JP2021107166A - 船舶推進機の制御装置および方法、船舶 - Google Patents

船舶推進機の制御装置および方法、船舶 Download PDF

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Abstract

【課題】ベンチレーションの発生有無を正確に判定する。【解決手段】船舶推進機の制御装置は、エンジンまたはプロペラの回転数PNを取得する第1の取得部と、エンジントルクTRKを取得する第2の取得部と、船速Vを取得する第3の取得部と、それぞれ取得された回転数PNとエンジントルクTRKと船速Vと、のうち少なくとも2つに基づいて、ベンチレーションの発生の有無を判定する判定部と、を有する。【選択図】図6

Description

本発明は、エンジンおよびプロペラを有する船舶推進機の制御装置および方法、並びに、船舶推進機を備える船舶に関する。
従来、エンジンおよびプロペラを有する船舶推進機の制御装置として、エンジンの回転数を制御する装置が知られている(特許文献1)。特許文献1は、エンジンの目標回転と実回転からエンジンの過回転(ベンチレーション)を判定し、過回転になるとスロットル開度を減少させる。
特開2006−77642号公報
しかしながら、船体速度やスロットル操作等の状況によっても、ベンチレーションの生じやすさは変化する。特に加速しようとしているときにはベンチレーションが生じやすい。そのため、目標回転と実回転からだけでは、ベンチレーションを正確に判定できない。従って、ベンチレーションの発生有無を正確に判定する観点で改善の余地があった。
本発明は、ベンチレーションの発生有無を正確に判定することを目的とする。
この発明の一態様による船舶推進機の制御装置は、エンジンおよびプロペラを有する船舶推進機の制御装置であって、前記エンジンまたは前記プロペラの回転数を取得する第1の取得部と、エンジントルクを取得する第2の取得部と、前記船舶推進機を備えた船体の速度を取得する第3の取得部と、前記第1の取得部により取得された回転数と、前記第2の取得部により取得されたエンジントルクと、前記第3の取得部により取得された速度と、のうち少なくとも2つに基づいて、ベンチレーションの発生の有無を判定する判定部と、を有する。
この構成によれば、前記エンジンまたは前記プロペラの回転数が取得され、エンジントルクが取得され、前記船舶推進機を備えた船体の速度が取得され、取得された回転数と、取得されたエンジントルクと、取得された速度とに基づいて、ベンチレーションの発生の有無が判定される。
本発明によれば、ベンチレーションの発生有無を正確に判定することができる。
船舶推進機の制御装置が適用される船舶の上面図である。 船外機の下部の側面図である。 操船システムのブロック図である。 ベンチレーションの抑制制御用マップの一例を示す図である。 急加速の操作がされた場合の各パラメータの遷移を示す図である。 スロットル制御処理のフローチャートである。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る船舶推進機の制御装置が適用される船舶の上面図である。この船舶11は、船体13と、船体13に搭載される船舶推進機としての船外機15と、複数(例えば一対)のトリムタブ20とを備えている。船体13の操船席付近には、中央ユニット10、ステアリングホイール18、スロットルレバー12が備えられる。
以下の説明において、前後左右上下の各方向は、船体13の前後左右上下の各方向を意味する。例えば、図1に示すように、船体13の前後方向に延びる中心線C1は、船舶11の重心Gを通過する。前後方向は、中心線C1に沿う方向である。前方は、図1の中心線C1に沿って上側に向かう方向である。後方は、図1の中心線C1に沿って下側に向かう方向である。左右方向については、船体13を後方から見た場合を基準とする。鉛直方向は、前後方向及び左右方向に垂直な方向である。
