以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。なお、以下では、この発明の特徴的な構成について説明し、無線通信を行う際の従来と同様の仕組みについては説明を簡略にしたり省略したりする。
図1は、この発明の実施の形態における無線通信システム100の概略構成を示す図である。図1では、無線通信システム100の概略構成を示す(図1の上側)とともに、無線通信の送受信局のそれぞれに配置される無線通信装置101の概略構成の機能ブロックを示す(図1の下側)。
無線通信システム100を構成する無線通信の送受信局のそれぞれに、無線通信装置101およびアンテナ102が配置される(図1の上側参照)。無線通信装置101同士は、アンテナ102を介して無線回線103によって相互に接続される。
まず、この発明の実施の形態において無線受信装置1が適用されるベースの構成としての無線通信装置101の概略構成を説明する。
無線通信装置101は、送信用として、変調部120および送信部130を備えるとともに、受信用として、受信部150および復調部160を備え、さらに、インターフェース部110を備える(図1の下側参照)。
ここで、無線通信装置101は、送信用の機序と受信用の機序とを備えて送受信を行う装置であるところ、以下の説明では、送信用の機序を用いて送信に纏わる処理を行う場合の無線通信装置101のことを「送信側」と称し、受信用の機序を用いて受信に纏わる処理を行う場合の無線通信装置101のことを「受信側」と称する。
インターフェース部110は、主として、データ回線終端装置111(データ通信装置やデータ回線装置と呼ばれる機器を含む)を備える。インターフェース部110は、通信対象の伝送データの入力を受け、前記伝送データを、データ回線終端装置111を介して、変調部120へと出力する。
変調部120は、インターフェース部110から出力される伝送データの入力を受け、前記伝送データにフレーム同期信号を挿入して無線フレーム(送信信号)を生成し、さらに、前記無線フレーム(送信信号)に所定の周波数の搬送波信号を重畳させてデジタル変調して出力する。変調部120は、前記無線フレーム(送信信号)に、例えば400MHz程度の周波数の搬送波信号を重畳させてデジタル変調を行う。無線通信システム100における変調方式として、直角位相振幅変調が用いられる。なお、直角位相振幅変調は「QAM」とも表記される(QAM:Quadrature Amplitude Modulation の略)。
この発明では、無線通信装置101は、瞬時の伝搬路環境に応じて、無線フレームの変調方式のパラメータ、具体的には直角位相振幅変調の変調多値数の切り替えを行う(延いては、伝送容量を変更する)適応変調方式によって通信を行う。適応変調方式の具体的な仕法、言い換えると、瞬時の伝搬路環境に応じて変調多値数を切り替える仕法は、公知の手法が存在し、また、この発明では特定の手法には限定されないので、ここでは詳細の説明は省略する。
無線通信装置101は、例えば、フェージングが発生していないなどで伝搬路の状態が良好であるときには変調多値数を大きくして伝送容量を拡大させ、また、フェージングの影響があるものの大きくないなどで伝搬路の状態が中庸である(即ち、特別良好でもないものの特別不良でもない)ときには変調多値数を中位にして伝送容量と伝送品質とのバランスをとり、さらに、フェージングの影響が大きいなどで伝搬路の状態が不良であるときには変調多値数を小さくして伝送容量を縮小させる。
無線通信装置101は、無線フレームの変調方式として、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、伝搬路の状態が良好であるときには変調多値数が大きい変調方式として1024QAMから4096QAMまでの範囲のうちのいずれかを用い、また、伝搬路の状態が中庸であるときには変調多値数が中位の変調方式として128QAMから512QAMまでの範囲のうちのいずれかを用い、さらに、伝搬路の状態が不良であるときには変調多値数が小さい変調方式として4QAMから64QAMまでの範囲のうちのいずれかを用いる。なお、4QAMは「QPSK」とも表記される(QPSK:Quadrature Phase Shift Keying の略)。
送信部130は、変調部120から出力されるデジタル変調された無線フレーム(送信信号)の入力を受け、前記デジタル変調された無線フレーム(送信信号)を、D/A変換器でデジタル−アナログ変換した上で、局部発振器および混合器によって前記所定の周波数(例えば、400MHz程度)よりも高周波の信号(送信波信号)に変換する。送信部130は、前記デジタル変調された無線フレーム(送信信号)を、周波数が例えば10GHz程度の信号に変換する。
送信部130は、また、前記周波数変換した無線フレーム(送信波信号)を、所定の周波数帯域の信号のみを通過させる送信フィルタを通過させるとともにパワーアンプで増幅した上で出力する。
そして、変調部120においてデジタル変調されるとともに送信部130において周波数変換された無線フレーム(送信波信号)は、送信部130から分波器140を介してアンテナ102へと導かれ、アンテナ102から無線回線103を介して他方の(言い換えると、この通信では受信側になる)無線通信装置101のアンテナ102へと、電波として送信される。
また、他方の(言い換えると、この通信では送信側になる)無線通信装置101のアンテナ102から無線回線103を介して無線フレームが当該の(言い換えると、この通信では受信側になる)無線通信装置101のアンテナ102へと電波として送信されると、アンテナ102は、受信した無線フレームを電気信号(受信波信号)へと変換して出力する。
アンテナ102から出力される、電気信号に変換された無線フレーム(受信波信号)は、分波器140を介して受信部150へと導かれる。
受信部150は、無線フレーム(受信波信号)の入力を受け、前記無線フレーム(受信波信号)を、所定の周波数帯域の信号のみを通過させる受信フィルタを通過させるとともにプリアンプで増幅した上で、局部発振器および混合器によって前記高周波(例えば、10GHz程度)よりも低い周波数(例えば、400MHz程度)の信号に変換する。
受信部150は、さらに、前記周波数変換した信号をパワーアンプで増幅するとともにA/D変換器でアナログ−デジタル変換して、デジタル信号に変換された無線フレーム(受信信号)を出力する。
なお、受信部150では無線フレーム(受信波信号)に対して直交検波処理が施されて位相が相互に直交する同相成分(Ich)のベースバンド信号と直交成分(Qch)のベースバンド信号とが生成されるが、以降の説明では同相成分と直交成分とについて各々別々に着目する必要がある場合を除いて同相成分と直交成分とを特に区別することなくどちらにも共通する内容として説明し、また、図面では同相成分の信号と直交成分の信号とを1つの信号線で表す。
復調部160は、受信部150から出力される無線フレーム(受信信号)の入力を受け、前記無線フレーム(受信信号)を復調するとともに、前記復調した無線フレーム(受信信号)に挿入されているフレーム同期信号に基づいて無線フレーム(受信信号)から伝送データを取り出し、取り出した伝送データをインターフェース部110へと出力する。
上記の無線通信システム100では、上述のとおり、無線通信装置101は、瞬時の伝搬路環境に応じて、無線フレームの変調方式のパラメータ、具体的には直角位相振幅変調の変調多値数(例えば、4QAM(QPSK)〜4096QAM)を切り替えながら無線通信を行う。しかしながら、従来の適応変調制御方法は、伝搬路環境を如何に正確に推定して変調方式を適切に切り替えるかに主眼が置かれており、伝搬路環境や無線装置の不完全性(具体的には、非線形歪、位相ノイズ、熱雑音)を考慮して変調方式に応じたキャリア再生のループの最適動作を選択する、といった対応はしていない。このため、従来の適応変調制御方法では、変調多値数が低多値の変調方式が選択されている場合と変調多値数が高多値の変調方式が選択されている場合とで最適なパラメータの選択を行ってキャリア再生のループを適切に動作させることはできない、という問題がある。
