JP2021105757A - 電力取引約定計算装置及び電力取引約定計算方法 - Google Patents
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Abstract
Description
太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの増加に伴い、将来的に需給調整力が不足することが懸念されている。現在の日本では、送配電事業者は公募で需給調整力の調達を行っているが、需給調整力の確保を効率化することを目的に2021年に需給調整市場が開設される予定である。需給調整市場は電力の安定供給のために需給調整力を取引する市場であり、送配電事業者が必要となる需給調整力の量[ΔkW]を買い入札し、それに対して需給調整力を供出できる事業者(調整力供出事業者)が、需給調整力の供出可能量[ΔkW]、需給調整力の希望単価(ΔkW単価)[円/ΔkW]を提示して売り入札する市場になる見込みである。なお、調整力供出事業者は、例えば、発電事業者、VPP(Virtual Power Plant)事業者、小売電気事業者などである。
図3は、本実施の形態1に係る電力取引約定計算システム1の動作を示すフローチャートである。次に、この動作について、図3を参照して説明する。
M:集合{1,2,・・・,m}
Mj:Mに対するn個の部分集合のうちのj番目(次式(1)が成り立つ)
αj:正定数(Mjの重み)
y*:n項組みの変数(y* 1,…,y* n)
t:n項組みの正定数(t1,…,tn)
約定計算実行部32は、全てのj(1,…,n)についてy* j=0と設定する。
全てのiについてti=0である場合、約定計算実行部32は、そのときのy*を解と判定する。それ以外の場合、約定計算実行部32は、次式(2)及び次式(3)のように設定する。なお、次式(2)のargmaxは、その関数の括弧内の値が最大となるインデックスjを求める関数である。
約定計算実行部32は、y* k=y* k+t*と設定する。約定計算実行部32は、i∈Mkとなる全てのiについて、ti=ti−t*と設定する。約定計算実行部32は、ti=0となるiがある場合、全てのjについてMjからiを除く。ステップ2’の後、処理がステップ1’に戻る。
T:集合{1,2,・・・,m}(取引対象時刻)
Tj:Tに対するn個の部分集合のうちのj番目(売り入札jの供出可能時間帯(供出可能時刻)であり、次式(4)が成り立つ)
pj:正定数(売り入札jの単価[円/ΔkW])
cj:非負定数(売り入札jの供出可能量[ΔkW])
d:m項組みの非負変数(d1,…,dm)(買い入札の時刻1〜mにおける必要量[ΔkW])
x*:n項組みの二値変数(x* 1,…,x* n)(売り入札1〜nの選択有無)
L:m項組みの非負変数(L1,…,Lm)(時刻1〜mの約定した需給調整力[ΔkW])
約定計算実行部32は、全てのj(1,…,n)について、x* j=0と設定する。約定計算実行部32は、全てのt(1,…,m)について、Lt=0と設定する。約定計算実行部32は、全てのj(1,…,n)、全てのt(1,…,m)について、T’j,t=Tj,tと設定する。
全てのtについてdt≦0である場合、約定計算実行部32は、そのときのx*及びLを解と判定する。それ以外の場合、約定計算実行部32は、次式(5)のように設定し、x* k=1と設定する。なお、次式(5)のargminは、その関数の括弧内の値が最小となるインデックスjを求める関数である。
約定計算実行部32は、t∈Tkとなる全てのtについて、Lt=Lt+ckと設定する。約定計算実行部32は、t∈T’kとなる全てのtについて、dt=dt−ckと設定する。約定計算実行部32は、dt≦0となるtがある場合、全てのjについてT’jからtを除く。ステップ2の後、処理がステップ1に戻る。
このアルゴリズムを用いた約定計算の一例を説明する。買い入札データの必要量、売り入札データの供出可能時刻(供出可能時間帯)、単価、供出可能量は図4に示す通りである。図4の例では、d={4,3,2,5,3,4}、p={2,6,4,3,5}、c={2,3,2,2,4}である。p1〜p5、つまり第1〜第5売り入札は、ブロック入札である。基本時間帯の単位は例えば30分であるが、これに限ったものではなく、一定でなくてもよい。以下、次式(6)のように式(5)の一部をρjと表して説明する。
