JP2021106577A - ビール様発泡性飲料 - Google Patents
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Abstract
【課題】苦味が弱いビール様発泡性飲料であって、酸臭が抑制されている、ビール様発泡性飲料、及びその製造方法を提供する。【解決手段】[γ−ノナラクトンの含有量]/[2−メチルチオエタノールの含有量]が0.65以上であり、苦味の強さが5mg/Lのイソα酸水溶液より小さい、ビール様発泡性飲料、及び、苦味の強さが、5mg/Lのイソα酸水溶液より小さいビール様発泡性飲料の製造方法であって、[γ−ノナラクトンの含有量]/[2−メチルチオエタノールの含有量]が0.65以上となるように、γ−ノナラクトンの含有量及び2−メチルチオエタノールの含有量を調整する、ビール様発泡性飲料の製造方法。【選択図】なし
Description
本発明は、ホップを原料としない、又はホップの使用量が低いことによって苦味が抑えられているビール様発泡性飲料、及びその製造方法に関する。
ビールや発泡酒等のビール様発泡性飲料は、消費者の嗜好の多様化にともない、多種多様の商品が上市されている。例えば、ビールの特徴的な苦味や香味は主にホップによりもたらされるが、近年は、ホップを原料としない、苦味の抑えられたビール様発泡性飲料も開発されている。
ホップは、ビール様発泡性飲料に香りや苦みを付与するだけでなく、その抗菌作用によりビール有害菌の増殖を抑えるという働きもある。特に、日本国においては、このホップによる抗菌作用に加えて、衛生管理の徹底、濾過技術の発達によって、加熱殺菌処理を行わないビールやビール様発泡性飲料が広く提供されている。
ホップを使用しない場合は、その抗菌作用を利用できないため、ビール様発泡性飲料の加熱殺菌処理(パストリゼーション)が必要となる。しかし、加熱殺菌処理によって、不快な香り(オフフレーバー)が生じることがある。加熱殺菌処理によって生じるオフフレーバーの問題を解決する方法として、例えば、リナロール、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン、又は2−アセチルピラジンを含有させることで、加熱工程により生じたオフフレーバーをマスキングする方法が開示されている(特許文献1参照。)。
一方で、特許文献2には、麦芽使用比率が小さいビールテイスト飲料に2−メチルチオエタノール(2-(Methylthio)ethanol)をその他の複数の香気成分と組み合わせて添加することによって、香味を改善できることが記載されている。また、特許文献3には、いわゆる低糖質のビールテイスト飲料にγ−ノナラクトン(γ-nonalactone)を添加することによって、コクやビールらしい風味を付与できることが開示されている。
Vesely et al., Journal of Agricultural and Food Chemistry, 2003, vol.51, p.6941-6944.
苦味の少ないビール様発泡性飲料では、2−メチルチオエタノールに由来する酸臭がより強く感じられる。
本発明は、ホップを原料としない又はホップの使用量が低く抑えられていて苦味が弱いビール様発泡性飲料であって、2−メチルチオエタノールに由来する酸臭が抑えられているビール様発泡性飲料、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、苦味の弱いビール様発泡性飲料において、2−メチルチオエタノールの含有量に対してγ−ノナラクトンを特定の割合で含有させることにより、2−メチルチオエタノールに由来する酸臭が抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明に係るビール様発泡性飲料、ビール様発泡性飲料の製造方法、及びビール様発泡性飲料の香味改善方法は、下記[1]〜[13]である。
[1] [γ−ノナラクトンの含有量]/[2−メチルチオエタノールの含有量]が0.65以上であり、
苦味の強さが5mg/Lのイソα酸水溶液より小さい、ビール様発泡性飲料。
[2] [γ−ノナラクトンの含有量]/[2−メチルチオエタノールの含有量]が1.50以下である、前記[1]のビール様発泡性飲料。
[3] ホップを原料としない、前記[1]又は[2]のビール様発泡性飲料。
[4] 苦味料を含有していない、前記[1]〜[3]のいずれかのビール様発泡性飲料。
[5] ホップ香料を含有する、前記[1]〜[4]のいずれかのビール様発泡性飲料。
[6] 発酵飲料である、前記[1]〜[5]のいずれかのビール様発泡性飲料。
[7] 苦味の強さが、5mg/Lのイソα酸水溶液より小さいビール様発泡性飲料の製造方法であって、
[γ−ノナラクトンの含有量]/[2−メチルチオエタノールの含有量]が0.65以上となるように、γ−ノナラクトンの含有量及び2−メチルチオエタノールの含有量を調整する、ビール様発泡性飲料の製造方法。
[8] γ−ノナラクトン及び2−メチルチオエタノールからなる群より選択される1種以上を原料として用いる、前記[7]のビール様発泡性飲料の製造方法。
[9] ホップを原料として用いない、前記[7]又は[8]のビール様発泡性飲料の製造方法。
[10] 製造されたビール様発泡性飲料を、容器に充填して加熱殺菌処理を行う、前記[7]〜[9]のいずれか一項に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
[11] 苦味の強さが、5mg/Lのイソα酸水溶液より小さいビール様発泡性飲料の製造方法であって、
[γ−ノナラクトンの含有量]/[2−メチルチオエタノールの含有量]が0.65以上となるように、γ−ノナラクトンの含有量及び2−メチルチオエタノールの含有量を調整する、ビール様発泡性飲料の香味改善方法。
