JP2021134331A - 導電性高分子複合体、導電性組成物、および塗膜 - Google Patents

導電性高分子複合体、導電性組成物、および塗膜 Download PDF

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Abstract

【課題】導電性高分子複合体の構造を制御することにより、製膜温度の違いや塗膜の伸縮による導電性の変化を抑制できる導電性高分子複合体の提供。【解決手段】PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))とポリアニオンからなり、ラマンスペクトルの1260cm−1におけるピーク強度をI1、1420cm−1におけるピーク強度をI2とし、光吸収スペクトルの波長950nmにおける吸光度をA1、波長2300nmにおける吸光度をA2としたときに、下記式(1):α=(I1/I2)−0.135×(A2/A1)(1)で導かれる導電性ポテンシャルαが−0.23以上である、導電性高分子複合体。【選択図】なし

Description

本発明は、導電性高分子複合体、導電性組成物、および塗膜に関する。
導電性高分子は、偏光板保護フィルムや透明タッチパネル等の透明電極、電磁波シールド、固体電解コンデンサといった各分野において使用されている。導電性高分子の中でも、導電性や水分散性、透明性、熱安定性の高さから、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)が特に知られており、これはポリアニオンとの導電性高分子複合体として用いられることが多い。ポリアニオンはドーパントイオンとしての役割と、水に不溶なPEDOTを安定的に分散させる役割を持つ。
PEDOTとポリアニオンを含む導電性高分子複合体は、特許文献1のように重合条件等の工夫により導電性を調整できる事が知られている。しかし、導電性の調整だけでは、近年多様化する用途に対して十分なソリューションを提供できなくなってきている。例えば、ウェアラブル用途やストレッチャブル用途においては、導電性高分子を含む塗膜を繰り返し伸縮しても安定した導電性を維持する必要があるが、従来は伸縮により導電性が低下することがあった。また、導電性の厳密な管理が求められるセンサー用途や電磁波シールド用途においては、製膜時の乾燥設備の温度ムラによる導電性の僅かなバラつきが問題視されることがあった。
特開2004−59666号公報
本発明は、導電性高分子複合体の構造を制御することにより、製膜温度の違いや塗膜の伸縮による導電性の変化を抑制することを目的とする。
本発明者らは、PEDOTとポリアニオンからなる導電性高分子複合体の構造に着目し、ラマンスペクトルと光吸収スペクトルにより導かれる導電性ポテンシャルが特定の範囲内にあるときに塗膜の伸縮後の導電性低下の抑制、及び導電性の温度依存性の低減を高度に達成できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、PEDOTとポリアニオンからなり、ラマンスペクトルの1260cm−1におけるピーク強度をI、1420cm−1におけるピーク強度をIとし、光吸収スペクトルの波長950nmにおける吸光度をA、波長2300nmにおける吸光度をAとしたときに、下記式(1):
α=(I/I)−0.135×(A/A) (1)
で導かれる導電性ポテンシャルαが−0.23以上である、導電性高分子複合体に関する。
/Iが0.05以上であることが好ましい。
/Aが0.5〜7であることが好ましい。
また、本発明は、前記導電性高分子複合体、および水を含む、導電性組成物に関する。
導電性組成物は、さらに非導電性樹脂を含むことが好ましい。
導電性組成物は、さらに沸点100℃以上の有機溶剤を1重量%以上含有することが好ましい。
導電性組成物は、pHが5以上であることが好ましい。
導電性組成物は、延伸率40%で10回伸縮させた後の表面抵抗率が、伸縮前の表面抵抗率の2.5倍以下である塗膜を製造するためのものであることが好ましい。
導電性組成物は、40℃で乾燥させたときの表面抵抗率が、150℃で乾燥させたときの表面抵抗率の1.7倍以下となる塗膜を製造するためのものであることが好ましい。
また、本発明は、前記導電性組成物を乾燥してなる塗膜に関する。
本発明の導電性高分子複合体は、導電性ポテンシャルが特定の範囲内にあるため、この導電性高分子複合体を含む塗膜は、塗膜形成時の乾燥温度による導電性への影響が抑制されており、塗膜の伸縮後の導電性の低下も抑制されている。
<<導電性高分子複合体>>
本発明の導電性高分子複合体は、PEDOTとポリアニオンからなり、ラマンスペクトルの1260cm−1におけるピーク強度をI、1420cm−1におけるピーク強度をIとし、光吸収スペクトルの波長950nmにおける吸光度をA、波長2300nmにおける吸光度をAとしたときに、下記式(1):
α=(I/I)−0.135×(A/A) (1)
で導かれる導電性ポテンシャルαが−0.23以上である。
本発明では導電性高分子としてPEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))を用いる。PEDOTの重量平均分子量は、2000〜100000であることが好ましく、2400〜50000であることがより好ましく、2600〜20000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が2000未満であると、塗膜を形成した場合の導電性が低下する傾向がある。
ポリアニオンは、PEDOTのドーパントとして機能する。また、水に不溶なPEDOTとイオン対をなすことによりPEDOTを水中に安定に分散させる。
ポリアニオンの種類は、PEDOTとイオン対を形成できれば特に限定されないが、例えば、カルボン酸ポリマー類(例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリメタクリル酸等)、スルホン酸ポリマー類(例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸等)等が挙げられる。これらのカルボン酸ポリマー類及びスルホン酸ポリマー類はまた、ビニルカルボン酸類及びビニルスルホン酸類と他の重合可能なモノマー類、例えば、アクリレート類、スチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル化合物との共重合体であっても良い。これらの中では、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩、ポリスチレンスルホン酸のアミン塩又はアンモニウム塩が好ましい。
