JP2021121658A - シアン化ビニル系共重合体およびそれを含む熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

シアン化ビニル系共重合体およびそれを含む熱可塑性樹脂組成物 Download PDF

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達郎 藤岡
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Abstract

【課題】 塗装性に優れながら良好な流動性と耐衝撃性を併せ持つゴム強化スチレン系樹脂のマトリックス樹脂となるシアン化ビニル系共重合体を提供する。
【解決手段】 少なくとも芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)を共重合して得られるシアン化ビニル系共重合体(II)であって、シアン化ビニル系共重合体(II)全体における平均シアン化ビニル含有率AN(重量%)が30〜40重量%であり、シアン化ビニル系共重合体(II)中の分子量10万以下の共重合成分における平均シアン化ビニル含有率AN10(重量%)が下記式(1)を満たすことを特徴とする。
1≦(AN10−AN)≦3 式(1)
【選択図】 図1

Description

本発明は、塗装性に優れながら、良好な流動性と耐衝撃性とを併せ持つゴム強化スチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂組成物のマトリックス樹脂となるシアン化ビニル系共重合体に関するものである。
熱可塑性樹脂組成物からなるゴム強化スチレン系樹脂は、優れた加工性、耐衝撃性、機械的特性を有していることから、車両分野、家電分野、建材分野など広範な分野において、各種構成部材の成形材料として使用されている。たとえば、近年車両分野では、ゴム強化スチレン系樹脂の優れた二次加工性、特に耐熱性に着目して、四輪内装部材やリアスポイラー等への使用展開が図られている。
一方、市場の要求として常に、成形品の塗装不良の低減(耐塗装性)が強く求められている。ゴム強化スチレン系樹脂への塗装に関しては、樹脂組成物の特性や成形条件、塗装方法、塗装環境などの因子の影響を受けやすく、著しい塗装不良を起す場合がある。この塗装不良の中でも塗料に含まれるシンナーなどの溶媒成分が成形品に作用して発生する吸込み現象(塗装表面に微細な凹凸が形成され、光の乱反射によって光沢むらとなって観察される現象)および射出成形品のエッジ部分に特に多く見られるブリスター現象(塗装表面に噴火口のような形態のちいさな穴が発生する現象)は、代表的な塗装不良に挙げられ、最終製品の商品価値を大きく損なうものである。
過去の塗装不良を低減させるための技術として、以下の技術が開示されている。
特許文献1では、ゴム強化スチレン系樹脂のマトリクス成分としてシアン化ビニル系単量体成分の含有量が多い高シアン化ビニル系共重合体を使用することで、耐塗装性を高める技術が提案されている。しかし、耐塗装性を高めるためにはゴム強化スチレン系樹脂に含有する高シアン化ビニル系共重合体の使用量が多くなることで、良好な流動性と耐衝撃性の両立が不足していた。
特開2012−36384号公報
本発明は、上述した従来技術における良好な流動性と耐衝撃性を両立するゴム強化スチレン系樹脂を改善するものであり、すなわち、塗装性に優れながら良好な流動性と耐衝撃性を併せ持つゴム強化スチレン系樹脂のマトリックス樹脂となるシアン化ビニル系共重合体の提供を目的とするものである。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、シアン化ビニル系共重合体を製造するに際し、特定の条件を満たす場合に、熱可塑性樹脂組成物に配合した場合に良好な流動性と耐衝撃性とを併せ持ち、かつ塗装性に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られるシアン化ビニル系共重合体が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明のシアン化ビニル系共重合体は、少なくとも芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)を共重合して得られるシアン化ビニル系共重合体(II)であって、前記シアン化ビニル系共重合体(II)全体における平均シアン化ビニル含有率AN(重量%)が30〜40重量%であり、シアン化ビニル系共重合体(II)中の分子量10万以下の共重合成分における平均シアン化ビニル含有率AN10(重量%)が下記式(1)を満たすことを特徴とする。
1≦(AN10−AN)≦3 式(1)
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述したシアン化ビニル系共重合体(II)およびグラフト共重合体(I)を配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、グラフト共重合体(I)がゴム質重合体(ア)40〜65重量%の存在下に、芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)を含有するビニル系単量体混合物35〜60重量%をグラフト共重合してなることを特徴とする。
本発明により、良好な流動性と耐衝撃性とを両立しながら、塗装性に優れた熱可塑性樹脂組成物、およびそれを構成するシアン化ビニル系共重合体を得ることができる。
図1は、実施例で用いた塗装用角板成形品の寸法と塗装した面を示す説明図である。
以下、本発明のシアン化ビニル系共重合体および熱可塑性樹脂組成物について、具体的に説明する。
本発明のシアン化ビニル系共重合体(II)は、少なくとも芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)を含有するビニル系単量体混合物を共重合して得られる。ビニル系単量体混合物の組成比率として、芳香族ビニル系単量体(イ)55〜65重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)35〜45重量%が好ましい。
シアン化ビニル系共重合体(II)の構成成分である芳香族ビニル系単量体(イ)は、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレンなどが挙げられる。これらは必ずしも1種類で使用する必要はなく、複数種併用して使用することもできる。これらの中で特にスチレンが好ましく採用される。
