JP2021100744A - リン酸イオンと硝酸イオンを除去する汚染水浄化方法および装置 - Google Patents

リン酸イオンと硝酸イオンを除去する汚染水浄化方法および装置 Download PDF

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Abstract

【課題】富栄養化した湖沼等の汚染水の浄化を行うために、リン酸イオンおよび硝酸イオンを除去するには、生物学的な手法が用いられるのが一般的であるが、安定した処理が難しく、また、窒素やリンから生産された汚泥や植物等の有機物の処理が難しく、更に、生物学的なリン蓄積反応や脱窒素反応の反応速度が小さいという課題があった。一方、電気分解を応用した方法が提案されているが、電解に用いる電力コストと使用する触媒が高価なため、コストが膨大という課題があった。【解決手段】鉄を負極とし炭素を正極とする電池が入った電池槽内で汚染水を電解水として発電させかつリン酸イオンをリン酸鉄として沈殿させるリン酸イオン除去および回収工程と、電解槽内で汚染水を電気分解して水素を発生させる水素発生工程と、前記発生した水素により硝酸イオンを還元除去する硝酸イオン除去工程からなる汚染水浄化方法および上記工程を行う装置。【選択図】図1

Description

本発明は、水中のリン酸イオンを鉄炭素電池の鉄製の負極から溶出させた鉄イオンによって沈殿させて除去および回収し、鉄炭素電池で得られた電力を用いて水の電気分解で水素を製造し、同時にこの水素を利用して水中の硝酸イオンを還元し除去する、富栄養化した湖沼等の汚染水の浄化方法とその除去装置に関するものである。
世界の多くの湖沼で水の深刻な富栄養化が起きている。アオコ現象が湖全体で見られる場合が多く、特に、途上国では生態系の破壊や人間の生活や健康への影響が深刻であり、安全な水の確保が困難になる場合もある。富栄養化の原因となる物質は、窒素やリン等の栄養塩であり、工場や家庭廃水、農業など、あらゆる人間生活の局面で排出されている。一方で、リンは枯渇資源として懸念されているが、回収し、再利用するシステムは確立していない。
湖沼等の閉鎖性水域で深刻な問題となっている富栄養化に対処するために、様々な排水の中からリンと窒素を除去処理する必要性が高まっており、これまでにいくつかの除去処理方法が提案されてきた。一般的にこれらの排水のpHは3〜10程度である。リンおよび、窒素化合物のうちの硝酸、亜硝酸に代表される窒素酸化物に着目した場合、これらを除去するための従来の方法は、以下のように分類することができる。
(1) 水中のリンを除去する従来の方法
(1-A) 生物学的リン除去処理方法
生物学的リン除去処理方法として、微生物によるリンの過剰摂取機能を利用して、リンを菌体内部に取り込ませて、菌体を処理水から分離する方法がある(非特許文献1)。この方法では、微生物によるリンの過剰摂取反応が被処理水中のBOD値や反応槽内の嫌気度などに大きく影響を受けるため、安定した処理が難しいという問題がある。また、菌体に取り込めるリンの量には限界があるため、所定の微生物量でのリンの除去量には限界がある。更に、この微生物は、周囲の酸素濃度等の条件の変化によって取り込んだリンを再放出するので、微生物(汚泥)がリンを再放出しないような取り扱いが必要である。汚泥処理設備の処理能力等の条件によっては汚泥から再放出されたリンが処理水系にもどることがある(非特許文献2)。
(1-B)物理化学的リン除去方法
物理化学的リン除去方法として、(a)ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄等のアルミニウム系又は鉄系の凝集剤を処理水に添加することによって処理する凝集剤法と、(b)処理水中のリンをカルシウムイオン或いはアンモニウム−マグネシウムイオンと反応させ難溶性のリン酸カルシウム塩或いはリン酸アンモニウムマグネシウム塩を生成させるリン酸塩法、および(c)処理水を鉄と接触させ、鉄から溶出する鉄イオンの作用によって難溶性塩であるリン酸鉄を形成させ、これを沈殿分離するリン酸鉄法がある。
(a)は、使用する凝集剤が化学薬品としてのコストが高いため、経済的ではないという問題、凝集沈殿物は共存している他の無機性および有機性固形物との混合物となり、リンの回収再利用が困難という問題がある(非特許文献3)。更に、鉄イオンやアルミニウムイオン以外のイオンや成分も水中に加えられてしまうという問題がある。即ち、処理対象水への鉄塩やアルミニウム塩の添加に伴い、鉄イオンまたはアルミニウムイオンと結合して鉄塩またはアルミニウム塩を形成している塩化物イオンや硫酸イオン等の対イオンも処理対象水中に添加されることとなり、処理対象水中の塩化物イオン濃度や硫酸イオン濃度が上昇し、生態系へ悪影響が生じるという問題がある(非特許文献4)。そのため、不要なイオンや成分を水中に添加する必要がなく、且つ、迅速に水中のリンを除去することができるリンの効率的な除去方法が求められている。
(b)は、処理水中で難溶性の塩であるリン酸カルシウム塩或いはリン酸アンモニウムマグネシウム塩を析出させるために、pHを高くしてアルカリ性とする必要があること、カルシウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩などの薬剤の添加が必要となり、経済的ではないという問題がある(非特許文献5〜10)。
(c)は、鉄と溶存酸素との組み合わせでの局部濃淡電池を形成させ、鉄イオンを溶出させるというメカニズムを利用しているものであるため、反応を進行させるために曝気を行なう必要があり、この曝気のための動力設備と運転費を要するという問題がある。曝気によって水中の溶存酸素濃度が高くなると、硝酸イオン等の窒素酸化物が除去されにくくなるという問題が起きる。更に、中性付近における鉄と溶存酸素との局部濃淡電池による起電圧程度ではその溶解速度が非常に小さいため、十分なリン除去効率が得られないという問題もある。
(2)硝酸や亜硝酸等の窒素酸化物を除去する従来の方法
水中の窒素酸化物の除去法は各種あるが、最終的には脱窒によって窒素ガスとして処理する方法が望ましい。
(2-A) 生物学的脱窒処理方法
水中の窒素酸化物を窒素ガスとして処理する方法として生物学的脱窒処理方法が一般的によく用いられる。主な方法は、嫌気性条件下において脱窒細菌が有機物や水素などの電子供与体を利用して硝酸イオンを還元する(a)生物学的硝化脱窒法(非特許文献11)と、(b)アンモニアを部分硝化して亜硝酸にし、アンモニアと亜硝酸が混合した状態でANAMMOX細菌により窒素に還元するANAMMOX法(嫌気性アンモニア酸化、anaerobic ammonium oxidation、非特許文献12)がある。
(a)が高い窒素除去率を達成するためには、pHや溶存酸素などの細菌が生育する化学的環境条件を細菌の生育に適した条件に限定し、更に反応系外からメタノールに代表される有機物や水素などの電子供与体を加える必要があり、反応条件のコントロールが難しく、更に薬剤費用がかかる。また、生物学的な脱窒素反応の反応速度が小さいために、満足な処理を行うためには反応槽の容積を大きくして、十分な反応時間を確保する必要がある。
