JP2021105299A - 定着具、定着具付きpc鋼撚り線 - Google Patents

定着具、定着具付きpc鋼撚り線 Download PDF

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Abstract

【課題】被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の端部に、被覆を除去することなく設置できる定着具を提供する。【解決手段】被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の一方の端部に設置する定着具30であって、定着具は円筒形状であり、かつ内周面33に凹部、および凸部を備えており、凹部、および凸部は、それぞれ内周面の周方向に沿って線状に設けられており、定着具の中心軸CAを通る断面において、凹部の曲率半径が0.1mm以上2.0mm以下である。【選択図】図3

Description

本開示は、定着具、定着具付きPC鋼撚り線に関するものである。
特許文献1には、斜張橋等に使用されるPC鋼より線からなるケーブルの端末に固着する圧着グリップであって、金属製丸棒を所定の寸法に切断し、軸心に所定径の孔を開設したグリップ本体の孔内周面に、グリップ本体の軸心と交差する突条を形成し、その突条を含む孔内周の表面層は少なくともPC鋼より線より硬くし、それ以外はPC鋼より線より軟らかくしたことを特徴とする橋梁用ケーブルの圧着グリップが提案されている。
特開2001−311114号公報
PC鋼撚り線は、コンクリート構造物にプレストレス、具体的には圧縮力を導入するために用いられる。例えばPC鋼撚り線の長手方向の一方の端部を圧着グリップ等の定着具で固定し、他方の端部をジャッキ等で牽引することで、PC鋼撚り線に緊張力を導入し、PC鋼撚り線を設置したコンクリート構造物に圧縮力を導入できる。
定着具として圧着グリップを用い、PC鋼撚り線の長手方向の一方の端部を固定する場合、図1に示すように、圧着グリップ11と、アンカープレート12とが用いられる。アンカープレート12はPC鋼撚り線10は通るが、圧着グリップ11を通さないサイズの貫通孔121が設けられた金属製の板である。なお、図1はPC鋼撚り線10の中心軸を通る面での断面図を示している。
圧着グリップ11は、工場等で予めPC鋼撚り線10の長手方向の一方の端部10A側に設置されている。圧着グリップ11が設置されたPC鋼撚り線10を、コンクリート構造物13の表面に配置したアンカープレート12の貫通孔121に通し、PC鋼撚り線10の長手方向の図示しない他方の端部側をジャッキ等で牽引することでPC鋼撚り線10に緊張力を導入する。この際、圧着グリップ11がアンカープレート12に押し付けられることで、PC鋼撚り線10の一方の端部10A側は、固定、定着されることになる。
ところで、近年では、PC鋼撚り線の外周面を樹脂で被覆した被覆付きPC鋼撚り線も用いられているようになっている。被覆付きPC鋼撚り線は樹脂で被覆されているため、被覆されていないPC鋼撚り線と比較して錆等の腐食が生じにくく、耐久性が高い。
しかし、特許文献1の圧着グリップを被覆付きPC鋼撚り線に直接設置すると、圧着グリップの被覆付きPC鋼撚り線に対する接合強度が十分ではない場合があった。圧着グリップの被覆付きPC鋼撚り線に対する接合強度が十分ではない場合、該圧着グリップを設置した被覆付きPC鋼撚り線に緊張力を導入した際に、圧着グリップが外れる恐れがあり、十分な緊張力を導入できないことになる。
このため、被覆付きPC鋼撚り線の圧着グリップを設置する部分について、被覆付きPC鋼撚り線の被覆を除去してから、圧着グリップを設置する必要があった。
被覆付きPC鋼撚り線の被覆を除去してPC鋼撚り線を露出させると、防錆の効果が低減する。また、被覆(被覆樹脂)を除去するための工程が増加する。このため、被覆付きPC鋼撚り線の被覆を除去することなく、被覆付きPC鋼撚り線に設置できる定着具が求められていた。
本開示は、被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の端部に、被覆を除去することなく設置できる、定着具を提供することを目的とする。
本開示の一観点によれば、被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の一方の端部に設置する定着具であって、
前記定着具は円筒形状であり、かつ内周面に凹部、および凸部を備えており、
前記凹部、および前記凸部は、それぞれ前記内周面の周方向に沿って線状に設けられており、
前記定着具の中心軸を通る断面において、前記凹部の曲率半径が0.1mm以上2.0mm以下である定着具を提供する。
本開示によれば、被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の端部に、被覆を除去することなく設置できる、定着具を提供することが可能となる。
図1は、圧着グリップにより、PC鋼撚り線の長手方向の一方の端部を固定する方法の説明図である。 図2は、被覆付きPC鋼撚り線の説明図である。 図3は、本開示の一態様に係る定着具の斜視図である。 図4は、図3の領域Aの拡大図である。 図5は、本開示の一態様に係る定着具付きPC鋼撚り線の説明図である。 図6は、本開示の一態様に係る定着具付きPC鋼撚り線の製造方法の説明図である。
実施するための形態について、以下に説明する。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
(1)本開示の一態様に係る定着具は、被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の一方の端部に設置する定着具であって、
前記定着具は円筒形状であり、かつ内周面に凹部、および凸部を備えており、
前記凹部、および前記凸部は、それぞれ前記内周面の周方向に沿って線状に設けられており、
前記定着具の中心軸を通る断面において、前記凹部の曲率半径が0.1mm以上2.0mm以下である。
本開示の一態様に係る定着具は、内周面に、内周面の周方向に沿って、それぞれが線状の凹部、および凸部を備えることができる。
内周面に凹部および凸部を配置しておくことで、貫通孔内に被覆付きPC鋼撚り線を挿入し、定着具の外周面を押圧することで圧着して、定着具を被覆付きPC鋼撚り線に設置した際に、凸部が被覆付きPC鋼撚り線が有するPC鋼撚り線表面に食い込む。このため、被覆付きPC鋼撚り線に定着具を強く固定できる。
ただし、被覆付きPC鋼撚り線の被覆を除去すること無く、被覆付きPC鋼撚り線の被覆樹脂の表面に直接定着具を設置すると、定着具の被覆付きPC鋼撚り線に対する接合強度が十分ではない場合があった。定着具の被覆付きPC鋼撚り線に対する接合強度が十分ではない場合が生じる原因について検討を行ったところ、被覆付きPC鋼撚り線に設置した定着具の内周面の凹部に微細なひび割れが生じていることを見出した。
そこで、本発明の発明者らはさらなる検討を行った。その結果、定着具の中心軸を通る断面において、凹部の曲率半径を0.1mm以上2.0mm以下とすることで、定着具を被覆付きPC鋼撚り線に設置した際に、凹部でのひび割れの発生を抑制できることを見出した。
中心軸を通る断面における、凹部の曲率半径が0.1mm未満の場合、定着具を被覆付きPC鋼撚り線に設置した際、凹部の表面が均一に伸びず、伸び量の異なる領域の間に、微細なひび割れが生じるものと考えられる。