ポリスチレンスルホン酸のアミン塩について、アミンとしては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン(TMA)、トリエチルアミン(TEA)、トリ−n−プロピルアミン(TPA)、トリ−n−ブチルアミン(TBA)、エチルジメチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、モルホリン等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
ポリスチレンスルホン酸は、重量平均分子量が10000〜5000000であることが好ましく、30000〜500000であることがより好ましい。分子量がこの範囲外のポリスチレンスルホン酸を使用すると、導電性高分子の水に対する分散安定性が低下する場合がある。なお、重量平均分子量はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)にて測定した値である。
導電性高分子複合体において、PEDOT100重量部に対するポリアニオンの配合量は100〜1000重量部が好ましく、150〜500重量部がより好ましい。
本発明の導電性高分子複合体は、下記式(1):
α=(I/I)−0.135×(A/A) (1)
で導かれる導電性ポテンシャルαが−0.23以上である。
式(1)において、Iはラマンスペクトルの1260cm−1におけるピーク強度であり、PEDOTのエチレンジオキシ環のCHねじれ振動を反映している。Iは1420cm−1におけるピーク強度であり、PEDOTのチオフェン環のC=C対称伸縮を反映している。
ラマンスペクトルは、導電性高分子複合体を下記の条件で測定することにより求められる。ラマンスペクトルの比I/Iは、0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.35以上が更に好ましい。0.05未満では導電性が不十分となる傾向がある。
ラマンスペクトルの測定条件:基材上に形成された塗膜に対して、レーザーラマン分光測定装置NRS−5500(日本分光株式会社製)を使用してラマンスペクトルを測定する。励起波長531.974nmのレーザーを用い、レーザー強度比は1%、照射時間は300秒、測定波長は930〜1800cm−1に設定することにより、ラマンスペクトルを得る。基材の種類によってはラマンスペクトルに影響を及ぼす場合があるため、膜厚1μm以上の塗膜を用いて測定するか、又は塗膜のラマンスペクトルから基材のみのラマンスペクトルをバックグラウンドとして差し引くことが好ましい。測定対象の塗膜の形成方法は特に限定されないが、例えば、導電性高分子複合体、または導電性高分子複合体を含む導電性組成物をガラス基材上に塗布して200℃で10分間乾燥させることにより膜厚10μmの塗膜を形成する方法が挙げられる。
式(1)において、Aは光吸収スペクトルの波長950nmにおける吸光度を表し、ポーラロン状態のPEDOTを反映している。Aは波長2300nmにおける吸光度を表し、バイポーラロン状態のPEDOTを反映している。
光吸収スペクトルは導電性高分子複合体を下記の条件で測定することにより求められる。吸光度の比A/Aは、0.5〜7が好ましく、1.5〜5がより好ましい。0.5未満では導電性が不十分となる傾向がある。
光吸収スペクトルの測定条件:基材上に形成された塗膜に対して、紫外可視近赤外分光光度計V−670(日本分光株式会社製)を使用して光吸収スペクトルを測定する。測定波長は500〜2500nm、ランプはハロゲンランプを使用する。基材の種類やその厚みによっては光吸収スペクトルに影響を及ぼす場合があるため、塗膜の光吸収スペクトルから基材のみの光吸収スペクトルをバックグラウンドとして差し引くことが好ましい。測定対象の塗膜の形成方法は特に限定されないが、例えば、導電性高分子複合体、または導電性高分子複合体を含む導電性組成物を、PET基材上に塗布して120℃で5分間乾燥させることにより膜厚70nmの塗膜を形成する方法が挙げられ、この塗膜の光吸収スペクトルから、PET基材の光吸収スペクトルをバックグラウンドとして差し引くことが好ましい。
導電性ポテンシャルαは−0.23以上であるが、−0.22以上が好ましく、−0.19以上がより好ましい。導電性ポテンシャルαが−0.23未満では、製膜温度の違いや塗膜の伸縮により導電性が大きく変化する傾向がある。導電性ポテンシャルαの上限は特に限定されないが、通常5以下である。
導電性高分子複合体は、PEDOTとポリアニオンとの混合により製造できる。PEDOTは3,4−エチレンジオキシチオフェンを酸化剤を用いて酸化重合することにより得られる。酸化重合後のPEDOTは、必要に応じて溶媒置換を行ってもよい。ポリアニオンは酸化重合前に仕込んでおいてもよく、酸化重合後に添加してもよい。導電性高分子複合体は、PEDOTとポリアニオンに加えて水を含むことが好ましいが、ポリアニオン、水及び酸化剤等を混合した液の中で3,4−エチレンジオキシチオフェンをPEDOTに変換し、ポリアニオンとの複合体を形成する場合は、新たに水を加えなくてもよい。
PEDOTの酸化重合に用いる酸化剤としては、例えば、スルホン酸化合物をアニオンとし、高価数の遷移金属をカチオンとする酸化剤等が挙げられる。この酸化剤を構成する高価数の遷移金属イオンとしては、Cu2+、Fe3+、Al3+、Ce4+、W6+、Mo6+、Cr6+、Mn7+及びSn4+が挙げられる。これらの中では、Fe3+及びCu2+が好ましい。遷移金属をカチオンとする酸化剤の具体例としては、例えば、FeCl、Fe(ClO、KCrO、過ホウ酸アルカリ、過マンガン酸カリウム、四フッ化ホウ酸銅等が挙げられる。また、遷移金属をカチオンとする酸化剤以外の酸化剤としては、過硫酸、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、H等が挙げられる。さらに、超原子価ヨウ素反応剤に代表される超原子価化合物が挙げられる。
