以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、一実施形態に係る送電装置及び非接触給電システムの適用例を示す図である。図1に示されるように、非接触給電システム1は、送電装置2と受電装置3とを備えており、送電装置2から受電装置3に電力を供給するためのシステムである。送電装置2及び受電装置3は、例えば上下方向に離間している。送電装置2は、例えば駐車場等に設置されている。受電装置3は、電気自動車EVに搭載されている。非接触給電システム1は、駐車場等に到着した電気自動車EVに対し、磁界共鳴方式又は電磁誘導方式等のコイル間の磁気結合を利用して、電力を供給するように構成されている。なお、受電装置3は、電気自動車(EV)ではなく、プラグインハイブリッド車及び水中航走体などの各種移動体に搭載されてもよい。
送電装置2は、非接触給電のための電力を供給する装置である。送電装置2は、電源PS(図2参照)によって供給された電力から所望の交流電力を生成し、受電装置3に送る。送電装置2は、例えば駐車場等の路面Rに設置される。送電装置2は、例えば駐車場等の路面Rから上方に突出するように設けられた送電コイル装置4を備えている。送電コイル装置4は、第1コイル21(図2参照)を含み、例えば扁平な錘台状又は直方体状をなしている。送電装置2は、交流電源から所望の交流電力を生成する。生成された交流電力が送電コイル装置4に送られることによって、送電コイル装置4は磁束を発生させる。
受電装置3は、送電装置2から電力を受け取り、負荷L(図2参照)に電力を供給する装置である。受電装置3は、例えば電気自動車EVに搭載される。受電装置3は、例えば電気自動車EVの車体(シャーシ等)の底面に取り付けられた受電コイル装置5を備えている。受電コイル装置5は、第2コイル31(図2参照)を含み、電力供給時において送電コイル装置4と上下方向に離間して対向する。受電コイル装置5は、例えば扁平な錘台状又は直方体状をなしている。送電コイル装置4で発生した磁束が受電コイル装置5に鎖交することによって、受電コイル装置5は誘導電流を発生させる。これにより、受電コイル装置5は、非接触で送電コイル装置4からの電力を受け取る。受電コイル装置5が受け取った電力は、負荷に供給される。
図2を参照して、非接触給電システム1の回路構成を詳細に説明する。図2は、非接触給電システム1の回路ブロック図である。図2に示されるように、非接触給電システム1は、電源PSから入力電力P1を受け、負荷Lに負荷電力Poutを供給するシステムである。電源PSは、交流電源であってもよいし、直流電源であってもよい。交流電源の種類はとくに限定されないが、例えば商用電源であってもよい。直流電源の種類はとくに限定されないが、例えば太陽光発電装置及び蓄電装置等であってもよい。負荷Lは、直流負荷であってもよいし、交流負荷であってもよい。直流負荷の種類はとくに限定されないが、例えば蓄電池であってもよい。交流負荷の種類はとくに限定されないが、例えばモータであってもよい。
送電装置2は、電源PSから入力電力P1を供給される。送電装置2は、第1コイル21と、第1変換器22と、第1検出器23と、第1通信器24と、第1制御器25と、を備えている。
第1変換器22は、電源PSから供給される入力電力P1を、所望の交流電力Pac2に変換し、変換した交流電力Pac2を第1コイル21に供給する回路である。第1変換器22は、電力変換器26と、直流交流変換器(DC/AC converter)27と、を備えている。
電力変換器26としては、例えば入力電力P1に応じて次のような構成が採用され得る。入力電力P1が交流電力の場合、電力変換器26は、例えば交流直流変換器(AC/DC converter)であってもよい。交流直流変換器は、例えば整流回路である。整流回路は、ダイオード等の整流素子で構成されてもよいし、トランジスタ等のスイッチング素子によって構成されてもよい。直流交流変換器は、PFC(Power Factor Correction)機能及び昇降圧機能を有していてもよい。
入力電力P1が直流電力の場合、電力変換器26は、例えば直流直流変換器(DC/DCconverter)であってもよい。直流直流変換器は、例えばチョッパ回路を用いた非絶縁型の回路であってもよいし、トランスを用いた絶縁型の回路であってもよい。
いずれの場合も、第1制御器25によって、電力変換器26から出力される直流電力Pdcの大きさが制御される。直流電力Pdcの大きさは、例えば、電力変換器26から出力される直流電圧の変更により、制御される。電力変換器26は、変換した直流電力Pdcを直流交流変換器27に供給する。
直流交流変換器27は、電力変換器26によって変換された直流電力Pdcを交流電力Pac2に変換する。直流交流変換器27は、例えばインバータ回路である。第1変換器22は、直流交流変換器27の出力に設けられたトランスをさらに備えていてもよい。直流交流変換器27から出力される交流電力Pac2の大きさは、第1制御器25によって制御される。交流電力Pac2の大きさは、例えば、周波数制御、及び位相シフト制御によって制御され得る。直流交流変換器27は、変換した交流電力Pac2を第1コイル21に供給する。
なお、第1変換器22の構成は、図2に示される例に限定されない。例えば、第1変換器22は、電力変換器26及び直流交流変換器27に代えて、交流交流変換器(AC/AC converter)を含んでもよい。交流交流変換器は、例えば、マトリクスコンバータ及びサイクロコンバータ等である。また、電力変換器26は、交流直流変換器と、交流直流変換器の出力に設けられた直流直流変換器(DC/DC converter)とで構成されてもよい。
第1コイル21は、受電装置3に非接触で給電するためのコイルである。第1コイル21は、第1変換器22から交流電力Pac2が供給されることによって、磁束を発生する。第1コイル21と第1変換器22との間には、キャパシタ及びインダクタ(例えば、リアクトル)が接続されていてもよい。
第1検出器23は、直流電力Pdcの大きさを検出するためのセンサを含む。第1検出器23は、例えば、電圧センサ、電流センサ、又はその組み合わせである。
第1通信器24は、後述する受電装置3の第2通信器34と無線で通信を行うための回路である。第1通信器24は、例えば、電波を利用する通信方式用のアンテナ、光信号を利用する通信方式用の発光素子及び受光素子である。第1通信器24は、受電装置3から受信した情報を第1制御器25に出力する。