そこで、この発明に係る無線受信装置1は、送受信される無線フレームについての変調方式の変調多値数の程度に応じてキャリア再生に纏わる動作を制御して変調方式に応じたキャリア再生に纏わる処理の最適動作を選択するための仕組みを備えるようにしている。
(実施の形態1)
図2は、この発明の実施の形態1に係る無線受信装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。なお、図2は、上記で説明した無線通信システム100における無線通信装置101のような構成(図1参照)をベースとしつつ、この発明の特徴的な構成を分かり易く示すことを考慮して、無線通信装置101の構成のうちの一部を省略している。図2は、具体的には、上記で説明した無線通信装置101の受信部150とインターフェース部110との間の復調部160に相当する構成に対して適用される特徴的な構成を、特に受信に纏わる機序としての無線受信装置1として示している。
ここで、この発明では、上述のとおり、無線通信装置101は、瞬時の伝搬路環境に応じて、無線フレームの変調方式のパラメータ、具体的には直角位相振幅変調の変調多値数(例えば、4QAM(QPSK)〜4096QAM)を切り替えながら無線通信を行う。そして、当該の通信において送信側となる無線通信装置101は、当該の通信において受信側となる無線通信装置101に対して、送信する無線フレームの変調方式のパラメータ、具体的には直角位相振幅変調の変調多値数を通知するための制御情報を送信する。
そして、この実施の形態に係る無線受信装置1は、受信した無線フレームについての変調方式の変調多値数の程度に関する変調多値数情報を出力する変調方式受信部2と、無線フレームの位相を回転する位相回転器11へと位相回転制御信号を出力する数値制御発振器13および数値制御発振器13へと位相誤差信号を出力するループフィルタ12を含むキャリア再生部10と、ループフィルタ12へと供給するパラメータを切り替え可能なキャリア再生制御スイッチ20と、を有し、キャリア再生制御スイッチ20が、変調方式受信部2から出力される変調多値数情報に基づいてループフィルタ12へと供給するパラメータを切り替える、ようにしている。
この実施の形態に係る無線受信装置1は、また、上記パラメータが、キャリア再生部10を含んで構成されるキャリア再生ループとしてのPLLのループ帯域幅を示すループフィルタ係数である、ようにしている。
この実施の形態に係る無線受信装置1は、デジタル無線伝送において搬送波(キャリア)の再生処理を行う回路であり、主として、変調方式受信部2と、位相誤差検出部7と、キャリア再生部10と、キャリア再生制御スイッチ20とを含む機序として構成される。
キャリア再生部10は、位相回転器11、ループフィルタ12、および数値制御発振器13を備える。無線受信装置1において、位相回転器11、シンボル判定部4、誤差計算部5、復号部6、位相誤差検出部7、ループフィルタ12、および数値制御発振器13は、PLL(Phase Locked Loop の略)であるキャリア再生ループを構成する。
位相回転器11は、受信部150から出力されるアナログ−デジタル変換された無線フレーム(受信信号)の位相を回転する機能を備える。位相回転器11は、具体的には、前記無線フレーム(受信信号)に対して、数値制御発振器13から出力される位相回転制御信号としての正弦波や余弦波に基づいて位相回転を行うことによって位相誤差補償を行い、位相誤差補償が施された信号を生成して出力する。
ループフィルタ12は、位相誤差検出部7から出力される位相誤差信号のうちの所定の周波数成分を、所定のループ帯域幅に応じて除去するフィルタである。ループフィルタ12は、具体的には、前記位相誤差信号の入力を受けるとともに、キャリア再生制御スイッチ20から出力されるループフィルタ係数の入力を受け、前記位相誤差信号のうちの所定の周波数成分を前記ループフィルタ係数に従って取り除き、所定の周波数成分除去後の位相誤差信号を数値制御発振器13の周波数制御端子に対して出力する。
数値制御発振器13(「NCO(Numerical Controlled Oscillator の略)」とも呼ばれる)は、ループフィルタ12から出力される所定の周波数成分除去後の位相誤差信号に基づいて、位相回転による位相誤差補償を行うための位相回転制御信号を生成する機能を備える。数値制御発振器13は、具体的には、ループフィルタ12から出力される所定の周波数成分除去後の位相誤差信号に基づいて逆位相の正弦波信号や余弦波信号を生成し、生成した位相回転制御信号としての正弦波信号や余弦波信号を位相回転器11へと出力する。位相回転器11による位相回転は、数値制御発振器13から出力される前記位相回転制御信号によって制御される。
変調方式受信部2は、送信側の無線通信装置101から送信される無線フレームについての変調方式のパラメータ、具体的には直角位相振幅変調の変調多値数を通知するための制御情報を、送信側の無線通信装置101から受信する。
変調方式受信部2は、上記の制御情報に基づいて、受信した無線フレームの変調方式の変調多値数が低多値、中多値、および高多値のうちのいずれであるのかを、所定の区分・振り分けに従って判別する。そして、変調方式受信部2は、キャリア再生制御スイッチ20に対して、無線フレームの変調方式の変調多値数が低多値であるときは低多値変調信号を出力し、無線フレームの変調方式の変調多値数が中多値であるときは中多値変調信号を出力し、また、無線フレームの変調方式の変調多値数が高多値であるときは高多値変調信号を出力する。
変調方式受信部2から出力される、受信した無線フレームについての変調方式の変調多値数の程度に関する情報のことを「変調多値数情報」と呼ぶ。変調多値数情報は、ここでは、具体的には低多値変調信号、中多値変調信号、および高多値変調信号のことである。
なお、変調方式受信部2が、送信側の無線通信装置101から送信される無線フレームの変調方式、具体的には直角位相振幅変調の変調多値数を自動的に判別するようにしてもよい。この場合、変調方式受信部2は、送信側の無線通信装置101から送信される無線フレームの供給を受け、前記無線フレームの変調方式を識別するとともに、識別した変調方式の変調多値数が低多値、中多値、および高多値のうちのいずれであるのかを、所定の区分・振り分けに従って判別する。そして、変調方式受信部2は、キャリア再生制御スイッチ20に対して、無線フレームの変調方式の変調多値数が低多値であると識別・判別したときは低多値変調信号を出力し、無線フレームの変調方式の変調多値数が中多値であると識別・判別したときは中多値変調信号を出力し、また、無線フレームの変調方式の変調多値数が高多値であると識別・判別したときは高多値変調信号を出力する。
シンボル判定部4は、キャリア再生部10の位相回転器11から出力される、位相回転器11によって位相が回転されて位相誤差補償が施された信号について、シンボル判定を行う。
誤差計算部5は、シンボル判定部4から出力される信号について、理想シンボルと受信シンボルとの間の位相誤差を計算する。誤差計算部5は、具体的には減算器によって構成される。
復号部6は、シンボル判定部4から出力される信号の入力を受け、前記信号に対して誤り訂正復号処理を施し、復号処理によって生成した伝送データをインターフェース部110へと出力する。
