JP2021103736A - Knn膜形成用液組成物及びknn膜の形成方法 - Google Patents

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【課題】鉛を含まず、緻密なKNN膜を形成し得るKNN膜形成用液組成物及びこの液組成物を用いたKNN膜の形成方法を提供する。【解決手段】溶媒と、有機カリウム化合物と、有機ナトリウム化合物と、有機ニオブ化合物と、を含むKNN膜形成用液組成物であって、前記溶媒は、カルボン酸とカルボン酸エステルとを含む混合溶媒であり、前記カルボン酸は、一般式がCxH2x+1COOH(ただし、xは、4≦x≦8を満たす数)で表される化合物であって、前記カルボン酸エステルは、一般式がCyH2y+1COOCzH2z+1(ただし、yは、1≦y≦7を満たす数、zは、1≦z≦7を満たす数)で表される化合物あることを特徴とするKNN膜形成用液組成物。【選択図】図1

Description

本発明は、鉛を含まず、緻密な膜を形成し得るKNN膜形成用液組成物及びこの液組成物を用いたKNN膜の形成方法に関する。本明細書において、KNNは、ニオブ酸カリウムナトリウム((K,Na)NbO)の略称である。
アクチュエータや超音波デバイスなどのMEMS(Micro Electro Mechanical System)と呼ばれる装置に搭載される圧電素子の圧電体層の材料として、高い圧電特性を有するPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)がこれまで用いられてきた。しかし、環境面において鉛の含有量を抑えた圧電材料の開発が求められている。その一つの圧電材料として、KNN(ニオブ酸カリウムナトリウム)からなる圧電材料が開発されている。
従来、KNN膜形成用の液組成物として、カリウム、ナトリウム、及びニオブを含む金属錯体混合物と、シリコーンオイルと、溶媒と、を含み、金属錯体混合物と溶媒との総量100容量部に対してシリコーンオイルを5容量部以下含む組成物が知られている。所定量のシリコーンオイルを含むことにより、圧電セラミックス膜を形成する際の焼成工程における熱膨張が抑制されて、圧電セラミックス膜の残留応力を低減させることができる圧電セラミックス膜形成用組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
上記金属錯体混合物は、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、ニオブ(Nb)の各金属が所望のモル比となるようにこれらの金属錯体を溶媒に溶解・分散させることにより調製される。そしてKを含む金属錯体としては、例えば2−エチルヘキサン酸カリウム、酢酸カリウム、カリウムアセチルアセトナート、カリウムエトキシドなどが挙げられ、Naを含む金属錯体としては、例えば2−エチルヘキサン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ナトリウムアセチルアセトナート、ナトリウムエトキシドなどが挙げられ、Nbを含む金属錯体としては、例えばニオブエトキシド、2−エチルヘキサン酸ニオブ、ニオブペンタエトキシドなどが挙げられる。また上記溶媒としては、トルエン、キシレン、オクタン、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、ブタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸、水、等の様々な溶媒が挙げられる。
特開2012−169467(要約、段落[0023]、段落[0025])