シアン化ビニル系共重合体(II)の構成成分であるシアン化ビニル系単量体(ウ)としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられる。これらは必ずしも1種類で使用する必要はなく、複数種併用して使用することもできる。これらの中で特にアクリロニトリルが好ましく採用される。
また、シアン化ビニル系共重合体(II)におけるビニル系単量体混合物には、本発明の効果を失わない程度に他の共重合可能な単量体を用いても良く、例えば、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(エ)、マレイミド系単量体などが挙げられる。硬度向上や透明感を重視させるのであれば、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(エ)が好ましく、具体例としてメタクリル酸メチルが特に好ましく用いられる。一方で、耐熱性や難燃性を向上させる意図があれば、N−フェニルマレイミドが好ましく用いられる。
本発明のシアン化ビニル系共重合体(II)は、シアン化ビニル系共重合体(II)全体における平均シアン化ビニル含有率AN(重量%)が30〜40重量%であり、シアン化ビニル系共重合体(II)中の分子量10万以下の共重合成分における平均シアン化ビニル含有率AN10(重量%)が、平均シアン化ビニル含有率ANとの関係で、下記式(1)を満たす。
1≦(AN10−AN)≦3 式(1)
ここで、平均シアン化ビニル含有率ANが30〜40重量%であり、(AN10−AN)が1〜3重量%であるシアン化ビニル系共重合体(II)は、シアン化ビニル含有率が高く、かつシアン化ビニル含有率が低分子量側で平均よりも1〜3%高くなっていることを表す。
シアン化ビニル系共重合体(II)の平均シアン化ビニル含有率ANが30重量%未満では、射出成形品のエッジ部分での耐塗装性(吸込みおよびブリスター現象の改善)が十分でない場合があり、一方、40重量%を越えると溶融時の色調安定性が低下することがある。なお、耐塗装性と溶融時の色調安定性のバランスの点から、シアン化ビニル系共重合体(II)の平均シアン化ビニル含有率ANが31〜39重量%であることがより好ましい。
同様に、シアン化ビニル系共重合体(II)の平均シアン化ビニル含有率ANと分子量10万以下の共重合成分における平均シアン化ビニル含有率AN10との差が1重量%未満では、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐塗装性が十分でない場合があり、一方、3重量%を超えると溶融時の色調安定性が低下することがある。なお、耐塗装性と溶融時の色調安定性のバランスの点から、シアン化ビニル系共重体(II)の平均シアン化ビニル含有率ANと分子量10万以下における平均シアン化ビニル含有率AN10との差(AN10−AN)が、1.5〜2.5重量%であることがより好ましい。
シアン化ビニル系共重合体(II)の平均シアン化ビニル含有率AN、および分子量10万以下の共重合成分における平均シアン化ビニル含有率AN10は、シアン化ビニル系共重合体(II)のクロロホルム溶液をGPC/FT−IR法にて分子量分布、及び平均分子量分布を測定すると同時に、各溶出時間における赤外吸収スペクトルを連続的に得ることで、求めることができる。
シアン化ビニル系共重合体(II)の、30℃、0.2,0.4g/dlのメチルエチルケトン溶液のウベローデ粘度測定から導出される固有粘度は0.3〜0.7dl/gであることが好ましく、0.3〜0.6dl/gであることがより好ましい。シアン化ビニル系共重合体(II)の還元粘度が0.3dl/g未満である場合には熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下することがあり、一方、0.7dl/gを超える場合には熱可塑性樹脂組成物の流動性が低下し、大型成形品の成形が容易でなくなることがある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述したシアン化ビニル系共重合体(II)およびグラフト共重合体(I)を配合してなる。グラフト共重合体(I)は、ゴム質重合体(ア)40〜65重量%の存在下に、芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)を含有するビニル系単量体混合物35〜60重量%をグラフト共重合して得られるものである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物中のシアン化ビニル系共重合体(II)の重量は、好ましくは5〜60重量%の範囲であり、より好ましくは8〜58重量%、さらに好ましくは9〜56重量%である。シアン化ビニル系共重合体(II)が5重量%より少ない場合には、射出成形品の耐塗装性(吸込み現象、エッジ部のブリスター現象)が低下し、一方、60重量%を越えて使用すると、樹脂の耐衝撃性が低下するので好ましくない。
グラフト共重合体(I)に含まれるゴム質重合体(ア)であるジエン系ゴム質重合体の具体例はポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体およびアクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体などが挙げられる。なかでも、ジエン系ゴム質重合体(ア)としては、ポリブタジエンが好ましく用いられる。一方、グラフト共重合体(I)に含まれるゴム質重合体(ア)であるアクリル系ゴム質重合体の具体例は、構成成分がアクリル酸エステル系単量体であり、炭素数が1〜10のアルキル基を有するものが好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルなどが挙げられる。なかでも、アクリル酸n−ブチルが好ましい。
グラフト共重合体(I)に含まれるゴム質重合体(ア)であるジエン系ゴム質重合体の重量平均粒子径は特に制限はないが、100〜1500nmであることが好ましく、200〜1200nmであることがより好ましい。また、耐衝撃性と流動性との両立の観点から、重量平均粒子径が200〜400nmと450〜1200nmの2種類のジエン系ゴム質重合体(ア)を併用することがさらに好ましい。
さらに、ジエン系ゴム質重合体として、重量平均粒子径が200〜400nmと450〜1200nmの2種類を併用する場合、流動性の観点から、200〜400nmと450〜1200nmのジエン系ゴムの重量比率は、1:9〜5:5の範囲であることが好ましく、2:8〜4:6の範囲であることがより好ましい。
ジエン系ゴム質重合体の重量平均粒子径は、「Rubbaer Age Vol.88 p.484〜490(1960) by E.Schmidt,P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法(アルギン酸ナトリウムの濃度量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める。)により測定することができる。
