JP2021115586A - 液冷ジャケットの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】液冷ジャケットを低コストで製造することができる液冷ジャケットの製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】ジャケット本体2と、ジャケット本体2の開口部を封止する封止体3とで構成され、ジャケット本体2と封止体3とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、第一本接合工程において、ジャケット本体2の底部10と封止体3の表面3aとを両外側から一対の保持部22で押圧して保持しつつ、保持部22を用いてジャケット本体2及び封止体3を回転又は平行移動させてジャケット本体2と封止体3とを摩擦攪拌することを特徴とする。【選択図】図5
Description
本発明は、液冷ジャケットの製造方法に関する。
例えば、特許文献1には、ジャケット本体と、ジャケット本体の開口部を封止する封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法が開示されている。当該液冷ジャケットの製造方法では、ジャケット本体及び封止体の側面から垂直に回転ツールを挿入し、ジャケット本体の廻りに一周させて摩擦攪拌を行っている。
特許文献1に係る発明では、回転ツールとジャケット本体の側面とを垂直にした状態で回転ツールをジャケット本体廻りに一周させるため、回転ツールを、例えば、先端にスピンドルユニット等の回転駆動手段を備えたアームロボットに取り付けるなどして、回転ツールの回転中心軸線の角度や挿入位置を変更・調整する必要がある。このため回転ツールを駆動させるための装置等の付帯設備に費用がかかり、結果的に製造コストが高くなるという問題がある。
このような観点から、本発明は、液冷ジャケットを低コストで製造することができる液冷ジャケットの製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明は、底部、前記底部の周縁から立ち上がる周壁部及び前記底部から立ち上がる支柱を有するジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、摩擦攪拌で用いる回転ツールは、ショルダ部を備え、前記ショルダ部の底面の中央から垂下する攪拌ピンを備えており、前記攪拌ピンは、先細りのテーパー状となっており、前記ジャケット本体に前記封止体を載置することにより前記周壁部の端面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第一突合せ部を形成するとともに、前記支柱の端面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、回転する前記回転ツールの前記攪拌ピンを前記封止体の表面から挿入し、前記攪拌ピンを前記封止体、又は前記周壁部及び前記封止体に接触させつつ、前記ショルダ部の底面を前記封止体の表面に接触させた状態で前記第一突合せ部に沿って所定の深さで前記周壁部の廻りに相対的に一周させて前記第一突合せ部を摩擦攪拌する第一本接合工程と、を含み、前記第一本接合工程において、前記ジャケット本体の前記底部と前記封止体の表面とを両外側から一対の保持部で押圧して保持しつつ、前記保持部を用いて前記ジャケット本体及び前記封止体を回転又は平行移動させて前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌することを特徴とする。
