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セルロースと無機系多孔性配位高分子との複合体、及びその製造方法
本発明は、セルロースと無機系多孔性配位高分子との複合体、及びその製造方法に関する。
セルロースとは分子式(C6105nで表される構造を持ち、多数のβ−グルコース分子がグリコシド結合により直鎖状に重合した天然の高分子である。石油を原料とする合成高分子とは異なり天然から産出され、さらに生分解性も有することから地球環境に優しい素材である。また、セルロースは合成高分子にはない様々な特徴を有している。その特徴の具体例としては、(i)化学的に比較的安定であり各種の溶媒に溶解しにくいこと、(ii)耐熱性を有しある程度の高温でも分解せず、溶融もしないこと、(iii)親水性だけでなく親油性も併せ持つこと、(iv)燃焼時に有害物の発生が少ないこと、(v)特殊な溶媒に溶解させることで様々な形に成形が可能なこと、(vi)水酸基を利用して化学反応を行うことで機能を付与できること、(vii)人体に対して毒性が低いこと、(viii)蛋白質などの物質と相互作用を起こしにくいこと、等が挙げられる。
また、セルロースを一度溶解し再生したセルロースは再生セルロースと呼ばれ、任意の形状に成形できるだけでなく構造体の内部に微多孔構造であるボイドを持たせることができる。天然セルロースや再生セルロースはその特徴を生かし、各種繊維、各種不織布、包装用フィルム、賦形剤、人工腎臓、フィルター、細胞培養基材など様々な形状で様々な用途に用いられている。更に近年では、セルロースナノファイバーに関する検討がなされている。更にマイクロプラスチック問題を契機に、生分解性があるセルロースは古くて新しい素材として再注目を浴びており、新しい活用が期待されている。
多孔性配位高分子(Porous Coordination Polymer、以下PCPと表記する。)は、金属イオンと配位子が架橋したフレームワーク構造をもち、構造中に細孔を有する化合物の総称である。PCPのうち、金属イオンが有機配位子に架橋されることでフレームワーク構造が形成されたものは、一般的に金属有機構造体(Metal Organic Framework、以下、MOFと表記する。)と呼ばれる。MOFには含まれないPCP、即ち金属イオンと極めて単純な構造を持つ配位子(例えば、酸化物イオン、硫化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン、シアネートイオン、チオシアン化物イオンなど)のみから構成されている化合物や、フレームワーク構造中に金属イオンに配位した有機配位子が存在しない化合物のことを、本明細書中、無機系PCPと呼称する。無機系PCPの例としては、鉄とシアン化物イオンからなるプルシアンブルー(Prussian Blue、以下、PBと表記する。)や、金属イオンと酸化物イオンからなるアニオン性クラスターであるポリオキソメタレートと任意のカチオン(例えば、金属イオン、マクロカチオン、アルキルアンモニウムイオンなど)から構成される多孔質結晶性固体などが挙げられる。
PBは紺青とも呼ばれ、古くから顔料として利用されてきたが、近年は機能性材料としての側面からも注目を集めている。PBが結晶構造中に有する細孔を利用した吸着剤や、鉄イオンの価数変化を利用したエレクトロクロミック材料、電極材料などへの応用が提案されている。PBを構成する鉄(II)イオン・鉄(III)イオンを他の金属種で置換した一連の化合物群はプルシアンブルー類縁体(Prussian Blue Analogues、以下、PBAと表記する。)と呼ばれる。PBAは、PBと同様に結晶構造中に細孔を有し、金属種の組合せによって色調、安定性、結晶構造、電子構造などの各種物性を調整することが可能であるため、PBと同様に機能性材料として注目を集めている。
PBAの製造方法は、金属イオンが溶けた溶液とヘキサシアノ金属酸塩が溶けた溶液を常温常圧で混合し合成する手法以外にも、高温高圧下で合成する手法、溶液中にマイクロ波や超音波を与えながら合成する手法、原料を固体状態で混合しボールミルなどで機械的な衝撃を与えながら合成する手法などが挙げられる。いずれの場合でもPBAは粉末の状態で得られ、合成後は洗浄を経て膜ろ過や遠心分離などを行い回収される。PBA以外の無機系PCPを製造する場合も、基本的には粉末の状態で得られる。しかしながら、粉末の状態では用途によってはハンドリング上の問題が生じる場合がある。この課題を解決するために、何らかの支持体に無機系PCPを担持させた複合体として利用する方法が提案されている。
以下の特許文献1には、綿ニットを支持体とし、アクリル酸エステル樹脂をバインダーに用い、金属有機構造体の一種であるHKUST−1粉末を担持させることにより、セルロースとHKUST−1の複合ニットを得る方法が報告されている。
以下の特許文献2には、セルロース繊維を支持体とし、第1液であるヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム水溶液とセルロース繊維を混合した溶液と、第2液である塩化鉄(III)水溶液を混合することにより、PBがセルロースの表面に定着した複合体を得る方法が報告されている。
以下の特許文献3には、再生セルロース不織布を支持体とし、予め合成したPBAの分散液を含浸させ、乾燥させることにより、セルロースとPBAの複合体を得る方法が報告されている。