船外機15は、船体13に取り付けられている。船外機15は、取付ユニット14を介して船体13に取り付けられている。船外機15は、内燃機関であるエンジン16を有する。船外機15は、エンジン16の駆動力によって回転されるプロペラ28(図2)によって、船体13を移動させる推力を得る。
取付ユニット14は、スイベルブラケット、クランプブラケット、ステアリング軸およびチルト軸を含む(いずれも図示せず)。取付ユニット14は、さらに、パワートリム&チルト機構(PTT機構)23を含む(図3)。PTT機構23は、船外機15をチルト軸まわりに回動させる。これにより、船体13に対する船外機15の傾斜角(トリム角、チルト角)を変化させることができるので、トリム調整をしたり、船外機15をチルトアップ/チルトダウンさせたりすることができる。また、船外機15は、スイベルブラケットに対して回動中心C2まわり(ステアリング軸まわり)に回動可能である。船外機15は、ステアリングホイール18が操作されることによって、回動中心C2を中心に左右(R1方向)に回動する。これにより、船舶11が操舵される。
一対のトリムタブ20は、船尾の左舷と右舷とに装着されている。2つのトリムタブ20を区別するときには、左舷に配置されたものを「トリムタブ20A」、右舷に配置されたものを「トリムタブ20B」と呼称する。トリムタブ20A、20Bはそれぞれ、タブ本体21A、タブ本体21Bを有する。タブ本体21A、21Bは、船体13の後部において、揺動軸心C3まわりに揺動可能に取り付けられている。タブ本体21A、21Bは、船体13の姿勢を制御する姿勢制御板の一例である。
図2は、船外機15の下部の側面図である。エンジン16は不図示のギヤを介してプロペラ軸29に回転駆動力を与え、これによりプロペラ28が回転中心C4の回りに回転する。
図3は、操船システムのブロック図である。この操船システムは、本実施の形態の船舶推進機の制御装置を含む。船舶11は、コントローラ30、スロットル開度センサ34、操舵角センサ35、船体速度センサ36、船体加速度センサ37、姿勢センサ38、受信部39、表示部9、設定操作部19を備える。船舶11はまた、吸気圧センサ27、エンジン回転数検出部17、転舵用アクチュエータ24、PTT機構23、トリムタブアクチュエータ22(22A、22B)を備える。船舶11はまた、スロットルセンサ25、開度調整部26を備える。
コントローラ30、スロットルセンサ25、開度調整部26、操舵角センサ35、船体速度センサ36、船体加速度センサ37、姿勢センサ38、受信部39、表示部9、設定操作部19は、中央ユニット10に含まれるか、または中央ユニット10の付近に配置される。転舵用アクチュエータ24、PTT機構23は、船外機15に対応して設けられる。吸気圧センサ27、スロットル開度センサ34、エンジン回転数検出部17は、船外機15に設けられる。トリムタブアクチュエータ22A、22Bはそれぞれ、トリムタブ20A、20Bに含まれる。
コントローラ30は、CPU31、ROM32およびRAM33および不図示のタイマを含む。ROM32は制御プログラムを格納している。CPU31は、ROM32に格納された制御プログラムをRAM33に展開して実行することにより、各種の制御処理を実現する。RAM33は、CPU31が制御プログラムを実行する際のワークエリアを提供する。
センサ25、27、34〜38、およびエンジン回転数検出部17による各検出結果は、コントローラ30に供給される。スロットルレバー12は、スロットル開度を手動で調整するスロットル操作子である。スロットルセンサ25は、スロットルレバー12の操作位置を検出する。スロットル開度センサ34は、不図示のスロットルバルブの開度を検出する。開度調整部26は、スロットルバルブの開度を調整する。通常制御においては、CPU31は、スロットルレバー12の操作位置に基づいて開度調整部26を制御する。なお、スロットルレバー12の操作位置とスロットルバルブの実開度とは必ずしも対応しない。
操舵角センサ35は、ステアリングホイール18が回転された際の回転角を検出する。船体速度センサ36、船体加速度センサ37はそれぞれ、船舶11(船体13)の航行の速度(船速V)、加速度を検出する。
