以下、図面を参照して各実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成を示すブロック図であり、図2は、X線診断装置におけるコンソール装置及び医用画像処理装置の構成を示すブロック図である。図3は、学習済みモデルの一例を説明するための模式図である。
ここで、X線診断装置1は、撮像装置10、寝台装置50、コンソール装置70及びモニタ80を備えている。撮像装置10は、高電圧発生装置11、X線発生部12、X線検出器13、Cアーム14及びCアーム制御装置142を備えている。撮像装置10は、被検体にX線を照射してX線画像を撮像する撮像部の一例である。詳しくは、撮像装置10は、単一エネルギー又は複数エネルギーのX線照射により被検体のX線画像を撮像する撮像部の一例である。
高電圧発生装置11は、X線管の陰極から発生する熱電子を加速するために、陽極と陰極の間に印加する高電圧を発生させてX線管へ出力する。
X線発生部12は、被検体Pに対してX線を照射するX線管と、X線の照射野を限定したり、照射野のうちの一部についてX線を減衰させたりする機能を有するX線絞りとを備えている。
X線管は、X線を発生する。具体的には、X線管は、熱電子を発生する陰極と、陰極から飛翔する熱電子を受けてX線を発生する陽極とを保持する真空管である。例えば、X線管には回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。X線管は高圧ケーブルを介して高電圧発生装置11に接続されている。陰極と陽極との間には、高電圧発生装置11により管電圧が印加される。管電圧の印加により陰極から陽極に向けて熱電子が飛翔する。陰極から陽極に向けて熱電子が飛翔することにより管電流が流れる。高電圧発生装置11からの高電圧の印加及びフィラメント電流の供給により、陰極から陽極に向けて熱電子が飛翔し、熱電子が陽極に衝突することによりX線が発生される。
X線絞りは、X線管とX線検出器13の間に位置し、一般的には、絞り羽根、付加フィルタ及び補償フィルタを備えている。X線絞りは、開口領域外のX線を遮蔽することにより、X線管が発生したX線を、被検体Pの関心領域にのみ照射されるように絞り込む。例えば、X線絞りは4枚の鉛板からなる絞り羽根を有し、これらの絞り羽根をスライドさせることで、X線の遮蔽される領域を任意のサイズに調節する。X線絞りの絞り羽根は、操作者が入力インタフェース73から入力した関心領域に応じて、図示しない駆動装置により駆動される。また、X線絞りは、X線の総ろ過を調整するための付加フィルタがスリットから挿入可能となっている。また、X線絞りは、X線検査時に使用される鉛マスクや補償フィルタがアクセサリ挿入口から挿入可能となっている。なお、補償フィルタは、照射X線量を減衰或いは低減させる機能を有するROI(Region Of Interest)フィルタを含んでもよい。
X線検出器13は、被検体Pを透過したX線を検出する。このようなX線検出器13としては、X線を直接電荷に変換するものと、光に変換した後、電荷に変換するものとが使用可能であり、ここでは前者を例に説明するが後者であっても構わない。すなわち、X線検出器13は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide)トランジスタを用いた2次元のイメージセンサを備え、被検体Pを透過したX線を電荷に変換して蓄積する平面状のFPD(Flat Panel Detector)と、このFPDに蓄積された電荷を読み出すための駆動パルスを生成するゲートドライバとを備えている。このFPDは、CMOS−FPDと呼んでもよい。FPDは微小な検出素子を列方向及びライン方向に2次元的に配列して構成される。各々の検出素子はX線を感知し、入射X線量に応じて電荷を生成する光電膜と、この光電膜に発生した電荷を蓄積するフォトダイオード(PD)と、電荷を増幅する増幅回路と、増幅した電荷をデジタル信号に変換するA/D変換器とを備えている。デジタル信号は、ゲートドライバが供給する駆動パルスによって順次読み出される。
X線検出器13の後段には、図示しない投影データ生成回路を備える。投影データ生成回路は、FPDから行単位あるいは列単位でパラレルに読み出されたデジタル信号を時系列的なシリアル信号(時系列的な投影データ)に変換するパラレル・シリアル変換器を備えている。時系列的な投影データは、投影データ生成回路から出力され、医用画像処理装置75に供給される。
Cアーム14は、X線発生部12とX線検出器13とを被検体P及び天板53を挟んで対向するように保持することで、天板53上の被検体PのX線撮影を行うことができる構成を有する。以下の説明では、天井吊りタイプのCアームを例に挙げて述べるが、これに限らず、例えば、床置きタイプのCアームであってもよい。
具体的にはCアーム14は、天板53の長軸方向及び短軸方向に沿って移動可能となっている。また、Cアーム14は、保持部を介して支持アームに支持されている。支持アームは、略円弧形状を有し、天井に設けられたレールに対する移動機構に基端が取り付けられている。Cアーム14は、天板53に垂直なY方向と、天板53の長軸方向に沿ったZ方向との両者に直交するX方向の軸を中心に回転可能に保持部に保持されている。また、Cアーム14は、Z方向の軸を中心とした略円弧形状を有し、略円弧形状に沿ってスライド動作可能に保持部に保持されている。すなわち、Cアーム14は、Z方向の軸を回転中心としたスライド動作を行うことができる。また、Cアーム14は、保持部を中心としてX方向の軸を中心とした回転動作(以下、「主回転動作」と称する。)をすることができ、スライドとこの回転の組み合わせにより様々な角度方向からX線画像を観察することを可能とする。さらに、Cアーム14は、Y方向の軸を中心にも回転することができ、これにより、例えば、上述のスライド動作の回転中心軸をX方向とすることができる。なお、X線発生部12のX線焦点と、X線検出器13の検出面中心とを通る撮影軸は、スライド動作の回転中心軸と、主回転動作の回転中心軸とに一点で交差するように設計されている。当該交点は、一般的には、アイソセンタと呼ばれている。アイソセンタは、Cアーム14が上述のスライド動作や主回転動作をしても変位しない。このため、アイソセンタに関心部位が位置した場合、Cアーム14のスライド動作又は主回転動作により得られた医用画像の動画像において、関心部位の観察が容易になる。
このようなCアーム14は、レール下の支持アーム、X方向の軸、Y方向の軸及びZ方向の軸に係る動作を実現するための複数の動力源が該当する適当な箇所に備えられている。これらの動力源はCアーム制御装置142に制御される。Cアーム制御装置142は、システム制御機能741からの駆動信号を読み込んでCアーム14をスライド運動、回転運動、直線運動させる。さらに、Cアーム14には、その角度または姿勢や位置の情報を検出する図示しない状態検出器がそれぞれ備えられている。状態検出器は、例えば回転角や移動量を検出するポテンショメータや、位置検出センサであるエンコーダ等で構成される。エンコーダとしては、例えば磁気方式、刷子式、あるいは光電式等の、いわゆるアブソリュートエンコーダが使用可能となっている。また、状態検出器としては、回転変位をデジタル信号として出力するロータリエンコーダあるいは直線変位をデジタル信号として出力するリニアエンコーダなど、様々な種類の位置検出機構が適宜、使用可能となっている。
寝台装置50は、被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台51と、寝台駆動装置52と、天板53と、支持フレーム54とを備えている。
基台51は、床面に設置され、支持フレーム54を鉛直方向(Y方向)に移動可能に支持する筐体である。
寝台駆動装置52は、寝台装置50の筐体内に収容され、被検体Pが載置された天板53を天板53の長手方向(Z方向)に移動するモータあるいはアクチュエータを含んでいる。寝台駆動装置52は、システム制御機能741からの駆動信号を読み込んで、天板53を床面に対して水平方向や垂直方向に移動させる。
