JP2021145600A - Cd135+細胞を含む医薬組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本願は、免疫療法に有用な細胞集団および組成物を提供することを目的とする。【解決手段】抗原提示能および貪食能を有する細胞集団を取得する方法であって、対象から採取された試料からCD135+細胞を単離することを含む方法を提供する。【選択図】なし

Description

本願は、免疫療法に有用な細胞集団および組成物などに関する。
樹状細胞(DC)は、自然免疫を活性化させ、獲得免疫を始動させる能力を有しているため免疫系で重要な役割を果たしている。DCは病原性微生物を感知および捕食し、抗原として表面のMHCクラス分子上に提示し、Tリンパ球を活性化する。従来型DC(cDC)に加えて、形質細胞様DC(pDC)および単球由来DC(moDC)がマウスおよびヒトにおいてDCに分類されている。これらのDCは免疫応答および生体の恒常性の維持に重要である。cDCは、胸腺、脾臓およびリンパ節などのリンパ組織に存在し、ナイーブT細胞を活性化してエフェクターT細胞に分化させることができる。pDCは、ウイルス感染時にToll様受容体7(TLR7)およびTLR9を介したシグナルによりI型インターフェロンを分泌する。moDCは微生物感染に応答して誘導され、捕食した抗原をCD4Tリンパ球またはCD8Tリンパ球のいずれかに提示してその機能を制御する。
DCおよび単球/マクロファージは単核食細胞系を構成し、一般に骨髄において共通の前駆細胞から生じると考えられているが、未だ議論の余地がある。マクロファージDC前駆細胞(MDP)は単核食細胞系の最上位の階層に存在すると考えられており、単球と樹状細胞の両方の系統へと分化する。共通DC前駆細胞(CDP)および共通単球前駆細胞(cMoP)はそれぞれDCおよび単球の特異的な前駆細胞として同定されている。MDPおよびCDPはともにDCの前駆細胞であり、その表面上にFlt3(=CD135)を発現し、そのリガンドであるFlt3リガンドの遺伝子欠損マウスでは著しいDCの減少が報告されている。したがって、DCの分化はFlt3リガンドに依存している。
moDCの由来は単球であると考えられているため、moDCは他のDCとは分化起源が異なる。炎症状態において、単球がCD11cおよびMHCクラスIIの発現を獲得しmoDCへと分化する。すなわち、これらがmoDCへの分化の指標となる。単球をin vitroで培養することによって多数のmoDCが誘導できる。したがって、moDCはDCの機能評価に広く使用されており、また免疫療法に応用されている。
過去の報告により、マウスあるいはヒト単球は不均質な細胞集団であることが示されている。マウス単球はLy6Cの発現レベルに基づいて2つに分類されている。Ly6Chigh単球およびLy6Clow単球は、それぞれ古典的単球および非古典的単球である。さらに、単細胞解析を含む最近の技術の進歩により、単核食細胞系の多様性についての我々の理解はさらに広がっている。
本願は、免疫療法に有用な細胞集団および組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、単球のサブセットを同定する試みの中で従来単球と定義されているマウスCD115CD11b細胞の中に特徴的なCD135集団が存在し、この細胞集団が貪食能および抗原提示能を有し、T細胞を活性化しうることを見出した。
したがって、ある態様において、本願は、抗原提示能および貪食能を有する細胞集団を取得する方法であって、対象から採取された試料からCD135細胞を単離することを含む方法を提供する。
別の態様において、本願は、医薬組成物の製造方法であって、以下を含む方法を提供する:
対象から採取された試料からCD135細胞を単離すること、および
単離されたCD135細胞を医薬上許容される担体および/または添加剤と混合すること。
別の態様において、本願は、単離されたCD135細胞を含む、医薬組成物を提供する。
別の態様において、本願は、単離されたCD135細胞を提供する。
別の態様において、本願は、疾患を治療する方法であって、単離されたCD135細胞および/または単離されたCD135細胞と接触させたT細胞を含む組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
別の態様において、本願は、医薬組成物の製造のための、単離されたCD135細胞の使用を提供する。
別の態様において、本願は、試料から抗原提示能および貪食能を有する細胞を取得するためのキットであって、抗CD135抗体を含むキットを提供する。
別の態様において、本願は、試料から抗原提示能および貪食能を有する細胞を取得するための、抗CD135抗体またはこれを含むキットの使用を提供する。
本願によって、疾患の治療に有用な細胞集団および組成物が提供される。
マウス骨髄細胞のフローサイトメトリー分析。系統マーカー(Lin)、ヨウ化プロピジウム(PI)CD115細胞(上段左のパネル)をCD11bのサブセットとCD11bのサブセットに分けた(上段右のパネル)。CD11bのサブセットおよびCD11bのサブセットをそれぞれc-kit/CD135またはLy6C/CD135発現に基づいてさらに細分した(下段のパネル)。 マウス脾臓(SPL)および末梢血(PB)のLinCD11bCD115単球のフローサイトメトリー分析。CD135細胞は骨髄、脾臓および末梢血のLinCD11bCD115単球分画において検出された。 LinCD11bCD115単球のサブセットのギムザ染色。スケールバー:10μm。
CD135単球のフローサイトメトリー分析。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはリポ多糖(LPS)のいずれかで処理したマウスから骨髄細胞を採取した。黒色の細線はアイソタイプ対照を示す。 組換えマウス顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)とともに16時間インキュベートした後の精製したLy6ChighCD135単球およびLy6CintCD135単球のギムザ染色。スケールバー:10μm。データは少なくとも6回の独立した実験の代表のデータである。
図に示す細胞の正規化した遺伝子発現プロファイルの主成分分析。MDP:マクロファージ樹状細胞前駆細胞、cMoP:共通単球前駆細胞、CDP:共通樹状細胞前駆細胞、cDC:従来型樹状細胞、6C:Ly6C。
図に示す細胞における遺伝子(古典的MHCクラスII)のmRNA発現。各細胞種についてN=3。MDP:マクロファージ樹状細胞前駆細胞、cMoP:共通単球前駆細胞、CDP:共通樹状細胞前駆細胞、cDC:II型従来型樹状細胞、6C:Ly6C。 図に示す細胞における遺伝子(非古典的MHCクラスII)のmRNA発現。各細胞種についてN=3。MDP:マクロファージ樹状細胞前駆細胞、cMoP:共通単球前駆細胞、CDP:共通樹状細胞前駆細胞、cDC:II型従来型樹状細胞、6C:Ly6C。 図に示す細胞における遺伝子(DC-SIGN)のmRNA発現。各細胞種についてN=3。MDP:マクロファージ樹状細胞前駆細胞、cMoP:共通単球前駆細胞、CDP:共通樹状細胞前駆細胞、cDC:II型従来型樹状細胞、6C:Ly6C。
図に示す細胞の食作用活性を蛍光標識された細菌(pHrodo)により評価した。精製した細胞をリポ多糖の存在下(LPS)または非存在下(PBS)で2時間インキュベートし、食作用アッセイを行った。cDC:従来型樹状細胞、pDC:形質細胞様樹状細胞。 図5Aの結果を示す棒グラフ。cDC:従来型樹状細胞、pDC:形質細胞様樹状細胞。データは4回の独立した実験の平均値±S.D.である(*: p<0.05)。 図に示す細胞について混合リンパ球反応(MLR)アッセイを行い、細胞増殖の頻度を示した。cDC:従来型樹状細胞、pDC:形質細胞様樹状細胞。 図5Cの結果を示す棒グラフ。cDC:従来型樹状細胞、pDC:形質細胞様樹状細胞。データは4回の独立した実験の平均値±S.D.である(*: p<0.05)。 図に示す細胞について混合リンパ球反応(MLR)アッセイを行い、細胞増殖の頻度を示した。精製した細胞をMLRの前にLPSとともに、またはLPSを含まずに2時間インキュベートした。cDC:従来型樹状細胞、pDC:形質細胞様樹状細胞。 図5Eの結果を示す棒グラフ。cDC:従来型樹状細胞、pDC:形質細胞様樹状細胞。データは4回の独立した実験の平均値±S.D.である(*: p<0.05)。 図に示す細胞のMLR中のインターフェロンγ(IFN-γ)産生を示すドットプロット。精製した細胞をMLRの前にLPSとともに、またはLPSを含まずに2時間インキュベートした。cDC:従来型樹状細胞、pDC:形質細胞様樹状細胞。ドットプロットは4回の独立した実験の代表である。 図5Gの結果を示す棒グラフ。cDC:従来型樹状細胞、pDC:形質細胞様樹状細胞。データは4回の独立した実験の平均値±S.D.である(*: p<0.05)。
CD45.1マウスのBMから得たマクロファージ樹状細胞前駆細胞(MDP)を養子移入したCD45.2レシピエントマウスの骨髄(BM)または脾臓(SPL)のフローサイトメトリー分析。MDPはcMoP、CDP、CD135単球(Mo)に加えてCD135単球(Mo)を生じた。 CD45.1マウスのBMから得たマクロファージ樹状細胞前駆細胞(MDP)、cMoP(共通単球前駆細胞)またはCDP(共通樹状細胞前駆細胞)を養子移入したCD45.2レシピエントマウスの骨髄(BM)または脾臓(SPL)のフローサイトメトリー分析。MDPはcMoP、CDP、CD135単球(Mo)に加えてCD135単球(Mo)を生じた。cMoPまたはCDPはCD135単球をほとんど生じなかった。データは6回の独立した実験の平均値±S.D.である。
