JP2021144493A - 補償器、制御システム、補償方法、及びプログラム - Google Patents

補償器、制御システム、補償方法、及びプログラム Download PDF

Info

Publication number
JP2021144493A
JP2021144493A JP2020043024A JP2020043024A JP2021144493A JP 2021144493 A JP2021144493 A JP 2021144493A JP 2020043024 A JP2020043024 A JP 2020043024A JP 2020043024 A JP2020043024 A JP 2020043024A JP 2021144493 A JP2021144493 A JP 2021144493A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
input
value
coefficient
output
target
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2020043024A
Other languages
English (en)
Inventor
隆治 広江
Takaharu Hiroe
隆治 広江
和成 井手
Kazunari Ide
和成 井手
遼 佐瀬
Ryo Sase
遼 佐瀬
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Heavy Industries Ltd filed Critical Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Priority to JP2020043024A priority Critical patent/JP2021144493A/ja
Priority to DE102021200481.4A priority patent/DE102021200481A1/de
Priority to CN202110109739.6A priority patent/CN113391545A/zh
Priority to US17/162,485 priority patent/US20210286324A1/en
Publication of JP2021144493A publication Critical patent/JP2021144493A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • GPHYSICS
    • G05CONTROLLING; REGULATING
    • G05BCONTROL OR REGULATING SYSTEMS IN GENERAL; FUNCTIONAL ELEMENTS OF SUCH SYSTEMS; MONITORING OR TESTING ARRANGEMENTS FOR SUCH SYSTEMS OR ELEMENTS
    • G05B6/00Internal feedback arrangements for obtaining particular characteristics, e.g. proportional, integral or differential
    • G05B6/02Internal feedback arrangements for obtaining particular characteristics, e.g. proportional, integral or differential electric
    • GPHYSICS
    • G05CONTROLLING; REGULATING
    • G05BCONTROL OR REGULATING SYSTEMS IN GENERAL; FUNCTIONAL ELEMENTS OF SUCH SYSTEMS; MONITORING OR TESTING ARRANGEMENTS FOR SUCH SYSTEMS OR ELEMENTS
    • G05B13/00Adaptive control systems, i.e. systems automatically adjusting themselves to have a performance which is optimum according to some preassigned criterion
    • GPHYSICS
    • G05CONTROLLING; REGULATING
    • G05BCONTROL OR REGULATING SYSTEMS IN GENERAL; FUNCTIONAL ELEMENTS OF SUCH SYSTEMS; MONITORING OR TESTING ARRANGEMENTS FOR SUCH SYSTEMS OR ELEMENTS
    • G05B13/00Adaptive control systems, i.e. systems automatically adjusting themselves to have a performance which is optimum according to some preassigned criterion
    • G05B13/02Adaptive control systems, i.e. systems automatically adjusting themselves to have a performance which is optimum according to some preassigned criterion electric
    • G05B13/04Adaptive control systems, i.e. systems automatically adjusting themselves to have a performance which is optimum according to some preassigned criterion electric involving the use of models or simulators
    • GPHYSICS
    • G05CONTROLLING; REGULATING
    • G05BCONTROL OR REGULATING SYSTEMS IN GENERAL; FUNCTIONAL ELEMENTS OF SUCH SYSTEMS; MONITORING OR TESTING ARRANGEMENTS FOR SUCH SYSTEMS OR ELEMENTS
    • G05B13/00Adaptive control systems, i.e. systems automatically adjusting themselves to have a performance which is optimum according to some preassigned criterion
    • G05B13/02Adaptive control systems, i.e. systems automatically adjusting themselves to have a performance which is optimum according to some preassigned criterion electric
    • G05B13/04Adaptive control systems, i.e. systems automatically adjusting themselves to have a performance which is optimum according to some preassigned criterion electric involving the use of models or simulators
    • G05B13/042Adaptive control systems, i.e. systems automatically adjusting themselves to have a performance which is optimum according to some preassigned criterion electric involving the use of models or simulators in which a parameter or coefficient is automatically adjusted to optimise the performance
    • HELECTRICITY
    • H03ELECTRONIC CIRCUITRY
    • H03HIMPEDANCE NETWORKS, e.g. RESONANT CIRCUITS; RESONATORS
    • H03H21/00Adaptive networks
    • H03H21/0012Digital adaptive filters
    • H03H21/0067Means or methods for compensation of undesirable effects
    • HELECTRICITY
    • H03ELECTRONIC CIRCUITRY
    • H03HIMPEDANCE NETWORKS, e.g. RESONANT CIRCUITS; RESONATORS
    • H03H21/00Adaptive networks
    • H03H21/0012Digital adaptive filters
    • H03H2021/0085Applications
    • H03H2021/0092Equalization, i.e. inverse modeling

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Automation & Control Theory (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Artificial Intelligence (AREA)
  • Computer Vision & Pattern Recognition (AREA)
  • Evolutionary Computation (AREA)
  • Medical Informatics (AREA)
  • Software Systems (AREA)
  • Feedback Control In General (AREA)
  • Complex Calculations (AREA)

Abstract

【課題】少数のデータから制御対象に入力すべき入力値を精度よく計算することができる補償器を提供する。【解決手段】補償器3は、プロセッサ31と、前記プロセッサ31に接続され、制御対象2への入力の計測値である入力計測値、及び前記制御対象からの出力の計測値である出力計測値を記憶する記憶装置30と、を備える。前記プロセッサ31は、前記入力計測値及び前記出力計測値から、有限インパルス応答フィルタを構成する第1係数を同定する処理と、前記第1係数に基づいて無限インパルス応答フィルタを構成する第2係数を求め、前記第1係数の一部及び前記第2係数を含む前記制御対象2の逆システムを特定する処理と、前記逆システムに基づいて、前記出力の目標値の荷重和から前記制御対象2に入力すべき入力値を推定する処理と、を実行する。【選択図】図1