[12] 前記ビール様発泡性飲料が、ホップを原料として用いずに製造される、前記[11]のビール様発泡性飲料の香味改善方法。
[13] 前記ビール様発泡性飲料が、加熱殺菌処理を経て製造される、前記[11]又は[12]のビール様発泡性飲料の香味改善方法。
[1] [γ−ノナラクトンの含有量]/[2−メチルチオエタノールの含有量]が0.65以上であり、
苦味の強さが5mg/Lのイソα酸水溶液より小さい、ビール様発泡性飲料。
[2] [γ−ノナラクトンの含有量]/[2−メチルチオエタノールの含有量]が1.50以下である、前記[1]のビール様発泡性飲料。
[3] ホップを原料としない、前記[1]又は[2]のビール様発泡性飲料。
[4] 苦味料を含有していない、前記[1]〜[3]のいずれかのビール様発泡性飲料。
[5] ホップ香料を含有する、前記[1]〜[4]のいずれかのビール様発泡性飲料。
[6] 発酵飲料である、前記[1]〜[5]のいずれかのビール様発泡性飲料。
[7] 苦味の強さが、5mg/Lのイソα酸水溶液より小さいビール様発泡性飲料の製造方法であって、
[γ−ノナラクトンの含有量]/[2−メチルチオエタノールの含有量]が0.65以上となるように、γ−ノナラクトンの含有量及び2−メチルチオエタノールの含有量を調整する、ビール様発泡性飲料の製造方法。
[8] γ−ノナラクトン及び2−メチルチオエタノールからなる群より選択される1種以上を原料として用いる、前記[7]のビール様発泡性飲料の製造方法。
[9] ホップを原料として用いない、前記[7]又は[8]のビール様発泡性飲料の製造方法。
[10] 製造されたビール様発泡性飲料を、容器に充填して加熱殺菌処理を行う、前記[7]〜[9]のいずれか一項に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
[11] 苦味の強さが、5mg/Lのイソα酸水溶液より小さいビール様発泡性飲料の製造方法であって、
[γ−ノナラクトンの含有量]/[2−メチルチオエタノールの含有量]が0.65以上となるように、γ−ノナラクトンの含有量及び2−メチルチオエタノールの含有量を調整する、ビール様発泡性飲料の香味改善方法。
[12] 前記ビール様発泡性飲料が、ホップを原料として用いずに製造される、前記[11]のビール様発泡性飲料の香味改善方法。
[13] 前記ビール様発泡性飲料が、加熱殺菌処理を経て製造される、前記[11]又は[12]のビール様発泡性飲料の香味改善方法。
本発明により、ホップを原料としない又はホップの使用量が低く抑えられていて苦味が弱いにもかかわらず、2−メチルチオエタノールに由来する酸臭が抑制されたビール様発泡性飲料を提供できる。
本発明及び本願明細書においては、「ビールらしさ」とは、製品名称・表示にかかわらず、香味上ビールを想起させる呈味のことを意味する。つまり、ビールらしさを有する発泡性飲料(ビール様発泡性飲料)とは、アルコール含有量、麦芽及びホップの使用の有無、発酵の有無に関わらず、ビールと同等の又はそれと似た風味・味覚及びテクスチャーを有し、高い止渇感・ドリンカビリティー(飽きずに何杯も飲み続けられる性質)を有する発泡性飲料を意味する。すなわち、本発明に係るビール様発泡性飲料は、アルコール飲料であってもよく、アルコール含量が1容量%未満であるいわゆるノンアルコール飲料又はローアルコール飲料であってもよい。また、麦芽を原料とする飲料であってもよく、麦芽を原料としない飲料であってもよく、発酵工程を経て製造される発酵飲料であってもよく、発酵工程を経ずに製造される非発酵飲料であってもよい。ビール様発泡性飲料としては、具体的には、ビール、麦芽を原料とする発泡酒、麦芽を使用しない発泡性アルコール飲料、ローアルコール発泡性飲料、ノンアルコールビール等が挙げられる。その他、麦芽を原料とし、発酵工程を経て製造された飲料を、アルコール含有蒸留液と混和して得られたリキュール類であってもよい。
なお、アルコール含有蒸留液とは、蒸留操作により得られたアルコールを含有する溶液であり、一般に蒸留酒に分類されるものを用いることができる。例えば、原料用アルコールであってもよく、スピリッツ、ウィスキー、ブランデー、ウオッカ、ラム、テキーラ、ジン、焼酎等の蒸留酒等を用いることができる。
本発明及び本願明細書において、「国際苦味価(IBU;International Bitterness Units)」とは、イソフムロンの含有量に基づく苦味の指標である。ビール様発泡性飲料をはじめとする飲料の国際苦味価は、例えばEBC法(ビール酒造組合:「ビール分析法」8.15 1990年)により測定することができる。具体的には、サンプルに酸を加えた後イソオクタンで抽出し、遠心分離処理後に得られたイソオクタン層の、純粋なイソオクタンを対照に測定した275nmにおける吸光度に定数(50)を乗じた値(IBU)である。なお、ビールらしい苦味のあるビール様発泡性飲料の国際苦味価は、一般的に、15以上である。
本発明及び本願明細書において、「苦味の強さが、5mg/Lのイソα酸水溶液より小さいビール様発泡性飲料」は、国際苦味価が5未満のビール様発泡性飲料に相当する。以降において、「苦味の強さが、5mg/Lのイソα酸水溶液より小さいビール様発泡性飲料」は、「苦味が弱いビール様発泡性飲料(低苦味ビール様発泡性飲料)」ということがある。イソフムロン以外の苦味成分を含有していないビール様発泡性飲料の場合には、低苦味ビール様発泡性飲料は、国際苦味価が5未満のビール様発泡性飲料に相当する。