なお、ジエン系ゴム質重合体としては、ガラス転移温度が0℃以下のものが好適であり、その下限値は実用上−80℃程度である。
グラフト共重合体(I)に含まれるゴム質重合体(ア)であるアクリル系ゴム質重合体の体積平均粒子径は、100〜300nmが好ましい。アクリル系ゴム質共重合体の体積平均粒子径が100nm未満であると、凝集粒子中の一次粒子がその原形を保てなくなるため、成形品の耐衝撃性が低下する。150nm以上がより好ましい。一方、アクリル系ゴム質共重合体の体積平均粒子径が300nmを超えると、熱可塑性樹脂組成物中におけるグラフト共重合体(I)の分散性が低下するため、成形品の耐衝撃性が低下する。250nm以下がより好ましい。
なお、アクリル系ゴム質重合体の体積平均粒子径は、アクリル系ゴム質重合体ラテックスを水に分散させ、レーザ散乱回折法粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
グラフト共重合体(I)におけるゴム質重合体(ア)の重量分率は、40〜65重量%に調整することが必要であるが、好ましいゴム質重合体(ア)の重量分率は、40〜60重量%であり、より好ましくは40〜50重量%である。重量分率が40重量%未満では材料の衝撃が低下し、一方、65重量%を超えると流動性が低下するといった成形加工性が損なわれ、また成形品の表面外観が低下することがあり好ましくない。
グラフト共重合体(I)におけるビニル系単量体混合物に含まれる芳香族ビニル系単量体(イ)としては、前述のシアン化ビニル系共重合体(II)、後述のビニル系共重合体(III)での芳香族ビニル系単量体(イ)と同様に、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレンおよびブロモスチレンなどが挙げられるが、特にスチレンが好ましく採用される。なお、グラフト共重合体(I)での芳香族ビニル系単量体(イ)と、シアン化ビニル系共重合体(II)での芳香族ビニル系単量体(イ)、ビニル系共重合体(III)での芳香族ビニル系単量体(イ)は、同一の物質であっても、それぞれ異なった物質であってもよいが、同一の物質であることが好ましい。
グラフト共重合体(I)におけるビニル系単量体混合物に含まれるシアン化ビニル系単量体(ウ)としては、前述のシアン化ビニル系共重合体(II)、後述のビニル系共重合体(III)でのシアン化ビニル系単量体(ウ)と同様に、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましく採用される。なお、グラフト共重合体(I)でのシアン化ビニル系単量体(ウ)、シアン化ビニル系共重合体(II)でのシアン化ビニル系単量体(ウ)、ビニル系共重合体(III)でのシアン化ビニル系単量体(ウ)は同一の物質であっても、それぞれ異なった物質であってもよいが、同一の物質であることが好ましい。
また、グラフト共重合体(I)におけるビニル系単量体混合物には、本発明の効果を失わない程度に他の共重合可能な単量体を用いても良く、例えば、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、マレイミド系単量体などが挙げられる。硬度向上や透明感を重視させるのであれば、具体例としてメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。一方で、耐熱性や難燃性を向上させる意図があれば、N−フェニルマレイミドが好ましく用いられる。
グラフト共重合体(I)におけるビニル系単量体混合物の合計の重量分率は、グラフト共重合体(I)100重量%中、35〜60重量%に調整することが必要であり、さらに好ましい重量分率は、40〜60重量%であり、特に好ましくは、50〜60重量%である。ビニル系単量体混合物の合計の重量分率が35重量%未満では、流動性が低下することで成形加工性が損なわれたり、また、成形品の表面外観が低下したりすることがある。一方、60重量%を超えると熱可塑性樹脂組成物の衝撃性が低下することがあり好ましくない。
また、グラフト共重合体(I)におけるビニル系単量体混合物中に含有される芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)の組成比率は、ビニル系単量体混合物100重量%中、芳香族ビニル系単量体(イ)70〜82重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)18〜30重量%の範囲とすることが成形加工性の観点から好ましく、さらに好ましくは、芳香族ビニル系単量体(イ)70〜80重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)20〜30重量%の範囲である。
グラフト共重合体(I)のグラフト率は、衝突延性形態と成形加工性のバランスから、5〜60重量%であることが好ましく、さらに好ましくは10〜50重量%であり、特に好ましくは20〜30重量%である。グラフト率(重量%)は、次式で示される。
・グラフト率(重量%)=[ゴム質重合体にグラフト重合したビニル系重合体量]/[グラフト共重合体のゴム含有量]×100。
本発明の熱可塑性樹脂組成物100重量%中のグラフト共重合体(I)の重量は15〜50重量%であり、好ましくは20〜45重量%、より好ましくは23〜40重量%である。グラフト共重合体(I)が15重量%より少ないと樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、50重量%を超えて使用する場合には樹脂組成物の成形加工性や射出成形品での耐塗装性が損なわれるので好ましくない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(I)、シアン化ビニル系共重合体(II)を含む組成でも成立するが、成形性と衝撃性のバランスからシアン化ビニル系共重合体(II)以外のビニル系共重合体(III)を熱可塑性樹脂組成物100重量%中、70重量%以下の範囲で使用することができ、好ましくは0〜60重量%範囲で使用される。ビニル系共重合体(III)が70重量%を超えて使用すると、樹脂組成物の耐薬品性が低下することで、射出成形品の耐塗装性が低下(吸込み現象、エッジ部のブリスター現象)することがある。
ビニル系共重合体(III)の構成成分である芳香族ビニル系単量体(イ)は、前述のグラフト共重合体(I)、シアン化ビニル系共重合体(II)での芳香族ビニル系単量体(イ)と同様に、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレンなどが挙げられる。これらは必ずしも1種類で使用する必要はなく、複数種併用して使用することもできる。これらの中で特にスチレンが好ましく採用される。
