以下、電動作業機の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1には、電動作業機の一例であるハンマドリル10が示されている。ハンマドリル10は、ハウジング11、電動モータ12、回転力伝達機構13、変換機構14、スリーブ15、打撃子16及び制御回路17を有する。ハンマドリル10は、電動モータ12の回転力をスリーブ15に伝達する機能と、電動モータ12の回転力を打撃子16の打撃力に変換する機能と、を有する。
ハウジング11は、モータケース18、ギヤケース19及びハンドル20を有する。ギヤケース19にモータケース18が接続され、ハンドル20は、ギヤケース19及びモータケース18に対してそれぞれ作動可能に連結されている。
電動モータ12は、モータケース18内に設けられている。電動モータ12は、ステータ21及びロータ22を有する。ステータ21は3本のコイル21A,231B,21Cを有し、ステータ21はモータケース18に固定されている。コイル21A,21B,21Cは、3相、具体的にはU相、V相、W相に対応する3本の導線を巻いたものであり、コイル21A,21B,21Cの端部は、互いに接続されている。電動モータ12は、ブラシレスモータであり、整流子及びブラシを有していない。
ロータ22は、出力軸23に取り付けられており、出力軸23は、軸受24,25により第1仮想線A1を中心として回転可能に支持されている。ロータ22に永久磁石22Aが取り付けられている。ステータ21に電流が流れると、回転磁界が形成されて、ロータ22及び出力軸23が回転される。駆動ギヤ26が出力軸23に設けられている。
回転力伝達機構13は、図2のように、従動ギヤ27、中間シャフト28及び伝達ギヤ29を有する。回転力伝達機構13は、駆動ギヤ26の回転力をスリーブ15に伝達する機構である。中間シャフト28は、ギヤケース19内で軸受30,31によって支持され、かつ、第2仮想線A2を中心として回転可能である。第1仮想線A1と第2仮想線A2とが所定角度で交差して配置されている。所定角度は、一例として90度である。
従動ギヤ27は、中間シャフト28に固定され、従動ギヤ27は、駆動ギヤ26に噛み合わされている。従動ギヤ27は、駆動ギヤ26の回転力を中間シャフト28に伝達する要素である。中間シャフト28の外周面にギヤ32が設けられており、伝達ギヤ29は、ギヤ32に噛み合わされている。伝達ギヤ29は、スリーブ15の外周に取り付けられている。
スリーブ15は、ギヤケース19内で軸受33,34によって支持され、かつ、第3仮想線A3を中心として回転可能である。スリーブ15は、例えば金属製である。第2仮想線A2と第3仮想線A3とが平行に配置されている。伝達ギヤ29は、中間シャフト28の回転力をスリーブ15に伝達する要素である。伝達ギヤ29及びギヤ32は、歯車伝動装置である。
スリーブ15は筒形状であり、かつ、第1筒部35及び第2筒部36を有する。第1筒部35と第2筒部36とが接続され、第1筒部35と第2筒部36とが、第3仮想線A3に沿った方向で異なる位置に配置されている。第1筒部35と第2筒部36とは、第3仮想線A3を中心として同心状に設けられている。第2筒部36は、工具支持孔37を有し、スリーブ15は、先端工具38を支持可能及び取り外し可能である。
スリーブ15が先端工具38を支持すると、スリーブ15と先端工具38とが一体回転可能である。第1筒部35の内部及び第2筒部36の内部に亘って中間打撃子39が設けられている。中間打撃子39は、スリーブ15に対して第3仮想線A3に沿った方向に移動可能である。
変換機構14は、ギヤケース19内に設けられている。変換機構14は、内輪40、外輪41及びピストン42を有する。内輪40は、中間シャフト28の外周面に取り付けられている。外輪41は、内輪40の外側に配置されている。内輪40の外周面にカム溝40Aが設けられ、カム溝40Aと外輪41との間に転動体64が設けられている。変換機構14、ピストン42、打撃子16及び中間打撃子39により、打撃機構63が構成されている。
クラッチ43が、ギヤケース19内に設けられている。クラッチ43は、中間シャフト28と内輪40との間の動力伝達経路を接続及び遮断する。クラッチ43は、中間シャフト28に取り付けられた円筒部材である。クラッチ43は、ギヤ32に噛み合わされており、クラッチ43は、中間シャフト28に対して第2仮想線A2に沿った方向に移動可能である。