国際苦味価が5未満のビール様発泡性飲料は、ホップを原料としない、又はホップの使用量を充分に低減させることにより製造できる。すなわち、低苦味ビール様発泡性飲料は、ホップを原料としない、又はホップの使用量を低く抑えることにより製造できる。ここで、「ホップ」には、生ホップ、乾燥ホップ、ホップペレット等に加えて、ホップ加工品も含まれる。ホップ加工品としては、例えば、ホップから苦味成分を抽出したホップエキス、イソ化ホップエキス、テトラハイドロイソフムロン、ヘキサハイドロイソフムロン等のホップ中の苦味成分をイソ化した成分を含むホップ加工品が挙げられる。
香気成分組成が同じ飲料であっても、苦味が強い飲料と苦味が弱い飲料では、感じられる香味が異なる場合が多い。これは、苦味が強い飲料では苦味によって比較的弱い香りや呈味はマスクされているが、苦味が弱い飲料では、このマスキング効果がないため、飲用時に香りや呈味の特徴を感じやすくなっているためと推察される。
ホップが使用されている、苦味の強さが一般的なビール様発泡性飲料では、2−メチルチオエタノールの含有量が多くなると、華やかで自然な香りになり、香味は改善される傾向にある。しかし、低苦味ビール様発泡性飲料では、2−メチルチオエタノールに由来する酸臭が目立つ。この酸臭は、ビール様発泡性飲料としては好ましくない匂いである。
本発明においては、低苦味ビール様発泡性飲料に対して、飲料中の2−メチルチオエタノールの含有量とγ−ノナラクトンの含有量を、[γ−ノナラクトンの含有量]/[2−メチルチオエタノールの含有量](質量比)(以下、「N/M比」ということがある)が0.65以上となるように調整する。低苦味ビール様発泡性飲料のN/M比を0.65以上に調整することにより、2−メチルチオエタノールに由来する酸臭が抑えられ、苦味の強いビール様発泡性飲料と同様に、華やかな香りが良好になり、飲料の香味が改善される。低苦味ビール様発泡性飲料のN/M比は、0.65以上であれば特に限定されるものではないが、ビール様発泡性飲料として求められる呈味の品質等の点から、当該N/M比は0.65以上1.50以下が好ましく、0.65以上1.35以下がより好ましく、0.70以上1.30以下がさらに好ましい。
本発明に係る低苦味ビール様発泡性飲料の2−メチルチオエタノールの含有量は、N/M比が0.65以上となる量であれば特に限定されるものではないが、20μg/L以上が好ましく、30μg/L以上がより好ましく、40μg/L以上がさらに好ましい。また、ビール様発泡性飲料として求められる呈味の品質等の点から、低苦味ビール様発泡性飲料の2−メチルチオエタノールの含有量は、1000μg/L以下が好ましく、200μg/L以下がより好ましく、100μg/L以下がさらに好ましい。
本発明に係る低苦味ビール様発泡性飲料のγ−ノナラクトンの含有量は、N/M比が0.65以上となる量であれば特に限定されるものではないが、15μg/L以上が好ましく、20μg/L以上がより好ましく、30μg/L以上がさらに好ましい。また、ビール様発泡性飲料として求められる呈味の品質等の点から、低苦味ビール様発泡性飲料のγ−ノナラクトンの含有量は、150μg/L以下が好ましく、100μg/L以下がより好ましく、80μg/L以下がさらに好ましい。
低苦味ビール様発泡性飲料のN/M比は、2−メチルチオエタノールやγ−ノナラクトン自体を原料として添加することにより調節できる。使用する原料としては、合成の2−メチルチオエタノールであってもよく、天然物から抽出・精製された2−メチルチオエタノールであってもよく、2−メチルチオエタノールを含有する香料であってもよい。同様に、使用する原料としては、合成のγ−ノナラクトンであってもよく、天然物から抽出・精製されたγ−ノナラクトンであってもよく、γ−ノナラクトンを含有する香料であってもよい。
ビール様発泡性飲料の2−メチルチオエタノール及びγ−ノナラクトンの含有量の測定方法は、特に限定されるものではない。2−メチルチオエタノール及びγ−ノナラクトンは、例えば、非特許文献1に記載の方法のように、他のアルデヒド類やアルコール類と同様に、誘導体化した後、ガスクロマトグラフィ−質量分析法(GC/MS)で分析することにより、定量的に測定することができる。
N/M比を調整して酸臭を改善する低苦味ビール様発泡性飲料としては、苦味の強さが5mg/Lのイソα酸水溶液より小さければ、イソフムロン以外の苦味料を含有していてもよい。酸臭改善効果がより十分に発揮されることから、苦味料を含有していないほうが好ましい。当該苦味料としては、例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、ナリンジン、クワシン、キニーネ、モモルデシン、クエルシトリン、テオブロミン、カフェイン等の苦味付与成分、及びゴーヤ、センブリ茶、苦丁茶、ニガヨモギ抽出物、ゲンチアナ抽出物、キナ抽出物等の苦味付与素材が代表的に挙げられる。これらの苦味料は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
N/M比を調整して酸臭を改善する低苦味ビール様発泡性飲料としては、ホップ香料を含有するものが好ましい。加熱工程や経時劣化などによって生じるオフフレーバーは、ホップを使用しているビール様発泡性飲料の場合、ホップに由来する香りによってマスキングされるため、実際には問題にならないことも多い。本発明においても、ホップ香料を含有することにより、2−メチルチオエタノール及びγ−ノナラクトン等によるオフフレーバーを低減させることができる。ホップ香料としては、ホップに由来し、ビールに一般的に含まれている香気成分を主たる成分とする香料を用いることができる。また、市販されている各種ホップ香料を適宜使用することもできる。
