内側に形成されており、取付孔用ボス40の底面は、主領域23及び拡張領域24の各底面23c、24cより下方に突出する位置に形成されている(図3参照)。中間部材20を下方から見た状態、すなわち、図5Bに示す状態にて、傾斜部36に重なる位置の取付孔用ボス40は、半円弧状をなす外周面を内方に備えている。
固定孔39は主領域23側に形成され、具体的には、上下方向から見て主領域23の左右に1つずつ形成されている。各固定孔39は、固定孔用ボス41の内側に形成されており、固定孔用ボス41は筒状体の一部を切り欠いたような形状に形成されている。固定孔用ボス41の底面は、主領域23及び拡張領域24の各底面23c、24cより上方位置に形成されている(図3参照)。
図6は、第2ケースの部分平面図である。図4に加え、図6に示すように、第2ケース16は、前後方向及び左右方向と略平行に設けられるベース部43を備え、ベース部43によってケース11全体としての底壁が形成される。ベース部43の上面側における中間部材20(図6では不図示)の固定位置には、枠状リブ44が形成されている。また、ベース部43の上面側にて枠状リブ44の内側には、6つの中間部材取付ボス45と、2つのケース固定ボス46とが形成されている。
枠状リブ44は、中間部材20の各底面23c、24cに対応する位置に設けられ、上下方向から見て中間部材20を投影する形状に沿う概ね長方形状に形成されている。よって、枠状リブ44の上端面に中間部材20の各底面23c、24cが接触して載置され、かかる接触状態にて、枠状リブ44の上端面と、中間部材20の各底面23c、24cとの間に隙間が生じないように形成される(図9A参照)。
中間部材取付ボス45は、中間部材20の取付孔38に対応する6箇所位置に形成されている。各中間部材取付ボス45には、ねじ孔が形成され、該ねじ孔に取付孔38(図5A参照)を挿通したねじ50(図6では不図示)が螺合される。
中間部材取付ボス45の上端面は、枠状リブ44より低く形成される。具体的には、中間部材取付ボス45の上端面は、中間部材20の各底面23c、24cから下方に突出する取付孔用ボス40の突出量分、枠状リブ44の上端より低く形成される。よって、中間部材20を枠状リブ44に載置すると、中間部材取付ボス45の上端に取付孔用ボス40の底面が接触した状態となる。
この状態で、中間部材20の各取付孔38にねじ50を挿通して各中間部材取付ボス45のねじ孔に螺合することで、取付孔用ボス40がねじ50と中間部材取付ボス45とによって締結される。かかる締結によって、中間部材20がケース11の第2ケース16に固定され(図1B参照)、第2ケース16から第1ケース15を分離した状態で第2ケース16に取り付けられた状態を維持できる。
このように固定されると、中間部材20、スピーカ13、第2ケース16の枠状リブ44及びベース部43によって、後述する音孔を除いて閉塞した音響空間51(図9参照)が形成される。言い換えると、音響空間51は、中間部材20、スピーカ13、枠状リブ44及びベース部43によって包囲される内側空間とされる。
中間部材20は、第2ケース16に固定されることにより内部の音響空間51にてスピーカ13を収納している。また、音響空間51は、スピーカ13の周囲に形成される。音響空間51は、スピーカ13から下方に向かって放射される音が共鳴する空間として形成される。音響空間51においては、枠状リブ44の上端面と、中間部材20の各底面23c、24cとの間から音が漏れ出ることが防止される。
ケース固定ボス46は、中間部材20の固定孔39に対応する2箇所位置に形成されている。ケース固定ボス46の上端面は、枠状リブ44より高く形成され(図3参照)、中間部材20を第2ケース16に固定すると、ケース固定ボス46の上端に固定孔用ボス41の底面が接触した状態となる。
図7は、固定孔用ボス周りの部分縦断面図である。図8は、図7の分解図である。図7及び図8の断面の切断位置は図6のB−B線の位置である。図7は、主領域23における外側壁31側の固定孔用ボス41の周辺構造を示し、第2ケース16に中間部材20を固定しつつ第1ケース15と第2ケース16とを組み合わせた状態を示す。この状態で、第1ケース15は、下方に突出して固定孔用ボス41の内部に挿入される下向きボス15aを備えている。下向きボス15aの先端は細径部15bとされて固定孔39に挿入される。下向きボス15aには上下方向に延びるねじ孔15cが形成される。