ハンマドリル10の使用状態を切り替える作業選択部材が、ハウジング11に設けられている。作業選択部材は、便宜上、図示されていない。作業選択部材は、一例としてレバーである。ユーザが選択部材を操作すると、クラッチ43が第2仮想線A2に沿った方向に作動される。ユーザは、作業選択部材を操作することにより、回転・打撃モードと、回転モードとを切り替え可能である。回転・打撃モードは、スリーブ15に回転力を加え、かつ、第3仮想線A3に沿った方向の打撃力を中間打撃子39に付加可能なモードである。回転モードは、スリーブ15に回転力を加え、かつ、中間打撃子39に打撃力を付加しないモードである。
クラッチ43は、内輪40に対して係合及び解放可能である。回転・打撃モードが選択されると、クラッチ43が内輪40に係合され、動力伝達経路が接続される。回転モードが選択されると、クラッチ43が内輪40から解放され、動力伝達経路が遮断される。
外輪41はピストン42に連結されている。ピストン42は、筒形状であり、かつ、ピストン42は第1筒部35内に設けられている。ピストン42は、第1筒部35に対して第3仮想線A3に沿った方向に作動可能である。打撃子16は、ピストン42内に設けられており、打撃子16は、ピストン42に対して第3仮想線A3に沿った方向に移動可能である。ピストン42内で、ピストン42と打撃子16との間に空気室44が設けられている。
ハンドル20は、モータケース18に連結される箇所に装着部45を有し、電池パック46を装着部45に取り付け及び取り外しが可能である。電池パック46は交流電源である。電池パック46は、収容ケースと、収容ケース内に設けられた電池セルと、を有する。電池セルは、一次電池または二次電池の何れでもよい。電池セルとしては、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケルカドミウム電池の何れかを用いることができる。装着部45に第1端子が設けられ、収容ケースに第2端子が設けられている。電池パック46が装着部45に取り付けられると、電池パック46の電流を第1端子へ供給可能である。
トリガ47が、ハンドル20に設けられている。トリガ47は、ハンドル20に対して作動可能である。ここでは、トリガ47が、ハンドル20に対して略直線状に作動可能である例を説明する。トリガ47は、スプリング48によってハンドル20の外部に向けて付勢されている。トリガ47はストッパ60を有し、ストッパ60がハンドル20に接触して停止される。ストッパ60がハンドル20に接触した状態を初期位置とすれば、トリガ47は初期位置から所定量LMAXの範囲内で作動可能である。
ギヤケース19の外面にグリップ62が取り付けられている。ユーザは、第1の手でグリップ62を握る。ユーザは、ハンドル20を第2の手で握り、かつ、指をトリガ47に接触させて操作力を付加及び解除可能である。トリガ47に対する操作力が解除されていると、トリガ47は初期位置で停止されている。トリガ47に操作力が付加されると、トリガ47は、スプリング48の付勢力に抗して初期位置から作動する。初期位置に対するトリガ47の作動量は、トリガ47の操作量と定義可能である。トリガ47に付加される操作力に応じて、トリガ47の操作量が変化、つまり、増加または減少する。
図3は、ハンマドリル10の制御系統を示す。制御回路17は、ハウジング11内、例えば、モータケース18内に設けられている。制御回路17は、入力ポート、出力ポート、中央演算処理部、記憶部及びタイマーを有するマイクロコンピュータである。また、インバータ回路49が、モータケース18内に設けられている。インバータ回路49は、複数のスイッチング素子49Aを有し、インバータ回路49は、ステータ21と電池パック46との間の電気回路に設けられている。スイッチング素子49Aをそれぞれ単独でオン及びオフさせる信号を出力する制御信号出力回路61が設けられている。制御回路17は、制御信号出力回路61を制御する。
