JP2021096094A - 力覚表面、及びこれを有する荷重刺激のセンシングシステムとこれに用いるコンピュータプログラム、並びにこれらに関連する学習済みモデルと推測システム - Google Patents

力覚表面、及びこれを有する荷重刺激のセンシングシステムとこれに用いるコンピュータプログラム、並びにこれらに関連する学習済みモデルと推測システム Download PDF

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Abstract

【課題】 PEDOT−pTSを付着させた基材を力覚センサ素子として用いた、センシングシステムの構築。【解決手段】 基材に、PEDOT−pTSが付着している導電性材であって、上記基材に対するする荷重刺激に応じた電気シグナルを上記導電性材から発信する力覚素子が1チャンネル単位以上備えられている力覚表面を、椅子やベッド等の荷重表面に適用して、生成する電気シグナルと所定の荷重刺激の関係を着座姿勢や横臥姿勢に当て嵌めた、コンピュータを用いるセンシングシステムを提供することにより、上記の課題を解決することを見出した。【選択図】 図8

Description

本発明は、荷重センサと、これを用いるセンシング手段、さらにこれらに関連する学習済みモデルと推測手段に関する発明である。
近年、軽量かつ薄型のフレキシブルな圧力センサが広く用いられるようになっている。例えば、自動車分野では、座席に圧力センサが組み込まれ、搭乗者が車両に乗り込み座席に着座した際に一定以上の荷重(体重)が圧力センサに加わることで人の存在を検知し、シートベルトの着用を促すような制御を取ることが可能になっている。また、ベッドのマットレスに圧力センサを内在させて、ベッドに横たわる者の体重の掛かり具合を検知し、長時間同じ姿勢で横たわっていることを検知して、床ずれの防止を行う試みも行われている。さらに、心臓の拍動による荷重変化を検知し、心拍を計測する試みもなされている。
このような中で、PEDOT−pTS(poly(3,4-ethylene-dioxythiophene)-p-toluenesulfonate)は、導電性高分子の中でも、導電性能が高いことが知られている。そしてその一方で、PEDOT−pTSを付着させることができる基材の種類は限定されている。本発明者らは、PEDOT−pTSを付着させる基材として絹を用いる発明を行い、既に特許出願を行った(特許文献1、特許文献2)。
WO2016/148249号 国際公開パンフレット WO2016/031872号 国際公開パンフレット 特開平9−119033号公報 特公昭47−14043号公報 特許第3190314号公報 特開2016−23389号公報 特公昭37−16853号公報
「やさしい産業上繊維の基礎知識」(加藤哲也、向山泰司著、日刊工業新聞社:2011.1.28発行)、第11頁
上記の絹を基材として用いたPEDOT−pTSを付着させた導電性材は、この導電性高分子の付着容易性と優れた導電性能と共に、生体に対する親和性に優れており、非常に有望な導電性材であることが見出された。そして、さらにPEDOT−pTSを付着させた基材の具体的な用途の検討を行った。
その結果、基材にPEDOT−pTSを付着させた導電性材が、荷重センサの用途に非常に適していることを見出し、本発明を完成した。
まず本発明の前提技術である「基材へのPEDOT−pTSの付着」に関連して、基材そのものの内容と当該基材へのPEDOT−pTSの付着について説明する。
<基材>
上記導電性材の基となる基材は、荷重センサのセンサ素子である力覚センサ素子(後述する)として用いることが可能な限り特に限定されず、紙、絹、ポリエステル[PET(ポリエチレンテレフタレート)等]、ポリアミド(ナイロン)、ポリウレタン等の繊維を含有する基材が挙げられる。また、当該基材の形状は、基材を展開させた形状が略二次元形状であることが好適である。
そして、上記基材のPEDOT−pTSが付着している部分は、編物又は織物を含んでいることが好適である。「編物又は織物を含む」とは、上記基材のPEDOT−pTSが付着している部分の全部が編物又は織物である場合を含んでいる。ここで、本発明に適用される編物又は織物について説明する。
(1)編物又は織物
編物又は織物は、単層であっても、複層であってもよい。単層であっても、編み方や織り方により、厚さ方向における糸同士の重なり合いを設けることが可能であり、この厚さ方向の重なり合いに対して外力をかけることにより、当該糸同士における見かけ上の断面積を増加させ、又は、当該糸同士の間における空間容積を変動させることができる。
編物(ニット)は、基本的には一本の糸からなる布地であり、糸のループに、糸を次々と引っかけて、連続して形成された糸のループ(編み目)からなる布地である。織物のように、縦糸と横糸は用いない。一般的に、編物は織物よりも、糸における「糸の内部における見かけ上の断面積の増加」と糸同士における「糸同士の側面の重なり合いによる見かけ上の断面積の増加」、あるいは、「糸同士の間の空間容積の変動」を、同一の外力に対して容易に起こすことが可能である。
本発明において用いられる編物は、特に限定されず、機械編み(横編機、経編機、丸編機、トリコット編機、ラッシェル編機、ミラニーズ編機、ゴム編機、インタロック編機等による)、棒針編み、鉤針編み、アフガン編み等のいずれの編み方で作成されたものであってもよい。編みの組織も限定されず、例えば、平編、鹿の子編、ゴム編、パール編、タック編、移し編、方あぜ編、両あぜ編、両面編、振り編、ペレリン編、浮き編、パイル編、添え糸編、縄編、インターシア、ラップ編、ノンラン組織、鎖編、シングルトリコット編、シングルコード編、シングルアトラス編、二目編、シングルサテン編、シングルベルベット編、プレーントリコット編、ダブルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、逆ハーフ、クインズコード編、サテントリコット編、ダブルトリコット編、ベルベット編、シェル編、ノップ編、つづれ編、たて糸挿入編、マーキーゼット、落下板組織、ネット編、ミラニーズ編、たてよこ糸挿入編、よこ糸挿入編等が挙げられる。
織物は、縦糸に横糸を組み合わせて作られる布地である。本発明において用いられる織物の組織は特に限定されない。例えば、平織り、綾織り、朱子織り、の三原組織として用いることができる。さらに、三原組織を変化させ、又は、組み合わせた変化組織であってもよく、一重特別組織や紋織り組織であってもよい。さらに、経二重織物、緯二重織物、経緯二重織物、パイル織物、タオル織物、搦み織物等の多重の織物であってもよい。上記のように多重の織物は、厚さ方向における糸同士の重なり合いを設けることが可能であり、この厚さ方向の重なり合いに対して外力をかけることにより、当該糸同士における見かけ上の断面積を増加させ、又は、当該糸同士の間における空間容積を変動させることができる。
一般的に織物は、編物と比べると縦糸と横糸同士が引っ掛かり、糸同士が引っ張り合って布としての平面バランスをとっており、元々糸同士の接点が多い。従って、外力がかかることによる糸同士の新たな接触が、ほぼ織物自体の変形に依るものであり、構成糸の変形により新たな接触が生じる編物に比べると抑制される傾向があり、その分、外力によるみかけの糸断面積の増大や糸同士の間の空間容積の変動が、編物よりも抑制される傾向がある。
編み目ないし織り目は、力覚センサ素子として用いる部分は、均等であることが、外力に対して全面等しい感受性を得るために好ましいが、例えば、糸のほつれを防ぐために、必要に応じて閉じ編み(耳)を編物ないし織物において、外縁等に設けることも可能である。また、編み目ないし織り目は、外力に対して適切な感受性を得るために、頻度ないし大きさを調節することができる。編みや織りの隙間である編み目ないし織り目を大きくすると、構成糸同士の重なり合いによる見かけ上の断面積の単位面積当たりの増加や、糸同士の空間容積の変動は抑制される傾向となるが、力覚センサ素子として出力する単位面積当たりの電気特性値についての情報量を減ずることが可能であり、データ圧縮につなげることができる。逆に編み目を小さくすると、構成糸同士の重なり合いによる見かけ上の断面積の増加や、糸同士の空間容積の変動が促進される傾向になり、鋭敏性は得られるが電気特性値についての情報量が過多になり、多くのノイズが取り込まれてしまう可能性も生ずる。
編み目の大きさは、特に限定されないが、通常は、10cm幅で100−5目、100−5段(編み目の大きさで1mm2−4cm2)程度である。
織り目の大きさは、特に限定されないが、通常は、10cm幅で100−15目(織り目の大きさで1mm2−2.25cm2)程度である。
本発明において用いられる力覚センサ素子における編物又は織物の態様は、荷重刺激を与えることにより、PEDOT−pTSが付着している構成糸単位のみかけの断面積の形状弾性回復性を伴う変動を伴わせて、荷重刺激に応じた電気シグナルを鋭敏に発生させることが可能であり好ましい。さらに編物又は織物の態様は、力覚センサ素子に所定方向の荷重が加えられることにより、外力の大きさに応じて編物又は織物全体の形状が変化し、その中のPEDOT−pTSが付着している糸同士が新たに接触し、かつ、荷重をかけることを止めると、荷重刺激によって変化した場の形状が元に戻る形状弾性回復性により、荷重刺激に応じた電気シグナルを鋭敏に発生させることが可能であり好ましい。
(2)紙を含有する基材
