[1]実施形態の概要
本開示の一側面に係る送電装置は、負荷に接続された受電装置に電力を供給するための装置である。この送電装置は、受電装置の第2コイルに非接触で電力を伝送するための第1コイルと、直流電力を交流電力に変換するとともに交流電力を第1コイルに供給する直流交流変換器を含む変換器と、交流電力の周波数を変更する周波数制御によって、対象電力の電力値を電力指令値に近づける制御器と、を備える。対象電力は、直流電力又は交流電力である。制御器は、電力値を電力指令値に近づける際に、周波数が他の機器によって使用される使用周波数帯域を通過する場合、使用周波数帯域に含まれないように周波数を変更する周波数変更処理を行う。
この送電装置では、対象電力の電力値が電力指令値に近づけられる際に、第1コイルに供給される交流電力の周波数が他の機器によって使用される使用周波数帯域を通過する場合、使用周波数帯域に含まれないように当該周波数が変更される。このため、交流電力の周波数が使用周波数帯域に含まれることなく、対象電力の電力値が電力指令値に近づけられる。その結果、他の機器との干渉をより一層抑制することが可能となる。
使用周波数帯域は、第1周波数と第2周波数との間に位置してもよい。制御器は、周波数変更処理において、対象電力の周波数特性を第1特性から第2特性に変更してもよく、周波数が第1周波数である場合の電力値と周波数が第2周波数である場合の電力値との差分が、第1特性における差分よりも小さくなるように、周波数を第1周波数から第2周波数に変更してもよい。この場合、対象電力の電力値の変動量を軽減しつつ、交流電力の周波数が第1周波数から第2周波数に変更される。これにより、周波数変更処理により送電装置が故障する可能性を低減することが可能となる。
制御器は、電力値が第2特性に沿うように、周波数を第1周波数から第2周波数に変更してもよい。第2特性における周波数が第1周波数である場合の電力値と周波数が第2周波数である場合の電力値との差分は、第1特性における上記電力値の差分よりも小さい。したがって、上記構成によれば、交流電力の周波数を第1周波数から第2周波数に変更したとしても、対象電力の電力値の変動量を抑えることができる。その結果、周波数変更処理により送電装置が故障する可能性を低減することが可能となる。
制御器は、電力値が、周波数特性が第1特性である場合の第1周波数における電力値を維持するように、周波数を第1周波数から第2周波数に変更してもよい。この場合、対象電力の電力値が維持されながら、交流電力の周波数が第1周波数から第2周波数に変更される。これにより、交流電力の周波数を第1周波数から第2周波数に変更したとしても、対象電力の電力値は変化しない。その結果、周波数変更処理により送電装置が故障する可能性をより一層低減することが可能となる。
制御器は、第1特性において電力値が電力指令値に達した際の周波数が使用周波数帯域に含まれない場合、周波数を第1周波数から第2周波数に変更した後、周波数を第2周波数に合わせた状態で、周波数特性を第1特性に戻してもよい。例えば、位相シフト制御によって周波数特性が変更される場合、位相シフト量が大きいと、インピーダンスが容量性負荷になりやすく、またEMC(Electromagnetic Compatibility)及び誤動作等のノイズの影響が生じやすい。これに対し、周波数が第2周波数に変更された後、周波数特性が第1特性に戻される。このため、位相シフト量を低減し得るので、インピーダンスが容量性負荷になる可能性を低減するとともに、ノイズの影響が生じる可能性を低減することができる。
制御器は、第1特性において電力値が電力指令値に達した際の周波数が使用周波数帯域に含まれる場合、周波数を第1周波数から第2周波数に変更した後、周波数を第2周波数に合わせた状態で周波数特性を変更することによって、電力値を電力指令値に合わせてもよい。この場合、使用周波数帯域とは異なる周波数において、対象電力の電力値が電力指令値に合わせられる。したがって、他の機器との干渉を抑制することが可能となる。
制御器は、直流交流変換器の位相シフト制御によって、周波数特性を変更してもよい。直流交流変換器の位相シフト量又は直流電力の電圧が変更されると、対象電力の周波数特性が変化する。位相シフト制御は、直流電力の電圧制御よりも応答性に優れる。したがって、電圧制御により周波数特性を変更するよりも、位相シフト制御により周波数特性を変更する方が周波数変更処理の処理速度を向上させることができる。
制御器は、直流交流変換器と第1コイルとの間のインピーダンスを制御するインピーダンス制御によって、周波数特性を変更してもよい。直流交流変換器と第1コイルとの間のインピーダンス又は直流電力の電圧が変更されると、対象電力の周波数特性が変化する。インピーダンス制御は、直流電力の電圧制御よりも応答性に優れる。したがって、電圧制御により周波数特性を変更するよりも、インピーダンス制御により周波数特性を変更する方が周波数変更処理の処理速度を向上させることができる。
[2]実施形態の例示
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略される。
図1は、一実施形態に係る送電装置を含む非接触給電システムの適用例を示す図である。図1に示されるように、非接触給電システム1は、送電装置2と受電装置3とを備えており、送電装置2から受電装置3に電力を供給するためのシステムである。送電装置2及び受電装置3は、例えば上下方向に離間している。送電装置2は、例えば駐車場等に設置されている。受電装置3は、例えば電気自動車EVに搭載されている。非接触給電システム1は、駐車場等に到着した電気自動車EVに対し、磁界共鳴方式又は電磁誘導方式等のコイル間の磁気結合を利用して、電力を供給するように構成されている。なお、非接触給電方式は、磁気結合を利用した方式に限らず、例えば、電界共鳴方式であってもよい。
送電装置2は、非接触給電のための電力を供給する装置である。送電装置2は、電源PS(図2参照)によって供給された電力から所望の交流電力を生成し、受電装置3に送る。送電装置2は、例えば駐車場等の路面Rに設置される。送電装置2は、例えば駐車場等の路面Rから上方に突出するように設けられた第1コイル装置4(送電コイル装置)を備えている。第1コイル装置4は、第1コイル21(図2参照)を含み、例えば扁平な錘台状又は直方体状をなしている。送電装置2は、電源PSから所望の交流電力を生成する。生成された交流電力が第1コイル装置4に送られることによって、第1コイル装置4は磁束を発生させる。
