JP2021136864A - リニア型超音波モータ - Google Patents

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智昭 真下
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Abstract

【課題】 ステータを小型にしつつ進退方向への作動子の駆動を可能にする超音波モータを提供する。【解決手段】 ステータ2は、超音波周波数の振動に基づく駆動力によって変形可能な板状のステータ本体20と、ステータ本体に形成された挿通孔4と、ステータ本体の適宜位置に設置された複数の超音波発生素子5a〜8bとを備える。超音波発生素子は、ステータ本体を表面方向XYおよび板厚方向Zへ重畳的に変形させることにより、挿通孔の内側周縁の位置を径方向および軸線方向に変化させるものであり、挿通孔の内側周縁には、変化の過程においてスライダに当接する当接領域が形成されている。【選択図】 図1

Description

本発明は、リニア型超音波モータに関し、特に小型化された超音波モータに関するものである。
これまで、超音波モータは、単一または複数の材料によって直方体のステータを構成し、長手方向に挿通部を設けたものであり、ステータの4つの側面に超音波発生素子を貼着して、超音波発生素子により発生する超音波周波数の振動によって作動子を作動させるものであった(特許文献1参照)。そして、ステータに貼着する超音波発生素子に対して印加する電圧の位相を調整することにより、作動子を回転させ、または進退させるものであった。
ところが、上記超音波モータによって、作動子を進退させるためには、ステータの表面上の進退方向に複数の超音波発生素子を貼着することが必要であった。これは、ステータの内部表面(作動子との摺接面)を波状に変形させるためであり、ここで生成される波をもって進行波とするためであった。なお、作動子を回転駆動するためには、4つの側面における超音波発生素子に対し、順次90°の位相差を設けて電圧を印加し、回転方向への進行波を生じさせていた。
ところで、このような進行波の形成による作動子の駆動状態は、比較的小出力となるため、前記超音波発生素子を多数設置するか、または同一の作動子に対して複数の超音波モータを設置することが必要となっていた。そのため、装置全体が大型化せざるを得ないものであった。そこで、本願発明者らにより、ステータ全体の剛性を低下させることで、小型としながら高出力となる超音波モータを開発している(特許文献2参照)。
特開2009−261494号公報 特開2013−183563号公報
前掲の特許文献2に開示される技術は、超音波モータを小型化するために、ステータの剛性を低下させるように構成されたものであったが、作動子を進退方向へ駆動するための進行波は、ステータの内部表面を進退方向へ順次波状に変形させる必要があるため、適度な距離を保持しなければならず、進退方向の長さを短縮させることができなかった。
また、上記構成の場合には、比較的小さな出力を得る場合であっても、同様に進退方向の所定の長さが必要となり、出力の大小にかかわらず、進退方向の長さを短縮することには限界があった。
本発明は、上記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ステータを小型にしつつ進退方向への作動子の駆動を可能にする超音波モータを提供することである。
そこで、本発明は、ステータに挿通されるスライダを駆動するリニア型超音波モータであって、前記ステータは、超音波周波数の振動に基づく駆動力によって変形可能な板状のステータ本体と、該ステータ本体に形成された挿通孔と、前記ステータ本体の適宜位置に設置された複数の超音波発生素子とを備え、前記超音波発生素子は、前記ステータ本体を表面方向および板厚方向へ重畳的に変形させることにより、前記挿通孔の内側周縁の位置を径方向および軸線方向に変化させるものであり、前記挿通孔の内側周縁には、前記変化の過程において前記スライダに当接する当接領域が形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、ステータ本体は、表面方向および板厚方向の二方向へ変形可能となっており、表面方向への変形により、挿通孔の内側周縁を径方向へ変化させることができることから、内側周縁に形成される当接領域をスライダに当接させる状態と、当接させない状態とを現出させることができる。また、ステータ本体が板厚方向へ変形する場合には、挿通孔の内側周縁の位置が軸方向へ変化することとなり、当接領域がスライダに当接した状態を維持しつつ軸方向へ変化することにより、当該スライダを進退方向へ移動させることが可能となる。なお、当接領域をスライダに「当接させない状態」とは、現実に当接していない状態の場合のほか、外形的に当接状態にありながら実質的にはスライダを移動させるための推進力(駆動力)を伝達できるような状態でない場合(例えば摺接状態の場合)などもあり得る概念である。また、上記において、「重畳的に変化させる」とは、同時に二方向へ変形する状態のほか、二方向の変形に僅かに重なって出現する場合を含み、さらに、二方向への変形態様が順次遷移する際の移行時に出現する場合を含む意味である。また、挿通孔の「内側周縁」とは、板状のステータ本体に設けられた挿通孔の内周面部分(端面)の場合もあるが、ステータ本体の表面側または裏面側に位置する線状部分(端縁)の場合もあり得る。なお、ステータ本体の板厚方向と挿通孔の軸線方向とは平行となるものであり、ステータ本体の表面方向と挿通孔の径方向とは平行な平面上に存在するものである。
前記構成の発明において、前記挿通孔は、平面視における第一の中心線およびこれと直交する第二の中心線を軸として各対称となる形状に設けられ、第一または第二の中心線のいずれか一方の線上に位置する内側周縁に前記当接領域が形成されている構成とすることができる。
上記構成の場合には、挿通孔の形状は、直交方向(例えば、挿通孔の軸線を垂直とする場合の上下方向と左右方向)に対向する周縁部分(内側周縁の一部)がそれぞれ対称な形状となり、この二つの対向する周縁部分の一方(例えば上下方向に位置する周縁部分)に、スライダと当接し得る当接領域を形成させることができる。これにより、ステータ本体の変形は、当接領域が形成されている一方の対向周縁部分(例えば、挿通孔の軸線を垂直とする場合の上下方向に位置する周縁部分)について、その位置の変化を制御するように調整すればよいこととなり、他方の対向周縁部分(例えば、挿通孔の軸線を垂直とする場合の左右方向に位置する周縁部分)は、スライダの駆動に寄与しない代わりに当該周縁部分の位置を限られた範囲内において自由に変化させることができる。
また、前記構成の発明においては、前記超音波発生素子は、前記挿通孔の前記第一の中心線上において前記ステータ本体に駆動力を提供する素子群と、前記第二の中心線上において前記ステータ本体に駆動力を提供する素子群とに区分されて設けられ、一方の素子群が前記ステータ本体の表面方向への変形を導出させ、他方の素子群が前記ステータ本体の板厚方向への変形を導出させるものとすることができる。