天板53は、支持フレーム54の上面に設けられ、被検体Pが載置される板である。
支持フレーム54は、被検体Pが載置される天板53を移動可能に支持する。詳しくは、支持フレーム54は、基台51の上部に設けられ、天板53をその長手方向に沿ってスライド可能に支持する。
コンソール装置70は、図2に示すように、メモリ71、ディスプレイ72、入力インタフェース73及び処理回路74を備えている。
メモリ71は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)及び画像メモリなど電気的情報を記録するメモリ本体と、それらメモリ本体に付随するメモリコントローラやメモリインタフェースなどの周辺回路とを備えている。メモリ71は、例えば、処理回路74に実行されるプログラムと、X線検出器13から受けた投影データ、処理回路74により生成された医用画像、処理回路74の処理に用いるデータ、各種テーブル、処理途中のデータ及び処理後のデータ等が記憶される。医用画像としては、例えば、通常のX線画像、投影データを順次保存して得た2次元の投影データ(X線画像)、高エネルギー画像、低エネルギー画像、骨画像、軟部組織画像及び骨マップ画像などがある。
ここで、通常のX線画像は、管電圧切り替えを用いない単一エネルギーのX線照射により被検体を撮像して得られるX線画像である。なお、「管電圧切り替え」は、「AECによる管電圧の調整」ではなく、デュアルエネルギー技術における「複数の管電圧を交替的に切り替える制御」を意図している。
高エネルギー画像は、管電圧切り替えを用いた複数エネルギーのX線照射により被検体を撮像したX線画像のうち、高い方のエネルギー(高い方の管電圧)を用いて撮像したX線画像である。
低エネルギー画像は、管電圧切り替えを用いた複数エネルギーのX線照射により被検体を撮像したX線画像のうち、低い方のエネルギー(低い方の管電圧)を用いて撮像したX線画像である。
骨画像は、高エネルギー画像及び低エネルギー画像に物質弁別処理を施すことにより作成され、骨部及び非骨部(軟部組織)のうちの骨部を明瞭に表すX線画像である。骨画像としては、例えば低エネルギー画像から非骨部のコントラストを抑制するように、低エネルギー画像及び高エネルギー画像を加重減算して得られたX線画像が適宜、使用可能となっている。また、骨画像としては、骨の厚さを画素値とする画像である、骨の厚さ画像を用いてもよい。
軟部組織画像は、高エネルギー画像及び低エネルギー画像に物質弁別処理を施すことにより作成され、骨部及び非骨部のうちの非骨部(軟部組織)を明瞭に表すX線画像である。軟部組織画像としては、例えば、高エネルギー画像から骨部のコントラストを抑制するように、高エネルギー画像及び低エネルギー画像を加重減算して得られたX線画像が適宜、使用可能となっている。また、軟部組織画像としては、軟部組織の厚さを画素値とする画像である、軟部組織の厚さ画像を用いてもよい。
骨マップ画像は、例えば、骨画像に閾値処理を施すことにより、骨部と非骨部とを弁別した結果を表す画像である。なお、骨マップ画像に代えて、例えば、軟部組織画像に閾値処理を施すことにより、骨部と非骨部とを弁別した結果を表す画像を用いることも可能である。
これに加え、メモリ71は、図3に示すように、高エネルギー画像gHE、低エネルギー画像gLE及び骨マップ画像gMpにより機械学習モデルMd1を学習させて得られた学習済みモデルMd2を記憶してもよい。メモリ71は、例えば、X線診断装置1の工場出荷前に予め学習済みモデルMd2を記憶してもよく、あるいはX線診断装置1の工場出荷後に、図示しないサーバ装置などから取得した学習済みモデルMd2を記憶してもよい。このことは、以下の各実施形態でも同様である。学習済みモデルMd2は、複数エネルギーのX線照射により撮像されたX線画像に基づいて、当該X線画像に対して骨部及び非骨部を弁別した結果(例、骨マップ画像gMp)を出力するように機能付けられている。
このような学習済みモデルMd2は、学習用データに基づいて、機械学習モデルMd1に機械学習を行わせることにより、学習済みの機械学習モデルである学習済みモデルとして作成可能となっている。ここで、学習用データは、複数エネルギーのX線照射により撮像されたX線画像である高エネルギー画像gHE及び低エネルギー画像gLEを入力データとし、当該X線画像に対して骨部及び非骨部を弁別した結果である骨マップ画像gMpを出力データとした、入力データと出力データとの組である。機械学習モデルは、高エネルギー画像gHE及び低エネルギー画像gLEを入力とし、骨マップ画像gMpを出力する、複数の関数が合成されたパラメータ付き合成関数である。パラメータ付き合成関数は、複数の調整可能な関数及びパラメータの組合せにより定義される。本実施形態に係る機械学習モデルは、上記の要請を満たす如何なるパラメータ付き合成関数であっても良いが、多層のネットワークモデル(以下、多層化ネットワークと呼ぶ)であるとする。多層化ネットワークを用いる学習済みモデルMd2は、高エネルギー画像gHE及び低エネルギー画像gLEを入力する入力層と、骨マップ画像gMpを出力する出力層と、入力層と出力層との間に設けられる少なくとも1層の中間層とを有する。当該学習済みモデルMd1は、人工知能ソフトウエアの一部であるプログラムモジュールとしての利用が想定される。このような多層化ネットワークとしては、例えば、深層学習(Deep Learning)の対象となる多層ニューラルネットワークである深層ニューラルネットワーク(Deep Neural Network:DNN)を用いている。DNNとしては、例えば、動画に対して再帰型ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network:RNN)を用いてもよく、静止画に対して畳込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)を用いてもよい。この種のCNNは、DCNN(Deep CNN)ともいう。本実施形態では、学習済みモデルとしてDCNNを用いている。CNNについては、例えば、前述した「イアン・グッドフェロー(Ian Goodfellow)、外2名、「第9章 畳み込みネットワーク(Chapter 9 Convolutional Networks)」、ディープラーニング(Deep learning)、エムアイティー・プレス(MIT press)、2016年、p.330-372、インターネット <URL:http://www.deeplearningbook.org>」に記載されている。また、RNNは、長・短期記憶(Long Short-Term Memory:LSTM)を含んでもよい。以上の当該多層化ネットワークに関する説明は、以下の全ての機械学習モデルMd1及び学習済みモデルMd2にも該当する。
プログラムは、例えば、コンピュータに、複数エネルギーのX線照射により撮像されたX線画像の解析結果に基づいて、X線条件の制御に対する画素の寄与を決定する決定機能、及び寄与の決定結果に基づいて、単一エネルギーを含むX線条件を制御する制御機能、を実現させる。補足すると、このようなプログラムとしては、例えば、予めネットワーク又は非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体からコンピュータにインストールされ、医用画像処理装置75の各機能を当該コンピュータに実現させるプログラムが用いられる。メモリ71は、記憶部の一例である。
