JP2021126628A - 磁気分離装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 磁気分離装置で使用される磁気手段によって形成される磁場をより効果的に用いることのできる新規な磁気分離装置を提供すること。【解決手段】 流動可能な被処理物内に存在する磁性体粒子を磁場によって吸着して被処理物から分離するための磁気分離装置であって、当該磁気分離装置は、磁場を生じる磁気手段と被処理物とを区画する隔壁であって、当該磁気手段から生じる磁場の少なくとも一部を被処理物内に放出可能な隔壁を有しており、当該隔壁の被処理物側の表面には磁性体の領域が設けられていることを特徴とする磁気分離装置。【選択図】図2A

Description

本発明は、液体や気体等の流体中に混在する磁性体粒子を、磁気の作用を利用して吸着して分離するための磁気分離装置に係るものである。
従来から、主に液体や気体等の流体中に不純物等として存在する各種の磁性体粒子を除去する目的で、当該流体に外部から磁場を印加することで磁性体粒子を吸着して除去する装置が広く使用されている。
例えば、特許文献1には、食品や医薬品、化学薬品等の被処理物中から鉄粉等の磁性体粒子からなる異物を除去するための棒磁石等が記載されている。当該文献に記載される棒磁石は、相互に同極が対向するようにヨークを介して棒状に配置された複数の希土類磁石をチタン合金の筒に挿入してなるものである。そして、当該チタンの厚みを十分に薄くすること等によって、当該希土類磁石が形成する磁場を効率良く当該棒磁石の外部に取り出し、当該棒磁石の周囲の磁束密度の分布を局所的に高めることにより、効率よく被処理物中から磁性体粒子からなる異物を除去するものである。
また、特許文献2には、粉粒状,液状,流動体状の各種原料等に混入した鉄系及びステンレス系の金属摩耗粉や金属片などの異物を吸着除去するマグネットフィルタに使用するバーマグネットとして、特許文献1に記載のものと同様に、相互に同極が対向するようにヨークを介して棒状に配置された複数の磁石を含むバーマグネットが記載されている。
特開2003−303714号公報 特開平8−10642号公報
磁気分離装置を用いて不純物等として含まれる磁性体粒子を吸着して除去するニーズは、例えば、高粘度であること等により不純物として含まれる磁性体粒子の吸着除去が困難な流動体等に広がる一方で、吸着処理後に残留する磁性体粒子の密度の低減が求められるなど、磁気分離装置に求められる性能の要求水準が高まっている。
本発明は、磁気分離装置で使用される磁気手段によって形成される磁場をより効果的に用いることのできる新規な磁気分離装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決する手段として、本発明は流動可能な被処理物内に存在する磁性体粒子を磁場によって吸着して被処理物から分離するための磁気分離装置であって、当該磁気分離装置は、磁場を生じる磁気手段と被処理物とを区画する隔壁であって、当該磁気手段から生じる磁場の少なくとも一部を被処理物内に放出可能な隔壁を有しており、当該隔壁の被処理物側の表面には磁性体の領域が設けられていることを特徴とする磁気分離装置を提供する。
また、上記磁性体が上記隔壁に貫入されることで、隔壁の磁気手段側の表面にも露出していることを特徴とする上記の磁気分離装置を提供する。
更に、上記磁性体の領域が被処理物に対して凸状、又は凹状に設けられていることを特徴とする上記の磁気分離装置を提供する。
本発明によれば、磁気分離装置で使用される磁気手段によって形成される磁場をより効果的に用いることのできる新規な磁気分離装置を提供することができる。
従来の磁気分離装置における被処理物と磁気手段を区画する隔壁部分の構成を示す図である。 本発明に係る磁気分離装置における被処理物と磁気手段を区画する隔壁部分の構成の一例を示す図である。 本発明に係る磁気分離装置における被処理物と磁気手段を区画する隔壁部分の構成の一例を示す図である。 本発明に係る磁気分離装置における被処理物と磁気手段を区画する隔壁部分の構成の一例を示す図である。 本発明に係る磁気分離装置における被処理物と磁気手段を区画する隔壁部分の構成の一例を示す図である。 本発明に係る磁気分離装置の構成例を示す図である。 本発明に係る磁気分離装置の構成例を示す図である。 本発明に係る磁気分離装置の構成例を示す図である。 本発明に係る磁気分離装置の構成例を示す図である。 本発明に係る磁気分離装置の構成例を示す図である。