受電装置3は、送電装置2から電力を受け取り、負荷L(図2参照)に電力を供給する装置である。受電装置3は、例えば電気自動車EVに搭載される。受電装置3は、例えば電気自動車EVの車体(シャーシ等)の底面に取り付けられた第2コイル装置5(受電コイル装置)を備えている。第2コイル装置5は、第2コイル31(図2参照)を含み、電力供給時において第1コイル装置4と上下方向に離間して対向する。第2コイル装置5は、例えば扁平な錘台状又は直方体状をなしている。第1コイル装置4で発生した磁束が第2コイル装置5に鎖交することによって、第2コイル装置5は誘導電流を発生させる。これにより、第2コイル装置5は、非接触(ワイヤレス)で第1コイル装置4からの電力を受け取る。第2コイル装置5が受け取った電力は、負荷Lに供給される。
図2を参照して、非接触給電システム1の回路構成を詳細に説明する。図2は、図1の非接触給電システムの回路ブロック図である。図2に示されるように、非接触給電システム1は、電源PSから交流電力Pac1を受け、負荷Lに負荷電力Poutを供給するシステムである。電源PSは、商用電源等の交流電源であり、送電装置2に交流電力Pac1を供給する。交流電力Pac1の周波数は、例えば50Hz又は60Hzである。負荷Lは、バッテリ等の直流負荷であってもよく、モータ等の交流負荷であってもよい。
送電装置2は、電源PSから交流電力Pac1を供給される。送電装置2は、第1コイル21と、第1変換器22(変換器)と、第1検出器23と、第1通信器24と、第1制御器25(制御器)と、使用周波数検出器28と、を備えている。
第1変換器22は、電源PSから供給される交流電力Pac1を、所望の交流電力Pac2に変換し、交流電力Pac2を第1コイル21に供給する回路である。第1変換器22は、例えば、後述の周波数制御、位相シフト制御、及び直流電力Pdcの電圧制御によって直流電力Pdc及び交流電力Pac2の大きさ(電力値)を変更することができる。第1変換器22は、電力変換器26と、直流交流変換器(DC/AC converter)27と、を備えている。
電力変換器26は、電源PSから供給された交流電力Pac1を直流電力Pdcに変換する交流直流変換器(AC/DC converter)である。電力変換器26は、例えば整流回路である。整流回路は、ダイオード等の整流素子で構成されてもよいし、トランジスタ等のスイッチング素子で構成されてもよい。電力変換器26は、PFC(Power Factor Correction)機能及び昇降圧機能をさらに有していてもよい。第1変換器22は、電力変換器26の出力に設けられた直流直流変換器(DC/DC converter)をさらに備えていてもよい。電力変換器26は、第1制御器25によって直流電力Pdcの電圧Vdcの大きさを変更するように制御される。電力変換器26は、例えば、パルス幅変調で直流電力Pdcの電圧Vdcの大きさを変更する。電力変換器26は、直流電力Pdcを直流交流変換器27に供給する。
直流交流変換器27は、電力変換器26から供給された直流電力Pdcを交流電力Pac2に変換する。交流電力Pac2の周波数は、例えば81.38kHz〜90kHzである。直流交流変換器27は、例えば、インバータ回路を含む。第1変換器22は、直流交流変換器27の出力に設けられたトランスをさらに備えていてもよい。直流交流変換器27は、第1制御器25によって直流電力Pdc及び交流電力Pac2の大きさを変更するように制御される。直流交流変換器27は、交流電力Pac2を第1コイル21に供給する。
第1コイル21は、受電装置3(の第2コイル31)に非接触で電力を伝送するためのコイルである。第1コイル21は、第1変換器22から交流電力Pac2が供給されることによって、磁束を発生する。第1コイル21と第1変換器22との間には、キャパシタ及びインダクタ(例えば、リアクトル)が接続されていてもよい。
第1検出器23は、直流電力Pdcに関する測定値を取得するための回路を含む。直流電力Pdcに関する測定値を取得するための回路は、例えば、電圧センサ、電流センサ、又はその組み合わせである。第1検出器23は、直流電力Pdc、直流電力Pdcの電圧Vdc又は直流電力Pdcの電流Idcを測定する。第1検出器23は、交流電力Pac2、交流電力Pac2の電圧Vac2及び交流電力Pac2の電流Iac2を測定する。第1検出器23は、取得した測定値を第1制御器25に出力する。
第1通信器24は、後述する受電装置3の第2通信器34と無線で通信を行うための回路である。第1通信器24は、例えば、電波を利用する通信方式用のアンテナ、光信号を利用する通信方式用の発光素子及び受光素子を含む。第1通信器24は、受電装置3から受信した情報を第1制御器25に出力する。
第1制御器25は、CPU(Central Processing Unit)及びDSP(Digital Signal Processor)等の処理装置である。第1制御器25は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び送電装置2の各部と接続するインターフェース回路等を有してもよい。
第1制御器25は、対象電力の電力値を第1電力指令値(電力指令値)に近づける電力一定制御を行う。対象電力としては、直流電力Pdc又は交流電力Pac2が用いられ得る。第1制御器25は、第1検出器23によって検出された電流Idcの測定値に基づいて、第1電力測定値を計算する。対象電力が直流電力Pdcである場合、第1電力測定値とは、直流交流変換器27の損失及び第1コイル21の損失等と、直流交流変換器27から第1コイル21に供給される交流電力Pac2とを含んだ測定値である。第1制御器25は、第1通信器24を介して受電装置3から受信した第2電力指令値に基づいて、直流電力Pdcの目標値である第1電力指令値を計算する。第1制御器25は、電力一定制御として、第1電力測定値及び第1電力指令値に基づいて、第1電力測定値(直流電力Pdc)が第1電力指令値に近づくように第1変換器22を制御する電力制御を行う。
なお、対象電力が交流電力Pac2である場合、第1電力指令値は、交流電力Pac2の目標値であって、交流電力Pac2に応じて設定される。つまり、第1制御器25は、電力一定制御として、交流電力Pac2が交流電力Pac2の目標値である第1電力指令値に近づくように第1変換器22を制御する。以下、対象電力が直流電力Pdcである場合について説明を行う。
なお、第1制御器25は、第1電力指令値を補正するための指令値補正制御を行ってもよい。第1制御器25は、指令値補正制御として、第1通信器24を介して受電装置3から受信した第2電力測定値(後述)及び第2電力指令値(後述)に基づいて、第2電力測定値(負荷電力Pout)が第2電力指令値に近づくように第1変換器22を制御する電力制御を行う。具体的には、第1制御器25は、第2電力測定値が第2電力指令値に近づくように、第1電力指令値を補正する。
