JP2021115000A - 1−ケストースを含有する固体糖の製造方法および固体糖 - Google Patents

1−ケストースを含有する固体糖の製造方法および固体糖 Download PDF

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剛弘 野田
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Abstract

【課題】1−ケストースを含む酵素反応液から、1−ケストースを高純度で含有し、かつ結晶割合が高い固体糖を、高い回収率で製造することができる製造方法を提供する。【解決手段】下記(a)〜(c)の工程を有する、1−ケストースを含有する固体糖を製造する方法;(a)1−ケストースを含有し、かつ、糖度が70°Bx以上である糖液を調製する工程、(b)1−ケストースの種晶を前記糖液に添加した後、(i)攪拌しながら50℃未満になるよう冷却する、または、(ii)練合する、ことによりスラリーを調製する工程、(c)前記スラリーを25℃超の温度環境下で乾燥させて、固体糖を得る工程。【選択図】図1

Description

本発明は、1−ケストースを含有する固体糖の製造方法および固体糖に関する。
1−ケストースは、1分子のグルコースと2分子のフルクトースとが結合した3糖である。スクロース(砂糖)と似た甘味質を有し、砂糖の三分の一程度の甘さを生じる一方で、砂糖の約半分のカロリーであること、摂取しても血糖値を上昇させにくいこと、アレルギー抑制(特許文献1)や、腸内酪酸の増加(特許文献2)、腸内炎症の予防や改善(特許文献3)等の生理機能を有することなどから、有用なオリゴ糖であることが知られている。
1−ケストースは、工業的には、一般に、微生物等に由来する糖転移酵素を用いてスクロースを基質として生成される。係る酵素反応液から固体状の1−ケストースを得る方法としては、従来より、晶析が行われている。晶析法によれば極めて高純度の1−ケストースを得ることができるが、回収率が30%程度と低く、製品コストが高くなってしまうという課題があった。
一方、他の方法として、ニストースでは、ニストースを60%以上含有するフラクトオリゴ糖液を濃縮した後、種晶を添加・分散して、当該糖液全部を結晶固化させる方法が開示されている(特許文献4)。本方法によれば、目的とするニストースの回収率は100%となる。
特許第4162147号公報 特許第6275931号公報 特許第6301024号公報 特公平5−17239号公報
本発明は、1−ケストースを含む酵素反応液から、高純度で高品質の固体状1−ケストースを高い回収率で製造する方法、および、高純度で高品質の固体状1−ケストースを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的のため鋭意研究した結果、特許文献2に記載のような糖液全部を結晶固化させる方法を1−ケストースに適用するにあたり、1−ケストースは水分と接した状態で加温する時間が長いと加水分解するため、最終製品における1−ケストース純度が下がってしまうという特有の課題を見出した。
また、1−ケストースを高純度で含む糖液は乾燥時に表層に膜を形成しやすく非常に乾燥効率が悪いため、固化する際に非晶質(アモルファス)を形成しやすいという特有の課題を見出した。この点、固体状の1−ケストースにおいてアモルファスが多い(結晶の含有割合が小さい)と、水分含有量が多く、また、吸湿性が高いために潮解しやすく、製品としての安定性に欠ける。
本発明者らはこれらの課題を解決するため、さらに研究した結果、1−ケストースを含有する糖液を所定の糖度以上に濃縮した後、スラリーを調製し、これを所定の温度に保って乾燥させることにより、1−ケストースの分解を抑制しつつ、乾燥だけでなく結晶化を促進できることを見出した。すなわち、これにより、原料糖液と同等の1−ケストース純度を有し、かつ、結晶の含有割合(結晶割合)が高い固体状の糖(固体糖)が得られることを見出した。また、固体糖において、結晶割合を30%以上とすると、水分含有量が小さく、吸湿性が低くて安定性に優れたものとなることを見出した。そこで、これらの知見に基づいて、下記の各発明を完成した。
(1)本発明に係る1−ケストースを含有する固体糖の製造方法は、下記(a)〜(c)の工程を有する;
(a)1−ケストースを含有し、かつ、糖度が70°Bx以上である糖液を調製する工程、
(b)1−ケストースの種晶を前記糖液に添加した後、
(i)攪拌しながら50℃未満になるよう冷却する、または、
(ii)練合する、
ことによりスラリーを調製する工程、
(c)前記スラリーを25℃超の温度環境下で乾燥させて、固体糖を得る工程。
(2)本発明に係る製造方法は、1−ケストースを75質量%以上の純度で含有し、かつ、1−ケストースの結晶を30質量%以上含有する固体糖を製造する方法であってよい。
(3)本発明に係る製造方法の工程(c)は、減圧環境下で行ってもよい。