酸化剤の添加量は、3,4−エチレンジオキシチオフェン100重量部に対し、50〜3000重量部であることが好ましく、70〜1000重量部であることがより好ましく、100〜500重量部であることがさらに好ましい。50重量部未満であると、量産性が悪くなることがあり、3000重量部を超えると導電性が低くなることがある。
酸化重合後のPEDOTには、必要に応じて、超音波分散機、ビーズミル、高速ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどを用いた分散処理、及びイオン交換樹脂、限外ろ過膜、メンブレンフィルター、遠心分離機などを用いた精製処理、恒温設備などを用いた熟成処理、凍結乾燥機などを用いた粉体化処理を行ってもよい。
<<導電性組成物>>
本発明の導電性組成物は、前記導電性高分子複合体、および水を含む。導電性組成物の固形分率は0.01〜20重量%が好ましく、0.1〜15重量%がより好ましく、0.5〜10重量%がさらに好ましい。導電性組成物の固形分中、導電性高分子複合体の配合量は、0.1〜100重量%が好ましく、1〜80重量%がより好ましく、5〜70重量%がさらに好ましい。
導電性組成物のpHは1〜12が好ましく、1.5〜11がより好ましく、1.5〜10がさらに好ましい。PEDOTとポリアニオンとの複合体が酸性である場合には、アルカリ剤を使用してpH調整を行ってもよい。アルカリ剤は特に限定されないが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む塩基や、NH、窒素系脂肪族化合物、窒素系芳香族化合物等が挙げられる。なお、後述の導電性組成物において酸性条件で架橋できる非導電性樹脂を用いる場合や、製膜設備の腐食対策が十分なされている場合には、アルカリ剤を添加しなくてもよい。
アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムが挙げられる。窒素系脂肪族化合物としては、トリエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンが挙げられる。窒素系芳香族化合物としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール、ピリジン、アニリン、トルイジン等が挙げられる。アルカリ剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい、これらの中でも、NH、エタノールアミン、NaOHがさらに好ましい。アルカリ剤の添加量は、最終的に得られる導電性組成物のpHを所定の範囲とすることができる添加量であれば特に限定されない。
<任意成分>
導電性組成物は、導電性高分子複合体、および水に加えて、任意成分を含んでいてもよい。任意成分として、水溶性有機溶媒、非導電性樹脂、酸化防止剤、低分子アニオン、架橋剤、界面活性剤、フィラー、消泡剤、中和剤、増粘剤等が挙げられる。
水溶性有機溶媒としては、アルコール、グリコール類、トリオール類、アミド化合物、スルホキシド類などが挙げられる。アルコールとしてはエタノール、メタノール、2−プロパノール、1−プロパノール等が挙げられる。グリコール類としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。トリオール類としては、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール等が挙げられる。アミド化合物としてはアセトニトリル、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。スルホキシド類としては、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等が挙げられる。また、水溶性有機溶媒は、水と水溶性有機溶媒の混合液として用いてもよい。混合液を用いる場合、水溶性有機溶媒の濃度は0.01〜80重量%が好ましく、0.1〜50重量%がより好ましく、0.5〜30重量%がさらに好ましい。以上に挙げた中でも、沸点が100℃以上の溶媒が好ましく、エチレングリコール、ジエチレングリコール、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドがより好ましい。
水溶性有機溶媒の添加量は、導電性組成物全体の0.1重量%以上が好ましく、0.2重量%以上がより好ましく、0.5重量%以上がさらに好ましく、沸点が100℃以上の溶媒を1重量%以上含有することが特に好ましい。0.1重量%未満では、製膜時の塗布性が悪くなり、塗膜の表面抵抗率が高くなりすぎる傾向がある。
非導電性樹脂を添加することにより、導電性組成物により形成される塗膜の成膜性や強度等を向上できる。非導電性樹脂としては、アクリル樹脂、エーテル樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、シリコーン樹脂、オキサゾリン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、アルコール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。非導電性樹脂は、導電性高分子複合体との配合を容易にするため、水に溶解又は分散可能であることが好ましい。樹脂に親水性の官能基が付与された結果、可溶化又は分散化されたものであっても良いし、乳化剤により強制的に可溶化又は分散化されたものであっても良い。
非導電性樹脂は、前述した樹脂種から選択される2以上の混合物、若しくは共重合物であることが好ましく、3以上の混合物であることがより好ましい。さらに、2以上の混合物は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、エーテル樹脂、エステル樹脂から選ばれる群のうち少なくとも1種含むことがより好ましい。このような2以上の混合物とした場合、導電性組成物を用いて塗膜を形成したときに、塗膜と基材との接着強度が安定的に発現される。