ディスプレイ72は、医用画像などといった各種の情報を表示するディスプレイ本体と、ディスプレイ本体に表示用の信号を供給する内部回路、ディスプレイ本体と内部回路とをつなぐコネクタやケーブルなどの周辺回路から構成されている。内部回路は、処理回路74から供給される画像データに被検体情報や投影データ生成条件等の付帯情報を重畳して表示データを生成し、得られた表示データに対しD/A変換とTVフォーマット変換を行なってディスプレイ本体に表示する。例えば、ディスプレイ72は、処理回路74によって生成された医用画像や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ72は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。また、ディスプレイ72は、表示部の一例である。また、ディスプレイ72は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置70本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。ディスプレイ72は表示部の一例である。
入力インタフェース73は、被検体情報の入力、X線条件の設定、各種コマンド信号の入力等を行う。被検体情報は、例えば、被検体ID、被検体名、生年月日、年齢、体重、性別、検査部位等を含んでいる。なお、被検体情報は、被検体の身長を含んでもよい。入力インタフェース73は、例えば、Cアーム14の移動指示、関心領域(ROI)の設定などを行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、及び表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等によって実現される。入力インタフェース73は、処理回路74に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し、処理回路74へと出力する。また、入力インタフェース73は、コンソール装置70本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、本明細書において入力インタフェース73はマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路74へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース73の例に含まれる。
処理回路74は、メモリ71内のプログラムを呼び出し実行することにより、プログラムに対応するシステム制御機能741、画像処理機能742、解析機能743、決定機能744及び表示制御機能745を実現するプロセッサである。なお、図2においては単一の処理回路74にてシステム制御機能741、画像処理機能742、解析機能743、決定機能744及び表示制御機能745が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能を実現するものとしても構わない。また、システム制御機能741、画像処理機能742、解析機能743、決定機能744及び表示制御機能745は、それぞれシステム制御回路、画像処理回路、解析回路、決定回路及び表示制御回路と呼んでもよく、個別のハードウェア回路として実装してもよい。
システム制御機能741は、例えば、入力インタフェース73から入力された操作者によるコマンド信号、及び各種初期設定条件等の情報を一旦記憶した後、これらの情報を処理回路74の各処理機能に送信する。
また、システム制御機能741は、例えば、入力インタフェース73から入力されたCアーム14及び天板53の駆動に関する情報を用いて、Cアーム制御装置142及び寝台駆動装置52の制御を行う。例えば、システム制御機能741は、撮像装置10の移動や回転、及び寝台装置50の移動やチルトなどを制御する。
また、システム制御機能741は、例えば、メモリ71に設定された情報を読み込んで、高電圧発生装置11における管電圧、管電流、照射時間などのX線条件の制御を行う。X線条件は、管電流と照射時間の積(mAS)を含んでもよい。
さらに、システム制御機能741は、後述する決定機能744による、X線条件の制御に対する画素の寄与の決定結果に基づいて、管電圧切り替えを用いない単一エネルギーのX線照射による撮像におけるX線条件を制御する。このようなシステム制御機能741は、制御部の一例である。
画像処理機能742は、例えば、メモリ71内の投影データに対してフィルタリング処理等の画像処理を行ってX線画像データを生成し、X線画像データをメモリ71に保存する。投影データから生成されるX線画像データとしては、例えば、通常のX線画像、高エネルギーgHE、低エネルギー画像gLEなどの医用画像データがある。
解析機能743は、管電圧切り替えを用いた複数エネルギーのX線照射により撮像されたX線画像を解析することにより、当該X線画像に対して骨部及び非骨部を弁別した結果を解析結果として得る。例えば、解析機能743は、複数エネルギーのX線照射により撮像された高エネルギー画像gHE及び低エネルギー画像gLEの間の物質弁別処理や画像演算(減算処理、加重減算処理、閾値処理)等を行ない、得られた骨画像、軟部組織画像及び骨マップ画像などのX線画像データをメモリ71に保存する。骨マップ画像は、「弁別結果」又は「解析結果」等と呼んでもよい。解析機能743は、所定の物質分別処理や画像演算処理のアルゴリズムを記述したプログラムを用いる手法で実現してもよく、前述した学習済みモデルMdを用いる手法で実現してもよい。前者の場合、例えば、複数エネルギーのX線照射により撮像されたX線画像を解析することにより、当該X線画像から非骨部のコントラストを抑制した骨画像を生成し、当該骨画像に閾値処理を施すことにより、弁別した結果を得るためのプログラムを用いてもよい。後者の場合、例えば、複数エネルギーのX線照射により撮像されたX線画像に基づいて当該弁別した結果を出力するための学習済みモデルに対して、当該X線画像を入力し、当該弁別した結果を出力させることにより、解析結果を得る手法を用いてもよい。解析機能743は、解析部の一例である。
決定機能744は、管電圧切り替えを用いた複数エネルギーのX線照射により撮像されたX線画像の解析結果に基づいて、X線条件の制御に対する画素の寄与を決定する。なお、「X線条件の制御に対する画素の寄与」とは、どの画素の画素値をどの程度X線条件のフィードバックに用いるかを表す。すなわち、「X線条件の制御に対する画素の寄与を決定する」ことには、X線画像を構成する画素の中からX線条件へのフィードバックのための統計値の算出に用いる画素を選択することや、X線画像を構成する各画素の画素値からX線条件へのフィードバックのための統計値を算出するにあたって、画素毎の重み付け係数を決定することを含まれる。また、「X線条件の制御に対する画素の寄与を決定する」ことには、X線条件へのフィードバックのための統計値の算出に用いる画素を選択し、さらに選択された画素のそれぞれについて重み付け係数を決定することが含まれる。上述のX線条件へのフィードバックのための統計値としては、単純な平均値演算や重み付け平均値演算などの統計的な手法により得られた画素値が適宜、使用可能となっている。統計的な手法により得られた画素値としては、これに限らず、抽出値、最頻値、中央値、最大値などの任意の値が適宜、使用可能となっている。いずれにしても、決定機能744は、複数エネルギーによるX線画像の解析結果を、X線条件のフィードバックに対する画素の寄与の決定に用いる。
ここで、決定機能744は、当該X線画像に対して骨部及び非骨部を弁別した結果が解析結果として得られると、当該骨部の画素に、撮像されたデバイスが重なっているか否かに基づいて寄与を決定してもよい。「撮像されたデバイス」は、「検出されたデバイス」又は「識別されたデバイス」に読み替えてもよい。
また、決定機能744は、骨部の画素にデバイスが重なっている場合に、当該X線画像の関心領域内の各画素のうちの骨部の各画素に基づいて、寄与を決定してもよい。このとき、決定機能744は、関心領域内に骨部の画素がない場合、デバイスの少なくとも一部を含むように関心領域を移動させ、当該移動させた後の関心領域内の骨部の各画素に基づいて、寄与を決定してもよい。