姿勢センサ38は、例えば、ジャイロセンサおよび磁気方位センサ等を含む。姿勢センサ38から出力された信号に基づいて、コントローラ30は、ロール角、ピッチ角およびヨー角を算出する。なお、コントローラ30は、ロール角およびピッチ角を、船体加速度センサ37の出力信号に基づいて算出してもよい。受信部39は、GPSなどのGNSS(Global Navigation Satellite Systems)の受信機を含み、GPS信号や各種の信号を位置情報として受信する機能を有する。受信部39が受信した信号はCPU31に供給される。なお、船体13の加速度は、受信部39で受信されるGPS信号から取得されてもよい。
吸気圧センサ27は、エンジン16のインテークマニホールド(不図示)の吸気圧を検知し、検知した吸気圧をコントローラ30に送信する。エンジン回転数検出部17は、エンジン16の単位時間当たりの回転数(以下、エンジン回転数N)を検出する。表示部9は、各種情報を表示する。設定操作部19は、操船に関する操作をするための操作子、PTT操作スイッチのほか、各種設定を行うための設定操作子、各種指示を入力するための入力操作子を含む(いずれも図示せず)。
転舵用アクチュエータ24は、回動中心C2まわりに、船外機15を船体13に対して回動させる。回動中心C2を中心とする船外機15の回動によって、回動中心C2まわりにおける回転中心C4の方向が変化する。従って、船体13の中心線C1に対して推進力が作用する方向を変化させることができる。PTT機構23は、船外機15をチルト軸まわりに回動させてクランプブラケットに対して傾ける。PTT機構23は、例えば、PTT操作スイッチが操作されることによって作動する。これにより、船体13に対する船外機15の傾斜角を変化させることができる。
トリムタブアクチュエータ22A、22Bは、コントローラ30によって制御される。例えば、コントローラ30は、各トリムタブアクチュエータ22に制御信号を出力することで、各トリムタブアクチュエータ22は作動する。駆動部としての各トリムタブアクチュエータ22の作動によって、対応するタブ本体が揺動する。なお、PTT機構23やトリムタブアクチュエータ22に採用されるアクチュエータは、油圧式であっても電動式であってもよい。
なお、コントローラ30は、エンジン回転数検出部17による検出結果を、不図示のリモコンECUを介して取得してもよい。なお、コントローラ30は、船外機15に設けられる船外機ECU(図示せず)を介して、エンジン16を制御してもよい。
姿勢センサ38から出力された信号は、旋回状態の検出にも用いられる。姿勢センサ38から出力された信号は、ヨー軸まわりのヨーレート(ヨー回転角速度)を含む。CPU31は、姿勢センサ38から出力されたヨーレートに基づいて、船体13の進行方向が直進方向であるか否かを判定する。CPU31は、ヨーレートが所定値以下である場合、船体13の進行方向が直進方向であると判定し、ヨーレートが所定値を超える場合は、船体13の進行方向が旋回方向であると判定する。なお、CPU31は、姿勢センサ38の磁気方位センサから取得されたヨー角度の時系列データに基づいて船体13の進行方向が変化したか否かを判定してもよい。
CPU31は、エンジン回転数Nから、プロペラ28の単位時間当たりの回転数(以下、プロペラ回転数PNと称する)を取得する(第1の取得部)。エンジン回転数Nとプロペラ回転数PNとの関係はギヤ比等から既知であるため、CPU31は、エンジン回転数Nから、プロペラ回転数PNを決定することができる。なお、プロペラ28の回転数を検知するセンサを設け、プロペラ回転数PNを直接検知してもよい。