特許文献1,2等にも記載されるように、流動性の被処理物に含まれる磁気によって吸着可能な磁性体粒子等(以下、磁性異物ということがある。)を磁場によって吸着して除去しようとした際には、当該磁場を発生させるための磁気手段が直接的に被処理物に触接しないように、隔壁によって磁気手段と被処理物とを区画する構造とすることが一般的である。当該構造とすることにより、磁気手段を構成する永久磁石等によって被処理物が汚染されることを防止できると共に、磁場によって被処理物から分離される磁性異物は当該隔壁表面に磁気吸着するため、磁気手段を隔壁から遠ざける等の操作によって磁気吸着した磁性異物を容易に分離回収することが可能となる。
また、上記隔壁を磁性体で形成した場合には、磁気手段によって生成する磁場が当該隔壁によってシールドされて、被処理物内には磁場が形成されないため、当該隔壁は非磁性体で形成されることが一般的である。そして、上記のような構成においては、磁性異物は所定の厚さの非磁性体を介して間接的に磁極等に吸着することとなり、磁極等に直接に磁気吸着する場合と比較して吸着力の低下を生じることが避けられない。
このため、上記のような構造によって、被処理物に含まれる磁性異物をより強い力で磁気吸着して除去しようとする際には、特許文献1等に記載されるとおり、当該被処理物に対してより強い磁場を印加可能な構造とすることが望まれる。具体的には、磁性異物等に対する吸着力は、その吸着面における磁束密度に比例するため、被処理物に含まれる磁性異物をより強い磁力で吸着するためには、磁性異物を吸着する隔壁の表面に高い磁束密度を形成することが必要とされる。このために、特許文献1では、ヨークのサイズ等を規定することで高い磁束密度を形成可能な磁気手段を用いると共に、上記隔壁を薄くすることで磁性異物を吸着する隔壁表面に磁石の磁極等を近づけて配置すること等が記載されている。
磁石によって形成される磁場を効率的に利用する際には、上記のようにヨーク(継鉄)を利用して適切な磁気回路を形成することが有効である。ヨークは、磁場中に置かれた磁性体が磁気感応を生じて磁化することで、それ自体が磁石として機能することを利用するものであって、その際に永久磁石等から放出される磁束を当該磁性体によって収束可能であることを利用して磁束密度を高めるための手段や、磁力線の経路を制御することで実質的な磁極の位置を磁石表面から移動させる手段等として用いられるものである。例えば、特許文献1,2においては、同極同士を対向して配置した磁石間にヨークを配置すると共に、当該ヨークの端面を被処理物が流れる流路の隔壁に近接して設けることで、流路内により有効に磁場を形成する磁気手段が記載されている。
なお、本明細書において、上記ヨーク等として使用される「磁性体」とは、高い透磁率を有することにより、磁場中においた際に磁気感応を生じて磁化を生じる物質をいうものとする。当該磁性体は、一般に軟質磁性材料と呼ばれるものであり、特に高い透磁率を有する材料が望ましく用いられる。当該磁性体として、典型的には、純鉄、軟鋼、Fe−Si系、Fe−Al系、Fe−Si−Al系合金、Ni−Fe系合金(パーマロイ)等が挙げられる。また、使用中の腐食等の発生が防止する点からは、400系,600系ステンレスの他、600系ステンレスの内でオーステナイト・フェライト組織を有するステンレスを使用することができる。また、SUS304等のオーステナイト系ステンレス等に強加工を加えることでマルテンサイト組織を誘起したものを使用することができる。
また、本明細書において、各種の磁気手段について「磁極」と記載する際には、当該磁気手段に含まれる永久磁石が固有に有する磁極と共に、当該永久磁石が上記磁性体(ヨーク)と組み合わされることで当該磁性体の一部が実質的に磁極として機能してなる磁極を意味するものとする。
本発明に係る磁気分離装置は、磁場を生じる磁気手段と被処理物とを区画する隔壁を有し、当該隔壁の少なくとも被処理物側の表面に被処理物と接触する形態で磁性体の領域を設けたことを特徴としている。