また、決定機能744は、当該骨部の画素にデバイスが重なっていない場合に、X線画像の関心領域内の各画素のうちの非骨部の各画素に基づいて、寄与を決定してもよい。このとき、決定機能744は、関心領域内に非骨部の画素がない場合、デバイスの少なくとも一部を含むように関心領域を移動させ、当該移動させた後の関心領域内の非骨部の各画素に基づいて、寄与を決定してもよい。なお、「骨部の画素にデバイスが重なっていない場合」は、「骨部の画素にデバイスが無い場合」と読み替えてもよい。いずれにしても、このような決定機能744は、決定部の一例である。
表示制御機能745は、メモリ71内の医用画像データなどの表示データをディスプレイ72及びモニタ80に表示する制御などを行う。例えば、表示制御機能745は、システム制御機能741からの信号を読み込んで、メモリ71から所望の医用画像データを取得してディスプレイ72及びモニタ80に表示する制御などを行う。表示制御機能745は、表示制御部の一例である。
モニタ80は、ディスプレイ72よりも大きい表示面を有するディスプレイであり、医用画像などといった各種の情報を表示するディスプレイ本体と、ディスプレイ本体に表示用の信号を供給する内部回路、ディスプレイ本体と内部回路とをつなぐコネクタやケーブルなどの周辺回路から構成されている。内部回路は、処理回路74から供給される画像データに被検体情報や投影データ生成条件等の付帯情報を重畳して表示データを生成し、得られた表示データに対しD/A変換とTVフォーマット変換を行なってディスプレイ本体に表示する。モニタ80は、処理回路74の表示制御機能745からの制御に応じて、ディスプレイ72と同一又は異なる内容を表示可能となっている。
これらメモリ71、ディスプレイ72、入力インタフェース73、処理回路74の画像処理機能742、解析機能743、決定機能744及び表示制御機能745は、医用画像処理装置75を構成している。これに伴い、メモリ71、ディスプレイ72、入力インタフェース73、処理回路74の画像処理機能742、解析機能743、決定機能744及び表示制御機能745に関する説明は、X線診断装置1及び医用画像処理装置75の各々の説明となっている。医用画像処理装置75は、X線診断装置1に内蔵されてもよく、X線診断装置1とは別の装置として、X線診断装置1の外部に設けてもよい。
次に、以上のように構成されたX線診断装置の動作について図4及び図5のフローチャート、並びに図6乃至図12の模式図を用いて説明する。
始めに、X線画像の収集に先立ち、X線診断装置1を操作する操作者は、入力インタフェース73の操作により、被検体情報を入力した後、通常画像収集シーケンス及びスペクトラル画像収集シーケンスにおけるX線条件、画像データ生成条件及び画像データ表示条件の設定を行ない、これらの入力情報や設定情報をメモリ71に保存しておく。この初期設定が終了すると、操作者は、被検体Pが載置された天板53と、撮像装置10のCアーム14とを所定の方向へ移動/回動させることにより被検体Pに対するX線透視撮像の撮像位置や撮像方向を設定する。このような準備段階の後、ステップST10が開始される。
ステップST10において、X線診断装置1は、通常のX線画像を収集及び表示する。例えば、X線診断装置1の処理回路74は、操作者による入力インタフェース73の操作に応じて、通常画像収集シーケンスを設定し、通常画像収集シーケンスに基づいて、単一エネルギーを含むX線条件を制御することにより、撮像装置10を介して、X線透視撮像を開始する。これにより、例えば、被検体Pの胴部のX線画像が動画として得られる。このX線画像は、単一のエネルギーにより撮像されたライブ画像であり、X線透視撮像中、順次、X線検出器13から医用画像処理装置75に収集される。収集されたX線画像は、メモリ71に保存される一方、ディスプレイ72及びモニタ80に表示される。但し、X線透視撮像の開始直後には、被検体Pにガイドワイヤ等のデバイスを挿入しておらず、X線画像にはデバイスが写り込まない。しかる後、被検体Pにデバイスが挿入される。
ステップST10の後、ステップST20において、X線診断装置1は、X線画像からデバイスを探索し、当該デバイスを検出する。デバイスの検出としては、非特許文献2及び3のようなルールベースの検出アルゴリズムを用いても良いし、前述のCNNのような機械学習によるアルゴリズムを用いても良く、種々のデバイス検出アルゴリズムが利用可能である。
ステップST20の後、ステップST30において、X線診断装置1は、操作者による入力インタフェース73の操作に応じて、複数エネルギーを用いてスペクトラル画像を収集及び表示する。このステップST30は、例えば図5に示す如き、ステップST31〜ST36のように実行される。
まず、ステップST31において、処理回路74は、操作者による入力インタフェース73の操作に応じて、スペクトラル画像収集シーケンスを設定する。
ステップST31の後、ステップST32〜ST33において、処理回路74は、スペクトラル画像収集シーケンスに基づいて、撮像装置10を制御することにより、スペクトラル画像を収集する。言い換えると、撮像装置10は、複数エネルギーによりX線画像を撮像し、処理回路74は、当該撮像されたX線画像を解析する。例えば、処理回路74は、図6(a)に示すように、高電圧発生装置11を制御し、1パルス中における管電圧を低kVから高kVに切り替えることにより、X線1パルスで複数エネルギーを切り替えて撮像を行う。この複数エネルギーを切り替えた撮像は、デュアルエネルギー撮像と呼んでもよく、マルチエネルギー撮像と呼んでもよい。
このとき、図6(b)に示すように、被検体Pを透過したX線を検出するX線検出器13には、FPDの画素毎に電荷が蓄積される。なお、このFPDは、多数回サンプルホールド可能で且つ非破壊読出可能なCMOS型のイメージセンサを用いている。
このため、処理回路74は、図6(c)に示すように、X線検出器13を制御し、低kVのパルスに応じたX線画像を読み出すための駆動パルスである第1読出信号に応じて、X画像(SH1)に対応する第1投影データをFPDから読み出す。第1投影データは、医用画像処理装置75に収集され、順次、メモリ71に保存されることにより、2次元の第1投影データとしてのX線画像(SH1)が生成される。X線画像(SH1)は、低エネルギー画像gLEともいう。
同様に、図6(d)に示すように、高kVのパルスに応じたX線画像を読み出すための駆動パルスである第2読出信号に応じて、X線画像(SH2)に対応する第2投影データをFPDから読み出す。第2投影データは、医用画像処理装置75に収集され、順次、メモリ71に保存されることにより、2次元の第2投影データとしてのX線画像(SH2)が生成される。医用画像処理装置75の処理回路74は、このX線画像(SH2)と、先ほどのX線画像(SH1)とを演算処理することにより、高エネルギー画像gLHを生成し、メモリ71に収集する。この演算処理としては、例えば減算処理(SH2−SH1)が使用可能である。
処理回路74は、これら低エネルギー画像gLE及び高エネルギー画像gLHに基づいて、スペクトラル画像gSPを生成する。
しかる後、図6(e)に示すように、ゲートドライバからリセット信号がFPDに送出され、FPD画素の蓄積電荷量がリセットされる。これにより、X線1パルス分(1フレーム分)のスペクトラル画像gSPの収集が終了する。以下同様に、フレーム毎に、ステップST32が繰り返し実行される。
ここで、ステップST32〜ST33のスペクトラル画像gSPの収集及び物質弁別処理について補足的に述べる。スペクトラル画像gSPの収集及び物質弁別処理は、並列的に実行される。
例えば、処理回路74は、図7に示すように、低エネルギー画像gLE及び高エネルギー画像gLHといった原画像gEに対し、物質弁別処理を用いることにより、骨画像gB及び軟部組織画像gSTといったスペクトラル画像gSPを生成する。
物質弁別処理においては、例えば、あるエネルギーEにより撮像されたエネルギー画像の画素に対応する、被検体がある場合と無い場合のX線検出器13の出力信号比が(1)式で示される。
但し、I/I0:被検体がある場合と無い場合のX線検出器13の出力信号比、
E:エネルギー[keV]、
