JP2021118029A - Lgps系固体電解質の製造方法 - Google Patents

Lgps系固体電解質の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 生産性に優れ、不純物が少なく安定した性能を示す硫化物系固体電解質の製造方法を提供すること。【解決手段】 上記課題は、少なくともLi2S、SiS2及びP2S5を含む固体電解質原料と、単体硫黄と、有機溶媒とを用いて、均一溶液又はスラリー液を調製する溶液化工程と、ここで、前記単体硫黄は前記有機溶媒に溶解した状態である、前記溶液から、前記有機溶媒を除去して前駆体を得る乾燥工程と、前記前駆体を加熱処理してLGPS系固体電解質を得る加熱処理工程と、を含むことを特徴とするLGPS系固体電解質の製造方法によって解決することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、LGPS系固体電解質の製造方法に関する。なお、LGPS系固体電解質とは、Li、P及びSを含む、特定の結晶構造を有する固体電解質を言うが、例えば、Li、M(MはGe、Si及びSnからなる群より選ばれる一種以上の元素)、P及びSを含む固体電解質が挙げられる。
近年、携帯情報端末、携帯電子機器、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、更には定置型蓄電システムなどの用途において、リチウムイオン二次電池の需要が増加している。しかしながら、現状のリチウムイオン二次電池は、電解液として可燃性の有機溶媒を使用しており、有機溶媒が漏れないように強固な外装を必要とする。また、携帯型のパソコン等においては、万が一、電解液が漏れ出した時のリスクに備えた構造を取る必要があるなど、機器の構造に対する制約も出ている。
更には、自動車や飛行機等の移動体にまでその用途が広がり、定置型のリチウムイオン二次電池においては大きな容量が求められている。このような状況の下、安全性が従来よりも重視される傾向にあり、有機溶媒等の有害な物質を使用しない全固体リチウムイオン二次電池の開発に力が注がれている。
例えば、全固体リチウムイオン二次電池における固体電解質として、酸化物、リン酸化合物、有機高分子、硫化物等を使用することが検討されている。
これらの固体電解質の中で、硫化物はイオン伝導度が高く、比較的やわらかく固体−固体間の界面を形成しやすい特徴がある。活物質にも安定であり、実用的な固体電解質として開発が進んでいる。
硫化物固体電解質の中でも、特定の結晶構造を有するLGPS系固体電解質がある(非特許文献1および特許文献1)。LGPSは硫化物固体電解質の中でも極めてイオン伝導度が高く、−30℃の低温から100℃の高温まで安定に動作することができ、実用化への期待が高い。
LGPS系固体電解を製造する方法として、ボールミル、振動ミル等を用いて、原料を粉砕させながら反応させる方法(固相反応を用いた方法)が知られている。また、最近ではLGPS系固体電解質を溶媒中で合成する方法(液相反応を用いた方法)が開発されている。溶媒中での合成は生産性に優れており、期待されている。
しかしながら、液相反応を用いた方法では、製造過程において溶媒に含まれている水分などが、LGPS系固体電解質の構成元素である硫黄と反応してしまい、分解して硫化水素を発生することで、目的とする化学組成に対して硫黄が不足しやすい。そのため、イオン伝導度が低下し、安定した性能を示すLGPS系固体電解質が得られにくいという課題があった。
WO2011−118801
Nature Energy 1, Article number: 16030 (2016)
このような状況の下、液相反応によって、イオン伝導度が高く、安定した性能を示すLGPS系固体電解質を製造する方法を提供することが望まれている。
そこで、本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意研究を行ったところ、少なくともLiS、SiS及びPを含む固体電解質原料と、単体硫黄と、有機溶媒とを用いて、均一溶液又はスラリー液を調製し、これを原料に用いることで、イオン伝導度が高く、安定した性能を示すLGPS系固体電解質を製造できるという予想外の知見を得た。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
<1> 少なくともLiS、SiS及びPを含む固体電解質原料と、単体硫黄と、有機溶媒とを用いて、均一溶液又はスラリー液を調製する溶液化工程と、ここで、前記単体硫黄は前記有機溶媒に溶解した状態である、
前記均一溶液又はスラリー液から、前記有機溶媒を除去して前駆体を得る乾燥工程と、
前記前駆体を加熱処理してLGPS系固体電解質を得る加熱処理工程と、
を含むことを特徴とするLGPS系固体電解質の製造方法である。
<2> 前記単体硫黄の使用量が、前記固体電解質原料の使用量に対して1.0〜100質量%である、上記<1>に記載のLGPS系固体電解質の製造方法である。
<3> 前記溶液化工程が、LiSとPとを前記有機溶媒中で混合することによってLi−P−S均一溶液を調製する溶液化工程1と、LiS、SiS、及びS(単体硫黄)を前記有機溶媒中で混合することによって、Li−Si−S均一溶液を調製する溶液化工程2とを含み、
前記Li−P−S均一溶液、及び前記Li−Si−S均一溶液を混合してLi−Si−P−S均一溶液を調製することを含む、上記<1>または<2>に記載のLGPS系固体電解質の製造方法である。
<4> 前記溶液化工程が、前記Li−Si−P−S均一溶液にハロゲン化合物を加えてハロゲン含有Li−Si−P−S均一溶液を調製することを含む、上記<3>に記載のLGPS系固体電解質の製造方法である。
<5> 前記溶液化工程が、ハロゲン含有Li−Si−P−S均一溶液にLiSを加えてスラリー液を調製することを含む、上記<4>に記載のLGPS系固体電解質の製造方法である。
<6> 前記溶液化工程が、LiSとPとを前記有機溶媒中で混合することによってLi−P−S均一溶液を調製する溶液化工程1と、LiS及びSiSを前記有機溶媒中で混合することによって、Li−Si−S均一溶液を調製する溶液化工程2’と、LiSとS(単体硫黄)とを前記有機溶媒中で混合することによってLi−S均一溶液を調製する溶液化工程3とを含み、
前記Li−P−S均一溶液、前記Li−Si−S均一溶液、及び前記Li−S均一溶液を混合してLi−Si−P−S均一溶液を調製することを含む、上記<1>または<2>に記載のLGPS系固体電解質の製造方法である。
<7> 前記溶液化工程が、前記Li−Si−P−S均一溶液にハロゲン化合物を加えてハロゲン含有Li−Si−P−S均一溶液を調製することを含む、上記<6>に記載のLGPS系固体電解質の製造方法である。
<8> 前記LGPS系固体電解質が、X線回折(CuKα:λ=1.5405Å)において、少なくとも、2θ=20.18°±0.50°、20.44°±0.50°、26.96°±0.50°、及び29.58°±0.50°の位置にピークを有する、上記<1>から<7>のいずれかに記載のLGPS系固体電解質の製造方法である。