これまで、KNN膜は、KNN膜形成用液組成物を、基板の電極上に塗布乾燥し、仮焼した後、焼成する方法、すなわち化学溶液堆積(CSD:chemical solution deposition)法によって形成されてきた。しかし、特許文献1に開示されている、トルエン、キシレン、オクタン、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、ブタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸、水を溶媒としたKNN膜形成用液組成物を用いて、KNN膜を形成する場合、緻密な膜を得ることが難しい傾向があった。
本発明の目的は、鉛を含まず、緻密なKNN膜を形成し得るKNN膜形成用液組成物及びこの液組成物を用いたKNN膜の形成方法を提供することにある。
本発明者らは、CSD法において、KNN膜形成用液組成物の溶媒として、特定のカルボン酸とカルボン酸エステルを含む混合溶媒を用いることによって、緻密なKNN膜を形成し得ることを見出した。すなわち、本発明者らは、このKNN膜形成用液組成物を基板の電極上に塗布した後、特定の温度で仮焼して仮焼膜を形成し、次いで、得られた仮焼膜を特定の速度で特定の温度まで昇温し、その温度で焼成して結晶化させることによって、緻密なKNN膜を形成することが可能となることを確認して、本発明に到達した。
本発明の第1の観点は、溶媒と、有機カリウム化合物と、有機ナトリウム化合物と、有機ニオブ化合物と、を含むKNN膜形成用液組成物であって、前記溶媒は、カルボン酸とカルボン酸エステルとを含む混合溶媒であり、前記カルボン酸は、一般式がC2x+1COOH(ただし、xは、4≦x≦8を満たす数)で表される化合物であって、前記カルボン酸エステルは、一般式がC2y+1COOC2z+1(ただし、yは、1≦y≦7を満たす数、zは、1≦z≦7を満たす数)で表される化合物であることを特徴とするKNN膜形成用液組成物である。
上記本発明の第1の観点のKNN膜形成用液組成物によれば、溶媒として、カリウム、ナトリウム及びニオブなどの金属に対して親和性が高いカルボン酸と、このカルボン酸との親和性が高く、金属に対する親和性が低いカルボン酸エステルとを含むので、カリウム、ナトリウム及びニオブなどの金属が均一に溶解し、組成の均一性が高くなる。すなわち、カルボン酸は、一般式がC2x+1COOH(ただし、xは、4≦x≦8を満たす数)で表される化合物とされているので、カリウム、ナトリウム及びニオブなどの金属は溶媒和を形成しやすい。また、カルボン酸エステルは、一般式がC2y+1COOC2z+1(ただし、yは、1≦y≦7を満たす数、zは、1≦z≦7を満たす数)とされているので、カルボン酸のアルキル基(C2x+1基)との親和性が高い。このため、カリウム、ナトリウム及びニオブなどの金属の少なくとも一部は溶媒和を形成して、溶媒中に均一に分散した状態となるので、KNN膜形成用液組成物は組成の均一性が高くなる。よって、上記のKNN膜形成用液組成物を、基板の上に塗布して、特定の温度で仮焼することにより、組成や膜厚が均一な仮焼膜を得ることができ、得られた仮焼膜を特定の速度で特定の温度まで昇温し、その温度で焼成して結晶化させることによって、緻密なKNN膜を形成することが可能となる。
ここで、KNN膜形成用液組成物において、前記溶媒は、前記カルボン酸1質量部に対して、前記カルボン酸エステルを、0質量部を超えて20質量部以下の範囲内の量にて含むことが好ましい。
この場合、KNN膜形成用液組成物の溶媒がカルボン酸エステルを上記の範囲内の量にて含むので、溶媒和を形成した金属がより均一に分散しやすくなるので、組成の均一性がより高くなる。よって、緻密なKNN膜をより確実に形成することが可能となる。
本発明の第2の観点は、上述のKNN膜形成用液組成物を基板の電極上に塗布して塗布膜を形成する塗布工程と、前記塗布膜を150℃以上400℃以下の温度で仮焼して仮焼膜を形成する仮焼工程と、前記仮焼膜を10℃/秒以上の速度で昇温し600℃以上800℃以下の温度で焼成して結晶化したKNN膜を形成する焼成工程と、を有するKNN膜の形成方法である。