CD45.2ドナーマウスのBMから得たCD135Ly6Chigh単球(Mo)、CD135 Ly6Clow単球(Mo)またはCD135単球(Mo)を養子移入したCD45.1レシピエントマウスの骨髄(BM)または脾臓(SPL)のフローサイトメトリー分析。数値はレシピエント細胞中のドナー由来細胞の頻度である。棒グラフは、ドナー由来のCD11bCD115単球中の頻度を示す。点グラフは4〜8回の独立した実験の代表である。データは4〜8回の独立した実験の平均値±S.D.である。
野生型(WT)マウス、Flt3l−/−マウス、Csf2−/−マウスおよびCsf2rb−/−マウスのBMにおけるCD135 Ly6Cint単球およびCD135 Ly6Chigh単球の総数を示す。データは3匹のマウスの平均値±S.D.である(*: p<0.05)。
CD135単球ならびに従来型樹状細胞(cDC)および形質細胞様DC(pDC)のフローサイトメトリー分析。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはリポ多糖(LPS)のいずれかで処理したマウスから、CD135単球のために骨髄細胞およびcDCまたはpDCのために脾臓細胞を採取した。黒色の細線はアイソタイプ対照を示す。
CD11cプロモーター−ジフテリア毒素受容体(DTR)トランスジェニックマウス(CD11c-DTR)を賦形剤またはDTのいずれかで処理した。BM中のLy6ChighおよびLy6CintCD135単球の数を示す。データは3匹のマウスの平均値±S.D.である(*: p<0.05)。
CD135単球のフローサイトメトリー分析。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはリポ多糖(LPS)のいずれかで処理したマウスから骨髄細胞を採取し、フローサイトメトリー分析を行った。黒色の細線はアイソタイプ対照を示す。データは少なくとも6回の独立した実験の代表のデータである。
図4AのデータのIntegrative Genomics Viewer(IGV)表示。データは3回の独立した実験の代表のデータである。MDP:マクロファージ樹状細胞前駆細胞、cMoP:共通単球前駆細胞、CDP:共通樹状細胞前駆細胞、cDC2:従来型樹状細胞2。 図4BのデータのIntegrative Genomics Viewer(IGV)表示。データは3回の独立した実験の代表のデータである。MDP:マクロファージ樹状細胞前駆細胞、cMoP:共通単球前駆細胞、CDP:共通樹状細胞前駆細胞、cDC2:従来型樹状細胞2。 図4CのデータのIntegrative Genomics Viewer(IGV)表示。データは3回の独立した実験の代表のデータである。MDP:マクロファージ樹状細胞前駆細胞、cMoP:共通単球前駆細胞、CDP:共通樹状細胞前駆細胞、cDC2:従来型樹状細胞2。
図に示す細胞における病原体認識および食作用に関連する遺伝子のmRNA発現。各細胞種についてN=3。MDP:マクロファージ樹状細胞前駆細胞、cMoP:共通単球前駆細胞、CDP:共通樹状細胞前駆細胞、cDC2:2型従来型樹状細胞、6C:Ly6C。
図に示す細胞におけるCD301a遺伝子のmRNA発現および細胞表面発現。各細胞種についてN=3。MDP:マクロファージ樹状細胞前駆細胞、cMoP:共通単球前駆細胞、CDP:共通樹状細胞前駆細胞、cDC:2型従来型樹状細胞、6C:Ly6C。 図に示す細胞におけるCD206遺伝子のmRNA発現および細胞表面発現。各細胞種についてN=3。MDP:マクロファージ樹状細胞前駆細胞、cMoP:共通単球前駆細胞、CDP:共通樹状細胞前駆細胞、cDC:2型従来型樹状細胞、6C:Ly6C。
図に示す細胞を精製し、100ng/mLリポ多糖の存在下(LPS)または非存在下(PBS)で16時間インキュベートした後、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の細胞内フローサイトメトリー分析を行った。ドットプロットは3〜6回の独立した実験の代表である。 図15Aの結果を示す棒グラフ。データは3〜6回の独立した実験の平均値±S.D.である。 図に示す細胞を精製し、100ng/mLリポ多糖の存在下(LPS)または非存在下(PBS)で16時間インキュベートした後、腫瘍壊死因子α(TNF-α)の細胞内フローサイトメトリー分析を行った。ドットプロットは3〜6回の独立した実験の代表である。 図15Cの結果を示す棒グラフ。データは3〜6回の独立した実験の平均値±S.D.である。
CD45.1マウスのBMから得たcMoP(共通単球前駆細胞)を養子移入したCD45.2レシピエントマウスの骨髄(BM)のフローサイトメトリー分析。データは6回の独立した実験の代表のデータである。 CD45.1マウスのBMから得たCDP(共通樹状細胞前駆細胞)を養子移入したCD45.2レシピエントマウスの骨髄(BM)のフローサイトメトリー分析。データは6回の独立した実験の代表のデータである。
本研究の模式的な概略。CD135単球は共通単球前駆細胞(cMoP)に由来せず、ほとんどがマクロファージ樹状細胞前駆細胞(MDP)に由来しているため、CD135単球とは異なる。CD135単球は樹状細胞(DC)マーカーを発現し、食作用および抗原提示を示す。CDP:共通樹状細胞前駆細胞、cDC:従来型樹状細胞、pDC:形質細胞様DC。
末梢血のLinCD135細胞中のCD135単球(LinCD11bCD115)の頻度。
本開示では、数値が「約」の用語を伴う場合、その値の±10%の範囲を含むことを意図する。例えば、「約20」は「18〜22」を含むものとする。数値の範囲は、両端点の間の全ての数値および両端点の数値を含む。範囲に関する「約」は、その範囲の両端点に適用される。従って、例えば「約20〜30」は「18〜33」を含むものとする。
CD135は、造血幹細胞および前駆細胞の発達に関与する受容体型チロシンキナーゼであり、MDPおよびCDPなどの前駆細胞の細胞表面マーカーとして知られる。ヒトCD135の代表的アミノ酸配列は、GenBank Accession No. NM004119に開示されている。本開示において、細胞表面にCD135を発現している細胞を「CD135細胞」(または「CD135陽性細胞」)と記載する。他の細胞表面マーカーについても、同様に記載する。
本開示において、「単離」は、目的とする成分以外の成分を除去する操作がなされ、目的とする成分が当初存在する状態を脱していることを意味する。本開示において、ある細胞表面マーカー(例えば、CD135)を発現している細胞を「単離する」とは、その細胞表面マーカーの発現を指標として細胞を単離することを意味する。本開示では、CD135陽性の細胞が単離される。CD135陽性である単球のサブセットが抗原提示能および貪食能を有することが示されたことから、所望の機能を有する細胞の取得効率を高めるため、CD135に加え、1以上のさらなる細胞表面マーカー(例えば、単球の細胞表面マーカー)の発現を指標として細胞を単離してもよい。細胞表面マーカーとしては、CD115、CD11b、CD11c、CD14、CD16、MHCクラスII、Ly6C、CD301a、CD206およびCCR9が挙げられる。ある実施形態では、CD135陽性であり、CD115、CD11b、CD11c、CD14、CD16、MHCクラスII、Ly6C、CD301a、CD206およびCCR9から選択される1以上のさらなる細胞表面マーカーが陽性である細胞が単離される。さらなる実施形態では、CD115CD135細胞、MHCクラスIICD135細胞、MHCクラスIICD11bCD135細胞、CD11cCD115CD135細胞、MHCクラスIICD14CD135細胞、MHCクラスIICD14CD16CD135細胞、MHCクラスIICD14CD16CD135細胞、またはMHCクラスIICD14CD16CD135細胞が単離され、好ましくはCD115CD135細胞が単離される。別の実施形態では、CD115CD11bCD135細胞が単離される。
本開示においては、系統マーカー(Lin)陰性(Lin-)であり、かつCD135陽性(CD135+)である細胞を単離してもよい。Linとしては、CD3、CD19、NK1.1、Ter119およびLy6Gならびにこれらの任意の組合せが挙げられるが、好ましくはCD3、CD19、NK1.1、Ter119およびLy6Gの組合せである。ある実施形態では、Lin陰性であり、CD135陽性であり、かつCD115、CD11b、CD11c、CD14、CD16、MHCクラスII、Ly6C、CD301a、CD206およびCCR9から選択される1以上のさらなる細胞表面マーカーが陽性である細胞が単離される。さらなる実施形態では、Lin-CD115CD135細胞、Lin-MHCクラスIICD135細胞、Lin-MHCクラスIICD11bCD135細胞、Lin-CD11cCD115CD135細胞、Lin-MHCクラスIICD14CD135細胞、Lin-MHCクラスIICD14CD16CD135細胞、Lin-MHCクラスIICD14CD16CD135細胞、またはLin-MHCクラスIICD14CD16CD135細胞が単離され、好ましくはLin-CD115CD135細胞が単離される。別の実施形態では、Lin-CD115CD11bCD135細胞が単離される。
