JP2021121647A - 多孔質セルロースビーズおよび吸着体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】医療用吸着体や抗体医薬品等の高分子医薬品精製用の吸着体に用いられる、製品安全性や環境負荷のリスクが少ない高性能な球状の多孔質セルロースビーズの製造方法を提供する。【解決手段】セルロースまたはセルロース誘導体を含有する分散相を連続相に分散させてW/O型エマルションとし、凝固剤と接触させることによる多孔質セルロースビーズの製造方法であって、界面活性剤としてHLB値が0.1以上1.8未満の化合物を使用する。【選択図】図11

Description

本発明は、多孔質セルロースビーズ及び吸着体の製造方法に関する。
医療用吸着体や抗体医薬品等の高分子医薬品精製用の吸着体の材質には、非特異吸着の少ないアガロースやセルロース等の多糖類が好まれている。多孔質セルロースビーズは、破砕され難く、機械的強度が比較的大きく、吸着すべき目的物質と相互作用するリガンドを導入するのに利用できる水酸基を多く含有する等の利点から、各種クロマトグラフィー用吸着体やアフィニティー吸着体などの各種吸着体用の基材として用いられている。特に、アフィニティー吸着体は、効率よく目的物を精製、または不要物濃度を低減できることから、医療用吸着体や医薬品精製用吸着体として利用されてきている。特に、プロテインAをアフィニティーリガンドとして多孔質担体に固定化した吸着体がリウマチ、血友病、拡張型心筋症の治療用吸着体または抗体医薬品精製用吸着体として注目されている(例えば非特許文献1、2)。
多孔質セルロースビーズの製造は、セルロースを一般的な溶媒に溶解させることが困難であるため、一般的な合成高分子ビーズと比べて煩雑な工程を含むものが多い。その一つとして、60%もの高濃度のチオシアン酸カルシウム水溶液など、腐食性が高く、設備化の難易度を高くしてしまう溶媒に100℃以上の高温でセルロースを溶解してセルロースドープを作製し、これを液滴化して凝固する方法が開示されている(例えば特許文献1)。この方法で用いられるセルロース溶液が特異な挙動を示し、また、この方法で得られる多孔質セルロースビーズは、かなり大きい細孔を有しており、また細孔径分布も広いことが知られている(例えば非特許文献3)。よって、当該方法で得られた多孔質セルロースビーズを抗体などの吸着体として用いる場合、比表面積が小さくなることが予想され、極めて高い吸着性能を示すことは期待できない。またこれに類似した製法として、60%もの高濃度の臭化リチウム水溶液に100℃以上の高温でセルロースを溶解させる工程を含む方法が開示されているが、やはり環境負荷の観点から好ましいとは言い難い(例えば特許文献2)。一方、セルロースの溶解性を上げるためにセルロースの水酸基に置換基を付与し、汎用の溶媒に溶解させて造粒を行い、造粒後に置換基を脱離させて多孔質セルロース系担体を得る方法が例示されている(例えば特許文献3)が、工程が煩雑である。
安価、安全且つ簡便にセルロースドープを作製する方法として、低温のアルカリ水溶液を溶媒とする方法が知られている。しかしながら、一般的にこの方法は完全にセルロースを溶解させることが難しく、特殊なセルロースを用いる場合が多い。例えば、特許文献4にはアルカリ溶液に溶解性を示すセルロースが開示されているが、当該セルロースはミクロフィブリルの繊維径が1μm以下、さらには500nm以下に特殊な微細加工を施したものを必要としている。
特許文献5に示されるように、微生物セルロースをアルカリ溶液に溶解してセルロース溶液を作製し、連続相溶媒を添加後にセルロース溶液を液滴化した後、微生物セルロース粒子を凍結させ、次に洗浄することによりセルロースビーズを得る方法が開示されているが、連続相溶媒ごとセルロース溶液を凍結するのに、エネルギーを要する。また、微生物セルロースは特殊な原料であり、これを安定的に大量に入手することは現時点では困難である。
ごく最近、特許文献6にて、水酸化ナトリウムと尿素を含有する水溶液を用いつつ、比較的高い温度でセルロースドープが作製できること、更にはこのセルロースドープから多孔質ビーズが得られることが報告されている。また特許文献7にて、汎用のセルロース原料をやや低温のアルカリ水溶液で処理したセルロース分散液に、ある種の添加剤を加えることで、高性能な多孔質セルロースビーズおよびそれを用いた吸着体が得られることが報告されている。特許文献6,7で得られる多孔質ビーズは、比較的簡便且つ環境負荷や製品安全上のリスクが少ない方法でセルロースドープを作製可能である。
特許文献6,7では、セルロースドープを連続相中に分散させてエマルション化する工程を介してビーズを得ており、エマルションの連続相にオルトジクロロベンゼンを用いている。オルトジクロロベンゼンは低融点且つ高沸点を有し、引火点も高く、水と混和し難く、アルコールと混和しやすいという特徴から、多孔質セルロースビーズの製法において好ましい連続相溶媒である。特許文献7によれば、オルトジクロロベンゼンを用いる製法においてはHLB(親水性疎水性バランス)値が4.3の界面活性剤が用いられている。特許文献8などに示されるとおり、通常、W/O型エマルションにおいては、用いる界面活性剤のHLB値は約3から6が適切とされており、このことからも容易に球状のセルロースビーズが得られることが分かる。しかしながら、オルトジクロロベンゼンは医療用や医薬品精製用に用いる場合、製品安全性や環境負荷の観点から好適とは言い難い場合がある。
米国特許第8664152号明細書 特開2015-187255号公報 国際公開第2006/025371号 特開平9−124702号公報 特開2010―236975号公報 特開2011−231152号公報 国際公開第2016/167268号 欧州特許第2437723号明細書
Annals of the New York Academy of Sciences, 2005, Vol.1051, p.635-646 American Heart Journal,Vol.152,Number 4,2006,p.712e1-712e6 Journal of Chromatography, 195(1980)221-230
本発明は従来の技術が有する上記課題を鑑みてなされたものであり、製品安全性や環境負荷のリスクが少ない方法で高性能な球状の多孔質セルロースビーズを得るためのものである。
セルロースまたはセルロース誘導体を含有する分散相を連続相に分散させてW/O型エマルションとし、凝固剤と接触させて多孔質セルロースビーズを得る製造方法において、HLB値が0.1以上1.8未満の化合物を界面活性剤として使用することで、製品安全や環境負荷の点で好ましい溶媒を用いた場合においても真球性に優れた多孔質セルロースビーズを得ることが可能となり、上記課題を解決できた。
本発明を以下に示す。
(1) セルロースまたはセルロース誘導体を含有する分散相を連続相に分散させてW/O型エマルションとし、凝固剤と接触させることによる多孔質セルロースビーズの製造方法であって、HLB値が0.1以上1.8未満の化合物を界面活性剤として使用することを特徴とする、多孔質セルロースビーズの製造方法。
(2) 連続相の引火点が73℃以上であることを特徴とする、(1)に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
(3) 連続相の沸点が181℃以上であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
(4) 連続相として、動粘度が74mm2/S未満の流動パラフィンを用いることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
