JP2021102801A - 接合材、及び物品 - Google Patents

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直宏 田中
Naohiro Tanaka
直宏 田中
上杉 隆彦
Takahiko Uesugi
隆彦 上杉
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【課題】300℃程度の比較的低温での焼結性を有し、冷熱サイクル前後の接合強度に優れる焼結膜を形成可能な接合材、及び、該接合材を用いた物品を提供する。【解決手段】脂肪酸で被覆された金属粒子、及び有機溶剤を含み、前記脂肪酸が、炭素数4以上8以下の脂肪酸Aと、炭素数14以上20以下の脂肪酸Bとを含み、前記有機溶剤が、沸点が170℃以上230℃以下の有機溶剤Cと、沸点が300℃以上350℃以下の有機溶剤Dとを含む、接合材。【選択図】なし

Description

本発明は接合材、及び該接合材で接合されてなる物品に関する。
従来、金属部材同士、金属部材と半導体素子、又は金属部材とLED素子等を接合するための接合材料としては、はんだが使用されていた。次世代パワーエレクトロニクスの分野では、高温動作可能なSiC等のデバイスのための接合剤としては環境に配慮する側面から、はんだの代替材として鉛を含まないものが求められており、銀ナノ粒子を用いた接合材が提案されている。一般的に銀ナノ粒子に代表される金属ナノ粒子は、安定化のために粒子表面が有機物で被覆されており、焼結時に被覆材が揮発及び/又は分解することで、金属ナノ粒子同士が焼結し強固な金属膜を形成することができる。
このような銀ナノ粒子を用いた接合材としては、例えば、特許文献1には、焼結促進剤を含む銀ナノ接合用ペーストが、塗工適性と冷熱サイクル前後の接合強度に優れることが記載されている。また、特許文献2には、平均一次粒子径がnmサイズの銀微粒子とμmサイズの銀粒子とを所定量含み、且つ特定の焼結助剤を含む接合材が、未焼結部の発生を抑制できることが記載されている。
特開2018−172728号公報 特開2015−225842号公報
しかしながら、特許文献1及び2に記載の接合材は、接合強度、特に冷熱サイクル性といった熱衝撃性の課題を解決できていない。
上記について、特許文献1に記載の接合用ペーストは、金属粒子を被覆する被覆材と溶剤の沸点の設計が不十分であり、被覆材の揮発及び/又は分解により生じたガスが膜外にスムーズに排出されず、膜内部に残留しボイド(空隙)を形成したためと考えられる。
また上記について、特許文献2に記載の接合材は、一つの金属粒子が一種の脂肪酸で被覆されているため、低沸点の被覆材で被覆された金属粒子が先に焼結を開始してしまい、塗膜が硬くなった後に、他方の高沸点の被覆材で被覆された金属粒子が焼結することになり、ガスがスムーズに排出されず、膜内部に多くのボイドを形成したためと考えられる。
ボイドの形成は、膜の脆弱化、基材との接地面積減少による接合強度の低下、及び熱衝撃性の大幅な劣化等の問題を引き起こす。
したがって本発明の課題は、300℃程度の比較的低温での焼結性を有し、冷熱サイクル前後の接合強度に優れる焼結膜を形成可能な接合材、及び、該接合材を用いた物品を提供することにある。
上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す実施形態により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の実施形態は、脂肪酸で被覆された金属粒子、及び有機溶剤を含む接合材であって、前記脂肪酸が、炭素数4以上8以下の脂肪酸Aと、炭素数14以上20以下の脂肪酸Bとを含み、前記有機溶剤が、沸点が170℃以上230℃以下の有機溶剤Cと、沸点が300℃以上350℃以下の有機溶剤Dとを含む、接合材に関する。
本発明の他の実施形態は、脂肪酸A及び脂肪酸Bのモル比(脂肪酸Aのモル数/脂肪酸Bのモル数)が0.5〜30である、上記接合材に関する。
本発明の他の実施形態は、有機溶剤C及び有機溶剤Dの質量比(有機溶剤Cの質量/有機溶剤Dの質量)が1〜3である、上記接合材に関する。
本発明の他の実施形態は、脂肪酸Aの沸点が、有機溶剤Cの沸点±0〜20℃の温度である、上記接合材に関する。
本発明の他の実施形態は、脂肪酸Bの沸点が、有機溶剤Dの沸点±0〜50℃の温度である、上記接合材に関する。
本発明の他の実施形態は、前記金属粒子が、下記式(1)で表されるカルボジヒドラジド、又は下記式(2)で表される多塩基酸ポリヒドラジドを用いて銀化合物が還元された還元体である、上記接合材に関する。
Figure 2021102801
[式(2)中、Rはn価の多塩基酸残基を表す。]
本発明の他の実施形態は、金属部材同士、金属部材と半導体素子、または金属部材とLED素子とが、上記接合材から形成される焼結体で接合されている物品に関する。
本発明により、300℃程度の比較的低温での焼結性を有し、冷熱サイクル前後の接合強度に優れる焼結膜を形成可能な接合材、及び、該接合材を用いた物品を提供することができる。
本発明の接合材は、炭素数4以上8以下の脂肪酸Aと、炭素数14以上20以下の脂肪酸Bとを含む脂肪酸で被覆された金属粒子、及び、沸点が170℃以上230℃以下の有機溶剤Cと、沸点が300℃以上350℃以下の有機溶剤Dとを含むことを特徴とする。