上記本発明の第2の観点のKNN膜形成用液組成物によれば、塗布工程において、上述のKNN膜形成用液組成物を用いて塗布膜を形成し、この塗布膜を、仮焼膜形成工程にて仮焼して仮焼膜とした後、KNN膜形成工程にて焼成するので、緻密なKNN膜を形成することが可能となる。
本発明によれば、鉛を含まず、緻密なKNN膜を形成し得るKNN膜形成用液組成物及びこの液組成物を用いたKNN膜の形成方法を提供することが可能となる。
本発明の一実施形態に係るKNN膜の形成方法のフロー図である。
以下、本発明の一実施形態であるKNN膜形成用液組成物及びKNN膜の形成方法について説明する。
[KNN膜形成用液組成物]
本実施形態のKNN膜形成用液組成物は、有機カリウム化合物と有機ナトリウム化合物と有機ニオブ化合物を含む有機金属化合物と溶媒を含む。この液組成物から形成されるKNN膜は、ニオブ酸カリウムナトリウム((K,Na)NbO)であって、ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物である。本実施形態に係る複合酸化物は、Aサイトに、カリウム(K)及びナトリウム(Na)を含み、Bサイトにニオブ(Nb)を含む。このペロブスカイト型のABO型構造では、Aサイトは酸素が12配位しており、また、Bサイトは酸素が6配位して8面体(オクタヘドロン)を形成しており、このAサイトにカリウム及びナトリウムが、Bサイトにニオブが位置している。
本実施形態に係るKNN膜形成用液組成物に含まれるカリウム、ナトリウム、ニオブのモル比は、特に限定されるものではないが、K:Na:Nbは、x:1−x:y(ただし、0.1≦x≦0.7、0.7≦y≦1.4)とすることが好ましい。なお、yが0.7未満ではNb源が少な過ぎて異相を生じるおそれがあり、yが1.4を超えるとNb源が多過ぎて異相を生じるおそれがある。
本実施形態のKNN膜形成用液組成物に含まれる有機カリウム化合物、有機ナトリウム化合物及び有機ニオブ化合物は、金属アルコキシド、あるいは一般式C2n+1COOH(ただし、4≦n≦8)で表されるカルボン酸の金属塩であることが好ましい。カルボン酸の金属塩の場合、nが4未満では膜が緻密にならず、8を超えると主溶媒が固体となり溶媒として適さない。nは6〜8の範囲が好ましい。カルボン酸は、具体的には、次の表1に示される化合物であることが好ましい。有機カリウム化合物、有機ナトリウム化合物及び有機ニオブ化合物がカルボン酸の金属塩でなく、例えばアルコキシドである場合には、液組成物から膜が形成される過程で、異相を生じる。
Figure 2021103736
本実施形態のKNN膜形成用液組成物に含まれる溶媒は、カルボン酸とカルボン酸エステルとを含む混合溶媒とされている。
カルボン酸は、一般式がC2x+1COOH(ただし、xは、4≦x≦8を満たす数)で表される化合物とされている。カルボン酸は、カリウム、ナトリウム及びニオブなどの金属と溶媒和を形成する作用を有する。上記の一般式において、xが3以下であると、KNN膜が緻密になりにくくなるおそれがある。一方、xが8を超えると室温で固体となるため、溶媒として適さない。xは6〜8の範囲が好ましい。カルボン酸中のアルキル基(C2x+1)は、直鎖であってもよいし、分岐を有していてもよい。
カルボン酸エステルは、一般式がC2y+1COOC2z+1(ただし、yは、1≦y≦7を満たす数、zは、1≦z≦7を満たす数)とされている。カルボン酸エステルは、有機金属化合物と溶媒和を形成しているカルボン酸を分散させる作用を有する。上記の一般式において、y及びzが8を超えると精製が困難となり、品質にバラツキが生じるおそれがある。y及びzは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。アルキル基(C2y+1及びC2z+1)は、それぞれ直鎖であってもよいし、分岐を有していてもよい。
