JP2021123598A - ヒアルロン酸誘導体組成物、医薬組成物及びヒアルロン酸誘導体−薬物結合体組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来よりも凝集が抑制されたヒアルロン酸誘導体組成物を提供する。【解決手段】ヒアルロン酸誘導体組成物は、(A)ステリル基を導入したヒアルロン酸誘導体と、(B)アルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、及びエステルからなる群より選択される1種以上の有機溶媒と、を含むヒアルロン酸誘導体組成物であって、(A)ヒアルロン酸誘導体に対する前記ステリル基の導入率が35%以上60%未満である。【選択図】なし
Description
本発明は、ヒアルロン酸誘導体組成物、医薬組成物及びヒアルロン酸誘導体−薬物結合体組成物に関する。
近年、タンパク質やペプチド、核酸を活性成分とする医薬品であるバイオ医薬品が実用化されており、その数は年々増え続けている。バイオ医薬品は、従来の低分子医薬では満たすことができなかった未充足医療ニーズを満たすことができる。しかしながら、消化管乃至粘膜等からは吸収されにくい上、体内では不安定で血中半減期が短いという課題がある。そのため、バイオ医薬品は注射による頻回投与が必要であり、患者と医療関係者いずれにとっても負担が大きい。そこで、薬理活性を損なうことなくバイオ医薬品をカプセル化して生体内で徐々に有効成分を放出することができる薬物基材(徐放性ドラッグデリバリーシステム基材)が求められている。
このような背景から、特許文献1では、安全性に優れたヒアルロン酸誘導体からなる徐放性ドラッグデリバリーシステム基材が提案されている。このヒアルロン酸誘導体は、水溶液中で自発的に会合し、薬物、特にバイオ医薬品を、その生物活性を維持したまま効率よく封入することができ、なおかつ血中滞留性が良好である。このヒアルロン酸誘導体は、特にバイオ医薬品を有効成分として使用する場合に、薬理活性を維持したまま多くの薬物を効率よく封入できる担体、及び血中滞留性に優れた血中徐放キャリア並びにターゲティングキャリアとして用いることができ、薬物を持続的に徐放できる局所(例えば、皮下等)徐放キャリアにもなり得るとされている。
しかしながら、特許文献1に記載されたヒアルロン酸誘導体では、粒径を調整することが難しく、ヒアルロン酸誘導体を含む薬物組成物の滅菌ろ過性が悪化することがある。発明者らが検証したところ、ヒアルロン酸誘導体の粒径が大きくなり、滅菌ろ過性が悪化する主な原因は、ヒアルロン酸誘導体の凝集によるものであることが判明している。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、従来よりも凝集が抑制されたヒアルロン酸誘導体組成物、並びに、前記ヒアルロン酸誘導体組成物を用いた医薬組成物及びヒアルロン酸誘導体−薬物結合体組成物を提供する。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) (A)ステリル基を導入したヒアルロン酸誘導体と、(B)アルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、及びエステルからなる群より選択される1種以上の有機溶媒と、を含むヒアルロン酸誘導体組成物であって、(A)ヒアルロン酸誘導体に対する前記ステリル基の導入率が35%以上60%未満である、ヒアルロン酸誘導体組成物。
(2) 前記(B)有機溶媒の含有量がヒアルロン酸誘導体組成物の総質量に対して0.001質量ppm以上200000質量ppm未満である、(1)に記載のヒアルロン酸誘導体組成物。
(3) 前記(B)有機溶媒が、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、及び酢酸エチルからなる群より選択される1種以上の有機溶媒である、(1)又は(2)に記載のヒアルロン酸誘導体組成物。
(4) 前記(A)ヒアルロン酸誘導体が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する、(1)〜(3)のいずれか一つに記載のヒアルロン酸誘導体組成物。
(1) (A)ステリル基を導入したヒアルロン酸誘導体と、(B)アルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、及びエステルからなる群より選択される1種以上の有機溶媒と、を含むヒアルロン酸誘導体組成物であって、(A)ヒアルロン酸誘導体に対する前記ステリル基の導入率が35%以上60%未満である、ヒアルロン酸誘導体組成物。
(2) 前記(B)有機溶媒の含有量がヒアルロン酸誘導体組成物の総質量に対して0.001質量ppm以上200000質量ppm未満である、(1)に記載のヒアルロン酸誘導体組成物。
(3) 前記(B)有機溶媒が、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、及び酢酸エチルからなる群より選択される1種以上の有機溶媒である、(1)又は(2)に記載のヒアルロン酸誘導体組成物。
(4) 前記(A)ヒアルロン酸誘導体が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する、(1)〜(3)のいずれか一つに記載のヒアルロン酸誘導体組成物。
(式中、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、C1−6アルキル、ホルミル及びC1−6アルキルカルボニルからなる群より選択され;
Zは、直接結合、又は2個以上30個以下の任意のアミノ酸残基からなるペプチドリンカーを表し;
X1は、以下の式:
−NRb−R、
−NRb−COO−R、
−NRb−CO−R、
−NRb−CO−NRc−R、
−COO−R、
−O−COO−R、
−S−R、
−CO−Ya−S−R、
−O−CO−Yb−S−R、
−NRb−CO−Yb−S−R、及び
−S−S−R、
で表される基からなる群より選択される基であり;
Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立に、水素原子、C1−20アルキル、アミノC2−20アルキル及びヒドロキシC2−20アルキルからなる群より選択され、ここで当該基のアルキル部分は、−O−及び−NRf−からなる群より選択される基が挿入されていてもよく;
Rfは、水素原子、C1−12アルキル、アミノC2−12アルキル及びヒドロキシC2−12アルキルからなる群より選択され、当該基のアルキル部分は−O−及び−NH−からなる群より選択される基が挿入されていてもよく;
Rは、ステリル基であり;
Yは、C2−30アルキレン、又は−(CH2CH2O)m−CH2CH2−であり、ここで、当該アルキレンは、−O−、−NRg−及び−S−S−からなる群より選択される基が挿入されていてもよく;
Rgは、水素原子、C1−20アルキル、アミノC2−20アルキル及びヒドロキシC2−20アルキルからなる群より選択され、当該基のアルキル部分は−O−及び−NH−からなる群より選択される基が挿入されていてもよく;
Yaは、C1−5アルキレンであり;
Ybは、C2−8アルキレン又はC2−8アルケニレンであり;
mは、1以上100以下の整数である。)
Zは、直接結合、又は2個以上30個以下の任意のアミノ酸残基からなるペプチドリンカーを表し;
X1は、以下の式:
−NRb−R、
−NRb−COO−R、
−NRb−CO−R、
−NRb−CO−NRc−R、
−COO−R、
−O−COO−R、
−S−R、
−CO−Ya−S−R、
−O−CO−Yb−S−R、
−NRb−CO−Yb−S−R、及び
−S−S−R、
で表される基からなる群より選択される基であり;
Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立に、水素原子、C1−20アルキル、アミノC2−20アルキル及びヒドロキシC2−20アルキルからなる群より選択され、ここで当該基のアルキル部分は、−O−及び−NRf−からなる群より選択される基が挿入されていてもよく;
Rfは、水素原子、C1−12アルキル、アミノC2−12アルキル及びヒドロキシC2−12アルキルからなる群より選択され、当該基のアルキル部分は−O−及び−NH−からなる群より選択される基が挿入されていてもよく;
Rは、ステリル基であり;
Yは、C2−30アルキレン、又は−(CH2CH2O)m−CH2CH2−であり、ここで、当該アルキレンは、−O−、−NRg−及び−S−S−からなる群より選択される基が挿入されていてもよく;
Rgは、水素原子、C1−20アルキル、アミノC2−20アルキル及びヒドロキシC2−20アルキルからなる群より選択され、当該基のアルキル部分は−O−及び−NH−からなる群より選択される基が挿入されていてもよく;
Yaは、C1−5アルキレンであり;
Ybは、C2−8アルキレン又はC2−8アルケニレンであり;
mは、1以上100以下の整数である。)
(5) 前記Rがコレステリル基である、(4)に記載のヒアルロン酸誘導体組成物。
(6) 前記(A)ヒアルロン酸誘導体の分子量が1,000以上1,000,000未満である、(1)〜(5)のいずれか一つに記載のヒアルロン酸誘導体組成物。
(7) (1)〜(6)のいずれか一つに記載のヒアルロン酸誘導体組成物を担体として含む、医薬組成物。
(8) 薬物が(A)ヒアルロン酸誘導体と複合体を形成する、(7)に記載の医薬組成物。
(9) 薬物が、薬理活性を有するタンパク質、ペプチド又は核酸である、(7)又は(8)に記載の医薬組成物。
(10) (1)〜(6)のいずれか一つに記載のヒアルロン酸誘導体組成物に含まれる(A)ヒアルロン酸誘導体に、1以上の薬物が結合した、ヒアルロン酸誘導体−薬物結合体組成物。
(6) 前記(A)ヒアルロン酸誘導体の分子量が1,000以上1,000,000未満である、(1)〜(5)のいずれか一つに記載のヒアルロン酸誘導体組成物。
(7) (1)〜(6)のいずれか一つに記載のヒアルロン酸誘導体組成物を担体として含む、医薬組成物。
(8) 薬物が(A)ヒアルロン酸誘導体と複合体を形成する、(7)に記載の医薬組成物。
(9) 薬物が、薬理活性を有するタンパク質、ペプチド又は核酸である、(7)又は(8)に記載の医薬組成物。
(10) (1)〜(6)のいずれか一つに記載のヒアルロン酸誘導体組成物に含まれる(A)ヒアルロン酸誘導体に、1以上の薬物が結合した、ヒアルロン酸誘導体−薬物結合体組成物。
上記態様のヒアルロン酸誘導体組成物によれば、従来よりも凝集が抑制されたヒアルロン酸誘導体組成物を提供することができる。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
以下、本明細書において使用される用語を説明する。
本明細書において使用される「C1−20アルキル」という用語は、炭素数1以上20以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル等の「C1−4アルキル」が含まれ、さらに、n−ペンチル、3−メチルブチル、2−メチルブチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、4−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−メチルペンチル、1−メチルペンチル、3−エチルブチル、2−エチルブチル等が含まれる。C1−20アルキルには、炭素数が1以上12以下のC1−12アルキル、炭素数が1以上6以下のC1−6アルキル基も含まれる。
本明細書において使用される「C1−6アルキルカルボニル」という用語は、アルキル部分が既に言及したC1−6アルキルであるアルキルカルボニル基を意味し、例えば、アセチル、プロピオニル、n−プロピルカルボニル、iso−プロピルカルボニル、n−ブチルカルボニル、sec−ブチルカルボニル、iso−ブチルカルボニル、tert−ブチルカルボニル等の「C1−4アルキルカルボニル」が含まれる。
本明細書において使用される「アミノC2−20アルキル」という用語は、置換基としてアミノ基を有する炭素数2以上20以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルを意味し、例えば、アミノ基はアルキル基の末端の炭素原子上に位置していてもよい。アミノC2−20アルキルには、炭素数が2以上12以下のアミノC2−12アルキルも含まれる。
本明細書において使用される「ヒドロキシC2−20アルキル」という用語は、置換基としてヒドロキシ基を有する炭素数2以上20以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を意味し、例えば、ヒドロキシ基はアルキル基の末端の炭素原子上に位置していてもよい。ヒドロキシC2−20アルキルには、炭素数が2以上12以下のヒドロキシC2−12アルキルも含まれる。
本明細書において使用される「C2−30アルキレン」という用語は、炭素数2以上30以下の直鎖状又は分岐鎖状の2価の飽和炭化水素基を意味し、例えば、エチレン、プロピレン等を含み、炭素数が2以上20以下のC2−20アルキレン、炭素数が2以上8以下のC2−8アルキレン、基「−(CH2)n−」(ここで、nは2以上30以下であり、2以上20以下が好ましく、2以上15以下がより好ましい。)を含む。