CPU31は、エンジントルクTRKを取得する(第2の取得部)。エンジントルクTRKはプロペラ28の負荷でもある。CPU31は、エンジン回転数Nと、吸気圧センサ27により検知された吸気圧とからエンジントルクTRKを取得する。なお、エンジントルクTRKは、エンジン回転数Nとエアフローメータとから取得されてもよい。あるいは、不図示のインジェクタの燃料噴射量と不図示の点火プラグの点火時期とからエンジントルクTRKは取得されてもよい。ここで、燃料噴射量および点火時期は、エンジン回転数、吸気圧、スロットル開度、エンジン温度等のパラメータと、予め記憶された運転制御マップとに基づいてコントローラ30により決定される。また、CPU31は、船体速度センサ36から船速Vを取得する(第3の取得部)。
ところで、急に加速しようとするとき等には、水泡が原因でプロペラが水を掴みきれずに過回転する、いわゆるベンチレーションが生じやすい。ベンチレーションの発生有無の判定と、ベンチレーション抑制制御について説明する。
図4は、ベンチレーションの抑制制御用マップの一例を示す図である。この抑制制御用マップは、所定の船体速度範囲(例えば、5km/h)ごとに、エンジンまたはプロペラの回転数とエンジントルクとの関係を規定した情報である。本実施の形態では、抑制制御用マップとして、プロペラ回転数PNとエンジントルクTRKとの関係を規定したものを用いる。抑制制御用マップは、ROM32に格納されている。
代表して、船速V1(例えば、50km/h)に対応する抑制制御用マップを説明する。直線L1、L2はいずれも、プロペラ回転数PNの増加に比例してエンジントルクTRKが高くなるように設定されている。直線L1(第1の情報)は、ベンチレーションの発生有無を判定するための閾値として用いられる。プロペラ回転数PNとエンジントルクTRKとの関係が、直線L1の右下の領域(高回転・低トルクの方向の領域)に属する場合は、ベンチレーションが発生していると判定される。直線L2(第2の情報)は、ベンチレーションが発生した場合に、スロットルレバー12の操作位置に対応するスロットル開度へ徐々に遷移するよう、開度調整部26を制御する復帰制御において閾値として用いられる。直線L2は、直線L1に対して、一定の余裕を持って低回転数の方向へシフトしている。直線L2の左上の領域(低回転・高トルクの方向の領域)は、ベンチレーションが確実に発生しない領域である。言い換えると、直線L2は、プロペラ28が水をしっかりと掴むことができる臨界の目安を規定している。
船体速度範囲ごとの抑制制御用マップは、次のような関係となっている。直線L1、L2はいずれも、船体速度が高いほど、同じプロペラ回転数PNに対するエンジントルクTRKが低く設定されている。具体的には、直線L1、L2はいずれも、船体速度が低いほど低回転方向(左)にシフトしている。例えば、直線L1において、エンジントルクTRK=ゼロに対応するプロペラ回転数PNの値は、船速V1の抑制制御用マップよりも船速V2(例えば、45km/h)の抑制制御用マップの方が低い。船速V3(例えば、40km/h)の抑制制御用マップではさらにプロペラ回転数PNの値が低くなっている。これは、ある船速以下の範囲では、ベンチレーションは、船体速度が低いほど発生しやすいからである。
図5は、急加速の操作がされた場合の各パラメータの遷移を示す図である。横軸に経過時間t(s)をとっている。縦軸には、船速V、プロペラ回転数PN(rpm)、実スロットル開度、目標スロットル開度をとっている。なお、実スロットル開度は、スロットル開度センサ34により検出された実際のスロットル開度である。目標スロットル開度は、スロットルレバー12の操作位置に対応するスロットル開度である。この例では、操船者が急加速を意図してスロットル開度を急に開くようスロットルレバー12を操作した結果、ベンチレーションが発生した場合を示している。なお、ベンチレーションが発生した後も、操船者はスロットルレバー12の操作位置をそのまま維持するとする。
図4、図5を参照して、各パラメータの遷移を説明する。なお、図4、図5において、プロペラ回転数PNに代えてエンジン回転数Nを用いてもよい。図4において、プロペラ回転数PNとエンジントルクTRKとの関係の遷移を、フェーズP1〜P8で図示してある。図5においても、フェーズP1〜P8が示されている。なお、船速Vは刻々と変化するので、抑制制御用マップ(図4)は、そのときの船速Vが属する船体速度範囲に対応するものが用いられる。従って、船速Vが変化するのに応じて、CPU31は、参照する抑制制御用マップを刻々と切り替える。ただし、説明の都合上、船速V1に対応する抑制制御用マップを参照しながらベンチレーション抑制制御を説明する。
