JP2021147362A - 舌下投与用ゼリー剤 - Google Patents

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Shinji Yamashita
伸二 山下
景子 南
Keiko Minami
景子 南
慶裕 菱川
Yoshihiro Hishikawa
慶裕 菱川
由佳理 垣野
Yukari Kakino
由佳理 垣野
淳子 中村
Junko Nakamura
淳子 中村
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Abstract

【課題】薬物の吸収・全身移行が速く、また薬物分解酵素による分解や消化管あるいは肝臓での初回通過効果を回避しうるといった舌下投与の利点を保持しつつ、違和感などが少なく、比較的長く形態を保持することができ、舌下に比較的長い間保持することが可能であり、即効性をあまり期待しない薬効成分であっても、全身適用のために舌下投与を行うことができる、舌下投与用ゼリー剤の提供。【解決手段】ゼリー状の形態を有する半固形のゼリー剤であって、薬物または減感作療法用のアレルゲン、ゲル基剤、および水から主としてなることを特徴とする、舌下投与用ゼリー剤。さらに、増粘剤、pH調整剤、緩衝剤、懸濁・分散剤、甘味剤、矯味剤、香料、賦形剤、着色料、安定化剤、可溶化剤、界面活性剤、および保存剤からなる群から選択される1種以上の添加剤を含む。【選択図】図6

Description

本発明は、薬効成分を有するゼリー剤(ゼリー状の製剤)の技術分野に属する。本発明は、舌下に投与し、そこから薬効成分を全身適用させるためのゼリー剤に関するものである。
例えば高齢者や小児の中には、錠剤を服用することが困難な者もいる。そのような錠剤等の服用が困難な者のために、薬剤をゼリー状にしたゼリー剤が知られている。日本薬局方にも経口ゼリー剤として収載されている。
一方、舌下は口腔粘膜で覆われており、そこには内頚静脈を経由して大静脈に繋がる静脈(舌静脈と舌下静脈)が薄い粘膜を介して存在している。そのため舌下からの薬物の吸収・全身移行は極めて速く、薬物投与後速やかに治療効果を発現しうる。また、口腔内には薬物分解酵素がほとんど存在せず、さらに吸収された薬物は消化管あるいは肝臓での初回通過効果を受けない。このような観点から、薬効成分を舌下で速やかに溶解させ、口腔粘膜から吸収させる口腔用錠剤としての舌下錠が日本薬局方に収載されている。このように舌下から薬効成分(薬物)を吸収させることは以前から行われているが、これまでは特に、心発作や緊急の痛みのコントールを目的として、ニトログリセリンやオピオイド系の鎮痛剤など、即効性を期待した薬物が舌下投与に応用されてきた。その製剤としても、即崩壊性の錠剤や舌下スプレーなどが主流である。
即効性が要求されるアポモルフィンについて、舌下投与する製剤が特許文献1に開示されている。特許文献1には、アポモルフィンを舌下投与する具体的な製剤として、ロゼンジ錠、丸剤、錠剤、フィルム剤、ストリップ剤が挙げられている。また、舌の下に分注して投与されるヒドロゲル剤も例示されている。
特開2016−147882号公報
上記の通り、舌下からの薬物の吸収・全身移行は一般に極めて速く、薬物投与後速やかに治療効果を発現し得、また薬物分解酵素による分解や消化管あるいは肝臓での初回通過効果を回避しうるなど、薬効成分(薬物)の舌下投与には利点が多い。
しかしながら、経口投与剤に比べると、臨床的に用いられている舌下剤の種類は極めて少ない。その理由としては、例えば以下のような点が挙げられる。
(1)舌下に投与された薬物は、口腔内に分泌された唾によって洗い流されるため、舌下に長時間滞留させることが困難であること。
(2)そのため、溶解後、舌下粘膜から速やかに吸収される膜透過性の高い薬物でなければ、適用が難しいこと。
(3)違和感あるいは刺激等のため、固形の製剤を長時間舌下に存在させることが困難であること。
(4)舌下からの吸収が極めて速いため、投与直後に血中濃度が極めて高くなり、一過性の副作用を引き起こす可能性があること。
本発明は、舌下投与における上記のような問題を解決しうる新たな舌下投与用製剤を提供することを主な課題とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、経口投与製剤の一形態として広く知られているゼリー剤に着目し、かかるゼリー剤を応用することにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに到った。
本発明として、例えば、以下のものを挙げることができる。
[1]半固形のゼリー剤であって、薬物または減感作療法用のアレルゲン、ゲル基剤、および水から主としてなることを特徴とする、舌下投与用ゼリー剤。
[2]さらに、増粘剤、pH調整剤、緩衝剤、懸濁・分散剤、甘味剤、矯味剤、香料、賦形剤、着色料、安定化剤、可溶化剤、界面活性剤、および保存剤からなる群から選択される1種以上の添加剤を含む、上記[1]に記載の舌下投与用ゼリー剤。
[3]前記薬物が、生体内で代謝もしくは分解を受けやすい薬物、または経口投与では十分な生体内への吸収が得られない薬物である、上記[1]または[2]に記載の舌下投与用ゼリー剤。
[4]前記薬物が、免疫抑制剤、Ca拮抗薬、PP阻害剤、ペプチド性薬物、核酸、低膜透過性薬物、または低溶解性薬物である、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の舌下投与用ゼリー剤。
