JP2021131093A - ローラ製造方法及び繊維搬送ローラ - Google Patents
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Abstract
【課題】非粘着性や耐久性に優れたローラを簡単に製造することができるローラ製造方法及び繊維搬送ローラを提供する。【解決手段】ローラ製造方法は、円筒状の軸芯部材11と、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなり軸芯部材11の外周に設けられる円筒状の表皮部材12とを備えるローラを製造する方法であって、表皮部材12よりも剛性の高い円筒状の支持体としての軸芯部材11の外周を、表皮部材12の内周に配置する支持体配置工程(S6)と、支持体としての軸芯部材11の外周が表皮部材12の内周に配置された状態で、表皮部材12の外周表面に凹凸形状を転造加工する凹凸転造工程(S7)とを有する。【選択図】図5
Description
本発明は、ローラ製造方法及び繊維搬送ローラに関する。
従来、フィラメントワインディング(Filament Winding)と称される成形法が知られている。フィラメントワインディングは、樹脂を含侵させた炭素繊維などの繊維束をワークに巻き付けて成形する方法であり、燃料電池車用の高圧水素タンク等の製造に用いられている。フィラメントワインディングでは、ボビンから繊維束を引き出してワークへ巻き付けるまでの間に、炭素繊維の張力調整や軌跡変更のために、フリーローラである繊維搬送ローラが多数使用される。
ここで、炭素繊維が繊維搬送ローラを通過する際、樹脂の粘着性などに起因して炭素繊維に微小な裂けが生じてローラに絡まり、次第に裂けが増大して炭素繊維全体がローラに絡み付いてロックする障害が発生する場合がある。さらに、炭素繊維の樹脂が繊維搬送ローラに付着し、上記現象を増大させる傾向がある。
そこで、従来、繊維搬送ローラの表面にフッ素などのコーティングを施して非粘着性を向上させることにより、上述した障害の発生を抑制することが提案されている(例えば、特許文献1等参照。)。
しかしながら、上述した従来技術の繊維搬送ローラでは、粘着回避や耐久性などの点で十分な性能が得られておらず、さらなる性能向上が求められている。
本発明は、非粘着性や耐久性に優れたローラを簡単に製造することができるローラ製造方法及び繊維搬送ローラを提供することを目的とする。
本発明に係るローラ製造方法は、円筒状の軸芯部材と、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなり前記軸芯部材の外周に設けられる円筒状の表皮部材とを備えるローラを製造する方法であって、前記表皮部材よりも剛性の高い円筒状の支持体の外周を、前記表皮部材の内周に配置する支持体配置工程と、前記支持体の外周が前記表皮部材の内周に配置された状態で、前記表皮部材の外周表面に凹凸形状を転造加工する凹凸転造工程とを有する。
この方法によれば、表皮部材の内周が剛性の高い支持体の外周に支持された状態で転造加工が行われるため、柔軟なPTFEからなる表皮部材の外周表面を塑性変形させて確実に凹凸形状を形成することができる。よって、非粘着性や耐久性に優れたローラを簡単に製造することができるという効果を奏する。
本発明に係る繊維搬送ローラは、円筒状の軸芯部材と、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなり前記軸芯部材の外周に設けられる円筒状の表皮部材とを備え、前記表皮部材は、外周表面に塑性変形による凹凸形状が形成されている。
この構成によれば、表皮部材の材質をPTFEとしたことで非粘着性に優れていることに加えて、外周表面の凹凸形状によって搬送対象との接触面積が小さくなることで非粘着性の一層の向上が図られている。また、PTFEの塑性変形による凹凸形状は、粒子のコーティングによる凹凸形状と比較して剥がれが生じにくく、耐久性に優れているという効果を奏する。