本開示において、「対象」は、例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、サル、ヒトなどの哺乳動物であり、好ましくはマウスまたはヒトであり、より好ましくはヒトである。
本開示において、「試料」はCD135細胞を含む限り特に限定されないが、例えば末梢血、骨髄または脾臓であり、好ましくは末梢血である。末梢血中の細胞は分化が進んでおりMDPおよびCDPなどの前駆細胞を含まないことから、末梢血中のCD135細胞は目的とする単球のサブセットの割合が高い。それゆえ、試料が末梢血の場合、CD135の発現のみを指標として効率よく所望の機能を有する細胞を単離することができる。対象から試料を採取する方法は特に限定されず、当業者に公知の方法を適宜用いればよい。例えば試料が末梢血である場合、末梢部の静脈等に注射をして採取してもよく、アフェレーシスによって採取してもよい。対象から採取した試料に、細胞の単離に好適な処理を施してもよい。例えば、試料中の赤血球を溶血試薬などによって溶血してもよい。
ある実施形態において、細胞は、抗CD135抗体を用いて単離される。細胞は、抗CD135抗体と、1以上のさらなる細胞表面マーカーに対する抗体とを用いて単離してもよい。細胞表面マーカーに対する抗体としては、抗CD115抗体、抗CD11b抗体、抗CD11c抗体、抗CD14抗体、抗CD16抗体、抗MHCクラスII抗体、抗Ly6C抗体、抗CD301a抗体、抗CD206抗体および抗CCR9抗体が挙げられる。ある実施形態において、細胞は、抗CD135抗体、ならびに抗CD115抗体、抗CD11b抗体、抗CD11c抗体、抗CD14抗体、抗CD16抗体、抗MHCクラスII抗体、抗Ly6C抗体、抗CD301a抗体、抗CD206抗体および抗CCR9抗体から選択される1以上の抗体を用いて単離される。さらなる実施形態において、細胞は、(i)抗CD115抗体および抗CD135抗体、(ii)抗MHCクラスII抗体および抗CD135抗体、(iii)抗MHCクラスII抗体、抗CD11b抗体および抗CD135抗体、(iv)抗CD11c抗体、抗CD115抗体および抗CD135抗体、(v)抗MHCクラスII抗体、抗CD14抗体および抗CD135抗体、または(vi)抗MHCクラスII抗体、抗CD14抗体、抗CD16抗体および抗CD135抗体を用いて単離され、好ましくは抗CD115抗体および抗CD135抗体を用いて単離される。別の実施形態において、細胞は、抗CD135抗体、抗CD115抗体、および抗CD11b抗体を用いて単離される。各抗体を作製する方法は当業者に公知である。また、各抗体は市販品を使用することもできる。
細胞は、抗CD135抗体と、系統マーカーに対する抗体とを用いて単離してもよい。系統マーカーに対する抗体としては、抗CD3抗体、抗CD19抗体、抗NK1.1抗体、抗Ter119抗体および抗Ly6G抗体ならびにこれらの任意の組合せが挙げられるが、好ましくは抗CD3抗体、抗CD19抗体、抗NK1.1抗体、抗Ter119抗体および抗Ly6G抗体の組合せである。ある実施形態において、細胞は、抗CD135抗体、系統マーカーに対する抗体、ならびに抗CD115抗体、抗CD11b抗体、抗CD11c抗体、抗CD14抗体、抗CD16抗体、抗MHCクラスII抗体、抗Ly6C抗体、抗CD301a抗体、抗CD206抗体および抗CCR9抗体から選択される1以上の抗体を用いて単離される。さらなる実施形態において、細胞は、(i)系統マーカーに対する抗体、抗CD115抗体および抗CD135抗体、(ii)系統マーカーに対する抗体、抗MHCクラスII抗体および抗CD135抗体、(iii)系統マーカーに対する抗体、抗MHCクラスII抗体、抗CD11b抗体および抗CD135抗体、(iv)系統マーカーに対する抗体、抗CD11c抗体、抗CD115抗体および抗CD135抗体、(v)系統マーカーに対する抗体、抗MHCクラスII抗体、抗CD14抗体および抗CD135抗体、または(vi)系統マーカーに対する抗体、抗MHCクラスII抗体、抗CD14抗体、抗CD16抗体および抗CD135抗体を用いて単離され、好ましくは系統マーカーに対する抗体、抗CD115抗体および抗CD135抗体を用いて単離される。別の実施形態において、細胞は、系統マーカーに対する抗体、抗CD135抗体、抗CD115抗体、および抗CD11b抗体を用いて単離される。各抗体を作製する方法は当業者に公知である。また、各抗体は市販品を使用することもできる。
ある実施形態において、抗体は、磁気ビーズに固定化されている。磁気ビーズとしては、Dynabeads(登録商標)、MaxBead、Magbeads(商標)などが例示される。別の実施形態において、抗体は蛍光標識されている。蛍光標識としては、フルオレセイン誘導体(フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセインチオフルバミルなど)、カルボシアニン色素(DiI、DiO、DiD、DiRなど)、ローダミン誘導体(テトラメチルローダミン、トリメチルローダミン(RITC)、テキサスレッド、ローダミン110など)、Cy色素(Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7)、Cy-クロム、スペクトラムグリーン、スペクトラムオレンジ、Alexa Fluor(登録商標)色素(Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 647など)、アロフィコシアニン(APC)、フィコエリトリン(PE)、VioBright(登録商標)、V450、およびこれらの組合せが例示される。
ある実施形態において、細胞の単離は、
試料と抗体を固定化した磁気ビーズとを混合すること、および
前記磁気ビーズに結合した画分を単離することを含む。
磁気ビーズに結合した画分を単離する方法は、当業者に公知のあらゆる方法が使用でき、例えばMACS(magnetic-activated cell sorting)が使用できる。
別の実施形態において、細胞の単離は、
試料と蛍光標識された抗体とを混合すること、および
前記抗体に結合した画分を単離することを含む。
蛍光標識された抗体に結合した画分を単離する方法は、当業者に公知のあらゆる方法が使用でき、例えばフローサイトメトリー法またはFACS(fluorescence-activated cell sorting)が使用できる。
細胞集団が抗原提示能を有することは当業者に公知の方法または市販のキットを用いて確認できる。例えば、混合リンパ球反応を用いたアッセイを使用すればよい。また、細胞集団が貪食能を有することも当業者に公知の方法または市販のキットを用いて確認できる。例えば、細胞集団を標識した細菌(大腸菌、黄色ブドウ球菌など)とともに培養し、細胞集団に取り込まれた標識を検出する方法を使用すればよい。
本開示の方法により取得されたCD135細胞は、抗原提示能および貪食能を有し、免疫誘導により有益な効果を期待できる疾患の治療に有用であり、医薬組成物の有効成分として使用しうる。例えば、本開示のCD135細胞は、免疫療法に用いることができる。免疫療法とは、対象の体内の免疫系を強化することによって疾患の治療を行う方法である。本開示における免疫療法は、単離されたCD135+細胞を対象に投与することにより、または、単離されたCD135+細胞と接触させたT細胞を単独で、またはCD135細胞とともに対象に投与することにより、行うことができる。すなわち、本開示におけるCD135細胞を含む医薬組成物には、生体に投与される組成物と、生体外で用いられる組成物とが包含される。
本開示のCD135細胞は、樹状細胞と同様に抗原提示能を有するため、従来の樹状細胞を用いる免疫療法と同様の用途に使用され得る。一般に、免疫療法に用いられる樹状細胞は、対象由来の試料から単核球等の細胞を単離し、単離した細胞を樹状細胞に分化誘導することによって取得される。一方、本開示のCD135細胞は、CD135の発現のみを指標として末梢血試料等から直接単離できるため、従来免疫療法に用いられている細胞と比較して簡便に調製することができる。また、本開示のCD135+細胞は、抗原提示能に加えて貪食能も示すため、貪食作用による疾患の治療にも有用である。
CD135細胞を含む組成物は、がん、感染症、および免疫誘導により有益な効果を期待できる他の疾患の免疫療法に有用である。ある実施形態において、本組成物は免疫療法に用いるためのものである。ある実施形態において、本組成物はがんを治療するためのものである。別の実施形態において、本組成物は感染症を治療するためのものである。
CD135細胞は、当該細胞を投与する対象から取得した細胞(自家細胞)であっても、これとは異なる対象から取得した細胞(他家細胞)であってもよい。他家細胞としては、HLAの適合する健常人の細胞が挙げられる。好ましい実施形態では、CD135細胞は、当該細胞を投与する対象から取得した細胞である。
本開示において、「治療する」または「治療」は、疾患を有する対象において、疾患の原因を軽減または除去すること、その進行を遅延または停止させること、その症状を軽減、緩和、改善または除去すること、および/またはその症状の悪化を抑制することを意味する。