[5]前記ペプチド性薬物が、インスリン、GLP−1アナログ薬、カルシトニン、またはバソプレシンである、上記[4]に記載の舌下投与用ゼリー剤。
[6]前記アレルゲンが、花粉、ダニ、ハウスダスト、または大気中に浮遊する粒子状物質である、上記[1]または[2]に記載の舌下投与用ゼリー剤。
[7]前記ゲル基剤が、(1)ペクチン、カンテン、カラギーナン、ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム、タラガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、でんぷん、カードラン、キトサン、プルラン、ファーセレラン、セルロース類、ヒアルロン酸、アルギン酸もしくはその塩、マンナン類、ゼラチン、コラーゲン、およびホエイからなる群から選択される1種以上の天然高分子;もしくは(2)ポリアクリル酸もしくはその塩、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ(N−置換アクリルアミド)、ポリ(N−置換メタクリルアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、およびポリビニルアルコールからなる群から選択される1種以上の合成高分子、または前記(1)と(2)の両者である、上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の舌下投与用ゼリー剤。
[8]形状が扁平板状である、上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の舌下投与用ゼリー剤。
[9]平面形状において半円弧形部分または略円弧形部分を有する、上記[8]に記載の舌下投与用ゼリー剤。
[10]舌小帯ないし舌下小丘を避けるための切れ込みを有する、上記[8]または[9]に記載の舌下投与用ゼリー剤。
[11]厚みが0.1mm〜10mmの範囲内である、上記[8]〜[10]のいずれか一項に記載の舌下投与用ゼリー剤。
[12]ゼリー強度が1000N〜1000000Nの範囲内である、上記[1]〜[11]のいずれか一項に記載の舌下投与用ゼリー剤。
[13]上記[1]〜[12]のいずれか一項に記載の舌下投与用ゼリー剤と、当該舌下投与用ゼリー剤を被適用者の舌下に挿入することができる手段とを含むことを特徴とする、薬物またはアレルゲン類の投与システム。
本発明によれば、薬物の吸収・全身移行が速く、また薬物分解酵素による分解や消化管あるいは肝臓での初回通過効果を回避しうるといった舌下投与の利点を保持しつつ、違和感などが少なく、また唾液による崩壊を免れて比較的長く形態を保持することができるため、舌下に比較的長い間保持することが可能である。それゆえ、即効性をあまり期待しない薬効成分であっても、全身適用のために舌下投与を行うことができる。また減感作療法のアレルゲンを適度に全身暴露することによって、免疫寛容の誘導を効率的に行うことができる。
本発明に係るゼリー剤の一態様を示す模式図である。 本発明に係るゼリー剤の他の態様を示す模式図である。 アンチピリン(ANT)を含む本発明ゼリー剤によるラットへの薬物吸収性を示す図である。上図は血漿中のANT濃度の時間推移を表したものであり、縦軸は血漿中濃度(ng/mL)を、横軸は時間(分)を、それぞれ示す。下図は投与後120分までのANTの生物学的利用率(BA)の時間推移を表したものであり、縦軸はBA(%)を、横軸は時間(分)を、それぞれ示す。 プロプラノロール(PPR)を含む本発明ゼリー剤によるラットへの薬物吸収性を示す図である。上図は血漿中のPPR濃度の時間推移を表したものであり、縦軸は血漿中濃度(ng/mL)を、横軸は時間(分)を、それぞれ示す。下図は投与後120分までのPPRの生物学的利用率(BA)の時間推移を表したものであり、縦軸はBA(%)を、横軸は時間(分)を、それぞれ示す。 アテノロール(ATE)を含む本発明ゼリー剤によるラットへの薬物吸収性を示す図である。上図は血漿中のATE濃度の時間推移を表したものであり、縦軸は血漿中濃度(ng/mL)を、横軸は時間(分)を、それぞれ示す。下図は投与後120分までのATEの生物学的利用率(BA)の時間推移を表したものであり、縦軸はBA(%)を、横軸は時間(分)を、それぞれ示す。 本発明に係るゼリー剤の形状および寸法を示す図である。左図は寸法を付記した平面図であり、右図は実物の写真である。 本発明に係るゼリー剤をヒトの舌下に適用した様子を示す写真である。
以下、本発明について詳述する。
1 本発明に係る舌下投与用ゼリー剤
本発明に係る舌下投与用ゼリー剤(以下、「本発明ゼリー剤」という。)は、半固形のゼリー剤であって、薬物または減感作療法用のアレルゲン、ゲル基剤、および水から主としてなることを特徴とする。本発明ゼリー剤は、さらに添加剤を含むことができる。また、本発明ゼリー剤は、円盤状あるいは扁平板状の形状を有することができる。本発明ゼリー剤は、舌下腔に挿入した際に違和感の少ないゼリー強度ないし形態保持に適したゼリー強度を有しうる。
