JP2021134404A - 真空蒸着装置用の蒸着源 - Google Patents
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Abstract
【課題】蒸着物質を高い指向性で放出させることができる真空蒸着装置用の蒸着源を提供する。【解決手段】真空チャンバ1内に配置されて被蒸着物Swに対して蒸着するための真空蒸着装置Dm用の蒸着源DSは、蒸着物質4を収容する収容箱51とこの蒸着物質を加熱する加熱手段53とを備え、被蒸着物に対向する収容箱の上面51aに、加熱により気化または昇華した蒸着物質を放出する放出ノズル6が突設され、放出ノズルに、上方に向かってその通路断面積が次第に縮小する縮小部62aと、縮小部から上方向に向かって通路断面積が次第に拡大する拡大部62bとが設けられる。【選択図】図2
Description
本発明は、真空チャンバ内に配置されて被蒸着物に対して蒸着するための真空蒸着装置用の蒸着源に関する。
この種の蒸着源を備えた真空蒸着装置は例えば特許文献1で知られている。このものは、真空チャンバの底部に配置される蒸着源が、蒸着物質を収容する収容箱とこの蒸着物質を加熱する加熱手段とを備える。収容箱の上面には、加熱により気化または昇華した蒸着物質を放出する円筒状(即ち、その内部の通路断面が円形の輪郭を持つ)の放出ノズルが一方向に所定間隔で複数本突設されている。
ここで、真空雰囲気の真空チャンバ内で収容箱に収容された蒸着物質を加熱して気化または昇華させ、放出ノズルから蒸着物質を飛散させて基板表面に所定の薄膜を成膜するとき、収容箱内の気化または昇華した蒸着物質は、収容箱内の圧力と真空チャンバ内の圧力との差で放出ノズル内の通路を通って(放出ノズル内壁面での衝突を繰り返しながら)、放出ノズル先端のノズル孔(放出開口)から所定の余弦則に従い放出される。このため、放出ノズルの孔軸に対して広い角度範囲で気化または昇華された蒸着物質が真空チャンバ内に飛散される(言い換えると、蒸着物質が放出されるときの指向性が悪い)。
このように放出ノズルから広い角度範囲で気化または昇華された蒸着物質が放出されたのでは、基板への蒸着物質の付着効率を効果的に高めることができないという問題を招来する。また、例えばマスク材越しに基板の一方の面に成膜するような場合には、マスク材で本来遮蔽されるべき領域まで気化または昇華された蒸着物質が回り込んで被蒸着物に付着し、マスク材の開口より大きな輪郭で成膜される(所謂シャドーエフェクト)という不具合が生じる。このため、気化または昇華された蒸着物質を高い指向性で放出させることができる蒸着源の開発が望まれている。
本発明は、以上の点に鑑み、気化または昇華された蒸着物質を高い指向性で放出させることができる真空蒸着装置用の蒸着源を提供することをその課題とするものである。
上記課題を解決するために、真空チャンバ内に配置されて被蒸着物に対して蒸着するための本発明の真空蒸着装置用の蒸着源は、蒸着物質を収容する収容箱とこの蒸着物質を加熱する加熱手段とを備え、被蒸着物に対向する収容箱の上面に、加熱により気化または昇華した蒸着物質を放出する放出ノズルが突設され、放出ノズルに、上方に向かってその通路断面積が次第に縮小する縮小部と、縮小部から上方向に向かって通路断面積が次第に拡大する拡大部とが設けられることを特徴とする。なお、本発明において、「次第に」とは、通路断面積が連続して縮小または拡大する場合だけでなく、通路断面積が段階的に縮小または拡大することを含むものとする。
本発明によれば、収容箱内の気化または昇華した蒸着物質は、収容箱内の圧力と真空チャンバ内の圧力との差で収容箱内を臨む放出ノズルの基端開口からその内部の通路へと引き込まれる。そして、この引き込まれた蒸着物質が放出ノズルの縮小部を通過するときに、例えば、亜音速(200〜300m/s)まで加速され、この縮小部に連続して設けられる放出ノズルの拡大部を通過するときに、音速または超音速まで更に加速される。
このように本発明では、拡大部の下端から放出ノズル先端までの間でここを通過する蒸着物質は、加速されていることでその指向性が向上して通路内面に衝突することなく、放出ノズル先端から指向性良く(即ち、角度範囲が広がらずに)放出される。これに加えて、例えば通路内面に衝突して収容箱に戻る蒸着物質の量が減ることで、単位時間当たりに基板に到達する蒸着物質の量も増加する。結果として、被蒸着物への蒸着物質の付着効率を向上させることができる。しかも、マスク材越しに被蒸着物に成膜するような場合でも、シャドーエフェクトの発生を可及的に抑制することができる。なお、本発明は、放射ノズルの通路断面、例えば、円形または一方向に長手のスリット状の輪郭を持つものに適用することができる。