上記説明したように、磁性体が非磁性体と比較して高い透磁率を有することにより、磁性体と非磁性体が混在する物質に磁場を印加した際には、当該磁場を構成する磁束が磁性体中に収束して通過する現象が見られる。また、磁束が通過する磁性体内部では当該磁束の方向にN極・S極の分極を生じて、それ自体が磁石として機能する現象が見られる。
本発明は磁性体等が示す当該現象を利用するものであり、磁気手段から発する磁束が通過する領域であって、特に磁気手段と被処理物とを区画する隔壁の被処理物側の表面に磁性体を配置することによって当該磁気手段が発する磁束を収束して通過させることで、磁束の発散による磁束密度の低下を抑制して磁性異物を効率的に吸着するものである。
図1には、特許文献1,2等に記載される従来の磁気分離装置における被処理物と磁気手段を区画する隔壁部分の構成を示す。特許文献1,2等に記載されるように、磁気手段としてヨーク材2を介して永久磁石1の同極同士を対向配置したものを使用する場合、当該ヨーク材2が実質的にN極、S極として機能し、このN極、S極間には図1中の破線で示すような形態で磁束が分布する。そして、特許文献1,2等では、当該磁気手段と被処理物が存在する空間とを区画する隔壁3を非磁性体で構成することで、当該N極、S極間の磁束分布に影響を与えずに被処理物が存在する空間に磁束を導入することで、隔壁3の表面に磁性異物を磁気吸着して被処理物から分離している。
なお、本明細書において、磁性異物等が被処理物から分離等と記載する場合には、当該磁性異物等が磁力等によって所定の場所に吸着することで、被処理物が流動しても磁性異物等が移動等をしない状態を意味し、磁性異物等が被処理物と接触している状態も含むものとする。
図1において、最も磁束密度が高い箇所はヨーク材2の表面(端面)と考えられる一方で、非磁性体で構成される隔壁や被処理物が低い透磁率を有することに起因して、磁気回路における磁気抵抗が極小になるように磁束が速やかに発散する結果として、磁性異物10が磁気吸着する被処理物側の隔壁表面における磁束密度はヨーク材2の表面に比べて大きく低下し、永久磁石1が本来的に磁性異物10に対して有する吸着力が十分に発揮されていないと考えられる。また、ヨーク材2の表面から発する磁束の一部は隔壁3の内部を通過して対極に到達するために、磁性異物10の吸着に寄与せず、磁気手段が発する磁束を有効に活用していないものと考えられる。
図2Aには、本発明に係る磁気分離装置における被処理物と磁気手段を区画する隔壁部分の構成の一例を示す。図2Aに記載の構成においては、図1と比較した際に、隔壁の被処理物側の表面に磁性体4aが配置されている点で相違している。また、図2Aに記載の構成においては、磁気手段に含まれるヨーク材2の近傍であって、磁性体4が存在しないとした場合において、隔壁上において磁気手段から発する磁束の密度が最も高い位置を含む位置に磁性体4aが配置されている。当該磁性体4aとしては透磁率の高い物質が好ましく使用され、特に腐食等によって被処理物の汚染を生じ難い観点からは、例えば、SUS403等で構成することが望ましい。なお、図2A等には、参考として被処理物の流れの方向を例示するが、図2A等に記載の構成を用いる際の被処理物の流れる方向はこれに限定されず、例えば静止した被処理物中に図2A等に記載の構成を挿入して磁性異物の吸着除去を行うことが可能である。
隔壁3の上記磁性体4a以外の部分は非磁性体によって構成され、非磁性を示す各種金属や樹脂などによって構成することができる。特に、隔壁の厚みを抑制する観点、及び、当該隔壁材による被処理物の汚染を防止する観点からは、高強度と高い耐腐食性を有するチタン合金やSUS304等が好ましく使用される。また、磁気手段に含まれる永久磁石1としては、高い磁束密度を有するものが好ましく使用され、例えば、Fe−Nd系やSm−Co系などの希土類磁石等が好ましく使用される。
なお、図2Aにおいては、磁性体4aが隔壁3の表面に接する形態で設けられているが、磁性体4aの表面が被処理物に接触する形態であれば、他にも磁性体4aの一部又は全部が隔壁3に埋入される等の形態で磁性体4aを設けることも可能である。また、図2Aは、実質的なN極とS極が隣接して配置された磁気手段を隔壁の近傍に設置する形態について記載するが、本発明はこれに限定されず、例えば、被処理物が存在する空間を基準として、対向して配置される隔壁の裏面にそれぞれN極とS極を配置することで磁束が被処理物の存在する空間を横切るような形態においても、磁性体4aを配置することによって当該N極、S極間での磁束の発散が防止され、磁性体4aの表面に高い磁束密度を形成することができる。