ここで、「半固形のゼリー剤」とは、ゾル(例えば、高分子溶液、ミセル溶液、サスペンション、エマルジョン)が流動性を失い、一定の形状を保つようになった粘弾性体の状態の組成物を意味する。高分子やコロイド粒子により形成された三次元網目中に水等の流体が閉じ込められた構造体を呈していれば特に制限はなく、当該三次元網目の架橋点は物理結合(例えば、水素結合、分子等の絡み合い)であってもよいし、化学結合(例えば、共有結合)であってもよい。
「主としてなる」とは、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含むことを許容することを意味し、他の成分の含有を制限するものではないが、かかる他の成分の含有率は、通常、総量に対して50重量%未満である。好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下ないし10重量%以下であり、0重量%であってもよい。
「ゼリー強度」は、試料の応力を縦軸、試料の圧縮歪率を横軸に応力−歪曲線をプロットするとき、通常は、上に凸型の最上部の応力(破断応力と考えられる)として示された値のことをいう。測定には、破断応力測定装置、例えば、株式会社山電のRHEONER RE2−3305Cを使用することができる。
1.1 薬物または減感作療法用のアレルゲン
本発明ゼリー剤は、薬物または減感作療法用のアレルゲン(以下、「薬物等」ともいう。)を含む。当該薬物は、医薬的な活性を有するものであれば特に制限されない。中でも、例えば、生体内で代謝もしくは分解を受けやすい薬物や経口投与では十分な生体内への吸収が得られない薬物が好ましい。
上記減感作療法には脱感作療法も含まれ、また通常のアレルゲン特異免疫療法(あるいは抗原特異的免疫療法)だけでなく、例えば、アレルギー療法としてのペプチド免疫療法、CpG−DNA免疫療法も含まれる。
生体内で代謝もしくは分解を受けやすい薬物としては、例えば、消化管あるいは肝臓での初回通過代謝を受けやすい薬物、消化管内で分解されやすい薬物が挙げられる。
消化管あるいは肝臓での初回通過代謝を受けやすい薬物としては、例えば、免疫抑制剤、Ca拮抗薬、ベンゾジアゼピン系薬が挙げられる。免疫抑制剤としては、例えば、タクロリムス、シクロスポリンを挙げることができる。Ca拮抗薬としては、例えば、ニフェジピン、ニカルジピン、ジルチアゼムを挙げることができる。ベンゾジアゼピン系薬としては、例えば、ミダゾラム、トリアゾラムを挙げることができる。その他、アロプリノール、プロプラノロール、イソプロテレロール、レポドパ、エストラジオール、テストステロン、ペンタゾシン、リドカイン等も消化管あるいは肝臓での初回通過代謝を受けやすい薬物として挙げることができる。
消化管内で分解されやすい薬物としては、例えば、プロトンポンプ阻害剤(PP阻害剤)、マクロライド系抗生剤等が挙げられる。
PP阻害剤としては、オメプラゾール、ランソプラゾール、エソメプラゾール等を挙げることができる。マクロライド系抗生剤としてはエリスロマイシン等を挙げることができる。
また、本発明の適用が好ましい薬物としては、例えば、インスリン、GLP−1アナログ薬(例、セマグルチド、リラグルチド、エキセナチド)、カルシトニン、バソプレシン等のペプチド性薬物;核酸医薬品;低膜透過性薬物;低溶解性薬物が挙げられる。
低膜透過性薬物とは、経口投与後、膜透過が律速となって経口投与後十分な吸収が得られない薬物であって、具体的には、例えば、アレンドロン酸、プランルカスト、アテノロール等を挙げることができる。低溶解性薬物とは、経口投与後、消化管内での溶解過程が律速となって十分な吸収が得られない薬物であって、例えば、アルベンダゾール、テルミサルタン等を挙げることができる。
減感作療法用のアレルゲンとしては、その目的で用いうるものであれば特に制限されない。アレルゲンは、アレルギー症状を引き起こす天然または人工の原因物質(抗原)であり、「減感作療法用のアレルゲン」とは、当該療法の目的のために用いられる、アレルギー性疾患治療用のアレルゲンをいう。具体的には、当該アレルゲンとしては、例えば、花粉、ハウスダスト、真菌、動物抗原、昆虫抗原、大気中に浮遊するその他の粒子状物質(PM)、エンドトキシン、ペプチド性薬物、細菌のCpG−DNAとアレルゲンを結合させたもの等を挙げることができる。当該アレルゲンは、自然界から得られたものであってもよいし、遺伝子組換えアレルゲン、ゲノム編集アレルゲンであってもよい。
花粉としては、例えば、スギ花粉、ヒノキ花粉、ホソムギ花粉、オオアワガエリ花粉、カモガヤ花粉、シラカバ花粉、ブタクサ花粉、オオブタクサ花粉、ヨモギ花粉、カナムグラ花粉、セイタカアワダチソウ花粉、アカマツ花粉、ハンノキ花粉を挙げることができる。
ハウスダストとしては、チリダニ等のダニ、動物の体垢、糞、尿、繊維類等があり得る。当該チリダニとしては、具体的には、ヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニを挙げることができる。
真菌としては、例えば、アスペルギルス、アルテルナリア、ペニシリウム、カンジダ、クラドスポリウム、コウジ、マラセチアを挙げることができる。
動物抗原としては、例えば、イヌ毛、ネコ毛、羽毛、ウサギ毛、ヒツジ毛が挙げられる。
昆虫抗原としては、例えば、ハチ毒、カ、ゴキブリ、ユスリカ、チョウ、ガが挙げられる。
PMとしては、例えば、黄砂等の土壌粒子、ディーゼル排気粒子(DEPあるいはDPM)等の排気粒子、タイヤ摩耗粉塵、煤煙、火山灰、PM10、浮遊粒子状物質(SPM)、PM2.5、PM0.1を挙げることができる。