本明細書において使用される「C1−5アルキレン」という用語は、炭素数1以上5以下の直鎖状又は分岐鎖状の2価の飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン等を含む。
本明細書で言及する用語「C2−8アルケニレン」とは、炭素数2以上8以下の直鎖状又は分岐鎖状の、1以上の二重結合を含む、2価の飽和炭化水素基を意味し、例えば、−CH=CH−、−C(CH3)=CH−、2−ブテン−1,4−ジイル、ヘプタ−2,4−ジエン−1,6−ジイル、オクタ−2,4,6−トリエン−1,8−ジイル等を含む。幾何異性が存在する場合は、それぞれの異性体及びそれらの混合物も含まれる。
≪ヒアルロン酸誘導体組成物≫
本実施形態のヒアルロン酸誘導体組成物は、(A)ステリル基を導入したヒアルロン酸誘導体(以下、「(A)ヒアルロン酸誘導体」と称する場合がある)と、(B)有機溶媒と、を含む。(B)有機溶媒は、アルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、及びエステルからなる群より選択される1種以上の有機溶媒である。(A)ヒアルロン酸誘導体に対するステリル基の導入率が35%以上60%未満である。
本実施形態のヒアルロン酸誘導体組成物は、(A)ステリル基を導入したヒアルロン酸誘導体(以下、「(A)ヒアルロン酸誘導体」と称する場合がある)と、(B)有機溶媒と、を含む。(B)有機溶媒は、アルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、及びエステルからなる群より選択される1種以上の有機溶媒である。(A)ヒアルロン酸誘導体に対するステリル基の導入率が35%以上60%未満である。
本実施形態のヒアルロン酸誘導体組成物は、ステリル基の導入率が上記の範囲内の(A)ヒアルロン酸誘導体に対して、(B)有機溶媒が、ヒアルロン酸誘導体同士の分子間相互作用を妨げ、分子内相互作用が相対的に強くなり、ナノ粒子の形成が促進されるため、結果として凝集を抑制できるものと考えられる。
本実施形態のヒアルロン酸誘導体組成物において、粒径は特に限定されないが、500nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることがさらに好ましく、200nm以下であることが特に好ましい。粒径が上記上限値以下であれば、フィルターを用いた滅菌ろ過が可能である。また、粒径としては100nm未満であることが最も好ましい。粒径が100nm未満であることで、生体内で細網内皮系に取り込まれやすい。なお、本実施形態のヒアルロン酸誘導体組成物において、粒径は後述する実施例に記載した方法で測定することができる。
<(A)ステリル基を導入したヒアルロン酸誘導体>
(A)ヒアルロン酸誘導体において、ステリル基は、ヒアルロン酸に対して直接的に結合していてもよく、リンカーを解して結合されていてもよい。
ここでいう「リンカー」とは、遺伝子工学により導入し得る任意のペプチドリンカー、又は合成化合物リンカーを用いることができるが、本実施形態の(A)ヒアルロン酸誘導体においては、ペプチドリンカーが好ましい。ペプチドリンカーの長さは特に限定されず、目的に応じて当業者が適宜選択することが可能であるが、好ましい長さは2アミノ酸以上(上限は特に限定されないが、通常、30アミノ酸以下、好ましくは20アミノ酸以下)であり、特に好ましくは15アミノ酸である。(A)ヒアルロン酸誘導体に含まれるペプチドリンカーは、全て同じ長さのペプチドリンカーを用いてもよく、異なる長さのペプチドリンカーを用いてもよい。
(A)ヒアルロン酸誘導体において、ステリル基は、ヒアルロン酸に対して直接的に結合していてもよく、リンカーを解して結合されていてもよい。
ここでいう「リンカー」とは、遺伝子工学により導入し得る任意のペプチドリンカー、又は合成化合物リンカーを用いることができるが、本実施形態の(A)ヒアルロン酸誘導体においては、ペプチドリンカーが好ましい。ペプチドリンカーの長さは特に限定されず、目的に応じて当業者が適宜選択することが可能であるが、好ましい長さは2アミノ酸以上(上限は特に限定されないが、通常、30アミノ酸以下、好ましくは20アミノ酸以下)であり、特に好ましくは15アミノ酸である。(A)ヒアルロン酸誘導体に含まれるペプチドリンカーは、全て同じ長さのペプチドリンカーを用いてもよく、異なる長さのペプチドリンカーを用いてもよい。
[ステリル基]
本明細書において使用される「ステリル基」という用語は、ステロイド骨格を有する基であれば特に制限されない。ここでステロイドとしては、具体的には、コレステロール、コレスタノール、カンペスタノール、エルゴスタノール、スチグマスタノール、コプロスタノール、スチグマステロール、シトステロール、ラノステロール、エルゴステロール、シミアレノール、胆汁酸、テストステロン、エストラジオール、プロゲストロン、コルチゾール、コルチゾン、アルドステロン、コルチコステロン、デオキシコルチステロン等が挙げられる。ステリル基としては、コレステリル基、スチグマステリル基、ラノステリル基、エルゴステリル基等が挙げられ、中でも、コレステリル基(特に、コレスタ−5−エン−3β−イル基)が好ましい。
本明細書において使用される「ステリル基」という用語は、ステロイド骨格を有する基であれば特に制限されない。ここでステロイドとしては、具体的には、コレステロール、コレスタノール、カンペスタノール、エルゴスタノール、スチグマスタノール、コプロスタノール、スチグマステロール、シトステロール、ラノステロール、エルゴステロール、シミアレノール、胆汁酸、テストステロン、エストラジオール、プロゲストロン、コルチゾール、コルチゾン、アルドステロン、コルチコステロン、デオキシコルチステロン等が挙げられる。ステリル基としては、コレステリル基、スチグマステリル基、ラノステリル基、エルゴステリル基等が挙げられ、中でも、コレステリル基(特に、コレスタ−5−エン−3β−イル基)が好ましい。
[ステリル基導入率]
(A)ヒアルロン酸誘導体に対するステリル基の導入率(以下、単に「ステリル基導入率」と称する場合がある)は35%以上60%未満であり、36%以上55%未満が好ましく、38%以上50%以下がより好ましく、38%以上45%以下がさらに好ましい。ステリル基導入率が上記範囲内であることで、ヒアルロン酸誘導体が水中で良好にナノ粒子を形成し分散するという性質を有するようになる。ステリル基導入率が上記範囲内であることで、ヒアルロン酸誘導体組成物中の(A)ヒアルロン酸誘導体を薬物と複合化させた、ヒアルロン酸誘導体−薬物結合体組成物は、水中に溶解し滅菌ろ過が可能な徐放製剤となり得る。
(A)ヒアルロン酸誘導体に対するステリル基の導入率(以下、単に「ステリル基導入率」と称する場合がある)は35%以上60%未満であり、36%以上55%未満が好ましく、38%以上50%以下がより好ましく、38%以上45%以下がさらに好ましい。ステリル基導入率が上記範囲内であることで、ヒアルロン酸誘導体が水中で良好にナノ粒子を形成し分散するという性質を有するようになる。ステリル基導入率が上記範囲内であることで、ヒアルロン酸誘導体組成物中の(A)ヒアルロン酸誘導体を薬物と複合化させた、ヒアルロン酸誘導体−薬物結合体組成物は、水中に溶解し滅菌ろ過が可能な徐放製剤となり得る。
ステリル基導入率は、1H−NMR測定により測定することができる。すなわち、ヒアルロン酸誘導体組成物の1H−NMRスペクトルにおける(A)ヒアルロン酸誘導体のステリル基に由来するピークの積分値と、(A)ヒアルロン酸誘導体に含まれるN−アセチル−D−グルコサミンのアセチル基に由来するピーク(COCH3、1.6ppm以上2.0ppm以下、3H)の積分値と、を用いて、以下の式に基づいて計算することができる。なお、式中nHはピークに対応する水素原子の数を表す。具体的には、例えば後述する実施例に記載した方法に従って測定することができる。
[ステリル基導入率](%)
=[(ステリル基に由来するピーク積分値×3/nH)/(N−アセチル−D−グルコサミンのアセチル基に由来するピーク積分値)]×100
=[(ステリル基に由来するピーク積分値×3/nH)/(N−アセチル−D−グルコサミンのアセチル基に由来するピーク積分値)]×100
[(A)ヒアルロン酸誘導体の分子量]
(A)ヒアルロン酸誘導体の分子量は特に限定はされないが、ヒアルロン酸誘導体1分子あたりのステリル基導入数を増やし、薬物結合体を形成する観点からは、分子量の比較的大きい(A)ヒアルロン酸誘導体が好ましく、滅菌ろ過性能を期待する観点や最終剤形が溶液製剤の場合はシリンジアビリティの観点からは、分子量の比較的小さい(A)ヒアルロン酸誘導体が好ましい。このような(A)ヒアルロン酸誘導体の分子量としては、800(0.8k)以上1,000,000(1,000k)以下が好ましく、1k以上1,000k以下がより好ましく、1k以上300k以下がさらに好ましく、2k以上120k以下が特に好ましく、3k以上100k以下が最も好ましい。(A)ヒアルロン酸誘導体の分子量は、一般的には、対応する分子量を有する原料を使用することにより調節することができる。
(A)ヒアルロン酸誘導体の分子量は特に限定はされないが、ヒアルロン酸誘導体1分子あたりのステリル基導入数を増やし、薬物結合体を形成する観点からは、分子量の比較的大きい(A)ヒアルロン酸誘導体が好ましく、滅菌ろ過性能を期待する観点や最終剤形が溶液製剤の場合はシリンジアビリティの観点からは、分子量の比較的小さい(A)ヒアルロン酸誘導体が好ましい。このような(A)ヒアルロン酸誘導体の分子量としては、800(0.8k)以上1,000,000(1,000k)以下が好ましく、1k以上1,000k以下がより好ましく、1k以上300k以下がさらに好ましく、2k以上120k以下が特に好ましく、3k以上100k以下が最も好ましい。(A)ヒアルロン酸誘導体の分子量は、一般的には、対応する分子量を有する原料を使用することにより調節することができる。
ここでいう、「(A)ヒアルロン酸誘導体の分子量」は、サイズ排除クロマトグラフィー多角度光散乱検出器(SEC−MALS)により決定された重量平均分子量である。具体的には、後述する実施例に記載された方法に従って測定することができる。
好ましい(A)ヒアルロン酸誘導体として具体的には、例えば、下記一般式(I)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(I)」と称する場合がある)を1以上有するヒアルロン酸誘導体等が挙げられる。
(式中、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、C1−6アルキル、ホルミル及びC1−6アルキルカルボニルからなる群より選択され;
Zは、直接結合、又は2個以上30個以下の任意のアミノ酸残基からなるペプチドリンカーを表し;
X1は、以下の式:
−NRb−R、
−NRb−COO−R、
−NRb−CO−R、
−NRb−CO−NRc−R、
−COO−R、
−O−COO−R、
−S−R、
−CO−Ya−S−R、
−O−CO−Yb−S−R、
−NRb−CO−Yb−S−R、及び
−S−S−R、
で表される基からなる群より選択される基であり;
Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立に、水素原子、C1−20アルキル、アミノC2−20アルキル及びヒドロキシC2−20アルキルからなる群より選択され、ここで当該基のアルキル部分は、−O−及び−NRf−からなる群より選択される基が挿入されていてもよく;
Rfは、水素原子、C1−12アルキル、アミノC2−12アルキル及びヒドロキシC2−12アルキルからなる群より選択され、当該基のアルキル部分は−O−及び−NH−からなる群より選択される基が挿入されていてもよく;
Rは、ステリル基であり;
Yは、C2−30アルキレン、又は−(CH2CH2O)m−CH2CH2−であり、ここで、当該アルキレンは、−O−、−NRg−及び−S−S−からなる群より選択される基が挿入されていてもよく;
Rgは、水素原子、C1−20アルキル、アミノC2−20アルキル及びヒドロキシC2−20アルキルからなる群より選択され、当該基のアルキル部分は−O−及び−NH−からなる群より選択される基が挿入されていてもよく;
Yaは、C1−5アルキレンであり;
Ybは、C2−8アルキレン又はC2−8アルケニレンであり;
mは、1以上100以下の整数である。)
Zは、直接結合、又は2個以上30個以下の任意のアミノ酸残基からなるペプチドリンカーを表し;
X1は、以下の式:
−NRb−R、
−NRb−COO−R、
−NRb−CO−R、
−NRb−CO−NRc−R、
−COO−R、
−O−COO−R、
−S−R、
−CO−Ya−S−R、
−O−CO−Yb−S−R、
−NRb−CO−Yb−S−R、及び
−S−S−R、
で表される基からなる群より選択される基であり;
Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立に、水素原子、C1−20アルキル、アミノC2−20アルキル及びヒドロキシC2−20アルキルからなる群より選択され、ここで当該基のアルキル部分は、−O−及び−NRf−からなる群より選択される基が挿入されていてもよく;
Rfは、水素原子、C1−12アルキル、アミノC2−12アルキル及びヒドロキシC2−12アルキルからなる群より選択され、当該基のアルキル部分は−O−及び−NH−からなる群より選択される基が挿入されていてもよく;
Rは、ステリル基であり;
Yは、C2−30アルキレン、又は−(CH2CH2O)m−CH2CH2−であり、ここで、当該アルキレンは、−O−、−NRg−及び−S−S−からなる群より選択される基が挿入されていてもよく;