まず、フェーズP1から、目標スロットル開度が上昇すると、実スロットル開度も上昇していく。それに伴い、プロペラ回転数PNも水を掻きながら上昇し、船速Vも徐々に上昇していく。フェーズP2でベンチレーションが発生すると、プロペラ回転数PNは急上昇するが、エンジントルクTRKは急低下し(図4)、フェーズP3に移行する。CPU31は、プロペラ回転数PNとエンジントルクTRKとの関係が、直線L1の右下の領域に移行したとき、ベンチレーションが発生したと判定する。ベンチレーションが発生すると、CPU31は、ベンチレーション抑制制御を開始する。船速Vは上昇度合いが弱まるか、または低下する。船速Vが変化すると、ベンチレーション抑制制御で用いる抑制制御用マップも段階的に切り替わる。
まず、CPU31は、実スロットル開度を第1の所定量だけ閉じるよう開度調整部26を制御する(図5)。これにより、プロペラ回転数PNおよびエンジントルクTRKが急低下し(図4)、フェーズP4に移行する。第1の所定量は、船速に応じて予め設定されている。フェーズP4に移行すると、CPU31は、実スロットル開度を、第1の所定量より小さい微少量だけ閉じるよう開度調整部26を制御する。CPU31は、微少量だけ閉じる動作を、プロペラ28が水を掴んだと判定されるまで一定時間間隔で実行する。CPU31は、プロペラ回転数PNとエンジントルクTRKとの関係が、直線L2の左上の領域に属するようになると、プロペラ28が水を掴んだと判定する(フェーズP5)。
フェーズP5に移行し、プロペラ28が水を掴むと、プロペラ回転数PNは急低下するが、エンジントルクTRKは急上昇し(図4)、フェーズP6に移行する。この時点では、ベンチレーションは解消しているが、実スロットル開度が目標スロットル開度から大きく乖離している可能性がある。そこで、CPU31は、実スロットル開度を、第2の所定量だけ開けるよう開度調整部26を制御する。これにより、プロペラ回転数PNおよびエンジントルクTRKが急上昇し(図4)、フェーズP7に移行する。第2の所定量は、ベンチレーションを生じさせない範囲で、船速に応じて予め設定されている。
フェーズP7に移行すると、CPU31は、実スロットル開度を、第2の所定量より小さい微少量だけ開けるよう開度調整部26を制御する。CPU31は、微少量だけ開ける動作を、実スロットル開度が目標スロットル開度と一致するまで一定時間間隔で実行する。従って、実スロットル開度が目標スロットル開度へ徐々に遷移する。CPU31は、実スロットル開度が目標スロットル開度と一致すると(フェーズP8)、ベンチレーション抑制制御を終了する。このベンチレーション抑制制御を、図6のフローチャートで説明する。
図6は、スロットル制御処理のフローチャートである。この処理は、CPU31が、ROM32に格納された制御プログラムをRAM33に展開して実行することにより実現される。なお、自動で実行されるベンチレーション抑制制御を発動するか否かを、ユーザが設定可能である。例えば、ユーザは、設定操作部19によって、ベンチレーション抑制制御の発動の許可または禁止を設定することができる。この処理は、操船システムが起動され、且つ、ベンチレーション抑制制御の発動が許可されていると開始される。ベンチレーション抑制制御の発動が禁止されている場合は、通常のスロットル制御処理が実行される。図6の処理において、CPU31は、本発明における第1の取得部、第2の取得部、第3の取得部、判定部および制御部としての役割を果たす。
ステップS101では、CPU31は、その他の処理を実行する。ここでいう「その他の処理」においては、例えば、設定操作部19での設定や操作に応じた各種処理が実行される。設定操作部19でベンチレーション抑制制御の発動の禁止が指示された場合は、本フローチャートを終了し、通常のスロットル制御処理が実行される。また、操船システムを終了する指示があれば、本フローチャートを終了する処理が実行される。