出願人は、鋭意検討を重ねた結果、接合材中の脂肪酸等の揮発成分が膜外部にスムーズに放出されるためには、焼結時の接合材が低粘度であること、及び、脂肪酸が溶剤成分と共に揮発することが重要であることを突きとめ、特定の炭素数を有する2種の脂肪酸と、特定の沸点を有する2種の有機溶剤とを組み合わせることにより、接合材の安定性を維持しつつ優れた低温焼結性と熱衝撃性とを発揮し、冷熱サイクル前後の接合強度に優れる焼結体を形成を可能とすることを見出した。
以下に本発明について詳細に説明する。
<金属粒子>
本発明の接合材は特定の脂肪酸で被覆された金属粒子を含む。金属粒子としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、クロム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、インジウム、ケイ素、アルミニウム、タングステン、モリブデン、又は白金等の金属粉、これらの合金、又はこれらの複合粉が挙げられる。また、金属粒子としては、例えば、核体と前記核体物質とは異なる物質で被覆した微粒子が挙げられ、具体的には、銅を核体とし、その表面を銀で被覆した銀コート銅粉等が挙げられる。金属粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
金属粒子は、金属ナノ粒子を含むことが好ましい。金属ナノ粒子とは、平均粒子径がナノレベルであれば特に制限されず、好ましくは1〜200nmであり、より好ましくは5〜100nmであり、さらに好ましくは8〜80nmであり、特に好ましくは8〜50nmである。金属ナノ粒子は、特定の平均粒子径のものを単独で使用してもよいし、異なる平均粒子径のものを複数組み合わせて使用してもよい。
金属ナノ粒子を含むことで、粒子表面の活性が上がり、ナノサイズ効果により融点が下がり、低温での焼結が可能となる。即ち、低温焼結により電子部品の実装時の温度を下げることが可能になるので熱ストレスを低減できる。そして、金属ナノ粒子は、焼結により互いに結合してサイズが大きくなると、通常サイズの金属材料(バルク金属材料)と同等の高い融点を示すようになるので、実装後は耐熱温度を向上することができる。
金属ナノ粒子の含有量は、金属粒子100質量%中、好ましくは25〜100質量%であり、より好ましくは80〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%、特に好ましくは95〜100質量%である。
なお、金属ナノ粒子の平均粒子径は、ナノトラック UPA−EX150(日機装社製)を用いて測定した体積粒度分布の累積粒度(D50)の値を用いることができる。また、金属ナノ粒子よりサイズが大きい金属粒子の平均粒子径は、島津製作所社製レーザー回折粒度分布測定装置「SALD−3000」を用いて測定した体積粒度分布の累積粒度(D50)の値を用いることができる。
<脂肪酸>
前記金属粒子は、粒子表面の少なくとも一部が、炭素数4以上8以下の脂肪酸Aと、炭素数14以上20以下の脂肪酸Bとを含む脂肪酸で被覆されている。
脂肪酸とは、分子内にカルボキシル基1個を有するカルボン酸(R−COOH)のうち、鎖式構造を有するものを指し、直鎖構造を有するものと分岐構造を有するものとがあり、また飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とがある。脂肪酸は、後述するように、金属粒子を製造するための原料としてだけでなく、還元反応により金属粒子が生成した後にも金属表面近傍に存在し、微粒子の安定化を助ける分散剤としても良好に機能する。
[炭素数4以上8以下の脂肪酸A・炭素数14以上20以下の脂肪酸B]
炭素数4以上8以下の脂肪酸Aは、主に低温分解性による低温焼結性の効果を付与する。脂肪酸Aの炭素数が4以上であることで、金属粒子が安定化し、粒子同士の凝集が抑制される。また炭素数が8以下であることで、低温での分解性が良好となり低温焼結性に優れる。
炭素数4以上8以下の脂肪酸Aとしては、直鎖飽和脂肪酸、直鎖不飽和脂肪酸又は分岐脂肪酸が挙げられ、直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、へプタン酸、オクタン酸;直鎖不飽和脂肪酸としては、例えば、クロトン酸、イソクロトン酸;分岐脂肪酸としては、例えば、2−エチルヘキサン酸;が挙げられる。
炭素数4以上8以下の脂肪酸Aとしては、直鎖飽和脂肪酸が好ましい。直鎖脂肪酸であると、親油性に優れ、非水性溶剤中での安定性が向上するほか、分解温度が低く低温焼結性に優れるため好ましい。炭素数4以上8以下の脂肪酸Aは、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
炭素数14以上20以下の脂肪酸Bは、主に金属粒子を安定化させる効果を付与する。脂肪酸Bの炭素数が14以上であることで、金属粒子が安定化し、粒子同士の凝集が抑制されるとともに、接合材の粘度が下がり、塗工適性に優れるものになる。さらに、炭素数が14以上であることで、金属粒子の非水溶性溶媒への親和性が向上する。炭素数が20以下であることで、低温焼結性の効果を発現する。
炭素数14以上20以下の脂肪酸Bとしては、直鎖飽和脂肪酸、直鎖不飽和脂肪酸又は分岐脂肪酸が挙げられ、直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸;直鎖不飽和脂肪酸としては、例えば、パルミトレイン酸、オレイン酸、エルカ酸;分岐脂肪酸としては、例えば、2−ヘキシルデカン酸;が挙げられる。
