JP2021121804A - 稀な細胞および無細胞分子の質量タグ分析 - Google Patents

稀な細胞および無細胞分子の質量タグ分析 Download PDF

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Abstract

【課題】稀な細胞および無細胞分子に対する質量タグ分析を提供する。【解決手段】少なくとも1つのポア18を有する本質的に非吸収性の膜16、膜と作動可能に会合したマイクロウェル14および電場発生器20を備える。電場発生器によって発生される電場が、マイクロウェル内のサンプルと作動可能に相互作用し、膜における少なくとも1つのポアを通ってサンプルの液滴を排出するように構成され得る。装置10は、異成分で構成されたサンプル由来の標的分析物、例えば、生物学的サンプル由来の稀な標的分析物(例えば、稀な細胞)の検出および必要に応じてその定量のために使用される。【選択図】図3

Description

関連出願
本出願は、2015年9月24日に出願された米国仮特許出願第62/222,940号に対する
利益および優先権を主張し、この内容は全体が参考として本明細書に援用される。
発明の分野
本発明は、概して、稀な細胞および無細胞分子の質量タグ分析に関する。
背景
細胞分析は、例えば、多くの疾患の診断などの医学的応用において重要である。細胞に
結合しているまたは細胞に含まれている稀な分子の検出も、望ましい。細胞分析の医学的
応用には、目的のある特定の細胞の単離が必要であり、それらの細胞は、通常、分析中の
サンプルのほんの一部分でしかない。例えば、循環腫瘍細胞(「CTC」)は、転移性が
んの診断において特に興味深い。従来の方法では、CTCは、まず赤血球(RBC)を溶
解によって除去することによって、全血から単離される。10mLの血液サンプル中、約
800,000,000個の白血球(「WBC」)から数百個のCTCが単離される。ゆ
えに、分離効率および細胞回収率が高い方法が必要である。
しかしながら、既存の技術は、サンプルから稀な分子を検出するには効果がない。例え
ば、稀な分子が見つけ出される数をはるかに上回る数分子コピーを必要とする従来の親和
性アッセイでは、稀な分子を検出できない。従来の核酸アッセイであれば、稀な分子を検
出できる。しかしながら、分析時間として数日間かかり得る1つまたはそれを超える非常
に長い精製工程および増幅に標的核酸を供しなければならない。
多孔性マトリックスを用いて稀な細胞を分離するための細胞濾過は、細胞をサイズによ
って選別するために用いられる有用な方法であり、ほとんどの場合、そのような濾過方法
は、分離後の細胞の抽出を可能にする。しかしながら、既存の濾過方法は、ある特定の因
子(例えば、インビトロの細胞が単一の直径ではなく直径の範囲を有していることが挙げ
られる)によって制限される。そのうえ、細胞濾過の手法では、ほんの数個の稀な細胞し
か回収できない。稀な分子のコピー数は、タンパク質の場合、細胞1つあたりわずか数万
コピー、または遺伝子変異の場合、細胞1つあたり数コピーで有意であり得る。
稀な細胞は、従来の走査顕微鏡法によって単一細胞レベルにまで下げて分析することが
できる。しかしながら、顕微鏡法は、その走査および分析が自動化されたとしても、走査
される各サンプルに対して24時間またはそれを超える時間を要し得る。そのうえ、測定
されたタンパク質量の有意性を判定するために、複数の像を有する稀な細胞のすべてを、
病理学者が視覚的に調べなければならない。
質量分析(MS)は、MSを日常的な親和性の反応系と競合しないようにするいくつか
の課題を有する。顕著な問題は、サンプル干渉(マトリックス重複ピーク)により目的の
マーカーを分離できないこと、臨床サンプル中のバックグラウンドに起因して感度が低下
すること(ピコモル濃度(pM)がナノモル濃度(nM)に低下すること)、1マイクロ
リットル(μl)未満のサンプルが、イオン化に向けて非効率的にしか捕捉されず、かつ
血液などの複雑なサンプルにおける干渉ピークから非効率的にしか単離されないために、
低nLサンプル体積を扱うことができないことである。さらに、MSは、イオン化された
同じ質量の他の分子との競合に起因して、ある特定の質量を検出できないことが多い。こ
れらの課題は、通常、問題を引き起こし、間違った結果をもたらす。
要旨
稀な標的の検出を行う際に質量スペクトル分析を用いるとき、希釈によって検出感度が
かなり低下するので、検出液体の希釈を回避することが重要であることを本発明は認識し
ている。検出液体中の細胞または捕捉粒子は、各々がユニークな性質を有するので、個々
に検出されるべきである。したがって、本発明は、正確な少量の検出液体を膜から放出さ
せること、および検出液体の希釈を回避しつつ、液体の液滴を質量分析計に送達すること
を提供する方法および装置を提供する。
本発明の態様は、少なくとも1つのポアを含む本質的に非吸収性の(non−abso
rbent)膜(非吸収性の(non−bibulous)膜)、その膜と作動可能に会
合するマイクロウェル、およびその膜と作動可能に会合する電場発生器を備える装置を用
いて達成される。異成分で構成されたサンプル(例えば、血液サンプル)が、少なくとも
そのマイクロウェル、膜、またはその装置の両方に導入される。そのサンプルに、複数の
親和性剤が導入される。その複数の親和性剤の各々は、第1の分子を含む。その複数の親
和性剤は、サンプル中の標的分析物に特異的に結合する。結合していない親和性剤が、除
去される(例えば、洗浄によって)。1つまたはそれを超えるさらなる分子が、そのサン
プルに導入される。その1つまたはそれを超えるさらなる分子は、第1の分子と相互作用
して、質量分析標識を形成する。少なくとも1つのポアを通って液滴を放出させるために
、電場発生器を介して電圧がサンプルに提供される。その液滴は、サンプルの一部および
質量分析標識を含む。その液滴は、例えば、イオン化された質量分析標識の質量分析によ
って、質量分析標識の存在について分析される。その質量分析標識の存在は、サンプル中
に標的分析物が存在することを示唆する。ある特定の実施形態において、本発明の方法は
、分析される質量分析標識の量を定量することによって、サンプル中の標的分析物を定量
する工程をさらに含み得る。
通常、少なくとも1つのポアは、近位開口部、遠位開口部および壁を備える。多くの異
なる配向のポアが、本発明の範囲内である。例えば、少なくとも1つのポアの壁は、近位
開口部および遠位開口部に対して90度であるように配向されていることがある。別の実
施形態では、少なくとも1つのポアの壁は、近位開口部から遠位開口部に向かって次第に
細くなっている。別の実施形態では、少なくとも1つのポアの壁は、遠位開口部から近位
開口部に向かって次第に細くなっている。
ある特定の実施形態において、本質的に非吸収性の膜は、複数のポアを含む。その複数
のポアは、同じ寸法を有し得る。あるいは、その複数のポアは、異なる寸法を有し得る。
そのような実施形態において、上記装置は、電場発生器から電場を発生することにより、
複数のポアのうちのただ1つから液滴が生成されるように構成されている。
上記装置は、質量分析計をさらに備え得る。質量分析計は、例えば、Gaoら(Z.A
nal.15 Chem.2006,78,5994−6002)、Gaoら(Anal
.Chem.,80:7198−7205,2008)、Houら(Anal.Chem
.,83:1857−1861,2011)、Sokolら(Int.J.Mass S
pectrom.,2011,306,187−195)、Xuら(JALA,2010
,15,433−439);Ouyangら(Anal.Chem.,2009,81,
2421−2425);Ouyangら(Ann.Rev.Anal.Chem.,20
09,2,187−25 214);Sandersら(Euro.J.Mass Sp
ectrom.,2009,16,11−20);Gaoら(Anal.Chem.,2
006,78(17),5994−6002);Mulliganら(Chem.Com
.,2006,1709−1711);およびFicoら(Anal.Chem.,20
07,79,8076−8082).)、(これらの各内容はその全体が参照により本明
細書中に援用される)に記載されるような卓上用の質量分析計または小型の質量分析計で
あり得る。
ある特定の実施形態において、上記装置は、例えば、米国特許第9,184,036号
(この内容の全体が本明細書中に参照により援用される)に記載されているように、電場
発生器がマイクロウェル内のサンプルに電場を誘導的に与えるように構成されている。
ある特定の実施形態において、第1の分子は、質量分析標識前駆体である。そのような
実施形態において、1つまたはそれを超えるさらなる分子は、質量分析標識前駆体と相互
作用して質量分析標識を形成する変化剤(alteration agent)である。
他の実施形態において、第1の分子は、変化剤である。そのような実施形態において、
1つまたはそれを超えるさらなる分子は、変化剤と相互作用して質量分析標識を形成する
質量分析前駆体標識である。
ある特定の実施形態において、第1の分子は、質量分析標識前駆体であり、1つまたは
それを超えるさらなる分子は、質量分析標識前駆体と相互作用して質量分析標識を形成す
る第1および第2の変化剤である。
親和性剤は、粒子状または非粒子状であり得る。標的分析物は、稀な細胞であり得、異
成分で構成されたサンプルは、異成分で構成された生物学的サンプルであり得る。
本発明のいくつかの例示的な方法は、少なくとも1つのポアを含む本質的に非吸収性の
膜から液体を放出する方法に関する。その本質的に非吸収性の膜は、液体を保持できるマ
イクロウェルと会合し得る。少なくとも1つのポアと本質的に非吸収性の膜の少なくとも
1つの表面との交差度は、約30°〜約150°の角度である。その方法は、本質的に非
吸収性の膜上の液体を電場に曝露して、その本質的に非吸収性の膜の少なくとも1つのポ
アを通ってその液体の1つまたはそれを超える液滴を放出させる工程を含み得る。
他の例示的な方法は、稀な分子および稀でない分子の1つまたはそれを超える異なる集
団を含むと疑われるサンプル中の稀な標的分子の1つまたはそれを超える異なる集団を検
出する工程を含む。サンプル(通常、液体の形態)は、マイクロウェル、および少なくと
も1つのポアを有する本質的に非吸収性の膜を備える装置に接触され得る。少なくとも1
つのポアと本質的に非吸収性の膜の少なくとも1つの表面との交差は、約30°〜約15
0°の角度である。そのサンプルは、稀な標的分子の異なる各集団に対して、稀な標的分
子の集団のうちの1つの稀な標的分子に特異的であってそれに結合する結合パートナーを
含む親和性剤とともにインキュベートされ得る。その親和性剤は、質量分析標識前駆体ま
たは第1の変化剤を含む。その親和性剤は、非粒子状または粒子状であり得る。第1の変
化剤は、質量分析標識前駆体からの質量分析標識の形成を促進するか、または質量分析標
識前駆体を含む実体を親和性剤から放出させる。第1の変化剤が、質量分析標識前駆体か
らの質量分析標識の形成を促進しない場合、そのサンプルは、質量分析標識前駆体からの
質量分析標識の形成を促進する第2の変化剤に供される。その質量分析標識は、稀な標的
分子の集団のうちの1つに対応する。本質的に非吸収性の膜上のサンプルは、電場に曝露
されて、本質的に非吸収性の膜の少なくとも1つのポアを通ってサンプルの1つまたはそ
れを超える液滴を放出する。それらの液滴は、質量分析に供されることにより、異なる各
質量分析標識の存在および/または量が明らかにされる。異なる各質量分析標識の存在お
よび/または量は、各マイクロウェルに対するサンプル中の稀な標的分子の異なる各集団
の存在および/または量と相関し得る。
他の態様において、本発明は、標的分析物を含むと疑われるサンプルを、ポアを含む膜
(例えば、本質的に非吸収性の膜であるが、必要に応じて、吸収性の膜)に導入する工程
を含む、サンプル分析方法を提供する。その膜上のサンプルに、1つまたはそれを超える
試薬が導入されて、標的分析物がサンプル中に存在する場合、標的分析物と会合した質量
分析標識が生成される。電場がその膜に印加され、それにより、膜のポアから排出された
サンプルの1つまたはそれを超える液滴が生成され、質量分析計に導入される。標的分析
物の存在は、質量分析計を介して質量分析標識の存在を検出することによって検出される
。次いで、検出工程の結果に基づくと標的分析物が存在する場合、膜のポアと会合してい
るサンプルの一部がその膜から抽出され、その抽出されたサンプルの一部が分析される。
本発明の方法は、分析される質量分析標識の量を定量することによって、サンプル中の標
的分析物を定量する工程をさらに含み得る。
膜上のサンプルに1つまたはそれを超える試薬を導入することは、各々が第1の分子を
含む複数の親和性剤をそのサンプルに導入する工程(ここで、その複数の親和性剤は、サ
ンプル中の標的分析物に特異的に結合する)、結合していない親和性剤を除去する工程、
および1つまたはそれを超えるさらなる分子をそのサンプルに導入する工程(ここで、そ
の1つまたはそれを超えるさらなる分子は、第1の分子と相互作用して、質量分析標識を
形成する)を含み得る。
ある特定の実施形態において、第1の分子は、質量分析標識前駆体である。そのような
実施形態において、1つまたはそれを超えるさらなる分子は、質量分析標識前駆体と相互
作用して質量分析標識を形成する変化剤である。
他の実施形態において、第1の分子は、変化剤である。そのような実施形態において、
1つまたはそれを超えるさらなる分子は、変化剤と相互作用して質量分析標識を形成する
質量分析前駆体標識である。
他の実施形態において、第1の分子は、質量分析標識前駆体であり、1つまたはそれを
超えるさらなる分子は、質量分析標識前駆体と相互作用して質量分析標識を形成する第1
および第2の変化剤である。
これらの実施形態のすべてにおいて、親和性剤は、粒子状または非粒子状であり得る。
例示的な実施形態において、標的分析物は、稀な細胞であり、サンプルは、異成分で構成
された生物学的サンプルである。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
少なくとも1つのポアを含む本質的に非吸収性の膜;
該本質的に非吸収性の膜と作動可能に会合するマイクロウェル;および
電場発生器
を備える装置であって、ここで、該装置は、該電場発生器によって発生される電場が、該マイクロウェル内のサンプルと作動可能に相互作用し、該本質的に非吸収性の膜における該少なくとも1つのポアを通って該サンプルの液滴を排出するように構成されている、装置。
(項目2)
前記少なくとも1つのポアが、近位開口部、遠位開口部および壁を備える、項目1に記載の装置。
(項目3)
前記少なくとも1つのポアの前記壁が、前記近位開口部および前記遠位開口部に対して90度であるように配向されている、項目2に記載の装置。
(項目4)
前記少なくとも1つのポアの前記壁が、前記近位開口部から前記遠位開口部に向かって次第に細くなっている、項目2に記載の装置。
(項目5)
前記少なくとも1つのポアの前記壁が、前記遠位開口部から前記近位開口部に向かって次第に細くなっている、項目2に記載の装置。
(項目6)
前記本質的に非吸収性の膜が、複数のポアを含む、項目1に記載の装置。
(項目7)
前記複数のポアが、同じ寸法を含む、項目6に記載の装置。
(項目8)
前記複数のポアが、異なる寸法を含む、項目6に記載の装置。
(項目9)
前記装置が、質量分析計をさらに備える、項目1に記載の装置。
(項目10)
前記装置が、前記電場発生器が前記マイクロウェル内の前記サンプルに電場を誘導的に与えるように構成されている、項目1に記載の装置。
(項目11)
異成分で構成されたサンプルから標的分析物を検出するための方法であって、該方法は、
少なくとも1つのポアを含む本質的に非吸収性の膜、該膜と作動可能に会合するマイクロウェル、および該膜と作動可能に会合する電場発生器を備える装置を提供する工程、
異成分で構成されたサンプルを少なくとも該膜に導入する工程;
該サンプルに、各々が第1の分子を含む複数の親和性剤を導入する工程であって、ここで、該複数の親和性剤は、該サンプル中の該標的分析物に特異的に結合する、工程;
結合していない親和性剤を除去する工程;
1つまたはそれを超えるさらなる分子を該サンプルに導入する工程であって、ここで、該1つまたはそれを超えるさらなる分子は、該第1の分子と相互作用して、質量分析標識を形成する、工程;
該電場発生器を介して該サンプルに電圧を提供して、該少なくとも1つのポアを通って液滴を放出させる工程であって、ここで、該液滴は、該サンプルの一部および該質量分析標識を含む、工程;および
該液滴を該質量分析標識の存在について分析する工程であって、ここで、該質量分析標識の存在は、該サンプル中の該標的分析物の存在を示す、工程
を含む、方法。
(項目12)
前記第1の分子が、質量分析標識前駆体である、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記1つまたはそれを超えるさらなる分子が、前記質量分析標識前駆体と相互作用して前記質量分析標識を形成する変化剤である、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記第1の分子が、変化剤である、項目11に記載の方法。
(項目15)
前記1つまたはそれを超えるさらなる分子が、前記変化剤と相互作用して前記質量分析標識を形成する質量分析前駆体標識である、項目12に記載の方法。
(項目16)
前記第1の分子が、質量分析標識前駆体であり、前記1つまたはそれを超えるさらなる分子が、該質量分析標識前駆体と相互作用して前記質量分析標識を形成する第1および第2の変化剤である、項目11に記載の方法。
(項目17)
前記親和性剤が、粒子状である、項目11に記載の方法。
(項目18)
前記親和性剤が、非粒子状である、項目11に記載の方法。
(項目19)
前記標的分析物が、稀な細胞であり、前記異成分で構成されたサンプルが、異成分で構成された生物学的サンプルである、項目11に記載の方法。
(項目20)
分析される質量分析標識の量を定量することによって、前記サンプル中の前記標的分析物を定量する工程をさらに含む、項目11に記載の方法。
(項目21)
サンプル分析方法であって、該方法は、
標的分析物を含むと疑われるサンプルを、ポアを含む膜に導入する工程;
1つまたはそれを超える試薬を該膜上の該サンプルに導入して、該標的分析物が該サンプル中に存在する場合、該標的分析物と会合した質量分析標識を生成する工程、
該膜に電場を印加することにより、該膜の該ポアから排出されて質量分析計に導入される該サンプルの1つまたはそれを超える液滴を発生させる工程;
該質量分析計を介して、該質量分析標識の存在を検出することによって該標的分析物の存在を検出する工程;
該検出する工程の結果に基づいて、該標的分析物が存在する場合、該膜の該ポアと会合した該サンプルの一部を該膜から抽出する工程;および
抽出された該サンプルの一部を分析する工程
を含む、方法。
(項目22)
前記膜上の前記サンプルに1つまたはそれを超える試薬を導入する工程が、
各々が第1の分子を含む複数の親和性剤を該サンプルに導入する工程であって、ここで、該複数の親和性剤は、該サンプル中の該標的分析物に特異的に結合する、工程;
結合していない親和性剤を除去する工程;および
1つまたはそれを超えるさらなる分子を該サンプルに導入する工程であって、ここで、該1つまたはそれを超えるさらなる分子は、該第1の分子と相互作用して質量分析標識を形成する、工程
を含む、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記第1の分子が、質量分析標識前駆体である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記1つまたはそれを超えるさらなる分子が、前記質量分析標識前駆体と相互作用して前記質量分析標識を形成する変化剤である、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記第1の分子が、変化剤である、項目22に記載の方法。
(項目26)
前記1つまたはそれを超えるさらなる分子が、前記変化剤と相互作用して前記質量分析標識を形成する質量分析前駆体標識である、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記第1の分子が、質量分析標識前駆体であり、前記1つまたはそれを超えるさらなる分子が、該質量分析標識前駆体と相互作用して前記質量分析標識を形成する第1および第2の変化剤である、項目22に記載の方法。
(項目28)
前記親和性剤が、粒子状である、項目22に記載の方法。
(項目29)
前記親和性剤が、非粒子状である、項目22に記載の方法。
(項目30)
前記標的分析物が、稀な細胞であり、前記サンプルが、異成分で構成された生物学的サンプルである、項目21に記載の方法。
(項目31)
分析される質量分析標識の量を定量することによって、前記サンプル中の前記標的分析物を定量する工程をさらに含む、項目21に記載の方法。
図1A〜Cは、異なるポアの配向を有する本発明の装置の例を描写している概略図である。
図2は、本発明に係る装置の別の例を描写している概略図である。
図3は、図1に示された装置から液体液滴を放出させるための本発明の装置および方法の一例を描写している概略図であり、その液滴は、質量分析計の取り入れ口に入る。
図4は、1つより多いポアを有する本発明の装置および方法の一例を描写している概略図である。ポアの1つから放出された液滴が、質量分析計の取り入れ口に入る。
図5は、図4の装置の本質的に非吸収性の膜を描写しており、ここで、その本質的に非吸収性の膜上のある領域が、さらなる分析のために特定される。
図6は、マイクロウェルアレイの一例を描写している概略図である。
図7は、アレイおよび電場発生器を備える装置の一例を描写している概略図である。
図8A〜Cは、本発明の装置から直接スプレーされたFC−2ペプチドを示している質量スペクトルのセットである。この質量スペクトルのセットは、様々な濃度のペプチドFC−2から生成されたm/z412に対するMS/MSスペクトルである。 図8A〜Cは、本発明の装置から直接スプレーされたFC−2ペプチドを示している質量スペクトルのセットである。この質量スペクトルのセットは、様々な濃度のペプチドFC−2から生成されたm/z412に対するMS/MSスペクトルである。
図9A〜Cは、本発明の装置から直接スプレーされたFC−2ペプチドを示している質量スペクトルのセットである。この質量スペクトルのセットは、様々な濃度のペプチドFC−2から生成されたm/z412に対するMS/MSスペクトルである。 図9A〜Cは、本発明の装置から直接スプレーされたFC−2ペプチドを示している質量スペクトルのセットである。この質量スペクトルのセットは、様々な濃度のペプチドFC−2から生成されたm/z412に対するMS/MSスペクトルである。
図10は、MSの入口に向けられた本発明の装置からのスプレープルームの写真である。
図11は、DESIに有効なスプレーを生成するためおよび方向付けるためのスプレーデバイスを示している概略図を示している。
図12は、低温プラズマ(LTP)プローブの1つの実施形態を示している概略図を示している。
図13は、イオンビームを生成するために紙片に供給されるイオンを生成するための液体の概略図を示している。
詳細な説明
本発明は、概して、膜から、特に、ほんのわずかな分子(フェムトモル濃度(fM)ス
ケールまたはそれより小さい)しか含まない少量(マイクロリットル(μL)スケールま
たはそれより小さい)の液体の分析の領域における膜から液体を放出させるための方法お
よび装置に関する。いくつかの態様において、本発明は、稀な分子および稀でない分子の
1つまたはそれを超える異なる集団を含むと疑われる生物学的サンプル(例えば、血液サ
ンプル)中の稀な分子の1つまたはそれを超える異なる集団を検出するための方法、装置
およびキットに関する。いくつかの態様において、本発明は、生物学的サンプル(例えば
、血液)中で自由に循環している稀な分子の1つまたはそれを超える異なる集団を検出す
るための方法およびキットに関する。他の態様において、本発明は、稀な細胞および稀で
ない細胞の1つまたはそれを超える異なる集団を含むと疑われる生物学的サンプル(例え
ば、血液サンプル)中の稀な細胞と会合した稀な分子の1つまたはそれを超える異なる集
団を検出するための方法およびキットに関する。
サンプル中の稀な標的分子の1つまたはそれを超える異なる集団を検出するための本発
明の方法は、稀な標的分子の1つまたはそれを超える異なる集団の濃度を稀でない分子の
濃度を超えて高める工程を含み得る。濃縮されたサンプルが、形成され、稀な標的分子の
異なる各集団に対して、その稀な標的分子の集団のうちの1つの稀な標的分子に特異的で
あってそれに結合する結合パートナーを含む親和性剤とともにインキュベートされる。そ
の親和性剤は、非粒子状または粒子状であり得る。その親和性剤は、MS標識前駆体から
の質量分析(MS)標識の形成を促進するかまたはMS標識前駆体を含む実体を親和性剤
から放出する、MS標識前駆体または第1の変化剤を含む。そのMS標識は、稀な標的分