位相誤差検出部7は、誤差計算部5と協働して、理想シンボルと受信シンボルとの間の位相の誤差成分を検出し、検出した位相の誤差成分に対応する位相誤差信号(具体的には、位相誤差を電圧値で表した信号)をループフィルタ12に対して出力する。
キャリア再生制御スイッチ20は、狭帯域係数出力部21、中帯域係数出力部22、および広帯域係数出力部23の各々から出力される信号のうちのいずれかを選択してループフィルタ12へと供給する機能を備える。キャリア再生制御スイッチ20は、変調方式受信部2から出力される変調多値数情報に従って狭帯域係数出力部21、中帯域係数出力部22、および広帯域係数出力部23のうちのいずれかとの接続を切り替える。
狭帯域係数出力部21には、無線フレームの変調方式の変調多値数が低多値である場合に用いられることにより、キャリア再生部10を適切に動作させ、延いてはキャリア再生のループを適切に動作させてキャリア再生に纏わる処理を安定に行うことを可能とするようなキャリア再生/PLLのループ帯域幅を示すループフィルタ係数(「狭帯域係数」と呼ぶ)が記憶されている。
中帯域係数出力部22には、無線フレームの変調方式の変調多値数が中多値である場合に用いられることにより、キャリア再生部10を適切に動作させ、延いてはキャリア再生のループを適切に動作させてキャリア再生に纏わる処理を安定に行うことを可能とするようなキャリア再生/PLLのループ帯域幅を示すループフィルタ係数(「中帯域係数」と呼ぶ)が記憶されている。
上記の「変調多値数が中多値である」とは、上記の「変調多値数が低多値である」よりも変調方式の変調多値数が大きいことをいう。そして、中帯域係数は、キャリア再生/PLLのループ帯域幅を示すループフィルタ係数の値が狭帯域係数よりも大きく(別言すると、ループ帯域が大きく)なるように設定される。したがって、狭帯域係数は、狭帯域のループ帯域幅を示すループフィルタ係数として設定され、また、中帯域係数は、中帯域のループ帯域幅を示すループフィルタ係数として設定される。
広帯域係数出力部23には、無線フレームの変調方式の変調多値数が高多値である場合に用いられることにより、キャリア再生部10を適切に動作させ、延いてはキャリア再生のループを適切に動作させてキャリア再生に纏わる処理を安定に行うことを可能とするようなキャリア再生/PLLのループ帯域幅を示すループフィルタ係数(「広帯域係数」と呼ぶ)が記憶されている。
上記の「変調多値数が高多値である」とは、上記の「変調多値数が中多値である」よりも変調方式の変調多値数が大きいことをいう。そして、広帯域係数は、キャリア再生/PLLのループ帯域幅を示すループフィルタ係数の値が中帯域係数よりも大きく(別言すると、ループ帯域が大きく)なるように設定される。したがって、広帯域係数は、広帯域のループ帯域幅を示すループフィルタ係数として設定される。
キャリア再生制御スイッチ20は、変調方式受信部2から出力される変調多値数情報として低多値変調信号が入力されると、狭帯域係数出力部21と接続して、キャリア再生部10のループフィルタ12に対して、ループフィルタ12へと供給するパラメータとして狭帯域係数を供給する。
この場合、ループフィルタ12は、キャリア再生制御スイッチ20を介して狭帯域係数出力部21から供給される狭帯域係数を用いて、位相誤差検出部7から出力される位相誤差信号のうちの所定の周波数成分を取り除き、所定の周波数成分除去後の位相誤差信号を数値制御発振器13の周波数制御端子に対して出力する。そして、数値制御発振器13は、ループフィルタ12から出力される所定の周波数成分除去後の位相誤差信号に基づいて逆位相の正弦波信号や余弦波信号を生成して位相回転制御信号として出力し、位相回転器11は、受信部150から出力されるアナログ−デジタル変換された無線フレーム(受信信号)に対して、数値制御発振器13から出力される前記位相回転制御信号によって制御される位相回転を行う。つまり、キャリア再生部10は、狭帯域係数出力部21から供給される狭帯域係数を用いて搬送波(キャリア)の再生処理を行う。
キャリア再生制御スイッチ20は、また、変調方式受信部2から出力される変調多値数情報として中多値変調信号が入力されると、中帯域係数出力部22と接続して、キャリア再生部10のループフィルタ12に対して、ループフィルタ12へと供給するパラメータとして中帯域係数を供給する。
この場合、ループフィルタ12は、キャリア再生制御スイッチ20を介して中帯域係数出力部22から供給される中帯域係数を用いて、位相誤差検出部7から出力される位相誤差信号のうちの所定の周波数成分を取り除き、所定の周波数成分除去後の位相誤差信号を数値制御発振器13の周波数制御端子に対して出力する。そして、数値制御発振器13は、ループフィルタ12から出力される所定の周波数成分除去後の位相誤差信号に基づいて逆位相の正弦波信号や余弦波信号を生成して位相回転制御信号として出力し、位相回転器11は、受信部150から出力されるアナログ−デジタル変換された無線フレーム(受信信号)に対して、数値制御発振器13から出力される前記位相回転制御信号によって制御される位相回転を行う。つまり、キャリア再生部10は、中帯域係数出力部22から供給される中帯域係数を用いて搬送波(キャリア)の再生処理を行う。
キャリア再生制御スイッチ20は、さらに、変調方式受信部2から出力される変調多値数情報として高多値変調信号が入力されると、広帯域係数出力部23と接続して、キャリア再生部10のループフィルタ12に対して、ループフィルタ12へと供給するパラメータとして広帯域係数を供給する。
この場合、ループフィルタ12は、キャリア再生制御スイッチ20を介して広帯域係数出力部23から供給される広帯域係数を用いて、位相誤差検出部7から出力される位相誤差信号のうちの所定の周波数成分を取り除き、所定の周波数成分除去後の位相誤差信号を数値制御発振器13の周波数制御端子に対して出力する。そして、数値制御発振器13は、ループフィルタ12から出力される所定の周波数成分除去後の位相誤差信号に基づいて逆位相の正弦波信号や余弦波信号を生成して位相回転制御信号として出力し、位相回転器11は、受信部150から出力されるアナログ−デジタル変換された無線フレーム(受信信号)に対して、数値制御発振器13から出力される前記位相回転制御信号によって制御される位相回転を行う。つまり、キャリア再生部10は、広帯域係数出力部23から供給される広帯域係数を用いて搬送波(キャリア)の再生処理を行う。
ここで、無線フレームの変調方式として例えば4QAM(QPSK)から4096QAMまでの範囲が想定される場合に、各変調方式の変調多値数が低多値、中多値、および高多値のうちのいずれであるのかは、特定の区分・振り分けには限定されないとともに、変調方式の変調多値数の程度である低多値、中多値、および高多値のそれぞれと対応づけられる、搬送波(キャリア)の再生処理において用いられるキャリア再生/PLLのループ帯域幅を示すループフィルタ係数(即ち、狭帯域係数、中帯域係数、および広帯域係数)は特定の値には限定されない。
変調方式の変調多値数の区分・振り分けは、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、下記のように設定されてもよい。
低多値:4QAM(QPSK)〜64QAM
中多値:128QAM〜512QAM
高多値:1024QAM〜4096QAM
なお、狭帯域係数、中帯域係数、および広帯域係数の各々としての、搬送波(キャリア)の再生処理において用いられるキャリア再生/PLLのループ帯域幅は、それぞれ、特定の値に限定されるものではなく、無線通信装置101(特に、キャリア再生部10)の特性や所望の精度が考慮されて適当な値に設定されたり、実機を用いた試験の結果に基づいて適切な値に設定されたり、或いは、シミュレーションの結果に基づいて適正な値に設定されたりすることが考えられる。また、狭帯域係数、中帯域係数、および広帯域係数は、予め固定的に設定されて狭帯域係数出力部21、中帯域係数出力部22、および広帯域係数出力部23のそれぞれに格納されているようにしてもよく、或いは、狭帯域係数出力部21、中帯域係数出力部22、および広帯域係数出力部23のそれぞれに対してユーザが適宜設定可能であるようにしてもよい。