以下の特許文献4には、酸化セルロースナノファイバーを支持体とし、硝酸亜鉛水溶液で処理することでカルボキシル基の対イオンとして亜鉛イオンを導入し洗浄を行い、更に2−イミダゾールカルバルデヒドのDMF溶液を加えることにより、金属有機構造体の一種であるMOF−90とセルロースとの複合体を得る方法が報告されている。
以下の特許文献5には、ポリエーテルスルホンを溶かしたDMAc溶液に酸化亜鉛微粒子を分散させ、アプリケーターで塗工し加熱乾燥させることで酸化亜鉛粒子を分散した膜を調製し、更に2−メチルイミダゾールのDMAc溶液を加えることにより、金属有機構造体の一種であるZIF−8とポリエーテルスルホンとの複合体を得る方法が報告されている。
特開2019−88499号公報 特開2019−49063号公報 特許第6345774号公報 特許第6566463号公報 特表2019−523701号公報
無機系PCPを支持体に担持させた複合体として用いる場合、無機系PCPが脱離しにくい、無機系PCPの細孔が損なわれないことなどが要求される。更に無機系PCPを貯蔵や分離に用いる場合は、無機系PCPを多く担持できることが望ましい。また、複合体の利用方法にもよるが、複合体の強度が低いとハンドリングが悪くなるので、複合体の強度を低下させないような担持方法が望ましい。
特許文献1のようにバインダーを用いれば簡単に複合体を得ることができるが、バインダーにより無機系PCPの細孔が塞がれて本来の性能が得られなくなる可能性や、バインダーの劣化や溶解によって無機系PCPが脱離する可能性が考えられる。特許文献2には、PBが脱離しにくく灰分歩留が高いことや、キャビテーション気泡の存在化での処理についての記載はあるが、実施例には灰分歩留のデータはなく、キャビテーション気泡の存在化で処理した例も記載されていない。特許文献3の方法では、セルロース表面に無機系PCPが物理吸着するだけなので無機系PCPが脱離しやすい状態となる。特許文献4に記載されているTEMPO酸化セルロースによるカルボキシル基の導入は、繊維表面で選択的に進行し内部は反応しないことが知られている。すなわちこの方法でも無機系PCPは繊維表面に担持されるため脱離するリスクがある。また、セルロースを酸化しているため、強度の低下、特に水中での強度低下が起こり、使用できる用途が限定される可能性がある。特許文献5の方法であれば支持体の内部に無機系PCPを担持することができるため、無機系PCPが脱離するリスクは低くなっている可能性はある。しかしながら、特許文献5に記載されているXRDパターンから分かるように、全ての亜鉛が2−メチルイミダゾールと反応して金属有機構造体へと変換されている訳ではない。すなわちこの方法では無機系PCPの担持量を増やすことは難しい。また、この方法では、支持体の種類、溶媒、前駆体として用いることができる微粒子に限りがあり、作製できる複合体に限りがある。
本願発明者らは、上述の通り、既存技術によって得られる複合体は実用上要求される様々な性能について検討の余地があることを見出した。本発明が解決しようとする課題は、上記背景技術の水準に鑑み、無機系PCPの担持量が多く、脱離しにくく、十分な強度を有する複合体を提供すること、更には用いる用途に必要とされる様々な形状の複合体を提供することである。
本願発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討し実験を重ねた結果、金属イオンを含む溶媒にセルロースを溶解させ、セルロースが金属イオンを含む錯体を形成した状態で配位子溶液と反応させることにより、セルロース構造体の内部で無機系PCPを合成し、無機系PCPの担持量が多く、脱離しにくい複合体を提供できることを予想外に見出した。また、本願発明者らは、かかる手法では、複合体の形状を任意に変えることができ、用途に応じた複合体の形状を提供することができること、更には驚くべきことに本発明の複合体では、セルロース単独よりも強度が向上することも見出した。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]セルロースと無機系多孔性配位高分子を含む複合体であって、該複合体の超音波洗浄操作後の無機系多孔性配位高分子の担持率が4重量%〜60重量%である、複合体。
[2]前記超音波洗浄操作が、洗浄槽内に純粋を入れた二周波切替式の超音波洗浄機を用い、以下の操作:
(1)前記無機系多孔性配位高分子を溶解又は分解しない溶媒と複合体が入ったガラス製容器を5分間超音波洗浄機にかける、
(2)前記ガラス製容器内の溶媒を入れ替える、
を合計3回行う操作である、前記[1]に記載の複合体。
[3]前記無機系多孔性配位高分子がプルシアンブルー類縁体である、前記[1]又は[2]に記載の複合体。
[4]前記セルロースが再生セルロースである、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の複合体。
[5]短繊維、長繊維、織物、編物、不織布、フィルム、多孔膜、中空糸、粒子、又は微粒子のいずれかの形状を有する、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の複合体。
[6]以下の工程:
セルロースが金属イオンを含む錯体として溶解しているセルロース溶液を調製する工程;
該セルロース溶液からセルロースと金属イオンを含む構造体を成形して得る工程;及び
得られた構造体を前記金属イオンと反応して無機系多孔性配位高分子を形成するアニオン種を含む溶液に、接触させて、セルロースと無機系多孔性配位高分子を含む複合体を得る工程;