(4)本発明に係る製造方法の工程(c)は、70℃以上160℃以下の温度環境下で行ってもよい。
(5)本発明に係る製造方法の工程(b)において、種晶の添加量は、終濃度で0.1〜50%(w/w)とすることができる。
(6)本発明に係る製造方法の工程(a)において、糖液の温度は、90℃以下とすることができる。
(7)本発明に係る固体糖は、下記(A)および(B)の物性を具備する;
(A)1−ケストースを75質量%以上95質量%以下の純度で含有する、
(B)1−ケストースの結晶を30質量%以上含有する。
本発明によれば、1−ケストースを含む酵素反応液から、1−ケストースを高純度で含有し、かつ結晶割合が高い固体糖を、高い回収率で製造することができる。すなわち、本発明によれば、1−ケストースの高い機能性を期待できるほど1−ケストースを多く含有し、かつ品質安定性に優れた固体糖を得ることができる。したがって、本発明によれば、安価で、厳格な保管条件を要せず、長期保存も可能で安定した品質の1−ケストースを、飲食物製造業や医薬品製造業など幅広い産業ないし市場に提供することができる。
結晶を多く含む固体糖(左側)およびアモルファスを多く含む固体糖(右側)の外観を示す写真である。 粉末の固体糖を偏光顕微鏡により観察した写真画像である。 100質量%、60質量%、30質量%、0質量%の割合で1−ケストースの結晶を含む固体糖について、X線回折により得られた散乱スペクトルである。 100質量%、60質量%、30質量%、0質量%の割合で結晶を含む固体糖について、示差走査熱量計により得られたDSC曲線である。 100質量%、60質量%、30質量%、0質量%の割合で結晶を含む固体糖(粉末状)を、25℃かつ湿度75%の環境下で7日間置いた後の性状を示す写真である。 160℃(試料1)または130℃(試料3)でエイジングを行った固体糖の粉末の写真画像である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、固体糖とは、固体の状態の糖をいう。固体糖は、比較的大きな塊であってもよく、粒状、粉状などの比較的小さなものであってもよい。また、糖液とは、糖を溶質として含有する液体をいう。
1−ケストースの純度とは、当該液体または固体に含まれる糖の総質量を100とした場合の、1−ケストースの質量%をいう。純度は、液体または固体の試料を、後述する実施例に例示するような高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供することにより求めることができる。
1−ケストースの結晶の含有割合(本発明においては、単に「結晶割合」という場合がある。)とは、1−ケストースを含有する固体の総質量を100とした場合の、結晶の状態の1−ケストースの質量%をいう。結晶割合は、当該固体の試料を、後述する実施例に例示するようなX線解析、または示差走査熱量計(DSC)に供することにより求めることができる。
糖度(Brix値)は、試料をBrix糖用屈折計で測定したときの示度であり、単位を「°Bx」とするBrix値で表す。例えば、「糖度が70°Bx以上」の糖液とは、1−ケストースと1−ケストース以外の糖とを合わせた糖分の含有量が70°Bx、または70°Bxより大きい糖液を指す。
スラリーとは、液体中に固体粒子が懸濁している流動体のことをいう。本発明のスラリーは、1−ケストースの固体粒子が懸濁している流動体をいう。
種晶(種結晶)は、溶質の結晶化あるいは固体化を開始あるいは促進させるために溶液に添加する、結晶を含む固体物質の小片をいう。そして、1−ケストースの種晶とは、1−ケストースを高純度で含有する種晶をいう。1−ケストースの種晶における1−ケストースの純度は、例えば、75質量%以上、80質量%以上、82質量%以上、83質量%以上、85質量%以上、87質量%以上、あるいは90質量%以上を例示することができる。
本発明に係る1−ケストースを含有する固体糖の製造方法は、下記(a)〜(c)の工程を有する;
(a)1−ケストースを含有し、かつ、糖度が70°Bx以上である糖液を調製する工程(糖液調製工程)、
(b)1−ケストースの種晶を前記糖液に添加した後、
(i)攪拌しながら50℃未満になるよう冷却する、または、
(ii)練合する、
ことによりスラリーを調製する工程(スラリー調製工程)、
(c)前記スラリーを25℃超の温度環境下で乾燥させて、固体糖を得る工程(エイジング工程)。
(a)の糖液調製工程は、高品質の固体糖を得るための原料となる糖液(原料糖液)を調製する工程である。本工程では、1−ケストースを含有する糖液を糖度が70°Bx以上になるまで水分を除去して濃縮していく。これにより、糖度が70°Bx以上である糖液を調製する。濃縮は、簡便には糖液を加温し、煮詰めていくことにより行うことができる。