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂等が挙げられる。これらのアクリル樹脂は、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基、リン酸基などの酸基及び、パーフルオロアルキル基やパーフルオロアルケニル基等のフルオロ基を有する重合性単量体を構成モノマーとして含む重合体であってもよい。例えば、酸基を有する重合性単量体の単独又は共重合体、酸基を有する重合性単量体と共重合性単量体との共重合体等が挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系単量体を主たる構成モノマー(例えば、50モル%以上)として含んでいれば共重合性単量体と重合していてもよい。(メタ)アクリル系単量体及び共重合性単量体のうち、少なくとも一方が酸基を有することが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、酸基を有する(メタ)アクリル系単量体[(メタ)アクリル酸、スルホアルキル(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド等]又はその共重合体、酸基を有していてもよい(メタ)アクリル系単量体と、酸基を有する他の重合性単量体[他の重合性カルボン酸、重合性多価カルボン酸又は無水物、ビニル芳香族スルホン酸等]及び/又は共重合性単量体[例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル単量体等]との共重合体、酸基を有する他の重合性単量体と(メタ)アクリル系共重合性単量体[例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル等]との共重合体、酸基を有していない(メタ)アクリル系単量体[アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート(フルオレン系(メタ)アクリレート等]又はその共重合体、ロジン変性ウレタンアクリレート、特殊変性アクリル樹脂、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートエマルジョン等が挙げられる。
これらの(メタ)アクリル系樹脂の中では、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル重合体(アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体等)、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(アクリル酸−メタクリル酸メチル−スチレン共重合体等)等が好ましい。
エーテル樹脂としては、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエーテルポリオール、ポリグリセリン、プルラン、これらの誘導体等が挙げられる。これらのエーテル樹脂は、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基、リン酸基などの酸基及び、パーフルオロアルキル基やパーフルオロアルケニル基等のフルオロ基及び、アルキル基、アルケニル基を有していても良い。
エステル樹脂としては、2つ以上のカルボキシル基を分子内に有する化合物と2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物とを重縮合する方法、ヒドロキシカルボン酸を直接脱水重縮合する方法、ヒドロキシカルボン酸の環状エステルを開環重合する方法により得られた高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物(ジオール成分)としては、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオール、(ポリ)カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール等が挙げられ、2つ以上のカルボキシル基を分子内に有する化合物(ジカルボン酸成分)としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸等が挙げられ、ヒドロキシカルボン酸の環状エステルとしては、ラクタイド、グリコライド、ε−カプロラクトン等が挙げられる。得られる高分子化合物の一般名称としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらのエステル樹脂は、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基、リン酸基などの酸基及び、パーフルオロアルキル基やパーフルオロアルケニル基等のフルオロ基及び、アルキル基、アルケニル基を有していても良い。
ウレタン樹脂としては、イソシアネート基を有する化合物とヒドロキシル基を有する化合物を共重合させて得られた高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、エステル・エーテル系ポリウレタン、エーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン、アクリル系ポリウレタン等が挙げられる。これらのウレタン樹脂は、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の親水性極性基が導入されていてもよい。親水性極性基導入源としては、ポリ(オキシエチレン)ポリオールのような直鎖状のノニオン系の親水性極性基や、−COOM、−SOM(Mはアルカリ金属、アンモニウム基、有機アミンを示す。)のようなアニオン系の親水性極性基、4級アンモニウム塩のようなカチオン系の親水性極性基が挙げられる。
オレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、ポリ−1−ブテン、塩素化ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。これらのオレフィン樹脂は、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、シクロペンテン、シクロヘキセン、及びノルボルネンなどのα−オレフィンコモノマー、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどのコモノマーとの共重合体であってもよいし、カルボン酸基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、スルフィノ基(−SOH)、ホスホノ基(−POH)、ビニルアルコール鎖、ビニルピロリドン鎖、エーテル鎖などの親水性極性基が導入されていてもよい。
シリコーン樹脂としては、下記式(2)により表されるアルコキシシランのモノマーや、それらのモノマー同士が縮合することであらかじめ高分子量化されたアルコキシシランであってシロキサン結合(Si−O−Si)を1分子内に1個以上有するもの等が挙げられる。
SiR(2)
(式中、Rは、水素、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基である。但し、4つのRのうち少なくとも1個は炭素数1〜4のアルコキシ基又は水酸基である。)
アルコキシシランのモノマーを使用する場合は、導電性組成物に添加した後、導電性組成物中で高分子量化させてもよい。
シリコーン樹脂の構造は特に限定されず、直鎖状であってもよく、分岐状でもよい。また、シリコーン樹脂は、式(2)により表される化合物を単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。これらのシリコーン樹脂は、ポリエーテル基、ポリアルキル基、ポリエステル基、ポリオール基によって変性されていても良い。変性の形状は直鎖状であってもよく、分岐状であっても良い。シリコーン樹脂の重量平均分子量は特に限定されないが、4000より大きく500000以下であることが好ましく、5000〜200000であることがより好ましい。ここで、重量平均分子量はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)にて測定した値である。
オキサゾリン樹脂としては、ポリ−2−メチル−2−オキサゾリンや、ポリ−2−プロピル−2−オキサゾリン等のオキサゾリンを付加重合させたポリマー、付加重合性オキサゾリン基を残したポリマー等が挙げられる。市販品としては、エポクロスWS−300、WS−500及びWS−700、K−2010E、K−2030E、K−2020E(日本触媒(株)製)等が挙げられる。オキサゾリン樹脂を配合することにより架橋を生じさせ、塗膜の強度を向上できる。
フェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、レゾール型キシレン樹脂などを挙げることができる。具体的には、アルキル化(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル)フェノール、p−tert−アミルフェノール、4,4′−sec−ブチリデンフェノール、p−tert−ブチルフェノール、o−,m−又はp−クレゾール、p−シクロヘキシルフェノール、4,4′−イソプロピリデンフェノール、p−ノニルフェノール、p−オクチルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、フェノール、フェニル−o−クレゾール、p−フェニルフェノール、キシレノールなどのホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、テフロン(登録商標)、ポリフッ化ビニル等が挙げられる。
アルコール樹脂としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ウレタンポリオール等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ基を有するポリマーやグリシジル基を有するポリマー等を挙げることができる。市販品としては、(株)ADEKA製アデカレジンEM、ナガセケムテックス(株)製デナコールEX−512、EX−821、EX−931、三菱ケミカル(株)製W2801、W2821R70、W3435R67、W8735R70、W1155R55等が挙げられる。エポキシ樹脂を配合することにより架橋を生じさせ、塗膜の強度を向上できる。
導電性組成物中の非導電性樹脂の含有量は特に限定されないが、導電性高分子複合体100重量部に対し10〜5000重量部が好ましく、30〜3000重量部がより好ましく、50〜2000重量部がさらに好ましい。この範囲内では、導電性組成物により形成される塗膜において導電性を十分に確保できる。
酸化防止剤を添加することにより、塗膜中の導電性高分子複合体の酸化劣化を抑えられる。酸化防止剤としては、例えば、アスコルビン酸、エリソルビン酸、またはこれらの塩等の2個の水酸基で置換されたラクトン環を有する化合物、没食子酸、没食子酸メチル、没食子酸プロピル等のフェノール性水酸基を2個以上有する化合物及びそれらの誘導体が挙げられる。酸化防止剤を添加する場合、その添加量は、導電性高分子複合体100重量部に対して10〜500重量部であることが好ましく、20〜300重量部であることがより好ましい。
低分子アニオンを添加することにより、PEDOTとポリアニオンとの配置の安定化を促進できる。低分子アニオンの重量平均分子量は1000以下が好ましい。低分子アニオンとしては、p-トルエンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の芳香族スルホン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、トリフルオロ酢酸等の有機カルボン酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等の無機酸、PF5、AsF5、SbF5、BF5等のルイス酸等が挙げられる。特に芳香族スルホン酸や脂肪族スルホン酸が好ましい。低分子アニオンの添加量は、ポリアニオン100重量部に対して0.1〜100重量部が好ましく、1〜40重量部がより好ましく、10〜30重量部がさらに好ましい。