本発明に係るビール様発泡性飲料は、よりビールらしさを高め、すっきりとした味わいが特徴のピルスナータイプのビールを想起させるため、色度がEBC単位で4〜12であることが好ましく、4〜8であることがより好ましい。色度は、カラメル色素等の着色料を適宜含有させることにより調整できる。なお、色度は、EBC(European Brewery Convention)のAnalytica−EBC標準法、又はこれに準じた方法により測定できる。EBCとは、ビールの分析での色度の単位で、ビールの色の濃淡を数値(EBC色度の9つのガラスディスクを持ったコンパレーターにより目視で測定する、若しくは波長430nmでの吸光度を基に算出する。)であらわしたものである。
本発明に係るビール様発泡性飲料は、ホップを原料としない又はホップの使用量を充分に低減させること、及びN/M比を調整すること以外は、一般的な発酵ビール様発泡性飲料や非発酵ビール様発泡性飲料と同様にして製造できる。そこで、一般的な発酵ビール様発泡性飲料と非発酵ビール様発泡性飲料の製造方法を説明する。
発酵工程を経て製造される発酵ビール様発泡性飲料は、一般的には、仕込(発酵原料液調製)、発酵、貯酒、濾過の工程で製造することができる。
仕込工程(発酵原料液調製工程)として、穀物原料及び糖質原料からなる群より選択される1種以上から発酵原料液を調製する。具体的には、発酵原料と原料水とを含む混合物を加温し、澱粉質を糖化して糖液を調製した後、得られた糖液を煮沸し、その後固体分の少なくとも一部を除去して発酵原料液を調製する。
まず、穀物原料と糖質原料の少なくともいずれかと原料水とを含む混合物を調製して加温し、穀物原料等の澱粉質を糖化させて糖液を調製する。糖液の原料としては、穀物原料のみを用いてもよく、糖質原料のみを用いてもよく、両者を混合して用いてもよい。
穀物原料としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、燕麦、及びこれらの麦芽等の麦類、米、トウモロコシ、大豆等の豆類、イモ類等が挙げられる。穀物原料は、穀物シロップ、穀物エキス等として用いることもできるが、粉砕処理して得られる穀物粉砕物として用いることが好ましい。穀物類の粉砕処理は、常法により行うことができる。穀物粉砕物としては、麦芽粉砕物、コーンスターチ、コーングリッツ等のように、粉砕処理の前後において通常なされる処理を施したものであってもよい。本発明においては、用いられる穀物粉砕物は、麦芽粉砕物であることが好ましい。麦芽粉砕物を用いることにより、ビールらしさがよりはっきりとした発酵ビール様発泡性飲料を製造することができる。麦芽粉砕物は、大麦、例えば二条大麦を、常法により発芽させ、これを乾燥後、所定の粒度に粉砕したものであればよい。
また、本発明において用いられる穀物原料としては、1種類の穀物原料であってもよく、複数種類の穀物原料を混合したものであってもよい。例えば、主原料として麦芽粉砕物を、副原料として米やトウモロコシの粉砕物を用いてもよい。麦芽使用比率(穀物原料と糖質原料の総量に対する、麦芽の使用量の割合(質量比))は、すっきりとした味わいにするためには低くすることが好ましく、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。また、コクのある味わいにするためには高くすることが好ましく、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
糖質原料とは、糖類、すなわち、比較的低分子で水に溶け、一般に甘味を有する炭水化物である。糖質原料としては、平成11年6月25日付けの酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達第3条において規定される糖類、すなわち、「三糖類以下で水に溶け一般に甘味を有する炭水化物又はこれらのものの混合物」であることが好ましい。糖質原料とする糖類は、単糖類、二糖類及び三糖類からなる群から選ばれる少なくとも1種であってよく、更に四糖以上の糖類を含んでいてもよい。単糖類としては、例えば、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、キシロース、アラビノース、タガトース等が挙げられる。二糖類としては、例えば、ショ糖、ラクトース、麦芽糖、イソマルトース、トレハロース、セロビオース等が挙げられる。三糖類としては、例えば、マルトトリオース、イソマルトトリオース、ラフィノース等が挙げられる。四糖以上の糖類としては、例えば、スタキオース、マルトテトラオース等が挙げられる。糖類の形態は、例えば、粉末状、顆粒状、ペースト状、液状等であってもよい。液状の糖類としては、例えば、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖、砂糖混合異性化液糖等の液糖であってもよい。糖類はグラニュー糖又は上白糖であってもよい。
当該混合物には、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で、飲料として通常配合される穀物原料等と水以外の副原料を加えてもよい。当該副原料としては、例えば、ホップ、食物繊維、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖、でんぷん物質分解物(でんぷんを酸又は酵素で分解して得られるもの)、酵母エキス、果汁、苦味料、着色料、香草、香料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、酸味料、塩類等が挙げられる。また、必要に応じて、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ等の糖化酵素やプロテアーゼ等の酵素剤を添加することができる。これらの各原料は、一般に市販されているものを使用することができる。
甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやでんぷんなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL−酒石酸、L−酒石酸、DL−酒石酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、酢酸、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。
糖化処理は、穀物原料等由来の酵素や、別途添加した酵素を利用して行う。糖化処理時の温度や時間は、用いた穀物原料等の種類、発酵原料全体に占める穀物原料の割合、添加した酵素の種類や混合物の量、目的とする発酵ビール様発泡性飲料の品質等を考慮して、適宜調整される。例えば、糖化処理は、穀物原料等を含む混合物を35〜70℃で20〜90分間保持する等、常法により行うことができる。
糖化処理後に得られた糖液を煮沸することにより、煮汁(糖液の煮沸物)を調製することができる。糖液は、煮沸処理前に濾過し、得られた濾液を煮沸処理することが好ましい。また、この糖液の濾液に替わりに、麦芽エキスに温水を加えたものを用い、これを煮沸してもよい。煮沸方法及びその条件は、適宜決定することができる。
煮沸処理前又は煮沸処理中に、香草等を適宜添加することにより、所望の香味を有する発酵ビール様発泡性飲料を製造することができる。例えば、ホップを煮沸処理前又は煮沸処理中に添加し、ホップの存在下で煮沸処理することにより、ホップの風味・香気成分、特に苦味成分を効率よく煮出することができる。ホップの添加量、添加態様(例えば数回に分けて添加するなど)及び煮沸条件は、最終的に得られるビール様発泡性飲料の苦味の強さが、5mg/Lのイソα酸水溶液より小さくなるように、適宜決定することができる。
煮沸処理後に得られた煮汁には、沈殿により生じたタンパク質等の粕が含まれている。そこで、煮汁から粕等の固体分の少なくとも一部を除去する。粕の除去は、いずれの固液分離処理で行ってもよいが、一般的には、ワールプールと呼ばれる槽を用いて沈殿物を除去する。この際の煮汁の温度は、15℃以上であればよく、一般的には50〜100℃程度で行われる。粕を除去した後の煮汁(濾液)は、プレートクーラー等により適切な発酵温度まで冷却する。この粕を除去した後の煮汁が、発酵原料液となる。
次いで、発酵工程として、冷却した発酵原料液に酵母を接種して、発酵を行う。冷却した発酵原料液は、そのまま発酵工程に供してもよく、所望のエキス濃度に調整した後に発酵工程に供してもよい。発酵に用いる酵母は特に限定されるものではなく、通常、酒類の製造に用いられる酵母の中から適宜選択して用いることができる。上面発酵酵母であってもよく、下面発酵酵母であってもよいが、大型醸造設備への適用が容易であることから、下面発酵酵母であることが好ましい。
さらに、貯酒工程として、得られた発酵液を、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、濾過工程として、熟成後の発酵液を濾過することにより、酵母及び当該温度域で不溶なタンパク質等を除去して、目的の発酵ビール様発泡性飲料を得ることができる。当該濾過処理は、酵母を濾過除去可能な手法であればよく、例えば、珪藻土濾過、平均孔径が0.4〜1.0μm程度のフィルターによるフィルター濾過等が挙げられる。
本発明に係るビール様発泡性飲料は、アルコール飲料であることが好ましいが、ノンアルコール飲料や低アルコール飲料であってもよい。発酵工程において、発酵度が低くなるように発酵条件を適宜調整したり、得られた発酵液からアルコール分を除去したり、得られた発酵液を希釈する等により、ノンアルコール飲料や低アルコール飲料を得ることができる。
2−メチルチオエタノール及びγ−ノナラクトンを原料として添加する場合、煮沸工程による損失を避けるため、煮沸処理後に添加することが好ましく、貯酒工程以降の発酵液に添加することがより好ましい。
製造された発酵ビール様発泡性飲料は、容器に充填される。当該ビール様発泡性飲料を充填する容器としては、特に限定されるものではない。具体的には、ガラス瓶、缶、可撓性容器等が挙げられる。可撓性容器としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の可撓性樹脂を成形してなる容器が挙げられる。可撓性容器は、単層樹脂からなるものであってもよく、多層樹脂からなるものであってもよい。
本発明に係るビール様発泡性飲料は、ホップを原料としない又はホップの使用量が充分に低減されているため、ホップに由来する抗菌成分を含有しない又はその含有量が非常に少ない。このため、容器に充填された容器詰発酵ビール様発泡性飲料は、加熱殺菌処理されることが好ましい。加熱殺菌処理は、保管中の微生物増殖を防ぐために十分な殺菌強度であればよく、ビール様発泡性飲料のアルコール濃度等を考慮して適宜決定される。例えば、60〜85℃で0.5〜60分間程度、好ましくは60〜80℃で1〜30分間程度、より好ましくは60〜70℃で5〜15分間程度の加熱殺菌処理を行うことができる。
発酵工程を経ずに製造される非発酵ビール様発泡性飲料は、一般的には、各原料を混合する方法(調合法)によって製造できる。例えば、具体的には、各原料を混合することにより、調合液を調製する調合工程と、得られた調合液に炭酸ガスを加えるガス導入工程と、により製造することができる。
まず、調合工程において、原料を混合することにより、調合液を調製する。調合工程においては、炭酸ガス以外の全ての原料を混合した調合液を調製することが好ましい。各原料を混合する順番は特に限定されるものではない。原料水に、全ての原料を同時に添加してもよく、先に添加した原料を溶解させた後に残る原料を添加する等、順次原料を添加してもよい。また、例えば、原料水に、固形(例えば粉末状や顆粒状)の原料及び必要に応じてアルコールを混合してもよく、固形原料を予め水溶液としておき、これらの水溶液に、原料水、及び必要に応じてアルコールを混合してもよい。