N(E):エネルギーEにおけるフォトン数(スペクトル)、
μbone(E):エネルギーEにおける骨の線減弱係数[cm-1]、
μsoft(E):エネルギーEにおける軟部組織の線減弱係数[cm-1]、
dbone:骨の厚さ[cm]、
dsoft:軟部組織の厚さ[cm]。
ここで、式(1)に基づき、低エネルギーELによるX線スペクトルの場合の式(2)と、高エネルギーEHによるX線スペクトルの場合の式(3)とを作成する。
但し、IEL/I0_EL:低エネルギーELを用いた際の、被検体がある場合と無い場合のX線検出器13の出力信号比、
IEH/I0_EH:高エネルギーEHを用いた際の、被検体がある場合と無い場合のX線検出器13の出力信号比。
式(2)及び式(3)において、未知数は、骨の厚さdboneと、軟部組織の厚さdsoftとの2つである。従って、式(2)及び式(3)の連立方程式を解くことにより、骨の厚さdboneと、軟部組織の厚さdsoftとを算出する。上記のような2つのエネルギーによる弁別の手法だと、ガイドワイヤ等のデバイスは、主に線減弱係数が近い骨に分類される。ST20においてデバイスが検出された画素においては、骨の厚さdboneを、周囲の画素における骨の厚さdboneで補間することで求めてもよい。あるいは、式(2)及び式(3)に基づいて算出された骨の厚さdboneから、典型的なデバイスに対応する骨の厚さを減算することで、骨の厚さdboneを補正してもよい。エネルギー画像の画素における骨の厚さdboneと、軟部組織の厚さdsoftとに基づいて、骨画像gB及び軟部組織画像gSTを作成できる。骨画像gBは、軟部組織のコントラストが抑制されて、骨部を明瞭に表すX線画像である。軟部組織画像gSTは、骨部のコントラストが抑制されて、軟部組織を明瞭に表すX線画像である。このように、物質弁別処理が行われる。
なお、骨画像gB及び軟部組織画像gSTは、上述した物質弁別処理により作成する方法に限らず、物質弁別の他の手法であるデュアルエネルギーサブトラクション処理により作成してもよい。この場合、上述した物質弁別処理に代えて、低エネルギー画像gLE及び高エネルギー画像gHEを用いたデュアルエネルギーサブトラクション処理が実行される。例えば、低エネルギー画像gLE及び高エネルギー画像gHEの各々の同じ位置において、軟部組織を示す画素を選択する。ここで、高エネルギー画像gHEの軟部組織を示す画素の値と、低エネルギー画像gLEの軟部組織を示す画素の値とに基づいて、低エネルギー画像gLEの軟部組織を消去するように、低エネルギー画像gLEから高エネルギー画像gHEが加重減算される。この加重減算の結果を、適宜、補正することにより、骨画像gBが生成される。骨画像gBは、前述した通り、軟部組織のコントラストが抑制されて、骨部を明瞭に表すX線画像である。
また同様に、例えば、低エネルギー画像gLE及び高エネルギー画像gHEの各々の同じ位置において、骨部を示す画素を選択する。ここで、高エネルギー画像gHEの骨部を示す画素の値と、低エネルギー画像gLEの骨部を示す画素の値とに基づいて、高エネルギー画像gHEの骨部を消去するように、高エネルギー画像gHEから低エネルギー画像gLEが加重減算される。この加重減算の結果を、適宜、補正することにより、軟部組織画像gSTが生成される。軟部組織画像gSTは、前述した通り、骨部のコントラストが抑制されて、軟部組織を明瞭に表すX線画像である。
物資弁別処理及びデュアルエネルギーサブトラクション処理のいずれにしても、骨画像gB及び軟部組織画像gSTといったスペクトラル画像gSPが生成されると、1フレーム分のステップST32〜ST33が終了する。なお、骨画像gBとしては、例えば、骨の厚さを画素値とする、骨の厚さ画像を用いてもよい。また、軟部組織画像gSTとしては、例えば、軟部組織の厚さを画素値とする、軟部組織の厚さ画像を用いてもよい。
ステップST32〜ST33の後、ステップST34において、処理回路74は、操作者による入力インタフェース73の操作に応じて、表示画像がスペクトラル画像gSPか否かを判定する。
ステップST34の判定の結果、表示画像がスペクトラル画像である場合には、ステップST35において、処理回路74は、骨画像gBや軟部組織画像gSTをディスプレイ72及びモニタ80に表示させる。
一方、ステップST34の判定の結果、表示画像がスペクトラル画像でない場合には、ステップST36において、処理回路74は、低エネルギー画像gLEや高エネルギー画像gHEをディスプレイ72及びモニタ80に表示させる。
以上により、ステップST31〜ST36からなるステップST30が終了する。
ステップST30の後、図4に戻り、ステップST40において、処理回路74は、例えば、骨画像gBに閾値処理を施すことにより、骨部と非骨部(軟部組織)とを弁別した結果を表す骨マップ画像を作成する。補足すると、骨画像gBは、骨部を明瞭に表すX線画像であるものの、骨部と非骨部との区別が明瞭でない領域が存在する。これに対し、骨マップ画像は、骨画像gBに閾値処理を施すことにより、骨画像gB内の骨部と非骨部とを明瞭に区別できる。骨マップ画像は、例えば、骨画像gBのうち、骨部の画素の値を維持し、非骨部の画素の値を設定値に変更した画像である。設定値は、例えば、0(ゼロ値)のように、非骨部の画素を識別し易い値が好ましい。なお、骨マップ画像が表示用画像でなく内部演算用画像であることから、設定値としては、色付け又はパターン付け等のように視覚的な効果をもたらす値を用いる必要はない。このような骨マップ画像は、骨部と非骨部とを明確に区別して表している。いずれにしても、ステップST30及びST40によれば、複数エネルギーのX線照射により撮像されたX線画像の解析結果を得ることができる。詳しくは、ステップST32、ST33及びST40により、複数エネルギーのX線照射により撮像されたX線画像(低エネルギー画像gLE、高エネルギー画像gHE)に対して骨部及び非骨部を弁別した結果(骨マップ画像gMp)を解析結果として得ることができる。具体的には、ステップST32、ST33及びST40により、複数エネルギーのX線照射により撮像されたX線画像を解析することにより、当該X線画像から非骨部のコントラストを抑制した骨画像を生成し、当該骨画像に閾値処理を施すことにより、弁別した結果を得ることができる。なお、処理回路74は、複数エネルギーのX線照射により撮像されたX線画像に基づいて当該弁別した結果を出力するための学習済みモデルMd2に対して、当該X線画像を入力し、当該弁別した結果を出力させることにより、解析結果を得てもよい。
しかる後、処理回路74は、複数エネルギーのX線照射により撮像されたX線画像の解析結果に基づいて、X線条件の制御(AEC)に対する画素の寄与を決定する(ステップST50〜ST120)。以下、順次、説明する。
ステップST40の後、ステップST50において、処理回路74は、ガイドワイヤ等のデバイスが骨部にあるか否かを判定する。このステップST50は、X線画像に対して骨部及び非骨部を弁別した結果が解析結果として得られると、当該骨部の画素にデバイスが重なっているか否かに基づいて寄与を決定する処理の一例である。図8に示す例では、原画像gEにおいて、ガイドワイヤWgが骨部にあり、視認しにくいとする。また、関心領域ROIは、ガイドワイヤWgを含まない位置に設定されているとする。
このとき、図9に示すように、骨画像gBにおいて、ガイドワイヤWgが視認できる。また、骨画像gBの骨部と非骨部とを区別した骨マップ画像gMpによれば、ガイドワイヤWgが骨部にあることが判明する。すなわち、図8及び図9に示す例の場合、処理回路74は、デバイスが骨部にある旨を判定する(ST50:Yes)。
これに対し、図10に示す例では、原画像gEにおいて、ガイドワイヤWgが非骨部にあり、視認しにくいとする。また、関心領域ROIは、ガイドワイヤWgを含まない位置に設定されているとする。言い換えると、関心領域ROIは、ガイドワイヤが配置されている部位の画像レベルの反映が少ない領域にあるとする。