以下、本発明のローラ製造方法及び繊維搬送ローラを実用化した各実施形態について図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
(1.ローラ装置1の全体構成)
本発明の第1実施形態に係るローラ装置1は、ワークの周囲に繊維束を巻き付けるフィラメントワインディング装置に用いられ、繊維束をローラ表面に接触させて搬送するフリーローラを備えたローラ装置である。また、ローラ装置1は、ローラの長手方向で繊維束を横滑りする部位に使用するものである。
[第1実施形態]
(1.ローラ装置1の全体構成)
本発明の第1実施形態に係るローラ装置1は、ワークの周囲に繊維束を巻き付けるフィラメントワインディング装置に用いられ、繊維束をローラ表面に接触させて搬送するフリーローラを備えたローラ装置である。また、ローラ装置1は、ローラの長手方向で繊維束を横滑りする部位に使用するものである。
ローラ装置1は、図1に示すように、シャフト2と、一対のベアリング3,3と、繊維搬送ローラ10とを備えて構成される。繊維搬送ローラ10は、図2に示すように、軸芯部材11と、表皮部材12とを備えて構成される。軸芯部材11は、表皮部材12よりも剛性の高い円筒状部材である。尚、本明細書において「剛性」とは、後述するローレット工具100で表面を押圧した場合における当該押圧に対する剛性を意味する。軸芯部材11の材質としては、表皮部材12の材料であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)よりも硬度の高い材料として金属材料、例えばアルミニウム合金(例えばJIS規格A7075)を好適に用いることができる。軸芯部材11の外径D1は、例えば、25mmに設定される。
表皮部材12は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる円筒状部材であって、外周表面における繊維束の送り面である幅方向全体に微細な凹凸形状が形成されている。PTFEとしてはテフロン(登録商標)を好適に用いることができる。表皮部材12の外径D2は、例えば30mmである。表皮部材12の内径D3は、軸芯部材11と焼嵌めにより合体する前は常温で外径D1よりも僅かに小さく設定され、焼嵌め後は外径D1と同一となる。表皮部材12の径方向の厚みは、例えば2.5mmである。
表皮部材12は、軸芯部材11の外周に焼嵌めによって嵌合され、さらに軸方向両端近傍でそれぞれ3本の回り止めビス13によってビス締め固定されている。表皮部材12の表面には、複合旋盤を用いたローレット工具100による転造加工によって、微細な凹凸形状が形成されている。図3は、表皮部材12の外周表面を示す拡大断面図である。
凹凸形状は、略平坦な頂を有する台形状の山部12aと、曲面状の底を有する谷部12bとが交互に形成されている。従って、表皮部材12の外周表面には、図4に示すように綾目状の外観を呈する凹凸形状が形成されている。表皮部材12外周表面の凹凸形状は、隣接する山部12a間のピッチ(山間ピッチ)Paが、例えば、0.63mmに設定される。また、谷部12bの曲率半径rbは、例えば、0.06mmに設定される。また、谷部12bの底を基準とする山部12aの頂の高さHaは、例えば、0.2mmに設定される。
(2.繊維搬送ローラ10の製造方法)
次に、繊維搬送ローラ10の製造方法について、主に図5を参照しつつ説明する。まず、ステップ1(以下、ステップ1をS1と略記する。他のステップも同様。)において、表皮部材12の母材としてPTFE素材を準備する。PTFE素材としては、例えば、テフロン(登録商標)製の角棒(例えば45mm角)を用いることができる。
次に、繊維搬送ローラ10の製造方法について、主に図5を参照しつつ説明する。まず、ステップ1(以下、ステップ1をS1と略記する。他のステップも同様。)において、表皮部材12の母材としてPTFE素材を準備する。PTFE素材としては、例えば、テフロン(登録商標)製の角棒(例えば45mm角)を用いることができる。