を含む、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の複合体の製造方法。
[7]前記金属イオンが、銅、亜鉛、カルシウム、カドミウム、コバルト、ニッケル、鉄、パラジウム、マグネシウムのいずれか、又はそれらのいずれかの組み合わせである、前記[6]に記載の方法。
本発明によれば、無機系PCPの担持量が多く、脱離しにくく、ハンドリングが良好で、任意の形状を有する複合体を得ることができ、貯蔵材料、吸着材料、分離材料、徐放材料、電子材料など様々な用途に用いることができる。
実施例5で得られたセルロース−PBA(Cu,Fe)複合体のX線回折データである。 実施例5で得られたセルロース−PBA(Cu,Fe)複合体の表面SEM写真である。 実施例5で得られたセルロース−PBA(Cu,Fe)複合体の断面TEM写真である。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の1の実施形態は、セルロースと無機系多孔性配位高分子を含む複合体であって、該複合体の超音波洗浄操作後の無機系多孔性配位高分子の担持率が4重量%〜60重量%である、複合体である。
本願明細書中、用語「無機系多孔性配位高分子(無機系PCP)」とは、PCPのうち、金属イオンと極めて単純な構造を持つ配位子(例えば、酸化物イオン、硫化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン、シアネートイオン、チオシアン化物イオンなど)のみから構成されている化合物や、フレームワーク構造中に金属イオンに配位した有機配位子が存在しない化合物を指す。無機系PCPの例としては、鉄とシアン化物イオンからなるプルシアンブルー(PB)や、金属イオンと酸化物イオンからなるアニオン性クラスターであるポリオキソメタレートと任意のカチオン(例えば、金属イオン、マクロカチオン、アルキルアンモニウムイオンなど)から構成される多孔質結晶性固体などが挙げられる。
本発明におけるPBAとは、ヘキサシアノ金属酸イオンを構築素子としたシアノ架橋型金属錯体であり、一般式:Axy[M’(CN)6z・nH2Oで示される組成をもち、2種の金属イオンM、M’がシアン化物イオンで架橋された構造をもつ化合物である。上記一般式においてAはアルカリ金属イオン、Mは第1の金属イオン、M’は第2の金属イオンであり、M、M’はあらゆる金属種の中から任意に選択され得る。したがって、本実施形態のPBAは、ヘキサシアノ金属酸の金属塩であると言い換えてもよい。M、M’の組み合わせによって様々な種類のPBAが存在する。M、M’の価数や合成条件によっては、PBAに原料由来のアルカリ金属イオンAが含まれる場合がある。本実施形態のPBAは、1種類単独で使用することも、2種類以上混合して使用することもできる。
本実施形態のPBAを構成する第1の金属イオンとしては、様々な金属イオンを用いることができる。セルロースの内部にPBAを担持させるためには、セルロースの溶解に用いられる金属イオンを第1の金属イオンとすることが好ましい。中でもセルロースの溶解しやすさから、銅イオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、カドミウムイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、鉄イオン、パラジウムイオン、マグネシウムイオンがより好ましい。更に得られるセルロースがボイドを持つ銅イオンが特に好ましい。第1の金属イオンは1種類だけを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
本実施形態のPBAを構成する第2の金属イオンは、シアン化物イオンと6配位構造をとりうる金属種であればよく、目的に応じて自由に選ぶことができる。第2の金属イオンは1種類だけを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
本実施形態の複合体を構成するセルロースとしては、様々なセルロースを用いることができる。セルロースは親水性と親油性を併せ持ち、ほとんどの一般的な溶媒に対して不溶であるため、液体中から目的物質を分離する吸着分離や、反応を制御する触媒等に用いる際に様々な溶媒を使用できる。また、セルロースはある程度の耐熱性を有し溶融もしないため、幅広い温度範囲で使用することができる。更に、無機系PCPが吸着した対象物を回収する場合に様々な溶媒を用いることや、ある程度の熱的環境化で回収を行うことができる。本実施形態の複合体を構成するセルロースとしては、複合体として任意の形状に成形できる点から、再生セルロースが好ましい。中でも金属錯体系の溶媒である、銅アンモニア、カドキセン、コオキセン、ニオキセン、ジンコキセン、EWNN、などのセルロース溶液から得られる再生セルロースがより好ましい。これらの再生セルロースは得られるセルロースがボイドを持つ構造となり、その結果複合体の内部に存在する無機系PCPに分子がアクセスしやすくなり、貯蔵、吸着、分離、徐放などに利用しやすくなる。更に銅アンモニア法再生セルロースが、成形のしやすさとボイドを制御できる点から特に好ましい。
本実施形態の複合体は、超音波洗浄操作後の無機系PCPの担持率(割合)が4重量%〜60重量%である。無機系PCPの割合が低いと、貯蔵、吸着、分離、徐放などの機能が不十分となる可能性がある。割合が60重量%を超えると複合体としての靭性が低くなり、使い方によってはハンドリング上の問題が発生する可能性がある。性能面からは、割合は10重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上が更に好ましい。ハンドリングの面からは、割合は50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましい。