Rgは、水素原子、C1−20アルキル、アミノC2−20アルキル及びヒドロキシC2−20アルキルからなる群より選択され、当該基のアルキル部分は−O−及び−NH−からなる群より選択される基が挿入されていてもよく;
Yaは、C1−5アルキレンであり;
Ybは、C2−8アルキレン又はC2−8アルケニレンであり;
mは、1以上100以下の整数である。)
(A)ヒアルロン酸誘導体は、下記一般式(Ia)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(Ia)」と称する場合がある)を、1以上有するヒアルロン酸誘導体を含むことが好ましい。
(式中、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、C1−6アルキル、ホルミル及びC1−6アルキルカルボニルからなる群より選択され;
Xは、−NRa−Y−NRb−COO−Rで表される疎水性基であり;
Ra及びRbは、それぞれ独立に、水素原子及びC1−6アルキルからなる群より選択され;
Rは、ステリル基であり;
Yは、C2−30アルキレン、又は−(CH2CH2O)m−CH2CH2−であり、
mは、1以上100以下の整数である。)
Xは、−NRa−Y−NRb−COO−Rで表される疎水性基であり;
Ra及びRbは、それぞれ独立に、水素原子及びC1−6アルキルからなる群より選択され;
Rは、ステリル基であり;
Yは、C2−30アルキレン、又は−(CH2CH2O)m−CH2CH2−であり、
mは、1以上100以下の整数である。)
ここで、(A)ヒアルロン酸誘導体に繰り返し単位(I)又は繰り返し単位(Ia)がそれぞれ2以上含まれる場合に、当該繰り返し単位は同一であってもよく、異なっていてもよい。
(A)ヒアルロン酸誘導体は、繰り返し単位(I)又は繰り返し単位(Ia)以外の位置において、修飾されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基は−O(C1−6アルキル)、−O(ホルミル)、−O(C1−6アルキルカルボニル)等に変換されていてもよく、カルボキシ基は、アミド又はエステルに変換されていてもよく、塩を形成していてもよい。
[繰り返し単位(I)]
一般式(I)中の基「−Z−N(Ra)Y−X1」は、以下の式:
−NH−(CH2)mz−NH−R;
−NH−(CH2)mz−NH−COO−R;
−NH−(CH2CH2O)m−CH2CH2−NH−COO−R;
−NH−(CH2)mz−COO−R;
−NH−(CH2CH2O)m−CH2CH2−COO−R、
−NH−(CH2)mz−O−COO−R;
−NH−(CH2CH2O)m−CH2CH2−O−COO−R、
−NH−(CH2)mz−S−R;
−NH−(CH2CH2O)m−CH2CH2−S−R;
−NH−(CH2)mz−O−CO−CH(R8)−CH2−S−R;
−NH−(CH2)mz−NHCO−CH(R8)−CH2−S−R;
−NH−(CH2CH2O)m−CH2CH2−NHCO−CH(R8)−CH2−S−R;
−NH−(CH2CH2O)m−CH2CH2−O−CO−CH(R8)−CH2−S−R;
−NH−(CH2)mz−S−S−R;及び
−Z−NRa−Y−NRb−COO−R
(ここで、mzは、2以上30以下の整数であり、R8は、水素原子又はメチル基であり、R及びmは、本明細書で既に定義したとおりである。)
で表される基からなる群より選択される基を含む。
当該基としては、
−NH−(CH2)mz−NH−COO−R;
−NH−(CH2CH2O)m−CH2CH2−NH−COO−R;及び
−NH−(CH2)mz−S−S−R
(ここで、mz、R、及びmは、本明細書で既に定義したとおりである。)
からなる群より選択される基が好ましい。
一般式(I)中の基「−Z−N(Ra)Y−X1」は、以下の式:
−NH−(CH2)mz−NH−R;
−NH−(CH2)mz−NH−COO−R;
−NH−(CH2CH2O)m−CH2CH2−NH−COO−R;
−NH−(CH2)mz−COO−R;
−NH−(CH2CH2O)m−CH2CH2−COO−R、
−NH−(CH2)mz−O−COO−R;
−NH−(CH2CH2O)m−CH2CH2−O−COO−R、
−NH−(CH2)mz−S−R;
−NH−(CH2CH2O)m−CH2CH2−S−R;
−NH−(CH2)mz−O−CO−CH(R8)−CH2−S−R;
−NH−(CH2)mz−NHCO−CH(R8)−CH2−S−R;
−NH−(CH2CH2O)m−CH2CH2−NHCO−CH(R8)−CH2−S−R;
−NH−(CH2CH2O)m−CH2CH2−O−CO−CH(R8)−CH2−S−R;
−NH−(CH2)mz−S−S−R;及び
−Z−NRa−Y−NRb−COO−R
(ここで、mzは、2以上30以下の整数であり、R8は、水素原子又はメチル基であり、R及びmは、本明細書で既に定義したとおりである。)
で表される基からなる群より選択される基を含む。
当該基としては、
−NH−(CH2)mz−NH−COO−R;
−NH−(CH2CH2O)m−CH2CH2−NH−COO−R;及び
−NH−(CH2)mz−S−S−R
(ここで、mz、R、及びmは、本明細書で既に定義したとおりである。)
からなる群より選択される基が好ましい。
(Z)
一般式(I)において、Zは直接結合であることが好ましい。また、別の態様において、Zがペプチドリンカーである場合に、X1は−NRb−COO−Rであることが好ましい。さらに、別の態様において、Zは、−NH−[CH(−Za)−CONH]n−1−CH(−Za)−CO−で表されるペプチドリンカーであってもよく、ここで、nは2以上30以下の整数であり、Zaは、それぞれ独立に、H2N−CH(−Za)−COOHとして表されるα−アミノ酸中の置換基を表す。当該ペプチドリンカーは、N末端にてグルクロン酸部分のカルボキシ基に結合し、C末端にて基−N(−Ra)−Y−X1に結合する。当該ペプチドリンカーのアミノ酸残基として利用できるアミノ酸の例としてはα−アミノ酸、例えばアラニン、アルギニン、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン(Gly)、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン(Leu)、リジン、メチオニン、フェニルアラニン(Phe)、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンといった天然型(L型)のアミノ酸、それらのD体等が挙げられ、合成されたアミノ酸を含む全てのα−アミノ酸を用いることができる。すなわち、Zaとしては、例えば、−CH3、H2NC(NH)NH(CH2)3−、H2NCOCH2−等が挙げられる。また、n個のZは、同一でも異なっていてもよい。nは、2以上30以下の整数であるが、2以上10以下が好ましく、2以上4以下がより好ましい。ペプチドリンカーの好ましい例としては、例えば、−Gly−Phe−Leu−Gly−、−Asn−Phe−Phe−、−Phe−Phe−、Phe−Gly−等が挙げられる。
一般式(I)において、Zは直接結合であることが好ましい。また、別の態様において、Zがペプチドリンカーである場合に、X1は−NRb−COO−Rであることが好ましい。さらに、別の態様において、Zは、−NH−[CH(−Za)−CONH]n−1−CH(−Za)−CO−で表されるペプチドリンカーであってもよく、ここで、nは2以上30以下の整数であり、Zaは、それぞれ独立に、H2N−CH(−Za)−COOHとして表されるα−アミノ酸中の置換基を表す。当該ペプチドリンカーは、N末端にてグルクロン酸部分のカルボキシ基に結合し、C末端にて基−N(−Ra)−Y−X1に結合する。当該ペプチドリンカーのアミノ酸残基として利用できるアミノ酸の例としてはα−アミノ酸、例えばアラニン、アルギニン、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン(Gly)、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン(Leu)、リジン、メチオニン、フェニルアラニン(Phe)、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンといった天然型(L型)のアミノ酸、それらのD体等が挙げられ、合成されたアミノ酸を含む全てのα−アミノ酸を用いることができる。すなわち、Zaとしては、例えば、−CH3、H2NC(NH)NH(CH2)3−、H2NCOCH2−等が挙げられる。また、n個のZは、同一でも異なっていてもよい。nは、2以上30以下の整数であるが、2以上10以下が好ましく、2以上4以下がより好ましい。ペプチドリンカーの好ましい例としては、例えば、−Gly−Phe−Leu−Gly−、−Asn−Phe−Phe−、−Phe−Phe−、Phe−Gly−等が挙げられる。
(Y)
一般式(I)において、Yは−(CH2)n1−及び−(CH2CH2O)m1−CH2CH2−(ここで、n1は、2以上20以下の整数であり、2以上15以下の整数が好ましく、2以上12以下の整数がより好ましく、2以上6以下の整数がさらに好ましい。m1は、1以上4以下の整数である)からなる群より選択される基が好ましい。具体的には、−(CH2)2−、−(CH2)6−、−(CH2)8−、−(CH2)12−、又は、−(CH2CH2O)2−CH2CH2−が好ましい。また、純水中乃至低塩濃度下では高い溶解性を実現させつつ、生理食塩濃度下では高い沈殿形成能を示させるという観点からは、Yは−(CH2)2−、−(CH2)6−、−(CH2)8−及び−(CH2)12−からなる群より選択される基が好ましく、−(CH2)6−がより好ましい。
一般式(I)において、Yは−(CH2)n1−及び−(CH2CH2O)m1−CH2CH2−(ここで、n1は、2以上20以下の整数であり、2以上15以下の整数が好ましく、2以上12以下の整数がより好ましく、2以上6以下の整数がさらに好ましい。m1は、1以上4以下の整数である)からなる群より選択される基が好ましい。具体的には、−(CH2)2−、−(CH2)6−、−(CH2)8−、−(CH2)12−、又は、−(CH2CH2O)2−CH2CH2−が好ましい。また、純水中乃至低塩濃度下では高い溶解性を実現させつつ、生理食塩濃度下では高い沈殿形成能を示させるという観点からは、Yは−(CH2)2−、−(CH2)6−、−(CH2)8−及び−(CH2)12−からなる群より選択される基が好ましく、−(CH2)6−がより好ましい。
Yは、例えば、−CH2CH2O−CH2CH2−S−S−CH2CH2O−CH2CH2−、−(CH2CH2O)2−CH2CH2−S−S−CH2CH2O−CH2CH2−、−CH2CH2O−CH2CH2−S−S−(CH2CH2O)2−CH2CH2−、−(CH2CH2O)2−CH2CH2−S−S−(CH2CH2O)2−CH2CH2−等であってもよい。
(Ya)
Yaとしては、−CH2−又は−CH2−CH2−が好ましい。
Yaとしては、−CH2−又は−CH2−CH2−が好ましい。
(Yb)
Ybとしては、−CH2−CH2−、−CH(CH3)CH2−、2−ブテン−1,4−ジイル、ヘプタ−2,4−ジエン−1,6−ジイル又はオクタ−2,4,6−トリエン−1,8−ジイルが好ましく、−CH2−CH2−又は−CH(CH3)CH2−がより好ましい。
Ybとしては、−CH2−CH2−、−CH(CH3)CH2−、2−ブテン−1,4−ジイル、ヘプタ−2,4−ジエン−1,6−ジイル又はオクタ−2,4,6−トリエン−1,8−ジイルが好ましく、−CH2−CH2−又は−CH(CH3)CH2−がより好ましい。
基「−Z−N(Ra)Y−X1」の具体例としては、−NH−(CH2)2−NH−CO−コレステリル、−NH−(CH2)4−NH−(CH2)3−NH−(CH2)3−NH−COO−コレステリル、−NH−(CH2)3−NH−(CH2)4−NH−(CH2)3−NH−COO−コレステリル、−NH−(CH2)4−NH−(CH2)3−NH−COO−コレステリル、−NH−(CH2)4−N(−(CH2)3−NH2)−COO−コレステリル、−NH−(CH2)3−NH−(CH2)4−N(−(CH2)3−NH2)−COO−コレステリル、−NH−(CH2)3−NH−(CH2)4−N(−(CH2)3−NH−(CH2)3−NH2)−COO−コレステリル、−NH−(CH2)3−NH−(CH2)4−N(−(CH2)3−NH2)−CO−NH−コレステリル、−NH−(CH2)3−NH−(CH2)4−N(−(CH2)3−NH2)−CO−コレステリル、−NH−(CH2)3−NH−(CH2)4−N(−(CH2)3−NH2)−コレステリル等が挙げられる。好ましい基「−Z−N(Ra)Y−X1」としては、Ra、Rb及びRcが、水素原子であり、Yが、直鎖状のC2−30アルキレン又は−(CH2CH2O)m−CH2CH2−であり、Yaが、直鎖状のC1−5アルキレンであるか、又はYbが、直鎖状のC2−8アルキレン若しくは直鎖状のC2−8アルケニレンである。
[繰り返し単位(Ia)]
一般式(Ia)において、Xは、−NH−(CH2)2−NH−COO−コレステリル、−NH−(CH2)6−NH−COO−コレステリル、−NH−(CH2)12−NH−COO−コレステリル又は−NH−(CH2CH2O)2−CH2CH2−NH−COO−コレステリルが好ましく、−NH−(CH2)2−NH−COO−コレステリル、−NH−(CH2)6−NH−COO−コレステリル又は−NH−(CH2CH2O)2−CH2CH2−NH−COO−コレステリルがより好ましい。