(5) 界面活性剤のHLB値が下記の式1で求まる値より小さいことを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
界面活性剤のHLB値=−0.0433×連続相の動粘度 [mm2/S]+1.9733 (式1)
(6) セルロースまたはセルロース誘導体を含有する分散相中の水の濃度が41重量%以上であることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
(7) 多孔質セルロースビーズの製造時の液温が、連続相、分散相、界面活性剤及び凝固剤に含まれる化合物のうち、最も沸点が低い化合物の沸点未満であることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
(8) 凝固剤が連続相とほとんど混和しないことを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
(9) 分散相が、アルカリ水溶液と原料セルロース粉末とを混合して作製したセルロースドープであることを特徴とする、(1)〜(8)のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
(10) (1)〜(9)に記載の製造方法により多孔質セルロースビーズを製造する工程、および、架橋剤を用いて多孔質セルロースビーズを架橋する工程を含むことを特徴とする架橋多孔質セルロースビーズの製造方法。
(11) (10)に記載の製造方法により架橋多孔質セルロースビーズを製造する工程、および、架橋多孔質セルロースビーズにリガンドを固定化する工程を含むことを特徴とする吸着体の製造方法。
(12) 標的物質を精製する方法であって、(11)に記載の製造方法により、標的物質に結合するリガンドを架橋多孔質セルロースビーズに固定化して吸着体を製造する工程、および、標的物質を含む溶液と吸着体とを接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
(13) 吸着体をカラムに充填し、標的物質を含む溶液を当該カラムに通液する(12)に記載の方法。
(14) カラムを2本以上連結して通液することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
本発明によれば、製品安全性や環境負荷のリスクが少ない方法で高性能な球状の多孔質セルロースビーズを得ることができる。
造粒比較例1で得られた多孔質体の顕微鏡観察図である。 造粒比較例2で得られた多孔質体の顕微鏡観察図である。 造粒実施例1で得られた多孔質体の顕微鏡観察図である。 造粒実施例2で得られた多孔質体の顕微鏡観察図である。 造粒実施例3で得られた多孔質体の顕微鏡観察図である。 造粒実施例4で得られた多孔質体の顕微鏡観察図である。 造粒実施例5で得られた多孔質体の顕微鏡観察図である。 造粒実施例6で得られた多孔質体の顕微鏡観察図である。 造粒参考例1で得られた多孔質体の顕微鏡観察図である。 造粒実施例3のビーズを架橋したメディアン粒径60μm品の圧流速特性のグラフである。 本発明による架橋多孔質ビーズと市販PAレジンの圧流速の比較のグラフである。
本発明はセルロースまたはセルロース誘導体を含有する分散相を連続相に分散させてW/O型エマルションとし、凝固剤と接触させて多孔質セルロースビーズを得る製造方法において、HLB値が0.1以上1.8未満の化合物を界面活性剤として使用することで、製品安全や環境負荷低減に配慮した製造方法を提供できるものである。先に述べたとおり、よく知られている高性能な多孔質セルロースビーズには連続相溶媒にオルトジクロロベンゼン等が用いられており、製品安全や環境負荷の観点から適切ではない場合がある。そこで、本発明者らは上記課題を解決するために、オルトジクロロベンゼンより製品安全や環境負荷の点で好ましい溶媒を用いる検討に着手した。しかしながら、造粒比較例1に例示するとおり、球状のビーズを得ることができなかった。鋭意検討の結果、本発明者らは、オルトジクロロベンゼンより製品安全や環境負荷の点で好ましい溶媒を用いても、HLB値が1.8未満の化合物を界面活性剤として使用することで、真球性に優れた多孔質セルロースビーズを得られることを明らかにした。特許文献7によれば、オルトジクロロベンゼンを用いる製法においてはHLB値が4.3の界面活性剤が用いられている。通常、W/O型エマルションにおいては、用いる界面活性剤のHLB値は3から6が適切とされており、本発明者らが見出したHLB値はこれまでの技術常識からみて極めて異例であり、このような例はこれまでのところ見出されていない。また、界面活性剤のHLB値は1.0以下であれば更にビーズの真球性が向上することから好ましく、連続相の粘度が大きい場合は0.5以下であることが好ましい。また、界面活性剤のHLB値は0.1以上であれば、得られた多孔質セルロースビーズを水洗しやすいことから好ましく、0.3以上であればより好ましくビーズの洗浄が行える。
界面活性剤の種類については、HLB値を満たしていれば特に限定は無いが、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸、ポリグリセリン脂肪酸などの脂肪酸を構成要素とする化合物、脂肪酸エステル等を好ましく用いることができる。中でもポリグリセリンポリリシノレートが入手容易であることから好ましい。
界面活性剤の使用量に特に限定は無いが、連続相溶媒100重量部に対し、0.1重量部以上であれば球状のビーズが得られやすいことから好ましく、より好ましくは1重量部以上、更に好ましくは1.5重量部以上であり、エマルション化での撹拌強度を大きくしない場合は3重量部以上や4重量部以上用いても良い。また10重量部未満であれば、生産コストの観点から好ましく、7重量部未満であることが更に好ましい。
連続相の使用量は、前記セルロースドープの液滴を十分に分散できる量とすればよい。例えば、前記セルロースドープに対して1質量倍以上とすることができる。一方、連続相の量が多過ぎると廃液量が過剰に増えるおそれがあり得るので、当該割合としては10質量倍以下が好ましい。また、7質量倍以下がより好ましく、5質量倍以下がさらに好ましい。また、セルロースドープに対して連続相の量が少ないと、セルロースドープの液滴中に連続相が入るO/W/Oエマルションとなり、結果として均質な構造の多孔質ビーズが得られない場合があることから、当該割合としては、2質量倍以上が好ましく、3質量倍以上がより好ましく、4質量倍以上が特に好ましい。
エマルションは、常法により調製すればよい。例えば、前記セルロースドープ、連続相および界面活性剤を含む混合液を攪拌することにより調製することができる。
連続相溶媒については特に限定は無いが、製品安全性や環境負荷の観点から塩素化芳香族系化合物以外を使用することが好ましい。好ましい連続相溶媒の具体例として、動植物油脂、水素添加動植物油脂、脂肪酸グリセリド、脂肪族炭化水素系溶媒を挙げることができる。動植物油脂としては、パーム油、シア脂、サル脂、イリッペ脂、豚脂、牛脂、ナタネ油、米油、落花生油、オリーブ油、コーン油、大豆油、シソ油、綿実油、ヒマワリ油、月見草油、ゴマ油、サフラワー油、ヤシ油、カカオ脂、パーム核油、魚油、ワカメ油、コンブ油などを挙げることができる。水素添加動植物油脂としては、パーム硬化油、パーム極度硬化油、ナタネ硬化油、ナタネ極度硬化油、大豆硬化油、豚脂硬化油、魚油硬化油などを挙げることができる。脂肪酸グリセリドとしては、トリ−、ジ−、モノ−グリセリドのいずれでもよく、ステアリングリセリド、パルミチングリセリド、ラウリングリセリドなどを挙げることができる。脂肪族炭化水素系溶媒としては、ミツロウ、キャンデリラロウ、米ぬかロウなどを挙げることができる。また、多孔質セルロースビーズを医薬品精製や医療用に用いる場合は、精製度の高い連続相を使用することも好ましい。この場合、連続相溶媒の引火点が73℃以上であることが、生産時の安全性の観点から好ましく、81℃以上であることがより好ましく、100℃以上であっても良い。同じく生産時の安全性の観点から、連続相溶媒の沸点が181℃以上であることも好ましく、184℃以上であることがより好ましく、195℃以上であれば更に好ましく、沸点が計測できないほど高くても良い。これらの好ましい引火点や沸点を有する溶媒として、流動パラフィン等を挙げることができる。