<9> 前記有機溶媒が、エーテル系溶媒、ニトリル系溶媒、及びエステル系溶媒からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記<1>から<8>のいずれかに記載のLGPS系固体電解質の製造方法である。
<10> 前記有機溶媒が、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、及び酢酸メチルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記<1>から<9>のいずれかに記載のLGPS系固体電解質の製造方法である。
<11> 前記乾燥工程における温度が、60〜280℃である、上記<1>から<10>のいずれかに記載のLGPS系固体電解質の製造方法である。
<12> 前記加熱処理工程における温度が、200℃〜700℃である、上記<1>から<11>のいずれかに記載のLGPS系固体電解質の製造方法である。
本発明によれば、イオン伝導度が高く、安定した性能を示すLGPS系固体電解質を製造する方法を提供することができる。また、本発明によれば、該LGPS系固体電解質を加熱成形してなる成形体、該LGPS系固体電解質を含む全固体電池を提供することができる。しかも、この製造方法であれば、大量製造にも応用可能である。
本発明の一実施形態に係るLGPS系固体電解質の結晶構造を示す概略図である。 本発明の一実施形態に係る全固体電池の概略断面図である。 実施例1〜6及び比較例1で得られたLGPS系固体電解質のX線回折測定の結果を示すグラフである。 実施例1〜6及び比較例1で得られたLGPS系固体電解質のラマン分光測定の結果を示すグラフである。 実施例1〜6及び比較例1で得られたLGPS系固体電解質のイオン伝導度の結果を示すグラフである。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下に説明する材料及び構成等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
本発明は、少なくともLiS、SiS及びPを含む固体電解質原料と、単体硫黄と、有機溶媒とを用いて、均一溶液又はスラリー液を調製する溶液化工程と、ここで、前記単体硫黄は前記有機溶媒に溶解した状態である、
前記均一溶液又はスラリー液から、前記有機溶媒を除去して前駆体を得る乾燥工程と、
前記前駆体を加熱処理してLGPS系固体電解質を得る加熱処理工程と、
を含むことを特徴とするLGPS系固体電解質の製造方法である。
本発明において、少なくともLiS、SiS及びPを含む固体電解質原料と、単体硫黄と、有機溶媒とを用いて調製された均一溶液とは、有機溶媒中に少なくともリチウム(Li)元素、Si(ケイ素)元素、リン(P)元素、及び硫黄(S)元素を含み、未溶解の沈殿がなく、前記単体硫黄は前記有機溶媒に溶解した状態の溶液と定義される。
一方、本発明において、少なくともLiS、SiS及びPを含む固体電解質原料と、単体硫黄と、有機溶媒とを用いて調製されたスラリー液とは、有機溶媒中に少なくともリチウム(Li)元素、Si(ケイ素)元素、リン(P)元素、及び硫黄(S)元素を含み、前記単体硫黄は前記有機溶媒に溶解した状態であるが、未溶解の沈殿を含む懸濁液と定義される。
<固体電解質原料>
本発明で使用される固体電解質原料は、少なくともLiS、SiS及びPを含んでいればよく、LiS、SiS及びPのみでもよく、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、SnS、GeSといった硫化物や、LiCl、LiBr、LiIといったハロゲン化リチウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
固体電解質原料において、LiS、SiS及びPのモル比は特に限定されるものではないが、例えば、SiSの使用量1molに対して、LiSの使用量が2.5〜5molの範囲であり、Pの使用量が0.3〜1molの範囲内であることが好ましい。この組成であれば、LGPS結晶が出来やすい。
本発明の好ましい態様は、前記溶液化工程が、LiSとPとを前記有機溶媒中で混合することによってLi−P−S均一溶液を調製する溶液化工程1と、LiS、SiS、及びS(単体硫黄)を前記有機溶媒中で混合することによって、Li−Si−S均一溶液を調製する溶液化工程2とを含み、前記Li−P−S均一溶液、及び前記Li−Si−S均一溶液を混合してLi−Si−P−S均一溶液を調製することを含む。
本発明のより好ましい態様は、前記溶液化工程が、上記のLi−Si−P−S均一溶液にハロゲン化合物を加えてハロゲン含有Li−Si−P−S均一溶液を調製することを含む。この時、ハロゲン化合物も有機溶媒に溶解することが好ましい。ハロゲン化合物としては、具体的には、LiCl、LiBr、LiI、PCl、PCl、PBr及びPBrが好ましく挙げられ、より好ましくはLiCl、LiBr及びLiIである。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の更に好ましい態様は、前記溶液化工程が、上記のハロゲン含有Li−Si−P−S均一溶液にLiSを加えてスラリー液を調製することを含む。
本発明の別の好ましい態様は、前記溶液化工程が、LiSとPとを前記有機溶媒中で混合することによってLi−P−S均一溶液を調製する溶液化工程1と、LiS及びSiSを前記有機溶媒中で混合することによって、Li−Si−S均一溶液を調製する溶液化工程2’と、LiSとS(単体硫黄)とを前記有機溶媒中で混合することによってLi−S均一溶液を調製する溶液化工程3とを含み、前記Li−P−S均一溶液、前記Li−Si−S均一溶液、及び前記Li−S均一溶液を混合してLi−Si−P−S均一溶液を調製することを含む。
本発明の別のより好ましい態様は、前記溶液化工程が、上記のLi−Si−P−S均一溶液にハロゲン化合物を加えてハロゲン含有Li−Si−P−S均一溶液を調製することを含む。ここで使用されるハロゲン化合物は、上記と同様の物を使用することができる。
以下、溶液化工程1〜3、乾燥工程、加熱処理工程について詳細に説明する。
本発明において、「Li−P−S均一溶液」とは、有機溶媒中に少なくともリチウム(Li)元素、リン(P)元素、及び硫黄(S)元素を含み、未溶解の沈殿がない溶液と定義される。同様に、「Li−Si−S均一溶液」とは、有機溶媒中に少なくともリチウム(Li)元素、ケイ素(Si)元素、及び硫黄(S)元素を含み、未溶解の沈殿がない溶液と定義される。更に、「Li−S均一溶液」とは、有機溶媒中に少なくともリチウム(Li)元素、及び硫黄(S)元素を含み、未溶解の沈殿がない溶液と定義される。
<溶液化工程1>
溶液化工程1は、LiSとPとを有機溶媒中で混合することによってLi−P−S均一溶液を調製する工程である。好ましくは、LiSとPとをLiS/P=0.7〜1.5のモル比となるように有機溶媒中で混合することによってLi−P−S均一溶液を調製する。
溶液化工程1における混合の際には基質が分散されたスラリー状態であるが、やがて反応する。粒子を砕く特別な撹拌操作は不要であり、スラリーが懸濁分散できるだけの撹拌動力を与えれば十分である。