超音波洗浄操作は、洗浄槽内に純水を入れた二周波切替式の超音波洗浄機を用い、無機系PCPを溶解または分解しない溶媒と複合体が入ったガラス製容器を5分間超音波洗浄機にかけて洗浄した後、ガラス製容器内の溶媒を新しいものに入れ替え、再度洗浄するという操作を合計3回行う。
本実施形態の複合体の洗浄の方法として超音波洗浄を選択した理由は、様々な形状の複合体を簡便に洗浄できるためである。尚、超音波洗浄を行う際は、無機系PCPが溶解又は分解しない溶媒を選択する必要がある。例えば、PBの場合には溶媒として純水を用いることができる。
本実施形態の複合体は、無機系PCPがセルロースの内部に一定量存在していることが好ましい。内部に存在する無機系PCPは脱離が起きにくいだけでなく、複合体の力学物性向上にも寄与すると考えられる。
本実施形態の複合体の形状は、用途に応じて任意に選択することができる。例えば、短繊維、長繊維、織物、編物、不織布、フィルム、多孔膜、中空糸、粒子、微粒子などが挙げられる。これらを単独で用いても構わないし、複合させて使うことも可能である。また、別の素材と複合させて使うことも、何らかのモジュールに組み込んで使うことも可能である。更に使用する用途に応じてボイドのサイズや形状を任意に選択することができる。例えばガス分離を行う場合は密な構造とすることで非選択的なガス透過を防ぐことができるし、吸着分離を行う場合は疎な構造とすることで比表面積を増やし吸着効率を上げることができる。
本発明の他の実施形態は、以下の工程:
セルロースが金属イオンを含む錯体として溶解しているセルロース溶液を調製する工程;
該セルロース溶液からセルロースと金属イオンを含む構造体を成形して得る工程;及び
得られた構造体を前記金属イオンと反応して無機系多孔性配位高分子を形成するアニオン種を含む溶液に、接触させて、セルロースと無機系多孔性配位高分子を含む複合体を得る工程;
を含む、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の複合体の製造方法である。本実施形態の複合体の製造方法は、特に限定されるものではなく任意の手法を用いることができるが、セルロースが金属イオンを含む錯体として溶解しているセルロース溶液を調製し、前記のセルロース溶液からセルロースと金属イオンを含む構造体を製造し、前記構造体を、アニオン種を含む溶液に接触させることにより、セルロース構造体の内部で無機系PCPを合成する方法が好ましい。予め金属イオンがセルロースと錯体を形成しているため、セルロース溶液から成形して得た構造体はその内部に金属イオンが固定化された状態となり、ここにアニオン種を含む溶液を接触させると無機系PCPをセルロース構造体の内部に析出させることができる。セルロースを構成するグルコース環1つに対し1つの金属イオンが配位できることから、多くの金属イオンを構造体内部に固定化でき、大量の無機系PCPを担持することができる。例えば、溶媒として銅アンモニア溶液を用いた場合には、銅イオンはC2とC3の水酸基に配位していることが報告されている。この方法において、セルロース溶液から成形して得た構造体が凝固していない状態でアニオン種を含む溶液によって処理することで構造体の凝固と無機系PCPの合成を同時に行うこともできるし、セルロース溶液から成形して得た構造体をまずセルロースと金属イオンの配位が切れないような貧溶媒中で凝固させ、続いてアニオン種を含む溶液で処理することで無機系PCPの合成を行うこともできる。また、必要に応じその後にセルロースと金属イオンの配位を切るような処理を行ってもよい。また、本実施形態の複合体の作製を、セルロースが金属イオンを含む錯体を形成している状態でアニオン種を含む溶液によって処理する方法で行う場合、驚くべきことにセルロース単独よりも力学物性が向上する。正確な原理は不明だが、セルロース構造体の内部に存在する無機系PCPが補強材として寄与している可能性、セルロースと水素結合を形成し架橋剤として寄与している可能性、構造形成時に無機系PCPが存在することでセルロースの結晶構造自体が変化している可能性などが考えられる。複合体の力学物性の向上は、実使用の際にハンドリング性が向上するなどの利点に繋がる。
本実施形態の方法において、無機系PCPの担持量を高くできるという点では、セルロース溶液から成形して得た構造体が凝固していない状態でアニオン種を含む溶液によって処理することで構造体の凝固と無機系PCP(又はその中間体)の合成を同時に行う方法が好ましい。他方、セルロースの形状とボイドをコントロールできる点では、初めにセルロースと金属イオンの結合が切れないような貧溶媒で構造体を凝固させた後に、アニオン種を含む溶液で処理する方法が好ましい。また、アニオン種を含む溶液の濃度、温度、反応時間などの条件を変更することで、無機系PCPの担持率を調整することもできる。また、例えば、セルロースの溶媒として銅アンモニア溶液を用いた場合は、アンモニアの存在によりpHがアルカリ側になるため、無機系PCPの種類によっては析出しない場合もある。このような場合にもセルロースと金属イオンの結合が切れないような貧溶媒で脱アンモニアを行って構造体を凝固させた後に、アニオン種を含む溶液で処理する方法が好ましい。また、無機系PCPの種類によっては、アニオン種を含む溶液で処理するだけでは反応が不十分であったり、中間体が生成したりする場合がある。このような場合は必要に応じ、高圧処理、高温処理、酸性溶液での処理、アルカリ性溶液での処理、超音波処理、マイクロ波処理、などを行ってもよい。