子の集団のうちの1つに対応する。インキュベートされたサンプルを多孔性マトリックス
と接触させることによって、保持液(retentate)および濾液が形成される。第
1の変化剤が、MS標識前駆体からのMS標識の形成を促進しない場合、その保持液およ
び濾液の一方または両方が、親和性剤からのMS標識前駆体からのMS標識の形成を促進
する第2の変化剤に供される。その保持液および濾液の一方または両方が、MS分析に供
されることにより、異なる各MS標識の存在および/または量が明らかにされる。異なる
各MS標識の存在および/または量は、サンプル中の稀な標的分子の異なる各集団の存在
および/または量に関係する。
別の例では、稀な細胞および稀でない細胞を含むと疑われる血液サンプル中の稀でない
細胞に対する稀な細胞の比が高められる。その血液サンプル、血小板不活化剤、フィブリ
ン形成停止剤およびフィブリンを、所定のレベルの稀な細胞の凝集を引き起こすのに十分
な量で合わせることによって、処理された血液サンプルが調製される。次いで、その処理
された血液サンプルは、凝集した稀な細胞が多孔性マトリックス上に優先的に保持される
ように多孔性マトリックスと接触される。
別の例では、インタクトな核酸を有する稀な細胞を、稀な細胞および稀でない細胞を含
むサンプル中の稀でない細胞から分離する方法が用いられる。そのサンプルは、水性媒質
と合わせられ、その合わせたものは、稀でない細胞から核酸を選択的に放出させるが稀な
細胞からは放出させないために、ある時間にわたってある温度で保持される。そのサンプ
ルは、稀でない細胞から稀な細胞を分離するために濾過に供される。
全体的な解説
本明細書中に記載される装置は、本質的に非吸収性の膜上に保持された少量の液体から
、イオン化された液滴を形成することを可能にし、さらに、その後、その本質的に非吸収
性の膜から本質的に非吸収性の膜(非吸収性の膜)の少なくとも1つのポアを通って液滴
を放出させることを可能にする。
本発明の装置の一例が、図1に描写されている。装置10は、マイクロウェル14、お
よび少なくとも1つのポア18を有する本質的に非吸収性の膜16を有する環状の壁12
を備える。ポア18と本質的に非吸収性の膜16とは、点20において90°の角度で交
差している。そのポアは、装置10からの液滴(例えば、液体液滴)が生成および放出さ
れるのを促進するように作用する。
本発明の装置の別の例が、図2に描写されている。装置30は、マイクロウェル34、
および少なくとも1つのポア38を有する本質的に非吸収性の膜36を有する環状の壁3
2を備える。膜36の上面36aとポア38の内面38aとは、点40において90°の
角度で交差し、膜36の下面36bとポア38の内面38aとは、点42において90°
の角度で交差している。そのポアは、装置30から液滴(例えば、液体液滴)が生成およ
び放出されるのを促進するように作用する。
図3は、図1に記載されているような装置からの液滴(例えば、液体液滴)の放出の一
例を描写している。液体24が、マイクロウェル14に含まれているが、本質的に非吸収
性の膜16のポア18を通過するのに十分な体積を有していない。ポア18を通って本質
的に非吸収性の膜16から液滴24aを放出させるのに十分な強度を有する電場を発生す
るように、電場発生器20がワイヤー20aによって活性化される。液滴24aは、質量
分析計28の入口26に収集される。
質量分析計28は、卓上用の質量分析計または小型の質量分析計などの当該分野で公知
の任意のタイプの質量分析計であり得る。例示的な小型の質量分析計は、例えば、Gao
ら(Z.Anal.Chem.2006,78,5994−6002)(この内容の全体
が本明細書中に参照により援用される)に記載されている。数千ワットの電力でラボスケ
ールの機器に使用されるポンプシステムと比較して、小型の質量分析計は、一般に、より
小さなポンプシステム(例えば、Gaoらに記載されているシステムの場合、わずか5L
/分(0.3m3/時)の隔膜ポンプおよび11L/sのターボポンプを備える18Wの
ポンプシステム)を有する。他の例示的な小型の質量分析計は、例えば、Gaoら(An
al.Chem.,80:7198−7205,2008)、Houら(Anal.Ch
em.,83:1857−1861,2011)およびSokolら(Int.J.Ma
ss Spectrom.,2011,306,187−195)、(これらの各内容は
その全体が参照により本明細書中に援用される)に記載されている。小型の質量分析計は
、例えば、Xuら(JALA,2010,15,433−439);Ouyangら(A
nal.Chem.,2009,81,2421−2425);Ouyangら(Ann
.Rev.Anal.Chem.,2009,2,187−214);Sandersら
(Euro.J.Mass Spectrom.,2009,16,11−20);Ga
oら(Anal.Chem.,2006,78(17),5994−6002);Mul
liganら(Chem.Com.,2006,1709−1711);およびFico
ら(Anal.Chem.,2007,79,8076−8082)。)、(これらの各
内容はその全体が参照により本明細書中に援用される)にも記載されている。
図4は、ポアのアレイを含む本発明の装置の別の例を描写している。液体64は、装置
50のマイクロウェル54に含まれており、本質的に非吸収性の膜56のポア58a〜5
8dを通過するのに十分な体積を有しない。マイクロウェル54は、環状の壁56を有す
る。本質的に非吸収性の膜56から個別のポア58bだけを通って液滴64aを放出させ
るのに十分な強度を有する電場を発生するように、電場発生器60が活性化される。液滴
64aは、質量分析計68の入口66に収集される。この例では、電場発生器の寸法は、
単一のポアまたはポアのサブセットに正確に電場が印加されるように選択される。したが
って、その電場発生器は、その電場発生器が、そのような印加を可能にする少なくとも一
部(例えば、先端、ワイヤー、針、錐、長方形または球形)を備えるようにしかるべくデ
ザインされている。この例では、電場の印加点における電場発生器の寸法は、ほぼ、電場
の選択的な印加が望まれるポアまたはポアのサブセットのサイズであるべきである。した
がって、電場の印加点における電場発生器の寸法は、ポアまたはポアのサブセットのサイ
ズの約200%以下かつ約50%以上、または約150%以下かつ約25%以上、または
約100%以下かつ約50%以上、または約50%以下かつ約25%以上であるべきであ
る。さらに、質量分析計の入口は、電場発生器と整列しているべきである。いくつかの例
では、質量分析計の入口は、電場の印加点における電場発生器の寸法に合う寸法を有する
図4および5を参照すると、液滴64aの中のMS標識が、MS分析の結果として特定
され、本質的に非吸収性の膜56上の対応する領域59が、さらなる分析のために選択さ
れる。領域59から、例えば、吸引、打ち出し、切開もしくは抽出または上記の2つもし
くはそれを超えるものの組み合わせによって、液体または粒子(細胞を含む)が取り出さ
れる。
上に記載された装置では、本質的に非吸収性の膜は、本質的にまたは完全に液体を透過
させない平らな表面であり得る。その本質的に非吸収性の膜は、少なくとも1つのポア、
およびある特定の実施形態では、1つより多いポア(例えば、ポアのアレイ)を含む。そ
の少なくとも1つのポアは、本質的に非吸収性の膜内で、定まった配向を有する。その定
まった配向は、ポアの壁が本質的に非吸収性の膜の表面とどのように交差しているかに関
して説明され得る。例えば、ポアは、ポアの壁が、本質的に非吸収性の膜の表面(マイク
ロウェルに面している上面(近位面)および質量分析計に面している底面(遠位面))と
90度で交差するような垂直壁を有し得る。そのようなポアの配向は、図1Aに示されて
いる。
他の配向も可能であり、当業者は、本発明が、特定のポアの配向に限定されないことを
認識するだろう。例えば、ポアの壁は、2つの表面の交差において約30°〜約150°
の角度で本質的に非吸収性の膜の表面と交差し得る。それは、図1Bに示されているよう
に、ポアが近位面から遠位面に向かって次第に細くなるようにさせる(すなわち、ポアは
、より狭くなるような大きさである)。あるいは、ポアは、図1Cに示されているように
、遠位面から近位面に向かって次第に細くなり得る(すなわち、ポアは、より広くなるよ
うな大きさである)。本質的に非吸収性の膜が1つより多いポアを含むいくつかの例では
、交差の角度は、ポアごとに高い精度(1変動率未満)を有し、すなわち、それらのポア
はすべて、同じ寸法を有する。したがって、この例では、ポアと本質的に非吸収性の膜の
表面との角度は、1°を超えて別のポアの角度と異ならない。他の実施形態では、ポアの
一部または全部が、互いに異なる寸法を有する。
用語「交差」は、2つの表面が互いに接触している点または点の連続を意味する。本質
的に非吸収性の膜が1つより多いポアを含むいくつかの例では、ポアの1つと本質的に非
吸収性の膜の表面との角度が、別のポアの角度と、例えば、1°を超えて、または0.5
°を超えて、または0.2°だけ、または0.1°を超えて、または0.05°を超えて
、または0.01°を超えて、または0.005°を超えて、または超えて、または0.
001°を超えて、異ならない。
いくつかの例では、本質的に非吸収性の膜上の液体は、本質的に非吸収性の膜から1つ
またはそれを超える液体液滴の放出を引き起こす電場に曝露される。その電場は、液滴内
の分子のイオン化も引き起こし得る。本質的に非吸収性の膜は、電場発生器とも会合する
。電場発生器が活性化されると、電場が発生し、それによって、液体がより多くポアを通
過し、膜から少なくとも1つのポアを通って、例えば、質量分析計の入口に、放出される
液体液滴を形成する。
上で述べたように、本質的に非吸収性の膜は、液体を保持することができるマイクロウ
ェルと会合する。句「〜と会合する」は、本質的に非吸収性の膜とマイクロウェルとが、
本質的に非吸収性の膜がマイクロウェルの底面またはマイクロウェルの上面に存在し得る
単一ユニットを形成し得ることを意味する。
液体は、MS標識を含むサンプルまたは液体であり得る。液体は、サンプルに導入され
るMS標識でもあり得る。いくつかの例において、液体は、溶媒、例えば、エレクトロス
プレー質量分析において使用されるスプレー溶媒を含む。いくつかの例において、エレク
トロスプレーイオン化のための溶媒としては、極性有機化合物、例えば、アルコール(例
えば、メタノール、エタノールおよびプロパノール)、アセトニトリル、ジクロロメタン
、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド
およびニトロメタン;非極性有機化合物、例えば、ヘキサン、トルエン、シクロヘキサン
;および例えば、水、またはそれらの2つもしくはそれを超える組み合わせが挙げられる
が、これらに限定されない。必要に応じて、溶媒は、改質剤(modifier)として
、1つまたはそれを超える酸または塩基、例えば、揮発性の塩および緩衝液、例えば、酢
酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム(ammonium biocarbonate)
、揮発性の酸、例えば、ギ酸、酢酸またはトリフルオロ酢酸、ヘプタフルオロ酪酸、ドデ
シル硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、および非揮発性の塩または緩衝液、例え
ば、ナトリウムおよびカリウムの塩化物およびリン酸塩を含み得る。
膜は、本質的に非吸収性であり、これは、その膜が本質的に液体を吸収できないこと(
非吸収性)を意味する。いくつかの例では、本質的に非吸収性の膜によって吸収される液
体の量は、約2(容量)%未満または約1%未満または約0.5%未満または約0.1%
未満または約0.01%未満または0%である。本質的に非吸収性の膜は、非繊維状であ
り得、これは、その膜が、繊維を少なくとも95%含まないか、または繊維を少なくとも
99%含まないか、または繊維を少なくとも99.5%、または少なくとも99.9%含
まないか、または繊維を100%含まないことを意味する。
本質的に非吸収性の膜は、固形の非可撓性の材料であり得、液体を透過させない(その
膜1つまたはそれを超えるポアを除いて)。本質的に非吸収性の膜は、有機材料もしくは
無機材料または水不溶性材料を含み得る。本質的に非吸収性の膜の形状は、例えば、本質
的に非吸収性の膜のためのホルダーまたは保持物の性質、ポアの性質および形状、ポアと
本質的に非吸収性の膜との角度、マイクロウェルの性質、電荷発生の性質、ならびに質量
標識の性質のうちの1つまたはそれを超えるものに依存する。いくつかの例では、本質的
に非吸収性の膜の形状は、例えば、円形、卵形、長方形、正方形、六角形、平面または平
らな表面(例えば、ストリップ、ディスク、フィルム、膜およびプレート)である。いく
つかの例では、本質的に非吸収性の膜は、堅いかまたは非可撓性であり、これは、本質的
に非吸収性の膜が、本質的に非吸収性の膜の面から約1°を超えてまたは約0.5°を超
えてまたは約0.1°を超えて曲げられない場合があることを意味する。
本質的に非吸収性の膜は、多種多様の材料から製作され得、その材料は、天然に存在す
るものであってもよいし、合成のもの、重合体または非重合体であってもよい。本質的に
非吸収性の膜を製作するためのそのような材料の例としては、例えば、プラスチック、例
えば、ポリカーボネート、ポリ(塩化ビニル)、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート
、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−(4−メチルブテン)、ポリスチレン、ポリメ
タクリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ナイロン、ポリ(ビニルブチレート)
、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(ビニルブチレート)、ポリイミド、ポリ
ウレタンおよびパリレン(paraylene);シラン;ケイ素;窒化ケイ素;グラフ
ァイト;セラミック材料(例えば、アルミナ、ジルコニア、PZT、炭化ケイ素、窒化ア
ルミニウム);金属材料(例えば、金、タンタル、タングステン、白金およびアルミニウ
ム);ガラス(例えば、ホウケイ酸塩、ソーダ石灰ガラスおよびPYREX(登録商標)
(低熱膨張ホウケイ酸ガラス,Corning Incorporated));および
生体吸収性ポリマー(例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンおよびポリグリコール酸(
polyglycoic acid))が実例として挙げられるがこれらに限定されず、
これらは、例えば、それらだけでまたは互いにおよび/もしくは他の材料とともに使用さ
れる。本質的に非吸収性の膜を製作するための材料は、吸収性および/または透過性であ
るがゆえに本明細書中に記載される原理と一致しない、繊維状の材料(例えば、セルロー
ス(紙を含む)、ニトロセルロース、酢酸セルロース、レーヨン、ジアセテート、リグニ
ン、鉱物繊維、繊維状タンパク質、コラーゲン、合成繊維(例えば、ナイロン、ダクロン
、オレフィン、アクリル、ポリエステル繊維)または他の繊維状の材料(ガラス繊維、金
属繊維)を含まない。
各マイクロウェルについて本質的に非吸収性の膜は、少なくとも1つのポアを含む。本
質的に非吸収性の膜は、1つより多いポア、例えば、1平方センチメートル(cm)あ
たり約2,000,000のポアを含み得る。いくつかの例では、本質的に非吸収性の膜
のcmあたりのポアの数は、例えば、1〜約2,000,000、または1〜約1,0
00,000、または1〜約500,000、または1〜約200,000、または1〜
約100,000、または1〜約50,000、または1〜約25,000、または1〜
約10,000、または1〜約5,000、または1〜約1,000、または1〜約50
0、または1〜約200、または1〜約100、または1〜約50、または1〜約20、
または1〜約10、または2〜約500,000、または2〜約200,000、または
2〜約100,000、または2〜約50,000、または2〜約25,000、または
2〜約10,000、または2〜約5,000、または2〜約1,000、または2〜約
500、または2〜約200、または2〜約100、または2〜約50、または2〜約2
0、または2〜約10、または5〜約200,000、または5〜約100,000、ま
たは5〜約50,000、または5〜約25,000、または5〜約10,000、また
は5〜約5,000、または5〜約1,000、または5〜約500、または5〜約20
0、または5〜約100、または5〜約50、または5〜約20、または5〜約10であ
る。本質的に非吸収性の膜のポアの密度は、例えば、本質的に非吸収性の膜の表面積の約
1%〜約20%、または約1%〜約10%、または約1%〜約5%、または約5%〜約2
0%、または約5%〜約10%である。いくつかの例では、本質的に非吸収性の膜のポア
のサイズは、本明細書中に記載されるように形成される液体液滴の通過を可能にしつつ、
液体を優先的に保持するのに十分なサイズである。本質的に非吸収性の膜のポアのサイズ
は、例えば、液体の性質、細胞のサイズ、捕捉粒子のサイズ、質量標識のサイズ、分析物
のサイズ、標識粒子のサイズ、稀でない分子のサイズ、および稀でない細胞のサイズに依
存する。いくつかの例では、本質的に非吸収性の膜のポアの平均サイズは、例えば、約0
.1〜約20ミクロン、または約0.1〜約5ミクロン、または約0.1〜約1ミクロン
、または約1〜約20ミクロン、または約1〜約5ミクロン、または約1〜約2ミクロン
、または約5〜約20ミクロン、または約5〜約10ミクロンである。
上記のとおり、本質的に非吸収性の膜の上部表面および/または底部表面と、ポアの内
壁との交差は、例えば、約30°〜約150°、または約30°〜約125°、または約
30°〜約110°、または約30°〜約100°、または約30°〜約95°、または
約30°〜約90°、または約45°〜約150°、または約60°〜約150°、また
は約75°〜約150°、または約80°〜約150°、または約85°〜約150°、
または約90°〜約150°、または約45°〜約125°、または約60°〜約110
°、または約70°〜約100°、または約80°〜約100°、または約85°〜約9
5°、または約90°の角度を有する。表面の交差は、各表面の形状、例えば、ポアの形
状に依存し、例えば、線状、円形、卵形、六角形、正方形もしくは長方形またはそれらの
組み合わせであり得る。
膜の上記の特徴は、膜から液滴として放出される液体の量の高レベルの正確さを可能に
する。液滴中の液体の量の変動(CV)は、例えば、約1%(容量/容量)を超えないか
、または約0.5%を超えないか、または約0.1%を超えない場合がある。さらに、溶
媒からの質量脱着(mass desorption)が生じる時間(脱着時間)も、変
動が小さく、すなわち、約500ミリ秒(msec)を超えて、または約400msec
を超えて、または約300msecを超えて、または約200msecを超えて、または
約100msecを超えて、または約50msecを超えて、または約10msecを超
えて変動せず、それにより、短時間でのイオンの捕捉がより容易になり、ゆえに、公知の
方法と比べてより小さなスプレー体積が可能になる。脱着時間は、本質的に非吸収性の堅
い膜の場合、さらに短くなる。さらに、本質的に非吸収性の膜が、1つより多いポアを含
み、本質的に非吸収性の膜の表面における1つのポアに対する角度が、別のポアに対する
角度と0.5°を超えて異ならない場合、およそ50msecというより短い脱着時間が
達成され得る。本明細書中に記載される装置を用いて得られる精度は、高度に定量的な結
果を可能にさせる。句「質量脱着」とは、溶媒分子からの質量標識イオンの分離のことを
指す。
マイクロウェル、およびポアを有する膜は、例えば、微小電気機械(MEMS)技術、
金属酸化物半導体(CMOS)技術、マイクロシーブを作製するためのマイクロ製造プロ
セス、レーザー技術、照射、成形およびマイクロマシニング、またはそれらの組み合わせ
によって製作され得る。
上で述べたように、本質的に非吸収性の膜(非吸収性の膜)のポアからの、帯電した液
滴および分析物イオンを含む分析物(または質量タグ)の排出は、その膜付近での電場の
発生によって達成される。その電場は、約1キロボルト(kV)〜約10キロボルト(k
V)、または約1kV〜約5kVまたは約2kV〜約10kVまたは約5kV〜約10k
Vまたは約6.0〜6.5kVの電位を、本質的に非吸収性の膜から0.05mm〜最大
20mm離れて位置する導体素子(本明細書中以後、電場発生器と称される)に提供する
ことによって確立される。その装置は、典型的には、質量分析計の入口のキャピラリーか
ら0.01mm〜5mmの距離に配置され、それは、−300Vから最大+300Vまで
の電位で保持され得る。
電場の性質および強度は、以下のうちの1つまたはそれを超えるものに依存する:液体
の性質、ポアサイズ、スプレー液体の量、膜と電場発生器との間の距離、膜と質量分析計
の入口との間の距離、ならびに電場発生器および質量分析計の入口に印加される電位。い
くつかの場合、膜から持続的なスプレーを発生させるために、電位は、高電源を介して持
続的に供給される。他の場合、電位は、電場発生器に接続された圧電デバイス(例えば、
帯電防止銃)を加圧または減圧することによって供給される。さらに、膜からの帯電した
液滴および分析物の不連続な排出は、1kV〜約15kVの範囲の1つの電気パルスまた
はひと続きの電気パルスを、電場発生器に個々のパルス1つあたり0.5msもの短い持
続時間から、個々のパルス1つあたり2分もの長い持続時間にわたって提供することによ
って達成され得る。
ポアまたはポアのサブセットを通って排出される液体の体積は、例えば、サンプルの体
積、ポアのサイズ、分析の性質、ウェルのサイズ、1つのウェルにおけるポアの数、発生
された電場(generated filed)におけるウェルの数、発生された電場に
おけるポアの数、ポアサイズ、ポア角度、および膜の剛性に依存する。いくつかの例では
、排出される液体の体積は、例えば、約1fL〜約1μLまたは約1nL〜約1μLであ
る。
いくつかの例では、電場発生器は、本質的に非吸収性の膜と会合しており、活性化され
ると電場を発生する。いくつかの例では、電場発生器は、本質的に非吸収性の膜に対する
支持体と一体になった電気グリッド線である。いくつかの例では、電場発生器は、本質的
に非吸収性の膜とは分離した電気グリッドであり、本質的に非吸収性の膜へのおよび本質
的に非吸収性の膜からの動きに対して配置されている。いくつかの例では、電場発生器お
よび本質的に非吸収性の膜の一方または両方が、本質的に非吸収性の膜の領域または特定
の本質的に非吸収性の膜もしくは本質的に非吸収性の膜の群において液滴の形成を選択的
に誘導するために電場発生器の活性化を可能にするように電場発生器を本質的に非吸収性
の膜に対して配置させるように動かすことができるロボットアームに取り付けられており
、ここで、その本質的に非吸収性の膜は、下記で論じられるような本質的に非吸収性の膜
のアレイの一部であり得る。
いくつかの例では、電場発生器は、線、プレート、イオン流またはそれらの組み合わせ
である。電場発生器への例えば電位の印加によって、電場発生器が活性化される。イオン
流は、種々の手段によって発生され得、それらの手段としては、誘電体バリア放電による
プラズマの発生、好適な導体素子への交流電位の印加、好適な導体素子への静電位の印加
、または好適な導体素子に接続された圧電材料の圧縮が挙げられるがこれらに限定されな
い。いずれの場合でも、好適な導体素子は、電場の強度(電位の印加における)が、周囲
の媒体の電気的破壊を引き起こすのに十分な大きさであるように、好適な幾何学の電気伝
導性材料から構成される。いくつかの場合、この好適な導体素子は、ワイヤー、突起もし
くはひと続きの突起、プレート、グリッドもしくはメッシュ、とがった棒、または粗面で
あり得る。イオン流は、好適な液体をエレクトロスプレーすることによっても発生され得
る。発生されたイオン流は、非吸収性の膜の片側に向けられ、その膜の反対側は、先に記
載されたような質量分析計の入口付近に位置している。そのイオン流は、以下に限定され
ないが、イオン流が非吸収性の膜に向かって移動し、非吸収性の膜に衝突するような適切
な様式でイオン流発生器を置くことによって、イオンをその膜に静電気的に向かわせるよ
うに好適な電位をひと続きの伝導性電極に提供することによって、または空気の力(例え
ば、流動気体)を使用してイオン流を膜に向かって運ぶことによって、方向づけられ得る
。サンプルの誘導帯電および誘導イオン化も使用され得、それらは、下記でさらに説明さ
れ、また、例えば米国特許第9,184,036号(この内容の全体が本明細書中に参照
により援用される)に記載されている。
本質的に非吸収性の膜は、マイクロウェルであり得るハウジングと会合し得、本質的に
非吸収性の膜は、そのハウジングの中に、例えば、ハウジングの上部または底面に、位置