(b)は、ANAMMOX細菌の入手が容易ではなく、この細菌の増殖速度が小さく、反応速度も小さいという問題がある。更に、処理に際しては、アンモニアを部分硝化して亜硝酸を生成させ、アンモニアと亜硝酸の割合がおよそ6:4の混合物とする必要があるが、アンモニアの亜硝酸への部分硝化を安定的にかつ厳密にコントロールして実施することはかなり困難である。また、被処理水中の有機物濃度が高いとアンモニアと亜硝酸の混合物の窒素への還元が十分に進まないという問題がある。
(2-B)物理化学的窒素除去方法
物理化学的窒素除去方法は特に浄水処理に適しており、実用化がなされているものとして「イオン交換法」、「電気透析法」および「逆浸透膜法」等があり、研究段階のものとしては「触媒法」と「電気分解法」がある。実用化されている物理化学的方法はそれぞれ処理速度が速く維持管理が比較的容易であるという利点を有しているが、原理的には溶解塩類の分離技術であり硝酸イオンを選択的に処理することが難しく、また高塩濃度廃液を排出するという課題がある。実際には多くの処理施設で廃液を海域、下水道あるいは畑地に直接または希釈して放流、排出している場合が多い(非特許文献13)。従って、水利用の観点からは優れた処理法であると見ることができるが、上述したように自然環境保全や持続可能な社会の実現という観点からは抜本的な処理技術であるとは位置付けられない。それぞれの物理化学的方法の概要は次の通りである。
(a)イオン交換法
イオン交換法は強塩基性陰イオン交換樹脂により、塩素イオンと硝酸イオンを交換することにより硝酸イオンを分離除去する方法であり、多くの報告例がある(非特許文献14、15)。陰イオン交換樹脂の硝酸イオン選択性は他の陰イオン種の有無や濃度によって変化し、硝酸イオンより選択性が高く環境水中で問題となる陰イオンとしては硫酸イオンがある。地下水には通常硝酸イオンと同程度またはそれ以上の濃度で硫酸イオンが存在しているため、地下水の硫酸イオンはイオン交換法の処理性能を大きく左右することになる。また、イオン交換樹脂の再生工程は処理コストを大きく増大させる要因になる。電気透析法は陽極と陰極の間に陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を交互に配置し直流電流を通電することで、溶液の塩濃縮および脱塩を行う方法である(非特許文献16)。この方法は陰極のスケール付着や脱塩による電気抵抗の増大が処理効率を低下させる要因となり、それらの対応措置である硫酸注入や極性転換が処理操作を煩雑にしている。
(b)逆浸透圧法
逆浸透膜法は海水の淡水化に用いられることが多い技術であり、半透膜を介して溶液に浸透圧以上の圧力を機械的に加えることによって、溶解塩類を含まない水を取り出す方法である。従って、硝酸態窒素の処理に着目した場合にはその選択性が低く、2次処理のコストが非常に大きくなることが課題である。
(c)触媒法
触媒法はパラジウムや銅等の金属触媒を介して硝酸イオンを溶存水素と反応させ窒素ガスにまで還元処理する方法であり、常温、常圧下での処理が可能である。この処理技術は物理化学的方法の中で唯一硝酸態窒素を窒素ガス化する技術であり、廃液や汚泥の問題もなく非常に優れた技術になり得ると考えられる。しかし、現時点では、アンモニア性窒素の蓄積や触媒の劣化等なお検討すべき課題が多い(非特許文献17)。
(d)電気分解法
電気分解法は、硝酸イオン還元の触媒活性に優れた電極材料と電極構造によって、塩化物イオンを電気分解して生成した次亜塩素酸によって、硝酸態窒素を窒素ガスに変換して大気に放出するため、環境に与える影響は少なく、有機炭素源が無添加の脱窒が可能である。この手法は、電気分解を応用しているため、小型化が可能、有機源の管理・補給が不要となり、負荷変動や温度変化による処理能力変動にも対応できるため、システムの維持管理が簡単という利点を有している。更に、BOD/N比が1以下の原水に対して特に有効である。しかしながら、電解に用いる電気コストと使用する触媒が高価なため、コストが膨大であり、塩化物イオンが必要であるため、淡水域では効果が低いという問題がある。
(3)リン酸と硝酸イオンを同時に除去しようとする試み
水界生態系を正常に維持する上で窒素・リン同時除去が必須なわけであるが、排水処理技術などの観点からも同時除去は必須である。現在では,湖沼流域を対象として窒素およびリンの環境基準,排水基準が定められ,海域においても検討が進められているので,対象水域によって栄養塩類の制限要因が異なったとしても,高度処理では窒素およびリンの両者を低減させる対策を施すべきである。
(3−A)生物学的窒素・リン同時除去
窒素とリンを同時に除去する方法として、生物学的な手法が一般的であり、代表的な方法として、活性汚泥法、オキシデ―ションディッチ法、生物膜法、自己造粒法、包括固定化法、水棲植物植裁浄化法、土壌浄化法があるが、微生物による除去が被処理水のBOD値や反応槽内の嫌気度等に大きく影響を受けるため、安定した処理が難しいという問題がある。また、窒素やリンから生産された汚泥や植物等の有機物の処理が問題になる。
(3−B)物理化学的窒素・リン同時除去
窒素とリンを同時に除去する方法として、物理化学的手法だけで成立する方法はほとんどなく、(1−A)または(2−A)と(1−B)または(2−B)との組み合わせ、すなわち、システムのどこかに生物的な手法が組み込まれている。そのため、(3−A)と同様に、安定した処理が難しいことや、窒素やリンから生産された汚泥や植物等の有機物の処理が問題になる。
このような状況下で、電解反応を利用して窒素とリンの同時除去を行った事例が報告されている。リンの除去は陰極材料にアルミニウムまたは鉄系の電極が用いられ、陰極材料から溶出するAl3+またはFe3+とリン酸イオンの反応による式1の沈殿反応に基づいている(非特許文献18)。
Figure 2021100744
窒素除去は以下に示す式2に代表される還元反応に基づいている(非特許文献19)。
Figure 2021100744
鉄電極を用いて電気分解を行うことによって鉄電極から溶出する鉄イオンによって(1−B)(c)のリン酸鉄法を行いつつ、(2−B)(d)の電気分解法を同時に行っているだけであるため、それぞれの方法の長所が組み合わされた素晴らしい方法ではあるが、それぞれの方法の問題点はそのまま残されている。
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従来、リン酸イオンおよび硝酸イオンを同時に除去するには、生物学的な手法が用いられるのが一般的であるが、被処理水の水質や水温、反応槽内の嫌気度等に大きく影響を受けるため、安定した処理が難しく、窒素やリンから生産された汚泥や植物等の有機物の処理が問題になっていた。更に、生物学的なリン蓄積反応や脱窒素反応の反応速度が小さいために、満足な処理を行うためには反応槽の容積を大きくして、十分な反応時間を確保する必要があった。一方、物理化学的な手法だけを用いて窒素とリンを同時に除去する方法はほとんど報告されていない。その中で、鉄電極を用いた電解反応を利用して、窒素とリンの同時除去に成功した事例が報告されている。この手法は、電気分解を応用しているため、小型化が可能、有機源の管理・補給が不要となり、負荷変動や温度変化による処理能力変動にも対応できるため、システムの維持管理が簡単という利点を有している。更に、BOD/N比が1以下の原水に対して特に有効である。しかしながら、電解に用いる電力コストと使用する触媒が高価なため、コストが膨大であり、硝酸イオンを還元するために塩化物イオンが必要であるため、淡水域では効果が低いという問題があった。