一方、中心軸を通る断面における、凹部の曲率半径を0.1mm以上とすることで、定着具を被覆付きPC鋼撚り線に設置した際、凹部がほぼ均一に伸び、ひび割れの発生を抑制できているものと考えられる。
ただし、凹部の曲率半径を大きくしすぎると、凸部の高さを十分に確保できない恐れがある。
そこで、凹部の曲率半径を2.0mm以下とすることで、凸部の高さを十分に高くでき、定着具を被覆付きPC鋼撚り線に設置した際に、凸部が被覆付きPC鋼撚り線の被覆を貫通し、PC鋼撚り線へ食い込む量を十分に確保できる。凸部が被覆付きPC鋼撚り線の被覆を貫通し、PC鋼撚り線へ食い込むことで、定着具の被覆付きPC鋼撚り線への接合強度を十分に高められる。
以上のように、定着具の貫通孔の内周面に凹部、および凸部を設け、凹部の曲率半径を0.1mm以上2.0mm以下とすることで、該定着具を被覆付きPC鋼撚り線に、被覆付きPC鋼撚り線の被覆を除去することなく設置しても、接合強度を十分に高められる。このため、被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の端部に、被覆を除去することなく設置できる定着具とすることができる。
(2)前記定着具の中心軸を通る断面において、前記凸部の高さが0.4mm以上3.0mm以下であってもよい。
凸部の高さを0.4mm以上とすることで、定着具を被覆付きPC鋼撚り線に設置した際に、凸部をPC鋼撚り線に十分な深さまで食い込ませることができる。このため、定着具付きPC鋼撚り線の引張荷重を特に高めることができる。
凸部の高さを3.0mm以下とすることで、定着具のサイズを抑制し、定着具を被覆付きPC鋼撚り線に設置する際の、定着具の変形量を抑制できる。このため、定着具を被覆付きPC鋼撚り線に設置する際に、定着具が破損等することを抑制できる。
(3) 前記内周面の硬度が、ビッカーズ硬度で550HV以上850HV以下であってもよい。
定着具の内周面の硬度を、ビッカーズ硬度で550HV以上とすることで、定着具を被覆付きPC鋼撚り線に設置した際に、定着具の内周面に配置した凸部が、PC鋼撚り線の表面に特に食い込みやすくなる。
定着具の内周面の硬度の上限は特に限定されないが、過度に高くすると、定着具が変形しにくくなり、定着具を、被覆付きPC鋼撚り線に設置しづらくなる恐れがある。このため、定着具の内周面の硬度は850HV以下であることが好ましい。
(4)前記被覆付きPC鋼撚り線は、光ファイバーを備えており、
前記定着具は、外周面から前記内周面まで貫通する、前記光ファイバーを引き出す光ファイバー引き出し孔をさらに備えてもよい。
被覆付きPC鋼撚り線が有するPC鋼撚り線のひずみ等を測定するために、光ファイバーを備えた被覆付きPC鋼撚り線とすることが従来からなされている。
係る光ファイバーは、被覆付きPC鋼撚り線の端部で一部の被覆樹脂を切削して取出し、測定用の機器等に接続する。
定着具が、外周面から内周面まで貫通する、光ファイバーを引き出す光ファイバー引き出し孔をさらに備えることで、光ファイバーを定着具に固定でき、光ファイバーの破損を防止し、光ファイバーの測定機器への接続等の操作を容易にできる。
(5)本開示の一態様に係る定着具付きPC鋼撚り線は、被覆付きPC鋼撚り線と、
円筒形状を有する定着具と、を備え、
前記定着具の貫通孔内に、前記被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の一方の端部である第1端部側が挿入され、
前記定着具は、前記被覆付きPC鋼撚り線に固定されており、
前記定着具と、前記被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の端部のうち、前記第1端部とは反対側に位置する第2端部と、を把持して引張試験を実施した場合の引張荷重が、前記被覆付きPC鋼撚り線について定められた引張試験の最大試験力の95%以上である。
本開示の一態様に係る定着具付きPC鋼撚り線では、被覆付きPC鋼撚り線の被覆樹脂を除去することなく、被覆付きPC鋼撚り線の被覆樹脂を覆うように、直接定着具が配置されている。このため、PC鋼撚り線が樹脂に被覆されず、露出している部分を抑制できるため、定着具付きPC鋼撚り線は、防錆性能に優れている。
また、定着具付きPC鋼撚り線の引張荷重を被覆付きPC鋼撚り線について定められた引張試験の最大試験力の95%以上とすることで、該定着具付きPC鋼撚り線に十分な大きさの緊張力を導入できるため、各種プレストレストコンクリートの施工に用いることができる。
(6)前記被覆付きPC鋼撚り線は、光ファイバーを備え、
前記定着具は、外周面から、前記内周面まで貫通する光ファイバー引き出し孔をさらに備えており、
前記光ファイバー引き出し孔から、前記光ファイバーが引き出されていてもよい。
被覆付きPC鋼撚り線が有するPC鋼撚り線のひずみ等を測定するために、光ファイバーを備えた被覆付きPC鋼撚り線とすることが従来からなされている。
係る光ファイバーは、被覆付きPC鋼撚り線の端部で一部の被覆樹脂を切削して取出し、測定用の機器等に接続する。
定着具が、外周面から内周面まで貫通する、光ファイバーを引き出す光ファイバー引き出し孔をさらに備え、係る光ファイバー引き出し孔から光ファイバーを引き出すことで、光ファイバーを定着具に固定でき、光ファイバーの破損を防止し、光ファイバーの測定機器への接続等の操作を容易にできる。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の一実施形態(以下「本実施形態」と記す)に係る定着具、定着具付きPC鋼撚り線の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本実施形態に係る定着具、定着具付きPC鋼撚り線を説明する前に、本実施形態の定着具を設置する被覆付きPC鋼撚り線の構成例について説明する。
[被覆付きPC鋼撚り線]
図2に被覆付きPC鋼撚り線の長手方向と垂直な断面を示す。
図2に示す様に、被覆付きPC鋼撚り線20は、PC鋼撚り線21と、PC鋼撚り線21の表面を被覆する被覆樹脂22とを備えることができる。
被覆付きPC鋼撚り線20は、コンクリート構造物にプレストレス、具体的には圧縮力を導入するプレストレス導入用のPC鋼材の一種である。
被覆付きPC鋼撚り線が有する各部材について説明する。
(1)PC鋼撚り線
PC鋼撚り線21は、複数の鋼製の素線であるPC鋼線211が撚り合わされて形成されている。PC鋼撚り線21が有するPC鋼線211の本数は特に限定されない。PC鋼撚り線21は、例えば図2に示した様に、中心に1本の第1PC鋼線211Aを配置し、第1PC鋼線211Aの外周に6本の第2PC鋼線211Bをさらに配置できる。この場合、PC鋼撚り線21は、全部で7本のPC鋼線を有することができる。
また、PC鋼撚り線は、第2PC鋼線211Bを2層にすることもできる。この場合、図1の第2PC鋼線211Bの外周にさらに12本の第2PC鋼線211Bを配置し、全部で19本のPC鋼線211を有することができる。
第1PC鋼線211Aと、第2PC鋼線211Bとは、その線径、すなわち長手方向と垂直な断面における直径が同じであってもよく、異なっていても良い。第1PC鋼線211A、および第2PC鋼線211Bの線径D211は、例えば1.6mm以上9mm以下であることが好ましく、3mm以上8mm以下であることがより好ましい。