し得る。ハウジングは、本質的に非吸収性の膜の材料と適合性である任意の好適な材料か
ら構築され得る。そのような材料の例としては、本質的に非吸収性の膜に対して上に列挙
された材料のいずれかが一例として挙げられるが、それらに限定されない。ハウジングお
よび本質的に非吸収性の膜のための材料は、同じであり得るか、または異なり得る。いく
つかの例では、本質的に非吸収性の膜は、マイクロウェルの一部である。
上で述べたように、いくつかの例では、本質的に非吸収性の膜は、マイクロウェルまた
はマイクロウェルのアレイの一部である。それらのマイクロウェルのうちの少なくとも2
つの本質的に非吸収性の膜は、同じであり得るかまたは異なり得る液体サンプルを含み得
、その少なくとも2つのマイクロウェルの本質的に非吸収性の膜の各々から液滴を選択的
に放出させるために、電場が活性化され得る。マイクロウェルの上部または底部が、本質
的に非吸収性の膜を備え得る。マイクロウェルの容積は、例えば、液体サンプルの性質、
ポアの性質、本質的に非吸収性の膜の性質およびサイズ、スプレー溶媒、捕捉粒子または
細胞、分析物の濃度、質量標識の濃度に依存する。いくつかの例では、マイクロウェルの
体積は、約1フェムトリットル(fL)〜約100マイクロリットル(μL)、または約
1μL〜約100ナノリットル(nL)、または約1μL〜約50nL、または約1μL
〜約10nL、または約1μL〜約5nL、または約1μL〜約1nL、または約1nL
〜約2nLである。マイクロウェルが円形であるいくつかの例では、マイクロウェルの寸
法は、約5マイクロメートル(μm)〜約40ミリメートル(mm)、または約5μm〜
約500μm、または約500μm〜約2mm、または約2mm〜約40mmである。単
一のポアを囲むマイクロウェルは、定義された体積の液体を保持し得、それにより、定義
されたスプレー液体体積が可能になり、ゆえに、固定された高濃度の分析物およびポア内
の液体の短い脱着時間が可能になる。
アレイは、例えば、2〜約100,000マイクロウェル、または2〜約50,000
マイクロウェル、または2〜約10,000マイクロウェル、または2〜約5,000マ
イクロウェル、または2〜約2,500マイクロウェル、または2〜約1,000マイク
ロウェル、または2〜約500マイクロウェル、または2〜約100マイクロウェル、ま
たは2〜約50マイクロウェル、または約10〜約100,000マイクロウェル、また
は約10〜約50,000マイクロウェル、または約10〜約10,000マイクロウェ
ル、または約10〜約5,000マイクロウェル、または約10〜約2,500マイクロ
ウェル、または約10〜約1,000マイクロウェル、または約100〜約10,000
マイクロウェル、または約100〜約5,000マイクロウェル、または約100〜約2
,500マイクロウェル、または約5,000〜約10,000マイクロウェル、または
約2,500〜約7,500マイクロウェルを含み得る。
本明細書中に記載される原理に従った一例における装置10のアレイが、図5に描写さ
れている。装置10(各々がマイクロウェル14を含む)の24×32グリッド(768
)を含むアレイ70が示されている。
上で述べたように、マイクロウェルのアレイおよび電場発生器は、その一方または両方
が、1つまたはそれを超えるマイクロウェルに対して電場を選択的に活性化するような様
式で動かされ得るように互いに配置され得る。例証としてであって限定ではない例が、図
6〜7に示されている。装置80は、アレイ70および電場発生器74を備える。ロボッ
トアーム72は、アレイ70の動きを制御し、必要に応じて、ロボットアーム76は、電
場発生器74の動きを制御する。装置80は、ロボットアーム72および76の一方また
は両方に対する支持を提供するハウジングも備える(図示せず)。ロボットアーム72お
よびロボットアーム76の各々は、アレイ70および電場発生器74の一方または両方が
互いに対して動かされ得るように、好適な電子機器およびコントローラ(図示せず)を用
いて別々に制御可能である。質量分析計の入口は、電場発生器の動きとそろえられる。こ
のようにして、アレイ70を備える1つまたはそれを超える装置80に電場が選択的に印
加されることにより、アレイ70のマイクロウェルの本質的に非吸収性の膜の特定領域の
取り調べが可能になり得る。液滴のイオン化は、本質的に非吸収性の膜の異なる領域のみ
への電位の印加によって、またはナノ構造を含む外部構造を使用して、選択された領域か
らのイオン化を促進することによって、その領域から達成され得る。さらに、アレイ70
は、膜から選択的に放出された液体の液滴が質量スペクトル分析に供され得るように、質
量分析計の取り入れ口に対して配置され得る(図4を参照のこと)。
図6〜7に示されている例では、電場発生器74を制御しているロボットアームが、ア
レイ70の上に示されていることに注意するべきである。これは、単なる例証であり;い
くつかの例では、ロボットアーム76は、例えば、アレイ70の下に存在し得るか、また
はアレイ70の近く(アレイ70の側に)存在し得る。
本発明の装置は、膜上の正確な小さい体積の液体の放出が望まれる任意の状況における
用途を有する。そのような用途の例としては、例えば、稀な標的分子、稀でない分子、稀
でない細胞および稀な細胞の検出が例証として挙げられるが、これらに限定されない。い
くつかの例では、本質的に非吸収性の膜は、1つより多いポアを含み、個別のポアまたは
ポアのサブセットから液滴を選択的に放出させるために、電場が活性化される。放出され
た液滴は、質量分析に供されて、特定のMS標識が位置する個別のポアまたはポアのサブ
セットの近くの領域が決定される。その領域に対応する膜上の液体は、下記でさらに十分
に論じられる方法による分析のために取り出される。その個別のポアの近くの液体は、例
えば、吸引、その膜の領域の打ち出し、持ち上げ、切開もしくは抽出、またはそれらの2
つもしくはそれを超える組み合わせによって取り出され得る。
誘導荷電
例えば、米国特許第9,184,036号(この内容の全体が本明細書中に参照により
援用される)に記載されているような誘導エレクトロスプレーイオン化では、サンプルを
含む本質的に非吸収性の膜の近くに置かれた1つまたはそれを超える電極(例えば、電場
発生器)に電位が印加され得る。それは、10〜2000Hzの範囲の周波数において、
ポジティブモードまたはネガティブモードで繰り返しパルスする。強い動的な電磁場が、
本質的に非吸収性の膜において発生され、その電磁場は、本質的に非吸収性の膜の具体的
に標的化されたポアの中にその電磁場の焦点を与えて、そのポアから、帯電した液滴のバ
ーストがもたらされる。
誘導荷電では、高電源(例えば、電場発生器)は、サンプル、またはサンプルを含む本
質的に非吸収性の膜と接触しない。このようにして、イオンが誘導荷電によって生成され
る。すなわち、誘導性の方法を用いることにより、主要な微小滴が荷電される。これは、
制御された集中的な液滴の生成を可能にする。生成された液滴は、質量分析計に向けられ
る。
電極(例えば、電場発生器)を本質的に非吸収性の膜の所望のポアの近くに(通常、2
〜5mm離して)置き、それを高い陽電位まで繰り返しパルスすることによって(5〜7
kV、50〜3,000Hz、約0.2〜2msのパルス幅)、本質的に非吸収性の膜上
の特定の位置から帯電した液滴を生成できる。電磁的誘導は、本質的に非吸収性の膜の特
定のポアだけから帯電した液滴のバーストをもたらす、本質的に非吸収性の膜のその特定
のポアのすぐ近くに高電場を生成する。
いくつかの例では、質量タグ放出剤を適用した後に、質量タグ化された稀な細胞または
粒子を有する本質的に非吸収性の膜から、本明細書中で論じられるようなMS標識を含む
液体が直接発射され得る。したがって、質量分析計への入口などのより小さな領域に、放
出された帯電した微小滴/溶媒和イオンのアンビエント静電集束が達成される。いくつか
の例では、本質的に非吸収性の膜の表面の近くに高電場を提供するための本質的に非吸収
性の膜の上または下の点のアレイによって提供されるナノ特徴を用いて、電場によって補
助される、帯電した液滴の排出が達成される。
いくつかの例では、本質的に非吸収性の膜の固有のナノ特徴を用いることにより、帯電
した液滴の電界放出によって、湿った本質的に非吸収性の膜から、分析物を有するイオン
のスプレーが生成され得る。空気の力と静電力との組み合わせを用いて、その後の質量分
析計による分析のためのイオンが収集され得る。これには、質量分析計の入口からの吸引
によって(例えば、真空によって)または質量分析計と無関係な提供される気体流による
空気の力が提供される場合が含まれる。
脱着エレクトロスプレーイオン化
本質的に非吸収性の膜上のサンプルに向けられるイオンビームを生成するための1つの
実施形態は、例えば、Takatsら(米国特許第7,335,897号)(この内容の
全体が本明細書中に参照により援用される)に記載されている脱着エレクトロスプレーイ
オン化(DESI)を用いる。DESIは、周囲条件下の大気圧または減圧において材料
(分析物)のイオン化および脱着を可能にする。DESIシステムは、通常、ネブライジ
ングガス中に液体の液滴を送達することによってDESI活性スプレー(DESI−ac
tive spray)を生成するためのデバイスを備える。そのシステムは、DESI
活性スプレーをある表面上に向けるための手段も備える。そのDESI活性スプレーは、
表面との接触点において、帯電した液体液滴および無電荷の液体液滴の両方またはいずれ
か、気体イオン、ネブライジングガスの分子ならびに付近の大気の分子を含み得ることが
理解される。空気圧によって補助されるスプレーは、サンプルを保持している本質的に非
吸収性の膜上に向けられ、そこで、そのスプレーは、1つまたはそれを超える分析物がサ
ンプル中に存在する場合、それらの分析物と相互作用し、本質的に非吸収性の膜のポアを
通って排出される分析物の脱着したイオンを生成する。脱着したイオンは、質量分析の場
合は質量分析器に、サイズによる分離および生じる電圧変動の計測の場合はIMSデバイ
スに、分光分析の場合は炎光分光計などに向けられ得る。
図11は、DESIシステム100の1つの実施形態を模式的に図示している。このシ
ステムでは、スプレー110は、従来のエレクトロスプレーデバイス120によって生成
されている。デバイス120は、スプレーキャピラリー130を備えており、このスプレ
ーキャピラリーを通って、液体溶媒140が供給される。取り囲んでいるネブライザーキ
ャピラリー150は、輪状の空間を形成しており、そこを通って、窒素(N)などのネ
ブライジングガスが高速で供給される。1つの例において、液体は、水/メタノール混合
物であり、ガスは、窒素であった。高電圧が、電源170によって金属接続素子を介して
液体溶媒に印加される。高速で流れるネブライジングガスがキャピラリー130を出る液
体と相互作用した結果が、液体液滴を含むDESI活性スプレー110の形成である。D
ESI活性スプレー110は、中性の大気分子、ネブライジングガスおよび気体イオンも
含み得る。エレクトロスプレーデバイス120が記載されているが、ネブライジングガス
の噴射によって運ばれる液体液滴流を生成することができる任意のデバイスを、DESI
活性スプレー11を形成するために使用してよい。
スプレー110は、サンプルを保持している本質的に非吸収性の膜上に向けられる。本
質的に非吸収性の膜のポアを通ってサンプルから離れる脱着したイオンが、分析用の質量
分析計の大気入口または境界面に、収集および導入される。本質的に非吸収性の膜は、可
動のプラットフォームであり得るか、または異なる領域においてサンプルを脱着およびイ
オン化するための周知の駆動手段によってx、yまたはz方向に動かされ得る可動のプラ
ットフォーム上に乗せられ得る。プラットフォームの電位および温度も、公知の手段によ
って制御され得る。質量分析計に通常見られる任意の大気境界面が、本発明において使用
するのに適しているだろう。加熱された代表的なキャピラリー大気境界面を用いて、良好
な結果が得られた。金属または絶縁体で作られている、長い可撓性のイオン移動ラインを
介してサンプリングする大気境界面を用いても、良好な結果が得られた。
低温プラズマ
本質的に非吸収性の膜上のサンプルに向けられるイオンビームを生成するための1つの
実施形態は、Ouyangら(米国特許第8,519,354号)(この各内容はその全
体が参照により本明細書中に援用される)に記載されている低温プラズマ(LTP)プロ
ーブを使用する。エレクトロスプレーまたはレーザーに基づくアンビエントイオン源とは
異なり、プラズマ源は、エレクトロスプレー溶媒、補助ガスおよびレーザーを必要としな
い。LTPは、比較的低い運動エネルギーであるが反応性イオンおよび中性イオンととも
に高エネルギー電子を有する非平衡のプラズマとして特徴づけられ得る;その結果は、表
面から分析物を脱着およびイオン化するためならびに分析物の分子イオンまたはフラグメ
ントイオンを生成するために使用され得る、低温周囲プラズマである。高温(平衡)プラ
ズマと比べたときのLTPの際立った特徴は、LTPが、分子を原子または小さい分子フ
ラグメントに破壊しないがゆえに、生成されたイオンに分子の情報が保持されていること
である。LTPのイオン源は、サイズが小さい可能性、低電力および少量のガスを消費す
る(または周囲空気だけを使用する)可能性を有し、これらの利点は、運転経費を減少さ
せ得る。費用節約に加えて、LTPベースのイオン化法は、現場でのリアルタイムの解析
的分析のために移動式の質量分析計を用いて利用される可能性を有する。(Gao,L.
;Song,Q.;Patterson,G.E.;Cooks,D.Ouyang,Z
.,Anal.Chem.2006,78,5994−6002;Mulligan,C
.C.;Talaty,N.;Cooks,R.G.,Chemical Commun
ications 2006,1709−1711;およびMulligan,C.C.
;Justes,D.R.;Noll,R.J.;Sanders,N.L.;Laug
hlin,B.C.;Cooks,R.G.,The Analyst 2006,13
1,556−567)。
例示的なLTPプローブを図12に示す。そのようなプローブは、放電ガスの入口ポー
トを有するハウジング、プローブの先端、2つの電極、および誘電体バリアを備え得、こ
こで、その2つの電極は、その誘電体バリアによって分断されており、電源からの電圧の
印加によって、電場および低温プラズマが発生し、電場もしくは気体流またはその両方が
、低温プラズマをプローブの先端の外に噴射する。本明細書中に記載されるプローブのイ
オン源は、誘電体バリア放電(DBD;Kogelschatz,U.,Plasma
Chemistry and Plasma Processing 2003,23,
1−46)に基づく。誘電体バリア放電は、高電圧信号、例えば、交流を、誘電体バリア
によって分断された2つの電極間に印加することによって達成される。その2つの電極間
に、非熱的低電力プラズマが生成され、その誘電体が、変位電流を制限する。このプラズ
マは、固体サンプル表面ならびにイオン化液体および気体から分子を脱着/イオン化する
ために使用され得るサンプルの周囲環境中の反応性イオン、電子、ラジカル、励起中性種
および準安定種を含む。そのプラズマは、放電領域から引き出され得、電場による力また
は電場と気体流とが組み合わさった力によって、サンプル表面に向かい得る。
ある特定の実施形態において、上記プローブは、電源をさらに備える。その電源は、直
流または交流を提供し得る。ある特定の実施形態において、その電源は、交流を提供する
。ある特定の実施形態において、放電ガスが、放電ガス入口ポートを通ってプローブに供
給され、電場および/または放電ガスが、低温プラズマをプローブの先端の外に噴射する
。放電ガスは、任意のガスであり得る。例示的な放電ガスとしては、ヘリウム、圧縮空気
または周囲空気、窒素およびアルゴンが挙げられる。ある特定の実施形態において、誘電
体バリアは、電気絶縁材料から構成される。例示的な電気絶縁材料としては、ガラス、石
英、セラミックスおよびポリマーが挙げられる。他の実施形態において、誘電体バリアは
、各端が開いているガラス管である。他の実施形態において、電場を変動させることによ
り、サンプル中の分析物から生成されるイオンのエネルギーおよび断片化の程度が調整さ
れる。
低温プラズマプローブからのプラズマ放電は、サンプルを保持している本質的に非吸収
性の膜上に向いている。そのプラズマは、サンプルと相互作用し、サンプルの液体液滴を
、本質的に非吸収性の膜のポアを通って排出させ、分析用の質量分析計の大気の入口また
は境界面に導入させる。
湿った多孔性材料を用いたイオン化
本質的に非吸収性の膜上のサンプルに向かうイオンビームを生成するための1つの実施
形態は、Ouyangら(米国特許第8,859,956号)(この各内容の全体が参照
により本明細書中に援用される)に記載されている、イオンを生成するために湿らされた
多孔性材料を含むプローブを使用する。例示的なプローブを図13に示す。多孔性材料(
例えば、紙(例えば、濾紙またはクロマトグラフィー紙)または他の類似の材料)を使用
することにより、液体が保持され、また、高電圧がその材料に印加されたとき、その液体
は、その材料の縁から直接発生されるイオンビームに変化される。その多孔性材料は、連
続溶媒流などの溶媒流から離れたまま維持される(すなわち、分離するかまたは切り離さ
れる)。その代わりに、液体が、多孔性材料上に点在される。次いで、点在された液体は
、高電圧源に接続されて、サンプルを保持している本質的に非吸収性の膜上に向けられた
その液体のイオンビームを生成する。本質的に非吸収性の膜のポアを通ってサンプルから
出てきた脱着したイオンは、収集されて、分析用の質量分析計の大気の入口または境界面
に導入される。その液体は、別個の溶媒流の必要なしに、多孔性材料を通って輸送される
。空気の補助も必要ない;むしろ、単に電圧が多孔性材料に印加される。
ある特定の実施形態において、上記多孔性材料は、任意のセルロース系材料である。他
の実施形態において、上記多孔性材料は、非金属性の多孔性材料(例えば、コットン、リ
ネンウール、合成繊維または植物の組織)である。なおも他の実施形態において、上記多
孔性材料は、紙である。紙の利点としては、費用(紙は安価である);完全に商品化され
ていて、その物理的および化学的特性を調節することができること;粒状物(細胞および
ちり)を液体サンプルから濾過できること;容易に成形されること(例えば、切りやすい
、裂きやすい、または折り畳みやすい);毛管現象によってその中を液体が流れること(
例えば、外からのポンピングおよび/または電源なしに);および使い捨てであることが
挙げられる。
ある特定の実施形態において、上記多孔性材料は、スプレーのために最適化された巨視
的角度を有する固体の先端と一体化されている。
特定の実施形態において、上記多孔性材料は、濾紙である。例示的な濾紙としては、セ
ルロース濾紙、無灰濾紙、ニトロセルロース紙、ガラスマイクロファイバー濾紙およびポ
リエチレン紙が挙げられる。任意のポアサイズを有する濾紙を使用してよい。例示的なポ
アサイズとしては、Grade 1(11μm)、Grade 2(8μm)、Grad
e 595(4〜7μm)およびGrade 6(3μm)が挙げられる。ポアサイズは
、スプレー材料の内側への液体の輸送に影響するだけでなく、先端におけるテイラーコー
ンの形成にも影響し得る。最適なポアサイズは、安定したテイラーコーンを生成し、液体
の蒸発を減少させる。濾紙のポアサイズも、濾過における重要なパラメータであり、すな
わち、その濾紙は、オンライン前処理デバイスとして作用する。低nmの範囲のポアサイ
ズを有する、再生セルロースの商業的に入手可能な限外濾過膜が、1000Daもの小さ
さの粒子を保持するためにデザインされている。1000Da〜100,000Daの範
囲の分子量カットオフを有する限外濾過膜が、商業的に入手できる。
本発明のプローブは、単純に、多孔性材料の縁で発生される高電場の使用に基づいて、
ミクロンスケールの液滴を生成するためにうまく働く。特定の実施形態において、多孔性
材料は、イオン発生のために、巨視的に鋭い先(例えば、三角形の先)を有するように成
形される。本発明のプローブは、種々の先端幅を有し得る。ある特定の実施形態において
、プローブの先端幅は、少なくとも約5μmまたはそれより広い、少なくとも約10μm
またはそれより広い、少なくとも約50μmまたはそれより広い、少なくとも約150μ
mまたはそれより広い、少なくとも約250μmまたはそれより広い、少なくとも約35
0μmまたはそれより広い、少なくとも約400μまたはそれより広い、少なくとも約4
50μmまたはそれより広いなどである。特定の実施形態において、その先端幅は、少な
くとも350μmまたはそれより広い。他の実施形態において、プローブの先端幅は、約
400μmである。他の実施形態において、本発明のプローブは、3次元の形状、例えば
、円錐形の形状を有する。
稀な標的分子の検出
いくつかの例では、本発明の装置は、親和性剤およびMS法を用いて検出可能な異なる
標識を使用して稀な標的分子の異なる集団を検出する際に使用される。いくつかの例では
、稀な標的分子の異なる集団の間で区別するために選択されたMS標識を生成するために
、1つまたはそれを超える変化剤が使用される。それらの方法は、分離方法も使用し、そ
の方法では、液体液滴が生成され、異なる各MS標識の存在および量の一方または両方に
ついてMS法によって調べられる。MS標識の区別によって、稀な標的分子の異なる各集
団の存在および量の一方または両方に関する情報が得られる。MS標識の数は、稀な標的
分子1つあたり10個またはそれを超えるほど多い場合もあるし、稀な標的分子1つあ
たり10個という少なさである場合もある。稀な標的分子1つあたりのMS標識の数は、
例えば、約10〜約1012個、または約10〜約1010個、または約10〜約10
個、または約10〜約10個、または約10〜約10個、または約10〜約100個
、または約100〜約1010個、または約100〜約10個、または約100〜約1
個、または約100〜約10個であり得る。
いくつかの例では、上記方法は、稀な分子および稀でない分子の1つまたはそれを超え
る異なる集団を含むと疑われるサンプル中の稀な標的分子の1つまたはそれを超える異な
る集団を検出するための方法である。液体の形態のサンプルは、本質的に非吸収性の膜を
構成しているマイクロウェルに接触される。必要に応じて、好適な手法、例えば、濾過を
用いることによって、稀な標的分子の1つまたはそれを超える異なる集団の濃度が、稀で
ない分子の濃度を超えて高められることにより、濃縮されたサンプルが形成される。その
サンプルは、稀な標的分子の異なる各集団に対して、稀な標的分子の集団のうちの1つの
稀な標的分子に特異的であってそれに結合する特異的結合パートナーを含む親和性剤とと
もにインキュベートされる。その親和性剤は、質量分析標識前駆体または第1の変化剤を
含む。その親和性剤は、非粒子状または粒子状であり得る。第1の変化剤は、質量分析標
識前駆体からの質量分析標識の形成を促進するか、または親和性剤から質量分析標識前駆
体を含む実体を放出させる。第1の変化剤が、質量分析標識前駆体からの質量分析標識の
形成を促進しない場合、サンプルは、質量分析標識前駆体からの質量分析標識の形成を促
進する第2の変化剤に供される。その質量分析標識は、稀な標的分子の集団のうちの1つ
に対応するか、またはその1つを構成する。本質的に非吸収性の膜上のサンプルは、電場
に曝露されて、本質的に非吸収性の膜の少なくとも1つのポアを通ってサンプルの液滴を
放出する。それらの液滴は、質量分析に供されることにより、異なる各質量分析標識の存
在および/または量が明らかにされる。各マイクロウェルに対するサンプル中の稀な標的
分子の異なる各集団の存在(present)および/または量に対する異なる各質量分
析標識の存在および/または量。
1つのアプローチにおいて、粒子の拡大が用いられ、それにより、粒子の凝集またはク
ラスター化がもたらされて、粒子凝集物が形成される。1つの例において、より大きな粒
子(キャリア粒子)が、多くのより小さな粒子(標識粒子)によってコーティングされ得
る。拡大をさらに達成するために、そのキャリア粒子は、1つまたはそれを超える連結基
を用いて他のキャリア粒子と繋がれ得る。質量標識のサイズは、比較的小さいので、標識
粒子は、表面上におよそ10個であり得るMS標識を含む。このアプローチでは、非常
に低いバックグラウンドレベルが達成される。キャリア粒子および標識粒子は、本質的に
非吸収性の膜におけるポアより小さい直径を有するべきである。
下記で論じられる1つまたはそれを超える特定手法が、本明細書中に記載される原理に
従ってサンプルを本質的に非吸収性の膜と接触させた後でサンプルに適用され得ることに
注意するべきである。したがって、1つまたはそれを超える稀な標的分子を特定するため
にサンプルを分析するためのアプローチは、まず、どのマイクロウェルが、目的の稀な標
的分子を有しているかを特定することを含む。したがって、その後の分析のために稀な標
的分子を含むサンプルを有するマイクロウェルを特定する手法が、スクリーニング法とし