また、上記減感作療法用のアレルゲンとしてのペプチド性薬物としては、例えば、アレルゲン由来のペプチド、アレルゲン由来のT細胞エピトープを含むペプチド、複数のT細胞エピトープをつないだ多重エピトープペプチド(T細胞多重エピトープペプチド)を挙げることができる。
本発明ゼリー剤中の薬物等の含有量としては、内包する薬物等の種類や使用するゲル基剤の種類等によって異なるが、例えば、0.1〜20重量%の範囲内で所望により適宜選択することができる。
1.2 ゲル基剤
本発明ゼリー剤は、ゲル基剤を含む。本発明ゼリー剤で用いられるゲル基剤としては、例えば、水の作用によりゲルを形成する天然高分子、合成高分子が挙げられる。当該天然高分子および合成高分子は併用してもよいし、これらの複合体であってもよい。
当該ゲル基剤は、医薬の経口ゼリー剤や食品のゼリーで用いられており、同様のものを用いることができる。また、例えば、合成高分子を用いた場合には、投与から一定時間後に口から取り出す仕様のゼリー剤とすることもできる。
当該天然高分子としては、例えば、多糖類、タンパク質(グリコプロテインを含む)を挙げることができる。当該多糖類およびタンパク質は併用してもよいし、これらの複合体(例えば、プロテオグリカン等)であってもよい。
当該多糖類としては、カンテン、ペクチン、ペクチン酸、ペクチニン酸、カラギーナン(κカラギーナン、ιカラギーナン等)、ジェランガム(ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム等)、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム、タラガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、でんぷん、カードラン、キチン、キトサン、プルラン、ファーセレラン、セルロース類(ニトロセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微小繊維状セルロース、発酵セルロース等)、ヒアルロン酸、アルギン酸またはその塩、マンナン類(コンニャクマンナン、ガラクトマンナン等)、アラビアガム、カラヤガム、トラガントガム、アラビノガラクタン、ガティガム、グルコサミン、大豆多糖類等を挙げることができる。これらの中でも、カンテン、ペクチン、アルギン酸塩が好ましい。
これらの多糖類は、一種であっても二種以上の併用であってもよい。
当該タンパク質としては、ゼラチン、コラーゲン、ホエイ、アクチン、チューブリン、ヘモグロビンS、インスリン、フィブリン、アルブミン(卵白アルブミン、血清アルブミン等)、ミオシン、卵白タンパク質、ダイズタンパク質、カゼイン等を挙げることができる。これらの中でも、ゼラチンが好ましい。
これらのタンパク質は、一種であっても二種以上の併用であってもよい。
当該合成高分子としては、口腔内の粘膜刺激のないものであれば特に制限されないが、ポリアクリル酸またはその塩、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、N置換アクリルアミド、N置換メタクリルアミド、Nビニルアセトアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、などが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールが好ましい。
これらの合成高分子は、一種であっても二種以上の併用であってもよい。
当該合成高分子は、必要に応じて架橋剤と併用することができる。この場合に用いる架橋剤としては、例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、エチレンオキサイド、ポリイソシアネート、ジメチロール尿素を挙げることができる。当該架橋剤は、一種であっても二種以上の併用であってもよい。
これらのゲル基剤は、一種であっても二種以上の併用であってもよいが、ゲル基剤を併用する場合は、カラギーナンおよびローカストビーンガムの併用、カンテン、キサンタンガム、およびローカストビーンガムの併用、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、およびポリアクリル酸ナトリウムの併用が好ましい。
本発明ゼリー剤中のゲル基剤の含有量は、ゲル基剤の種類や所望のゼリー強度などによって異なり、薬物等の有効量に応じて適宜選択すればよく、特に制限されるものではないが、目安としては例えば0.01〜10重量%の範囲内が適当である。舌下における本発明ゼリー剤の形態保持の観点からは、0.1重量%以上とすることが好ましく、0.3重量%以上とすることがより好ましい。また、舌下における違和感の観点からは、5重量%以下とすることが好ましく、3重量%以下とすることがより好ましい。
1.3 水
本発明ゼリー剤は、水を含む。かかる水は特に制限されないが、例えば、精製水や蒸留水、鉱泉水、水道水などを挙げることができる。ミネラル分を含む水であってもよく、水質は硬水であってもよいし、軟水であってもよい。その中でも薬物等やゲル基剤との反応性を考慮すると精製水が好ましい。
本発明ゼリー剤中の水の含有量は、所望のゼリー強度などによって異なり、薬物等の有効量やゲル基剤の含有量等に応じて適宜選択することができる。
1.4 添加剤