以下、図面を参照して、被蒸着物を矩形の輪郭を持つ所定厚さのガラス基板(以下、「基板Sw」という)とし、基板Swの片面に蒸着して所定の薄膜を成膜する場合を例に本発明の蒸着装置用の蒸着源DSを説明する。以下においては、「上」、「下」といった方向を示す用語は図1を基準として説明する。
図1(a)及び(b)を参照して、Dmは、本実施形態の蒸着源DSを備える真空蒸着装置である。真空蒸着装置Dmは、真空チャンバ1を備え、真空チャンバ1には、特に図示して説明しないが、排気管を介して真空ポンプが接続され、真空チャンバ1内を所定圧力(真空度)に真空排気して保持できるようになっている。また、真空チャンバ1の上部には、基板搬送装置2が設けられている。基板搬送装置2は、成膜面としての下面を開放した状態で基板Swを保持するキャリア21を有し、図外の駆動装置によってキャリア21、ひいては基板Swを真空チャンバ1内の一方向に所定速度で移動するようになっている。基板搬送装置2としては、公知のものを利用できるため、これ以上の説明は省略する。また、以下においては、蒸着源DSに対する基板Swの相対移動方向をX軸方向、X軸方向に直交する基板Swの幅方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する鉛直方向をZ軸方向とする。
基板搬送装置2によって搬送される基板Swと蒸着源DSとの間には、板状のマスクプレート3が設けられている。本実施形態では、マスクプレート3は、基板Swと一体に取り付けられて基板Swと共に基板搬送装置2によって搬送されるようになっている。なお、マスクプレート3は、真空チャンバ1に予め固定配置しておくこともできる。マスクプレート3には、板厚方向に貫通する複数の開口31が形成され、これら開口31がない位置にて蒸着材料の基板Swに対する付着範囲が制限されることで、所定のパターンで基板Swに蒸着されるようになっている。マスクプレート3としては、インバー、アルミ、アルミナやステンレス等の金属製のものの他、ポリイミド等の樹脂製のものが用いられる。そして、真空チャンバ1の底面には、X軸方向に移動される基板Swに対向させて本実施形態の蒸着源DSが設けられている。
図2も参照して、蒸着源DSは、Y軸方向に長手の収容箱51を有する。収容箱51内には内容器としての金属製の坩堝52が格納され、坩堝52内に蒸着物質4が充填されるようになっている。蒸着物質4としては、基板Swに成膜しようとする薄膜に応じて金属材料や有機材料が適宜選択され、顆粒状またはタブレット状のものが利用される。坩堝52と収容箱51との間には、坩堝52の外壁面をその全体に亘って覆うようにシースヒータ等の加熱手段53が設けられ、坩堝52を介して蒸着物質4を気化温度または昇華温度まで加熱できる。
収容箱51の上面(基板Swとの対向面)51aには、Y軸方向に所定間隔で複数本の放出ノズル6が突設されている。各放出ノズル6は、Z軸方向に一致する孔軸61を持ち、その内部の通路62が円形の断面を有する円筒体で構成され、その基端側の開口6aが、収容箱51の上面51aに設けた断面円形の透孔51bに夫々連通し、先端側(Z軸方向上側)の開口6bが気化または昇華した蒸着物質(以下、これを「蒸着物質4a」という)の放出開口6bとなる。開口6aと透孔51bとは同等の面積(例えば、直径が5〜20mm程度の範囲)に設定されている。また、内部通路62は、開口6aから上方に向かってその通路断面積が次第に縮小(縮径)する縮小部62aと、断面積が最小となる縮小部62aの部分から連続させて、上方向に向かって通路断面積が次第に拡大(拡径)して放出開口6bに通じる拡大部62bとを備える。
ここで、上記真空蒸着装置Dmにより基板Swの下面に所定の薄膜を蒸着する場合、真空チャンバ1内の真空雰囲気中にて加熱手段53を作動させて蒸着物質4を加熱する。すると、収容箱51内で蒸着物質4が気化または昇華し、蒸着物質4aが、真空チャンバ1内との圧力差で収容箱51の上面51aの透孔51bから各放出ノズル6の開口6aを経て内部通路62内へと引き込まれる。このとき、引き込まれた蒸着物質4aが縮小部62aを通過するときに、少なくとも亜音速(200〜300m/s)まで加速され、この縮小部62aに連続して設けられる放出ノズル6の拡大部62bを通過するときに、音速または超音速まで更に加速されるように内部通路62が形成されている。即ち、蒸着物質4の種類や上記圧力差に応じて、縮小部62aの縮径率(即ち、開口6aの断面積に対する最小の通路断面積の比)、拡大部62bの拡径率(即ち、放出開口6bの断面積に対する最小の通路断面積の比)や、縮小部62a及び拡大部62bのZ軸方向高さが適宜設定されている。