ここで説明する「紙を含有する基材」は、上記の編物又は織物を構成する糸が「紙を含有する基材」である場合を含んでいるが、これに限定されるものではない。紙を含有する基材は、本発明が適用される基材として好適である。「編物又は織物」については、上述した通りである。
「紙を含有する基材」とは、「紙からなる基材」であってもよいし、「紙と紙以外の素材が混じり合っているもの」であってもよい。「紙と紙以外の素材が混じり合っているもの」とは、例えば、紙糸において撚糸によって組み合わされた構成繊維の中に、紙以外の繊維が存在する場合が挙げられ、巻き付け糸の素材が紙のカバーリング糸において、芯糸の素材が紙以外である場合も含まれる。また、基材が布地の場合において、上記紙糸のみで、又は、紙糸と他の種類の糸が組み合わさって、布地、すなわち、編物、織物等を構成する場合も「紙を含有する基材」として挙げられる。「紙を含有する基材」における紙の含有比率は、当該基材全体に対して紙が10質量%以上であり、100質量%であってもよい。特に、紙の存在を強調する場合には、同20質量%以上が好適である。
このように本発明に適用される「紙」は、植物繊維、さらに必要に応じてその他の繊維を膠着させて製造したものであり、その製造方法は公知であり、植物繊維を叩解等により得て水等に分散させてすき上げ、乾燥させて製造することが基本である。植物繊維としては、綿等の種毛繊維;亜麻、大麻、黄麻、コウゾ、ミツマタ、ガンピ等の靱皮繊維;トウヒ、モミ、マツ、カラマツ等の針葉樹繊維;ポプラ、カバ、ブナ、ヤナギ、ユーカリ、ニレ等の広葉樹繊維;アバカ(マニラ麻)等の葉繊維;稲わら、麦わら等の稲科繊維;その他、エスパルト、アシ、竹、笹、クマザサ等が挙げられる。その他の繊維としては、ナイロン等のポリアミド繊維、PET等のポリエステル繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリウレタン繊維、炭素繊維等が挙げられ、その繊維の性質に応じて紙の構成成分として加えられる。また、繊維以外の紙において通常含有されている成分、例えば、タルク、クレー、炭酸カルシウム、二酸化チタン等の填料、糊等も、一体として紙の成分として、本発明では定義する。上記の「紙とは別個に『紙を含有する基材』において質量計算される『紙以外の素材』」は、「一体として構成されている紙」に対して「外的に組み合わされている素材」であり、この「一体として構成されている紙の内部に含有される成分」とは異なる。このように、植物繊維を主体とする紙の構成は、PEDOT−pTSの付着に適している。
上記「紙」の中でも、和紙は、使用素材として優れた吸湿性を有しており、さらに構成繊維が長く繊維同士の絡まり状態が適度であるゆえ、PEDOT−pTSの定着性に優れている。「和紙」とは、実質的に靭皮繊維を構成繊維とする紙である。和紙は、本来、靱皮繊維(上記)を原料とし、ねり(植物粘液)を用いて手すき法によって作られた紙であるが、本発明においては機械すき法によって作られたものも、本発明の「和紙」に含める。また、靭皮繊維と植物性のねり以外の成分、例えば、ねりに代わる化学物質や、他の植物性成分、例えば、クマザサの繊維等が混合しているものも本発明の「和紙」に含める。
PEDOT−pTSを付着させる対象となる基材は、通常認められる、薄く平らな形態(シート状)の紙であってもよいが、糸(紙糸)であってもよい。また、PEDOT−pTSを付着させた紙糸を基とする布地であってもよい。
紙糸は、既に製造されたシート状の紙を細断してスリット化を行い、スリット化された紙の撚糸を行うことによって製造することができる。撚糸の際に、紙以外の繊維又は糸、例えば、絹、レーヨン、綿糸等と交撚することも可能であり、心材として他の種類の糸を用いることも可能であるが、少なくとも糸表面の全面又は一部に紙が露出していることが必要である。上撚糸(後述)は力覚センサ素子用として好適である。
紙糸の太さは特に限定されず、1μm−3mm程度の範囲で必要に応じて選択することができるが、通常は10μm−1mm程度である。
(3)上撚りされた糸又は仮撚糸
「PEDOT−pTSが付着している上撚りされた糸又は仮撚糸が、全部若しくは一部を構成する糸として用いられている編物又は織物」は、本発明が適用される基材として好適である。「編物又は織物」については、上述した通りである。
「上撚り」とは、撚糸における「下撚り」(単糸にかかっている撚り)に対応する概念であり、2本以上の単糸を撚り合わせて1本の糸にする場合の撚りのことをいう。本発明の上撚りの対象となる単糸の本数は特に限定されない。2本(双糸)、3本(三子糸)、4本(四子糸)、さらにそれ以上の本数の単糸を用いることができる。単糸における下撚りの有無は、特に限定されず、仮撚糸、押し込み加工糸、特許文献3の絹加工単糸等の加工糸を単糸として用いることも可能であり、「加撚−熱固定−解撚法による加工糸」や、特許文献4の絹加工糸も上撚糸である。上記特許文献3の技術は絹加工単糸に関するものであり、「生糸原糸に対し、含有セリシン残存率が40%以上に維持されるよう規制して柔軟処理を施し、100℃未満の温水に浸漬、または通常の精練、染色工程によって捲縮構造が発現されると共に、伸縮性のあるバルキ−糸となるまでの気乾状態においては集束性が維持されようにした潜在捲縮性生糸。」であり、本発明における上撚糸を構成する単糸として用いることができる。上記特許文献4の技術は、絹上撚加工糸の製造方法であり、「生糸を数本合糸し、精練加工でセリシン90%前後除去した後、加撚し、次いで熱水中で加熱膨張後冷却し、高温高圧によって形体を与え自然乾燥後、解撚し、飽和蒸気で加熱する方法。」であり、本発明における上撚糸として用いることができる。
また、上撚糸として、片撚糸、諸撚糸、駒撚糸、壁撚糸等を選択可能であり、特に限定されないが、一般的には片撚糸、諸撚糸、又は、駒撚糸が好ましい。片撚糸は、本発明では2本以上の単糸を引き揃えて右撚か左撚をかけてなる上撚糸である。諸撚糸は、片撚りのかかった単糸を2本以上引き揃えて、さらに片撚りと反対方向の撚りをかけてなる上撚糸である。駒撚糸は、片撚りのかかった単糸を2本以上引き揃えて、さらに片撚りと反対方向の撚りをかけてなる上撚糸である。これらの3種類の上撚糸は、互いの構成単糸同士が、引っ張り力により側面が接近して、所望する見かけ上の糸断面積を増大させることができる。
上撚りの撚り数は、撚り数10以上500T/m未満の甘撚であっても、500以上1000T/m未満の中撚であっても、1000以上2500T/m未満の強撚であっても、2500T/m以上の極強撚であってもよい。これらの上撚糸に関する条件を組み合わせて、例えば、伸縮性と弾性回復性(併せてストレッチ性ともいう)が付与された上撚糸とすることが、伝統的な技術を用いることで可能である。例えば、単糸2−3本を極強撚の下撚りを行って作成したチリメン糸に対して、Z撚りとS撚りの糸を2本から数本引き揃えて、これらを甘撚ないし中撚で上撚りをかけて、ストレッチ性の糸を作成することができる。
このようなストレッチ性が付与された糸を、PEDOT−pTSを付着させる編物又は織物の構成糸として用いることにより、力覚センサ素子に外力をかけることによる単糸同士の接触面積の変動をより起こしやすくすることが可能であることのみならず、計測値のヒステリシスを小さくすることが可能である。
本発明においては、ポリウレタン等のフィラメント糸を芯糸として、他の単糸を一重又は二重以上に巻き付ける「カバーリング」を上撚りとして含め、これが行われたカバーリング糸も「上撚糸」として含める。例えば、特許文献5の絹加工糸は、「絹糸のらせん状の複数層重ね巻きにより中空状に形成され、重ね合わせた各巻層の巻回方向が交互に逆方向に形成されている絹加工糸」(特許文献5:請求項1)であり、「重ね巻き(カバーリング)の外側の巻き」は上撚りの一態様である。当該絹加工糸は、ストレッチ性が付与されており、本発明において用いられる好適な上撚糸の一つである。この特許文献5の絹加工糸においては、当該糸の中に形成された中空部分が、引っ張り力により潰れることにより、見かけ上の糸断面積を増大させることができる。
仮撚糸は、仮撚加工糸、仮撚り、嵩高加工糸とも呼ばれるもので、一旦撚りをかけて、これを固定処理し、最後に撚りを解いて作成される加工糸で、糸に二次元的、三次元的な捲縮ひずみが生じているものをいう。絹の仮撚糸の態様として、例えば、特許文献6、7の絹加工糸が挙げられる。仮撚糸の製造方法の一つとして開示されている特許文献6の技術は、「生糸に、絹繊維のセリシンを不溶化させる改質剤を含浸させた後、加撚加工を行い、次いで撚りを固定する熱処理を温度120−140℃で10−30分行なった後、加撚と逆方向へ撚る解撚を行ない、次いで0.6−3.0g/lのタンパク質分解酵素に浸漬して精練し、絹糸に含まれるセリシンを取り除くことを特徴とする捲縮性を有する絹糸の製造方法。」であり、本発明に適用可能な仮撚糸の製造方法として用いることができる。また、特許文献7の技術も仮撚糸の製造方法であり、「生糸を本練して、セリシン80−90%除去後、樹脂加工を施し、糸をS方向もしくはZ方向に弱撚後、さらに同方向に加撚してから、圧蒸して、これを反対方向に撚戻して、無撚の状態よりさらに加撚し、糸を綛状にして不規則なストレッチ性を付与した後、飽和蒸気で加熱してセットしてから、綛状の糸を前加工程における撚方向と反対方向に撚戻して、再度綛状とし、飽和蒸気で蒸熱処理をする方法。」であり、本発明に適用可能な仮撚糸の製造方法として用いることができる。
化学繊維の仮撚糸については、例えば、非特許文献1に一般的な技術として開示されている。
上記のように、仮撚糸は、単糸であってもよく、当該単糸を構成単糸の全部又は一部とする上撚糸であってもよい。さらに芯糸を用いた壁撚糸様形態やカバーリング糸も、本発明における上撚糸として用いることが可能である。