炭素数14以上20以下の脂肪酸Bとしては、直鎖不飽和脂肪酸が好ましい。直鎖不飽和脂肪酸であると、親油性に優れ、非水性溶剤中での安定性が向上するほか、分解温度が低く低温焼結性に優れるため好ましい。炭素数14以上20以下の脂肪酸Bは、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
したがって、脂肪酸Aと脂肪酸Bとを組み合わせて用いることで、金属粒子の安定性と低温焼結性とを両立することができ、好ましい。
脂肪酸Aの沸点は、好ましくは有機溶剤Cの沸点±0〜20℃の温度であり、より好ましくは有機溶剤Cの沸点±0〜10℃の温度である。沸点差が±0〜20℃の範囲内であることで、優れたボイド低減効果を発現する。
例えば、有機溶剤Cの沸点に対して脂肪酸Aの沸点が高すぎると、先に有機溶剤Cが揮発することで膜内が高粘度化し、後に揮発する脂肪酸Aの揮発成分の排出がスムーズに行われず、脂肪酸Aの揮発成分が残留しボイドを形成する。一方、脂肪酸Aの沸点に対して有機溶剤Cの沸点が高すぎると、先に脂肪酸Aが揮発し、焼結が一部進行することで膜内が高粘度化し、後に揮発する有機溶剤Cの揮発成分の排出がスムーズに行われずに、有機溶剤Cの揮発成分が残留しボイドを形成する。
脂肪酸Aの沸点を有機溶剤Cの沸点±0〜20℃の温度とすることで、同様のタイミングで両成分が揮発し低粘度状態が維持され、スムーズな揮発成分の排出が行われる。これによりボイドが低減される。
脂肪酸Bの沸点は、好ましくは有機溶剤Dの沸点±0〜50℃の温度である。
例えば、有機溶剤Dの沸点に対して脂肪酸Bのの沸点が高すぎると、先に有機溶剤Dが揮発することで膜内が高粘度化し、後に揮発する脂肪酸Bの揮発成分の排出がスムーズに行われず、脂肪酸Bの揮発成分が残留しボイドを形成する。一方、脂肪酸Bの沸点に対して有機溶剤Dの沸点が高すぎると、先に脂肪酸Bが揮発し、焼結が一部進行することで膜内が高粘度化し、後に揮発する有機溶剤Dの揮発成分の排出がスムーズに行われずに、有機溶剤Dの揮発成分が残留しボイドを形成する。
脂肪酸Bの沸点を有機溶剤Dの沸点±0〜50℃の温度とすることで、同様のタイミングで両成分が揮発し低粘度状態が維持され、スムーズな揮発成分の排出が行われる。これによりボイドが低減される。
脂肪酸A及び脂肪酸Bのモル比(脂肪酸Aのモル数/脂肪酸Bのモル数)は、好ましくは0.5〜30であり、より好ましくは1〜15であり、さらに好ましくは2〜8である。
脂肪酸A及び脂肪酸Bのモル比が0.5以上であると、低温焼結性に優れる脂肪酸Aの比率が高くなり、得られる接合材は低温焼結性に優れる。前述のとおり、焼結工程では炭素数の違いから脂肪酸Aが脂肪酸Bより先に揮発してしまい、脂肪酸Bが揮発する段階では接合材の高粘度化しているため、脂肪酸Aに比べて脂肪酸Bの揮発成分は接合材の膜内に残存しやすくボイド形成につながる傾向にある。そのため、脂肪酸Aの比率が高いことは、接合材により形成される膜中のボイド低減の観点から好ましい。
脂肪酸A及び脂肪酸Bのモル比が30以下であると、脂肪酸Bにより金属粒子がより安定化するため好ましい。
脂肪酸A及び脂肪酸Bのモル比率を決定する方法は特に限定されないが、熱分解GCや熱分解GC−MSを用いる方法が挙げられる。具体的には、脂肪酸で被覆された金属粒子の粉末を、脂肪酸Bの沸点以上まで加熱した後、発生した揮発成分をGCあるいはGC−MSに導入して分析する。得られたチャートの面積から、検量線を用いることにより、それぞれの成分を定量することで、脂肪酸A及び脂肪酸Bのモル比率を算出することができる。
<脂肪酸で被覆された金属粒子の製造>
脂肪酸で被覆された金属粒子の製造方法は特に制限されず、公知の方法で製造することができる。中でも、脂肪酸で被覆された金属粒子として好ましくは、金属化合物の還元体であり、より好ましくは、下記式(1)で表されるカルボジヒドラジド、又は下記式(2)で表される多塩基酸ポリヒドラジドを用いて銀化合物が還元された還元体である。
Figure 2021102801
[式(2)中、Rはn価の多塩基酸残基を表す。]
上記カルボジヒドラジド又は多塩基酸ポリヒドラジドは、還元剤として機能し、還元反応は、液体媒体と脂肪酸の金属塩化合物とを混合した後に上記カルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドを添加して金属塩化合物を還元する方法、液体媒体とカルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドとを混合した後に脂肪酸の金属塩化合物を添加して金属塩化合物を還元する方法、のいずれの方法を用いてもよい。
脂肪酸の金属塩化合物を分散させる液状媒体としては、特に限定されないが、不純物の除去等の工程を考慮すると、水と相分離する非水性溶媒が好ましく、非水性溶媒に脂肪酸の金属塩化合物を分散させた後に、還元剤であるカルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドの水溶液を添加することが好ましい。
前記脂肪酸の金属塩化合物の脂肪酸としては、前述の炭素数4以上8以下の脂肪酸A及び/又は炭素数14以上20以下の脂肪酸Bを用いることが好ましい。
脂肪酸の金属塩化合物を形成しうる金属としては、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金、鉄、コバルト、水銀等のVIII族およびIB族から選ばれる少なくとも一種の金属であることが好ましく、低温焼結性を考慮すると金、銀及び銅からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