上記構成の場合には、一方の素子群によってステータ本体を表面方向へ変形しつつ、他方の素子群によってステータ本体を板厚方向へ変形させることができ、両方向への重畳的な変形状態を出現させることができる。このとき、一方の素子群によるステータ本体への駆動力が伸縮方向に作用するものである場合、この変形に伴って挿通孔の内側周縁を径方向に伸縮させることができ、他方の素子群によるステータ本体への駆動力が屈曲方向に作用するものである場合、この変形に伴って挿通孔の内側周縁を軸線方向に変化させることができる。このような二種類の作動により、一方の素子群によるステータの変形により当接領域の当接および非当接を制御させ、他方の素子群によるステータ本体の変形によりスライダを進退方向へ移動させることが可能となる。すなわち、他方の素子群に基づく挿通孔の内側周縁の変化に応じて、一方の素子群に基づく当接・非当接のタイミングを調整することにより、スライダに対して断続的な推進力を付与することができる。
さらに、前記構成の発明において、前記ステータ本体は、表面方向への変形のための固有振動数と、板厚方向への変形のための固有振動数とを一致させており、前記超音波発生素子は、前記二つの素子群ごとに少なくとも1個の素子が配置されるものであり、各素子群に配置される素子に対し、相互に特定の位相差を有する周波数の電圧が印加されるものとすることができる。
上記構成の場合には、ステータ本体に対する二種類の変形における固有振動数を一致させるものであることから、超音波発生素子による超音波周波数は、印加される電圧の周波数の位相の差と同じ位相差によって発生することとなり、その超音波周波数の振動に伴う駆動力は、当該位相差に相当するズレを有してステータ本体に作用することとなる。印加電圧の周波数の位相に差を設けることにより、容易にステータ本体に対する二種類の変形を生じさせることができる。なお、特定の位相差とは、例えば45°とすることにより、ステータ本体に対する二種類の変形は重畳的なものとなる。
前記のように超音波発生素子が二つの素子群に区分された構成の発明においては、前記超音波発生素子が、前記二つの素子群ごとに、前記挿通孔を中心とする対称な2箇所に分かれて複数の素子を設ける構成とすることができる。
上記構成の場合には、二つの素子群ごとに対称な位置にある2箇所に分かれて素子が設けられることから、対向する二組の内側周縁を同時に対称に作動(屈曲方向または伸縮方向へ変形)させることが可能となる。この場合、対向する一組の内側周縁に当接領域を形成させることができることから、スライダに対して両側から推進力を付与することができる。
そして、前記構成の発明において、前記超音波発生素子は、前記二つの素子群ごとに、前記ステータ本体の表面側と裏面側とに対称な状態で同数の素子が設けられる構成とすることができる。この場合には、板状のステータ本体に対して、表裏から変形させることができ、伸縮方向への変形には表裏が同じ伸縮状態とすることができ、屈曲方向への変形には、表裏面の一方を外向きに、他方を内向きに屈曲させることにより、変形状態を安定させ、また、これらの相乗効果による駆動力の増加を得ることができる。
また、二つの素子群に区分された超音波発生素子を備える構成の前記発明において、当該超音波発生素子は、前記二つの素子群に区分されつつそれぞれが前記ステータ本体の側面に設けられ、該素子群は、異なる振動モードの素子が配置されるものであり、一方の素子群を構成する素子を縦振動モード(伸縮変形モードとも称され、いわゆる31モードである)とし、他方の素子群を構成する素子を厚みすべり振動モード(せん断変形モードとも称され、いわゆる15モードである)とするものとすることができる。
上記構成の発明によれば、一方の素子群では、ステータ本体の側面において縦振動モード(いわゆる31モード)により振動する素子が伸縮方向の振動が励起させることとなることから、ステータ本体の壁面を、設置される側面を介して伸縮させることができ、これによりステータ本体の表面方向への変形を導出させることができる。これに対し、他方の素子群では、ステータ本体の側面において厚みすべり振動モード(いわゆる15モード)により振動する素子が曲げ振動を励起させることとなり、当該側面を介して壁面を曲げることによって、ステータ本体の板厚方向への変形を導出させることができる。そして、直交する二つの中心線に沿って、一方がステータ本体を表面方向へ伸縮させ、他方が板厚方向へ曲げることによって、結果的に、第1に挿通孔の内部形状を扁平状態に変形させ、内側周縁の一部をスライダに当接可能とし、当接領域を出現させつつ、第2に当該内側周縁(当接領域)の位置を軸方向へ変動させることができることとなり、当該スライダを進退方向へ移動させることが可能となる。
また、上記構成の発明において、前記超音波発生素子は、前記二つの素子群ごとに、前記挿通孔を中心とする対称な2箇所に分かれて複数の素子が設けられており、それぞれの素子群を構成する対称な2箇所の素子は、相互に分極方向を反転させて設けられ、該素子に対して印加する交流電圧の極性を相互に反転さるものとすることができる。
このような構成の場合、それぞれの素子群ごとに、2箇所に分かれる素子は同種の振動モードを使用しつつ、ステータ本体の金属部分にグランド線を設けることなく作動させることができる。すなわち、2箇所に分かれて設置される素子は、分極方向が相互に反転されたものであることから、印加される交流電圧の双方の電極を異なる二つの素子に接続することにより、交流電圧の極性が相互に逆転した状態で印加できることとなるから、当該反転した極性の素子に対して、同じ方向への変形性導出させる振動が励起されるものとなる。また、二つの素子群に対し、一方を正弦波、他方を余弦波とすれば、相互の変更を区別させることができる。
上記のような発明において、前記挿通孔は、短尺方向および長尺方向が直交方向に形成される楕円形または矩形に設けられており、前記第一および第二の中心線は前記短尺方向および前記長尺方向に沿ったものであり、一方の素子群は長尺方向の中心線上に配置され、他方の素子群は短尺方向の中心線上に配置されるものとすることができる。
上記構成の場合には、一方の素子群が挿通孔の長尺方向の中心線上に設けられることから、当該素子群によるステータ本体の表面方向への変形(伸縮)による挿通孔の変形は、短軸方向への伸縮として作用する。また、他方の素子群によるステータ本体の板厚方向への変形(曲げ)による挿通孔の変形は、短尺方向における挿通孔の内側周縁(当接領域)の移動として作用する。その結果、長尺方向における挿通孔の内側周縁は、スライダ表面に当接することなく、当接領域のみをスライダ表面に当接させることができることとなる。これにより、当接領域の移動によるスライダの進退駆動を一層確実にすることができる。