本実施形態のセルロースの内部で無機系PCPを合成した後は、必要に応じて洗浄処理を行うことができる。未反応の金属イオンやアニオン種が複合体の中に残留している場合は、それらを溶解することができ合成した無機系PCPを分解しないような溶媒で洗浄することができる。たとえば、セルロース−PB複合体の場合には溶媒として純水を用いることができる。
本実施形態の複合体は、必要に応じ乾燥して用いても構わないし、乾燥させずにそのまま用いても、溶媒置換して用いても構わない。合成した無機系PCPが溶媒和しており活性が低い際は、乾燥や活性化処理が必要になる場合がある。また、セルロースのボイドを維持したい場合は溶媒置換乾燥を行うか、乾燥させずにそのまま用いることができる。
まず、以下の実施例、比較例で用いた評価方法について説明する。尚、一例としてセルロース−PB複合体の評価方法を記載するが、洗浄に用いる溶媒や容器は、無機系PCPを形成する金属イオン及びアニオン種の溶解性や、無機系PCPの安定性を加味して選択してよい。
<複合体の無機系PCP担持率測定>
複合体を105℃で1昼夜減圧加熱乾燥し、複合体の絶乾重量を測定する。続いて密閉できる容器に3重量%苛性ソーダと複合体を入れ1時間浸漬し、複合体に担持されている無機系PCPを分解・溶出させる。続いて複合体を取り出し、別の密閉できる容器に入れた10重量%硫酸に1時間浸漬して複合体に残存した金属イオンを溶出させる。以上の3重量%苛性ソーダへの浸漬処理と10重量%硫酸への浸漬処理をもう一度繰り返す。残ったセルロース構造体を回収し純水で洗浄する。得られたセルロース構造体を105℃で1時間減圧加熱乾燥し、セルロース構造体の絶乾重量を測定する。複合体の無機系PCP担持率は、測定した複合体の絶乾重量とセルロース構造体の絶乾重量から、以下の式:
複合体の無機系PCP担持率(%)={(複合体の絶乾重量−セルロース構造体の絶乾重量)÷複合体の絶乾重量}×100
により算出する。
<複合体の洗浄操作>
超音波洗浄機としてアズワン製超音波洗浄機(ASU−6D、二周波切替式)を用い、洗浄槽内に純水を入れる。更に密閉できるガラス製容器に純水と複合体を入れ、超音波洗浄機で5分間洗浄を行う。5分間洗浄後にガラス製容器中の純水を入れ替え、一連の超音波洗浄操作を合計3回行う。
<無機系PCPを分解できない場合の担持率測定>
無機系PCPが分解できない場合は、NMMOなどのセルロースを溶解するが無機系PCPを分解しない溶媒を用いてセルロースを溶解し、単離した無機系PCPの絶乾重量を測定し、測定した複合体の絶乾重量と無機系PCPの絶乾重量から、複合体の無機系PCP担持率を、以下の式:
複合体の無機系PCP担持率(%)={(無機系PCPの絶乾重量)÷複合体の絶乾重量}×100
により算出する。
<洗浄操作前後における無機系PCPの脱離率の算出>
洗浄操作前後における無機系PCPの脱離率は、洗浄操作前後の複合体の無機系PCP担持率から、以下の式:
複合体の無機系PCP脱離率(%)={(洗浄前の担持率−洗浄後の担持率)÷洗浄前の担持率}×100
により算出する。
<実施例1:セルロース−PB複合フィルムの作製>
既知の方法でコットンリンターをEWNNに溶解し、セルロース濃度4.0重量%、鉄濃度1.5重量%、酒石酸濃度12.9重量%、水酸化ナトリウム濃度18.7重量%の原液を調製した。アプリケーターを用い8cm角のガラス基板上に原液を膜厚300μmでキャストした。続いて純水50mlを10cm角のステンレス製蓋付容器に入れ40℃に加熱しながら、ガラス基板ごと10分間浸漬させ凝固を行った。続いて2.5重量%ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム水溶液50mlを10cm角のステンレス製蓋付容器に入れ40℃に加熱しながら、ガラス基板ごと30分間浸漬させセルロースの水酸基と錯体を形成している鉄(III)イオンとヘキサシアノ鉄(II)酸イオンを反応させた。続いて2重量%硫酸50mlを10cm角のステンレス製蓋付容器に入れ、ガラス基板ごと10分間浸漬させた。硫酸浸漬後のフィルムはPB特有の濃青色であった。続いてフィルムをガラス基板から剥がし、純水50mlと一緒に10cm角のステンレス製蓋付容器に入れ、ピンセットでフィルムをつまみすすぐことで表面に付着しているPBを洗い落とし、その後純水中に5分間静置することで膜中に残存している硫酸を洗い落とした。一連の洗浄操作を純水中へのPB脱離による着色が見られなくなるまで繰り返した。得られた洗浄後のフィルムを5cm角のステンレス製型枠で挟み込み、乾燥収縮を抑えながら50℃で1昼夜減圧加熱乾燥し、乾燥したフィルムを得た。X線回折測定装置(リガク社製X線回折装置「Mini FlexII」)を用いて分析したところ、セルロースとPBの両方のピークが確認された。以上の結果から、セルロース−PB複合フィルムが得られたことが確認できた。
<実施例2:セルロース−PB複合フィルムの作製>
用いる凝固液を純水ではなく50重量%のアセトン水溶液とした以外は、実施例1と同様の方法で、セルロース−PB複合フィルムを調製した。
<実施例3:セルロース−PB複合フィルムの作製>