発明の目的
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、河川や湖沼を富栄養化させる因子である硝酸、亜硝酸に代表される窒素酸化物およびリンを、電力や高価な触媒などにかかるコストを必要とせず、淡水と海水に関わらず高いリンの回収率と硝酸イオンの分解率が達成できる汚染水浄化方法および浄化装置を提供することである。
(1)鉄を負極とし炭素を正極とする電池が入った電池槽内で汚染水を電解水として発電させかつリン酸イオンをリン酸鉄として沈殿させるリン酸イオン除去および回収工程と、電解槽内で汚染水を電気分解して水素を発生させる水素発生工程と、前記発生した水素により硝酸イオンを還元除去する硝酸イオン除去工程からなる汚染水浄化方法。
本発明によれば、窒素酸化物およびリンを、電力や高価な触媒などにかかるコストを必要とせず、淡水と海水に関わらず高いリンの回収率と硝酸イオンの分解率が達成できる。
(2)リン酸イオン除去工程を電池槽で最初に行い、次に汚染水を電気分解して水素を発生させる水素発生工程を行い、最後に硝酸イオンを還元除去する硝酸イオン除去工程を行うことを特徴とする(1)記載の汚染水浄化方法。
本発明によれば、窒素酸化物およびリンを、電力や高価な触媒などにかかるコストを必要とせず、淡水と海水に関わらず高いリンの回収率と硝酸イオンの分解率が達成できる。
(3)リン酸イオン除去工程を電池槽で行って得られた電力を利用して汚染水を電気分解して水素を発生させる水素発生工程を行うことを特徴とする(1)記載の汚染水浄化方法。
本発明によれば、窒素酸化物およびリンを、電力や高価な触媒などにかかるコストを必要とせず、淡水と海水に関わらず高いリンの回収率と硝酸イオンの分解率が達成できる。
(4)鉄を負極とし炭素を正極とする電池および同電池が入った電池槽が、多段に接続されていることを特徴とする(1)記載の汚染水浄化方法。
本発明によれば、窒素酸化物およびリンを、電力や高価な触媒などにかかるコストを必要とせず、淡水と海水に関わらず高いリンの回収率と硝酸イオンの分解率が達成できる。
(5)汚染水の電気分解に、鉄イオンの酸化還元を利用することを特徴とする(1)記載の汚染水浄化方法。
本発明によれば、窒素酸化物およびリンを、電力や高価な触媒などにかかるコストを必要とせず、淡水と海水に関わらず高いリンの回収率と硝酸イオンの分解率が達成できる。
(6)汚染水の電気分解に用いられる鉄イオンの還元に、還元性有機物と光を利用することを特徴とする(1)記載の汚染水浄化方法。
本発明によれば、窒素酸化物およびリンを、電力や高価な触媒などにかかるコストを必要とせず、淡水と海水に関わらず高いリンの回収率と硝酸イオンの分解率が達成できる。
(8)鉄を負極とし炭素を正極とする電池が入った水槽の内部で汚染水を電解水として発電させかつリン酸イオンを除去するための鉄イオンを溶出させる電池槽と、リン酸鉄として沈殿させ、リン酸イオンを除去および回収する沈殿槽と、汚染水を電気分解して水素を発生させ、前記発生した水素により硝酸イオンを還元除去する硝酸イオンを除去する電解槽と、を含むことを特徴とする汚染水浄化装置。
本発明によれば、窒素酸化物およびリンを、電力や高価な触媒などにかかるコストを必要とせず、淡水と海水に関わらず高いリンの回収率と硝酸イオンの分解率が達成できる製造装置が得られる。
(8)電池槽と電解槽の間に、汚染水中のリン酸イオンを沈殿させ固液分離する沈殿槽が設けられていることを特徴とする(7)記載の汚染水浄化装置。
本発明によれば、窒素酸化物およびリンを、電力や高価な触媒などにかかるコストを必要とせず、淡水と海水に関わらず高いリンの回収率と硝酸イオンの分解率が達成できる製造装置が得られる。
電池槽の正極が電解槽の陽極に接続され、電池槽の負極が電解槽の陰極に接続されていることを特徴とする(7)記載の汚染水浄化装置。
本発明によれば、窒素酸化物およびリンを、電力や高価な触媒などにかかるコストを必要とせず、淡水と海水に関わらず高いリンの回収率と硝酸イオンの分解率が達成できる製造装置が得られる。
(10)電解槽の陰極槽に還元された鉄イオンを還元槽から供給し、電解槽で酸化された鉄イオンを還元槽に戻すよう還元槽と電解槽が接続されていることを特徴とする(7)記載の汚染水浄化装置。
本発明によれば、窒素酸化物およびリンを、電力や高価な触媒などにかかるコストを必要とせず、淡水と海水に関わらず高いリンの回収率と硝酸イオンの分解率が達成できる製造装置が得られる。
(11)汚染水の電気分解に用いられる鉄イオンの還元のための還元槽が、還元性有機物を連続的に供給可能な供給部と、使用済み還元性有機物を連続的に排出する還元性有機物分離部が接続されていることを特徴とする(10)記載の汚染水浄化装置。
本発明によれば、窒素酸化物およびリンを、電力や高価な触媒などにかかるコストを必要とせず、淡水と海水に関わらず高いリンの回収率と硝酸イオンの分解率が達成できる製造装置が得られる。
本発明によれば、湖沼で問題となっている富栄養の原因となるリン酸イオンと硝酸イオンを含む汚染水からをこれらの汚染源を低コストで効率よく除去可能であり、また、除去した汚染物からリンを再利用することができる、汚染水浄化方法および装置を提供することが出来る。
本発明になる汚染水浄化装置は、コンパクトかつシンプルな構造であり、電源も不要のため、水域の汚染源の状況に合わせて、適切な規模かつピンポイントで設置することができ、硝酸イオンとリン酸イオンを適時に除去できる。
本発明になる汚染水浄化方法は、(1-A)と(2-A)のように微生物活性を高くかつ安定して維持するための処理条件の厳密なコントロールの必要がなく、操作が容易であり、コンパクトなサイズで実施できる。また、(1-B)の(a)のような再生処理のための薬剤や(b)のような高価な触媒、(2-B)の(a)と(b)のような高価な凝集剤も必要としないため、プロセス全体として、低コストである。加えて、(b)のように塩化物イオンを必要としないため、淡水域での硝酸イオン除去が可能であり、(2-B)の(c)のように爆気しなくても中性付近でのリン酸除去が可能であり、(d)のように外部からの電力供給や高価な触媒および塩化物イオンが不必要であるため、淡水域と海水域に関わらず河川や湖沼等の富栄養化を持続的に防止できる。
本発明になる汚染水浄化方法は、鉄廃材の新しいリサイクル法や茶粕やコーヒー粕等の生ごみの新たな活用法、回収されたリンと水素を用いた新たな産業や農業が計画できるため、途上国や地域の経済の活性化にも貢献できる。
本発明になる汚染水浄化方法は、途上国では、鉄素材と炭素素材、炭素素材が入手困難な場合は、鉄よりもイオン化傾向が低い素材を用いれば、鉄炭素電池によるリン酸除去・回収が実施できる。更に、チタンやステンレス等の劣化しにくい電極素材と陽イオン交換膜の代替となる浸透膜や半透膜が入手できれば、低電圧電解による硝酸イオンが実施できる。