本組成物が治療するがんは特に限定されず、例えば、大腸がん、結腸直腸がん、肺がん、乳がん、脳腫瘍、黒色腫、腎細胞がん、白血病、リンパ腫、T細胞リンパ腫、胃がん、膵臓がん、子宮頚がん、子宮内膜がん、卵巣がん、食道がん、肝臓がん、頭頚部扁平上皮がん、甲状腺がん、皮膚がん、尿路がん、前立腺がん、絨毛がん、咽頭がん、喉頭がん、胸膜腫、男性胚腫、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、神経線維腫、稀突起膠腫、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、膠芽腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、およびウィルムス腫瘍などが例示される。
本組成物が治療する感染症は特に限定されず、例えばウイルス感染症、細菌感染症および寄生虫感染症が挙げられる。ウイルス感染症としては、例えば、AIDSを引き起こすHIV感染症、ウイルス性慢性肝炎、子宮頸癌を引き起こすヒトパピローマウイルス感染症、ウイルス性呼吸器感染症、免疫不全状態でのウイルス感染症、水痘、日本脳炎および狂犬病が挙げられる。ウイルスは、DNAウイルスまたはRNAウイルスであり得る。細菌感染症は、真正細菌(グラム陽性菌およびグラム陰性菌を含む)または真菌(糸状菌、酵母等および担子菌を含む)による感染症である。例えば、カンジダ感染症、ブラストミセス症、ヒストプラスマ症等が挙げられる。寄生虫感染症は、原虫または蠕虫による疾患全般を指す。例えば、マラリア、リューシュマニア症、フィラリア症、エキノコックス症、日本住血吸虫症等が挙げられる。
ある実施形態において、本願の組成物は、全細胞数の20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または99%以上のCD135細胞を含む。細胞におけるCD135、1以上のさらなる細胞表面マーカーおよび/または系統マーカーの発現の有無は、免疫染色法、フローサイトメトリー法、FACSおよびMACSなどの当業者に公知の方法で確認できる。
ある実施形態では、単離されたCD135細胞は、対象への投与前またはT細胞との接触前に、抗原で刺激される。抗原としては、がん、感染微生物、ウイルス、寄生虫および病原体などに関連する抗原が挙げられ、例えば、後述するがんまたは感染症に関連する抗原であり得る。抗原は構造タンパク質または非構造タンパク質であり得、天然由来であっても組換え体であってもよい。抗原として、細胞溶解物を用いることもできる。ある実施形態において、抗原は、がん抗原である。がん抗原としては、腫瘍関連抗原や癌精巣抗原、血管新生関連抗原、遺伝子変異によるがん新生抗原(ネオアンチゲン)のエピトープペプチドを挙げることができ、具体的には、WT1、MART-1、NY-ESO-1、MAGE-A1、MAGE-A3、MAGE-A4、Glypican-3、KIF20A、Survivin、AFP-1、gp100、MUC1、PAP-10、PAP-5、TRP2-1、SART-1、VEGFR1、VEGFR2、NEIL3、MPHOSPH1、DEPDC1、FOXM1、CDH3、TTK、TOMM34、URLC10、KOC1、UBE2T、TOPK、ECT2、MESOTHELIN、NKG2D、P1A等のタンパク質や、GD2、GM2等の糖脂質を挙げることができるが、これに限定されない。CD135細胞は、2種以上の抗原を用いて刺激されてもよい。
抗原で刺激する方法としては、当業者に公知の方法が使用できる。例えば、単離されたCD135細胞を抗原を含む培養液中で培養する方法、または単離されたCD135細胞に抗原遺伝子を導入する方法が挙げられる。例えば、CD135細胞を、抗原を含む培養液中で1〜6時間培養すればよい。抗原は、CD135細胞への刺激によってCD135細胞に提示される。刺激後のCD135細胞を対象に投与すると、対象の体内で抗原特異的なT細胞が誘導または活性化され、疾患を治療しうる。あるいは、刺激後のCD135細胞を生体外でT細胞と接触させると、生体外で抗原特異的T細胞を誘導または活性化することができる。
ある実施形態では、単離されたCD135細胞を、生体外でT細胞と接触させる。CD135細胞をT細胞に接触させることにより、T細胞を活性化することができ、活性化されたT細胞は、単独で、またはCD135細胞とともに、対象に投与することができる。例えば、CD135細胞は、生体外でT細胞と1〜8日間共培養されうる。ある実施形態において、前記CD135+細胞は抗原で刺激されている。T細胞は、CD135細胞を投与する対象から取得した細胞(自家細胞)であっても、これとは異なる対象から取得した細胞(他家細胞)であってもよい。ある実施形態において、T細胞は、CD135細胞を投与する対象から取得した細胞である。T細胞は、当業者に公知の方法で取得することができる。ある実施形態では、T細胞は、CD4T細胞またはCD8+T細胞である。別の実施形態では、T細胞は、腫瘍浸潤T細胞である。
本組成物は、単離されたCD135細胞に加えて、医薬上許容される担体および/または添加剤を含んでいてもよい。医薬上許容される担体としては、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、5%ブドウ糖液、リンゲル液、培養液および血清などの生細胞を懸濁できる溶液が挙げられる。添加剤としては、アルブミンなどの安定剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤、pH調整剤、抗酸化剤ならびに抗生剤などが挙げられる。また、本組成物は上記の抗原およびT細胞を含み得る。また、サイトカイン、コレラ毒素、サルモネラ毒素などの免疫促進剤を添加してもよい。さらに、ミョウバン、不完全Freund'sアジュバント、MF59、MTP-PEおよびQS-21などのアジュバントを含んでいてもよい。
本組成物を対象に投与する場合、投与経路は特に限定されず、経口投与または非経口投与を含むが、好ましくは非経口投与である。適用部位や対象とする疾患に応じて公知の各種投与形態を採用できる。例えば、非経口投与は、全身投与でも局所投与でもよく、より具体的には、例えば、気管内投与、髄腔内投与、くも膜下腔投与、頭蓋内投与、静脈内投与、動脈内投与、門脈内投与、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、口腔内投与等が挙げられる。ある実施形態において、本組成物は、静脈内投与により投与される。
本組成物は経口製剤または非経口製剤として製造され得、例えば、注射剤または点滴剤などの非経口製剤として製造され得る。注射剤または点滴剤の剤形としては、水性および非水性の注射溶液(抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、等張化剤等を含んでもよい)ならびに水性および非水性の注射懸濁液(懸濁剤、増粘剤等を含んでもよい)が挙げられる。これらの剤形は、例えば密閉したアンプルやバイアル中に液体として提供され得る。
本組成物の投与量および投与回数は、有効量の有効成分が対象に投与されるように、投与対象の動物種、投与対象の健康状態、年齢、体重、投与経路、投与形態等に応じて当業者が適宜設定できる。ある状況での有効量は、日常的な実験によって容易に決定することができ、通常の臨床医の技術および判断の範囲内である。例えば、成人1日あたりの投与量は約103〜約1012細胞/kg体重、約104〜約109細胞/kg体重、または約105〜約108細胞/kg体重であり得るが、これに限定はされない。
本組成物は、単独で、または、1種またはそれ以上のさらなる有効成分と併用できる。成分を「併用する」ことは、全成分を含有する投与剤形の使用および各成分を別個に含有する投与剤形の組合せの使用のみならず、各成分を同時に、連続的に、またはいずれかの成分を遅延して投与することも意味する。2種またはそれ以上のさらなる有効成分を併用することも可能である。
本願はまた、本願の細胞集団の取得方法に使用しうるキットを提供する。キットは、抗CD135抗体を含み、さらに1以上のさらなる細胞表面マーカーに対する抗体を含んでもよい。ある実施形態において、キットは、抗CD135抗体、ならびに抗CD115抗体、抗CD11b抗体、抗CD11c抗体、抗CD14抗体、抗CD16抗体、抗MHCクラスII抗体、抗Ly6C抗体、抗CD301a抗体、抗CD206抗体および抗CCR9抗体から選択される1以上の抗体を含む。さらなる実施形態において、キットは、(i)抗CD115抗体および抗CD135抗体、(ii)抗MHCクラスII抗体および抗CD135抗体、(iii)抗MHCクラスII抗体、抗CD11b抗体および抗CD135抗体、(iv)抗CD11c抗体、抗CD115抗体および抗CD135抗体、(v)抗MHCクラスII抗体、抗CD14抗体および抗CD135抗体、または(vi)抗MHCクラスII抗体、抗CD14抗体、抗CD16抗体および抗CD135抗体を含み、好ましくは抗CD135抗体および抗CD115抗体を含む。別の実施形態において、キットは、抗CD135抗体、抗CD115抗体、および抗CD11b抗体を含む。