本発明ゼリー剤は、必要や目的に応じて任意の添加剤を適当量含むことができる。当該添加剤としては、例えば、増粘剤、pH調整剤、緩衝剤、懸濁・分散剤、甘味剤、矯味剤、香料、賦形剤、着色料、安定化剤、可溶化剤、界面活性剤、保存剤が挙げられる。
これらの添加剤については、例えば、本発明ゼリー剤の被適用者の嗜好に合わせた配合をすることにより、その被適用者にとって服用しやすい風味や舌触り等を有するゼリー剤とすることができる。また、例えば、配合のバリエーションを多様化させることにより、生涯に渡る等、長期の継続的な薬物等の服用や、減感作療法等、数年単位の継続服用が必要な被適用者にとって、飽きの来にくい風味や舌触り等を有するゼリー剤とすることができる。
増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム、タラガム、タマリンドシードガム、でんぷん類、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン、カルメロースまたはその塩、グルコマンナン、カンテン、スクシノグリカンを挙げることができる。
pH調整剤としては、例えば、グルコノδラクトン、無水クエン酸、クエン酸またはその塩、リンゴ酸、アスコルビン酸、マレイン酸、マロン酸、グルタミン酸またはその塩、酢酸またはその塩、プロピオン酸、アスパラギン酸、アジピン酸、フマル酸、フタル酸、コハク酸またはその塩、酒石酸またはその塩、乳酸またはその塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、リン酸またはその重合体およびその塩を挙げることができる。
緩衝剤としては、例えば、リン酸またはその塩、炭酸塩、クエン酸またはその塩、酒石酸またはその塩、酢酸またはその塩を挙げることができる。
懸濁・分散剤としては、例えば、でんぷん類、乳糖、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロシキプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、アラビアゴム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、マクロゴール、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウムを挙げることができる。
甘味剤としては、例えば、ショ糖、粉末還元麦芽糖水あめ、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、アドバンテーム、グリチルリチン酸二カリウム、ステビア、デキストリン、ラクツロース、ネオテーム、イソマルト、果糖、黒砂糖、ハチミツを挙げることができる。
矯味剤としては、例えば、クエン酸またはその塩、アスコルビン酸またはその塩、グルタミン酸またはその塩、果汁、メントール、ケイヒ末、カカオ末、黒砂糖、ハチミツ、緑茶末を使用することができる。
香料としては、例えば、メントール、アップルフレーバー、アセロラフレーバー、オレンジフレーバー、レモンフレーバー、グレープフレーバー、ストロベリーフレーバー、スイートポテトフレーバー、ビーフフレーバー、ピーチフレーバー、メイプルフレーバー、トマトフレーバー、梅酒フレーバー、レモンティーフレーバー、チョコレートフレーバー、チェリーフレーバー、緑茶フレーバー、バニラフレーバーを挙げることができる。
賦形剤としては、例えば、糖アルコール類、でんぷん類、セルロース類、デキストリンを挙げることができる。
当該糖アルコールとしては、例えば、マルチトール、ラクチトール、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、トレハロース、ソルビトール、イソマルトを使用することができる。
当該でんぷん類としては、例えば、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプンを使用することができる。
当該セルロース類としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロシキプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウムを使用することができる。
着色料としては、例えば、食用タール系色素、カロチノイド系色素、クロロフィル系色素、クルクミン、ベタニン、カルタミン、リボフラビン、カルミン酸、カラメルを挙げることができる。
安定化剤としては、例えば、トコフェロール、没食子酸アルキル、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、亜硫酸ナトリウム、エデト酸、エデト酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウムを挙げることができる。
可溶化剤としては、例えば、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、マクロゴール、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、シクロデキストリン類(αシクロデキストリン、βシクロデキストリン、γシクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン、マルトシルβシクロデキストリン)を挙げることができる。