ビニル系共重合体(III)の構成成分であるシアン化ビニル系単量体(ウ)としては、前述のグラフト共重合体(I)、シアン化ビニル系共重合体(II)でのシアン化ビニル系単量体(ウ)と同様に、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられる。これらは必ずしも1種類で使用する必要はなく、複数種併用して使用することもできる。これらの中で特にアクリロニトリルが好ましく採用される。
また、ビニル系共重合体(III)には、上記芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)以外にも、共重合可能な単量体を用いても良く、例えば、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、マレイミド単量体などが挙げられる。硬度向上や透明感を重視させるのであれば、具体例としてメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。一方で、耐熱性や難燃性を向上させる意図があれば、N−フェニルマレイミドが好ましく用いられる。
ビニル系共重合体(III)を構成する単量体組成比率は、ビニル系共重合体(III)100重量%中、好ましくは芳香族ビニル系単量体(イ)70重量%〜82重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)18重量%〜30重量%の範囲であり、より好ましくは芳香族ビニル系単量体(イ)70重量%〜80重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)20重量%〜30重量%の範囲である。ビニル系共重合体(III)のシアン化ビニル系単量体が18重量%未満である場合には、樹脂組成物全体の耐薬品性が低下し、射出成形品の耐塗装性(吸込み現象、エッジ部のブリスター現象)が低下することがあり好ましくない。
ビニル系共重合体(III)の、30℃、0.2,0.4g/dLのメチルエチルケトン溶液のウベローデ粘度測定から導出される固有粘度は0.3〜0.8dl/gであることが好ましく、0.3〜0.6dl/gであることがより好ましい。ビニル系共重合体(III)の固有粘度が0.3dl/g未満である場合には、樹脂組成物の耐衝撃性が低下することがあり、一方、0.8dl/gを超える場合には、樹脂組成物の流動性が低下し、大型成形品の成形が容易でなくなることがある。
本発明において、グラフト共重合体(I)、シアン化ビニル系共重合体(II)およびビニル系共重合体(III)の製造方法に関しては特に制限はなく、塊状重合、懸濁重合、塊状懸濁重合、溶液重合、乳化重合、沈殿重合およびこれらの組み合わせ等が用いられる。
本発明において、グラフト共重合体(I)、シアン化ビニル系共重合体(II)、ビニル系共重合体(III)の重合に使用される開始剤としては、過酸化物またはアゾ系化合物などが好適に用いられる。
過酸化物の具体例としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカルボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオクテート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどが挙げられる。なかでもクメンハイドロパーオキサイドおよび1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが、特に好ましく用いられる。
また、アゾ系化合物の具体例としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、1,1′−アゾビスシクロヘキサン−1−カーボニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2′−アゾビスイソブチレート、1−t−ブチルアゾ−1−シアノシクロヘキサン、2−t−ブチルアゾ−2−シアノブタン、および2−t−ブチルアゾ−2−シアノ−4−メトキシ−4−メチルペンタンなどが挙げられる。なかでもアゾビスイソブチロニトリルが特に好ましく用いられる。
これらの開始剤を使用する場合、1種または2種以上を併用して使用される。
重合を行うに際しては、グラフト共重合体(I)、シアン化ビニル系共重合体(II)、ビニル系共重合体(III)の重合度調節を目的として、メルカプタンやテルペンなどの連鎖移動剤を使用することも可能である。連鎖移動剤の具体例としては、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタンおよびテルピノレンなどが挙げられる。なかでも、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンおよびn−ドデシルメルカプタンが好ましく用いられる。これらの連鎖移動剤を使用する場合は、1種または2種以上を併用して使用される。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物に使用するシアン化ビニル系共重合体(II)について、平均シアン化ビニル含有率ANが30〜40重量%であり、これと分子量10万以下の共重合成分の平均シアン化ビニル含有率AN10との差(AN10−AN)を1〜3重量%にするシアン化ビニル系共重合体(II)製造方法としては、公知の水系懸濁重合法が挙げられる。
具体的には、少なくとも芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)を共重合する際に、重合温度が70℃に到達するまでにすべての単量体を反応器に添加し、重合温度70〜85℃で反応させ、添加したシアン化ビニル系単量体の合計に対して未反応のシアン化ビニル系単量体の割合が30〜40重量%の時点で昇温を開始し、100〜120℃まで昇温することによりシアン化ビニル系共重合体を製造する方法が好ましい。未反応の、すなわち反応器中に残存するシアン化ビニル系単量体の割合が40重量%を超える時点で昇温を開始した場合は、得られたシアン化ビニル系共重合体(II)における平均シアン化ビニル含有率ANと分子量10万以下における平均シアン化ビニル含有率AN10との差(AN10−AN)が1重量%未満となり、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐塗装性が十分でない場合がある。