Description

本開示は、補償器、制御システム、補償方法、及びプログラムに関する。
産業上の制御システムでは、制御対象の出力を目標値に対して完全に追従させることが理想状態である。これを達成するためには、制御対象のモデルを用いてフィードフォワード型の補償器を用いることが有効である。フィードフォワードの対極であるフィードバックは、目標値と出力の偏差に基づき動作するので、目標値が高頻度で変動する場合には追従遅れを避けることが難しい。また、追従遅れを抑制するには、わずかな偏差を増幅して補償しなければならない。しかしながら、よく知られているように、偏差の増幅率を大きくすると発振するため、増幅率には限度がある。したがって、フィードバック補償だけでは偏差をゼロにすることは困難である。
これに対し、フィードフォワード補償は制御対象の出力が目標値に一致するように入力を計算する。その計算には、制御対象のモデルが重要な役割を果たす。モデルが正確であれば、計算した入力を制御対象に与えると、制御対象の出力は目標値に一致するからである。したがって、正確なモデルをえることは決定的に重要である。現実の制御対象は、運転状態の変化、装置の劣化等により時間的に変動するので、モデルも変動に合わせて更新しなければならない。
例えば時刻tにおいてモデルを更新するならば、制御対象の入力の直近の過去の値u(i=t−1,t−2,t−3,…)と、出力の直近の過去の値y(i=t−1,t−2,t−3,…)から、以下の式(1)のような離散時間の自己回帰移動平均(ARMA)型の伝達関数モデルまたは無限インパルス応答(IIR)フィルタで同定するのが一般的である(例えば、特許文献1を参照)。
Figure 2021144493
式(1)において、z−1は遅延演算子、{a,a,…,a,b,b,…,b}はモデルの調整パラメータである。モデルの調整パラメータは、例えば最小二乗法により定める。
特開2010−86395号公報
ここで、目標値をrと記すと、「y=r」となるのが理想状態である。それを達成するような理想状態の入力を「^u」(「u」にハット記号を付した表記に対応。)と記すと、それは「P^u=r」でなければならないから、理想状態の入力は「^u=P−1r」と表される。ここに、P−1は制御対象の出力から入力を求める伝達関数であり逆システムと呼ばれるものである。しかしながら、これには二つの課題がある。一つ目は、逆システムP−1は伝達関数の分子の次数が分母の次数より大きいことである。これにより、P−1を数値的に計算することが困難である。二つ目は、P−1の分母の特性多項式の根に絶対値が1を超えるものが存在する可能性があることである。1を超えるものがあるとP−1は不安定となり数値計算が発散する。一つ目の問題点は、例えば、以下の式(2)のように、目標値を「rz−1」に置き換えて、目標値にワンステップ遅れで追従するように修正することで処置できる。これは、目標値に対する参照モデル(理想とする応答のモデル)をz−1と指定したことと等価である。
Figure 2021144493
しかしながら、従来の技術では、二つ目の不安定性の解決は困難である。特に、制御対象の逆システムP−1は入力と出力の過去値から推定するものであり、推定は実態に対して誤差がある。誤差の理由としては、バルブ又はアクチュエータ、或いはセンサの誤差により記録値と実際の値が異なること、推定に用いる入力や出力の計測値には必ずノイズが含まれること等があげられる。実用のためには、このような誤差があったとしても、P−1を正確に推定することが求められる。
上述のとおり、モデルの更新は過去のデータに基づいて行う。過去どのくらいまでのデータを使うかは実用の点では重要であり、より少ないことが望まれる。少ないデータでモデルを更新することができれば、制御対象の特性が短期間のうちに変動したとしても、変動を捕えてモデルを更新することができるからである。例えば、制御対象の特性が、10分間かけて変動したとしよう。このとき、過去1分間分の観測値からモデル更新できるなら、変動に合わせて予測モデルを更新することができる。しかしながら、モデル更新に過去60分間分の観測値が要るなら、モデルが更新できるのは、予測対象の変動が済んで何十分も経った後であり、予測は現実と違ったものとなってしまう可能性がある。前述のモデル推定において、推定の精度と利用するデータの長さとは裏腹の関係にある。モデル推定の精度を確保しようとすれば、過去に長くさかのぼってデータを使わなければならない。一方、最近のデータだけから推定しようとするならば、推定精度を犠牲にしなければならない。
本開示は、このような課題に鑑みてなされたものであって、少数のデータから制御対象に入力すべき入力値を精度よく計算することができる補償器、制御システム、補償方法、及びプログラムを提供する。
本開示の一態様によれば、補償器は、プロセッサと、前記プロセッサに接続され、制御対象への入力の計測値である入力計測値、及び前記制御対象からの出力の計測値である出力計測値を記憶する記憶装置と、を備える。前記プロセッサは、前記入力計測値及び前記出力計測値から、有限インパルス応答フィルタをg−1+g−2+g−3+…のように構成する第1係数{g1,2,3,…}を同定する処理と、前記第1係数に基づいて伝達関数の分子がg−1かつ分母が1−h−1−h−2−h−3−…であるように無限インパルス応答フィルタを構成する第2係数{h1,2,3,…}を求め、前記第1係数の一部及び前記第2係数を含む前記制御対象の逆システムを特定する処理と、前記逆システムに基づいて、前記出力の目標値の時刻歴の荷重和から前記制御対象に入力すべき入力値を推定する処理と、を実行する。
本開示の一態様によれば、補償器は、プロセッサと、前記プロセッサに接続され、制御対象への入力の計測値である入力計測値、及び前記制御対象からの出力の計測値である出力計測値を記憶する記憶装置と、を備える。前記プロセッサは、前記入力計測値及び前記出力計測値から、伝達関数の分母多項式が1−h−1−h−2−h−3−…であり分子がg−1であるように無限インパルス応答フィルタを構成する第2係数{h1,2,3,…}、および第1係数{g}を求め、前記第2係数を含む前記制御対象の逆システムを特定する処理と、前記逆システムに基づいて、前記出力の目標値の時刻歴の荷重和から前記制御対象に入力すべき入力値を計算する処理と、を実行する。
本開示の一態様によれば、補償器は、プロセッサと、前記プロセッサに接続され、制御対象への入力の計測値である入力計測値、及び前記制御対象からの出力の計測値である出力計測値と、前記制御対象の複数のモデル候補それぞれを構成する複数の第1係数と、複数の前記モデル候補それぞれに対応し、前記制御対象の前記出力の目標値から前記入力の目標値を特定するシステムである逆システムとを予め記憶する記憶装置と、を備える。前記プロセッサは、前記出力計測値と、前記第1係数及び前記入力計測値から得られる出力の推定値とに基づいて、複数の前記モデル候補それぞれの尤度を推定する処理と、推定された前記尤度が最も大きいモデル候補を選出する処理と、選出された前記モデル候補に対応する逆システムに基づいて、前記出力の目標値の時刻歴の荷重和から前記制御対象に入力すべき入力値を計算する処理と、を実行する。
本開示の一態様によれば、補償器は、プロセッサと、前記プロセッサに接続され、制御対象への入力の計測値である入力計測値、及び前記制御対象からの出力の計測値である出力計測値と、前記制御対象の複数のモデル候補それぞれを構成する複数の第1係数とを予め記憶する記憶装置と、を備える。前記プロセッサは、前記出力計測値と、前記第1係数及び前記入力計測値から得られる出力の推定値とに基づいて、複数の前記モデル候補それぞれの尤度を推定する処理と、前記尤度を重み係数として、前記モデル候補それぞれの第1係数を荷重平均した第3係数を導出する処理と、前記第3係数に基づいて無限インパルス応答フィルタを構成する第2係数を求め、前記第3係数の一部及び前記第2係数を含み、前記制御対象の前記出力の目標値から前記入力の目標値を特定するシステムである逆システムを特定する処理と、前記逆システムに基づいて、前記出力の目標値の時刻歴の荷重和から前記制御対象に入力すべき入力値を推定する処理と、を実行する。
本開示の一態様によれば、補償方法は、制御対象への入力の計測値である入力計測値、及び前記制御対象からの出力の計測値である出力計測値から、有限インパルス応答フィルタを構成する第1係数を同定する処理と、前記第1係数に基づいて無限インパルス応答フィルタを構成する第2係数を求め、前記第1係数の一部及び前記第2係数を含み、前記制御対象の前記出力の目標値から前記入力の目標値を特定するシステムである逆システムを特定する処理と、前記逆システムに基づいて、前記出力の目標値の時刻歴の荷重和から前記制御対象に入力すべき入力値を推定する処理と、を有する。
本開示の一態様によれば、プログラムは、制御対象への入力の計測値である入力計測値、及び前記制御対象からの出力の計測値である出力計測値から、有限インパルス応答フィルタを構成する第1係数を同定する処理と、前記第1係数に基づいて無限インパルス応答フィルタを構成する第2係数を求め、前記第1係数の一部及び前記第2係数を含み、前記制御対象の前記出力の目標値から前記入力の目標値を特定するシステムである逆システムを特定する処理と、前記逆システムに基づいて、前記出力の目標値の時刻歴の荷重和から前記制御対象に入力すべき入力値を推定する処理と、を補償器のコンピュータに実行させる。
本開示の一態様によれば、補償器は、プロセッサと、前記プロセッサに接続され、制御対象への入力の計測値である入力計測値、及び前記制御対象からの出力の計測値である出力計測値を記憶する記憶装置と、を備える。前記プロセッサは、前記入力計測値及び前記出力計測値から、有限インパルス応答フィルタを構成する第1係数を同定する処理と、前記第1係数に基づいて伝達関数の分子がg−1であり、分母多項式が1−h−1−h−2−h−3−…であるように無限インパルスフィルタを構成する第2係数を求め、前記第1係数の一部及び前記第2係数を含む前記制御対象の逆システムを特定する処理と、前記逆システムに基づいて、後述する目標値の時刻歴の荷重和から前記制御対象に入力すべき入力値を推定する処理と、を実行する。本開示の一態様によれば、目標値の時刻歴は、前期制御対象に外乱や特性変動がない場合の理想出力の計算値と、前期制御対象の実際の出力の差に基づき、目標基準値更新装置により制御入力の更新周期の2倍以上の長い周期で目標基準値を更新し、さらに前記目標基準値を参照モデルに入力し、前記長い周期で更新した目標基準値を制御入力の更新周期に合致するよう補間した目標値を生成する。そして、前期補償器に目標値を入力し、前記制御対象に入力すべき入力値を推定する処理、を実行する。
本開示の一態様によれば、補償器は、プロセッサと、前記プロセッサに接続され、補償対象への入力の計測値である入力計測値、及び前記補償対象からの出力の計測値である出力計測値を記憶する記憶装置と、を備える。前記プロセッサは、前記入力計測値及び前記出力計測値から、有限インパルス応答フィルタを構成する第1係数を同定する処理と、前記第1係数に基づいて伝達関数の分子がg−1であり、分母多項式が1−h−1−h−2−h−3+…であるように無限インパルスフィルタを構成する第2係数を求め、前記第1係数の一部及び前記第2係数を含む前記制御対象の逆システムを特定する処理と、前記逆システムに基づいて、前記出力の時刻歴の荷重和から前記補償対象の入力値を推定する処理と、を実行する。