ケース固定ボス46は、その上端面を形成する環状リブ46aと、環状リブ46aが立設される頂面部46bとを備えている。頂面部46bであって環状リブ46aの内側には、ねじ52を挿通する孔46cが形成される。環状リブ46aの内周形状は、細径部15bの外周形状と同一又は若干大きく形成され、それらが嵌まり合うようになる。固定孔39及び環状リブ46aの各内周上端部にはテーパ面が形成される。
中間部材20を第2ケース16に固定した状態では、ケース固定ボス46における環状リブ46aの上端面に固定孔用ボス41の底面が接触し、固定孔39とケース固定ボス46の孔46cとが同一中心線上に位置する。この状態から、第2ケース16の上から第1ケース15を覆って組み合わせることで、固定孔用ボス41の内部に第1ケース15の下向きボス15aが挿入される。このとき、下向きボス15aの先端となる細径部15bが固定孔39を貫通して環状リブ46aと嵌まり合う。
このように嵌まり合った状態で、ケース固定ボス46の下方から孔46c及び固定孔39を通じて下向きボス15aのねじ孔15cにねじ52が螺合される。これにより、ケース固定ボス46の頂面部46bがねじ52と下向きボス15aとによって締結され、第1ケース15と第2ケース16とを組み合わせた状態が固定される。また、固定孔用ボス41が下向きボス15aとケース固定ボス46とによって締結され、中間部材20が第1ケース15と第2ケース16とで挟まれた状態となって固定される。ここにおいて、固定孔39は、第1ケース15、第2ケース16及び中間部材20を互いに固定するために用いられる。
なお、図7及び図8にて主領域23の外側壁31側の固定孔用ボス41周りを図示して説明したが、もう一方の固定孔用ボス41周りにおいても同様の構成が採用される。また、図6に示すように、枠状リブ44の外側にもケース固定ボス46が形成される。該ケース固定ボス46は、中間部材20の固定に用いられないが、第1ケース15と第2ケース16との固定に用いられる。
図9Aは、図2Bの断面図の一部を拡大した図である。図9Aに示すように、電子鍵盤楽器10は、第2領域S2内に設けられる放音部材となる板部品60を備えている。板部品60は、2箇所の第2領域S2内のそれぞれに設けられることで、2体のスピーカ13の間に2体配置される(図2B参照)。電子鍵盤楽器10は、板部品60によって形成されるバスレフダクト61を備え、言い換えると、板部品60がバスレフダクト61の一部を形成している。バスレフダクト61は左右方向に延出しており、同方向が長手方向として形成される。
また、電子鍵盤楽器10は、板部品60に対向する位置に形成されるバスレフポートとしての音孔62(図6も参照)を備えている。音孔62は、バスレフダクト61の内部空間と連通している。電子鍵盤楽器10では、板部品60を含むバスレフダクト61と音孔62とによって音響空間51内の音響を第1方向D1(上方向)とは反対の下方向と平行となる第2方向D2に放音する。
図4に示すように、バスレフダクト61は、第2ケース16の内壁を形成するベース部43と、ベース部43から立設するダクト用リブ63と、ダクト用リブ63の上方に設けられる板部品60とにより形成される。
ダクト用リブ63は、枠状リブ44の内側であって、中間部材20の拡張領域24で覆われる領域に上から見てコ字状(別の言い方をすれば、角が直角のC字状、図6参照)に形成される。ダクト用リブ63は、左右方向に平行に延出する2本のリブ(図4では1本不図示)と、該2本のリブのスピーカ13と反対側(左側)の端部間に延出する1本のリブとが一連となって形成され、スピーカ13側(右側)を開放している。
板部品60は、ダクト用リブ63の上端に載置される。板部品60は、前後方向及び左右方向と平行となる主壁65と、主壁65の下面から下方に突出する三方壁66とを備えている。三方壁66は、ダクト用リブ63に対応する位置に設けられ、上下方向から見てダクト用リブ63と同様のコ字状に形成される。よって、ダクト用リブ63の上端面に板部品60における三方壁66の下端面が接触して載置され、かかる接触状態にて、ダクト用リブ63との間に隙間が生じないように形成される(図9A参照)。
板部品60において、主壁65の前後両側には複数の孔が形成され、かかる複数の孔のうち、図4にて符号67を付した主壁65の四隅の孔が板部品取付孔67とされる。