なお、前記各構成の発明において、前記挿通孔は、円形、楕円形、正方形、正六角形および正八角形の中から選択される形状とすることができ、また、前記ステータ本体は、外周形状が前記挿通孔の形状と略相似形とすることができる。
基本的には、前述のような挿通孔の中心を通過する二つの直交する中心線に対して、それぞれ対称な形状であればよく、八角形以上の正多角形とするものであってもよい。直交する二つの中心線に対して対称となる形状とするのは、屈曲方向と伸縮方向とを対称な二組の内側周縁において同時に作動させることを容易とするためである。
さらに、前記各構成の発明において、前記スライダは、前記ステータ本体に形成される前記当接領域に対して付勢する付勢手段を有する構成とすることが好ましい。このような付勢手段としては、スライダの軸線方向に沿って二分割したうえ、両者間にバネ等の弾性体を内設する構成のほか、スライダを断面略C字形とする弾性変形可能な材料で構成する場合などがある。そして、このような付勢手段による付勢方向は、ステータ本体の内側周縁に形成される当接領域に向かって付勢させることにより、当該当接領域によるスライダ表面との当接を確実に行わせることが可能となる。
本発明によれば、ステータを薄肉板状として構成できることから、ステータを小型にしつつ作動子(スライダ)を進退方向へ駆動させることができる。この場合、作動子(スライダ)を短軸にすれば、超音波モータ全体が小型となり得る。また、携帯端末のように内部に設置領域としての空間が極めて制限されるような場合において、ステータの設置空間を小さくすることができ、この場合には作動子(スライダ)を所定の長さとして設けることも可能となる。
(a)は本発明の第1の実施形態を示す斜視図であり、(b)はステータの表面側、(c)はステータの裏面側を示す説明図である。 第1の実施形態によけるステータ本体の変形特性を示す説明図である。 第1の実施形態によけるステータ本体の変形特性を示す説明図である。 第1の実施形態におけるステータ本体の固有振動数の調整方法を示す説明図である。 第1の実施形態におけるステータ本体による駆動力の発生を示す説明図である。 第1の実施形態におけるステータ本体による駆動の状態を示す説明図である。 (a)は本発明の第2の実施形態を示す説明図であり、(b)および(c)はステータの変形例を示す説明図である。 (a)はステータの変形例を示す説明図であり、(b)は第2の実施形態の変形例を示す説明図である。 第3の実施形態を示す説明図である。 第3の実施形態におけるステータの変形状態を示す説明図である。 第3の実施形態におけるステータを変形状態を示す説明図である。 第3の実施形態における交流電圧の印加の状態を示す説明図である。 他の実施形態におけるステータを示す説明図である。 第1の実施形態の変形例を示す説明図である。 実験による固有振動数の調整状態を示す説明図である。 ステータ本体に係る他の変形例を示す説明図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態を示すものである。図1(a)にはリニア型超音波モータ1の全体を示しており、(b)および(c)はステータ2のみを示している。なお、ステータ2に貼着される超音波発生素子としての圧電素子に対して電圧を印加する電源部および配線部は省略している。
<リニア型超音波モータの構成>
本実施形態のリニア型超音波モータ1は、図1(a)に示されているように、薄肉本体に形成されているステータ2にスライダ3が挿通された構成である。スライダ3は、ステータ2によって軸線方向へ進退駆動されるものである。
ステータ2は、図1(b)および(c)に示されているように、内部に挿通孔4が形成され、全体的に矩形環状の薄肉板状に構成されたステータ本体20と、この表面20aおよび裏面20bに、それぞれ複数の超音波発生素子(圧電素子)5a,5b,6a,6b,7a,7b,8a,8bが貼着された構成となっている。ここで使用される超音波発生素子(圧電素子)は、縦振動モード(いわゆる31モード)を励起させるものとしている。
ステータ本体20は、薄肉板状であるとともに、材質としても十分な可撓性を有するもので構成されている。すなわち、弾性変形可能な金属材料(例えば、鉄、ステンレス鋼、金、銅、リン青銅など)によって構成されるほか、プラスチック等の合成樹脂によって構成されるものである。材料選択の要点は、後述の超音波発生素子に対する電圧印加により発生する超音波周波数の振動に基づく駆動力によって、変形可能であるとともに、当該駆動力の消除によって復元することができるものが選択される。
挿通孔4は、本実施形態では略正方形としており、具体的には、挿通孔4の平面視における直交する二本の中心線C1,C2を軸として線対称の関係となる形状としている。従って、長方形や円形でもよいが、ここでは正方形としたものを例示している。
また、上述の各超音波発生素子(圧電素子)5a〜8a,5b〜8bは、その二本の中心線C1,C2の線上に配置されている。適宜面積を有する超音波発生素子(圧電素子)5a〜8a,5b〜8bが中心線C1,C2の線上に配置されているとは、個々の超音波発生素子(圧電素子)5a〜8a,5b〜8bの中心点が線上を通過する状態を意味しており、個々の超音波発生素子(圧電素子)5a〜8a,5b〜8bは当該中心線C1,C2を軸として対称に配置されることとなるものである。
また、ステータ本体20の表面20aの側に貼着される超音波発生素子(圧電素子)5a〜8aと、裏面20bの側に貼着される超音波発生素子(圧電素子)5b〜8bとは、同様の位置にそれぞれ設けられている。換言すれば、ステータ本体20を境として両側に対称な位置関係となっている。従って、例えば表面20aの上部に設けられた1個の超音波発生素子(圧電素子)5aの裏面20bには、同じ高さおよび位置にもう1個の超音波発生素子(圧電素子)5bが配置されているものである。
このように表裏20a,20bにおいて対称な位置に2個の超音波発生素子(圧電素子)5a〜8a,5b〜8bを設けることにより、ステータ本体20に対する変形のための駆動力を、表裏20a,20bの両面から付与させることができ、ステータ本体20の変形状態を確実なものとすることができる。
なお、図中のXYはステータ本体20の表面方向を示し、Zは板厚方向を示す。そして、超音波発生素子(圧電素子)5a〜8a,5b〜8bによるステータ本体20の変形方向は、表面方向XYの場合と板厚方向Zの場合とを出現させるものとしており、その重畳的な変形により、スライダ3を軸方向へ進退させるものとなる。また、全ての超音波発生素子(圧電素子)は、電圧の印加により長手方向に伸縮するものとする。すなわち、上下に位置する超音波発生素子(圧電素子)5a,5b,6a,6bは左右方向(X方向)に伸縮し、左右に位置する超音波発生素子(圧電素子)7a,7b,8a,8bは上下方向(Y方向)に伸縮するものである。
<ステータ本体の変形態様>