一方で、残存するシアン化ビニル系単量体の割合が30重量%未満の時点で昇温を開始した場合でも、得られたシアン化ビニル系共重合体(II)における平均シアン化ビニル含有率ANと分子量10万以下における平均シアン化ビニル含有率AN10との差(AN10−AN)が1重量%未満となり、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐塗装性が十分でない場合がある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の特性を損なわない範囲で、異なる樹脂をブレンドして使用することが出来る。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンエチレンテレフタレート、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンに代表されるポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン4,6、ナイロン6T、ナイロン9T、ナイロン11などのポリアミド樹脂、その他PPS樹脂、ポリアセタール樹脂、結晶性スチレン樹脂、PPE樹脂など目的に応じて使用することが出来る。
さらに、本発明の特性を損なわない範囲で、公知の耐衝撃改良材を使用することができる。使用することができる耐衝撃改良材としては、天然ゴム、低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/メチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ブチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート/一酸化炭素共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/メチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/オクテン−1共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体などのエチレン系エラストマ、ポリエチレンテレフタレート/ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体などのポリエステルエラストマ、MBSまたはアクリル系のコアシェルエラストマ、スチレン系エラストマが例示される。これらは、必ずしも1種類で使用する必要はなく、2種類以上混合して使用することもできる。
さらに、本発明の特性を損なわない範囲で、無機充填剤を添加することも可能である。無機充填剤の種類としては、ガラス繊維が好ましく使用することができる。また、無機充填剤の形状としては、繊維状、板状、粉末状、粒状などのいずれの形状であってもよい。具体的には、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ガラス繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填剤、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、モンモリロナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ポリリン酸カルシウム、グラファイトなどの粉状、粒状あるいは板状の充填剤が挙げられる。特にガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。なお、上記無機充填剤はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。また、ガラス繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。無機充填剤は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆または集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシランなどのカップリング剤などで処理されていてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、含硫黄化合物系酸化防止剤、含リン有機化合物系酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系などの熱酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サクシレート系などの紫外線吸収剤、デカブロモビフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、塩素化ポリエチレン、臭素化エポキシオリゴマー、臭素化ポリカーボネート、三酸化アンチモン、縮合リン酸エステルなどの難燃剤・難燃助剤、銀系抗菌剤に代表される抗菌剤、抗カビ剤、カーボンブラック、酸化チタン、離型剤、潤滑剤、顔料および染料などを添加することもできる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、構成する各共重合体成分を溶融混合して得ることができる。溶融混合方法に関しては、特に制限は無いが、加熱装置、ベントを有するシリンダーで単軸または二軸のスクリューを使用して溶融混合する方法などが採用可能である。溶融混合の際の加熱温度は、通常210〜320℃の範囲から選択されるが、本発明の目的を損なわない範囲で、溶融混合時の温度勾配等を自由に設定することも可能である。また、二軸のスクリューを用いる場合は、同一回転方向でも異回転方向でも良い。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形方法については特に限定されないが、射出成形により好適に成形される。射出成形は、好ましくは220〜300℃の通常成形する温度範囲で実施することができる。また、射出成形時の金型温度は、好ましくは30〜80℃の通常成形に使用される温度範囲である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、大型成形品への成形にも適した流動性と耐衝撃性を併せ持ち、かつ、90度未満のエッジを有する射出成形品に塗装したとしても、吸込みやブリスターといった塗装不良のない塗装部品が得られることを特徴としている。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は成形性が良いので、大型または形状の複雑な成形品に好適である。すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、自動車外装のリアスポイラー、ホイールキャップ、ドアミラー、ラジエータグリルなど、自動車内装用の塗装部品ではパワーウインドパネル、センターコンソール、センタークラスター、レバーコントローラー、コンソールボックスなどに好適に使用することができ、その他、電気電子用途、住宅・建材用途にも好適に使用することができる。