「糸」の表面に露出している素材は、PEDOT−pTSを付着させることが可能であることが必要である。「表面に露出している」とは、例えば、糸の横断面内部を構成して糸の表面には露出しない部分、典型的には芯糸を除外する糸である。当該素材としては、絹繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、ポリエステル繊維、紙繊維等が例示できる。これらの繊維が単独で糸表面を構成してもよいし、複数種類の繊維が組み合わさって糸表面を構成してもよい。
さらに上記の「編物又は織物の一部を構成する糸として用いられている」とは、PEDOT−pTSが付着していない糸、あるいは、上撚糸又は仮撚糸以外のPEDOT−pTSが付着している糸が当該編物又は織物の他部において用いられている場合である。
(4)基材の形状
基材の形状は、荷重刺激を「点」ではなく、「面」で捉えることができることが、本発明の特徴の一つであるから、後述するように、少なくとも1単位1cm2以上のPEDOT−pTSが付着した部分が、荷重刺激の受容面として存在することが好適であり、この条件が満たされている限り、基材の全体形状は全く限定されない。編物又は織物が、積層された形態や、編物層又は織物層の他に、他の素材の層が積層された積層体も、本発明の基材の態様として含まれる。そして最も典型的な形状として、基材を展開させた形状が略二次元形状であり、PEDOT−pTSが当該二次元平面の少なくとも一方に付着している形態が例示される。略二次元形状とは、言い換えれば「薄く広がった形状」であり、シート状やフィルム状を含むものである。
<基材へのPEDOT−pTSの付着>
PEDOT−pTS(poly(3,4-ethylene-dioxythiophene)-p-toluenesulfonate)は、pTS(p-toluenesulfonate)とEDOT(3,4-ethylenedioxythiophene)を重合反応させて形成される導電性高分子であり、例えば、第1の付着方法として、酸化成分とpTSを含有する有機溶媒性溶液と、EDOTの混合液の、紙を含有する基材(主にはシート状の紙又は紙糸)への接触による付着を浸漬又は印刷等にて行い、その後に重合促進処理を当該接触箇所に施すことにより、PEDOT−pTSの付着を行うことができる(特許文献1に開示された方法又はその変法)。第2の付着方法として、(a)酸化成分とpTSとを含むpTS溶液を、紙を含有する基材(主にはシート状の紙又は紙糸)に付着させる付着工程、(b)付着工程(a)において酸化成分とpTSを付着させた上記基材に、さらにEDOTを付着させて、これらにおいてPEDOT−pTSを生成する重合反応を進行させることにより、PEDOT−pTSの付着を行うことができる(第2の付着方法:特許文献2に開示された方法)。第1の付着方法、第2の付着方法共に、紙を含有する基材、絹、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維等のポリエステル繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、ポリウレタン繊維等に対しても用いることができる。また、絹の構成成分であるセリシンが被覆されたもの(特開2003−171874号公報)にも用いることができる。
(1)PEDOT−pTSの第1の付着方法
第1の付着方法において、pTS溶液とEDOTを混合することにより、EDOTの重合反応がpTS−EDOT混合液中において進行し、高分子ポリマーであるPEDOT−pTSが形成される。この重合反応は、下記式に従い、温度上昇に従って重合速度は大きくなり、冷蔵庫レベルの低温で保存すれば重合速度を低下させて、付着工程の時間確保に資することができる。酸化成分としてFe3+が例示されているが、これに限定されるものではない。
Figure 2021096094
第1の付着方法において「その後に」とは、pTS−EDOT混合液が基材に接触するタイミングに関連させた「同時以後」のタイミングで重合促進処理を行うことを意味する。具体的には、両タイミングは事実上同時であっても良く、pTS−EDOT混合液が基材に接触するタイミングからタイムラグを設けて、重合促進処理を行っても良い。また、例えば基材において重合促進処理を行う状態を継続的に保ちつつ、その上にpTS−EDOT混合液の接触を行い、当該タイムラグを実質的に設けない態様も、第1の付着方法における「その後」に含まれる。第1の付着方法におけるpTS溶液とEDOTの混合比は、容積比でpTS溶液:EDOT=10:1−100:1、好適には20:1−40:1である。
pTSは、パラトルエンスルホン酸化合物(パラトルエンスルホン酸(トシル酸)との塩やエステル)として知られており、市販もなされている。pTS溶液の溶媒となり得る有機溶媒は、pTSと酸化成分等を溶解することが可能であり、かつ、好適には水性溶媒との相溶性が良好であるものである。具体的には、炭素原子数が1−6の1価の低級アルコール、具体的には、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、又は、ヘキサノールが挙げられる。これらの1価の低級アルコールを構成する炭素原子の骨格は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、1種のみならず2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、適宜水で希釈して用いてもよい。これらの中で、炭素原子数が1−4の1価の低級アルコール、具体的には、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、又は、ブタノール、がpTS溶液の有機溶媒として好適である。
pTS溶液中に含有させる酸化成分は、pTS−EDOT混合液におけるPEDOT−pTSへの重合反応を活性化することが可能である限り特に限定されず、遷移元素、ハロゲン等が例示される。
遷移元素としては、鉄、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛等の第一遷移元素;モリブデン、銀、ジルコニウム、カドミウム等の第二遷移元素;セリウム、白金、金等の第三遷移元素が例示される。これらの遷移元素は、金属単体としても、金属塩として用いてもよい。これらの中でも、鉄、亜鉛等の第一遷移元素を用いることが好適である。
pTS溶液中の酸化成分の含有量は、用いる酸化成分の種類によっても異なり、上記の重合反応を活性化できる量であれば特に限定されない。例えば、第二鉄イオン(Fe3+)であれば、塩化第二鉄として、当該溶液に対して1−10質量%であることが好適であり、特に好適には3−7質量%である。この含有量が多すぎると重合反応の進行は速いが、後工程での鉄の除去が困難になり、少ないと重合反応の進行が遅くなる。
pTS溶液中のドーパントとして働くpTSの含有量は、当該溶液に対して0.1−10質量%が好適であり、さらに好適には0.15−7質量%、特に好適には1−6質量%、最も好適には2−5質量%である。
EDOTは、3,4−エチレンジオキシチオフェンとして公知であり、市販もなされている。EDOTは、常温で液体で、かつ、水溶性であり、適宜水等の水性溶媒に希釈して用いることも可能である。
pTS溶液に、pTS−EDOT混合液の紙を含有する基材への付着性と、出来上がった導電性材における導電性能を実質的に損なわない等、本発明の効果を量的又は質的に損なわない限り、他の成分を必要に応じて配合することができる。
当該他の成分としては、例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール−ポリプレングリコールポリマー、エチレングリコール、ソルビトール、スフィンゴシン、及び、フォスファチジルコリン、好ましくはグリセロール、ポリエチレングリコール−ポリプレングリコールポリマー、及び、ソルビトール、からなる1種又は2種以上が挙げられる。
その他、第4級アルキルアンモニウム塩、ハロゲン化アルキルピリジニウム等のカチオン性界面活性剤;アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、脂肪酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤;キトサン、キチン、グルコース、アミノグリカン等の天然多糖類;糖アルコール、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
室温において、pTS−EDOT混合液では上記重合反応による液のゲル化が進行する。そのために、基材に付着した余分なゲル化ポリマーを除去する工程を、当該混合液との接触後に行うことが好ましい。例えば、当該混合液から分離した基材を、振動、送風、ローラーとの接触等の物理的な手段により除くことができる。重合反応を行った後に、この余分なゲル化ポリマーの除去工程を行わない場合は、当該混合液の調製後、基材と混合液との接触を短時間で行うこと、及び、混合液の調製後短時間で当該接触を行うべきとの制約が生じる。具体的には、pTS−EDOT混合液の調製後5分以内、さらに好ましくは1分以内に上記接触による付着を完了すべきである。上記の余分なゲル化ポリマーの除去工程を行う場合には、室温下であってもこの接触による付着工程の時間的な制約は事実上認められず、pTS−EDOT混合液の調製後、好適には10分以上、さらに好適には15分以上の付着工程時間を取って、基材に対するPEDOT−pTSの付着を十分なものとすることが可能である。40分以上の付着工程の時間を取っても、ゲル化の進行により、長時間の工程に見合った付着促進効果は認められない。