界面活性剤としては、例えば、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンを挙げることができる。
保存剤としては、例えば、ソルビン酸またはその塩、安息香酸またはその塩、パラオキシ安息香酸エステル(パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等)、しらこたん白抽出物(しらこたん白、しらこ分解物、プロタミン、核蛋白)、ポリリジン(ε-ポリリジン)を挙げることができる。
上記各種添加剤は、それぞれ一種であっても二種以上の併用であってもよい。
1.5 形状
本発明ゼリー剤の形状は、所望により適宜選択されるが、舌下腔に収納可能な扁平板状であることが好ましい。本発明ゼリー剤の形状が扁平板状である場合、その厚みとしては、例えば、01mm〜10mmの範囲内が適当であり、0.5mm〜5mmの範囲内が好ましい。
一般に、ヒトの下顎部には歯が略円弧状に配列して生えているため、本発明ゼリー剤は、例えば図1に示すように、平面形状において半円弧形部分または略円弧形部分を有することが好ましい。当該略円弧には、円弧だけでなく、楕円弧、円錐曲線等の二次曲線や、それに類する自由曲線が含まれる。
なお、本発明ゼリー剤は、例えば三日月形状のように、上記半円弧形部分または略円弧形部分を複数有する形状とすることもできる。
また、ヒトの舌下部には舌小帯ないし舌下小丘が存在しているため、本発明ゼリー剤は、それらを避けるための切れ込みを有することが好ましい。当該切れ込みは、舌小帯ないし舌下小丘を避けるものであればその形状に特に制限はなく、例えば、直線状の切れ目や、楔形、矩形、半円形、長円形等の形状の切り欠きとすることができる。図2は、略半円形の切り欠きを有する本発明ゼリー剤の形態例を示している。
舌下に適用した際の違和感の観点からは、当該切れ込みの幅は、本発明ゼリー剤自体の幅寸法を超えない範囲で、より広い方が好ましい。切れ込み幅寸法と本発明ゼリー剤の幅寸法を一致させた場合、例えば、図2の右図のような形状とすることができる。当該切れ込みの幅寸法としては、例えば、10mm〜50mmの範囲内が適当であり、30mm〜45mmの範囲内が好ましい。
本発明ゼリー剤の形状は、不特定または特定多数のヒトの舌下腔に適合するような一般的な形状とすることもできるし、被適用者それぞれの舌下腔に適合するような個別的な形状とすることもできる。
1.6 ゼリー強度
本発明ゼリー剤のゼリー強度は、所望により適宜選択されるが、1000N〜1000000Nの範囲内が適当であり、10000N〜300000Nの範囲内が好ましい。
本発明ゼリー剤は、薬物等の徐放期間を通じて舌下腔において崩壊しにくいゼリー強度とすることができる。そのような形態保持の観点からは、ゼリー強度は10000N以上とすることが好ましく、30000N以上とすることがより好ましい。
また、本発明ゼリー剤は、舌下腔に収納した際に違和感の少ないゼリー強度とすることができる。そのような違和感の観点からは、ゼリー強度は300000N以下とすることが好ましく、200000N以下とすることがより好ましい。
2 本発明ゼリー剤の製造方法
本発明ゼリー剤は、基本的には、医薬品の経口ゼリー剤や食品のゼリーなどと同様の方法により製造することができる。
具体的には、例えば、まず分散媒である適量の水にゲル基剤を添加して分散、懸濁または溶解させる。添加するゲル基剤の形態は特に制限されず、原体のまま使用してもよいし、常法により粉末化したもの、フレーク等を使用してもよい。
この液を攪拌しながら加熱することにより、ゲル基剤を完全に溶解させた後、他の種々の添加剤を必要に応じて加える。
その後、ゲル化温度より5℃〜20℃程度高い温度まで冷却した溶液(ゾル)に、別途準備しておいた薬物等を添加し、混合する。
最後に、規定量のゾルを所定の型に充填し、冷却、ゲル化してゼリー剤とする。当該型は、本発明ゼリー剤の被適用者の舌下腔に適した形状とすることもできる。ゼリー剤の成型は、前記のような型によらず、3Dプリンタ等を用いた3次元造形により行ってもよいし、大きなゼリー剤の母材から所望の形状に切り出してもよい。
なお、ゼリー強度は、ゼリー剤中の水、ゲル基剤、増粘剤等の含有量により調整することができる。
3 本発明ゼリー剤による薬物等投与システム
本発明に係る薬物等投与システム(以下、「本発明システム」という。)は、本発明ゼリー剤と、当該本発明ゼリー剤を被適用者の舌下に挿入することができる手段とを含むことを特徴とする。
本発明システムを実施することにより、治療に十分な量の薬物等を、一定時間、被適用者の舌下に留めておくことができる。また、錠剤などの固形製剤に比べて舌下での違和感を抑えることができる。そして、舌下からの良好な薬物等の吸収性を適正に組み合わせることによって、膜透過性が低い薬物や、消化管内での分解あるいは消化管・肝臓での初回通過代謝によって、経口投与では十分な生体内への吸収が得られない薬物、さらにはペプチド等の中分子薬物を効率的に体内に送達することができる。
また、本発明システムには、次のような手段を含むこともできる。
・被適用者に関する固有情報を取得することができる手段
・本発明ゼリー剤を製造する手段
「本発明ゼリー剤を被適用者の舌下に挿入することができる手段」としては、典型的には、自家または他家の手指を挙げることができるが、舌下の挿入に適した装置または器具であってもよい。