溶液化工程1における反応温度は、室温下においても反応が緩やかに進行するが、反応速度を上げるために加熱することもできる。加熱する場合には、有機溶媒の沸点以下で行うことで十分であり、使用する有機溶媒によって異なるものの、通常は120℃未満である。オートクレーブ等を用いて加圧状態で行うことも可能であるが、120℃以上の高い温度で混合を行うと、副反応が進行することが懸念される。
溶液化工程1における反応時間としては、有機溶媒の種類や原料の粒子径、濃度によって異なるものの、例えば0.1〜24時間行うことで反応が完結し、溶液化することができる。
Li−P−S均一溶液は、LiSおよびPをLiS/P=0.7〜1.5のモル比となるように有機溶媒中で混合して反応させることによって生成させることが好ましく、より好ましくはLiS/P=0.75〜1.4であり、特に好ましくはLiS/P=0.8〜1.35である。LiS/P=0.7〜1.5のモル比の範囲であると、室温においてLiSおよびPを溶液化することができる。上記モル比の範囲を外れると、沈殿が生じる場合がある。
この溶液には、未反応のLiSやPが含まれてもよい。また、LiSやPから混入した不純物が含まれていてもよい。不純物は溶媒中にほとんど溶解せず、多くは沈殿するため、得られた溶液に対し濾過や遠心分離を行い沈殿を除去し、溶液を分離することによって、高純度なLi−P−Sの均一溶液を得ることが好ましい。
LiSは合成品でも、市販品でも使用することができる。水分の混入は、他の原料や前駆体を劣化させることから、水分は低い方が好ましく、より好ましくは300ppm以下であり、特に好ましくは50ppm以下である。LiSの粒子径は小さい方が反応速度が速くなるため好ましい。好ましくは粒子の直径として10nm〜100μmの範囲であり、より好ましくは100nm〜30μmであり、特に好ましくは300nm〜10μmの範囲である。粒子径はSEMによる測定やレーザー散乱による粒度分布測定装置等で測定できる。なお、後述する溶液化工程2〜3で使用されるLiSも上記と同様のものを好ましく使用することができる。
は合成品でも、市販品でも使用することができる。Pの純度が高い方が、固体電解質中に混入する不純物が少なくなることから好ましい。Pの粒子径は小さい方が反応速度が速くなるため好ましい。好ましくは粒子の直径として10nm〜100μmの範囲であり、より好ましくは100nm〜30μmであり、特に好ましくは300nm〜10μmの範囲である。水分の混入は、他の原料や前駆体を劣化させることから、低い方が好ましく、より好ましくは300ppm以下であり、特に好ましくは50ppm以下である。
有機溶媒は、LiS及びPと反応しない有機溶媒であれば、特に制限はない。例えば、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒、ニトリル系溶媒などが挙げられる。具体的には、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトニトリルなどが挙げられる。これらの中でも、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、及び酢酸メチルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特に好ましくはアセトニトリルである。アセトニトリルは構造中に酸素原子を含んでいないことから、原料組成物に酸素が導入されにくく、変質が抑えられる。また、原料組成物が劣化することを防止するために、有機溶媒中の酸素と水を除去しておくことが好ましく、特に水分については、100ppm以下が好ましく、より好ましくは50ppm以下である。なお、後述する溶液化工程2〜3で使用される有機溶媒も上記と同様のものを好ましく使用することができる。
<溶液化工程2>
溶液化工程2は、LiS、SiS、及びS(単体硫黄)を有機溶媒中で混合することによって、Li−Si−S均一溶液を調製する工程である。Li−Si−S均一溶液を使用することにより、不純物が少なく、高いイオン伝導度を有するLGPS系固体電解質を安定して得ることができる。SiSを出発物質に用いる場合、合成時にSiを固体電解質中に均一に分散させることは困難である。また、SiSは大気との反応性が高く含酸素化合物が含まれていたり、未反応の原料であるSiが含まれていることが多いなど、不純物が含まれていないSiSを用意することが難しい。そして、SiS中からこれらの不純物を除去することは困難である。
一方、Li−Si−S均一溶液は、合成時に固体電解質中にSiが均一に分散しやすく、後の沈殿除去の操作を経て不純物が低減されることから副反応が生じにくいため、安定して高いイオン伝導度を有するLGPS系固体電解質を製造できると考えられる。
Li−Si−S均一溶液は、LiS、SiS及びS(単体硫黄)を有機溶媒中で混合して反応させることによって、Li、Si及びSが溶解した溶液とすることが好ましい。この溶液には、未反応のLiSやSiSやS(単体硫黄)が含まれていてもよい。また、LiSやSiSやS(単体硫黄)から混入した不純物が含まれていてもよい。
より好ましくは、得られた溶液を、濾過や遠心分離によって沈殿を除去し、溶液を分離することで、Li−Si−Sの均一溶液が得られる。得られた均一溶液の各元素の濃度はICPにより分析されるが、Li/Si=0.6〜2.0のモル比であることが好ましい。ここで、上記モル比は、より好ましくはLi/Si=0.7〜1.6であり、特に好ましくはLi/Si=0.8〜1.4である。
沈殿の除去は、濾過や遠心分離により行うことができる。フィルターを用いた濾過を行う場合、フィルターの孔径は10μm以下であることが望ましい。より好ましくは5μm以下であり、特に好ましくは2μm以下である。
沈殿として得られるのは未反応のLiS、SiS、S(単体硫黄)といった原料や、原料から混入した不純物である。不純物としてはSiやSiSの含酸素化合物、SiOなどが挙げられる。
SiSは合成品でも、市販品でも使用することができる。SiSの純度が高い方が、固体電解質中に混入する不純物が少なくなることから好ましい。SiSの粒子径は小さい方が反応速度が速くなるため好ましい。好ましくは粒子の直径として10nm〜100μmの範囲であり、より好ましくは100nm〜30μmであり、特に好ましくは300nm〜10μmの範囲である。粒子径はSEMによる測定やレーザー散乱による粒度分布測定装置等で測定できる。なお、上記の原料の一部はアモルファスであっても問題なく使用することができる。水分の混入は、他の原料や前駆体を劣化させることから、低い方が好ましく、より好ましくは300ppm以下であり、特に好ましくは50ppm以下である。
単体硫黄は合成品でも、市販品でも使用することができるが、一般的には、環状のS8硫黄が用いられる。水分の混入は、他の原料や前駆体を劣化させることから、水分は低い方が好ましく、より好ましくは300ppm以下であり、特に好ましくは50ppm以下である。単体硫黄の粒子径は小さい方が反応速度が速くなるため好ましい。好ましくは粒子の直径として10nm〜100μmの範囲であり、より好ましくは100nm〜30μmであり、特に好ましくは300nm〜10μmの範囲である。なお、後述する溶液化工程3で使用されるS(単体硫黄)も上記と同様のものを好ましく使用することができる。