第1の付着方法における接触による付着は、滴下、噴霧、浸漬、転写、又は、塗布により行われることが好適である。
第1の付着方法における重合促進処理としては加熱処理が挙げられる。当該加熱処理としては、(α)重合促進部分における50−90℃の放熱体との接触、(β)重合促進部分が50−90℃になるように設定された熱風との接触、(γ)恒温槽等における50−90℃の加熱雰囲気との接触等が挙げられる。
上記(α)の50−90℃の放熱体の接触は、3−10分間の加熱時間が好適であり、特に好適には3−6分間であり、最も好適には4−6分間である。
上記(β)の重合促進部分が50−90℃になるように設定された熱風との接触である場合は、3−10分が好適であり、特に好適には4−6分である。
上記(γ)の50−90℃になるように設定された加熱雰囲気である場合は、3−10分が好適であり、特に好適には4−6分である。
上記加熱処理の後、溶液から基材を取り出し、好ましくは水、さらに好適には蒸留水または脱イオン水で洗浄した後、恒温槽、熱風若しくは温風、天日等により乾燥させる。
(2)PEDOT−pTSの第2の付着方法
第2の付着方法では、まず、有機溶媒性溶液に、酸化成分と、ドーパントとしてのpTSとを溶かし、その有機溶媒性溶液(pTS溶液)に紙を含有する基材を浸漬する。
pTSの溶媒となり得る有機溶媒と、これに含有させる酸化成分は、上述した「第1の付着方法のpTS溶液の有機溶媒と酸化成分」と同一である。また、当該pTS溶液に含有させることができる「他の成分」も、上述した「第1の付着方法のpTS溶液における他の成分」と同一である。
pTS溶液中の酸化成分の含有量は、用いる酸化成分の種類によっても異なり、上記の重合反応を活性化できる量であれば、特に限定されない。例えば、第二鉄イオン(Fe3+)であれば、塩化第二鉄として、pTS溶液に対して1−10質量%が好適であり、さらに好適には3−7質量%である。この含有量が多すぎると重合反応の進行は速いが、後工程での鉄の除去が困難になり、少なすぎると重合反応の進行が遅くなる。
pTS溶液中のドーパントとして働くpTSの含有量は、当該溶液に対して0.1−10質量%が好適であり、さらに好適には0.15−7質量%、特に好適には1−6質量%、最も好適には2−5質量%である。
第2の付着方法では、次に、上記の基材が浸漬されているPTS溶液に、モノマーのEDOTを添加した後、50−100℃で、好ましくは10分−60分間、さらに好ましくは50−80℃、10−40分間、極めて好ましくは60−80℃、10−30分間の加熱を行う。加熱後、溶液から基材を取り出し、好ましくは水、さらに好適には蒸留水または脱イオン水で洗浄した後、恒温槽、熱風若しくは温風、天日等により乾燥させる。
この工程におけるpTS溶液とEDOTの使用量比は、容積比でpTS溶液:EDOT=10:1−100:1、好適には20:1−40:1である。
<力覚素子の基礎的性能の確認>
(1)力覚センサ素子の製造例
導電性材の基材として、左右各々2800T/mで撚った21デニールの絹糸2本を一組とするちりめん糸2組に対し、外側にカバーリング糸を巻き付けることで作製した絹糸(温度22℃・湿度50%で伸縮率50%以上)を、平編(10cm幅で100目、100段、糸の太さは0.5mm程度)した布地(60cm×60cm)を株式会社東北撚糸より入手した(材料布1)。
他方、太さ240デニール(22番手)の和紙糸(上撚りが甘撚の双糸:温度22℃・湿度50%で伸縮率16%)を用いて鹿の子編み(10cm幅で50目、50段)にした伸縮性を有する市販の布地(30cm×30cm)を入手した(材料布2)。
上記材料布1、2に対し、pTS溶液としては、遷移金属の鉄(III)イオンとpTSとを含むブタノール溶液(Heraeus社製CLEVIOS C-B 40 V2:p−トルエンスルホン酸鉄(III)として、約4質量%である:「CLEVIOS」は登録商標)を用いた。EDOTとしては、EDOTの水溶液(Heraeus社製CLEVIOS MV2、EDOT約98.5質量%である:「CLEVIOS」は登録商標)を用いた。
上記のpTS溶液にEDOTを混合した混合液を調製して4℃程度に冷やし、上記基材を当該混合液に室温下で20分間浸漬した。その後、浸漬基材を当該混合液から取り出し、その一辺の2点をクリップで挟んで懸垂し、扇風機の風(強風)に5−10分間晒して基材を風で振動させつつ、乾燥を行い、さらにローラーでこすって、これらの工程により基材に付着した余分なゲル化ポリマーを除去した。
次に、70℃の恒温槽に、このゲル化ポリマーの除去を行った基材を入れて、5分間加熱を行い、PEDOT−pTSへの重合を行なった。次いで、当該重合基材に対して2回水洗いを繰り返し、次いで90℃で乾燥を行い、2種類の「PEDOT−pTSが付着した編物」(この製造例で、材料布1に対し付着基材1、材料布2に対し付着基材2ともいう)を得た。
(2)力覚センサ素子の試験例1
付着基材1(絹糸の編物)の力覚センサ素子を用いた平面方向加重に対する電気抵抗値変化の検討を行った。
7cm×7cmに裁断した上記付着基材1を、3.3Vの直流電源と電気的に接続して水平方向に設置した後、クリップにて生地の両端を挟んだ。クリップは片側が固定されており、固定されていない側のクリップに対し、0−30gの範囲内で分銅おもりを負荷することで水平方向(X方向)の変位をノギスで測定し、さらに両端クリップ間(下記試験例2の「A−B間」)の抵抗値を計測した(図1(1))。また、Z方向(鉛直方向)については、クリップ両端を固定し、生地を水平方向(X−Y方向)へ張った状態でその中央(下記試験例2の「Y」の位置)に0−20gの範囲内で分銅おもりを負荷することで垂直方向の変位をノギスで測定し、さらに電気抵抗値を計測した(図1(2)(3))。
図2((1)−(6))に示したように、荷重に対し伸縮することにより付着基材1の電気抵抗値が静止時に比べ、荷重の大きさ、伸縮程度の大きさに比例して低減変化した。
(3)力覚センサ素子の試験例2
付着基材2(紙糸の編物)を力覚センサ素子として用いた荷重試験
(a)上記付着基材2を、力覚センサ素子として用いて、下記の荷重試験を行った。
荷重300gの円筒形プラスティック(直径3cm)を、図3(図3(1)は、試験系の写真、(2)は、その略図)に示すように、3.3Vの直流電源と電気的に接続して付着基材平面上に3ヶ所(X,Y,Z)のいずれか1カ所に置いた。また、A−Hは、端子を設置する場所を示している。本試験例で使用した布地の編み目には方向性が有り、図3(1)(2)の横方向(図3(2)中、左右の矢印)の方が、上下方向(図3(2)中、上下の矢印)よりも、伸展性が大きい。荷重を置かない状態での、伸展性の大きな左右方向(左端から右端)の電気抵抗値は11kΩ程度であり、伸展性の小さな上下方向(上端から下端)の電気抵抗値は8kΩであった。電気抵抗値を計測するための端子間の距離が同じであっても、編み目の方向性によって電気抵抗値が異なることが分かった。編み目は、伸展の方向により変形する(図4)。図4では、図3の付着基材が置かれた方向に合わせた編み目の拡大略図であり、図4の下は、図3(2)の左右の矢印方向に伸展させた場合の編み目の変形を示している。
表1は、A−B、E−G、A−C、F−H、A−Dの組で、端子を設置し、X、Y、Zのいずれかに上記加重を置いた場合における抵抗値測定の結果を示す。
表1の結果により、計測する電極の位置の組合せと、加重の位置の組合せによって、電気抵抗値の変化率(減少率)がいくつかの傾向を示すことが分かった。例えば、A−B間の抵抗値の変化率の違いから、加重が、X、Y、Zのどの位置にあるかを検知することが可能であることが明らかになった。
Figure 2021096094
(b)上記付着基材2を、力覚センサ素子として、鉛直方向(Z方向)荷重の変化に対する電気抵抗値の減少変化量を検討した。
この試験は、上記試験例1において、付着基材1を付着基材2に代えた試験系で行った。
すなわち、7cm×7cmに裁断した付着基材2を水平方向に設置した後、クリップにて生地の両端を挟んだ。生地を水平方向(X−Y方向)へ張った状態で、その中央(上記(I)の「Y」の位置)に、10g、20g、50gの分銅おもりを、それぞれ負荷することで、鉛直方向(Z方向)の変位を与える分銅による荷重負荷量に対する両端クリップ間(上記(I)の「A−B間」)の抵抗値を、0g負荷の場合を含め計測した。その結果、0g荷重は32.7kΩ、10g荷重は20.0kΩ、20g荷重は18.5kΩ、30g加重は16.1kΩであった。
これら4点の電気抵抗値において、0g加重の電気抵抗値である「32.7kΩ」から、それぞれの加重の電気抵抗値を減じた差分の絶対値を、上記「32.7kΩ」で除して電気抵抗値の低減割合を百分率(%)とした値(縦軸)と、加重負荷量の対数値(log10)(横軸)の関係を示したグラフが図5である。
図5により、両者の値は正の相関の関係にあることが明らかになった。
これらの試験例により、下記力覚表面において用いられる力覚素子の荷重刺激に対するセンサ素子としての有用性が確認された。
上記の事項を前提として、本発明を説明する。
[1] 本発明の力覚表面