第1制御器25は、CPU(Central Processing Unit)及びDSP(Digital Signal Processor)等の処理装置である。第1制御器25は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び送電装置2の各部と接続するインターフェース回路等を有してもよい。第1制御器25は、第1変換器22を制御することによって、交流電力Pac2の大きさを制御し、負荷Lに供給される負荷電力Poutの大きさを制御する電力制御を実行する。第1制御器25は、電力制御として、例えば、第1通信器24を介して受電装置3から受信した(通知された)測定値及び電力指令値(後述)に基づいて、測定値が電力指令値に近づくように第1変換器22を制御する。なお、後述するように、第1制御器25は、第1変換器22から第1コイル21に供給される交流電力Pac2に基づいて、負荷電力Poutを推定してもよい。
電力制御は、次に説明する、周波数制御、位相シフト制御、及び直流電力Pdcの制御の少なくとも1つを用いて行われる。各制御において、交流電力Pac2の大きさを制御するためのパラメータが変更される。
周波数制御について説明する。交流電力Pac2の周波数に応じて、交流電力Pac2及び負荷電力Poutの大きさが変更される。交流電力Pac2の周波数としては、例えば81.38kHz〜90kHzが利用可能である。周波数が変わることにより、コイル及びキャパシタ等のリアクタンス素子のインピーダンスが変わり、交流電力Pac2及び負荷電力Poutの大きさが変化する。以下、本実施形態では、周波数が大きくなるにつれて、交流電力Pac2及び負荷電力Poutの大きさが小さくなるとする。第1制御器25は、交流電力Pac2の周波数を変更することによって、交流電力Pac2及び負荷電力Poutの大きさを変更する周波数制御を実施する。周波数制御における上述のパラメータは、交流電力Pac2の周波数である。交流電力Pac2の周波数とは、第1変換器22から出力される交流電流又は交流電圧の周波数である。
周波数制御の具体的な手法は限定されない。例えば、直流交流変換器27がインバータ回路である場合には、第1制御器25は、インバータ回路に含まれる各スイッチング素子に供給される駆動信号を用いて、各スイッチング素子のスイッチング周波数を調整し、交流電力Pac2の周波数を変更する。スイッチング素子は、例えば、FET(Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated GateBipolar Transistor)等であり、この場合、駆動信号はスイッチング素子のゲートに印加される。なお、周波数制御の詳細については、後に図3を用いてさらに説明する。
位相シフト制御について説明する。直流交流変換器27が図9に示されるようなインバータ回路である場合には、第1制御器25は、インバータ回路に含まれるスイッチング素子a〜dへの駆動信号Sa〜Sdの供給時間を調整して、各スイッチング素子a〜dがオンとなる時間を調整する。スイッチング素子aの駆動時間とスイッチング素子dの駆動時間とが同じであり、スイッチング素子bの駆動時間とスイッチング素子cの駆動時間とが同じであるときが、インバータ回路の通電期間が最も長くなる。スイッチング素子aの駆動時間とスイッチング素子dの駆動時間とがずれるほど(スイッチング素子bの駆動時間とスイッチング素子cの駆動時間とがずれるほど)、インバータ回路の通電期間が短くなる。インバータ回路の通電期間が短くなるほど、交流電力Pac2は小さくなる。位相シフト制御における上述のパラメータは、スイッチング素子aの駆動時間とスイッチング素子dの駆動時間とのずれ量(又はスイッチング素子bの駆動時間とスイッチング素子cの駆動時間とのずれ量)である。以下、このずれ量を位相シフト値とする。
上述の位相シフト値は、例えば、交流電力Pac2の1周期の長さ(つまり360度)を100%としてパーセントで表されてもよい。この場合、位相シフトが全く行われていない状態では、位相シフト値は0%である。なお、位相シフト制御においては、位相シフト値が0%のときに交流電力Pac2が最大になり、負荷電力Poutも最大になる。位相シフト値の最大値は、第1コイル21の回路特性(例えば第1コイル21及び図示しないキャパシタとの共振回路の特性)によって変わるが、例えば、50%程度である。すなわち、一態様において、位相シフト値の下限値は0%に設定され得る。位相シフト値の上限値は50%に設定され得る。
直流電力Pdcの制御について説明する。直流電力Pdcの制御では、直流電力Pdcの電圧の大きさが変更される。直流電力Pdcの電圧の変更は、例えば先に説明した電力変換器26が有する昇降圧機能を利用して行われる。例えば、直流電力Pdcの電圧が大きくなるにつれて交流電力Pac2も大きくなり、直流電力Pdcの電圧が小さくなるにつれて交流電力Pac2も小さくなる。よって、直流電力Pdcの制御における上述のパラメータは、直流電力Pdcの電圧Vdcの大きさである。
なお、以後、交流電力Pac2の周波数を「駆動周波数f」という場合もある。また、直流交流変換器27の位相シフト制御における位相シフト値を「位相シフト値θ」という場合もある。
受電装置3は、第2コイル31と、第2変換器32と、第2検出器33と、第2通信器34と、第2制御器35と、を備えている。
第2コイル31は、送電装置2から非接触で供給される電力を受け取るためのコイルである。第1コイル21によって発生された磁束が第2コイル31に鎖交することによって、第2コイル31に交流電力Pac3が生じる。第2コイル31は、交流電力Pac3を第2変換器32に供給する。第2コイル31と第2変換器32との間には、キャパシタ及びインダクタ(例えば、リアクトル)が接続されていてもよい。
第2変換器32は、第2コイル31が受け取った交流電力Pac3を負荷Lにとって所望の負荷電力Poutに変換する回路である。負荷Lが直流負荷である場合、第2変換器32は、交流電力Pac3を直流の負荷電力Poutに変換する交流直流変換器(整流回路)である。この場合、第2変換器32は、負荷Lにとって所望の負荷電力Poutを出力するために昇降圧機能を含んでいてもよい。この昇降圧機能は、例えばチョッパ回路又はトランスで実現され得る。第2変換器32は、交流直流変換器の入力に設けられたトランスをさらに備えていてもよい。
負荷Lが交流負荷である場合、第2変換器32は、交流電力Pac3を直流電力に変換する交流直流変換器に加えて、さらに直流交流変換器(インバータ回路)を含む。直流交流変換器は、交流直流変換器によって変換された直流電力を交流の負荷電力Poutに変換する。第2変換器32は、交流直流変換器の入力に設けられたトランスをさらに備えていてもよい。なお、第2コイル31から供給される交流電力Pac3が負荷Lにとって所望の交流電力である場合には、第2変換器32は省略され得る。