このとき、図11に示すように、骨画像gBの骨部と非骨部とを区別した骨マップ画像gMpによれば、ガイドワイヤWgが非骨部にあることが判明する。すなわち、図10及び図11に示す例の場合、処理回路74は、デバイスが非骨部にある旨を判定する(ST50:No)。
ここで、ステップST50:Yesの場合に移行するステップST60〜ST80の処理と、ステップST50:Noの場合に移行するステップST90〜ST110の処理とについて順に述べる。
ステップST50の判定の結果、デバイスが骨部にある場合(ST50:Yes)、ステップST60において、処理回路74は、X線条件の制御(AEC)に利用可能な画素が関心領域ROI内にあるか否かを判定する。なお、ステップST60のAECに利用可能な画素としては、骨部にあるデバイスを見易くするため、骨部の画素とする。
ステップST60の判定の結果、利用可能な画素が無い場合にはステップST70に移行する。ステップST70においては、処理回路74は、関心領域ROIをデバイス近傍に移動させる。これにより、関心領域ROIがデバイス近傍の骨部の画素を含むようになる。なお、関心領域ROI内の画素は、AECに利用される。また、ステップST70は、関心領域内に骨部の画素がない場合、デバイスの少なくとも一部を含むように関心領域を移動させ、当該移動させた後の関心領域内の骨部の各画素に基づいて、寄与を決定する処理の一例である。ステップST70の後、ステップST80に移行する。
一方、ステップST60の判定の結果、利用可能な画素がある場合にはステップST80に移行する。ステップST80においては、処理回路74は、関心領域ROI内の画素のうち、非骨部の画素を除外し、残りの骨部の画素を関心領域ROI内の画素としてAECに利用する。また、ステップST60、ST80は、関心領域ROI内の骨部の画素のうち、検出されたデバイスと重なっている画素について、(その寄与率を大きくするように)寄与を決定する処理の一例である。補足すると、デバイスが骨部にあった場合、関心領域ROI内の骨部の画素を加算平均(単純な平均値演算)することでROI内のAEC用信号レベルとする処理を基本としている。そのバリエーションとして、デバイスが配置されている骨部の画素の画素値を加算平均処理上、重みを付けた演算(重み付け平均値演算)をすることで、ROI内のAEC用信号レベルとする処理を実行してもよい。ステップST80の後、ステップST120に移行する。
以上がステップST50:Yesの場合に移行するステップST60〜ST80の処理である。
これに対し、ステップST50の判定の結果、デバイスが骨部にない場合(ST50:No)、ステップST90において、処理回路74は、X線条件の制御(AEC)に利用可能な画素が関心領域ROI内にあるか否かを判定する。なお、ステップST90のAECに利用可能な画素としては、骨部にないデバイスを見易くするため、非骨部(軟部組織)の画素とする。
ステップST90の判定の結果、利用可能な画素が無い場合には(ST90:No)、ステップST100に移行する。ステップST100においては、処理回路74は、図12に示すように、関心領域ROIをデバイス近傍に移動させる。これにより、関心領域ROIがデバイス近傍の非骨部の画素を含むようになる。なお、関心領域ROI内の非骨部の画素がAECに利用される。また、ステップST100は、関心領域内に非骨部の画素がない場合、デバイスの少なくとも一部を含むように関心領域を移動させ、当該移動させた後の関心領域内の非骨部の各画素に基づいて、寄与を決定する処理の一例である。ステップST100の後、ステップST110に移行する。
一方、ステップST90の判定の結果、利用可能な画素がある場合にはステップST110に移行する。ステップST110においては、処理回路74は、関心領域ROI内の画素のうち、骨部の画素を除外し、残りの非骨部の画素を関心領域ROI内の画素とする。なお、関心領域ROI内の非骨部の画素がAECに利用される。また、ステップST90、ST110は、当該骨部の画素がデバイスに重なっていない場合に、X線画像の関心領域内の各画素のうち、骨部の画素を除外して、残った非骨部の各画素に基づいて、寄与を決定する処理の一例である。ステップST110の後、ステップST120に移行する。以上がステップST50:Noの場合に移行するステップST90〜ST110の処理である。
次に、ステップST120において、処理回路74は、関心領域ROI内の画素値の演算を実行する。この演算としては、例えば、以下の(a)〜(c)のいずれかの演算が適宜、使用可能となっている。
(a)ステップST33で算出した骨の厚さdboneに応じて画素値を演算する。
(b)ST80又はST110の後の関心領域ROI内の残りの画素にて単純な平均値演算を実行してもよい。
(c)ステップST33で算出した骨の厚さdboneに基づき、デバイス近傍の画素における骨の厚さdboneにより近い骨の厚さdboneを持つ画素ほど大きな重みを付けた演算処理(例、重み付け平均値演算)を実行してもよい。
上記(a)〜(c)のいずれかの演算の実行により、ステップST120が終了する。なお、得られた関心領域ROI内の画素値の演算結果は、AECに利用される。
ステップST120の後、ステップST130において、X線診断装置1は、前述したステップST10と同様に、単一のエネルギーにより撮像されたライブ画像である通常のX線画像を収集及び表示する。但し、設定される通常画像収集シーケンスにおける管電圧としては、ステップST120の演算結果に基づくAECにより、調整された管電圧の値が用いられる。このようなステップST130は、寄与の決定結果に基づいて、単一エネルギーを含むX線条件を制御する処理の一例である。
ステップST140において、X線診断装置1は、前述したステップST20と同様に、X線画像からデバイスを探索し、当該デバイスを検出する。
ステップST140の後、ステップST150において、処理回路74は、例えば、操作者による入力インタフェース73の操作に応じて、骨マップ画像gMpを更新するか否かを判定する。例えば、X線画像内のデバイスが見にくい場合、操作者の操作により、骨マップ画像gMpを更新する。また、X線画像内のデバイスが見易い場合には、骨マップ画像gMpを更新しない。なお、これに限らず、処理回路74は、X線画像が変化したときに、骨マップ画像gMpを更新してもよい。X線画像の変化としては、例えば、X線画像内のデバイス位置の変化でもよく、X線画像の撮像範囲の変化でもよい。
ステップST150の判定の結果、骨マップ画像gMpを更新しない場合、処理回路74は、ステップST130に戻り、ステップST130〜ST150の処理を継続する。
一方、ステップST150の判定の結果、骨マップ画像gMpを更新する場合、処理回路74は、ステップST30に戻り、ステップST30〜ST150の処理を継続する。なお、以上の処理の実行中、撮像終了の指示が入力されたときには、処理を終了する。
上述したように第1の実施形態によれば、単一エネルギー又は複数エネルギーを含むX線条件に基づいて被検体のX線画像を撮像し、当該複数エネルギーのX線照射により撮像されたX線画像の解析結果に基づいて、X線条件の制御に対する画素の寄与を決定し、当該寄与の決定結果に基づいて、単一エネルギーを含むX線条件を制御する。
従って、異なるX線吸収差をもつ被検体を撮像したX線画像に対して、当該X線画像の視認性を向上させるための適切なX線条件を得ることができる。また、総合的な最適化を期待することができる。その結果、適切なX線条件の選択による画質向上、被曝線量の低減を期待することができる。
補足すると、従来技術は、異なるX線吸収差をもつ被検体を撮像したX線画像に対して、視認性を向上させるための適切なX線条件が得られない点で改良の余地がある。具体的には例えば、心臓血管造影においては、X線吸収が少ない肺野部と、X線吸収が大きな椎骨部等とのように、異なるX線吸収差をもつ複数の部位を撮像したX線画像では、信号画像レベルの差異が大きく、ダイナミックレンジが広い。従って、従来技術では、X線吸収の多い椎骨部の上にガイドワイヤがあり、且つAECの画像レベル評価用の関心領域内に椎骨部が少ない場合等には、ガイドワイヤを明瞭に表示するための適切なX線条件が得られない。また、従来技術は、逆に、X線吸収の少ない肺野部の上にガイドワイヤがあり、且つ関心領域内に肺野部が少ない場合にも同様に、適切なX線条件が得られない。