本工程(a)における糖液の温度は、製造装置などに応じて適宜設定することができるが、製造時の処理のし易さや操作性を担保するためには50℃超が好ましく、51℃以上、52℃以上、53℃以上、54℃以上、55℃以上、56℃以上、57℃以上、58℃以上、59℃以上または60℃以上がより好ましい。また、種晶の溶解を抑制し、種晶添加により結晶形成を促す効果を担保するためには、糖液の温度の上限は95℃未満が好ましく、94℃以下、93℃以下、92℃以下、91℃以下または90℃以下がより好ましい。
「1−ケストースを含有する糖液」は、後述する実施例に示すように、スクロースを基質として酵素反応を行うことにより、得ることができる。具体的には、例えば、特開昭58−201980号公報に開示されているような糖転移酵素(β−フルクトフラノシダーゼ)をスクロース溶液に添加し、37℃〜50℃で20時間程度静置することにより酵素反応を行う。これにより得られた酵素反応液を、「1−ケストースを含有する糖液」として用いることができる。
なお、「1−ケストースを含有する糖液」は、1−ケストースを主成分として含有する糖液、あるいは、1−ケストースを所定の純度以上含有する糖液であることが好ましい。そうであれば、1−ケストースの高い機能性を期待できるほど1−ケストースを多く含有する固体糖を得ることができるからである。この場合の「1−ケストースを主成分として含有する糖液」とは、当該液体に含まれる各糖の質量割合を比較した場合に、1−ケストースが占める質量割合が最も大きい液体をいう。また、「1−ケストースを所定の純度以上含有する糖液」は、例えば、1−ケストースの純度が50質量%以上、52質量%以上、54質量%以上、56質量%以上、58質量%以上、60質量%以上、62質量%以上、64質量%以上、66質量%以上、68質量%以上、70質量%以上、72質量%以上、74質量%以上または75質量%以上である糖液を例示することができる。
1−ケストースを主成分として含有する糖液、あるいは、1−ケストースを所定の純度以上含有する糖液は、前述の酵素反応液について、1−ケストースと他の糖(ブドウ糖、果糖、ショ糖、4糖以上のオリゴ糖)とを分離して精製することにより得ることができる。すなわち、酵素反応液を特開2000−232878号公報で開示されているようなクロマト分離法に供し、1−ケストースを含有するフラクションを分取する。これにより、1−ケストースを主成分として含有する糖液、あるいは、1−ケストースを所定の純度以上含有する糖液を得ることができる。
(b)のスラリー調製工程は、原料糖液から、1−ケストースの固体粒子が懸濁している流動体(スラリー)を調製する工程である。本工程では、高糖度の原料糖液に1−ケストースの種晶を添加した後、下記(i)または(ii)の操作を行うことにより、過飽和となった1−ケストースを析出させてスラリーを調製する;(i)攪拌しながら冷却する、(ii)練合する。
1−ケストースの種晶の添加量としては、例えば、終濃度が0.1〜50%(w/w)、1〜50%(w/w)、2〜50%(w/w)、3〜50%(w/w)、4〜50%(w/w)、5〜50%(w/w)、7〜50%(w/w)または10〜50%(w/w)となる添加量を例示することができる。
なお、1−ケストースの種晶は、簡便には、市販の試薬1−ケストースを用いることができる。また、1−ケストースを高純度で含有する高糖度の糖液を、定法に従って晶析して得ることもできる。あるいは、特開平4−235192号公報第3頁上段右欄に記載されているように、当該糖液をメタノールに溶解させて、1−ケストースの結晶を析出させ、これを種晶として用いてもよい。
(i)の撹拌しながら冷却する場合は、50℃未満になるまで冷却することが好ましい。50℃以上では、糖液中で分子振動が起こりアモルファスを形成しやすい。50℃未満とすることより糖液中の分子振動を抑制し、結晶形成を促すことができる。
(ii)の練合は、練り合わせることをいい、市販の混練機(ニーダー)や混練押出機(エクストルーダー)を用いて行うことができる。すなわち、本工程においては、1−ケストースの種晶を添加した糖液を、市販のニーダーやエクストルーダーに投入して、練合することによりスラリーを調製することができる。羽根の形状や回転数、温度条件、圧力条件、練合時間などは、投入する糖液の量や温度、糖度、種晶の添加量などにより適宜設定することができる。
(c)のエイジング工程は、スラリー内での結晶化を促進するとともに当該スラリーを乾燥させて、固体糖を得る工程である。本工程では、スラリーを常温(25℃)より高い温度環境下に保った状態で乾燥させる。これにより、乾燥効率が高くなって結晶化が促進され、結晶割合を高くすることができる。本工程における温度として、具体的には、25℃超、30℃以上、35℃以上、38℃以上、40℃以上、45℃以上、48℃以上、50℃以上、52℃以上、54℃以上、56℃以上、58℃以上、60℃以上、62℃以上、64℃以上、66℃以上、68℃以上、70℃以上、72℃以上、74℃以上、78℃以上、80℃以上、82℃以上、84℃以上、86℃以上、88℃以上、90℃以上を例示することができる。また、1−ケストースの分解を抑制するとともに、着色を抑制して白い固体糖を得る観点から、温度の上限は200℃以下、195℃以下、190℃以下、185℃以下、180℃以下、175℃以下、170℃以下、165℃以下または160℃以下を例示することができる。