第2検出器33は、負荷電力Poutに関する測定値を取得する。第2検出器33は、負荷Lに供給される負荷電圧、負荷電流又は負荷電力Poutを測定する。第2検出器33は、例えば、電圧センサ、電流センサ、又はその組み合わせである。第2検出器33は、取得した測定値を第2制御器35に出力する。負荷Lは、電力指令値を第2制御器35に出力する。電力指令値は、負荷Lに供給すべき所望の電力に対応する値であり、以下負荷Lに供給すべき所望の電力の大きさであるとする。なお、所望の電力に対応する電力指令値は、電力の値でなくてもよい。電力は、電流と電圧との乗算で求まる値であるため、一方が一定である場合は、所望の電力を実現する他方の値が定まる。この定められた値を電力指令値としてもよい。例えば負荷Lが蓄電池の場合には、電力指令値は、負荷LのSOC(State Of Charge)に応じて定められた電流、電圧、又は電力の指令値であってもよい。
第2通信器34は、送電装置2の第1通信器24と無線で通信を行うための回路である。第2通信器34により、受電装置3は、送電装置2と通信可能である。第2通信器34は、例えば、電波を利用する通信方式用のアンテナ、光信号を利用する通信方式用の発光素子及び受光素子である。第2通信器34は、第2制御器35から受信した情報を送電装置2に送信する。
第2制御器35は、CPU及びDSP等の処理装置である。第2制御器35は、ROM,RAM及び受電装置3の各部と接続するインターフェース回路等を含んでいてもよい。第2制御器35は、第2検出器33から受信した測定値及び負荷Lから受信した電力指令値を第2通信器34を介して送電装置2に送信する。
なお、例えば、送電装置2に、電源PSに代えて電気自動車の蓄電池が接続され、受電装置3に、負荷Lに代えて電源PSが接続されることによって、受電装置3から送電装置2に電力を伝送することも可能である。
次に、送電装置2の第1制御器25による周波数制御の詳細について、図3を用いて説明する。図3のグラフの横軸は駆動周波数fを示し、縦軸は負荷電力Pout(の大きさ)を示す。図3のflimは、駆動周波数fに対して定められる上限値を示す。
図3のグラフでは、駆動周波数fと負荷電力Poutとの関係を示す特性(以下、単に「電力特性」という場合もある)として、先に説明したような、駆動周波数fの増加にともない負荷電力Poutが減少する例が示される。以下、駆動周波数fを変えることによって、負荷電力Poutを調整する手法について具体的に説明する。
例えば、当初、駆動周波数fが周波数f30であったと仮定する。このときの負荷電力Poutは電力P30である。ここで、例えば、駆動周波数fを、周波数f30から周波数f29まで減少させる。すると、負荷電力Poutは、駆動周波数f=f29に対応する電力P50となる。よって、負荷電力Poutは、電力P30から、電力P50まで増加する。一方、駆動周波数fを、周波数f30から周波数f31まで増加させる。すると、負荷電力Poutは、駆動周波数f=f31に対応する電力P20となる。よって、負荷電力Poutは、電力P30から、電力P20まで減少する。
第1制御器25は、例えば上述のように駆動周波数fを制御することによって、負荷電力Poutを所望の電力(電力P50,P20等)に近づけることができる。実際に駆動周波数fを変える(増加及び減少させる)制御においては、駆動周波数fをステップ単位で変化させてよい。駆動周波数fを変えるための1ステップの大きさはとくに限定されず、例えば数Hz〜数十Hz、数十Hz〜数百Hz程度であってよい。ステップは、例えば、第1制御器25であるCPUのクロックの分解能で定まる。
次に、送電装置2の第1制御器25による位相シフト制御及び電圧制御の詳細について、図4を用いて説明する。図4のグラフは、図3のグラフと同様に、電力特性を示す。ただし、図4のグラフでは、曲線C1、曲線C2及び曲線C3の3つの曲線による異なる電力特性が示される。電力特性は、例えば、位相シフト値θを変える、或いは電圧Vdcを変えることによって、曲線C1〜C3で示される異なる電力特性を取り得る。位相シフト値θが大きいほど、インバータ回路の通電期間が短くなり交流電力Pac2が小さくなる。よって、位相シフト値θの増加に伴い、負荷電力Poutが減少するように、電力特性が変化する。また、電圧Vdcが大きいほど直流電力Pdcが大きくなり得る。よって、電圧Vdcの増加に伴い、負荷電力Poutが増加するように、電力特性が変化し得る。
位相シフト値θについて見ると、例えば、当初、位相シフト値θが所定の値(例えば0%)であり、電力特性が、曲線C3によって示される電力特性であったと仮定する。駆動周波数fは周波数f30であるとする。このときの負荷電力Poutは電力P30である。ここで、例えば、駆動周波数fを変えることなく、位相シフト値θを、所定値だけ増加させる。すると、電力特性は、例えば曲線C2によって示される電力特性となる。このときの負荷電力Poutは、電力P28となる。よって、負荷電力Poutは、電力P30から、電力P28まで減少する。さらに、駆動周波数fを変えることなく、位相シフト値θを所定値だけ増加させると、電力特性は、例えば、曲線C1によって示される電力特性となる。このときの負荷電力Poutは、電力P26となる。よって、負荷電力Poutは、さらに電力P28から、電力P26まで減少する。
例えばこのように位相シフト値θを制御することによって、駆動周波数fを変えることなく負荷電力Poutを所望の電力(電力P28、電力P26等)に近づけることができる。
ここで、実際に位相シフト値θを変える(増加させる)制御においては、位相シフト値θをステップ単位で変えることになる。位相シフト値θを変えるための1ステップの大きさはとくに限定されず、例えば数度程度であってよい。
電圧Vdcについても、図4のグラフを用いて説明される。例えば、当初、電圧Vdcが所定の値であり、電力特性が、曲線C2によって示される電力特性であったと仮定する。駆動周波数fは周波数f30であるとする。このときの負荷電力Poutは電力P28である。ここで、例えば、駆動周波数fを変えることなく、電圧Vdcを所定値だけ増加させる。すると、電力特性は、例えば曲線C3によって示される電力特性となる。このときの負荷電力Poutは、電力P30となる。よって、負荷電力Poutは、電力P28から、電力P30まで増加する。一方、駆動周波数fを変えることなく、電圧Vdcを所定値だけ減少させると、電力特性は、例えば、曲線C1によって示される電力特性となる。このときの負荷電力Poutは、電力P26となる。よって、負荷電力Poutは、電力P28から、電力P26まで減少する。