一般式(Ia)において、Xは、−NH−(CH2)2−NH−COO−コレステリル、−NH−(CH2)6−NH−COO−コレステリル、−NH−(CH2)12−NH−COO−コレステリル又は−NH−(CH2CH2O)2−CH2CH2−NH−COO−コレステリルが好ましく、−NH−(CH2)2−NH−COO−コレステリル、−NH−(CH2)6−NH−COO−コレステリル又は−NH−(CH2CH2O)2−CH2CH2−NH−COO−コレステリルがより好ましい。
(A)ヒアルロン酸誘導体は、繰り返し単位(I)に加えて、一般式(II)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(II)」と称する場合がある)を更に含むことができる。
(式中、R1a、R2a、R3a、及びR4aは、それぞれ独立に、水素原子、C1−6アルキル、ホルミル及びC1−6アルキルカルボニルからなる群より選択され;
Xaは、ヒドロキシ及び−O−Q+からなる群より選択され;ここで、Q+は、カウンターカチオンである。)
Xaは、ヒドロキシ及び−O−Q+からなる群より選択され;ここで、Q+は、カウンターカチオンである。)
ここで、(A)ヒアルロン酸誘導体に繰り返し単位(II)が2以上含まれる場合に、当該繰り返し単位は同一であってもよく、異なっていてもよい。
別の態様において、(A)ヒアルロン酸誘導体は、繰り返し単位(I)、繰り返し単位(Ia)及び繰り返し単位(II)から実質的になるヒアルロン酸誘導体であってもよい。
別の態様において、(A)ヒアルロン酸誘導体は、繰り返し単位(I)、繰り返し単位(Ia)及び繰り返し単位(II)から実質的になるヒアルロン酸誘導体であってもよい。
[繰り返し単位(II)]
一般式(II)において、Q+はカルボキシ基と水中で塩を形成するカウンターカチオンであれば特に限定されず、2価以上の場合は価数に応じて複数のカルボキシ基と塩を形成する。カウンターカチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン等の金属イオン;式:N+RjRkRlRm(式中、Rj、Rk、Rl及びRmは、それぞれ独立に、水素原子及びC1−6アルキルからなる群より選択される)で表されるアンモニウムイオン等が挙げられる。中でも、Q+は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はテトラアルキルアンモニウムイオン(例えば、テトラn−ブチルアンモニウムイオン等)が好ましい。Rj、Rk、Rl及びRmは、C1−6アルキルからなる群より選択される同一の基であることが好ましく、n−ブチル基が好ましい。
一般式(II)において、Q+はカルボキシ基と水中で塩を形成するカウンターカチオンであれば特に限定されず、2価以上の場合は価数に応じて複数のカルボキシ基と塩を形成する。カウンターカチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン等の金属イオン;式:N+RjRkRlRm(式中、Rj、Rk、Rl及びRmは、それぞれ独立に、水素原子及びC1−6アルキルからなる群より選択される)で表されるアンモニウムイオン等が挙げられる。中でも、Q+は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はテトラアルキルアンモニウムイオン(例えば、テトラn−ブチルアンモニウムイオン等)が好ましい。Rj、Rk、Rl及びRmは、C1−6アルキルからなる群より選択される同一の基であることが好ましく、n−ブチル基が好ましい。
R1、R2、R3、及びR4、並びにR1a、R2a、R3a、及びR4aは、全て水素原子であることが好ましい。また、Ra及びRbは、いずれも水素原子であることが好ましい。
中でも、(A)ヒアルロン酸誘導体は、繰り返し単位(I)及び繰り返し単位(II)から実質的になるヒアルロン酸誘導体であることが好ましい。(A)ヒアルロン酸誘導体は、当該誘導体に含まれるD−グルクロン酸とN−アセチル−D−グルコサミンとから成る二糖の繰り返し単位のうちの、例えば80%以上が、好ましくは90%以上が、より好ましくは95%以上が繰り返し単位(I)及び繰り返し単位(II)である。(A)ヒアルロン酸誘導体は、繰り返し単位(I)及び繰り返し単位(II)のみから構成されていてもよい。
[(B)有機溶媒]
(B)有機溶媒は、水中でヒアルロン酸誘導体のナノ粒子形成促進剤として機能し、水中におけるヒアルロン酸誘導体の凝集を抑制し、その結果として滅菌ろ過性を向上させる。
(B)有機溶媒は、水中でヒアルロン酸誘導体のナノ粒子形成促進剤として機能し、水中におけるヒアルロン酸誘導体の凝集を抑制し、その結果として滅菌ろ過性を向上させる。
(B)有機溶媒の含有量は、ヒアルロン酸誘導体組成物の総質量に対して、0.001質量ppm以上200000質量ppm未満が好ましく、0.001質量ppm以上150000質量ppm以下がより好ましく、0.005質量ppm以上120000質量ppm以下がさらに好ましく、0.006質量ppm以上100000質量ppm以下が特に好ましい。
(B)有機溶媒の含有量が上記下限値以上であることで、ヒアルロン酸誘導体組成物の水中でのナノ粒子形成能をより高くすることができ、一方、上記上限値以下であることで、水中におけるヒアルロン酸誘導体の凝集をより効果的に抑制することができる。結果として、有機溶媒の含有量が上述した範囲内であることにより、粒径を相対的に小さくすることができ、必然的に滅菌ろ過性も向上する。
(B)有機溶媒の含有量は、例えば、後述する実施例に記載された方法に従って測定することができる。
(B)有機溶媒の含有量が上記下限値以上であることで、ヒアルロン酸誘導体組成物の水中でのナノ粒子形成能をより高くすることができ、一方、上記上限値以下であることで、水中におけるヒアルロン酸誘導体の凝集をより効果的に抑制することができる。結果として、有機溶媒の含有量が上述した範囲内であることにより、粒径を相対的に小さくすることができ、必然的に滅菌ろ過性も向上する。
(B)有機溶媒の含有量は、例えば、後述する実施例に記載された方法に従って測定することができる。
(B)有機溶媒は、アルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、及びエステルからなる群より選択される1種以上の有機溶媒である。
アルコールとしては、モノアルコールであってもよく、多価アルコールであってもよい。モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロパノール)、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソアミルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール、トリデカノール、ペンタデカノール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、トリメチルシクロヘキサノール等が挙げられる。多価アルコールとしては、2価のアルコールであってもよく、3価のアルコールであってもよい。2価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。3価のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
中でも、アルコールとしては、エタノール、イソプロパノール、及び、多価アルコールからなる群より選択される1種以上のアルコールが好ましく、多価アルコールがより好ましく、エチレングリコールがさらに好ましい。
中でも、アルコールとしては、エタノール、イソプロパノール、及び、多価アルコールからなる群より選択される1種以上のアルコールが好ましく、多価アルコールがより好ましく、エチレングリコールがさらに好ましい。
スルホキシドとしては、ジエチルスルホキシド、ブチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、スルホラン、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。
中でも、スルホキシドとしては、ジアルキルスルホキシド類が好ましく、ジメチルスルホキシドがより好ましい。
中でも、スルホキシドとしては、ジアルキルスルホキシド類が好ましく、ジメチルスルホキシドがより好ましい。
ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。
中でも、ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンが好ましく、アセトンがより好ましい。
中でも、ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンが好ましく、アセトンがより好ましい。
エーテルとしては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール、ペネトール、tert−ブチルメチルエーテル等が挙げられる。
中でも、エーテルとしては、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、又はtert−ブチルメチルエーテルが好ましく、テトラヒドロフランがより好ましい。
中でも、エーテルとしては、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、又はtert−ブチルメチルエーテルが好ましく、テトラヒドロフランがより好ましい。
エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、ギ酸エチル、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテート等が挙げられる。
中でも、エステルとしては、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、又は酢酸プロピルが好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
中でも、エステルとしては、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、又は酢酸プロピルが好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
<ヒアルロン酸誘導体組成物の製造方法>
本実施形態のヒアルロン酸誘導体組成物は、(A)ヒアルロン酸誘導体を製造した後に、当該(A)ヒアルロン酸誘導体に(B)有機溶媒を添加することで、製造することができる。
本実施形態のヒアルロン酸誘導体組成物は、(A)ヒアルロン酸誘導体を製造した後に、当該(A)ヒアルロン酸誘導体に(B)有機溶媒を添加することで、製造することができる。
まず、(A)ヒアルロン酸誘導体の製造方法としては、例えば、グルクロン酸のカルボキシ基をアミドに変換し、ステリル基を導入することで、(A)ヒアルロン酸誘導体が得られる。また、原料のヒアルロン酸又はその誘導体に対して、反応させるステリル基を有する化合物の配合量を調整することで、ステリル基導入率を35%以上60%未満とすることができる。
グルクロン酸のカルボキシ基をアミドに変換して、ステリル基を導入する方法として具体的には、例えば、原料のヒアルロン酸又はその誘導体、好ましくは、繰り返し単位(II)のみから構成されるヒアルロン酸又はその誘導体を、テトラアルキルアンモニウム塩(例えば、テトラブチルアンモニウム(TBA)塩)にイオン交換し、適当な縮合剤存在下、溶媒中で当該ヒアルロン酸塩と、式:「HNRa−Y−NRb−R、NHRa−Y−NRb−COO−R、HNRa−Y−NRb−COO−R、HNRa−Y−NRb−CO−R、HNRa−Y−NRb−CO−NRc−R、HNRa−Y−COO−R、HNRa−Y−O−COO−R、HNRa−Y−S−R、HNRa−Y−CO−Ya−S−R、HNRa−Y−O−CO−Yb−S−R、HNRa−Y−NRb−CO−Yb−S−R、HNRa−Y−S−S−R、又は−Z−NRa−Y−NRb−COO−R(式中、Ra、Rb、Rc、Y、Ya、Yb、Z及びRは本明細書で既に定義したとおりである)」で表されるステリル基(特に、コレステリル基)を導入したアミンと、を反応させる方法が挙げられる。
上記の反応において使用することができる縮合剤は特に限定されず、例えば、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン)−4−メチルモルホリウム(DMT−MM)、N,N’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)、2−ベンゾトリアゾール−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム4フッ化ホウ酸塩(TBTU)、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HODhbt)、ベンゾトリアゾール−1−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム6フッ化リン酸塩(PyBOP)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(BOP)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)等が挙げられる。