エイジングは、常圧環境下で行ってもよく、減圧環境下で行ってもよい。なお、本発明において、減圧環境とは、標準大気圧(1気圧、101325Pa、101.325kPa)よりも低い圧力環境をいう。減圧環境という場合の圧力として、具体的には、101kPa以下、100kPa以下、90kPa以下、80kPa以下、70kPa以下、60kPa以下、50kPa以下、40kPa以下、30kPa以下、20kPa以下、10kPa以下、0.001〜101kPaあるいは0.01〜100kPaを例示することができる。
エイジングの具体的な手法としては、例えば、下記(ア)〜(ウ)を例示することができる。
(ア)静置乾燥法
練合により調製したスラリーをトレイに分取し、40〜100℃、好ましくは50〜100℃の環境下で、1時間以上静置する。トレイを減圧環境下に置くことにより、乾燥時間が短縮されて効率がよく、好ましい。
(イ)連続式真空乾燥法(ドラムドライ法、ベルトドライ法など)
30〜120℃に加温された連続式真空乾燥装置(真空式ドラムドライヤーや真空ベルト乾燥機など)に、スラリーを40℃以上に加温した状態で送液し、減圧環境下で乾燥を行う。ドラムドライヤーは様々な形状の物が存在するが、ダブルドラム式の乾燥機を用いると、乾燥時の問題点である表層のみの乾燥が回避されるためより好ましい。
(ウ)噴霧乾燥(スプレードライ)法
スラリーを40℃以上に加温した状態で送液して噴霧乾燥を行う(結晶品温は30〜120℃)。1−ケストースは高温では付着などが起こりやすいため、40〜80℃の範囲での乾燥が好ましい。
次に、本発明は、下記(A)および(B)の物性を具備する固体糖を提供する;
(A)1−ケストースを75質量%以上95質量%以下の純度で含有する、
(B)1−ケストースの結晶を30質量%以上含有する。
すなわち、本発明に係る固体糖は、上記物性を具備することから明かなように、高純度で1−ケストースを含有し、結晶割合が高い。したがって、水分含有量が低くて吸湿性が小さく、品質安定性に優れるものである。
本発明の固体糖は、上述した、本発明に係る1−ケストースを含有する固体糖の製造方法において、原料として1−ケストースを75質量%以上95質量%以下の純度で含有する糖液を用いることにより、製造することができる。すなわち、従来の晶析法と異なり、ほぼ100%の高い回収率を達成できることから、低コストで効率よく製造することができる。
そして、本発明の固体糖は、75質量%以上という高純度で1−ケストースを含有することから、アレルギー抑制等の1−ケストースの生理機能を期待して、これを用いることができる。その他、摂取しても血糖値を上昇させにくく、砂糖と似た良好な甘味質を有するという1−ケストースの性質も期待できる。よって、健康的な甘味料などとしても用いることができる。
以下、本発明について、各実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。本実施例においては、別段の記載のない限り「%」は質量百分率(質量%)を意味する。
<試験方法>
本実施例は、特段の記載のない限り、下記の試験方法により行った。
(1)1−ケストースを含有する原料糖液の調製
特公昭59−53834号公報(第2〜3頁)および特開2010−273580号公報(段落[0096])に記載の方法に準じて酵素反応を行い、1−ケストースを生成した。具体的には、まず、アスペルギルス・ニガーACE−2−1株(寄託番号:FERM P−5886)を酵素生産培地(5%スクロース、0.7%麦芽エキス、1%ポリペプトン、0.5%カルボキシメチルセルロース、0.3%NaCl)に植菌し、28℃で3日間培養した後、菌体を超音波で破砕して、これを粗酵素液とした。45°Bxのスクロース水溶液(pH7.5)に、粗酵素液をスクロース1gあたり2.5単位の割合で添加して、40℃にて24時間反応させ、これを酵素反応液とした。酵素反応液を100℃で10分間加熱して酵素反応を停止させた後、ろ過してろ液を回収した。ろ液を定法により活性炭で脱色し、さらにイオン交換樹脂で脱塩した。
続いて、特開2000−232878号公報(段落[0045]〜[0056]、実施例2および実施例3)に記載の方法に準じて、ナトリウム型のカチオンイオン交換樹脂が充填されたカラムを用いたクロマトグラフィーを2段階にわたって行い、1−ケストースを含有するフラクションを分取して、これを原料糖液(1−ケストースの純度80〜85%)とした。
(2)固体糖の基本製造工程
工程1.原料糖液を60〜90℃に加温して濃縮することにより、糖度を60〜90°Bxに調整した。
工程2.以下(i)または(ii)のいずれかの方法によりスラリーを調製した。