て用いられ得る。
分析されるべきサンプルは、稀な標的分子、稀でない細胞および稀な細胞を含むと疑わ
れるサンプルである。それらのサンプルは、生物学的サンプルまたは非生物学的サンプル
であり得る。生物学的サンプルは、哺乳動物の被験体または非哺乳動物の被験体由来であ
り得る。哺乳動物の被験体は、例えば、ヒトまたは他の動物種であり得る。生物学的サン
プルとしては、例えば、生体液(例えば、全血、血清、血漿、痰、リンパ液、精液、膣粘
液、便、尿、髄液、唾液、糞便、脳脊髄液、涙液および粘液)が挙げられる。生物学的組
織としては、例えば、例証として、毛、皮膚、器官または他の身体部分由来の切片または
切除組織が挙げられる。多くの場合、サンプルは、全血、血漿または血清である。稀な細
胞は、例えば、肺がん、気管支がん、結腸がん、直腸がん、膵臓がん、前立腺がん、乳が
ん、肝臓がん、胆管がん、膀胱がん、卵巣がん、脳のがん、中枢神経のがん、腎臓がん、
骨盤がん、子宮体がん、口腔がんまたは咽頭がんまたはメラノーマがん由来であり得る。
稀な細胞は、例えば、病原体(例えば、細菌、ウイルス、真菌および原虫);悪性細胞(
例えば、悪性新生物またはがん細胞);循環内皮細胞;循環腫瘍細胞;循環がん幹細胞;
循環がん間葉細胞(circulating cancer mesochymal c
ells);循環上皮細胞;胎児細胞;免疫細胞(B細胞、T細胞、マクロファージ、N
K細胞、単球);および幹細胞であり得るが、これらに限定されない。いくつかの例では
、試験されるべきサンプルは、ヒト被験体であるがこれに限定されない哺乳動物由来の血
液サンプルである。その血液サンプルは、細胞、例えば、稀でない細胞および稀な細胞を
含む血液サンプルである。いくつかの例では、血液サンプルは、全血または血漿である。
句「稀な標的分子」とは、サンプル中で検出され得るバイオマーカーを含む分子のこと
を指し、ここで、その分子またはバイオマーカーは、特定の細胞集団を示すものである。
稀な標的分子としては、抗原(例えば、タンパク質、ペプチド、ホルモン、ビタミン、ア
レルゲン、自己免疫性抗原、炭水化物、脂質、糖タンパク質、コファクター、抗体および
酵素)および核酸が挙げられるが、これらに限定されない。
句「稀な標的分子の集団」とは、その分子群に特異的な共通の抗原または核酸を共有す
る分子群のことを指す。句「〜に特異的」は、その共通の抗原または核酸が、その分子群
を他の分子と区別することを意味する。
稀でない分子は、サンプル中の稀な分子の量と比べたとき、比較的多い量で存在する。
句「細胞集団」とは、その表面上またはその細胞内に抗原または核酸を有する細胞群の
ことを指し、ここで、その抗原は、その群のすべての細胞に共通であり、その抗原は、そ
の細胞群に特異的である。
稀な細胞は、サンプル中の稀でない細胞の量と比べたとき、比較的少ない量でサンプル
中に存在する細胞である。いくつかの例では、稀な細胞は、稀な細胞を含むと疑われるサ
ンプル中の全細胞集団の約10−8重量%〜約10−2重量%の量で存在する。稀な細胞
は、悪性細胞(例えば、悪性新生物またはがん細胞);循環内皮細胞;循環上皮細胞;間
葉系(mesochymal)細胞;胎児細胞;免疫細胞(B細胞、T細胞、マクロファ
ージ、NK細胞、単球);幹細胞;有核赤血球(正赤芽球または赤芽球);および未熟な
顆粒球であり得るが、これらに限定されない。
稀でない細胞は、サンプル中の稀な細胞の量と比べたとき、比較的多い量で存在する細
胞である。いくつかの例では、稀でない細胞は、稀でない細胞および稀な細胞を含むと疑
われるサンプル中の全細胞集団中の稀な細胞の量よりも少なくとも約10倍または少なく
とも約10倍または少なくとも約10倍または少なくとも約10倍または少なくと
も約10倍または少なくとも約10倍または少なくとも約10倍または少なくとも
約10倍多い。稀でない細胞は、例えば、白血球、血小板および赤血球であり得るが、
これらに限定されない。
稀な細胞の稀な標的分子としては、例えば、がん細胞タイプバイオマーカー、がんタン
パク質およびがん遺伝子、化学療法剤抵抗性バイオマーカー、転移潜在性バイオマーカー
、ならびに細胞分類マーカーが挙げられるが、これらに限定されない。がん細胞タイプバ
イオマーカーとしては、例えば、サイトケラチン(CK)(CK1、CK2、CK3、C
K4、CKS、CK6、CK7、CK8およびCK9、CK10、CK12、CK13、
CK14、CK16、CK17、CK18、CK19およびCK2)、上皮細胞接着分子
(EpCAM)、N−カドヘリン、E−カドヘリンおよびビメンチンが例証として挙げら
れるが、これらに限定されない。変異が原因で治療に関連する可能性の高いがんタンパク
質およびがん遺伝子として、例えば、WAF、BAX−1、PDGF、JAGGED1、
NOTCH、VEGF、VEGHR、CAlX、MIB1、MDM、PR、ER、SEL
S、SEM1、PI3K、AKT2、TWIST1、EML−4、DRAFF、C−ME
T、ABL1、EGFR、GNAS、MLH1、RET、MEK1、AKT1、ERBB
2、HER2、HNF1A、MPL、SMAD4、ALK、ERBB4、HRAS、NO
TCH1、SMARCB1、APC、FBXW7、IDH1、NPM1、SMO、ATM
、FGFR1、JAK2、NRAS、SRC、BRAF、FGFR2、JAK3、RA、
STK11、CDH1、FGFR3、KDR、PIK3CA、TP53、CDKN2A、
FLT3、KIT、PTEN、VHL、CSF1R、GNA11、KRAS、PTPN1
1、DDR2、CTNNB1、GNAQ、MET、RB1、AKT1、BRAF、DDR
2、MEK1、NRAS、FGFR1およびROS1が挙げられるがこれらに限定されな
い。
内皮細胞分類マーカーとしては、例えば、CD136、CD105/エンドグリン、C
D144/VE−カドヘリン、CD145、CD34、Cd41 CD136、CD34
、CD90、CD31/PECAM−1、ESAM、VEGFR2/Fik−1、Tie
−2、CD202b/TEK、CD56/NCAM、CD73/VAP−2、クローディ
ン5、Z0−1およびビメンチンが例証として挙げられるが、これらに限定されない。
転移潜在性バイオマーカーとしては、ウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーター(u
PA)、プラスミノゲンアクチベーター阻害剤(PAI−1)、CD95、セリンプロテ
アーゼ(例えば、プラスミンおよびADAM);セリンプロテアーゼ阻害剤(例えば、ビ
クニン);マトリックスメタロプロテアーゼ(例えば、MMP9);マトリックスメタロ
プロテアーゼ阻害剤(例えば、TIMP−1)が挙げられるがこれらに限定されない。化
学療法剤抵抗性バイオマーカーとしては、PL2L piwi様、5T4、ADLH、β
−インテグリン、α6インテグリン、c−kit、c−met、LIF−R、CXCR4
、ESA、CD20、CD44、CD133、CKS、TRAF2およびABCトランス
ポーター、CD45またはCD31を欠くががん幹細胞を示唆するCD34を含むがん細
胞;ならびにCD24を欠くがCD44を含むがん細胞が例証として挙げられるが、これ
らに限定されない(but are limited to)。
本明細書中の方法では、白血球は、稀でない細胞として除外され得る。例えば、ある細
胞が目的の稀な細胞ではないことを示すために、マーカー(例えば、白血球上に存在する
、CD45、CTLA−4、CD4、CD6SおよびCDSであるがこれらに限定されな
い)を用いることができる。特定の非限定的な例では、CD45抗原(タンパク質チロシ
ンホスファターゼレセプタータイプCまたはPTPRCとしても知られ、当初は白血球共
通抗原と呼ばれていた)が、すべての白血球を検出する際に有用である。
さらに、CD45は、稀な細胞であると考えられ得る種々のタイプの白血球を区別する
ために使用することができる。例えば、顆粒球は、CD45+、CD15+によって示さ
れ;単球は、CD45+、CD14+によって示され;Tリンパ球は、CD45+、CD
3+によって示され;Tヘルパー細胞は、CD45+、CD3+、CD4+によって示さ
れ;細胞傷害性T細胞は、CD45+、CD3+、CDS+によって示され;β−リンパ
球は、CD45+、CD19+またはCD45+、CD20+によって示され;血小板は
、CD45+、CD61+によって示され;ナチュラルキラー細胞は、CD16+、CD
56+およびCD3−によって示される。さらに、通常使用される2つのCD分子、すな
わち、CD4およびCD8が、一般に、それぞれヘルパーT細胞および細胞傷害性T細胞
に対するマーカーとして使用される。他の一部の白血球が、これらのCD分子も発現する
ので(一部のマクロファージは、低レベルのCD4を発現し;樹状細胞は、高レベルのC
DSを発現する)、これらの分子は、CD3+と組み合わせて定義される。
他の場合、稀な細胞は、病原体であり、それらとしては、グラム陽性菌(例えば、En
terococcus sp.B群連鎖球菌、コアグラーゼ陰性staphylococ
cus sp.緑色連鎖球菌、黄色ブドウ球菌およびsaprophyicus、Lac
tobacillusおよびそれらの耐性菌);酵母(例えば、Candida alb
icansを含むがこれに限定されない);グラム陰性菌(例えば、大腸菌、肺炎桿菌、
Citrobacter koseri、Citrobacter freundii、
Klebsiella oxytoca、Morganella morganii、緑
膿菌、Proteus mirabilis、霊菌およびDiphtheroids(g
nb)ならびにそれらの耐性菌であるがこれらに限定されない);ウイルス(例えば、H
IV、HPV、FluおよびMERSAであるがこれらに限定されない);および性感染
症が挙げられるが、これらに限定されない。稀な細胞病原体を検出する場合、その稀な細
胞病原体集団に結合する結合パートナーを含む粒子試薬が加えられる。さらに、病原体上
の細胞性の稀な標的分子の各集団に対して、その集団中の細胞性の稀な標的分子に結合す
る、細胞性の稀な標的分子に対する結合パートナーを含む試薬が加えられる。
句「非細胞性の稀な標的分子」とは、細胞に結合されていないかつ/またはサンプル中
で自由に循環している、稀な標的分子のことを指す。そのような非細胞性の稀な標的分子
としては、疾患の医学的診断において有用な生体分子が挙げられ、その有用な生体分子と
しては、例えば、がん、心臓の損傷、循環器疾患、神経疾患、鬱血(hemostasi
s/hemastasis)、胎児の母体内評価(fetal maternal as
sessment)、受胎能、骨の状態、ホルモンレベル、ビタミン、アレルギー、自己
免疫疾患、高血圧症、腎疾患、糖尿病、肝疾患、感染症を検出するためのバイオマーカー
、および疾患の医学的診断において有用な他の生体分子が挙げられるが、これらに限定さ
れない。
上で述べたように、いくつかの場合、稀な標的分子の1つまたはそれを超える集団は、
非細胞性の稀な標的分子の集団であり得る。そのような場合、非細胞性の稀な標的分子の
1つまたは異なる集団の濃度を稀でない分子の濃度を超えて上昇させることにより、濃縮
されたサンプルを形成する目的で、非細胞性の稀な標的分子の各集団に対して、非細胞性
の稀な標的分子に対する結合パートナーを含む捕捉粒子実体が加えられ、その結合パート
ナーは、その集団中の非細胞性の稀な標的分子に結合して、粒子に結合した非細胞性の稀
な標的分子を形成することによって、非細胞性の稀な標的分子が粒子状の形態になる。
粒子の組成は、有機または無機、磁性または非磁性であり得る。有機ポリマーとしては
、例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ポリ(塩化ビニル)、ポリアクリルアミ
ド、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルブテン)、ポ
リスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)
、ポリ(スチレン/ジビニルベンゼン)、ポリ(スチレン/アクリレート)、ポリ(エチ
レンテレフタレート)、メラミン樹脂、ナイロン、ポリ(ビニルブチレート)が例証とし
て挙げられるが、これらに限定されず、これらは、それらだけでまたは他の材料とともに
使用され、それらのラテックス、微小粒子およびナノ粒子の形態を含む。それらの粒子は
、例えば、炭素(例えば、カーボンナノチューブ)、金属(例えば、金、銀および鉄であ
り、それらの金属酸化物も含む)、コロイド、デンドリマー、デンドロン(dendro
n)、核酸、分枝鎖DNAおよびリポソームも含み得る。
粒子実体の粒子の直径は、例えば、稀な標的分子の性質、サンプルの性質、本質的に非
吸収性の膜の性質およびポアサイズ、膜への粒子の接着、粒子の表面、本質的に非吸収性
の膜の表面、液体のイオン強度、液体の表面張力および液体中の構成要素、ならびに付着
される親和性剤およびMS標識前駆体の数、サイズ、形状および分子構造のうちの1つま
たはそれを超えるものに依存する。粒子の直径は、バックグラウンドの寄与を許容され得
るレベルにまで減少させるのに十分大きくなくてはならないが、稀でない分子からの粒子
の分離が非効率的になってしまうほど大きくあってはならない。いくつかの例では、本明
細書中に記載される原理に従って、粒子の平均直径は、少なくとも約0.02ミクロン(
20nm)かつ約200ミクロン以下または約120ミクロン以下であるべきである。い
くつかの例では、粒子は、例えば、約0.1ミクロン〜約20ミクロン、または約0.1
ミクロン〜約15ミクロン、または約0.1ミクロン〜約10ミクロン、または約0.0
2ミクロン〜約0.2ミクロン、または約0.2ミクロン〜約1ミクロン、または約1ミ
クロン〜約5ミクロン、または約1ミクロン〜約20ミクロン、または約1ミクロン〜約
15ミクロン、または約1ミクロン〜約10ミクロン、または約5ミクロン〜約20ミク
ロン、または約5〜約15ミクロン、または約5〜約10ミクロン、または約6〜約15
ミクロン、または約6〜約10ミクロンの平均直径を有する。いくつかの例では、表面へ
の粒子の接着は、粒子直径が、本質的に非吸収性の膜のポアサイズより小さい直径であり
得るほど強い。他の例では、物理的に、粒子が本質的に非吸収性の膜のポアを通って落ち
ることができないように、粒子は、本質的に非吸収性の膜のポアサイズよりも十分に大き
い。
捕捉粒子実体も、非細胞性の稀な標的分子に特異的な結合パートナーを含む。句「結合
パートナー」とは、特異的結合対のメンバーである分子のことを指す。ある特異的結合対
のメンバーは、ある領域を表面上または空隙内に有する2つの異なる分子のうちの一方で
あり、その領域は、他方の分子に特異的に結合し、それにより、他方の分子の特定の空間
的構成および極性構成と相補的であると定義される。特異的結合対のメンバーは、免疫学
的対(例えば、抗原−抗体またはハプテン−抗体)、ビオチン−アビジン、ホルモン−ホ
ルモンレセプター、酵素−基質、核酸二重鎖、IgG−プロテインAおよびポリヌクレオ
チド対(例えば、DNA−DNAまたはDNA−RNA)のメンバーであり得る。結合パ
ートナーは、粒子試薬の粒子に、共有結合的にまたは非共有結合的に結合され得る。「非
共有結合的に」は、結合パートナーが、水素結合、ファンデルワールス力、静電力、疎水
性作用、粒子内への物理的捕捉および荷電相互作用のうちの1つまたはそれを超えるもの
の結果として粒子に結合されることを意味する。「共有結合的に」は、結合パートナーが
、結合または連結基によって粒子に結合されることを意味し、その連結基は、脂肪族また
は芳香族であり得、炭素、酸素、硫黄、窒素およびリンを含む2〜約60個またはそれを
超える原子の鎖を含み得る。
いくつかの例では、サンプルは、被験体の身体から好適な容器(例えば、カップ、バッ
グ、ボトル、キャピラリーまたは針であるがこれらに限定されない)に収集される。血液
サンプルは、VACUTAINER(採血チューブであって、BDから商業的に入手可能
)に収集され得る。その容器は、サンプルが送達される収集媒質を含み得る。その収集媒
質は、通常、乾燥した媒質であり、血液サンプルと混合されたとき、血液サンプル中の血
小板の不活化を達成するのに有効な量の血小板不活化剤を含み得る。
血小板不活化剤としては、キレート剤(例えば、三酢酸部分もしくはその塩、四酢酸部
分もしくはその塩、五酢酸部分もしくはその塩、または六酢酸部分もしくはその塩を含む
作用物質)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例では、キレート剤は、
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその塩またはエチレングリコール四酢酸(E
GTA)およびその塩である。血小板不活化剤の有効量は、例えば、血小板不活化剤の性
質、血液サンプルの性質、血小板活性化のレベルおよびイオン強度のうちの1つまたはそ
れを超えるものに依存する。いくつかの例では、抗血小板薬としてのEDTAの場合、容
器内の乾燥EDTAの量は、約1.0〜約2.0mg/mL血液、または約1.5mg/
mL血液の濃度をもたらし得る量である。血小板不活化剤の量は、少なくとも約90%ま
たは少なくとも約95%または少なくとも約99%の血小板不活化を達成するのに十分な
量である。
上で述べたように、必要に応じて、稀な標的分子の1つまたはそれを超える異なる集団
の濃度が、稀でない分子の濃度を超えて高められることにより、濃縮されたサンプルが形
成される。いくつかの例では、サンプルを本質的に非吸収性の膜と接触させる前に、その
サンプルを、稀でない分子は多孔性マトリックスを通過させつつ、稀な標的分子は保持さ
れる多孔性マトリックスを用いる濾過手順に供することによって、稀な標的分子の濃度が
高められる。1つまたはそれを超える稀な標的分子が、非細胞性である場合、すなわち、
細胞または他の生物学的粒子と会合していない場合、そのサンプルは、1つまたはそれを
超える捕捉粒子実体と合わせられ、ここで、各捕捉粒子実体は、その非細胞性の稀な標的
分子の各集団の非細胞性の稀な標的分子に対する結合パートナーを含むことにより、非細
胞性の稀な標的分子が粒子状の形態になる、すなわち、粒子に結合した非細胞性の稀な標
的分子を形成する。サンプルと捕捉粒子実体とを合わせたものは、非細胞性の稀な標的分
子と、捕捉粒子実体の対応する結合パートナーとの結合を可能にする時間にわたって、そ
れを可能にする温度において、保持される。中程度の温度が、通常使用され、それは、約
5℃〜約70℃または約15℃〜約70℃または約20℃〜約45℃の範囲であり得る。
インキュベーション期間のための時間は、例えば、約0.2秒〜約6時間または約2秒〜
約1時間または約1〜約5分間である。
サンプルと本質的に非吸収性の膜とを接触させるための時間は、例えば、稀な標的細胞
および/または粒子に結合した稀な標的分子の異なる集団の性質およびサイズ、本質的に
非吸収性の膜の性質、本質的に非吸収性の膜のポアのサイズ、本質的に非吸収性の膜上の
サンプルに適用される真空のレベル、濾過される体積、および本質的に非吸収性の膜の表
面積のうちの1つまたはそれを超えるものに依存し得る。いくつかの例では、接触の時間
は、約1分間〜約1時間、約5分間〜約1時間、または約5分間〜約45分間、または約
5分間〜約30分間、または約5分間〜約20分間、または約5分間〜約10分間、また
は約10分間〜約1時間、または約10分間〜約45分間、または約10分間〜約30分
間、または約10分間〜約20分間である。
本明細書中の方法において、濃縮されていないかまたは濃縮されたサンプルは、稀な標
的分子の異なる各集団に対して、稀な標的分子の集団のうちの1つの稀な標的分子に特異
的であってそれに結合する結合パートナーを含む親和性剤とともにインキュベートされ得
る。その親和性剤は、MS標識前駆体、または異なる各MS標識前駆体からのMS標識の
形成を促進するかもしくはMS標識前駆体を含む実体を親和性剤から放出させる第1の変
化剤も含む。多くの例において、上記の組み合わせは、水性媒質中に提供され、その水性
媒質は、もっぱら水であり得るか、または有機溶媒、例えば、極性非プロトン性溶媒、極
性プロトン性溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド
(DMF)、アセトニトリル、有機酸またはアルコール、および水と混和性の非極性溶媒
、例えば、ジオキセンも、約0.1容量%〜約50容量%または約1容量%〜約50容量
%または約5容量%〜約50容量%または約1容量%〜約40容量%または約1容量%〜
約30容量%または約1容量%〜約20容量%または約1容量%〜約10容量%または約
5容量%〜約40容量%または約5容量%〜約30容量%または約5容量%〜約20容量
%または約5容量%〜約10容量%の量で含み得る。いくつかの例では、水性媒質に対す
るpHは、通常、中程度のpHである。いくつかの例では、水性媒質のpHは、約5〜約
8または約6〜約8または約7〜約8または約5〜約7または約6〜約7または生理学的
pHである。様々な緩衝液が、所望のpHを達成するためおよび任意のインキュベーショ
ン期間中にpHを維持するために使用され得る。例証的な緩衝液としては、ホウ酸塩、リ
ン酸塩(例えば、リン酸緩衝食塩水)、炭酸塩、TRIS、バルビタール、PIPES、
HEPES、MES、ACES、MOPSおよびBICINEが挙げられるが、これらに
限定されない。
使用される水性媒質の量は、いくつかの因子(例えば、サンプルの性質および量、試薬
の性質および量、稀な標的細胞の安定性、ならびに稀な標的分子の安定性であるがこれら
に限定されない)に依存する。いくつかの例では、10mLのサンプルあたりの水性媒質
の量は、約5mL〜約100mL、または約5mL〜約80mL、または約5mL〜約6
0mL、または約5mL〜約50mL、または約5mL〜約30mL、または約5mL〜
約20mL、または約5mL〜約10mL、または約10mL〜約100mL、または約
10mL〜約80mL、または約10mL〜約60mL、または約10mL〜約50mL
、または約10mL〜約30mL、または約10mL〜約20mL、または約20mL〜
約100mL、または約20mL〜約80mL、または約20mL〜約60mL、または
約20mL〜約50mL、または約20mL〜約30mLである。
1つまたはそれを超える稀な標的分子が、細胞の一部である場合、水性媒質は、細胞を
溶解するための溶解剤も含み得る。溶解剤は、細胞の膜の完全性を破壊することによって
その細胞の細胞内の内容物を放出させる化合物または化合物の混合物である。溶解剤の例
としては、例えば、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、低
イオン強度水溶液(低張性溶液)、細菌剤(bacterial agents)、脂肪
族アルデヒド、および補体依存性溶解を引き起こす抗体が挙げられるが、これらに限定さ
れない。様々な補助的な材料が、希釈媒質中に存在し得る。水性媒質中のすべての材料が
、所望の効果または機能を達成するのに十分な濃度または量で存在する。
いくつかの例では、1つまたはそれを超える稀な標的分子が、細胞の一部である場合、
サンプルの細胞を固定することが望ましい場合がある。細胞の固定は、細胞を固定化し、
細胞の構造を保存し、それらの細胞によく似た条件における細胞をインビボ様の条件およ
び目的の抗原が特異的な親和性剤によって認識されることができる条件で維持する。使用
される固定液の量は、細胞を保存するが、その後のアッセイにおいて誤った結果をもたら
さない量である。固定液の量は、例えば、固定液の性質および細胞の性質のうちの1つま
たはそれを超えるものに依存し得る。いくつかの例では、固定液の量は、約0.05重量
%〜約0.15重量%または約0.05重量%〜約0.10重量%または約0.10重量
%〜約0.15重量%である。細胞の固定を行うための作用物質としては、例えば、架橋
剤、例えば、アルデヒド試薬(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドおよびパ
ラホルムアルデヒド);アルコール(例えば、C1−C5アルコール、例えば、メタノー
ル、エタノールおよびイソプロパノール);ケトン(例えば、C3−C5ケトン、例えば
、アセトン)が挙げられるが、これらに限定されない。C1−C5またはC3−C5とい
う呼称は、アルコールまたはケトンにおける炭素原子の数のことを指す。1つまたはそれ
を超える洗浄工程が、緩衝水性媒質を用いて、固定された細胞に対して行われる。
必要であれば、固定の後、その細胞調製物は、透過処理にも供され得る。いくつかの場
合、固定剤(例えば、アルコール(例えば、メタノールまたはエタノール)またはケトン
(例えば、アセトン))が、透過処理ももたらし、さらなる透過処理工程は必要ない。透
過処理は、細胞膜を通過した目的の標的分子への接近を提供する。使用される透過処理剤
の量は、細胞膜を破壊して、標的分子への接近を可能にする量である。透過処理剤の量は
、透過処理剤の性質ならびに細胞の性質および量のうちの1つまたはそれを超えるものに
依存する。いくつかの例では、透過処理剤の量は、約0.01%〜約10%または約0.