本発明になる汚染水浄化は、先進国では、従来の水浄化施設や浄化槽に組み込むことによって、窒素とリンの適時除去機能を安全・安価で付加できる。
本発明によれば、水中のリン酸イオンは鉄炭素電池の鉄製の負極から溶出させた鉄イオンによって沈殿除去され、回収された沈殿物からはリン酸が回収できる。更に、鉄炭素電池で処理した後の溶液を2槽式電解装置の陰極槽に注入して、鉄炭素電池から供給される電力を用いた低電圧電解による水素製造を行うと、生成された水素によって水中の硝酸イオンが還元され、窒素ガスとして水外へ除去される。また、本発明によれば、鉄炭素電池によるリン酸イオンの除去・回収と、同電池の電力を用いた低電圧電解で生成した水素ガスによる水中の硝酸イオンの除去が適時に小規模な装置で可能であるため、低コストで持続的な富栄養化対策が可能になる。
現在、日本では、年間3,500万トンもの膨大な屑鉄が発生している。今後、屑鉄の発生量は増大し、国内の鉄鋼の需要量を上回ることが予想され、全ての鉄鋼をリサイクル品で賄ったとしても、屑鉄が確実に残る(非特許文献20)と言われている。
以下に、図面と式を用いて、リン酸イオンと硝酸イオンを除去する汚染水浄化方法および装置の最良の形態を説明する。
図1は、本発明になるリン酸イオンと硝酸イオンを除去する汚染水浄化方法および装置を説明する図で、11は硝酸イオン、12はリン酸イオン、13は鉄炭素電池、14は鉄製の負極、15は炭素製の正極、16は導線、17は鉄イオンとリン酸イオン12による沈殿物、18は鉄炭素電池13で処理した後の溶液、19は鉄炭素電池13から供給される電力、111は陽極槽、112は陰極槽、113は水素イオン交換膜、114は陽極、115は陰極、116は電源、117は茶粕等の還元性有機物、118は太陽光、119は還元槽、120は電解槽をそれぞれ表す。
鉄製の負極14と炭素製の正極15が導線16で直結され、鉄製の負極14と炭素製の正極15は向かい合う近接した位置に設置され、鉄炭素電池13が製作される。鉄炭素電池13は、硝酸イオン11とリン酸イオン12が含まれる水溶液の中に入れられる。鉄は中性付近ではその溶解速度が非常に小さいが、鉄を負極とし、鉄よりもイオン化傾向の低い炭素材料を正極とすることによって電池を形成し、鉄の溶解速度を大きくでき、鉄製の負極14から溶出した鉄イオンによって水中のリン酸イオン12を沈殿させ、沈殿物17を水外に分離することによって水中のリン酸イオン12が除去される。鉄炭素電池13で処理した後の溶液18を2槽式電解装置の陰極槽112に注入して、鉄炭素電池13から供給される電力19を用いた低電圧電解による水素製造を行うと、生成された水素によって水中の硝酸イオン11が還元され、窒素ガス110として水外へ除去される。
陽極槽111と陰極槽112が水素イオン交換膜113によって遮られている。そして、陽極槽には陽極114が、陰極槽には陰極115が含侵している。そして、陽極114と陰極115は電源116によって電圧が印加される。
還元槽119には、硝酸鉄(三価)水溶液が満たされ、3価の鉄イオンが供給され、還元性有機物である茶粕が光触媒的に働き、太陽光のエネルギーによって式3の反応を促進し、3価の鉄イオンが2価の鉄イオンに還元され、かつ水素イオンが発生する。
Figure 2021100744
還元槽119で発生した水素イオンは、水素イオン交換膜113を透過し陰極槽112の中に移動し、陰極に引き寄せられ水素になる。一方、陽極槽111内では還元された2価の鉄イオンが陽極114に引き寄せられ、式4の反応が起こり、電子を奪われ3価の鉄イオンに酸化し、かつ、酸素が発生する。
Figure 2021100744
従来の水の電解による水素製造方法は式5による水の酸化が伴うため、電圧3ボルト以上の電圧の印加が必要であったが、本発明では、陽極槽111内の茶粕等の還元性有機物117と太陽光18によって3価の鉄イオンが連続的に還元され、還元された2価の鉄イオンの連続的存在により、1ボルト以下の電圧で、水の電解が連続的に進行する。
Figure 2021100744
次に、図2を用いて、本発明のリン酸イオンと硝酸イオンを除去する汚染水浄化方法および装置における鉄炭素電池の詳細な構造を説明する。図中、21はボルト、22はプラスチック製の正極固定盤、15は炭素製の正極、23は正極の集電板、24は網状のプラスチック製セパレーター、14は鉄製の負極、25は負極の集電板、26はプラスチック製の負極固定盤、27はナットをそれぞれ表す。
鉄炭素電池の組み立て方について図2を用いて説明する。鉄板(長さ15cm×幅4.5cm)を負極14、炭素板(長さ10cm×幅4cm)を正極15とし、負極14と正極15の間にプラスチック製の網(長さ10cm×幅4cm)を挟み、セパレーター24とし、プラスチック製の正極固定盤22とプラスチック製の負極固定盤26によって外側から挟み込み、ボルト21を通し、ナット27を締め、鉄炭素電池を組み立てた。
負極14で使用する鉄材料としては、いわゆる普通鋼、軟鉄などを使用することができる。
また、この鉄材料の形状は、特に制限はない。例えば、平板状のもの、網状のもの、穴あき平板状(パンチングメタル)のもの、棒状のもの、網状のもの、粒子状のもの、糸状のものなどいずれも使用することができる。鉄の接触面積を大きくするために、網状や穴あき平板状、粒子状のものが好ましい。
負極14で使用する材料としては、鉄よりも電位の貴な材料を使用する。鉄よりも電位の貴な材料としては、炭素材料、ステンレススチール、銅などが使用することができる。炭素材料の形態は、例えば、平板状のもの、棒状のもの、繊維状のもの、織布や不織布状のものなどが利用できる。
鉄炭素電池では、負極14と正極15が向き合った状態となるように配置することが好ましい。
負極14と正極15との間隔は小さいほど電流が大きくなるために好ましいが、液の流動の容易性などを考慮すると1mm〜50mmが好ましく、2mm〜10mmが更に好ましい。被処理水の浴中の液の撹拌がない場合には両者の間隔を小さくし、浴中の液の撹拌がある場合には両者の間隔を大きくし、撹拌速度が大きくなるにつれて両者の間隔を大きくすることができる。
被処理水に鉄炭素電池を浸漬する場合、温度は室温でよく、特に加熱や冷却は必要としない。また、被処理水は中性領域でよいが、弱酸性や弱アルカリ性であってもよい。ただし、pHが8を超えると鉄が不動態となり水への溶解が進まなくなるので好ましくない。また、鉄炭素電池による水の処理においては物質移動を伴うので、被処理水の浴を撹拌することが好ましい。同様に、負極14と正極15と被処理水との接触面積も大きい方が好ましい。従って、負極14と正極15を多孔質状とすることが好ましい。
次に、図3を用いて、本発明のリン酸イオンと硝酸イオンを除去する汚染水浄化方法および装置における電池槽の詳細な構造を説明する。図中、31は電池槽の流入口、32は電池槽、33は試供水、34は電解装置の陽極とつなぐ正極、35は電解装置の陰極とつなぐ負極、36は電池槽の流出口、37は第1水槽、38は第2水槽、39は第3水槽、310は第4水槽、311は第5水槽、312は第6水槽、13は鉄炭素電池、14は鉄製の負極、15は炭素製の正極、16は導線、24はセパレーターをそれぞれ表す。