ここで、送信側の無線通信装置101において変調多値数が低多値の変調方式が選択される場合は、無線通信装置101の不完全性の要素であってキャリア再生を劣化させる要素は熱雑音が支配的になるため、キャリア再生/PLLのループ帯域幅は小さい(別言すると、狭い)方が有利である。一方で、送信側の無線通信装置101において変調多値数が高多値の変調方式が選択される場合は、無線通信装置101の不完全性の要素であってキャリア再生を劣化させる要素は位相雑音が支配的になるため、キャリア再生/PLLのループ帯域を大きくして位相ノイズにトラッキングさせるようにすることが有効である。
そして、この実施の形態に係る無線受信装置1によれば、受信した無線フレームについての変調方式の変調多値数(即ち、同相I−直交Q平面におけるシンボル点/信号点の数)の程度に基づいてキャリア再生部10のループフィルタ12へと供給するパラメータを切り替えるようにしているので、送信側の無線通信装置101において選択された無線フレームの変調方式に対応させてキャリア再生部10を安定的に且つ適切に動作させることが可能となる。この実施の形態に係る無線受信装置1によれば、したがって、伝搬路環境に応じて無線フレームの変調方式の変調多値数を切り替えることに加えて変調方式の変調多値数に応じて性能が最善となるようにキャリア再生部10に関係するパラメータを切り替えるようにしているので、復調性能を相乗的に向上させることが可能となる。
この実施の形態に係る無線受信装置1によれば、特に、PLLのループ帯域幅を示すループフィルタ係数を、無線フレームの変調方式の変調多値数の程度に基づいて切り替えるようにしているので、送信側の無線通信装置において選択された無線フレームの変調方式に応じて最適なループフィルタ係数の選択を行うことができ、ループフィルタを適切に動作させ、延いてはキャリア再生部10を適切に動作させることが可能となる。
(実施の形態2)
図3は、この発明の実施の形態2に係る無線受信装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。なお、図3は、上記で説明した無線通信システム100における無線通信装置101のような構成(図1参照)をベースとしつつ、この発明の特徴的な構成を分かり易く示すことを考慮して、無線通信装置101の構成のうちの一部を省略している。図3は、具体的には、上記で説明した無線通信装置101の受信部150とインターフェース部110との間の復調部160に相当する構成に対して適用される特徴的な構成を、特に受信に纏わる機序としての無線受信装置1として示している。
ここで、この発明では、上述のとおり、無線通信装置101は、瞬時の伝搬路環境に応じて、無線フレームの変調方式のパラメータ、具体的には直角位相振幅変調の変調多値数(例えば、4QAM(QPSK)〜4096QAM)を切り替えながら無線通信を行う。そして、当該の通信において送信側となる無線通信装置101は、当該の通信において受信側となる無線通信装置101に対して、送信する無線フレームの変調方式のパラメータ、具体的には直角位相振幅変調の変調多値数を通知するための制御情報を送信する。
そして、この実施の形態に係る無線受信装置1は、受信した無線フレームについての変調方式の変調多値数の程度に関する変調多値数情報を出力する変調方式受信部2と、無線フレームの位相を回転する位相回転器11へと位相回転制御信号を出力する数値制御発振器13および数値制御発振器13へと位相誤差信号を出力するループフィルタ12を含むキャリア再生部10と、ループフィルタ12へと供給するパラメータを切り替え可能なキャリア再生制御スイッチ30と、を有し、キャリア再生制御スイッチ30が、変調方式受信部2から出力される変調多値数情報に基づいてループフィルタ12へと供給するパラメータを切り替える、ようにしている。
この実施の形態に係る無線受信装置1は、また、上記パラメータが、理想シンボルと受信シンボルとの間の位相の誤差成分を検出する際の、複素平面上における位相誤差を検出する領域が所定の領域に設定されて検出された位相誤差である、ようにしている。
この実施の形態に係る無線受信装置1は、デジタル無線伝送において搬送波(キャリア)の再生処理を行う回路であり、主として、変調方式受信部2と、キャリア再生部10と、キャリア再生制御スイッチ30とを含む機序として構成される。
実施の形態2は、位相誤差検出部7を有していない点、キャリア再生制御スイッチ(実施の形態1では符号20、実施の形態2では符号30)に纏わる構成、ならびに、変調方式受信部2およびキャリア再生部10のループフィルタ12における処理内容において上述の実施の形態1と異なる。一方で、キャリア再生部10の位相回転器11および数値制御発振器13、シンボル判定部4、誤差計算部5、ならびに復号部6については、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
キャリア再生部10のループフィルタ12は、キャリア再生制御スイッチ30から出力される位相誤差信号の高周波成分を、所定のループ帯域幅に応じて除去するフィルタである。ループフィルタ12は、具体的には、所定のループフィルタ係数が設定された上で、前記位相誤差信号の入力を受け、前記位相誤差信号のうちの不要な高周波成分を前記ループフィルタ係数に従って取り除き、高周波成分除去後の位相誤差信号を数値制御発振器13の周波数制御端子に対して出力する。
変調方式受信部2は、送信側の無線通信装置101から送信される無線フレームについての変調方式のパラメータ、具体的には直角位相振幅変調の変調多値数を通知するための制御情報を、送信側の無線通信装置101から受信する。
変調方式受信部2は、上記の制御情報に基づいて、受信した無線フレームの変調方式の変調多値数が低多値と高多値とのうちのどちらであるのかを、所定の区分・振り分けに従って判別する。そして、変調方式受信部2は、キャリア再生制御スイッチ30に対して、無線フレームの変調方式の変調多値数が低多値であるときは低多値変調信号を出力し、また、無線フレームの変調方式の変調多値数が高多値であるときは高多値変調信号を出力する。
変調方式受信部2から出力される、受信した無線フレームについての変調方式の変調多値数の程度に関する情報のことを「変調多値数情報」と呼ぶ。変調多値数情報は、ここでは、具体的には低多値変調信号および高多値変調信号のことである。
なお、変調方式受信部2が、送信側の無線通信装置101から送信される無線フレームの変調方式、具体的には直角位相振幅変調の変調多値数を自動的に判別するようにしてもよい。この場合、変調方式受信部2は、送信側の無線通信装置101から送信される無線フレームの供給を受け、前記無線フレームの変調方式を識別するとともに、識別した変調方式の変調多値数が低多値と高多値とのうちのどちらであるのかを、所定の区分・振り分けに従って判別する。そして、変調方式受信部2は、キャリア再生制御スイッチ30に対して、無線フレームの変調方式の変調多値数が低多値であると識別・判別したときは低多値変調信号を出力し、また、無線フレームの変調方式の変調多値数が高多値であると識別・判別したときは高多値変調信号を出力する。
キャリア再生制御スイッチ30は、全信号点検出部31、特定範囲検出部32、およびホールド出力部33の各々から出力される信号のうちのいずれかを選択してループフィルタ12へと供給する機能を備える。キャリア再生制御スイッチ30は、変調方式受信部2から出力される変調多値数情報に従って全信号点検出部31、特定範囲検出部32、およびホールド出力部33のうちのいずれかとの接続を切り替える。