PC鋼撚り線21のコード径は特に限定されないが、例えば5mm以上30mm以下であることが好ましく、5mm以上25mm以下であることがより好ましく、9mm以上23mm以下であることがさらに好ましい。PC鋼撚り線21のコード径を5mm以上とすることで、該PC鋼撚り線の強度を十分に高めることができる。また、PC鋼撚り線21のコード径を30mm以下とすることで、該PC鋼撚り線のコード径が過度に大きくなることを抑制し、重量を抑制できる。このため、取扱い性に優れたPC鋼撚り線、被覆付きPC鋼撚り線とすることができる。
PC鋼撚り線21のコード径は、PC鋼撚り線21を構成する複数のPC鋼線211の外接円C21の直径とすることができる。
(2)被覆樹脂
被覆付きPC鋼撚り線20は、さらに被覆樹脂22を備えることができる。
PC鋼撚り線21を被覆樹脂22で被覆することで、PC鋼撚り線21が腐食等することを抑制でき、耐久性を高められる。被覆樹脂22は、PC鋼撚り線21の表面を覆うように配置できる。また、図2に示す様に、第1PC鋼線211Aと、第2PC鋼線211Bとで囲まれた内部空間23にも被覆樹脂22が充填されていることが好ましい。内部空間23にも被覆樹脂22を充填することで、PC鋼撚り線21が腐食することを特に抑制できる。
被覆樹脂22の材料は特に限定されないが、熱硬化性樹脂であることが好ましい。被覆樹脂22は、PC鋼撚り線21が、緊張力の導入により変形した際に追従できる材料であることが好ましく、かつ比較的硬い樹脂が好ましい。被覆樹脂22としては、例えばエポキシ樹脂を好適に用いることができる。
被覆樹脂22の厚さは特に限定されないが、クラウン部24における被覆樹脂の厚さT22が0.4mm以上1.2mm以下であることが好ましい。
クラウン部24とは、PC鋼撚り線21の外周側に突出した箇所に相当する。具体的には、図2に示したように、PC鋼撚り線21の長手方向と垂直な断面における、第1PC鋼線211Aの中心O211Aと、第2PC鋼線211Bの中心O211Bとを結ぶ直線l211と、第2PC鋼線211Bの外周との交点P1、P2のうち、PC鋼撚り線21の外表面側に位置する交点P2を意味する。そして、T22は、クラウン部24である交点P2における被覆樹脂22の厚さとなる。
図2に示すように、被覆付きPC鋼撚り線の任意の一断面において、クラウン部24は複数箇所存在することになる。図2に示した被覆付きPC鋼撚り線20においては、外周に6本の第2PC鋼線211Bを有するため、6箇所のクラウン部24が存在する。そして、被覆付きPC鋼撚り線20においては、被覆付きPC鋼撚り線の任意の一断面において測定した、全てのクラウン部24における被覆樹脂の厚さT22が上記範囲内にあることが好ましい。
被覆付きPC鋼撚り線は、さらに任意の部材を有することもできる。
(3)光ファイバー
被覆付きPC鋼撚り線20は光ファイバーをさらに有することもできる。
被覆付きPC鋼撚り線20が光ファイバーをさらに有することで、該光ファイバーを用いて、例えば被覆付きPC鋼撚り線20に生じたひずみや、ひずみ分布等の各種測定を行うことができる。
光ファイバー25は、PC鋼撚り線21の表面に、PC鋼撚り線21の長手方向に沿って配置できる。光ファイバー25は、PC鋼撚り線21の撚り溝212に沿って配置することが好ましい。
光ファイバー25は、図2に示すように、隣接する2本の第2PC鋼線211Bの表面と、係る隣接する2本の第2PC鋼線211Bの共通接線l211Bと、で囲まれた領域内に配置することが好ましい。
光ファイバー25を、隣接する2本の第2PC鋼線211Bの表面と、隣接する2本の第2PC鋼線211Bの共通接線l211Bとで囲まれた領域内に配置することで、特に第2PC鋼線211Bの近傍に配置することができ、PC鋼撚り線21の伸縮に追従させ易くなる。このため、例えば光ファイバーを用いてひずみや、ひずみ分布等の測定を実施する場合に、特に精度良く測定できるからである。また、係る領域内に配置することで、被覆樹脂22によって、光ファイバー25をより確実に固定できるため好ましい。
光ファイバー25は、図2に示すように撚り溝212を形成する隣接する2本の第2PC鋼線211Bと接するように配置することがより好ましい。これは、光ファイバー25を、撚り溝212を形成する、隣接する2本の第2PC鋼線211Bと接するように配置することで、光ファイバー25を撚り溝212のうちの最深部に配置することができる。このため、被覆付きPC鋼撚り線20の端部で、被覆樹脂22を切削し、光ファイバー25を取出す際に、切削具により光ファイバー25を損傷することをより確実に防ぐことができるからである。
図2では、被覆付きPC鋼撚り線20が、光ファイバー25を1本有する例を示しているが、係る形態に限定されない。被覆付きPC鋼撚り線は、2本以上の複数本の光ファイバーを有することもできる。この場合、複数本の光ファイバーの配置は特に限定されず、例えば同じ撚り溝212に複数本の光ファイバーを配置することもできる。また、異なる複数の撚り溝212にそれぞれ光ファイバーを配置することもできる。
光ファイバーとしては、コアとクラッドとで構成されるものを好適に利用できる。コアとクラッドの材質は、プラスチックや石英ガラスが挙げられる。光ファイバーとしては、クラッドの外周に一次被覆を備える光ファイバー素線や、更に二次被覆を備える光ファイバー芯線、更に二次被覆の外周に補強材と補強材の外周を覆う外被とを備える光ファイバーコードなどが利用できる。一次被覆の材質は、例えば、紫外線硬化型樹脂が挙げられる。二次被覆の材質は、例えば、難燃性ポリエステルエラストマーなどが挙げられる。補強材の材質は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などが挙げられる。外被の材質は、難燃性ポリエチレンなどの難燃性ポリオレフィンや、難燃性架橋ポリエチレンなどの難燃性架橋ポリオレフィン、耐熱ビニルなどが挙げられる。
(4)粒状体
被覆付きPC鋼撚り線は粒状体をさらに有することもできる。例えばPC鋼撚り線21を覆う被覆樹脂22が、複数の粒状体を含むこともできる。粒状体の材料は特に限定されないが、例えば無機系の硬い粒子が好ましい。例えばSiO、Al、Fe、MgOおよびCaOよりなる群から選択される1種類以上が挙げられる。
粒状体は、被覆樹脂(被覆層)の表面に部分的に埋め込むようにして、被覆樹脂の表面に配置できる。すなわち、粒状体の少なくとも一部は、被覆樹脂から露出するように配置できる。粒状体を被覆樹脂の表面に部分的に埋め込み、残部を突出されることで、グラウトとの付着性を特に高めることができる。
〔定着具〕
以下、本実施形態に係る定着具について図3、図4に基づき説明する。
本実施形態の定着具は、被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の一方の端部に設置する定着具である。
定着具は円筒形状であり、かつ内周面に凹部、および凸部を備えており、凹部、および凸部は、それぞれ内周面の周方向に沿って線状に設けることができる。そして、定着具の中心軸を通る断面において、凹部の曲率半径を0.1mm以上2.0mm以下とすることができる。