図2Aに示す構造とすることで、ヨーク材2から放出された磁束の多くは、隔壁の被処理物側の表面に配置された磁性体4aが有する高い透磁率に起因して当該磁性体に収束してこれを通過するように分布し、この結果として、当該磁性体4aの表面が磁極として機能して被処理物中の磁性異物10を効率的に吸着可能となる。
つまり、図1に示す構成ではヨーク材2の表面から発する磁束が発散し易いために、被処理物の存在する空間を通過しない磁束の割合が高くなると考えられ、磁束の活用効率が低いと考えられる。これに対して、図2Aに示す構造では、ヨーク材2が発する磁束が被処理物に接触する磁性体4aに収束して分布する結果、被処理物中に引き出される磁束の割合が高まることで磁束の活用効率を高められると考えられる。また、磁性体4aの表面においては図1における隔壁3の表面と比べて高い磁束密度を有するために、より強力な磁力で磁性異物10を磁気吸着することが可能となる。また、より強い磁力で磁性異物10を磁気吸着することは、特に粘度が高い被処理物中の磁性異物を当該粘度に逆らって磁気吸着し、また磁気吸着した磁性異物が被処理物の流れによって再び脱離して被処理物に混入することを防止可能である点で有効である。
上記隔壁の被処理物の側の表面に設けられた磁性体4aは、隔壁の外部に配置される磁気手段が形成する磁場の内部で磁力線の経路を制御して磁束密度を高めるヨークとして機能するものである。なお、以下の説明においては、磁気手段に含まれるヨークと区別する観点から、磁性体4aのように当該隔壁の被処理物の側の表面に設けられた磁性体を「第2ヨーク」と称することがある。
図2A等に示すような構造において、磁性体4(第2ヨーク)間が吸着した磁性異物10等により短絡(ショート)された場合には、磁気手段が発する磁束が当該短絡された経路を通過することで、被処理物中を通過する磁束密度が低下する。このため、継続して所定の時間の処理が行えるように、被処理物中に含まれる磁性異物10の量などを考慮することにより磁性体4(第2ヨーク)間の間隔等を決定することが望ましい。
上記のような磁気手段によって形成される磁場を磁気回路として把握し、電気回路と対比した場合には、当該磁場中に存在する物質の透磁率は、電気回路を構成する要素における導電率に相当するものであり、磁気抵抗率の逆数であると考えることができる。そして、本発明において隔壁の被処理物の側の表面に磁性体を設けることは、磁気回路中に磁気抵抗が低い要素を導入するものであって、当該磁性体に磁束を収束させて磁束の発散を抑制して磁束密度を維持可能となる点で好ましい。更に当該磁性体を被処理物に接する位置に配置することで、磁束密度の高い磁性体表面に磁性異物が接触するために強い磁力で磁気吸着を生じさせることが可能となる。
そして、特に図2Aに示すように、磁気手段から発せられる磁束の磁束密度が最も高いヨーク材2の近傍に第2ヨークを配置することによれば、磁気手段から発せられる磁束の発散を抑制して大部分の磁束を第2ヨークに収束させることが可能となり、当該第2ヨークの表面には、磁気手段に含まれるヨーク材2に近い密度の磁束密度を誘起することが可能になり、被処理物内に存在する磁性異物を有効に磁気吸着することができる。
上記第2ヨークの被処理物に接する面における磁束密度を高めるために、第2ヨークの形状や大きさについては以下のような観点が考慮されることが好ましい。まず、磁気手段から発せられる磁束の発散を抑制して第2ヨークに効率的に収束させるために、第2ヨークの磁気手段側の面積は、磁気手段から発せられる磁束に対して十分な面積を有することが好ましい。一方、第2ヨークの被処理物側の面積を小さくすることにより、第2ヨークを発する磁束密度を高めることが可能である。つまり、第2ヨークの断面形状は、磁気手段側で広く、被処理物側で狭い台形形状等とすることも好ましい。なお、第2ヨークの形状や大きさを決定する際には、第2ヨークを構成する磁性体における飽和磁束密度や、急激な断面形状の変化による磁束の漏れの防止等を考慮することも有効である。