操作量検出センサ50が、ハンドル20に設けられている。操作量検出センサ50は、トリガ47の操作量を検出して信号を出力する。操作量検出センサ50としては、トリガ47に接触する変位センサ、トリガ47に接触しない渦電流変位センサ等を用いることが可能である。電流値検出回路51が、ハウジング11内に設けられている。電流値検出回路51は、電池パック46からステータ21に供給される電流値を検出して信号を出力する。電圧検出回路52が、ハウジング11内に設けられている。電圧検出回路52は、電池パック46の電圧を検出して信号を出力する。
回転位置検出センサ53が、モータケース18内またはギヤケース19内に設けられている。回転位置検出センサ53は、ロータ22及び出力軸23の回転方向における位置を検出して信号を出力する。制御回路17は、操作量検出センサ50から出力される信号、電流値検出回路51から出力される信号、電圧検出回路52から出力される信号、回転位置検出センサ53から出力される信号を処理する。制御回路17は、回転位置検出センサ53の信号を処理することにより、ロータ22及び出力軸23の単位時間あたりの回転数、つまり、電動モータ12の実際の回転数を求めることができる。
制御回路17は、トリガ47に対する操作力が解除されていることを検出すると、電動モータ12を停止させる。具体的に説明すると、制御回路17は、インバータ回路49の複数のスイッチング素子49Aを全てオフさせる。このため電池パック46から電動モータ12に電流は供給されない。
制御回路17は、トリガ47に操作力が付加されたことを検出すると、電動モータ12を回転させる。具体的に説明すると、制御回路17は、インバータ回路49の複数のスイッチング素子49Aのオンとオフとを、それぞれ交互に切り替える。すると、電池パック46から電動モータ12に電流が供給され、電動モータ12のロータ22及び出力軸23が回転される。
出力軸23の回転力は、駆動ギヤ26及び従動ギヤ27を経由して中間シャフト28に伝達される。中間シャフト28の回転力は、ギヤ32及び伝達ギヤ29を経由してスリーブ15に伝達される。スリーブ15の回転力は、先端工具38に伝達され、先端工具38が対象物を加工する。ユーザが回転モードを選択していると、クラッチ43は、内輪40から解放されている。したがって、ピストン42は停止され、かつ、先端工具38に打撃力は付加されない。
中間シャフト28の回転速度は、出力軸23の回転速度よりも低速である。つまり、駆動ギヤ26及び従動ギヤ27は、第1減速機である。第1減速機の減速比は固定されている。スリーブ15の回転速度は、中間シャフト28の回転速度よりも低速である。つまり、ギヤ32及び伝達ギヤ29は、第2減速機である。第2減速機の減速比は固定されている。
ユーザが回転・打撃モードを選択していると、クラッチ43は内輪40に係合される。すると、中間シャフト28の回転力は、内輪40を経由して外輪41に伝達され、外輪41が揺動される。このため、ピストン42が第1筒部35内で往復作動し、空気室44の圧力が低下及び上昇される。空気室44の圧力が上昇すると、打撃子16が中間打撃子39を打撃し、中間打撃子39が受けた打撃力は先端工具38に伝達される。したがって、先端工具38に回転力が付加され、かつ、第3仮想線A3に沿った直動方向の打撃力が、先端工具38に付加される。
制御回路17は、電動モータ12の実際の回転数を制御するために、トリガ47の操作量と電動モータ12の回転数、具体的には目標回転数との関係を定めた情報を予め保持、つまり、記憶している。制御回路17は、電動モータ12の実際の回転数と、記憶されている目標回転数とを比較し、実際の回転数を目標回転数に近付けるようにフィードバック制御を行う。制御回路17がフィードバック制御により電動モータ12の実際の回転数と目標回転数を一致させるのに要する時間は非常に短いため、電動モータ12の実際の回転数と目標回転数は実質的に同じものとして扱うことができる。
制御回路17は、トリガ47の操作量に応じてインバータ回路49を制御することにより、電動モータ12の実際の回転数を制御する。具体的には、制御回路17は、トリガ47の操作量に基づいて目標回転数を決定し、電動モータ12の実際の回転数が目標回転数と一致するように、制御信号出力回路61を介してインバータ回路49を制御する。電池パック46から電動モータ12に供給される電流値が上昇されると、電動モータ12の実際の回転数が上昇する。電池パック46から電動モータ12に供給される電流値が低下されると、電動モータ12の実際の回転数が低下する。電池パック46から電動モータ12に供給される電流値が略一定であると、電動モータ12の実際の回転数が略一定になる。しかしながら、いずれの場合においても、制御回路17のフィードバック制御により、電動モータ12の実際の回転数は、瞬時に目標回転数と一致する。