本発明における単体硫黄の投入量は、焼成炉の大きさや形状、雰囲気ガスの流量、前駆体の粒径などが影響するため、一概には規定できないが、上記固体電解質原料に対して、1.0〜100質量%であることが好ましく、2.0〜10質量%であることがより好ましく、3.0〜4.0質量%であることが特に好ましい。単体硫黄の投入量が、上記固体電解質原料に対して、1.0〜100質量%であれば、不純物が少なく安定した性能を示すLGPS系固体電解質を製造することができる。
固体電解質原料に単体硫黄が不純物として含まれている場合、単体硫黄の量を定量できれば、単体硫黄が投入されていると解釈することができる。この場合は、固体電解質中に含まれている不純物としての単体硫黄と、不純物としてではなく投入する単体硫黄との合計の質量が、上記の単体硫黄の投入量の範囲であればよい。
ただし、不純物に単体硫黄が含まれているような固体電解質原料は、製造ロットごと、また、同じ製造ロット内でも取る場所によって、単体硫黄の量が一定でないことが考えられ、単体硫黄の量を制御することが難しい。
加えて、固体電解質原料における不純物単体硫黄の定量方法としては、有機溶媒による抽出などがあるが、有機溶媒でとらえきれず、固体電解質原料中に単体硫黄が残留してしまう可能性が残るなど、単体硫黄の量を正確に定量することは難しい。
そのため、固体電解質原料としては、不純物として単体硫黄が含まれていないことが好ましい。また、ここで投入する単体硫黄は、不純物としてではなく、原料として用いられるものである。
有機溶媒中におけるLi、Si及びSの合計の濃度は、0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、2〜10質量%が特に好ましい。有機溶媒中におけるLi、Si及びSの合計の濃度が20質量%より高いと、固体の析出により均一溶液化が困難になる場合がある。一方、有機溶媒中におけるLi、Si及びSの合計の濃度が0.5質量%より低い場合には、大量の有機溶媒を使用することになり、溶媒回収の負荷が増大すると共に、反応器の大きさが過度に大きくなる要因となる。
<溶液化工程2’>
溶液化工程2’は、LiS及びSiSを有機溶媒中で混合することによって、Li−Si−S均一溶液を調製する工程である。
溶液化工程2’は、溶液化工程2においてS(単体硫黄)を用いない以外は、溶液化工程2と同じである。
<溶液化工程3>
溶液化工程3は、LiSとS(単体硫黄)とを有機溶媒中で混合することによって、Li−S均一溶液を調製する工程である。
溶液化工程3は、好ましくは、LiSとSとをLiS:S=1:4〜1:10のモル比となるように、より好ましくは、LiSとSとをLiS:S=1:5〜1:8のモル比となるように、有機溶媒中で混合することによってLi−S均一溶液を調製する。LiSとSは有機溶媒中において、上記に示した一定のモル比で反応し、リチウム多硫化物となることで有機溶媒に溶解する。
溶液化工程3における混合の際には基質が分散されたスラリー状態であるが、やがて反応する。粒子を砕く特別な撹拌操作は不要であり、スラリーが懸濁分散できるだけの撹拌動力を与えれば十分である。
溶液化工程3における反応温度は、有機溶媒の沸点以下で行うことで十分であり、使用する有機溶媒によって異なるものの、通常は120℃未満である。好ましい反応温度は、50〜100℃であり、より好ましくは60〜90℃である。オートクレーブ等を用いて加圧状態で行うことも可能であるが、120℃以上の高い温度で混合を行うと、副反応が進行することが懸念される。
溶液化工程3における反応時間としては、有機溶媒の種類や原料の粒子径、濃度によって異なるものの、例えば0.1〜24時間行うことで反応が完結し、溶液化することができる。
Li−S均一溶液は、LiS、及びS(単体硫黄)を有機溶媒中で混合して反応させることによって、Li、及びSが溶解した溶液とすることが好ましい。この溶液には、未反応のLiSやS(単体硫黄)が含まれていてもよい。また、LiSやS(単体硫黄)から混入した不純物が含まれていてもよい。
より好ましくは、得られた溶液を、濾過や遠心分離によって沈殿を除去し、溶液を分離することで、Li−Sの均一溶液が得られる。沈殿として得られるのは未反応のLiS、S(単体硫黄)といった原料や、原料から混入した不純物である。
<均一混合溶液の調製>
本発明では、(i)溶液化工程1で得られたLi−P−S均一溶液と、溶液化工程2で得られたLi−Si−S均一溶液とを混合するか、あるいは、(ii)溶液化工程1で得られたLi−P−S均一溶液と、溶液化工程2’で得られたLi−Si−S均一溶液と、溶液化工程3で得られたLi−S均一溶液とを混合して、均一混合溶液(Li−Si−P−S均一溶液)を調製することが好ましい。
上記(i)で得られた均一混合溶液を構成する元素の濃度は、Li:Si:P=5:1:2〜1:1:0.5のモル比であることが好ましく、より好ましくはLi:Si:P=3:1:1.5〜1.5:1:0.8である。
本発明では、上記(i)で得られたLi−Si−P−S均一溶液中のPに対して0.1〜1.0倍モルのハロゲン化合物(例えば、ハロゲン化リチウムなど)を撹拌しながら加え、室温下で0.1〜24時間混合することで、ハロゲン含有Li−Si−P−S均一混合溶液を調製することが好ましい。
また、上記(ii)で得られた均一混合溶液を構成する元素の濃度は、Li:Si:P=10:1:2〜5:1:0.5のモル比であることが好ましく、より好ましくはLi:Si:P=8:1:1.5〜6:1:0.8である。
本発明では、上記(ii)で得られたLi−Si−P−S均一溶液中のPに対して0.1〜1.0倍モルのハロゲン化合物(例えば、ハロゲン化リチウムなど)を撹拌しながら加え、室温下で0.1〜24時間混合することで、ハロゲン含有Li−Si−P−S均一混合溶液を調製することが好ましい。
元素の種類、濃度は、例えば、ICP発光分析装置により確認することができる。LGPS系固体電解質は、わずかな組成のずれによって性能が大きく変わることから、均一溶液に対してICP発光分析を行うことにより、元素組成を精密に制御することが好ましい。
<乾燥工程>
乾燥工程は、得られた均一溶液またはスラリー液を乾燥して有機溶媒を除去することにより前駆体を得る工程である。乾燥は不活性ガス雰囲気での加熱乾燥や真空乾燥が好ましい。
乾燥温度は、60〜280℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは100〜250℃である。最適な範囲は有機溶媒の種類によって多少異なるが、温度の範囲は重要である。有機溶媒が存在する状態で乾燥温度を高くしすぎると、ほとんどの場合で前駆体が変質してしまう。また、乾燥温度が低すぎる場合には残溶媒が多くなり、そのまま次の加熱処理工程を行うと有機溶媒が炭化し、得られるLGPS系固体電解質の電子伝導性が高くなる。固体電解質の使用方法次第では電子伝導性を有することが好ましいが、図2の2部分に使用する固体電解質は電子伝導性が十分に低いことが求められる。このような用途に用いる場合は残溶媒が極力少なくなるようにする必要がある。