ステップS102では、CPU31は、加速の意図があるか否かを判定する。ベンチレーションが発生しやすい状況でベンチレーションの発生有無を判定するためである。ここで、CPU31は、スロットルセンサ25により検知されたスロットルレバー12の操作に基づいて、加速の意図があるか否かを判定する。例えば、CPU31は、スロットルレバー12の操作速度が第1の所定値以上である場合に、加速の意図があると判定する。操作速度は、ある時間内におけるスロットルレバー12の操作位置の変化から取得される。また、スロットルレバー12の操作速度の変化度合いが第2の所定値以上である場合に、加速の意図があると判定する。これら操作速度と操作速度の変化度合いの双方から加速の意図が総合的に判定されてもよい。なお、加速の意図があるか否かの判定手法はこれらの例に限定されない。
そして、CPU31は、加速の意図があると判定できない場合は、処理をステップS101に戻す。CPU31は、加速の意図があると判定した場合は、ステップS103で、ベンチレーションの発生の有無の判定を開始する。CPU31は、上述のように、プロペラ回転数PNとエンジントルクTRKとの関係が、現在の船速Vに対応する直線L1(図4)の右下の領域に属するようになったか否かによって、ベンチレーションが発生したか否かを判定する。
CPU31は、ステップS104で、ベンチレーションが発生したか否かを判別する。そして、ベンチレーションが発生したと判定できない場合は、ステップS105で、ベンチレーション発生有無の判定開始から所定時間が経過したか否かを判別する。そして、ベンチレーション発生有無の判定開始から所定時間が経過していない場合は、ステップS104で、ベンチレーションの発生の有無の判定を継続する。ベンチレーションが発生したと判定できないまま所定時間が経過した場合は、今回の加速によってベンチレーションが発生しなかったと判断できるので、CPU31は、処理をステップS101に戻す。しかし、所定時間が経過する前にベンチレーションが発生したと判定できた場合(P2)は、CPU31は、処理をステップS106に進める。
ステップS106では、CPU31は、ベンチレーション抑制制御を開始する(P3)。まず、CPU31は、実スロットル開度を第1の所定量だけ閉じるよう開度調整部26を制御する。これにより、プロペラ回転数PNおよびエンジントルクTRKが急低下する(P4)。ステップS107では、CPU31は、プロペラ回転数PNとエンジントルクTRKとの関係が、直線L2の左上の領域に属するようになったか(直線L2を左上方向に横切ったか)否かを判別する。そして、上記関係が、直線L2の左上の領域に属していない場合は、ステップS108で、CPU31は、実スロットル開度を、第1の所定量より小さい微少量だけ閉じるよう開度調整部26を制御する。そしてCPU31は、一定時間を待って処理をステップS107に戻す。やがて、プロペラ28が水を掴み始め、上記関係が、直線L2の左上の領域に属するようになると(P5、P6)、CPU31は、処理をステップS109に進める。この場合、CPU31は、ベンチレーションが終息したと判定する。
ステップS109では、CPU31は、実スロットル開度を、第2の所定量だけ開けるよう開度調整部26を制御する。これにより、プロペラ回転数PNおよびエンジントルクTRKが急上昇する(P7)。ステップS110では、CPU31は、実スロットル開度が目標スロットル開度と一致した(目標スロットル開度に達したか)か否かを判別する。実スロットル開度が目標スロットル開度と一致していない場合は、CPU31は、ステップS111で、実スロットル開度を、第2の所定量より小さい微少量だけ開けるよう開度調整部26を制御する。そしてCPU31は、一定時間を待って処理をステップS110に戻す。ステップS110、S111の繰り返しは、実スロットル開度が目標スロットル開度に遷移させる復帰制御に該当する。やがて、実スロットル開度が目標スロットル開度と一致すると(P8)、CPU31は、ベンチレーション抑制制御を終了する。その後、CPU31は、処理をステップS101に戻す。