本開示に係る補償器、制御システム、補償方法、及びプログラムによれば、少数のデータから制御対象に入力すべき入力値を精度よく計算することができる。
本開示の第1の実施形態に係る制御システムの機能構成を示す図である。 本開示の第2の実施形態に係る制御システムの機能構成を示す図である。 本開示の第3の実施形態に係る制御システムの機能構成を示す図である。 本開示の第4の実施形態に係る制御システムの機能構成を示す図である。 本開示の第5の実施形態に係る制御システムの機能構成を示す図である。 本開示の第6の実施形態に係る制御システムの機能構成を示す図である。 本開示の第7の実施形態に係る制御システムの機能構成を示す図である。 本開示の少なくとも一つの実施形態に係る補償器のハードウェア構成の一例を示す図である。
<第1の実施形態>
以下、本開示の第1の実施形態に係る制御システム1について、図1を参照しながら説明する。
(制御システムの機能構成)
図1は、本開示の第1の実施形態に係る制御システムの機能構成を示す図である。
図1に示すように、制御システム1は、制御対象2に入力すべき入力値を計算する補償器3と、制御対象2の出力の目標値を発生する目標値発生装置4と、を備えている。
補償器3は、サーバ、パーソナルコンピュータ等のコンピュータを用いて構成され、第1記憶装置30(記憶装置)と、プロセッサ31とを備えている。
第1記憶装置30は、プロセッサ31に接続され、制御対象2から所定周期ごとに受信する入力の計測値(以下、「入力計測値u」と記載する)、及び出力の計測値(以下、「出力計測値y」と記載する)を記憶する。
プロセッサ31は、補償器3の動作全体を司る。プロセッサ31は、所定のプログラムに従って動作することにより、同定部310、逆システム特定部311、フィードフォワード補償部312としての機能を発揮する。
同定部310は、入力計測値u及び出力計測値yから、有限インパルス応答フィルタ(FIRフィルタ)を構成する第1係数gを同定する処理S1を実行する。
逆システム特定部311は、第1係数gに基づいて無限インパルス応答フィルタ(IIRフィルタ)を構成する第2係数hを求め、第1係数gの一部及び第2係数hを含む制御対象2の逆システムを特定する処理S2を実行する。逆システムとは、制御対象2の出力の目標値から、入力の目標値を求めるモデルである。即ち、逆システム特定部311は、出力の目標値から入力の目標値を求めるモデルを特定する。
フィードフォワード補償部312は、逆システムに基づいて、出力の目標値の時刻歴の荷重和から制御対象2に入力すべき入力を計算して推定する処理S3を実行する。
(補償器の処理フロー)
ここで、本実施形態に係る補償器3の各部における具体的な処理の流れについて説明する。まず、補償器3の同定部310は、カーネル型システム同定法を用いて、FIRフィルタを構成する第1係数gを同定する処理S1を実行する。カーネル型システム同定では、制御対象2のインパルス応答をベイズ推定により以下のように同定する。
制御対象2の入力計測値をu(i=t,t−1,t−2,…)、出力計測値をy(i=t,t−1,t−2,…)とすると、制御対象2の出力を以下の式(3)のようにFIRフィルタの形式で表現する。
Figure 2021144493
上式(3)は、制御対象2の出力計測値yを、入力計測値uの荷重付きの移動平均と、観測雑音の和とで表現している。荷重付きの移動平均の荷重係数(第1係数)は{g,g,…,g}である。この荷重係数は制御対象2のインパルス応答に相当する。観測雑音は平均がゼロで、標準偏差がσのガウス分布で表されるものとする。「^y」(「y」にハット記号を付した表記に対応。以下同様。)はyの推定値である。
FIRフィルタによる予測モデルでは、上式(3)の入力計測値uの荷重係数{g,g,…,g}の値を、実際の入力計測値u及び出力計測値yに基づいて定める。カーネル型システム同定では、荷重係数{g,g,…,g}に対し、平均0、共分散K(n×n)の事前分布を導入して{g,g,…,g}の値を定める。このKはカーネルと呼ばれ、制御対象2に関する事前情報が組み込まれている。例えば、一次安定スプラインカーネルでは、制御対象2のインパルス応答が指数的に収束するという事前知識が組み込まれている。一次安定スプラインカーネルを用いると、Kのi行j列要素は以下の式(4)で与えられる。
Figure 2021144493
ここで、λ及びβはカーネルKを調整するパラメータであり、制御対象2のシステム特性に応じて予め設定されたものが同定部310に与えられる。なお、λ及びβの値が不明な場合は、それらの組み合わせを事前に複数用意しておき、組み合わせの一つ一つに対し以下に述べる演算を行い、出力計測値yとモデルの推定値「^y」との誤差(例えば誤差の分散)が最も小さい組み合わせの結果を使ってもよい。
表記の簡単化のために、以下の式(5)に示すベクトル表現を導入する。式(5)において、Nは観測点数である。
Figure 2021144493
これらの式を用いると、荷重係数gの事後分布は、共分散が式(6)、平均が式(7)で表されるガウス分布となる。
Figure 2021144493
Figure 2021144493
式(7)の「^g」(「g」にハット記号を付した表記に対応。以下同様。)は、荷重係数gの推定値である。同定部310は、推定した「^g」の値を、モデルの定数として同定する。
上述のカーネル型システム同定法の利点は、少ないデータ点数Nで予測モデルが得られることである。一般的な手法では、予測モデルの定数の数nが30程度のときに、データ点数は2000程度が必要である。これに対し、上述のカーネル型システム同定法では、Nが100程度で同定できるところに利点がある。
次に、逆システム特定部311は、制御対象2の逆システムを特定する処理S2を実行する。上述のように、制御対象2のモデルは、FIRフィルタにより以下の式(8)または式(8A)で表されるとする。
Figure 2021144493
Figure 2021144493
まず、逆システム特定部311は、制御対象2を表す式(8)のFIRフィルタを、以下の式(9)で示す特別の形式のIIRフィルタに変換する。式(9)は、式(9A)のように表記することもできる。
Figure 2021144493
Figure 2021144493
上式(9)において、gは既に求めたFIRフィルタの一部である。{h,h,…,hn−1}はIIRフィルタのパラメータとなる係数(第2係数)であり、次式(10)の連立一次方程式を解いて求める。
Figure 2021144493
また、IIRフィルタは、ベクトルにすると次の式(11)のようになる。
Figure 2021144493
入力に対するインパルス応答{g}は、出力{y}実際の値の一例である。したがって、上式(11)は、{y,y,y,…,y}を{0,g,g,…,g}に、{u,u,…,u}を単位インパルス{1,0,0,…,0}で書き換えても成り立たなければならない。そうすると、例えばg2は式(12)のように書いてもよく、同様に、g3は式(13)のように書いてもよい。
Figure 2021144493
Figure 2021144493
これを行列で表すと、以下の式(14)となり、{h}を未知数とする、上式(10)の連立一次方程式が得られる。
Figure 2021144493
そうすると、逆システム特定部311は、以下の式(15)で表される逆システムを特定することができる。
Figure 2021144493
次に、フィードフォワード補償部312は、時刻tにおいて制御対象2に入力すべき入力値uを計算する処理S3を実行する。ここでは、フィードフォワード補償部312は、時刻tの1ステップ未来の時刻である時刻t+1における目標値rt+1を達成するために、時刻tにおいて入力すべき入力値uを、逆システムに基づく式(16)により計算して推定する。
Figure 2021144493
ここで、{rt+1,r,rt−1,…,rt−n}は目標値発生装置4から取得した出力の目標値の時刻歴である。このように、フィードフォワード補償部312は、目標値の時刻歴の荷重和から、入力値uを求める。目標値とは、具体的には、工作機械における切削の計画軌道であったり、航空機のような移動体における計画軌道であったり、発電プラントにおける計画発電量であったり、制御対象2および補償器3にとって所与のものである。
なお、フィードフォワード補償部312による入力値uの推定処理(処理S3)は随時行われるが、同定部310によるモデルの定数(「^g」)の推定及び更新処理(処理S1)は所定周期(例えば、10分毎)に行われる。この所定周期は、制御対象のシステム特性に応じて任意に変更してもよい。これにより、補償器3は、制御対象2の特性の変動を、定期的に予測モデルに反映させることができる。
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る補償器3は、入力計測値u及び出力計測値yから、FIRフィルタを構成する第1係数gを同定する処理S1と、第1係数gに基づいてIIRフィルタを構成する第2係数hを求め、第1係数gの一部(g)及び第2係数hを含む制御対象2の逆システムを特定する処理S2と、逆システムに基づいて、出力の目標値rの時刻歴の荷重和から制御対象2に入力すべき入力値uを推定して補償する処理S3と、を実行する。
このようにすることで、補償器3は、カーネル型システム同定法を用いてFIRフィルタを構成する第1係数gを同定することにより、従来のシステムよりも少ないデータ点数で制御対象2のモデルの更新を行うことができる。また、本実施形態に係る補償器3は、従来のIIRフィルタで制御対象2のモデルを表すときに起きる数値計算が発散する課題を解決する。本実施形態に係る補償器3では、制御対象2のモデルを式(9)のように特別な形式のIIRフィルタで表すので、制御対象2の逆システムを式(8)のようにFIRフィルタで計算することを可能とした。これにより、目標値rの時刻歴の荷重和で入力値uを計算するので、数値計算の発散を回避することができる。したがって、補償器3は、少数のデータから制御対象2に入力すべき入力値uを精度よく計算することができる。
<第2の実施形態>
次に、本開示の第2の実施形態に係る制御システム1について、図2を参照しながら説明する。
第1の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
(制御システムの機能構成)
図2は、本開示の第2の実施形態に係る制御システムの機能構成を示す図である。
第1の実施形態に係る補償器3は、まず同定部310においてFIRフィルタによる予測モデルを導出し、次に逆システム特定部311においてIIRフィルタによる予測モデルに変換しており、二つの手順(処理S1〜処理S2)を要した。これに対し、本実施形態に係る補償器3は、図2に示すように、逆システム特定部311において、直接IIRフィルタによる予測モデルを導出することを特徴としている。このため、本実施形態に係る補償器3では、同定部310は省略してもよい。
(補償器の処理フロー)