価値評価部32aは、x*={0,0,0,0,0}、L={0,0,0,0,0,0}と設定する。価値評価部32aは、T’1={2,3,4}、T’2={3,4,5,6}、T’3={1,2,3,4}、T’4={1,2}、T’5={4,5,6}と設定する。
価値評価部32aは、以下のようにρ1〜ρ5を求めることにより、売り入札の価値を評価する。
ρ1=2×3/3=2
ρ2=6×4/4=6
ρ3=4×4/4=4
ρ4=3×2/2=3
ρ5=5×3/3=5
T1={2,3,4}であり、c1=2であるため、約定計算実行部32は、L2,L3,L4に2を加え、d2,d3,d4から2を引くことで、残り必要量を更新する。これにより、L2=0+2=2,L3=0+2=2,L4=0+2=2となり、L={0,2,2,2,0,0}と更新される。また、d2=3−2=1,d3=2−2=0,d4=5−2=3となり、d={4,1,0,3,3,4}と更新される。
価値評価部32aは、以下のようにρ2〜ρ5を求めることにより、売り入札の価値を評価する。なお、先のステップ2で残り必要量を更新したことにより、無駄になった期間の価値が考慮され、残りの売り入札の価値であるρ2〜ρ5が適宜高く見積もられる。
ρ2=6×4/3=8
ρ3=4×4/3=5.33
ρ4=3×2/2=3
ρ5=5×3/3=5
T4={1,2}であり、c4=2であるため、約定計算実行部32は、L1,L2に2を加え、d1,d2から2を引くことで、残り必要量を更新する。これにより、L1=0+2=2,L2=2+2=4となり、L={2,4,2,2,0,0}と更新される。また、d1=4−2=2,d2=1−2=−1となり、d={2,−1,0,3,3,4}と更新される。
価値評価部32aは、以下のようにρ2、ρ3、ρ5を求めることにより、売り入札の価値を評価する。
ρ2=6×4/3=8
ρ3=4×4/2=8
ρ5=5×3/3=5
T5={4,5,6}であり、c5=4であるため、約定計算実行部32は、L4,L5,L6に4を加え、d4,d5,d6から4を引くことで、残り必要量を更新する。これにより、L4=2+4=6,L5=0+4=4,L6=0+4=4となり、L={2,4,2,6,4,4}と更新される。また、d4=3−4=−1,d5=3−4=−1,d6=4−4=0となり、d={2,−1,0,−1,−1,0}と更新される。
価値評価部32aは、以下のようにρ2、ρ3を求めることにより、売り入札の価値を評価する。
ρ2=6×4/0=∞
ρ3=4×4/1=16
T3={1,2,3,4}であり、c3=2であるため、約定計算実行部32は、L1,L2,L3,L4に2を加え、d1,d2,d3,d4のうち0以下でないd1から2を引くことで、残り必要量を更新する。これにより、L1=2+2=4,L2=4+2=6,L3=2+2=4L4=6+2=8となり、L={4,6,4,8,4,4}と更新される。また、d1=2−2=0となり、d={0,−1,0,−1,−1,0}と更新される。
全てのtについてdt≦0となったので、約定計算実行部32は、そのときのx*={1,0,1,1,1}、L={4,6,4,8,4,4}を解と判定する。その後、約定結果確定部33は、判定された結果を約定結果として確定する。つまり、約定結果確定部33は、第1売り入札、第3売り入札、第4売り入札、第5売り入札を落札するという約定結果を確定する。
以上のような本実施の形態1に係る構成及び処理フローにより、一以上の売り入札の価値を評価し、当該価値に基づいて約定判定を行い、約定判定の結果に基づいて約定結果を確定する。このように、需給調整力の必要量の確保と調達費用の抑制とを両立させる約定計算の速度を高めることが可能となり、適切な約定計算を行うことができる。
約定計算実行部32が、ブロック入札を時刻によって分解せずに売り入札の価値を評価し当該価値に基づいて約定判定を行う手法では、高速に解が得られるが、得られる解は最適に近い準最適解であるため、より良い解が存在する場合がある。そこで、本実施の形態2に係る演算部24が、実施の形態1で得られた約定判定の結果を初期解とする予め定められた探索手法を用いて、約定判定の結果を改善することで、買い入札者が支払う調達費用をより低く抑えることを可能にする。