特に、限定はされないが、DMT−MMは水及び有機溶媒の混合溶媒中でも反応が高効率に進む点において好ましい。また、DMT−MMを縮合剤として使用することにより、多数のヒドロキシが共存する系において、エステル結合形成を抑えつつ、高選択的にアミノ基とカルボキシ基によるアミド結合形成を行うことができる。この縮合剤の使用により、例えば、溶媒であるアルコールがヒアルロン酸部分のカルボキシ基と反応することや、ヒアルロン酸部分に同時に存在するカルボキシ基とヒドロキシとが、分子内又は分子間で結合して、望まない架橋を形成してしまうことを防ぐことができる。
ステリル基導入反応において用いる溶媒としては、水、DMSO、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、多価アルコール、アセトニトリル、DMF、THF、ジクロロメタン、クロロホルム、ヘキサン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。多価アルコールとしては、上記「(B)アルコール」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
或いは、原料のヒアルロン酸又はその誘導体を、テトラアルキルアンモニウム塩(例えば、テトラブチルアンモニウム(TBA)塩)にイオン交換し、適当な縮合剤存在下、溶媒中で当該ヒアルロン酸塩とスペーサー部分を反応させ(この際、必要に応じて保護及び脱保護反応を行ってもよい)、原料のヒアルロン酸又はその誘導体のカルボキシ基(−COOH)を変換し、その後に適当な試薬と反応させてもよい。カルボキシ基から誘導される基と、反応試薬の組み合わせの例を以下に示す。
−CONRa−Y−NRbH + Hal−R;
−CONRa−Y−NRbH + Hal−COOR;
−CONRa−Y−NRbH + HOCO−R;
−CONRa−Y−NRbH + Hal−CO−R;
−CONRa−Y−NRb−COOH + HNRc−R;
−CONRa−Y−NRb−CO−NRcH + Hal−R;
−CONRa−Y−NRbH + HOCO−NRc−R;
−CONRa−Y−NRbH + Hal−CO−NRc−R;
−CONRa−Y−COOH + HO−R;
−CONRa−Y−OH + Hal−COO−R;
−CONRa−Y−OCOOH + HO−R;
−CONRa−Y−OCOOH + Hal−R;
−CONRa−Y−OCO−Hal + HO−R;
−CONRa−Y−SH + Hal−R;
−CONRa−Y−Hal + HS−R;
−CONRa−Y−CO−Ya−Hal + HS−R;
−CONRa−Y−CO−Ya−SH + Hal−R;
−CONRa−Y−O−CO−CH=CH2 + HS−R;
−CONRa−Y−NRb−CO−CH(CH3)=CH2 + HS−R;
−CONRa−Y−SH + HS−R;
−COZ−OH + HNRa−Y−NRb−COO−R;
−COZ−NRa−Y−NRbH + Hal−COO−R
(式中、Ra、Rb、Rc、Y、Ya、Yb、及びZは本明細書で既に定義したとおりであり、Halは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素からなる群より選択されるハロゲン原子を表す)。
−CONRa−Y−NRbH + Hal−R;
−CONRa−Y−NRbH + Hal−COOR;
−CONRa−Y−NRbH + HOCO−R;
−CONRa−Y−NRbH + Hal−CO−R;
−CONRa−Y−NRb−COOH + HNRc−R;
−CONRa−Y−NRb−CO−NRcH + Hal−R;
−CONRa−Y−NRbH + HOCO−NRc−R;
−CONRa−Y−NRbH + Hal−CO−NRc−R;
−CONRa−Y−COOH + HO−R;
−CONRa−Y−OH + Hal−COO−R;
−CONRa−Y−OCOOH + HO−R;
−CONRa−Y−OCOOH + Hal−R;
−CONRa−Y−OCO−Hal + HO−R;
−CONRa−Y−SH + Hal−R;
−CONRa−Y−Hal + HS−R;
−CONRa−Y−CO−Ya−Hal + HS−R;
−CONRa−Y−CO−Ya−SH + Hal−R;
−CONRa−Y−O−CO−CH=CH2 + HS−R;
−CONRa−Y−NRb−CO−CH(CH3)=CH2 + HS−R;
−CONRa−Y−SH + HS−R;
−COZ−OH + HNRa−Y−NRb−COO−R;
−COZ−NRa−Y−NRbH + Hal−COO−R
(式中、Ra、Rb、Rc、Y、Ya、Yb、及びZは本明細書で既に定義したとおりであり、Halは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素からなる群より選択されるハロゲン原子を表す)。
反応様式としては、脱ハロゲン化水素反応、縮合反応、脱水反応、マイケル付加等の求核付加反応、酸化的なジスルフィド形成反応等が挙げられ、これらは周知な反応であり、当業者が適宜選択し、好ましい反応条件を見出して行うことができる。変換体又は反応物がカルボキシ基を有する場合は、N−ヒドロキシコハク酸イミド(以下、「NHS」とも称す)エステルとし、反応させてもよい。
また、原料のヒアルロン酸又はその誘導体のカルボキシ基に、2−アミノエチル2−ピリジルジスルフィドを反応させて、末端に脱離基で修飾されたメルカプト基を有するスペーサーが導入されたヒアルロン酸誘導体を調製し、これにチオコレステロールを求核置換反応させてジスルフィド結合を形成する方法が挙げられる。
さらに、ヒアルロン酸又はその誘導体のカルボキシ基にスペーサーの一部を導入したものと、ステリル基にスペーサーの一部を導入したものを調製し、これらを反応させる方法も挙げられる。具体例の一部は上述したが、さらに、Yに−S−S−が挿入されている場合は、ヒアルロン酸のカルボキシ基に、末端にメルカプト基を有するスペーサーが導入されたヒアルロン酸誘導体と、末端にメルカプト基を有するスペーサーが導入されたステリル基をそれぞれ調製し、これらを酸化的に反応させてジスルフィド結合を形成させる方法も挙げられる。このとき、一方のメルカプト基を2−メルカプトピリジンと反応させてジスルフィドとした後に、他方のメルカプト基と置換させることもできる。
また、本発明のヒアルロン酸誘導体を調製後、さらに他の置換基を導入してもよい。例えば、繰り返し単位(I)、及び繰り返し単位(II)から実質的になるヒアルロン酸誘導体におけるカルボキシ基の0.1%以上99.5%以下、好ましくは40%以上65%以下を、−CO−Xz、[ここで、Xzは、以下の基:
−NH−(CH2)p1−O−CO−C(R17)=CH2;
−NH−(CH2)p1−O−CO−CH(R17)−CH2−S−CH2−CH(OH)−CH(OH)−CH2−SH;
−NH−(CH2)p1−SH;
−NH−(CH2)p1−NH−CO−C(R17)=CH2;
−NH−(CH2)p1−NH−C(=NH)−(CH2)3−SH;
−NH−(CH2)p1−NH−CO−(CH2)r−SH;
−NH−(CH2)p1−NH−CO−CH(R17)−CH2−S−CH2−CH(OH)−CH(OH)−CH2−SH;
−NH−(CH2)p1−NH−CO−CH(NH2)−CH2−SH;
−NH−(CH2)p1−NH−CO−CH(NH2)−(CH2)2−SH;
−NH−NH−CO−(CH2)4−CO−NH−NH−C(=NH)−(CH2)3−SH;
−NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−O−CO−C(R17)=CH2;
−NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−O−CO−CH(R17)−CH2−S−CH2−CH(OH)−CH(OH)−CH2−SH;
−NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−SH;
−NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−CO−C(R17)=CH2;
−NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−C(=NH)−(CH2)3−SH;
−NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−CO−(CH2)r−SH;
−NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−CO−CH(R17)−CH2−S−CH2−CH(OH)−CH(OH)−CH2−SH;
−NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−CO−CH(NH2)−CH2−SH;
−NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−CO−CH(NH2)−(CH2)2−SH;
−NH−CH(CO2H)−(CH2)−SH;
−NH−CH(CO2H)−(CH2)2−SH;及び
−NH−CH(CO2H)−(CH2)2−CONH−CH(CONH−CH2−CO2H)−CH2−SH
(ここで、R17は、水素原子又はC1−6アルキル基であり、p1は2以上10以下の整数、qは1以上200以下の整数、rは1以上3以下の整数を、それぞれ表す)からなる群より選択される]
に変換することで、分子内或いは他分子を含めた分子間で架橋させてゲル化することもできる。
−NH−(CH2)p1−O−CO−C(R17)=CH2;
−NH−(CH2)p1−O−CO−CH(R17)−CH2−S−CH2−CH(OH)−CH(OH)−CH2−SH;
−NH−(CH2)p1−SH;
−NH−(CH2)p1−NH−CO−C(R17)=CH2;
−NH−(CH2)p1−NH−C(=NH)−(CH2)3−SH;
−NH−(CH2)p1−NH−CO−(CH2)r−SH;
−NH−(CH2)p1−NH−CO−CH(R17)−CH2−S−CH2−CH(OH)−CH(OH)−CH2−SH;
−NH−(CH2)p1−NH−CO−CH(NH2)−CH2−SH;
−NH−(CH2)p1−NH−CO−CH(NH2)−(CH2)2−SH;
−NH−NH−CO−(CH2)4−CO−NH−NH−C(=NH)−(CH2)3−SH;
−NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−O−CO−C(R17)=CH2;
−NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−O−CO−CH(R17)−CH2−S−CH2−CH(OH)−CH(OH)−CH2−SH;
−NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−SH;
−NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−CO−C(R17)=CH2;
−NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−C(=NH)−(CH2)3−SH;
−NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−CO−(CH2)r−SH;
−NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−CO−CH(R17)−CH2−S−CH2−CH(OH)−CH(OH)−CH2−SH;
−NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−CO−CH(NH2)−CH2−SH;
−NH−(CH2−CH2−O)q−CH2−CH2−NH−CO−CH(NH2)−(CH2)2−SH;
−NH−CH(CO2H)−(CH2)−SH;
−NH−CH(CO2H)−(CH2)2−SH;及び
−NH−CH(CO2H)−(CH2)2−CONH−CH(CONH−CH2−CO2H)−CH2−SH
(ここで、R17は、水素原子又はC1−6アルキル基であり、p1は2以上10以下の整数、qは1以上200以下の整数、rは1以上3以下の整数を、それぞれ表す)からなる群より選択される]
に変換することで、分子内或いは他分子を含めた分子間で架橋させてゲル化することもできる。
(A)ヒアルロン酸誘導体を、化学架橋によりゲル化させる工程は、適宜その条件を選択してもよい。架橋の条件とは、架橋方法、ポリマー濃度、架橋剤濃度、溶媒、溶媒pH、塩濃度、温度、時間等がある。
(A)ヒアルロン酸誘導体をゲル化させる工程において、架橋形成の反応条件の中で、例えば化学架橋時のポリマー濃度及び架橋形成が可能な基の導入率を高くすることで、生成するゲルの架橋密度を高くすることが可能である。
(A)ヒアルロン酸誘導体をゲル化させる工程における架橋剤濃度は、両端に架橋形成が可能な基を有するものを使用する場合、当該基が過不足なく速やかに架橋反応に関与できるような濃度で添加することが好ましい。例えば、メタクリロイル基(MA基)を導入したポリマーを、DTTを用いてマイケル付加反応により架橋する場合は、MA基:SH基=3:1〜1:3が好ましく、2:1〜1:2が特に好ましい。