(i)攪拌冷却法:工程1で濃縮した原料糖液(60〜90℃)に、終濃度で0.01〜50%(w/w)となるよう1−ケストースの種晶を添加した後、攪拌しながら50℃未満まで冷ますことによりスラリーを調製した。
(ii)練合法:工程1で濃縮した原料糖液(60〜90℃)に、終濃度で0.1〜50%(w/w)となるよう1−ケストースの種晶を添加した後、ニーダー(卓上ニーダー PVN-5型、入江商会)を用いて回転数25〜60回転/分(rpm)、温度90〜100℃(容易に練合できる程度に糖液の粘度が低くなる温度)で練合する、または、エクストルーダーを用いて練合することにより、スラリーを調製した。
工程3.以下(ア)、(イ−1)または(イ−2)のいずれかの方法によりエイジング(結晶化促進および乾燥)を行って、固体糖を得た。
(ア)静置乾燥法:工程2(ii)のスラリー(ニーダーまたはエクストルーダーを用いて練合したスラリー)を、トレイに分取して乾燥機に入れ、エイジングを行った。エイジングの条件は下記のとおりとした。装置:東京理化器械株式会社 真空定温乾燥機、温度20〜120℃、常圧または減圧(1.325kPa(−0.1MPa;ゲージ圧))、処理時間:30分以上。
(イ−1)連続式真空乾燥法(ドラムドライ法):工程2のスラリーを40℃以上に加温した状態で真空式ドラムドライヤーに送液してエイジングを行った。エイジング条件は下記のとおりとした。装置:カツラギ工業株式会社 真空式ドラムドライヤー(型式:ダブルドラム型、ドラムサイズφ160×L200、ドラム表面:0.1m×2本)、熱媒温度83−94℃、ドラム回転数2rpm、機内圧力:3.2−3.4kPa、原液処理量:11.92−29.08kg/m・hr。
(イ−2)連続式真空乾燥法(ベルトドライ法):工程2のスラリーを40℃以上に加温した状態で真空ベルト乾燥機に送液してエイジングを行った。エイジング条件は下記のとおりとした。装置:日阪製作所 真空ベルト乾燥試験機 SBD-MINI、機内圧力:0.8〜1.0kPa、機内温度35〜160℃、処理時間15〜34分。
工程4.固体糖をミキサーにて粉砕して粉末とした。
(3)1−ケストース純度の確認
試料を下記の条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供して、糖組成(試料に含まれるグルコース、フルクトース、スクロース、ケストースおよびニストースの別ならびにそれらの含有割合)を確認した。各糖の含有割合は、検出された全ピークの面積の総和に対する各ピークの面積の割合として、百分率で算出した。これにより求めたケストースの含有割合(%)を、1−ケストース純度とした。
《HPLCの条件》
カラム:Shodex SUGAR KS-802 HQ(8.0mm ID x 300mm) 2本
溶離液:高純水
流速:1.0mL/分
カラム温度:50℃
注入量:200μL
検出:示差屈折率検出器Shodex RI
(4)結晶の含有割合の確認:外観観察
固体糖について、目視により結晶の含有割合を確認した。図1に示すように、固体糖に結晶が多く含まれている場合、結晶構造は規則的かつ緻密で可視光を透過しにくいため、白色の外観を呈する。一方、固体糖にアモルファスが多く含まれている場合、アモルファス構造は不規則で疎く可視光を透過しやすいため、透明ないし半透明の外観を呈する。このことに基づいて、目視により結晶の含有割合を確認した。
また、粉末状の固体糖を偏光顕微鏡により観察して、結晶の含有割合を確認した。偏光顕微鏡の観察画像では、図2に示すように、結晶の粒子は複屈折性を持つため光を帯び、白色の粒子像として観察される。一方、アモルファスの粒子は複屈折性を持たないため、透明な粒子像として観察される。すなわち、結晶とアモルファスとの混合物では、光を帯びた白色の粒子の数が多いほど(透明な粒子の数が少ないほど)、結晶の含有割合が大きいといえる。このことから、両者の粒子像数の多寡をもとに、固体糖における結晶割合を推定した。
(5)結晶の含有割合の確認:X線回折法
固体糖について、X線回析法により結晶の含有割合を確認した。図3に、結晶割合が100質量%、60質量%、30質量%および0質量%の場合の散乱スペクトルを示す。結晶割合が100質量%、60質量%および30質量%の場合のスペクトルに示すように、結晶では2θ=13、15.8、18.5、20.6、24付近に特有のピークが現れる。これに対して、結晶割合が0%の場合のスペクトルに示すように、アモルファスでは上記ピークが現れない。また、ピークの強度(高さ)は結晶割合に比例して高くなる。すなわち、結晶とアモルファスとの混合物では、結晶割合が大きいほど、上記ピークの強度が大きくなる。このことから、当該ピーク強度をもとに、固体糖における結晶割合を算出した。
なお、測定条件は下記のとおりとした。サンプル:200μm以下に整粒した粉末状の固体糖、装置:株式会社リガクX線回折装置 Ultima IV、走査範囲:3.0°〜70.0°、走査速度:2°/分、サンプルディッシュ回転数:60rpm。