キャリア再生制御スイッチ30は、変調方式受信部2から出力される変調多値数情報として低多値変調信号が入力されると、複素平面上の全信号点について位相誤差を検出する全信号点検出部31と接続して、キャリア再生部10のループフィルタ12に対して(延いては、数値制御発振器13に対して)、ループフィルタ12へと供給するパラメータとして全信号点に関する位相誤差(全信号点に関する位相誤差を電圧値で表した信号のことを「全範囲位相誤差信号」と呼ぶ)を供給する。
この場合、ループフィルタ12は、キャリア再生制御スイッチ30を介して全信号点検出部31から供給される全範囲位相誤差信号のうちの不要な高周波成分を所定のループフィルタ係数に従って取り除き、高周波成分除去後の全範囲位相誤差信号を数値制御発振器13の周波数制御端子に対して出力する。そして、数値制御発振器13は、ループフィルタ12から出力される高周波成分除去後の全範囲位相誤差信号に基づいて逆位相の正弦波信号や余弦波信号を生成して位相回転制御信号として出力し、位相回転器11は、受信部150から出力されるアナログ−デジタル変換された無線フレーム(受信信号)に対して、数値制御発振器13から出力される前記位相回転制御信号によって制御される位相回転を行う。つまり、キャリア再生部10は、全信号点検出部31から供給される全範囲位相誤差信号を用いて搬送波(キャリア)の再生処理を行う。
全信号点検出部31は、図4に示すように、複素平面上の全ての受信シンボル点S2について、これら受信シンボル点S2の各々に対応する理想シンボル点S1を中心とする所定範囲(「位相誤差検出範囲W1」と呼ぶ)内における位相誤差を検出する機能を備える。なお、図4では、複素平面の第一象限のみを示している。
すなわち、複素平面上に、予め、等間隔に縦横に複数の理想シンボル点S1が配置されるとともに、各理想シンボル点S1間を等間隔に縦横に区切るように、各理想シンボル点S1を中心とする四角形の位相誤差検出範囲W1が密に設定される(図4参照)。そして、全信号点検出部31は、それぞれの位相誤差検出範囲W1において、理想シンボル点S1に対して受信シンボル点S2が進みの向きまたは遅れの向きにどの程度ずれているか、という位相誤差を算出して検出する。なお、位相誤差がない場合には、理想シンボル点S1と受信シンボル点S2とが相互に重なる。ここで、位相誤差検出範囲W1内に位置する受信シンボル点S2についてのみ検出を行い、位相誤差検出範囲W1外に位置する受信シンボル点S2については検出を行わない。
このような全信号点検出部31では、複素平面上の全ての受信シンボル点S2について位相誤差を検出するため、精度高く位相誤差を検出できるものの、高多値化に伴って位相誤差検出範囲W1の各々が狭くなると、電力の変動や位相スリップなどの機器の瞬間的な異常による不安定動作が生じ、キャリア再生の同期外れに至る可能性がある。
キャリア再生制御スイッチ30は、また、変調方式受信部2から出力される変調多値数情報として高多値変調信号が入力されると、複素平面上の特定の範囲内に位置する信号点について位相誤差を検出する特定範囲検出部32と接続して、キャリア再生部10のループフィルタ12に対して(延いては、数値制御発振器13に対して)、ループフィルタ12へと供給するパラメータとして特定の範囲内に位置する信号点に関する位相誤差(特定の範囲内に位置する信号点に関する位相誤差を電圧値で表した信号のことを「特定範囲位相誤差信号」と呼ぶ)を供給する。
特定範囲検出部32は、図5に示すように、複素平面上の原点(即ち、I軸とQ軸との交点)を中心とする第1の半径C1の領域の外側に位置する受信シンボル点S2と、複素平面上の原点を中心とする第1の半径C1よりも小さい第2の半径C2の領域内に位置する受信シンボル点S2と、のうちの少なくとも一方の受信シンボル点S2について移相誤差を検出する機能を備える。
すなわち、等間隔に縦横に複数の理想シンボル点S1が予め配置された複素平面上において、原点を中心とする第1の半径C1の領域の外側では、理想シンボル点S1およびこれに対応する受信シンボル点S2の数(例えば、図5では3点)が少ない。同様に、等間隔に縦横に複数の理想シンボル点S1が予め配置された複素平面上において、原点を中心とする第2の半径C2(尚、C2≪C1)の領域内では、理想シンボル点S1およびこれに対応する受信シンボル点S2の数(例えば、図5では3点)が少ない。換言すると、このような少ない理想シンボル点S1および受信シンボル点S2が検出対象となり、不安定動作が生じないように半径C1や半径C2の大きさが設定される。
そして、このように理想シンボル点S1および受信シンボル点S2が少ない領域では、位相誤差検出範囲W1(言い換えると、検出可能範囲)が広いため、電力の変動や位相スリップなどの機器の瞬間的な異常による不安定動作が生じにくく、キャリア再生の同期外れに至る事態を防止・抑制することができる。つまり、傾斜角45度の基準線Lに対する受信シンボル点S2のずれ方向を判別することで、進みの向きに位相が回転しているのか、遅れの向きに位相が回転しているのかを確実に検出することができ、また、基準線Lからの受信シンボル点S2のずれ量・回転量を算出することで位相誤差量を確実に検出することが可能となる。一方で、少ない受信シンボル点S2についてのみ位相誤差を検出するため、位相誤差の検出精度は低い。
なお、第1の半径C1の領域の外側に位置する受信シンボル点S2のみで位相誤差を検出するか、第2の半径C2の領域内に位置する受信シンボル点S2のみで位相誤差を検出するか、あるいは、双方の受信シンボル点S2で位相誤差を検出するかは、要求精度や予測される位相誤差量などに基づいて設定される。
また、全信号点検出部31と特定範囲検出部32との各々による位相誤差の検出が常時並行して行われ、キャリア再生制御スイッチ30に対して全信号点検出部31から全範囲位相誤差信号が常時供給されるとともに特定範囲検出部32から特定範囲位相誤差信号が常時供給される。
ループフィルタ12は、キャリア再生制御スイッチ30を介して特定範囲検出部32から供給される特定範囲位相誤差信号のうちの不要な高周波成分を所定のループフィルタ係数に従って取り除き、高周波成分除去後の特定範囲位相誤差信号を数値制御発振器13の周波数制御端子に対して出力する。そして、数値制御発振器13は、ループフィルタ12から出力される高周波成分除去後の特定範囲位相誤差信号に基づいて逆位相の正弦波信号や余弦波信号を生成して位相回転制御信号として出力し、位相回転器11は、受信部150から出力されるアナログ−デジタル変換された無線フレーム(受信信号)に対して、数値制御発振器13から出力される前記位相回転制御信号によって制御される位相回転を行う。つまり、キャリア再生部10は、特定範囲検出部32から供給される高多値用位相誤差信号を用いて搬送波(キャリア)の再生処理を行う。
ここで、無線フレームの変調方式として例えば4QAM(QPSK)から4096QAMまでの範囲が想定される場合に、各変調方式の変調多値数が低多値と高多値とのうちのどちらであるのかは、特定の区分・振り分けには限定されないとともに、変調方式の変調多値数の程度である低多値および高多値のそれぞれと対応づけられる、位相誤差を検出する際の複素平面上における位相誤差を検出する領域は特定の領域には限定されない。
変調方式の変調多値数の区分・振り分けは、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、下記のように設定されてもよい。
低多値:4QAM(QPSK)〜256QAM
高多値:512QAM〜4096QAM