架橋剤を添加することにより非導電性樹脂を架橋させ、導電性組成物を塗工した後の塗膜強度を向上できる。架橋剤は、水溶性有機溶媒に可溶であること好ましく、水に可溶であることがより好ましい。架橋剤としては、例えば、メラミン系、オキサゾリン系、エポキシ系、アルコキシシラン系等の化合物が挙げられる。これらの架橋剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。架橋剤を添加する場合、その含有量は、導電性組成物の固形分中0.1〜30重量%が好ましい。
メラミン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、メチル化メラミン化合物及びブチル化メラミン化合物等が挙げられ、市販品としては、ニカラックMW−30M((株)三和ケミカル製)及びサイメル303LF(オルネクスジャパン(株)製)等がある。これらは、2種以上を併用しても良い。
オキサゾリン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン及び2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリン化合物等が挙げられ、市販品としては、エポクロスWS−300、WS−500及びWS−700(日本触媒(株)製)等がある。これらは、2種以上を併用しても良い。
エポキシ系化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ソルビトールグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、2種以上を併用しても良い。
アルコキシシラン系化合物としては、例えば、下記式(3)により表されるアルコキシシランや、アルコキシシラン同士が縮合することで形成されるアルコキシシランオリゴマーであり、シロキサン結合(Si−O−Si)を1分子内に1個以上有するオリゴマー等が挙げられる。
SiR(3)
(式中、Rは、水素、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基である。但し、4つのRのうち少なくとも1個は炭素数1〜4のアルコキシ基又は水酸基である。)
アルコキシシランオリゴマーの構造は特に限定されず、直鎖状であってもよく、分岐状でもよい。また、アルコキシシランオリゴマーは、式(3)により表される化合物を単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。アルコキシシランオリゴマーの重量平均分子量は特に限定されないが、152より大きく4000以下であることが好ましく、500〜2500であることがより好ましい。ここで、重量平均分子量はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)にて測定した値である。
導電性組成物に界面活性剤を添加することにより、導電性組成物のレベリング性を向上させることができる。このような導電性組成物を用いることで均一な塗膜を形成できる。
界面活性剤としては、レベリング性向上効果を有するものであれば特に限定されず、ヤシ油脂肪酸アミン塩、ガムロジン等のカルボン酸;ヒマシ油硫酸エステル類、リン酸エステル、アルキルエーテル硫酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、スルホン酸エステル、コハク酸エステル等のエステル系化合物;アルキルアリールスルホン酸アミン塩、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等のスルホン酸塩化合物;ラウリルリン酸ナトリウム等のリン酸塩化合物;ヤシ油脂肪酸エタノールアマイド等のアミド化合物等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
導電性組成物が界面活性剤を含有する場合、含有量は導電性組成物の固形分中0〜40重量%が好ましく、0.01〜10重量%がより好ましい。
フィラーは、特に限定されないが、無機フィラー、架橋構造を有する有機フィラーなどが挙げられる。無機フィラーの材質の具体例として、特に限定されるものではないが、例えば、コロイダルシリカ、中空シリカ、フュームドシリカ等のシリカ及びチタニア、ジルコニア等の金属酸化物の他、熱可塑性又は熱硬化性のアクリル樹脂をシリカで被覆したコアシェル型のアクリル−シリカ複合体、メラミン樹脂をシリカで被覆したコアシェル型のメラミン−シリカ複合体、シリカを熱可塑性又は熱硬化性のアクリル樹脂で被覆したコアシェル型のアクリル−シリカ複合体、シリカをメラミン樹脂で被覆したコアシェル型のメラミン−シリカ複合体、熱可塑性又は熱硬化性のアクリル樹脂により小さなシリカを担持させたアクリル−シリカ複合体のような有機無機複合体等が挙げられる。有機フィラーの材質の具体例としては、特に限定されるものではないが、例えばフッ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタンゴム等が挙げられる。これらのフィラーは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。フィラーを添加する場合、その含有量は導電性組成物の固形分中0.1〜30重量%が好ましく、0.2〜10重量%がより好ましい。
<導電性組成物の用途>
本発明の導電性組成物は、導電性ポテンシャルが特定の範囲内にあるため、導電性組成物を含む塗膜の繰り返しの伸縮後も表面抵抗率の増大を抑制できる。よって、本発明の導電性組成物は、延伸率40%で10回伸縮させた後の表面抵抗率が、伸縮前の表面抵抗率の2.5倍以下である塗膜を製造する用途に好適に使用できる。前記表面抵抗率の比率は、2.0倍以下がより好ましく、1.9倍以下がさらに好ましい。
本発明の導電性組成物は、導電性ポテンシャルが特定の範囲内にあるため、塗膜形成時の乾燥温度による導電性への影響が抑制される。よって、本発明の導電性組成物は、乾燥温度によらず安定した導電性を示すため、幅広い用途に好適に使用できる。本発明の導電性組成物を含む塗膜を40℃で乾燥させたときの表面抵抗率は、150℃で乾燥させたときの表面抵抗率の1.7倍以下であることが好ましく、1.69倍以下がより好ましく、1.68倍以下がさらに好ましい。
<<塗膜>>