また、図2Aでは、第2ヨークを形成する磁性体が、被処理物側に突出して設けられている。このように被処理物側に突出した第2ヨークを設けることにより、特に被処理物の下流側にあたる第2ヨークの側壁部分に磁性異物を吸着して有効に保持して、その後に分離することが可能になる。このような形態の第2ヨークでは、一度第2ヨークに磁気吸着した磁性異物が被処理物の流れによって第2ヨークから離脱することを有効に防止可能であり、特に粘度が高い被処理物や、被処理物の流速が高い場合に有効である。
被処理物側に突出して第2ヨークを形成する磁性体を設ける際に、当該突出する部分の形状は、被処理物の粘度や流速、含まれている磁性異物の密度や大きさなどを考慮して適宜決定することができる。また、被処理物が気体である等によって粘性が低い場合には、第2ヨークを形成する磁性体を隔壁内に埋設して設置することで、隔壁表面を平滑にすることで被処理物の流束を乱さないことも有効である。
なお、図2A等においては、磁気手段が隔壁3に接触可能な形態で設置される形態について記載するが、本発明はこれに限定されず、特に磁気手段の保護や、隔壁付近から磁気手段を取り外す際の便宜のために、本発明の効果を損なわない範囲で磁気手段を更に所定の管に納める等の構造とすることも可能である。また、図2A等においては、被処理物が流動する方向にN極とS極が交互に配置される形態が記載されているが、本発明はこれに限定されず、各磁極に対する被処理物の流動方向は特に限定されず、実質的に流動していない被処理物に対しても本発明に係る磁気分離装置を使用することも可能である。
図2Bには、本発明に係る磁気分離装置における被処理物と磁気手段を区画する隔壁部分の他の構成の一例を示す。図2Bに示す形態では、第2ヨークを形成する磁性体4aが、被処理物と磁気手段を区画する隔壁を貫通して設けられている。図2Bのような形態とすることにより、隔壁を構成する非磁性体内部における磁気手段から発せられる磁束の発散を最小限にすることが可能となり、また各磁気回路における磁気抵抗を低減して磁場を効率的に利用できる点でも好ましい。また、第2ヨークである磁性体4aを磁気手段のヨーク材2に直接に磁気吸着させることで、実質的に磁気手段のヨーク材2が被処理物に接触した際と同様の磁気回路を形成することが可能であり、磁気手段が有する磁力を最大限に利用して磁性異物の吸着を行うことができる。
また、図2Bに示す形態においても、第2ヨークである磁性体4aを被処理物側の隔壁表面から突出して設けられているが、本発明はこれに限定されず、第2ヨークの端面を隔壁表面から凹状に埋没して設けることによっても、上記のように突出して設けた場合と同様に、磁気吸着した磁性異物が被処理物の流れによって脱離する可能性を低減することができる。また、隔壁を貫通して設けられる第2ヨークの端面を隔壁表面と平滑に設けて、被処理物の流動抵抗を低下することも可能である。
図2Cには、本発明に係る磁気分離装置における被処理物と磁気手段を区画する隔壁部分の他の構成の一例を示す。図2Cに記載した実施形態においては、第2ヨークとしての磁性体4bが、磁気手段に含まれるヨーク材2から離れた位置の隔壁表面に配置されている。つまり、図2Cに記載の構成においては、磁気手段における実質的な磁極(N極とS極)の中間付近を含む位置に磁性体4bが配置されている。当該構成とすることにより、被処理物内に磁気手段から導入された磁束であって、隔壁と平行なベクトルを有する磁束の多くが当該第2ヨーク内を通過するように収束するために、隔壁の被処理物側の表面付近に高い磁束密度を保持することが可能となる。図2Cに記載の構成を用いる場合には、磁性体4b内での隔壁と平行なベクトルを有する磁束の密度を高めるために、特にN極とS極が隣接して配置された磁気手段を隔壁に近接して配置することで、磁性体4bが存在しない状態においても隔壁と平行なベクトルを有する磁束が存在する構成とすることが好ましい。
図2Cに記載する形態においては、隔壁面とは略垂直である第2ヨークの両側の端面が実質的な磁極となり、磁性異物10はこの面に吸着を生じる。つまり、磁性異物10は被処理物の流れの影響を受け難い凹状の部分の垂直な面(第2ヨークの端面)に形成される高い磁束密度によって磁気吸着されるため、粘性の高い被処理物を処理した際にも、当該面吸着した磁性異物10が非処理物に押し流されて脱離することを有効に防止することができる。また、当該第2ヨークを構成する磁性体が一般に被処理物と比較して高い透磁率を有することから、当該第2ヨーク4の長さに応じて磁気手段が形成する各磁気回路における磁気抵抗を半減することになる結果、上記第2ヨークの両側端面での磁性異物の吸着を効率的に行うことができる。