本発明は、第1に、基材の全部又は一部に、PEDOT−pTS(poly(3,4-ethylene-dioxythiophene)-p-toluenesulfonate)が付着している導電性材であって、上記基材の全部又は一部に対する荷重刺激に応じた電気シグナルを上記導電性材から発信する力覚素子が1チャンネル単位以上備えられている、力覚表面(以下、「本発明の力覚表面」ともいう)を提供する。
上記導電性材(力覚センサ素子)におけるPEDOT−pTSの付着箇所は、荷重主体による荷重刺激が伝達する場所であれば特に限定されず、基材の表面は勿論のこと、基材の内部も含まれる。
本発明の力覚表面は、荷重主体からの荷重刺激が与えられ、その荷重刺激を検出・推定する対象であれば特に限定されないが、好適例として、座面又は横臥面としての用途が挙げられる。そしてこれらの場合には、上記導電性材の外側に荷重伝搬材が備えられていることが好適である。上記「外側」は、荷重主体との接触が行われる側が少なくとも含まれていることが好ましく、当該側は通常「上側」である。
本発明の力覚表面には「力覚素子」が用いられている。「力覚素子」とは、感圧素子の上位概念の素子であり、素子にかかった外力の大きさと変動を、電気特性値として検知する素子である。用いられる力覚素子は力覚センサ素子となる導電性材が面状部分(荷重刺激を受ける部分:好適にはPEDOT−pTSが当該面上又は当該面の内部に付着している)を有しており、下記荷重刺激を「点」ではなく、「面」で捉えることができる。当該「面」の広さは、具体的な用途に応じて選択することが可能であるが、1cm2以上であることが実用的である。当該力覚素子の数としての「チャンネル単位」は、単一の電気シグナルを発信するチャンネルの数であり、用いられる力覚センサ素子の数と一致する。チャンネル単位数は、具体的な態様に応じて定めることができる。荷重主体との接触面積が広さくなり、当該源の動きが多様になると、好適なチャンネル数は多くなる傾向にある。
「荷重刺激」は、体重の重み等がかかることによる押圧力又は引っ張り力による刺激であることが典型的である。「電気シグナル」は、所定の電気特性値に基づく経時的なシグナルの強弱であり、当該「電気特性値」としては、電圧値、電流値(直流、交流のいずれも含む)、電気抵抗値(インピーダンス値を含む)、あるいは静電容量値等が挙げられ、本発明では電気抵抗値又は静電容量値を用いることが好適である。
「荷重伝搬材」とは、荷重主体からの荷重刺激を力覚センサ素子に伝搬する材である。本発明の力覚表面は、例えば、椅子やクッションの座面や、マットレスや敷布団の横臥面等の具体的な製品の一部として用いられるので、力覚センサ素子と荷重主体は、荷重伝搬材を介しての間接的な接触によって荷重主体による荷重刺激が力覚センサ素子に伝えられる。従って、荷重伝搬材は、例えば、本発明の力覚表面が椅子に適用されるのであれば、椅子の座面のカバー材であり、クッションに適用されるのであればクッションのカバー材等が例示される。マットレスや布団に適用されるのであれば、シーツ、マットレスや布団の側生地等が例示されるが、これらの典型的な例に限定されるものではない。素材は、荷重刺激を力覚センサ素子に伝達可能であれば特に限定されず、その限りにおいて、布類、皮革類、ビニール類等が例示される。
また、荷重伝搬材は、力覚センサ素子自体を覆うものであってもよい。
さらに、荷重伝搬材を用いない態様も存在する。この態様は、用時に座面や横臥面等に力覚表面を設置する態様の本発明のセンシングシステムにおける力覚表面として用いることが好適な態様である。
本発明の力覚表面には、用いられている力覚素子が、PEDOT−pTSが付着している導電性材(力覚センサ素子)と電気的に接続された電圧印加部及び信号変換部を付加することができる。当該信号変換部は、上記電圧印加部において印加された電圧の上記導電性材が電気的に介在したことによる変化、に基づいて所定の電気シグナルを生成させる手段である。PEDOT−pTSが付着している導電性材、並びに、上記電圧印加部及び/又は上記信号変換部は、一体として力覚素子を構成し得るが、着脱可能なセットとして用いることができる。上記電圧印加部は、商用電源や家庭用電源等の外部電源(主に交流電源)とのコネクタであっても、電池等の直流電源を備えていてもよい。また、上記力覚素子は、必要に応じて、整流器、コイル、トランジスタ、ダイオード、コンデンサ、抵抗端子等の電気回路、電子回路、デジタル回路等に通常用いられる設備が設けられていても良い。
本発明の力覚表面における電気特性値の変動は、上記のように力覚センサ素子に加えられる荷重刺激に相関して生ずる電圧変化に基づくものである。そのまま電圧変化を、所定の電気シグナルとして用いる場合にも、信号変換部には、例えば、信号を増幅するための演算増幅器(オペアンプ)や、逆に過大な信号を和らげるための分圧回路等が備わっていてもよい。所定の電気シグナルが電気抵抗の変化である場合は、これに加えて例えば、ホイートストンブリッジ回路が信号変換部に備えられ、負荷抵抗の両端部の電圧値の変化により、力覚センサ素子における電気抵抗値を正確に検出することができる。所定の電気シグナルが電流値の変化である場合は、信号変換部に、電流値を電圧値に変換して処理するための分流回路等が備わっていてもよく、電流値を電圧値に変換して検出することができる。静電容量の変化やインダクタンスの変化が電気信号の場合には、信号変換部において、例えば、発振回路を用いて周波数に変換した後、F/V変換により電圧値に変換することができる。
[2] 本発明のセンシングシステム
本発明は第2に、本発明の力覚表面、及び、データ抽出手段が備わっている、荷重刺激のセンシングシステムであって、上記データ抽出手段において上記力覚表面から得た電気シグナルのデータから、加重刺激の経時的変化に関連付けられた力覚素子のチャンネル単位毎の荷重刺激の大きさがコンピュータにおいて抽出される、センシングシステム(以下、「本発明のセンシングシステム」ともいう)を提供する。上記データ抽出手段は、提供された電気シグナルのデータから、力覚素子のチャンネル単位毎の荷重刺激の大きさをコンピュータにおいて抽出するアルゴリズムをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムである。
本発明のセンシングシステムも、力覚表面を、座面又は横臥面として用いる態様が好適例として挙げられる。
本発明のセンシングシステムにおいては、特定の目的に即したコンピュータにおける推測手段を付加することができる。
例えば、力覚表面が座面の場合には、上記センシングシステムにおいて得た力覚素子のチャンネル単位毎の荷重刺激の大きさに関連付けられた、着座時の骨盤の状態又は着座姿勢のコンピュータにおける推測手段がさらに設けられていてもよい。当該推測手段は、提供された力覚素子のチャンネル単位毎の荷重刺激の大きさを、着座時の骨盤の状態又は着座姿勢に関連付けて、当該状態や姿勢を推測するアルゴリズムをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムである。
力覚表面が横臥面の場合には、上記センシングシステムにおいて得た力覚素子のチャンネル単位毎の荷重刺激の大きさに関連付けられた、横臥姿勢のコンピュータにおける推測手段がさらに設けられていてもよい。当該推測手段は、提供された力覚素子のチャンネル単位毎の荷重刺激の大きさを、横臥姿勢に関連付けて、当該姿勢を推測するアルゴリズムをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムである。
本発明のセンシングシステムは、上述した力覚表面を含んでおり、具体的な形態によっては、力覚表面の要素とそれ以外のセンシングシステムの要素を一見して分けることが困難な場合がある。例えば、本発明の力覚表面に付加され得る信号変換部と、本発明のセンシングシステムに付加され得るデータ抽出手段及び推測手段が、同一のコンピュータに格納されている場合もある。このような場合は、本発明の力覚表面を不可分の形で含んだセンシングシステムとして本発明のセンシングシステムが規定され、本発明の範囲に含まれる。
[3] 本発明のAIモデル
本発明は第3に、座面である力覚表面を用いるセンシングシステムにより得た、(1)着座時の骨盤の状態又は着座姿勢を規定するデータと、(2)電気シグナルのデータの組合せ、を訓練データとするコンピュータにおける教師あり学習により導出される、座面である力覚表面上における着座時の骨盤の状態又は着座姿勢を推測するための学習済みモデル(以下、「本発明の着座AIモデル」ともいう);
並びに、横臥面である力覚表面を用いるセンシングシステムにより得た、(1)横臥姿勢を規定するデータと、(2)電気シグナルのデータの組合せ、を訓練データとするコンピュータにおける教師あり学習により導出される、横臥面である力覚表面上における横臥姿勢を推測するための学習済みモデル(以下、「本発明の横臥AIモデル」ともいう)を提供する。
[4] 本発明のAIシステム
本発明は第4に、本発明の座面AIモデルに対し、座面である力覚表面から得た電気シグナルのデータが適用されて、着座時の骨盤の状態又は着座姿勢がコンピュータにおいて推測される、推測システム(以下、「本発明の着座AIシステム」ともいう);
並びに、本発明の横臥AIモデルに対し、横臥面である力覚表面から得た電気シグナルのデータが適用されて、横臥姿勢が推測コンピュータにおいて推測される、推測システム(以下、「本発明の横臥AIシステム」ともいう)を提供する。
[5] 本発明の訓練データの生産方法