本実施形態の定着具によれば、PC鋼撚り線10として、被覆付きPC鋼撚り線を用い、圧着グリップ11に替えて本実施形態の定着具を用いる点以外は、図1を用いて説明した圧着グリップの場合と同様にして被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の一方の端部を固定できる。本実施形態の定着具は、後述するように、定着具の外周面をダイス等で押圧することで、被覆付きPC鋼撚り線に圧着できることから、圧着グリップ等と呼ぶこともできる。
図3は、本実施形態の定着具の斜視図である。図4は、図3中、中心軸CAを通る断面である、二点鎖線で囲まれた領域Aを拡大して示した図である。
本発明の発明者らは、既述の特許文献1等に開示された圧着グリップを、被覆付きPC鋼撚り線に、被覆を除去することなく直接設置すると、圧着グリップの被覆付きPC鋼撚り線に対する接合強度が十分ではない場合が生じる原因について検討を行った。その結果、特許文献1に開示された圧着グリップを被覆付きPC鋼撚り線に直接設置した場合、PC鋼撚り線の孔内周面に設けた突条間の凹部に微細なひび割れが生じていることを見出した。
そこで、本発明の発明者らはさらなる検討を行った。その結果、定着具の中心軸を通る断面において、凹部の曲率半径を所定の範囲とすることで、定着具を被覆付きPC鋼撚り線に設置した際に、凹部にひび割れの発生を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
(1)定着具の外形形状
図3に示すように、本実施形態の定着具30は、中心軸CAに沿って、貫通孔31を有しており、円筒形状を有することができる。定着具30は、例えば角部に面取りを行ったり、外周面32に他の部材と接続するためのねじ山等の接続部材を配置しておくこともできる。このため、ここでいう円筒形状とは幾何学的に厳密な意味に限定されるものではない。
定着具30のサイズは特に限定されず、設置する被覆付きPC鋼撚り線のサイズ等に応じて任意に選択できる。
貫通孔31の直径D31は、圧着前において、被覆付きPC鋼撚り線を挿入できるようにそのサイズを選択できる。貫通孔31の内周面33には、後述するように凹部、および凸部を設けておくことができる。このため、貫通孔31の直径D31とは、最も狭くなる部分、具体的には例えば凸部間における直径を意味する。
定着具30を設置する被覆付きPC鋼撚り線20に含まれるPC鋼撚り線21のコード径が15.2mmの場合、被覆樹脂22の厚さを考慮し、貫通孔31の直径D31は、例えば16.0mm以上18.0mm以下とすることが好ましい。
定着具30を設置する被覆付きPC鋼撚り線20に含まれるPC鋼撚り線21のコード径が15.2mmの場合、貫通孔31の直径D31を16.0mm以上とすることで、貫通孔31内に被覆付きPC鋼撚り線を容易に挿入できる。
定着具30を設置する被覆付きPC鋼撚り線20に含まれるPC鋼撚り線21のコード径が15.2mmの場合、貫通孔31の直径D31を18.0mm以下とすることで、被覆付きPC鋼撚り線に設置する際の変形量を抑制し、定着具が破損等することを抑制できる。
また、定着具30を設置する被覆付きPC鋼撚り線20に含まれるPC鋼撚り線21のコード径が15.7mmの場合、被覆樹脂22の厚さを考慮し、貫通孔31の直径D31は、例えば16.5mm以上18.5mm以下とすることが好ましい。
定着具30を設置する被覆付きPC鋼撚り線20に含まれるPC鋼撚り線21のコード径が15.7mmの場合、貫通孔31の直径D31を16.5mm以上とすることで、貫通孔31内に被覆付きPC鋼撚り線を容易に挿入できる。また、定着具30を設置する被覆付きPC鋼撚り線20に含まれるPC鋼撚り線21のコード径が15.7mmの場合、貫通孔31の直径D31を18.5mm以下とすることで、被覆付きPC鋼撚り線に設置する際の変形量を抑制し、破損することを抑制できる。
定着具30の長さL30についても特に限定されず、被覆付きPC鋼撚り線に設置した場合に、十分な接合強度を発揮できるように選択できる。定着具30の長さL30は、例えば50mm以上60mm以下とすることが好ましい。定着具30の長さL30を50mm以上とすることで、被覆付きPC鋼撚り線に設置した場合に、被覆付きPC鋼撚り線との接着面積を大きくし、定着具の被覆付きPC鋼撚り線に対する接合強度を高められるからである。ただし、定着具30の長さL30を過度に長くすると、定着具30を設置するために必要となる被覆付きPC鋼撚り線の長さも長くなる。このため、コストを抑制する観点から、定着具30の長さL30は、60mm以下であることが好ましい。
定着具30の長手方向と垂直な断面の直径D30についても特に限定されず、貫通孔31の直径D31や、定着具30に要求される肉厚等に応じて選択できる。例えば、貫通孔31の直径D31が16.0mm以上18.0mm以下の場合、定着具の長手方向と垂直な断面の直径D30は、32.0mm以上35.0mm以下であることが好ましい。
貫通孔31の直径D31が16.0mm以上18.0mm以下の場合、定着具の長手方向と垂直な断面の直径D30を32.0mm以上とすることで、定着具の肉厚を十分に確保できる。このため、定着具の耐久性を特に高めることができる。
貫通孔31の直径D31が16.0mm以上18.0mm以下の場合、定着具30の長手方向と垂直な断面の直径D30を35.0mm以下とすることで、定着具30を被覆付きPC鋼撚り線に設置する際の定着具30の変形量を抑制できる。このため、定着具30を被覆付きPC鋼撚り線に設置する際に定着具30に破損等することを抑制できる。
設置する被覆付きPC鋼撚り線が、光ファイバーを備えている場合、定着具30は、図3に示すように、外周面32から、内周面33まで貫通する、光ファイバーを引き出す光ファイバー引き出し孔34をさらに有することもできる。
既述の様に、被覆付きPC鋼撚り線が有するPC鋼撚り線のひずみ等を測定するために、光ファイバーを備えた被覆付きPC鋼撚り線とすることが従来からなされている。
係る光ファイバーは、被覆付きPC鋼撚り線の端部で一部の被覆樹脂を切削して取出し、測定用の機器等に接続する。
定着具が、外周面から内周面まで貫通する、光ファイバーを引き出す貫通孔である光ファイバー引き出し孔をさらに有することで光ファイバーを定着具に固定でき、光ファイバーの破損を防止し、光ファイバーの測定機器への接続等の操作を容易にできる。
光ファイバー引き出し孔34の位置は特に限定されず、例えば定着具30の長手方向の端部30Aと連なった形状であっても良く、図3に示すように、定着具30の任意の場所に設けることもできる。光ファイバー引き出し孔34の数も特に限定されず、被覆付きPC鋼撚り線が有する光ファイバーの本数等に応じて選択できる。
光ファイバー引き出し孔34から光ファイバーを引き出すタイミングは特に限定されず、例えば定着具30を被覆付きPC鋼撚り線に設置する前に光ファイバーを引き出しておいてもよく、定着具30を被覆付きPC鋼撚り線に設置した後に光ファイバーを引き出してもよい。
ただし、定着具30を被覆付きPC鋼撚り線に設置する前に、光ファイバー引き出し孔34から光ファイバーを引き出す場合、後述するように定着具30をダイスに通す際に、光ファイバーが切断されないように、光ファイバーを収容する溝を、定着具30の外周面32に形成しておくことが好ましい。
また、定着具30を被覆付きPC鋼撚り線に設置した後に光ファイバー引き出し孔34から光ファイバーを引き出す場合、光ファイバーの引き出しを容易に実施できるように、予め光ファイバー周辺の被覆を切削し、除去しておくことが好ましい。光ファイバーを引き出すための光ファイバー周辺の被覆の切削は、光ファイバー周辺の被覆を一部切削するに過ぎず、定着具30を被覆付きPC鋼撚り線に設置するために被覆を除去するものではない。