脂肪酸の金属塩化合物は、公知の方法を用いて得ることができる。公知の方法としては、例えば、市販の脂肪酸ナトリウムもしくは、脂肪酸と水酸化ナトリウムとを水中で混合して得られた脂肪酸ナトリウム塩を、純水中で溶解させておき、得ようとする金属の無機塩を等量添加し、析出した脂肪酸の金属塩化合物を吸引濾過して濾別・乾燥させることで容易に得ることができる。
上記金属の無機塩としては、特に限定されないが、例えば、塩化金酸、塩化白金酸、塩化銀等の塩化物、硝酸銀等の硝酸塩、酢酸銀、酢酸銅(II)等の酢酸塩、過塩素酸銀等の過塩素酸塩、硫酸銅(II)等の硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩等が挙げられ、所望の金属に応じて適宜選択することができる。これらの金属の無機塩は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
式(2)で表される多塩基酸ポリヒドラジドとは、特に制限されず、例えば、二塩基酸ジヒドラジド、三塩基酸トリヒドラジド、四塩基酸テトラヒドラジドが挙げられる。中でも、二塩基酸ジヒドラジドは、溶媒への溶解度が良好であるため還元反応を均一に進行させることができ、貯蔵安定性も良好であるため好ましい。
二塩基酸ジヒドラジドとしては、例えば、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、タルタロジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、ヘキサデカン酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドが挙げられる。
三塩基酸トリヒドラジドとしては、例えば、クエン酸トリヒドラジド、トリメリット酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド等が挙げられる。四塩基酸テトラヒドラジドとしては、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジドが挙げられる。
上記以外の多塩基酸ポリヒドラジドとしては、ポリアクリル酸ポリヒドラジド等が挙げられる。これらの多塩基酸ポリヒドラジドは、1種類を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができ、式(1)のカルボジヒドラジドと組み合わせて用いることもできる。
カルボジヒドラジド又は多塩基酸ポリヒドラジドは、水素の1つ又は2つ以上が水酸基等の官能基で置換されていてもよい。
還元剤は、反応後の精製を考慮すると、水溶液として添加することが好ましく、水への溶解性を考慮すると、還元剤として好ましくはアジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジドである。
脂肪酸の金属塩化合物を液状媒体中に分散させ、還元反応を行う過程において、脂肪酸の金属塩化合物又は生成した金属微粒子に対し、原料由来の脂肪酸のみでも十分な分散効果を得ることができるが、必要に応じて分散安定化機能を有する化合物(以下「分散剤」と称する場合がある)を適宜添加してもよい。
上記分散安定化機能を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、アミノ基、4級アンモニウム塩、水酸基、シアノ基、カルボキシル基、チオール基、スルホン酸基等の金属化合物への親和性を有する官能基を1個または複数個有する化合物であることが好ましい。上記官能基は化合物の主鎖に含まれていても、側鎖もしくは主鎖と側鎖の双方に含まれていてもよい。上記官能基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、アミン化合物、顔料分散剤、界面活性剤、脂肪酸等が好ましく用いられる。該脂肪酸としては、原料である脂肪酸の金属塩化合物の脂肪酸と同じ脂肪酸であってもよく、異なる脂肪酸であってもよい。
金属粒子の粒子径は、必要に応じて適宜調節可能であるが、好ましくは1〜200nmであり、より好ましくは5〜100nmであり、さらに好ましくは8〜80nmであり、特に好ましくは8〜50nmである。
脂肪酸で被覆された金属粒子100質量%中、前記脂肪酸A及び脂肪酸Bの含有量は1〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜15質量%である。脂肪酸の含有量が3質量%以上であると、金属粒子の凝集がさらに抑制され安定性に優れるため好ましい。15質量%以下であると、ボイドがさらに低減されるため好ましい。
<有機溶剤>
本発明の接合材は、沸点が170℃以上230℃以下の有機溶剤Cと、沸点が300℃以上350℃以下の有機溶剤Dを含有する。所定範囲の沸点を有する有機溶剤C及び有機溶剤Dは、金属粒子を分散する分散媒であるだけでなく、焼結時に脂肪酸A及び脂肪酸Bの揮発成分が膜外部にスムーズに放出され、ボイド形成を抑制するために重要な成分である。
有機溶剤Cが170℃以上230℃以下の沸点であることにより、脂肪酸Aが揮発して排出される際の接合材内部は低粘度化されており、ボイドが低減される。また、炭素数4以上8以下の脂肪酸Aの沸点は有機溶剤Cの沸点と近いため、両者が共に効率的に揮発することができる。同様の理由で、有機溶剤Dが300〜350℃の沸点であることにより、脂肪酸Bが揮発して排出される際の接合材内部は低粘度化されており、ボイドが低減される。また、炭素数14以上20以下の脂肪酸Bの沸点は有機溶剤Dの沸点と近いため、両者が共に効率的に揮発することができる。そして、焼結完了時には、脂肪酸A、脂肪酸B、有機溶剤C及び有機溶剤Dが全て揮発して膜外に排出され、ボイドが低減された膜を形成する。