板部品60は、長手方向となる左右方向の長さが第1長L1として形成される。ここで、本実施の形態では、かかる板部品60より左右方向の長さが短い板部品60A(図4中二点鎖線で図示)を選択して利用できる。板部品60Aの左右方向の長さは第1長L1より短い第2長L2とされ、本実施の形態では第2長L2は第1長L1の約半分の長さに設定される。板部品60Aにおいても、主壁65及び三方壁66を備え、主壁65の四隅に板部品取付孔67が形成される。
第2ケース16は、ベース部43の上面側であってダクト用リブ63の前後両側に形成される6つのボス(図6参照、図4では前側の3つ不図示)を備えている。かかる6つのボスのうち、ダクト用リブ63の右端近傍位置(スピーカ13寄りの位置)に形成された2つのボスが第1固定部69とされる。また、6つのボスのうち、ダクト用リブ63の左右方向中間近傍位置に形成された2つのボスが第2固定部70とされる。更に、6つのボスのうち、ダクト用リブ63の左端近傍位置(スピーカ13と反対側の位置)に形成された2つのボスが第3固定部71とされる。
第1固定部69及び第3固定部71は、第1長L1の板部品60を固定するために用いられ、該板部品60の三方壁66がダクト用リブ63に載置された状態にて板部品取付孔67に対応する位置に形成される。一方、第2固定部70及び第3固定部71は、第2長L2の板部品60Aを固定するために用いられ、該板部品60Aの三方壁66がダクト用リブ63に載置された状態にて板部品取付孔67に対応する位置に形成される。
各固定部69〜71には、ねじ孔が形成され、該ねじ孔に、板部品取付孔67を挿通したねじ73が螺合される。かかる螺合によって、板部品取付孔67の周辺部がねじ73と各固定部69〜71の先端とによって締結され、板部品60、60Aが第2ケース16に固定される。なお、第1長L1の板部品60を固定した場合は第2固定部70を使用せず、第2長L2の板部品60Aを固定した場合は第1固定部69を使用しなくなる。
バスレフダクト61は、長手方向となる左右方向の長さが短手方向となる前後方向の長さより長く、上下方向に扁平な角筒状に形成される。バスレフダクト61は、スピーカ13側となる右側が開放され、スピーカ13に対し反対側となる左側と前後両側及び上下両側とが閉塞される(図9参照)。
第2ケース16は、ベース部43の内側の面となる上面に形成され、バスレフダクト61の長手方向と同方向の左右方向に延びる複数のU字溝75を備えている。音響空間51にて、音孔62とスピーカ13とが左右方向に離れているので、それらを結ぶ方向にU字溝75が延出することとなる。
図9Bは、図9AのC−C線部分拡大断面図である。図9Bに示すように、U字溝75は、延出方向に直交する断面形状が円弧状に凹んで形成され、前後に隣接して設けられる複数のU字溝75によって波状に形成される。なお、U字溝75は、ベース部43の外側の面となる下面にも形成されている(図10も参照)。
音孔62の形成領域における複数のU字溝75の側溝上、言い換えると、前後方向に隣り合うU字溝75の境界位置には左右方向(図9B中紙面直交方向)に延びる補強リブ77が形成される。また、第2領域S内における複数のU字溝75の底に音孔62が形成され、音孔62はU字溝75の前後幅内に収まる大きさに設けられる。
図4及び図6に示すように、音孔62は、第2ケース16のベース部43を上下方向に貫通する複数の丸孔によって形成されている。従って、音孔62は、第2ケース16の下面において表出することとなる(図10参照)。本実施の形態では、音孔62は、前後方向及び左右方向(バスレフダクト61の長手短手方向)に4列ずつ並ぶマトリクス状に形成されている。
図9Aに戻り、音孔62は、バスレフダクト61内であって左寄りの位置、言い換えると、バスレフダクト61内にてスピーカ13からできるだけ離れる位置に形成されている。従って、バスレフダクト61を形成する板部品60、60Aの三方壁66にて、音孔62の左側(スピーカ13の反対側)と前後両側とが囲われた状態となる。
補強リブ77の左右方向における形成位置は、音孔62の形成領域より左右両側に若干はみ出す位置とされる。よって、補強リブ77は、前後に並ぶ音孔62を仕切るように形成されている。補強リブ77の右端側(スピーカ13の反対側)は、傾斜した形状に形成されている。