また、本発明は、底部、前記底部の周縁から立ち上がる周壁部及び前記底部から立ち上がる支柱を有するジャケット本体と、前記支柱の先端が挿入される孔部を備えるとともに前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、摩擦攪拌で用いる回転ツールは、ショルダ部を備え、前記ショルダ部の底面の中央から垂下する攪拌ピンを備えており、前記攪拌ピンは、先細りのテーパー状となっており、前記支柱の先端に段差底面と当該段差底面から立ち上がる段差側面とを有する支柱段差部を形成するとともに、前記支柱の段差底面を前記周壁部の端面と同一の高さ位置に形成し、前記封止体の厚みを前記段差側面よりも大きく形成する準備工程と、前記ジャケット本体に前記封止体を載置することにより前記周壁部の端面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第一突合せ部を形成するとともに、前記支柱の段差側面と前記孔部の孔壁とを突き合せて段差側面突合せ部を形成し、前記支柱の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて段差底面突合せ部を形成する載置工程と、回転する前記回転ツールの前記攪拌ピンを前記封止体の表面に挿入し、前記攪拌ピンを前記封止体、又は前記周壁部及び前記封止体に接触させつつ、前記ショルダ部の底面を前記封止体の表面に接触させた状態で前記第一突合せ部に沿って所定の深さで前記周壁部の廻りに相対的に一周させて前記第一突合せ部を摩擦攪拌する第一本接合工程と、を含み、前記第一本接合工程において、前記ジャケット本体の前記底部と前記封止体の表面とを両外側から一対の保持部で押圧して保持しつつ、前記保持部を用いて前記ジャケット本体及び前記封止体を回転又は平行移動させて前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌することを特徴とする。
かかる製造方法によれば、ジャケット本体の底部と封止体の表面とを一対の保持部で保持した状態でジャケット本体及び封止体を回転又は平行移動させるため、第一本接合工程中に保持部と回転ツールとが干渉しない。つまり、ジャケット本体と封止体とを位置決めするための治具が回転ツールの移動の妨げにならない。これにより、回転ツールを駆動させるための装置等の付帯設備に費用を要せず、液冷ジャケットを低コストで製造することができる。また、ショルダ部の底面で塑性流動材を押さえることができるため、バリの発生を抑制することができる。
また、回転する前記回転ツールの前記攪拌ピンを前記封止体の表面から挿入し、前記攪拌ピンを前記封止体のみ、又は前記封止体及び前記支柱に接触させつつ前記ショルダ部の底面を前記封止体の表面に接触させた状態で前記回転ツールを相対的に移動させて前記第二突合せ部を摩擦攪拌する第二本接合工程と、をさらに含むことが好ましい。
また、回転する前記回転ツールの前記攪拌ピンを封止体の表面から挿入し、前記攪拌ピンを前記封止体及び前記支柱に接触させつつ前記ショルダ部の底面を少なくとも前記封止体の表面に接触させた状態で前記回転ツールを相対移動させて前記段差側面突合せ部を摩擦攪拌する第二本接合工程と、をさらに含むことが好ましい。
かかる製造方法によれば、接合強度を高めることができる。
また、前記第一本接合工程後に前記第二本接合工程を行うことが好ましい。
また、前記第二本接合工程後に前記第一本接合工程を行うことが好ましい。
また、前記第一本接合工程では、所定の回転速度で前記回転ツールを回転させて摩擦攪拌を行い、前記第一本接合工程において前記攪拌ピンを離脱させるとき、前記所定の回転速度よりも徐々に回転速度を上げながら終了位置まで移動させることが好ましい。
また、前記第一本接合工程では、所定の回転速度で前記回転ツールを回転させて摩擦攪拌を行い、前記第一本接合工程において前記攪拌ピンを挿入するとき、前記所定の回転速度よりも高い速度で前記攪拌ピンを回転させた状態で挿入し、徐々に回転速度を下げながら前記第一突合せ部まで移動させることが好ましい。
かかる製造方法によれば、摩擦攪拌を好適に行うことができる。
本発明に係る液冷ジャケットの製造方法によれば、液冷ジャケットを低コストで製造することができる。
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。まずは、本実施形態に係る接合方法で用いる回転ツールについて説明する。図1に示すように、回転ツールFは、例えば工具鋼で形成されており、円柱状のショルダ部F1と、ショルダ部F1の底面F1aの中央から垂下する攪拌ピンF2とで主に構成されている。
攪拌ピンF2は、ショルダ部F1から離間するにつれて先細りのテーパー状になっている。攪拌ピンF2の先端には、回転中心軸線Zに対して垂直であり、かつ、平坦な平坦面F3が形成されている。