(2)定着具の内周面の形状
定着具30の内周面33には、図4に示すように、凹部331、および凸部332を備えることができる。凹部331、および凸部332は、それぞれ定着具30の内周面33の周方向に沿って、それぞれ線状に配置できる。ここでいう線状とは、例えば定着具30の内周面33を見た場合に、凹部331や、凸部332がそれぞれ直線状、または曲線状に形成されていることを意味する。凹部331や、凸部332は連続した線状であることが好ましいが、例えば点線状のように間隔をおいて形成した非連続の線状であってもよい。凹部331および凸部332は、定着具30の内周面33に、例えば定着具30の中心軸に沿って交互に配置することが好ましい。
凸部332は、例えばねじ山とすることができる。凸部332をねじ山とする場合、凹部331、および凸部332は、定着具30の内周面33に、中心軸CAに沿って螺旋状に形成できる。
また、凹部331、凸部332は、定着具30の内周面33にリング状に設けることもできる。凹部331、凸部332を、定着具30の内周面33にリング状に設ける場合、凹部331、凸部332は、図4の中心軸CAを回転軸として回転させた形状となる。
内周面33に凹部331および凸部332を配置しておくことで、貫通孔31内に被覆付きPC鋼撚り線を挿入し、定着具30の外周面32を押圧して圧着した際に、凸部332が被覆付きPC鋼撚り線が有するPC鋼撚り線表面に食い込む。このため、被覆付きPC鋼撚り線に定着具30を強く固定できる。
ただし、既述の様に、被覆付きPC鋼撚り線の被覆を除去すること無く、被覆付きPC鋼撚り線の被覆樹脂の表面に直接定着具を設置すると、定着具の被覆付きPC鋼撚り線に対する接合強度が十分ではない場合があった。定着具の被覆付きPC鋼撚り線に対する接合強度が十分ではない場合が生じる原因について検討を行ったところ、被覆付きPC鋼撚り線に設置した定着具の内周面の凹部に微細なひび割れが生じていることを見出した。
そこで、本発明の発明者らはさらなる検討を行った。その結果、定着具30の中心軸CAを通る断面において、凹部331の曲率半径Rを0.1mm以上2.0mm以下とすることで、定着具を被覆付きPC鋼撚り線に設置した際に、凹部331でのひび割れの発生を抑制できることを見出した。
定着具30の被覆付きPC鋼撚り線への設置は、まず定着具30の貫通孔31に被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の端部を挿入し、次いで定着具30の外周面32をダイス等により押圧し、圧着することで行う。定着具30の外周面32を押圧し、圧着した際、定着具30は、中心軸CAに沿って、すなわち定着具30の長さ方向に沿って伸びる。このため、定着具30の外周面32を押圧し、圧着した際、凹部331についても中心軸CAに沿って伸びる。
そして、中心軸CAを通る断面における、凹部331の曲率半径Rが0.1mm未満の場合、定着具を被覆付きPC鋼撚り線に設置した際、凹部331の表面が均一に伸びず、伸び量の異なる領域の間に、微細なひび割れが生じるものと考えられる。
一方、中心軸CAを通る断面における、凹部331の曲率半径Rを0.1mm以上とすることで、定着具30を被覆付きPC鋼撚り線に設置した際、凹部331がほぼ均一に伸び、ひび割れの発生を抑制できているものと考えられる。
定着具30の中心軸CAを通る断面における凹部331の曲率半径Rが大きいほど、定着具30の外周面32を押圧し、圧着した際、凹部331でのひび割れの発生を抑制できると考えられる。ただし、凸部332のピッチPを変えずに凹部331の曲率半径Rを大きくしすぎると、凸部332の高さH332を十分に確保できない恐れがある。
そこで、凹部331の曲率半径Rを2.0mm以下とすることで、凸部332の高さH332を十分に高くし、定着具30を被覆付きPC鋼撚り線に設置した際に、凸部332が被覆付きPC鋼撚り線の被覆を貫通し、PC鋼撚り線へ食い込む量を十分に確保できる。凸部332が被覆付きPC鋼撚り線の被覆を貫通し、PC鋼撚り線へ十分食い込むことで、定着具30の被覆付きPC鋼撚り線への接合強度を十分に高められる。
凹部331の曲率半径は0.15mm以上1.5mm以下であることがより好ましく、0.15mm以上1.23mm以下がさらに好ましい。
以上のように、定着具30の貫通孔31の内周面33に凹部331、および凸部332を設け、凹部331の曲率半径を所定の範囲とすることで、定着具30を被覆付きPC鋼撚り線に、被覆付きPC鋼撚り線の被覆を除去することなく設置しても、接合強度を十分に高められる。このため、例えば定着具30と、被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の端部のうち、定着具30を設置した第1端部側とは反対側に位置する第2端部と、を把持して引張試験を実施した場合の、引張荷重(以下、「定着具付きPC鋼撚り線の引張荷重」とも記載する)を特に高められる。
従って、本実施形態の定着具30は、被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の端部に、被覆を除去することなく設置できる定着具とすることができる。
図4に示すように、凹部331と、凸部332とは、定着具30の中心軸CAに沿って、交互に繰り返し配置できる。そして、凹部331と、凸部332との間には、屈曲していない非屈曲部である、直線部333が配置されている。
凹部331の曲率半径Rを求めるに当って、凹部331は以下のようにして特定できる。図4中の1つの凹部331である第1凹部331Aを例に説明する。
第1凹部331Aは、第1直線部333Aと、第2直線部333Bとの間に配置されている。そして、第1直線部333Aを第1凹部331A側に伸ばした直線l1と、第2直線部333Bを第1凹部331A側に伸ばした直線l2とで囲まれた領域の内、直線l1と、直線l2とに接していない部分を第1凹部331Aと特定できる。
ここでは、第1凹部331Aを例に説明したが、他の凹部331の場合であっても同様に凹部を特定し、その曲率半径Rを求めることができる。
凸部332の形状は特に限定されず、定着具30の中心軸CAと垂直な断面において、図4中に示した第1凸部332Aのように、第2直線部333Bと、第3直線部333Cとが交差して形成された角形状であっても良く、曲線形状であっても良い。
凸部332は、定着具30を被覆付きPC鋼撚り線に設置した際に、被覆付きPC鋼撚り線が有するPC鋼撚り線表面に食い込み、定着具30を、被覆付きPC鋼撚り線に固定する働きを有する。このため、凸部332の高さH332は、被覆付きPC鋼撚り線の被覆樹脂の厚さよりも厚いことが好ましく、例えば0.4mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.4mm以上1.5mm以下であることがより好ましく、0.4mm以上1.45mm以下であることがさらに好ましい。
凸部332の高さH332を0.4mm以上とすることで、定着具30を被覆付きPC鋼撚り線に設置した際に、凸部332をPC鋼撚り線に十分な深さまで食い込ませることができる。このため、定着具付きPC鋼撚り線の引張荷重を特に高めることができる。