乾燥時間は有機溶媒の種類と乾燥温度によって多少異なるが、1〜24時間実施することで十分に有機溶媒を除去することができる。なお、真空乾燥のように減圧下で有機溶媒を除去することや、十分に水分の少ない窒素やアルゴン等の不活性ガスを流すことで、有機溶媒を除去する際の温度を下げると共に所要時間を短くすることができる。
なお、後段の加熱処理工程と乾燥工程とを同時に行うことも可能である。
<加熱処理工程>
加熱処理工程は、乾燥工程で得られた前駆体を加熱処理してLGPS系固体電解質を得る工程である。
加熱温度は、種類によって異なり、Ge、SiまたはSnを含有するものは、通常200〜700℃の範囲が好ましく、より好ましくは350〜650℃の範囲であり、特に好ましくは400〜600℃の範囲である。上記範囲よりも温度が低いと所望の結晶が生じにくく、一方、上記範囲よりも温度が高くても、目的とする以外の結晶が生成することがある。
加熱時間は、加熱温度との関係で若干変化するものの、通常は0.1〜24時間の範囲で十分に結晶化することができる。高い温度で上記範囲を超えて長時間加熱することは、LGPS系固体電解質の変質が懸念されることから、好ましくない。
加熱は、真空もしくは不活性ガス雰囲気下で行うことができるが、好ましくは不活性ガス雰囲気下である。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどを使用することができるが、中でもアルゴンが好ましい。酸素や水分は低いことが好ましい。
LGPS型結晶構造は、Li元素およびS元素から構成される八面体Oと、P、Ge、SiおよびSnからなる群より選択される一種以上の元素およびS元素から構成される四面体T1と、P元素およびS元素から構成される四面体T2(PS 3−アニオン)とを有し、四面体T1および八面体Oは稜を共有し、四面体T2および八面体Oは頂点を共有する結晶構造である。LGPS型結晶構造を有する固体電解質はイオン伝導度が特に高いことから、より好ましい。
本発明のLGPS型結晶構造を有する固体電解質は、X線回折測定(CuKα:λ=1.5405Å)において、少なくとも、2θ=20.18°±0.50°、20.44°±0.50°、26.96°±0.50°および29.58°±0.50°の位置にピークを有することが好ましい。
上記のようにして得られる本発明のLGPS系固体電解質は、各種手段によって所望の成形体とし、以下に記載する全固体電池をはじめとする各種用途に使用することができる。成形方法は特に限定されない。例えば、後述する<全固体電池>において述べた全固体電池を構成する各層の成形方法と同様の方法を使用することができる。
<全固体電池>
本発明のLGPS系固体電解質は、例えば、全固体電池用の固体電解質として使用され得る。また、本発明の更なる実施形態によれば、上述した全固体電池用固体電解質を含む全固体電池が提供される。
ここで「全固体電池」とは、全固体リチウムイオン二次電池である。図2は、本発明の一実施形態に係る全固体電池の概略断面図である。全固体電池10は、正極層1と負極層3との間に固体電解質層2が配置された構造を有する。全固体電池10は、携帯電話、パソコン、自動車等をはじめとする各種機器において使用することができる。
本発明のLGPS系固体電解質は、正極層1、負極層3および固体電解質層2のいずれか一層以上に、固体電解質として含まれてよい。正極層1または負極層3に本発明のLGPS系固体電解質が含まれる場合、本発明のLGPS系固体電解質と公知のリチウムイオン二次電池用正極活物質または負極活物質とを組み合わせて使用する。正極層1または負極層3に含まれる本発明のLGPS系固体電解質の量比は、特に制限されない。
本発明のLGPS系固体電解質は単独で構成されてもよいし、必要に応じて、酸化物固体電解質(例えば、LiLaZr12)、硫化物系固体電解質(例えば、LiS−P)やその他の錯体水素化物固体電解質(例えば、LiBH、3LiBH−LiI)などを適宜組み合わせて使用してもよい。
全固体電池は、上述した各層を成形して積層することによって作製されるが、各層の成形方法および積層方法については、特に制限されない。
例えば、固体電解質および/または電極活物質を溶媒に分散させてスラリー状としたものをドクターブレードまたはスピンコート等により塗布し、それを圧延することにより製膜する方法;真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、レーザーアブレーション法等を用いて製膜および積層を行う気相法;ホットプレスまたは温度をかけないコールドプレスによって粉末を成形し、それを積層していく加圧成形法等がある。
本発明のLGPS系固体電解質は比較的柔らかいことから、加圧成形法によって各層を成形および積層して全固体電池を作製することが特に好ましい。加圧成形法としては、加温して行うホットプレスと加温しないコールドプレスとがあるが、コールドプレスでも十分に成形することができる。
なお、本発明には、本発明のLGPS系固体電解質を加熱成形してなる成形体が包含される。該成形体は、全固体電池として好適に用いられる。また、本発明には、本発明のLGPS系固体電解質を加熱成形する工程を含む、全固体電池の製造方法が包含される。
以下、実施例により本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<溶液化工程1>
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、LiS:P:=1:1のモル比となるように、LiS(シグマ・アルドリッチ社製、純度99.8%)を142mg、およびP(シグマ・アルドリッチ社製、純度99%)を687mg量り取った。次に、(LiS+P)の濃度が約10質量%となるようにアセトニトリル(和光純薬工業社製、超脱水グレード)7.5gに対して、LiS、Pの順に加え、室温下で3時間混合した。混合物は徐々に溶解し、Li−P−S均一溶液を得た。
<溶液化工程2>
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、LiS:SiS:S=0.5:1:0.14のモル比となるように、LiS(シグマ・アルドリッチ社製、純度99.8%)を200mg、SiS(HANGZHOU社製)を800mg、およびS(高純度化学社製)を40mg量り取った。次に、(LiS+SiS+S)の濃度が約3.5質量%となるようにアセトニトリル(和光純薬工業社製、超脱水グレード)を29g加え、室温下で120時間混合した。混合物は徐々に溶解したが、この段階では原料中の不純物が残存していた。
得られた溶液をメンブランフィルター(PTFE、孔径1.0μm)を用いて濾過することで、ろ採として100mg、ろ液(Li−Si−S均一溶液)として28g得られた。Li−Si−S均一溶液のICP分析を行った結果、Li:Si:S=1:1:2.6のモル比であり、Sを加えない場合のモル比(Li:Si:S=1:1:2.5)に比べ、Sが多く溶解していることを確認した。また、(LiS+SiS+S)の濃度は3.53質量%であった。
<Li−Si−P−S−Cl均一溶液の調製>