本実施形態に係る補償器3の具体的な処理の流れについて説明する。本実施形態に係る補償器3は、第1の実施形態の処理S1〜S2に代えて、IIRフィルタを構成する第1係数g及び第2係数hを求め、制御対象2の逆システムを特定する処理S22を実行する。当該処理S22において、逆システム特定部311は、まず、制御対象2を以下のようにモデル化する。式(17)の無限インパルス応答フィルタは、式(17A)のように、分母多項式が1−h−1−h−2−h−3−…であり分子がg−1の伝達関数として表すこともできる。
Figure 2021144493
Figure 2021144493
第1の実施形態に係るFIRモデルの同定(処理S1)との違いは、出力計測値yの過去値を予測に使うところである。これに伴い、出力計測値yの過去値に対する第2係数{h,h,…,hn−1}が同定の対象となる。また、入力計測値uの係数はgだけとなる。これを反映すると、一次安定スプラインカーネルは以下の式(18)のようになる。
Figure 2021144493
また、一次安定スプラインカーネルKghの要素であるK及びKは、それぞれ式(19)、(20)のように表される。
Figure 2021144493
Figure 2021144493
更に、次の式(21)によるベクトル表現を導入すると、モデル定数[g,hの事後分布は、共分散が式(22)、平均が式(23)のガウス分布となる。
Figure 2021144493
Figure 2021144493
Figure 2021144493
「^g」及び「^h」(「h」にハット記号を付した表記に対応。以下同様。)の値を、それぞれIIRフィルタによる予測モデルの第1係数g及び第2係数hに用いる。即ち、フィードフォワード補償部312は、これら係数g及びhと、第1の実施形態の式(16)で表される逆システムとに基づいて、時刻tにおいて入力すべき入力値uを計算して推定する処理S3を実行する。
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る補償器3は、入力計測値u及び出力計測値yから、式(9)に示す特別の形式のIIRフィルタを構成する第1係数g及び第2係数hを求め、第1係数gの一部(g)及び第2係数hを含む制御対象2の逆システムを特定する処理S22を実行する。
このようにすることで、補償器3は、FIRフィルタによる予測モデルを導出する処理(同定部310の処理S1)を省略して、直接式(9)に示す特別の形式のIIRフィルタによる予測モデルを導出することができる。これにより、補償器3は、入力値uを求めるための一連の処理を簡略化することができる。
<第3の実施形態>
次に、本開示の第3の実施形態に係る制御システム1について、図3を参照しながら説明する。
上述の各実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
(制御システムの機能構成)
図3は、本開示の第3の実施形態に係る制御システムの機能構成を示す図である。
第1の実施形態及び第2の実施形態に係る補償器3は、制御対象2のフィードフォワード補償と並行して、リアルタイムに制御対象2のモデルを同定した。しかしながら、モデル同定のための演算をリアルタイムに行うことは、演算負荷がかかること、並行的に導出したフィードフォワード補償器(逆システム)の良否を予め検査することができない、等の理由により好ましくない。これを解決するため、本実施形態に係る補償器3のプロセッサ31は、図3に示すように、尤度推定部313、選出部314、フィードフォワード補償部312としての機能を発揮する。なお、フィードフォワード補償部312の機能は、一部、第1の実施形態と同様である。ここでは、上述の各実施形態と相違する機能についてのみ説明する。
尤度推定部313は、出力計測値yと、第1係数g及び入力計測値uから得られる出力の推定値「^y」とに基づいて、複数のモデル候補それぞれの尤度を推定する処理S31を実行する。
選出部314は、推定された尤度が最も大きいモデル候補を選出する処理S32を実行する。
フィードフォワード補償部312は、選出されたモデル候補に対応する逆システムに基づいて、出力の目標値rの時刻歴の荷重和から制御対象2に入力すべき入力値uを計算する処理S33を実行する。
また、本実施形態に係る補償器3は、さらに第2記憶装置301(記憶装置)を備えている。第2記憶装置301は、制御対象2の複数のモデル候補それぞれを構成する複数の第1係数gと、複数のモデル候補それぞれに対応する逆システムとを予め記憶する。
(補償器の処理フロー)
本実施形態に係る補償器3の具体的な処理の流れについて説明する。
まず、第2記憶装置301には、制御対象2の動特性が変動すると想定される範囲にわたって作成された複数のモデル候補と、複数のモデル候補それぞれに対する逆システム(フィードフォワード補償器)とをペアとしたものが、予め記憶されている。モデル候補とは、制御対象2の運転条件を変化させて作成された、FIRフィルタによる予測モデルの候補である。制御対象が発電プラントである場合、運転条件は、例えば発電プラントの出力である。この場合、発電プラントの出力(例えば出力100%、90%、80%、…)毎にモデル候補1、2、3、…が作成されている。また、このモデル候補それぞれについて、入力計測値u及び出力計測値yに基づいて算出された第1係数g及び第2係数hを含む逆システムが予め算出されている。このモデル候補1、2、3、…と逆システムとの組み合わせ{{g,h},{g,h},{g,h},・・・}は、第2記憶装置301に予め記憶される。なお、制御対象が工作機械の場合、運転条件は機械の移動速度、治具配置等であってもよい。
また、リアルタイムでは、尤度推定部313は、第2記憶装置301に記憶されたモデル候補の一つ一つについて、モデル候補の尤度を推定する処理S31を実行する。具体的には、まず尤度推定部313は、複数のモデル候補それぞれの第1係数gと、入力計測値uとを用いて、制御対象2の出力推定値「^y」を求める応答予測処理S31Aを実行する。例えば、図3に示すように、尤度推定部313は、第2記憶装置301に予め記憶されているモデル候補1の第1係数{g}と、第1記憶装置30に蓄積されている入力計測値uとを用いて、モデル候補1の出力推定値「^y」を推定する。このとき、尤度推定部313は、複数の時刻t−1、t−2、t−3、…それぞれに対応する出力推定値「^yt−1」、「^yt−2」、「^yt−3」、…を推定してもよい。同様に、尤度推定部313は、モデル候補2、3、…の出力推定値「^y」をそれぞれ推定する。
次に、尤度推定部313は、出力推定値「^y」と、第1記憶装置30に蓄積されている出力計測値yとに基づいて、モデル候補1の尤度L1を推定する尤度評価処理S31Bを実行する。尤度の推定は、例えば、計測雑音などを考慮し、出力推定値「^y」と出力計測値yとの差はガウス分布を仮定するなどして、簡単な演算で求められる。例えば、以下の式(24)を用いて尤度L1を推定する。同様に、尤度推定部313は、モデル候補2、3、…の尤度L2、L3、…をそれぞれ推定する。
Figure 2021144493
次に、選出部314は、モデル候補1、2、3…うち尤度が最も大きいもの、すなわち、出力推定値「^y」が実測値である出力計測値yに最も近いモデル候補を選出する処理S32を実行する。
次に、フィードフォワード補償部312は、選出部314により選出されたモデル候補とペアになる逆システムを用いて、入力値uを計算して推定する処理S33を実行する。入力値uを計算して推定する処理は、第1の実施形態の処理S3と同様である。
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る補償器3は、出力計測値yと、第2記憶装置301に予め記憶された逆システム及び入力計測値uから得られる出力の推定値「^y」とに基づいて、複数の逆システムそれぞれの尤度を推定する処理S31と、複数の逆システムのうち、推定された尤度が最も大きい逆システムを選出する処理S32と、選出された逆システムに基づいて、出力の目標値rの時刻歴の荷重和から制御対象2に入力すべき入力値uを計算する処理S33と、を実行する。
このようにすることで、補償器3は、リアルタイムに同定のための演算を行わないので、演算負荷を軽減することができる。また、補償器3は、予め逆システムを作成しておくので、逆システムの良否を予め検査することができる。
<第4の実施形態>
次に、本開示の第4の実施形態に係る制御システム1について、図4を参照しながら説明する。
上述の各実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
(制御システムの機能構成)
図4は、本開示の第4の実施形態に係る制御システムの機能構成を示す図である。
上述の第3の実施形態では、複数のモデル候補群から、尤度が最大となるモデル候補を1つだけ選出し、選出したモデル候補に対応する逆システムで制御対象の入力値uを計算した。この方式は、そのモデル候補の尤度が他のモデル候補の尤度に比べて圧倒的に高い場合には問題ないが、例えば、他を圧倒する尤度を有するモデル候補が二つあり、しかも二つの尤度が拮抗するような場合には二つの候補のどちら側を選出したとしても、制御対象2に対し誤差が生じる可能性がある。このような場合には、制御対象2は二つのモデル候補の中間の状態にあると想定し、中間の状態に対して有効な制御を行うことが望ましい。
このため、本実施形態に係る補償器3のプロセッサ31は、尤度推定部313、推定モデル導出部315、逆システム特定部311、フィードフォワード補償部312としての機能を発揮する。なお、尤度推定部313の機能は、第3の実施形態と同様である。また、逆システム特定部311及びフィードフォワード補償部312の機能は、一部、第1の実施形態と同様である。ここでは、上述の各実施形態と相違する機能についてのみ説明する。
推定モデル導出部315は、尤度推定部313により推定された尤度を重み係数として、モデル候補それぞれの第1係数gを荷重平均した第3係数γを導出する処理S42を実行する。
逆システム特定部311は、第3係数γに基づいてIIRフィルタを構成する第2係数hを求め、第3係数γの一部(γ)及び第2係数hを含む制御対象2の逆システムを特定する処理S44を実行する。
フィードフォワード補償部312は、逆システム特定部311により特定された逆システムに基づいて、出力の目標値rの時刻歴の荷重和から制御対象2に入力すべき入力値uを推定する処理S43を実行する。
また、本実施形態に係る第2記憶装置301は、制御対象2の複数のモデル候補それぞれを構成する複数の第1係数{{g},{g},{g},…}を予め記憶する。
(補償器の処理フロー)
まず、第2記憶装置301には、制御対象2の動特性が変動すると想定される範囲にわたって作成された複数のモデル候補が予め記憶されている。モデル候補は、第3の実施形態と同様に、制御対象2の運転条件を変化させて作成された、FIRフィルタによる予測モデルの候補である。記憶装置301には、この複数のモデル候補それぞれを構成する複数の第1係数{{g},{g},{g},…}が予め記憶されている。
また、リアルタイムでは、尤度推定部313は、第3の実施形態と同様に、複数のモデル候補1、2、3、…それぞれの尤度L1、L2、L3、…を推定する処理S31を実行する。