本発明に関わる連続相溶媒として流動パラフィンを用いると、様々な粘度を示すグレードを選択することができるが、このグレード選択は粒度分布の調整がしやすくなったり、消防法等の法令上の制約を緩和できることから好ましい。
一般的に、セルロースドープは他のポリマーのドープに比べて、同じポリマー濃度における粘度が高い傾向がある。従って、エマルション化の際に用いる撹拌翼はせん断力を大きく得られやすいものを用いることが好ましい。せん断が大きい撹拌翼の例として、Rushton Tubine翼、Flat Blade Turibine翼等のタービン翼、傾斜パドル翼、プロペラ翼、ブルーマージン翼、Dispersing Homozenizing翼などを挙げることができる。中でもタービン翼がせん断力と混合性の観点から好ましい。
せん断力が大きい撹拌翼を用いると、全体混合性が低下する傾向にあることから、撹拌翼を2段以上用いることも好ましい。また、全体混合性を確保するため、37.8℃での動粘度が74mm2/S未満である連続相溶媒を用いることが好ましく、38mm2/S以下であることがより好ましく、16mm2/S以下であることが更に好ましい。また得られる多孔質セルロースビーズの粒径を30μmより大きくしたい場合は、連続相の37.8℃での動粘度が4mm2/S以上であることが好ましい。
前述の通り、本発明者らは検討の過程において、用いる連続相の粘度に合わせて界面活性剤のHLB値を選択すると、真球性の高い多孔質セルロースビーズが得られやすいことも見出した。つまり、連続相の粘度が大きくなるほど、HLB値が小さい界面活性剤を用いることが好ましい。ここでいう連続相とは、連続相の主溶媒だけでなく、増粘剤などの添加物も含むことが適切である。さらに具体的に例示すると、界面活性剤のHLB値が式1で求まる値より小さいことが好ましく、式2で求まる値より小さいことがさらに好ましく、式3で求まる値より小さいことが最も好ましい。
界面活性剤のHLB値=−0.0433×連続相の動粘度 [mm2/S]+1.9733 (式1)
界面活性剤のHLB値=−0.0192×連続相の動粘度 [mm2/S]+1.0769 (式2)
界面活性剤のHLB値=−0.0357×連続相の動粘度 [mm2/S]+1.1429 (式3)
本発明に関するセルロースまたはセルロース誘導体を含有する分散相中の水の濃度については特に限定は無いが、41質量%以上であることが好ましい。41質量%以上であれば、無機塩、有機塩、有機溶媒などのセルロースドープを作製するための助剤が少ないことから、環境負荷の少ない方法でセルロースビーズを得ることができる。分散相中の水の濃度はより好ましくは51質量%以上、さらに好ましくは61質量%以上、最も好ましくは71質量%以上である。また分散相中の水の濃度は97質量%以下であれば、良好な形状と機械的強度を有するセルロースビーズが得られやすいことから好ましく、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
その他のセルロースドープの作製方法について特に限定は無いが、低温のアルカリ水溶液と原料セルロース粉末とを混合する方法が簡便且つ環境負荷が少ないことから好ましい。
本発明で用いるアルカリは、水溶液となった際にアルカリ性を示すものであれば特に限定なく用いることができる。入手のしやすさから水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、製品安全性や価格の面から水酸化ナトリウムが最も好ましい。
前記アルカリ水溶液のアルカリ濃度に特に限定は無いが、3質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。アルカリの濃度がこの範囲であれば、セルロースのアルカリ水溶液への分散性・膨潤性が高くなるため好ましい。より好ましいアルカリの濃度は5質量%以上、15質量%以下であり、さらに好ましくは7質量%以上、10質量%以下である。
また本発明のセルロースドープには尿素やポリエチレングリコール等の助剤を用いることも好ましい。本開示において「助剤」とは、セルロースのアルカリ水溶液中への分散を促進したり、セルロースドープを安定化するものをいう。助剤のドープ中の濃度は3質量%以上、30重量%以下であることが好ましい。助剤の濃度がこの範囲であれば、ドープの均質性が高くなるため好ましい。より好ましい助剤の濃度は8質量%以上30質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上、20質量%以下であり、最も好ましくは12質量%以上、15質量%以下である。
前記セルロースおよびセルロース誘導体の種類には特に限定は無い。本出願人は、特許文献7で示しているように、セルロースを完全に溶解させずとも多孔質セルロースビーズを得る方法を開発していることから、溶解性を上げるための置換基を導入したセルロースなど、置換セルロースを用いる必要はなく、通常の無置換セルロースを原料として用いている。但し、セルロースをアルカリ水溶液に効率的に分散させるために、セルロースとしてはセルロース粉末を用いることが好ましい。
用いる原料であるセルロースおよびセルロース誘導体の分子量は特に制限されないが、重合度としては1000以下であることが好ましい。重合度が1000以下であれば、アルカリ水溶液への分散性・膨潤性が高くなり、好ましい。また重合度が10以上であれば、得られる多孔質セルロースビーズの機械的強度が大きくなるため好ましい。より好ましい重合度の範囲は50以上、500以下、さらに好ましくは100以上、400以下、特に好ましくは200以上、350以下、最も好ましくは250以上、350以下である。
セルロースドープにおけるセルロースの濃度は特に制限されず適宜調整すればよいが、例えば、1質量%以上、20質量%以下程度とすればよい。当該濃度としては、多孔質ビーズの機械的強度の観点から、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、3.8質量%以上が特に好ましく、最も好ましくは4.0質量%以上である。また吸着性能やドープの均質性の観点から、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がさらに好ましく、6質量%以下であることが特に好ましく、最も好ましくは5質量%以下である。
セルロースドープの調製方法は、常法に従えばよい。例えば、アルカリ水溶液とセルロースとの混合物を、低温に維持しつつ、攪拌すればよいし、既に本出願人らが数多く公知している例を好適に用いることができる。低温の具体例としては−22℃以上15°C未満である。ただし、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性化合物を添加した直後は温度が急激に上昇し、一旦15℃を越える場合もあるが、こういった一時的な温度上昇は除くものとする。また、−12℃ではドープの性状において何かしらの変化点があるようで、再現性が得られ難い場合があり、セルロースドープを−12℃で一定時間保つことは好ましくなく、−12℃以外の低温で保冷する工程を含むことが好ましい。特に−12℃より低い温度で保冷する工程を含むことがより好ましい。当該保冷時間は20分間以上12時間以内が好ましく、30分間以上6時間以内がより好ましく、60分間以上、3時間以内が特に好ましい。ただし、原料投入時から−12℃より低い温度に調整すると、セルロース粉末や助剤が均質分散する前にドープの粘度が上昇し、均質なドープひいては均質な構造の多孔質セルロースビーズが得られ難いことから、原料投入時は−12℃より高い温度であることが好ましい。より好ましい原料投入時の温度は、凍結を防ぐという観点から0°C以上であることが好ましく、より好ましくは4℃以上、アルカリ性化合物や助剤の析出を抑制するためには10℃以上であることも好ましい。