本発明ゼリー剤の舌下挿入は、例えば、挿入者が被適用者の舌下の適切な位置に本発明ゼリー剤を挿入することにより行うことができる。かかる挿入者としては、被適用者本人、家族、介護者、介助者、医療関係者などが挙げられる。挿入者は、専用装置または専用器具を用いて間接的に被適用者の舌下に本発明ゼリー剤を挿入することができる。
「被適用者」としては、それを必要とする対象者であれば特に制限されないが、具体的には、患者などを挙げることができる。
(1)被適用者に関する固有情報を取得することができる手段を含む場合
本発明システムが被適用者に関する固有情報を取得する手段を含む場合、その固有情報としては、例えば、被適用者に関する診療情報、被適用者に関する五感の嗜好情報、被適用者の舌下腔形状に関する情報が挙げられる。
被適用者に関する診療情報としては、例えば、薬物等処方(薬物名等、投与量、投与期間等)、病状、既往症、重症度、予後、検査名、検査結果、検査所見を挙げることができる。それを取得する手段としては、例えば、カルテ、アンケート、問診が挙げられる。
被適用者に関する五感の嗜好情報としては、例えば、色に関する嗜好、形に関する嗜好、匂いや香りに関する嗜好、味に関する嗜好、舌触りや歯触り等の触感に関する嗜好を挙げることができる。それを取得する手段としては、例えば、アンケート、問診が挙げられる。
被適用者の舌下腔形状に関する情報を取得することができる手段としては、例えば、型取り、コンピュータ断層撮影(CT)、核磁気共鳴画像撮影(MRI)、3Dスキャンを挙げることができる。これらの手段を用いた測定により、舌下腔形状の様々なデータを得ることができる。
型取り手段による場合には、その印象材として、例えば、アルジネート印象材、カンテン印象材、シリコーン印象材を用いることができる。この場合、舌下腔形状の情報は、型取り後の印象材に化体する。
CT、MRI、または3Dスキャンといった手段による場合には、例えば、3次元計測X線CT装置、磁気共鳴断層撮影装置、または3Dレーザースキャナをそれぞれ用いることができる。この場合、舌下腔形状の情報は、それぞれの装置またはそれらに接続されたコンピュータから、電子データ等の形式で得ることができる。
(2)本発明ゼリー剤を製造する手段を含む場合
本発明システムが本発明ゼリー剤を製造する手段を含む場合、その製造方法は既述の通りである。
なお、被適用者に関する上記固有情報に基づけば、被適用者に適したカスタムメイドの本発明ゼリー剤を提供することができる。この場合、薬物等の種類および添加量については、例えば、取得された前述の被適用者に関する診療情報に基づいて定めることができる。添加剤の種類および添加量についても、例えば、取得された前述の被適用者に関する診療情報や被適用者に関する五感の嗜好情報に基づいて定めることができる。
また、本発明ゼリー剤の製造過程において、通常、ゲル化前のゾル溶液が型に注ぎ込まれ、その後冷却手段により冷却され半固形のゼリー剤が成形される。このとき、例えば、被適用者の舌下腔形状情報や被適用者に関する五感の嗜好情報に基づいて当該型を選択または作成することができる。
ゼリー剤の成形は、前記のような型ではなく3次元造形により行ってもよい。この場合、例えば、被適用者の舌下腔形状情報や被適用者に関する五感の嗜好情報に基づいて、3Dプリンタ等を用いて本発明ゼリー剤を成形することができる。型によらない他の方法としては、例えば、大きなゼリー剤の母材から、被適用者の舌下腔形状情報等に基づいた形状に切り出す方法も考えられる。
以下、実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
使用した原料は、次の通りである。
・AGAR:カンテン「PS−96」(伊那食品工業社製)
・ANT:アンチピリン
・PRP:プロプラノロール
・ATE:アテノロール
[実施例1] ラット用ゼリー剤の製造
まず、10mLの水にAGAR50mgを添加して分散、懸濁させた。
次に、この懸濁液を攪拌しながら加熱することにより、AGARを完全に溶解させた。
そして、約80℃まで冷却した溶液に、別途準備しておいた表1に示す各薬物を、ラット1匹当たりの投与量が表1の各量になるように添加し、混合した。なお、各薬物の投与量は、ヒトへの1回臨床用量を参考に決定した。
最後に、溶液を型に充填し、冷却、ゲル化し、長さ5mm×幅3mm×厚み2mmの板状のゼリー剤を得た(本発明ゼリー剤、実施例1)。
<薬物吸収評価試験>
本発明ゼリー剤からの薬物吸収性を検討するためのラットin vivo試験法として、麻酔下で、上記で得られた本発明ゼリー剤をラットの舌下に適用した後、頸動脈より採血を行い、血中濃度を測定した。
各薬物を含む本発明ゼリー剤投与後の血漿中薬物濃度の時間推移をそれぞれ図1〜3の上側に、また静脈内投与後の血漿中濃度を用いたdeconvolution法によって120分までの血中への吸収率(生物学的利用率)の時間推移を算出した結果をそれぞれ図1〜3の下側に示す。また、本発明ゼリー剤の投与120分後の生物学的利用率(BA)を表1に示す。
Figure 2021147362
本発明ゼリー剤は、麻酔下、ラット舌下に容易に適用可能で、2時間まで安定に舌下に存在した。
図1〜3に示した通り、ラットにおいて、舌下に適用した本発明ゼリー剤からの吸収は、いずれの薬物においても持続的であり、即放性の舌下錠に見られるような投与直後の極めて高い血中濃度は認められなかった。これは、本発明ゼリー剤から薬物が徐々に放出されたことを意味しており、ゼリー基剤の種類や濃度によって放出速度を調節することによって、血中濃度のコントロールが可能と考えられた。