次に、推定モデル導出部315は、尤度推定部313により推定された尤度L1、L2、L3、…をモデル候補それぞれの重み係数として、これらモデル候補を加重平均したものを、推定モデル(第3係数γ)として導出する処理S42を実行する。なお、モデル候補は、FIRフィルタの形式でモデルを保持しているので、加重平均は単純にFIRフィルタの第1係数g一つ一つに対して行えばよい。したがって、第3係数γは、以下の式(25)により導出することができる。
Figure 2021144493
次に、逆システム特定部311は、第3係数γに基づいてIIRフィルタを構成する第2係数hを求め、第3係数γの一部(γ)及び第2係数hを含む制御対象2の逆システムを特定する処理S44を実行する。ここでは、第1の実施形態における処理S2と同様であり、処理S2の第1係数gを、第3係数γに置き換えればよい。
次に、フィードフォワード補償部312は、逆システム特定部311により特定された逆システムを用いて、入力値uを計算して推定する処理S43を実行する。入力値uを計算して推定する処理は、第1の実施形態の処理S3と同様であり、処理S3の第1係数gを第3係数γに置き換えればよい。
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る補償器3は、出力計測値yと、第1係数g及び入力計測値uから得られる出力の推定値「^y」とに基づいて、複数のモデル候補それぞれの尤度を推定する処理S31と、尤度を重み係数として、モデル候補それぞれの第1係数gを荷重平均した第3係数γを導出する処理S42と、第3係数γに基づいてIIRフィルタを構成する第2係数hを求め、第3係数γの一部(γ)及び第2係数hを含む制御対象2の逆システムを特定する処理S44と、逆システムに基づいて、出力の目標値rの時刻歴の荷重和から制御対象2に入力すべき入力値uを推定する処理S43と、を実行する。
このように、補償器3は、制御対象2をモデル候補の加重平均で表現するので、モデルの精度を改善させることができる。これにより、補償器3は、制御の精度を改善可能な入力値uを推定して制御対象2に提供することができる。また、補償器3は、制御対象2をモデル候補の加重平均で表現することにより、制御対象2の変動を少数のモデル候補で表現することが可能となる。
<第5の実施形態>
次に、本開示の第5の実施形態に係る制御システム1について、図5を参照しながら説明する。
上述の各実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
(制御システムの機能構成)
図5は、本開示の第5の実施形態に係る制御システムの機能構成を示す図である。
上述の第3及び第4の実施形態では、補償器3は、複数のモデル全てについて尤度を推定していた。しかしながら、全てのモデル候補を計算対象とすると、計算時間の点で不都合である。
このため、本実施形態に係る補償器3は、モデル候補選別部316において、複数のモデル候補のうち、計算対象とする一部のモデルを選別する処理S51を更に実行する。
(補償器の処理フロー)
ここでは、第4の実施形態に係る補償器3に、モデル候補選別部316の機能を追加した態様について説明する。なお、他の実施形態では、第3の実施形態に係る補償器3にモデル候補選別部316の機能を追加してもよい。
モデル候補選別部316は、制御対象2の状態を取得して、その状態を表すモデル候補のみを選別する処理S51を実行する。例えば、制御対象2が発電プラントであれば、当該発電プラントの電気出力(例えば、80%)を状態として取得し、複数のモデル候補からこの電気出力に対応するモデル候補(例えば、電気出力60%〜80%に対応するモデル候補)のみを選別する。また、制御対象2が工作機械であれば、モデル候補選別部316は、機械の移動速度、方向、配置などを制御対象2の状態として取得してもよい。
また、尤度推定部313は、モデル候補選別部316により選別されたモデル候補のみの尤度を推定する。なお、尤度を推定する処理の具体的な内容は、上述の第3及び第4の実施形態の処理S31と同様である。
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る補償器3は、複数のモデル候補のうち、制御対象の状態に対応するモデル候補を選別する処理S51を更に実行する。また、補償器3は、尤度を推定する処理S31において、選別されたモデル候補の尤度を推定する。
このようにすることで、補償器3は、尤度の推定を行うモデル候補の数を削減することができるので、演算負荷を低減させることができる。
<第6の実施形態>
上述の第1〜第5の実施形態は、様々な制御対象2を制御するためのシステムに適用可能である。例えば、本実用例1で説明するように、上述の各実施形態に係る制御システム1は、発電機の制御システムとして用いてもよい。なお、説明を簡易化するため、ここでは第1の実施形態に係る制御システム1を、発電機の制御システムとして使用する例について説明する。
電力の需要は消費者の都合で絶えず変動する。このため、電力系統においては、発電所に代表される電源は供給する電力を調整し、需要と供給をバランスさせている。具体的に、ガスタービン、蒸気タービン等から成る火力発電所では、ガスタービンが駆動する発電機の回転数を、例えば60Hzに相当する基準値に保つよう運転されている。電力系統にとって需要の変動は外乱であり、供給に対し需要が超過すると周波数が減少し、逆にそれが不足すると周波数が増加する性質がある。電力系統が整定状態にあれば、発電機の回転数は周波数に相当する値に完全に一致することから、火力発電所においては発電機の回転数を基準値に保つようにしている。具体的には、回転数が減少すればガスタービンの出力を上げ、回転数が増加すればガスタービンの出力を下げるように、燃料や蒸気流量を増減させて運転されている。しかしながら、ガスタービンの出力を増やしてから実際に発電量が増えるには遅れがあり、回転数の誤差が発生する。誤差は外乱が大きいほど顕著に表れる。この遅れは、ガスタービンと発電機の慣性によるもの、そして、発電機と電力系統のアドミッタンス(電気の流れ易さ)によるものの二つに起因する。このうち、後者は発電機や電力系統の負荷により値が変動する。変動が大きい場合には、電力系統に周波数変動が発生し、電力の品質が著しく劣化する。そこで、上述の各実施形態に係る補償器3を用いて周波数変動を低減するための制御を行う。
図6は、第6の実施形態に係る制御システムの機能構成を示す図である。図6には、本開示の少なくとも一つの実施形態に係る制御システムを発電機の制御システムに利用した例が示されている。
図6に示すように、本実施形態では、制御対象2はタービン発電機である。また、本開示に係る補償器3のうち、第1の実施形態に係る補償器3が用いられている。
前述の実施形態では、いずれも、目標値rは所与であった。しかし、目標値を所与とする方式では電力系統の周波数変動の抑制には役立たない。目標値の値は事前に定めたものであって、時々刻々の周波数の変動が反映されないからである。本実施形態は、その改善を図るものであり、時々刻々の周波数に基づいて目標値を更新し、周波数変動を抑制するものである。本実施形態は、発電機制御を対象に説明するが、外乱や特性変動の影響を受ける制御対象に一般的に適用可能である。
本実施形態では出力yはタービン発電機2の電気出力である。入力uはガバナ開度補正である。本実施形態に係る制御システム1は、第1の実施形態に、理想応答出力モデル5と目標基準値更新装置6そして参照モデル7を追加して構成される。理想応答出力モデル5は、制御対象2の出力yの基準値を出力するモデルである。タービン発電機2においては、基準出力yrefはタービン発電機2の回転誤差、すなわち周波数基準値に相当する回転数と実回転数との差、に比例係数を乗じて求めた電気出力調整量ΔPE0に定数項PE0を加えた値である。
目標基準値更新装置6は、特に、入力uの演算周期の2倍以上の長い周期で演算し目標基準値rを更新する。例えば、演算周期が5倍ならば、目標基準値はr0i(i=1,6,11,…)のように5倍の周期で値が更新される。目標基準値rの演算周期間の値は最近の更新値を代入する。例えばr05とr04,r03,r02にはr01の値を代入する。目標基準値rの更新の演算は、例えば、最も簡単には積分演算である。rの前回値に基準出力yrefと実際の出力yの差を加算することが最も基本的な実施例である。さらに、目標基準値更新装置6は、演算周期が長いことから、基準出力yrefと実際の出力yとの差に含まれる雑音成分を除去するための平滑フィルタを設けても良い。平滑フィルタは入力uの演算周期で計算する。
参照モデル7は、制御入力uの更新周期と目標基準値rの更新周期とを整合させる。上述のように、目標基準値rは、例えば5ステップごとに更新されるので階段状に変化する。そこで、参照モデルとして例えば一次遅れなどのフィルタを用いて、これを制御入力uの更新周期で演算し、目標基準値rが更新される。例えば5ステップの間に出力yが従うべき目標値rを生成する。目標基準値がr0i(i=1,6,11,…)のように5ステップごとに更新されるならば、参照モデルは、{r01,r01,r01,r01,r01,r06,r06,r06,r06,r06,r011,r011,r011,r011,r011,…}のように5ステップごとに値が更新される目標基準値rの時刻歴を入力し、{r,r,r,r,r,r,r,r,r,r10,r11,r12,r13,r14,r15,…}のように目標値rを毎ステップ更新して、フィードフォワード補償部312の入力とする。
補償器3が計算した制御入力uは加算処理S62にて既存のガバナ指令に加算され、タービン発電機2の制御に利用される。
このように、タービン発電機2の制御システム1に、第1の実施形態に係る補償器3を適用することにより、制御の精度が向上する。なお、このタービン発電機2の制御システム1に、第2〜第5の実施形態に係る補償器3を適用しても、同様の効果を得ることが可能である。さらに、本実施形態は、タービン発電機に限られるものではない。例えば、航空機や船舶が風や潮流の影響により計画の軌道から逸脱したときの補償や、ボイラの蒸気温度や圧力が設定値から逸脱したときの補償などにも適用できる。
<第7の実施形態>
また、上述の各実施形態に係る補償器3は、本実施形態で説明するように、通信ネットワーク、等化器に適用してもよい。ここでは、説明を簡易化するため、第1の実施形態に係る制御システム1を、通信ネットワークの等化器として使用する例について説明する。
通信ネットワークや電子回路において信号の通過してくる伝送路に遅れや特性変動がある場合、その信号波形に歪が生じ、データ判定の誤りが発生することがある。その場合、信号波形の整形(等化)を行うことで、データ判定誤りを減少させるために、等化器(または等化回路)が用いられる。ところが、伝送路である大気や電線などの媒体の特性は、通信を行うたびに異なる伝送経路をたどる可能性があり、時間変動する。また、この媒体の特性は、環境温度、性能劣化等の影響によっても時間変動する。このことから信号波形の等化器は、特性変動に追従することが必要である。