本発明においてセルロースドープを液滴化させるための凝固剤に特に限定は無いが、セルロースドープの溶媒に親和性を示すものが好ましい。例えば、アルコール系溶媒、および水とアルコール系溶媒との混合溶媒を挙げることができる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノールなどのC1-4アルコールを挙げることができる。アルコール水溶液における水とアルコール系溶媒の割合は、例えば、体積比で水:アルコール系溶媒=80:20〜5:95とすることができる。また酢酸、クエン酸、酒石酸、ギ酸またはこれらの水溶液や、塩酸、硫酸なども用いることができる。
また、本発明においては、用いる凝固剤が連続相とほとんど混和しなくても真球性の高い多孔質セルロースビーズが得られる。ほとんど混和しないとは、凝固剤と連続相を1:1の体積で混合した場合、溶解率が2割以下であることを示す。例えば、特許文献7の実施例で用いられている凝固剤であるメタノールは連続相溶媒のオルトジクロロベンゼンとよく相溶することで、環境負荷の懸念を除けば優れた多孔質セルロースビーズが得られている。一方、本発明において、例えばメタノールを凝固剤に用いて、連続相に流動パラフィンを用いた場合、両者はほとんど混和しないが、優れた多孔質セルロースビーズを得ることができる。理由は定かではないが、本発明者らの見出したHLB値に関する知見が効果的であるものと考えられる。
凝固剤の使用量は特に制限されず適宜調整すればよいが、例えば、セルロースドープに対して20v/w%以上、150v/w%以下程度とすることができる。
凝固溶媒を添加した後は、凝固した多孔質セルロースビーズを濾過や遠心分離、油水分離などにより分離し、水やアルコールなどで洗浄すればよい。得られた多孔質セルロースビーズは、粒径を揃えるため、篩などを用いて分級してもよい。
本発明者らは本発明を速やかに産業に貢献させるべく、連続相、分散相、界面活性剤及び凝固剤に含まれる化合物のうち、最も沸点が低い化合物の沸点未満の液温で製造できることに留意し、製造安全性の向上に努めてきた。この条件は本発明に好ましく用いることができる。
また、本発明の多孔質セルロースビーズは架橋剤を作用させて得られる架橋多孔質セルロースビーズであることが、高速精製に適した吸着体を提供しやすいことから好ましい。架橋の条件や架橋剤に特に限定は無い。例えばWO2008/146906に記載の方法を用いることができる。例えば、上述の温度調整工程に続いてセルロースドープに架橋剤を添加して架橋化工程を行ってもよいし、多孔質セルロースビーズに架橋剤を作用させて架橋してもよい。
架橋剤としては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、ジクロロヒドリンなどのハロヒドリン;2官能性ビスエポキシド(ビスオキシラン);多官能性ポリエポキシド(ポリオキシラン)を挙げることができる。架橋剤は、一種のみを単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
多孔質セルロースビーズを架橋剤により架橋する反応の溶媒は適宜選択すればよいが、例えば、水の他、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒や、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒などの水混和性有機溶媒を挙げることができる。また、架橋反応溶媒は、2以上を混合して用いてもよい。
架橋反応は、複数回実施してもよく、各回で反応溶媒や架橋剤を変更してもよい。例えば、1回目の架橋反応を水混和性有機溶媒中で行い、最終回の架橋反応を水中で行ってもよい。この場合、途中の溶媒組成は、1回目と最終回のどちらかと同じであっても異なっていてもよく、それらの中間組成であってもよい。さらには全ての回を水溶媒中で実施してもよい。架橋剤についても同様である。なお、架橋反応を複数回繰り返す場合、各架橋反応の間では、架橋多孔質セルロースを水などで洗浄して架橋剤を除去することが好ましい。
架橋反応を促進するために、反応液には塩基を添加してもよい。かかる塩基としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸水素ナトリウムや炭酸水素カリウムなどアルカリ金属の炭酸水素塩;炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどアルカリ金属の炭酸塩;トリエチルアミンやピリジンなどの有機塩基を挙げることができる。
架橋反応後は、架橋多孔質セルロースビーズは不溶性であることから、水などの溶媒で洗浄すればよい。
本発明に係る多孔質セルロースビーズは、標的物質と相互作用するリガンドを固定化することにより、吸着体とすることができる。本発明で得ることができる吸着体は非特異吸着が少ないといった特性を有していることから、安全性が高い薬や治療の提供が可能で、さらには精製や治療時に中間洗浄工程等を省力化することが可能となる。また、本発明の多孔質セルロースビーズはアルカリ耐性が高いことから、アルカリ耐性リガンドを固定化することにより、アルカリ洗浄が可能な吸着体を得ることができる。
本発明における「リガンド」とは、吸着体に吸着させることにより精製すべき標的物質に対して特異的な親和力を有し、標的物質と相互作用するアフィニティーリガンドをいう。例えば、標的物質が抗体である場合、抗体に特異的に相互作用する抗原、タンパク質、ペプチド断片;標的物質が酵素のリガンドである場合には、リガンドを基質とする酵素;標的物質が抗原である場合には、標的抗原に対する抗体などを挙げることができる。本発明に係る吸着体のために用いることができるリガンドは、本発明に係る吸着体を用いて精製すべき標的物質に特異的な親和性を有するものであれば特に制限されない。
本発明に係る多孔質セルロースビーズにリガンドを固定化する方法は特に制限されず、常法を用いることができる。例えば、笠井献一ら著,「アフィニティークロマトグラフィー」東京化学同人,1991年の表8・1、表8・2、図8・15に示されるような、臭化シアン法、トリクロロトリアジン法、エポキシ法、トレシルクロリド法、過ヨウ素酸酸化法、ジビニルスルホン酸法、ベンゾキノン法、カルボニルジイミダゾール法、アシルアジド法等を用いてアミノ基含有リガンドを固定化する方法;エポキシ法、ジアゾカップリング法等を用いて水酸基含有リガンドを固定化する方法;エポキシ法、トレシルクロリド法、ジビニルスルホン酸法等を用いて、チオール基含有リガンドを固定化する方法;アミノ化担体にカルボン酸含有リガンドやホルミル基含有リガンドを固定化する方法等の様々な固定化方法を挙げることができる。当該文献の全内容が、本願に参考のため援用される。
本発明に係る吸着体は、精製用吸着体として用いることが可能であるが、近年注目されている抗体医薬品精製用吸着体や医療用吸着体としても用いることが可能である。抗体医薬品精製用吸着体などに用いられる場合のリガンドとしては、特に限定は無いが、例えば、抗体に特異性の高い抗原やタンパク質や、プロテインA、プロテインG、プロテインLやそれらの変異体、抗体結合活性を有するペプチド等のアミノ基含有リガンドを挙げることができる。