本発明をさらに具体的に説明するため、以下に実施例を挙げるが、これらの実施例は本発明を何ら制限するものではない。
熱可塑性樹脂組成物の樹脂特性の分析方法を下記する。
(1)グラフト率
グラフト共重合体(I)の所定量(m;約1g)にアセトン200mlを加え、70℃の温度の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過し、この不溶分を60℃の温度で5時間減圧乾燥し、その重量(n)を測定した。グラフト率は、下記式より算出した。ここでLは、グラフト共重合体(I)のゴム含有量(0超1未満の実数)である。
・グラフト率(%)={[(n)−(m)×L]/[(m)×L]}×100。
(2)固有粘度
シアン化ビニル系共重合体(II)、ビニル系共重合体(III)の固有粘度について、ウベローデ粘度計を使用し、測定温度30℃、試料濃度0.2g,0.4g/dlのメチルエチルケトン溶液より測定し、固有粘度を導出した。
(3)平均シアン化ビニル含有率
シアン化ビニル系共重合体(II)、ビニル系共重合体(III)の平均シアン化ビニル含有率について、加熱プレスにより40μm程度のフィルム状にし、赤外分光光度計により求めた。
(4)分子量10万以下における平均シアン化ビニル含有率
シアン化ビニル系共重合体(II)0.1gをクロロホルム50gに溶解し、約0.2重量%の溶液を調整した。下記条件での溶離液蒸発型GPC/FT−IRにて得られたGPCクロマトグラムよりポリスチレンを標準物質として換算した分子量分布および重量平均分子量を算出した。同時にFT−IR測定にて得られた各吸収ピーク高さから各分子量におけるシアン化ビニル含有率を算出した。
機器:GPC−28
カラム:TSKgelGMHHR―M(2本)(東ソー製)
溶媒:クロロホルム
流速:1.0mL/min
カラム温度:23℃
示差屈折率検出器:RI8020型(東ソー製)
赤外吸収分光検出器:NicoletiS50 (Thermo Fisher製)
(5)シアン化ビニル系共重合体(II)の重合途中におけるシアン化ビニル単量体の残存量の評価方法
サンプル約1.5gにアセトン約40g加えて溶解させ、(株)島津製作所製ガスクロマトグラフィー(GC−17A)を用いてシアン化ビニル系単量体の未反応モノマ含有量を測定した。残存するシアン化ビニル系単量体の割合X(重量%)は、以下の式で算出した。
X = (未反応モノマ含有量)÷(添加したシアン化ビニル系単量体の合計量)×100
(6)耐衝撃性
シャルピー衝撃強度を、ISO179−1:2010(ノッチ有)に準拠して測定した。
(7)流動性
メルトフローレートを、ISO1133:2005に準じ、温度240℃、98N荷重条件で測定した。
(8)エッジ付成形品の塗装表面外観
成形品の塗装性評価試験は、次のように評価した。
射出成形機を使用して、シリンダー温度を250℃、金型温度を40℃、60℃にそれぞれ設定し、図1に示す70×240×3mmt角板(長手方向かつ流れ方向に沿った一辺がエッジ角45度または60度のエッジを有する。)を成形した。その角板に、アクリル−ウレタン2液塗料(ウレタンPG60/ハードナー、関西ペイント株式会社製)、塗装ロボット(川崎重工株式会社製 KE610H)、ABB社製カートリッジベルを用い、塗膜厚み30μmでそれぞれ塗布した後、乾燥温度80℃で30分乾燥させた。得られた塗装成形品の鮮明度と外観を以下基準により目視で判定を行った。◎と○を合格レベルとし、△と×を不合格レベルとした。
◎:高光沢感が確認される。
○:光沢感はあるが高光沢ではない。
△:一部分に若干の塗装ムラがある。
×:全体的に塗装ムラが目立つ。問題あり。
(9)ブリスター評価
(8)で製造した塗装成形品のエッジ部分に形成されるブリスターの個数を、目視で計測し、各条件(金型温度、エッジ角度)10枚の塗装成形品で計測されたブリスターの合計数量で評価した。
(参考例1)[グラフト共重合体(I)の製造]
・グラフト共重合体(I)の調製
ポリブタジエンラテックス(重量平均粒子径350nm)60重量%(固形分換算)の存在下で、スチレン29重量%とアクリロニトリル11重量%からなるビニル系単量体混合物を、ステアリン酸カリウムを使用して乳化重合してゴム強化スチレン樹脂ラテックスを得た。これを、90℃の温度の0.3%希硫酸水溶液中に添加して凝集後、水酸化ナトリウム水溶液により中和後に洗浄・脱水・乾燥工程を経て、グラフト共重合体(I)を調製した。グラフト率は36重量%であった。
(参考例2)[シアン化ビニル系共重合体(II)の製造]
・シアン化ビニル系共重合体(II−1)の調製
容量が20lで、バッフルおよびファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、0.05重量部のメタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45−24151号公報記載)を165重量部のイオン交換水に溶解した溶液を400rpmで攪拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に42重量部のアクリロニトリル、4重量部のスチレン、0.46重量部のt−ドデシルメルカプタン、0.39重量部の2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、0.05重量部の2,2’−アゾビスイソブチルニトリルの混合溶液を反応系を攪拌しながら添加し、58℃にて共重合反応を開始した。重合開始から15分が経過した後オートクレーブ上部に備え付けた供給ポンプから54重量部のスチレンを断続添加した。この間、反応温度は重合開始時点の58℃から65℃まで昇温した。スチレンの反応系への断続添加が終了し、残存するシアン化ビニル系単量体の割合が重量34%となった時点で昇温を開始し、50分かけて100℃に昇温した。冷却して得られたスラリーを洗浄・脱水・乾燥工程を経て、シアン化ビニル系共重合体(II−1)を調製した。得られたシアン化ビニル系共重合体(II−1)の平均シアン化ビニル含有率ANは38.4重量%であり、分子量10万以下の共重合成分の平均シアン化ビニル含有率AN10は40.7重量%、これらの差(AN10−AN)は、2.3重量%であった。
・シアン化ビニル系共重合体(II−2)の調製