なお、変調方式の変調多値数の程度である低多値および高多値のそれぞれと対応づけられる、位相誤差を検出する際の複素平面上における位相誤差を検出する領域は、それぞれ、特定の領域に限定されるものではなく、無線通信装置101(特に、キャリア再生部10)の特性や所望の精度が考慮されて適当な領域に設定されたり、実機を用いた試験の結果に基づいて適切な領域に設定されたり、或いは、シミュレーションの結果に基づいて適正な領域に設定されたりすることが考えられる。また、上記位相誤差を検出する領域は、予め固定的に設定されて全信号点検出部31および特定範囲検出部32のそれぞれに格納されているようにしてもよく、或いは、全信号点検出部31および特定範囲検出部32のそれぞれに対してユーザが適宜設定可能であるようにしてもよい。
ここで、送信側の無線通信装置101において変調多値数が低多値の変調方式が選択される場合は、無線通信装置101の不完全性の要素であってキャリア再生を劣化させる要素は熱雑音が支配的になるため、位相誤差を検出する際の位相誤差検出範囲は大きい(別言すると、広い)方が有利である。一方で、送信側の無線通信装置101において変調多値数が高多値の変調方式が選択される場合は、無線通信装置101の不完全性の要素であってキャリア再生を劣化させる要素は位相雑音が支配的になるために、位相誤差検出精度を確保することを考慮して、位相誤差を検出する際の位相誤差検出範囲は小さい(別言すると、狭い)方が有効である。
キャリア再生制御スイッチ30は、また、例えば電力の変動や位相スリップなどの機器の瞬間的な異常によって受信シンボル点S2の全て若しくは殆ど全て(言い換えると、一定の信頼性を保って位相誤差を検出することができないほど多く)が位相誤差検出範囲W1内から外れた場合に、再生ホールド信号が予め記憶されているホールド出力部33との接続へと切替わって、キャリア再生部10のループフィルタ12に対して、ループフィルタ12へと供給するパラメータとして再生ホールド信号を出力する。
再生ホールド信号は、キャリア再生部10におけるキャリア再生ループを一時的にホールドするための信号であり、ループフィルタ12における高周波成分の除去動作および出力動作の一時的な停止を指示する内容の信号であるようにしてもよく、或いは、ループフィルタ12におけるPLLのループ帯域幅を極端に狭く設定する内容の信号であるようにしてもよい。
ループフィルタ12は、キャリア再生制御スイッチ30を介してホールド出力部33から出力される再生ホールド信号が入力されると、位相誤差信号の高周波成分の除去動作および出力動作を停止したり、或いは、PLLのループ帯域幅を極端に狭くしながら位相誤差信号の所定の周波数成分の除去処理を行ったりする。なお、ループフィルタ12による高周波成分の除去処理において用いるPLLのループ帯域幅を極端に狭く設定することにより、PLLのロック時間(即ち、同期をとるまでの時間)を長くして、キャリア再生部10におけるキャリア再生ループを擬似的にホールドさせることができる。
そして、この実施の形態に係る無線受信装置1によれば、受信した無線フレームについての変調方式の変調多値数(即ち、同相I−直交Q平面におけるシンボル点/信号点の数)の程度に基づいてキャリア再生部10のループフィルタ12へと供給するパラメータを切り替えるようにしているので、送信側の無線通信装置101において選択された無線フレームの変調方式に対応させてキャリア再生部10を安定的に且つ適切に動作させることが可能となる。この実施の形態に係る無線受信装置1によれば、したがって、伝搬路環境に応じて無線フレームの変調方式の変調多値数を切り替えることに加えて変調方式の変調多値数に応じて性能が最善となるようにキャリア再生部10に関係するパラメータを切り替えるようにしているので、復調性能を相乗的に向上させることが可能となる。
この実施の形態に係る無線受信装置1によれば、特に、複素平面上における位相誤差を検出する領域を調整して検出された位相誤差を、無線フレームの変調方式の変調多値数の程度に基づいて切り替えるようにしているので、送信側の無線通信装置において選択された無線フレームの変調方式に応じて最適な位相誤差を検出する領域の選択を行うことができ、ループフィルタを適切に動作させ、延いてはキャリア再生部10を適切に動作させることが可能となる。
(実施の形態3)
図6は、この発明の実施の形態3に係る無線受信装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。なお、図6は、上記で説明した無線通信システム100における無線通信装置101のような構成(図1参照)をベースとしつつ、この発明の特徴的な構成を分かり易く示すことを考慮して、無線通信装置101の構成のうちの一部を省略している。図6は、具体的には、上記で説明した無線通信装置101の受信部150とインターフェース部110との間の復調部160に相当する構成に対して適用される特徴的な構成を、特に受信に纏わる機序としての無線受信装置1として示している。
ここで、この発明では、上述のとおり、無線通信装置101は、瞬時の伝搬路環境に応じて、無線フレームの変調方式のパラメータ、具体的には直角位相振幅変調の変調多値数(例えば、4QAM(QPSK)〜4096QAM)を切り替えながら無線通信を行う。そして、当該の通信において送信側となる無線通信装置101は、当該の通信において受信側となる無線通信装置101に対して、送信する無線フレームの変調方式のパラメータ、具体的には直角位相振幅変調の変調多値数を通知するための制御情報を送信する。
そして、この実施の形態に係る無線受信装置1は、受信した無線フレームについての変調方式の変調多値数の程度に関する変調多値数情報を出力する変調方式受信部2と、無線フレームの位相を回転する位相回転器11へと位相回転制御信号を出力する数値制御発振器13および数値制御発振器13へと位相誤差信号を出力するループフィルタ12を含むキャリア再生部10と、理想シンボルと受信シンボルとの間の位相の誤差成分を検出してループフィルタ12へと出力する位相誤差検出部7と、位相誤差検出部7へと供給するパラメータを切り替え可能なキャリア再生制御スイッチ40と、を有し、キャリア再生制御スイッチ40が、変調方式受信部2から出力される変調多値数情報に基づいて位相誤差検出部7へと供給するパラメータを切り替え、前記パラメータが、位相の誤差成分を検出する処理において対象とする、複素平面上に割り当てられたシンボル点の範囲である、ようにしている。
この実施の形態に係る無線受信装置1は、デジタル無線伝送において搬送波(キャリア)の再生処理を行う回路であり、主として、変調方式受信部2と、ホールド制御部8と、キャリア再生部10と、キャリア再生制御スイッチ40とを含む機序として構成される。
実施の形態3は、ホールド制御部8を有している点、キャリア再生制御スイッチ(実施の形態1では符号20、実施の形態3では符号40)に纏わる構成、位相誤差検出部7における処理内容、および、キャリア再生部10のループフィルタ12における処理内容において上述の実施の形態1と異なる。一方で、変調方式受信部2、キャリア再生部10の位相回転器11および数値制御発振器13、シンボル判定部4、誤差計算部5、ならびに復号部6については、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
位相誤差検出部7は、誤差計算部5と協働しながら、ホールド制御部8を介してキャリア再生制御スイッチ40から供給されるパラメータに従って、理想シンボルと受信シンボルとの間の位相の誤差成分を検出し、検出した位相の誤差成分に対応する位相誤差信号(具体的には、位相誤差を電圧値で表した信号)をループフィルタ12に対して出力する。
ホールド制御部8は、非線形歪や位相ノイズの影響が大きい領域のシンボルを選択して、その領域のシンボルを受信したときには位相誤差信号を更新せずに前のシンボルの検出値を出力するように動作する。