純水での凝固工程を省略し、キャストしたフィルムを2.5重量%ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム水溶液に浸漬させて凝固と反応を同時に行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で、セルロース−PB複合フィルムを調製した。
<再生セルロースフィルムの作製>
既知の方法でコットンリンターを銅アンモニア溶液に溶解し、セルロース濃度10重量%、アンモニア濃度7重量%、銅濃度3.6重量%のセルロース銅アンモニア溶液を調製した。アプリケーターを用い8cm角のガラス基板上に膜厚300μmでキャストした。続いて純水50mlを10cm角のステンレス製蓋付容器に入れ40℃に加熱しながら、ガラス基板ごと10分間浸漬させ凝固を行った。続いて2重量%硫酸50mlを10cm角のステンレス製蓋付容器に入れ、ガラス基板ごと10分間浸漬させて脱銅処理を行った。脱銅したフィルムを取り出し、10cm角のステンレス製蓋付容器に入れて純水50mlに5分間浸漬させ硫酸を洗い落とした。純水への浸漬操作は完全に硫酸が洗い落とされるまで合計3回繰り返した。得られた洗浄後のフィルムを5cm角のステンレス製型枠で挟み込み、乾燥収縮を抑えながら50℃で1昼夜減圧加熱乾燥させ、再生セルロースフィルムを得た。
<比較例1:後加工によるセルロース−PB複合フィルムの作製>
特許文献2を参考に、2.5重量%ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム水溶液50mlと再生セルロースフィルムを密閉できるガラス製容器に入れて混合し10分間静置した。続いて2.0重量%塩化鉄(III)水溶液50mlを加え、容器の蓋を閉めて10分間静置した。得られたフィルムを実施例1と同様に純水で洗浄し、8cm角のステンレス製型枠で挟み込み、乾燥収縮を抑えながら50℃で1昼夜減圧乾燥し、乾燥したフィルムを得た。得られたフィルムはPB特有の濃青色であった。
<比較例2:後加工によるセルロース−PB複合フィルムの作製>
特許文献3を参考に、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウムと塩化鉄(III)を予め反応させPB粒子を合成し、純水に分散させた状態で再生セルロースフィルムに塗布し乾燥したこと以外は、比較例1と同様の方法で、乾燥したフィルムを得た。得られたフィルムはPB特有の濃青色であった。
<セルロース−PB複合フィルムの物性評価>
実施例1〜3と比較例1、2で得られたセルロース−PB複合フィルムの一部を用い、PBの担持率を測定した。続いて洗浄操作を行い、洗浄後のPBの担持率を測定し、洗浄操作前後におけるPBの脱離率を算出した。それらの結果を、以下の表1と表2に示す。
Figure 2021116516
Figure 2021116516
表1から明らかなように、実施例1〜3で得られた複合体は、PBの担持率が高く、更に洗浄操作によるPBの脱離も起きにくかった。他方、表2から明らかなように、本実施形態以外の方法で得られた複合体は、PBの担持率が低く、洗浄操作による脱離が起きやすかった。また、それぞれのフィルムと、PBを担持していない再生セルロースフィルムを引っ張り、ハンドリングを確認したところ、比較例1、2で得られたフィルムは、再生セルロースフィルムと同等の力で破断した。それに対し、実施例1〜3で得られたフィルムは、再生セルロースフィルムよりも破断しにくかった。
<実施例4:セルロース−PB複合フィルムの液中NH4 +イオン吸着性能評価>
純水に塩化アンモニウムを溶解させ、NH4 +濃度200ppmの水溶液を調製した。続いて実施例1で作製したセルロース−PB複合フィルム0.5g(絶乾重量)を水溶液50mLに浸漬し、室温で24h静置してNH4 +を吸着させた。フィルムを取り出した残液中のNH4 +濃度を、JIS K1441に記載のホルマリン法によって測定した。評価結果を以下の表3に示す。
Figure 2021116516
表3から明らかなように、実施例1で得られたセルロース−PB複合フィルムはNH4 +吸着性能を示した。
<実施例5:セルロース−PBA(Cu,Fe)複合フィルムの作製>
セルロース溶液としてセルロース銅アンモニア溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、セルロース−PBA(Cu,Fe)複合フィルムを調製した。フィルムはヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム水溶液を反応させた際には緑色であったが、2%硫酸で処理するとPBA(Cu,Fe)特有の赤茶色となった。X線解析装置を用いて分析したところ、図1に示すようなセルロースとPBA(Cu,Fe)の両方のピークが確認された。続いて実施例5で得られたフィルムの表面と断面をそれぞれSEMとTEMで観察した。図2と図3にそれぞれの写真を示す。
<実施例6:セルロース−PBA(Cu,Fe)複合フィルムの作製>
用いる凝固液を純水ではなく2重量%の苛性ソーダ水溶液とし、凝固後に純水50mlに5分間浸漬して純水置換する操作を3回行ったこと以外は、実施例5と同様の方法でセルロース−PBA(Cu,Fe)複合フィルムを調製した。得られたフィルムはPBA(Cu,Fe)特有の赤茶色であった。X線解析装置を用いて分析したところセルロースとPBA(Cu,Fe)の両方のピークが確認された。
<実施例7:セルロース−PBA(Cu,Fe)複合フィルムの作製>