第1制御器25は、電力制御として、第1変換器22を制御することによって、直流電力Pdc及び交流電力Pac2の大きさ(電力値)を制御し、負荷Lに供給される負荷電力Poutの大きさを制御する。電力制御は、周波数制御、位相シフト制御、及び直流電力Pdcの電圧制御の少なくとも1つを用いて行われる。各制御において、直流電力Pdc及び交流電力Pac2の大きさを制御するための電力制御パラメータが変更される。
ここで、図3を用いて周波数制御を説明する。図3は、負荷電力の周波数特性を示す図である。図3のグラフの横軸は駆動周波数fを示し、縦軸は負荷電力Pout(の大きさ)を示す。駆動周波数fは、交流電力Pac2の周波数である。交流電力Pac2の周波数とは、第1変換器22から出力される交流電流又は交流電圧の周波数である。以下、交流電力Pac2の周波数を「駆動周波数f」と称する場合がある。図3に示されるように、駆動周波数fに応じて、直流電力Pdc、交流電力Pac2、及び負荷電力Poutの大きさが変更される。駆動周波数fとしては、例えば81.38kHz〜90kHzが利用可能である。駆動周波数fが変わることにより、コイル及びキャパシタ等のリアクタンス素子のインピーダンスが変わり、直流電力Pdc、交流電力Pac2、及び負荷電力Poutの大きさが変化する。以下、本実施形態では、駆動周波数fが大きくなるにつれて、直流電力Pdc、交流電力Pac2、及び負荷電力Poutの大きさが小さくなるとする。第1制御器25は、駆動周波数fを変更することによって、直流電力Pdc、交流電力Pac2、及び負荷電力Poutの大きさ(電力値)を変更する周波数制御を実施する。周波数制御における上述の電力制御パラメータは、直流交流変換器27(インバータ回路)の駆動周波数fである。
例えば、当初、駆動周波数fが周波数fbであったと仮定する。このときの負荷電力Poutは電力Pbである。ここで、例えば、駆動周波数fが、周波数fbから周波数faまで減少される。すると、負荷電力Poutは、駆動周波数f=faに対応する電力Paとなる。よって、負荷電力Poutは、電力Pbから電力Paまで増加する。一方、駆動周波数fが、周波数fbから周波数fcまで増加される。すると、負荷電力Poutは、駆動周波数f=fcに対応する電力Pcとなる。よって、負荷電力Poutは、電力Pbから電力Pcまで減少する。
第1制御器25は、上述のように駆動周波数fを変更することによって、負荷電力Poutを所望の電力に近づける。実際に駆動周波数fを変化(増加及び減少)させる制御においては、駆動周波数fをステップ単位で変化させてもよい。駆動周波数fを変えるための1ステップの大きさはとくに限定されず、例えば数Hz〜数十Hz、数十Hz〜数百Hz程度であってもよい。ステップは、例えば、第1制御器25であるCPUのクロックの分解能で定まる。
周波数制御の具体的な手法は限定されない。例えば、直流交流変換器27がインバータ回路である場合には、第1制御器25は、インバータ回路に含まれる各スイッチング素子に供給される駆動信号を用いて、各スイッチング素子のスイッチング周波数を調整し、駆動周波数fを変更する。スイッチング素子としては、例えば、FET(Field Effect Transistor)及びIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられ、この場合、駆動信号はスイッチング素子のゲートに印加される。
続いて、位相シフト制御を説明する。第1制御器25は、直流交流変換器27(インバータ回路)の位相シフト量を変更することによって、直流電力Pdc、交流電力Pac2、及び負荷電力Poutの大きさ(電力値)を変更する位相シフト制御を実施する。例えば、直流交流変換器27が図4に示されるようなインバータ回路である場合には、第1制御器25は、インバータ回路に含まれるスイッチング素子SWa〜SWdへの駆動信号Sa〜Sdの供給時間を調整することによって、各スイッチング素子SWa〜SWdがオンとなる時間を調整する。
スイッチング素子SWaの駆動時間とスイッチング素子SWdの駆動時間とが同じであり、スイッチング素子SWbの駆動時間とスイッチング素子SWcの駆動時間とが同じであるときが、インバータ回路の通電期間(オン期間)が最も長くなる。スイッチング素子SWaの駆動時間とスイッチング素子SWdの駆動時間とがずれるほど(スイッチング素子SWbの駆動時間とスイッチング素子SWcの駆動時間とがずれるほど)、インバータ回路のオン期間が短くなる。インバータ回路のオン期間が短くなるほど、直流電力Pdc及び交流電力Pac2は小さくなる。位相シフト制御における上述の電力制御パラメータは、位相シフト量である。位相シフト量は、スイッチング素子SWaの駆動時間とスイッチング素子SWdの駆動時間とのずれ量(又はスイッチング素子SWbの駆動時間とスイッチング素子SWcの駆動時間とのずれ量)である。言い換えれば、位相シフト制御における上述の電力制御パラメータは、インバータ回路のオン期間である。
なお、インバータ回路のソフトスイッチングを実現するために、インバータ回路からの出力電圧(交流電力Pac2の電圧Vac2)の位相が出力電流(交流電力Pac2の電流Iac2)の位相と同じか進んでいる(インピーダンスが誘導性である)必要がある。電圧と電流との位相差を同じにしておくと、ノイズ及び制御誤差などでインピーダンスが容量性になってしまう。したがって、安全性を確保するために、位相差が所定値よりも小さくならないように電圧の位相を電流の位相よりも進めておく。この所定値を位相余裕と呼ぶ。
位相シフト量は、例えば、交流電力Pac2の1周期の長さ(つまり360度)を100%としてパーセント表示されてもよい。この場合、位相シフトが全く行われていない状態では、位相シフト量は0%である。なお、位相シフト制御においては、位相シフト量が0%のときに直流電力Pdc及び交流電力Pac2が最大になり、負荷電力Poutも最大になる。位相シフト量の最大値は、第1コイル21の回路特性(例えば第1コイル21及び図示しないキャパシタを含む共振回路の特性)によって変わるが、例えば、50%程度である。すなわち、一態様において、位相シフト量の下限値は0%に設定され得る。位相シフト量の上限値は50%に設定され得る。
続いて、直流電力Pdcの電圧制御を説明する。第1制御器25は、直流電力Pdcの電圧Vdcの大きさを変更することによって、直流電力Pdc、交流電力Pac2、及び負荷電力Poutの大きさ(電力値)を変更する電圧制御を実施する。直流電力Pdcの電圧Vdcの変更は、例えば上述の電力変換器26が有する昇降圧機能を利用して行われる。例えば、直流電力Pdcの電圧Vdcが大きくなるにつれて直流電力Pdc及び交流電力Pac2も大きくなり、直流電力Pdcの電圧Vdcが小さくなるにつれて直流電力Pdc及び交流電力Pac2も小さくなる。よって、直流電力Pdcの電圧制御における上述の電力制御パラメータは、直流電力Pdcの電圧Vdcの大きさである。昇降圧機能は、例えば、チョッパ回路で実現され得る。