次に、S2において、PTFE母材の軸方向両端近傍の外周に回り止めビス13を取り付けるためのビス取付け面及びビス穴の加工を施す。さらに、S3において、PTFE素材に軸中心に沿って軸方向両端を貫通する焼嵌穴の穴開け加工を施す。
一方、S4において、軸芯部材11の母材として、PTFEよりも硬度の高い材料からなる素材、例えば、金属素材を準備する。金属素材としては、例えば、アルミニウム合金A7075製の丸棒(Φ30mm)を用いることができる。次に、S5において、金属素材を軸芯部材11の形状に加工する。具体的には、金属素材にPTFE素材の焼嵌めを行うための外径削りを施し、さらに軸方向両端近傍に回り止めビス13を螺合するためのタップ加工を施す。
次に、S6において、S3工程終了済みのPTFE素材を加熱し、加熱により穴径の拡大した焼き嵌め穴にS5工程終了済みの金属素材を挿入して焼嵌めを行う。PTFE素材と金属素材とを焼嵌めにより合体させた後、PTFE素材の軸方向両端近傍で各回り止めビス13の締結を行う。
次に、S7において、PTFE素材の外径削りを行った後、複合旋盤を用いてローレット工具100による転造加工を施す。転造加工には、例えば、図6に示すローレット工具100を用いることができる。ローレット工具100は、ホルダ101と、2個のローレット駒(綾目用)102とを備えて構成される。ホルダ101は、ローレット駒102を保持するローレット駒保持部101aが上下に移動することにより、2個のローレット駒102に発生する転造力の差をなくし、均一な溝深さの転造加工が可能となっている。
S7では、PTFE素材の外周面にローレット駒102を押圧しながらPTFE素材を回転させる。この時、PTFE素材におけるローレット駒102とは反対側の内周面が、PTFE素材よりも十分に剛性の高い金属素材(軸芯部材11)の外周面によって支持されているので、PTFE素材の外周面にはローレット駒102の凹凸形状が確実に転造される。さらに、ローレット工具100を軸方向にトラバースさせてPTFE素材の外周面全体に凹凸形状を形成することで、繊維搬送ローラ10が完成する。
(3.第1実施形態まとめ)
上述した実施形態に係るローラ製造方法は、本発明の支持体配置工程及び軸芯部材嵌合工程としてのS6工程と、凹凸転造工程としてのS7工程とを有する。この方法によれば、表皮部材12の内周が剛性の高い支持体としての軸芯部材11の外周に支持された状態で転造加工が行われるため、柔軟なPTFEからなる表皮部材12の外周表面を塑性変形させて確実に凹凸形状を形成することができる。よって、非粘着性や耐久性に優れた繊維搬送ローラを簡単に製造することができるという効果を奏する。
上述した実施形態に係るローラ製造方法は、本発明の支持体配置工程及び軸芯部材嵌合工程としてのS6工程と、凹凸転造工程としてのS7工程とを有する。この方法によれば、表皮部材12の内周が剛性の高い支持体としての軸芯部材11の外周に支持された状態で転造加工が行われるため、柔軟なPTFEからなる表皮部材12の外周表面を塑性変形させて確実に凹凸形状を形成することができる。よって、非粘着性や耐久性に優れた繊維搬送ローラを簡単に製造することができるという効果を奏する。
また、軸芯部材11は、繊維搬送ローラ10における軸芯としての役割と、転造加工時の表皮部材12の支持体としての役割とを兼ねるものであり、本発明の支持体配置工程と軸芯部材嵌合工程とは同一のS6工程として実施される。そして、S7工程は、軸芯部材11の外周に表皮部材12が嵌合された状態で、表皮部材12の外周表面に凹凸形状を転造加工する。よって、転造加工のために表皮部材12の支持体としての治具を別途準備する必要がなく、繊維搬送ローラ10を少ない工程で効率的に製造することができる。
また、S7工程は、ローレット工具100を表皮部材12の外周に押圧することにより凹凸形状を転造するローレット転造加工である。よって、ローレット工具100を用いた簡単な転造加工で、表皮部材12の外周表面を確実に塑性変形させて凹凸形状を形成することができる。