セルロース溶液としてセルロース銅アンモニア溶液を用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で、セルロース−PBA(Cu,Fe)複合フィルムを調製した。得られたフィルムはPBA(Cu,Fe)特有の赤茶色であった。X線解析装置を用いて分析したところセルロースとPBA(Cu,Fe)の両方のピークが確認された。
<実施例8:セルロース−PBA(Zn,Fe)複合フィルムの作製>
コットンリンターを溶解する溶液にジンコキセン溶液を用い、セルロース濃度7重量%、亜鉛濃度4.5重量%、エチレンジアミン濃度13.5重量%としたこと以外は、実施例1と同様の方法でセルロース−PBA(Zn,Fe)複合フィルムを調製した。得られたフィルムは白色であった。X線解析装置を用いて分析したところセルロースとPBA(Zn,Fe)の両方のピークが確認された。
<実施例9:セルロース−PBA(Cu,Co)複合フィルムの作製>
セルロース溶液としてセルロース銅アンモニア溶液を用い、凝固後の反応液として2.5重量%ヘキサシアノコバルト(III)酸カリウム水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でセルロース−PBA(Cu,Co)複合フィルムを調製した。X線解析装置を用いて分析したところセルロースとPBA(Cu,Co)の両方のピークが確認された。
<セルロース−PBA複合フィルムの物性評価>
実施例5〜9で得られたセルロース−PBA複合フィルムの物性評価を行った。それらの結果を以下の表4に示す。
Figure 2021116516
表4から明らかなように、実施例5〜9の手法ではセルロース溶液の金属イオンとヘキサシアノ金属酸イオンの組み合わせを変えることで様々なPBAを担持した複合体を得ることができた。
<実施例10:セルロース−PBA(Cu,Fe)複合長繊維の作製>
従来既知の方法で、セルロース銅アンモニア溶液を純水で流下緊張紡糸を行って、セルロースと銅を含むゲル状の長繊維を得た。続いて2.5重量%ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム水溶液50mlを10cm角のステンレス製蓋付容器に入れ40℃に加熱しながら、長繊維を30分間浸漬させセルロースの水酸基と錯体を形成している銅イオンとヘキサシアノ鉄(II)酸イオンを反応させた。続いて長繊維を取り出し、2重量%硫酸50mlを入れた10cm角のステンレス製蓋付容器に入れて10分間浸漬させた。続いて長繊維を取り出し、純水50mlと一緒に10cm角のステンレス製蓋付容器に入れて振とうして表面に付着しているPBA(Cu,Fe)を洗い落とし、その後純水中に5分間静置することで未反応のヘキサシアノ鉄(II)酸イオンと硫酸を洗い落とした。一連の洗浄操作を純水中へのPBA(Cu,Fe)脱離による着色が見られなくなるまで繰り返した。得られた洗浄後の長繊維を5cm角のステンレス製型枠に巻き付け、乾燥収縮を抑えながら50℃で1昼夜減圧加熱乾燥させ、乾燥した長繊維を得た。
<実施例11:セルロース−PBA(Cu,Fe)複合編物の作製>
実施例10で得られた長繊維を用い筒編み機で筒編みを行い、セルロース−PBA(Cu,Fe)複合編物を得た。
<実施例12:セルロース−PBA(Cu,Fe)複合中空糸の作製>
従来既知の方法で、二重同心円紡口を用いセルロース銅アンモニア溶液を外液、2重量%の苛性ソーダ溶液を内液とし、2重量%苛性ソーダ溶液の浴に吐出して中空糸を紡糸し、得られた中空糸2.5gを純水50mlに5分間浸漬して純水置換する操作を3回行った以外は、実施例6と同様の方法で、セルロース−PBA(Cu,Fe)複合中空糸を調製した。
<実施例13:セルロース−PBA(Cu,Fe)複合長繊維不織布の作製>
従来既知の方法で、セルロース銅アンモニア溶液の湿式スパンボンド紡糸を行った以外は、実施例10と同様の手順でセルロース−PBA(Cu,Fe)複合長繊維不織布を調製した。
<実施例14:セルロース−PBA(Cu,Fe)複合粒子の作製>
セルロース銅アンモニア溶液を希釈し粘度を60mPa・sに調整し、従来既知の方法でスプレードライを行って、セルロースと銅を含む粒子を作製した。続いて2.5重量%ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム水溶液50mlを10cm角のステンレス製蓋付容器に入れ40℃に加熱しながら、粒子0.5gを30分間浸漬させセルロースの水酸基と錯体を形成している銅イオンとヘキサシアノ鉄(II)酸イオンを反応させた。反応後に遠心分離によって粒子を回収し、2重量%硫酸50mlを入れた10cm角のステンレス製蓋付容器に入れて10分間浸漬させた。続いて遠心分離によって粒子を回収し、純水50mlと一緒に遠心分離チューブに入れて振とうして表面に付着しているPBA(Cu,Fe)を洗い落とし、その後純水中に5分間静置することで未反応のヘキサシアノ鉄(II)酸イオンと硫酸を洗い落とした。一連の洗浄操作を純水中へのPBA(Cu,Fe)脱離による着色が見られなくなるまで繰り返した。洗浄後の粒子を遠心分離によって回収し、50℃で1昼夜減圧加熱乾燥させ、乾燥した粒子を得た。
<実施例15:セルロース−PBA(Cu,Fe)複合微粒子の作製>
セルロース銅アンモニア溶液を希釈しセルロース濃度を0.37重量%に調整したことと、セルロース銅アンモニア溶液を27重量%のアセトン水溶液で凝固を行ったこと、凝固後に遠心分離によって回収した粒子2.5gを純水50mLに10分間浸漬して純水置換したこと以外は、実施例14と同様の方法で、セルロース−PBA(Cu,Fe)複合微粒子を調製した。
