JP2021120334A - 熱間吹付補修材 - Google Patents

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悠人 鈴木
清行 小松原
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清行 小松原
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Abstract

【課題】水抜け性が良好な熱間吹付補修材を実現する。【解決手段】マグネシア原料と、マグネシア原料に対して外掛で5〜20質量%の鉄粉と、を含む。【選択図】なし

Description

本発明は熱間吹付補修材に関する。
各種精錬設備において耐火材の損傷部位に対して施工される補修材として、熱間吹付補修材が使用されている。かかる熱間吹付補修材を用いて補修される部位として、脱ガス装置の浸漬管が例示される。脱ガス装置は真空下で溶鋼を吸引循環して精錬する装置であり、その下部には溶鋼に直接浸漬される浸漬管が取り付けられている。かかる浸漬管は耐火物で構成されているが、繰り返し溶鋼に浸漬されるため亀裂や剥離などが発生しやすく、使用途中に補修が必要となる。かかる補修において、短時間での補修が可能な吹付補修材が汎用される。施工方法としては、補修用不定形耐火物を公知の吹付装置を用いてノズルへ搬送し、ノズルあるいはノズル近傍にて施工水を添加し、吹付ける方法が一般的である。
たとえば特開2018−39706号公報(特許文献1)には、浸漬管などの補修において優れた補修効果を発揮できるマグネシア−オリビン質不定形耐火材が開示されている。特許文献1に開示されているような吹付補修材を用いると、脱ガス処理終了後の浸漬管を直ちに吹付補修し、数分から数十分の養生の後にまた浸漬管を溶鋼に浸漬する、というサイクルでの使用が可能になる。
特開2018−39706号公報
補修対象設備の稼働状況によっては、使用と補修とが短いサイクルで繰り返される。そのため、吹付け後に溶鋼に浸漬されるまでの待機時間が非常に短くなる場合がある。上述のように、熱間吹付補修材は水と混合されて吹付施工されるため、特許文献1のような吹付補修材を用いると、吹付補修材に水分が残留したまま次の使用に供され、補修面が溶鋼に浸漬されたときに当該水分が急激に蒸発して吹付補修材が剥離することがあった。このような剥離を防止するためには、吹付補修材の水抜け性が良好である必要がある。
そこで、水抜け性が良好な熱間吹付補修材の実現が求められる。
本発明者らは、水抜け性を向上させるため、添加材の効果について検討した。その結果、耐火物原料に鉄粉を添加することで格段に水抜け性が向上するとの知見を得た。これは、耐火物原料より高い熱伝導率を有する鉄粉を添加することによって、施工体内部の温度上昇が促進され、これによって水抜け性が向上するためだと考えられる。
また、本発明者らは、耐火物原料の粒子径分布と水抜け性との関係についても検討した。その結果、粗粒が多く微粉が少ない粒子径分布を有する耐火物原料を用いると、水抜け性がさらに向上するとの知見を得た。これは、粗粒が多く存在することによって吹付施工体に空隙が形成され、これによって水抜け性が向上するためだと考えられる。
本発明者らは、これらの知見に基づき本発明を完成した。本発明に係る熱間吹付補修材は、マグネシア原料と、前記マグネシア原料に対して外掛で5〜20質量%の鉄粉と、を含むことを特徴とする。
この構成によれば、水抜け性が良好な熱間吹付補修材が得られる。
また、本発明に係る熱間吹付補修材は、一態様として、前記マグネシア原料は、粒子径1〜3mmの粒子が28〜53質量%であり、粒子径0.3mm以下の粒子が17質量%以下である粒子径分布を有することが好ましい。
この構成によれば、水抜け性が一層良好な熱間吹付補修材が得られる。また、付着性および乾燥性も良好になりやすい。
本発明のさらなる特徴と利点は、以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
本発明に係る熱間吹付補修材の実施形態について説明する。以下では、本発明に係る熱間吹付補修材を、脱ガス浸漬管を補修するための熱間吹付補修材に適用した例について説明する。
〔熱間吹付補修材の構成〕
以下では、本実施形態に係る熱間吹付補修材の構成について説明する。本実施形態に係る熱間吹付補修材は、マグネシア原料と、マグネシア原料に対して外掛で5〜20質量%の鉄粉とを含む。ここで「外掛」とは、対象となる添加材(本実施形態では鉄粉など)の含有量を基準となる材料(本実施形態ではマグネシア原料)の重量を100質量%とした質量百分率値で表す表現方法である。以下では、「外掛」の質量百分率を記載する場合、特記しない限りはマグネシア原料に対する外掛質量百分率を表すものとする。