電池槽32は第1水槽37、第2水槽38、第3水槽39、第4水槽310、第5水槽311、第6水槽312に仕切られた水槽である。これらの6つの水槽のサイズは幅5cm×奥行1.5cm×高さ8cmであり、6つの水槽の容積の合計、すなわち、電池槽32の容積は約800mLである。第1水槽から第6水槽の6つの水槽に鉄炭素電池13を1基ずつ計6基入れ、隣り合う鉄炭素電池の鉄製の負極14と炭素製の正極15を銅線16によって直列に接続した。試供水33は流入口31から供給され、第1水槽37に上部から入り、第1水槽37内の鉄炭素電池13に触れた後、第2水槽38に下部から入り、第2水槽38内の鉄炭素電池13に触れた後、第3水槽39に上部から入り、第3水槽39内の鉄炭素電池13に触れた後、第4水槽310の下部から入り、第4水槽310内の鉄炭素電池13に触れた後、第5水槽311に上部から入り、第5水槽311内の鉄炭素電池13に触れた後、第6水槽312の下部から入り、第6水槽312内の鉄炭素電池13に触れた後、流出口36から処理された試供水33が排出される。
[実施例1(鉄炭素電池による電力供給とリン酸除去および回収法)]
鉄板(長さ15cm×幅4.5cm)を負極14、炭素板(長さ10cm×4cm)を正極15とし、プラスチックの網をセパレーター24とした。試供水33は、麻機池の水をろ過した後、リン酸水素二ナトリウム・12水和物(NaHPO・12HO)とリン酸2水素ナトリウム2水和物(NaHPO・2HO)を等量ずつ用いて、リン酸態リン(PO−P)濃度を0.05mmol/L(麻機池の流入溝のリン酸イオン濃度の年間の最大値、平均値の約10倍)、pHを7.0に調製した。実験は、1.6Lの試供水33を毎分26mLで流入口31から送り込み、流出口36から流れ出させ、処理後の試供水33を再度、流入口31に流し込み、試供水33を4回、循環させた。電池槽に入った試供水の体積の合計は、0.8Lであるため、約30分で電池槽内の試供水が入れ替わる。リン酸態リン濃度は、モリブデン青吸光光度法(非特許文献21)によって測定し、リン酸イオンが除去された割合を示す「リン酸イオン の除去率」を式6で定義した。
Figure 2021100744
1つの鉄炭素電池13を試供水33に入れた所、解放電圧は約0.5Vであった。鉄炭素電池13を直列に6個つないだ所、約3Vの電圧が発生した。1V以上であれば、2価の鉄イオンの酸化を用いた水素生産が可能であるため、鉄炭素電池からの電力の供給による水素生産は可能であることが分かった。
リン酸イオンの除去率は循環回数が1回の時は54.4%、2回の時は71.4%、3回の時は88.5%、4回の時は94.6%であった。
表1に電池水槽のpHと酸化還元電位(ORP)を示した。電池槽に流入した試供水のpHが上昇すると共に、酸化還元電位が負の値へ下降したことから、鉄炭素電池から鉄イオンが溶出したことが分かる。そのため、電池槽には、Fe2+とFe3+が存在する。Fe2+と陰イオンの溶解度積は、Fe3+の溶解度積と比較して非常に大きいため、Fe2+の沈殿はほとんど存在しないと考えられることから、Fe3+と陰イオンの反応で沈殿が生成したと判断した。Fe3+と反応して生成する沈殿物としては、Fe(OH)(s)、FePO(s)、Fe(CO(s)、Fe(SO(s)が挙がる。この4種の沈殿の中でFe(CO(s)とFe(SO(s)は溶解度積が非常に大きいため、沈殿は生成しないと考えられた。Fe(OH)(s)とFePO(s)に関する化学平衡と平衡定数から化学量論的に、FePO(s)の沈殿が生成されたとは考えられなかったため、生成した沈殿は、Fe(OH)(s)の沈殿であり、この沈殿の生成に伴って、リン酸(H3PO4 PO やHPO 2− )が共沈殿によって除去されたと考えられた。
Figure 2021100744
この実験を15時間継続した結果、水中のリン酸イオン除去率が100%になった。沈殿物を回収し、完全に乾燥させ、0.31gの回収物を得た。回収物の0.1倍の質量である0.031gを実験に用いた試供水の0.1倍の体積である160mLの硫酸溶液(1mol/L)に入れ、300rpmで30分間撹拌した後、溶液に溶出したリン酸イオン濃度を測定した。式7によるリン酸回収率は、水中のほぼ100%のリン酸イオンが沈殿物として回収できることが確認できた。
Figure 2021100744
[実施例2](鉄炭素電池から供給された電力を用いた低電圧電解で生成した水素による硝酸イオン還元除去法と鉄塩によるリン酸凝集沈殿法を同時に実施)
以下に、図面を用いて、本発明の実施例を詳細に説明する。図4は本発明のリン酸イオンと硝酸イオンを除去する汚染水浄化方法および装置の実施例を説明する図で、13は鉄炭素電池、17は鉄イオンとリン酸イオンから生成した沈殿物、111は陽極槽、112は陰極槽、113は水素イオン交換膜、114は陽極、115は陰極、118は太陽光、119は還元槽、120は電解槽、31は電池槽32の流入口、32は電池槽、33は試供水、34は電解装置の陽極とつなぐ正極、35は電解装置の陰極とつなぐ負極、36は電池槽32の流出口、37は第1水槽、38は第2水槽、39は第3水槽、310は第4水槽、311は第5水槽、312は第6水槽、41は茶粕の供給および給水のためのバルブ、42は鉄イオンと還元性有機物が混合された溶液、43は空間、44は撹拌用モーター、45は陽極槽の廃液を還元槽へ返すパイプ、46は撹拌用プロペラ、47は使用済み還元性有機物の廃棄用バルブ、48はろ過機、49は還元槽119からポンプ410へのパイプ、410は還元槽119から陽極槽111への輸液ポンプ、411はポンプ410から陽極槽111へのパイプ、412は導線、413は陰極槽の排出口、414は陰極槽の流入口、415はポンプ416と流入口414をつなぐパイプ、416は沈殿槽420内の溶液419の上澄みを陰極槽112へ送る輸液ポンプ、417は沈殿槽420とポンプ416をつなぐパイプ、418は空間、419は電池水槽32で処理された後の試供水33、420は沈殿槽、421は沈殿物17の廃棄用バルブ、422は電池水槽32の流出口36と沈殿槽420をつなぐパイプ、をそれぞれ表す。
本発明のリン酸イオンと硝酸イオンを除去する汚染水浄化方法および装置の主要な部分は、図4で示すように、電池槽32内でリン酸イオンを除去するための鉄イオンを溶出しながら発電する鉄炭素電池13と、陽極槽111内で2価の鉄イオンを含む水溶液中の鉄イオンの酸化によって陰極槽112内の水溶液を電解し水素イオンから水素を発生させ、陰極槽内の硝酸イオンを水素によって還元除去する電解槽120と、陽極槽111内で生成した3価の鉄イオンを還元して2価の鉄イオンに再生する還元槽119とで構成される。
還元槽119について、図5を用いて説明する。図5は、本発明の第2の実施例の還元槽119の詳細な構造を説明する図である。図中、119は還元槽、42は鉄イオンと還元性有機物が混合された溶液、44は撹拌用モーター、46は撹拌用プロペラ、47は使用済み還元性有機物の廃棄用バルブ、51から55は外部からの光を取り込む窓、をそれぞれ表す。