(A)ヒアルロン酸誘導体をゲル化させる工程における溶媒は、ポリマー及び架橋剤を充分に溶解することができるものが好ましく、特に限定されないが、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)及びこれらから選択される混合溶媒を用いることが好ましい。また、これらの溶媒に混和する有機溶媒を混合して使用することも可能である。特に限定されないが、混和する有機溶媒としては例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、多価アルコール、アセトン、アセトニトリル等が挙げられる。多価アルコールとしては、上記「(B)アルコール」において例示されたものと同様のものが挙げられ、中でも、エチレングリコールが好ましい。
(A)ヒアルロン酸誘導体は、水溶液中においてナノ微粒子を形成するため、希薄な条件化において架橋することにより、ナノサイズの微粒子ゲルを形成することができ、血中徐放キャリア、ターゲティングキャリアとして用いることができる。希薄な条件とは10mg/mL以下であり、好ましくは5mg/mL以下、さらに好ましくは1mg/mL以下である。一方、高濃度な条件下において架橋することにより、微粒子同士が架橋した、バルク状のゲルを形成することができる。これは皮下徐放型のキャリアとして有用である。高濃度な条件とは5mg/mL以上であり、好ましくは20mg/mL以上、さらに好ましくは40mg/mLである。
(A)ヒアルロン酸誘導体をゲル化させる工程は、バルクで行ってもよく、エマルション中や噴霧液滴中等の不連続相中で行ってもよい。例えば、W/Oエマルション中で行う場合は、ポリマーや架橋剤等を溶解させた水相を、水に混和しない溶媒中に乳化し、ゲル化反応を行えばよい。水に混和しない溶媒とは、特に限定されないが、例えばヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、流動パラフィン、大豆油等が挙げられる。乳化を安定化するための界面活性剤を添加してもよい。また、例えば、超臨界二酸化炭素中やPEG中等の脱溶媒が可能な溶媒中で行ってもよい。この場合は、ポリマーや架橋剤等を溶解させた水相や有機溶媒相を、前例の溶媒中に乳化、分散することで、脱溶媒(溶媒拡散)に伴うポリマーの濃縮が成されることから、より高い架橋密度のゲルを得ることが可能になる。
(A)ヒアルロン酸誘導体をゲル化させる工程、及びその後に、架橋反応を停止する操作及び残存した架橋性官能基を失活若しくは洗浄する操作を行ってもよい。反応に関与しなかった架橋性官能基、架橋剤の片端のみが結合した基、残存した架橋剤等は、安全性の観点、保存中安定性の観点、封入される薬物との副反応等の観点から除去した方が好ましい。特に限定されないが、例えば、未反応の架橋剤が残存している場合は、過剰の水等で洗浄することで除去してもよい。また、例えばポリマーに置換したメタクリロイル基が残存する場合は、過剰のメルカプトエタノール等を添加し、メタクリロイル基を失活させた後、過剰の水等で余剰のメルカプトエタノールを洗浄することで除去してもよい。さらには、例えばメルカプト基が残存する場合は、過剰の3−マレイミドプロピオン酸、ヨード酢酸等を添加し、メルカプト基を失活させた後、過剰の水等で余剰の3−マレイミドプロピオン酸、ヨード酢酸を洗浄することで除去してもよい。
(A)ヒアルロン酸誘導体をゲル化させる工程の後に、粉砕工程を行ってもよい。粉砕方法としては、乳棒と乳鉢を用いる粉砕やミルを用いる粉砕が挙げられるが、ミルを用いる粉砕が好ましい。ミル粉砕装置としては、遠心式粉砕機(日本精機製作所)及びインパクトミル(株式会社ダルトン)等の回転円板型の粉砕装置、アトマイザー(東京アトマイザー製造株式会社)、サンプルミル(東京アトマイザー製造株式会社)、バンタムミル(東京アトマイザー製造株式会社)、及びSKミル(トッケン)等のスクリーンミルの粉砕装置、超微少量ラボジェットミル(A−Oジェットミル、セイシン企業)等のジェット粉砕装置、並びに、超低温での粉砕が可能なリンレックスミル(リキッドガス株式会社)等が挙げられるが、SKミル及びリンレックスミルが好ましい。
(A)ヒアルロン酸誘導体をゲル化させる工程の後に、乾燥工程を行ってもよい。乾燥方法としては、例えば通風乾燥、恒温槽中での乾燥、減圧乾燥、熱風循環式乾燥等が挙げられる。風速、乾燥時間、温度、圧力等は(A)ヒアルロン酸誘導体のゲルが分解や変質を生じない範囲で適宜選択される。
上記(A)ヒアルロン酸誘導体の製造において、製造時に使用した溶媒由来の(B)有機溶媒が残存している場合には、(B)有機溶媒を添加せずにヒアルロン酸誘導体組成物を得ることができる。或いは、(B)有機溶媒の含有量が所望の量となるように、上記(A)ヒアルロン酸誘導体の製造後に、(B)有機溶媒を添加することで、ヒアルロン酸誘導体組成物を得ることができる。(B)有機溶媒を添加する場合には、上記乾燥工程の前に添加することが好ましい。
≪医薬組成物≫
本実施形態の医薬組成物は、上記ヒアルロン酸誘導体組成物を担体として含む。本実施形態の医薬組成物において、担体と薬物は、直接的又は間接的に結合して、複合体を形成しており、互いに遊離していない状態であることが望ましい。当該医薬組成物を生体内に投与した際には、担体から薬物が徐々に遊離し、良好な徐放性を期待できる。担体と薬物との間の結合は、共有結合、非共有結合を問わないが、薬物の活性を維持する観点では非共有結合が好ましい。
本実施形態の医薬組成物は、上記ヒアルロン酸誘導体組成物を担体として含む。本実施形態の医薬組成物において、担体と薬物は、直接的又は間接的に結合して、複合体を形成しており、互いに遊離していない状態であることが望ましい。当該医薬組成物を生体内に投与した際には、担体から薬物が徐々に遊離し、良好な徐放性を期待できる。担体と薬物との間の結合は、共有結合、非共有結合を問わないが、薬物の活性を維持する観点では非共有結合が好ましい。
本実施形態の医薬組成物において、薬物は、担体であるヒアルロン酸誘導体組成物中の(A)ヒアルロン酸誘導体と複合体を形成していることが好ましい。溶媒中において、(A)ヒアルロン酸誘導体のステリル基と、系中に存在する薬物との疎水性相互作用により、自発的に会合することで、薬物と(A)ヒアルロン酸誘導体との複合体が形成されると考えられる。当該複合体を形成することにより、当該薬物の保存安定性向上や生物活性の維持、徐放性の向上、当該薬物が難水溶性である場合には、薬物の水への可溶化、熱や光等の刺激に対する耐性の向上、凝集と沈殿の抑制等が期待される。
<薬物>
本実施形態の医薬組成物に含まれる薬物は、ヒト、動物用の医薬品として使用できる薬物であれば、特に限定されない。例えば、タンパク質、ペプチド、多糖類、核酸、低分子化合物等が挙げられる。本実施形態の医薬組成物は、薬理活性を有するタンパク質、ペプチド、核酸等のバイオ医薬品又は低分子化合物が、ヒアルロン酸誘導体組成物中の(A)ヒアルロン酸誘導体と、複合体を形成して含まれることが好ましい。
本実施形態の医薬組成物に含まれる薬物は、ヒト、動物用の医薬品として使用できる薬物であれば、特に限定されない。例えば、タンパク質、ペプチド、多糖類、核酸、低分子化合物等が挙げられる。本実施形態の医薬組成物は、薬理活性を有するタンパク質、ペプチド、核酸等のバイオ医薬品又は低分子化合物が、ヒアルロン酸誘導体組成物中の(A)ヒアルロン酸誘導体と、複合体を形成して含まれることが好ましい。
[低分子化合物]
低分子化合物としては、例えば、制癌剤(例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アルカロイド等)、免疫抑制剤、抗炎症剤(ステロイド剤、非ステロイド剤系抗炎症剤等)、抗リウマチ剤、抗菌剤(β−ラクタム系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質、マクロライド系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質、新キノロン系抗生物質、サルファ剤等)等が挙げられる。
低分子化合物としては、例えば、制癌剤(例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アルカロイド等)、免疫抑制剤、抗炎症剤(ステロイド剤、非ステロイド剤系抗炎症剤等)、抗リウマチ剤、抗菌剤(β−ラクタム系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質、マクロライド系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質、新キノロン系抗生物質、サルファ剤等)等が挙げられる。
[タンパク質及びペプチド]
タンパク質及びペプチドとしては、例えば、エリスロポエチン(EPO)、グラニュロサイトコロニー刺激因子(G−CSF)、インターフェロン−α、β、γ、(INF−α、β、γ)、トロンボポエチン(TPO)、シリアリーニュートロフィクファクター(CNTF)、チューマーネクローシスファクター(TNF)、チューマーネクローシスファクター結合タンパク質(TNFbp)、インターロイキン−10(IL−10)、FMS類似チロシンカイネース(Flt−3)、成長ホルモン(GH)、インシュリン、インシュリン類似成長因子−1(IGF−1)、血小板由来成長因子(PDGF)、インターロイキン−1レセプターアンタゴニスト(IL−1ra)、ブレイン由来ニューロトロフィクファクター(BDNF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、幹細胞因子(SCF)、メガカリオサイト成長分化因子(MGDF)、オステオプロテゲリン(OPG)、レプチン、副甲状腺ホルモン(PTH)、塩基性フィブロブラスト成長因子(b−FGF)、骨形成タンパク質(BMP)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、ワクチン用の抗原、抗体、ダイアボディー、ミニボディー、断片化抗体等が挙げられる。
タンパク質及びペプチドとしては、例えば、エリスロポエチン(EPO)、グラニュロサイトコロニー刺激因子(G−CSF)、インターフェロン−α、β、γ、(INF−α、β、γ)、トロンボポエチン(TPO)、シリアリーニュートロフィクファクター(CNTF)、チューマーネクローシスファクター(TNF)、チューマーネクローシスファクター結合タンパク質(TNFbp)、インターロイキン−10(IL−10)、FMS類似チロシンカイネース(Flt−3)、成長ホルモン(GH)、インシュリン、インシュリン類似成長因子−1(IGF−1)、血小板由来成長因子(PDGF)、インターロイキン−1レセプターアンタゴニスト(IL−1ra)、ブレイン由来ニューロトロフィクファクター(BDNF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、幹細胞因子(SCF)、メガカリオサイト成長分化因子(MGDF)、オステオプロテゲリン(OPG)、レプチン、副甲状腺ホルモン(PTH)、塩基性フィブロブラスト成長因子(b−FGF)、骨形成タンパク質(BMP)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、ワクチン用の抗原、抗体、ダイアボディー、ミニボディー、断片化抗体等が挙げられる。
[核酸]
核酸としては、例えば、DNA、RNA、アンチセンス核酸、デコイ核酸、リボザイム、低分子干渉RNA、核酸アプタマー等が挙げられる。
核酸としては、例えば、DNA、RNA、アンチセンス核酸、デコイ核酸、リボザイム、低分子干渉RNA、核酸アプタマー等が挙げられる。
<形態>
本実施形態の医薬組成物は、分散性微粒子溶液であってもよく、沈殿性懸濁液であってもよく、凍結乾燥体であってもよい。また、凍結乾燥体の場合は、医師が投与前に生理食塩水等の等張液を加えて投与液を用事調製するタイプの徐放製剤となりうる。この場合、溶液状態では不安定な活性成分を含む医薬組成物に適していると考えられる。
本実施形態の医薬組成物は、分散性微粒子溶液であってもよく、沈殿性懸濁液であってもよく、凍結乾燥体であってもよい。また、凍結乾燥体の場合は、医師が投与前に生理食塩水等の等張液を加えて投与液を用事調製するタイプの徐放製剤となりうる。この場合、溶液状態では不安定な活性成分を含む医薬組成物に適していると考えられる。
本実施形態の医薬組成物が分散性微粒子溶液又は沈殿性懸濁液である場合、医薬組成物中の(A)ヒアルロン酸誘導体の濃度は、0.01mg/mL以上500mg/mL以下が好ましく、0.1mg/mL以上200mg/mL以下がより好ましく、0.2mg/mL以上100mg/mL以下がさらに好ましく、0.5mg/mL以上50mg/mL以下が特に好ましい。医薬組成物中の(A)ヒアルロン酸誘導体の濃度が上位下限値以上であることで、薬物の保存安定性向上や生物活性の維持徐放性の向上、当該薬物が難水溶性である場合には、薬物の水への可溶化等をより優れたものとすることができ、薬物の投与量もより多くできる傾向にある。一方、医薬組成物中の(A)ヒアルロン酸誘導体の濃度が上記上限値以下であることで、注射針を用いて生体内に投与する際のインジェクタビリティがより向上するとともに、滅菌ろ過性がより向上する傾向にある。
≪ヒアルロン酸誘導体−薬物結合体組成物≫
本実施形態のヒアルロン酸誘導体−薬物結合体組成物は、上記ヒアルロン酸誘導体組成物に含まれる(A)ヒアルロン酸誘導体に、1以上の薬物が結合している。