溶媒は、カルボン酸1質量部に対して、カルボン酸エステルを、0質量部を超えて20質量部以下の範囲内の量にて含むことが好ましい。カルボン酸エステルの含有量が少なくなりすぎると、有機金属化合物と溶媒和を形成しているカルボン酸の分散性が低下するおそれがある。一方、カルボン酸エステルの含有量が多くなりすぎると、相対的にカルボン酸の含有量が少なり、有機金属化合物が溶媒和しにくくなり有機金属化合物の分散性が低下するおそれがある。このため、カルボン酸1質量部に対するカルボン酸エステルの量は0.2質量部以上20質量部以下の範囲内にあることが特に好ましい。
溶媒は、さらに、カルボン酸及びカルボン酸エステル以外の他の溶媒を含んでいてもよい。他の溶媒としては、例えば、ジカルボン酸、アルコール、酢酸、水を挙げることができる。
本実施形態のKNN膜形成用液組成物に含まれる金属成分(カリウム、ナトリウム、ニオブ)の含有量は、金属酸化物量に換算して6質量%以上20質量%以下の範囲内にあることが好ましい。KNN膜形成用液組成物に含まれるカルボン酸及びカルボン酸エステルの含有量は、カルボン酸とカルボン酸エステルの合計含有量として50質量%以上80質量%の範囲内にあることが好ましい。KNN膜形成用液組成物に含まれるカルボン酸及びカルボン酸エステルの含有量は、例えば、熱分解GC−MS法によって測定することができる。
[KNN膜形成用液組成物の調製方法]
本実施形態のKNN膜形成用液組成物は、KNNの金属源である上述した有機カリウム化合物(K源)と有機ナトリウム化合物(Na源)と有機ニオブ化合物(Nb源)とを上述した溶媒に溶解して調製される。具体的には、先ず還流器を備えた反応容器に上述したカルボン酸と有機ナトリウム化合物を入れ、130℃〜170℃のオイルバスで30分〜60分間還流することにより、有機ナトリウム化合物溶液を得る。次いで、有機ナトリウム化合物溶液に有機カリウム化合物及び有機ニオブ化合物を加えて、同一の温度のオイルバスで30分〜60分間還流を続けて、合成液を調製する。ここで上記有機カリウム化合物(K源)、上記有機ナトリウム化合物(Na源)及び上記有機ニオブ化合物(Nb源)は、金属モル比(K:Na:Nb)がx:1−x:y(ただし、0.1≦x≦0.7、0.7≦y≦1.4)になるようにそれぞれ秤量する。有機ナトリウム化合物としては、例えば、カルボン酸ナトリウムを用いることができる。有機カリウム化合物としては、例えば、カルボン酸カリウムを用いることができる。有機ニオブ化合物としては、例えば、ニオブアルコキシドあるいはカルボン酸ニオブを用いることができる。
続いて減圧蒸留して合成液から溶媒を脱離して、有機溶媒及び反応副生成物を除去する。得られた溶液に、上述したカルボン酸エステルを添加して希釈する。カルボン酸エステルの添加量は、金属化合物の含有量が酸化物換算で6質量%〜20質量%となる量とすることが好ましい。得られた液をフィルタでろ過することにより残留物を取り除き、液組成物を得る。酸化物換算で6質量%未満では、良好な膜は得られるものの、膜厚が薄すぎるため、所望の厚さを得るまでの生産性が悪くなるおそれがある。20質量%を超えると、液組成物に沈殿が生じやすくなるおそれがある。
[KNN膜の形成方法]
図1は、本発明の一実施形態に係るKNN膜の形成方法のフロー図である。
本発明の一実施形態に係るKNN膜の形成方法は、塗布工程S11と、仮焼工程S12と、焼成工程S13と、を有する。