本実施例では、還元性有機物として茶粕を用い、照射する光として太陽光を用いた。還元槽119は太陽光を外部から光を取り込む窓51から55を通し取り込む。3価の鉄イオンは、太陽光を吸収しながら攪拌プロペラ46で攪拌された茶粕117と反応し、2価の鉄イオンに還元される。2価の鉄イオンと茶粕が混合された溶液42は、使用済みの茶粕は還元槽の上澄みをろ過機48で分離し、ポンプ416によって陽極槽111に導かれる。使用済みとなった茶粕は連続的に分離除去される。還元槽19の底は、使用済みの茶粕が効率よく使用済み茶粕廃棄バルブ47に向かうように、傾斜している。
次に、実施例の電解部について説明する。電解部の主要な部分は、陽極槽111と陰極槽112と水素イオン交換膜113からなるが、順に説明する。
図4の陽極槽111の詳細について、図6を用いて説明する。図6で、45は陽極槽の廃液を還元槽に返すパイプ、411は還元槽からの2価の鉄イオンを含んだ溶液の供給用パイプ、61は陽極槽の第1室(下部)、62は陽極槽の第2室(中央部)、63は陽極槽の第3室(上部)、64はボルトを通す穴(陽極槽と陰極槽によって陽イオン交換膜を挟んで固定するためのボルトを通す穴)、をそれぞれ示す。
前述した還元槽119で形成された2価の鉄イオンを含んだ溶液が供給用パイプ411から陽極槽の下部にある第1室61に供給される。第1室61が溶液で満たされると溶液は陽極槽の中央部にある第2室62に流れ込む。第2室62の内部には鉛直方向に10本の細い流路が平行に作られており、この流路は図4の陽極14の表面を流れる位置に配置されている。そのため、第1室61から流入した溶液は第2室62の内部で図4の陽極14の表面に余すことなく触れてから、陽極槽上部にある第3室63へ流れ出る。第3室63では、第2室62の内部で分岐していた流路からの流れが集められ、陽極槽で2価の鉄イオンが酸化されて生成された3価の鉄イオンを含む溶液はパイプ45を通って、図4の還元槽119に返され、2価の鉄イオンに再生される
次に、図7を用いて陰極槽112を説明する。図中、413は陰極槽の排出口、414は陰極槽の流入口、71は陰極槽の第1室(下部)、72は陰極極槽の第2室(中央部)、73は陽極槽の第3室(上部)、74はボルトを通す穴をそれぞれ表す。
沈殿槽420の上澄み、すなわち、リン酸イオンが除去され、硝酸イオンが残留した試供水がポンプ416によって陰極槽の流入口414から供給される。供給された試供水は陰極槽の下部にある第1室71に供給される。第1室71が溶液で満たされると水は陽極槽の中央部にある第2室72に流れ込む。第2室72の内部には蛇行する細い流路が作られており、この流路は図4の陰極115の表面を流れる位置に配置されている。そのため、第1室71から流入した溶液は第2室72の内部で図4の陰極115の表面に余すことなく触れる。陰極15の表面で生成された水素によって、陰極槽112内で試供水に含まれる硝酸イオンが還元され、窒素ガスに変換され、陰極槽112の排出口413から水と共に排出される。
次に、図8を用いて、本発明の実施例からなる水素製造装置の陽極部、陰極部および陽イオン交換膜、等からなる電解部の全体の詳細構造を説明する。図中、112は陰極槽、113は水素イオン交換膜、114は陽極、115は陰極、81はボルト、82はナットをそれぞれ表す。
陽極114と陰極115および水素イオン交換膜113からなる電解装置の組み立て方法について、図8を用いて説明する。陽極114と陰極115には、網状の白金めっき付チタン電極(幅10cm×長さ30cm)を用いた。陽極114と陰極115は網状のチタンの周囲に板状のチタンを接合した後、白金でメッキした。陽極114と陰極115によって陽イオン交換膜113(幅10cm×長さ30cm)を挟んだ後、陰極槽114と陽極槽115によって外側から挟み込み、ボルト81を通し、ナット82を締め、電解部を組み立てた。
次に、本実施例における各部の条件について説明する。還元槽119においては、以下の条件で行われた。
茶葉を浸す電解液としては、硝酸鉄水溶液を用いた。Fe(III)/Fe(II)のレッドクスポテンシャルは全鉄イオン濃度やFe(III)/Fe(II)の割合、pH、陰イオン種などの影響をうける。式(1)の反応はFe(III)イオン濃度が高く、pHも高いほど進行し易い。一方、式(2)の反応は、Fe(II)イオン濃度が高く、pHは低い方がよい。どちらの反応も逆反応と平衡状態にあるため、反応速度を高め、広い範囲で平衡を移行させるためには活性の高い触媒および効率の良い光照射法が重要になる。
本実施例では、電解液として、606gの硝酸鉄(III)(Fe(NO・9HO)と10Lの常温の水を用いて3価の鉄イオン濃度が0.15mol/L(150mM)の試供水を調製した。10Lの試供水と破断状態にした最長3mmである1kgの茶粕を図5の反応容器に入れた。還元槽119の容積は12.5Lである。
光照射の方法は、できるだけ光が触媒と溶液に効率よく照射されなければいけない。本実施例では太陽光を用いた。太陽光が逃げないようにミラーやアルミホイル等を使用し、取り込み効率の高い光学系を用いる。太陽光の取り込み窓51から55の窓材には、透過率が高く、比較的安価なパイレックスを用いた。パイレックスの代わりに、透過率の高いプラスチックを用いることも出来る。
本実施例では、鉄イオンと茶粕が混合された溶液42をより分散させるために、撹拌用プロペラ46を撹拌用モーター44で回転攪拌した。還元槽119の底面には傾斜があり、プロペラ46の下付近に沈殿した茶粕が集まる構造になっており、プロペラ46の撹拌によって沈殿した茶粕が再び還元槽119の内部を浮遊する。プロペラ46の撹拌を止めると、沈殿した茶粕は還元槽119の底面の傾斜によって使用済み茶粕廃棄用バルブ47の付近に集まる構造になっており、使用済みの茶粕を還元槽119から取り出すことができる。そして、3価の鉄イオンを還元して生成された2価の鉄イオンを含む電解液は、茶粕と分離された後、ポンプ410で陽極槽111に送り込まれる。
陽極槽に送りこまれた電解液は、水素イオン交換膜113によって陽極槽と陰極槽が仕切られた2槽式電解セルで式2の反応を起こす。2槽式電解セルを仕切る膜としては半透膜、透析用浸透膜、イオン交換膜や塩橋、セラミック膜などが利用できるが、水素イオンの移動度が鉄イオンの移動度に比べて充分大きい必要があるので、水素イオン交換膜が望ましく、本実施例では、水素イオン交換膜(ナフィオン、デュポン社製)を用いた。
水素発生側の陰極115としては水素過電圧の小さな材料が望ましく、白金やニッケル、白金などを微量に担持したカーボン電極、白金がメッキされたチタン電極などが使用できる。本実施例では、コストを考慮し白金がメッキされたチタン電極を用いた。
一方、2価の鉄イオンの酸化を行う陽極114としては上記の電極の他に白金を担持しないカーボン電極でも使用できる。本実施例では、コストを考慮し白金がメッキされたチタン電極を用いた。
電解電圧を下げるためには電極間距離を短くしたり、反応温度を高くしたり、電極電流密度を下げる、集電材を使うといった工夫が重要である。本実施例では、電極間距離は水素イオン交換膜の厚みとした。反応温度は、常温で行った。電極電流密度は3アンペア/平方センチにした。また、集電効果を高めるために、電極構造を図8で示すように、網状の電極の周囲に、板状の枠を設けた。
電解が進行すると陽極114周辺の2価の鉄イオン濃度が減少するので、電極周辺の水溶液が撹拌される、または還元槽119と直結して常に2価の鉄イオン濃度の高い溶液が循環されるシステムが望ましい。