さらに、図4に示す制御パネル54が、ハウジング11に設けられている。制御パネル54は、例えば、図1に示すモータケース18とギヤケース19との境界部位に設けられている。制御パネル54と制御回路17とは、信号線によって接続されている。ユーザは、ハウジング11の外部から制御パネル54を目視及び操作可能である。制御パネル54は、モード切替スイッチ55、第1ランプ56、第2ランプ57、第3ランプ58及び表示部59を有する。モード切替スイッチ55として、例えば、タクタイルスイッチが用いられる。
ユーザによりモード切替スイッチ55が操作されると、モード切替スイッチ55から出力される信号は、制御回路17に入力される。制御回路17は、モード切替スイッチ55から入力される信号を処理することにより、制御モードの切り替えを行う。制御モードは、電動モータ12の回転数を設定するためのものである。制御回路17は、複数の制御モード、例えば、第1モード、第2モード及び第3モードを切り替え可能である。
第1ランプ56、第2ランプ57及び第3ランプ58は、例えば、発光ダイオードランプでそれぞれ構成されている。第1ランプ56、第2ランプ57及び第3ランプ58は、電池パック46の電力で点灯される。第1ランプ56、第2ランプ57及び第3ランプ58の点灯、消灯及び点滅は、制御回路17によって制御される。表示部59は、一例として液晶パネルであり、表示部59は、電池パック46の電力で情報を表示する。表示部59が表示する情報は、制御回路17によって制御される。表示部59は、例えば、電動モータ12の実際の回転数、電池パック46の電圧等を表示可能である。
制御回路17が行う電動モータ12の回転数の制御は、次のようなものである。制御回路17は、電池パック46が装着部45に装着されていると、先ず、第1モードを選択する。また、制御回路17は、ユーザによりモード切替スイッチ55が操作される毎に、第1モードと第2モードと第3モードとを切り替えて選択可能である。更に、制御回路17は、第3モードが選択されている状態で、電動モータ12の最高回転数を変更できる“調整可能状態”を有する。電動モータ12の最高回転数は、電池パック46の電圧、電動モータ12の定格等の条件から定まる上限回転数よりも低い。
制御回路17は、第1モードを選択すると、第1ランプ56を点灯させ、かつ、第2ランプ57及び第3ランプ58を消灯させる。また、制御回路17は、第2モードを選択すると、第1ランプ56及び第2ランプ57をそれぞれ点灯させ、第3ランプ58を消灯させる。制御回路17は、第3モードを選択すると、第2ランプ57を点灯させ、かつ、第1ランプ56及び第3ランプ58を消灯させる。制御回路17は、“調整可能状態”へ移行すると、第2ランプ57を点滅させ、かつ、第1ランプ56及び第3ランプ58を消灯させる。
第1モード、第2モード及び第3モードに対応する電動モータ12の制御例は、図5に示されている。図5には、第1モード、第2モード及び第3モードのそれぞれについて、トリガ47の操作量に応じた電動モータ12の回転数、具体的には目標回転数が特性線で示されている。
制御回路17は、全てのモードにおいて、トリガ47が初期位置から作動され、かつ、トリガ47の操作量が第1操作量L1以下であると、トリガ47の操作量に関わり無く、電動モータ12の回転数を下限値である最低回転数に設定する。制御回路17は、最低回転数として例えば1,000rpmを設定可能である。
制御回路17は、トリガ47の操作量が第1操作量L1を超えていると、選択している制御モードに応じて、電動モータ12の回転数を制御する内容を決定する。第1モード及び第3モードで行われる制御は、基本的には同じである。第2モードで行われる制御は、第1モード及び第3モードで行われる制御とは異なる。トリガ47の操作量が同じである場合、第2モードで設定される電動モータ12の回転数は、第1モード及び第3モードで設定される電動モータ12の回転数よりも高い。