キットは、抗CD135抗体を含み、さらに系統マーカーに対する抗体を含んでもよい。ある実施形態において、キットは、抗CD135抗体、系統マーカーに対する抗体、ならびに抗CD115抗体、抗CD11b抗体、抗CD11c抗体、抗CD14抗体、抗CD16抗体、抗MHCクラスII抗体、抗Ly6C抗体、抗CD301a抗体、抗CD206抗体および抗CCR9抗体から選択される1以上の抗体を含む。さらなる実施形態において、キットは、(i)系統マーカーに対する抗体、抗CD115抗体および抗CD135抗体、(ii)系統マーカーに対する抗体、抗MHCクラスII抗体および抗CD135抗体、(iii)系統マーカーに対する抗体、抗MHCクラスII抗体、抗CD11b抗体および抗CD135抗体、(iv)系統マーカーに対する抗体、抗CD11c抗体、抗CD115抗体および抗CD135抗体、(v)系統マーカーに対する抗体、抗MHCクラスII抗体、抗CD14抗体および抗CD135抗体、または(vi)系統マーカーに対する抗体、抗MHCクラスII抗体、抗CD14抗体、抗CD16抗体および抗CD135抗体を含み、好ましくは系統マーカーに対する抗体、抗CD115抗体および抗CD135抗体を含む。別の実施形態において、キットは、系統マーカーに対する抗体、抗CD135抗体、抗CD115抗体、および抗CD11b抗体を含む。
ある実施形態において、キットに含まれている抗体は蛍光標識または磁気標識されている。かかるキットの内容は特に限定されないが、CD135細胞を単離するために使用される試薬および装置などを含み得る。例えば、抗体を検出するための二次抗体、抗体が磁気標識されている場合には磁石等がキットに含まれ得る。また、緩衝液、反応容器、取扱説明書などを含んでいてもよい。試料は好ましくはヒトから採取されたものである。また、試料はCD135細胞を含む限り特に限定されないが、例えば末梢血、骨髄または脾臓であり、好ましくは末梢血である。
本願は、例えば、下記の実施形態を提供する。
[1]
抗原提示能および貪食能を有する細胞集団を取得する方法であって、対象から採取された試料からCD135細胞を単離することを含む方法。
[2]
対象がヒトである、前記[1]に記載の方法。
[3]
試料が末梢血である、前記[1]または[2]に記載の方法。
[4]
CD135細胞がCD115CD135細胞である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
CD135細胞がLinCD135細胞である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
単離が抗体を用いて行われる、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
単離がフローサイトメトリーにより行われる、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]
単離が磁気ビーズを用いて行われる、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[9]
前記[1]〜[8]のいずれかに記載の方法により取得された細胞集団。
[10]
医薬組成物の製造方法であって、以下を含む方法:
対象から採取された試料からCD135細胞を単離すること、および
単離されたCD135細胞を医薬上許容される担体および/または添加剤と混合すること。
[11]
対象がヒトである、前記[10]に記載の方法。
[12]
試料が末梢血である、前記[10]または[11]に記載の方法。
[13]
CD135細胞がCD115CD135細胞である、前記[10]〜[12]のいずれかに記載の方法。
[14]
CD135細胞がLinCD135細胞である、前記[10]〜[13]のいずれかに記載の方法。
[15]
単離が抗体を用いて行われる、前記[10]〜[14]のいずれかに記載の方法。
[16]
単離がフローサイトメトリーにより行われる、前記[10]〜[15]のいずれかに記載の方法。
[17]
単離が磁気ビーズを用いて行われる、前記[10]〜[15]のいずれかに記載の方法。
[18]
組成物中のCD135細胞の細胞数が組成物中の全細胞数の20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%以上である、前記[10]〜[17]のいずれかに記載の方法。
[19]
医薬組成物が、免疫療法に用いるためのものである、前記[10]〜[18]のいずれかに記載の方法。
[20]
免疫療法が、がんまたは感染症を治療するためのものである、前記[19]に記載の方法。
[21]
感染症が、ウイルス感染症である、前記[20]に記載の方法。
[22]
単離されたCD135細胞を抗原で刺激することをさらに含む、前記[10]〜[21]のいずれかに記載の方法。
[23]
抗原ががん抗原である、前記[22]に記載の方法。
[24]
前記[10]〜[23]のいずれかに記載の方法により製造された医薬組成物。
[25]
単離されたCD135細胞を含む、医薬組成物。
[26]
CD135細胞が、ヒト対象から採取された試料から単離されたものである、前記[25]に記載の組成物。
[27]
試料が末梢血である、前記[26]に記載の組成物。
[28]
CD135細胞がCD115CD135細胞である、前記[25]〜[27]のいずれかに記載の組成物。
[29]
CD135細胞がLinCD135細胞である、前記[25]〜[28]のいずれかに記載の組成物。
[30]
CD135細胞の細胞数が、組成物中の全細胞数の20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%以上である、前記[25]〜[29]のいずれかに記載の組成物。
[31]
免疫療法に用いるための、前記[25]〜[30]のいずれかに記載の組成物。
[32]
免疫療法が、がんまたは感染症を治療するためのものである、前記[31]に記載の組成物。
[33]
感染症が、ウイルス感染症である、前記[32]に記載の組成物。
[34]
単離されたCD135細胞。
[35]
ヒト対象から採取された試料から単離されたものである、前記[34]に記載の細胞。
[36]
試料が末梢血である、前記[35]に記載の細胞。
[37]
CD115CD135細胞である、前記[34]〜[36]のいずれかに記載の細胞。
[38]
LinCD135細胞である、前記[34]〜[37]のいずれかに記載の細胞。
[39]
疾患を治療する方法であって、
単離されたCD135細胞および/または単離されたCD135細胞と接触させたT細胞を含む組成物を対象に投与することを含む方法。
[40]
CD135細胞および/またはT細胞が、前記組成物が投与される対象またはこれとは異なる対象から採取された試料から単離されたものである、前記[39]に記載の方法。
[41]
単離されたCD135細胞が抗原で刺激されている、前記[39]または[40]に記載の方法。
[42]
前記組成物が投与される対象またはこれとは異なる対象から採取された試料からCD135細胞および/またはT細胞を単離することをさらに含む、前記[39]に記載の方法。
[43]
単離されたCD135細胞を抗原で刺激することをさらに含む、前記[42]に記載の方法。
[44]
単離されたCD135細胞とT細胞とを生体外で接触させることをさらに含む、前記[42]または[43]に記載の方法。
[45]
抗原ががん抗原である、前記[41]または[43]に記載の方法。
[46]
対象がヒトである、前記[39]〜[45]のいずれかに記載の方法。
[47]
試料が末梢血である、前記[40]〜[46]のいずれかに記載の方法。
[48]
CD135細胞がCD115CD135細胞である、前記[39]〜[47]のいずれかに記載の方法。
[49]
CD135細胞がLinCD135細胞である、前記[39]〜[48]のいずれかに記載の方法。
[50]
単離が抗体を用いて行われる、前記[39]〜[49]のいずれかに記載の方法。
[51]
単離がフローサイトメトリーにより行われる、前記[39]〜[50]のいずれかに記載の方法。
[52]
単離が磁気ビーズを用いて行われる、前記[39]〜[50]のいずれかに記載の方法。
[53]
組成物中のCD135細胞の細胞数が組成物中の全細胞数の20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%以上である、前記[39]〜[52]のいずれかに記載の方法。
[54]
疾患が、がんまたは感染症である、前記[39]〜[53]のいずれかに記載の方法。
[55]
感染症が、ウイルス感染症である、前記[54]に記載の方法。
[56]
医薬組成物の製造のための、単離されたCD135細胞の使用。
[57]
CD135細胞が、ヒト対象から採取された試料から単離されたものである、前記[56]に記載の使用。
[58]
試料が末梢血である、前記[57]に記載の使用。
[59]
CD135細胞がCD115CD135細胞である、前記[56]〜[58]のいずれかに記載の使用。
[60]
CD135細胞がLinCD135細胞である、前記[56]〜[59]のいずれかに記載の使用。
[61]
組成物中のCD135細胞の細胞数が組成物中の全細胞数の20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%以上である、前記[56]〜[60]のいずれかに記載の使用。
[62]
組成物が、免疫療法に用いるためのものである、前記[56]〜[61]のいずれかに記載の使用。
[63]
免疫療法が、がんまたは感染症を治療するためのものである、前記[62]に記載の使用。
[64]
感染症が、ウイルス感染症である、前記[63]に記載の使用。
[65]
単離されたCD135細胞が抗原で刺激されている、前記[56]〜[64]のいずれかに記載の使用。