図10は、前記電子鍵盤楽器の底面図である。図10に示すように、ケース11の第2ケース16後方における左右方向中央部には、ユーザの指先を挿入可能な把持部としての凹部80が形成されている。従って、ユーザが指先を凹部80に挿入することで、電子鍵盤楽器10を把持しながら持ち運ぶことができる。凹部80は、第1ケース15の表示操作部17(図1B参照)に上下方向にて重なる位置に形成される。また、凹部80は、図2Bに示すように、2体のスピーカ13の間に形成され、スピーカ13と凹部80とで挟まれる領域にバスレフダクト61及び中間部材20の拡張領域24が設けられる。
図11は、前記電子鍵盤楽器の側面図である。図10に加えて図11に示すように、ケース11は、第2ケース16の下面から突出する複数の脚部81を備えている。かかる脚部81によって、所定のフラットな設置面Fに電子鍵盤楽器10を載せたときに、該設置面Fと第2ケース16の下面との間に隙間を生じさせることができる。
以上の構成において、鍵盤12の演奏操作等によってスピーカ13から放音すると、図9Aに示すように、スピーカ13の発音面側となる上面側から第1方向D1に放音される。また、かかる放音と同時に音響空間51にて共鳴する低音が、スピーカ13のコーン部下面からバスレフダクト61を通過して音孔62から第2方向D2に放音される。
なお、図11に示すように、第2ケース16の下面に脚部81を設けて設置面Fと第2ケース16の下面との間に隙間を形成したので、音孔62が塞がれずに外部に放音することができる。
上記実施の形態によれば、図2Bに示すように、内部部品21の背面に対応する第2領域S2に放音部材となる板部品60を設けたので、スピーカ13の背面に対応する第1領域S1に重ならない(対応しない)位置の音孔62から放音することができる。これにより、ケース11の上下方向のサイズを小さくしても、音孔62とスピーカ13の背面との距離を長くすることができ、ケース11の上下幅を小型化しつつ良好に低音を発音することができる。このように、上記実施の形態の電子鍵盤楽器10では、トレードオフの関係となる電子鍵盤楽器10全体での小型化と低音の音質向上とを両立することができる。
また、第2ケース16への板部品60の固定によって、簡単な構成によりバスレフダクト61の一部を形成でき、低音の音質向上を図ることができる。
更に、図9等に示すように、バスレフダクト61が第2ケース16におけるベース部43内面も含んで形成されるので、バスレフダクト61を形成するための部品点数を抑制することができる。
また、上記実施の形態では、図4に示すように、第1〜第3固定部69〜71を設け、第1長L1の板部品60と第2長L2の板部品60Aとを選択して第2ケース16に取り付けることができる。言い換えると、2つの板部品60、60Aを選択可能とすることで、バスレフダクト61の左右方向の長さを第1長L1と第2長L2とで変更することができる。これにより、搭載するスピーカ13の性能に応じてバスレフダクト61の長さを調整でき、低音の音質をより良好にすることができる。
更に、複数のU字溝75の底に左右及び前後方向に並ぶ複数の音孔62を有するので、各音孔62の開口面積を小さくすることができる。これにより、ケース11の外部から音孔62を通じて大きなごみが内部に入り込むことを防止することができる。
また、複数のU字溝75の延出方向が音響空間51での放音の方向に沿うようになり、低音の音質向上をより良く図ることができる。
また、左右方向に延びる補強リブ77を設けることで、複数の音孔62が形成された領域での強度向上を図ることができる。更には、補強リブ77の延出方向もU字溝75と同様に音響空間51での放音の方向に沿うようになり、低音の音質向上をより良く図ることができる。
更に、2体のスピーカ13の間に板部品60を含むバスレフダクト61を設けたので、該バスレフダクト61を設けて良好な低音を発音可能としつつ、ケース11の左右幅を拡大しなくてよくなる。よって、バスレフダクト61を設けた分のケース11の大型化を回避でき、且つ、低音の音質向上を図ることができる。
また、上記実施の形態によれば、外部に内部部品21が配置される拡張領域24を中間部材20に形成したので、内部部品21の下方の空間を音響空間51として拡大することができる。これにより、ケース11が左右方向や前後方向に大型化することを回避でき、且つ、左右方向に拡大された良好な音響空間51を形成することができる。このように、上記実施の形態の電子鍵盤楽器10では、トレードオフの関係となる電子鍵盤楽器10全体での小型化と良好な音響空間51の形成とを両立することができる。