凸部332の高さH332を3.0mm以下とすることで、定着具30のサイズを抑制し、定着具30を被覆付きPC鋼撚り線に設置する際の、定着具30の変形量を抑制できる。このため、定着具30を被覆付きPC鋼撚り線に設置する際に、定着具30が破損等することを抑制できる。
凸部332の高さH332は、凸部332に隣接する凹部331の最も深い部分である、外周面32側に最も近接している点と、凸部332の最も高い部分である中心軸CAに最も近接している点との間の、中心軸CAと垂直な方向の距離を意味する。
凸部332のピッチPは特に限定されず、任意に選択できるが、例えば0.7mm以上3.5mm以下であることが好ましく、1.0mm以上3.5mm以下であることがより好ましく、2.0mm以上3.0mm以下であることがさらに好ましい。ピッチPを3.5mm以下とすることで、貫通孔31の内周面33に十分な数の凹部、凸部を形成でき、定着具を被覆付きPC鋼撚り線に設置した際に、定着具の被覆付きPC鋼撚り線に対する接合強度を高められる。また、ピッチPを0.7mm以上とすることで、生産性良く貫通孔31の内周面33に凹部331、凸部332を形成できるため、好ましい。
ピッチPは、凸部332間の距離を測定することで求められる。具体的には、図4に示すように、隣接する2つの凸332部の、最も高い部分である中心軸CAに最も近接している点間の定着具30の中心軸CAに沿った方向の距離を測定して求められる。
定着具30の内周面33には、複数の凹部331、凸部332を設けることができる。定着具30の内周面33に設けた凹部331、凸部332は、場所により、サイズや、形状が異なっていてもよい。ただし、凹部331や、凸部332は、タップ等により定着具の内周面33に形成することが生産性の観点からは好ましいため、凹部331や、凸部332のサイズや、形状は均一であることが好ましい。
(3)定着具の材質
定着具30の材質は特に限定されず、要求される強度や、耐久性等に応じて任意に選択できる。ただし、緊張力が導入されたPC鋼撚り線を支持することから、本実施形態の定着具の材質は、金属材料であることが好ましく、例えばクロムモリブデン鋼であることがより好ましい。
定着具30を被覆付きPC鋼撚り線に設置する際に、定着具30の内周面33に配置した凸部332は、被覆付きPC鋼撚り線が有するPC鋼撚り線表面に食い込み、定着具30を、被覆付きPC鋼撚り線に固定する働きを有する。そこで、内周面33が有する凸部332がPC鋼撚り線表面に食い込めるように、定着具30の内周面33は、設置するPC鋼撚り線表面の硬度よりも高い、十分な硬度を有することが好ましい。定着具30の内周面33の硬度は、ビッカーズ硬度で550HV以上850HV以下であることが好ましく、650HV以上780HV以下であることがより好ましい。
これは、定着具30の内周面33の硬度を、ビッカーズ硬度で550HV以上とすることで、定着具30を被覆付きPC鋼撚り線に設置した際に、定着具30の内周面33に配置した凸部332が、PC鋼撚り線の表面に特に食い込みやすくなるからである。
定着具30の内周面33の硬度の上限は特に限定されないが、過度に高くすると、定着具30が変形しにくくなり、定着具30を、被覆付きPC鋼撚り線に設置しづらくなる恐れがある。このため、定着具30の内周面33の硬度は850HV以下であることが好ましい。
定着具30の内周面33の硬度を調整する具体的な方法は特に限定されないが、例えば、定着具30の内周面に浸炭焼き入れ処理を行い、浸炭層を形成する方法が挙げられる。
ただし、定着具30の外周面32については変形しやすいように、浸炭層が形成されないことが好ましい。そこで、定着具30の内周面33に浸炭焼き入れ処理を行う場合、定着具30の外周面32に、例えば浸炭防止剤を塗布してから、定着具30の内周面33の浸炭焼き入れ処理を実施することが好ましい。
[定着具付きPC鋼撚り線]
本実施形態の定着具付きPC鋼撚り線は、被覆付きPC鋼撚り線と、円筒形状の定着具とを備えることができる。そして、定着具の貫通孔内に、被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の一方の端部である第1端部側を挿入し、定着具は、被覆付きPC鋼撚り線に固定できる。
本実施形態の定着具付きPC鋼撚り線は、定着具と、被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の端部のうち、第1端部とは反対側に位置する第2端部と、を把持して引張試験を実施した場合の引張荷重を、被覆付きPC鋼撚り線について定められた引張試験の最大試験力の95%以上とすることができる。
図5に示すように、本実施形態の定着具付きPC鋼撚り線50は、被覆付きPC鋼撚り線20と、被覆付きPC鋼撚り線20の長手方向の一方の端部である第1端部20A側に設置された定着具30とを備えることができる。
被覆付きPC鋼撚り線20については、既に説明したため、ここでは説明を省略する。
定着具30についても、既に説明したが、定着具付きPC鋼撚り線50に設置された定着具30は、既に外周面を押圧し、変形した状態となっている。
本実施形態の定着具付きPC鋼撚り線では、被覆付きPC鋼撚り線の被覆樹脂を除去することなく、被覆付きPC鋼撚り線の被覆樹脂を覆うように、直接定着具30が配置されている。このため、PC鋼撚り線が樹脂に被覆されず、露出している部分を抑制できるため、定着具付きPC鋼撚り線は、防錆性能に優れている。
また、既述の定着具を用いているため、定着具の内周面に配置した凹部に微細なひび割れが生じることを抑制されている。このため、本実施形態の定着具付きPC鋼撚り線の引張荷重は十分に高く、図5における定着具30と、被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の端部の内、第1端部20Aとは反対側に位置する第2端部20Bとを把持して引張試験を実施した場合の引張荷重を、被覆付きPC鋼撚り線について定められた引張試験の最大試験力の95%以上とすることができる。
被覆付きPC鋼撚り線について定められた引張試験の最大試験力は、JIS G 3536(2014)等で定められている。例えば被覆付きPC鋼撚り線が有するPC鋼撚り線のコード径(呼び径)が上記JISに記載された12.7mmの場合には183kN、15.2mmの場合には261kNと規定されている。また、高強度ストランドを用いた被覆付きPC鋼撚り線において、被覆付きPC鋼撚り線が有するPC鋼撚り線のコード径が15.7mmの場合には335kNと規定されている。
このため、含有するPC鋼撚り線のコード径が12.7mmの被覆付きPC鋼撚り線を用いた定着具付きPC鋼撚り線の場合、引張試験の引張荷重は、173.85kN以上であることが好ましい。含有するPC鋼撚り線のコード径が15.2mmの被覆付きPC鋼撚り線を用いた定着具付きPC鋼撚り線の場合、引張試験の引張荷重は、247.95kN以上であることが好ましい。含有するPC鋼撚り線のコード径が15.7mmの上記被覆付きPC鋼撚り線を用いた定着具付きPC鋼撚り線の場合、引張試験の引張荷重は、318.25kN以上であることが好ましい。
定着具付きPC鋼撚り線の引張荷重を、被覆付きPC鋼撚り線について定められた引張試験の最大試験力の95%以上とすることで、該定着具付きPC鋼撚り線に十分な大きさの緊張力を導入できるため、各種プレストレストコンクリートの施工に用いることができる。