図2Dには、本発明に係る磁気分離装置における被処理物と磁気手段を区画する隔壁部分の他の構成の一例を示す。図2Dには、図2B,C等に記載する形態の磁性体4a,4bを同時に用いる際の実施形態を示す。つまり、磁気手段のヨーク材2から発せられる磁束の磁束密度が高い箇所の近傍と、当該ヨーク材2の中間部分の付近にそれぞれ第2ヨークとしての磁性体4a,4bを配置することで、磁気手段から発せられる磁束の発散を防止して、被処理物側の隔壁の表面付近に隔壁と平行な方向に高い磁束密度を閉じ込めることが可能となる。そして、当該磁束の経路に高い磁束密度を有する磁極(第2ヨークの端面)によって形成される凹部が複数形成される。
このために、図2Dに示す形態においては、磁気手段によって形成される磁場を効率的に利用可能であると共に、磁極によって形成される凹部の作用によって高粘度の被処理物に対しても有効に磁性異物が回収可能となる。なお、図2Dにおいて、特に被処理物内に導入された磁束を収束させて新たな磁極を形成する目的で形成される第2ヨークの数は被処理物の性状等に応じて適宜決定されるものであり、磁気手段が形成する実質的な一対の磁極間に一つ、又は複数の当該第2ヨークを設けることができる。
以上、説明したように、被処理物と磁気手段を区画する隔壁の被処理物側の表面に第2ヨークとしての磁性体を配置することにより磁気手段からの磁束の発散が防止され、被処理物内に高い磁束密度を維持した状態で磁場を形成可能である。また、各第2ヨークの表面が磁極として作用して磁性異物を磁気吸着するため、被処理物の種類等に応じて磁性異物を磁気吸着するための磁極の数や総面積を調整することが可能であり、また隔壁の被処理物側の表面に磁極によって凹凸部を形成することで高粘度の被処理物内であっても吸着した磁性異物10を有効に保持することが可能となる。
なお、磁気手段において形成される実質的な一対の磁極間を第2ヨークが短絡した場合には、当該一対の磁極間に存在する磁束が第2ヨーク内に閉じ込められて、磁気手段からの磁束を被処理物内に放出できないこととなる。このため、磁気手段からの磁束を当該被処理物内に放出可能とするためには、被処理物内に磁気手段が有する一対の磁極間と第2ヨークが形成する磁気回路内に、少なくとも一カ所の磁性体が不連続となる箇所(ギャップ)を設けることが望ましい。
このため、第2ヨークは、磁気手段の磁極間を磁気的に短絡して、磁気手段からの磁束の被処理物内への放出が妨げられない範囲において、磁気手段からの磁束を収束させて被処理物内に高い磁束密度の磁極を形成する目的で、隔壁の被処理物側の表面の適宜の場所に設置することが可能である。
本発明に係る磁気分離装置は、被処理物が流れる流路を構成する隔壁の少なくとも一部に、例えば、図2A〜Dに示すような形態で上記第2ヨークを有すると共に、当該第2ヨークの設けられた隔壁の外部に磁石手段が、当該第2ヨークを介して被処理物内に磁束が放出される適宜の形態で設置等されることによって構成される。
図3A〜Cには、本発明に係る磁気分離装置の構成例を示す。図3Aには、磁石等を適宜組み合わせることで棒状に形成した磁気手段を、非磁性体で形成された管状の隔壁材3に挿入し、更に当該管の隔壁の外表面に第2ヨーク(磁性体4a)を形成した例を示す。図3Aの構成例においては、例えば、特許文献1,2に記載のものと同様に、複数の永久磁石を同極同士が対抗するようにヨーク材2を介して組み合わせた磁気手段が使用される。当該磁気手段においては、各ヨーク材2がN極又はS極として作用する結果、その長さ方向にN極とS極が交互に現れる磁石として作用する。そして、当該N極、S極から発せられる磁束の発散を抑制しながら非磁性体で構成される管状の隔壁の外側に磁束を取り出す目的で、図2A〜Dに記載するような形態で、相互に平行なリング状の第2ヨーク(磁性体4a)が管状の隔壁3の外面に設けられており、全体として棒状の磁気手段5を形成している。