本実施形態のヒアルロン酸誘導体−薬物結合体組成物は、上記ヒアルロン酸誘導体組成物に含まれる(A)ヒアルロン酸誘導体に、1以上の薬物が結合している。
本実施形態のヒアルロン酸誘導体−薬物結合体組成物を形成させるのに適した薬物は、タンパク質、ペプチド、核酸等のバイオ医薬品又は低分子化合物である。
本実施形態の医薬組成物及びヒアルロン酸誘導体−薬物結合体組成物は、既に述べた形態に限定されることはなく、ナノ微粒子、ミクロ微粒子、溶液、エマルジョン、懸濁液、ゲル、ミセル、インプラント、粉末、又はフィルムの形態にあってもよい。粉末は、凍結乾燥又は噴霧乾燥により得た固体を粉砕して製造してもよく、沈殿物を乾燥したものから製造してもよい。
本実施形態の医薬組成物及びヒアルロン酸誘導体−薬物結合体組成物は、経口、腸管外、鼻腔内、膣内、眼内、皮下、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、脳内又は口腔内の経路を経て投与されてよい。また、本実施形態の医薬組成物及びヒアルロン酸誘導体−薬物結合体組成物は、注射剤に限定されることはなく、貼付製剤やマイクロニードル製剤、塗り薬、点眼薬、噴霧薬、吸入薬等であってもよい。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を実施例に制限することを意図したものではない。
実施例及び比較例で製造したヒアルロン酸誘導体組成物の各物性の測定方法及び評価方法は以下のとおりである。
[物性1]
(ヒアルロン酸誘導体の分子量)
ヒアルロン酸誘導体の分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー多角度光散乱検出器(SEC−MALS)により決定された重量平均分子量である。ヒアルロン酸誘導体組成物(20mg)を超純水(10mL)に溶解して室温で12時間以上撹拌し、ヒアルロン酸誘導体組成物水溶液(2mg/mL)を得た。このヒアルロン酸誘導体組成物水溶液(750μL)に対して300mM ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD)水溶液(750μL)加えて振とう機を用いて10秒間混合し、37℃にて1時間インキュベートした。そして、得られた試料をSEC−MALS測定に供して重量平均分子量を決定した。SEC−MALS測定の条件を以下に示す。
(ヒアルロン酸誘導体の分子量)
ヒアルロン酸誘導体の分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー多角度光散乱検出器(SEC−MALS)により決定された重量平均分子量である。ヒアルロン酸誘導体組成物(20mg)を超純水(10mL)に溶解して室温で12時間以上撹拌し、ヒアルロン酸誘導体組成物水溶液(2mg/mL)を得た。このヒアルロン酸誘導体組成物水溶液(750μL)に対して300mM ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD)水溶液(750μL)加えて振とう機を用いて10秒間混合し、37℃にて1時間インキュベートした。そして、得られた試料をSEC−MALS測定に供して重量平均分子量を決定した。SEC−MALS測定の条件を以下に示す。
(測定条件)
カラム:TSKgel GMPWXL(東ソー株式会社製)2本
カラム温度:30℃
溶離液:10mM HP−β−CD入りリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)
流速:1mL/分
注入量:200μL
カラム:TSKgel GMPWXL(東ソー株式会社製)2本
カラム温度:30℃
溶離液:10mM HP−β−CD入りリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)
流速:1mL/分
注入量:200μL
[物性2]
(ステリル基導入率)
ヒアルロン酸誘導体のステリル基導入率は、1H−NMR測定により決定した。まず、ジメチルスルホキシド−d6(99.9v/v%、0.05v/v%のトリメチルシリル(TMS)含有、富士フィルム和光製)と20%重塩酸(99.5v/v%、富士フィルム和光製)とを質量比99:1にて混合し、測定溶媒を調製した。続いて、この測定溶媒(0.6mL)にヒアルロン酸誘導体組成物(2mg)を添加し、超音波バスにて30分間処理して完全に溶解させて1H−NMR測定に供した。1H−NMR測定は、フーリエ変換核磁気共鳴装置(FT−NMR装置)(ECS400、日本電子製)を用いてサンプル温度85℃にて実施した。ステリル基導入率は、N−アセチル−D−グルコサミンのアセチル基由来のピーク(COCH3、1.6ppm以上2.0ppm以下、3H)の積分値と、コレステリル基中のメチル基由来のピーク(CH3、0.7ppm、3H)の積分値より、以下に示す式を用いてヒアルロン酸ユニットに対するコレステリル基の導入率を算出した。なお、N−アセチル−D−グルコサミンのアセチル基由来のピークが含まれる1.6ppm以上2.0ppm以下付近のピークにはコレステリル基由来のピーク(5H)が重なっているため、1.6ppm以上2.0ppm以下付近のピークの積分値からコレステリル基メチル由来のピーク(0.7ppm)の積分値を5/3倍したものを差し引いて算出した値(即ち、積分値(1.6ppm以上2.0ppm以下)−積分値(0.7ppm)×5/3)をN−アセチル−D−グルコサミンのアセチル基由来のピークの積分値として、ステリル基導入率の計算に使用した。
(ステリル基導入率)
ヒアルロン酸誘導体のステリル基導入率は、1H−NMR測定により決定した。まず、ジメチルスルホキシド−d6(99.9v/v%、0.05v/v%のトリメチルシリル(TMS)含有、富士フィルム和光製)と20%重塩酸(99.5v/v%、富士フィルム和光製)とを質量比99:1にて混合し、測定溶媒を調製した。続いて、この測定溶媒(0.6mL)にヒアルロン酸誘導体組成物(2mg)を添加し、超音波バスにて30分間処理して完全に溶解させて1H−NMR測定に供した。1H−NMR測定は、フーリエ変換核磁気共鳴装置(FT−NMR装置)(ECS400、日本電子製)を用いてサンプル温度85℃にて実施した。ステリル基導入率は、N−アセチル−D−グルコサミンのアセチル基由来のピーク(COCH3、1.6ppm以上2.0ppm以下、3H)の積分値と、コレステリル基中のメチル基由来のピーク(CH3、0.7ppm、3H)の積分値より、以下に示す式を用いてヒアルロン酸ユニットに対するコレステリル基の導入率を算出した。なお、N−アセチル−D−グルコサミンのアセチル基由来のピークが含まれる1.6ppm以上2.0ppm以下付近のピークにはコレステリル基由来のピーク(5H)が重なっているため、1.6ppm以上2.0ppm以下付近のピークの積分値からコレステリル基メチル由来のピーク(0.7ppm)の積分値を5/3倍したものを差し引いて算出した値(即ち、積分値(1.6ppm以上2.0ppm以下)−積分値(0.7ppm)×5/3)をN−アセチル−D−グルコサミンのアセチル基由来のピークの積分値として、ステリル基導入率の計算に使用した。
[ステリル基導入率(%)]
=[(コレステリル基中のメチル基由来のピーク積分値)/(N−アセチル−D−グルコサミンのアセチル基由来のピーク積分値)]×100
=[積分値(0.7ppm)/{積分値(1.6ppm以上2.0ppm以下)−積分値(0.7ppm)×5/3}]×100
=[(コレステリル基中のメチル基由来のピーク積分値)/(N−アセチル−D−グルコサミンのアセチル基由来のピーク積分値)]×100
=[積分値(0.7ppm)/{積分値(1.6ppm以上2.0ppm以下)−積分値(0.7ppm)×5/3}]×100
[物性3]
(有機溶媒の含有量)
ヒアルロン酸誘導体組成物中の有機溶媒の含有量は、GC/MSにより測定した。ヒアルロン酸誘導体組成物(80mg)を超純水(10mL)に溶解して室温で12時間以上撹拌し、ヒアルロン酸誘導体組成物水溶液(8mg/mL)を得た。このヒアルロン酸誘導体組成物水溶液をGC/MS測定に供して、有機溶媒の含有量を決定した。GC/MS測定の条件を以下に示す。
(有機溶媒の含有量)
ヒアルロン酸誘導体組成物中の有機溶媒の含有量は、GC/MSにより測定した。ヒアルロン酸誘導体組成物(80mg)を超純水(10mL)に溶解して室温で12時間以上撹拌し、ヒアルロン酸誘導体組成物水溶液(8mg/mL)を得た。このヒアルロン酸誘導体組成物水溶液をGC/MS測定に供して、有機溶媒の含有量を決定した。GC/MS測定の条件を以下に示す。
(測定条件)
GC装置:Agilent Technologies製, 7890B
カラム:DB−WAX(30m×0.25mmφ、膜厚0.25μm、Agilent Technologies製)
カラム温度:40℃(5min)、10℃/min昇温、250℃(9min)
流速:1mL/min
注入口温度:250℃
スプリット比:1/50
注入量:1μL
MS装置:Agilent Technologies製, 5977B
イオン化:EI、70eV
イオン源温度:230℃
GC装置:Agilent Technologies製, 7890B
カラム:DB−WAX(30m×0.25mmφ、膜厚0.25μm、Agilent Technologies製)
カラム温度:40℃(5min)、10℃/min昇温、250℃(9min)
流速:1mL/min
注入口温度:250℃
スプリット比:1/50
注入量:1μL
MS装置:Agilent Technologies製, 5977B
イオン化:EI、70eV
イオン源温度:230℃
[評価1]
(粒径)
ヒアルロン酸誘導体組成物の粒径は、以下に示す手順により決定した。まず、1/15mol/L PB(りん酸緩衝材粉末、富士フィルム和光製)1包を3.33Lの超純水に溶解し、0.22μmフィルターでろ過を行い、20mM PB水溶液を調整した。次に、ヒアルロン酸誘導体組成物(10mg)に超純水(5mL)を加え、12時間以上撹拌して溶解させてヒアルロン酸誘導体組成物水溶液を得た。この水溶液(1mL)を20mM PB水溶液(1mL)で希釈し、ヒアルロン酸誘導体組成物PB水溶液を得た。そして、得られたヒアルロン酸誘導体組成物PB水溶液を動的光散乱(DLS)測定に供し、ヒアルロン酸誘導体組成物の粒径を決定した。DLSの測定条件を以下に示す。なお、粒径は、散乱光強度基準による調和平均粒子径(直径)であり、単位はナノメートル(nm)であり、同一試料を2回測定した平均値である。
(粒径)
ヒアルロン酸誘導体組成物の粒径は、以下に示す手順により決定した。まず、1/15mol/L PB(りん酸緩衝材粉末、富士フィルム和光製)1包を3.33Lの超純水に溶解し、0.22μmフィルターでろ過を行い、20mM PB水溶液を調整した。次に、ヒアルロン酸誘導体組成物(10mg)に超純水(5mL)を加え、12時間以上撹拌して溶解させてヒアルロン酸誘導体組成物水溶液を得た。この水溶液(1mL)を20mM PB水溶液(1mL)で希釈し、ヒアルロン酸誘導体組成物PB水溶液を得た。そして、得られたヒアルロン酸誘導体組成物PB水溶液を動的光散乱(DLS)測定に供し、ヒアルロン酸誘導体組成物の粒径を決定した。DLSの測定条件を以下に示す。なお、粒径は、散乱光強度基準による調和平均粒子径(直径)であり、単位はナノメートル(nm)であり、同一試料を2回測定した平均値である。
(測定条件)
DLS装置:大塚電子製、ELSZ2000
セル:微量粒径セル
温度:37℃
ヒアルロン酸誘導体組成物の濃度:2mg/mL
溶液:10mmol/Lのリン酸緩衝液(pH7.4)
DLS装置:大塚電子製、ELSZ2000
セル:微量粒径セル
温度:37℃
ヒアルロン酸誘導体組成物の濃度:2mg/mL
溶液:10mmol/Lのリン酸緩衝液(pH7.4)
<ヒアルロン酸誘導体組成物の製造>
[実施例1]
(ヒアルロン酸誘導体組成物HA−a1の製造)
ヒアルロン酸誘導体組成物を次の工程1〜工程3に従って調製した。
[実施例1]
(ヒアルロン酸誘導体組成物HA−a1の製造)
ヒアルロン酸誘導体組成物を次の工程1〜工程3に従って調製した。
1.工程1
(コレステリル 6−アミノヘキシルカーバメート塩酸塩の合成)
コレステリル 6−アミノヘキシルカーバメート塩酸塩(Chol塩酸塩)を次に示す工程1−1、続いて工程1−2に従って合成した。
(コレステリル 6−アミノヘキシルカーバメート塩酸塩の合成)
コレステリル 6−アミノヘキシルカーバメート塩酸塩(Chol塩酸塩)を次に示す工程1−1、続いて工程1−2に従って合成した。
(1)工程1−1
コレステリルクロロホルメート(3.37g、7.5mmol)の無水ジクロロメタン(20mL)の溶液に、アルゴン雰囲気下、トリエチルアミン(TEA、1.05mL)を加えて撹拌した。氷冷下で、6−(t−ブトキシカルボニル)アミノ−1−アミノヘキサン(1.12mL、5mmol)を滴下して加え、そのまま氷冷下で30分間攪拌後、室温まで昇温し、当該混合物を一晩撹拌した。反応混合物を、超純水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:n−ヘキサン=1:4)で精製し、目的物のフラクションを合わせて溶媒を減圧下留去した。