攪拌ピンF2は、ショルダ部F1から離間するにつれて先細りのテーパー状になっている。攪拌ピンF2の先端には、回転中心軸線Zに対して垂直であり、かつ、平坦な平坦面F3が形成されている。
攪拌ピンF2の外表面は、先細りとなる外周面F10と、先端に形成された平坦面F3とで構成されている。攪拌ピンF2の外周面F10には螺旋溝が形成されている。本実施形態では、回転ツールFを右回転させるため、攪拌ピンF2の螺旋溝は、基端から先端に向かうにつれて左回りに形成されている。言い換えると、螺旋溝は、螺旋溝を基端から先端に向けてなぞると上から見て左回りに形成されている。
なお、回転ツールFを左回転させる場合は、螺旋溝を基端から先端に向かうにつれて右回りに形成することが好ましい。言い換えると、この場合の螺旋溝は、螺旋溝を基端から先端に向けてなぞると上から見て右回りに形成されている。螺旋溝をこのように設定することで、摩擦攪拌工程の際に塑性流動化した金属を螺旋溝によって攪拌ピンF2の先端側に導くことができる。
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。第一実施形態に係る液冷ジャケット1は、図2に示すように、ジャケット本体2と封止体3とで構成されている。液冷ジャケット1は、内部に流体を流通させて、配置される発熱体を冷却する機器である。ジャケット本体2と封止体3とは摩擦攪拌接合で一体化される。以下の説明における「表面」とは、「裏面」の反対側の面を意味する。
本発明の第一実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。第一実施形態に係る液冷ジャケット1は、図2に示すように、ジャケット本体2と封止体3とで構成されている。液冷ジャケット1は、内部に流体を流通させて、配置される発熱体を冷却する機器である。ジャケット本体2と封止体3とは摩擦攪拌接合で一体化される。以下の説明における「表面」とは、「裏面」の反対側の面を意味する。
ジャケット本体2は、底部10及び周壁部11で主に構成されている。ジャケット本体2は、摩擦攪拌可能な金属(アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金等)であればよいが、本実施形態ではアルミニウム合金で形成されている。
底部10は、矩形を呈する板状部材である。周壁部11は、底部10の周縁部から矩形枠状に立ち上がる壁部である。周壁部11の角は直角でもよいが、本実施形態では丸面取り加工が施されている。底部10には、支柱12が立ち上がっている。支柱12の本数は特に制限されないが、本実施形態では2本になっている。支柱12の端面12aは、周壁部11の端面11aと同じ高さになっている。底部10及び周壁部11で凹部13が形成されている。なお、本実施形態のジャケット本体2は一体形成されているが、例えば、周壁部11を分割構成としてシール部材で接合して一体化してもよい。
底部10は、矩形を呈する板状部材である。周壁部11は、底部10の周縁部から矩形枠状に立ち上がる壁部である。周壁部11の角は直角でもよいが、本実施形態では丸面取り加工が施されている。底部10には、支柱12が立ち上がっている。支柱12の本数は特に制限されないが、本実施形態では2本になっている。支柱12の端面12aは、周壁部11の端面11aと同じ高さになっている。底部10及び周壁部11で凹部13が形成されている。なお、本実施形態のジャケット本体2は一体形成されているが、例えば、周壁部11を分割構成としてシール部材で接合して一体化してもよい。
封止体3は、ジャケット本体2の開口部を封止する板状部材である。封止体3の角は直角でもよいが、本実施形態では丸面取り加工が施されている。封止体3は、摩擦攪拌可能な金属であれば特に制限されないが、本実施形態ではアルミニウム合金を主に含んで形成されている。
次に、本実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。本実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法では、準備工程と、載置工程と、第一本接合工程と、第二本接合工程と、を行う。