キャリア再生部10のループフィルタ12は、位相誤差検出部7から出力される位相誤差信号の高周波成分を、所定のループ帯域幅に応じて除去するフィルタである。ループフィルタ12は、具体的には、所定のループフィルタ係数が設定された上で、前記位相誤差信号の入力を受け、前記位相誤差信号のうちの不要な高周波成分を前記ループフィルタ係数に従って取り除き、高周波成分除去後の位相誤差信号を数値制御発振器13の周波数制御端子に対して出力する。
キャリア再生制御スイッチ40は、低多値用出力部41、中多値用出力部42、および高多値用出力部43の各々から出力される信号のうちのいずれかを選択してホールド制御部8を介して位相誤差検出部7へと供給する機能を備える。キャリア再生制御スイッチ40は、変調方式受信部2から出力される変調多値数情報に従って低多値用出力部41、中多値用出力部42、および高多値用出力部43のうちのいずれかとの接続を切り替える。
低多値用出力部41には、無線フレームの変調方式の変調多値数が低多値である場合に用いられることにより、位相誤差検出部7を適切に動作させ、延いてはキャリア再生のループを適切に動作させてキャリア再生に纏わる処理を安定に行うことを可能とするような、位相誤差検出を行うシンボル点の範囲(「低多値用シンボル範囲」と呼ぶ)が記憶されている。低多値用シンボル範囲は、無線フレームの変調方式の変調多値数が低多値である場合に、同相I−直交Q平面(別言すると、複素平面)上に割り当てられたシンボル点(「理想シンボル点」などとも呼ばれる)のうち、誤差計算部5と低多値用出力部41との協働による位相誤差の検出処理において対象とするシンボル点の範囲の定義である。
中多値用出力部42には、無線フレームの変調方式の変調多値数が中多値である場合に用いられることにより、位相誤差検出部7を適切に動作させ、延いてはキャリア再生のループを適切に動作させてキャリア再生に纏わる処理を安定に行うことを可能とするような、位相誤差検出を行うシンボル点の範囲(「中多値用シンボル範囲」と呼ぶ)が記憶されている。中多値用シンボル範囲は、無線フレームの変調方式の変調多値数が中多値である場合に、同相I−直交Q平面(別言すると、複素平面)上に割り当てられたシンボル点のうち、誤差計算部5と中多値用出力部42との協働による位相誤差の検出処理において対象とするシンボル点の範囲の定義である。
上記の「変調多値数が中多値である」とは、上記の「変調多値数が低多値である」よりも変調方式の変調多値数が大きいことをいう。
高多値用出力部43には、無線フレームの変調方式の変調多値数が高多値である場合に用いられることにより、位相誤差検出部7を適切に動作させ、延いてはキャリア再生のループを適切に動作させてキャリア再生に纏わる処理を安定に行うことを可能とするような、位相誤差検出を行うシンボル点の範囲(「高多値用シンボル範囲」と呼ぶ)が記憶されている。高多値用シンボル範囲は、無線フレームの変調方式の変調多値数が高多値である場合に、同相I−直交Q平面(別言すると、複素平面)上に割り当てられたシンボル点のうち、誤差計算部5と高多値用出力部43との協働による位相誤差の検出処理において対象とするシンボル点の範囲の定義である。
上記の「変調多値数が高多値である」とは、上記の「変調多値数が中多値である」よりも変調方式の変調多値数が大きいことをいう。
キャリア再生制御スイッチ40は、変調方式受信部2から出力される変調多値数情報として低多値変調信号が入力されると、低多値用出力部41と接続して、ホールド制御部8に対して、位相誤差検出部7へと供給するパラメータとして低多値用シンボル範囲を供給する。
この場合、位相誤差検出部7は、キャリア再生制御スイッチ40からホールド制御部8を介して供給される低多値用シンボル範囲に従って位相誤差の検出処理を行う。すなわち、位相誤差検出部7は、低多値用シンボル範囲において定義されているシンボル点の範囲内の理想シンボル点(および、当該の理想シンボル点に対応する受信シンボル点)のみを取り上げて位相誤差の検出処理を行う。
キャリア再生制御スイッチ40は、また、変調方式受信部2から出力される変調多値数情報として中多値変調信号が入力されると、中多値用出力部42と接続して、ホールド制御部8に対して、位相誤差検出部7へと供給するパラメータとして中多値用シンボル範囲を供給する。
この場合、位相誤差検出部7は、キャリア再生制御スイッチ40からホールド制御部8を介して供給される中多値用シンボル範囲に従って位相誤差の検出処理を行う。すなわち、位相誤差検出部7は、中多値用シンボル範囲において定義されているシンボル点の範囲内の理想シンボル点(および、当該の理想シンボル点に対応する受信シンボル点)のみを取り上げて位相誤差の検出処理を行う。
キャリア再生制御スイッチ40は、さらに、変調方式受信部2から出力される変調多値数情報として高多値変調信号が入力されると、高多値用出力部43と接続して、ホールド制御部8に対して、位相誤差検出部7へと供給するパラメータとして高多値用シンボル範囲を供給する。
この場合、位相誤差検出部7は、キャリア再生制御スイッチ40からホールド制御部8を介して供給される高多値用シンボル範囲に従って位相誤差の検出処理を行う。すなわち、位相誤差検出部7は、高多値用シンボル範囲において定義されているシンボル点の範囲内の理想シンボル点(および、当該の理想シンボル点に対応する受信シンボル点)のみを取り上げて位相誤差の検出処理を行う。
ここで、無線フレームの変調方式として例えば4QAM(QPSK)から4096QAMまでの範囲が想定される場合に、各変調方式の変調多値数が低多値、中多値、および高多値のうちのいずれであるのかは、特定の区分・振り分けには限定されないとともに、変調方式の変調多値数の程度である低多値、中多値、および高多値のそれぞれと対応づけられる、位相誤差の検出処理において対象とするシンボル点の範囲(即ち、低多値用シンボル範囲、中多値用シンボル範囲、および高多値用シンボル範囲)は特定の範囲には限定されない。
変調方式の変調多値数の区分・振り分けは、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、下記のように設定されてもよい。
低多値:4QAM(QPSK)〜64QAM
中多値:128QAM〜512QAM
高多値:1024QAM〜4096QAM
また、位相誤差の検出処理において対象とするシンボル点の範囲(「誤差検出シンボル範囲」とも呼ぶ)に関連して、無線通信装置101の不完全性として非線形歪や位相ノイズが挙げられ、このような不完全性が影響を及ぼしてシンボル点が劣化する領域(言い換えると、劣化する領域に含まれるシンボル点)は変調方式/変調多値数によって異なる。不完全性が影響を及ぼしてシンボル点が劣化する領域(「劣化領域」と呼ぶ)は、同相I−直交Q平面(別言すると、複素平面)の各象限において同相成分(Ich)についても直交成分(Qch)についても振幅の絶対値が大きい4つの領域となる(図7参照)。このため、例えば、変調方式が256QAMである場合には、図7(A)に示すように、同相I−直交Q平面の各象限の劣化領域に10個ずつ含まれる合計40個のシンボル点を除く216個の理想シンボル点(および、当該の理想シンボル点に対応する受信シンボル点)のみを取り上げて位相誤差の検出処理を行うことが考えられ、一方、変調方式が16QAMである場合には、図7(B)に示すように、同相I−直交Q平面の各象限の劣化領域に1個ずつ含まれる合計4個のシンボル点を除く12個の理想シンボル点(および、当該の理想シンボル点に対応する受信シンボル点)のみを取り上げて位相誤差の検出処理を行うことが考えられる。ただし、図7に示す、不完全性が影響を及ぼしてシンボル点が劣化する領域(即ち、劣化領域)や、前記劣化領域に基づいて位相誤差の検出処理において対象から除くシンボル点の範囲は、あくまでも一例であり、図7に示す例に限定されるものではない。