(6)結晶の含有割合の確認:示差走査熱量計(DSC)
示差走査熱量計(DSC)により、固体糖における結晶割合を確認した。図4に、結晶割合が100質量%、60質量%、30質量%および0質量%の場合のDSC曲線を示す。結晶割合が100質量%、60質量%および30質量%の場合のDSC曲線に示すように、結晶では180℃を超えるまで吸熱が顕著に小さく、199℃付近に融解による吸熱ピークが現れる。これに対して、結晶割合が0%の場合のDSC曲線に示すように、アモルファスでは0〜200℃を超えるまで比較的大きい一定程度の吸熱が続き、210℃付近でさらに大きい吸熱がある。そして、結晶とアモルファスの混合物では、アモルファスの含有割合が大きいほど、199℃付近の吸熱ピークが小さくなることから、当該ピークの大きさをもとに、固体糖における結晶割合を算出した。
なお、測定条件は下記のとおりとした。装置:日立ハイテクサイエンス株式会社 DSC6220、測定範囲:30℃〜250℃、昇温速度:5〜10℃/分。
<実施例1>結晶割合の検討:吸湿性試験
結晶割合が100質量%、60質量%、30質量%および0質量%の固体糖(粉末状、いずれも1−ケストースの純度は85%)(各試料において検体は3ずつ)を、25℃かつ湿度75%の環境に置き、試験開始時、1時間後、24時間後、3日後および7日後に重量を測定した。試験開始時の重量を100%として、各時点の重量の増加分を百分率で算出し、これを吸湿による増加率とした。増加率は、試料ごとに3検体の平均値を求めた。その結果を表1に示す。また、7日後には、固体糖の性状を観察して写真を撮影した。その結果を図5に示す。
Figure 2021115000
表1に示すように、結晶割合が100質量%、60質量%および30質量%の粉末糖はいずれも、7日後の増加率が4%未満と顕著に小さかった。一方、結晶割合が0質量%の粉末糖は、7日後の増加率が22%を超えており、顕著に大きかった。また、表1および図5に示すように、7日後の性状は、結晶割合が100質量%、60質量%および30質量%の固体糖はいずれも粉末状態を維持していたのに対して、結晶割合が0質量%の固体糖は潮解し、液体の状態になっていた。この結果から、結晶割合を30質量%以上とすれば、吸湿性が低く、品質安定性に優れる固体糖が得られることが明らかになった。
<実施例2>結晶割合の検討:水分含有量の評価
結晶割合が100質量%、60質量%、30質量%および0質量%の固体糖(粉末状、いずれも1−ケストースの純度は85%)(各試料において検体は3ずつ)の重量を測定した後、80℃で0.7kPa以下の減圧下に5時間置くことにより乾燥させた。その後、再度、重量を測定した。乾燥前の重量を100%として、乾燥後の重量を百分率で算出した。100%から乾燥後の重量の百分率を減じて、これを含水量率とした。含水量率は、試料ごとに3検体の平均値を求めた。その結果を表2に示す。
Figure 2021115000
表2に示すように、結晶割合が100質量%、60質量%および30質量%の固体糖はいずれも、含水量率が2%未満と顕著に小さかった。一方、結晶割合が0質量%の固体糖は、含水量率が3%を超えており、顕著に大きかった。一般に、固体物質の水分含有量が大きいと、熱感受性が高くなり、吸湿性が大きくなる。これに対して、水分含有量が小さいと、熱感受性は小さく、吸湿性も抑えられることから、固体物質としての安定性は高いといえる。したがって、この結果から、結晶割合を30質量%以上とすれば、水分含有量が小さく安定性が高い固体糖が得られることが明らかになった。
<実施例3>製造条件の検討:原料糖液の温度
試験方法(2)の工程1に記載の方法により、原料糖液を加温して濃縮し、糖度が80°Bxで、温度が50℃、60℃、70℃、80℃、90℃または95℃の原料糖液を得た。これらの糖液の粘度を単一円筒形回転粘度計(B型粘度計、ブルックフィールド型粘度計)を用いて、200回転/分で測定した。その結果を表3に示す。
Figure 2021115000
表3に示すように、原料糖液の温度が60℃、70℃、80℃および90℃では粘度が比較的小さかった。そして、これらの粘度ではポンプによる送液に支障が無かった。これに対して、50℃では粘度が顕著に大きかった。そして、この粘度ではポンプにより安定した送液ができなかった。すなわち、製造時の処理のし易さや操作性の観点から、原料糖液の温度は50℃超が好ましいことが明らかになった。
また、90℃および95℃の原料糖液に終濃度で5%となるよう1−ケストースの種晶を添加して観察した。その結果、95℃では種晶が溶解してしまったが、90℃では残存している様子が観察された。すなわち、90℃を超えると種晶添加により結晶形成を促すことができないと考えられた。この結果から、原料糖液の温度は90℃以下が好ましいことが明らかになった。
以上の結果から、結晶割合の高い固体糖を効率的に製造するためには、原料糖液の温度は50℃超90℃以下が好ましいことが明らかになった。