一方、第1の実施形態によれば、前述した通り、異なるX線吸収差をもつ被検体を撮像したX線画像に対して、視認性を向上させるための適切なX線条件が得られる。
また、複数エネルギーのX線照射により撮像されたX線画像を解析することにより、X線画像に対して骨部及び非骨部を弁別した結果を当該解析結果として得るようにしてもよい。この場合、異なるX線吸収差をもつ骨部及び非骨部からなる被検体を撮像したX線画像に対して、視認性を向上させるための適切なX線条件を得ることができる。
補足すると、複数のX線エネルギー情報を元に意図した物質のみの画像を生成できるX線スペクトラルイメージングの手法を用いて、収集画像領域において骨等の高吸収部位と、その他の水と等価な低吸収の軟部組織部位の弁別マッピング画像を生成する。作成したマッピング画像を元に、自動X線条件制御及び、画像処理を行うことができる。
また、骨部の画素がデバイスに重なっているか否かに基づいて当該寄与を決定するようにしてもよい。この場合、骨部に重なったデバイスが見づらいときでも、デバイスの視認性を向上させるための適切なX線条件を得ることができる。
また、骨部の画素がデバイスに重なっている場合に、X線画像の関心領域内の各画素のうちの骨部の各画素に基づいて、当該寄与を決定するようにしてもよい。この場合、関心領域内の骨部の各画素に基づいて、デバイスの視認性を向上させるための適切なX線条件を得ることができる。
また、関心領域内に骨部の画素がない場合、デバイスの少なくとも一部を含むように関心領域を移動させ、当該移動させた後の関心領域内の骨部の各画素に基づいて、当該寄与を決定するようにしてもよい。この場合、関心領域内に骨部の画素がなくても、関心領域を移動させて関心領域に骨部の画素を含めることができるので、X線条件の制御に対する画素の寄与を決定する動作の信頼性を向上させることができる。
また、骨部の画素がデバイスに重なっていない場合に、X線画像の関心領域内の各画素のうちの非骨部の各画素に基づいて、当該寄与を決定するようにしてもよい。この場合、関心領域内の非骨部の各画素に基づいて、デバイスの視認性を向上させるための適切なX線条件を得ることができる。
また、関心領域内に非骨部の画素がない場合、デバイスの少なくとも一部を含むように関心領域を移動させ、当該移動させた後の関心領域内の非骨部の各画素に基づいて、当該寄与を決定するようにしてもよい。この場合、関心領域内に非骨部の画素がなくても、関心領域を移動させて関心領域に非骨部の画素を含めることができるので、X線条件の制御に対する画素の寄与を決定する動作の信頼性を向上させることができる。
また、複数エネルギーのX線照射により撮像されたX線画像を解析することにより、X線画像から非骨部のコントラストを抑制した骨画像を生成し、骨画像に閾値処理を施すことにより、弁別した結果を得るようにしてもよい。この場合、主に、画像処理の手法を用いて、X線画像の解析結果を得ることができる。
また、複数エネルギーのX線照射により撮像されたX線画像に基づいて弁別した結果を出力するための学習済みモデルに対して、当該X線画像を入力し、当該弁別した結果を出力させることにより、解析結果を得るようにしてもよい。この場合、ニューラルネットワークを用いて、X線画像の解析結果を得ることができる。
以上のような第1の実施形態の効果は、適宜、以下の[10]〜[15]のように表現することもできる。
[10]スペクトラル画像収集により得られた骨画像及び軟部組織画像を利用することで、X線条件制御を行うことができる。
[11]上記[10]で得られた物資弁別画像(骨画像、軟部組織画像)のうち、骨画像を利用して骨マップを作成することができる。
[12]上記[11]を用いて、別途、識別したターゲットであるデバイスが骨マップ上にあるか否かを判断することができる。
[13]上記[12]の判断の結果、ターゲットデバイスが骨マップ上にあった際には、オリジナル画像上にて設定されたAEC_ROI(X線条件制御用の関心領域)の中から、非骨と判断された画素を除外して、X線条件を制御することができる。また、ターゲットデバイスが骨マップ上に無かった際には、オリジナル画像上にて設定されたAEC_ROIの中から、骨と判断された画素を除外して、X線条件を制御することができる。
[14]上記[13]において、該当する画素が無かった場合には、近隣の領域にAEC ROIを移動することでX線条件を制御することができる。
[15]上記[13]において、ターゲットデバイスが骨マップ上に有った際の、X線条件の制御では、骨の厚さに応じて設定管電圧の値を制御することができる。
<第2の実施形態>
図13は、第2の実施形態に係るX線診断装置が備えるコンソール装置及び医用画像処理装置の構成を示すブロック図であり、図2と同様の部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、ここでは主に異なる部分について述べる。
第2の実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、多くの擬似的な線状陰影が撮像されたX線画像に対して、リアルタイムに視認性を向上させる形態である。具体的には、図2に示した決定機能744に代えて、図13に示す如き、検出機能746及び強調機能747を処理回路74が備えている。なお、「リアルタイム」の用語は、厳密に、X線画像が撮像された瞬間に視認性を向上させる処理を意味するのではなく、X線画像が撮像された瞬間から順次、視認性を向上させるための処理が実行されることを意味する。
ここで、処理回路74の検出機能746は、前述した撮像装置10によって管電圧切り替えを用いた複数エネルギーのX線照射により撮像されたX線画像の解析結果に基づいてデバイスを検出する。補足すると、検出機能746は、複数エネルギーによるX線画像の解析結果をデバイスの検出に用いる。
また、検出機能746は、前述した解析機能743によって当該X線画像に対して骨部及び非骨部を弁別した結果が解析結果として得られた場合に、当該骨部及び当該非骨部のうち、当該骨部の各画素からデバイスを探索することにより、デバイスを検出するようにしてもよい。なお、解析機能743は、前述同様に、複数エネルギーのX線照射により撮像されたX線画像に基づいて当該弁別した結果を出力するための学習済みモデルMd2に対して、当該X線画像を入力し、当該弁別した結果を出力させることにより、解析結果を得るようにしてもよい。検出機能746は、検出部の一例である。
処理回路74の強調機能747は、当該デバイスの強調処理を実行することにより、強調画像を生成する。強調処理としては、コントラスト強調、エッジ強調、カラー表示といった任意の画像処理が使用可能となっている。また、デバイスの強調処理は、関心領域内のデバイス全体を強調してもよく、関心領域内のデバイスの一部を強調してもよい。また、デバイスの強調処理は、デバイスの画素を強調する場合に限らず、デバイス周辺の画素を強調してもよい。強調機能747は、強調部の一例である。
他の構成は、第1の実施形態と同様である。
次に、第2の実施形態における動作について図14のフローチャート及び図15乃至図17の模式図を用いて説明する。始めに、前述した初期設定等の準備段階が行われた後、ステップST210が開始される。
ステップST210においては、前述したステップST10と同様に、通常のX線画像が収集及び表示される。
ステップST10の終了後、ステップST220〜ST240が、前述したステップST31〜ST33と同様に実行される。これにより、低エネルギー画像gLE及び高エネルギー画像gHEといった原画像gEや、骨画像gB及び軟部組織画像gSTといったスペクトラル画像gSPがX線診断装置1の医用画像処理装置75に収集される。収集した原画像gEでは、図15に一例を示すように、右方のガイドワイヤ以外に多くの線状陰影が撮像されているとする。原画像gEに対応する骨画像gBでは、図16に示すように、右方の骨部にガイドワイヤが重なって撮像されている。