なお、図6の処理において、CPU31は、各処理の場面で操船者に状況を知らせる報知処理を実行してもよい。報知処理は、画面表示や音声によって実行される。例えば、CPU31は、ベンチレーション抑制制御の発動の許可・禁止の状態を報知してもよい。また、CPU31は、ベンチレーション抑制制御の開始・終了を報知してもよい。また、CPU31は、ベンチレーションが発生したと判定したこと、およびベンチレーションが終息したと判定したことを報知してもよい。
本実施の形態によれば、CPU31は、プロペラ回転数PN(エンジン回転数N)と、エンジントルクTRKと、船速Vとに基づいて、ベンチレーションの発生の有無を判定する。これにより、従来のように、エンジンの目標回転と実回転とから判定するのに比べて、ベンチレーションの発生有無を正確に判定することができる。
なお、プロペラ回転数PN(エンジン回転数N)と、エンジントルクTRKと、船速Vと、のうち少なくとも2つ基づいて、ベンチレーションの発生の有無を判定してもよい。例えば、スロットル開度を開けたのにもかかわらずエンジントルクが低下したような場合は、船速によらずベンチレーションが発生したと判定してもよい。
また、ベンチレーションが発生したと判定された場合に、スロットル開度を第1の所定量だけ閉じるので(P3→P4)、ベンチレーションを終息方向に速やかに遷移させることができる。
また、CPU31は、抑制制御用マップを用い、船速Vが属する船体速度範囲に対応する直線L1を判定閾値として用いて、ベンチレーションの発生の有無を判定するので、処理が簡単である。
また、復帰制御においては、抑制制御用マップの直線L2を判定閾値として用いて、実スロットル開度が目標スロットル開度へ遷移するよう制御するので、ベンチレーションの終息後に、操船者が意図しているスロットル開度へ戻すことができる。
また、CPU31は、スロットルレバー12の操作に基づいて、加速の意図があると判定した場合に、ベンチレーションの発生の有無の判定を開始する。これにより、ベンチレーションが発生しやすい状況となったことを条件に判定を開始するので、無駄な処理を回避することができる。
なお、所定の船体速度範囲ごとにエンジンまたはプロペラの回転数とエンジントルクとの関係を規定した第1、第2の情報として、抑制制御用マップ(図4)の直線L1、L2を例示したが、これらに限定されず、関数や演算式であってもよい。これら以外にも、例えば回転数とエンジントルクとの関係が曲線として規定されたマップを、第1または第2の情報として用いてもよい。あるいは、回転数とエンジントルクとの関係をプロットした複数の点から成るマップのほか、回転数とエンジントルクとの対応関係を規定したテーブルを用いてもよい。これらの場合、プロットや対応値がない範囲は補間処理等によって値を取得してもよい。
なお、船外機15の数は2個以上でもよい。また、本発明が適用される船舶は、船外機を備える船舶に限らず、船内外機(スターンドライブ、インボードモータ・アウトボードドライブ)、船内機(インボードモータ)、ウォータージェットドライブ等の他の形態の船舶推進機を備える船舶であってもよい。
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
15 船外機
16 エンジン
28 プロペラ
31 CPU

Claims (11)

  1. エンジンおよびプロペラを有する船舶推進機の制御装置であって、
    前記エンジンまたは前記プロペラの回転数を取得する第1の取得部と、
    エンジントルクを取得する第2の取得部と、
    前記船舶推進機を備えた船体の速度を取得する第3の取得部と、
    前記第1の取得部により取得された回転数と、前記第2の取得部により取得されたエンジントルクと、前記第3の取得部により取得された速度と、のうち少なくとも2つに基づいて、ベンチレーションの発生の有無を判定する判定部と、を有する、船舶推進機の制御装置。