さらに、脂肪酸Aが排出された後に脂肪酸Bが揮発することで、よりボイドを減らすことができるため、有機溶剤Cの沸点の上限値(230℃)と、有機溶剤Dの下限値(300℃)とが過度に近くなりすぎないことも重要である。
沸点が170℃以上230℃以下の有機溶剤Cとしては、例えば、ジプロピレングルコールジメチルエーテル(沸点175℃)、エチレングリコールnブチルエーテルアセテート(沸点188℃)、オクタノール(沸点195℃)、アイソパーL(沸点199℃)、ジヒドロターピネオール(沸点210℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃)、2−2ブトキシエトキシエタノール(沸点230℃)が挙げられる。これら有機溶剤Cは、適宜単独で、又は複数用いることができる。
沸点が300℃以上350℃以下の有機溶剤Dとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点300℃)、イソボニルシクロヘキサノール(沸点318℃)、安息香酸ベンジル(沸点324℃)、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)(沸点335℃)が挙げられる。これら有機溶剤Dは、適宜単独で、又は複数用いることができる。
有機溶剤Cと有機溶剤Dの質量比(有機溶剤Cの質量/有機溶剤Dの質量)は、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1〜2である。質量比が1以上であることで、脂肪酸Aの揮発成分の膜外への排出が促進され、且つ、沸点が高い有機溶剤Dの揮発成分が膜内に残存することを抑制するため、ボイド低減に優れる。質量比が3以下であることで、脂肪酸Bの揮発成分の膜外への排出が促進されるため、ボイド低減に優れる。
<接合材>
本発明の接合材は、前述の、脂肪酸で被覆された金属粒子、有機溶剤C及び有機溶剤Dを含む。接合材の全固形分100質量%に対する、脂肪酸で被覆された金属粒子の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85〜99質量%、さらに好ましくは90〜99質量%である。脂肪酸で被覆された金属粒子を80質量%以上含むことによって、後述する接合対象である部材同士をより強固に接合することが可能となる。
本発明の接合材は、焼結促進剤を含有してもよい。焼結促進剤は、金属粒子に親和性の高い官能基を有する化合物であり、その親和性の高さから、金属粒子の周囲を覆っている有機物を引き剥がす働きを有する。有機物が引き剥がされた金属粒子は、分散安定性を失い凝集するため、粒子同士の接触、融着が促進され、緻密な金属の膜を形成する。
金属粒子に親和性の高い官能基は特に限定されず、特に、窒素原子を含有するものが金属粒子との親和性が高く、焼結促進剤として好適に用いられる。
窒素原子を含有する焼結促進剤は特に限定されないが、例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族アミン;2−エチル-4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;2−メチルイミダゾリン等のイミダゾリン化合物;セバチン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物;アミキュアPN−23、アミキュアMY−24等のアミンアダクト類;ジシアンジアミド;が挙げられる。中でも、焼結促進効果が高いことからジシアンジアミドが好適に用いられる。
焼結促進剤は一種のみを単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。
本発明の接合材は、凝集を防止する観点から分散剤を含有してもよい。分散剤の市販品としては、例えば、ソルスパース9000、ソルスパース12000、ソルスパース17000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース35100、ソルスパース54000、ソルシックス250(以上、日本ルーブリゾール株式会社製)、EFKA 4008、EFKA 4009、EFKA 4010、EFKA 4015、EFKA 4046、EFKA 4047、EFKA 4060、EFKA 4080、EFKA 7462、EFKA 4020、EFKA 4050、EFKA 4055、EFKA 4400、EFKA 4401、EFKA 4402、EFKA 4403、EFKA 4300、EFKA 4330、EFKA 4340、EFKA 6220、EFKA 6225、EFKA 6700、EFKA 6780、EFKA 6782、EFKA 