<形状の異なるセルロース−PBA(Cu,Fe)複合体の物性評価>
実施例10〜15で得られた複合体は、いずれもPBA(Cu,Fe)特有の赤茶色であった。また、複合体フィルムと同様に物性評価を行った。その結果を以下の表5に示す。
Figure 2021116516
表5から明らかなように、本実施形態の方法で得られた複合体は、任意の形状に調製が可能であった。
<比較例3:後加工によるセルロース−PB複合長繊維の作製>
セルロース銅アンモニア溶液から得られた再生セルロース長繊維を用い、比較例1と同様の方法で、セルロース−PB複合長繊維を調製した。得られた複合長繊維のPB担持率は8.7重量%、超音波洗浄後のPB担持率は3.4重量%であった。
<実施例16:セルロース−PBA(Cu,Fe)複合フィルムの作製>
セルロース銅アンモニア溶液の組成を、セルロース濃度10重量%、アンモニア濃度8重量%、銅濃度4.3重量%としたこと以外は、実施例5と同様の方法でセルロース−PBA(Cu,Fe)複合フィルムを調製した。
<実施例17:セルロース−PBA(Cu,Fe)複合フィルムの作製>
反応液のヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム濃度を1.0重量%としたこと以外は、実施例5と同様の方法でセルロース−PBA(Cu,Fe)複合フィルムを調製した。
<実施例18:セルロース−PBA(Cu,Fe)複合フィルムの作製>
反応液のヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム濃度を0.5重量%としたこと以外は、実施例5と同様の方法でセルロース−PBA(Cu,Fe)複合フィルムを調製した。
<実施例19:セルロース−PBA(Cu,Fe)複合フィルムの作製>
反応液のヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム濃度を0.1重量%としたこと以外は、実施例5と同様の方法でセルロース−PBA(Cu,Fe)複合フィルムを調製した。
<実施例20:セルロース−PBA(Cu,Fe)複合フィルムの作製>
フィルムのキャスト後に純水で凝固する代わりに風乾したこと以外は、実施例5と同様の方法でセルロース−PBA(Cu,Fe)複合フィルムを調製した。
<セルロース−PBA(Cu,Fe)複合フィルムの物性評価>
実施例16〜20で得られた複合体は、いずれもPBA(Cu,Fe)特有の赤茶色であった。以下の表6に複合体フィルムの物性評価結果を示す。
Figure 2021116516
表6から明らかなように、実施例16〜20では、セルロース溶液中の金属イオン濃度、反応液中のヘキサシアノ金属酸イオン濃度、凝固の方法などを調整することで、PBAの担持量をコントロールすることができた。
本発明の複合体は、水素貯蔵などのガス貯蔵、二酸化炭素の排出抑制などを目的としたガス分離、気体や液体中のケミカル不純物などを除去するフィルター、高分子合成などの反応場となる添加剤、反応を制御する触媒、気体や液体中から目的物質を分離する吸着分離、液体中からの有価物回収、血液中から老廃物を除去する透析膜、空隙に閉じ込めておいた物質を徐放する徐放剤、消臭性・調湿性・抗菌性を有する建物や自動車などの内装材、イオン伝導材料、二次電池の電極・セパレータ、エレクトロクロミック材料、などに用いることができる。

Claims (7)

  1. セルロースと無機系多孔性配位高分子を含む複合体であって、該複合体の超音波洗浄操作後の無機系多孔性配位高分子の担持率が4重量%〜60重量%である、複合体。
  2. 前記超音波洗浄操作が、洗浄槽内に純水を入れた二周波切替式の超音波洗浄機を用い、以下の操作:
    (1)前記無機系多孔性配位高分子を溶解又は分解しない溶媒と複合体が入ったガラス製容器を5分間超音波洗浄機にかける、
    (2)前記ガラス製容器内の溶媒を入れ替える、
    を合計3回行う操作である、請求項1に記載の複合体。
  3. 前記無機系多孔性配位高分子がプルシアンブルー類縁体である、請求項1又は2に記載の複合体。
  4. 前記セルロースが再生セルロースである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合体。
  5. 短繊維、長繊維、織物、編物、不織布、フィルム、多孔膜、中空糸、粒子、又は微粒子のいずれかの形状を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合体。
  6. 以下の工程:
    セルロースが金属イオンを含む錯体として溶解しているセルロース溶液を調製する工程;
    該セルロース溶液からセルロースと金属イオンを含む構造体を成形して得る工程;及び
    得られた構造体を前記金属イオンと反応して無機系多孔性配位高分子を形成するアニオン種を含む溶液に、接触させて、セルロースと無機系多孔性配位高分子を含む複合体を得る工程;
    を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合体の製造方法。
  7. 前記金属イオンが、銅、亜鉛、カルシウム、カドミウム、コバルト、ニッケル、鉄、パラジウム、マグネシウムのいずれか、又はそれらのいずれかの組み合わせである、請求項6に記載の方法。
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