不完全性が影響を及ぼしてシンボル点が劣化する領域に関連して、特に位相ノイズによるシンボル点の劣化について説明を加えると、図8に示すように、同じ角度の位相ジッタであっても、同相I−直交Q平面において同相成分(Ich)についても直交成分(Qch)についても振幅の絶対値が大きいほどシンボル点の揺らぎ幅が大きくなってより一層劣化する。
上記を踏まえ、無線通信装置101の不完全性が影響を及ぼしてシンボル点が劣化する領域は変調方式の変調多値数によって異なり、送信側の無線通信装置101において変調多値数が低多値の変調方式が選択される場合はシンボルエラーが発生するシンボルが少なく、一方で、送信側の無線通信装置101において変調多値数が高多値の変調方式が選択される場合はシンボルエラーが発生するシンボルが多い。
そして、この実施の形態に係る無線受信装置1によれば、受信した無線フレームについての変調方式の変調多値数(即ち、同相I−直交Q平面におけるシンボル点/信号点の数)の程度に基づいて位相誤差検出部7へと供給するパラメータを切り替えるようにしているので、送信側の無線通信装置101において選択された無線フレームの変調方式に対応させて位相誤差検出部7を安定的に且つ適切に動作させ、延いてはキャリア再生部10を安定的に且つ適切に動作させることが可能となる。この実施の形態に係る無線受信装置1によれば、したがって、伝搬路環境に応じて無線フレームの変調方式の変調多値数を切り替えることに加えて変調方式の変調多値数に応じて性能が最善となるように位相誤差検出部7に関係するパラメータを切り替えるようにしているので、復調性能を相乗的に向上させることが可能となる。この実施の形態に係る無線受信装置1によれば、特に、位相誤差の検出処理において対象とするシンボル点の範囲を、無線フレームの変調方式の変調多値数の程度に基づいて切り替えるようにしているので、送信側の無線通信装置において選択された無線フレームの変調方式に応じて最適な、位相誤差の検出処理において対象とするシンボル点の範囲の選択を行うことができ、位相誤差検出部7を適切に動作させ、延いてはキャリア再生部10を適切に動作させることが可能となる。
なお、低多値用シンボル範囲、中多値用シンボル範囲、および高多値用シンボル範囲の各々としての、位相誤差の検出処理において対象とするシンボル点の範囲は、それぞれ、特定の範囲に限定されるものではなく、無線通信装置101(特に、キャリア再生部10)の特性や所望の精度が考慮されて適当な範囲に設定されたり、実機を用いた試験の結果に基づいて適切な範囲に設定されたり、或いは、シミュレーションの結果に基づいて適正な範囲に設定されたりすることが考えられる。また、低多値用シンボル範囲、中多値用シンボル範囲、および高多値用シンボル範囲は、予め固定的に設定されて低多値用出力部41、中多値用出力部42、および高多値用出力部43のそれぞれに格納されているようにしてもよく、或いは、低多値用出力部41、中多値用出力部42、および高多値用出力部43のそれぞれに対してユーザが適宜設定可能であるようにしてもよい。
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。具体的には、上記の実施の形態ではこの発明に係る無線受信装置1が適用されるベースの構成として図1に示す無線通信装置101を挙げたが、この発明が適用され得る無線通信装置の構成は、図1に示す無線通信装置101に限定されるものではなく、上記で説明したような無線受信装置1の構成が受信に纏わる機序として適用することができる(言い換えると、受信に纏わる機序に組込むことができる)無線通信装置であればどのような構成でもよい。具体的には例えば、上記の実施の形態におけるキャリア再生部10(特に、ループフィルタ12)に相当する構成を含む無線通信装置であればどのような構成でもよい。
また、上記の実施の形態1では無線フレームの変調方式の変調多値数の程度に応じて3種類のループフィルタ係数を使い分けるようにしているが、実施の形態1の要点は変調多値数の程度に応じて複数種類のループフィルタ係数を使い分けることであり、変調多値数の程度に応じて使い分けるループフィルタ係数の種類は、2種類でもよく、また、4種類以上でもよい。付け加えると、無線通信システム100において送受信される無線フレームの変調方式として想定される変調多値数ごとに、ループフィルタ係数が設定されるようにしてもよい。その上で、実施の形態1では、変調多値数が大きいほど、ループフィルタ係数の値が大きく(別言すると、ループ帯域が大きく)なるように設定される。
また、上記の実施の形態2では無線フレームの変調方式の変調多値数の程度に応じて2種類の位相誤差を検出する領域を使い分けるようにしているが、実施の形態2の要点は変調多値数の程度に応じて複数種類の位相誤差を検出する領域を使い分けることであり、変調多値数の程度に応じて使い分ける位相誤差を検出する領域の種類は、3種類以上でもよい。付け加えると、無線通信システム100において送受信される無線フレームの変調方式として想定される変調多値数ごとに、位相誤差を検出する領域が設定されるようにしてもよい。その上で、実施の形態2では、変調多値数が大きいほど、位相誤差を検出する領域が小さく(別言すると、狭く)なるように設定される。
また、上記の実施の形態3では無線フレームの変調方式の変調多値数の程度に応じて3種類の、位相誤差検出を行うシンボル点の範囲を使い分けるようにしているが、実施の形態3の要点は変調多値数の程度に応じて複数種類の前記シンボル点の範囲を使い分けることであり、変調多値数の程度に応じて使い分ける前記シンボル点の範囲の種類は、2種類でもよく、また、4種類以上でもよい。付け加えると、無線通信システム100において送受信される無線フレームの変調方式として想定される変調多値数ごとに、前記シンボル点の範囲が設定されるようにしてもよい。
また、上記の実施の形態1と実施の形態2とを組み合わせるようにしてもよい。すなわち、キャリア再生部10のループフィルタ12に対して、キャリア再生制御スイッチ20から出力されるループフィルタ係数が供給される(実施の形態1の構成)とともに、キャリア再生制御スイッチ30から出力される位相誤差信号が供給される(実施の形態2の構成)ようにしてもよい。なお、無線フレームの変調方式の変調多値数の程度に応じて変調方式受信部2から出力される変調多値数情報は、キャリア再生制御スイッチ20とキャリア再生制御スイッチ30とのそれぞれに対して入力される。そして、例えば、無線フレームの変調方式の変調多値数が実施の形態1における高多値であって変調方式受信部2から出力される変調多値数情報として高多値変調信号がキャリア再生制御スイッチ20に対して入力されるとともに、無線フレームの変調方式の変調多値数が実施の形態2における高多値であって変調方式受信部2から出力される変調多値数情報として高多値変調信号がキャリア再生制御スイッチ30に対して入力されると、キャリア再生制御スイッチ20は広帯域係数出力部23と接続してループフィルタ12に対して広帯域係数を供給し、また、キャリア再生制御スイッチ30は特定範囲検出部32と接続してループフィルタ12に対して特定範囲相誤差信号を供給する。この場合、ループフィルタ12に対して広帯域係数が供給されてキャリア再生/PLLのループ帯域が大きくなるので、位相誤差の検出について良好な精度が要求されるため、位相誤差を検出する領域は小さい方が有利である。この点について、キャリア再生制御スイッチ30を介して特定の範囲内に位置する信号点に関する位相誤差がループフィルタ12に対して供給されるので、位相誤差検出部7を一層適切に動作させ、延いてはキャリア再生部10を一層適切に動作させるという効果が奏される。