1%〜約10%である。細胞の透過処理を行うための作用物質としては、アルコール(例
えば、C1−C5アルコール、例えば、メタノールおよびエタノール);ケトン(例えば
、C3−C5ケトン、例えば、アセトン);界面活性剤(例えば、サポニン、TRITO
N X−100(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル−ポリエチレン
グリコール、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、ポリエチレングリコール
tert−オクチルフェニルエーテル緩衝液、Sigma Aldrichから商業的に
入手可能)およびTWEEN−20(ポリソルベート20、Sigma Aldrich
から商業的に入手可能))が挙げられるが、これらに限定されない。1つまたはそれを超
える洗浄工程が、緩衝水性媒質を用いて、透過処理された細胞に対して行われる。
上で述べたように、本明細書中の方法において使用される親和性剤は、稀な標的分子に
特異的な親和性剤である。親和性剤は、特異的結合対のメンバーであり、そのメンバーは
、ある領域を表面上または空隙内に有する2つの異なる分子のうちの一方であり、その領
域は、他方の分子に特異的に結合し、それにより、他方の分子の特定の空間的構成および
極性構成と相補的であると定義される。特異的結合対のメンバーは、免疫学的対(例えば
、抗原−抗体およびハプテン−抗体)のメンバーであり得るが、他の特異的結合対として
は、例えば、ビオチン−アビジン、ホルモン−ホルモンレセプター、酵素−基質、アプタ
マー、核酸二重鎖、IgG−プロテインAおよび核酸対(例えば、DNA−DNA、DN
A−RNA)が挙げられる。細胞の場合、親和性剤は、細胞に会合した標的分子抗原を特
異的に認識するかまたはそれに結合する作用物質である。
特異的結合は、他の分子の実質的に低い認識と比べて、2つの異なる分子のうちの一方
の、他方に対する特異的認識を含む。他方で、非特異的結合は、特異的な表面構造と比較
的無関係な分子間の非共有結合性の結合を含む。非特異的結合は、分子間の疎水性相互作
用をはじめとしたいくつかの因子に起因し得る。
細胞を特定するイムノアッセイにおいて使用するための標的分子に特異的な抗体は、モ
ノクローナルまたはポリクローナルであり得る。そのような抗体は、当該分野で周知の手
法(例えば、宿主の免疫化および血清の収集)によって調製され得るか(ポリクローナル
)、または持続的なハイブリッド細胞株を調製し、分泌タンパク質を収集することによっ
て調製され得るか(モノクローナル)、または天然の抗体の特異的結合に必要なアミノ酸
配列を少なくともコードするヌクレオチド配列もしくはその変異誘発されたバージョンを
クローニングして発現させることによって調製され得る。
抗体には、完全な免疫グロブリンまたはそのフラグメントが含まれ得、その免疫グロブ
リンには、様々なクラスおよびアイソタイプ(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG
1、IgG2a、IgG2bおよびIgG3、IgMなど)が含まれる。そのフラグメン
トには、例えば、Fab、FvおよびF(ab’)およびFab’が含まれ得る。さら
に、特定の分子に対する結合親和性が維持されている限り、必要に応じて、免疫グロブリ
ンまたはそれらのフラグメントの凝集物、ポリマーおよび結合体を使用することができる
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は、当該分野で周知の手法によって調製
され得る。例えば、1つのアプローチにおいて、モノクローナル抗体は、体細胞ハイブリ
ダイゼーション法によって得られる。モノクローナル抗体は、Koehler and
Milstein,Nature 265:495−497,1975の標準的な手法に
従って作製され得る。モノクローナル抗体の手法の総説は、Lymphocyte Hy
bridomas,ed.Melchersら、Springer−Verlag(Ne
w York 1978)、Nature 266:495(1977)、Scienc
e 208:692(1980)およびMethods of Enzymology
73(Part B):3−46(1981)に見られる。一般に、モノクローナル抗体
は、公知の手法(例えば、クロマトグラフィ、例えば、DEAE クロマトグラフィ、A
BxクロマトグラフィおよびHPLCクロマトグラフィ;および濾過であるがこれらに限
定されない)によって精製され得る。
親和性剤は、標的核酸に相補的な核酸(例えば、ポリヌクレオチド)であり得る。ポリ
ヌクレオチドとは、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドまたはそれらの
アナログである任意の長さのヌクレオチドの重合体の形態のことを指す。以下は、ポリヌ
クレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子フラグメントのコード領域または
非コード領域、連鎖分析から定義される遺伝子座、エキソン、イントロン、メッセンジャ
ーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換え
ポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離さ
れたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブおよびプライマー。ポリヌク
レオチドは、修飾ヌクレオチド、例えば、メチル化されたヌクレオチドおよびヌクレオチ
ドアナログを含み得る。ヌクレオチド構造に対する修飾は、存在する場合、ポリマーの組
み立ての前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチドの構成要素
によって中断され得る。ポリヌクレオチドは、標識する構成要素との結合体化などによっ
て、さらに修飾され得る。
親和性剤は、MS標識前駆体、またはMS標識前駆体からのMS標識の形成を促進する
変化剤を含み、ここで、そのMS標識は、稀な標的分子の集団のうちの1つの稀な標的分
子に対応する。MS標識は、稀な標的分子の集団のうちの1つと、稀な分子の他の集団と
の区別を可能にする。さらに、MS標識の選択は、MSによる分析において質量が重複す
ることを回避するため、MS分析におけるバックグラウンド干渉を回避するため、および
多重化を可能にするために行われ得る。
句「質量分析標識」または「MS標識」とは、各ユニークな質量が、稀な標的分子の異
なる各集団の存在および/または量に対応し、かつ各ユニークな質量が、稀な標的分子の
異なる各集団の存在および/または量を明らかにするために使用されるように、ユニーク
な質量、好ましくは3kDA未満を有する1つの分子または分子群のことを指す。MS標
識は、定義された質量の分子であり、それらのMS標識としては、例えば、その質量が、
例えば置換および鎖のサイズによって変動され得る、ポリペプチド、ポリマー、脂肪酸、
炭水化物、有機アミン、核酸および有機アルコールが挙げられるが、これらに限定されな
い。重合体材料の場合、反復単位の数は、質量が、サンプルからのバックグラウンド質量
と重複しない領域内であるように調整される。句「MS標識」は、親和性粒子によって捕
捉される分析物、誘導体化された分析物(ここで、その誘導体化は分析物をイオン性にす
る)、およびイオンの形態の誘導体化されていない分析物も含む。MS標識は、イオン化
の際の構造および断片化に起因して、ユニークな質量パターンを生成する。
用語「分析物」とは、検出されるべき分子のことを指す。例示的な分析物としては、薬
物、代謝産物、農薬および汚染物質が例証として挙げられるが、これらに限定されない。
代表的な分析物としては、アルカロイド、ステロイド、ラクタム、アミノアルキルベンゼ
ン、ベンゾヘテロ環式化合物(benzheterocyclics)、プリン、マリフ
ァナに由来する薬物、ホルモン、ポリペプチド(タンパク質を含む)、免疫抑制剤、ビタ
ミン、プロスタグランジン、三環系抗うつ薬、抗腫瘍薬、ヌクレオシドおよびヌクレオチ
ド(ポリヌクレオシドおよびポリヌクレオチドを含む)、種々の個々の薬物(メタドン、
メプロバメート、セロトニン、メペリジン、リドカイン、プロカインアミド、アセチルプ
ロカインアミド、プロプラノロール、グリセオフルビン、バルプロ酸、ブチロフェノン、
抗ヒスタミン剤、クロラムフェニコール、抗コリン薬を含む)ならびに上記のすべての代
謝産物および誘導体も例証として挙げられるが、これらに限定されない。疾患状態に関係
する代謝産物、アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシン、カナマイシン(kanam
icin)、トブラマイシンおよびアミカシン)および農薬(例えば、ポリハロゲン化ビ
フェニル、リン酸エステル、チオホスフェート、カルバメートおよびポリハロゲン化スル
フェンアミド)ならびにそれらの代謝産物および誘導体も含まれる。用語「分析物」には
、ポリペプチドおよびタンパク質、多糖および核酸のうちの2つまたはそれを超えるもの
の組み合わせも含まれる。そのような組み合わせとしては、例えば、細菌、ウイルス、染
色体、遺伝子、ミトコンドリア、核および細胞膜の構成要素が挙げられる。タンパク質分
析物としては、例えば、免疫グロブリン、サイトカイン、酵素、ホルモン、がん抗原、栄
養マーカーおよび組織特異的抗原が挙げられる。そのようなタンパク質としては、プロタ
ミン、ヒストン、アルブミン、グロブリン、硬タンパク質、リンタンパク質、ムコタンパ
ク質、色素タンパク質、リポタンパク質、核タンパク質、糖タンパク質、T細胞レセプタ
ー、プロテオグリカン、HLA、未分類のタンパク質、例えば、ソマトトロピン、プロラ
クチン、インスリン、ペプシン、ヒト血漿中に見られるタンパク質、血液凝固因子、タン
パク質ホルモン、例えば、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、ルテオトロピン、プロ
ラクチン、絨毛性ゴナドトロピン、組織ホルモン、サイトカイン、がん抗原、例えば、P
SA、CEA、α−フェトプロテイン、酸性ホスファターゼ、CA19.9、CA15.
3およびCA125、組織特異的抗原、例えば、アルカリホスファターゼ、ミオグロビン
、CPK−MBおよびカルシトニン、ならびにペプチドホルモンが例証として挙げられる
が、これらに限定されない。他の目的の重合体材料は、ムコ多糖および多糖である。上で
示されたように、分析物という用語には、さらに、例えば、オリゴヌクレオチドおよびポ
リヌクレオチド分析物(例えば、m−RNA、r−RNA、t−RNA、DNAおよびD
NA−RNA二重鎖)が含まれる。
「MS標識前駆体」は、変化剤の作用によってMS標識をもたらす任意の分子である。
MS標識前駆体は、それ自体が変化剤の作用を通じて、例えば、切断、ある部分との反応
、誘導体化、または分子、電荷もしくは原子の付加もしくは除去、または上記の2つもし
くはそれを超えるものの組み合わせによって、別のMS標識に変換されるMS標識であり
得る。
用語「変化剤」とは、MS標識前駆体を変化させる能力を有する物質のことを指す。あ
る特定の実施形態において、変化剤は、MS標識前駆体と相互作用して、約1Da〜約3
kDaの範囲内または約1Da〜約50Daの範囲内または約50Da〜約150Daの
範囲内または約150Da〜約700Daの範囲内または約700Da〜約3kDaの範
囲内のユニークな質量を有するMS標識をもたらすことができる。いくつかの例では、M
S標識のユニークな質量は、約3kDa未満である。MS標識前駆体は、結合の切断によ
って変更されて、中性イオン、陰イオンもしくは陽イオンまたはラジカルを形成し得る。
変化剤によるMS標識前駆体の変化は、MS標識前駆体への原子、電荷もしくは電子の付
加、またはMS標識前駆体からの原子、電荷もしくは電子の除去、またはMS標識前駆体
における結合の切断、またはMS標識前駆体における結合の形成によるものであり得る。
変化剤としては、化学剤(例えば、触媒(例えば、酵素(偽酵素(pseudoenzy
mes)を含む)および金属)、酸化剤、還元剤、酸、塩基、置換反応(substit
ution reactions)または置換反応(replacement reac
tions)を促進する作用物質;およびイオン化剤であるがこれらに限定されない)が
挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例では、変化剤は、MS標識前駆体と
、例えば、MS標識を形成する部分との反応を促進することによって、MS標識前駆体か
らのMS標識の形成を促進する。いくつかの例では、変化剤は、例えば、MS標識前駆体
からのMS標識の放出を促進することによって、MS標識前駆体からのMS標識の形成を
促進する。
MS標識前駆体の性質は、例えば、MS標識の性質、使用されるMS法の性質、使用さ
れるMS検出器の性質、稀な標的分子の性質、親和性剤の性質、使用される任意のイムノ
アッセイの性質、サンプルの性質、使用される任意の緩衝液の性質、分離の性質のうちの
1つまたはそれを超えるものに依存し得る。いくつかの例では、MS標識前駆体は、質量
が置換および/または鎖のサイズによって変動し得る分子である。MS標識前駆体から生
成されるMS標識は、定義された質量の分子であり、それは、分析されるサンプル中に存
在するべきでない。さらに、それらのMS標識は、MS検出器によって検出される範囲内
に存在するべきであり、重複する質量を有するべきでなく、一次質量によって検出可能で
あるべきである。本発明の方法において使用するためのMS標識前駆体の例としては、例
証としてであって限定でなく、ポリペプチド、有機ポリマーおよび無機ポリマー、脂肪酸
、炭水化物、環状炭化水素、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、有機カルボン酸、有機ア
ミン、核酸、有機アルコール(例えば、アルキルアルコール、アシルアルコール、フェノ
ール、ポリオール(例えば、グリコール)、チオール、エポキシド、第一級、第二級およ
び第三級アミン、インドール、第三級および第四級アンモニウム化合物、アミノアルコー
ル、アミノチオール、フェノールアミン、インドールカルボン酸、フェノール酸、ビニル
酸(vinylogous acid)、カルボン酸エステル、リン酸エステル、カルボ
ン酸アミド、ポリアミドおよびポリエステル由来のカルボン酸、ヒドラゾン、オキシム、
トリメチルシリルエノールエーテル、アセタール、ケタール、カルバメート、尿素、グア
ニジン、イソシアネート、スルホン酸、スルホンアミド、スルホニル尿素、硫酸エステル
、モノグリセリド、グリセロールエーテル、スフィンゴシン塩基、セラミン(ceram
ines)、セレブロシド、ステロイド、プロスタグランジン、炭水化物、ヌクレオシド
および治療薬が例証として挙げられるが、これらに限定されない。
MS標識前駆体は、1〜約100,000のMS標識、または約10〜約100,00
0のMS標識、または約100〜約100,000のMS標識、または約1,000〜約
100,000のMS標識、または約10,000〜約100,000のMS標識を含み
得る。MS標識前駆体は、タンパク質、ポリペプチド、ポリマー、粒子、炭水化物、核酸
、脂質、または付着によってMS標識の複数の反復単位を含むことができる他の高分子を
含み得る。すべてのMS標識前駆体が、多くのMS標識を生成し得るので、複数のMS標
識は増幅可能である。
例えば、ポリペプチドMS標識前駆体の場合、そのポリペプチドの鎖長は、バックグラ
ウンドピークのない質量領域内のMS標識をもたらすように調整され得る。さらに、MS
標識は、試験されているサンプル中に存在しないユニークな質量を有するMS標識前駆体
から生成され得る。ポリペプチドMS標識前駆体は、さらなるアミノ酸または誘導体化ア
ミノ酸を含み得、それにより、方法を多重化して、一度に1つより多い結果を得ることが
可能になる。ポリペプチドMS標識前駆体の例としては、例えば、ポリグリシン、ポリア
ラニン、ポリセリン、ポリトレオニン、ポリシステイン、ポリバリン、ポリロイシン、ポ
リイソロイシン、ポリメチオニン、ポリプロリン、ポリフェニルアラニン、ポリチロシン
、ポリトリプトファン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン、ポ
リグルタミン、ポリヒスチジン、ポリリジンおよびポリアルギニンが挙げられるが、これ
らに限定されない。アミノ酸または誘導体化アミノ酸の混合物によって区別されるポリペ
プチドMS標識前駆体は、ラジカルありまたはなしで偶数または奇数電子イオン(ele
ction ion)を有する質量を生成する。いくつかの例では、ポリペプチドは、触
媒によって修飾されることができる。例えば、例証としてであって限定でなく、触媒とし
てペルオキシダーゼ酵素を用いて、フェノールおよび芳香族アミンがポリトレオニンに付
加され得る。別の例では、例証としてであって限定でなく、触媒としてペルオキシダーゼ
酵素を用いて、芳香族アミンに電子が伝達され得る。別の例では、例証としてであって限
定でなく、触媒としてホスファターゼを用いて、有機ホスフェートからホスフェートが除
去され得る。
別の例では、例証としてであって限定でなく、MS標識前駆体からMS標識を生成する
部分として、誘導体化剤が使用される。例えば、ジニトロフェニルおよび他のニトロフェ
ニル誘導体が、MS標識前駆体から形成され得る。他の例としては、エステル化、アシル
化、シリル化、保護的なアルキル化、ケトン−塩基縮合(例えば、シッフ塩基)、環化、
蛍光性誘導体の形成および無機アニオンによる誘導体化が例証として挙げられるが、これ
らに限定されない。誘導体化反応は、MS分析前であるが親和性反応の後に微量反応にお
いて生じ得るか、または親和性試薬に結合体化されたMS標識前駆体を生成するために用
いられ得る。
いくつかの例では、MS標識前駆体は、MS標識前駆体から得られるMS標識の中に残
る同位体(例えば、H、13Cおよび18Oであるがこれらに限定されない)を含み得
る。そのMS標識は、イオン化の後の一次質量または二次質量によって検出され得る。い
くつかの例では、MS標識前駆体は、結合の切断を引き起こす比較的高い電位を有するも
のであり、例えば、アルキル化アミン、アセタール、第1級アミンおよびアミドであるが
これらに限定されず、ここで、そのMS標識は、ラジカルありまたはなしで偶数または奇
数電子イオンを有する質量を生成し得る。ポリペプチドの選択によって、ユニークなMS
スペクトルシグネチャが生成され得る。
上で述べたように、変化剤は、酵素(偽酵素を含む)であり得る。いくつかの例では、
触媒は、例えば、シリカゲル、木炭、DEAE−セルロース、DEAE−SEPHADE
X(架橋デキストランゲル、Sigma Aldrichから商業的に入手可能)、クエ
ン酸セルロース、カオリナイト、リン酸セルロース、酸性粘土、AMBERLITE X
E−97(Rohm & Haasが製造しているカルボン酸陽イオン交換樹脂)、カル
ボキシメチルセルロース、ガラス、石英、dowex−50、デンプンゲル、ポリアクリ
ルアミドゲル、ポリアミノ酸またはアミノベンジルセルロースと固定化された水不溶性酵
素誘導体によって生じ得る。架橋剤を用いることにより、その酵素を固定化することがで
きる。そのような架橋剤としては、例えば、グルタルアルデヒド、アジプイミド酸ジメチ
ル、カルボジイミド、無水マレイン酸、MDAメチレンジアニリン、ヒドラジドおよびア
シルアジドが挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの例では、本明細書中に記載される原理に一致するための酵素は、酵素基質(
例えば、MS標識前駆体)として、未変換の基質の存在下において質量分析計の質量検出
器によって検出されるMS標識に変換し得る、高い代謝回転速度を有する任意の酵素であ
る。その酵素は、試験されているサンプル中に存在するべきでないか、または、サンプル
中に存在する場合、試験前にサンプルから除去されなければならない。この目的に適した
酵素の例としては、例えば、ホスファターゼ(例えば、アルカリホスファターゼ、脂質ホ
スファターゼ、チロシンホスファターゼ、セリンホスファターゼ、トレオニンホスファタ
ーゼおよびヒスチジンホスファターゼ);オキシダーゼ(例えば、西洋ワサビペルオキシ
ダーゼ、銅アミンオキシダーゼ、D−アミノ酸オキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ
、血漿アミンオキシダーゼ、トリプトファンペルオキシダーゼ、ウリカーゼオキシダーゼ
およびキサンチンオキシダーゼ);β−ガラクトシダーゼ;トランスフェラーゼ(例えば
、D−アラニントランスフェラーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、アシルトランスフ
ェラーゼ、アルキルトランスフェラーゼ、アリールトランスフェラーゼ、単一炭素トラン
スフェラーゼ(single carbon transferase)、ケトントラン
スフェラーゼ、アルデヒドトランスフェラーゼ、窒素含有基転移酵素、リン含有基転移酵
素、硫黄含有基転移酵素およびペントシルトランスフェラーゼ);ペプチダーゼ(例えば
、ペプシン、パパイン、レンニン(キモシン)、レニン、トロンビン、トリプシン、マト
リックスメタロペプチダーゼ、カテプシン(cathespin)、システインプロテア
ーゼおよびカルボキシペプチダーゼ);アルドラーゼ(例えば、カルボキシルアルドラー
ゼ、アルデヒドアルドラーゼ、オキソ酸、トリプトファナーゼ);脂肪酸酵素(例えば、
脂肪酸アミン加水分解酵素、脂肪酸シンターゼおよびコリンアセチルトランスフェラーゼ
)、および上記の2つまたはそれを超えるものの組み合わせ(例えば、アルカリホスファ
ターゼ、酸性ホスファターゼ、オキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ
、アシラーゼ、アスパラギナーゼ、カタラーゼ、キモトリプシン、アミラーゼ、グルコア
ミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソ
キナーゼ、インベルターゼ、リパーゼ、ホスホグルコムターゼ、リボヌクレアーゼ、アセ
チルコリンエステラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルドラーゼ、コリンエステラ
ーゼ、クエン酸シンテターゼ、ウレアーゼ、アミログルコシダーゼ(amylgluco
sidase)、カルボキシペプチダーゼ、コリンエステラーゼ、ルシフェラーゼ、リボ
ヌクレアーゼ、ピルビン酸キナーゼおよびズブチロペプチダーゼのうちの2つまたはそれ
を超えるもの)が挙げられるが、これらに限定されない。
酵素に対する基質は、その基質に対するその酵素の作用によって放出されるMS標識を
含むMS標識前駆体である。酵素基質の一部であり得るそのようなMS標識としては、例
えば、フェノール(基質、例えば、p−ニトロフェニルホスフェート、p−ニトロフェニ
ル−β−D−ガラクトシド、アミノ酸、ペプチド、炭水化物(6−ホスホ−D−グルコネ
ート)、脂肪酸(アセチル−CoA)、アルキルアミン、グリセロールに由来する);お
よびナフトール(基質、例えば、p−ニトロナフチルホスフェート、p−ニトロ−ナフチ
ル−β−D−ガラクトシドに由来する)が例証として挙げられるが、これらに限定されな
い。
親和性剤に付着された部分からMS標識を放出させるために使用され得る金属としては
、例えば、遷移金属(例えば、パラジウム、白金、金、ルテニウム、ロジウムまたはイリ
ジウム)、キレートされた金属(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、N−(