ここで、上述の超音波発生素子(圧電素子)5a〜8a,5b〜8bによるステータ本体20の変形状態について説明する。図2は、ステータ本体20を板厚方向(Z方向)へ変形させる場合を示している。なお、図2(a)は表面20aに向かって凸状に屈曲させるような変形を示し、図2(b)は裏面20bに向かって凸状(表面20aからは凹状)に屈曲させる状態を示している。このような変形を出現させるため、第1の状態として、図2(a)の場合には、表面20aの超音波発生素子(圧電素子)5a〜8aの全てを伸張させ、裏面20bの超音波発生素子(圧電素子)5b〜8bの全てを収縮させるのである。また、第2の状態として、図2(b)の場合には、上記の場合とは逆となり、表面20aの超音波発生素子(圧電素子)5a〜8aの全てを収縮させ、裏面20bの超音波発生素子(圧電素子)5b〜8bの全てを伸張させるのである。
このように、表裏を単位として同じ状態で伸縮させる場合、交流電圧の印加により、前記の第1の状態を第2の状態を交互に繰り返し出現させることができる。これを下式(1)〜(4)により説明する。
Figure 2021136864
上記式において、表面20aの側と裏面20bの側とが逆位相となればよいことから、上記のような第1の状態と第2の状態の繰り返しの場合には、φ=0とし、φ=φ=πとすればよい。
また、図3は、ステータ本体20を表面方向(XY方向)へ変形させる場合を示している。なお、図3(a)は左右方向(X方向)に収縮させ上下方向(Y方向)に伸張させる変形を示し、図3(b)は左右方向(X方向)に伸張させ上下方向(Y方向)に収縮させる状態を示している。このような変形を出現させるため、第3の状態として、図3(a)の場合には、上下に位置する超音波発生素子(圧電素子)5a,5b,6a,6bを収縮させ、左右に位置する超音波発生素子(圧電素子)7a,7b,8a,8bを伸張させるのである。また、第4の状態として、図3(b)の場合には、上記の場合とは逆となり、上下に位置する超音波発生素子(圧電素子)5a,5b,6a,6bを伸張させ、左右に位置する超音波発生素子(圧電素子)7a,7b,8a,8bを収縮させるのである。
そして、この場合においても、交流電圧を印加することにより、上記のような第3の状態と第4の状態とを交互に繰り返し出現させることができる。これを上式(1)〜(4)によって説明すれば、表面20aの側と裏面20bの側とは同位相で、上下の超音波発生素子(圧電素子)5a,5b,6a,6bと左右の超音波発生素子(圧電素子)7a,7b,8a,8bとが逆位相となればよいことから、上式における位相差φ=0とし、φ=φ=πとすればよい。
なお、上記式に基づく場合には、左右方向への変形を生じさせる状態(XY方向への変形モード)における固有振動数と、板厚方向への変形を生じさせる状態(Z方向への変形モード)における固有振動数とが一致するように設計されている。すなわち、異なる方向への変形状態(変形モード)を生じさせる場合には、その形状・寸法等により、変形時に固有の振動数によって振動することから、想定する振動を惹起させるため、異なる双方の変形モードにおける固有振動数を一致させるのである。
この場合、例えば、図4に示すようにステータ本体の肉厚Tを調整することによって固有振動数を合致させることが可能となる。これまでの研究の結果、ステータ本体の平面形状を適宜な(任意な)寸法で作製し、その後、肉厚調整によって合致させることができた。その際、図4(b)に示すように、ステータ本体の肉厚Tの変化に伴うXY方向への変形モードにおける固有振動数を測定し、また、同様に肉厚Tの変化に伴うZ方向への変形モードにおける固有振動数を測定し、グラフ上における交点をもって固有振動数の一致点として見出すことができる。両モードにおける肉厚変化に伴う固有振動数は線形に変化するため、二つの直線の交点を導くことにより容易に一致点を得ることができる。
このように、それぞれの超音波発生素子(圧電素子)5a〜8bに印加する交流電圧について適宜な位相差を生じさせるように調整することにより、ステータ本体20を表面方向(XY方向)へ変形させ、また、板厚方向(Z方向)へ自在に変形させることができる。
ここで、上式における位相差について、φ=π/2とし、φ=φ=πとすることにより、ステータ本体20に対する表面方向(XY方向)の変形と、板厚方向(Z方向)の変形とを重畳させることができる。
すなわち、φはステータ本体の表面に印加される電圧Eaの周波数との間でπ/2だけの位相差を有することから、ステータ本体20の上下において、表裏間で伸縮状態がπ/2だけズレて作用し、その結果、板厚方向(Z方向)への変形として出現させつつ全体として平面方向(X方向)への伸縮変形としても出現させることができる。他方、ステータ本体20の左右においては、表裏間で位相差はないことから、左右が同時に伸縮することとなり、ステータ本体の表面に印加される電圧Eaの周波数との間にπの位相差を有することから、左右の伸縮に対して逆の動作を出現させることとなる。なお、φとの間にはπ/2の位相差を有することから、左右が伸縮する状態においても、最も伸張した状態または収縮した状態からπ/4だけズレた状態において、ステータ本体20は、上下に伸縮された状態となり得るものとなる。
このように振動させる場合、上下方向に配置される超音波発生素子(圧電素子)5a,5b,6a,6bが一つの素子群を形成し、左右に配置される超音波発生素子(圧電素子)7a,7b,8a,8bによってもう一つの素子群が形成される。そして、一方の素子群は、専ら平面方向(X方向)への変形を出現させ、他方の素子群は、専ら板厚方向(Z方向)への変形を出現させることとなるのである。
<ステータによるスライダの駆動>
ステータ本体20は、上記のような変形態様となることから、上述のように、ステータ本体20に対する表面方向(XY方向)の変形と、板厚方向(Z方向)の変形とを重畳させる(位相差をφ=π/2、φ=φ=πとする)ことにより、内部周縁と当接するスライダ3を軸線方向へ進退させることが可能となる。この状態を図5に示す。
図5は、ステータ本体20を縦断面によって示した図である。なお、スライダ3の表面位置は図中において一点鎖線で示し、挿通孔4の上下に位置する内側周縁41,42がスライダ3に当接する当接領域として示している。なお、スライダ3の表面が一定であるものと仮定する。
駆動力を付与する前段階では、ステータ本体20を上下方向(Y方向)に伸張した状態である(図5(a))。この場合には、当接領域41,42はスライダ3の表面に当接しない状態(非当接状態)となっている。なお、説明の便宜上、図5(a)ではステータ本体20は平面的に伸張した場合を示している。この状態から、ステータ本体20の変形状態が遷移すると、ステータ本体20は上下方向(Y方向)に徐々に収縮し、また板厚方向(Z方向)へ湾曲することとなる(図5(b))。この状態で、当接領域41,42の一部がスライダ3の表面に当接する状態(当接状態)となる。