特に、免疫グロブリン(IgG)を特異的に吸着できる吸着体として、プロテインA、プロテインG、またはそれらの変異体をリガンドとして多孔質担体に固定化した吸着体が注目されている。本発明に用いることができる上記プロテインA等には特に限定は無く、天然物や遺伝子組み換え物等を制限なく使用することができる。また、抗体結合ドメイン、その変異体、それらのオリゴマーを含むもの、融合タンパク質等であってもよい。かかるオリゴマーの重合数としては、2以上、10以下とすることができる。また、菌体抽出物もしくは培養上清より、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィー及び膜分離技術を用いた分子量分画、分画沈殿法等の手法から選択される精製法を組合せ、および/または繰り返すことにより製造された、プロテインA等を用いることもできる。特に、国際公開特許公報WO2006/004067や米国特許公報US5151350、WO2003/080655、特開2006−304633、WO2010/110288、WO2012/133349に記載されている方法で得られたプロテインAであることが好ましい。これら公報の全内容が、本願に参考のため援用される。プロテインAを固定化した本発明の吸着体は、拡張性心筋症などの治療に使用できる治療用吸着体として利用することもできる。また、デキストラン硫酸などを固定化した本発明の吸着体は、高コレステロール血症治療用吸着体として利用することができる。
リガンドを多孔質セルロースビーズに導入する方法としては、前述の様々な固定化方法から選択することができるが、より好ましいのは多孔質粒子が含有するホルミル基と、リガンドのアミノ基との反応を利用して固定化を行う方法である。例えば、WO2010/064437に記載の方法がある。当該公報の全内容が、本願に参考のため援用される。
本発明の吸着体のリガンドの固定化量は特に制限されないが、例えば、多孔質セルロースビーズ1mL当り、1mg以上、300mg以下とすることができる。当該割合が1mg以上であれば、標的物質に対する吸着量が大きくなるため好ましく、300mg以下であれば、製造コストを抑制できるため好ましい。リガンドの固定量としては、多孔質セルロースビーズ1mL当り、2mg以上がより好ましく、4mg以上がさらに好ましく、5mg以上が特に好ましく、また、100mg以下がより好ましく、50mg以下がさらに好ましく、30mg以下が特に好ましく、20mg以下が最も好ましい。
本発明の吸着体の用途に特に限定は無いが、医療用吸着体、中でも表面開孔度を向上できることから、サイズの大きい病因物質(LDLコレステロール等)を吸着除去する治療用吸着体に好適に用いることができる。また、各種クロマト担体、なかでも大径カラムに充填される産業用クロマト担体として用いることができる。特に近年需要が旺盛な抗体医薬品精製用吸着体として用いる場合に、その効果を発揮することができる。このような観点から、本発明の多孔質ビーズにプロテインAやプロテインG、プロテインLを導入した吸着体として好適に用いることができる。
また、近年、連続クロマトシステム用として、メディアン粒径が36μm以上、64μm以下の比較的小さい多孔質ビーズと、これらを充填した比較的カラム高が低いカラムが望まれている。本発明は、容易に粒径を調製でき、真玉性が良好で、適切な圧縮応力を示す多孔質セルロースビーズを提供できることから、比較的作製の難易度が高いカラム作製へのニーズに的確に応えることができる。ここで、適切な圧縮応力とは、その用途に応じて適切に充填・使用が可能であれば、特に限定は無いが、沈降したビーズを20%圧縮した時の応力が0.01MPa以上であれば、圧密化に伴うカラム閉塞が生じ難いため好ましく、1.0MPa未満であれば良好な吸着性能を付与できることから好ましい。より好ましくは0.04MPa以上、0.5MPa以下、更に好ましくは0.06MPa以上、0.25MPa以下、特に好ましくは0.09MPa以上、0.2MPa以下、最も好ましくは0.10MPa以上、0.16MPa以下である。圧縮応力を調製する方法としては、セルロースドープ中のセルロース濃度や、架橋度により調整する手法が挙げられる。
本発明に係る吸着体を用いて、標的物質を精製することができる。具体的には、本発明の吸着体と、標的物質を含む溶液とを接触させればよい。接触方法は特に制限されず、標的物質を含む溶液中に本発明に係る吸着体を添加してもよいし、上記のようにカラムに本発明の吸着体を充填し、標的物質を含む溶液を通液することにより、本発明の吸着体に標的物質を選択的に吸着させればよい。本発明に係る吸着体は強度が高いため、特にカラムに充填する場合、高速度での通液が可能になり、標的物質を効率的に精製することができる。
次に、標的物質が選択的に吸着した本発明の吸着体を、濾過や遠心分離などにより溶液から分離する。カラムを用いる場合には、吸着体と溶液との分離は容易である。この工程により、標的物質とその他の物質を分離することができる。さらに、溶出液を用い、標的物質を本発明吸着体から分離する。溶出液としては、例えば、pHが2.5以上、4.5以下程度の酸性緩衝液を用いることができる。また、非特異的吸着が大きい吸着体においては、溶出の前段階として、長大な中間洗浄工程が必要な場合があるが、本発明の多孔質セルロースビーズはこのような中間洗浄工程を必ずしも必要としない。また、本発明の多孔質セルロースビーズはアルカリ耐性が高いため、安価・簡便に調製可能なアルカリ性の洗浄液で洗浄することができる。水酸化ナトリウムを用いる場合、その濃度が0.1Nであっても問題なく洗浄することができるし、リガンドのアルカリ耐性が高ければ0.5N以上であっても用いることができる。
また本発明に関する精製方法はカラムを2本以上連結して通液することも好ましい。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。先ず、製造された多孔質セルロースビーズの物性の試験方法につき説明する。
試験例1: IgG吸着特性の測定
(1) 溶液調製
下記A〜E液及び中和液を調製し、使用前に脱泡した。
A液: シグマ社製「Phosphate buffered saline」と蒸留水を用いてpH7.4のPBS緩衝液を調製した。
B液: 酢酸、酢酸ナトリウム、および蒸留水を用いてpH3.5の35mM酢酸ナトリウム水溶液を調製した。
C液: 酢酸と蒸留水を用いて1M酢酸水溶液を調製した。
D液: ポリクロナール抗体(「ガンマガード」バクスター社製)と前記A液を用いて濃度3mg/mLのIgG水溶液を調製した。
E液: 和光純薬社製の水酸化ナトリウムと塩化ナトリウムの濃度が、それぞれ0.1N水酸化ナトリウムと1M塩化ナトリウムとなる水溶液を作製し、アルカリ洗浄液とした。
中和液: トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと超純水で2Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン水溶液を調製した。
(2) 充填、準備
カラムクロマトグラフィー用装置としてAKTA Pure 150(GEヘルスケア社製)を用い、内径0.5cmのカラムに吸着体試料を3mL入れ、吸着体層高さを15cmとした。塩化ナトリウムと蒸留水から調製した0.2MのNaCl水溶液を流速3mL/分で10分間通液して吸着体をカラムに充填した。フラクションコレクターに15mLの採取用チューブをセットし、溶出液の採取用チューブにはあらかじめ中和液を入れておいた。
(3) IgG精製
前記カラムにA液を15mL通液し、次いでD液を必要量通液した。次いで、A液を12mL通液後、B液を12mL通液してIgGを溶出させた。次にC液を9mL、A液を15mL、E液を9mL、A液を15mL通液した。なお流速はD液以外は1mL/minとし、D液の流速は所定の滞留時間(RT)に合わせた。例えばRT6分の流速は0.5mL/minに調整した。