容量が20lで、バッフルおよびファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、0.05重量部のメタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45−24151号公報記載)を165重量部のイオン交換水に溶解した溶液を400rpmで攪拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に40重量部のアクリロニトリル、4重量部のスチレン、0.46重量部のt−ドデシルメルカプタン、0.39重量部の2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、0.05重量部の2,2’−アゾビスイソブチルニトリルの混合溶液を反応系を攪拌しながら添加し、58℃にて共重合反応を開始した。重合開始から15分が経過した後オートクレーブ上部に備え付けた供給ポンプから56部のスチレンを断続添加した。この間、反応温度は重合開始時点の58℃から65℃まで昇温した。スチレンの反応系への断続添加が終了し、残存するシアン化ビニル系単量体の割合が37重量%となった時点で昇温を開始し、50分かけて100℃に昇温した。冷却して得られたスラリーを洗浄・脱水・乾燥工程を経て、シアン化ビニル系共重合体(II−2)を調製した。得られたシアン化ビニル系共重合体(II−2)の平均シアン化ビニル含有率ANは37.2重量%であり、分子量10万以下の共重合成分の平均シアン化ビニル含有率AN10は39.0重量%、これらの差(AN10−AN)は、1.8重量%であった。
・シアン化ビニル系共重合体(II−3)の調製
容量が20lで、バッフルおよびファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、0.05重量部のメタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45−24151号公報記載)を165重量部のイオン交換水に溶解した溶液を400rpmで攪拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に45重量部のアクリロニトリル、4重量部のスチレン、0.46重量部のt−ドデシルメルカプタン、0.39重量部の2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、0.05重量部の2,2’−アゾビスイソブチルニトリルの混合溶液を反応系を攪拌しながら添加し、58℃にて共重合反応を開始した。重合開始から15分が経過した後オートクレーブ上部に備え付けた供給ポンプから51部のスチレンを断続添加した。この間、反応温度は重合開始時点の58℃から65℃まで昇温した。スチレンの反応系への断続添加が終了し、残存するシアン化ビニル系単量体の割合が33重量%となった時点で昇温を開始し、50分かけて100℃に昇温した。冷却して得られたスラリーを洗浄・脱水・乾燥工程を経て、シアン化ビニル系共重合体(II−3)を調製した。得られたシアン化ビニル系共重合体(II−3)の平均シアン化ビニル含有率ANは38.9重量%であり、分子量10万以下の共重合成分の平均シアン化ビニル含有率AN10は40.6重量%、これらの差(AN10−AN)は、1.7重量%であった。
・シアン化ビニル系共重合体(II−4)の調製
容量が20lで、バッフルおよびファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、0.05重量部のメタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45−24151号公報記載)を165重量部のイオン交換水に溶解した溶液を400rpmで攪拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に28重量部のアクリロニトリル、12重量部のスチレン、0.46重量部のt−ドデシルメルカプタン、0.39重量部の2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、0.05重量部の2,2’−アゾビスイソブチルニトリルの混合溶液を反応系を攪拌しながら添加し、58℃にて共重合反応を開始した。重合開始から15分が経過した後オートクレーブ上部に備え付けた供給ポンプから60部のスチレンを断続添加した。この間、反応温度は重合開始時点の58℃から70℃まで昇温した。スチレンの反応系への断続添加が終了し、残存するシアン化ビニル系単量体の割合が19重量%となった時点で昇温を開始し、50分かけて100℃に昇温した。冷却して得られたスラリーを洗浄・脱水・乾燥工程を経て、シアン化ビニル系共重合体(II−4)を調製した。得られたシアン化ビニル系共重合体(II−4)の平均シアン化ビニル含有率ANは28.7重量%であり、分子量10万以下の共重合成分の平均シアン化ビニル含有率AN10は29.1重量%、これらの差(AN10−AN)は、0.4重量%であった。
・シアン化ビニル系共重合体(II−5)の調製
容量が20lで、バッフルおよびファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、0.05重量部のメタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45−24151号公報記載)を165重量部のイオン交換水に溶解した溶液を400rpmで攪拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に34重量部のアクリロニトリル、10重量部のスチレン、0.46重量部のt−ドデシルメルカプタン、0.39重量部の2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、0.05重量部の2,2’−アゾビスイソブチルニトリルの混合溶液を反応系を攪拌しながら添加し、58℃にて共重合反応を開始した。重合開始から15分が経過した後オートクレーブ上部に備え付けた供給ポンプから56部のスチレンを断続添加した。この間、反応温度は重合開始時点の58℃から70℃まで昇温した。スチレンの反応系への断続添加が終了し、残存するシアン化ビニル系単量体の割合が28重量%となった時点で昇温を開始し、50分かけて100℃に昇温した。冷却して得られたスラリーを洗浄・脱水・乾燥工程を経て、シアン化ビニル系共重合体(II−5)を調製した。得られたシアン化ビニル系共重合体(II−5)の平均シアン化ビニル含有率ANは32.5重量%であり、分子量10万以下の共重合成分の平均シアン化ビニル含有率AN10は33.1重量%、これらの差(AN10−AN)は、0.6重量%であった。
・シアン化ビニル系共重合体(II−6)の調製