本発明は第5に、座面である力覚表面から得た電気シグナルのデータから、加重刺激の経時的変化に関連付けられた力覚素子のチャンネル単位毎の荷重刺激の大きさがコンピュータにおいて抽出され、これに関連付けて着座時の骨盤の状態又は着座姿勢がコンピュータにおいて推定され、この推定された着座時の骨盤の状態又は着座姿勢を規定するデータと、これらに対応する上記電気シグナルのデータの組合せ、を上記力覚表面から別個に得た電気シグナルのデータから、着座時の骨盤の状態又は着座姿勢を推測する学習済みモデルを生成するための訓練データとする、訓練データの生産方法(以下、「本発明の座面訓練データの生産方法」ともいう);
並びに、横臥面である力覚表面から得た電気シグナルのデータから、加重刺激の経時的変化に関連付けられた力覚素子のチャンネル単位毎の荷重刺激の大きさがコンピュータにおいて抽出され、これに関連付けて横臥姿勢がコンピュータにおいて推測され、この推測された横臥姿勢を規定するデータと、これらに対応する上記電気シグナルのデータの組合せ、を上記力覚表面から別個に得た電気シグナルのデータから、横臥姿勢を推測する学習済みモデルを生成するための訓練データとして生産する、訓練データの生産方法(以下、「本発明の横臥面訓練データの生産方法」ともいう)を提供する。
本発明により、PEDOT−pTSが付着している導電性材を力覚センサ素子として用いる力覚表面と、これを備える荷重刺激のセンシングシステムが提供される。当該表面は、例えば、椅子やクッション等の座面又はマットレスや敷布団等の横臥面等として用いることが可能である。本発明のセンシングシステムは、荷重刺激を与える対象の動きを面単位で捉えて、着座姿勢や横臥姿勢を的確に把握することが可能である。
また本発明により、上記センシングシステムの実行に必要な処理をコンピュータに行わせるためのコンピュータプログラムが提供される。
さらに本発明により、上記の本発明のセンシングシステムにより得られるデータを用いて機械学習を行うことにより得られる訓練データとその生産方法、当該訓練データを適用する荷重刺激の推定システムが提供される。
試験例1の試験系を示した図面であり、(1)はX方向荷重の測定系を示し、(2)と(3)はZ方向荷重の測定系を示している。 試験例1の計測結果を示した図面であり、(1)−(3)はX方向荷重の計測結果を示し、(4)−(6)はZ方向荷重の計測結果を示している。 試験例2の試験系を示した図面であり、(1)は実写ベース、(2)は模式図である。 荷重による編み目の伸縮を模式化して示した図面である。 試験例2(II)の試験結果を用いた、加重(対数スケール)と電気抵抗値の低減割合の関係を示した図面である。 (1)クッションの座面を用いた本発明の力覚表面と、(2)パネルの椅子の上での様々な動きを模式化して示している。 図6(1)のクッションの中の力覚センサ素子の配置の一例を示した図面である。 図6(1)と図7の内容を取り込んで、本発明のセンシングシステムの一例の概略を示した図面である。 力覚素子のチャンネル単位のそれぞれにおいて生じた、電圧の経時的変化を直接的に反映する電気信号が、信号変換部により電気抵抗値の経時的変化を示す電気シグナルに変換処理された結果の一例を示した図面である。 骨盤の状態又は着座姿勢の推定と評価の方式の一例を示した図面である。 本発明の力覚表面を横臥面に適用した本発明のセンシングシステムの概略を示した図面である。
本発明の力覚表面ないしセンシングシステムの代表的な適用形態として、「座面」と「横臥面」が挙げられる。
[座面への適用形態]
(1)本発明のセンシングシステム(座面)
「座面」とは、「座るための表面」であり、例えば、椅子の座面、クッションの座面等のあらゆる座面が挙げられ、特に限定されるものではない。ヒトが座面に腰掛ける場合、座面と臀部が接触するが、その場合完全に体のバランスが取れているヒトは稀であり、多くの場合いずれかの方向に着座バランスが偏っている。そしてこのような着座バランスの偏りは自らが気付くことは難しいし、どのように偏っているのかを把握することは極めて困難である。本人が気付かないうちに、骨盤の左右のバランスの不均衡や捩れが癖になってしまい、その癖によって新たな病の原因になることも考えられる。また、着座姿勢が悪ければ、疲れやすく作業効率も悪くなり、見た目も美しくない。従って、着座バランスの乱れを正しく指摘して、着座姿勢を骨盤レベルで矯正して、姿勢を美しくするための情報を提供することが非常に重要である。
上述した本発明のセンシングシステムに「座面」を当て嵌めると、「座面としての本発明の力覚表面、及び、データ抽出手段が備わっている、荷重刺激のセンシングシステムであって、上記データ抽出手段において上記力覚表面から得た電気シグナルのデータから、加重刺激の経時的変化に関連付けられた力覚素子のチャンネル単位毎の荷重刺激の大きさがコンピュータにおいて抽出される、センシングシステム。」として規定される。
以下の説明において、図6(1)では、クッションの座面を用いた本発明の力覚表面の概観を示しており、図6(2)ではパネルの椅子の上での様々な動きを模式化して示している。図7では、図6(1)のクッションの中の力覚センサ素子の配置の一例を示している。図8では、図6(1)と図7の内容を取り込んで、本発明のセンシングシステムの一例の概略を示している。図9では、力覚素子のチャンネル単位のそれぞれにおいて生じた、電圧の経時的変化を直接的に反映する電気信号が、信号変換部により電気抵抗値の経時的変化を示す電気シグナルに変換処理された結果の一例を示している。図10では、骨盤の状態又は着座姿勢の推定と評価の方式の一例を示している。
「座面としての本発明の力覚表面」は、例えば、図6(1)のような形態である。図6(1)において、木製の椅子11の座面の上に、クッション(座布団)12が載置されており、クッション12の中には、図7の配置、すなわち、基材にPEDOT−pTSが付着している導電性材121(121−1、−2、−3、−4)は、4チャンネル単位であって、それぞれ略5−20cm×5−20cmの2次元方形であって、着座時の臀部の前方左右と後方左右の押圧力がそれぞれかかる位置に1チャンネル単位ずつ配置されている。それぞれのチャンネル単位には、導電性材121と電気的に接続された通電路が2本(1211・1212;1213・1214;1215・1216;1217・1218)設けられている。それぞれの組の通電路の一方はそれぞれ印加電源(図示せず)に接続されており、他方はそれぞれ無線モジュール13(図8)に接続されている。この4チャンネル単位の導電性材の例は、力覚表面が座面で、骨盤の前後左右の傾きを検出することを目的とする場合の典型的な形態であるが、当該チャンネル単位数が4に限定されるものではない。また導電性材121の形状は方形に限定されるものではなく、円形、楕円形、三角形、五角形、六角形等であってもよい。さらに細かい骨盤の動きを把握することを目的とする場合には、より多くのチャンネル単位数(好適には10チャンネル単位まで、さらに好適には6チャンネル単位程度まで)として、各々を小さなサイズの導電性材とすることが好適であり、それほど細かな動きを把握する必要が無い場合、例えば、座面における着座状態の有無や大雑把な姿勢の傾きを把握することを目的とする場合には1−3チャンネル単位、好適には2−3チャンネル単位とすることも可能である。このチャンネル単位数が少ない場合の導電性材のサイズは、具体的な目的によって選択することが可能である。着座状態の有無のみを把握する場合には、チャンネル単位数が少なく、かつ小サイズの導電性材も許容され、例えば1−5cm×1−5cm程度のサイズの導電性材であってもよい。このように本発明の力覚表面を座面として用いる場合には、その目的に応じて、力覚素子を好適には1−10チャンネル単位、さらに好適には2−6チャンネル単位の範囲で用いることが可能である。
無線モジュール13は、好適には信号変換部を備えており、それぞれの導電性材を含むチャンネル単位における、着座姿勢の動き(図6(2))に応じた荷重刺激の強さに応じた電圧の経時的変化を示す電気シグナルが、所望の電気特性値、例えば、電圧値、電流値(直流、交流のいずれも含む)、電気抵抗値(インピーダンス値を含む)、あるいは静電容量値等に、必要に応じて変換されて、当該電気特性値のデータがコンピュータ14(図8)へ、直接的又は間接的に転送される。ここで「間接的データ転送」としては、例えば、無線アダプター15付きのデータのストレージ手段16(図8)を介した、コンピュータ14へのデータ転送が挙げられる。図9は、力覚素子のチャンネル単位のそれぞれにおいて生じた、電圧の経時的変化を直接的に反映する電気信号が、信号変換部により電気抵抗値の経時的変化を示す電気シグナルに変換処理された結果を示している。当該電気信号はアナログ信号であっても、デジタル信号であってもよいが、少なくともコンピュータ14のデータ抽出手段によって処理される段階ではデジタル信号に変換されていることが必要である。元々導電性材121(−1、−2、−3、−4)において直接的に生成する電気シグナルはアナログ信号であり、コンピュータ14におけるデータ抽出手段による処理の前段階で、整流器(A/D変換器)の処理により、デジタル信号に変換される。当該アナログ信号又はデジタル信号は、必要に応じて、上記データ抽出手段による処理の前に、所定のデータの切り取り、レート変換、重ね合わせ等の前処理が施されていてもよい。
また、コンピュータ14は、無線モジュール13からインターネット回線18を介して遠隔された集中処理用のストレージコンピュータ(いわゆるクラウド)であるが、必ずこの形態である必要は無い。例えば、有線接続又は無線接続されたパーソナルコンピュータ(マイクロコンピュータ(マイコン)を含む)であってもよい。