塗膜は、導電性組成物を基材上に塗布し、乾燥することにより得られる。基材の材質は、プラスチック基材、ガラス、金属等が挙げられる。プラスチック基材としてはポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリオレフィン樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が挙げられる。アクリル系樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)が挙げられる。シクロオレフィン系樹脂としては、シクロオレフィンポリマー樹脂(COP)が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が挙げられる。セルロース系樹脂としては、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂が挙げられる。基材の厚みは、10〜1000μmであることが好ましく、25〜500μmであることがより好ましい。基材の全光線透過率は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
導電性組成物の塗布方法は特に限定されず、例えば、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等を用いることができる。
導電性組成物の塗布後の乾燥は、導電性組成物に含まれる水やその他の揮発性溶媒を除去できれば特に限定されず、例えば、送風オーブン、赤外線オーブン、真空オーブン等を用いて行えばよい。乾燥温度は基材種や塗膜の厚みに応じて適宜設定できるが、好ましくは30〜200℃、より好ましくは40〜180℃、さらに好ましくは40〜150℃である。乾燥時間も基材種や塗膜の厚みに応じて適宜設定できるが、10分以下が好ましく、0.1〜5分間がより好ましい。
塗膜の膜厚は1〜10000nmが好ましく、5〜3000nmがより好ましく、10〜500nmがより好ましい。
塗膜の製膜直後の表面抵抗率は、塗膜が厚膜(70nm以上)である場合には、1000000Ω/sq以下が好ましく、10〜10000Ω/sqがより好ましく、30〜2000Ω/sqがさらに好ましい。塗膜が薄膜(70nm未満)である場合には、10〜1010Ω/sqが好ましく、10〜10Ω/sqがより好ましい。
<<積層体>>
本発明の導電性組成物を基材上に塗布することにより、基材と塗膜からなる積層体が得られる。この積層体は、塗膜形成時の乾燥温度にかかわらず、伸縮後も導電性を安定に維持でき、表面保護フィルム、透明導電性フィルム、帯電防止フィルム等に好適に使用できる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
(1)使用材料
1.導電性高分子複合体
・導電性高分子1(製造例1で製造)
・導電性高分子2(製造例2で製造)
・導電性高分子3(製造例3で製造)
・導電性高分子4(へレウス製、CLEVIOS P)
・導電性高分子5(へレウス製、CLEVIOS PH500)
2.非導電性樹脂
・エステル樹脂(東亞合成株式会社製、アロンメルトPES−2405A30)
・シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製、8029Additive)
・フェノール樹脂(川口化学工業製、ANTAGE 2LX)
・フッ素樹脂(デュポン株式会社製、CAPSTONE FS−3100)
・アクリル樹脂(日本カーバイド製、ニカゾールRX−3020)
・アルコール樹脂(株式会社ダイセル製、ポリグリセリンPGL XPW)
・ウレタン樹脂(ADEKA製、アデカボンタイターHUX−895)
・エーテル樹脂(クラリアント製、Genapol X 060)
3.有機溶剤
・ジエチレングリコール(東京化成工業株式会社製)
4.基材
・ガラス(松浪硝子工業株式会社製MICRO SLIDE GLASS)
・ポリエチレンテレフタレート樹脂(東レ製、ルミラーT60 厚さ188μm)
・ポリカーボネート樹脂(帝人化成株式会社製、ピュアエースWR−S148 厚さ50μm)
・ウレタン樹脂(武田産業株式会社製、タフグレイス 厚さ100μm)
(2)導電性高分子複合体の製造
(製造例1)導電性高分子複合体1
濃硫酸67mLを約500gの純水で希釈した。次に、ポリ(4−スチレンスルホン酸)(PSS:分子量75000)の18質量%水溶液107.54gと硫酸鉄28.10gを前述の硫酸水溶液に加えた。さらに3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)7.2gと過硫酸ナトリウム23.12gを加え、これに純水を足すことで全質量が1200gとなるように混合溶液を調製し、温度調節可能な反応容器に投入した。混合溶液を窒素雰囲気下にて0℃で24時間酸化重合反応を行った。反応溶液を反応容器から取り出し、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を加え、さらに18時間撹拌した。得られたイオン交換処理液をガラス濾過器で濾過し、次いで高圧ホモジナイザーで70MPa、20回の均質化処理を行うことにより、PEDOT:PSS水分散液を得た。
(製造例2)導電性高分子複合体2
ポリ(4−スチレンスルホン酸)(PSS:分子量500000)の20質量%水溶液66.89gと硫酸鉄0.05gを前述の500gの純水に加えた。さらに3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)3.42gと過硫酸ナトリウム6.30gを加え、これに純水を足すことで全質量が1200gとなるように混合溶液を調製し、温度調節可能な反応容器に投入した。混合溶液を大気雰囲気下にて25℃で14時間酸化重合反応を行った。反応溶液を反応容器から取り出し、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を加え、さらに2時間撹拌した。得られたイオン交換処理液をガラス濾過器で濾過し、PEDOT:PSS水分散液を得た。
(製造例3)導電性高分子複合体3