8503(以上、エフカアディディブズ社製)、アジスパーPA111、アジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPN411、フェイメックスL−12(以上、味の素ファインテクノ株式会社製)、DisperBYK101、DisperBYK102、DisperBYK106、DisperBYK108、DisperBYK111、DisperBYK116、DisperBYK130、DisperBYK140、DisperBYK142、DisperBYK145、DisperBYK161、DisperBYK162、DisperBYK163、DisperBYK164、DisperBYK166、DisperBYK167、DisperBYK168、DisperBYK170、DisperBYK171、DisperBYK174、DisperBYK180、DisperBYK182、DisperBYK192、DisperBYK193、DisperBYK2000、DisperBYK2001、DisperBYK2020、DisperBYK2025、DisperBYK2050、DisperBYK2070、DisperBYK2155、DisperBYK2164、BYK220S、BYK300、BYK306、BYK320、BYK322、BYK325、BYK330、BYK340、BYK350、BYK377、BYK378、BYK380N、BYK410、BYK425、BYK430(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製)が挙げられる。
分散剤の含有量は、接合材100質量%中、焼結時の残留を防ぐ点から好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。凝集防止効果の点から好ましくは0.1質量%以上である。
<接合方法及び物品>
本発明の物品は、第1の部材と第2の部材とが、本発明の接合材から形成される焼結体で接合されているものであり、接合材は導電ペーストであるため、接合された物品は、ICチップ等の、電子基板にある電気回路とその上に搭載する電子部品等に展開することができる。
本発明の物品は、接合材を少なくとも第1の部材に塗布する工程と、前記第1の部材上の接合材に第2の部材を接触させた後に焼成する工程と、を含む製造方法により得ることができる。第1及び第2の部材の種類は特に限定されず、同一であってもよく異なるものであってもよい。該部材は、接合強度を高めるために、適宜コロナ処理、メッキ等で加工されていてもよい。
第1及び第2の部材としては、例えば、金属部材、電子素子、プラスチック材料、セラミック材料を挙げることができる。中でも、金属部材同士、金属部材と半導体素子、金属部材とLED素子とを接合することが好ましい。
即ち、金属部材同士、金属部材と半導体素子、又は金属部材とLED素子との間に本発明の接合材を挟み、加熱して有機溶剤及び被覆材等を除去すると共に、金属粒子の少なくとも一部を溶融して焼結体を形成し、金属部材同士、金属部材と半導体素子、又は金属部材とLED素子との間を、前記焼結体で接合することが好ましい。
金属部材としては、例えば、銅基板、金基板、アルミ基板を挙げることができる。
電子素子としては、例えば、半導体素子、LED素子を挙げることができる。
半導体素子としては、例えば、シリコン(ケイ素)やゲルマニウムのほかに、ヒ化ガリウム、リン化ガリウム、硫化カドミウムが用いられる。
LED素子としては、例えば、アルミニウム、窒化珪素、ダイヤモンド、黒鉛、酸化イットリウム及び酸化マグネシウムが挙げられ、炭化ケイ素や窒化ガリウム等のパワーデバイス素子を使用することができる。
プラスチック材料としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。
セラミック材料としては、例えば、ガラス、シリコンが挙げられる。
接合材を塗布する方法としては、部材上に均一に塗布できる方法であれば特に限定されず、例えば、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、メタルマスク印刷、又はグラビアオフセット印刷のような各種印刷法、或いはディスペンサー法が挙げられる。
接合工程における焼成条件は、適宜調整可能だが、例えば、大気圧下、窒素雰囲気、真空中、加圧又は還元雰囲気で温度200〜300℃の条件を挙げることができる。
焼成装置としては、例えば、熱風オーブン、赤外線オーブン、リフローオーブン、マイクロウエーブオーブン又は光焼成装置が挙げられる。光焼成装置の場合、照射する光の種類は特に限定されないが、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、又はレーザー光が挙げられる。これら装置は、適宜単独で又は複数用いることができる。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。部及び%は、質量部及び質量%を表す。
<金属粒子の製造>
(銀粒子1)
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で攪拌しながらトルエン200部及びヘキサン酸銀22.3部を仕込み、0.5Mの溶液とした後に、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2mol倍)、オレイン酸2.8部(金属1molに対し0.1mol倍)を添加し溶解させた。その後、還元剤として固形分濃度20%のこはく酸ジヒドラジド(以下、SUDH)水溶液73.1部(金属1molに対しヒドラジド基2mol倍)を滴下すると液色が淡黄色から濃茶色に変化した。さらに反応を促進させるために40℃に昇温し、反応を進行させた。静置、分離した後、水相を取り出すことで過剰の還元剤や不純物を除去し、さらにトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄、分離を繰り返して、ナノ粒子のトルエン分散体を得た。このトルエン分散体にヘキサン酸2.4部を添加し、さらに、貧溶媒を添加した後に遠心分離と洗浄を繰り返し、乾燥することで、銀粉1を得た。銀粉1の平均粒径は10nmであった。