さらに、ステータ本体20の変形状態が遷移すると、上記のような当接状態を維持しつつ、ステータ本体20は上下方向(Y方向)に限界まで収縮し、また板厚方向(Z方向)への湾曲は逆向きへ進むこととなり(図5(c))、当接領域41,42の位置が前方(図中の右方向)へ移動する。さらに、ステータ本体20が逆向きに湾曲する状態(図5(d))となるまで、当接領域41,42の移動は継続される。なお、ステータ本体20が逆向きに湾曲する状態(図5(d))では、既に上下方向(Y方向)への伸張が開始されることから、その後、当接領域41,42は、再びスライダ3の表面から離れる状態(非当接状態)となる(図5(e))。このように、当接領域41,42による当接状態が維持されつつ、当該当接領域41,42が移動することにより、スライダ3の表面を前方で押し出すことができるのである。そして、再び当接状態となり(図5(b))、移動する(図5(c)および(d))ことによって、スライダに対して、断続的ではあるが、軸線方向への推進力を付与することができるのである。なお、スライダ3を後退させる場合には、位相差を逆にズレた状態で電圧を印加すればよいものとなる。これらの位相差はジェネレータによって調整すればよい。
上述のような駆動力を生じさせる当接領域41,42は、図6に示すように、その板厚方向の一頂点(図中・印)について観察すると、緩やかに曲線をもって上下方向および左右方向に移動しており、概ね楕円軌道となっている。現実にスライダに当接する部分は、当該一頂点(・印)とは異なる場合となり得るが、上記のように略楕円軌道による当接領域41,42の運動により、ステータ本体20の当接領域41,42が、断続的にスライダを軸線方向へ誘導するものとなる。
なお、この略楕円軌道は、前述のように、ステータ本体20に対する表面方向(XY方向)の変形と、板厚方向(Z方向)の変形とを重畳させる際に例示した位相差(φ=π/2、φ=φ=π)のうち、例えば、φ=π/2の位相差を変更することにより、軌道を変更させることができる。そのような場合には、断続的に規則的な駆動力は、スライダに対する進退方向への一時的かつ瞬間的な駆動力の提示をも可能にする。これは、当接領域41,42によるスライダとの接触時間を短くする(瞬間的なものとする)ことにより、当接するという概念よりも突き当てるような概念に近似した状態とするものである。接触時間が短いことから、当該接触による駆動力は概ね一方向に限定されるようになり、その方向をスライダの進退方向に略平行となる状態とすれば、断続的な進退駆動を可能にし得るものとなる。
<第2の実施形態>
図7(a)は、第2の実施形態を示すものである。本実施形態では、スライダ3を軸線方向に上下二分割とし、上部構成部31と下部構成部32とを中央で連結しつつ、圧縮バネ33,34を介在させることによって上下方向に付勢した構成となっている。このような構成の場合には、圧縮バネ33,34の反発力により、スライダ3は上下方向に付勢されるから、ステータ本体20の挿通孔4の上下に位置する内側周縁41,42に当接可能となる。このような方法により当接領域41,42を形成されることも可能である。
<変形例>
ステータ2の変形例として、図7(b)および図7(c)を例示する。図7(b)は表面側からの図であり、図7(c)は裏面側からの図である。これらの図に示されるように、左右に配置されるべき超音波発生素子(圧電素子)は、ステータ本体20の側面20c,20dに1箇所のみ設けられた素子7,8をもって、前記の左右方向に配置された(他方の)素子群7a,7b,8a,8bと同様に作動させているものである。これは、左右の素子群7a〜8bは、上下方向(Y方向)への伸縮を駆動させるものであるため、側面20c,20dによっても作動が可能となり得るものである。
<他の変形例>
ステータに係る他の変形例としては、図8(a)に示すように、挿通孔104を円形とし、円環状の板状のステータ本体120を使用するものを例示する。このような構成のステータ本体120にあっては、任意に設定した直交方向の中心線C1,C2によって上下方向および左右方向の対称形状を把握することにより、各超音波発生素子(圧電素子)105,106,107,108を設けることができる。また、ここでは、超音波発生素子(圧電素子)105,106,107,108をステータ本体120の表面にのみ設ける構成を同時に例示している。スライダ(図示せず)に対する進退方向への駆動力は、上述のように、平面方向および板厚方向への変形に伴うものであるから、表裏対称に設けなくても同様の変形を出現させることができればよいからである。なお、そのような変形を容易に出現させるために、材質または板厚などを設計することが必要であることは言うまでもない。
また、上記のように挿通孔104を円形とする場合、その内部周縁において当接領域を形成するため、図8(b)に示すように、スライダ103として、母線方向に開口溝を有する円管部材(断面略C字形部材)によって設けることができる。この円管部材は、僅かに楕円形状とし、開口溝を短軸方向の一方に設けたものとしている。従って、長軸方向には開口溝が存在しないことから、これを当接領域となるべき方向(図は上下方向を例示)に向けて配置することにより、楕円形状の円管の長軸方向が圧縮されて弾性変形し、その復元力をもって付勢させることができるのである。
なお、挿通孔104を図示のように円形とする場合には、周辺に配置する超音波発生素子(圧電素子)105,106,107,108に印加する電圧の位相差を変化させることにより、回転駆動も可能である。この場合、楕円形状の円管としてスライダ103は、挿通孔104の内側周縁の全体(全周)に対して付勢できるように設計するものとなる。
<第3の実施形態>
図9は、第3の実施形態を示すものである。本実施形態は、基本的には、前掲のステータ2の変形例(図7(b)、(c)参照)を、さらに変形したものである。前掲の変形例では、左右に配置されるべき超音波発生素子(圧電素子)7,8を、ステータ本体20の側面20c,20dに1箇所のみ設けた構成とし、上下方向(Y方向)への伸縮を駆動させるものであったが、本実施形態では、ステータ本体20の残る側面20e,20fに対して、上下に配置すべき超音波発生素子(図7(c)参照)圧電素子5,6を各1箇所に設ける構成としたものである。
ここで、前記圧電素子7,8は、前掲の変形例と同様に、一方の素子群として、ステータ本体20に対して表面方向の上下(Y方向)への伸縮させるように駆動するものとする場合、変更した圧電素子5,6は、他の素子群として、ステータ本体20に対し、板厚方向(Z方向)へ変形させるために設けられる。従って、当該圧電素子5,6は、前記圧電素子7,8のように伸縮させるものではなく、曲げ方向へ変形させる必要がある。そこで、伸縮させるための圧電素子7,8は、縦振動モード(いわゆる31モード)を励起させるものとする一方、曲げ方向へ変形させるための圧電素子5,6は、厚みすべり振動モード(いわゆる15モード)を励起させるものとしている。