被処理用のデジタルデータは、コンピュータ14の記憶部に保存された「コンピュータをデータ抽出手段として働かせるためのコンピュータプログラム」に従ったデータ抽出処理が、コンピュータ14のCPU、GPU等の働きで行われる。具体的には、ヒストグラム処理等の統計処理、FFT処理、分解能向上演算、加算平均と連続平均処理等を用いて、力覚素子のチャンネル単位毎の荷重刺激の大きさが算出されて生成する。
一例として、ヒストグラム処理を例示する。ヒストグラム処理は、経時的に連続して変動する電気シグナル値に紐付けられた荷重の大きさのばらつき具合を、荷重の所定幅毎の頻度として示す演算を実行させるアルゴリズムである。このヒストグラム処理により得られた、力覚素子のチャンネル単位毎の荷重の大きさに依存した頻度パラメーターを含むデータを、当該チャンネル単位にかかった荷重の大きさを評価するためのアルゴリズムによる処理がコンピュータにおいて行われる。当該評価の方式は特に限定されず、例えば、所定の着座時間内において最も頻度が高い荷重の大きさを、対応する力覚素子のチャンネル単位の荷重の大きさとみなす方式が挙げられる。この場合異なる荷重で同じ頻度パラメーターが認められる場合には、その次に高い頻度の荷重の大きさと最も近い上記最頻の荷重を当該チャンネル単位の荷重の大きさとみなすように処理する方式を加味することが可能である。その他、あらゆる最適荷重を算出するための処理方式を行うことが可能である。
このようにして、所望するデータ抽出処理をコンピュータに実行させることが可能である。
このデータ抽出処理のコンピュータにおける実行により生成した、力覚素子のチャンネル単位毎の荷重刺激の大きさを示すデータは、好ましくは同じくコンピュータ14の記憶部に保存された「コンピュータを着座時の骨盤の状態又は着座姿勢の推測手段として働かせるためのコンピュータプログラム」に従って処理がなされ、所望の骨盤の状態又は着座姿勢を示すデータが生成される。当該推測処理は、力覚素子のチャンネル単位(本例であれば、着座時の臀部の前方左右と後方左右の押し圧力がそれぞれかかる位置に1チャンネル単位ずつ配置された4つのチャンネル単位)毎の荷重刺激の大きさを示すデータを、所定の着座時の骨盤の状態又は着座姿勢を規定する形式に当てはめて、これらのデータを適宜組み合わせて取り込んだ形で、上記骨盤の状態又は着座姿勢の推定と評価をコンピュータにおいて行う処理である。
上記骨盤の状態又は着座姿勢の推定と評価の方式は、骨盤や着座姿勢と力覚素子のチャンネル単位毎の荷重の大きさとの関連についてのセオリーに従って定められる。例えば、「着座した際の骨盤の荷重バランスによって着座姿勢が大きく影響するが、当該荷重バランスの偏りが相対的に小さければ、その偏りと着座姿勢の乱れは『癖(習慣)』であるとみなせるが、その偏りが所定の閾値を超える場合には『骨盤骨格レベルの問題(骨盤のゆがみ)』の疑いが強くなる」というセオリーを、用いた力覚素子のチャンネル単位から得られた荷重の大きさを示すデータに総合適用して、パネルの着座時の骨盤の状態又は着座姿勢を推測するアルゴリズムをコンピュータにおいて実行させる処理が例示される。
図10は、この例示態様をさらに具体的に例示した内容を示している。図10の各内部が4分割・色分けされた四角形は、座面を上から見た概略である。4分割された個々の四角形は各々の力覚素子のチャンネル単位を示している。さらに矢印の方向は着座した正面を示している。言い換えれば、矢印の方向が足先で、矢印の元の方向が臀部である。分割された四角形のうち、色の濃い部分は相対的に加重バランス強度が強いチャンネル単位を示している。
この推定処理において処理される元データは、力覚素子のチャンネル単位毎の荷重の大きさであり、上記のアルゴリズムでは、各々のチャンネル単位間の相対的な荷重の大きさの差異を算出して、これを評価パラメーターとして用いている。
図10(1)(a)(b)は、TopView(正対)判定の一例を示している。これは着座しているパネルの頭頂部方向からの体の荷重バランスの評価例であり、図10(1)(a)の色濃い四角は、色無しの部分よりも正対判定における荷重率の差が所定の範囲内で高いことを示している。当該所定の範囲内の荷重率の差は、姿勢の崩れや骨盤の歪みを、正対判定においてどの程度広く捉えるか(ノイズを受け入れるか、判定漏れを受け入れるか)によって調整することが可能である。例えば、正対判定の姿勢の崩れを示す荷重率の差の範囲を、下限が5−24%、上限が25−30%程度で選択することが可能である。そして、図10(1)(a)の左側の四角形は、左上と右下の分割四角形が色濃くなっており、座面対角バランスが左に傾いた状態である。このような結果がデータとして得られた場合は、パネルの着座姿勢軸が癖や習慣によって左に捩れていることが推定される。図10(1)(a)の右側の四角形は、右上と左下の分割四角形が色濃くなっており、座面対角バランスが右に傾いた状態である。このような結果がデータとして得られた場合は、パネルの着座姿勢軸が癖や習慣によって右に捩れていることが推定される。
これに対して、図10(1)(b)の色濃い四角は、色無しの部分よりも正対判定における荷重率の差が上記の姿勢の崩れを示す荷重率の差の範囲の上限よりも大きいことを示している。そして、図10(1)(b)の左側の四角形は、左上と右下の分割四角形が色濃くなっており、座面対角バランスが著しく左に傾いた状態である。このような結果がデータとして得られた場合は、パネルの着座姿勢軸が骨盤骨格レベルの変形によって左に捩れており、より深刻な状態と推定される。図10(1)(b)の右側の四角形は、右上と左下の分割四角形が色濃くなっており、座面対角バランスが著しく右に傾いた状態である。このような結果がデータとして得られた場合は、パネルの着座姿勢軸が骨盤骨格レベルの変形によって右に捩れており、より深刻な状態と推定される。
図10(2)(a)(b)は、FrontView(傾き)判定の一例を示している。これは着座しているパネルの正面方向からの体の荷重バランスの評価例であり、図10(2)(b)の色濃い四角は、色無しの部分よりも傾き判定における荷重率の差が所定の範囲内で高いことを示している。当該所定の範囲内の荷重率の差は、姿勢の崩れや骨盤の歪みを、傾き判定においてどの程度広く捉えるか(ノイズを受け入れるか、判定漏れを受け入れるか)によって調整することが可能である。例えば、傾き判定の姿勢の崩れを示す荷重率の差の範囲を、下限が3−12%、上限が13−20%程度で選択することが可能である。そして、図10(2)(a)の左側の四角形は、左上と左下(左側)の分割四角形が色濃くなっており、座面左右バランスが左に傾いた状態である。このような結果がデータとして得られた場合は、パネルの着座正面姿勢が癖や習慣によって左に傾いていることが推定される。図10(2)(a)の右側の四角形は、右上と右下(右側)の四角形が色濃くなっており、座面左右バランスが右に傾いた状態である。このような結果がデータとして得られた場合は、パネルの着座正面姿勢が癖や習慣によって右に傾いていることが推定される。
これに対して、図10(2)(b)の色濃い四角は、色無しの部分よりも傾き判定における荷重率の差が上記の姿勢の崩れを示す荷重率の差の範囲の上限よりも大きいことを示している。そして、図10(2)(b)の左側の四角形は、左上と左下(左側)の分割四角形が色濃くなっており、座面左右バランスが著しく左に傾いた状態である。このような結果がデータとして得られた場合は、パネルの着座正面姿勢が骨盤骨格レベルの変形によって左に傾いており、より深刻な状態と推定される。図10(2)(b)の右側の四角形は、右上と右下(右側)の分割四角形が色濃くなっており、座面左右バランスが著しく右に傾いた状態である。このような結果がデータとして得られた場合は、パネルの正面着座姿勢が骨盤骨格レベルの変形によって右に傾いており、より深刻な状態と推定される。
図10(3)は、SideView(真横から見た着座姿勢)判定の一例を示している。これは着座しているパネルの真横方向からの体の荷重バランスの評価例であり、図10(3)の色濃い四角は、色無しの部分よりも真横から見た着座姿勢判定における荷重率の差が所定の閾値よりも高いことを示している。当該荷重率の差における所定の閾値は、姿勢の崩れを、真横から見た着座姿勢判定においてどの程度広く捉えるか(ノイズを受け入れるか、判定漏れを受け入れるか)によって調整することが可能である。例えば、傾き判定の姿勢の崩れを示す荷重率の差の閾値を10−30%で選択することが可能である。そして、図10(3)の左側の四角形は、左上と右上(上側)の分割四角形が色濃くなっており、座面前後バランスが前に傾いた状態である。このような結果がデータとして得られた場合は、パネルの着座姿勢が癖や習慣によって前屈みになっていることが推定される。図10(3)の右側の四角形は、左下と右下(下側)の分割四角形が色濃くなっており、座面前後バランスが後方に傾いた状態である。このような結果がデータとして得られた場合は、パネルの着座正面姿勢が癖や習慣によって反り返っていることが推定される。
なお、上記した推定手段を施して推定されたパネルの着座時の骨盤の状態又は着座姿勢は、パネルに対するヒアリング(生活体感)と高い確率で一致した。
このようにしてコンピュータ14で生成した、推定された着座時の骨盤の状態又は着座姿勢を規定するデータは、所望の端末、図8においてはノートパソコン又はスマートフォン17にデータ転送される。具体的には、着座した人物又は着座姿勢を指導する人物が上記着座時の骨盤の状態又は着座姿勢を把握することができるように、モニター表示、プリント表示又は音声表示が行われるようにすることができる。