既述の様に、被覆付きPC鋼撚り線は、光ファイバーを備えることもできる。被覆付きPC鋼撚り線が光ファイバーを備える場合、定着具は、外周面から、内周面まで貫通する光ファイバー引き出し孔をさらに備えることが好ましい。
そして、被覆付きPC鋼撚り線が光ファイバーを備える場合、本実施形態の定着具付きPC鋼撚り線は、図5に示すように光ファイバー引き出し孔34から、光ファイバー25が引き出された構成とすることもできる。
既述の様に、被覆付きPC鋼撚り線が有するPC鋼撚り線のひずみ等を測定するために、光ファイバーを備えた被覆付きPC鋼撚り線とすることが従来からなされている。
係る光ファイバーは、被覆付きPC鋼撚り線の端部で一部の被覆樹脂を切削して取出し、測定用の機器等に接続する。
定着具が、外周面から内周面まで貫通する、光ファイバーを引き出す貫通孔である光ファイバー引き出し孔をさらに備え、係る光ファイバー引き出し孔から光ファイバーを引き出すことで、光ファイバーを定着具に固定でき、光ファイバーの破損を防止し、光ファイバーの測定機器への接続等の操作を容易にできる。
光ファイバー引き出し孔34については、定着具の構成例の説明の際に既に説明したため、ここでは説明を省略する。
被覆付きPC鋼撚り線20に、定着具30を設置する具体的な方法は特に限定されない。例えば図6に示すように、まず被覆付きPC鋼撚り線20を、ダイス61の加工孔611に通しておく。ダイス61の加工孔611は、図6中の左右方向の中央部が絞られ、該中央部における断面形状が、定着具30の長手方向と垂直な断面よりも直径が小さい、円形形状となっている。
次いで、被覆付きPC鋼撚り線20の一方の端部側に定着具30を配置し、ジャッキ62により、定着具30を図6中の右側へ押圧する。ジャッキ62により押圧されることで、定着具30はダイス61の加工孔611を通過し、この際に外周面が押圧され、被覆付きPC鋼撚り線20に圧着される。
定着具30が、既述の光ファイバー引き出し孔34を備える場合、光ファイバー引き出し孔34から光ファイバーを引き出すタイミングは特に限定されず、例えば定着具30を被覆付きPC鋼撚り線に設置する前に引き出しておいてもよい。また、定着具30を被覆付きPC鋼撚り線に設置した後に光ファイバー引き出し孔34から光ファイバーを引き出してもよい。ただし、定着具30を被覆付きPC鋼撚り線に設置する前に光ファイバーを引き出す場合には、定着具30をダイスに通す際に光ファイバーが切断されないように、光ファイバーを収容する溝を、定着具30の外周面32に形成しておくことが好ましい。
また、定着具30を被覆付きPC鋼撚り線に設置した後に光ファイバーを引き出す場合、光ファイバーの引き出しを容易に実施できるように、定着具30を被覆付きPC鋼撚り線に設置する前に、予め光ファイバー周辺の被覆を切削し、除去しておくことが好ましい。
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(評価方法)
まず、以下の実験例において作製した定着具、定着具付きPC鋼撚り線の評価方法について説明する。
(1)貫通孔の直径D31、凹部の曲率半径R、凸部の高さH332、ピッチP
中心軸を通る面で、各実験例で作製した定着具を半分に切断し、貫通孔の直径D31、凹部の曲率半径R、凸部の高さH332、およびピッチPを測定した。
(貫通孔の直径D31
貫通孔31の直径D31は、貫通孔31の最も径が狭くなっている部分での直径とした。
(凹部の曲率半径R)
凹部331の曲率半径Rを求めるに当って、まず凹部331を以下のようにして特定した。図4中の1つの凹部331である第1凹部331Aを例に説明する。
第1凹部331Aは、第1直線部333Aと、第2直線部333Bとの間に配置されている。そして、第1直線部333Aを第1凹部331A側に伸ばした直線l1と、第2直線部333Bを第1凹部331A側に伸ばした直線l2とで囲まれた領域の内、直線l1と、直線l2とに接していない部分を第1凹部331Aと特定する。
そして、特定した第1凹部331Aの曲率半径Rを測定した。
(凸部の高さH332
凸部332の高さH332は、凸部332に隣接する凹部331の最も深い部分である、外周面32側に最も近接している点と、凸部332の最も高い部分である中心軸CAに最も近接している点との間の、中心軸CAと垂直な方向の距離を測定して求めた。
(ピッチP)
ピッチPは、凸部332間の距離を測定することで求めた。具体的には、隣接する2つの凸部の、最も高い部分である中心軸CAに最も近接している点間の定着具30の中心軸CAに沿った方向の距離を測定して求めた。
以下の各実験例で作製した定着具において、貫通孔の直径D31、凹部の曲率半径R、凸部の高さH332、およびピッチPは、測定位置によらず同じ値となったため、1つの測定値のみを表1示す。
(2)内周面のビッカーズ硬度
貫通孔の直径D31等を測定するために切断した試料を用い、JIS Z 2244(2009)に準拠して、定着具の内周面のビッカーズ硬度を測定した。試験力は0.3kgf、保持時間は10秒として測定を行った。
(3)引張試験
引張は、定着具と、被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の端部のうち第2端部と、を把持して、定着具が剥離するまで引っ張ることにより測定を行った。
測定に当たっては、引張試験機(株式会社島津製作所製 横型引張試験機)を用い、定着具付きPC鋼撚り線を把持している部分の間の距離は1000mmとした。
引張試験の結果が、被覆付きPC鋼撚り線について定められた引張試験の最大試験力の95%以上の場合にはA、95%未満の場合にはBと評価した。評価がAの場合には、十分な引張荷重を有する定着具付きPC鋼撚り線であることを意味する。
なお、以下の実験例では、JIS G 3536(2014)に記載されたコード径が15.2mmのPC鋼撚り線を含む被覆付きPC鋼撚り線を用いていることから、被覆付きPC鋼撚り線について定められた引張試験の最大試験力は261kNとなる。
以下に各実験例における定着具、および定着具付きPC鋼撚り線を説明する。実験例1〜3が実施例、実験例4、5が比較例になる。
[実験例1]
定着具として、図3、図4に示した定着具を作製した。
図3、図4に示すように、定着具30は中心軸CAに沿って貫通孔31を有し円筒形状を有している。
長さL30は58mm、定着具30の長手方向と垂直な断面の直径D30は34mmとした。
定着具30の内周面33には、タップを用いて形成した凹部331、および凸部332が設けられている。凹部331、および凸部332は、定着具30の内周面33の周方向に沿って線状に設けられ、かつ内周面33を定着具30の中心軸CAに沿って見た場合に凹部331と、凸部332とが交互に配置されている。具体的には、凸部332はねじ山であり、定着具30の中心軸に沿って螺旋状に設けられている。また、定着具30には、外周面32から内周面33まで貫通する、光ファイバー引き出し孔34を1つ設けておいた。
定着具30は、クロムモリブデン鋼であり、内周面に浸炭焼き入れ処理を行い、浸炭層を形成しておいた。
定着具は同じ条件で2つ作製し、1つの定着具を用いて、貫通孔31の直径D31、凹部の曲率半径R、凸部の高さH332、およびピッチPを測定した。その結果、貫通孔31の直径D31は、17.294mmであった。凹部331の曲率半径は0.15mmであり、凸部332の高さは1.25mm、ピッチは2.5mmであった。また、内周面のビッカーズ硬度は750HVであった。内周面のビッカーズ硬度は、以下の他の実験例で作製した定着具でも同様であった。