また、制御回路17は、トリガ47の操作量が第1操作量L1を超え、かつ、第2操作量L2以下であると、トリガ47の操作量が増加すると、電動モータ12の回転数を上昇させる。制御回路17は、トリガ47の操作量が第1操作量L1を超え、かつ、第3操作量L3以下であると、トリガ47の操作量が減少すると、電動モータ12の回転数を低下させる。第3操作量L3は、第1操作量L1よりも多い。
さらに、制御回路17は、トリガ47の操作量が第3操作量L3を超えていると、トリガ47の操作量に関わり無く、電動モータ12の回転数を上限値である最高回転数に維持する。第1モード及び第3モードにおける最高回転数は同じである。第2モードにおける最高回転数は、第1モード及び第3モードにおける最高回転数よりも高い。制御回路17は、第2モードにおける最高回転数として例えば、26,510rpmを設定する。制御回路17は、第1モード及び第3モードにおける最高回転数として例えば、19,280rpmを設定する。
図5に示された全ての特性線は、電動モータ12の最高回転数以下の回転数において、略直線であり、かつ、傾斜している。これは、トリガ47の操作量の変化割合いに対する電動モータ12の回転数の変化割合いが、略一定であることを意味する。
制御回路17は、第1モードに対応させて予め記憶している電動モータ12の回転数の制御を変更することは無く、かつ、第2モードに対応させて予め記憶している電動モータ12の回転数の制御を変更することは無い。つまり、第1モード第2モードは、共に最高回転数を変更することが不可能である。
これに対して、制御回路17は、第3モードに対応させて予め記憶している電動モータ12の最高回転数を変更可能である。具体的に説明すると、制御回路17は、第3モードが選択されている場合にモード切替スイッチ55が第1所定時間以上押されると、電動モータ12の最高回転数を変更できる“調整可能状態”へ移行する。第1所定時間は、例えば2秒である。
制御回路17は、“調整可能状態”へ移行し、かつ、電動モータ12の目標回転数が第2所定時間以上維持されると、維持された目標回転数を、第3モードにおける最高回転数として設定、具体的には記憶する。第2所定時間は、例えば1秒である。制御回路17が設定可能な最高回転数は、第3モードで予め設定されている電動モータ12の最高回転数未満であり、かつ、電動モータ12の最低回転数よりも高い。なお、制御回路17は、「調整可能状態」へ移行し、かつ、電動モータ12の目標回転数の維持時間が第2所定時間未満であると、予め記憶されている最高回転数を維持する。
また、電動モータ12の目標回転数は、制御回路17が回転位置検出センサ53を用いて求めた電動モータ12の実際の回転数から求め、具体的には電動モータ12の実際の回転数を目標回転数と同一として扱う。
ただし、制御回路17はトリガ47の操作量と電動モータ12の目標回転数との関係を定めた情報を予め保持しているため、トリガ47の操作量から目標回転数を求めてもよい。換言すると、制御回路17は、トリガ47の操作量が第2所定時間以上維持されると、維持されたトリガ47の操作量に対応する目標回転数を、第3モードにおける最高回転数として設定してもよい。
図5には、“調整可能状態”において、第3モードに対応する最高回転数が、予め定められている19,280rpmから、13,000rpmに変更された例が示されている。ここで、トリガ47の操作量が第2操作量L2を超えると、電動モータ12の最高回転数が13,000rpmに制御される。また、トリガ47の操作量が第1操作量L1を超え、かつ、第2操作量L2以下の範囲において、トリガ47の操作量と電動モータ12の回転数との関係は、第3モードに対応して予め定められた制御である。なお、トリガ47の第2操作量L2は、トリガ47の第1操作量L1を超え、かつ、トリガ47の第3操作量L3未満である。
制御回路17が、モード切替スイッチ55の信号等を処理して行う制御の一例が、図6のフローチャートに示されている。制御回路17は、電池パック46が装着部45に装着されていると、先ず、ステップS11において第1モードを選択する。制御回路17は、第1モードを選択している状態で、ステップS12においてモード切替スイッチ55が押されたか否かを判断する。制御回路17は、ステップS12でNOと判断すると、ステップS11へ戻る。