例えばこのように電圧Vdcを制御することによって、負荷電力Poutを所望の電力(電力P30、電力P26等)に近づけることができる。
実際に電圧Vdcを変化(増加及び減少)させる制御においては、電圧Vdcをステップ単位で変化させてよい。電圧Vdcを変えるための1ステップの大きさはとくに限定されず、例えば数V〜数十V程度であってよい。
ここで、先に図3を参照して説明した周波数制御においては、駆動周波数fを変える際の単位ステップの最小値がハードウェア性能等によって制限されるので、駆動周波数fを変えることによる負荷電力Poutの調整精度には限界がある。また、利用可能な駆動周波数fの範囲が制限されているので、負荷電力Poutの調整範囲も制限される。
これに対し、周波数制御と、先に図4を参照して説明した位相シフト制御及び電圧制御とを組み合わせて実行することにより、周波数制御のみを実行する場合よりも、負荷電力Poutが細かく調整される。また、周波数制御において駆動周波数fが利用可能な範囲の上限値又は下限値に設定されていたとしても、さらに位相シフト制御又は電圧制御を実行することにより、周波数制御における負荷電力Poutの調整範囲を超えた負荷電力Poutの調整が行われる。
本実施形態では、第1制御器25は、負荷電力Poutが電力指令値に近づくように、電力制御を行う。負荷電力Poutが電力指令値に近づいている状態とは、たとえば、負荷電力Pout(の大きさを示す値)と電力指令値との差分(絶対値)が、誤差許容値以下の状態である。誤差許容値は、電力指令値と負荷電力Poutとの差分の絶対値として許容できる範囲の上限値である。すなわち、第1制御器25によって実行される電力制御は、負荷電力Poutと電力指令値との差分が、誤差許容値以下となるように、負荷電力Poutを調整しようとするものである。
電力制御によって、例えば、負荷電力Poutを一定に維持するための制御(電力一定制御)が実現される。先に図3及び図4を参照して説明した電力特性は、例えば、第1コイル21及び第2コイル31の相対的な位置ずれが生じて第1コイル21と第2コイル31との結合係数が変化することによって、変化する。図1に示される例において、電気自動車EVに対して非接触給電が行われている時に、乗員の乗り降り及び荷物の積み降ろし等が発生すると、電気自動車EVの重量が変化する。それに応じて受電装置3に含まれる第2コイル31の位置が、図1の上下方向に変化して、第1コイル21と第2変換器32との相対的な位置が変化し、位置ずれが発生し得る。ただし、位置ずれによって電力特性が変化した場合でも、上述した周波数制御、位相シフト制御及び電圧制御によって同様に負荷電力Poutを調整できる。この場合の電力制御は、例えば電力伝送中に位置ずれが生じることによって負荷電力Poutが変動したときに負荷電力Poutの変動を抑制するための制御として用いられる。
第1制御器25は、例えば制御モード状態フラグに従って制御モードを選択し、周波数制御及び位相シフト制御のいずれかを実行する。制御モード状態フラグは、電力制御において実行される制御の種類を指定するフラグである。制御モード状態フラグは、例えば周波数制御を示す値及び位相シフト制御を示す値のいずれかの値に設定(更新)される。制御モード状態フラグは、さらに電圧制御を示す値に設定されてもよい。
電力制御において、まず、制御モードとして周波数制御が選択される。すなわち、第1制御器25は、負荷電力Poutを電力指令値に近づけるために、まず、周波数制御を実行する。そして、周波数制御によって負荷電力Poutを電力指令値に近づけることができない場合に、第1制御器25は、位相シフト制御及び電圧制御の少なくとも一方を実行する。第1制御器25は、例えば周波数制御によって負荷電力Poutを電力指令値に近づけることができない場合に位相シフト制御を実行し、位相シフト制御によって負荷電力Poutを電力指令値に近づけることができない場合にさらに電圧制御を実行する。
また、第1制御器25は、周波数制御において駆動周波数fが所定の上限値を上回らず且つ所定の下限値を下回らないように、電力制御を実行する。駆動周波数fに対して定められる上限値は、例えば、非接触給電システム1が利用可能な周波数の上限値(90kHz)であってもよいし、第1変換器22から第1コイル21側を見たインピーダンスが誘導性を示す駆動周波数fの上限値であってもよい。駆動周波数fに対して定められる下限値は、例えば、非接触給電システム1が利用可能な周波数の下限値(81.38kHz)であってもよいし、第1変換器22から第1コイル21側を見たインピーダンスが誘導性を示す駆動周波数fの下限値であってもよい。
また、第1制御器25は、位相シフト制御において位相シフト値θが所定の上限値を上回らず且つ所定の下限値を下回らないように、電力制御を実行する。位相シフト値θに対して定められる上限値は、例えばインバータとしての直流交流変換器27がソフトスイッチング可能か否かに応じて定められてよい。ソフトスイッチングを実現するためには、直流交流変換器27から第1コイル21側を見たインピーダンスが誘導性である(電流位相が電圧位相よりも遅れている)必要がある。以下、電圧位相に対する電流位相の遅れを正の値とする。位相シフト値θが大きくなると、電圧位相が電流位相に近づき、電圧位相に対する電流位相の位相差が小さくなる。電圧位相に対する電流位相の位相差が負になる(つまり、電流位相が電圧位相よりも進んでいる)とソフトスイッチングができなくなる。ここで、電圧と電流との位相差を同じにしておくと、ノイズ及び制御誤差などでインピーダンスが容量性になってしまうので、安全性確保のために電圧位相を電流位相よりも所定値進めておくことが好ましい。つまり、位相シフト制御においては、電圧位相に対する電流位相の位相差が所定値を下回らないようにすることが望ましい。この場合には、位相シフト値θを大きくできる限界が存在することになる。インバータとしての直流交流変換器27がソフトスイッチング可能な位相シフト値θに対する上限値は、例えば50%程度である。直流交流変換器27のソフトスイッチングが可能であれば、第1変換器22から第1コイル21への交流電力Pac2の供給の安定性が確保される。位相シフト値θに対して定められる下限値は、例えば0%である。
なお、電圧Vdcの上限値及び下限値は、例えば電力変換器26の有する昇降圧機能に基づいて定められる。また、電圧Vdcは、電圧制御とは別に、電圧切り替え制御によって切り替えられてもよい。電圧切り替え制御では、周波数制御、位相シフト制御及びの電圧制御による負荷電力Poutの調整範囲に電力指令値が含まれるように、電圧Vdcが切り替えられる。