以上のような本実施の形態2に係る構成及び処理フローによれば、約定計算実行部32で得られた約定結果が改善されるので、買い入札者が支払う調達費用をより低く抑えることが可能となる。
実施の形態1において、ブロック入札の需給調整力の供出可能量は供出可能時間帯を通じて必ず一定であると想定していた。しかし2021年に開設される需給調整市場では、図6のように、供出可能量が時刻によって変動するブロック入札も認められる可能性がある。そこで、本実施の形態3に係る約定計算実行部32は、実施の形態1で示したアルゴリズムを下記のように発展させることにより、一以上の売り入札のうちのブロック入札の、時刻(基本時間帯)ごとに異なる供出可能量を考慮して上記価値の評価を行う。これにより、供出可能量が時刻によって変動するブロック入札を含む需給調整市場に対応することが可能となっている。
T:集合{1,2,・・・,m}(取引対象時刻)
Tj:Tに対するn個の部分集合のうちのj番目(売り入札jの供出可能時間帯(供出可能時刻)であり、式(4)が成り立つ)
pj:正定数(売り入札jの単価[円/ΔkW])
cj:m項組みの非負定数(cj,1,…,cj,m)(売り入札jの時刻1〜mにおける供出可能量[ΔkW])
d:m項組みの非負変数(d1,…,dm)(買い入札の時刻1〜mにおける必要量[ΔkW])
x*:n項組みの二値変数(x* 1,…,x* n)(売り入札1〜nの選択有無)
L:m項組みの非負変数(L1,…,Lm)(時刻1〜mの約定した需給調整力[ΔkW])
約定計算実行部32は、全てのj(1,…,n)について、x* j=0と設定する。約定計算実行部32は、全てのt(1,…,m)について、Lt=0と設定する。約定計算実行部32は、全てのj(1,…,n)、全てのt(1,…,m)について、T’j,t=Tj,tと設定する。
全てのtについてdt≦0である場合、約定計算実行部32は、そのときのx*及びLを解と判定する。それ以外の場合、約定計算実行部32は、次式(7)のように設定し、x* k=1と設定する。
約定計算実行部32は、t∈Tkとなる全てのtについて、Lt=Lt+ckと設定する。約定計算実行部32は、t∈T’kとなる全てのtについて、dt=dt−ckと設定する。約定計算実行部32は、dt≦0となるtがある場合、全てのjについてT’jからtを除く。ステップ2の後、処理がステップ1に戻る。
以上のような本実施の形態3に係る構成によれば、以上の発展形アルゴリズムによって、供出可能量が時刻ごとに変動するブロック入札を含む需給調整市場での約定計算が可能となる。
送配電事業者が支払う需給調整力[ΔkW]の調達に対する費用(ΔkW費用)は、各時刻のΔkW単価[円/ΔkW]と供出可能量[ΔkW]との積和で決定される。精算時の費用算出に使用されるΔkW単価に関して、2021年に開設される需給調整市場では、当面、価格決定方式にマルチプライスオークション方式が採用される見込みであるが、将来的にシングルプライスオークション方式を採用することも検討されている。シングルプライスオークション方式が採用された場合の詳細な価格決定方法は不明である。しかし、採用される可能性のある方法としては、約定済み売り入札の希望単価について時刻ごとの最高値を求めて約定価格とし、約定価格をその時刻の全ての約定済み売り入札の精算に適用する方法などが考えられる。
cost_kWmulti:マルチプライスオークション方式におけるΔkW費用[円]
cost_kWsingle:シングルプライスオークション方式におけるΔkW費用[円]
j:約定済み売り入札番号(1,…,n’)
pj:約定済み売り入札jのΔkW単価[円/ΔkW]
cj,t:約定済み売り入札jの時刻tにおける需給調整力の供出可能量[ΔkW]
T:集合{1,2,・・・,m}(取引対象時刻)
Tj:Tに対するn’個の部分集合のうちのj番目(約定済み売り入札jの供出可能時間帯であり、式(4)においてnをn’に置き換えた式が成り立つ)
以上のような本実施の形態4に係る構成によれば、マルチプライスオークション方式及びシングルプライスオークション方式に関して適切な約定計算を行うことができる。