Si:P=1.9:2.0のモル比となるように、上記で調製したLi−P−S均一溶液を8.29g、Li−Si−S均一溶液を19.40g混合し、Li−Si−P−S均一溶液を調製した。さらに、得られたLi−Si−P−S均一溶液中のPに対して0.4倍モルのLiCl(シグマ・アルドリッチ社製、純度99.99%)51.4mgを撹拌しながら加え、室温下で3時間混合することで、LiClが徐々に溶解し、Li−Si−P−S−Cl均一溶液を得た。
<スラリー液の調製>
得られたLi−Si−P−S−Cl均一溶液中に、Pに対して6.3倍モルとなるようにLiSを616mg撹拌しながら加え、室温下で12時間混合してスラリー液を調製した。一連の操作は、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で実施した。
なお、系内に加えた全ての原料のモル比は、LiS:P:SiS:LiCl:S =6.3:1:1.9:0.4:0.27であり、固体電解質原料の仕込み組成が、Li3.35Si0.490.523.9Cl0.1となり、且つ、単体硫黄の投入量が、固体電解質原料に対して1.25質量%となるように調整した。
<乾燥工程>
得られたスラリー液を、真空下、180℃で4時間乾燥させることで、溶媒を除去した。溶媒除去は溶液を撹拌しながら行った。その後、室温まで冷却して前駆体を得た。
<加熱処理工程>
得られた前駆体をグローブボックス内でガラス製反応管に入れて、前駆体が大気に暴露しないように電気管状炉に設置した。反応管にアルゴン(G3グレード)を吹き込み、3時間かけて475℃まで昇温し、その後8時間475℃で焼成することで焼成体を得た。
(実施例2)
<溶液化工程1>
実施例1と同様の操作を行い、Li−P−S均一溶液を得た。
<溶液化工程2>
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、LiS:SiS:S=0.5:1:0.28のモル比となるように、LiS(シグマ・アルドリッチ社製、純度99.8%)を200mg、SiS(HANGZHOU社製)を800mg、およびS(高純度化学社製)を80mg量り取った。次に、(LiS+SiS+S)の濃度が約3.5質量%となるようにアセトニトリル(和光純薬工業社製、超脱水グレード)を30g加え、室温下で120時間混合した。混合物は徐々に溶解したが、この段階では原料中の不純物が残存していた。
得られた溶液をメンブランフィルター(PTFE、孔径1.0μm)を用いて濾過することで、ろ採として100mg、ろ液(Li−Si−S均一溶液)として29g得られた。Li−Si−S均一溶液のICP分析を行った結果、Li:Si:S=1:1:2.8のモル比であり、Sを加えない場合のモル比(Li:Si:S=1:1:2.5)に比べ、Sが多く溶解していることを確認した。また、(LiS+SiS+S)の濃度は3.62質量%であった。
<Li−Si−P−S−Cl均一溶液の調製>
Li−Si−S均一溶液の添加量を18.94gとした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
<スラリー液の調製>
LiSの添加量を614mgとした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
なお、系内に加えた全ての原料のモル比は、LiS:P:SiS:LiCl:S =6.3:1:1.9:0.4:0.53であり、固体電解質原料の仕込み組成が、Li3.35Si0.490.523.9Cl0.1となり、且つ、単体硫黄の投入量が、固体電解質原料に対して2.50質量%となるように調整した。
<乾燥工程>
実施例1と同様の操作を行った。
<加熱処理工程>
実施例1と同様の操作を行った。
(実施例3)
<溶液化工程1>
実施例1と同様の操作を行い、Li−P−S均一溶液を得た。
<溶液化工程2>
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、LiS:SiS:S=0.5:1:0.43のモル比となるように、LiS(シグマ・アルドリッチ社製、純度99.8%)を200mg、SiS(HANGZHOU社製)を800mg、およびS(高純度化学社製)を120mg量り取った。次に、(LiS+SiS+S)の濃度が約3.5質量%となるようにアセトニトリル(和光純薬工業社製、超脱水グレード)を31g加え、室温下で120時間混合した。混合物は徐々に溶解したが、この段階では原料中の不純物が残存していた。
得られた溶液をメンブランフィルター(PTFE、孔径1.0μm)を用いて濾過することで、ろ採として100mg、ろ液(Li−Si−S均一溶液)として30g得られた。Li−Si−S均一溶液のICP分析を行った結果、Li:Si:S=1:1:2.9のモル比であり、Sを加えない場合のモル比(Li:Si:S=1:1:2.5)に比べ、Sが多く溶解していることを確認した。また、(LiS+SiS+S)の濃度は3.49質量%であった。
<Li−Si−P−S−Cl均一溶液の調製>
Li−Si−S均一溶液の添加量を19.75gとした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
<スラリー液の調製>
LiSの添加量を611mgとした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
なお、系内に加えた全ての原料のモル比は、LiS:P:SiS:LiCl:S =6.3:1:1.9:0.4:0.82であり、固体電解質原料の仕込み組成が、Li3.35Si0.490.523.9Cl0.1となり、且つ、単体硫黄の投入量が、固体電解質原料に対して3.75質量%となるように調整した。
<乾燥工程>
実施例1と同様の操作を行った。
<加熱処理工程>
実施例1と同様の操作を行った。
(実施例4)
<溶液化工程1>
実施例1と同様の操作を行い、Li−P−S均一溶液を得た。
<溶液化工程2>
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、LiS:SiS:S=0.5:1:0.57のモル比となるように、LiS(シグマ・アルドリッチ社製、純度99.8%)を200mg、SiS(HANGZHOU社製)を800mg、およびS(高純度化学社製)を160mg量り取った。次に、(LiS+SiS+S)の濃度が約3.5質量%となるようにアセトニトリル(和光純薬工業社製、超脱水グレード)を32g加え、室温下で120時間混合した。混合物は徐々に溶解したが、この段階では原料中の不純物が残存していた。
得られた溶液をメンブランフィルター(PTFE、孔径1.0μm)を用いて濾過することで、ろ採として100mg、ろ液(Li−Si−S均一溶液)として31g得られた。Li−Si−S均一溶液のICP分析を行った結果、Li:Si:S=1:1:3.1のモル比であり、Sを加えない場合のモル比(Li:Si:S=1:1:2.5)に比べ、Sが多く溶解していることを確認した。また、(LiS+SiS+S)の濃度は3.28質量%であった。
<Li−Si−P−S−Cl均一溶液の調製>
Li−Si−S均一溶液の添加量を21.05gとした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