次に、図5〜図8を参照して、送電装置2の動作について説明する。図5〜図8は、送電装置2において実行される処理の一例を示すフローチャートである。まず、図5を用いて、全体のフローについて説明し、その後、図5のフローチャートにおけるいくつかの処理について、図6〜図8を用いて説明する。なお、ここでは、負荷Lが蓄電池であり、送電装置2からの電力によって蓄電池が充電される場合について説明する。このフローチャートの処理は、例えば受電装置3側からの充電開始要求を送電装置2が受信したことに応じて開始される。また、負荷電力Poutの測定値及び電力指令値は、受電装置3から送電装置2へ定期的に通知される。
まず、第1制御器25は、充電開始シーケンスを実行する(ステップS1)。例えば、第1変換器22から第1コイル21側を見たインピーダンスが誘導性を示す(容量性とならない)駆動周波数fにおいて、第1コイル21への交流電力Pac2の供給が開始される。また、例えば第1コイル21に過度に大きな電流が流れることを防ぐための保護機能を作動させないように、第1コイル21への交流電力Pac2の供給が開始される。
続いて、第1制御器25は、制御モード状態フラグを、周波数制御を示す値に設定する(ステップS2)。制御モード状態フラグは、後に実行される周波数制御又は位相シフト制御において、周波数制御又はそれ以外の制御(例えば位相シフト制御)を示す値に設定(更新)される。
続いて、第1制御器25は、電力一定制御の割り込みがあるか否かを判断する(ステップS3)。電力一定制御の割り込みは、例えば所定の周期で発生する。この電力一定制御の割り込みの優先度は、後述のステップS7における電圧切り替え制御の割り込みの優先度よりも高い。電力一定制御による割り込みが有ると判断された場合(ステップS3でYES)、第1制御器25は、制御モード状態フラグが周波数制御を示す値であるか否かを判断し(ステップS4)、周波数モード状態フラグが周波数制御を示す値であると判断された場合には(ステップS4でYES)、周波数制御を実行する(ステップS5)。周波数制御の詳細については後に図6を参照して説明する。これに対し、ステップS4において制御モード状態フラグが周波数制御を示す値でないと判断された場合には(ステップS4でNO)、第1制御器25は、位相シフト制御を実行する(ステップS6)。位相シフト制御の詳細については後に図7を参照して説明する。
一方、ステップS3において電力一定制御の割り込みが無いと判断された場合(ステップS3でNO)、ステップS5又はステップS6の処理が完了した後、第1制御器25は、電圧切り替え制御の割り込みが有るか否かを判断する(ステップS7)。電圧切り替え制御は、電力指令値が変更された場合に、必要に応じて直流電力Pdcの電圧レンジを切り替える制御である。電圧切り替え制御の割り込みは、例えば所定の周期で発生する。電圧切り替え制御の割り込みが発生する周期は、上述の電力一定制御の割り込みが発生する周期よりも長い。電圧切り替え制御の割り込みが有ると判断された場合(ステップS7でYES)、第1制御器25は、電圧切り替え制御を実行する(ステップS8)。電圧切り替え制御の詳細については、後に図8を参照して説明する。なお、上述のようにステップS3における電力一定制御の割り込みの優先度は、ステップS7における電圧切り替え制御の割り込みの優先度よりも高いので、電圧切り替え制御の割り込みがあると判断された場合(ステップS7でYES)であっても、電力一定制御の割り込みが発生すると、電力一定制御の処理(ステップS3でYES、ステップS4〜S6)が実行される。
ステップS7において電圧切り替え制御の割り込みが無いと判断された場合(ステップS7)又はステップS8の処理が完了した後、第1制御器25は、充電停止要求が有るか否かを判断する(ステップS9)。充電停止要求は、例えば、蓄電池としての負荷LのSOCが十分に高くなり充電が不要となったタイミングで、受電装置3から送電装置2に通知される。充電停止要求がないと判断された場合(ステップS9でNO)、第1制御器25は、ステップS3に再び処理を戻す。一方、充電停止要求が有ると判断された場合(ステップS9でYES)、第1制御器25は、充電停止シーケンスを実行し(ステップS10)、送電装置2において実行される一連の処理が終了する。
図5の処理によれば、制御モード状態フラグは、初期状態では、周波数制御を示す値に設定されるので(ステップS2)、電力一定制御においては、まず、周波数制御が位相シフト制御よりも優先して実行される(ステップS3、ステップS4でYES、ステップS5)。また、電力一定制御の割り込み周期よりも遅い周期で電圧切り替え制御の割り込みが発生し(ステップS7)、電圧切り替え制御が実行される(ステップS8)。
次に、図6を参照して周波数制御(図5のステップS6)の詳細を説明する。まず、第1制御器25は、電力指令値と負荷の電力値(すなわち負荷電力Pout)との差分を取得する(ステップS21)。電力指令値及び負荷電力Poutの大きさは、例えば前述したように受電装置3から送電装置2に通知される。
続いて、第1制御器25は、新たな駆動周波数fの候補値f1を算出する(ステップS22)。例えば、ステップS21において算出された電力指令値と負荷電力Poutとの差分を小さくするために負荷電力Poutを減少させる必要がある場合、候補値f1は、現在の駆動周波数fよりも所定ステップ分の周波数だけ大きな周波数として算出される。現在の駆動周波数fは、第1コイル21に供給されている交流電力Pac2の周波数である。所定のステップは、例えば1ステップである。また、負荷電力Poutを増加させる必要がある場合、候補値f1は、第1コイル21に供給されている交流電力Pac2の駆動周波数fよりも所定ステップ分の周波数だけ小さな周波数として算出される。ここで、ステップS21において算出された電力指令値と負荷の電力値との差分が小さ過ぎるため、駆動周波数fを1ステップ分変えた場合に、むしろ電力指令値と負荷の電力値との差分がさらに大きくなってしまう場合もある。例えば、駆動周波数fを1ステップ分変えた場合の負荷電力Poutの変化量の大きさが、電力指令値と現在の負荷電力Poutとの差分の2倍よりも大きいと、第1制御器25は、駆動周波数fを1ステップ分変えた場合に、電力指令値と負荷電力Poutとの差分がさらに大きくなると判断する。駆動周波数fを1ステップ分変えた場合の負荷電力Poutの変化量の大きさは、例えば現在の駆動周波数fによって異なる場合があるので、想定される負荷電力Poutの変化量のうち大きさが最小の変化量に基づいて定められてもよい。負荷電力Poutの変化量の大きさは、例えば実験データ等に基づいて予め定められ、第1制御器25が備える記憶部(例えば前述のRAM,ROM等)に記憶されていてよい。電力指令値と負荷電力Poutとの差分がさらに大きくなると判断された場合には、候補値f1は、第1コイル21に供給されている交流電力Pac2の周波数、つまり現在の駆動周波数fと同じ周波数として算出される。