本実施形態に係る熱間吹付補修材において、鉄粉の含有量が外掛で5質量%未満であると、熱間吹付補修材の水抜け性が向上する効果が十分に得られない。一方、鉄粉の含有量が外掛で20質量%を超えると、熱間吹付補修材の耐食性が低下するとともに、補修面に対する熱間吹付補修材の付着性が低下するおそれがある。鉄粉の含有量は、外掛で10〜18質量%であることがより好ましい。
本実施形態に係る熱間吹付補修材に用いるマグネシア原料は、耐火材の原料として一般的に使用されるマグネシア原料であり、その物性は特に限定されない。ただし、粗粒が多く微粉が少ない粒子径分布を有するマグネシア原料を用いると、適度な空隙が形成されるため熱間吹付補修材の水抜け性が一層向上する。具体的には、マグネシア原料が、粒子径1〜3mmの粒子(以下、「粗粒」という。)が28〜53質量%であり、粒子径0.3mm以下の粒子(以下、「微粉」という。)が17質量%以下である(微粉を含まない場合を含む。)粒子径 分布を有することが好ましい。なお、マグネシア原料の粒子径分布は、JIS Z 8801−01:2019により規定される金属製網ふるいを使用することにより、特定される。
マグネシア粗粒が53質量%を超えると、補修面に対する熱間吹付補修材の付着性が低下する場合がある。なお、マグネシア原料中の粗粒の割合は、29〜49質量%であることがより好ましく、33〜46質量%であることがさらに好ましい。また、マグネシア原料中の微粉の割合は、16質量%以下であることがより好ましく、12質量%以下であることがさらに好ましい。
本実施形態に係る熱間吹付補修材に用いるマグネシア原料として、MgO含有量が90質量%以上のものを用いると、熱間吹付補修材の耐食性が向上するため好ましい。
本実施形態に係る熱間吹付補修材に用いる鉄粉は、耐火材の添加材として一般的に使用される鉄粉であり、その物性は特に限定されない。ただし、鉄粉は、Fe含有量が95質量%以上かつC含有量が2.5〜4.0質量%以下であると、乾燥性の向上に効果があるため好ましい。また、微粉を多く含む鉄粉を用いると、熱間吹付補修材において鉄粉が均一に分散しやすくなり、施工体内部の温度上昇が促進されて水抜け性が向上する効果が得られやすい。具体的には、鉄粉が、粒子径1mmの粒子が70質量%以上である粒子径分布を有することが好ましい。
本実施形態に係る熱間吹付補修材は、耐火材のバインダーとして一般的に使用されるバインダーを含みうる。そのようなバインダーとしては、りん酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、およびこれらの組合せが例示される。りん酸ナトリウムが用いられる場合、その種類は特に限定されないが、ヘキサメタりん酸ナトリウムを用いると補修面に対する熱間吹付補修材の付着性が向上する点で好ましい。また、バインダーとして、りん酸ナトリウムとけい酸ナトリウムとを組み合わせて使用することが好ましい。バインダーの添加量は、外掛で2〜15質量%であることが好ましく、5〜12質量%であることがより好ましい。バインダーの添加量が上記の範囲内であると、接着性が向上しやすく、またノズルの閉塞やノズル内の材料付着などの不具合を抑制しやすい。
本実施形態に係る熱間吹付補修材は、添加材として消石灰を含みうる。熱間吹付補修材が消石灰を含む場合、補修面に対する付着性が向上する。消石灰の添加量は、外掛で10質量%以下であることが好ましい。
本実施形態に係る熱間吹付補修材は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記の他の公知の保形剤、分散剤などを含みうる。
〔熱間吹付補修材の製造方法〕
本実施形態に係る熱間吹付補修材は、上記の構成成分を公知の方法により混合することによって得られる。
〔熱間吹付補修材の使用方法〕
本実施形態に係る熱間吹付補修材は、たとえば、脱ガス装置の浸漬管(耐火材の例)の補修に使用できる。具体的には、浸漬管の損傷部位に対して、公知の吹付装置を用いて熱間吹付補修材を吹付施工する(吹付工程の例)。このとき、吹付けに必要な流動性を付与するため、熱間吹付補修材に水を添加する。水の添加量は、熱間吹付補修材100質量%に対する外掛で、10〜25質量%であることが好ましく、13〜20質量%であることがより好ましい。水の添加量が外掛で10質量%未満であると、吹付施工に必要な流動性および付着性が得られない場合がある。また、水の添加量が外掛で25質量%を超えると、施工された吹付補修材の水分含有量が多いため、乾燥させるための待機時間が長くなる場合がある。また、この場合において乾燥が不十分であると、吹付補修材の剥離が生じうる。なお、施工された吹付補修材の厚さが30mm以下であると、乾燥しやすい点で好ましい。