原料としては、2−メチルチオエタノール及びγ−ノナラクトンからなる群より選択される1種以上と、苦味料、酸味料、甘味料、着色料、香味料、エタノール(原料アルコール)、乳化剤、多糖類、水溶性食物繊維、タンパク質若しくはその分解物等が挙げられる。
酸味料としては、安全性と香味の点から無機酸よりも有機酸を用いることがより好ましい。有機酸としては、一般的に飲食品の製造に使用されているものであれば特に限定されるものではなく、例えば、乳酸、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸、及びそれらの塩等が挙げられる。これらの有機酸は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。
苦味料としては、前記で挙げられたものを用いることができる。また、ホップ、イソα酸、テトライソα酸、β酸の酸化物等のイソフムロンを苦味料として用いてもよいが、この場合には、最終的に得られるビール様発泡性飲料の苦味の強さが、5mg/Lのイソα酸水溶液より小さくなるように、含有量を適宜調整する。苦味料は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
甘味料としては、ショ糖、ブドウ糖、果糖、異性化液糖、及び高甘味度甘味料等が挙げられる。高甘味度甘味料としては、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ネオテーム、ステビア、及び酵素処理ステビア等が挙げられる。これらの甘味料は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
着色料としては、カラメル色素等が挙げられる。着色料は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
香味料(2−メチルチオエタノール及びγ−ノナラクトンは除く)としては、ビール抽出物、ビール香料、ホップ香料等が挙げられる。これらの香味料は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
香味料(2−メチルチオエタノール及びγ−ノナラクトンは除く)としては、ビール抽出物、ビール香料、ホップ香料等が挙げられる。これらの香味料は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
乳化剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート等が挙げられる。
多糖類としては、でんぷん、デキストリン等が挙げられる。デキストリンは、でんぷんを加水分解して得られる糖質であって、オリゴ糖(3〜10個程度の単糖が重合した糖質)よりも大きなものを指す。これらの多糖類は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
水溶性食物繊維とは、水に溶解し、かつヒトの消化酵素により消化されない又は消化され難い炭水化物を意味する。水溶性食物繊維としては、例えば、大豆食物繊維(可溶性大豆多糖類)、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、ガラクトマンナン、イヌリン、グアーガム分解物、ペクチン、アラビアゴム等が挙げられる。これらの水溶性食物繊維は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
調合工程において調製された調合液に、不溶物が生じた場合には、ガス導入工程の前に、当該調合液に対して濾過等の不溶物を除去する処理を行うことが好ましい。不溶物除去処理は、特に限定されるものではなく、濾過法、遠心分離法等の当該技術分野で通常用いられている方法で行うことができる。本発明においては、不溶物は濾過除去することが好ましく、珪藻土濾過により除去することがより好ましい。
次いで、ガス導入工程として、調合工程により得られた調合液に炭酸ガスを加える。これにより、非発酵ビール様発泡性飲料を得る。炭酸を加えることによって、ビールと同様の爽快感が付与される。なお、炭酸ガスの添加は、常法により行うことができる。例えば、調合工程により得られた調合液、及び炭酸水を混合してよく、調合工程により得られた調合液に炭酸ガスを直接加えて溶け込ませてもよい。
炭酸ガスを添加した後、得られた非発酵ビール様発泡性飲料に対して、さらに濾過等の不溶物を除去する処理を行ってもよい。不溶物除去処理は、特に限定されるものではなく、当該技術分野で通常用いられている方法で行うことができる。
製造された非発酵ビール様発泡性飲料は、容器に充填された後、加熱殺菌処理がなされることが好ましい。充填される容器や加熱殺菌処理の方法は、発酵ビール様発泡性飲料と同様にして行うことができる。
次に実施例及び参考例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。
<香気成分の濃度の測定>
以降の実施例において、2−メチルチオエタノール、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、カプロン酸エチル、及びカプリル酸エチルのビール様発泡性飲料中の濃度は、非特許文献1に記載の測定方法と同様にして、固相マイクロ抽出(SPME)ファイバー中で、アルデヒド類の捕集(濃縮)と誘導体化を同時に行い、GC/MSにより測定した。