従来の技術では、補償フィルタと、適応フィルタとを有する等化器を用いて信号波形の等化を行っていた。補償フィルタは、等化対象である伝送路のインパルス応答波形をサンプリングして、無限インパルス応答フィルタ(IIRフィルタ)として構成される。しかしながら、従来の技術では、等化対象に事前にインパルスを与えてインパルス応答を取得する必要があり、その結果として、補償フィルタは、共用中は固定のままである。したがって、従来の技術では、時間変動を等化することができないため、補償フィルタの後段に適応フィルタを配置して、等化特性を調節していた。仮に、共用中にインパルスを与えてインパルス応答が計測できたとしても、IIRフィルタは係数の値により発散するものなので、計測したインパルス応答を直にIIRフィルタの係数に利用すると、信頼性が低下する可能性があった。
そこで、本実施形態では、等化回路に、従来の補償フィルタ及び適応フィルタに代えて、補償器3を適用した例について説明する。
図7は、本開示の第7の実施形態に係る制御システムの機能構成を示す図である。
例えば、等化回路2に第1の実施形態に係る補償器3、補償フィルタとして適用する。同定部310は、通信器8に入力されるテスト信号uと、それに対する応答(通信器8の出力信号)yから、等化対象のインパルス応答[^g]を同定する(処理S1)。次に、逆システム特定部311は、インパルス応答[^g]に基づいて逆システム及びそのインパルス応答{h}を特定する(処理S2)。フィードフォワード補償部312は、逆システムに基づいて、等化出力信号ut−1を計算して推定する(処理S3)。等化出力信号uは伝送路による歪みが補償されたものである。これにより、補償器3は、通信の品質を向上させることができる。
<ハードウェア構成>
図8は、本開示の少なくとも一つの実施形態に係る補償器及び目標値発生装置4のハードウェア構成の一例を示す図である。
図8に示すように、コンピュータ900は、プロセッサ901、メインメモリ902、ストレージ903、インタフェース904を備える。
上述の補償器3及び目標値発生装置4は、それぞれコンピュータ900に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ903に記憶されている。プロセッサ901は、プログラムをストレージ903から読み出してメインメモリ902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ901は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ902に確保する。
プログラムは、コンピュータ900に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージ903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ900は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ901によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
ストレージ903の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ903は、コンピュータ900のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース904または通信回線を介してコンピュータ900に接続される外部メディア910であってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムをメインメモリ902に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ903は、一時的でない有形の記憶媒体である。
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
<付記>
上述の実施形態に記載の補償器、制御システム、補償方法、及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
本開示の第1の態様によれば、補償器(3)は、プロセッサ(31)と、前記プロセッサに接続され、制御対象(2)への入力の計測値である入力計測値、及び前記制御対象からの出力の計測値である出力計測値を記憶する記憶装置(30)と、を備える。前記プロセッサは、前記入力計測値及び前記出力計測値から、有限インパルス応答フィルタ(FIRフィルタ)を構成する第1係数を同定する処理と、前記第1係数に基づいて自己回帰フィルタ(ARフィルタ)を構成する第2係数を求め、前記第1係数の一部及び前記第2係数を含む前記制御対象の逆システムを特定する処理と、前記逆システムに基づいて、前記出力の目標値の時刻歴の荷重和から前記制御対象に入力すべき入力値を推定する処理と、を実行する。
このようにすることで、補償器は、FIRフィルタを構成する第1係数を同定することにより、従来のシステムよりも少ないデータ点数でモデルの更新を行うことができる。また、従来のカーネル型システム同定法では、FIRフィルタの第1係数の全てを使用すると計算量が膨大となるため、第1係数全てを含む逆システムを算出することは困難であった。しかしながら、本実施形態に係る補償器は、使用する第1係数を一部のみに限定することにより、逆システムを容易に特定することができる。更に、従来のARMA型の伝達関数モデルでは、上述のように、値によっては数値計算が発散してしまう場合があった。しかしながら、本実施形態に係る補償器は、目標値の時刻歴の荷重和で入力値を計算するので、数値計算の発散を抑制することができる。したがって、補償器は、少数のデータから制御対象に入力すべき入力値を精度よく計算することができる。
本開示の第2の態様によれば、補償器(3)は、プロセッサ(31)と、前記プロセッサに接続され、制御対象への入力の計測値である入力計測値、及び前記制御対象からの出力の計測値である出力計測値を記憶する記憶装置(30)と、を備える。前記プロセッサは、前記入力計測値及び前記出力計測値から、自己回帰フィルタ(ARフィルタ)を構成する第1係数及び第2係数を求め、前記第1係数の一部及び前記第2係数を含む前記制御対象の逆システムを特定する処理と、前記逆システムに基づいて、前記出力の目標値の時刻歴の荷重和から前記制御対象に入力すべき入力値を計算する処理と、を実行する。
このようにすることで、補償器は、FIRフィルタによる予測モデルを導出する処理を省略して、直接ARフィルタによる予測モデルを導出することができる。これにより、補償器は、入力値を求めるための一連の処理を簡略化することができる。
本開示の第3の態様によれば、補償器(3)は、プロセッサ(31)と、前記プロセッサに接続され、制御対象への入力の計測値である入力計測値、及び前記制御対象からの出力の計測値である出力計測値と、前記制御対象の複数のモデル候補それぞれを構成する複数の第1係数と、複数の前記モデル候補それぞれに対応する逆システムとを予め記憶する記憶装置(30)と、を備える。前記プロセッサは、前記出力計測値と、前記第1係数及び前記入力計測値から得られる出力の推定値とに基づいて、複数の前記モデル候補それぞれの尤度を推定する処理と、推定された前記尤度が最も大きいモデル候補を選出する処理と、選出された前記モデル候補に対応する逆システムに基づいて、前記出力の目標値の時刻歴の荷重和から前記制御対象に入力すべき入力値を計算する処理と、を実行する。
このようにすることで、補償器は、リアルタイムに同定のための演算を行わないので、演算負荷を軽減することができる。また、補償器は、予め逆システムを作成しておくので、数値的に発散して逆システムが算出できなくなるリスクを低減させることができる。
本開示の第4の態様によれば、補償器(3)は、プロセッサ(31)と、前記プロセッサに接続され、制御対象への入力の計測値である入力計測値、及び前記制御対象からの出力の計測値である出力計測値と、前記制御対象の複数のモデル候補それぞれを構成する複数の第1係数とを予め記憶する記憶装置(30)と、を備える。前記プロセッサは、前記出力計測値と、前記第1係数及び前記入力計測値から得られる出力の推定値とに基づいて、複数の前記モデル候補それぞれの尤度を推定する処理と、前記尤度を重み係数として、前記モデル候補それぞれの第1係数を荷重平均した第3係数を導出する処理と、前記第3係数に基づいて自己回帰フィルタを構成する第2係数を求め、前記第3係数の一部及び前記第2係数を含む前記制御対象の逆システムを特定する処理と、前記逆システムに基づいて、前記出力の目標値の時刻歴の荷重和から前記制御対象に入力すべき入力値を推定する処理と、を実行する。
このように、補償器は、制御対象をモデル候補の加重平均で表現するので、モデルの精度を改善させることができる。これにより、補償器は、制御の精度を改善可能な入力値を推定して制御装置に提供することができる。また、補償器は、制御対象をモデル候補の加重平均で表現することにより、制御対象の変動を少数のモデル候補で表現することが可能となる。
本開示の第5の態様によれば、第3又は第4の態様に係る補償器は、複数の前記モデル候補のうち、前記制御対象の状態に対応するモデル候補を選別して、する処理を更に実行し、前記尤度を推定する処理において、選別された前記モデル候補の尤度を推定する。
このようにすることで、補償器は、尤度の推定を行うモデル候補の数を削減することができるので、演算負荷を低減させることができる。
本開示の第6の態様によれば、制御システム(1)は、第1から第5の何れか一の態様に係る補償器(3)と、前記補償器が推定した入力値に基づいて前記制御対象(2)を制御するための目標値を発生させる目標値発生装置(4)と、を備える。
本開示の第7の態様によれば、補償方法は、制御対象への入力の計測値である入力計測値、及び前記制御対象からの出力の計測値である出力計測値から、有限インパルス応答フィルタを構成する第1係数を同定する処理と、前記第1係数に基づいて自己回帰フィルタを構成する第2係数を求め、前記第1係数の一部及び前記第2係数を含む前記制御対象の逆システムを特定する処理と、前記逆システムに基づいて、前記出力の目標値の時刻歴の荷重和から前記制御対象に入力すべき入力値を推定する処理と、を有する。
本開示の第8の態様によれば、プログラムは、制御対象への入力の計測値である入力計測値、及び前記制御対象からの出力の計測値である出力計測値から、有限インパルス応答フィルタを構成する第1係数を同定する処理と、前記第1係数に基づいて自己回帰フィルタを構成する第2係数を求め、前記第1係数の一部及び前記第2係数を含む前記制御対象の逆システムを特定する処理と、前記逆システムに基づいて、前記出力の目標値の時刻歴の荷重和から前記制御対象に入力すべき入力値を推定する処理と、を補償器のコンピュータに実行させる。
1 制御システム
2 制御対象
3 補償器
30 第1記憶装置(記憶装置)
31 プロセッサ
301 第2記憶装置(記憶装置)
310 同定部
311 逆システム特定部
312 フィードフォワード補償部
313 尤度推定部
314 選出部
315 推定モデル導出部
316 モデル候補選別部
4 目標値発生装置
5 理想応答出力モデル
6 目標基準値更新装置
7 参照モデル
8 通信器
900 コンピュータ