本実施形態に係る熱間吹付補修材は、脱ガス装置の浸漬管のほか、転炉、電気炉、取鍋、RHなどの製鋼設備の補修に使用できる。
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
〔使用した材料〕
熱間吹付補修材の原料として、いずれも市販の天然マグネシア(マグネシア原料の例)および鉄粉を用いた。また、添加材として、いずれも市販のヘキサメタりん酸ナトリウム(バインダーの例)および消石灰を用いた。
〔試料の調製〕
後掲する表1および表2に示す組成に従って秤量した各材料を、ヘキサメタりん酸ナトリウムおよび消石灰とともに袋に入れてよく混合し、実施例および比較例の各例の熱間吹付補修材を得た。なお、ヘキサメタりん酸ナトリウムの添加量は外掛で5.5質量%とし、消石灰の添加量は外掛で5.5質量%とした。
〔吹付け試験〕
株式会社佐山製作所製ブロマート吹込機を使用して、アルミナ−シリカ質キャスタブルの吹付けパネルに対して実施例および比較例の各例の熱間吹付補修材を吹き付けた。試験条件は下記のとおりである。
・フィーダー回転数:14rpm
・タンク圧力:0.3MPa
・マテリアルホース長:10m
・ノズル長:1m
・吹付パネル温度:800℃
・ノズル先端と吹付けパネルとの距離:1m
・吹付け量:15kg
・吹付け厚み:30mm
・水添加量:16〜22質量%
〔乾燥性評価〕
実施例および比較例の各例の熱間吹付補修材について、吹付け試験後の施工体をサーモカメラで観察し、その表面温度を観察した。そして、表面温度が150℃に到達するまでに要する時間を測定した。表1および表2のそれぞれにおける乾燥性評価に係る記号は、それぞれ以下の結果を表す。
A:6分未満
B:6分以上7.5分未満
C:7.5分以上10分未満
D:10分以上
〔付着性評価〕
実施例および比較例の各例の熱間吹付補修材について、吹付けパネルに付着した重量と、吹付けパネルに付着せずに落下した重量(リバウンドロス重量)とを測定した。そして、これらの重量の測定値に基づいて、以下の式(1)によって付着率を算出した。
付着率[%]=(付着量/(付着量+リバウンドロス量))×100
表1および表2のそれぞれにおける付着性評価に係る記号は、それぞれ以下の結果を表す。
A:付着率80%以上
B:付着率75%以上80%未満
C:付着率75%未満
〔耐食性評価〕
実施例および比較例の各例の熱間吹付補修材について、るつぼ侵食試験法による耐食性評価試験を行った。まず、実施例および比較例の各例の熱間吹付補修材を30mm×80mm×60mmの枠に流し込み成形し、常温で24時間養生した後に脱枠し、110℃で24時間乾燥して試験片母材を予備成形した。試験片母材を四つ組み合わせて形成したるつぼをバーナーにより1550℃に加熱し、るつぼ内で転炉スラグを溶融させて3時間保持した。るつぼを常温まで冷却した後に解体し、試験後の試験片母材を切断して断面を観察した。断面の観察において、最大侵食部位の残存厚みを測定し、試験前の厚みに対する残存率を算出した。表1および表2のそれぞれにおける耐食性評価に係る記号は、それぞれ以下の結果を表す。
A:残存率80%以上
B:残存率80%未満
〔評価結果〕
表1に示した各例では、鉄粉の含有量の違いによる乾燥性、付着性、および耐食性の違いを評価した。鉄粉を含む実施例1〜4および比較例2は、鉄粉を含まない比較例1より良好な乾燥性を示した。ただし、比較例2は実施例1〜4に比べて付着性および耐食性の双方が劣るため、実施例1〜4に比べて実用性が低いといえる。
Figure 2021120334
表2に示した各例では、マグネシア原料の粒子径分布の違いによる乾燥性、付着性、および耐食性の違いを評価した。実施例5〜11のいずれにおいても、鉄粉を含まない比較例1より良好な乾燥性が見られた。ただし、粒子径1〜3mmの粒子が28〜53質量%であり、粒子径0.3mm以下の粒子が17質量%以下である実施例6〜10では、乾燥性、付着性、および耐食性のいずれも良好だった。
Figure 2021120334
本発明は、たとえば脱ガス装置の浸漬管の補修に使用できる。

Claims (2)

  1. マグネシア原料と、前記マグネシア原料に対して外掛で5〜20質量%の鉄粉と、を含む熱間吹付補修材。
  2. 前記マグネシア原料は、粒子径1〜3mmの粒子が28〜53質量%であり、粒子径0.3mm以下の粒子が17質量%以下である粒子径分布を有する請求項1に記載の熱間吹付補修材。
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