また、軸芯部材嵌合工程としてのS6工程は、表皮部材12を加熱して軸芯部材11の外周に嵌合する焼き嵌めを含む工程である。よって、表皮部材12を軸芯部材11に対して簡単な工程で強固に嵌合することができる。
また、本実施形態に係る繊維搬送ローラ10は、円筒状の軸芯部材11と、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる円筒状の部材であって軸芯部材11の外周に嵌合された表皮部材12とを備え、表皮部材12は、外周表面に塑性変形による凹凸形状が形成されている。この構成によれば、表皮部材12の材質をPTFEとしたことで非粘着性に優れていることに加えて、外周表面の凹凸形状によって搬送対象との接触面積が小さくなることで非粘着性の一層の向上が図られている。また、PTFEの塑性変形による凹凸形状は、粒子のコーティングによる凹凸形状と比較して剥がれが生じにくく、耐久性に優れているという効果を奏する。
特に、表皮部材12は、PTFEとしてテフロン(登録商標)を用いているので、非粘着性が優れている。さらに、表皮部材12は、凹凸形状の山部12aが断面台形状を有するので、山部12aの頂が平面になる(尖らない)ことで繊維束を傷付けることが防止される。
(4.第1実施形態の変形例)
上記第1実施形態では、軸芯部材11自体がローレット転造加工においてPTFE素材の内周面を支持する役割を有するが、第1実施形態の変形例では、軸芯部材11とは別個の転造加工用治具によりPTFE素材の内周面を支持している。以下、第1実施形態の変形例に係る繊維搬送ローラの製造方法について、図7を参照しつつ説明する。
上記第1実施形態では、軸芯部材11自体がローレット転造加工においてPTFE素材の内周面を支持する役割を有するが、第1実施形態の変形例では、軸芯部材11とは別個の転造加工用治具によりPTFE素材の内周面を支持している。以下、第1実施形態の変形例に係る繊維搬送ローラの製造方法について、図7を参照しつつ説明する。
まず、S11において、表皮部材12の母材としてPTFE素材を準備する。PTFE素材としては、例えば、テフロン(登録商標)製の丸棒(例えば直径40mm)を用いることができる。
次に、S12において、PTFE素材の軸方向両端近傍の外周に回り止めビス13を取り付けるためのビス取付け面及びビス穴の加工を施す。さらに、S13において、PTFE素材に軸中心に軸方向両端を貫通する焼嵌め穴の穴開け加工を施す。
次に、S14において、転造加工用治具Jの本体部をPTFE素材の焼嵌め穴に挿入する。転造加工用治具Jは、PTFE素材よりも十分に剛性の高い金属製の治具であって、PTFE素材の焼嵌め穴よりも僅かに小さい外径の丸棒状の本体部を有している。
次に、S15において、PTFE素材の外径削りを行った後、複合旋盤を用いてローレット工具100による転造加工を施す。転造加工は、上記第1実施形態のS7と同様の方法で行う。この時、PTFE素材におけるローレット駒102とは反対側の面が、PTFE素材よりも十分に剛性の高い転造加工用治具J本体部の外周面によって支持されているので、PTFE素材の外周面にはローレット駒102の凹凸形状が確実に転造される。さらに、ローレット工具100を軸方向にトラバースさせてPTFE素材の外周面全体に凹凸形状を形成した後、S16で転造加工用治具J及び回り止めビスをPTFE素材から取り外す。
一方、S17において、軸芯部材11の母材として、PTFE素材よりも剛性の高い素材、例えば金属素材を準備する。金属素材としては、例えば、アルミニウム合金A7075製の丸棒(直径30mm)を用いることができる。次に、S18において、金属素材を軸芯部材11の形状に加工する。具体的には、金属素材にPTFE素材の焼嵌めを行うための外径削りを施し、さらに軸方向両端近傍に回り止めビス13を螺合するためのタップ加工を施す。