Claims (8)

  1. プロセッサと、
    前記プロセッサに接続され、制御対象への入力の計測値である入力計測値、及び前記制御対象からの出力の計測値である出力計測値を記憶する記憶装置と、
    を備え、
    前記プロセッサは、
    前記入力計測値及び前記出力計測値から、有限インパルス応答フィルタを構成する第1係数を同定する処理と、
    前記第1係数に基づいて無限インパルス応答フィルタを構成する第2係数を求め、前記第1係数の一部及び前記第2係数を含み、前記制御対象の前記出力の目標値から前記入力の目標値を特定するシステムである逆システムを特定する処理と、
    前記逆システムに基づいて、時刻に応じて設定された前記出力の目標値の荷重和から前記制御対象に入力すべき入力値を補償する処理と、
    を実行する補償器。
  2. プロセッサと、
    前記プロセッサに接続され、制御対象への入力の計測値である入力計測値、及び前記制御対象からの出力の計測値である出力計測値を記憶する記憶装置と、
    を備え、
    前記プロセッサは、
    前記入力計測値及び前記出力計測値から、無限インパルス応答フィルタを構成する第2係数を求め、前記第2係数を含み、前記制御対象の前記出力の目標値から前記入力の目標値を特定するシステムである逆システムを特定する処理と、
    前記逆システムに基づいて、時刻に応じて設定された前記出力の目標値の荷重和から前記制御対象に入力すべき入力値を計算する処理と、
    を実行する補償器。
  3. プロセッサと、
    前記プロセッサに接続され、制御対象への入力の計測値である入力計測値、及び前記制御対象からの出力の計測値である出力計測値と、前記制御対象の複数のモデル候補それぞれを構成する複数の第1係数と、複数の前記モデル候補それぞれに対応し、前記制御対象の前記出力の目標値から前記入力の目標値を特定するシステムである逆システムとを予め記憶する記憶装置と、
    を備え、
    前記プロセッサは、
    前記出力計測値と、前記第1係数及び前記入力計測値から得られる出力の推定値とに基づいて、複数の前記モデル候補それぞれの尤度を推定する処理と、
    推定された前記尤度が最も大きいモデル候補を選出する処理と、
    選出された前記モデル候補に対応する逆システムに基づいて、時刻に応じて設定された前記出力の目標値の荷重和から前記制御対象に入力すべき入力値を計算する処理と、
    を実行する補償器。
  4. プロセッサと、
    前記プロセッサに接続され、制御対象への入力の計測値である入力計測値、及び前記制御対象からの出力の計測値である出力計測値と、前記制御対象の複数のモデル候補それぞれを構成する複数の第1係数とを予め記憶する記憶装置と、
    を備え、
    前記プロセッサは、
    前記出力計測値と、前記第1係数及び前記入力計測値から得られる出力の推定値とに基づいて、複数の前記モデル候補それぞれの尤度を推定する処理と、
    前記尤度を重み係数として、前記モデル候補それぞれの第1係数を荷重平均した第3係数を導出する処理と、
    前記第3係数に基づいて無限インパルス応答フィルタを構成する第2係数を求め、前記第3係数の一部及び前記第2係数を含み、前記制御対象の前記出力の目標値から前記入力の目標値を特定するシステムである逆システムを特定する処理と、
    前記逆システムに基づいて、時刻に応じて設定された前記出力の目標値の荷重和から前記制御対象に入力すべき入力値を推定する処理と、
    を実行する補償器。
  5. 複数の前記モデル候補のうち、前記制御対象の状態に対応するモデル候補を選別して、する処理を更に実行し、
    前記尤度を推定する処理において、選別された前記モデル候補の尤度を推定する、
    請求項3又は4に記載の補償器。
  6. 請求項1から5の何れか一項に記載の補償器と、
    前記補償器が推定した入力値に基づいて前記制御対象を制御するための目標値を発生させる目標値発生装置と、
    を備える制御システム。
  7. 制御対象への入力の計測値である入力計測値、及び前記制御対象からの出力の計測値である出力計測値から、有限インパルス応答フィルタを構成する第1係数を同定する処理と、
    前記第1係数に基づいて無限インパルス応答フィルタを構成する第2係数を求め、前記第1係数の一部及び前記第2係数を含み、前記制御対象の前記出力の目標値から前記入力の目標値を特定するシステムである逆システムを特定する処理と、
    前記逆システムに基づいて、時刻に応じて設定された前記出力の目標値の荷重和から前記制御対象に入力すべき入力値を推定する処理と、
    を有する補償方法。
  8. 制御対象への入力の計測値である入力計測値、及び前記制御対象からの出力の計測値である出力計測値から、有限インパルス応答フィルタを構成する第1係数を同定する処理と、
    前記第1係数に基づいて無限インパルス応答フィルタを構成する第2係数を求め、前記第1係数の一部及び前記第2係数を含み、前記制御対象の前記出力の目標値から前記入力の目標値を特定するシステムである逆システムを特定する処理と、
    前記逆システムに基づいて、時刻に応じて設定された前記出力の目標値の荷重和から前記制御対象に入力すべき入力値を推定する処理と、
    を補償器のコンピュータに実行させるプログラム。
JP2020043024A 2020-03-12 2020-03-12 補償器、制御システム、補償方法、及びプログラム Withdrawn JP2021144493A (ja)