以降の実施例において、2−メチルチオエタノール、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、カプロン酸エチル、及びカプリル酸エチルのビール様発泡性飲料中の濃度は、非特許文献1に記載の測定方法と同様にして、固相マイクロ抽出(SPME)ファイバー中で、アルデヒド類の捕集(濃縮)と誘導体化を同時に行い、GC/MSにより測定した。
具体的には、誘導体化試薬として、6g/Lに調製したO−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジル)−ヒドロキシルアミン(PFBOA)(東京化成社製)水溶液100μLと、ヘキサン洗浄水10mLを、20mL容ガラスバイアルに入れ、クリンプキャップで密封した。次に、SPMEファイバー(PDMS/DVB:65μm、1cm、 57327−U 24gauge、SPELCO社製)を、PFBOA溶液入れた20mL容ガラスバイアルのヘッドスペースに、50℃、10分間露出させた。
サンプルであるビール様発泡性飲料10mLを、20mL容ガラスバイアルに入れ、クリンプキャップで密封した。続いて、PFBOAを捕集したSPMEファイバーを、サンプルを入れた20mL容ガラスバイアルのヘッドスペースに、50℃、60分間露出させた。
次いで、捕集してPFBOA誘導体化したサンプル中のアルデヒド類等を、下記条件でGC/MS分析した。
(GC/MS条件)
GC/MS装置:HP6890/5973(アジレント・テクノロジー社製)
キャピラリカラム:アジレントJ&W DB−5(30m×0.25mm×0.50μm、アジレント・テクノロジー社製)
キャリアガス:ヘリウム
流量:1.1mL/分
注入口温度:250℃
パージバルブ時間を30秒間
注入モード:スプリットレスモード
温度プログラム:40℃で2分間保持→140℃まで10℃/分で昇温→250℃まで7℃/分で昇温→250℃で3分間保持→12℃/分で300℃まで昇温→300℃で5分間保持
GC/MS装置:HP6890/5973(アジレント・テクノロジー社製)
キャピラリカラム:アジレントJ&W DB−5(30m×0.25mm×0.50μm、アジレント・テクノロジー社製)
キャリアガス:ヘリウム
流量:1.1mL/分
注入口温度:250℃
パージバルブ時間を30秒間
注入モード:スプリットレスモード
温度プログラム:40℃で2分間保持→140℃まで10℃/分で昇温→250℃まで7℃/分で昇温→250℃で3分間保持→12℃/分で300℃まで昇温→300℃で5分間保持
PFBOA誘導体の同定は、電子衝撃イオン化法を用いてスキャンモードでマススペクトルを測定することによって行った。その結果、表1に示すm/zが、分析した各物質の主要なフラグメントイオンであることを確認した。
それぞれのピークについて、SIMモードで測定を行い、標準添加法によりPFBOA誘導体の定量を行った。幾何異性体のある化合物に関しては、幾何異性体によるピークの合計面積を当該化合物のピークとして使用した。なお、各化合物の測定に使用した内部標準物質は表1に記載した通りである。
[参考例1]
2−メチルチオエタノールが、発酵ビール様発泡性飲料の香り、特に酸臭に与える影響を調べた。
2−メチルチオエタノールが、発酵ビール様発泡性飲料の香り、特に酸臭に与える影響を調べた。
まず、20kgの麦芽と10kgのコーンスターチに原料水を混合した混合物を常法に従って加温して糖化した後、76℃で酵素を失活させて糖化液を製造した。得られた糖化液を濾過し、得られた濾液を煮沸窯に入れ、200Lになるように水を加えた後、70分間煮沸して麦汁(穀物煮汁)を得た。ホップを原料とする場合には、適量を煮沸前の濾液に添加した。その後、当該麦汁に湯を加えて200Lになるように液量を再調整した後、ワールプール(旋回分離槽)で固液分離した。固液分離後、熱交換器によって麦汁を冷却した。冷却して得られた冷麦汁にビール酵母を接種し、発酵させた。発酵後、発酵液を濾過して清澄化し、1.2倍希釈した後に、炭酸ガス圧が0.23MPa(20℃)となるように調整して、容器に充填した。得られたアルコール濃度が5容量%の容器詰発酵ビール様発泡性飲料を、必要に応じて65℃、10分間の加熱殺菌処理を行った。
ホップを原料としなかった場合には、ホップ香料を添加した。
ホップ香料、γ−ノナラクトン、又は2−メチルチオエタノールを添加する場合には、容器充填前に添加した。
ホップ香料、γ−ノナラクトン、又は2−メチルチオエタノールを添加する場合には、容器充填前に添加した。
6名の専門パネルにより、得られた容器詰発酵ビール様発泡性飲料の香りについて、官能評価を行った。各特性について、1が最も弱く、強くなるほど評点を大きくした。
酸臭については、原料アルコールと水の混合液に炭酸ガスを導入し、アルコール濃度が5容量%、炭酸ガス圧が0.23MPa(20℃)に調製した液に、イソα酸、2−メチルチオエタノール及びγ−ノナラクトンを、それぞれ、ホップ含有発酵ビール様発泡性飲料とほぼ同じ濃度(イソα酸濃度が19.5IBU、2−メチルチオエタノール濃度が20μg/L、γ−ノナラクトン濃度が10μg/L)となるように添加したものを、評価点1とした。
華やかさについては、原料アルコールと水の混合液に炭酸ガスを導入し、アルコール濃度が5容量%、炭酸ガス圧が0.23MPa(20℃)に調製した液に、イソα酸、2−メチルチオエタノール及びγ−ノナラクトンを、それぞれ、ホップ非含有発酵ビール様発泡性飲料とほぼ同じ濃度(イソα酸濃度が2.9IBU、2−メチルチオエタノール濃度が20μg/L、γ−ノナラクトン濃度が10μg/L)となるように添加したものを、評価点1とした。