次に、S19において、S16工程終了済みのPTFE素材を加熱し、加熱により穴径の拡大した焼き嵌め穴にS18工程終了済みの金属素材を挿入して焼嵌めを行う。PTFE素材と金属素材とを焼嵌めにより合体させた後、PTFE素材の軸方向両端近傍で各回り止めビス13の締結を行うことで、繊維搬送ローラ10が完成する。
(5.第1実施形態の変形例まとめ)
上述した第1実施形態の変形例に係るローラ製造方法は、軸芯部材11とは別に準備される支持体としての転造加工用治具Jを用いる方法である。支持体配置工程としてのS14工程は、表皮部材12の内周を転造加工用治具Jの外周に挿入して配置する。凹凸転造工程としてのS15工程は、転造加工用治具Jの外周に表皮部材12の内周が配置された状態で、表皮部材12の外周表面に凹凸形状を転造加工する。軸芯部材嵌合工程としてのS19工程は、S15工程後にS16工程において転造加工用治具Jを表皮部材12から取り外した後、表皮部材12の内周を軸芯部材11の外周に焼嵌めにより嵌合する。
上述した第1実施形態の変形例に係るローラ製造方法は、軸芯部材11とは別に準備される支持体としての転造加工用治具Jを用いる方法である。支持体配置工程としてのS14工程は、表皮部材12の内周を転造加工用治具Jの外周に挿入して配置する。凹凸転造工程としてのS15工程は、転造加工用治具Jの外周に表皮部材12の内周が配置された状態で、表皮部材12の外周表面に凹凸形状を転造加工する。軸芯部材嵌合工程としてのS19工程は、S15工程後にS16工程において転造加工用治具Jを表皮部材12から取り外した後、表皮部材12の内周を軸芯部材11の外周に焼嵌めにより嵌合する。
この方法によれば、PTFE素材に対する加工をS11工程〜S16工程からなる一連の工程をまとめて行う一方、金属素材に対する加工をS17工程〜S18工程でまとめて行った後、最後にS19工程で軸芯部材11と表皮部材12とを焼嵌めにより嵌合して合体させるので、繊維搬送ローラ10を効率的に製造することができる。
[第2実施形態]
(6.ローラ装置21の全体構成)
本発明の第2実施形態に係るローラ装置21は、第1実施形態に係るローラ装置1と同様に、ワークの周囲に繊維束を巻き付けるフィラメントワインディング装置に用いられ、繊維束をローラ表面に接触させて搬送するフリーローラを備えたローラ装置である。より具体的には、ローラ装置21は、カーボンファイバをワークに巻き付ける直前の工程で使用されるアイクチローラと称される繊維搬送ローラを備えたローラ装置であって、ボビンから厚さ数十μmで繊維束5mmのカーボンファイバをローラ幅内で横滑りさせながら偏りなくワークへ供給する作用を有する。
(6.ローラ装置21の全体構成)
本発明の第2実施形態に係るローラ装置21は、第1実施形態に係るローラ装置1と同様に、ワークの周囲に繊維束を巻き付けるフィラメントワインディング装置に用いられ、繊維束をローラ表面に接触させて搬送するフリーローラを備えたローラ装置である。より具体的には、ローラ装置21は、カーボンファイバをワークに巻き付ける直前の工程で使用されるアイクチローラと称される繊維搬送ローラを備えたローラ装置であって、ボビンから厚さ数十μmで繊維束5mmのカーボンファイバをローラ幅内で横滑りさせながら偏りなくワークへ供給する作用を有する。
ローラ装置21は、図8に示すように、シャフト22と、一対のベアリング23,23と、繊維搬送ローラ30とを備えて構成される。繊維搬送ローラ30は、軸芯部材31と、表皮部材32とを備えて構成される。軸芯部材31は、表皮部材32に対して剛性の高い円筒状部材である。軸芯部材31の材質としては、PTFEよりも硬度の高い材料として金属材料、例えばアルミニウム合金(例えばJIS規格A7075)を好適に用いることができる。軸芯部材31の外径D1は、例えば、25mmに設定される。