準備工程は、ジャケット本体2及び封止体3を準備する工程である。ジャケット本体2及び封止体3は、製造方法については特に制限されないが、ジャケット本体2は、例えば、ダイキャストで成形する。封止体3は、例えば押出成形により成形する。
載置工程は、図3に示すように、ジャケット本体2に封止体3を載置する工程である。載置工程によって、周壁部11の端面11aと、封止体3の裏面3bとが突き合わされて第一突合せ部J1が形成される。第一突合せ部J1は、封止体3の周囲に沿って平面視矩形状に形成される。また、支柱12の端面12aと、封止体3の裏面3bとが突き合わされて第二突合せ部J2が形成される。周壁部11の側面11cと、封止体3の側面3cとは面一になる。なお、ジャケット本体2と封止体3とは溶接又は摩擦攪拌等により仮接合してもよい。
第一本接合工程は、図4及び図5に示すように、回転ツールFを用いて第一突合せ部J1を摩擦攪拌接合する工程である。第一本接合工程では、保持工程と、摩擦攪拌工程とを行う。保持工程は、一対の保持部22を備える挟持装置(治具)でジャケット本体2と封止体3とを両外側から押圧して挟持する。本実施形態では、保持部22と底部10との間、保持部22と封止体3との間にそれぞれ中間プレート21を介設している。保持部22は円柱状を呈し、その端面が中間プレート21,21にそれぞれ面接触する。中間プレート21を設けることで、保持部22の押圧力を分散させて、ジャケット本体2及び封止体3を確実に保持することができる。なお、中間プレート21は省略してもよい。
挟持装置の保持部22とジャケット本体2及び封止体3とは同期して回転又は平行移動する。つまり、当該挟持装置は、ジャケット本体2の底部10及び封止体3の表面3aを保持部22,22でそれぞれ押圧し挟持した状態で、ジャケット本体2及び封止体3を周方向に回転させるとともに、上下、左右及び前後方向に直線移動させることができる。
回転ツールFは、本実施形態では、水平方向及び上下方向に移動可能な摩擦攪拌装置に取り付けられている。なお、回転ツールFは、先端にスピンドルユニット等の回転駆動手段を備えたロボットアームに取り付けてもよい。
第一本接合工程では、まず、摩擦攪拌装置に取り付けられた回転ツールFを右回転させる。回転ツールFの位置は、本実施形態の第一本接合工程では摩擦攪拌装置に対して移動しないように固定されている。つまり、回転ツールFは摩擦攪拌装置に対して変位させず、回転ツールFに対してジャケット本体2及び封止体3側を移動させることで、回転ツールFをジャケット本体2及び封止体3に対して相対的に移動させることにより摩擦攪拌を行う。
次に、図4及び図5に示すように、ジャケット本体2及び封止体3を保持する保持工程を行い、挟持装置(治具)を用いてジャケット本体2及び封止体3を保持する。そして、挟持装置を操作して、封止体3の表面3a上に設定された開始位置SP1に回転ツールFを挿入して摩擦攪拌工程を行う。摩擦攪拌工程では、押入区間と、本区間と、離脱区間とを連続して摩擦攪拌を行う。
押入区間は、封止体3の表面3a上に設定された開始位置SP1から封止体3の表面3a上に設定された中間点S1までの区間である。本区間は、中間点S1から封止体3の表面3aの外周部を一周して中間点S1を通過した後、封止体3の表面3a上に設定された中間点S2までの区間である。離脱区間は、中間点S2から封止体3の表面3a上に設定された終了位置EP1までの区間である。中間点S1,S2は、封止体3の表面3aのうち、第一突合せ部J1に対応する位置に互いに離間して設定されている。また、開始位置SP1及び終了位置EP1は、封止体3の表面3aのうち、第一突合せ部J1に対応する位置よりも内側に設定されている。
押入区間では、開始位置SP1に回転ツールFの回転中心軸線Zが垂直となるように配置し、中間点S1に向けて相対移動させながら「所定の深さ」となるまで攪拌ピンF2徐々に押入していく。回転ツールFが中間点S1に達したら、そのまま本区間に移行する。回転ツールFの移動軌跡には塑性化領域W1が形成される。押入区間から本区間に回転ツールFを移行させる際には、途中で回転ツールFが停止したり、移動速度が低下したりしないように、平面視直線状又は円弧状に回転ツールFを移動させることが好ましい。