図3Aに示す棒状の磁気手段5を、流動性を有する適宜の被処理物に挿入することにより、被処理物中の磁性異物を第2ヨーク部に磁気吸着して被処理物から分離することができる。例えば、被処理物が流れる流路6内に、その流れの方向と平行に設置することで、特許文献2に記載されるような環状流路の中央に磁気手段を有する磁気分離装置が構成される(図3B)。また、図3Aに示す棒状の磁気手段5を、特許文献1に記載されるように、被処理物が流れる流路6に対して、その流れの方向と垂直に設置されることで、被処理物に含まれる磁性異物を磁気吸着して分離することができる(図3C)。
なお、図3Cに示すように、図3Aに示す棒状の磁気手段5を複数使用し、近接して平行に配置する場合には、棒状の磁気手段5の間において同極同士が対向するように配置されることで、各第2ヨークから発する磁束を隔壁3の近傍に閉じ込めて、高い磁束密度を維持する点で望ましい。図3Aに示す棒状の磁気手段5を被処理物に対して適用する形態は、被処理物の状態や、既存の設備等に応じて適宜決定することができる。
図3A〜Cに示すような磁気分離装置において第2ヨーク等に磁性異物を磁気吸着させて被処理物から分離した後、磁気手段を管状の隔壁材から取り出すことで第2ヨーク等を通過する磁束を除去することによって、当該磁性異物を第2ヨーク等から容易に脱離させることが可能である。
図4には、本発明に係る磁気分離装置の他の構成例を示す。図4では、被処理物が流通する管状流路に磁性異物を磁気吸着して分離するための磁気分離装置であって、当該管状流路の内面表面の少なくとも一部に図2A〜Dに記載するような形態で、相互に平行に複数の第2ヨーク(磁性体4a)が設けられている。そして、N極とS極が相互に平行に現れるように形成された磁気手段を、当該複数の第2ヨークと平行になるように管状流路の外面に設けることによって、当該磁気手段から発せられる磁束の発散を抑制しながら管状流路内に効率的に磁束を導入することができる。
図4に示すように、管状流路の外面等に磁気手段を設ける場合には、凹状のヨーク材2と永久磁石1を組み合わせることで、磁気手段に含まれる磁石が形成する磁束が管状流路の側に発する構成とする等により、磁束を有効に活用することも望ましい。一方、例えば、内側の面に第2ヨークが設けられた管状流路に対して、当該第2ヨークを磁束が通過するように管状流路の外側に適宜の磁石を設置することによっても、当該第2ヨークの作用によって磁束密度の低下が抑制されて、より強い磁力によって環状流路内の被処理物に含まれる磁性異物を磁気吸着することが可能である。
また、図4では、管状流路の対向する面に第2ヨーク、及び磁気手段を設ける例を示すが、本発明はこれに限定されず、例えば、管状流路の内面の全面或いは一面のみ等に帯状の第2ヨークを設けて、当該管状流路の外面に当該第2ヨークに対応するように磁束を供給する磁気手段を設けることも可能である。更に、以上の例では、いずれも永久磁石を用いる磁気手段を用いる構成例を記載しているが、本発明はこれに限定されず、当該永久磁石を適宜の構成で電磁石に置き換えることも可能である。
図5には、本発明に係る磁気分離装置の他の構成例を示す。図5においては、被処理物の管状流路の内面表面の少なくとも一部にリング状の第2ヨークが平行に設けられている。そして、当該管状流路外部には、電磁誘導のためのコイルが管状流路と略平行に設けられており、当該コイルによって管状流路内に、管状流路と略平行な方向の磁場を誘起することができる。
図5に記載の構成において、管状流路内に磁場を誘起することで、誘起される磁束は主に磁気抵抗の低い第2ヨーク(磁性体4c)の部分を連ねるように分布するため、各第2ヨークは、流路の方向にN極/S極に分極した磁石として機能し、流路内の被処理物中の磁性異物を吸着することができる。図5の構成によれば、強い磁場を発生可能な電磁石によって形成される磁場を有効に用いることが可能である。
本発明に係る磁気分離装置は、第2ヨークに磁束が通過している状態では、第2ヨークは当該磁束の方向にN極/S極に分極した磁石として機能し、被処理物中に含まれる磁性異物を吸着して被処理物から分離することができる。一方、当該被処理物に対する処理の終了後、永久磁石を第2ヨークから遠ざけたり、電磁石による磁場の生成を終了する等の方法で第2ヨークに供給される磁束を除去することで、磁気吸着した異物を容易に脱離することが可能である。