評価結果を表2〜3に示す。表中、「ホップ」の欄が「無し」のサンプルは、ホップは原料として使用せず、ホップ香料を添加して製造されたものである。また、各香気成分欄の数値は飲料中の含有量を示すが、括弧内の数値「+X」は、Xμg/L分は合成品を別添したことを意味する。
ホップ含有ビール様発泡性飲料では、2−メチルチオエタノールの含有量が増大するにつれて、酸臭は変わらず、香りの華やかさが増大する傾向があった。一方で、ホップ非含有のビール様発泡性飲料では、2−メチルチオエタノールの含有量が増大するにつれて、酸臭が増大し、同時に、ホップ含有ビール様発泡性飲料程ではないが、香りの華やかさも増大した。
[実施例1]
参考例1で製造したホップ非含有のビール様発泡性飲料(2.9IBU、ホップ香料含有)に対して、2−メチルチオエタノールとγ−ノナラクトンの含有量を振って、参考例1と同様にして、酸臭と香りの華やかさに対する影響を調べた。また、あわせて、ビールらしさについても評価した。結果を表4〜8に示す。
参考例1で製造したホップ非含有のビール様発泡性飲料(2.9IBU、ホップ香料含有)に対して、2−メチルチオエタノールとγ−ノナラクトンの含有量を振って、参考例1と同様にして、酸臭と香りの華やかさに対する影響を調べた。また、あわせて、ビールらしさについても評価した。結果を表4〜8に示す。
表4〜8に示すように、2−メチルチオエタノールの含有量が同じサンプル間では、γ−ノナラクトンの含有量が多くなるほど、酸臭が抑制され、香りの華やかさが向上する傾向にあった。特に、2−メチルチオエタノールの含有量に対するγ−ノナラクトンの含有量比(N/M比)が0.65以上のサンプルでは、酸臭が十分に抑制され、さらに、華やかな香りが良好な嗜好性の高いビール様発泡性飲料であった。ただし、N/M比が1.50超になるほどγ−ノナラクトンの含有量が多くなると、γ−ノナラクトンの甘い香りが目立った。
[比較例1]
参考例1で製造したホップ非含有のビール様発泡性飲料(2.9IBU、ホップ香料含有)に対して、γ−ノナラクトンに代えて、γ−デカラクトン、カプロン酸エチル、又はカプリル酸エチルを添加し、実施例1と同様にして、酸臭と香りの華やかさに対する影響を調べた。結果を表9に示す。
参考例1で製造したホップ非含有のビール様発泡性飲料(2.9IBU、ホップ香料含有)に対して、γ−ノナラクトンに代えて、γ−デカラクトン、カプロン酸エチル、又はカプリル酸エチルを添加し、実施例1と同様にして、酸臭と香りの華やかさに対する影響を調べた。結果を表9に示す。
この結果、表9に示すように、γ−デカラクトン、カプロン酸エチル、又はカプリル酸エチルを添加した場合には、それぞれの添加量を、甘い香りが目立ちすぎ、ビールとしては違和感がある程度まで増大させても、酸臭は抑制できなかった。
Claims (13)
- [γ−ノナラクトンの含有量]/[2−メチルチオエタノールの含有量]が0.65以上であり、
苦味の強さが5mg/Lのイソα酸水溶液より小さい、ビール様発泡性飲料。 - [γ−ノナラクトンの含有量]/[2−メチルチオエタノールの含有量]が1.50以下である、請求項1に記載のビール様発泡性飲料。
- ホップを原料としない、請求項1又は2に記載のビール様発泡性飲料。
- 苦味料を含有していない、請求項1〜3のいずれか一項に記載のビール様発泡性飲料。
- ホップ香料を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のビール様発泡性飲料。
- 発酵飲料である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のビール様発泡性飲料。
- 苦味の強さが、5mg/Lのイソα酸水溶液より小さいビール様発泡性飲料の製造方法であって、
[γ−ノナラクトンの含有量]/[2−メチルチオエタノールの含有量]が0.65以上となるように、γ−ノナラクトンの含有量及び2−メチルチオエタノールの含有量を調整する、ビール様発泡性飲料の製造方法。 - γ−ノナラクトン及び2−メチルチオエタノールからなる群より選択される1種以上を原料として用いる、請求項7に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
- ホップを原料として用いない、請求項7又は8に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
- 製造されたビール様発泡性飲料を、容器に充填して加熱殺菌処理を行う、請求項7〜9のいずれか一項に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
- 苦味の強さが、5mg/Lのイソα酸水溶液より小さいビール様発泡性飲料の香味を改善する方法であって、
[γ−ノナラクトンの含有量]/[2−メチルチオエタノールの含有量]が0.65以上となるように、γ−ノナラクトンの含有量及び2−メチルチオエタノールの含有量を調整する、ビール様発泡性飲料の香味改善方法。 - 前記ビール様発泡性飲料が、ホップを原料として用いずに製造される、請求項11に記載のビール様発泡性飲料の香味改善方法。
- 前記ビール様発泡性飲料が、加熱殺菌処理を経て製造される、請求項11又は12に記載のビール様発泡性飲料の香味改善方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2022025273A1 (ja) | 2020-07-31 | 2022-02-03 | キヤノン株式会社 | 車両用ワイパーブレード |
-
2020
- 2020-12-09 JP JP2020204399A patent/JP2021106577A/ja active Pending
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