表皮部材32は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる円筒状部材であって、外周表面において大径をなす一対のガイド部32b間の領域が繊維束の送り面32aとなっている。繊維束は、一対のガイド部32b間を揺動しながら送り面32aによって搬送され、ワークに巻き付けられる。送り面32aに表面には、微細な凹凸形状が形成されている。表皮部材32の送り面32aにおける外径は、例えば30mmであり、内径は軸芯部材31の外径と同じ25mm、表皮部材12の送り面32aにおける径方向の厚みは2.5mmである。
表皮部材32は、軸芯部材31に焼嵌めによって外嵌されている。表皮部材32の送り面32aの表面には、複合旋盤を用いたローレット工具による転造加工によって、微細な凹凸形状が形成されている。送り面32a表面の凹凸形状は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
そして、本実施形態に係る繊維搬送ローラ30は、上記第1実施形態の繊維搬送ローラ10と同様に、第1実施形態又はその変形例に係るローラ製造方法によって製造することができる。尚、S7工程又はS15工程のローレット転造加工は、ガイド部32b間の送り面32aに対して実施される。本実施形態によれば、上述した第1実施形態又はその変形例と同様の効果を奏する。
また、繊維搬送ローラ30は、フィラメントワインディングにおいて繊維束をワークに巻き付ける工程で用いるアイクチローラである。よって、繊維搬送ローラ30によれば、繊維束をローラ幅方向に円滑に滑らせながらダメージを与えることなくワークに巻き付けることができる。
(7.その他の変形例)
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変更を施すことが可能である。例えば、上記実施形態では、繊維搬送ローラの製造に本発明のローラ製造方法を適用した例を示したが、これには限られない。
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変更を施すことが可能である。例えば、上記実施形態では、繊維搬送ローラの製造に本発明のローラ製造方法を適用した例を示したが、これには限られない。
また、上述した各実施形態で示した各部の寸法は一例であって、上述した寸法に限られるものではない。表皮部材12は、好ましくは、送り面における径方向の厚みが2mm〜 5mmである。表皮部材12は、好ましくは、凹凸形状のピッチが0.6mm〜1.6mmである。表皮部材12は、好ましくは、凹凸形状の高低差が0.15mm〜0.65mmである。
また、表皮部材12,32aの径方向の厚みが5mm以下では、剛性の高い支持体が表皮部材12,32aの内周に配置されているので、ローレット工具の転造力(押圧力)が表皮部材12,32aに効率よく働く。特に、表皮部材12,32aの凹凸形状の高低差0.1mm〜0.7mmを形成するときには、表皮部材12,32aの素材の形状が形成し易く、効率良く均一な形状(深さ)が形成される。表皮部材12,32aの径方向の厚みが薄く、表皮部材12,32aの凹凸形状の高低差(0.1mm〜0.7mm)との比率によって、転造力(押圧力)が、凹凸形状を形成することに効果的に作用する(塑性変形)。また、ピッチ(凹凸部)0.6mm〜1.6mmと凹凸形状の高低差(凹み部分)0.15mm〜0.65mmとの比率によって、搬送能力を維持しながら接触面積を低下させることができ、炭素繊維などの樹脂が付着しないような粘着低減効果を向上することが可能となる。
また、上記実施形態では、軸芯部材11や転造加工用治具Jの材質として金属を用いた例を示したが、これには限られず、表皮部材12の材質であるPTFEよりも硬度の高い材質であればよく、硬質樹脂やセラミック等を用いてもよい。
また、上記第1実施形態では、表皮部材12を軸方向両端近傍で回り止めビス13によって回り止めする構成を示したが、焼嵌めのみで十分に回り止めが可能な場合は、回り止めビス13を省略する構成としてもよい。