(4) 動的吸着量
IgGが5%破過するまでに吸着体に吸着したIgG量と吸着体体積からIgGの動的吸着量を求めた。当該動的吸着量を5%DBCという。
(5) 静的吸着量
RT3minとRT6minのそれぞれのIgGの破過曲線が交わった時のIgG負荷量と吸着体体積からIgGの静的吸着量を求めた。当該静的吸着量をSBCという。
(6) Operating binding capacity(OBC)
X. Gjoka et al. / J. Chromatogr. A 1416 (2015) 38-46を参考にOBCを求めた。これはカラムを2本連結して抗体溶液を負荷した場合、2本目のカラムから抗体溶液が漏れ始めた時に、1本目のカラムに結合している抗体の量を表わすものである。本実施例では、例えばRT1minのOBCを求める場合は、RT2min相当の線速で抗体溶液を負荷した時の0.5%DBC時点の負荷時間を求め、次いでRT1min相当の線速で抗体溶液を同時間負荷して求めた。
試験例2: 20%圧縮応力の測定
(1) 試料調製
試料ビーズに純水を加え、濃度約50体積%のスラリーを調製した。このスラリーの攪拌による均質化と、それに続く30分以上の減圧による脱泡とからなる均質・脱泡操作を3回繰り返して実施し、脱泡スラリーを得た。この操作とは別に、処理対象を純水に変えて、前記均質・脱法操作を90分以上実施し、脱泡水を得た。
(2) ビーズ充填シリンジ調製
2.5mLのディスポーザブルシリンジ(商標名「NORM−JECT」HANKE SASS WOLF社製)の先端に親水性ディスポーザブルフィルター(孔径5.0μm)を取り付けた。シリンジのピストンを外し、シリンジ後端側から脱泡水を約2mL投入し、この脱泡水が0mLの標線を下回らないうちに、脱泡スラリーを投入した。ディスポーザブルフィルターの2次側にアスピレーターを接続し、液面がビーズ面を下まわらない様に注意しながら、前記脱泡スラリーを吸引した。ビーズ面の約0.5mL上まで液面が下がったところで吸引を停止した。以降の作業は、液面がビーズ面を下回らないよう、前記脱泡水を適宜追加しながら実施した。振動を与えながら前記脱泡スラリーを追加またはビーズを除去し、ビーズ面を1.5mLの標線に合わせ、振動を与えてもビーズ面が低下しないことを確認した。ビーズが舞わないようゆっくりと脱泡水をシリンジから溢れるまで追加し、気泡が入らないように注意しながらピストンを挿入した。以下、このシリンジを「ビーズ充填シリンジ」という。
(3) 測定
レオテック社のFUDOH RHEO METERに10Kのロードセルを取り付け、変位速度のダイヤルを2cm/minに合わせ、前記ビーズ充填シリンジをセットし、ピストンの変位を開始した。変位と応力との関係を記録し、下記式に基づき、20%圧縮応力を求めた。
20%圧縮応力=[充填ビーズが20%圧縮された時の応力]−[ピストンがビーズを押す前に水を通液している時の応力]
試験例3: 固形分含量の測定
試料ビーズ約5mLを15mLの遠沈管内に入れ、試料ビーズ体積がそれ以上低減されなくなるまで振動を付与し、その際の体積を正確に測定した。以下、かかる体積を「沈降体積」という。次に遠沈管内のビーズを3Gガラスフィルターに移し、濾過した。なお、3Gガラフィルターの重量は、事前に122℃のオーブン内で一晩乾燥させ、測定しておいた。次いで122℃のオーブン内で一晩乾燥させ、重量を測定した。ビーズ試料の固形分含量は、上記重量を上記体積で除することで算出した。
試験例4: 圧流速特性の測定
所定のカラムボリュームと沈降体積が同量のビーズを用意し、これに水を加えて50%スラリーを作製した。この50%スラリーをカラムに投入し、上部から水を60cm/hの線速で通液もしくはアキシャルパッキング可能なカラムの場合はヘッドを60cm/hの線速で低下させた。ビーズ面が安定した後、所定のカラムボリュームになるまでヘッドを下げた。測定はGEヘルスケア社のAKTA Pure 150またはAKTA Pilotを使用し、線速度とカラム差圧の関係を調べた。
試験例5: メディアン粒径の測定
レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(「Partica LA950」堀場製作所製)を用いて、ビーズおよび吸着体のメディアン粒径を求めた。
<多孔質セルロースビーズの製造>
造粒比較例1:
(1)用いる化合物
セルロースは旭化成ケミカルズ社製結晶セルロース「PH−F20JP」または「PH-101」を用いた。尿素は和光純薬社製を用いた。アルカリ水溶液は和光純薬社製水酸化ナトリウムと蒸留水を用いて作製した。造粒後の架橋剤は和光純薬社製のエピクロロヒドリンを用いた。その他の試薬は特に記載が無い限り精製することなく使用した。
(2)アルカリ水溶液の作製
和光純薬社製の水酸化ナトリウムと27gと純水32.4gを用いて、水酸化ナトリウム水溶液を作製し、その温度を4℃に調整した。
(3)セルロースドープの作製
セパラブルフラスコに278gの蒸留水と16gのセルロース(PH-F20JP)と46gの尿素を投入し、ディスクタービン(rushton turbine)翼を用いてスラリーの温度が4℃になるまで、150〜200rpmで30分間攪拌した。尚、セルロース原料の水分率を測定し、その水分を考慮して調整している。次いで、4℃に冷却した上記水酸化ナトリウム水溶液を添加し、300rpmの速度で攪拌しながら30分間保持した。その後、冷却工程として、-15°Cとし、-15°Cにて60分間撹拌した。次いで、これを撹拌しながら25°Cに調整した。得られたセルロースドープ中の水の濃度は77.7質量%であった。
(4)エマルション化と多孔質化
9.8gのソルビタンモノオレエート(HLB値:4.3)を750mLの連続相溶媒(流動パラフィン、カネダ製K−140N、動粘度4.6mm2/S、引火点142℃、沸点は測定できないほど高い)に投入し、撹拌して混合させた。これを25°Cで750rpmで撹拌しながら、前記セルロースドープ156gを投入し、15分間、25°Cで撹拌することでセルロースドープを分散させた。凝固剤としてメタノールを87mL添加し、750rpmで20分間攪拌した。その後、酢酸を14g投入し、750rpm、10分間攪拌し中和を行った。TOP社製ガラスフィルター「26G−3」で溶液を濾過し、次いでイソプロピルアルコールと水で洗浄を行い、多孔質セルロースビーズを回収した。
(5)セルロースビーズの分級
38μm〜90μmの篩を用いて湿式分級を60分間行った。
(6)マイクロスコープによる観察
図1に得られた多孔質体の顕微鏡観察像を例示する。全体の個数のうち23%しか球状のビーズが得られなかった。
造粒比較例2:
界面活性剤をHLB1.8のもの(ソルビタントリオレエート)に変えた以外は造粒比較例1と同様にビーズ作製を試みた。図2に得られた多孔質体の顕微鏡観察像を例示する。全体の個数のうち31%しか球状のビーズが得られなかった。
造粒実施例1:
界面活性剤をHLB0.9のもの(理研ビタミン社製:PR−100)に変えて、凝固剤をエタノールに変えた以外は造粒比較例1と同様にビーズ作製を試みた。図3に得られた多孔質体の顕微鏡観察像を例示する。全体の個数のうち90%得られた。
造粒実施例2:
(1)用いる化合物、(2)アルカリ水溶液の作製は造粒比較例1と同様に実施をした。
(3)セルロースドープの作製