VPP事業者などの調整力供出事業者は、需給調整市場で売るための需給調整力を、需要家などが供出する分散型エネルギーリソース(太陽光発電、DR(Demand Response)などによるもの)を集めることによって調達する場合がある。この構成を図7に示す。
本実施の形態5に係る構成では、上記実施の形態1〜4が、VPP事業者などの調整力供出事業者が需給調整市場で売るための需給調整力を調達する際の取引に適用される。このような構成によれば、当該取引に関して適切な約定計算を行うことができる。
Claims (11)
- 互いに連続する複数の基本時間帯にまたがる売り入札であるブロック入札が実施される電力取引の約定計算を行う演算部を備え、
前記演算部は、
買い入札データ及び売り入札データを集約する入札データ集約部と、
前記入札データ集約部で集約された前記買い入札データ及び前記売り入札データに基づいて一以上の売り入札の価値を評価し、前記価値に基づいて一以上の売り入札の約定判定を行う約定計算実行部と、
前記約定計算実行部で行われた前記約定判定の結果に基づいて約定結果を確定する約定結果確定部と
を備える、電力取引約定計算装置。 - 請求項1に記載の電力取引約定計算装置であって、
前記約定計算実行部は、
前記ブロック入札を前記基本時間帯の単位で分解せずに、前記価値の評価及び前記約定判定を行う、電力取引約定計算装置。 - 請求項2に記載の電力取引約定計算装置であって、
前記約定計算実行部は、
前記価値の評価及び前記約定判定を、多重集合被覆問題(Weighted Multiple Set Covering Problem)として扱う、電力取引約定計算装置。 - 請求項3に記載の電力取引約定計算装置であって、
前記約定計算実行部は、
Greedy Heuristicを用いて、前記価値の評価及び前記約定判定を行う、電力取引約定計算装置。 - 請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の電力取引約定計算装置であって、
前記演算部は、
前記約定計算実行部で行われた前記約定判定の結果を初期解とする予め定められた探索手法を用いて、前記約定判定の結果を改善する、電力取引約定計算装置。 - 請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載の電力取引約定計算装置であって、
前記約定計算実行部は、
一以上の売り入札のうちの前記ブロック入札の、前記基本時間帯ごとに異なる供出可能量を考慮して、前記価値の評価を行う、電力取引約定計算装置。 - 請求項1から請求項6のうちのいずれか1項に記載の電力取引約定計算装置であって、
前記約定結果確定部は、
前記約定計算実行部で行われた前記約定判定の結果で選定された各売り入札の希望単価を約定価格として用いることにより、マルチプライスオークション方式の精算価格を算出する、電力取引約定計算装置。 - 請求項1から請求項6のうちのいずれか1項に記載の電力取引約定計算装置であって、
前記約定結果確定部は、
前記約定計算実行部で行われた前記約定判定の結果で選定された各売り入札の希望単価に基づいて、前記基本時間帯ごとに単一の約定価格を求め、当該約定価格を用いることにより、シングルプライスオークション方式の精算価格を算出する、電力取引約定計算装置。 - 請求項1から請求項8のうちのいずれか1項に記載の電力取引約定計算装置であって、
前記電力取引を行う市場は、需給調整市場である、電力取引約定計算装置。 - 請求項1から請求項8のうちのいずれか1項に記載の電力取引約定計算装置であって、
前記電力取引における買い入札者は、調整力供出事業者である、電力取引約定計算装置。 - 互いに連続する複数の基本時間帯にまたがる売り入札であるブロック入札が実施される電力取引の約定計算を行う演算として、
買い入札データ及び売り入札データを集約し、
集約された前記買い入札データ及び前記売り入札データに基づいて一以上の売り入札の価値を評価し、前記価値に基づいて一以上の売り入札の約定判定を行い、
前記約定判定の結果に基づいて約定結果を確定する、電力取引約定計算方法。
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