[66]
抗原ががん抗原である、前記[65]に記載の使用。
[67]
試料から抗原提示能および貪食能を有する細胞を取得するためのキットであって、抗CD135抗体を含むキット。
[68]
抗CD115抗体をさらに含む、前記[67]に記載のキット。
[69]
試料がヒトから採取されたものである、前記[67]または[68]に記載のキット。
[70]
試料が末梢血である、前記[67]〜[69]のいずれかに記載のキット。
[71]
抗体が蛍光標識されている、前記[67]〜[70]のいずれかに記載のキット。
[72]
抗体が磁気標識されている、前記[67]〜[70]のいずれかに記載のキット。
[73]
試料から抗原提示能および貪食能を有する細胞を取得するための、抗CD135抗体またはこれを含むキットの使用。
[74]
キットが抗CD115抗体をさらに含む、前記[73]に記載の使用。
[75]
試料がヒトから採取されたものである、前記[73]または[74]に記載の使用。
[76]
試料が末梢血である、前記[73]〜[75]のいずれかに記載の使用。
[77]
抗体が蛍光標識されている、前記[73]〜[76]のいずれかに記載の使用。
[78]
抗体が磁気標識されている、前記[73]〜[76]のいずれかに記載の使用。
以下に実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
試料と方法
マウス
C57BL/6マウス(7〜12週齢)をCLEA Japan(Tokyo, Japan)から購入した。BALB/cマウス(7〜12週齢)をJapan SLC(Shizuoka, Japan)から購入した。CD45.1マウスはShigekazu Nagata (Osaka University, Japan)から頂戴した。全ての動物のプロトコルは京都大学医学部の動物実験委員会によって承認された。
Csf2−/−マウス(Dranoff et al., 1994)、Csf2rb−/−マウス(Nishinakamura et al., 1995)、Flt3l−/−マウス(Kingston et al., 2009)、CD11c-DTRマウス(Jung et al., 2002)を金沢医科大学の特定病原体除去施設で維持した。全ての動物実験は金沢医科大学の施設内動物実験委員会によって承認された。
フローサイトメトリー分析およびセルソーティング
BM細胞を得るために、脛骨、大腿骨および上腕骨を2%ウシ胎仔血清(FCS)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗い流した。PB試料を麻酔下で眼窩静脈神経叢から採取した。リポ多糖(LPS)の効果を分析するため、5μg LPS(E. coli O111:B4, Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を分析の12時間前に腹腔内注射した。赤血球を溶解するため、BM、SPLまたはPB細胞をPharm Lyse試薬(BD Biosciences, San Jose, CA)で処理した。死細胞を除外するため、細胞をヨウ化プロピジウムで染色した。
CD11c-DTRマウスに4ng/g体重のDT(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中;Sigma Aldrich)を腹腔内注射した。DT注射の1、2、3、4および5日後にBM細胞を採取し、フローサイトメトリーを用いて分析した。
BM細胞をWTマウス、Csf2−/−マウス、Csf2rb−/−マウス、Flt3l−/−マウスから採取し、フローサイトメトリーによって分析した。
サイトカインの細胞内染色のためにBD Cytofix/Cytoperm Plus Fixation/Permeabilization Kit with Golgistop(BD Biosciences)を用いた。iNOSまたはTNF-αの産生に対するLPSの効果を調べるため、精製した細胞を100ng/mL LPSの存在下において細胞培地中で16時間インキュベートした。フローサイトメトリー分析またはソーティングをFACSCantoIIまたはFACSAriaIII(BD Biosciences)を用いて行った。データをFlowJoソフトウェア(BD Biosciences)を用いて分析した。
フローサイトメトリー分析で使用した抗体を表1に示す。
Figure 2021145600
RNA-Seq
各マウス由来のRNA試料の量および質をAgilent 2200 TapeStation (Agilent)により確認した。次世代シーケンシング(NGS)用のcDNAライブラリーを、製造者の説明書に従ってSMART-Seq v4 Ultra Low Input RNA Kit for Sequencing(Clontech)、Nextera XT DNA Library Preparation Kit(illumina)およびNextera XT Index Kit(illumina)を用いて構築した。NGSライブラリーの質をAgilent 4200 TapeStationにより評価し、NovaSeq Xp 4-Lane Kitを用いてNovaSeq 6000 System (illumina)上で配列決定した。ベースコールをbcl2fastq2 Conversion Software v2.20(illumina)によりfastqファイル形式に変換した。ライブラリー調製および配列決定はTakara Bio Inc., Shiga, Japanにおいて実施され、さらなる分析のためにfastqファイルを京都府立医科大学大学院中央研究室次世代シーケンサー室に提供した。
RNA-Seqデータ分析
FASTX Toolkit 0.0.13、FastQCバージョン0.11.2およびPRINSEQ liteバージョン0.20.4を用いて品質管理(QC)を行った後、fastqファイルからのRNA-Seqの読み取りをBowtie2バージョン2.1.0およびsamtools-0.1.19を含むTophat-2.0.9を用いてEnsembl GRCm38/mm10 genome assemblyにアラインした。RNA-Seqデータからcufflinks-2.2.1を用いて計算したFPKMデータによって遺伝子発現解析を行った。細胞クラスタリングについて、PCAおよびヒートマップ分析をRバージョン3.6.0を用いて行った。最後に、以下のQC条件下におけるcufflinksのCuffdiffオプションからの結果に基づいて、4,891個の遺伝子を分析のために選択した:(i)「status」が「OK」でなかった遺伝子を除外する、(ii)「log2(fold_change)」についてエラー値を示した遺伝子を除外する、(iii)「significant」について「yes」を示した遺伝子を包含する、(iv)|log2(fold_change)|≧2.0をもたらした遺伝子を包含する、および(v)6個を超える試料においてFPKM=0をもたらした遺伝子を除外する。ヒートマップの画像を、「zFPKM」R/Bioconductorパッケージを用いてFPKM値を正規化した後、「pheatmap」Rパッケージによって描画した。RNA-seqデータの画像をIntegative Genomics Viewer(IGV)によって描画した。
ギムザ染色
サイトスピン検体を、改変されたライトギムザ染色システムであるDiff-Quik Stain Kit(Sysmex, Kobe, Japan)で染色した。CD135単球の樹状突起形成を分析するため、10% FBS、50μMベータメルカプトエタノールおよびペニシリン−ストレプトマイシンに加えて10ng/mL GM-CSF(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation, Osaka, Japan)を添加したRPMI1640細胞培地中で細胞を16時間インキュベートした。画像をDP80 CCDカメラを接続したOlympus BX43顕微鏡(OLYMPUS, Tokyo, Japan)を用いて取得し、cellSens standard 1.12ソフトウェア(OLYMPUS)を用いて処理した。
食作用アッセイ
ソーティングした細胞を5ng/mL LPSを含むか、または含まない細胞培地中で2時間培養した。次に、食細胞により取り込まれ、酸性化された場合にのみ蛍光が活性化されるpHrodo Red E. coli BioParticles Conjugate for Phagocytosis(Invitrogen, Carlsbad, CA)を培養物に添加し、37℃の水浴または氷上で1時間インキュベートした。細胞をフローサイトメトリーによって直接分析した。
混合リンパ球反応(MLR)アッセイ
CD4T細胞を、CD8T細胞を除去するためのビオチン標識CD8抗体と組み合わせたEasySep Mouse T cell Isolation Kit(STEMCELL Technologies, Vancouver, Canada)を用いて同種反応および自己反応のためにそれぞれBALB/c(H-2d)またはC57BL/6(H-2b)マウスの脾臓から単離した。C57BL/6マウスのBMから取得および精製したCD135単球、CD135単球、cDCおよびpDCをテスト細胞として用いた。LPSの効果を調べるため、ソーティングしたこれらの細胞を5ng/mL LPSを含む細胞培地中で2時間インキュベートし、分析の前に2回洗浄した。1×104個のテスト細胞を、CellTrace Violet Cell Proliferation Kit (Invitrogen, Carlsbad, CA)で染色した5×104個の同種または自己CD4T細胞と共に96ウェル丸底培養プレートのウェル中でインキュベートした。共培養の4日後にフローサイトメトリーによってT細胞増殖を評価した。