<実施例4>製造条件の検討:原料糖液の糖度
(1)静置乾燥法での検討
試験方法(2)に記載の方法により試料1〜4の固体糖を製造した。ただし、工程1の原料糖液の糖度を、90°Bx(試料1)、80°Bx(試料2)、70°Bx(試料3)および60°Bx(試料4)とした。工程2のスラリー調製は練合法(種晶の添加量は20%(w/w))で行った。また、工程3のエイジングは静置乾燥法(75℃、常圧で12時間静置)で行った。製造した固体糖について、結晶割合および糖組成(1−ケストース純度)を測定した。その結果を表4に示す。
Figure 2021115000
表4に示すように、結晶割合は、試料1〜3では30%以上であったが、試料4は30%よりも低かった。また、1−ケストース純度は、試料1〜3では78%以上の高純度であったが、試料4は73.9%と低く、原料糖液と比較して10%以上低下していた。これらの結果から、製造過程における1−ケストースの分解を抑制しつつ結晶割合の高い固体糖を得るためには、原料糖液の糖度を70°Bx以上とすることが好ましいことが明らかになった。
(2)ベルトドライ法での検討
試験方法(2)に記載の方法により試料1〜4の固体糖を製造した。ただし、工程1の原料糖液の糖度を、70°Bx(試料1)、75°Bx(試料2)、80°Bx(試料3)および85°Bx(試料4)とした。工程2のスラリー調製は晶析法(種晶の添加量は20%(w/w))で行った。また、工程3のエイジングはベルトドライ法(機内圧力:0.7〜1.0kPa、機内温度:130℃から110℃まで段階的に解熱、処理時間:20分(130℃7分、120℃7分および110℃6分))で行った。製造した固体糖について、含水量率(実施例2に記載の方法により測定)、結晶割合および1−ケストース純度を測定した。その結果を表5に示す。
Figure 2021115000
表5に示すように、1−ケストース純度は、試料1〜4のいずれも85%前後の高純度であった。また、含水量率は、試料1〜4のいずれも2%未満と顕著に小さかった。結晶割合は、試料1〜4のいずれも30%を超えていたが、試料1では試料2〜4と比較してやや小さい値であった。これは、原料糖液の糖度が70°Bxを下回ると、種晶が溶解しやすくなり、結晶形成が促されないためと考えられた。この結果から、結晶割合の高い固体糖を得るためには、原料糖液の糖度を70°Bx以上とすることが好ましいことが明らかになった。
<実施例5>製造条件の検討:種晶の添加量
(1)静置乾燥法での検討
試験方法(2)に記載の方法により試料1〜4の固体糖を製造した。ただし、工程1の原料糖液の糖度は90°Bxとし、工程2のスラリー調製は練合法(種晶の添加量は20%(w/w)(試料1)、10%(w/w)(試料2)、5%(w/w)(試料3)または0%(w/w)(試料4))で行った。また、工程3のエイジングは静置乾燥法(75℃、常圧で12時間静置)で行った。製造した固体糖について、結晶割合および糖組成(1−ケストース純度)を測定した。その結果を表6に示す。
Figure 2021115000
表6に示すように、1−ケストース純度は、試料1〜3では原料糖液と同等であったが、試料4では原料糖液よりも僅かに低かった。また、試料1〜3では39〜75質量%の割合で結晶が含まれていたのに対して、試料4では結晶割合が0%であり、結晶が含まれていなかった。この結果から、製造過程における1−ケストースの分解を抑制するとともに結晶形成を促すためには、種晶を添加することが好ましいことが明らかになった。
(2)ベルトドライ法での検討
試験方法(2)に記載の方法により試料1〜4の固体糖を製造した。ただし、工程1の原料糖液の糖度は85°Bxとし、工程2のスラリー調製は練合法(種晶の添加量は0.1%(w/w)(試料1)、0.5%(w/w)(試料2)、1.0%(w/w)(試料3)または5.0%(w/w)(試料4))で行った。また、工程3のエイジングはベルトドライ法(機内圧力:0.7〜1.0kPa、機内温度:140℃〜110℃、処理時間:15〜25分)で行った。製造した固体糖について、含水量率(実施例2に記載の方法により測定)、結晶割合および1−ケストース純度を測定した。その結果を表7に示す。
Figure 2021115000
表7に示すように、1−ケストース純度は試料1〜4のいずれも85%を超える高純度であった。また、含水量率は、試料1〜4のいずれも1%未満と顕著に小さかった。結晶割合は、試料1〜4のいずれも30%を超えていたが、試料1では試料2〜4と比較してやや小さい値であった。この結果から、結晶割合の高い固体糖を得るためには、スラリー調製時に種晶を0.1%(w/w)以上となるよう糖液に添加することが好ましいことが明らかになった。
<実施例6>製造条件の検討:エイジング温度
(1)静置乾燥法での検討