また、表1に示した通り、膜透過性の高いANTやPRPで50%以上の高い生物学的利用率が得られた。特にPPRは経口投与では肝臓での初回通過代謝によってBAは20〜40%程度と低く成ることが知られているが、本発明ゼリー剤では、そのような薬物についても極めて高いBAが得られることが明らかとなった。
以上、本発明ゼリー剤は、徐放性の製剤として薬物の吸収速度のコントロールが可能であること、および直接体循環血中に運ばれるため、消化管や肝臓で代謝を受けやすい薬物への適用性に優れていることが明らかである。
[実施例2] ヒト用ゼリー剤の製造
まず、50mLの水にAGAR250mgを添加して分散、懸濁させた。
次に、この懸濁液を攪拌しながら加熱することにより、AGARを完全に溶解させた。
そして、約80℃まで冷却した溶液に、模擬薬物として食紅を添加し、混合した。
最後に、溶液を型に充填し、冷却、ゲル化し、図6に示すような形状の厚み3mmのゼリー剤を得た(本発明ゼリー剤、実施例2)。
<装用評価試験>
図7に示すように、本発明ゼリー剤をヒトの舌下に適用したところ、違和感は特になく、20分以上の間その形態を保持し続けた。
本発明ゼリー剤は、薬物等の吸収・全身移行が速く、また消化器官における分解や消化管あるいは肝臓での初回通過効果を回避しうるといった舌下投与の利点を保持しつつ、違和感などが少なく、また唾液による崩壊を免れて比較的長く形態を保持することができるため、舌下投与用医薬品として有用である。また、本発明システムは、被適用者の固有情報に基づいて薬物等(本発明ゼリー剤)を投与することができるため、テーラーメイド医療(個別医療)の可能性を有する。

Claims (13)

  1. ゼリー状の形態を有する半固形のゼリー剤であって、薬物または減感作療法用のアレルゲン、ゲル基剤、および水から主としてなることを特徴とする、舌下投与用ゼリー剤。
  2. さらに、増粘剤、pH調整剤、緩衝剤、懸濁・分散剤、甘味剤、矯味剤、香料、賦形剤、着色料、安定化剤、可溶化剤、界面活性剤、および保存剤からなる群から選択される1種以上の添加剤を含む、請求項1に記載の舌下投与用ゼリー剤。
  3. 前記薬物が、生体内で代謝もしくは分解を受けやすい薬物、または経口投与では十分な生体内への吸収が得られない薬物である、請求項1または2に記載の舌下投与用ゼリー剤。
  4. 前記薬物が、免疫抑制剤、Ca拮抗薬、PP阻害剤、ペプチド性薬物、核酸、低膜透過性薬物、または低溶解性薬物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の舌下投与用ゼリー剤。
  5. 前記ペプチド性薬物が、インスリン、GLP−1アナログ薬、カルシトニン、またはバソプレシンである、請求項4に記載の舌下投与用ゼリー剤。
  6. 前記アレルゲンが、花粉、ダニ、ハウスダスト、または大気中に浮遊する粒子状物質である、請求項1または2に記載の舌下投与用ゼリー剤。
  7. 前記ゲル基剤が、(1)ペクチン、カンテン、カラギーナン、ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム、タラガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、でんぷん、カードラン、キトサン、プルラン、ファーセレラン、セルロース類、ヒアルロン酸、アルギン酸もしくはその塩、マンナン類、ゼラチン、コラーゲン、およびホエイからなる群から選択される1種以上の天然高分子;もしくは(2)ポリアクリル酸もしくはその塩、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ(N−置換アクリルアミド)、ポリ(N−置換メタクリルアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、およびポリビニルアルコールからなる群から選択される1種以上の合成高分子、または前記(1)と(2)の両者である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の舌下投与用ゼリー剤。
  8. 形状が扁平板状である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の舌下投与用ゼリー剤。
  9. 平面形状において半円弧形部分または略円弧形部分を有する、請求項8に記載の舌下投与用ゼリー剤。
  10. 舌小帯ないし舌下小丘を避けるための切れ込みを有する、請求項8または9に記載の舌下投与用ゼリー剤。
  11. 厚みが0.1mm〜10mmの範囲内である、請求項8〜10のいずれか一項に記載の舌下投与用ゼリー剤。
  12. ゼリー強度が1000N〜1000000Nの範囲内である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の舌下投与用ゼリー剤。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項に記載の舌下投与用ゼリー剤と、当該舌下投与用ゼリー剤を被適用者の舌下に挿入することができる手段とを含むことを特徴とする、薬物の投与システム。

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