養子移入実験
CD45.2またはCD45.1マウスからソーティングした細胞を30μL PBS中に再懸濁し、それぞれCD45.1またはCD45.2マウスの脛骨BM腔に直接注射した(Baba et al., 2013)。いくつかの実験では、ドナー細胞を注射する前にCellTrace Violet Cell Proliferation Kit(Invitrogen, Carlsbad, CA)で標識した。48または60時間後に、レシピエントのBMおよびSPL細胞を採取し、フローサイトメトリー分析を行った。
統計
スチューデントのt検定を用いて統計的差異を決定した。P<.05の値を統計的に有意であるとみなした。
結果
CD135 単球の同定
マウス単球は、系統マーカー陰性の骨髄(BM)細胞または末梢血(PB)細胞中のCD11bCD115細胞として特定されており、少なくとも2つのサブセット(Ly6Chigh「古典的」単球およびLy6Clow「非古典的」または「循環性」単球)から構成される(Gordon and Taylor, 2005; Yang et al., 2014)。本実験では、系統マーカーとして、CD3、CD19、NK1.1、Ter119およびLy6Gの組合せを用いた。単球のサブセットを特定する試みの中で、本発明者らはごく一部の単球がCD135を発現していることに気付いた(図1Aの下段右のパネル)。CD135単球はLy6ChighのサブセットとLy6Clowのサブセットに明確に分離されたが、CD135単球のLy6C発現のレベルは中程度から高いレベル(すなわちLy6Cintermediate(int)からLy6Chigh)まで連続的に分布していた。ギムザ染色により、Ly6ChighCD135単球は楕円形の形状の核を持つ単核細胞であり、CD135Ly6Clow単球は蹄鉄の形状または二小葉の核を持つより小さな細胞であることが分かった(図1C)。Ly6ChighおよびLy6CIntCD135単球はともにLy6ChighCD135単球に形態的に類似していた。図1Bに示されるように、これらのCD135単球は脾臓およびPBにおいても確認された。本研究ではこれらの新規CD135サブセットに注目した。以下の実験では、特に記載する場合を除き、BM中のCD135単球について検討した。
CD135 単球は従来型樹状細胞(cDC)のマーカーを発現する
CD135はFlt3リガンドの受容体であり、樹状細胞(DC)の分化および維持に重要なサイトカインである(Merad et al., 2013; Waskow et al., 2008)。本発明者らはCD135単球におけるCD135の重要性を評価するため、Flt3l−/−マウスを解析した。その結果、Flt3l−/−マウスのBM中のLy6ChighおよびLy6CintCD135単球はともに、野生型マウスと比較して有意に低下していたことが分かった。一方、Csf2−/−マウスおよびCsf2rb−/−マウスのBMではCD135単球の数は維持されていた。これはCD135単球の分化がFlt3リガンドに依存していることを示唆する(図8)(Dranoff et al., 1994; Kingston et al., 2009; Nishinakamura et al., 1995)。次に、本発明者らはCD135単球上の単球/マクロファージおよび他の骨髄細胞のマーカーならびにDCのマーカーの発現を解析した(図2、図9および図11)。マクロファージのマーカーであるF4/80は、Ly6ChighおよびLy6CintCD135単球(図2)の両方においてLy6ChighおよびLy6ClowCD135単球(データ示さず)と同程度のレベルで発現していた。CD11cおよびMHCクラスIIは、従来型DC(cDC)において高度に発現しており、CD135単球において低いレベルで発現していた(図9)。CD135単球は、CD11cおよびMHCクラスIIをその中間のレベルで発現していた(図2A)。そこで、CD11cプロモーターの制御下でジフテリア毒素受容体(DTR)を発現するCD11c−DTRマウスにDTを投与したところ、BM中のLy6ChighおよびLy6CintCD135単球はともに一時的に有意に減少した(図10)(Jung et al., 2002)。以前の報告により、感染および炎症性刺激がmoDCの分化および成熟化を促進することが示されている(Cheong et al., 2010)。マウスにリポ多糖(LPS)を腹腔内投与すると、CD135単球上のCD11cおよびMHCクラスIIの発現が著しく上昇した(図2A)。
CD40、CD80およびCD86は共刺激因子に分類されており、定常状態においてCD135単球により低レベルで発現され、in vivoでのLPS刺激に応答して著しく上昇した(図2A)。形質細胞様DC(pDC)マーカーであるSiglec Hは、Ly6ChighおよびLy6CintCD135単球においてCD135単球と同程度のレベルで発現していた(Blasius and Colonna, 2006)。CD16/32、SIRPα、PD-L1およびPD-L2を含む他のマーカーもまた、CD135単球においてCD135単球と同程度のレベルで発現していた(図11)。C型レクチン受容体であるCD209a(樹状細胞特異的ICAM-3結合ノンインテグリン:DC-SIGN)は、CD135単球で高度に発現していた(図2A)(Mildner et al., 2017)。興味深いことに、Ly6ChighおよびLy6CintCD135単球を顆粒球マクロファージコロニー刺激因子の存在下で16時間培養すると、樹状突起が誘導された(図2B)。まとめると、Ly6ChighおよびLy6CintCD135単球はともにDCの特徴を有しており、これらの特徴は必ずしもCD135単球に共通してはいなかった。
CD135 単球は単球の個別のサブセットである
CD135単球は単球の特徴だけでなく、DCの特徴も有しており、LinCD11bCD115単球のごく一部を構成していることが観察されたため、本発明者らはCD135単球が従来の単球であり、CD135単球は別個の新規なサブセットであるという仮説を立てた。そこで本発明者らは、単核食細胞系におけるこれらの集団の階層的および相対的な位置を明らかにするため、これらの集団の網羅的な遺伝子発現プロファイルをRNAseqによって解析した(図3)。この目的のために、CD135単球のLy6ChighおよびLy6Cintサブセットを精製し、従来のLy6ChighおよびLy6Clow単球、MDP、cMoP、CDPおよびCD11bcDC2と転写プロファイルを比較した(Schlitzer et al., 2015)。最初に、遺伝子発現の教師なしクラスタリングにより、Ly6ChighおよびLy6CintCD135単球が非常に類似した遺伝子発現プロファイルを有していることが示された。階層的クラスタリングのデンドログラムにおける最初の分岐は、前駆細胞クラスター(MDP、cMoPおよびCDP)と分化細胞クラスター(Ly6ChighおよびLy6ClowCD135単球、Ly6ChighおよびLy6CintCD135単球ならびにcDC2)の2つの群に分けた。分化細胞クラスターにおいて、CD135単球はcDC2よりもCD135単球に近かった。主成分分析は、これらの集団の遺伝子発現プロファイルが前駆細胞群と分化細胞群に分けられることを示した(図3B)。Ly6ChighおよびLy6CintCD135単球は他の分化細胞とは異なっており、Ly6ChighCD135単球とLy6ClowCD135単球とcDC2との間に存在していた。これはCD135単球がCD135単球とcDC2の中間の特徴を有することを示す。
骨髄の転写因子のうち、Klf4はCD135単球およびCD135単球において比較的高いレベルで発現していた。Ly6ChighCD135単球、Ly6CintCD135単球およびcDC2では共にBatf3、Irf4およびSpiBを高発現していた(図3C)。Irf8、Tcf4およびSlfn5は、調べた分化細胞の中でCD135単球において高度に発現していた(図3C)。CD135単球の従来の単球やcDCと異なる遺伝子発現パターンを示したり、共通する遺伝子発現パターン示したりしたことは、CD135単球が従来の単球とは異なるサブセットであり、単球とcDCの中間の特徴を有することを示唆している。
CD135 単球は食作用および抗原提示に関連する遺伝子を発現する
CD135単球が新規細胞集団であることを確認した後、本発明者らはこれらの細胞によって特異的に発現される遺伝子を探索した(図4および図12)。本発明者らはまず、CD4T細胞への抗原提示に必要な古典的および非古典的主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスII遺伝子群に注目した(図4A〜4Bおよび図12A〜12B)。Ly6ChighおよびLy6CintCD135単球はともに、古典的MHCクラスII遺伝子群(H2-Aa、H2-Ab1およびH2Eb1を含む)をcDC2と同程度のレベルで発現していた。非古典的MHCクラスII遺伝子群(H2-Oa、H2-ObおよびH2-DMb2など)はcDC2において最も高いレベルで発現し、CD135単球ではcDC2よりも低いが、従来のCD135単球よりも高いレベルで発現していた。次に、本発明者らはDC-SIGN遺伝子群に注目した(図4Cおよび図12C)。CD209a、CD209b、CD209c、CD209dおよびCD209eは、調べた細胞のうちLy6ChighおよびLy6CintCD135単球において最も高いレベルで発現していた。Fc受容体、補体受容体、Toll様受容体およびインテグリンをコードする他の遺伝子群は、CD135単球においてLy6ChighCD135単球に同程度発現していた(補足図13)。