  2. 前記判定部は、所定の船体速度範囲ごとにエンジンまたはプロペラの回転数とエンジントルクとの関係を規定した第1の情報を参照し、取得された前記速度が属する船体速度範囲に対応する前記第1の情報を判定閾値として用いて、ベンチレーションの発生の有無を判定する、請求項1に記載の船舶推進機の制御装置。
  3. 前記第1の情報において、船体速度が高いほど、同じ回転数に対するエンジントルクが低く設定されており、
    前記判定部は、取得された前記回転数に対する取得された前記エンジントルクが、取得された前記回転数に対して前記第1の情報で規定されるエンジントルクよりも低くなった場合に、ベンチレーションが発生したと判定する、請求項2に記載の船舶推進機の制御装置。
  4. 前記エンジンのスロットル開度を調整する開度調整部と、
    前記判定部によりベンチレーションが発生したと判定された場合に、スロットル開度を第1の所定量だけ閉じるよう前記開度調整部を制御する制御部と、を有する、請求項2または3に記載の船舶推進機の制御装置。
  5. 前記制御部は、スロットル開度を前記第1の所定量だけ閉じるよう前記開度調整部を制御した後、前記所定の船体速度範囲ごとにエンジンまたはプロペラの回転数とエンジントルクとの関係を規定した第2の情報を参照し、取得された前記速度が属する船体速度範囲に対応する前記第2の情報を判定閾値として用いて、スロットル開度を手動で調整するスロットル操作子の操作位置に対応するスロットル開度へ遷移するよう、前記開度調整部を制御する復帰制御を行う、請求項4に記載の船舶推進機の制御装置。
  6. 前記第2の情報において、船体速度が高いほど、同じ回転数に対するエンジントルクが低く設定され、且つ、同じ船体速度に関し、前記第2の情報においては、前記第1の情報に対し、同じ回転数に対するエンジントルクが高く設定されており、
    前記制御部は、前記復帰制御において、取得された前記回転数に対する取得された前記エンジントルクが、取得された前記回転数に対して前記第2の情報で規定されるエンジントルクよりも高くなるまで前記開度調整部を制御した後に、スロットル開度を第2の所定量だけ開けるよう前記開度調整部を制御する、請求項5に記載の船舶推進機の制御装置。
  7. 前記制御部は、前記復帰制御において、スロットル開度を前記第2の所定量だけ開けるよう前記開度調整部を制御した後、前記スロットル操作子の操作位置に対応するスロットル開度へ遷移するまでスロットル開度をさらに開けるよう、前記開度調整部を制御する、請求項6に記載の船舶推進機の制御装置。
  8. 前記エンジンのスロットル開度を調整する開度調整部と、
    前記判定部によりベンチレーションが発生したと判定された場合に、スロットル開度を閉じるよう前記開度調整部を制御する制御部と、を有する、請求項1に記載の船舶推進機の制御装置。
  9. 前記判定部は、スロットル開度を手動で調整するスロットル操作子の操作に基づいて、加速の意図があるか否かを判定し、加速の意図があると判定した場合に、前記ベンチレーションの発生の有無の判定を開始する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の船舶推進機の制御装置。
  10. エンジンおよびプロペラを有する船舶推進機の制御方法であって、
    前記エンジンまたは前記プロペラの回転数を取得し、
    エンジントルクを取得し、
    前記船舶推進機を備えた船体の速度を取得し、
    取得された前記回転数と、取得された前記エンジントルクと、取得された前記速度と、のうち少なくとも2つに基づいて、ベンチレーションの発生の有無を判定する、船舶推進機の制御方法。
  11. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の船舶推進機の制御装置を備える、船舶。
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