濃硫酸67mLを約500gの純水で希釈した。次に、ポリ(4−スチレンスルホン酸)(PSS:分子量100000)の18質量%水溶液107.54gと硫酸鉄28.10gを前述の硫酸水溶液に加えた。さらに3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)7.2gと過硫酸ナトリウム23.12gを加え、これに純水を足すことで全質量が1200gとなるように混合溶液を調製し、温度調節可能な反応容器に投入した。混合溶液を窒素雰囲気下にて5℃で24時間酸化重合反応を行った。反応溶液を反応容器から取り出し、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を加え、さらに2時間撹拌した。得られたイオン交換処理液をガラス濾過器で濾過し、次いで高圧ホモジナイザーで200MPa、1回の均質化処理を行った。その後、プラスチック容器内で30℃、30日間の熟成を行い、PEDOT:PSS水分散液を得た。
(3)導電性組成物の製造
(実施例1〜15、比較例1〜4)導電性高分子複合体1〜5に、表1に記載の非導電性樹脂、有機溶剤、水を添加して混合した。実施例2〜4、6〜10、14〜15、比較例3〜4ではアルカリ剤を添加して表1に記載のpHとなるように調製した。
(4)導電性高分子複合体および塗膜の評価方法
1.導電性ポテンシャル
1−1.ラマンスペクトル
導電性組成物を、ガラス基材(松浪硝子工業株式会社製のMICRO SLIDE GLASS)上にワイヤーバーを用いて塗布し、200℃で10分間乾燥させることにより、膜厚10μmの塗膜を有する試験片を作成した。この塗膜に対して、レーザーラマン分光測定装置NRS−5500(日本分光株式会社製)を使用してラマンスペクトルを測定した。励起波長531.974nmのレーザーを用い、レーザー強度比は1%、照射時間は300秒、測定波長は930〜1800cm−1に設定し、1260cm−1におけるピーク強度I、1420cm−1におけるピーク強度Iを測定した。
1−2.光吸収スペクトル
PET基材(東レ製ルミラーT60 厚さ188μm)に導電性組成物を塗布し、120℃で5分間乾燥させることにより、膜厚70nmの塗膜を有する試験片を作成した。次に、この塗膜に対して、紫外可視近赤外分光光度計V−670(日本分光株式会社製)を使用して光吸収スペクトルを測定した。測定波長は500〜2500nm、ランプはハロゲンランプを使用して光吸収スペクトル測定を行い、基材の光吸収スペクトルをバックグラウンドとして差し引いて、波長950nmにおける吸光度A、波長2300nmにおける吸光度Aを測定した。
測定により得られたピーク強度、吸光度の数値を下記式(1)に導入することにより、導電ポテンシャルαを求めた。
α=(I/I )−0.135×(A/A) (1)
2.塗膜の乾燥温度による導電性の変動
導電性組成物を、表1記載の基材上に、理論乾燥膜厚が400nmとなるようにワイヤーバーを用いて塗布し、40℃で5分間、または150℃で5分間乾燥させることにより、塗膜を作成した。次に、40℃で乾燥させた試験片の表面抵抗率(SR)と、150℃で乾燥させた試験片の表面抵抗率(SR)を、抵抗率計(三菱ケミカル株式会社製、ロレスターGP MCP−T600、ハイレスターUP MCP−HT450)を用いて測定し、下記式に導入することにより、乾燥温度による導電性の変動率を求めた。
乾燥温度による導電性の変動率=SR/SR
3.塗膜の伸縮による導電性の変動
実施例9〜11、14〜15、比較例3〜4の導電性組成物を、表1記載の基材上に、理論乾燥膜厚が2000nmとなるようにワイヤーバーで塗布し、100℃で3分間乾燥させることにより塗膜を作成した。得られた塗膜の表面抵抗率SRを上述の方法で測定した。次に、一軸方向に延伸率40%で10回伸縮することにより得られた試験片の、塗膜の表面抵抗率SRを測定した。SRおよびSRを下記式に導入することにより、塗膜の伸縮による導電性の変動率を求めた。
伸縮による導電性の変動率=SR/SR
Figure 2021134331
非導電性樹脂を含まない試験区で比較すると、比較例1の塗膜に対して実施例1〜4の塗膜では乾燥温度にかかわらず表面抵抗率が大幅に低減されていた。
比較例1〜4で使用した導電性高分子複合体は導電性ポテンシャルが−0.23よりも小さかったため、導電性組成物を塗布後、40℃で乾燥させたときの表面抵抗率が、150℃で乾燥させたときの表面抵抗率の1.7倍を超えていた。また、比較例3〜4の塗膜は延伸率40%で10回伸縮させた後の表面抵抗率が、伸縮前の表面抵抗率の2.5倍を超えていた。実施例1〜15の塗膜は、導電性組成物の塗布後の乾燥温度にかかわらず表面抵抗率が安定しており、塗膜の伸縮後も表面抵抗率の増大が抑制された。


Claims (10)

  1. PEDOTとポリアニオンからなり、
    ラマンスペクトルの1260cm−1におけるピーク強度をI、1420cm−1におけるピーク強度をIとし、
    光吸収スペクトルの波長950nmにおける吸光度をA、波長2300nmにおける吸光度をAとしたときに、下記式(1):
    α=(I/I)−0.135×(A/A) (1)
    で導かれる導電性ポテンシャルαが−0.23以上である、
    導電性高分子複合体。
  2. /Iが0.05以上である、請求項1に記載の導電性高分子複合体。
  3. /Aが0.5〜7である、請求項1または2に記載の導電性高分子複合体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の導電性高分子複合体、および水を含む、導電性組成物。
  5. さらに非導電性樹脂を含む請求項4に記載の導電性組成物。
  6. さらに沸点100℃以上の有機溶剤を1重量%以上含有する請求項4または5に記載の導電性組成物。
  7. pHが5以上である請求項4〜6のいずれかに記載の導電性組成物。
  8. 延伸率40%で10回伸縮させた後の表面抵抗率が、伸縮前の表面抵抗率の2.5倍以下である塗膜を製造するための、請求項4〜7のいずれかに記載の導電性組成物。
  9. 40℃で乾燥させたときの表面抵抗率が、150℃で乾燥させたときの表面抵抗率の1.7倍以下となる塗膜を製造するための、請求項4〜8のいずれかに記載の導電性組成物。
  10. 請求項4〜9のいずれかに記載の導電性組成物を乾燥してなる塗膜。


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