制御回路17は、ステップS12でYESと判断すると、ステップS13において第1モードから第2モードへ切り替える。制御回路17は、第2モードを選択している場合に、ステップS14でモード切替スイッチ55が押されたか否かを判断する。制御回路17は、ステップS14でNOと判断すると、ステップS13へ進む。
制御回路17は、ステップS14でYESと判断すると、ステップS15において第2モードから第3モードへ切り替える。制御回路17は、第3モードを選択している場合に、ステップS16でモード切替スイッチ55が第1所定時間未満押されたか否かを判断する。第1所定時間は、例えば2秒である。
制御回路17は、ステップS16でYESと判断すると、ステップS11へ戻る。制御回路17は、ステップS16でNOと判断すると、ステップS17でモード切替スイッチ55が第2所定時間以上押されたか否かを判断する。制御回路17は、ステップS17においてNOと判断すると、ステップS15に進む。
制御回路17は、ステップS17においてYESと判断すると、ステップS18で“調整可能状態”へ移行する。制御回路17は、ステップS19において、トリガ47に操作力が付加されたか否かを判断する。制御回路17は、ステップS19でNOと判断すると、ステップS20においてモード切替スイッチ55が押されたか否かを判断する。制御回路17は、ステップS20でNOと判断すると、ステップS19へ進む。制御回路17は、ステップS20でYESと判断すると、ステップS11へ戻る。
制御回路17は、ステップS19でYESと判断すると、ステップS21において、インバータ回路49を制御することにより、電動モータ12を回転させる。制御回路17が、ステップS21で行う電動モータ12の回転数の制御は、第3モードに応じて予め記憶されている内容である。第3モードの最高回転数は、図5に示す19,280rpmである。
制御回路17は、ステップS22において、電動モータ12の目標回転数が所定範囲内で、第2所定時間以上に亘って維持された定常状態であるか否かを判断する。ステップS22で判断する定常状態は、電動モータ12の実際の回転数が、第3モードで予め設定されている最高回転数未満であり、かつ、最低回転数よりも高いことを前提とする。また、制御回路17は、電動モータ12の回転数の変化量が第2所定時間以上にわたって所定の回転数の範囲内に維持されると、“電動モータ12の目標回転数が所定範囲内である定常状態”と判断する。なお、第2所定時間は、0.5秒以上、かつ、5.0秒以下であり、一例として1秒である。また、所定の回転数は100rpm以上、かつ、6,000rpm以下であり、一例として4,820rpmである。
制御回路17は、ステップS22でNOと判断すると、ステップS20へ進む。制御回路17は、ステップS22でYESと判断すると、ステップS23で第3モードの最高回転数を変更し、ステップS15へ進む。制御回路17は、ステップS23において、第2所定時間以上に亘って所定範囲内に維持された電動モータ12の目標回転数に基づいて、第3モードの最高回転数を設定及び記憶することが可能である。ここで、制御回路17は、第2所定時間以上に亘って所定範囲内に維持された電動モータ12の目標回転数の“平均値”を、最高回転数として設定可能である。
また、制御回路17は、ステップS23で最高回転数を記憶した後にステップS15に進み、再度、ステップS18へ戻ると、ステップS23で記憶した最高回転数をリセットする。なお、制御回路17は、ステップS23で最高回転数を記憶した後、ステップS18を経ずに、ステップS11からステップS14を経てステップS15に戻る場合、ステップS23で記憶した最高回転数を維持する。さらに、制御回路17は、ステップS23で最高回転数を記憶した後に、装着部45から電池パック46が取り外され、その後、装着部45に再度、電池パック46が取り付けられても、最高回転数を記憶し続ける。なお、第3モードにおいて装着部45から電池パック46が取り外され、その後、装着部45に再度、電池パック46が取り付けられたときには、第1モードに戻らずに第3モードを維持し続けてもよい。