使用周波数検出器28は、非接触給電システム1とは異なる他の機器によって使用される周波数帯域である使用周波数帯域を検出する回路である。使用周波数検出器28は、例えば、ラジオの自動チューニングと同様に、オートスキャンによって使用周波数帯域を検出する。使用周波数検出器28は、GPS(Global Positioning System)等を用いて送電装置2の位置情報を取得し、当該位置情報によって示される位置を含む地域において、他の機器に対して割り当てられている割当周波数帯域を使用周波数帯域として検出してもよい。地域ごとの割当周波数帯域は、不図示のメモリに予め設定されている。使用周波数検出器28は、検出された周波数帯域の高調波成分を使用周波数帯域としてもよい。使用周波数検出器28は、使用周波数帯域を示す使用周波数情報を第1制御器25に出力する。なお、ユーザが使用周波数帯域を第1制御器25に設定してもよい。この場合、送電装置2は、使用周波数検出器28を備えていなくてもよい。
受電装置3は、第2コイル31と、第2変換器32と、第2検出器33と、第2通信器34と、第2制御器35と、を備えている。
第2コイル31は、送電装置2から非接触で供給される電力を受け取るためのコイルである。第1コイル21によって発生された磁束が第2コイル31に鎖交することによって、第2コイル31に交流電力Pac3が生じる。第2コイル31は、交流電力Pac3を第2変換器32に供給する。なお、第2コイル31と第2変換器32との間には、キャパシタ及びインダクタ(例えば、リアクトル)が接続されていてもよい。
第2変換器32は、第2コイル31から供給された交流電力Pac3を負荷Lにとって所望の負荷電力Poutに変換する回路である。負荷Lが直流負荷である場合、第2変換器32は、交流電力Pac3を直流の負荷電力Poutに変換する交流直流変換器(整流回路)である。この場合、第2変換器32は、負荷Lにとって所望の負荷電力Poutを出力するために昇降圧機能を含んでいてもよい。この昇降圧機能は、例えばチョッパ回路又はトランスで実現され得る。第2変換器32は、交流直流変換器の入力に設けられたトランスをさらに備えていてもよい。
負荷Lが交流負荷である場合、第2変換器32は、交流電力Pac3を直流電力に変換する交流直流変換器に加えて、さらに直流交流変換器(インバータ回路)を含む。直流交流変換器は、交流直流変換器によって生成された直流電力を交流の負荷電力Poutに変換する。第2変換器32は、交流直流変換器の入力に設けられたトランスをさらに備えていてもよい。なお、第2コイル31から供給される交流電力Pac3が負荷Lにとって所望の交流電力である場合には、第2変換器32は省略され得る。
第2検出器33は、負荷Lに供給される負荷電力Poutに関する測定値を取得するための回路である。第2検出器33は、負荷Lに供給される負荷電圧Vout、負荷電流Iout又は負荷電力Poutを測定する。第2検出器33は、例えば、電圧センサ、電流センサ、又はその組み合わせである。第2検出器33は、取得した測定値を第2制御器35に出力する。負荷Lは、第2電力指令値を第2制御器35に出力する。第2電力指令値は、負荷Lに供給すべき所望の電力の大きさを示す。例えば負荷Lが蓄電池の場合には、第2電力指令値は、負荷LのSOC(State Of Charge)に応じて定められた電流、電圧、又は電力の指令値であってもよい。
第2通信器34は、送電装置2の第1通信器24と無線で通信を行うための回路である。第2通信器34により、受電装置3は、送電装置2と通信可能である。第2通信器34は、例えば、電波を利用する通信方式用のアンテナ、光信号を利用する通信方式用の発光素子及び受光素子を含む。第2通信器34は、第2制御器35から受信した情報を送電装置2に送信する。
第2制御器35は、CPU及びDSP等の処理装置である。第2制御器35は、ROM、RAM及び受電装置3の各部と接続するインターフェース回路等を含んでいてもよい。第2制御器35は、第2検出器33から受信した測定値に基づいて第2電力測定値を計算する。第2制御器35は、第2電力測定値及び負荷Lから受信した第2電力指令値を第2通信器34を介して送電装置2に送信する。
なお、例えば、送電装置2に電源PSに代えて電気自動車の蓄電池が接続され、受電装置3に負荷Lに代えて電源PSが接続されることによって、受電装置3から送電装置2に電力を伝送することも可能である。
次に、図5〜図8を参照して、電力制御を詳細に説明する。図5は、図2の第1制御器が行う電力制御の一連の処理を示すフローチャートである。図6は、図5の周波数変更処理の一例を詳細に示すフローチャートである。図7は、図5の電力制御の一例を説明するための図である。図8は、図5の電力制御の別の例を説明するための図である。図5に示される一連の処理は、第1制御器25が受電装置3から第2電力指令値を受信することによって開始される。なお、直流交流変換器27の位相シフト量の初期値は、0に設定されている。
第1制御器25は、まず、受電装置3から受信した第2電力指令値に基づいて、第1電力指令値を計算する(ステップS1)。なお、受電装置3が第2電力指令値とともに第2電力測定値を送電装置2に送信する場合、第1制御器25は、第2電力測定値が第2電力指令値に近づくように、第1電力指令値を補正してもよい。なお、第1電力測定値が第1電力指令値と等しい場合には、以降の処理は行われることなく、電力制御が終了する。
続いて、第1制御器25は、電圧Vdcを設定する(ステップS2)。例えば、送電装置2の起動時においては、第1制御器25は、電圧Vdcが、電力変換器26が出力可能な電圧Vdcの電圧範囲のうちの最小の電圧となるように、電力変換器26を制御する。第1制御器25は、電圧Vdcが予め定められた電圧(例えば、420V)となるように電力変換器26を制御してもよい。送電装置2が稼働している場合には、第1制御器25は、電力変換器26が出力している電圧Vdcで固定してもよい。ここでは、電圧Vdcが、電力変換器26が出力可能な電圧範囲のうちの最小の電圧に設定される場合を例として説明する。このとき、直流電力Pdcの周波数特性は、例えば、図7に示された特性C1(初期特性C1)となる。
続いて、第1制御器25は、周波数制御を行い(ステップS3)、周波数制御によって第1電力測定値を第1電力指令値に近づける。ここでは、特性C1(第1特性)に沿って、駆動周波数fが変更されるに従い、第1電力測定値(直流電力Pdcの電力値)が変化する。なお、送電装置2の起動時においては、周波数制御を行う前の駆動周波数fは、直流電力Pdcが最も小さくなる周波数(例えば、90kHz)に設定されている。送電装置2が稼働している場合には、直前まで用いられていた駆動周波数fがそのまま使用されてもよい。第1制御器25は、例えば、駆動周波数fをステップ単位で変化させることによって、第1電力測定値を第1電力指令値に徐々に近づける。なお、駆動周波数fの変化量に対する直流電力Pdcの変化量が小さい周波数帯域においては、第1制御器25は、1ステップ当たりの駆動周波数fの変化量を大きくしてもよい。