塗布工程S11は、KNN膜形成用液組成物を基板の電極上に塗布して塗布膜を形成する工程である。この基板は、シリコン製又はサファイア製の耐熱性のある基板本体を有する。シリコン製の基板本体の場合、この基板本体上にSiO膜が設けられ、このSiO膜上にPt、TiOx、Ir、Ru等の導電性を有し、かつKNN膜と反応しない材料からなる下部電極が設けられる。例えば、下部電極を、基板本体側から順にTiOx膜及びPt膜の2層構造にすることができる。上記TiOx膜の具体例としては、TiO膜が挙げられる。さらに上記SiO膜は密着性を向上するために形成される。Pt膜は、例えばスパッタリング法により(111)面に配向して形成される。
この下部電極のPt膜上に、KNN膜形成用液組成物を塗布する。このKNN膜形成用液組成物の塗布方法としては、スピンコーティング、ディップコーティング、LSMCD(Liquid Source Misted Chemical Deposition)法又は静電スプレー法などの方法を用いることができる。
仮焼膜形成工程S12は、塗布膜を仮焼して仮焼膜(ゲル膜)を形成する工程である。塗布膜の仮焼は、例えば、ホットプレート又は赤外線急速加熱炉(RTA)を用いて、150℃以上400℃以下、好ましくは200℃以上350℃以下の温度で行われる。仮焼温度が150℃未満では、ゲル状にならない場合がある。一方、仮焼温度が400℃を超えると、仮焼膜が結晶化しにくくなり、焼成工程S13において、結晶性が高いKNN膜を形成することが困難となるおそれがある。
仮焼工程S12において仮焼する塗布膜の膜厚が厚くなりすぎると、生成する仮焼膜にクラックが発生し易くなるおそれがある。このため、塗布工程S11で形成する塗布膜の膜厚を150nm以下とし、所望の膜厚の仮焼膜が得られるまで、塗布工程S11と仮焼工程S12とを繰り返し行うことが好ましい。塗布工程S11で形成する塗布膜の膜厚は50nm以上とすることが好ましい。塗布膜の膜厚が薄くなりすぎると、所望の膜厚の仮焼膜を得るまでに必要な塗布工程S11と仮焼工程S12の回数が多くなりすぎて、生産性が大きく低下するためである。
焼成工程S13は、仮焼膜を焼成して結晶化したKNN膜を形成する工程である。仮焼膜の焼成は、例えば、酸素(O)が含まれる雰囲気中で、ホットプレート又はRTAを用いて、10℃/秒以上の速度で600℃以上800℃以下の温度まで昇温し、0.5分以上5分以下の時間保持することにより行われる。好ましい昇温速度は40℃/秒以上60℃/秒以下であり、好ましい焼成温度は650℃以上750℃以下である。昇温速度が10℃/秒未満、焼成温度が600℃未満では、作製されるKNN膜の結晶化度が十分でなく、その密度が低くなるおそれがある。一方、焼成温度が800℃を超えると、基板等にダメージが生じるおそれがある。
以上のような構成とされた本実施形態であるKNN膜形成用液組成物によれば、溶媒として、カリウム、ナトリウム及びニオブなどの金属に対して親和性が高いカルボン酸と、このカルボン酸との親和性が高く、金属に対する親和性が低いカルボン酸エステルとを含むので、カリウム、ナトリウム及びニオブなどの金属が均一に溶解し、組成の均一性が高い。すなわち、カルボン酸は、一般式がC2x+1COOH(ただし、xは、4≦x≦8を満たす数)で表される化合物とされているので、カリウム、ナトリウム及びニオブなどの金属と溶媒和を形成しやすい。また、カルボン酸エステルは、一般式がC2y+1COOC2z+1(ただし、yは、1≦y≦7を満たす数、zは、1≦z≦7を満たす数)とされているので、カルボン酸のアルキル基(C2x+1基)との親和性が高い。このため、カリウム、ナトリウム及びニオブなどの金属の少なくとも一部は溶媒和を形成して、溶媒中に均一に分散した状態となるので、KNN膜形成用液組成物は組成の均一性が高くなる。よって、本実施形態のKNN膜形成用液組成物を、基板の上に塗布して、特定の温度で仮焼することによって、組成や膜厚が均一な仮焼膜を得ることができ、得られた仮焼膜を特定の速度で特定の温度まで昇温し、その温度で焼成して結晶化させることによって、緻密なKNN膜を形成することが可能となる。