続いて、第1制御器25は、候補値f1が現在の駆動周波数fと同じか否かを判断する(ステップS23)。候補値f1が現在の駆動周波数fと同じであると判断された場合(ステップS23でYES)、第1制御器25は、電力指令値と負荷電力Poutとの差分が誤差許容値より大きいか否かを判断する(ステップS24)。
ステップS24において、電力指令値と負荷電力Poutとの差分が誤差許容値より大きく、負荷電力Poutを所望の電力に近づけることができないと判断した場合(ステップS24でYES)、第1制御器25は、位相シフト制御又は電圧制御を実行する(ステップS25)。すなわち、負荷電力Poutと所望の電力との差分を誤差許容値以下とする調整が周波数制御のみでは達成されない場合、第1制御器25は、位相シフト制御又は電圧制御を実行する。具体的に、先に図4を参照して説明したように、第1制御器25は、位相シフト値θ又は電圧Vdcを変えることによって、負荷電力Poutが電力指令値に近づくように調整する。
ここで、ステップS25においては、電圧制御に優先して位相シフト制御が実行されてもよい。換言すると、位相シフト制御によっても電力指令値と負荷の電力値との差分が誤差許容値以下とならない場合に、電圧制御が実行されてもよい。
ステップS23において、候補値f1が現在の駆動周波数fと同じでないと判断された場合(ステップS23でNO)、第1制御器25は、候補値f1が上限周波数fmaxより大きいか否かを判断する(ステップS26)。上限周波数fmaxは、先に説明したように、駆動周波数fに対して定められる上限値である。候補値f1が上限周波数fmaxより大きいと判断された場合(ステップS26でYES)、第1制御器25は、制御モード状態フラグを位相シフト制御を示す値に設定し(ステップS27)、駆動周波数fを上限fmaxに設定する(ステップS28)。
一方、候補値f1が上限周波数fmax以下であると判断された場合(ステップS26でNO)、第1制御器25は、駆動周波数fを候補値f1に設定する(ステップS29)。
ステップS24において電力指令値と負荷電力Poutとの差分が誤差許容値以下であると判断された場合(ステップS24でNO)、ステップS25、S28又はステップS29の処理が完了した後、第1制御器25は、周波数制御を終了する。
図6に示される周波数制御では、駆動周波数fを変えることによって、負荷電力Poutが調整される(ステップS28,S29)。また、周波数制御による負荷電力Poutの調整精度の限界により電力指令値と負荷電力Poutとの差分を誤差許容値以下にできない場合には(ステップS24でYES)、位相シフト制御又は電圧制御によって電力指令値と負荷Lの負荷電力Poutとの差分が誤差許容値より小さくなるように、負荷電力Poutが調整される(ステップS25)。さらに、駆動周波数fの候補値f1が上限周波数fmaxを超える場合には、制御モード状態フラグが位相シフト制御を示す値に設定され(ステップS27)、駆動周波数fが上限周波数fmaxに設定され(ステップS28)、周波数制御による電力制御から、位相シフト制御による電力制御に、電力制御が移行する(図5のステップS4でNO,ステップS6)。
なお、図6に示される処理において、駆動周波数fの候補値f1が下限値を下回る場合には、例えば駆動周波数fが下限周波数に設定され、制御モード状態フラグが位相シフト制御を示す値に設定されてよい。
次に、図7を参照して位相シフト制御(図5のステップS7)の詳細を説明する。初めに実行されるステップS41の処理は、先に説明した図6のステップS21と同じである。すなわち、第1制御器25は、電力指令値と負荷の電力値(すなわち負荷電力Pout)との差分を取得する(ステップS41)。
続いて、第1制御器25は、新たな位相シフト値θの候補値θ1を算出する(ステップS42)。例えば、ステップS41において算出された電力指令値と負荷電力Poutとの差分から、負荷電力Poutを減少させる必要がある場合、候補値θ1は、第1コイル21に供給されている交流電力Pac2の位相シフト値θよりも所定ステップ分の位相シフト値だけ大きな位相シフト値として算出される。また、負荷電力Poutを増加させる必要がある場合、候補値θ1は、第1コイル21に供給されている(すなわち現在の)交流電力Pac2の位相シフト値θよりも所定ステップ分の位相シフト値だけ小さな位相シフト値として算出される。ここで、例えば、ステップS41において算出された電力指令値と負荷電力Poutとの差分が小さ過ぎるため、位相シフト値θを1ステップ分変えた場合に、むしろ電力指令値と負荷電力Poutとの差分がさらに大きくなってしまう場合もある。例えば、位相シフト値θを1ステップ分変えた場合の負荷電力Poutの変化量の大きさが、電力指令値と現在の負荷電力Poutとの差分の2倍よりも大きいと、第1制御器25は、位相シフト値θを1ステップ分変えた場合に、電力指令値と負荷電力Poutとの差分がさらに大きくなると判断する。位相シフト値θを1ステップ分変えた場合の負荷電力Poutの変化量の大きさは、例えば現在の位相シフト値θによって異なる場合があるので、想定される負荷電力Poutの変化量のうち大きさが最小の変化量に基づいて定められてもよい。負荷電力Poutの変化量の大きさは、例えば実験データ等に基づいて予め定められ、第1制御器25が備える記憶部に記憶されていてよい。電力指令値と負荷電力Poutとの差分がさらに大きくなると判断された場合には、候補値θ1は、第1コイル21に供給されている交流電力Pac2の位相シフト値、つまり現在の位相シフト値θと同じ位相シフト値として算出される。
続いて、第1制御器25は、候補値θ1が現在の位相シフト値θと同じか否かを判断する(ステップS43)。候補値θ1が現在の位相シフト値θと同じであると判断された場合(ステップS43でYES)、第1制御器25は、電力指令値と負荷電力Poutとの差分が誤差許容値より大きいか否かを判断する(ステップS44)。
ステップS44において、電力指令値と負荷電力Poutとの差分が誤差許容値より大きく、負荷電力Poutを所望の電力に近づけることができないと判断した場合(ステップS44でYES)、第1制御器25は、電圧制御を実行する(ステップS45)。すなわち、負荷電力Poutと電力指令値との差分を誤差許容値以下とする調整が位相シフト制御によっても達成されない場合、第1制御器25は、電圧制御を実行する。具体的に、先に図4を参照して説明したように、第1制御器25は、直流電力Pdcの電圧Vdcを変えることによって、負荷電力Poutが所望の電力に近づくように調整する。