(銀粒子2)
ヘキサン酸銀22.3部をブタン酸銀19.5部、トルエン分散体に添加するヘキサン酸2.4部をブタン酸1.9部に変更した以外は、銀粉1と同様にして銀粉2得た。銀粉2の平均粒径は10nmであった。
(銀粒子3)
ヘキサン酸銀22.3部をオクタン酸銀25.1部、トルエン分散体に添加するヘキサン酸2.4部をオクタン酸3.0部に変更した以外は、銀粉1と同様にして銀粉3得た。銀粉3の平均粒径は10nmであった。
(銀粒子4)
オレイン酸2.8部をミリスチン酸2.3部に変更した以外は、銀粉1と同様にして銀粉4得た。銀粉4の平均粒径は10nmであった。
(銀粒子5)
トルエン分散体に添加するヘキサン酸2.4部を9.8部に変更した以外は、銀粉1と同様にして銀粉5得た。銀粉5の平均粒径は10nmであった。
(銀粒子6)
トルエン分散体に添加するヘキサン酸2.4部をオレイン酸5.9部に変更した以外は、実施例1と同様にして銀粉6得た。銀粉6の平均粒径は10nmであった。
(銀粒子7)
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で攪拌しながら、トルエン200部及びヘキサン酸銀22.3部を仕込み、0.5Mの溶液とした後に、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2mol倍)、オレイン酸2.8部(金属1molに対し0.1mol倍)を添加し溶解させた。その後、ヒドラジン一水和物10.0部(金属1molに対し2mol倍)を加えると激しく反応が進行した。次いで、蒸留水100部を添加し、静置、分離した後、水層を取り出すことで、沈殿物、過剰の還元剤や不純物を除去し、さらにトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄、分離を繰り返して、ナノ粒子のトルエン分散体を得た。このトルエン分散体にヘキサン酸2.4部を添加し、さらに、貧溶媒を添加した後に遠心分離と洗浄を繰り返し、乾燥することで、銀粉7を得た。銀粉7の平均粒径は20nmであった。
(銀粒子A)
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で攪拌しながらトルエン200部及びヘキサン酸銀22.3部を仕込み、0.5Mの溶液とした後に、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2mol倍)、ヘキサン酸1.2部(金属1molに対し0.1mol倍)を添加し溶解させた。その後、還元剤として固形分濃度20%のこはく酸ジヒドラジド水溶液73.1部(金属1molに対しヒドラジド基2mol倍)を滴下すると液色が淡黄色から濃茶色に変化した。さらに反応を促進させるために40℃に昇温し、反応を進行させた。静置、分離した後、水相を取り出すことで過剰の還元剤や不純物を除去し、さらにトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄、分離を繰り返して、ナノ粒子のトルエン分散体を得た。このトルエン分散体に貧溶媒を添加した後に遠心分離と洗浄を繰り返し、乾燥することで、銀粉Aを得た。銀粉Aの平均粒径は20nmであった。
(銀粒子B)
ヘキサン酸銀22.3部をオレイン酸銀38.9部、トルエン分散体に添加するヘキサン酸1.2部をオレイン酸2.8部に変更した以外は、銀粉Aと同様にして銀粉B得た。銀粉Bの平均粒径は800nmであった。
(銀粒子C)
ヘキサン酸銀22.3部を酢酸銀16.7部、トルエン分散体に添加するヘキサン酸2.4部を酢酸1.3部に変更した以外は、銀粉1と同様にして銀粉C得た。銀粉Cの平均粒径は10nmであった。
(銀粒子D)
ヘキサン酸銀22.3部をデカン酸銀27.9部、トルエン分散体に添加するヘキサン酸2.4部をデカン酸3.6部に変更した以外は、銀粉1と同様にして銀粉D得た。銀粉Dの平均粒径は10nmであった。
(銀粒子E)
オレイン酸2.8部をラウリン酸2.0部に変更した以外は、銀粉1と同様にして銀粉E得た。銀粉Eの平均粒径は10nmであった。
(銀粒子F)
オレイン酸2.8部をエルカ酸3.4部に変更した以外は、銀粉1と同様にして銀粉F得た。銀粉Fの平均粒径は10nmであった。
銀粒子1〜7及び銀粒子A〜Fを被覆している脂肪酸A及び脂肪酸Bのモル比率は、熱分解インジェクション装置を具備したGC−MS(QP−5050、株式会社島津製作所製)を用い、銀粒子を400℃以上まで加熱することで発生した揮発成分を定量分析することで算出した。結果を表1に示した。
<接合材の調整>
[実施例1](接合材1の調製)
銀粒子1:90.0部、アイソパーL(エクソンモービル社製、沸点199℃):6.0部、テルソルブMTPH(ニホンテルペン化学社製、イソボニルシクロヘキサノール、沸点318℃):4.0部を混合し、接合材1を得た。
[実施例2〜14、比較例1〜10](接合材2〜24の調製)
金属粒子、有機溶剤及び焼結促進剤の種類及び配合量を、表1に記載の内容にした以外は、接合材1と同様にして接合材2〜24を得た。
<接合材の評価>
得られた接合材について以下の評価を行った。結果を表1に示す。
[粘度]
粘度は、接合材を25℃1日間放置した後に、E型粘度計を用いて回転開始1分後に測定した値(Pa・s)を用いた。
[塗工適性]
接合材を鋼板に下記条件で塗工し、その塗工適性を下記基準で判断した。
(塗工条件)