また、本実施形態のKNN膜形成用液組成物によれば、溶媒が、カルボン酸1質量部に対して、カルボン酸エステルを、0質量部を超えて20質量部以下の範囲内の量にて含むことによって、カリウム、ナトリウム及びニオブなどの金属がより均一に溶解し、組成の均一性がより高くなる。よって、緻密なKNN膜をより確実に形成することが可能となる。
さらに、本実施形態のKNN膜形成用液組成物によれば、塗布工程S11において、上述のKNN膜形成用液組成物を用いて塗布膜を形成し、この塗布膜を、仮焼工程S12にて仮焼して仮焼膜とした後、焼成工程S13にて焼成するので、緻密なKNN膜を形成することが可能となる。
次に、本発明の作用効果を実施例により詳しく説明する。
[KNN膜形成用液組成物の調製]
下記のようにして、No.1〜No.10のKNN膜形成用液組成物を調製した。
(合成例1:KNN膜形成用液組成物No.1の調製)
フラスコに、酢酸イソアミル25質量部と、2−エチルヘキサン酸5質量部と、オクタン酸無水物10質量部と、2−エチルヘキサン酸ナトリウム(ナトリウム源)と、コハク酸ジメチルと、を投入した。次いで、このフラスコを150℃のオイルバスに浸漬して、フラスコ内の混合液を30分間還流させた。還流後、フラスコをオイルバスから取り出して室温までに放冷した。次いで、放冷したフラスコに2−エチルヘキサン酸カリウム(カリウム源)とエトキシニオブ(ニオブ源)をれぞれ、ナトリウム、カリウム、ニオブの含有量が、モル比で、0.5:0.5:1(=Na:K:Nb)となるように加えた後、再度、フラスコを150℃のオイルバスに浸漬して、フラスコ内の混合液を30分間還流させた。還流後、フラスコをオイルバスから取り出して室温までに放冷した。次いで、放冷したフラスコに水と酢酸を加えた後、再度、フラスコを150℃のオイルバスに浸漬して、フラスコ内の混合液を30分間還流させた。還流後、フラスコをオイルバスから取り出して室温までに放冷した。その後、フラスコ内の混合液を、アスピレータを用いて、0.015MPaまで減圧蒸留して、未反応物を除去した。未反応物を除去した混合液に、酢酸イソアミルを、金属成分の含有量が酸化物換算で10質量%なるように加えて、混合液を希釈した。得られた希釈液を、フィルタを用いてろ過し、残留物を除去して、KNN膜形成用液組成物No.1を得た。
得られたKNN膜形成用液組成物No.1のカルボン酸とカルボン酸エステルの含有量を、熱分解GC−MS法により分析した。その結果を、表2に示す。
(KNN膜形成用液組成物No.2〜No.10の調製)
カルボン酸及びカルボン酸エステルの種類と配合量を変えたこと以外は、合成例1と同様にして、KNN膜形成用液組成物No.2〜No.10を調製した。得られたKNN膜形成用液組成物のカルボン酸とカルボン酸エステルの含有量を、熱分解GC−MS法により分析した。その結果を、表2に示す。
Figure 2021103736
[本発明例1]
KNN膜形成用液組成物(No.1)を用いてKNN膜を形成した。基板は4インチのSi基板を用いた。Si基板は熱酸化により500nmの酸化膜を形成した。酸化膜上にTiをスパッタリング法により20nm堆積させ、その上にスパッタリング法により厚さ100nmの(111)配向のPt下部電極を形成した。得られた基板上に合成例1で得られたKNN膜形成用液組成物No.1を0.5mL滴下し、5000rpmで15秒間スピンコートを行い、スピンコートされた液を乾燥した。次いで、300℃のホットプレートで5分間仮焼を行った。その後、RTAにて700℃、酸素雰囲気、昇温速度50℃/秒、保持時間1分で焼成を行った。これにより本発明例1のKNN膜をPt下部電極上に形成した。