硝酸イオンとリン酸イオンの同時除去方法の条件の最適化をするために、以下の実験を行った。
(実験1)
試供水33として、麻機池の水をろ過した後、硝酸カリウム(KNO)を用いて、硝酸態窒素(NO−N)濃度を2mmol/L、リン酸水素二ナトリウム・12水和物(NaHPO・12HO)とリン酸2水素ナトリウム2水和物(NaHPO・2HO)を等量ずつ用いて、リン酸態リン(PO−P)濃度を2mmol/L、pHを7.0に調製した。
電解液42として、606gの硝酸鉄(III)(Fe(NO・9HO)と10Lの常温の水を用いて3価の鉄イオン濃度が0.15mol/L(150mM)の試供水を調製した。
10Lの電解液42と破断状態にした最長3mmである1kgの茶粕を図5の還元槽119に入れ、1,000lmのLED電球を8個(紫外光は含まず、窓53と54付近の照度は約20,000lux、快晴時の太陽光の10分の1の強度)を用いて、光を照射しながら、還元槽119内を300rpmで撹拌し、2価の鉄イオンの濃度の減少を防止しつつ、ポンプ410を用いて、電解液を毎分50mLで送り、還元槽119と陽極槽111を循環させた。
同時に、試供水を毎分26mLで電池槽32に、電池槽32で処理された試供水33を電解装置412の陰極槽112に送り込み、陰極槽112で処理した試供水を再度、電池槽32に送ることによって、試供水を循環させ、硝酸態窒素、亜硝酸態窒素(NO−N)アンモニア態窒素(NH−N)、リン酸態リンの濃度の変化を測定した。硝酸は亜鉛還元−ナフチルエチレンジアミン吸光光度法(非特許文献21)、亜硝酸は、ナフチルエチレンジアミン吸光光度法(非特許文献21)、アンモニアは、インドフェノール青吸光光度法(非特許文献21)で測定した。
実験1におけるリン酸態リン濃度は、20時間でほぼ0mmol/Lになり、水中のリン酸イオンがすべて除去された。
通常、電池槽32内の試供水のpHが低い(水素イオン濃度が高い)と、つまり酸性であるほど、鉄負極14の溶解速度は大きくなり、リン酸イオンとの反応速度が大きくなることが期待される。本発明において、陰極115での水素生成をセーブしながら陰極槽112で処理された後の試供水を電池槽32に送り、試供水を循環させると、陰極槽112から水素イオンが供給され、電池槽32に供給される試供水のpHを低くすることができ、環境に負荷を与えないで、電池槽32内の試供水に含まれるリン酸イオンと反応させるための鉄イオンの溶出速度を大きくすることが可能になった。
通常、電池槽32内の試供水のpHが5.0に満たないと、一度、沈殿除去したリン化合物の溶解度が増加して効率的にリンを除去できなくなる。本発明において、陰極115で十分に水素生成を行いながら陰極槽112で処理された後の試供水を電池槽32に送り、試供水を循環させると、陰極槽112で水素イオンが消費され、電池槽32に供給される試供水のpHを高く(水素イオン濃度を低く)することができ、電池槽32内の試供水に含まれるリン酸イオンが沈殿しやすくなる。
通常、電池槽32内の試供水のpHが8.0を超えると、溶解した金属イオンが水酸化物イオンと反応して水酸化物を形成してしまうため、リン酸化合物の形成が抑制されてしまう。本発明において、陰極115での水素生成をセーブしながら陰極槽112で処理された後の試供水を電池槽32に送り、試供水を循環させると、陰極槽112から水素イオンが供給され、電池槽32に供給される試供水のpHを低くすることができ、環境に負荷を与えないで、電池槽32内の試供水に含まれる金属イオンとリン酸イオンと反応させる特に好ましいpHである7.0に調整することが可能になった。
実験1における硝酸態窒素濃度は、60時間で1mmol/Lになり、水中の硝酸イオンの50%が除去された。亜硝酸態窒素濃度は実験期間中、常に0mmol/Lであったが、アンモニア態窒素濃度は常に0.2mmol/Lであったことより、硝酸イオンが還元され、除去されたと考えられた。処理水の鉄イオン濃度は0mmol/Lであり、実験期間中は約1mA×1Vの電流と陰極から気体の発生が目視で確認できたため、低電圧電解による水素生成が起きていたと考えられる。
pHが7の時において、亜硝酸イオン(NO )とアンモニウムイオン(NH )が同モル存在する条件下では、亜硝酸イオンが窒素ガス(N)に還元される場合の半反応式(式8)とアンモニウムイオン が窒素ガスへ酸化される場合の半反応式(式9)が成立し、Total equation(式10)におけるギブズの自由エネルギーは負であるため、陰極からの微量な水素ガスと電池槽から供給された還元的な電位の水質によって、水中に存在する亜硝酸イオンとアンモニウムイオン から共に窒素ガスを生成する反応が進み、硝酸イオンが除去されたことが示唆された。
Figure 2021100744
通常、水中の溶存酸素濃度(DO)が高いと、水中に存在する硝酸イオンは還元されない。本発明では、電池槽32内において、鉄炭素電池13によって水中の溶存酸素が消費されるため、電池槽32からの排水を陰極槽112に送ることによって、陰極槽112内において、陰極115の表面で硝酸イオンを窒素ガスに還元することが可能になった。
通常、水中の酸化還元電位(ORP)が正の値(酸化的)であると、水中に存在する硝酸イオンは還元されにくい。本発明では、電池槽32内の仕切られた第1水槽37、第2水槽38、…、第6水槽312と進むにつれて、水中の酸化還元電位が負の値でかつ下がり続けるため、電池槽32からの排水を陰極槽112に送ることによって、陰極槽112内において、陰極115の表面で硝酸イオンを窒素ガスへ高効率で還元することが可能になった。
通常、水中の水素イオン(H)濃度が低いと、水中に存在する硝酸イオンは還元されにくい。本発明では、還元槽119内において、3価の鉄イオンが2価の鉄イオンに還元される際に、水から水素イオンが生成され、陽極槽111から水素イオン交換膜113を経由して、陰極槽112に供給されるため、中性(pHが7)付近の試供水が電池槽32に供給されたとしても、電池槽32から陰極槽112に送られた試供水の水素イオン濃度が高められ、陰極槽112内において、陰極115の表面で硝酸イオンを窒素ガスに還元することが可能になった。
(実験2)
快晴時に除去装置を麻機池で活用した。麻機池の流入溝付近で採取した水を毎分26mLで電池槽32の流入口31に流し込み、電解装置412の陰極槽112の排出口413から流れ出た処理水を再度、電池槽32に流し込み、実験1と同じ流速で循環させた。
処理前のリン酸態リン濃度は0.5mg/Lであった。リン酸イオンは、1回目の循環で60%以上が除去され、4回の循環の後、90%以上が除去された。処理前の硝酸態窒素濃度は1.5mg/Lであった。硝酸イオンは、2回目の循環まで、除去率は低かったが、3回目以降、徐々に高まり、4回の循環の後、約20%が除去された。
(実験3)
巴川と駿府城のお堀で実施した場合も、同様な結果を得たことから、一般的な河川や湖沼の水を流し込むだけで、硝酸イオンとリン酸の除去が同時に可能なシステムの開発に成功したことが確認できた。
(実験4)