制御回路17が図6のステップS23で行うことの可能な他の制御例は、図7のフローチャートに示されている。制御回路17は、ステップS30において、“第2所定時間以上に亘って所定範囲内に維持された電動モータ12の目標回転数の平均値が、閾値RMINrpm未満であるか否か”を判断する。制御回路17は、予め閾値RMINrpmを記憶しており、予め閾値RMINrpmは、例えば、5,000rpmである。
制御回路17は、ステップS30でYESと判断すると、ステップS31で閾値RMINrpmを最高回転数として記憶し、図7の制御を終了する。つまり、図6のステップS15へ進む。制御回路17は、ステップS30でNOと判断すると、ステップS32で“第2所定時間以上に亘って所定範囲内に維持された電動モータ12の目標回転数の平均値”を最高回転数として記憶し、図7の制御を終了する。
制御回路17が“第2所定時間以上に亘って所定範囲内に維持された電動モータ12の目標回転数の平均値”を求める例を、図8を参照して説明する。図8は、電動モータ12の目標回転数の変化例を示すグラフ図である。電動モータ12の目標回転数は、第2所定時間の一例である1秒、つまり、200ms〜1,200msの間、最高回転数12,050rpmと、最低回転数16,870rpmとの所定範囲内で変化している。このため、制御回路17は、“電動モータ12の目標回転数が第2所定時間以上に亘って所定範囲内に維持された定常状態にある”と判断する。
そして、制御回路17は、電動モータ12の目標回転数の平均値として求めた14,300rpmを、1,200msの時点、言い換えると図6のステップS23において最高回転数として記憶する。ここで、制御回路17は、電動モータ12の目標回転数を1ms毎に検出しており、1,000msにおける電動モータ12の目標回転数から平均値を求めている。このように、第2所定時間の一例である1秒は、電動モータ12の目標回転数が略一定に維持されたか否かを判断するために用いられるとともに、電動モータ12の目標回転数の平均値を求めるために用いられる。
また、電動モータ12の目標回転数は、図8の1200msよりも前の段階では、14,300rpm を超えている。制御回路17は、1,200msの時点で14,300rpm を最高回転数として記憶した時点以後、制御回路17は、電動モータ12の目標回転数を14,300rpm に制御している。
なお、制御回路17は、電動モータ12の目標回転数の平均値として、図8に示された最高回転数と最低回転数との間の中央に位置する回転数を採用することも可能である。
本開示のハンマドリル10は、トリガ47が操作されて電動モータ12が回転され、かつ、電動モータ12の回転数が最高回転数未満の所定範囲内である状態が第2所定時間以上維持されると、制御回路17は、所定範囲内における電動モータ12の回転数に基づいて最高回転数を設定する。つまり、最高回転数を設定するために、ユーザはトリガ47以外の部材、例えば、ダイヤルまたはボタン等を操作せずに済む。したがって、ユーザの操作性が向上する。
また、所定範囲内における電動モータ12の回転数は、ユーザによるトリガ47の操作量に応じて、最高回転数を任意に、かつ、無段階、かつ、きめ細かく、設定可能である。したがって、先端工具38を回転させて行う作業に応じて、電動モータ12の最高回転数を、きめ細かく、または微調整でき、ユーザの要望に応えることが可能である。
さらに、ユーザが先端工具38を対象物に押し付けて処理を行っている状態で、電動モータ12の目標回転数に基づいて、最高回転数が設定される。したがって、ユーザは先端工具38の作動による処理状況をイメージでき、かつ、先端工具38の実際の挙動と、最高回転数とが乖離することを抑制できる。
本実施形態で開示された事項の技術的意味の一例は、次の通りである。ハンマドリル10は、電動作業機の一例である。電動モータ12は、モータの一例である。ハウジング11は、ハウジングの一例である。スリーブ15は、工具支持部材の一例である。トリガ47は、操作部材の一例である。モード切替スイッチ55は、モード切替部材の一例である。打撃機構63は、打撃機構の一例である。制御回路17は、制御回路の一例である。第2所定時間が、所定時間の一例である。第1モード及び第2モードは、固定モードの一例であり、かつ、最高回転数が異なる複数のモードの一例である。第1モード及び第2モードは、最高回転数を調整不可能である。第3モードは、可変モードの一例である。