このように、厚みすべり振動モードの圧電素子5,6を使用することにより、交流電圧を印加された圧電素子5,6は、厚みすべり振動を繰り返すこととなり、結果的には、ステータ本体20に対し、側面20e,20fを介して曲げ振動モードを励起させることが可能となる。なお、2箇所に分かれて配置される二つの圧電素子5,6は、同時に同じ方向へ曲がるように振動させている。
<第3の実施形態におけるステータ本体の変形態様>
本実施形態における超音波発生素子(圧電素子)5,6,7,8によるステータ本体20の変形状態について説明する。図10は、ステータ本体20を板厚方向(Z方向)へ変形させる場合を示している。なお、図10(a)は表面20aに向かって凸状に屈曲させるような変形を示し、図10(b)は裏面20bに向かって凸状(表面20aからは凹状)に屈曲させる状態を示している。このような変形を出現させるためには、上述の他方の素子群(厚みすべりモードの圧電素子)5,6により、曲げ振動モードを励起させるのである。2箇所に分かれて配置される二つの圧電素子5,6は同じ方向へ曲げ振動が励起されるものであるから、当該圧電素子5,6の振動の励起により、ステータ本体20を、表面20aを凸状(図10(a))とし、または凹状(図10(b))とすることができる。
上記のようなステータ本体20の板厚方向(Z方向)への変形(屈曲)により、挿通孔4の径(内径)は、凹状となる面(図10(a)では表面側、図10(b)では裏面側)において縮径され、凸状となる面(図10(a)では裏面側、図10(b)では表面側)において拡径される。その結果、縮径される側の内側周縁(特に部分的端縁)が当接領域としてスライダに当接して、板厚方向(Z方向)への変形時にスライダの軸方向への推力を生じさせることとなる。
他方、図11は、ステータ本体20を表面方向(上下方向(Y方向))へ伸縮させる場合を示している。なお、図11(a)は伸張状態を示し、図11(b)は収縮状態を示している。このような変更を出現させるためには、上述した一方の素子群(縦振動モードの圧電素子)7,8によって励起されるものである。2箇所に分かれて配置される二つの圧電素子7,8は同時に伸張・収縮を繰り返すものであり、挿通孔4の左右両側の側面を介して同時に伸縮させることにより、ステータ本体20を全体として上下方向(Y方向)に伸縮されるものである。
このような伸縮変形に伴って挿通孔4の径(内径)も変形し、伸張時(図11(a)参照)には、上下方向(Y方向)に引き延ばされた扁平状態となり、また、収縮時(図11(b)参照)では、上下方向(Y方向)が圧縮された扁平状となる。そして、伸張状態においては、挿通孔4の内側周縁(特に上下方向の縁部)はステータから離れる方向に変位し、収縮状態において、当該内側周縁(特に上下方向の縁部)は、ステータの表面に当接するように変位することとなる。
この伸縮変形と、上述の屈曲変形とを組み合わせることにより、内側周縁(特に上下方向の縁部)が、ステータの表面に当接・非当接を繰り返しつつ当該当接による当接領域が変位して、ステータを軸方向(Z方向)へ順次移動させることとなる。このときのスライダに対する当接領域の変位の状態は、第1の実施形態の場合とほぼ同様となる(図5参照)ものである。
ところで、挿通孔4は、本実施形態において円形として示しているが、例えば、長尺方向と短尺方向とを有する楕円形とし、長尺方向を左右方向(X方向)とし、短尺方向を上下方向(Y方向)とすることにより、挿通孔4の長尺方向に位置する内側周縁部分は、上記変形においてもスライダの表面に当接しない状態とさせることができる。仮に当接することがあるとしても推力を付与し得ない程度となる。その結果として、挿通孔4の短尺方向に位置する内側周縁部分の変位によってのみスライダを作動させることができるものとなる。これは挿通孔4が四角形(矩形)とする場合も同様となる。
なお、上述の変更において、上下方向に配置した圧電素子5,6が、屈曲変形を現出させるもの(厚みすべり振動を励起させる他方の素子群)とし、左右方向に配置した圧電素子7,8が、伸縮変形を出現させるもの(伸縮振動を励起させる一方の素子群)としているが、この両者は、相互に逆に設けることができることは言うまでもない。
<振動の同時励起>
上述のように、素子群(表面方向の変形を導出する圧電素子)5,6と、素子群(板厚方向の変形を導出する圧電素子)7,8は、それぞれの固有振動数を一致させるため、第1の実施形態と同様に(図4参照)、板厚(ステータ本体20の肉厚T)を調整するものである。
また、各素子群は2箇所に分かれて、それぞれ二つの圧電素子5,6,7,8が配置されており、それぞれの素子群ごとに同じ振動を励起させるため、印加する交流電圧の周期を調整している。このような調整された振動の励起を励起させるための構成として、例えば、図12に示すような電圧の印加の方法がある。
図12は、他方の素子群(厚みすべり振動を励起させる圧電素子)5,6に対する場合を例示した図である。この図に示されるように、ステータ2の上下に分かれて配置される圧電素子5,6は、それぞれ相互に分極方向を反転させたものとし(図中白抜き矢印参照)、その双方の圧電素子5,6に対して印加する交流電圧の極性を相互に反転さることによるものである。
ここで、圧電素子5,6に印加させるべき電圧は、ファンクションジェネレータ11によって任意の周波数と波形の交流電圧信号を生じさせ、アンプ12を介して信号を増幅したうえ、トランス13によって変圧させるのであるが、このとき、トランス13の巻線比を1+1:1とすることにより、一方の電極から出力される交流電圧と、他方の電極から出力される交流電圧は、相互に極性が反転する。例えば、トランス13に対してAEsin(2πfE)を入力する場合(但し、AEは印加電圧の電圧振幅、fEは印加電圧の周波数を示す)、一方の電極による出力は、AEsin(2πfE)となるが、他方の電極による出力は、-AEsin(2πfE)となる。これにより、上下に分かれて配置される二つの圧電素子5,6の分極方向が相互の異なる状態においても、同じ状態で厚みすべり振動を励起させることができる。
さらに、上記のようなトランス13による交流電圧を印加する場合、ステータ本体20が導電性を有する材料(例えば金属)によって構成される場合、相互の圧電素子5,6の間が導通することとなるから、ステータ本体20にグランド線などの配線を設ける必要がなくなるのである。これは、本発明が目的とする小型化において困難となり得るグランド線の取り付けを不要にするものである。
なお、上記のような分極方向の向きと、印加電圧の極性の相互反転は、一方の素子群(伸縮振動を励起させる圧電素子)7,8に対する場合も同様である。この場合も分極方向を相互に反転させることにより(図中白抜き矢印参照)、同種のトランスによる交流電力を印加させれば、交流電圧の極性を反転させて印加させることで、同じ伸縮振動を励起させることができる。