本区間では、図6に示すように、回転ツールFの攪拌ピンF2を封止体3及びジャケット本体2に接触させつつ、ショルダ部F1の底面F1aを封止体3の表面3aに接触させた状態で、回転ツールFを封止体3の表面3aの外周縁に沿って相対移動させる。本区間では、回転ツールFで周壁部11廻りを一周させる。ここで、前記の「所定の深さ」とは、本区間において中間点S1から一周させて中間点S2に達するまでの回転ツールFの攪拌ピンF2を差し込む深さを言う。本実施形態では、回転ツールFの攪拌ピンF2の平坦面F3が、周壁部11の端面11aに達するように設定している。ジャケット本体2及び封止体3の角部においては、保持部22,22を回転させながら回転ツールFを相対移動させる。塑性化領域W1の始端と終端とをオーバーラップさせて回転ツールFが中間点S2(図5参照)に達したら、そのまま離脱区間に移行する。本区間から離脱区間に回転ツールFを移行させる際には、途中で回転ツールFが停止したり、移動速度が低下したりしないように、平面視直線状又は円弧状に回転ツールFを移動させることが好ましい。
離脱区間では、図7に示すように、中間点S2から終了位置EP1に相対移動させながら、攪拌ピンF2を封止体3から徐々に引き抜いて終了位置EP1で離脱させる。第一本接合工程が終了したら、ジャケット本体2及び封止体3から挟持装置を離脱させる。
本実施形態では、本区間において、攪拌ピンF2の先端の平坦面F3が端面11aに達するようにしているが、攪拌ピンF2を封止体3のみと接触させた状態で摩擦攪拌接合を行ってもよい。この場合は、攪拌ピンF2と封止体3との摩擦熱によって第一突合せ部J1が塑性流動化して接合される。
本実施形態では、本区間において、攪拌ピンF2の先端の平坦面F3が端面11aに達するようにしているが、攪拌ピンF2を封止体3のみと接触させた状態で摩擦攪拌接合を行ってもよい。この場合は、攪拌ピンF2と封止体3との摩擦熱によって第一突合せ部J1が塑性流動化して接合される。
第二本接合工程は、図8に示すように、回転ツールFを用いて封止体3と支柱12とを摩擦攪拌接合する工程である。第二本接合工程では、回転ツールFを封止体3の表面3aから垂直に挿入し、第二突合せ部J2に沿って一周以上相対移動させた後、封止体3から回転ツールFを離脱させる。第二本接合工程では、攪拌ピンF2をジャケット本体2の支柱12及び封止体3に接触させるとともに、ショルダ部F1の底面F1aを封止体3の表面3aに接触させた状態で摩擦攪拌を行う。回転ツールFの移動軌跡には塑性化領域W2が形成される。
本実施形態では、攪拌ピンF2の平坦面F3が支柱12の端面12aに達するようにしているが、攪拌ピンF2と封止体3のみとが接触させた状態で摩擦攪拌接合を行ってもよい。この場合は、攪拌ピンF2と封止体3との摩擦熱によって第二突合せ部J2が塑性流動化して接合される。なお、第二本接合工程は省略してもよい。
以上説明した第一実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法によれば、ジャケット本体2の底部10と封止体3の表面3aとを一対の保持部22で両外側から保持した状態でジャケット本体2及び封止体3を回転又は移動させるため、第一本接合工程中に保持部22と回転ツールFとが干渉しない。つまり、ジャケット本体2と封止体3とを位置決めするための治具が、回転ツールFの移動ルート上に無いため回転ツールFの移動の妨げにならない。これにより、回転ツールFを駆動させるための装置等の付帯設備に費用を要せず、液冷ジャケット1を低コストで製造することができる。
また、第二本接合工程を行うことで、接合強度を高めることができる。第二本接合工程において、攪拌ピンF2を支柱12に接触させれば、第二突合せ部J2をより確実に接合することができる。
また、本実施形態では、第一本接合工程において、ショルダ部F1の底面F1aと封止体3の表面3aとを接触させ、塑性流動材を押さえながら摩擦攪拌を行うため、バリの発生を抑制することができる。また、第二本接合工程において、ショルダ部F1の底面F1aと封止体3の表面3aとを接触させ、塑性流動材を押さえながら摩擦攪拌を行うため、バリの発生を抑制することができる。
また、第一本接合工程では、第一突合せ部J1上での塑性化領域W1の始端と終端とをオーバーラップさせているため、液冷ジャケット1の気密性及び水密性を高めることができる。