2−ヒドロキシエチル)−エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)またはtrans−1
,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(CDTA)によって錯体化された、例えば、鉄、
銅、コバルト、マグネシウム)、金属酸化体(例えば、次亜塩素酸ナトリウム、過ヨウ素
酸カリウム、酸化銀、クロム酸、過マンガン酸カリウムおよび過ホウ酸ナトリウム)およ
び金属還元体(例えば、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、アスコ
ルビン酸ナトリウム、亜リン酸塩およびナトリウム)が挙げられるが、これらに限定され
ない。
MS標識は、直接検出され得るか、または放出されたMS標識が、別の化合物とさらに
反応して、MS法によって検出される誘導体MS標識を形成し得る。誘導体MS標識は、
MS標識前駆体から得られるMS標識から形成される化合物であり、ここで、その化合物
も、MS法によって検出可能である。誘導体MS標識を形成するこのアプローチは、本明
細書中に記載される原理に一致する方法の多重化能力をさらに高める。例えば、放出され
たフェノールまたはナフトールは、ペルオキシダーゼの存在下において芳香族アミンに結
合し得る(例えば、米国特許第5,182,213号(この関連する開示は、参照により
本明細書中に援用される)を参照のこと)。1つの例において、放出されたナフトールは
、アルカリ性の媒質中の過酸化的に活性な物質の存在下において、フェニレンジアミン、
例えば、α−フェニレンジアミン二塩酸塩と結合して、誘導体MS標識を生成する。異な
るナフトールおよび/または異なるフェニレンジアミンを用いて多重化が達成され得る。
内部標準は、質量スペクトル分析の重要な面である。いくつかの例では、稀な標的分子
の検出のために使用されるMS標識に加えて、(内部標準として)計測され得る第2の質
量標識が、加えられ得る。その内部標準は、MS標識と同様の構造を有するが、質量にわ
ずかなずれがある。さらなるアミノ酸または誘導体化アミノ酸を含む内部標準が調製され
得る。あるいは、同位体標識(例えば、H(D)、13Cおよび18Oであるがこれら
に限定されない)を組み込むことによって、内部標準が調製され得る。そのMS同位体標
識は、天然に存在する物質より大きな質量を有する。例えば、同位体標識されたMS標識
、例えば、グリセロール−C−d7、酢酸ナトリウム−C−d7、ピルビン酸ナトリウム
−C−d7、D−グルコース−C−d7、重水素化グルコースおよびデキストロース−C
−d7が、それぞれグリセロール、酢酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、グルコース
およびデキストロースに対する内部標準として働き得る。
MS標識前駆体または変化剤は、結合によって直接または連結基の仲介を介して共有結
合的に親和性剤に付着され得る(それにより、修飾された親和性剤が得られる)。いくつ
かの実施形態において、修飾された親和性剤の調製は、直接的な結合による親和性剤への
MS標識前駆体または変化剤の付着に適した官能基を使用することによって行われ得る。
使用される官能基の性質は、例えば、MS標識前駆体の性質、変化剤の性質および親和性
剤の性質(1つまたはそれを超える異なる粒子、例えば、親和性剤の一部であり得るキャ
リア粒子および標識粒子の性質を含む)のうちの1つまたはそれを超えるものに依存する
。多数の好適な官能基が、アミノ基およびアルコールに付着するために利用可能であり;
そのような官能基としては、例えば、活性化エステル(例えば、カルボン酸エステル、イ
ミド酸エステル、スルホン酸エステルおよびリン酸エステルを含む);活性化された亜硝
酸エステル(activated nitrites);アルデヒド;ケトン;およびア
ルキル化剤が挙げられる。
連結基は、1〜約60個またはそれを超える原子、または1〜約50個の原子、または
1〜約40個の原子、または1〜30個の原子、または約1〜約20個の原子、または約
1〜約10個の原子の鎖であり得、その原子の各々は独立して、一般に、炭素、酸素、硫
黄、窒素およびリン、通常は、炭素および酸素からなる群より選択される。連結基におけ
るヘテロ原子の数は、約0〜約8、約1〜約6または約2〜約4の範囲であり得る。連結
基の原子は、水素以外の原子、例えば、アルキル、アリール、アラルキル、ヒドロキシル
、アルコキシ、アリールオキシまたはアラルコキシ基の形態の、例えば、炭素、酸素およ
び窒素のうちの1つまたはそれを超える原子で置換され得る。通則として、特定の連結基
の長さは、合成の都合に備えるために任意に選択できるが、ただし、連結された分子が本
明細書中に開示される方法に関係する機能を発揮する能力を有する状態で、連結基によっ
て引き起こされる干渉は最小である。
連結基は、脂肪族であってもよいし、芳香族であってもよい。ヘテロ原子が存在すると
き、酸素は、一般に、炭素、硫黄、窒素またはリンに結合したオキシまたはオキソとして
存在し;硫黄は、一般に、チオエーテルまたはチオノとして存在し;窒素は、一般に、炭
素、酸素、硫黄またはリンに結合した、ニトロ、ニトロソまたはアミノとして一般に存在
し;リンは、一般には通常、ホスホン酸モノエステルまたはホスホン酸ジエステルおよび
リン酸モノエステルまたはリン酸ジエステルとして、炭素、硫黄、酸素または窒素に結合
している。連結基に存在する官能基としては、エステル、チオエステル、アミド、チオア
ミド、エーテル、尿素、チオ尿素、グアニジン、アゾ基、チオエーテル、カルボキシレー
トなどが挙げられ得る。連結基は、高分子(例えば、多糖、ペプチド、タンパク質、ヌク
レオチドおよびデンドリマー)でもあり得る。
いくつかの実施形態において、MS標識前駆体または場合によっては変化剤と、親和性
剤とが、共に非共有結合的に連結され得る。結合対、通常、特異的結合対のメンバーが、
使用され、ここで、一方のメンバーが、親和性剤に連結されており、他方のメンバーが、
MS標識前駆体または変化剤に連結されている。結合対のメンバーが結合すると、親和性
剤とMS標識前駆体または変化剤との非共有結合性の連結がもたらされる。それらの結合
対のメンバーは、MS標識前駆体もしくは変化剤および親和性剤の一方もしくは両方に直
接連結され得るか、または連結基(その性質は上で論じられた)の仲介を介して間接的に
連結され得る。いくつかの例では、特異的結合対のメンバーは、比較的高い結合定数を有
し、例えば、例証として、アビジン(ストレプトアビジン)−ビオチン結合、フルオレセ
イン(FITC)およびFITCに対する抗体、ローダミン(テキサスレッド)およびロ
ーダミンに対する抗体、ジギトニン(DIG)およびDIGに対する抗体、非ヒト種抗体
(例えば、ヤギ、ウサギ、マウス、ニワトリ、ヒツジ)および抗種抗体であるがこれらに
限定されない。
別個の個々の反応物中の異なる各親和性剤をMS標識前駆体または変化剤に連結し、次
いで、修飾された親和性剤を混合して、修飾された親和性剤を含む混合物を形成すること
によって、修飾された親和性剤は調製され得る。あるいは、異なる親和性剤が混合され得
、その混合物に対して、親和性剤をMS標識前駆体または変化剤に連結する反応が、行わ
れ得る。これにより、一度に1つより多い結果を得るために方法が多重化されることが可
能になる。
本発明の方法において使用されるそれぞれの異なる修飾された親和性剤の量は、例えば
、稀な標的分子のそれぞれの異なる集団の性質および潜在的な量、MS標識の性質、親和
性剤の性質、存在する場合には細胞の性質、使用される場合には粒子の性質、ならびに使
用される場合にはブロッキング剤の量および性質のうちの1つまたはそれを超えるものに
依存する。いくつかの例では、使用される異なる修飾された各親和性剤の量は、約0.0
01μg/μL〜約100μg/μL、または約0.001μg/μL〜約80μg/μ
L、または約0.001μg/μL〜約60μg/μL、または約0.001μg/μL
〜約40μg/μL、または約0.001μg/μL〜約20μg/μL、または約0.
001μg/μL〜約10μg/μL、または約0.5μg/μL〜約100μg/μL
、または約0.5μg/μL〜約80μg/μL、または約0.5μg/μL〜約60μ
g/μL、または約0.5μg/μL〜約40μg/μL、または約0.5μg/μL〜
約20μg/μL、または約0.5μg/μL〜約10μg/μLである。
使用される変化剤の数は、MS標識前駆体の性質、変化剤の性質、変化剤が媒質中で遊
離しているのかまたは修飾された親和性剤の一部であるのか、ならびに使用される異なる
親和性試薬の性質および数のうちの1つまたはそれを超えるものに応じて、MS標識前駆
体1つにつき1、またはMS標識前駆体2つにつき1、またはMS標識前駆体3つにつき
1から、使用されるMS標識前駆体すべてにつき1までであり得る。例えば、MS標識前
駆体の各々が、親和性剤に対する異なるMS標識の不安定なエステルまたは不安定なアミ
ド結合を含む場合、ジスルフィド結合、エステル結合またはアミド結合の加水分解を引き
起こして、異なるMS標識をもたらす単一の変化剤が使用され得る。1つの変化剤、また
はMS標識前駆体の数より少ない変化剤を使用する他の例では、使用され得る。別の例で
は、異なる変化剤を使用することにより、使用される異なる各タイプの親和性剤に対して
MS標識が生成され得る。
修飾された親和性剤を細胞上または粒子試薬上の稀な標的分子に結合させるために、水
性媒質中にサンプル(必要に応じて濃縮されたもの)と修飾された親和性剤とを含む組み
合わせが、ある温度においてある時間にわたって保持されることによって、処理される。
変化剤を含む修飾された各親和性剤に対して、変化剤が作用するMS標識前駆体が、その
組み合わせに含められ、ここで、そのMS標識前駆体は、MS標識に変換される。いくつ
かの例では、さらなる部分が加えられ、ここで、変化剤が、その部分とMS標識前駆体と
の反応を促進して、MS標識をもたらす。いくつかの例では、修飾された親和性剤は、M
S標識前駆体を含み、変化剤は、媒質中の結合していない物質としてその組み合わせに含
められる。この例では、変化剤は、親和性剤のMS標識前駆体に対して作用して、MS標
識を生成する。いくつかの例では、MS標識前駆体を含む実体を親和性剤から放出させる
第1の変化剤が使用され、その後、第2の変化剤が使用されて、MS標識前駆体からのM
S標識の形成が促進される。
この処理の温度および持続時間は、例えば、サンプルの性質、稀な標的分子の性質、稀
でない分子の性質、修飾された親和性剤の性質、MS標識前駆体の性質および変化剤の性
質に依存する。いくつかの例では、中程度の温度が一般に使用され、通常、一定温度、好
ましくは、室温である。保持期間中の温度は、一般に、例えば、約5℃〜約99℃または
約15℃〜約70℃または約20℃〜約45℃の範囲である。保持期間は、例えば、約0
.2秒〜約24時間または約1秒〜約6時間または約2秒〜約1時間または約1〜約15
分である。この期間は、例えば、媒質の温度および様々な試薬の結合の速度に依存する。
修飾された親和性剤、すなわち、変化剤によって作用され、稀な標的分子に結合される
ようになった親和性剤は、必要に応じて、標的分子に結合されなかった修飾された親和性
剤から分離される。いくつかの例では、この分離は、サンプル中の稀でない分子の数を減
少させることを含む。
処理されたサンプルと、本質的に非吸収性の膜との接触は、稀な標的細胞、または粒子
に結合した稀な標的分子を、本質的に非吸収性の膜の表面上に保持して、上で論じられた
ような稀な標的細胞、または粒子に結合した稀な標的分子の異なる集団を有する本質的に
非吸収性の膜の表面を得るのに十分な時間にわたって続けられる。その期間は、例えば、
稀な標的細胞、または粒子に結合した稀な標的分子の異なる集団の性質およびサイズ、多
孔性マトリックスの性質、多孔性マトリックスのポアのサイズ、多孔性マトリックス上の
血液サンプルに適用される真空のレベル、濾過されるべき体積、ならびに多孔性マトリッ
クスの表面積のうちの1つまたはそれを超えるものに依存し得る。いくつかの例では、接
触の時間は、例えば、約1分間〜約1時間、約5分間〜約1時間、または約5分間〜約4
5分間、または約5分間〜約30分間、または約5分間〜約20分間、または約5分間〜
約10分間、または約10分間〜約1時間、または約10分間〜約45分間、または約1
0分間〜約30分間、または約10分間〜約20分間である。
第1の変化剤が、MS標識前駆体からのMS標識の形成を促進しない場合、保持液は、
親和性剤からのMS標識前駆体からのMS標識の形成を促進する第2の変化剤に供される
保持液は、MS分析に供されて、異なる各MS標識の存在および/または量が明らかに
される。異なる各MS標識の存在および/または量は、稀な標的細胞および/または粒子
に結合した稀な標的分子の異なる各集団の存在および/または量に関係する。
MS分析は、正確な同定および測定のために、分子の質量電荷比(m/z)を決定する
。MS法は、いくつかの手法によって分子を、粒子としての集団にイオン化し得、それら
の手法としては、例えば、大気圧化学イオン化法(APCI)、エレクトロスプレーイオ
ン化法(ESI)、誘導(inductive)エレクトロスプレーイオン化法(iES
I)、化学イオン化法(CI)および電子イオン化法(EI)、高速原子衝撃法(FAB
)、電場脱着/電界イオン化法(FC/FI)、サーモスプレーイオン化法(TSP)、
ナノスプレーイオン化法が挙げられ得るが、これらに限定されない。それらの集団が、い
くつかの手法によって、質量検出器においてフィルタリングおよび分離が行われ、それら
の手法としては、飛行時間型(TOF)、イオントラップ、四重極マスフィルター、セク
ター質量分析(sector mass analysis)、多重反応モニタリング(
MRM)およびフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)が例証として挙げ
られるが、これらに限定されない。MS法は、例えば、マイクロチャネルプレート、電子
増倍管またはファラデーカップを用いて、分子を検出する。MS法は、第1のMSからの
帯電した質量粒子が第2のMSに分離される、タンデム型MS/MS法として繰り返され
得る。
質量分析器としては、例えば、四重極型、飛行時間型(TOF)分析器、磁場型、フー
リエ変換イオントラップおよび四重極イオントラップが挙げられるが、これらに限定され
ない。タンデム型(MS−MS)質量分析計は、1つより多い分析器を有する機器である
。タンデム型質量分析計としては、例えば、四重極−四重極、磁場型−四重極、四重極−
飛行時間型が挙げられるが、これらに限定されない。質量分析計の検出器は、例証として
であって限定でなく、例えば、光電子増倍管、電子増倍管またはマイクロチャネルプレー
トであり得る。
質量分析による分析の後、異なる各質量分析標識の存在および/または量が、稀な標的
細胞および/または粒子に結合した稀な標的分子の異なる各集団の存在および/または量
と関係づけられる。MS標識と標的分子との関係は、その標的分子に特異的な、使用され
る修飾された親和性剤によって確立される。キャリブレータを使用して、MS標識からの
シグナルの量と、サンプル中の稀な標的分子の量との関係が確立される。サンプルは、さ
らなる分析に供され得る。
上で述べたように、本質的に非吸収性の膜は、1つより多いポアを含み得、電場は、個
別のポアから液滴を選択的に放出するように活性化され得る。放出された液滴は、質量分
析に供されて、特定のMS標識が位置する個別のポアに隣接する領域が決定される。その
領域に対応する膜上の液体が、分析のために取り出される。その個別のポアに隣接する液
体は、上で述べた方法のいずれかによって取り出され得る。分析のための方法としては、
例えば、イムノアッセイ、酵素増幅、細胞濾過、核酸配列決定、質量分析、化学分析、核
酸増幅、核酸発現、細胞成長および細胞応答アッセイ、またはそれらの2つもしくはそれ
を超えるものの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
1つの例において、サンプルは、好適な細胞緩衝液を含む容器内に収集される。収集さ
れたサンプルは、濾過に供されて、細胞に結合した稀な標的分子の数が、サンプル中の他
の分子(例えば、稀でない細胞)の数を超えて濃縮される。細胞に結合した稀な標的分子
に特異的な抗体に連結された変化剤を含む親和性剤が、濾過デバイスの本質的に非吸収性
の膜上に保持された濃縮されたサンプルと合わせられる。好適なインキュベーション期間
の後、その膜は、緩衝液で洗浄される。MS標識前駆体が、その膜上のサンプルに加えら
れる。親和性剤の変化剤は、親和性剤と、細胞に結合した標的分子とを含む免疫複合体の
一部である。稀な標的分子が、サンプル中に存在する場合、その変化剤は、MS標識前駆
体に対して作用することにより、その稀な標的分子に対応するMS標識を生成する。本質
的に非吸収性の膜は、電場に供され、MS標識が収集される。いくつかの実施形態におい
て、スプレー液体またはスプレー溶媒が、本質的に非吸収性の膜を構成しているウェルに
加えられ、その膜は、電場および必要に応じて真空に曝露されて、その多孔性の膜から液
体の液滴を放出する。稀な標的分子が、サンプル中に存在する場合、そのMS標識は、稀
な標的分子に対応する特有のスペクトルを与える。このスペクトルは、その膜上の稀な細
胞の濃度および位置と相関し得る。その膜上の稀な細胞の位置は、さらなる分析のために
、どこから稀な細胞を取り出すかを特定することができる。上記の例では、ただ1つの稀
な標的分子の検出が描写されている;しかしながら、任意の数の稀な標的分子が、上で論
じられたような上で論じられたような様々なMS標識前駆体を用いることにより、単一の
サンプルに対する単一の方法で測定され得ることが認識されるべきである。
別の例では、サンプルは、好適な細胞緩衝液を含む容器内に収集される。収集されたサ
ンプルは、濾過に供されて、細胞に結合した稀な標的分子の数が、サンプル中の他の分子
(例えば、稀でない細胞)の数を超えて濃縮される。細胞に結合した稀な標的分子に特異
的な抗体に連結されたMS標識前駆体を含む親和性剤が、濾過デバイスの本質的に非吸収
性の膜上に保持された濃縮されたサンプルと合わせられる。好適なインキュベーション期
間の後、その膜は、緩衝液で洗浄される。変化剤が、その膜上のサンプルに加えられる。
親和性剤のMS標識前駆体は、親和性剤と、細胞に結合した標的分子とを含む免疫複合体
の一部である。稀な標的分子が、サンプル中に存在する場合、その変化剤は、MS標識前
駆体に対して作用することにより、その稀な標的分子に対応するMS標識を生成する。本
質的に非吸収性の膜は、電場に供され、MS標識が収集される。いくつかの実施形態にお
いて、スプレー液体またはスプレー溶媒が、本質的に非吸収性の膜を構成しているウェル
に加えられ、その膜は、電場および必要に応じて真空に曝露されて、その多孔性の膜から
液体の液滴を放出する。稀な標的分子が、サンプル中に存在する場合、そのMS標識は、
稀な標的分子に対応する特有のスペクトルを与える。このスペクトルは、その膜上の稀な
細胞の濃度および位置と相関し得る。上記の例では、ただ1つの稀な標的分子の検出が描
写されている;しかしながら、任意の数の稀な標的分子が、上で論じられたような上で論
じられたような様々なMS標識前駆体を用いることにより、単一のサンプルに対する単一
の方法で測定され得ることが認識されるべきである。
別の例では、サンプルは、容器内に収集され、希釈された形態または未希釈の形態で、
本質的に非吸収性の膜に加えられる。この例では、稀な標的分子は、非粒子状であり、す
なわち、稀な標的分子は、細胞または他の粒子に結合されていない。収集されたサンプル
は、稀な標的分子に対する抗体に付着した粒子を含む粒子試薬と合わせられる。細胞に結
合していない稀な標的分子が、粒子上の抗体に結合するのを可能にすることにより、粒子
に結合していて細胞に結合していない稀な標的分子をもたらすインキュベーション期間の
後、そのサンプルは、濾過に供されて、粒子に結合していて細胞に結合していない稀な標
的分子の数が、サンプル中の他の分子(例えば、稀でない細胞)の数を超えて濃縮される
。濾過デバイスの表面上に保持されたサンプルは、好適な緩衝液で洗浄される。粒子に結
合していて細胞に結合していない稀な標的分子に特異的な抗体に連結された変化剤を含む
親和性剤が、濾過デバイスの膜上に保持された濃縮されたサンプルと合わせられる。好適
なインキュベーション期間の後、その膜は、緩衝液で洗浄される。MS標識前駆体が、そ
の膜上のサンプルに加えられる。親和性剤の変化剤は、親和性剤と、粒子に結合していて
細胞に結合していない標的分子とを含む免疫複合体の一部である。稀な標的分子が、サン
プル中に存在する場合、その変化剤は、MS標識前駆体に対して作用することにより、そ
の稀な標的分子に対応するMS標識を生成する。本質的に非吸収性の膜は、電場に供され
、MS標識が収集される。いくつかの実施形態において、スプレー液体またはスプレー溶
媒が、本質的に非吸収性の膜を構成しているウェルに加えられ、その膜は、電場および必
要に応じて真空に曝露されて、その多孔性の膜から液体の液滴を放出する。稀な標的分子
が、サンプル中に存在する場合、そのMS標識は、稀な標的分子に対応する特有のスペク
トルを与える。このスペクトルは、その膜上の稀な細胞の濃度および位置と相関し得る。
上記の例では、ただ1つの、細胞に結合していない稀な標的分子の検出が描写されている
;しかしながら、任意の数の稀な標的分子(細胞に結合したものと細胞に結合していない
ものの両方)が、上で論じられたような様々なMS標識前駆体を用いることにより、単一
のサンプルに対する単一の方法で測定され得ることが認識されるべきである。
別の例では、液体サンプルは、容器内に収集され、希釈された形態または未希釈の形態
で、本質的に非吸収性の膜に加えられる。この例では、稀な標的分子は、非粒子状であり
、すなわち、稀な標的分子は、細胞または他の粒子に結合されていない。収集されたサン
プルは、稀な標的分子に対する抗体に付着した粒子を含む粒子試薬と合わせられる。細胞
に結合していない稀な標的分子が、粒子上の抗体に結合するのを可能にすることにより、
粒子に結合していて細胞に結合していない稀な標的分子をもたらすインキュベーション期
間の後、そのサンプルは、濾過に供されて、粒子に結合していて細胞に結合していない稀
な標的分子の数が、サンプル中の他の分子(例えば、稀でない細胞)の数を超えて濃縮さ
れる。濾過デバイスの表面上に保持されたサンプルは、好適な緩衝液で洗浄される。粒子
に結合していて細胞に結合していない稀な標的分子に特異的な抗体に連結されたMS標識
前駆体を含む親和性剤が、濾過デバイスの膜上に保持された濃縮されたサンプルと合わせ
られる。好適なインキュベーション期間の後、その膜は、緩衝液で洗浄される。変化剤が
、その膜上のサンプルに加えられる。親和性剤のMS標識前駆体は、親和性剤と、粒子に
結合していて細胞に結合していない標的分子とを含む免疫複合体の一部である。稀な標的
分子が、サンプル中に存在する場合、その変化剤は、MS標識前駆体に対して作用するこ
とにより、その稀な標的分子に対応するMS標識を生成する。本質的に非吸収性の膜は、
電場に供され、MS標識が収集される。いくつかの実施形態において、スプレー液体また
はスプレー溶媒が、本質的に非吸収性の膜を構成しているウェルに加えられ、その膜は、
電場および必要に応じて真空に曝露されて、その多孔性の膜から液体の液滴を放出する。
稀な標的分子が、サンプル中に存在する場合、そのMS標識は、稀な標的分子に対応する
特有のスペクトルを与える。このスペクトルは、その膜上の稀な細胞の濃度および位置と