試験方法(2)に記載の方法により試料1〜3の固体糖を製造した。ただし、工程1の原料糖液の糖度は90°Bxとし、工程2のスラリー調製は練合法(種晶の添加量は20%(w/w))で行った。また、工程3のエイジングは静置乾燥法(常圧で12時間静置、温度は75℃(試料1)、50℃(試料2)または室温(約25度)(試料3))で行った。製造した固体糖について、結晶割合を測定した。その結果を表8に示す。
Figure 2021115000
表8に示すように、結晶割合は、試料1および試料2では45〜62質量%であったのに対して、試料3では5質量%と比較的低かった。この結果から、1−ケストースの分解を抑制するとともに結晶形成を促すためには、エイジング温度は室温より高いことが好ましいことが明らかになった。
(2)ベルトドライ法での検討
試験方法(2)に記載の方法により試料1〜6の固体糖を製造した。ただし、工程1の原料糖液の糖度は85°Bxとし、工程2のスラリー調製は練合法(種晶の添加量は20%(w/w))で行った。また、工程3のエイジングはベルトドライ法(機内圧力:0.7〜1.0kPa、機内温度および処理時間:160℃で15分(試料1)、140℃で15分(試料2)、130℃で15分(試料3)、110℃で15分(試料4)、90℃で20分(試料5)または70℃で30分(試料6))で行った。製造した固体糖について、結晶割合および1−ケストース純度を測定した。その結果を表9に示す。また、試料1および試料3の固体糖粉末の写真を図6に示す。
Figure 2021115000
表9に示すように、1−ケストース純度は、試料1〜6のいずれも85%を超える高純度であったが、試料1では試料2〜6と比較してやや小さい値であった。一方、結晶割合は、試料1〜6のいずれも30%を超えていたが、試料6では試料1〜5と比較してやや小さい値であった。また、図6に示すように、試料1では固体糖がわずかに黄色ないし茶色に着色している様子が観察されたが、試料2〜6では固体糖に着色は見られず、ほぼ白色であった。これらの結果から、1−ケストースの分解を抑制し、固体糖の着色を抑制するとともに結晶形成を促して結晶割合の高い固体糖を得るためには、スラリーを70℃以上160℃以下の温度環境下で乾燥させることが好ましいことが明らかになった。
<実施例7>製造条件の検討:ドラムドライ法によるエイジング
試験方法(2)に記載の方法により試料1〜3の固体糖を製造した。ただし、工程1の原料糖液の糖度は90°Bxとし、工程2のスラリー調製は練合法(種晶の添加量は20%(w/w))で行った。また、工程3のエイジングはドラムドライ法(熱媒温度83℃および機内圧力3.2kPa(試料1)、熱媒温度83℃および機内圧力3.4kPa(試料2)、熱媒温度94℃および機内圧力3.4kPa(試料3))で行った。製造した固体糖について、結晶割合および1−ケストースの純度を測定した。また、実施例2に記載の方法により含水量率を測定した。エイジング条件および固体糖の評価結果を表10に示す。
Figure 2021115000
表10に示すように、試料1〜3のいずれも、結晶割合は50%以上と高く、1−ケストースの純度も80%以上と高く、含水量率は3%未満の小さい値であった。この結果から、エイジング工程をドラムドライ法により行うことで、1−ケストースの純度が高く、かつ結晶割合の大きい固体糖が得られることが明らかになった。

Claims (7)

  1. 下記(a)〜(c)の工程を有する、1−ケストースを含有する固体糖を製造する方法;
    (a)1−ケストースを含有し、かつ、糖度が70°Bx以上である糖液を調製する工程、
    (b)1−ケストースの種晶を前記糖液に添加した後、
    (i)攪拌しながら50℃未満になるよう冷却する、または、
    (ii)練合する、
    ことによりスラリーを調製する工程、
    (c)前記スラリーを25℃超の温度環境下で乾燥させて、固体糖を得る工程。
  2. 1−ケストースを75質量%以上の純度で含有し、かつ、1−ケストースの結晶を30質量%以上含有する固体糖を製造する方法である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記工程(c)が減圧環境下で行われる、請求項1または請求項2に記載の方法。
  4. 前記工程(c)が70℃以上160℃以下の温度環境下で行われる、請求項3に記載の方法。
  5. 前記工程(b)において、前記種晶の添加量が、終濃度で0.1〜50質量%である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記工程(a)において、糖液の温度が90℃以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 下記(A)および(B)の物性を具備する固体糖;
    (A)1−ケストースを75質量%以上95質量%以下の純度で含有する、
    (B)1−ケストースの結晶を30質量%以上含有する。
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