また、作製した定着具を、被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の一方の端部に設置し、図5に示した定着具付きPC鋼撚り線を作製した。
7本のPC鋼線211を撚り合せた、コード径が15.2mmのPC鋼撚り線の外表面をエポキシ樹脂である被覆樹脂22により被覆した、図2に示した断面構造を有する被覆付きPC鋼撚り線20を用いた。第1PC鋼線211Aと、第2PC鋼線211Bとは同じPC鋼線を用い、線径は同じとした。また、被覆付きPC鋼撚り線の、クラウン部24における被覆樹脂の厚さは0.4mm以上1.2mm以下の範囲に分布していた。また、図2に示すように、被覆付きPC鋼撚り線20は、1本の光ファイバー25を有しており、光ファイバー25を引き出せるように、光ファイバー25周辺の被覆樹脂を切削しておいた。
そして、作製した定着具を、上記被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の一方の端部に設置した。定着具の設置は、図6に示したように、ジャッキと、ダイスとを用いて行った。具体的な手順については既に説明したため、ここでは説明を省略する。
また、得られた定着具付きPC鋼撚り線の光ファイバー引き出し孔34から光ファイバー25を引き出し、光ファイバー25を定着具30に固定した。
被覆付きPC鋼撚り線に設置した後の定着具30の長さは69mmであり、長手方向と垂直な断面の直径D30は30mmであった。
得られた定着具付きPC鋼撚り線について、既述の引張試験を実施した。評価結果を表1に示す。
[実験例2〜実験例5]
定着具の内周面に凹部、および凸部を形成する際に用いるタップを変更し、凹部の曲率半径を変更した点以外は、実験例1と同様にして定着具、および定着具付きPC鋼撚り線を作製し、評価を行った。なお、凹部の曲率半径を変更したことで、凸部の高さも変化するが、ピッチPは実験例1と同じになっている。評価結果を表1に示す。
Figure 2021105299
表1に示した結果によると、凹部の曲率半径が0.1mm〜2.0mmの範囲である実験例1〜実験例3においては、引張試験の結果がAとなっており、引張荷重が被覆付きPC鋼撚り線について定められた引張試験の最大試験力の95%以上であることを確認できた。
これに対して、凹部の曲率半径が0.08mmである実験例4では引張試験の評価結果がBとなっており、引張荷重が被覆付きPC鋼撚り線について定められた引張試験の最大試験力の95%未満であることを確認できた。実験例4の定着具付きPC鋼撚り線を、定着具の中心軸に沿って切断し、断面を確認したところ、凹部に微細なクラックが観察でき、係るクラックが生じたことで引張荷重が低下したものと考えられる。
なお、実験例1〜実験例3の定着具付きPC鋼撚り線についても、定着具の中心軸に沿って切断し、断面を確認したが、凹部に微細なクラックは観察できなかった。
また、凹部の曲率半径が2.01mmである実験例5についても、引張試験の評価結果がBとなっており、引張荷重が被覆付きPC鋼撚り線について定められた引張試験の最大試験力の95%未満であることを確認できた。実験例5においては、凹部の曲率半径を大きくしたために、凸部の高さが低くなっている。このため、定着具を被覆付きPC鋼撚り線に設置した際に、凸部がPC鋼撚り線の表面に十分に食い込めず、定着具付きPC鋼撚り線の引張荷重が低下したものと考えられる。
以上の結果から、実験例1〜実験例3においては、被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の端部に、被覆を除去することなく設置できる定着具が得られていたことを確認できた。すなわち、実験例1〜実験例3の定着具によれば、該定着具を設置する際、被覆付きPC鋼撚り線の被覆を除去しなくても、該定着具の被覆付きPC鋼撚り線に対する接合強度を十分に高くでき、定着具付きPC鋼撚り線の引張荷重を高くできることを確認できた。
10 PC鋼撚り線
10A 一方の端部
11 圧着グリップ
12 アンカープレート
121 貫通孔
13 コンクリート構造物
20 被覆付きPC鋼撚り線
20A 第1端部
20B 第2端部
21 PC鋼撚り線
211 PC鋼線
211A 第1PC鋼線
211B 第2PC鋼線
212 撚り溝
22 被覆樹脂
23 内部空間
24 クラウン部
25 光ファイバー
211B 共通接線
21 外接円
P1、P2 交点
211 線径
211 直線
211A 中心
211B 中心
22 被覆樹脂の厚さ
30 定着具
30A 端部
31 貫通孔
32 外周面
33 内周面
331 凹部
331A 第1凹部
332 凸部
332A 第1凸部
333 直線部
333A 第1直線部
333B 第2直線部
333C 第3直線部
34 光ファイバー引き出し孔
30 直径
31 直径
R 曲率半径
332 高さ
30 長さ
A 領域
CA 中心軸
l1 直線
l2 直線
P ピッチ
50 定着具付きPC鋼撚り線
61 ダイス
611 加工孔
62 ジャッキ

Claims (6)

  1. 被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の一方の端部に設置する定着具であって、
    前記定着具は円筒形状であり、かつ内周面に凹部、および凸部を備えており、
    前記凹部、および前記凸部は、それぞれ前記内周面の周方向に沿って線状に設けられており、
    前記定着具の中心軸を通る断面において、前記凹部の曲率半径が0.1mm以上2.0mm以下である定着具。
  2. 前記定着具の中心軸を通る断面において、前記凸部の高さが0.4mm以上3.0mm以下である請求項1に記載の定着具。
  3. 前記内周面の硬度が、ビッカーズ硬度で550HV以上850HV以下である請求項1または請求項2に記載の定着具。
  4. 前記被覆付きPC鋼撚り線は、光ファイバーを備えており、
    前記定着具は、外周面から前記内周面まで貫通する、前記光ファイバーを引き出す光ファイバー引き出し孔をさらに備えている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の定着具。
  5. 被覆付きPC鋼撚り線と、
    円筒形状を有する定着具と、を備え、
    前記定着具の貫通孔内に、前記被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の一方の端部である第1端部側が挿入され、
    前記定着具は、前記被覆付きPC鋼撚り線に固定されており、
    前記定着具と、前記被覆付きPC鋼撚り線の長手方向の端部のうち、前記第1端部とは反対側に位置する第2端部と、を把持して引張試験を実施した場合の引張荷重が、前記被覆付きPC鋼撚り線について定められた引張試験の最大試験力の95%以上である定着具付きPC鋼撚り線。
  6. 前記被覆付きPC鋼撚り線は、光ファイバーを備え、
    前記定着具は、外周面から内周面まで貫通する、光ファイバー引き出し孔をさらに備えており、
    前記光ファイバー引き出し孔から、前記光ファイバーが引き出されている請求項5に記載の定着具付きPC鋼撚り線。
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