<スラリー液の調製>
LiSの添加量を610mgとした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
なお、系内に加えた全ての原料のモル比は、LiS:P:SiS:LiCl:S =6.3:1:1.9:0.4:1.08であり、固体電解質原料の仕込み組成が、Li3.35Si0.490.523.9Cl0.1となり、且つ、単体硫黄の投入量が、固体電解質原料に対して5.00質量%となるように調整した。
<乾燥工程>
実施例1と同様の操作を行った。
<加熱処理工程>
実施例1と同様の操作を行った。
(実施例5)
<溶液化工程1>
実施例1と同様の操作を行い、Li−P−S均一溶液を得た。
<溶液化工程2>
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、LiS:SiS:S=0.5:1:1.44のモル比となるように、LiS(シグマ・アルドリッチ社製、純度99.8%)を200mg、SiS(HANGZHOU社製)を800mg、およびS(高純度化学社製)を400mg量り取った。次に、(LiS+SiS+S)の濃度が約3.5質量%となるようにアセトニトリル(和光純薬工業社製、超脱水グレード)を39g加え、室温下で120時間混合した。混合物は徐々に溶解したが、この段階では原料中の不純物が残存していた。
得られた溶液をメンブランフィルター(PTFE、孔径1.0μm)を用いて濾過することで、ろ採として100mg、ろ液(Li−Si−S均一溶液)として38g得られた。Li−Si−S均一溶液のICP分析を行った結果、Li:Si:S=1:1:3.9のモル比であり、Sを加えない場合のモル比(Li:Si:S=1:1:2.5)に比べ、Sが多く溶解していることを確認した。また、(LiS+SiS+S)の濃度は3.30質量%であった。
<Li−Si−P−S−Cl均一溶液の調製>
Li−Si−S均一溶液の添加量を20.95gとした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
<スラリー液の調製>
LiSの添加量を608mgとした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
なお、系内に加えた全ての原料のモル比は、LiS:P:SiS:LiCl:S =6.3:1:1.9:0.4:2.74であり、固体電解質原料の仕込み組成が、Li3.35Si0.490.523.9Cl0.1となり、且つ、単体硫黄の投入量が、固体電解質原料に対して12.50質量%となるように調整した。
<乾燥工程>
実施例1と同様の操作を行った。
<加熱処理工程>
実施例1と同様の操作を行った。
(実施例6)
<溶液化工程1>
実施例1と同様の操作を行い、Li−P−S均一溶液を得た。
<溶液化工程2’>
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、LiS:SiS=0.5:1のモル比となるように、LiS(シグマ・アルドリッチ社製、純度99.8%)を200mg、SiS(HANGZHOU社製)を800mg量り取った。次に、(LiS+SiS)の濃度が約3.5質量%となるようにアセトニトリル(和光純薬工業社製、超脱水グレード)を28g加え、室温下で120時間混合した。混合物は徐々に溶解したが、この段階では原料中の不純物が残存していた。
得られた溶液をメンブランフィルター(PTFE、孔径1.0μm)を用いて濾過することで、ろ採として100mg、ろ液(Li−Si−S均一溶液)として27g得られた。Li−Si−S均一溶液のICP分析を行った結果、Li:Si:S=1:1:2.5のモル比であり、固体電解質原料であるLiS、SiSの組成にあったモル比で各元素が溶解していることを確認した。また、(LiS+SiS)の濃度は3.69質量%であった。
<溶液化工程3>
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、LiS:S=1:6のモル比となるように、LiS(シグマ・アルドリッチ社製、純度99.8%)を1.0g、S(高純度化学社製)を3.7g量り取った。次に、(LiS+S)の濃度が約5.5質量%となるようにアセトニトリル(和光純薬工業社製、超脱水グレード)を80g加え、80℃で24時間混合した。混合物は徐々に溶解したが、この段階では不溶物が残存していた。
得られた溶液をメンブランフィルター(PTFE、孔径1.0μm)を用いて濾過することで、ろ採として200mg、ろ液(Li−S均一溶液)として78g得られた。Li−S均一溶液のICP分析を行った結果、Li:S=1:3のモル比であり、Sを加えない場合である、LiSのみのモル比(Li:S=1:0.5)に比べ、Sが多く溶解していることを確認した。また、Liの濃度は0.5質量%であった。
<Li−Si−P−S−Cl均一溶液の調製>
Li:Si:P=12.6:1.9:2.0のモル比となるように、上記で調製したLi−P−S均一溶液を8.3g、Li−Si−S均一溶液を18.5g、Li−S均一溶液を39.0g混合し、Li−Si−P−S均一溶液を調製した。さらに、得られたLi−Si−P−S均一溶液中のPに対して0.4倍モルのLiCl(シグマ・アルドリッチ社製、純度99.99%)51.4mgを撹拌しながら加え、室温下で3時間混合することで、LiClが徐々に溶解し、Li−Si−P−S−Cl均一混合溶液を得た。
なお、系内に加えた全ての原料のモル比は、LiS:P:SiS:LiCl:S=6.3:1:1.9:0.4:21.6であり、固体電解質原料の仕込み組成が、Li3.35Si0.490.523.9Cl0.1となり、且つ、単体硫黄の投入量が、固体電解質原料に対して100質量%となるように調整した。
<乾燥工程>
得られたLi−Si−P−S−Cl均一混合溶液を、真空下、180℃で4時間乾燥させることで、溶媒を除去した。溶媒除去は溶液を撹拌しながら行った。その後、室温まで冷却して前駆体を得た。
<加熱処理工程>
実施例1と同様の操作を行った。
(比較例1)
<溶液化工程1>
実施例1と同様の操作を行い、Li−P−S均一溶液を得た。
<溶液化工程2>
実施例6と同様の操作を行い、Li−Si−S均一溶液を得た。
<Li−Si−P−S−Cl均一溶液の調製>
Li−Si−S均一溶液の添加量を18.5gとした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
<スラリー液の調製>
LiSの添加量を617mgとした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
なお、系内に加えた全ての原料のモル比は、LiS:P:SiS:LiCl=6.3:1:1.9:0.4であり、固体電解質原料の仕込み組成が、Li3.35Si0.490.523.9Cl0.1となるように調整した。
<乾燥工程>
実施例1と同様の操作を行った。
<加熱処理工程>
実施例1と同様の操作を行った。
<X線回折測定>