・メタルマスク:開口部4mm角、板厚50μm(セリアコーポレーション製)
・メタルスキージ:40mm×250mm、厚み1mm(セリアコーポレーション製)
(評価基準)
A:接合材が、開口部全体(4mm角の範囲)に均一に付着している
B:接合材が、開口部の一部(3〜3.7mm角の範囲)に付着している
C:接合材が、開口部の一部(2〜3mm角の範囲)に付着している
D:接合材が、開口部のうち、2mm角の範囲未満に付着している
[接合強度(シェア強度)]
下記塗工条件にて、接合材を基材1に塗工し、基材2を貼り付けた。次いで、毎分5℃で25℃から300℃まで昇温し、300℃で120分間、大気雰囲気で焼結して物品を得、これを試験片とした。なお、塗工時の接合材の厚みは、用いたメタルマスクの板厚と同じ50μmである。
(塗工条件)
・メタルマスク:開口部4mm角、板厚50μm(セリアコーポレーション製)
・メタルスキージ:40mm×250mm、厚み1mm(セリアコーポレーション製)
・基材1:銅板 1.3cm×1.3cm(厚み2mm)
・基材2:Siチップ 5mm×5mm(厚み300μm)
得られた試験片について、下記冷熱サイクル試験の前・後の接合強度を各々測定した。接合強度は、万能型ボンドテスタ(デイジ・ジャパン株式会社製、4000シリーズ)を用いて、基材1を固定し、基材1と焼結体との界面を起点として基材2に向かって高さ100μmの位置を500μm/sの速度で押し、接合が破壊される強度[MPa]を測定した。
(冷熱サイクル試験)
試験片を−40℃の温度条件で30分間保持した後、150℃の温度条件で30分間保持する処理工程を1サイクルとし、この処理を500サイクル行った。
Figure 2021102801
表1中の略称を以下に示す。
アイソパーL:エクソンモービル社製、沸点199℃
MTPH:ニホンテルペン化学社製、イソボニルシクロヘキサノール、沸点318℃
DICY7:三菱化学株式会社製、JERキュアDICY7、焼結促進剤
表1より、特定の炭素数を有する2種の脂肪酸と、特定の沸点を有する2種の有機溶剤とを組み合わせた本発明の接合材は、300℃程度の比較的低温での焼結性を有し、冷熱サイクル前後の接合強度に優れていた。
特に、脂肪酸Aと溶剤Cの沸点差、及び脂肪酸Bと溶剤Dの沸点差が小さい実施例1は、実施例3、4及び8と比較して、より優れた冷熱サイクル前後の接合強度を示した。
実施例1と、実施例6及び7とを対比すると、有機溶剤C及び有機溶剤Dの質量比(有機溶剤Cの質量/有機溶剤Dの質量)が1〜3の範囲内である実施例1は、より優れた冷熱サイクル前後の接合強度を示した。
実施例1と、実施例13及び14とを対比すると、脂肪酸A及び脂肪酸Bのモル比(脂肪酸Aのモル数/脂肪酸Bのモル数)が2〜5の範囲内である実施例1は、より優れた冷熱サイクル前後の接合強度を示した。
実施例1と、実施例5とを対比すると、実施例1は、より優れた冷熱サイクル前後の接合強度を示した。これは、実施例1に含まれる銀粒子1が、より平均粒径が小さく、粒径分布の均一性が高いため、低粘度化により塗工適性が向上し、粒径が密に配置されることによりボイドが低減されたためと推察される。
一方で、高沸点溶剤を含まない比較例1、2は、冷熱サイクル前後の接合強度が不足していた。これは、高沸点溶剤を含まないためボイド量が多くなったためと推察される。
単独の被覆材で被覆された金属粒子2種を含む比較例3は、冷熱サイクル前後の接合強度が不足していた。これは、一つの金属粒子が一種の脂肪酸で被覆されているため、より沸点の低い被覆材で被覆された銀粒子が先に焼結を開始し、塗膜が硬くなった後に、他方の沸点が高い被覆材で被覆された銀粒子が焼結するため、ガスがスムーズに排出されず、膜内部に多くのボイドが形成されたためだと推察される。
被覆材と有機溶剤との組み合わせた適切ではない比較例4〜10は、冷熱サイクル前後の接合強度が不足していた。これは、ガスがスムーズに排出されず、膜内部に多くのボイドが形成されたためだと推察される。

Claims (7)

  1. 脂肪酸で被覆された金属粒子、及び有機溶剤を含む接合材であって、
    前記脂肪酸が、炭素数4以上8以下の脂肪酸Aと、炭素数14以上20以下の脂肪酸Bとを含み、
    前記有機溶剤が、沸点が170℃以上230℃以下の有機溶剤Cと、沸点が300℃以上350℃以下の有機溶剤Dとを含む、接合材。
  2. 脂肪酸A及び脂肪酸Bのモル比(脂肪酸Aのモル数/脂肪酸Bのモル数)が0.5〜30である、請求項1に記載の接合材。
  3. 有機溶剤C及び有機溶剤Dの質量比(有機溶剤Cの質量/有機溶剤Dの質量)が1〜3である、請求項1又は2に記載の接合材。
  4. 脂肪酸Aの沸点が、有機溶剤Cの沸点±0〜20℃の温度である、請求項1〜3いずれか1項に記載の接合材。
  5. 脂肪酸Bの沸点が、有機溶剤Dの沸点±0〜50℃の温度である、請求項1〜4いずれか1項に記載の接合材。
  6. 前記金属粒子が、下記式(1)で表されるカルボジヒドラジド、又は下記式(2)で表される多塩基酸ポリヒドラジドを用いて銀化合物が還元された還元体である、請求項1〜5いずれか1項に記載の接合材。
    Figure 2021102801
    [式(2)中、Rはn価の多塩基酸残基を表す。]
  7. 金属部材同士、金属部材と半導体素子、または金属部材とLED素子とが、請求項1〜6いずれか1項に記載の接合材から形成される焼結体で接合されている物品。
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