円筒状ステンレス容器に15.25kgの純水と0.919kgのセルロース(PH-F20JP)と2.49kgの尿素を投入し、2段ディスクタービン(rushton turbine)翼を用いてスラリーの温度が4℃になるまで、283rpmで30分間攪拌した。尚、セルロース原料の水分率を測定し、その水分を考慮して調整している。次いで、回転数を756rpmとし、4℃に冷却した関東化学社製の48%水酸化ナトリウム2.884kgを添加し、30分間撹拌した。その後、-15°Cに冷却した。尚、液温が−9℃に達した時点で回転数を57rpmとした。-15°Cに到達後、60分間撹拌した。次いで、回転数を756rpmとし、25°Cに調整した。得られたセルロースドープ中の水の濃度は77.8質量%であった。
(4)エマルション化と多孔質化
1.225kgHLB値:0.9の界面活性剤(理研ビタミン社製PR-100)を78.9kgの連続相溶媒(流動パラフィン、カネダ製K−140N、動粘度4.6mm2/S、引火点142℃、沸点は測定できないほど高い)とを円筒状ステンレス容器内で撹拌して混合させた。これを25°Cで165rpmで撹拌しながら、前記セルロースドープ19.55kgを投入し、15分間、25°Cで撹拌することでセルロースドープを分散させた。凝固剤としてメタノールを6.5kg添加し、165rpmで20分間攪拌した。その後、酢酸を2.625kg投入し、165rpm、10分間攪拌し中和を行った。撹拌を止めて1時間静置し、連続相を含有する油相とビーズを含有する水相を分離し、円筒状ステンレス容器の底弁から水相を分取した。必要量の水相をTOP社製ガラスフィルター「26G−3」で溶液を濾過し、次いでイソプロピルアルコールと水で洗浄を行い、多孔質セルロースビーズを回収した。
(5)セルロースビーズの分級
38μmと75μmまたは90μmの篩を用いて湿式分級を60分間行った。
(6)マイクロスコープによる観察
図4に得られた多孔質体の顕微鏡観察像を例示する。全体の個数のうち94%得られた。
造粒実施例3:
用いる界面活性剤の量を3.5倍に増量した以外は造粒実施例2と同様にビーズを作製した。図5に得られた多孔質体の顕微鏡観察像を例示する。全体の個数のうち球状のビーズが95%得られた。
造粒実施例4:
用いる連続相溶媒の動粘度を13.6 mm2/s(流動パラフィン、カネダ社製K-230、引火点176℃、沸点は測定できないほど高い)とし、エマルション化以降の回転数を432rpmとし、凝固剤量を43.5mLとした以外は造粒実施例1と同様にビーズを作製した。図6に得られた多孔質体の顕微鏡観察像を例示する。全体の個数のうち球状のビーズが67%得られた。
造粒実施例5:
HLB値が0.4の界面活性剤(理研ビタミン社製PR-300)を用いた以外は造粒実施例4と同様にビーズを作製した。図7に得られた多孔質体の顕微鏡観察像を例示する。全体の個数のうち球状のビーズが83%得られた。
造粒実施例6:
セルロースドープ中のセルロースの量を14.7gとし、水の量を1g増量し、得られるセルロースドープ中の水の濃度を78.4質量%とし、用いる連続相溶媒の動粘度を35.3 mm2/s(流動パラフィン、カネダ社製K-290、引火点206℃、沸点は測定できないほど高い)とし、連続相溶媒の使用量を488mLとし、エマルション化以降の回転数を300rpmとし、用いる凝固剤の量を65mLとした以外は、造粒実施例1と同様にビーズを作製した。図8に得られた多孔質体の顕微鏡観察像を例示する。全体の個数のうち球状のビーズが62%得られた。
造粒実施例7:
HLB値が0.4の界面活性剤(理研ビタミン社製PR-300)を用いた以外は造粒実施例6と同様にビーズを作製した。図9に得られた多孔質体の顕微鏡観察像を例示する。全体の個数のうち球状のビーズが91%得られた。
造粒参考例1:
用いる連続相溶媒の動粘度を77.6 mm2/s(流動パラフィン、カネダ社製K-350、引火点254℃、沸点は測定できないほど高い)とし、エマルション化以降の回転数を750rpmとした以外は造粒実施例6と同様にビーズを作製した。図10に得られた多孔質体の顕微鏡観察像を例示する。球状のビーズがほとんど得られなかった。
以上の造粒例における球状のビーズが得られた個数%と界面活性剤のHLB値、連続相動粘度の関係を表1に示す。
Figure 2021121647
(6)セルロースビーズの架橋
(6−1)第1架橋工程
上記の造粒実施例で得られた洗浄後のセルロースビーズ96mLを用意した。ビーズが足りない場合は上記分級までの操作を繰り返した。用意したビーズをガラスフィルターの上に乗せ、エタノールでリパルプした後、このエタノールを吸引除去する溶媒置換操作を4回実施した。エタノール量は、溶媒置換操作1回目〜3回目:233mL、溶媒置換操作4回目:167mLとした。溶媒置換操作後、エタノールを加えて全体が97gになる様に調整しながら500mLのセパラブルフラスコに移した後、水を28g添加した。さらにエピクロロヒドリンを80mL加え、回転数200rpmで30分撹拌した。次いで17MのNaOH水溶液10mLと水86mLからなる混合液を添加し、温度を40℃に保ったまま回転数350rpmで1時間30分撹拌することでセルロース多孔質ビーズを架橋収縮させた。さらに17MのNaOH水溶液を9.6mL加えて回転数350rpmで1.5時間撹拌する追加処理を3回実施した後、濾過し、ついで水で洗浄することによって途中架橋ビーズを得た。
(6−2)第2架橋工程
得られた途中架橋ビーズ全量に水を加えて全体の容量を117mLに調整し、温度40℃に加温した。硫酸ナトリウムを38g加え、回転数150rpmで10分間撹拌した後、エピクロロヒドリン33mLを加え、回転数250rpmで10分間撹拌した。次いで17MのNaOH水溶液を21mL加えて回転数300rpmで2.5時間撹拌し、最後に17MのNaOH水溶液5.1mLを追加してさらに2.5時間撹拌した。反応物を濾過し、濾過物を水洗することによって架橋ビーズを得た。
(7)エポキシ開環処理
得られた架橋ビーズと水の50%スラリーをオートクレーブにて121℃、60分間加熱することでエポキシ基を開環し、ジオール基とした。エポキシ基が無くなっていることは、フェノールフタレイン指示薬にて確認することができる。
(8)再分級
38μmと75μmまたは90μmの篩を用いて湿式分級を60分間実施した。得られた各粒径のビーズを混合し所定の粒径の架橋セルロースビーズを得た。
以上の架橋セルロースビーズを必要量に応じて作り足したり、スケールを大きくして取得したりした。表2に多孔質セルロースビーズ及び架橋多孔質セルロースビーズの物性を示す。
Figure 2021121647
特許文献7等に示されている通り、20%圧縮応力が0.11MPa以上であれば産業用として好適に用いることができるほどの機械的強度が付与されている。
図10に造粒実施例3で得られたセルロースビーズを架橋したメディアン粒径が60μmの架橋多孔質ビーズの圧流速特性を示す。用いたカラムはGEヘルスケア社のAxiChrom70で、充填率はタッピング体積に対して105%とし、カラム高さは20cmとした。また試験中の移動相は純水であるが、パッキング時の移動相を純水にした場合と、20%エタノール with 0.4 M食塩とした場合の比較も実施した。パッキング時の移動相が水の場合は60cm/hの線速でアキシャルパッキングを実施した。パッキング時の移動相が20%エタノール with 0.4 M食塩の場合は、約50%の同移動相で置換されたビーズスラリーをカラムに投入し、200cm/hの線速で同移動相をダウンフローで流しながらビーズを沈降させ、100cm/hの線速でアキシャルパッキングを実施した。また圧流速特性試験は徐々に線速を上げつつ圧を読み取り、ベッド高が1mm以上低下したところで測定を注視した。つまり図10中、一番高線速側のプロットではベッド高が若干低下している状態である。またカラムにビーズを充填せず、水のみで圧流速試験を実施した結果をブランクとして引いている。
一般的にAxiChromカラムで高さ20cmの場合、300cm/hの線速で0.3 MPa以下で通液可能であることが産業用に使用できるかどうかの判断基準とされている。図10に示すとおり、本発明により得られた架橋多孔質セルロースビーズは、300cm/hより高線速で通液が可能で、しかも圧が低いことが分かった。