また、上記の伸縮振動と厚みすべり振動とを適宜重畳させて、ステータ本体20を伸張または収縮した状態において、同時に板厚方向への屈曲を生じさせるために、交流電圧の位相を相互に異ならせることができる。例えば、厚みすべり振動を正弦波とする場合、伸縮振動を余弦波とすること(同じ固有振動数)により、ステータ本体20が伸縮変形するタイミングと、板厚方向へ屈曲するタイミングとの間に時間的差異を設けることができることから、当接領域の移動を楕円軌道とすることができる(図5参照)。この楕円軌道の出現により、ステータの進退方向への駆動を円滑にすることができるものとなる。
<他の実施形態>
図13に他の実施形態を示す。図のステータ202,302は、いずれもステータ本体220,320が環状ではなく、一部が連続しない状態としている。前述の第1の実施形態で作動させる場合のように、左右に配置される超音波発生素子(圧電素子)208,308は、ステータ本体220,320を上下方向へ変形させるものであった。そこで、図示の実施形態では、左右の一方(図は右側)に一つの超音波発生素子(圧電素子)208を設け、他方(図は左側)の側が連続しないことで、上下方向への変形を可能にさせるものである。
また、図13(a)は、上下に設けるべき超音波発生素子(圧電素子)205,206を対称な位置に設けているが、図13(b)に示すように、その一方(図は下方)を設けず、残りの一方(図は上方)のみとしてもよい。この場合、ステータ本体320の板厚方向への変形は、専ら上方のみに出現するため、挿通孔304の内側周縁のうち、上部の内側周縁341が当接領域として機能することとなる。
上記構成においては、ステータ本体220,320の連続していない部分が、溝状となることから、この溝状部分をスライダの移動方向を規制する用途に利用することができる。すなわち、例えば、スライダの側面に、スライダの長手方向に連続する板状部材を、上記溝状部分に挿入可能な状態で設けるのである。この板状部材が溝状部分に挿入した状態で、スライダとともに進退方向へ移動ことにより、当該スライダの移動姿勢を安定的に保持させることができる。
<スライダに対するステータの配置上の変形例>
スライダに対するステータの配置の状態は、スライダの軸線方向(進退方向)に対してステータ本体の表面を直交方向する場合に限定されず、角度を設けて設置してもよい。その例を図14に示す。
図14(a)は、斜視図であり、図14(b)は縦断面図である。これらの図に示しているように、スライダ403の軸線方向に対し、ステータ402の表面は、大きく傾斜させた状態となっている。この場合には、ステータ402を構成する本体を傾斜方向に長尺に構成することができることとなり、周波数を小さくしながら所定の超音波振動を生じさせることができる。これにより、振動効率を向上させることも可能となる。
なお、この変形例の場合には、上下の当接領域が、スライダ403の軸線方向に前後することとなるため、上下の当接領域から得られる駆動力をスライダ403に伝達させるため、ステータ402の位置を固定し、また、スライダ403の進退方向を規制させることが好ましい。特定の装置内(例えば、携帯端末に内蔵されるカメラ等)に内蔵するような場合には、当該装置内において、両者は所定の可動域を与えられつつ設置されることとなるから、そのような設置の際に双方の位置等が固定されることとなり得る。
<実験例>
ここで、第1の実施形態に示したように、ステータ本体の表面および裏面に対象となる縦振動モード(いわゆる31モード)を励起させる超音波発生素子(圧電素子)を貼着した場合のステータについて、ステータ本体の左右方向への変形を生じさせる状態(XY方向への変形モード)における固有振動数と、板厚方向への変形を生じさせる状態(Z方向への変形モード)における固有振動数とが一致させる設計方法の具体的な実験例を示す。実験において、ステータ本体は、リン青銅(ヤング率=110GPa、密度=8.78×10kg/m、ボアソン比=0.341)を使用し、圧電素子は、全てPZT(ヤング率=80GPa、密度=7.8×10kg/m、ボアソン比=0.292、機械的品質係数=2500)を使用した。個々の寸法については、ステータ本体は、図15(a)に示すようなものとし、肉厚Tを3.6mm〜4.4mmの範囲で変化させることとした。なお、PZTは、全て同寸とし、長さ18mm、幅8mm、肉厚0.5mmとしたものを使用した。
上記のような条件で、肉厚Tの変化に伴うXY方向への変形モードにおける固有振動数の変化と、Z方向への変形モードにおける固有振動数の変化を測定した結果、図15(b)に示すようなグラフの結果を得た。この測定結果から、上記構成のステータにおいては、肉厚4.0mmとするときに両モードにおける固有振動数が一致するものとなった。この実験では、肉厚Tを変化させたが、ステータ本体の外径と内径との寸法差等を指標として両モードにおける固有振動数を一致させる方法もあり得る。さらには、外形状と内形状を変化させたときの状態を指標としてもよい。いずれにおいても両モードにおける固有振動数の変化を測定することにより、比較的容易に一致させることが可能となる。
<実験例2>
次に、第3の実施形態において示した場合のように、縦振動モード(いわゆる31モード)を励起させる超音波発生素子と、厚みすべり振動モード(いわゆる15モード)を励起させる超音波発生素子との異なる二種類を使用したステータについて、作動実験を行った。実験は、ステータ本体にリン青銅を使用し、1辺の長さを1mmの正方形平面とし、肉厚を0.29mmとした。その正方形平面の中央に約0.62mm(短尺方向を0.62mm、長尺方向を0.67mmとする略楕円形)の挿通孔を穿設した。超音波発生素子(圧電素子)は、縦振動モード(31モード)および厚みすべり振動モード(15モード)のいずれについても富士セラミックス社製の圧電素子を使用し、その大きさは0.8×0.3×0.3mmのものを使用した。ステータとしては、直径が0.61mm、長さが40mmのピンゲージを使用した。このピンゲージの重量は94.2mgであった。なお、印加する交流電圧の周波数は、前述したような方法により、肉厚0.29mmとした場合の縦振動モードと厚みすべり振動モードにおける同じ固有振動数を導出し、その結果、周波数は460kHzであった。
上記の条件により、屈曲変形を生じさせる厚みすべり振動モード(15モード)を励起する圧電素子には、AEsin(2πfE)および-AEsin(2πfE)を印加した(但し、AE=100Vとし、fEは460kHzである)。他方、伸縮変形を生じさせる縦振動モード(31モード)を生起させる圧電素子には、AEcos(2πfE)および-AEcos(2πfE)を印加した(但し、AEおよびfEは上記と同様である)。双方の圧電素子に交流電圧をそれぞれ印加したとき、約3ms後にはスライダが21.3mm/sの定常速度で移動する結果を得ることができた。なお、このときのスライダの推力は約1.7mNであった。
<まとめ>