浄化槽や下水処理場で処理された後の水を用いた場合における、リン酸態リン濃度は、6時間でほぼ0mmol/Lになり、水中のリン酸イオンがすべて除去された。硝酸態窒素濃度は、20時間で1mmol/L、60時間で0.2mmol/Lになり、水中の硝酸イオンの90%が除去された。亜硝酸態窒素濃度は実験期間中、常に0mmol/Lであったが、アンモニア態窒素濃度は常に0.2mmol/Lであったことより、硝酸イオンが還元され、除去されたと考えられた。実験1と同様に、処理水の鉄イオン濃度は0mmol/Lであり、実験期間中は約1mA×1Vの電流と陰極から気体の発生が目視で確認できたため、実験3においても、低電圧電解による水素生成が起きていたと考えられる。
実施例では、鉄板を負極、炭素板を正極とした鉄炭素電池から溶出する鉄イオンによって水中のリン酸イオンを沈殿させて除去し、収集した沈殿物からリン酸が回収された。同時に、鉄炭素電池から供給される電力を用いた水電解によって製造した水素を用いて、溶液中の硝酸イオンが還元されて除去された。加えて、硝酸イオンを還元するための水素は、太陽光と茶粕を用いた3価の鉄イオンから2価の鉄イオンへの還元と2価の鉄イオンの酸化による1V以下の低電圧水電解を組み合わせた、安全・安価かつエネルギー消費を半減させた水素製造法を用いて供給された。
図1は、本発明になるリン酸イオンと硝酸イオンを除去する汚染水浄化方法および装置を説明する図である。 図2は、本発明になるリン酸イオンと硝酸イオンを除去する汚染水浄化方法および装置の詳細な構造を説明する図である。 図3は、本発明になるリン酸イオンと硝酸イオンを除去する汚染水浄化方法および装置における電池槽の詳細な構造を説明する図である。 図4は、本発明になるリン酸イオンと硝酸イオンを除去する汚染水浄化方法および装置の実施例を説明する図である。 図5は、本発明の第2の実施例の還元槽の詳細な構造を説明する図である。 図6は、本発明の第2の実施例の水素製造装置の陽極部の詳細構造を説明する図である。 図7は、本発明の第2の実施例からなる水素製造装置の陰極部の詳細構造を説明する図である。 図8は、本発明の第2の実施例からなる水素製造装置の陽極部、陰極部および陽イオン交換膜、等からなる電解装置の詳細構造を説明する図である。
11 硝酸イオン
12 リン酸イオン
13 鉄炭素電池
14 鉄製の負極
15 炭素製の正極
16 導線
17 鉄イオンとリン酸イオン12から生成した沈殿物
18 鉄炭素電池13で処理した後の溶液
19 鉄炭素電池13から供給される電力
111 陽極槽
112 陰極槽
113 水素イオン交換膜
114 陽極
115 陰極
116 電源
117 茶粕等の還元性有機物
118 太陽光
119 還元槽
120 電解槽
21 ボルト
22 プラスチック製の正極固定盤
23 正極の集電板
24 網状のプラスチック製セパレーター
25 負極の集電板
26 プラスチック製の負極固定盤
27 ナット
31 電池槽の流入口
32 電池槽
33 試供水
34 電解装置の陽極とつなぐ正極
35 電解装置の陰極とつなぐ負極
36 電池槽の流出口
37 第1水槽
38 第2水槽
39 第3水槽
310 第4水槽
311 第5水槽
312 第6水槽
41 茶粕の供給および給水のためのバルブ
42 電解液(鉄イオン)と還元性有機物が混合された溶液
43 空間
44 撹拌用モーター
45 陽極槽の廃液を還元槽へ返すパイプ
46 撹拌用プロペラ
47 使用済み還元性有機物の廃棄用バルブ
48 ろ過機
49 還元槽119からポンプ410へのパイプ
410 還元槽119から陽極槽111への輸液ポンプ
411 ポンプ410から陽極槽111へのパイプ
412 導線
413 陰極槽の排出口
414 陰極槽の流入口
415 ポンプ416と流入口414をつなぐパイプ
416 沈殿槽420内の溶液419の上澄みを陰極槽112へ送る輸液ポンプ
417 沈殿槽420とポンプ416をつなぐパイプ
418 空間
419 電池槽32で処理された後の試供水33
420 沈殿槽
421 沈殿物17の廃棄用バルブ
422 電池水槽32の流出口36と沈殿槽420をつなぐパイプ
51 外部からの光を取り込む窓
52 外部からの光を取り込む窓
53 外部からの光を取り込む窓
54 外部からの光を取り込む窓
55 外部からの光を取り込む窓
61 陽極槽の第1室(下部)
62 陽極槽の第2室(中央部)
63 陽極槽の第3室(上部)
64 ボルトを通す穴
71 陰極槽の第1室(下部)
72 陰極極槽の第2室(中央部)
73 陽極槽の第3室(上部)
74 ボルトを通す穴
81 ボルト
82 ナット

Claims (11)

  1. 鉄を負極とし炭素を正極とする電池が入った電池槽内で汚染水を電解水として発電させかつリン酸イオンを除去するための鉄イオンを溶出させかつ沈殿槽内でリン酸イオンをリン酸鉄として沈殿させるリン酸イオン除去および回収工程と、電解槽内で汚染水を電気分解して水素を発生させる水素発生工程と、前記発生した水素により硝酸イオンを還元除去する硝酸イオン除去工程からなる汚染水浄化方法。
  2. リン酸イオン除去および回収工程を電池槽と沈殿槽で最初に行い、次に汚染水を電気分解して水素を発生させる水素発生工程を行い、最後に硝酸イオンを還元除去する硝酸イオン除去工程を電解槽で行うことを特徴とする請求項1記載の汚染水浄化方法。
  3. リン酸イオンを除去するための鉄イオンを溶出させる工程を電池槽で行って得られた電力を利用して汚染水を電気分解して水素を発生させる水素発生工程を行うことを特徴とする請求項1記載の汚染水浄化方法。
  4. 鉄を負極とし炭素を正極とする電池および同電池が入った電池槽が、多段に接続されていることを特徴とする請求項1記載の汚染水浄化方法。
  5. 汚染水の電気分解に、鉄イオンの酸化還元を利用することを特徴とする請求項1記載の汚染水浄化方法。
  6. 汚染水の電気分解に用いられる鉄イオンの還元に、還元性有機物と光を利用することを特徴とする請求項1記載の汚染水浄化方法。
  7. 鉄を負極とし炭素を正極とする電池が入った水槽の内部で汚染水を電解水として発電させかつリン酸イオンを除去するための鉄イオンを溶出させる電池槽と、リン酸鉄として沈殿させ、リン酸イオン除去および回収する沈殿槽と、汚染水を電気分解して水素を発生させ、前記発生した水素により硝酸イオンを還元除去する硝酸イオンを除去する電解槽と、を含むことを特徴とする汚染水浄化装置。
  8. 電池槽と電解槽の間に、汚染水中のリン酸イオンを沈殿させ固液分離する沈殿槽が設けられていることを特徴とする請求項7記載の汚染水浄化装置
  9. 電池槽の正極が電解槽の陽極に接続され、電池槽の負極が電解槽の陰極に接続されていることを特徴とする請求項7記載の汚染水浄化装置。
  10. 電解槽の陰極槽に還元された鉄イオンを還元槽から供給し、電解槽で酸化された鉄イオンを還元槽に戻すよう還元槽と電解槽が接続されていることを特徴とする請求項7の汚染水浄化装置。
  11. 汚染水の電気分解に用いられる鉄イオンの還元のための還元槽が、還元性有機物を連続的に供給可能な供給部と、使用済み還元性有機物を連続的に排出する還元性有機物分離部が接続されていることを特徴とする請求項10記載の汚染水浄化装置。
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