ここで、上記実施の形態では、主領域23より鍵盤12全体の左右方向中央部に近い領域に内部部品21が配置され、かかる内部部品21を拡張領域24の上方となる外部のスペースに配置することができる。よって、電子鍵盤楽器10にて、左右方向でスピーカ13より内側であって各種の内部部品21の下方のスペースを利用して拡張領域24を形成でき、電子鍵盤楽器10全体での小型化と良好な音響空間51の形成とを両方とも実現することができる。
また、上記実施の形態では、第2ケース16に第1ケース15を組み合わせる前の図1Bに示す状態で、中間部材20を第2ケース16に固定して音響空間51を形成できる。よって、仮に、第2ケース16に第1ケース15を組み合わせて音響空間を形成する構成に比べると、上記実施の形態の方が簡単に良好な音響空間51を形成することができる。しかも、第2ケース16から第1ケース15を分離した状態で音響空間51を形成して音響試験を実施することができる。これにより、第2ケース16に対する第1ケース15の脱着を行わなくても音響試験後の調整を実施でき、該調整の負担軽減を図ることができる。
更に、中間部材20がスピーカ13に対応する位置に放音孔26aを有するので、スピーカ13の上面から第1方向D1に発音することができる。ここで、中間部材20及びスピーカ13と共に放音孔26aも左右方向を長手方向にすることができ、ケース11の前後幅の縮小に寄与することができる。
また、図7に示すように、中間部材20が固定孔39を有し、ねじ52の締結によって、該固定孔39を形成する固定孔用ボス41が、第1ケース15の下向きボス15aと、第2ケース16のケース固定ボス46とで挟まれた状態となる。言い換えると、第1ケース15と第2ケース16とを固定するねじ52の締結によって、固定孔39周りにて中間部材20を固定でき、中間部材20を良好に固定することができる。
更に、中間部材20において主領域23が拡張領域24より上下高さが大きく形成されるので、主領域23にてスピーカ13を収納する空間を確保しつつ、拡張領域24を内部部品21の下方に配置させ易くすることができる。これにより、中間部材20の内部に良好な音響空間51を形成することができる。
また、中間部材20が前側壁27、後側壁28、外側壁31及びリブ側壁34を有することで、中間部材20をボックス状に形成でき、中間部材20によって所定容積の音響空間51を形成することができる。しかも、中間部材20自体の剛性を増大させることができ、中間部材20がケース11を補強する補強部材としても機能するようになる。
更に、主領域23及び拡張領域24の境目に傾斜部36を有しているので、図9Aに示すように、中間壁30と上壁33との間にて音響空間51を拡大することができる。しかも、傾斜部36の向きが図9Aの破線で示す音響の流れに沿うようになり、傾斜部36によって主領域23側の音響空間51内の音響を拡張領域24側に良好に伝達することができる。
ここで、図5Bに示す状態にて、傾斜部36に重なる位置の取付孔用ボス40が半円弧状をなす外周面を内方に備えているので、かかる取付孔用ボス40によっても、主領域23側の音響空間51内の音響を拡張領域24側に良好に伝達することができる。
また、中間部材20における前後方向長さが左右方向長さより短くなり、中間部材20ひいては電子鍵盤楽器10全体の前後方向の大きさをコンパクトにすることができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状、方向などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
上記実施の形態では、放音部材を板部品60、60Aにより構成したが、これらに限られるものでなく、バスレフダクト61の少なくとも一部を構成できる限りにおいて、種々の変更が可能である。
例を挙げると、バスレフダクト61は、板部品60、60Aに対応する構造部分となる放音部材を第2ケース16と別体にせずに一体形成して構成してもよい。また、バスレフダクト61は、板部品60、60Aに対応する構造部分となる放音部材を第1ケース15と一体形成し、第1ケース15及び第2ケース16を組み合わせた状態でダクト状に形成できる構成としてもよい。更には、バスレフダクト61は、ダクト用リブ63の上下高さを高くし、板部品60、60Aの三方壁66を省略してフラットな板部材を放音部材として形成してもよい。