容量が20lで、バッフルおよびファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、0.05重量部のメタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45−24151号公報記載)を165重量部のイオン交換水に溶解した溶液を400rpmで攪拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に24重量部のアクリロニトリル、76重量部のスチレン、0.46重量部のt−ドデシルメルカプタン、0.40重量部の2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の混合溶液を反応系を攪拌しながら添加し、58℃にて共重合反応を開始した。重合開始から120分かけて反応温度は重合開始時点の58℃から70℃まで昇温し、残存するシアン化ビニル系単量体の割合が20重量%となった時点で昇温を開始し、50分かけて100℃に昇温した。冷却して得られたスラリーを洗浄・脱水・乾燥工程を経て、シアン化ビニル系共重合体(II−6)を調製した。得られたシアン化ビニル系共重合体(II−6)の平均シアン化ビニル含有率ANは24.2重量%であり、分子量10万以下の共重合成分の平均シアン化ビニル含有率AN10は24.4重量%、これらの差(AN10−AN)は、0.2重量%であった。
(参考例3)[ビニル系共重合体(III)の製造]
・ビニル系共重合体(III)の調製
予熱機および脱モノマ機からなる連続塊状重合装置を用い、スチレン72重量%、アクリロニトリル28重量%からなる単量体混合物を135kg/時で連続塊状重合させた。重合反応混合物は、単軸押出機型脱モノマ機により未反応の単量体をベント口より減圧蒸発回収し、一方脱モノマ機からビニル系共重合体(III)を得た。得られたビニル系共重合体(III)の固有粘度は0.54dl/gで、平均シアン化ビニル含有率は26重量%であった。
(実施例1〜3、比較例1〜6)
参考例に記載のグラフト共重合体(I)、シアン化ビニル系共重合体(II)、ビニル系共重合体(III)を、表1に示した比で秤量し混合した後に、スクリュー径30mmの同方向回転の二軸押出機(温度範囲:240〜250℃)で溶融混練を行い、ペレットを得た。得られたペレットを各物性評価に適するように、成形機(成形温度250℃、金型温度60℃)にて試験片を作成し、その評価を行った。ただし、塗装評価用の試験片は前述の(8)エッジ付成形品の塗装表面外観に記載の条件で作成した。実施例、比較例の試験片の評価結果を表1に示す。
その結果、以下のことが明らかになった。
1.実施例1〜3と比較例1,2との比較から、シアン化ビニル共重合体(II−4)の平均シアン化ビニル含有率ANおよび差(AN10−AN)が低いため、それに伴い塗装成形品の光沢が低下し、さらにエッジ部のブリスターが増大した。
2.実施例1〜3と比較例3との比較から、シアン化ビニル共重合体(II−5)の平均シアン化ビニル含有率ANは30〜40重量%の範囲を満たしているが、差(AN10−AN)が0.4重量%と式(1)の範囲外であるため、それに伴い塗装成形品の光沢が低下した。
3.実施例1〜3と比較例4との比較から、シアン化ビニル共重合体(II−5)の配合部数を多くし場合は、塗装時の光沢は良好、かつエッジ部のブリスターは減少するが、流動性および耐衝撃性が低下した。
4.実施例1〜3と比較例5,6とのとの比較から、シアン化ビニル共重合体(II−6)の平均シアン化ビニル含有率ANおよび差(AN10−AN)が低いため塗装性が悪化し、さらに耐衝撃性も低下した。
Figure 2021121658
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、自動車外装のリアスポイラー、ホイールキャップ、ドアミラー、ラジエータグリルなど、自動車内装用の塗装部品ではパワーウインドパネル、センターコンソール、センタークラスター、レバーコントローラー、コンソールボックスなどに好適に使用することができ、その他、電気電子用途、住宅・建材用途に使用することができる。

Claims (6)

  1. 少なくとも芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)を共重合して得られるシアン化ビニル系共重合体(II)であって、シアン化ビニル系共重合体(II)全体における平均シアン化ビニル含有率AN(重量%)が30〜40重量%であり、シアン化ビニル系共重合体(II)中の分子量10万以下の共重合成分における平均シアン化ビニル含有率AN10(重量%)が下記式(1)を満たすシアン化ビニル系共重合体。
    1≦(AN10−AN)≦3 式(1)
  2. シアン化ビニル系共重合体(II)を構成する単量体として、芳香族ビニル系単量体(イ)、シアン化ビニル系単量体(ウ)及び不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(エ)を共重合して得られる請求項1記載のシアン化ビニル系共重合体。
  3. 前記(AN10−AN)の範囲が1.5〜2.5重量%を満たす請求項1または2記載のシアン化ビニル系共重合体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のシアン化ビニル系共重合体(II)およびグラフト共重合体(I)を配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、グラフト共重合体(I)がゴム質重合体(ア)40〜65重量%の存在下に、芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)を含有するビニル系単量体混合物35〜60重量%をグラフト共重合してなる熱可塑性樹脂組成物。
  5. グラフト共重合体(I)を構成するゴム質重合体(ア)がジエン系ゴム質重合体、またはアクリル系ゴム質重合体である請求項4記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜3のいずれかに記載のシアン化ビニル系共重合体の製造方法であって、少なくとも芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)を共重合する際に、重合温度が70℃に到達するまでにすべての単量体を反応器に添加し、重合温度70〜85℃で反応させ、添加したシアン化ビニル系単量体の合計に対する未反応のシアン化ビニル系単量体の割合が30〜40重量%の時点で昇温を開始し、100〜120℃まで昇温するシアン化ビニル系共重合体の製造方法。
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