続いて、第1制御器25は、駆動周波数fが使用周波数帯域の一方の境界周波数(第1周波数)に達したか否かを判定する(ステップS4)。使用周波数帯域は、一方の境界周波数と他方の境界周波数との間に位置し、これらの境界周波数はいずれも使用周波数帯域に含まれない。境界周波数は、使用周波数帯域の上限周波数又は下限周波数である。一方の境界周波数が上限周波数である場合、他方の境界周波数(第2周波数)は下限周波数である。一方の境界周波数が下限周波数である場合、他方の境界周波数は上限周波数である。
駆動周波数fが一方の境界周波数に達していないと判定された場合(ステップS4;NO)、第1制御器25は、第1電力測定値が第1電力指令値に達した(一致している)か否かを判定する(ステップS5)。第1電力測定値が第1電力指令値に達していない(一致していない)と判定された場合(ステップS5;NO)、第1制御器25は、引き続きステップS3の周波数制御を行う。一方、第1電力測定値が第1電力指令値に達した(一致している)と判定された場合(ステップS5;YES)、電力制御の一連の処理が終了する。
ステップS4において、駆動周波数fが使用周波数帯域の一方の境界周波数に達したと判定された場合(ステップS4;YES)、第1制御器25は、周波数変更処理を実施する(ステップS6)。周波数変更処理は、第1電力測定値(直流電力Pdcの電力値)を第1電力指令値に近づける際に、駆動周波数fが使用周波数帯域を通過する場合、駆動周波数fが使用周波数帯域に含まれないように駆動周波数fを変更する処理である。
ステップS6の周波数変更処理では、図6に示されるように、まず、第1制御器25が、駆動周波数fが通過(進入)しようとしている使用周波数帯域に目標周波数f0が含まれるか否かを判定する(ステップS11)。目標周波数f0は、初期特性C1において、第1電力測定値(直流電力Pdcの電力値)が第1電力指令値に達した際の駆動周波数fである。目標周波数f0が当該使用周波数帯域に含まれないと判定された場合(ステップS11;NO)、第1制御器25は、直流電力Pdcの周波数特性を変更する(ステップS12)。本実施形態では、第1制御器25は、直流交流変換器27の位相シフト制御によって、周波数特性を変更する。
具体的には、第1制御器25は、駆動信号Sa〜Sd(図4参照)の供給時間を調整することによって、位相シフト量を変更する。ここでは、第1制御器25は、位相シフト量を増加する。位相シフト量が大きくなるに従い、同一の駆動周波数fにおける直流電力Pdcの電力値が小さくなる。そして、位相シフト量が増加されることによって、直流電力Pdcの周波数特性が初期特性C1から特性C2(第2特性)に変化する。
このとき、駆動周波数fは一方の境界周波数に合わされている(固定されている)ので、一方の境界周波数における直流電力Pdcの電力値は減少する。なお、特性C2における一方の境界周波数における直流電力Pdcの電力値と他方の境界周波数における直流電力Pdcの電力値との差分(差の絶対値)は、初期特性C1における一方の境界周波数における直流電力Pdcの電力値と他方の境界周波数における直流電力Pdcの電力値との差分(差の絶対値)よりも小さい。
続いて、第1制御器25は、駆動周波数fを一方の境界周波数から他方の境界周波数に変更する(ステップS13)。言い換えると、駆動周波数fが一方の境界周波数から他方の境界周波数に切り替えられる。本実施形態では、第1制御器25は、直流電力Pdcの電力値が特性C2に沿うように、駆動周波数fを一方の境界周波数から他方の境界周波数に変更する。これにより、駆動周波数fが使用周波数帯域に含まれることなく、駆動周波数fが使用周波数帯域を通過する。つまり、駆動周波数fが使用周波数帯域を飛び越える。
そして、第1制御器25は、直流電力Pdcの周波数特性を元に戻す(ステップS14)。具体的には、第1制御器25は、駆動信号Sa〜Sd(図4参照)の供給時間を調整することによって、位相シフト量を0に戻す。以上により、第1制御器25は、ステップS6の周波数変更処理を終了し、引き続きステップS3の周波数制御を行う。
一方、ステップS11において、駆動周波数fが通過(進入)しようとしている使用周波数帯域に目標周波数f0が含まれると判定された場合(ステップS11;YES)、第1制御器25は、直流電力Pdcの電力値を上げる制御を行っているか否かを判定する(ステップS15)。直流電力Pdcの電力値を上げる制御が行われていると判定された場合(ステップS15;YES)、第1制御器25は、直流電力Pdcの周波数特性を変更し(ステップS16)、駆動周波数fを一方の境界周波数から他方の境界周波数に変更(ジャンプ)する(ステップS17)。ステップS16,S17の処理は、ステップS12,S13の処理と同じであるので、それらの説明を省略する。
続いて、第1制御器25は、位相シフト制御における位相シフト量を減少する(ステップS18)。具体的には、第1制御器25は、駆動信号Sa〜Sd(図4参照)の供給時間を調整することによって、位相シフト量を減少する。これにより、直流電力Pdcの周波数特性が特性C2から初期特性C1に向かって変化する。このとき、駆動周波数fは他方の境界周波数に合わされている(固定されている)ので、直流電力Pdcの電力値は増加する。
そして、第1制御器25は、第1電力測定値が第1電力指令値に達した(一致している)か否かを判定する(ステップS19)。第1電力測定値が第1電力指令値に達していない(一致していない)と判定された場合(ステップS19;NO)、第1制御器25は、引き続きステップS18の位相シフト制御を行う。一方、第1電力測定値が第1電力指令値に達した(一致している)と判定された場合(ステップS19;YES)、電力制御の一連の処理が終了する。
ステップS15において、直流電力Pdcの電力値を下げる制御が行われていると判定された場合(ステップS15;NO)、第1制御器25は、位相シフト制御における位相シフト量を増加する(ステップS20)。具体的には、第1制御器25は、駆動信号Sa〜Sd(図4参照)の供給時間を調整することによって、位相シフト量を増加する。これにより、直流電力Pdcの周波数特性が初期特性C1から特性C2に向かって変化する。このとき、駆動周波数fは一方の境界周波数に合わされている(固定されている)ので、直流電力Pdcの電力値は減少する。