また、放音部材は、バスレフダクト61に代えてパッシブラジエータにより構成してもよい。かかるパッシブラジエータは、第2ケース16のベース部43における音孔62に代えて該音孔62の形成領域に設けるとよい。パッシブラジエータを設けることによって、第2方向D2から放音可能としつつ第2ケース16の下面側からごみが入ることをより良く防止することができる。
また、音孔62は、上記実施の形態の大きさや形成数、形状に限られるものでなく、上記と同様に放音できる限りにおいて変更してもよい。
上記実施の形態では、電子楽器が電子鍵盤楽器10である例を示したが、これに限られない。電子楽器は、ユーザの操作によって発音する機器であればよく、他の鍵盤楽器の他、エレクトリックヴァイオリン、エレキギター、ドラム、ラッパなどであってもよい。
このため、上記実施の形態の「鍵盤12」は、弦、バルブ、その他の音高指定用の演奏操作子、任意の演奏操作子などで読み替えられてもよい。
なお、本開示において説明した用語及び/又は本開示の理解に必要な用語については、同一の又は類似する意味を有する用語と置き換えてもよい。
本開示において説明した各態様/実施形態は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、実行に伴って切り替えて用いてもよい。
本開示において使用する「第1」、「第2」などの呼称を使用した要素へのいかなる参照も、それらの要素の量又は順序を全般的に限定しない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別する便利な方法として本開示において使用され得る。従って、第1及び第2の要素の参照は、2つの要素のみが採用され得ること又は何らかの形で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことを意味しない。
以上の実施形態に関して、以下の付記を開示する。
(付記1)
演奏操作に応じて、第1方向に放音するスピーカと、
基板を含む内部部品と、
前記スピーカ及び前記内部部品を収納しているケースであって、前記スピーカの背面に対応する第1領域と、前記内部部品の背面に対応し、かつ前記スピーカの背面に対応しない第2領域と、を有するケースと、
前記第2領域内に設けられ、前記スピーカの周囲に形成される音響空間内の音響を前記第1方向とは反対の第2方向に放音する放音部材と、
を備える電子楽器。
(付記2)
前記放音部材は、バスレフダクトの少なくとも一部及び、パッシブラジエータのいずれかを含む、
付記1に記載の電子楽器。
(付記3)
演奏操作に応じて、第1方向に放音するスピーカと、
前記スピーカを収納しているケースであって、前記スピーカの背面に対応する第1領域を含まない第2領域内に、前記スピーカの周囲に形成される音響空間内の音響を前記第1方向とは反対の第2方向に放音するバスレフポートとしての音孔を有するケースと、
前記第2領域内で前記ケースに固定され、前記ケースの内壁とともにバスレフダクトを形成する板部品と、
を備える電子楽器。
(付記4)
前記ケースは、前記バスレフダクトの長手方向の長さが第1長の前記板部品を少なくとも固定する第1固定部と、前記バスレフダクトの長手方向の長さが前記第1長より短い第2長の前記板部品を固定する第2固定部と、を有する、
付記3に記載の電子楽器。
(付記5)
前記ケース内に設けられ、前記ケースに固定されることにより内部に前記スピーカを収納するとともに前記音響空間を形成する中間部材を備える、
付記1乃至4のいずれかに記載の電子楽器。
(付記6)
前記ケースは、
前記バスレフダクトの長手方向に延びる複数のU字溝を有し、
前記第2領域内における前記複数のU字溝の底に、前記バスレフダクトの短手方向及び長手方向に並ぶ前記バスレフポートとしての複数の前記音孔を有する、
付記3又は4のいずれかに記載の電子楽器。
(付記7)
前記第2領域内における前記複数のU字溝の側溝上に、前記バスレフダクトの長手方向に延びる補強リブが設けられている、
付記6に記載の電子楽器。
(付記8)
鍵盤と、
演奏操作に応じて、第1方向に放音する複数のスピーカと、
少なくとも前記複数のスピーカを収納しているケースと、
前記複数のスピーカの間に設けられ、前記複数のスピーカそれぞれの周囲に形成される各音響空間内の音響を前記第1方向とは反対の第2方向に放音する複数の放音部材と、
を備える電子鍵盤楽器。