本発明の実施形態は以上のとおりであるから、薄肉のステータ2によってスライダ3を軸線方向に進退させることができるリニア型超音波モータとなり得るものである。これにより、スライダ3の軸線方向への小型化を可能となる。なお、各図のスライダ3は、軸線方向に長尺な状態で図示しているが、これは説明の便宜のためであり、軸線方向へ極めて小型とするリニア型超音波モータを構成する場合には、スライダ3の軸線方向の長さは著しく短尺に設けることができる。また、ステータ2の設置領域が限定的ではあるがスライダ3を長尺とする場合には、ステータ2は薄肉としつつ、スライダ3を長尺に構成してもよい。
なお、上記各実施形態および変形例は、本発明の一例を示すものであって、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではない。従って、上記各構成要素を変形し、他の構成要素を追加するものであってもよい。
例えば、上記実施形態および変形例では、ステータ本体として、正方形または円形の環状に構成したものを示したが、その形状は任意である。基本的には、ステータ本体の外形状と挿通孔の形状とを相似形とすることにより、変形の際に考慮すべき固有振動数を一致させることが容易となるが、肉厚その他の調整により固有振動数を一致させることが可能であるため、相似形でなくてもよいものである。
そこで、例えば、図16(a)〜(c)に示すように、ステータ本体20の外形状と挿通孔4の形状とを異ならせてもよい。この場合、挿通孔4は円形、矩形のほか、六角形でもよいが、対向する部分を対称とするためには、正六角形とすることが好ましい。また、挿通孔4を六角形とする場合には、図16(d)に示すように、ステータ本体20の外形状を六角形の相似形とすることもできる(図16(e))。また、挿通孔4を八角形としてもよく、その他の多角形でもよい。また、ステータ本体20の外形状を多角形としつつ挿通孔4を円形としてもよい(図16(f))。
以上のとおり、本発明は、ステータを小型にしつつスライダを軸線方向へ進退可能に駆動できることから、携帯端末に内蔵されるカメラ等のフォーカス調整用として使用できる。また、顕微鏡のテーブルの駆動用としても使用でき、この場合、微細な超音波モータによるため、テーブルの移動に際して微調整用として好適に作動するものとなる。
1 リニア型超音波モータ
2,102,202,302,402 ステータ
3,103,403 スライダ
4,104,204,304 挿通孔
5,6,5a,5b,6a,6b,105,106,205,206,305 超音波発生素子(圧電素子、他方の素子群)
7,8,7a,7b,8a,8b,107,108,208,308 超音波発生素子(圧電素子、一方の素子群)
11 ファンクションジェネレータ
12 アンプ
13 トランス
20,120,220,320 ステータ本体
20a ステータ本体の表面
20b ステータ本体の裏面
20c,20d,20e,20f ステータ本体の側面
31 スライダの上部構成部
32 スライダの下部構成部
33,34 圧縮バネ
41,42 当接領域(内側周縁)

Claims (12)

  1. ステータに挿通されるスライダを駆動するリニア型超音波モータであって、
    前記ステータは、超音波周波数の振動に基づく駆動力によって変形可能な板状のステータ本体と、該ステータ本体に形成された挿通孔と、前記ステータ本体の適宜位置に設置された複数の超音波発生素子とを備え、
    前記超音波発生素子は、前記ステータ本体を表面方向および板厚方向へ重畳的に変形させることにより、前記挿通孔の内側周縁の位置を径方向および軸線方向に変化させるものであり、
    前記挿通孔の内側周縁には、前記変化の過程において前記スライダに当接する当接領域が形成されていることを特徴とするリニア型超音波モータ。
  2. 前記挿通孔は、平面視における第一の中心線およびこれと直交する第二の中心線を軸として各対称となる形状に設けられ、第一または第二の中心線のいずれか一方の線上に位置する内側周縁に前記当接領域が形成されている請求項1に記載のリニア型超音波モータ。
  3. 前記超音波発生素子は、前記挿通孔の前記第一の中心線上において前記ステータ本体に駆動力を提供する素子群と、前記第二の中心線上において前記ステータ本体に駆動力を提供する素子群とに区分されて設けられ、一方の素子群が前記ステータ本体の表面方向への変形を導出させ、他方の素子群が前記ステータ本体の板厚方向への変形を導出させるものである請求項2に記載のリニア型超音波モータ。
  4. 前記ステータ本体は、表面方向への変形のための固有振動数と、板厚方向への変形のための固有振動数とを一致させており、
    前記超音波発生素子は、前記二つの素子群ごとに少なくとも1個の素子が配置されるものであり、各素子群に配置される素子に対し、相互に特定の位相差を有する周波数の電圧が印加されるものである請求項3に記載のリニア型超音波モータ。
  5. 前記超音波発生素子は、前記二つの素子群ごとに、前記挿通孔を中心とする対称な2箇所に分かれて複数の素子が設けられている請求項3または4に記載のリニア型超音波モータ。
  6. 前記超音波発生素子は、前記二つの素子群ごとに、前記ステータ本体の表面側と裏面側とに対称な状態で同数の素子が設けられている請求項5に記載のリニア型超音波モータ。
  7. 前記超音波発生素子は、前記二つの素子群に区分されつつそれぞれが前記ステータ本体の側面に設けられ、該素子群は、異なる振動モードの素子が配置されるものであり、一方の素子群を構成する素子を縦振動モードとし、他方の素子群を構成する素子を厚みすべり振動モードとするものである請求項3に記載のリニア型超音波モータ。
  8. 前記超音波発生素子は、前記二つの素子群ごとに、前記挿通孔を中心とする対称な2箇所に分かれて複数の素子が設けられており、
    それぞれの素子群を構成する対称な2箇所の素子は、相互に分極方向を反転させて設けられ、該素子に対して印加する交流電圧の極性を相互に反転さるものである請求項7に記載のリニア型超音波モータ。
  9. 前記挿通孔は、短尺方向および長尺方向が直交方向に形成される楕円形または矩形に設けられており、前記第一および第二の中心線は前記短尺方向および前記長尺方向に沿ったものであり、一方の素子群は長尺方向の中心線上に配置され、他方の素子群は短尺方向の中心線上に配置されるものである請求項3〜8のいずれかに記載のリニア型超音波モータ。
  10. 前記挿通孔は、円形、楕円形、正方形、正六角形および正八角形の中から選択される形状としてなる請求項1〜8のいずれかに記載のリニア型超音波モータ。
  11. 前記ステータ本体は、外周形状が前記挿通孔の形状と略相似形である請求項10に記載のリニア型超音波モータ。
  12. 前記スライダは、前記ステータ本体に形成される前記当接領域に対して付勢する付勢手段を有するものである請求項1〜8、10または11のいずれかに記載のリニア型超音波モータ。
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