一方、ステップS43において、候補値θ1が現在の位相シフト値θと同じでないと判断された場合(ステップS43でNO)、第1制御器25は、候補値θ1が下限位相シフト値θminより大きいか否かを判断する(ステップS46)。下限位相シフト値θminは、先に説明したように、位相シフト値θに対して定められる下限値である。候補値θ1が下限位相シフト値θminより大きいと判断された場合(ステップS46でYES)、第1制御器25は、位相シフト値θを候補値θ1に設定する(ステップS47)。一方、候補値θ1が下限位相シフト値θmin以下と判断された場合(ステップS46でNO)、第1制御器25は、制御モード状態フラグを周波数制御を示す値に設定し(ステップS48)、位相シフト値θを下限位相シフト値θminに設定する(ステップS49)。
ステップS44において電力指令値と負荷電力Poutとの差分が誤差許容値以下であると判断された場合(ステップS44でNO)、ステップS45,S47又はステップS49の処理が完了した後、第1制御器25は、位相シフト制御を終了する。
図7に示される位相シフト制御では、位相シフト値θを変えることによって、負荷電力Poutが調整される(ステップS47,S49)。また、位相シフト制御による負荷電力Poutの調整精度の限界により電力指令値と負荷電力Poutとの差分を誤差許容値以下にできない場合には(ステップS44でYES)、電圧制御によって電力指令値と負荷電力Poutとの差分が誤差許容値より小さくなるように、負荷電力Poutが調整される(ステップS45)。さらに、位相シフト値θの候補値θ1が下限位相シフト値θminになる場合には、制御モード状態フラグが周波数制御を示す値に設定され(ステップS48,S49)、位相シフト制御による電力制御から、周波数制御による電力制御に、電力制御が移行する(図5のステップS4でYES、ステップS5)。
なお、図7に示される処理において、位相シフト値θの候補値θ1が上限値を上回る場合には、例えば位相シフト値θが上限値に設定され、制御モード状態フラグが周波数制御を示す値に設定されてよい。
次に、図8を参照して、電圧切り替え制御(図5のステップS8)の詳細を説明する。この電圧切り替え制御では、電圧制御と同様に電圧Vdcを変えることによって負荷電力Poutが調整される。ただし、電圧切り替え制御においては、電圧制御ほど電圧Vdcが細かく変えられるのではなく、たとえば数段階の電圧レベルのいずれかに電圧Vdcが切り替えられる。ここでは、電圧Vdcが2段階で切り替えられる例について説明する。まず、第1制御器25は、電力指令値が変更されたか否かを判断する(ステップS51)。例えば受電装置3から送電装置2に通知された電力指令値が、その前に通知された電力指令値と異なる値であった場合に、電力指令値が変更されたと判断される。電力指令値が変更になったと判断された場合(ステップS51でYES)、第1制御器25は、電力指令値はモード切替値より高いか否かを判断する(ステップS52)。モード切替値は、電圧Vdcを後述のローモードにおける電圧及びハイモードにおける電圧の間で切り替える際の判断の基準となる閾値である。モード切替値は、例えば1000Wである。例えばモード切替値が1000Wの場合、電力指令値が1000Wより大きいと、電圧Vdcがハイモードにおける電圧に設定され、電力制御による負荷電力Poutの調整可能な範囲が、主に1000W以上の範囲(上限はたとえば3000W,4000W程度)となる。ハイモードにおける電圧Vdcは、ローモードよりも高い電圧(例えば400V程度)である。一方、電力指令値が1000W以下であると、電圧Vdcがローモードにおける電圧に設定される、電力制御による負荷電力Poutの調整可能な範囲が、主に1000W以下の範囲となる。ローモードにおける電圧Vdcは、ハイモードにおける電圧よりも低い電圧(例えば350V程度)である。電圧切り替え制御において、電圧Vdcは、周波数制御、位相シフト制御及び電圧制御による負荷電力Poutの調整範囲に電力指令値が含まれるように切り替えられる。
ステップS52において電力指令値がモード切替値より高いと判断された場合(ステップS52でYES)、第1制御器25は、現在のモードがハイモードであるか否かを判断する(ステップS53)。例えばモードの状態を示すフラグが設定されており、第1制御器25は、フラグの値を参照することによって、現在のモードがハイモードであるか否かを判断する。現在のモードがハイモードでないと判断された場合(ステップS53でNO)、第1制御器25は、モードをハイモードに切替える(ステップS54)。具体的にステップS54では、モード状態を示すフラグが、ハイモードを示す値に設定(更新)される。
一方、ステップS52において電力指令値がモード切替値以下であると判断された場合(ステップS52でNO)、第1制御器25は、現在のモードがローモードであるか否かを判断する(ステップS55)。この判断は、例えば上述のフラグの値が参照されることによって行われる。現在のモードがローモードでないと判断された場合(ステップS55でNO)、第1制御器25は、モードをローモードに切替える(ステップS56)。具体的にステップS56では、モード状態を示すフラグが、ローモードを示す値に設定(更新)される。
ステップS54又はステップS56の処理が完了した後、第1制御器25は、モード切替シーケンスを実行する(ステップS57)。例えば、第1変換器22から第1コイル21側を見たインピーダンスが誘導性を示す(容量性とならない)ように、フラグが示すモードに応じて電圧Vdcが切り替えられる。また、例えば第1コイル21に過度に大きな電流が流れることを防ぐための保護機能を作動させないように、電圧Vdcが切り替えられる。
ステップS51において電力指令値が変更されたと判断された場合(ステップS51でNO)、ステップS53において現在のモードがハイモードであると判断された場合(ステップS53でYES)、ステップS55において現在のモードがローモードであると判断された場合(ステップS55でYES)、又はステップS57の処理が完了した後、第1制御器25は、電圧切り替え制御を終了する。