実施例1〜6及び比較例1で得られた焼成体について、Ar雰囲気下、室温(25℃)にて、X線回折測定(PANalytical社製「X’Pert3 Powder」、CuKα:λ=1.5405Å)を実施した。
図3のX線回折測定の結果に示したとおり、実施例1〜6及び比較例1において、少なくとも、2θ=20.18°±0.50°、20.44°±0.50°、26.96°±0.50°、及び29.58°±0.50°に回折ピークが観測され、このパターンはICSDデータベースのLi10GeP12と一致し、LGPS型の結晶構造を持つことが確認できた。
また、比較例1では、Liのピーク(2θ=32.2°付近)など、不純物ピークが多く確認された。これらは、焼成中に硫黄が欠損してしまい、目的とする化学組成に対して硫黄が不足したことにより確認された不純物であると考えられる。
<ラマン分光測定>
(1)試料調製
上部に石英ガラス(Φ60mm、厚さ1mm)を光学窓として有する密閉容器を用いて測定試料の作製を行った。アルゴン雰囲気下のグローブボックスにて、試料を石英ガラスに接する状態とし、容器を密閉してグローブボックス外に取り出し、ラマン分光測定を行った。
(2)測定条件
レーザーラマン分光光度計NRS−5100(日本分光株式会社製)を使用し、励起波長532.15nm、露光時間5秒にて測定を行った。
図4のラマン回折の結果に示したとおり、ラマン分光測定では、少なくとも270±10cm−1及び420±10cm−1においてピークが得られており、PS 3−に相当するピークが得られた。
そして、単体硫黄は220cm−1付近にピークが検出されるが、実施例1〜6及び比較例1にはいずれもピークが観測されていないことから、得られた焼成体には、単体硫黄の残存がほとんどないことを確認した。また、実施例1〜6において、1400〜1500cm−1付近にC−S結合由来とみられるピークが見られることを確認した。一方、比較例1では、1400〜1500cm−1付近のC−S結合由来とみられるピークはほとんど見られなかった。
<リチウムイオン伝導度測定>
実施例1〜6及び比較例1で得られたLGPS系固体電解質を一軸成型(420MPa)に供し、厚さ約1mm、直径10mmのディスクを得た。全固体電池評価セル(宝泉株式会社製)を用い、室温(25℃)において、四端子法による交流インピーダンス測定(Solartron社製「SI1260 IMPEDANCE/GAIN―PHASE ANALYZER」)を行い、リチウムイオン伝導度を算出した。
具体的には、サンプルを25℃に設定した恒温槽に入れて30分間保持した後にリチウムイオン伝導度を測定した。測定周波数範囲は0.1Hz〜1MHz、振幅は50mVとした。リチウムイオン伝導度の測定結果を図5に示す。
図5より、単体硫黄を加えていない比較例1に比べて、単体硫黄を加えた実施例1〜6では、いずれもイオン伝導度が高い値を示している。これは、単体硫黄が溶媒に溶解することで多硫化物となり、高温化でも固体電解質表面にC−S結合(ラマンピーク:1400〜1500cm−1)をもった薄い膜として残ったことで、硫黄の揮発が抑制されたためであると考えられる。
また、実施例3において最大のイオン伝導度を示し、多量の単体硫黄を加えた実施例5、6ではイオン伝導度が低下した。これは、固体電解質表面のC−S結合の残存が多すぎても、イオン伝導が阻害されるためであると考えられる。
1 正極層
2 固体電解質層
3 負極層
10 全固体電池

Claims (12)

  1. 少なくともLiS、SiS及びPを含む固体電解質原料と、単体硫黄と、有機溶媒とを用いて、均一溶液又はスラリー液を調製する溶液化工程と、ここで、前記単体硫黄は前記有機溶媒に溶解した状態である、
    前記均一溶液又はスラリー液から、前記有機溶媒を除去して前駆体を得る乾燥工程と、
    前記前駆体を加熱処理してLGPS系固体電解質を得る加熱処理工程と、
    を含むことを特徴とするLGPS系固体電解質の製造方法。
  2. 前記単体硫黄の使用量が、前記固体電解質原料の使用量に対して1.0〜100質量%である、請求項1に記載のLGPS系固体電解質の製造方法。
  3. 前記溶液化工程が、LiSとPとを前記有機溶媒中で混合することによってLi−P−S均一溶液を調製する溶液化工程1と、LiS、SiS、及びS(単体硫黄)を前記有機溶媒中で混合することによって、Li−Si−S均一溶液を調製する溶液化工程2とを含み、
    前記Li−P−S均一溶液、及び前記Li−Si−S均一溶液を混合してLi−Si−P−S均一溶液を調製することを含む、請求項1または2に記載のLGPS系固体電解質の製造方法。
  4. 前記溶液化工程が、前記Li−Si−P−S均一溶液にハロゲン化合物を加えてハロゲン含有Li−Si−P−S均一溶液を調製することを含む、請求項3に記載のLGPS系固体電解質の製造方法。
  5. 前記溶液化工程が、ハロゲン含有Li−Si−P−S均一溶液にLiSを加えてスラリー液を調製することを含む、請求項4に記載のLGPS系固体電解質の製造方法。
  6. 前記溶液化工程が、LiSとPとを前記有機溶媒中で混合することによってLi−P−S均一溶液を調製する溶液化工程1と、LiS及びSiSを前記有機溶媒中で混合することによって、Li−Si−S均一溶液を調製する溶液化工程2’と、LiSとS(単体硫黄)とを前記有機溶媒中で混合することによってLi−S均一溶液を調製する溶液化工程3とを含み、
    前記Li−P−S均一溶液、前記Li−Si−S均一溶液、及び前記Li−S均一溶液を混合してLi−Si−P−S均一溶液を調製することを含む、請求項1または2に記載のLGPS系固体電解質の製造方法。
  7. 前記溶液化工程が、前記Li−Si−P−S均一溶液にハロゲン化合物を加えてハロゲン含有Li−Si−P−S均一溶液を調製することを含む、請求項6に記載のLGPS系固体電解質の製造方法。
  8. 前記LGPS系固体電解質が、X線回折(CuKα:λ=1.5405Å)において、少なくとも、2θ=20.18°±0.50°、20.44°±0.50°、26.96°±0.50°、及び29.58°±0.50°の位置にピークを有する、請求項1から7のいずれかに記載のLGPS系固体電解質の製造方法。
  9. 前記有機溶媒が、エーテル系溶媒、ニトリル系溶媒、及びエステル系溶媒からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1から8のいずれかに記載のLGPS系固体電解質の製造方法。
  10. 前記有機溶媒が、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、及び酢酸メチルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1から9のいずれかに記載のLGPS系固体電解質の製造方法。
  11. 前記乾燥工程における温度が、60〜280℃である、請求項1から10のいずれかに記載のLGPS系固体電解質の製造方法。
  12. 前記加熱処理工程における温度が、200℃〜700℃である、請求項1から11のいずれかに記載のLGPS系固体電解質の製造方法。

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