制御パネル54は、表示部の一例である。電動モータ12の回転数の変化量が4,820rpm以下となるように第2所定時間維持されることが、“モータの回転数が所定範囲内で所定時間以上維持された定常状態”の一例である。回転力伝達機構13は、回転力伝達機構の一例である。電動モータ12の回転数の上昇量及び減少量が、モータの回転数の変化量の一例である。
本実施形態の電動作業機は、図面を用いて説明されたハンマドリルに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、操作部材の全体が、ハウジングに対して作動するか否かは問われない。操作部材の一部が弾性変形するもの、例えば合成ゴム製でもよい。この場合、操作量検出センサは、操作部材の一部が弾性変形する量を検出して信号を出力する。操作量検出センサは、圧電変換素子などを用いることが可能である。
本実施形態の電動作業機は、第1モード及び第3モードにおける最高回転数は、第2モードにおける最高回転数未満であり、かつ、最低回転数を超えていればよく、19,280rpmに限定されない。また、第2モードにおける最高回転数も、26,510rpmに限定されない。
電動モータは、ブラシ付きモータ、ブラシレスモータを含む。電動モータに電流を供給する電源は、直流電源、交流電源を含む。直流電源は、ハンドルに着脱される電池パックを含む。モード切替部材は、レバー、スイッチ、ボタン、液晶パネルなどを含む。回転力伝達機構は、歯車伝動装置に代えて、巻き掛け伝動装置を備えていてもよい。ハウジングは、モータ、操作部材、工具支持部材、制御回路等を支持する要素であり、ハウジングは、ケーシングまたは本体と呼ばれる要素を含む。
本実施形態の電動作業機は、操作部材が仮想線に沿った方向に作動可能であり、かつ、仮想線を中心として回転可能な工具支持部材でもよい。このような工具部材を有する電動作業機としてのインパクトドライバは、例えば、特許第6484918号公報に記載されている。このインパクトドライバは、先端工具が対象物に押し付けられると、押し付け力に応じて工具支持部材の一例であるアンビルが、ハウジングに対して仮想線に沿った方向に作動可能である。そして、操作量検出センサは、アンビルの作動量、つまり、操作量を検出して信号を出力すればよい。
本実施形態の電動作業機は、工具支持部材に回転力を加え、かつ、先端工具に回転方向の打撃力を加えることの可能なもの、例えば、インパクトドライバでもよい。このようなインパクトドライバは、例えば、特許第6484918号公報に記載されている。
本実施形態の電動作業機は、モータの回転力で工具支持部材を回転させ、かつ、打撃機構を有していない電動作業機、例えば、ドライバ、ドリルにも適用可能である。このようなドライバ及びドリルは、例えば、特許第6394330号公報に記載されている。
本実施形態の電動作業機は、モータの回転力を打撃力に変換する打撃機構を有し、モータの回転力を工具支持部材に伝達しない電動作業機、例えば、打撃作業機にも適用可能である。このような打撃作業機は、例えば、特開2015−208798号公報に記載されている。
変換機構は、モータの回転力をカム溝によって打撃子の直動力に変換するものに代えて、モータの回転力をクランク機構によって打撃子の直動力に変換するものでもよい。モータの回転力をクランク機構によって打撃子の直動力に変換する変換機構は、例えば、特開2018−103318号公報に記載されている。
操作部材は、ハウジングに対して直線状に作動する要素、または、ハウジングに対して支持軸を中心として円弧状に作動する要素を含む。操作部材は、トリガ、レバー、スイッチ、ボタン等を含む。さらに、工具支持部材は先端工具を支持及び取り外しが可能な要素であり、工具支持部材は、スリーブ、チャック、アンビル、ボックス、エクステンション等の要素を含む。
電動作業機は、工具支持部材の回転中心である仮想線と、モータの回転中心である仮想線とが交差して配置されているもの、工具支持部材の回転中心である仮想線と、モータの回転中心である仮想線とが略平行に配置されているものを含む。このような電動作業機は、例えば、特開2013−212543号公報に記載されている。