Priority Applications (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020043024A JP2021144493A (ja) 2020-03-12 2020-03-12 補償器、制御システム、補償方法、及びプログラム
DE102021200481.4A DE102021200481A1 (de) 2020-03-12 2021-01-20 Kompensator, Regelsystem, Kompensationsverfahren und Programm
CN202110109739.6A CN113391545A (zh) 2020-03-12 2021-01-27 补偿器、控制系统、补偿方法以及程序
US17/162,485 US20210286324A1 (en) 2020-03-12 2021-01-29 Compensator, control system, compensation method, and program

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020043024A JP2021144493A (ja) 2020-03-12 2020-03-12 補償器、制御システム、補償方法、及びプログラム

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021144493A true JP2021144493A (ja) 2021-09-24

Family

ID=77457674

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020043024A Withdrawn JP2021144493A (ja) 2020-03-12 2020-03-12 補償器、制御システム、補償方法、及びプログラム

Country Status (4)

Country Link
US (1) US20210286324A1 (ja)
JP (1) JP2021144493A (ja)
CN (1) CN113391545A (ja)
DE (1) DE102021200481A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7430127B2 (ja) 2020-09-02 2024-02-09 三菱重工業株式会社 予測装置、予測方法、及びプログラム

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE102020213439A1 (de) * 2020-10-26 2022-04-28 Robert Bosch Gesellschaft mit beschränkter Haftung Verfahren und Vorrichtung zum kontinuierlichen Bestimmen eines Gütemaßes

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0554442B1 (en) * 1991-08-26 1997-07-23 The Foxboro Company Multivariable adaptive feedforward controller
SE0102885D0 (en) * 2001-08-28 2001-08-28 Ericsson Telefon Ab L M Calibration of an adaptive signal conditioning systern
DE102008001999A1 (de) * 2007-11-14 2009-05-20 Robert Bosch Gmbh Offsetkompensationsschaltung und damit ausgestatteter Drehratensensor
JP2010086395A (ja) 2008-10-01 2010-04-15 Yaskawa Electric Corp 2自由度デジタル制御装置
JP6468342B1 (ja) * 2017-12-14 2019-02-13 オムロン株式会社 電力変換装置
CN108287466B (zh) * 2018-01-16 2020-10-09 匙慧(北京)科技有限公司 一种对一类高阶系统的改进自抗扰控制方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7430127B2 (ja) 2020-09-02 2024-02-09 三菱重工業株式会社 予測装置、予測方法、及びプログラム

Also Published As

Publication number Publication date
DE102021200481A1 (de) 2021-09-16
CN113391545A (zh) 2021-09-14
US20210286324A1 (en) 2021-09-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5297489B2 (ja) プロセス制御システムにおける適応推定モデル
JP6008898B2 (ja) プロセス制御システムにおけるオンライン適応モデル予測制御
EP1023646B1 (en) Optimal auto-tuner for use in a process control network
JP5015416B2 (ja) 状態に基づいて適応するフィードバック/フィードフォワードpidコントローラ
EP0788626B1 (en) A variable horizon predictor for controlling dead time dominant processes, multivariable interactive processes, and processes with time variant dynamics
JP2021144493A (ja) 補償器、制御システム、補償方法、及びプログラム
JP2009181392A (ja) モデル予測制御方法およびモデル予測制御装置
JP6380552B2 (ja) 制御装置、そのプログラム、プラント制御方法
JP7478019B2 (ja) 予測装置、予測システム、予測方法、及びプログラム
JP2022120501A (ja) 制御装置、制御方法及びプログラム
JP2022097222A (ja) 制御装置、制御方法及びプログラム
JP7014330B1 (ja) 制御装置、制御方法、及びプログラム
CN114567288A (zh) 基于变分贝叶斯的分布协同非线性系统状态估计方法
CN114844417A (zh) 一种永磁同步电机模型预测的速度控制方法及系统
JP5321165B2 (ja) フィードフォワード量推定装置および制御装置
Ruusu et al. Sliding mode SISO control of model parameters for implicit dynamic feedback estimation of industrial tracking simulation systems
Garcia-Gabin et al. Application of multivariable GPC to a four tank process with unstable transmission zeros
JP7430127B2 (ja) 予測装置、予測方法、及びプログラム
JP2631225B2 (ja) 演算回路付モデル規範形適応先行制御装置
CN111340647A (zh) 一种配电网数据平差方法及系统
Yuan et al. A robust adaptive controller for Hammerstein nonlinear systems
JP7409343B2 (ja) コントローラ、制御方法及び制御プログラム
Al-Duwaish et al. A robust controller for non-linear MIMO systems using radial basis function neural network
Stoica et al. Off-line robustification of model predictive control for uncertain multivariable systems
JP3702146B2 (ja) 品質制御装置および品質制御方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220926

A761 Written withdrawal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761

Effective date: 20230602