そして、第1制御器25は、第1電力測定値が第1電力指令値に達した(一致している)か否かを判定する(ステップS21)。第1電力測定値が第1電力指令値に達していない(一致していない)と判定された場合(ステップS21;NO)、第1制御器25は、引き続きステップS20の位相シフト制御を行う。一方、第1電力測定値が第1電力指令値に達した(一致している)と判定された場合(ステップS21;YES)、電力制御の一連の処理が終了する。
なお、直流電力Pdcの電力値(第1電力測定値)が一旦第1電力指令値に合わせられると、第1制御器25は、周波数制御によって、直流電力Pdcの電力値が第1電力指令値に合わされた状態を維持する電力一定制御を行う。上記電力制御によって、位相シフト量を変更可能な範囲では、使用周波数帯域外の駆動周波数fにおいて直流電力Pdcを第1電力指令値に合わせることができない場合、第1制御器25は、位相シフト量を変更可能な範囲において、駆動周波数fが使用周波数帯域外の周波数に設定されるように、第1電力指令値を下げてもよい。
図7を用いて図5の電力制御の一例を具体的に説明する。図7に示される例では、使用周波数帯域FB1,FB2が設定されている。使用周波数帯域FB1は、下限周波数fl1と上限周波数fh1との間に位置する。上限周波数fh1は、下限周波数fl1よりも大きい。使用周波数帯域FB2は、下限周波数fl2と上限周波数fh2との間に位置する。下限周波数fl2は、上限周波数fh1よりも大きく、上限周波数fh2よりも小さい。この例では、直流電力Pdcの初期電力が第1電力指令値よりも小さく、駆動周波数fの初期周波数が上限周波数fh2よりも大きい。
まず、第1制御器25は、周波数制御により駆動周波数fを徐々に減少することによって、直流電力Pdcを徐々に増加する(ステップS3)。そして、駆動周波数fが使用周波数帯域FB2の上限周波数fh2に達すると(ステップS4;YES)、第1制御器25は、周波数変更処理を行う(ステップS6)。目標周波数f0は使用周波数帯域FB2には含まれない(ステップS11;NO)ので、第1制御器25は、位相シフト制御によって位相シフト量を増加することで、直流電力Pdcの周波数特性を初期特性C1から特性C2に変更する(ステップS12)。
そして、第1制御器25は、直流電力Pdcの電力値が特性C2に沿うように、駆動周波数fを上限周波数fh2から下限周波数fl2に変更する(ステップS13)。これにより、駆動周波数fが、使用周波数帯域FB2に含まれることなく、使用周波数帯域FB2を通過する(飛び越える)。そして、第1制御器25は、位相シフト量を初期値に戻すことによって直流電力Pdcの周波数特性を初期特性C1に戻す(ステップS14)。
続いて、第1制御器25は、周波数制御により駆動周波数fを下限周波数fl2から徐々に減少することによって、直流電力Pdcを徐々に増加する(ステップS3)。そして、駆動周波数fが使用周波数帯域FB1の上限周波数fh1に達すると(ステップS4;YES)、第1制御器25は、周波数変更処理を行う(ステップS6)。目標周波数f0は使用周波数帯域FB1に含まれ(ステップS11;YES)、直流電力Pdcの電力値を上げる制御が行われている(ステップS15;YES)ので、第1制御器25は、位相シフト制御によって位相シフト量を増加することで、直流電力Pdcの周波数特性を初期特性C1から特性C2に変更する(ステップS16)。
そして、第1制御器25は、駆動周波数fを上限周波数fh1から下限周波数fl1に変更する(ステップS17)。これにより、駆動周波数fが、使用周波数帯域FB1に含まれることなく、使用周波数帯域FB1を通過する(飛び越える)。そして、第1制御器25は、位相シフト量を徐々に減少し(ステップS18)、直流電力Pdcの電力値(第1電力測定値)が第1電力指令値に達すると(ステップS19;YES)、電力制御の一連の処理が終了する。
例えば、負荷Lがバッテリである場合、バッテリの充電が進むとバッテリ電圧(負荷電圧Vout)が上昇する。この場合、直流電力Pdcの周波数特性が変化するが、周波数制御による電力一定制御が行われているので、駆動周波数fが変化する。このとき、駆動周波数fが上がるか下がるかは、共振回路の構成等に応じて定まる。駆動周波数fが下がる場合には、駆動周波数fは使用周波数帯域FB1から遠ざかる。この場合、第1制御器25は、位相シフト量を段階的に小さくしてもよい。一方、駆動周波数fが上がる場合には、駆動周波数fは使用周波数帯域FB1に近づくので、第1制御器25は、位相シフト量をさらに大きくすることにより、駆動周波数fが使用周波数帯域FB1に含まれないようにしてもよい。
図8を用いて図5の電力制御の別の例を具体的に説明する。図8に示される例では、図7と同様に、使用周波数帯域FB1,FB2が設定されている。この例では、直流電力Pdcの初期電力が第1電力指令値よりも大きく、駆動周波数fの初期周波数が下限周波数fl1に一致している。まず、駆動周波数fの初期周波数が下限周波数fl1に一致している(ステップS4;YES)ので、第1制御器25は、周波数変更処理を行う(ステップS6)。
目標周波数f0は使用周波数帯域FB1には含まれない(ステップS11;NO)ので、第1制御器25は、位相シフト制御によって位相シフト量を増加することで、直流電力Pdcの周波数特性を初期特性C1から特性C2に変更する(ステップS12)。そして、第1制御器25は、直流電力Pdcの電力値が特性C2に沿うように、駆動周波数fを下限周波数fl1から上限周波数fh1に変更する(ステップS13)。これにより、駆動周波数fが、使用周波数帯域FB1に含まれることなく、使用周波数帯域FB1を通過する(飛び越える)。そして、第1制御器25は、位相シフト量を初期値に戻すことによって直流電力Pdcの周波数特性を初期特性C1に戻す(ステップS14)。
続いて、第1制御器25は、周波数制御により駆動周波数fを上限周波数fh1から徐々に増加することによって、直流電力Pdcを徐々に減少する(ステップS3)。そして、駆動周波数fが使用周波数帯域FB2の下限周波数fl2に達する前に目標周波数f0に達すると(ステップS4;NO)、直流電力Pdcの電力値(第1電力測定値)が第1電力指令値に達し(ステップS5;YES)、電力制御の一連の処理が終了する。
なお、上限周波数fh1において、位相シフト量を初期値に戻す過程において、直流電力Pdcの電力値が第1電力指令値に達する。しかしながら、位相シフトが行われている状態(位相シフト量が0より大きい場合)では、ノイズが生じるおそれがある。このため、第1制御器25は、位相シフト量を初期値に戻してから周波数制御によって直流電力Pdcの電力値(第1電力測定値)を第1電力指令値に合わせている。ノイズの影響が小さい場合には、第1制御器25は、上限周波数fh1において、位相シフト量を調整することによって、直流電力Pdcの電力値(第1電力測定値)を第1電力指令値に合わせてもよい。