なお、第一本接合工程は、第二本接合工程の後に行ってもよい。また、押入区間及び離脱区間では、回転ツールFの移動軌跡が円弧状となるように移動ルートを設定してもよい。換言すると、中間点S1,S2で回転ツールFの移動速度が低下したり、停止したりしないように開始位置SP1、終了位置EP1及び移動ルートを設定することが好ましい。これにより、開始位置SP1及び終了位置EP1で摩擦熱が過大となって接合不良となるのを防ぐことができる。
なお、本実施形態では、開始位置SP1及び終了位置EP1を封止体3の表面3aのうち、第一突合せ部J1に対応する位置よりも内側に設定したが、封止体3の表面3aのうち第一突合せ部J1に対応する位置に設定してもよい。
また、本実施形態の第一本接合工程では、回転ツールFの位置を摩擦攪拌装置に対して変位させないように設定したが、回転ツールFとジャケット本体2及び封止体3(挟持装置)とを両者とも移動させて摩擦攪拌接合を行ってもよい。回転ツールFをロボットアームに取り付けた場合は、当該ロボットアームとジャケット本体2及び封止体3(挟持装置)とを両者とも移動させて摩擦攪拌接合を行ってもよい。
また、第一本接合工程では、回転ツールFの回転速度を一定としてもよいが、可変させてもよい。第一本接合工程の押入区間において、開始位置SP1における回転ツールFの回転速度をV1とし、本区間における回転ツールFの回転速度をV2とすると、V1>V2としてもよい。回転速度のV2は、本区間において予め設定された一定の回転速度である。つまり、開始位置SP1では、回転速度を高く設定しておき、押入区間内で徐々に回転速度を低減させながら本区間に移行してもよい。
また、第一本接合工程の離脱区間において、本区間における回転ツールFの回転速度をV2、終了位置EP1において離脱させるときの回転ツールFの回転速度をV3とすると、V3>V2としてもよい。つまり、離脱区間に移行したら、終了位置EP1に向けて徐々に回転速度を上げながら封止体3から回転ツールFを離脱させてもよい。回転ツールFを封止体3に押し入れる際又は封止体3から離脱させる際に、前記のように設定することで、押入区間又は離脱区間時における少ない押圧力を、回転速度で補うことができるため、摩擦攪拌を好適に行うことができる。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法ついて説明する。図9に示すように、第二実施形態では、支柱12に支柱段差部14が設けられている点で第一実施形態と主に相違する。第二実施形態では、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
次に、本発明の第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法ついて説明する。図9に示すように、第二実施形態では、支柱12に支柱段差部14が設けられている点で第一実施形態と主に相違する。第二実施形態では、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
ジャケット本体2Aは、底部10と、周壁部11と、支柱12とで構成されている。底部10及び周壁部11は第一実施形態と同一である。支柱12の先端側には突出部15が形成されている。突出部15の形状は特に制限されないが、本実施形態では円柱状になっている。突出部15が形成されることにより、支柱12の先端には支柱段差部14が形成されている。支柱段差部14は、段差底面14aと、段差底面14aから立ち上がる段差側面14bが形成されている。段差底面14aは、周壁部11の端面11aと同じ高さ位置に形成されている。
封止体3Aには、孔部4が形成されている。孔部4は、支柱12の突出部15に対応する位置に形成されている。孔部4は、突出部15が挿入可能な大きさで形成されている。
第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法では、準備工程と、載置工程と、第一本接合工程と、第二本接合工程とを行う。準備工程は、ジャケット本体2A及び封止体3Aを準備する工程である。