得られたKNN膜の緻密性を評価した。このKNN膜の緻密性は、KNN膜の密度を測定することにより調べた。具体的には、KNN膜の断面をSEMにて観察し、その断面像を画像解析することにより膜の面積及び膜中のボイド部分の面積を算出し、[(膜の面積−ボイド部分の面積)/膜の面積]×100という計算を行うことにより膜密度(%)を算出した。膜密度が98%を超える場合を「優秀」と判定し、93%を超え98%以下の範囲にある場合を「良好」と判定し、90%以上93%未満の範囲にある場合を「使用可」と範囲し、90%未満である場合を「不良」と判定した。
その結果を、本発明例1で用いたKNN膜形成用液組成物の種類、仮焼温度、昇温速度、焼成温度及び保持時間と共に、表3に示す。
[本発明例2〜13、比較例1〜5]
KNN膜形成用液組成物、仮焼温度、昇温速度、焼成温度及び保持時間を、表3に示すように変更したこと以外は、本発明例1と同様にして、本発明例2〜13、比較例1〜5のKNN膜をPt下部電極上に形成した。そして、得られたKNN膜の緻密性を評価した。その結果を、表3に示す。
Figure 2021103736
本発明に従うKNN膜形成用液組成物を用いて、本発明に従う条件で作製した本発明例1〜13のKNN膜は緻密性が高く、いずれも使用可以上であった。特に、カルボン酸1質量部に対するカルボン酸エステルの含有量が20質量部以下とされたKNN膜形成用液組成物を用いた本発明例1〜12のKNN膜は緻密性が特に高く、いずれも良好以上であった。
これに対して、カルボン酸を含まないKNN膜形成用液組成物No.10を用いた比較例1のKNN膜は緻密性が低下した。これは、KNN膜形成用液組成物中の金属成分が溶媒和を形成しにくいため、金属成分の分散性が不十分となり、KNN膜形成用液組成物の組成が不均一となり、得られたKNN膜の組成の均一が低下したためであると考えられる。
また、本発明に従うKNN膜形成用液組成物を用いた場合であっても、仮焼温度が400℃を超えた比較例2、仮焼温度が150℃未満であった比較例3のKNN膜は緻密性が低下した。比較例2では、仮焼膜が結晶化しにくくなり、焼成工程において、結晶性が高いKNN膜を形成することができなかったためである。比較例3では、塗布膜がゲル状にならなかったためである。
さらに、昇温速度が10℃/秒未満であった比較例4のKNN膜も緻密性が低下した。これは、KNN膜の結晶化度が十分でなかったためである。またさらに、焼成温度が800℃を超えた比較例5のKNN膜も緻密性が低下した。これは、基板にダメージが生じたためである。

Claims (3)

  1. 溶媒と、有機カリウム化合物と、有機ナトリウム化合物と、有機ニオブ化合物と、を含むKNN膜形成用液組成物であって、
    前記溶媒は、カルボン酸とカルボン酸エステルとを含む混合溶媒であり、
    前記カルボン酸は、一般式がC2x+1COOH(ただし、xは、4≦x≦8を満たす数)で表される化合物であって、
    前記カルボン酸エステルは、一般式がC2y+1COOC2z+1(ただし、yは、1≦y≦7を満たす数、zは、1≦z≦7を満たす数)で表される化合物であることを特徴とするKNN膜形成用液組成物。
  2. 前記溶媒は、前記カルボン酸1質量部に対して、前記カルボン酸エステルを、0質量部を超えて20質量部以下の範囲内の量にて含む請求項1に記載のKNN膜形成用液組成物。
  3. 請求項1または2に記載のKNN膜形成用液組成物を基板の電極上に塗布して塗布膜を形成する塗布工程と、
    前記塗布膜を150℃以上400℃以下の温度で仮焼して仮焼膜を形成する仮焼工程と、
    前記仮焼膜を10℃/秒以上の速度で昇温し600℃以上800℃以下の温度で焼成して結晶化したKNN膜を形成する焼成工程と、を有するKNN膜の形成方法。
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