以上説明したように、送電装置2では、直流電力Pdcの電力値(第1電力測定値)が第1電力指令値に近づけられる際に、第1コイル21に供給される交流電力Pac2の駆動周波数fが他の機器によって使用される使用周波数帯域を通過しようとする場合、使用周波数帯域に含まれないように駆動周波数fが変更される。このため、駆動周波数fが使用周波数帯域に含まれることなく、直流電力Pdcの電力値が第1電力指令値に近づけられる。その結果、他の機器との干渉をより一層抑制することが可能となる。
第1制御器25は、周波数変更処理において、直流電力Pdcの電力値が特性C2に沿うように、駆動周波数fを一方の境界周波数から他方の境界周波数に変更する。特性C2における駆動周波数fが一方の境界周波数である場合の電力値と駆動周波数fが他方の境界周波数である場合の電力値との差分(差の絶対値)は、初期特性C1における上記電力値の差分(差の絶対値)よりも小さい。したがって、上記構成によれば、駆動周波数fを一方の境界周波数から他方の境界周波数に変更したとしても、直流電力Pdcの電力値の変動量を抑えることができる。これにより、駆動周波数fを一方の境界周波数から他方の境界周波数に変更した場合に、直流電力Pdcの電力値が第1電力指令値を超える可能性を低減することができ、保護回路が動作することを回避できる。その結果、周波数変更処理により送電装置2が故障する可能性を低減することが可能となる。
第1制御器25は、駆動周波数fが通過しようとしている使用周波数帯域に目標周波数f0が含まれない場合、駆動周波数fを一方の境界周波数から他方の境界周波数に変更した後、駆動周波数fを他方の境界周波数に合わせた状態で、周波数特性を初期特性C1に戻す。位相シフト量が大きい場合、直流交流変換器27から見たインピーダンスが容量性負荷(C負荷)になりやすく、またノイズの影響(EMC及び誤動作等)が生じるおそれがある。これに対し、上記構成によれば、駆動周波数fが使用周波数帯域を通過した後、直流電力Pdcの周波数特性が特性C1に戻される。このため、位相シフト量が0になるので、直流交流変換器27から見たインピーダンスが容量性負荷になる可能性を低減するとともに、ノイズの影響が生じる可能性を低減することができる。
第1制御器25は、駆動周波数fが通過しようとしている使用周波数帯域に目標周波数f0が含まれる場合、駆動周波数fを一方の境界周波数から他方の境界周波数に変更した後、駆動周波数fを他方の境界周波数に合わせた状態で周波数特性を変更することによって、直流電力Pdcの電力値(第1電力測定値)を第1電力指令値に合わせる。この構成によれば、使用周波数帯域とは異なる周波数において、直流電力Pdcの電力値が第1電力指令値に合わせられる。したがって、他の機器との干渉を抑制することが可能となる。
第1制御器25は、直流交流変換器27の位相シフト制御によって、周波数特性を変更する。直流交流変換器27の位相シフト量が変更されると、直流電力Pdcの周波数特性が変化する。位相シフト制御は、直流電力Pdcの電圧制御よりも応答性に優れる。したがって、直流電力Pdcの電圧制御により周波数特性を変更するよりも、位相シフト制御により周波数特性を変更する方が周波数変更処理の処理速度を向上させることができる。
第1制御器25は、電圧Vdcが一定となるように、電力変換器26を制御している。具体的には、電圧Vdcが、電力変換器26が出力可能な電圧範囲のうちの最小の電圧のような低い電圧に設定されている。この構成によれば、直流交流変換器27の耐電圧を上げることなく、周波数変更処理を行うことができる。その結果、直流交流変換器27の大型化を招くことなく、他の機器との干渉を抑制することが可能となる。直流交流変換器27に耐電圧の低い部品を用いることができるので、送電装置2のコストを低減することができる。
また、直流交流変換器27のスイッチング素子として耐電圧の高いスイッチング素子が用いられると、スイッチング素子のオン抵抗が大きくなるので、直流交流変換器27における損失が増加する。このため、耐電圧の低いスイッチング素子を用いることによって、送電装置2の電力効率の低下を軽減することが可能となる。
さらに、上記実施形態では、電圧Vdcが変更されないので、ギャップ変動等の過渡応答に追従することができる。
電圧Vdcが低いほど、第1コイル21と第2コイル31との間の電力の伝送効率は高い。したがって、電圧Vdcを低くすることによって、第1コイル21と第2コイル31との間の電力の伝送効率を向上させることが可能となる。電圧Vdcを低くすることによって、送電装置2が破壊される可能性を低減することができる。
交流電力Pac1の電圧Vac1を下げることによって、電圧Vdcをさらに下げることができるが、電圧Vac1の電圧範囲が狭くなる。これに対し、電力変換器26は、PFC回路の後段に降圧用の直流直流変換器をさらに備えることによって、電圧Vac1の電圧範囲を狭めることなく、電圧Vdcをさらに下げることが可能である。一方、PFC回路の出力可能な電圧範囲内に電圧Vdcが設定される場合には、降圧用の直流直流変換器は省略され得るので、送電装置2のコストを低減することが可能となる。なお、上記実施形態において、電圧Vdcは、数V程度変更されてもよい。
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上記実施形態に限定されない。例えば、非接触給電システム1は、電気自動車EVに限られず、プラグインハイブリッド車及び水中航走体等の移動体に適用されてもよく、移動体以外に適用されてもよい。
周波数変更処理において、第1制御器25は、駆動周波数fを使用周波数帯域の一方の境界周波数から他方の境界周波数に変更しているが、周波数変更処理はこれに限られない。例えば、使用周波数帯域を挟む任意の第1周波数と第2周波数とが用いられてもよい。この場合、使用周波数帯域は、第1周波数と第2周波数との間に位置し、第1周波数及び第2周波数は、使用周波数帯域に含まれない。第1制御器25は、駆動周波数fが第1周波数に達したと判定すると、周波数変更処理を行う。第1制御器25は、周波数変更処理において、駆動周波数fを第1周波数から第2周波数に変更する。
上記実施形態では、電圧Vdcは、電力変換器26が出力可能な電圧Vdcの電圧範囲のうちの最小の電圧に設定されているが、それよりも大きい電圧に設定されてもよい。例えば、電圧Vdcは、電力変換器26が出力可能な電圧Vdcの電圧範囲のうちの最大の電圧に設定されてもよい。この場合、第1制御器25は、直流電力Pdcの電圧制御によって、直流電力Pdcの周波数特性を変更してもよい。例えば、第1制御器25は、電圧Vdcを減少させるように電力変換器26を制御することによって、直流電力Pdcの周波数特性を初期特性C1から特性C2に変更してもよい。