第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法では、準備工程と、載置工程と、第一本接合工程と、第二本接合工程とを行う。準備工程は、ジャケット本体2A及び封止体3Aを準備する工程である。
載置工程は、図9に示すように、ジャケット本体2Aに封止体3Aを載置する工程である。載置工程では、周壁部11の端面11aに封止体3Aを載置しつつ、支柱12の突出部15を孔部4に挿入する。これにより、周壁部11の端面11aと封止体3の裏面3bとが突き合わされて第一突合せ部J1が形成される。また、段差側面14bと孔部4の孔壁4aとが突き合わされて段差側面突合せ部J12が形成される。また、段差底面14aと封止体3の裏面3bとが突き合わされて段差底面突合せ部J13が形成される。封止体3の厚さは適宜設定すればよいが、本実施形態では、段差側面14bの高さ寸法よりも大きくなっている。
第一本接合工程は、第一実施形態と同じである。第二本接合工程では、回転ツールFの攪拌ピンF2を段差側面突合せ部J12及び段差底面突合せ部J13に挿入し、段差側面突合せ部J12に沿って一周以上、回転ツールFを相対移動させる。また、ショルダ部F1の底面F1aを封止体3Aの表面3aに接触させた状態で摩擦攪拌を行う。本実施形態では、攪拌ピンF2の平坦面F3が段差底面14aに達するように挿入深さを設定している。回転ツールFの移動軌跡には塑性化領域W2が形成される。なお、第二本接合工程では、回転ツールFの平坦面F4を段差底面14aに接触しないように設定してもよい。
以上説明した本実施形態によっても第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。また、本実施形態の第二本接合工程によれば、支柱12の突出部15に封止体3Aの孔部4を挿入することで、ジャケット本体2Aと封止体3Aとの位置決めを容易に行うことができる。また、封止体3Aの板厚を、段差側面14bよりも大きく設定しているため、接合部が金属不足になるのを防ぐことができる。
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。
1 液冷ジャケット
2 ジャケット本体
3 封止体
3a 表面
11a 端面
22 保持部
F 回転ツール
F1 ショルダ部
F1a 底面
F2 攪拌ピン
J1 第一突合せ部
J2 第二突合せ部
J12 段差側面突合せ部
J13 段差底面突合せ部
SP1 開始位置
EP1 終了位置
W1 塑性化領域
W2 塑性化領域
2 ジャケット本体
3 封止体
3a 表面
11a 端面
22 保持部
F 回転ツール
F1 ショルダ部
F1a 底面
F2 攪拌ピン
J1 第一突合せ部
J2 第二突合せ部
J12 段差側面突合せ部
J13 段差底面突合せ部
SP1 開始位置
EP1 終了位置
W1 塑性化領域
W2 塑性化領域
Claims (8)
- 底部、前記底部の周縁から立ち上がる周壁部及び前記底部から立ち上がる支柱を有するジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、
摩擦攪拌で用いる回転ツールは、ショルダ部を備え、前記ショルダ部の底面の中央から垂下する攪拌ピンを備えており、
前記攪拌ピンは、先細りのテーパー状となっており、
前記ジャケット本体に前記封止体を載置することにより前記周壁部の端面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第一突合せ部を形成するとともに、前記支柱の端面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、
回転する前記回転ツールの前記攪拌ピンを前記封止体の表面から挿入し、前記攪拌ピンを前記封止体、又は前記周壁部及び前記封止体に接触させつつ、前記ショルダ部の底面を前記封止体の表面に接触させた状態で前記第一突合せ部に沿って所定の深さで前記周壁部の廻りに相対的に一周させて前記第一突合せ部を摩擦攪拌する第一本接合工程と、を含み、