ステップST240の後、前述したステップST40と同様に、ステップST250が実行される。このとき、処理回路74は、例えば、骨画像gBに閾値処理を施すことにより、図17に示す如き、骨部と非骨部(軟部組織)とを弁別した結果を表す骨マップ画像gMpを作成する。これにより、骨部と非骨部とを弁別した結果を解析結果として得ることができる。
ステップST250の後、処理回路74は、当該解析結果に基づいてデバイスを検出する(ST260〜ST270)。例えば、処理回路74は、当該骨部及び非骨部を弁別した結果が解析結果として得られた場合に、当該骨部及び当該非骨部のうち、当該骨部の各画素からデバイスを探索することにより、デバイスを検出する(ST260〜ST270)。以下、順次、説明する。
ステップST260において、処理回路74は、当該骨部及び当該非骨部のうち、当該骨部の各画素をデバイスの探索領域として設定する。図17に示す例では、骨部は、骨マップ画像gMpの半分以下の濃淡領域となっている。すなわち、図17中、デバイスの探索領域は、骨マップ画像gMpの半分以下の領域として設定されている。
ステップST260の後、ステップST270において、処理回路74は、デバイスの探索領域内でデバイスを探索することにより、デバイスを検出する。
ステップST270の後、ステップST280において、処理回路74は、操作者による入力インタフェース73の操作に応じて、骨画像gB又は軟部組織画像gSTを表示させるか否かを判定する。
ステップST280の判定の結果、否の場合には、ステップST290において、処理回路74は、通常のX線画像をデバイス強調して表示する。すなわち、処理回路74は、通常のX線画像内のデバイスの強調処理を実行することにより、強調画像を生成し、この強調画像をディスプレイ72及びモニタ80に表示させる。ステップST290の終了後、ステップST330に移行する。
また、ステップST280の判定の結果、骨画像gB又は軟部組織画像gSTを表示させる場合には、ステップST300において、処理回路74は、操作者による入力インタフェース73の操作に応じて、骨画像gBを表示させるか否かを判定する。
ステップST300の判定の結果、否の場合には、ステップST310において、処理回路74は、軟部組織画像gSTをデバイス強調して表示する。すなわち、処理回路74は、軟部組織画像gST内のデバイスの強調処理を実行することにより、強調画像を生成し、この強調画像をディスプレイ72及びモニタ80に表示させる。ステップST310の終了後、ステップST330に移行する。
一方、ステップST300の判定の結果、骨画像gBを表示させる場合には、ステップST320において、処理回路74は、骨画像gBをデバイス強調して表示する。すなわち、処理回路74は、骨画像gB内のデバイスの強調処理を実行することにより、強調画像を生成し、この強調画像をディスプレイ72及びモニタ80に表示させる。ステップST320の終了後、ステップST330に移行する。
ステップST330において、処理回路74は、前述同様に、操作者による入力インタフェース73の操作に応じて、骨マップ画像gMpを更新するか否かを判定する。
ステップST330の判定の結果、骨マップ画像gMpを更新しない場合、処理回路74は、ステップST280に戻り、ステップST280〜ST330の処理を継続する。
一方、ステップST330の判定の結果、骨マップ画像gMpを更新する場合、処理回路74は、ステップST220に戻り、ステップST220〜ST330の処理を継続する。なお、以上の処理の実行中、撮像終了の指示が入力されたときには、処理を終了する。
上述したように第2の実施形態によれば、複数エネルギーによりX線画像を撮像し、当該撮像されたX線画像の解析結果に基づいてデバイスを検出し、当該デバイスの強調処理を実行することにより、強調画像を生成する。
従って、多くの擬似的な線状陰影が撮像されたX線画像に対して、リアルタイムに視認性を向上させることができる。また、画像処理の精度向上による画質向上を期待することができる。
補足すると、従来技術は、多くの擬似的な線状陰影が撮像されたX線画像に対して、リアルタイムに視認性を向上できない点で改良の余地がある。具体的には例えば、ガイドワイヤを示す線状陰影をX線画像内で検索し、ガイドワイヤを強調表示する画像処理は、X線画像が透視等の動画像であるため、リアルタイムに実行する必要がある。これに対し、X線画像内のガイドワイヤの位置が不明なため、X線画像の端から端までを満遍なく検索する必要がある。よって、従来技術は、強調表示をリアルタイムに実行するためには、画像処理を実現するハードウェアの性能に高い要求が発生する。これに加え、従来技術は、肺野部等の如き、多くの擬似的な線状陰影が撮像されるX線画像においてガイドワイヤのみを検出することが困難なため、リアルタイムに視認性を向上させることができない。
一方、第2の実施形態によれば、前述した通り、多くの擬似的な線状陰影が撮像されたX線画像に対して、リアルタイムに視認性を向上できる。
さらに補足すると、第2の実施形態によれば、ガイドワイヤの線状陰影を捕捉して、画像処理による強調に利用する。原画像gEでは、ガイドワイヤ以外の線状陰影が多い。これに対し、物質弁別処理による骨画像gBを作成すると、Ni、Cr等を主原料とするデバイス(ガイドワイヤ)は骨部として描出される。よって、骨マップ画像gMpを利用すると、ガイドワイヤの探索領域が骨部に限定され、且つ、ガイドワイヤ以外の(非骨部の)線状陰影を抑圧することができる。
また、当該撮像されたX線画像を解析することにより、当該X線画像に対して骨部及び非骨部を弁別した結果を解析結果として得るようにしてもよい。このとき、当該骨部及び当該非骨部のうち、当該骨部の各画素からデバイスを探索することにより、当該デバイスを検出するようにしてもよい。この場合、デバイスの探索領域が骨部の各画素に限定されるので、骨部及び非骨部を含む画像全体からデバイスを探索する場合に比べ、より容易且つ、より高速に、デバイスを検出することができる。
また、当該複数エネルギーのX線照射により撮像されたX線画像に基づいて当該弁別した結果を出力するための学習済みモデルに対して、当該X線画像を入力し、当該弁別した結果を出力させることにより、解析結果を得るようにしてもよい。この場合、前述同様に、ニューラルネットワークを用いて、X線画像の解析結果を得ることができる。
なお、第2の実施形態は、複数エネルギーによるX線画像の解析結果に基づいてデバイスを検出し、当該デバイスの強調処理を実行することにより、強調画像を生成する構成により、デバイスの強調処理に関して、X線条件を制御する必要がない。このため、第2の実施形態は、X線診断装置に限らず、医用画像処理装置としても実現することができる。
また、以上のような第2の実施形態の効果は、適宜、以下の[20]及び[21]のように表現することもできる。
[20]スペクトラル画像収集により得られた骨画像及び軟部組織画像を利用することで、画像処理制御を行うことができる。
[21]上記[20]で得られた物資弁別画像(骨画像、軟部組織画像)のうち、骨画像を利用して作成された骨マップ画像の一部の領域内のみを探索範囲として設定し、線状陰影を認識する処理を実行することができる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、異なるX線吸収差をもつ被検体を撮像したX線画像に対して、視認性を向上させるための適切なX線条件を得ることができる。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図2又は図13における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。