そのため、真空蒸着装置Dmにて各放出ノズル6先端の放出開口6bから蒸着物質4aを放出させ、基板搬送装置2によって基板SwをX軸方向に搬送し、収容箱51に対してX軸方向に相対移動する間で基板Swの下面にマスクプレート3越しに所定の薄膜を成膜する場合に、基板Swへの蒸着物質4aの付着効率を向上させることができ、しかも、例えば内部通路62内面に衝突して収容箱51に戻る蒸着物質4aの量が減ることで、単位時間当たりに基板Swに到達する蒸着物質4の量を増加させることができる。その上、基板Swに斜入射する蒸着物質4aが減ることで、シャドーエフェクトの発生を可及的に抑制することができる。
上記効果を確認するため、上記真空蒸着装置Dmを用いて次の評価を行った。即ち、蒸着物質4としてAlq3:トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウムを用い、真空チャンバ1内を所定圧力(10−5Pa)まで真空排気した後、加熱手段53を稼働させて蒸着物質4を昇華させ、基板Swに成膜した。このとき、放出ノズル6として、放出開口6bの口径18.6mm、基端側の開口6aの口径8.0mm、縮小部62a上端の口径2mm、縮小部62aのZ軸方向高さ1.5mm、拡大部62bのZ軸方向高さ22.8mmとし、放出ノズル6から放出される蒸着物質4aの放出角度分布を評価した。なお、比較実験1または比較実験2として、放出開口6bの口径18.6mmまたは8.0mm、Z軸方向高さ25.8mmの円筒状のものを放出ノズル6として用いて、放出ノズル6から放出された蒸着物質4aの放出角度分布を評価した(図3参照)。
図3のグラフは、横軸が放出ノズル6から放出された蒸着物質4aの放出角度、縦軸が放出された蒸着粒子数の相対値を示している。図3中に、破線または一点破線で示す比較実験1または比較実験2に対して、図3中に実線で示す発明実験では、放出ノズル6の孔軸61に対して13〜20度の角度範囲で放出される蒸着物質4aの割合が増加することが確認された。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、放出ノズル6の全長に亘って縮小部62aと拡大部62bとが連続して設けられるものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、放出ノズル6の拡大部62bを通過するときに蒸着粒子4aが音速以上に加速されていれば、これに限定されるものではない。例えば、放出ノズル6の基端側や先端側にストレート部(図示せず)が設けられていてもよく、このとき、基端側のストレート部と先端側のストレート部との径を互いに変える(例えば、先端側のストレート部の径を大きくする)ことができる。
また、上記実施形態では、縮小部62aと拡大部62bとは、その断面積が連続して縮小または拡大するものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、通路断面積が段階的に縮小または拡大していてもよく、また、放出ノズル6の内部通路62の断面形状が円形のものを例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図4に示すように、放出ノズル6の放出開口62bが矩形状や長円状のスリット形状のものにも本発明を適用することができる。更に、上記実施形態では、全ての放出ノズル6の孔軸61をZ軸方向に一致させたものを例に説明したが、その孔軸61をY軸方向外方に傾く姿勢とすることもできる。
Dm…真空蒸着装置、DS…蒸着源、Sw…基板(被蒸着物)、1…真空チャンバ、4…蒸着物質、51…収容箱、51a…収容箱の上面、53…加熱手段、6…放出ノズル、62a…縮小部、62b…拡大部。
Claims (2)
- 真空チャンバ内に配置されて被蒸着物に対して蒸着するための真空蒸着装置用の蒸着源であって、
蒸着物質を収容する収容箱とこの蒸着物質を加熱する加熱手段とを備え、被蒸着物に対向する収容箱の上面に、加熱により気化または昇華した蒸着物質を放出する放出ノズルが突設されるものにおいて、
放出ノズルに、上方に向かってその通路断面積が次第に縮小する縮小部と、縮小部から上方向に向かって通路断面積が次第に拡大する拡大部とが設けられることを特徴とする真空蒸着装置用の蒸着源。 - 前記放射ノズルの通路断面は、円形または一方向に長手のスリット状の輪郭を持つことを特徴とする請求項1記載の真空蒸着装置用の蒸着源。
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