図8に示される電圧切り替え制御では、電力指令値に応じて、直流電力Pdcの電圧Vdcが切り替えられる(ステップS57)。具体的に、電圧Vdcは、周波数制御、位相シフト制御及び電圧制御による負荷電力Poutの調整範囲に電力指令値が含まれるように切り替えられる。このように電力指令値に応じて電圧Vdcが切り替わることで、電力一定制御(図5のステップS4)において実行され得る周波数制御、位相シフト制御及び電圧制御によって、負荷電力Poutを電力指令値に近づけやすくなる。また、周波数制御において駆動周波数fが上限値を上回らず下限値を下回らない範囲で電力調整を行える可能性が高まる。同様に、位相シフト制御において位相シフト値θが上限値を上回らず下限値を下回らない範囲で電力調整を行える可能性が高まる。
なお、モード切替を安定させるために、ハイモードからローモードに切り替えるためのモード切替値と、ローモードからハイモードに切替えるためのモード切替値とを異なる値に設定することによって、モード切替にヒステリシスを持たせてもよい。
次に、送電装置2の作用効果について説明する。送電装置2では、第1制御器25によって、周波数制御に加えて、位相シフト制御及び電圧制御のいずれかの制御が実行される。そして、周波数制御によっては負荷電力Poutを電力指令値に近づけることができない場合に、位相シフト制御及び電圧制御の少なくとも一方の制御が実行される(図6のステップS25)。これにより、周波数制御のみを実行する場合よりも、電力調整の範囲が拡がり、また、より細かい電力調整が行えるようになる。よって、負荷電力Poutを電力指令値にさらに近づけることができる。
また、先に説明したように、ステップS25において、第1制御器25は、電圧制御よりも位相シフト制御を優先して実行してもよい。位相シフト制御は、電圧制御よりも応答性に優れる場合も少なくない。そのため、位相シフト制御を電圧制御よりも優先して実行することで、電力制御の応答性を向上させ、電力の調整を行いやすくすることができる。
第1制御器25は、電力指令値に応じて直流電力Pdcの電圧Vdcを切り替えるとともに、電力制御を実行してもよい。電圧Vdcは、周波数制御及び位相シフト制御による負荷電力Poutの調整範囲に電力指令値が含まれるように切り替えられ、これにより、負荷電力Poutを電力指令値に近づけやすくなる。
例えば、第1制御器25は、電力指令値と負荷電力Poutとの差分が、誤差許容値以下となるように電力制御を実行することによって、負荷電力Poutを調整する。この場合、誤差許容値を適切に設定することで、所望の精度で電力制御を実行することができる。
また、第1制御器25は、位相シフト制御において位相シフト値θが下限値を下回らないように、電力制御を実行する。これにより、所定値以上の位相差を確保し、第1変換器22から第1コイル21への交流電力Pac2の供給の安定性を確保しつつ、電力制御を実行することができる。
また、非接触給電システム1においては、受電装置3の第2検出器33を用いて負荷Lに供給される負荷電力Poutを検出し、その検出結果を用いて送電装置2において電力制御が実行されてもよい。この場合、例えば送電装置2側で負荷Lに供給される負荷電力Poutを推定して電力制御を実行する場合よりも、電力制御の精度を向上させることができる。
もちろん、受電装置3から送電装置2へ負荷電力Poutの大きさを通知せず、送電装置2側で負荷電力Poutを推定して電力制御を実行してもよい。例えば、第1制御器25は、第1変換器22から第1コイル21に供給される交流電力Pac2に基づいて、負荷電力Poutを推定してもよい。これは、交流電力Pac2と、負荷電力Poutとが関連性を有するためである。例えば、非接触給電システム1による電力伝送においてほとんど電力損失が発生しない場合には、交流電力Pac2及び負荷電力Poutの大きさはほぼ等しいので、第1コイル21に供給される交流電力Pac2の大きさを、負荷Lに供給されている負荷電力Poutとして推定することができる。また、電力損失を考慮する場合には、電力損失の大きさを予め定めた値(例えば5%)としておき、交流電力Pac2の大きさから、電力損失の大きさを差し引いた値を、負荷電力Poutとして推定することができる。このように第1コイル21に供給される交流電力Pac2に基づいて負荷Lに供給される負荷電力Poutを推定するので、例えば、受電装置3から送電装置2への負荷電力Poutの通知を不要とすることができる。その場合、送電装置2及び受電装置3、すなわち非接触給電システム1の構成を簡素化し、コストを削減できる可能性が高まる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、第1制御器25は、電力制御として、周波数制御に加えて位相シフト制御及び電圧制御のいずれか一方のみを実行することによって、負荷電力Poutを調整してもよい。また、上記実施形態では、第1制御器25が、まず、周波数制御を実行し、周波数制御によって負荷電力Poutを電力指令値に近づけることができない場合に、位相シフト制御を実行し、位相シフト制御によっても負荷電力Poutを電力指令値に近づけることができない場合に、電圧制御を実行する例について説明した。しかし、第1制御器25は、まず、周波数制御を実行し、周波数制御によって負荷電力Poutを電力指令値に近づけることができない場合に、電圧制御を実行し、電圧制御によっても負荷電力Poutを電力指令値に近づけることができない場合に、位相シフト制御を実行してもよい。
なお、図5に示されるフローチャートにおいては、先に説明したように、電圧切り替え制御の割り込みが発生する周期は、電力一定制御の割り込みが発生する周期よりも長い。この場合、周波数制御、位相シフト制御及び電圧制御による電力一定制御に拘わらず、電力一定制御の割り込みが発生する周期よりも長い周期で電圧切り替え制御が発生し、電力指令値に応じて電圧Vdcが切り替えられることとなる。この場合でも、先に説明したように、電力一定制御の割り込みの優先度が電圧切り替え制御の割り込みの優先度よりも高いので、電圧切り替え制御の割り込みが発生する周期よりも短い周期で電力一定制御が実行される。その結果、電圧Vdcの切り替えによる電圧Vdcの変化に追従して電力一定制御が実行されるので、電圧切り替え制御および電力一定制御の両制御が併存する場合でも、負荷電力Poutを電力指令値に近づけることができる。
また、上記実施形態では、電力指令値と負荷電力Poutとの差分が誤差許容値以下になると(ステップS24でNO、ステップS44でNO)、位相シフト制御および電圧制御による電力制御を行わず、電力一定制御を終了するようにしていた。ただし、電力指令値と負荷電力Poutとの差分が誤差許容値以下になった場合でも(ステップS24でNO、ステップS44でNO)、さらに電力制御を(つまりステップS25、ステップS45の処理を)実行してもよい。