相関し得る。上記の例では、ただ1つの、細胞に結合していない稀な標的分子の検出が描
写されている;しかしながら、任意の数の稀な標的分子(細胞に結合したものと細胞に結
合していないものの両方)が、上で論じられたような様々なMS標識前駆体を用いること
により、単一のサンプルに対する単一の方法で測定され得ることが認識されるべきである
別の例では、サンプルは、容器内に収集され、希釈された(dilute)形態または
未希釈の形態で、本質的に非吸収性の多孔性の膜に加えられる。この例では、稀な標的分
子は、非粒子状であり、すなわち、稀な標的分子は、細胞または他の粒子に結合されてい
ない。収集されたサンプルは、稀な標的分子に対する抗体に付着した粒子を含む粒子試薬
と合わせられる。細胞に結合していない稀な標的分子が、粒子上の抗体に結合するのを可
能にすることにより、粒子に結合していて細胞に結合していない稀な標的分子をもたらす
インキュベーション期間の後、そのサンプルは、濾過に供されて、粒子に結合していて細
胞に結合していない稀な標的分子の数が、サンプル中の他の分子(例えば、稀でない細胞
)の数を超えて濃縮される。濾過デバイスの表面上に保持されたサンプルは、好適な緩衝
液で洗浄される。細胞に結合していない稀な標的分子をMS標識に変換する変化剤が、膜
上のサンプルに加えられる。好適なインキュベーション期間の後、その膜は、緩衝液で洗
浄される。稀な標的分子が、サンプル中に存在する場合、その変化剤は、稀な標的分子に
対して作用することにより、その稀な標的分子に対応するMS標識を生成する。本質的に
非吸収性の膜は、電荷電場に供され、MS標識が収集される。いくつかの実施形態におい
て、スプレー液体またはスプレー溶媒が、本質的に非吸収性の膜を構成しているウェルに
加えられ、その膜は、電場および必要に応じて真空に曝露されて、その多孔性の膜から液
体の液滴を放出する。稀な標的分子が、サンプル中に存在する場合、そのMS標識は、稀
な標的分子に対応する特有のスペクトルを与える。このスペクトルは、その膜上の稀な細
胞の濃度および位置と相関し得る。上記の例では、ただ1つの、細胞に結合していない稀
な標的分子の検出が描写されている;しかしながら、任意の数の稀な標的分子(細胞に結
合したものと細胞に結合していないものの両方)が、上で論じられたような様々なMS標
識前駆体を用いることにより、単一のサンプルに対する単一の方法で測定され得ることが
認識されるべきである。
粒子の拡大を使用する方法の例
上で述べたように、1つのアプローチでは、粒子の拡大が用いられ、それにより、粒子
の凝集またはクラスター化がもたらされて、MS標識またはMS標識前駆体を含む粒子凝
集物が形成される。
句「粒子の拡大」とは、単一の稀な標的分子を示す標識粒子の数が向上する、粒子の凝
集物またはクラスターの形成のことを指す。いくつかの例では、稀な標的分子を示す粒子
の凝集物における標識分子の数は、1010〜1個、または10〜1個、または10
〜1個、または10〜1個、または10〜1個、または10〜1個、または10
〜1個、または10〜1個、または10〜1個、または10〜1個、または1010
〜10個、または1010〜10個、または1010〜10個、または1010
10個である。粒子の拡大は、多くのMS標識またはMS標識前駆体が会合した多くの
小さな標識粒子と会合した、より大きな粒子(キャリア粒子)を使用することによって達
成される。
用語「〜と会合される」とは、2つの部分が互いに結合される様を指す。会合は、上で
定義されたような共有結合または非共有結合を介したものであり得る。付着は、2つの部
分の間の直接的な結合によって達成されてもよいし、または連結基が、2つの部分の間に
おいて使用されてもよい。連結基は、例えば、上に記載されたとおりであり得る。
キャリア粒子の組成は、例えば、捕捉粒子実体について上に記載されたとおりであり得
る。キャリア粒子のサイズは、1つまたはそれを超える標識粒子を収容するのに十分に大
きい。標識粒子と単一のキャリア粒子との比は、例えば、10対1または10対1ま
たは10対1または10対1または10対1または10対1であり得る。キャリア
粒子の直径も、例えば、稀な標的分子の性質、サンプルの性質、本質的に非吸収性の膜の
性質およびポアサイズ、膜への粒子の接着、粒子の表面、膜の表面、液体のイオン強度、
液体の表面張力および液体中の構成要素、ならびに会合される標識粒子の数、サイズ、形
状および分子構造のうちの1つまたはそれを超えるものに依存し得る。多孔性マトリック
スが、濾過分離工程において使用されるとき、キャリア粒子の直径は、粒子の拡大の利点
を達成するためにいくつかの標識粒子を保持するのに十分に大きいが、濾過デバイスの本
質的に非吸収性の膜のポアを通過するのに十分に小さくあるべきである。いくつかの例で
は、キャリア粒子の平均直径は、少なくとも約0.1ミクロンかつ約1ミクロン以下また
は約5ミクロン以下であるべきである。いくつかの例では、キャリア粒子は、約0.1ミ
クロン〜約5ミクロン、または約1ミクロン〜約3ミクロン、または約4ミクロン〜約5
ミクロン、約0.2ミクロン〜約0.5ミクロン、または約1ミクロン〜約3ミクロン、
または約4ミクロン〜約5ミクロンの平均直径を有する。
標識粒子の組成は、例えば、捕捉粒子実体について上に記載されたとおりであり得る。
標識粒子のサイズは、例えば、キャリア粒子の性質およびサイズ、MS標識またはMS標
識前駆体、変化剤の性質およびサイズ、稀な標的分子の性質、サンプルの性質、本質的に
非吸収性の膜の性質およびポアサイズ、粒子の表面、膜の表面、液体のイオン強度、およ
び液体の表面張力、および液体中の構成要素のうちの1つまたはそれを超えるものに依存
し得る。いくつかの例では、標識粒子の平均直径は、少なくとも約0.01ミクロンかつ
約0.1ミクロン以下または約1ミクロン以下であるべきである。いくつかの例では、標
識粒子は、約0.01ミクロン〜約1ミクロン、または約0.01ミクロン〜約0.5ミ
クロン、または約0.01ミクロン〜約0.4ミクロン、または約0.01ミクロン〜約
0.3ミクロン、または約0.01ミクロン〜約0.2ミクロン、または約0.01ミク
ロン〜約0.1ミクロン、または約0.01ミクロン〜約0.05ミクロン、または約0
.1ミクロン〜約0.5ミクロン、または約0.05ミクロン〜約0.1ミクロンの平均
直径を有する。いくつかの例では、標識粒子は、イオン会合によって、遊離カルボン酸基
を有する磁性キャリア粒子に連結され得る、シリカナノ粒子であり得る。
標識粒子と会合されるMS標識またはMS標識前駆体の数は、例えば、MS標識または
MS標識前駆体の性質およびサイズ、標識粒子の性質およびサイズ、リンカーアームの性
質、標識粒子上の官能基の数およびタイプ、ならびにMS標識前駆体上の官能基の数およ
びタイプのうちの1つまたはそれを超えるものに依存し得る。いくつかの例では、単一の
標識粒子と会合されるMS標識またはMS標識前駆体の数は、約10〜1個、または約
10〜1個、または約10〜1個、または約10〜1個、または約10〜1個、
または約10〜1個、または約10〜1個である。
上で述べたように、いくつかの例が、稀な分子および稀でない分子の1つまたはそれを
超える異なる集団を含むと疑われるサンプル中の稀な標的分子の1つまたはそれを超える
異なる集団の方法に関する。稀でない分子の濃度を超えて高められた濃度の稀な標的分子
の1つまたはそれを超える異なる集団を有するサンプル(ここで、その稀な標的分子は、
粒子状の形態である)は、稀な標的分子の異なる各集団に対して、稀な標的分子の集団の
うちの1つの稀な標的分子に特異的でありそれに結合する結合パートナーを含む親和性剤
とともにインキュベートされる。その親和性剤は、MS標識前駆体または第1の変化剤を
含む。稀な標的分子の異なる各集団に対して、親和性剤は、粒子試薬を含む。第1の変化
剤は、MS標識前駆体からのMS標識の形成を促進するか、または親和性剤からMS標識
前駆体を含む実体を放出させる。インキュベート中に、稀な標的分子の異なる各集団に対
して、親和性剤の粒子試薬から粒子凝集物が形成される。インキュベートされたサンプル
を本質的に非吸収性の膜と接触させることによって、保持液および濾液が形成される。そ
の保持液は、本質的に非吸収性の膜上に配置されるようになる。スプレー液体またはスプ
レー溶媒が、その本質的に非吸収性の膜を構成しているウェルに加えられ、その膜が、電
場および必要に応じて真空に曝露されることにより、液体の液滴がその多孔性の膜から放
出される。
いくつかの例では、液体液滴が本質的に非吸収性の膜のポアを通過するのを促進するた
めに、本質的に非吸収性の膜上のサンプルに、真空が適用される。適用される真空のレベ
ルは、例えば、稀な細胞および/または粒子試薬の異なる集団の性質およびサイズ、本質
的に非吸収性の膜の性質、ならびに本質的に非吸収性の膜のポアのサイズのうちの1つま
たはそれを超えるものに依存し得る。いくつかの例では、適用される真空のレベルは、約
1ミリバール〜約100ミリバール、または約1ミリバール〜約80ミリバール、または
約1ミリバール〜約50ミリバール、または約1ミリバール〜約40ミリバール、または
約1ミリバール〜約30ミリバール、または約1ミリバール〜約25ミリバール、または
約1ミリバール〜約20ミリバール、または約1ミリバール〜約15ミリバール、または
約1ミリバール〜約10ミリバール、または約5ミリバール〜約100ミリバール、また
は約5ミリバール〜約80ミリバール、または約5ミリバール〜約50ミリバール、また
は約5ミリバール〜約30ミリバール、または約5ミリバール〜約25ミリバール、また
は約5ミリバール〜約20ミリバール、または約5ミリバール〜約15ミリバール、また
は約5ミリバール〜約10ミリバールである。真空の適用は、電場の印加と連係して行わ
れるので、本明細書中に記載される原理にって本質的に非吸収性の膜を構成する個々のマ
イクロウェルから液体液滴を選択的に放出することができる。
液滴は、異なる各MS標識の存在および/または量を明らかにするためにMS分析に供
される。異なる各MS標識の存在および/または量は、サンプル中の非細胞性の稀な標的
分子の異なる各集団の存在および/または量に関係する。このようにして、さらなる分析
のためのサンプルが特定され得る。1つのアプローチでは、目的の材料を含む本質的に非
吸収性の膜が、任意の好都合な方法によって取り出され得る。そのような方法の例として
は、例えば、目的の本質的に非吸収性の膜の一部の打ち出しまたは濾過が挙げられるが、
これらに限定されない。
粒子凝集物のサイズは、例えば、捕捉粒子の性質およびサイズ、キャリア粒子の性質お
よびサイズ、標識粒子の性質およびサイズ、連結基の性質およびサイズ、MS標識または
MS標識前駆体の性質およびサイズ、変化剤の性質、稀な標的分子の性質、サンプルの性
質、濾過マトリックスの性質およびポアサイズ、粒子の表面、マトリックスの表面、液体
のイオン強度、ならびに液体の表面張力、ならびに液体中の構成要素のうちの1つまたは
それを超えるものに依存する。本明細書に記載の粒子にしたがういくつかの例では、粒子
凝集物の平均直径は、少なくとも約0.1ミクロンかつ約500ミクロン以下または約1
,000ミクロン以下である。いくつかの例では、粒子凝集物は、例えば、約0.1ミク
ロン〜約1,000ミクロン、または約0.1ミクロン〜約500ミクロン、または約0
.1ミクロン〜約100ミクロン、または約0.1ミクロン〜約10ミクロン、または約
0.1ミクロン〜約5ミクロン、または約0.1ミクロン〜約1ミクロン、または約1ミ
クロン〜約10ミクロン、または約10ミクロン〜約500ミクロン、または約10ミク
ロン〜約100ミクロンの平均直径を有する。
1つの例において、稀な標的分子は、およそ約10ミクロン(μm)の細胞の表面に付
着される。この例では約1μmという平均直径を有するキャリア粒子が、第1の連結基を
用いて特異的結合パートナー、例えば、稀な標的分子に対する抗体に連結される。第2の
連結基が、さらなるキャリア粒子を互いに線状の様式で連結する。この例では、細胞1つ
あたりのキャリア粒子の数は、約1,000である。さらに、各キャリア粒子1つあたり
およそ100個の標識粒子(直径約200nm)が、第3の連結基を用いて連結される。
各標識粒子に対して、約10個のMS標識(質量標識)が、第4の連結基を用いてそれ
に連結される。この例では、MS標識は、約1nmというサイズを有する。それらの連結
基は、上に記載されたような任意の連結基から選択され得、それらの2つまたはそれを超
えるものは、同じであってもよいし、それらの連結基の各々は、互いに異なっていてもよ
い。いくつかの例では、例えば、キャリア粒子が、互いからもしくは細胞から切断され得
る、かつ/または標識粒子が、キャリア粒子から切断され得る、かつ/またはMS標識も
しくはMS標識前駆体が、標識粒子から切断され得るように、1つまたはそれを超える連
結基が、切断可能な部分を有する。連結基の切断可能な部分が互いに異なる場合、様々な
連結基の切断は、連続的に行われ得る。
上で述べたように、1つまたはそれを超える連結基は、切断剤によって切断可能である
、切断可能な部分を含み得る。その切断剤の性質は、切断可能な部分の性質に依存する。
切断可能な部分の切断は、例えば、酸化、還元、加溶媒分解、例えば、加水分解、光分解
、熱分解、電気分解、超音波処理および化学的置換のうちの1つまたはそれを超えるもの
を含む、化学的な方法または物理的な方法によって達成され得る。切断可能な部分および
対応する切断剤の例としては、還元剤、例えば、チオールを用いて切断され得るジスルフ
ィド;酸化剤、例えば、過ヨウ素酸塩を用いて切断され得るジオール;過マンガン酸塩ま
たは四酸化オスミウムによって切断され得るジケトン;ハイドロサルファイトを用いて切
断され得るジアゾ結合またはオキシム結合;塩基性条件下において切断され得るβ−スル
ホン;α−炭素が、例えば、カルボニルまたはニトロによって活性化される場合に、塩基
を用いて切断され得る、テトラアルキルアンモニウム(tetralkylammoni
um)、トリアルキルスルホニウム、テトラアルキルホスホニウム(tetralkyl
phosphonium);アルカリ性条件下において加水分解剤、例えば、ヒドロキシ
ルアミン、アンモニアまたはトリアルキルアミン(例えば、トリメチルアミンまたはトリ
エチルアミン)を用いて切断され得るエステル結合およびチオエステル結合;還元によっ
て脱離が生じるキノン;光分解的に切断され得る置換ベンジルエーテル;熱的に切断され
得るカーボネート;配位子が、より高い親和性配位子で置換され得る、金属キレート;一
重項酸素を用いて切断され得るチオエーテル;酸性条件下において切断可能であるヒドラ
ゾン結合;第四アンモニウム塩(例えば、水酸化ナトリウム水溶液によって切断可能);
トリフルオロ酢酸によって切断可能な部分、例えば、ベンジルアルコール誘導体、テイコ
プラニンアグリコン、アセタールおよびチオアセタール;例えば、HFまたはクレゾール
を用いて切断され得る、チオエーテル;スルホニル(例えば、トリフルオロメタンスルホ
ン酸、トリフルオロ酢酸またはチオアニソールによって切断可能);求核剤によって切断
可能な部位、例えば、フタルアミド(例えば、置換ヒドラジンを用いて切断可能);切断
が、媒質のイオン強度を変更すること、破壊的なイオン性の物質を加えること、pHを低
下もしくは上昇させること、界面活性物質を加えること、超音波処理すること、および帯
電した化学物質を加えることによって達成され得る、イオン会合(逆に帯電した部分の誘
引);および適切な波長を有する光、例えば、300nmまたはそれを超えるUV光を用
いて切断可能である、光切断可能な結合が例証として挙げられるが、これらに限定されな
い。
1つの例において、切断可能な結合は、ジスルフィド結合を含むN−スクシンイミジル
3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)(SPDP)との結合体化を用いて形成さ
れ得る。例えば、アミン官能基を含む標識粒子が、SPDPに結合体化され、次いで、得
られ得る結合体が、チオール官能基を含むMS標識と反応され得、それにより、そのMS
標識部分とその結合体との結合がもたらされる。ジスルフィド還元剤(例えば、ジチオト
レイトール(DTT)またはトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP))
が、変化剤として使用されることにより、MS標識として、チオール化されたペプチドが
放出され得る。
濾過デバイスの膜上での粒子凝集物(粒子クラスター)の形成の、例証としてであって
限定ではない例が、次に論じられる。細胞、またはサンプル中の非粒子状の稀な標的分子
を捕捉した捕捉粒子を、濾過スライドの膜と接触させ、ここで、その膜のポアのサイズは
、細胞、または粒子に結合した稀な標的分子を保持することについて上に記載されたとお
りである。上で論じられたように、非粒子状の材料を除去するためならびに稀でない分子
および稀でない細胞の数を減少させるための好適な洗浄の後、上に記載されたようなキャ
リア粒子のセットが、稀な標的分子の異なる各集団に対して加えられ、ここで、それらの
キャリア粒子の各セットは、測定される異なる稀な標的分子に特異的な特異的結合パート
ナーを含む。その特異的結合パートナーは、第1の連結基を用いてキャリア粒子に連結さ
れる。キャリア粒子は、第2の連結基を用いて互いに連結される。もう1回の洗浄工程の
後、標識粒子を加え、ここで、標識粒子の各セットは、測定される異なる稀な標的分子に
対するMS標識またはMS標識前駆体を含む。標識粒子は、キャリア粒子上の官能基と反
応性である官能基を含む。それらの官能基の反応は、第3の連結基を形成させる。MS標
識またはMS標識前駆体は、第4の連結基を用いて標識粒子に結合される。結果として、
稀な標的分子、キャリア粒子、標識粒子およびMS標識またはMS標識前駆体を含む粒子
クラスターが形成される。
いくつかの例では、上で論じられたような官能基の対応する適切な官能性を用いて、1
つまたはそれを超える連結基が、上に記載されたように共有結合的に形成される。いくつ
かの例では、1つまたはそれを超える(one of more)連結基が、上で論じら
れたように、非共有結合的に形成される。結合対、通常、特異的結合対のメンバーが使用
され、ここで、一方のメンバーが、1つの連結基部分に連結されており、他方のメンバー
が、第2の連結基部分に連結されている。結合対のメンバーが結合すると、それらの結合
対メンバーおよび2つの連結基部分を含む連結基が形成される。結合対メンバーの結合は
、最終的に連結基を形成する2つの連結基部分の非共有結合性の連結をもたらす。それら
の連結基部分は、上で論じられたように、結合または連結基であり得る。上で述べたよう
に、結合対のメンバーは、比較的高い結合定数を有し、そのメンバーは、例えば、例証と
して、アビジン(ストレプトアビジン)−ビオチン結合、フルオレセイン(FITC)お
よびFITCに対する抗体、ローダミン(テキサスレッド)およびローダミンに対する抗
体、ジギトニン(DIG)およびDIGに対する抗体、非ヒト種抗体(例えば、ヤギ、ウ
サギ、マウス、ニワトリ、ヒツジ)および抗種抗体であるが、これらに限定されない。
いくつかの例では、例証としてであって限定でなく、第1の連結基は、ビオチンに連結
された二次抗体を使用している切断不可能な結合を含み得、ここで、その二次抗体は、稀
な標的分子に対する抗体に結合し、ビオチンは、キャリア粒子の表面上のストレプトアビ
ジン分子に結合する。あるいは、抗体は、一般に公知である生物結合体化(biocon
jugation)法を用いて、粒子上のカルボン酸および抗体上のアミンへのアミド結
合(amide bounds)を介してキャリア粒子に直接結合体化され得る。別の例
では、第1の連結基は、ビオチンに連結されており、かつ例えばSPDPとの反応によっ
て形成されるジスルフィドリンカーによって抗体に付着されている、小分子ペプチドを使
用している切断可能な結合を含み得る。いくつかの例では、第2の連結基は、キャリア粒
子が、その表面上にストレプトアビジン分子を有する切断不可能な結合を含み得、ビオチ
ンと小分子との結合体、例えば、ビオチン−FITCが、連結基を形成するために使用さ
れる。切断可能な結合が、第2の連結基にとって望ましいとき、ビオチン−FITC剤が
、切断可能な部分、例えば、ジスルフィド結合を含む。第2の連結基の小分子部分、例え
ば、FITC部分は、キャリア粒子の表面上の小分子に対する結合パートナー(例えば、
FITCに対する抗体)に結合する。第3の連結基は、連結部分が、アミド結合によって
FITCまたはビオチンに付着されたペプチドを有する、切断不可能な結合を含み得るか
、または第3の連結基は、連結部分が、ジスルフィド結合によってFITCまたはビオチ
ンに付着されたペプチドを有する、切断可能な結合を含み得る。第3の連結基は、標識粒
子上のイオン化されたアミンまたは他の基が、標識粒子上のイオン化されたカルボン酸ま
たは他の基に引きつけられるイオン結合を含み得る。上で説明したように、MS標識また
はMS標識前駆体は、切断可能な結合(例えば、ジスルフィド結合によって付着されたペ
プチドまたは他のMS標識であるがこれらに限定されない)によって、標識粒子に付着さ
れる。
句「小分子」は、例えば、約100〜約2,000、または約200〜約2,000、
または約300〜約2,000、または約500〜約2,000、または約1,000〜
約2,000、または約500〜約1,500、または約1,000〜約1,500、ま
たは約1,000〜約1,200の範囲の分子量を有する分子を指す。小分子の例として
は、例えば、ビオチン、ジゴキシン、ジゴキシゲニン、2,4−ジニトロフェニル、フル
オレセイン、ローダミン、低分子ペプチド(上述の分子量の限界を満たすもの)、ビタミ
ンB12およびホレートが例証として挙げられるが、これらに限定されない。小分子対に
対する小分子結合パートナーの例としては、例えば、ビオチンに対するビオチン結合パー
トナー(例えば、アビジン、ストレプトアビジンおよびビオチンに対する抗体)、ジゴキ
シンに対するジゴキシン結合パートナー(例えば、ジゴキシンに対する抗体)、ジゴキシ
ゲニンに対するジゴキシゲニン結合パートナー(例えば、ジゴキシゲニンに対する抗体)
、2,4−ジニトロフェニルに対する2,4−ジニトロフェニル結合パートナー(例えば
、2,4−ジニトロフェニルに対する抗体)、フルオレセインに対するフルオレセイン結
合パートナー(例えば、フルオレセインに対する抗体)、ローダミンに対するローダミン
結合パートナー(例えば、ローダミンに対する抗体)、ペプチドに対するペプチド結合パ
ートナー(例えば、ペプチドに対する抗体)、分析物特異的結合パートナー(例えば、B
12に対する内因子、ホレートに対するホレート結合因子)が例証として挙げられるが、
これらに限定されない。
MS標識としても機能し得る小分子ペプチドの例としては、ヒスチジン、リジン、フェ
ニルアラニン、ロイシン、アラニン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラ
ギン酸、グルタミン酸、トリプトファン、プロリン、バリン、チロシン、グリシン、トレ
オニン、セリン、アルギニン、システインおよびイソロイシンならびにそれらの誘導体の
うちの2つまたはそれを超えるものを含むペプチドが例証として挙げられるが、これらに
限定されない。いくつかの例では、それらのペプチドは、約100〜約3,000質量単
位の分子量を有し、3〜30個のアミノ酸を含み得る。いくつかの例では、それらのペプ
チドは、チロシン、グリシン、メチオニン、トレオニン、セリン、アルギニン、フェニル
アラニン、システインおよびイソロイシンからなる群より選択される9個のアミノ酸を含
み、1,021.2;1,031.2;1,033.2;1,077.3;1,087.