10…繊維搬送ローラ、11…軸芯部材、12…表皮部材、12a…山部、30…繊維搬送ローラ、31…軸芯部材、32…表皮部材、100…ローレット工具、J…転造加工用治具、S6…軸芯部材嵌合工程(支持体配置工程)、S7…凹凸転造工程、S14…支持体配置工程、S15…凹凸転造工程、S16…取り外し工程、S19…軸芯部材嵌合工程。
Claims (13)
- 円筒状の軸芯部材と、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなり前記軸芯部材の外周に設けられる円筒状の表皮部材とを備えるローラを製造する方法であって、
前記表皮部材よりも剛性の高い円筒状の支持体の外周を、前記表皮部材の内周に配置する支持体配置工程と、
前記支持体の外周が前記表皮部材の内周に配置された状態で、前記表皮部材の外周表面に凹凸形状を転造加工する凹凸転造工程と、
を有する、ローラ製造方法。 - 前記支持体は、前記軸芯部材であり、
前記支持体配置工程は、前記軸芯部材の外周を前記表皮部材の内周に嵌合する軸芯部材嵌合工程であって、
前記凹凸転造工程は、前記軸芯部材の外周が前記表皮部材の内周に嵌合された状態で、前記表皮部材の外周表面に凹凸形状を転造加工する、請求項1に記載のローラ製造方法。 - 前記支持体は、前記軸芯部材とは別に準備される転造加工用治具であり、
前記支持体配置工程は、前記転造加工用治具の外周を前記表皮部材の内周に取り外し可能に配置する工程であり、
前記凹凸転造工程は、前記転造加工用治具の外周に前記表皮部材が配置された状態で、前記表皮部材の外周表面に凹凸形状を転造加工する工程であって、
前記ローラ製造方法は、さらに、
前記凹凸転造工程後に前記転造加工用治具を前記表皮部材から取り外す取り外し工程と、
前記取り外し工程後に前記軸芯部材の外周を前記表皮部材の内周に嵌合する軸芯部材嵌合工程と、
を有する、請求項1に記載のローラ製造方法。 - 前記軸芯部材嵌合工程は、前記表皮部材の内周を前記軸芯部材の外周に焼き嵌めする工程である、請求項2又は3に記載のローラ製造方法。
- 前記凹凸転造工程は、ローレット工具を前記表皮部材の外周に押圧することにより前記凹凸形状を転造するローレット転造加工である、請求項1乃至4の何れか一項に記載のローラ製造方法。
- 円筒状の軸芯部材と、
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなり前記軸芯部材の外周に設けられる円筒状の表皮部材と、
を備え、
前記表皮部材は、外周表面に塑性変形による凹凸形状が形成されている、繊維搬送ローラ。 - 前記表皮部材は、前記凹凸形状の山部が断面台形状を有する、請求項6に記載の繊維搬送ローラ。
- 前記表皮部材は、PTFEとしてテフロン(登録商標)を用いる、請求項6又は7に記載の繊維搬送ローラ。
- 前記表皮部材は、径方向の厚みが2mm〜5mmである、請求項6乃至8の何れか一項に記載の繊維搬送ローラ。
- 前記表皮部材は、前記凹凸形状のピッチが0.6mm〜1.6mmである、請求項6乃至9の何れか一項に記載の繊維搬送ローラ。
- 前記表皮部材は、前記凹凸形状の高低差が0.15mm〜0.65mmである、請求項6乃至10の何れか一項に記載の繊維搬送ローラ。
- 前記繊維搬送ローラは、フィラメントワインディングにおいてボビンから繊維束を引き出す工程で用いるタッチローラである、請求項6乃至11の何れか一項に記載の繊維搬送ローラ。
- 前記繊維搬送ローラは、フィラメントワインディングにおいて繊維束をワークに巻き付ける工程で用いるアイクチローラである、請求項6乃至11の何れか一項に記載の繊維搬送ローラ。
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JP2020024957A JP2021131093A (ja) | 2020-02-18 | 2020-02-18 | ローラ製造方法及び繊維搬送ローラ |
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