コレステリルクロロホルメート(3.37g、7.5mmol)の無水ジクロロメタン(20mL)の溶液に、アルゴン雰囲気下、トリエチルアミン(TEA、1.05mL)を加えて撹拌した。氷冷下で、6−(t−ブトキシカルボニル)アミノ−1−アミノヘキサン(1.12mL、5mmol)を滴下して加え、そのまま氷冷下で30分間攪拌後、室温まで昇温し、当該混合物を一晩撹拌した。反応混合物を、超純水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:n−ヘキサン=1:4)で精製し、目的物のフラクションを合わせて溶媒を減圧下留去した。
(2)工程1−2
得られた残渣を酢酸エチル(40mL)に溶解し、4N塩酸/酢酸エチル溶液(40mL)を加えて室温で一晩撹拌した。生じた沈殿物を遠心分離により回収した。得られた固体を酢酸エチルにて4回洗浄後、減圧下で乾燥し、コレステリル 6−アミノヘキシルカーバメート塩酸塩(Chol塩酸塩)1.2gを得た。生成物の1H−NMRスペクトル(ECS400 日本電子製、EtOH−d6)を図1に示す。
得られた残渣を酢酸エチル(40mL)に溶解し、4N塩酸/酢酸エチル溶液(40mL)を加えて室温で一晩撹拌した。生じた沈殿物を遠心分離により回収した。得られた固体を酢酸エチルにて4回洗浄後、減圧下で乾燥し、コレステリル 6−アミノヘキシルカーバメート塩酸塩(Chol塩酸塩)1.2gを得た。生成物の1H−NMRスペクトル(ECS400 日本電子製、EtOH−d6)を図1に示す。
2.工程2
(ヒアルロン酸のテトラブチルアンモニウム(TBA)塩の調製)
ヒアルロン酸のTBA塩(HA−TBA)を次に示す工程2−1、続いて工程2−2に従って調製した。
(ヒアルロン酸のテトラブチルアンモニウム(TBA)塩の調製)
ヒアルロン酸のTBA塩(HA−TBA)を次に示す工程2−1、続いて工程2−2に従って調製した。
(1)工程2−1
DOWEX(登録商標)50WX−8−400(アルドリッチ社製)を超純水に懸濁させ、デカンテーションにより樹脂を超純水で3回程度洗浄した。40wt%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TBA−OH)(アルドリッチ社製)を樹脂のカチオン交換能に対し約1.5倍モル等量加え、30分間撹拌した。余剰のTBA−OH溶液をデカンテーションにより除去した後、さらに過剰の超純水で洗浄することで、TBA塩化したカチオン交換樹脂を得た。
DOWEX(登録商標)50WX−8−400(アルドリッチ社製)を超純水に懸濁させ、デカンテーションにより樹脂を超純水で3回程度洗浄した。40wt%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TBA−OH)(アルドリッチ社製)を樹脂のカチオン交換能に対し約1.5倍モル等量加え、30分間撹拌した。余剰のTBA−OH溶液をデカンテーションにより除去した後、さらに過剰の超純水で洗浄することで、TBA塩化したカチオン交換樹脂を得た。
(2)工程2−2
分子量10,000(10k)の原料ヒアルロン酸ナトリウム塩(HA−Na)を15mg/mLの濃度で超純水に溶解した。「(1)工程2−1」でTBA塩化したカチオン交換樹脂の懸濁液をHAユニット(ユニット分子量401.3)のモル数に対し樹脂のイオン交換能換算で5倍モル等量添加した。15分間撹拌した後、0.45μmのフィルターを用いて濾過を行い、濾液を凍結乾燥し、ヒアルロン酸のTBA塩(HA−TBA)を白色固体として得た。生成物の1H−NMRスペクトル(ECS400 日本電子製、EtOH−d6)を図2に示す。
分子量10,000(10k)の原料ヒアルロン酸ナトリウム塩(HA−Na)を15mg/mLの濃度で超純水に溶解した。「(1)工程2−1」でTBA塩化したカチオン交換樹脂の懸濁液をHAユニット(ユニット分子量401.3)のモル数に対し樹脂のイオン交換能換算で5倍モル等量添加した。15分間撹拌した後、0.45μmのフィルターを用いて濾過を行い、濾液を凍結乾燥し、ヒアルロン酸のTBA塩(HA−TBA)を白色固体として得た。生成物の1H−NMRスペクトル(ECS400 日本電子製、EtOH−d6)を図2に示す。
3.工程3
「2.(2)工程2−2」で調製したHA−TBAの無水DMSO溶液(10mg/mL)を調製した。その後、「1.工程1」で合成したHA−TBA中に存在する二糖繰り返し単位(HAユニット)に対するChol塩酸塩の添加量がモル比で41/100となるように添加した。次に、HAユニットに対する4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)の添加量がモル比で49.2/100となるように加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液は、0.3M 酢酸アンモニア/DMSO溶液、0.15M NaCl水溶液、超純水の順で透析(スペクトラポア7、分画分子量(MWCO):2,000)した。得られた透析液に対し、エチレングリコール(EG)を、組成物中の含有量が0.006質量ppmとなるように加え、その後凍結乾燥して目的物(HA−C6−Chol)を白色固体として得た。生成物の1H−NMRスペクトルを図3に示す。N−アセチル−D−グルコサミンのアセチル基由来のピーク(COCH3、1.6ppm以上2.0ppm以下、3H)、コレステリル基中のメチル基由来のピーク(CH3、0.7ppm、3H)が確認された。
「2.(2)工程2−2」で調製したHA−TBAの無水DMSO溶液(10mg/mL)を調製した。その後、「1.工程1」で合成したHA−TBA中に存在する二糖繰り返し単位(HAユニット)に対するChol塩酸塩の添加量がモル比で41/100となるように添加した。次に、HAユニットに対する4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)の添加量がモル比で49.2/100となるように加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液は、0.3M 酢酸アンモニア/DMSO溶液、0.15M NaCl水溶液、超純水の順で透析(スペクトラポア7、分画分子量(MWCO):2,000)した。得られた透析液に対し、エチレングリコール(EG)を、組成物中の含有量が0.006質量ppmとなるように加え、その後凍結乾燥して目的物(HA−C6−Chol)を白色固体として得た。生成物の1H−NMRスペクトルを図3に示す。N−アセチル−D−グルコサミンのアセチル基由来のピーク(COCH3、1.6ppm以上2.0ppm以下、3H)、コレステリル基中のメチル基由来のピーク(CH3、0.7ppm、3H)が確認された。
[実施例2〜14及び比較例1〜2]
(ヒアルロン酸誘導体組成物HA−a2〜HA−a14及びHA−b1の製造)
「3.工程3」において、HAユニットに対するChol塩酸塩の添加量、及び、HAユニットに対するDMT−MMの添加量がモル比で表1及び表2に示す比率となるようにし、有機溶媒の種類及び添加量が表1及び表2に示すようにした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、各ヒアルロン酸誘導体組成物を得た。得られたヒアルロン酸誘導体組成物の1H−NMR測定を行い、各ヒアルロン酸誘導体組成物に含まれるヒアルロン酸誘導体においていずれも、N−アセチル−D−グルコサミンのアセチル基由来のピーク(COCH3、1.6ppm以上2.0ppm以下、3H)、コレステリル基中のメチル基由来のピーク(CH3、0.7ppm、3H)が確認された。
(ヒアルロン酸誘導体組成物HA−a2〜HA−a14及びHA−b1の製造)
「3.工程3」において、HAユニットに対するChol塩酸塩の添加量、及び、HAユニットに対するDMT−MMの添加量がモル比で表1及び表2に示す比率となるようにし、有機溶媒の種類及び添加量が表1及び表2に示すようにした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、各ヒアルロン酸誘導体組成物を得た。得られたヒアルロン酸誘導体組成物の1H−NMR測定を行い、各ヒアルロン酸誘導体組成物に含まれるヒアルロン酸誘導体においていずれも、N−アセチル−D−グルコサミンのアセチル基由来のピーク(COCH3、1.6ppm以上2.0ppm以下、3H)、コレステリル基中のメチル基由来のピーク(CH3、0.7ppm、3H)が確認された。
なお、表1及び表2において、(B)有機溶媒の種類及び略称は以下のとおりである。
(有機溶媒の種類及び略称)
イソプロパノール:IPA
エタノール:EtOH
ジメチルスルホキシド:DMSO
テトラヒドロフラン:THF
イソプロパノール:IPA
エタノール:EtOH
ジメチルスルホキシド:DMSO
テトラヒドロフラン:THF
実施例及び比較例で得られたヒアルロン酸誘導体組成物について、上述の方法を用いて、各物性を測定し、各種評価を行なった。結果を表1及び表2に示す。
表1及び表2から、有機溶媒を含有するヒアルロン酸誘導体組成物HA−a1〜HA−a14(実施例1〜14)では、粒径が50.1nm以上484.4nm以下と良好であった。一方、有機溶媒を含まないヒアルロン酸誘導体組成物HA−b1(比較例1)では、粒径が764.9nmと不良であった。
また、有機溶媒の含有量が異なるヒアルロン酸誘導体組成物HA−a1〜HA−a4(実施例1〜4)及びHA−a8〜HA−a11(実施例8〜11)において、有機溶媒の含有量が少なくなるほど、粒径が小さくなる傾向がみられた。
本実施形態のヒアルロン酸誘導体組成物によれば、従来よりも凝集が抑制されたヒアルロン酸誘導体組成物を提供することができる。
Claims (10)
- (A)ステリル基を導入したヒアルロン酸誘導体と、
(B)アルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、及びエステルからなる群より選択される1種以上の有機溶媒と、
を含むヒアルロン酸誘導体組成物であって、
(A)ヒアルロン酸誘導体に対する前記ステリル基の導入率が35%以上60%未満である、ヒアルロン酸誘導体組成物。 - 前記(B)有機溶媒の含有量がヒアルロン酸誘導体組成物の総質量に対して0.001質量ppm以上200000質量ppm未満である、請求項1に記載のヒアルロン酸誘導体組成物。
- 前記(B)有機溶媒が、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、及び酢酸エチルからなる群より選択される1種以上の有機溶媒である、請求項1又は2に記載のヒアルロン酸誘導体組成物。
- 前記(A)ヒアルロン酸誘導体が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のヒアルロン酸誘導体組成物。
Zは、直接結合、又は2個以上30個以下の任意のアミノ酸残基からなるペプチドリンカーを表し;
X1は、以下の式:
−NRb−R、
−NRb−COO−R、
−NRb−CO−R、
−NRb−CO−NRc−R、
−COO−R、
−O−COO−R、
−S−R、
−CO−Ya−S−R、
−O−CO−Yb−S−R、
−NRb−CO−Yb−S−R、及び
−S−S−R、
で表される基からなる群より選択される基であり;
Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立に、水素原子、C1−20アルキル、アミノC2−20アルキル及びヒドロキシC2−20アルキルからなる群より選択され、ここで当該基のアルキル部分は、−O−及び−NRf−からなる群より選択される基が挿入されていてもよく;
Rfは、水素原子、C1−12アルキル、アミノC2−12アルキル及びヒドロキシC2−12アルキルからなる群より選択され、当該基のアルキル部分は−O−及び−NH−からなる群より選択される基が挿入されていてもよく;
Rは、ステリル基であり;
Yは、C2−30アルキレン、又は−(CH2CH2O)m−CH2CH2−であり、ここで、当該アルキレンは、−O−、−NRg−及び−S−S−からなる群より選択される基が挿入されていてもよく;
Rgは、水素原子、C1−20アルキル、アミノC2−20アルキル及びヒドロキシC2−20アルキルからなる群より選択され、当該基のアルキル部分は−O−及び−NH−からなる群より選択される基が挿入されていてもよく;
Yaは、C1−5アルキレンであり;
Ybは、C2−8アルキレン又はC2−8アルケニレンであり;
mは、1以上100以下の整数である。) - 前記Rがコレステリル基である、請求項4に記載のヒアルロン酸誘導体組成物。
- 前記(A)ヒアルロン酸誘導体の分子量が1,000以上1,000,000未満である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒアルロン酸誘導体組成物。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載のヒアルロン酸誘導体組成物を担体として含む、医薬組成物。
- 薬物が(A)ヒアルロン酸誘導体と複合体を形成する、請求項7に記載の医薬組成物。
- 薬物が、薬理活性を有するタンパク質、ペプチド又は核酸である、請求項7又は8に記載の医薬組成物。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載のヒアルロン酸誘導体組成物に含まれる(A)ヒアルロン酸誘導体に、1以上の薬物が結合した、ヒアルロン酸誘導体−薬物結合体組成物。
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