本発明に係る磁気分離装置は、全体として流動性を有する各種の粘性体や液体、各種微粒子を含む気体に対して好適に使用することが可能である。例えば、食品用途として、各種の果汁飲料、ひき肉等のように、金属部材による粉砕加工を経る液体や粘性体に含まれる磁性異物の分離に好適に使用することができる。また、小麦粉、米粉、デンプン粉等のように、金属部材による粉砕加工を経て生成した粉体を気体中に分散した状態で本発明に係る磁気分離装置を用いることにより、混入した磁性異物を良好に分離することができる。
また、各種の電池の製造等に使用され、磁性異物の混入を防止する必要のあるポリマーの原料粉やポリマー溶液等に対しても好適に使用することができる。
以下、本発明に係る磁気分離装置について実施例を用いてより具体的に説明するが、当該実施例は本発明を限定するものではない。
以下に示すような磁気分離装置を使用して、高粘度の被処理物から磁性異物を除去する際の上記第2ヨークの有無による除去効率の違いについて検証を行った。
磁気手段として、10個のネオジウム磁石(Φ24mm,厚み18mm)を、ヨーク材としての鉄材(Φ24mm,厚み2mm)を介して同極同士が対向するように棒状に配置した磁気手段を使用し、磁気手段を非磁性であるSUS304製の保護管(内径:24mm、厚み:0.5mm、有効磁力長さ:約200mm)に挿入した。
その際に、実施例の保護管には、上記各ヨーク材の直上に位置するように保護管外面(被処理物に接する面)に、幅1mm、厚み1mmのSUS430材をレーザー溶接によってリング状に溶接して第2ヨークとした。一方、比較例の保護管では、当該第2ヨークを設けなかった。当該SUS304製の保護管に挿入した棒状の磁気手段を、図3Bに示す態様で内径29.4mmのSUS304製の管の中心に挿入して磁気分離装置を形成した。そして、上記形成した実施例、比較例に相当する磁気分離装置を各二つ用いて、それぞれの磁気手段の長さ方向が鉛直方向になるように当該磁気分離装置を二つ直列に配置したものを評価装置として評価を行った。
高粘度の被処理物の例として、磁性体である鉄材をヤスリ掛けして得た磁性異物を市販のハチミツに混合したものを準備し、当該磁性異物を混合したハチミツ(5L/回)を上記の評価装置の上部から流入させて、自重によって磁気分離装置を通過させ、その前後でのハチミツに含まれる磁性異物の個数を異物カウンターで計測することにより行った。試験は、実施例、比較例に相当する評価装置についてそれぞれ3回行い、各試験後の磁性異物の個数の平均値を求めた。
表1には、上記試験の結果を示す。表1中の各磁性異物の数は、各サンプル100g当りに計測された個数である。第2ヨークを設けた実施例では、計測を行った全ての磁性異物のサイズにおいて80%以上の除去率で磁性異物が除去され、特に108μm以上のサイズにおいては全ての磁性異物が除去された。一方、第2ヨークを設けない比較例においては、いずれのサイズにおいても除去率が実施例を下回る結果が得られたことから、本発明により特に高い除去率で磁性異物が分離可能であることが示された。
Figure 2021126628
本発明によれば、流動性の被処理物に含まれる磁性異物を効率的に分離可能である。
1 永久磁石
2 ヨーク材
3 隔壁
4 磁性体(第2ヨーク)
5 磁気手段
6 管状流路
7 誘導コイル
10 磁性異物

Claims (3)

  1. 流動可能な被処理物内に存在する磁性体粒子を磁場によって吸着して被処理物から分離するための磁気分離装置であって、
    当該磁気分離装置は、磁場を生じる磁気手段と被処理物とを区画する隔壁であって、当該磁気手段から生じる磁場の少なくとも一部を被処理物内に放出可能な隔壁を有しており、
    当該隔壁の被処理物側の表面には磁性体の領域が設けられていることを特徴とする磁気分離装置。
  2. 上記磁性体が上記隔壁に貫入されることで、隔壁の磁気手段側の表面にも露出していることを特徴とする請求項1に記載の磁気分離装置。
  3. 上記磁性体の領域が被処理物に対して凸状、又は凹状に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気分離装置。
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