図11にて図10の試験で用いた架橋多孔質ビーズと、連続カラムクロマトグラフィーシステム用に適しているとされる市販PAレジン(GEヘルスケア社製MabSelect SuRe pcc)の圧流速特性比較を示す。用いたカラムはGEヘルスケア社のAxiChrom70で、充填率はタッピング体積に対して105%とし、カラム高さは4cmとした。また試験中の移動相とパッキング時の移動相は純水で、60cm/hの線速でアキシャルパッキングを実施した。また圧流速特性試験は徐々に線速を上げつつ圧を読み取り、ベッド高が1mm以上低下したところで測定を注視した。つまり図11中、一番高線速側のプロットではベッド高が若干低下している状態である。またカラムにビーズを充填せず、水のみで圧流速試験を実施した結果をブランクとして引いていない。図11に示すとおり、本発明により得られた架橋多孔質セルロースビーズは連続カラムクロマトグラフィーシステム用としても十分な圧流速特性を示すことが分かった。
<リガンドが固定化された吸着体の調製>
(1)アルデヒド化反応
(1−1)バッファー作製
クエン酸一水和物0.165gとクエン酸三ナトリウム二水和物0.0646gに水を加えて100mLとし、pH3.4のバッファーを作製した。
(1−2)反応
上記で得られた架橋後のセルロースビーズ4mLに対して上記バッファーを3倍量以上用いて液体部分を上記バッファーで置換し、更に上記バッファーを加えて総量を6.0mLとした。46.4mg/mLの過ヨウ素酸ナトリウム水溶液を2.23mL投入し、25℃で35分間攪拌した。アルデヒド基含有ビーズを得た。
(2)プロテインA固定化反応
(2−1)プロテインAの調製
WO2017/022672の実施例1に記載の方法に従って、プロテインAの変異体を調製した。以下「PA」と略記する。このPAが入った溶液(プロテインA濃度55mg/mL)を調整した。
(2−2)イミノ化反応−PA仕込量が20mg/mLの場合
アルデヒド化反応後、直ちに#3のグラスフィルターにて濾過を行ない、0.9Mのリン酸水素2カリウム水溶液をビーズの3倍体積量以上用いて、液体部分を置換し、0.9Mのリン酸水素2カリウム水溶液を加えて総量を6.0mLとした。これにプロテイン水溶液を1.48g添加し、6℃で60分間撹拌した。60分間撹拌後、2Nの水酸化ナトリウム水溶液を0.75mL添加し、pHを11台とした。そのまま6℃にて一晩攪拌した。
(2−3)中和および還元反応
一晩反応後のイミノ化反応液を遠心分離し、上清を抜き取って液量を6.25mLに調整した。抜き取った反応液のUVを測定して、PA固定化量を求めた。反応容器にピコリンボランを1.1w/v%含有するエタノール溶液を1.2mL添加し、6℃で1時間撹拌した。次いで2.4Mクエン酸水溶液を添加してpHを8に調製し、25°Cで7時間撹拌した。次いでジメチルアミンボランを11w/v%含有する水溶液を2.4mL添加し、25°Cで一晩撹拌した。反応後のビーズを#3のグラスフィルター上で、ビーズの3倍体積量の水で洗浄した。
(2−4)洗浄
#3のグラスフィルター上でPA固定化ビーズ1mLに対して3mLの0.1Mクエン酸(以下「酸バッファー」と略記する)を通液して、ビーズ内の液体部分を酸バッファーで置換した。置換後のPA固定化ビーズを容器に移し、酸バッファーを加えて全量を2mL以上とし、25℃で30分間攪拌し、酸洗浄とした。
次いで、上記酸バッファーの代わりに0.05N水酸化ナトリウム+1M硫酸ナトリウム水溶液を用いた以外は同様の方法でアルカリ洗浄を行なった。
次いで、上記酸バッファーの代わりに、0.1Mクエン酸と0.1Mクエン酸ナトリウムを混合してpHを5.9に調整した液を用いた以外は、同様の方法で中性洗浄を行なった。中性洗浄後のビーズを蒸留水を用いて洗浄濾液の電導度が10μs/cm以下になるまで洗浄し、プロテインAが固定化された吸着体を得た。
表3にメディアン粒径が60μmの場合の各PAレジンのIgG吸着特性を示す。表中の参考品は、連続カラムクロマトグラフィーシステムに適しているとされる市販PAレジンである。通常、粒径が小さい方がDBC、OBCが高くなるが、表3に示すとおり、本発明で得られるPAレジンはメディアン粒径を60μmに調製したとしても、メディアン粒径が52μmの参考品より高い吸着性能を示すことが分かった。
Figure 2021121647

Claims (14)

  1. セルロースまたはセルロース誘導体を含有する分散相を連続相に分散させてW/O型エマルションとし、凝固剤と接触させることによる多孔質セルロースビーズの製造方法であって、HLB値が0.1以上1.8未満の化合物を界面活性剤として使用することを特徴とする、多孔質セルロースビーズの製造方法。
  2. 連続相の引火点が73℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
  3. 連続相の沸点が181℃以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
  4. 連続相として、動粘度が74mm2/S未満の流動パラフィンを用いることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
  5. 界面活性剤のHLB値が下記の式1で求まる値より小さいことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
    界面活性剤のHLB値=−0.0433×連続相の動粘度 [mm2/S]+1.9733 (式1)
  6. セルロースまたはセルロース誘導体を含有する分散相中の水の濃度が41重量%以上であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
  7. 多孔質セルロースビーズの製造時の液温が、連続相、分散相、界面活性剤及び凝固剤に含まれる化合物のうち、最も沸点が低い化合物の沸点未満であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
  8. 凝固剤が連続相とほとんど混和しないことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
  9. 分散相が、アルカリ水溶液と原料セルロース粉末とを混合して作製したセルロースドープであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
  10. 請求項1〜9に記載の製造方法により多孔質セルロースビーズを製造する工程、および、架橋剤を用いて多孔質セルロースビーズを架橋する工程を含むことを特徴とする架橋多孔質セルロースビーズの製造方法。
  11. 請求項10に記載の製造方法により架橋多孔質セルロースビーズを製造する工程、および、架橋多孔質セルロースビーズにリガンドを固定化する工程を含むことを特徴とする吸着体の製造方法。
  12. 標的物質を精製する方法であって、請求項11に記載の製造方法により、標的物質に結合するリガンドを架橋多孔質セルロースビーズに固定化して吸着体を製造する工程、および、標的物質を含む溶液と吸着体とを接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
  13. 吸着体をカラムに充填し、標的物質を含む溶液を当該カラムに通液する請求項12に記載の方法。
  14. カラムを2本以上連結して通液することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
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