前記第一本接合工程において、前記ジャケット本体の前記底部と前記封止体の表面とを両外側から一対の保持部で押圧して保持しつつ、前記保持部を用いて前記ジャケット本体及び前記封止体を回転又は平行移動させて前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌することを特徴とする液冷ジャケットの製造方法。 - 回転する前記回転ツールの前記攪拌ピンを前記封止体の表面から挿入し、前記攪拌ピンを前記封止体のみ、又は前記封止体及び前記支柱に接触させつつ前記ショルダ部の底面を前記封止体の表面に接触させた状態で前記回転ツールを相対的に移動させて前記第二突合せ部を摩擦攪拌する第二本接合工程と、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の液冷ジャケットの製造方法。
- 底部、前記底部の周縁から立ち上がる周壁部及び前記底部から立ち上がる支柱を有するジャケット本体と、前記支柱の先端が挿入される孔部を備えるとともに前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、
摩擦攪拌で用いる回転ツールは、ショルダ部を備え、前記ショルダ部の底面の中央から垂下する攪拌ピンを備えており、
前記攪拌ピンは、先細りのテーパー状となっており、
前記支柱の先端に段差底面と当該段差底面から立ち上がる段差側面とを有する支柱段差部を形成するとともに、前記支柱の段差底面を前記周壁部の端面と同一の高さ位置に形成し、前記封止体の厚みを前記段差側面よりも大きく形成する準備工程と、
前記ジャケット本体に前記封止体を載置することにより前記周壁部の端面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第一突合せ部を形成するとともに、前記支柱の段差側面と前記孔部の孔壁とを突き合せて段差側面突合せ部を形成し、前記支柱の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて段差底面突合せ部を形成する載置工程と、
回転する前記回転ツールの前記攪拌ピンを前記封止体の表面に挿入し、前記攪拌ピンを前記封止体、又は前記周壁部及び前記封止体に接触させつつ、前記ショルダ部の底面を前記封止体の表面に接触させた状態で前記第一突合せ部に沿って所定の深さで前記周壁部の廻りに相対的に一周させて前記第一突合せ部を摩擦攪拌する第一本接合工程と、を含み、
前記第一本接合工程において、前記ジャケット本体の前記底部と前記封止体の表面とを両外側から一対の保持部で押圧して保持しつつ、前記保持部を用いて前記ジャケット本体及び前記封止体を回転又は平行移動させて前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌することを特徴とする液冷ジャケットの製造方法。 - 回転する前記回転ツールの前記攪拌ピンを封止体の表面から挿入し、前記攪拌ピンを前記封止体及び前記支柱に接触させつつ前記ショルダ部の底面を少なくとも前記封止体の表面に接触させた状態で前記回転ツールを相対移動させて前記段差側面突合せ部を摩擦攪拌する第二本接合工程と、をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の液冷ジャケットの製造方法。
- 前記第一本接合工程後に前記第二本接合工程を行うことを特徴とする請求項2又は請求項4に記載の液冷ジャケットの製造方法。
- 前記第二本接合工程後に前記第一本接合工程を行うことを特徴とする請求項2又は請求項4に記載の液冷ジャケットの製造方法。
- 前記第一本接合工程では、所定の回転速度で前記回転ツールを回転させて摩擦攪拌を行い、
前記第一本接合工程において前記攪拌ピンを離脱させるとき、前記所定の回転速度よりも徐々に回転速度を上げながら終了位置まで移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。 - 前記第一本接合工程では、所定の回転速度で前記回転ツールを回転させて摩擦攪拌を行い、
前記第一本接合工程において前記攪拌ピンを挿入するとき、前記所定の回転速度よりも高い速度で前記攪拌ピンを回転させた状態で挿入し、徐々に回転速度を下げながら前記第一突合せ部まで移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
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