図9に示されるように、第1制御器25は、周波数変更処理において、直流電力Pdcの電力値が、直流電力Pdcの周波数特性が初期特性C1である場合の一方の境界周波数における電力値を維持するように、駆動周波数fを一方の境界周波数から他方の境界周波数に変更してもよい。つまり、第1制御器25は、直流電力Pdcの周波数特性を初期特性C1から特性C2に変更しつつ、駆動周波数fを一方の境界周波数から他方の境界周波数に変更してもよい。
具体的には、第1制御器25は、位相シフト量を増加するとともに、駆動周波数fを減少することによって、直流電力Pdcの電力値を一定に保ちながら、駆動周波数fを一方の境界周波数から他方の境界周波数に変更する。つまり、ステップS12とステップS13とが並行して行われ、ステップS16とステップS17とが並行して行われる。なお、駆動周波数fを一方の境界周波数から他方の境界周波数に変更することによって、直流電力Pdcの電力値が増加するが、この増加分を打ち消すだけの位相シフト量は予め算出され、第1制御器25に設定されている。この位相シフト量は、使用周波数帯域ごとに設定されていてもよく、すべての使用周波数帯域に共通に設定されていてもよい。
上記変形例では、直流電力Pdcの電力値が維持されながら、駆動周波数fが一方の境界周波数から他方の境界周波数に変更される。これにより、駆動周波数fを一方の境界周波数から他方の境界周波数に変更したとしても、直流電力Pdcの電力値はほとんど変化しない。その結果、周波数変更処理により送電装置2が故障する可能性をより一層低減することが可能となる。
第1制御器25は、インピーダンス制御によって、周波数特性を変更してもよい。図10を参照して、変形例に係る送電装置2を含む非接触給電システム1を説明する。図10は、変形例に係る送電装置を含む非接触給電システムの回路ブロック図である。図10に示されるように、変形例に係る非接触給電システム1は、送電装置2の第1変換器22がインピーダンス変換器29をさらに備える点において、上記実施形態の非接触給電システム1と主に相違する。
インピーダンス変換器29は、直流交流変換器27と第1コイル21との間に設けられている。インピーダンス変換器29は、直流交流変換器27と第1コイル21との間のインピーダンス(直流交流変換器27から見たインピーダンス)を変更するための装置である。インピーダンス変換器29は、例えば、TMN(Tunable matching network)であってもよい。TMNについては、公知であるのでその説明を省略する(米国特許出願公開第2019/0006836号明細書、及び米国特許出願公開第2019/0006885号明細書等参照)。
第1変換器22は、周波数制御、位相シフト制御、及び直流電力Pdcの電圧制御に加えて、インピーダンス制御よっても直流電力Pdc及び交流電力Pac2の大きさ(電力値)を変更することができる。すなわち、第1制御器25によって行われる電力制御は、周波数制御、位相シフト制御、直流電力Pdcの電圧制御、及びインピーダンス制御の少なくとも1つを用いて行われる。
続いて、インピーダンス制御を説明する。第1制御器25は、直流交流変換器27と第1コイル21との間のインピーダンスの大きさを変更することによって、直流電力Pdc、交流電力Pac2、及び負荷電力Poutの大きさ(電力値)を変更するインピーダンス制御を実施する。直流交流変換器27と第1コイル21との間のインピーダンスが大きくなるにつれて直流電力Pdc及び交流電力Pac2が小さくなり、直流交流変換器27と第1コイル21との間のインピーダンスが小さくなるにつれて直流電力Pdc及び交流電力Pac2が大きくなる。よって、インピーダンス制御における上述の電力制御パラメータは、直流交流変換器27と第1コイル21との間のインピーダンスの大きさである。
変形例の電力制御は、位相シフト制御に代えてインピーダンス制御によって周波数特性が変更される点において、上記実施形態の電力制御と異なる。つまり、ステップS12,S16では、第1制御器25は、インピーダンス制御によって、周波数特性を変更する。具体的には、第1制御器25は、インピーダンスを増加するようにインピーダンス変換器29を制御することによって、直流電力Pdcの周波数特性が初期特性C1から特性C2に変更する。ステップS14では、第1制御器25は、インピーダンスを初期値に戻すようにインピーダンス変換器29を制御することによって、直流電力Pdcの周波数特性を元に戻す。ステップS18では、第1制御器25は、インピーダンスを減少させるようにインピーダンス変換器29を制御することによって、直流電力Pdcの周波数特性を特性C2から初期特性C1に向かって変化させる。ステップS20では、第1制御器25は、インピーダンスを増加させるようにインピーダンス変換器29を制御することによって、直流電力Pdcの周波数特性を初期特性C1から特性C2に向かって変化させる。その他の処理は、上記実施形態の電力制御と同様であるので、説明を省略する。
上記変形例では、直流交流変換器27と第1コイル21との間のインピーダンスが変更されると、直流電力Pdcの周波数特性が変化する。インピーダンス制御は、直流電力Pdcの電圧制御よりも応答性に優れる。したがって、直流電力Pdcの電圧制御により周波数特性を変更するよりも、インピーダンス制御により周波数特性を変更する方が周波数変更処理の処理速度を向上させることができる。なお、インピーダンス変換器29は、第2コイル31と第2変換器32との間に設けられてもよい。
第1制御器25は、直流電力Pdcの電圧制御、直流交流変換器27の位相シフト制御、及び直流交流変換器27と第1コイル21との間のインピーダンス制御の少なくとも1つを行うことによって、直流電力Pdcの周波数特性を変更してもよい。
以上説明したように、第1制御器25は、周波数変更処理において、直流電力Pdcの周波数特性を初期特性C1から特性C2に変更し、駆動周波数fが第1周波数である場合の直流電力Pdcの電力値と駆動周波数fが第2周波数である場合の直流電力Pdcの電力値との差分(差の絶対値)が、初期特性C1における上記電力値の差分(差の絶対値)よりも小さくなるように、駆動周波数fを第1周波数から第2周波数に変更している。このように、直流電力Pdcの電力値の変動量を軽減しつつ、駆動周波数fが第1周波数から第2周波数に変更される。これにより、周波数変更処理により送電装置2が故障する可能性を低減することが可能となる。
なお、上述のように、第1制御器25は、電力一定制御として、交流電力Pac2が交流電力Pac2の目標値である第1電力指令値に近づくように第1変換器22を制御してもよい。交流電力Pac2の周波数特性は、上述の直流電力Pdcの周波数特性と同様である。交流電力Pac2を用いた電力制御は、直流電力Pdcを用いた電力制御と同様である。