3;1,127.3;1,137質量単位の質量を有するか;または上記群からの3個の
アミノ酸を有し、335.4、433.3、390.5、426.5および405.5質
量単位の質量を有する。ペプチドにおけるアミノ酸の数は、例えば、使用されるMS法の
性質によって決定される。例えば、検出のためにMALDIを使用するとき、ペプチドは
、約600〜約3,000の範囲内の質量を有し得、約6〜約30個のアミノ酸から構築
される。あるいは、検出のためにEISを使用するとき、ペプチドは、約100〜約1,
000の範囲内の質量を有し得、例えば、1〜9個のアミノ酸または誘導体から構築され
る。いくつかの例では、ペプチド標識におけるアミノ酸の数は、例えば、1、2、3、4
、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19
、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30であり得る
MS標識としてペプチドを使用することには、いくつかの利点があり、それらの利点と
しては、以下:1)タンパク質、抗体、粒子および他の生化学的実体に結合体化すること
が比較的容易であること;2)多くの異なる質量を可能にするために質量を変更すること
が比較的容易であるがゆえに、多重化されたアッセイ形式および標準物質が提供されるこ
と;および3)使用される質量分析計に対して質量を調整できることが挙げられるが、こ
れらに限定されない。結合体化のために、ペプチドは、結合体化において使用される末端
システインを有し得る。イオン化のために、ペプチドは、帯電したアミン基を有し得る。
いくつかの例では、アミノ酸ペプチドは、N末端に遊離アミンおよびC末端に遊離酸を有
する。いくつかの例では、アミノ酸ペプチドは、同位体標識されているか、または同位体
で誘導体化されている。ペプチドは、小分子(例えば、ビオチンまたはフルオレセイン)
に対する対応する結合パートナー(この例ではストレプトアビジンまたはフルオレセイン
に対する抗体である)に結合するために、その小分子に結合体化され得る。ビオチンまた
はフルオレセインは、N末端において結合体化され得、C末端は遊離酸であり得る。
本明細書中に記載される方法は、微量分析、すなわち、およそ1〜約100,000コ
ピーの稀な細胞または稀な標的分子のわずかな量の材料を含む。このプロセスは、質量分
析計の検出限界での微量分析を含むので、これらのわずかな量の材料は、濃度が検出範囲
内になるように検出体積が極めて小さい、例えば、10−15リットルであるときだけ、
検出され得る。本明細書中に記載される原理に一致する方法および装置の例は、蒸発を減
少させるかまたは回避する。
稀な細胞または稀な標的分子に対して放出されるMS標識またはMS標識前駆体の量の
再現性を得ることは、その形成を測定すること、ならびにキャリア粒子および標識粒子の
本質的に完全な回収を必要とする。ゆえに、1つのアプローチでは、キャリア粒子、標識
粒子、連結基および/またはMS標識もしくはMS標識前駆体は、蛍光分子(例えば、F
ITC、ローダミン化合物、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、
o−フタルアルデヒド(phthaldehyde)、蛍光性希土類キレート、アミノ−
クマリン、ウンベリフェロン、オキサジン、テキサスレッド、アクリドン、ペリレン、イ
ンダセン(indacines)、例えば、4,4−ジフルオロ−4−ボラ−3a,4a
−ジアザ−s−インダセンおよびそのバリアント、9,10−ビス−フェニルエチニルア
ントラセン、スクアライン色素ならびにフルオレサミンであるがこれらに限定されない)
の存在によって蛍光にされ得る。次いで、処理の前および後に、蛍光顕微鏡を用いること
により、キャリア粒子、標識粒子、連結基および/またはMS標識もしくはMS標識前駆
体の位置を明らかにすることができる。これは、システムの機能の確認方法として役立ち
、稀な細胞または稀な標的分子の細胞構造上もしくは捕捉粒子上の位置に関するさらなる
情報について評価される。
方法を行うためのキット
本発明の装置および試薬は、本発明の方法を都合よく行うために有用なキットとして存
在し得る。1つの実施形態において、キットは、本質的に非吸収性の膜と修飾された親和
性剤(異なる稀な各標的分子に対して1つ)との包装された組み合わせを含む。そのキッ
トは、稀でない細胞を分析から除外できるように、稀でない細胞に向けられた1つまたは
それを超える未標識の抗体または核酸プローブも含み得る。修飾された親和性剤が、MS
標識前駆体または変化剤を含むか否かに応じて、そのキットは、修飾された親和性剤の一
部ではないMS標識前駆体または変化剤の他方も含み得る。そのキットは、MS標識前駆
体と反応してMS標識を生成する部分に対する基質も含み得る。さらに、そのキットは、
例えば、固定剤、透過処理剤、および細胞への非特異的結合を防止するブロッキング剤の
うちの1つまたはそれを超えるものも含み得る。本方法を行うための他の試薬もまた、キ
ットに含められ得、そのような試薬の性質は、使用される特定の形式に依存する。それら
の試薬は、各々が別個の容器の中に存在してもよいし、様々な試薬が、それらの試薬の交
差反応性および安定性に応じて、1つまたはそれを超える容器の中で合わせられていても
よい。キットは、本方法を行うための他の別々に包装された試薬(例えば、分析を行うた
めの、補助的な試薬、結合剤、サンプル収集用の容器および細胞用の支持体、例えば、顕
微鏡用スライド)をさらに含み得る。
キット内の様々な試薬の相対量は、本方法の間に生じる必要のある反応を実質的に最適
化する試薬の濃度を提供するため、およびさらには本方法の感度を実質的に最適化するた
めに、大きく変動し得る。適切な状況下において、キット内の1つまたはそれを超える試
薬は、賦形剤を含む乾燥粉末として、通常、凍結乾燥された粉末として、提供され得、そ
の粉末は、溶解されると、本明細書中に記載される原理に一致する方法を行うために適切
な濃度を有する試薬溶液を提供する。そのキットは、本明細書中に記載される原理に一致
する試薬を使用する方法の書面による説明をさらに含み得る。
句「少なくとも」は、本明細書中で使用されるとき、指定の物品の数が、列挙されてい
る数と等しいかまたはそれより大きい場合があることを意味する。句「約」は、本明細書
中で使用されるとき、列挙されている数字が、プラスまたはマイナス10%異なり得るこ
とを意味し;例えば、「約5」は、4.5〜5.5の範囲を意味する。
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を、例証としてであって限定でなくさらに説
明し、本発明の範囲を説明することを意図しているのであって、限定することを意図して
いない。本明細書中に開示される部およびパーセンテージは、別段示されない限り、容積
基準である。
参照による援用
他の文書(例えば、特許、特許出願、特許公報、学術誌、書籍、論文、ウェブコンテン
ツ)に対する参照および引用が、本開示全体にわたって行われている。そのような文書の
すべてが、あらゆる目的のために、それらの全体が参照により本明細書中に援用される。
等価物
本明細書中に示されているおよび記載されているものに加えて、本発明およびその多く
のさらなる実施形態の様々な改変が、本明細書に引用された科学文献および特許文献の参
照を含む、この文書の全内容から当業者にとって明らかになるだろう。本明細書中の主題
は、様々な実施形態およびその等価物における本発明の実施に適合され得る重要な情報、
例証およびガイダンスを含む。
実施例1:膜からの液体液滴の放出
合計3つの本質的に非吸収性の膜を、試験のために使用した。第1の膜は、直径およそ
70μmおよび高さ360μmの6400個のマイクロウェルからなる8×8mmのケ
イ素領域を含む本質的に非吸収性の膜であった。各ウェルの底面は、ウェルの開口部内の
ほぼ中心に位置する5μmの孔を有する、1μmの厚さの窒化ケイ素(Si)の堅
い膜によって覆われていた。その膜の表面と孔との交差において形成される角度は、90
°であった。第2の膜は、直径5μmの約108,000個のポアを含む領域を有する単
一のマイクロウェルからなる本質的に非吸収性の1μmの厚さの窒化ケイ素(Si
)の8×8mmの堅い膜であり、第2の膜は、そのマイクロウェルの開口部内のほぼ中
心に位置した。その膜の表面とすべてのポア孔との交差において形成される角度は、90
°であり、1°を超えて変動しなかった。第3の膜は、可撓性のポリカーボネートの本質
的に非吸収性の膜であった。第3の膜は、3.7cmであり、単一のマイクロウェルの
底面に位置した。第3の膜は、約100,000個の直径8μmのポアを有した。その膜
の表面とポア孔との交差において形成される角度は、個別のポアの間で、30〜150°
で変動した。
溶媒と大気との界面における電場の強度が、液体の表面張力に起因する力に打ち勝つほ
ど十分な大きさになったとき、ESIが生じる。この時点において、液体は引き出されて
錐体になり、そこから帯電した液滴が排出された。これらの液滴は、蒸発と分裂のサイク
ルを経て、最終的に、分析用の質量分析計の真空システム内に吸い込まれる気相イオンを
生成した。この例において膜表面から直接エレクトロスプレーを生成する際、スプレーさ
れる溶液は、マイクロウェルを含むチップ(エッチングされたシリコンウエハハウジング
)の上面を十分に湿らせなければならない。表面に対して理想的な湿潤性を示す溶媒は、
溶媒が加えられると、本質的にウェルを満たすので、スプレー事象の間、連続的な溶媒送
達のためのキャピラリーフローを提供し得る。Si膜の裏面は、理想的には、スプ
レー溶媒と非湿潤性の相互作用を有するべきである。このタイプの相互作用は、その液体
を、各5μmポア上で単一の液滴に切り離す。個々の液滴の存在は、ある電位の印加にお
いてより高い電場強度をもたらす高い湾曲度をもたらすので(平らな湿った表面と比べて
)、エレクトロスプレーの形成に役立つ。さらに、質量分析計のキャピラリー入口を膜の
底面の近くに配置することによって、電場強度がさらに高まり、その膜の選択された領域
からエレクトロスプレーを生成することが可能になるので、空間的情報が収集される。ス
プレー溶媒は、十分に極性であるべきであり、大気の電気的破壊をもたらす電場強度より
低い電場強度のエレクトロスプレーを可能にするのに十分低い表面張力を有するべきであ
る。
直接的な膜スプレーの最初の試験のためのスプレー溶媒として、アセトニトリルおよび
メタノールを選択した。THERMO LTQ(リニアイオントラップ)質量分析計(T
hermo Electron North America LLC製)の大気圧イオ
ン化(atmospheric pressure inlet)(API)用の標準的
な真っ直ぐなキャピラリーを、開口部が上を向くように90°の角度で曲げた長いキャピ
ラリーで置き換えて、実験を行った。すべての実験において、底面が地面と平行になり、
曲がったキャピラリーの入口からおよそ1mm離れるように、膜を位置させた。膜の底面
および曲がったキャピラリーを、ダイオードレーザーを用いて照らし、CMOSカメラで
映像を記録した。
実験の第1のセットでは、50μLのメタノール(またはアセトニトリル)を膜の上面
上に直接ピペットで移し、プラズマを静電気防止銃から溶媒に向けることによって、電位
を印加した。このようにして電位が印加されたとき、別個のスプレー事象が可視化され、
記録された質量スペクトルは、同じ溶液を、ナノESIを介してスプレーしたものに特有
であるピークを示した。溶媒が枯渇すると、スペクトルは大幅に異なり、MS入口におい
て遮られていない静電気防止銃を発射したときに見られるものに特徴的なものになった。
さらなる実験は、多孔性の膜はスプレーするが、スプレーされる材料の量が変わりやす
いこと(20%cv)、ならびに分析物イオン、および分析物を含む帯電した液滴の排出
が起きる時点も同様に100msecを超えて変わりやすく、これが短時間のスケールか
つ少量のスプレー体積で生じるので、イオンの捕捉が難しくなることを示した;したがっ
て、定量的でない方法がもたらされた。コントロールとして、固定された配向のポアを有
する可撓性の(1度を超える角度を引き起こす)不透過性層を試験した。この層を用いた
ときの結果は、スプレーされた材料が20%CVを超えて変動するというものであった。
本明細書中に記載される原理に一致する特徴を有する使用された膜は、1%CV未満のス
プレー量をもたらした。
四次のペプチド(FC−2)を含む溶液を可撓性の膜と非可撓性の膜の両方からスプレ
ーすることによって、可撓性の膜と非可撓性の膜の性能の比較を行った。この比較は、血
液を濾過するために以前使用されていた膜を用いて行った。可撓性の膜の場合、その膜を
、曲がったMS入口のおよそ0.5mm上に配置し、その膜のおよそ5mm上に配置され
たワイヤー(電場発生器)に6.5kVの電位を印加した。次いで、イオンm/z412
のMS/MSスペクトルを記録しながら、FC−2ペプチドを含む溶液(25μLの、0
.1%ギ酸を含む4:1メタノール:水)をその膜の上部に適用した。FC−2ペプチド
は、ポジティブモードでエレクトロスプレーされたとき、m/z412の分子イオンを生
成し、それは、CIDフラグメントに供されたとき、主にm/z353となる。非可撓性
の膜の場合、その手順は、以下の変更と同一であった:電場発生器の電圧を6.0kVに
設定し、適用される液体の量を5μLとした。いずれの場合でも、FC−2ペプチドの濃
度を1、10および100nMに調整した。可撓性および非可撓性の膜に対するm/z4
12のCIDスペクトルが、それぞれ図8A〜Cおよび図9A〜Cに示されている。可撓
性の膜からのスプレーの形成は、液体を膜に適用した後、1〜3秒という時間にわたって
生じ、生じたスプレーの写真を図10に示す。非可撓性の膜の場合、匹敵するスプレープ
ルームは、観察されなかったことから、スプレーの形成は個々のウェルから生じているこ
とが示唆される。

Claims (21)

  1. 異成分で構成されたサンプルから標的分析物を検出するための方法であって、該方法は、
    少なくとも1つのポアを含む本質的に非吸収性の膜、マイクロウェルであって、該膜が該マイクロウェルの上に結合しているマイクロウェル、および該マイクロウェルの下に配置される電場発生器を備える装置を提供する工程、
    異成分で構成されたサンプルを少なくとも該膜に導入する工程;
    該サンプルに、各々が第1の分子を含む複数の親和性剤を導入する工程であって、ここで、該複数の親和性剤は、該サンプル中の該標的分析物に特異的に結合する、工程;
    結合していない親和性剤を除去する工程;
    1つまたはそれを超えるさらなる分子を該サンプルに導入する工程であって、ここで、該1つまたはそれを超えるさらなる分子は、該第1の分子と相互作用して、質量分析標識を形成する、工程;
    該電場発生器を介して該サンプルに電圧を提供して、該少なくとも1つのポアを通って液滴を放出させる工程であって、ここで、該液滴は、該サンプルの一部および該質量分析標識を含む、工程;および
    該液滴を該質量分析標識の存在について分析する工程であって、ここで、該質量分析標識の存在は、該サンプル中の該標的分析物の存在を示す、工程
    を含む、方法。
  2. 前記第1の分子が、質量分析標識前駆体である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記1つまたはそれを超えるさらなる分子が、前記質量分析標識前駆体と相互作用して前記質量分析標識を形成する変化剤である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記第1の分子が、変化剤である、請求項1に記載の方法。
  5. 前記1つまたはそれを超えるさらなる分子が、前記変化剤と相互作用して前記質量分析標識を形成する質量分析前駆体標識である、請求項2に記載の方法。
  6. 前記第1の分子が、質量分析標識前駆体であり、前記1つまたはそれを超えるさらなる分子が、該質量分析標識前駆体と相互作用して前記質量分析標識を形成する第1および第2の変化剤である、請求項1に記載の方法。
  7. 前記親和性剤が、粒子状である、請求項1に記載の方法。
  8. 前記親和性剤が、非粒子状である、請求項1に記載の方法。
  9. 前記標的分析物が、稀な細胞であり、前記異成分で構成されたサンプルが、異成分で構成された生物学的サンプルである、請求項1に記載の方法。
  10. 分析される質量分析標識の量を定量することによって、前記サンプル中の前記標的分析物を定量する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  11. サンプル分析方法であって、該方法は、
    標的分析物を含むと疑われるサンプルを、ポアを含む膜に導入する工程;
    1つまたはそれを超える試薬を該膜上の該サンプルに導入して、該標的分析物が該サンプル中に存在する場合、該標的分析物と会合した質量分析標識を生成する工程、
    該膜に電場を印加することにより、該膜の該ポアから排出されて質量分析計に導入される該サンプルの1つまたはそれを超える液滴を発生させる工程;
    該質量分析計を介して、該質量分析標識の存在を検出することによって該標的分析物の存在を検出する工程;
    該検出する工程の結果に基づいて、該標的分析物が存在する場合、該膜の該ポアと会合した該サンプルの一部を該膜から抽出する工程;および
    抽出された該サンプルの一部を分析する工程
    を含む、方法。
  12. 前記膜上の前記サンプルに1つまたはそれを超える試薬を導入する工程が、
    各々が第1の分子を含む複数の親和性剤を該サンプルに導入する工程であって、ここで、該複数の親和性剤は、該サンプル中の該標的分析物に特異的に結合する、工程;
    結合していない親和性剤を除去する工程;および
    1つまたはそれを超えるさらなる分子を該サンプルに導入する工程であって、ここで、該1つまたはそれを超えるさらなる分子は、該第1の分子と相互作用して質量分析標識を形成する、工程
    を含む、請求項11に記載の方法。
  13. 前記第1の分子が、質量分析標識前駆体である、請求項12に記載の方法。
  14. 前記1つまたはそれを超えるさらなる分子が、前記質量分析標識前駆体と相互作用して前記質量分析標識を形成する変化剤である、請求項13に記載の方法。
  15. 前記第1の分子が、変化剤である、請求項12に記載の方法。
  16. 前記1つまたはそれを超えるさらなる分子が、前記変化剤と相互作用して前記質量分析標識を形成する質量分析前駆体標識である、請求項15に記載の方法。
  17. 前記第1の分子が、質量分析標識前駆体であり、前記1つまたはそれを超えるさらなる分子が、該質量分析標識前駆体と相互作用して前記質量分析標識を形成する第1および第2の変化剤である、請求項12に記載の方法。
  18. 前記親和性剤が、粒子状である、請求項12に記載の方法。
  19. 前記親和性剤が、非粒子状である、請求項12に記載の方法。
  20. 前記標的分析物が、稀な細胞であり、前記サンプルが、異成分で構成された生物学的サンプルである、請求項11に記載の方法。
  21. 分析される質量分析標識の量を定量することによって、前記サンプル中の前記標的分析物を定量する工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
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