さらに、本発明者らは、Cd301a(Clec-10a)遺伝子およびCd206(Mrc1)遺伝子がLy6ChighおよびLy6CintCD135単球において高度に発現していることを見出した(図14)。CD301aはC型レクチンドメインファミリー遺伝子のメンバーであり、CD206はマンノース受容体である。本発明者らはこれらの分子の発現をフローサイトメトリーによってタンパク質レベルで評価し、Ly6ChighおよびLy6CintCD135単球によるこれらの高い発現を確認した(図14Aおよび14B)。まとめると、CD135単球は、MHCクラスII遺伝子、DC-SIGN、ならびに微生物の認識、食作用および抗原提示に関連する他の分子を発現し、これはこの細胞の機能的性質を示唆する。
CD135 単球は抗原提示細胞として機能する
本発明者らは次に、この細胞の食作用および抗原提示活性を解析した(図5)。Ly6ChighおよびLy6CintCD135単球はほとんど同一の遺伝子発現プロファイルを有しているため、以下の機能分析ではこれらの細胞をCD135単球としてまとめた。
食作用活性を評価するため、CD135単球、Ly6ChighおよびLy6ClowCD135単球、cDCおよびpDCを精製し、蛍光標識された大腸菌の存在下で1時間培養した(図5A、B)。Ly6ChighおよびLy6ClowCD135単球は培養後に蛍光陽性となった。これはLy6ChighおよびLy6ClowCD135単球の食作用活性を示唆している。対照的に、cDCおよびpDCはこの条件下で食作用の徴候を何ら示さなかった。Ly6ChighCD135単球よりも低いレベルであったが、CD135単球の有意な食作用活性が検出された。LPSはLy6ChighおよびLy6ClowCD135単球またはCD135単球の食作用活性を増強しなかった。
抗原提示能の評価のために、同種混合リンパ球反応アッセイを用いた(図5Cおよび5D)(Chen et al., 2003)。精製した細胞を、予め蛍光色素で標識した同種または自己CD4T細胞と共培養した。図5Cおよび5Dに示されるように、同種CD4T細胞をcDCと4日間共培養すると、蛍光が希釈された多くのT細胞が現れた。これはcDCの抗原提示に応答したT細胞増殖を示している。対照的に、Ly6ChighおよびLy6ClowCD135単球はT細胞増殖を全く誘導しなかった。同種CD135単球との共培養はT細胞増殖をもたらし、これはCD135単球の抗原提示能を示している(図5Cおよび5D)。さらに、CD135単球またはcDCによって刺激されたT細胞はIFN-γを産生した(図5E〜5H)。cDCまたはCD135単球の抗原提示機能は、LPSによるこれらの細胞の予備刺激によって増強されなかった(図5E〜5H)。これらの結果は、CD135単球が抗原を提示してT細胞増殖およびIFN-γ産生を誘導する能力を有することを明確に示している。
誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)および腫瘍壊死因子α(TNF-α)の発現は、炎症性単球およびmoDCに共通する特有の機能である(Schlitzer et al., 2015; Serbina et al., 2003)。実際、Ly6ChighCD135単球をLPSで刺激したところ、iNOSおよびTNF-α発現が誘導された(図15A〜15D)。興味深いことに、CD135単球もまた、LPSに反応してiNOSおよびTNF-αを発現した。Ly6ClowCD135単球のうちほんのわずかな細胞のみがTNF-αを発現した。一方、cDCまたはpDCはLPSの有無にかかわらずiNOSまたはTNF-αを発現しなかった(図15A〜15D)。
CD135 単球はMDPの直接の子孫細胞である
本発明者らは次に、CD135単球の分化起源を特定することを試みた。この目的のためにCD45.1/CD45.2コンジェニックマウス系を用いた。簡潔に述べると、CD45.1マウス由来のMDP、cMoPまたはCDP(Fogg et al., 2006; Hettinger et al., 2013; Onai et al., 2007)を、非照射のCD45.2マウスの脛骨髄腔に直接注射した(図6A、6B)。注射の60時間後に、レシピエントマウスのBMおよび脾臓細胞のフローサイトメトリー分析を行った。その結果、ドナー由来のMDPは移入したマウスの中で、CD115CD135DCおよび従来のCD135単球に加えてCD135単球へと分化したことが明らかとなった(図6Aおよび6B)。次に、それぞれ単球およびDCの直接の前駆細胞であるcMoPおよびCDPの分化能力を調べた。cMoPのレシピエントでは、ドナー由来の細胞は全てCD135単球であり、ドナー由来のCD135単球は検出されなかった(図16A)。以前の報告と一致するように、ほとんどのCDPはCD115CD135DCに分化した。CDPのレシピエントでは、ほんのわずかなCD135単球が検出された(図16B)。しかし、図6Bに示されるようにレシピエントにおけるCDP由来細胞の回収率は非常に低かったため、CD135単球の前駆細胞としてのCDPの寄与はほとんど無視できるものであった。これらの結果は、MDPがCD135単球の主要な直接の前駆細胞であることを示している。
CDP135 単球はCD135 単球を生じない
過去の報告により、moDCはストレス状態下またはin vitro培養下で単球から誘導されることが示されている。対照的に、本発明者らはDCのような抗原提示細胞を持つCD135単球が定常状態で明確に存在していることを示した。次に本発明者らは、養子移入実験を用いてCD135単球およびCD135単球の分化系譜における関係性を調べた。Ly6ChighCD135単球、Ly6ClowCD135単球、またはCD135単球をBM細胞から精製し、上述のように非照射のマウスの脛骨BM腔に養子移入した(図7)。Ly6ChighCD135単球のレシピエントでは、以前に報告されているようにドナー由来の細胞においてLy6ChighCD135単球およびLy6ClowCD135単球がともに検出された(Varol et al., 2007; Yona et al., 2013)が、CD135単球は検出されなかった。Ly6ClowCD135単球はLy6ClowCD135単球以外の細胞へは分化しなかった。CD135単球はレシピエント内においてLy6ChighCD135単球またはLy6ClowCD135単球のいずれにも分化しなかった。これらの知見は、cMoPがCD135単球へと分化しなかったという結果と一致している。これらの結果は、CD135単球の分化経路が従来の単球の分化経路とは異なっていることを明確に示している。
次に、マウス末梢血のLinCD135細胞中のCD135単球の頻度を調べた(図18)。その結果、CD135単球はマウス末梢血のLinCD135細胞の約40%を占めていた。
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Claims (16)

  1. 抗原提示能および貪食能を有する細胞集団を取得する方法であって、対象から採取された試料からCD135細胞を単離することを含む方法。
  2. 対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
  3. 試料が末梢血である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の方法により取得された細胞集団。
  5. 医薬組成物の製造方法であって、以下を含む方法:
    対象から採取された試料からCD135細胞を単離すること、および
    単離されたCD135細胞を医薬上許容される担体および/または添加剤と混合すること。
  6. 対象がヒトである、請求項5に記載の方法。
  7. 試料が末梢血である、請求項5または6に記載の方法。
  8. 請求項5〜7のいずれかに記載の方法により製造された医薬組成物。
  9. 単離されたCD135細胞を含む、医薬組成物。
  10. CD135細胞が、ヒト対象から採取された試料から単離されたものである、請求項9に記載の組成物。
  11. 試料が末梢血である、請求項10に記載の組成物。
  12. 免疫療法に用いるための、請求項9〜11のいずれかに記載の組成物。
  13. 免疫療法が、がんまたは感染症を治療するためのものである、請求項12に記載の組成物。
  14. 単離されたCD135細胞。
  15. 試料から抗原提示能および貪食能を有する細胞を取得するためのキットであって、抗CD135抗体を含むキット。
  16. 試料から抗原提示能および貪食能を有する細胞を取得するための、抗CD135抗体またはこれを含むキットの使用。
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