(2)本発明のAIモデル(座面)
本発明のセンシングシステムによって得たデータを用いて、人工知能(AI)を用いた推測システムを構築することができる。すなわち、本発明のセンシングシステムによって得た(a)着座時の骨盤の状態又は着座姿勢と、(b)電気シグナルのデータの組合せを訓練データとして、コンピュータにおいて教師あり学習を実行することにより、着座時の骨盤の状態又は着座姿勢を推定するための学習済みモデル(本発明の着座AIモデル)が構築される。
上記(b)電気シグナルのデータは、チャンネル単位毎のデータであることが好ましい。所定のデータ形式をチャンネル単位共通にして揃え、当該チャンネル単位全ての電気シグナルのデータの組から導かれる、所定の(a)着座時の骨盤の状態又は着座姿勢、との組み合わせを訓練データとして、コンピュータにおける教師あり学習を実行することができる。
上記の「所定のデータ形式」は、特に限定されないが、可能な限り初発の電気シグナルをそのまま反映したデータであることが、生成された学習済みモデルの実用性が高まり好適であるが、学習済みモデルの推定の確度を向上させるために初発の電気シグナル波形等の電気シグナルデータに対して、トリミング、サイズ変換、重ね合わせ等のデータ処理を施すことも可能である。当該データ処理は、OpenCV等のデータ処理用ライブラリを用いて行うことが可能である。
コンピュータにおける教師あり学習(事前に与えられたデータをいわば例題とみなして、それをガイドに学習、すなわちデータへのフィッティングを行う手法)の内容は特に限定されず、必要に応じて適切な手段を選択することが可能である。本発明の着座AIモデルは、適切な骨盤の状態又は着座姿勢を推定する「識別問題」に関わるものである。例えば、ニューラル・ネットワーク[深層学習(ディープラーニング)を含む]、サポート・ベクタ・マシン、ロジスティック回帰、決定木、ランダムフォレスト、k近傍法(k−NN)等のアルゴリズムを用いることができるが、これらに限定されるものではない。ニューラル・ネットワークにおける演算に用いられる活性化関数としては、ステップ関数、シグモイド関数、正規化線形関数(ReLU)、恒等写像、双曲線正接関数、LReLU、ソフトマックス関数等が例示されるが、これらに限定されるものではない。ニューラル・ネットワークのアルゴリズムとしては、RNN(リカレント・ニューラル・ネットワーク)、LSTM(長・短期記憶)、GRU(ゲート付き再帰ユニット)等の再帰接続を持つものを用いることも好適である。さらに、CNN(畳み込みニューラル・ネットワーク)、MLP(多層パーセプトロン)等を用いることも可能である。また、逆誤差伝搬法を行うことも好適である。
教師あり学習により生成された本発明の着座AIモデルは、検証データと評価用データを用いて評価することが好適である。検証データと評価用データとして、ストックされた「(a)着座時の骨盤の状態又は着座姿勢と(b)電気シグナルのデータの組合せ」の一部を用いることができる。データ数が少ない場合は、例えば、交差確認法を行って、データ数の少なさをカバーすることができる。
このようにして、本発明の着座AIモデルが提供される。
また、上述した本発明の座面訓練データの生産方法により、本発明の着座AIモデルを提供するための訓練データを生成することができる。
(3)本発明のAIシステム(座面)
本発明の着座AIシステムは、座面に適用される本発明のセンシングシステム(上記)の例におけるコンピュータ14にアルゴリズムとして記憶された「抽出手段と推定手段」に代えて、上記の本発明の着座AIモデルを記憶させて、これに座面である力覚表面から発信された電気シグナルのデータが適用されて、着座時の骨盤の状態又は着座姿勢を推測するためのAIシステムである。ハードウエアの構成等は、本発明のセンシングシステムに準ずることができる。
[横臥面への適用形態]
(1)本発明のセンシングシステム(横臥面)
「横臥面」とは、「横臥する(横たわる、寝そべる)ための表面」であり、例えば、マットレスの横臥面、敷き布団の横臥面等のあらゆる横臥面が挙げられ、特に限定されるものではない。本発明の力覚表面を横臥面に適用して、ヒトの寝相をモニターする必要性は、主に医療現場、介護現場等に存在する。例えば、本来安静しているべき患者、新生児、介護者等の、離床や、寝返りをモニターすることで、ベッドからの脱落、徘徊、褥瘡等の身体トラブル、無意識の窒息状態等をリアルタイムに、現場から離れた状態で把握することが可能となり、医療現場や介護現場における労力を軽減すると共に、不慮の医療事故や介護事故、さらには褥瘡等の深刻な身体トラブルを効果的に防止することが可能となる。
上述した本発明のセンシングシステムに「横臥面」を当て嵌めると、「横臥面としての本発明の力覚表面、及び、データ抽出手段が備わっている、荷重刺激のセンシングシステムであって、上記データ抽出手段において上記力覚表面から得た電気シグナルのデータから、加重刺激の経時的変化に関連付けられた力覚素子のチャンネル単位毎の荷重刺激の大きさがコンピュータにおいて抽出される、センシングシステム。」として規定される。
「力覚表面としての本発明の横臥面」は、例えば、図11のような形態である。図11において、マットレス21の上に、基材の表面にPEDOT−pTSが付着している導電性材221(221−1、−2、−3、−4)は、4チャンネル単位であって、略10−30cm×10−30cmの2次元方形であって、横臥(仰向け)時の臀部の左右と背部左右の押圧力がそれぞれかかる位置に1チャンネル単位ずつ配置されている。それぞれのチャンネル単位には、導電性材221と電気的に接続された通電路が2本(それぞれ印加電源との通電路は図示せず、マイクロコンピュータ24に向けた通電路2212、2214、2216、2218)設けられている。それぞれの組の通電路の一方はそれぞれ印加電源(図示せず)に接続されており、他方はそれぞれマイクロコンピュータ24に接続されており、さらに、無線モジュール23に向けて2本の通電路231、232が設けられている。この4チャンネル単位の導電性材の例は、力覚表面が横臥面で、横臥姿勢を検出することを目的とする場合の典型的な形態であるが、当該チャンネル単位数が4に限定されるものではない。また導電性材221の形状は方形に限定されるものではなく、円形、楕円形、三角形、五角形、六角形等であってもよい。さらに横臥している身体の細かな動きを把握することを目的とする場合には、より多くのチャンネル単位数(最大10程度)として、各々を小さなサイズの導電性材とすることが好適であり、それほど細かな動きを把握する必要が無い場合、例えば、横臥面における離床の有無や大雑把な姿勢の傾きを把握することを目的とする場合には1−3チャンネル単位数とすることも可能である。このチャンネル単位数が少ない場合の導電性材のサイズは、具体的な目的によって選択することが可能である。離床の有無のみを把握する場合には、チャンネル単位数が少なくても導電性材のサイズはある程度小さくても許容され、例えば1−5cm×1−5cm程度のサイズであってもよい。
無線モジュール23からは、マイクロコンピュータ24で生成された推定された横臥姿勢を規定するデータが、スマートフォン、パーソナルコンピュータ等の端末25にデータ転送され、具体的には横臥した人物又はあるべき横臥姿勢を指導する人物が上記横臥姿勢を把握することができるように、モニター表示、プリント表示又は音声表示が行われるようにすることができる。
横臥している身体の動きに応じた電圧の経時的変化を示す電気シグナルは、力覚素子のチャンネル単位毎に、信号変換部、データ抽出手段、及び、横臥姿勢の推定手段が備わったマイクロコンピュータ24へ送られる。当該電気シグナルは、コンピュータ24の信号変換部において所望の電気特性値、例えば、電圧値、電流値(直流、交流のいずれも含む)、電気抵抗値(インピーダンス値を含む)、あるいは静電容量値等に、必要に応じて変換されて、当該電気特性値のデジタル変換されたデータが、同じくマイクロコンピュータ24のデータ抽出手段と横臥姿勢の推定手段により処理される。整流器(A/D変換器)による電気特性値のアナログ信号からデジタル信号への変換は、当該変換がマイクロコンピュータ24のデータ抽出手段における処理の前であれば特に限定されない。当該アナログ信号又はデジタル信号は、必要に応じて、上記データ抽出手段による処理の前に、所定のデータの切り取り、レート変換、重ね合わせ等の前処理が施されていてもよい。
マイクロコンピュータ24は、導電性材221と有線で接続されたマイクロコンピュータであるが必ずしもこの形態である必要は無く、例えば、遠隔された集中処理用のストレージコンピュータ(いわゆるクラウド)を用いることも可能である。
被処理用のデジタルデータは、マイクロコンピュータ24の記憶部に保存された「コンピュータをデータ抽出手段として働かせるためのコンピュータプログラム」に従ったデータ抽出処理が、マイクロコンピュータ24のCPU、GPU等の働きで行われる。具体的には、ヒストグラム(統計)処理、FFT処理、分解能向上演算、加算平均と連続平均処理等により、力覚素子のチャンネル単位毎の荷重刺激の大きさが算出されて生成する。
このデータ抽出処理に引き続き、生成した力覚素子のチャンネル単位毎の荷重刺激の大きさを示すデータは、好ましくは同じくマイクロコンピュータ24の記憶部に保存された「コンピュータを横臥姿勢の推測手段として働かせるためのコンピュータプログラム」に従って処理がなされ、所望の横臥姿勢を示すデータが生成する。当該推測処理は、力覚素子のチャンネル単位(本例であれば、横臥時の背部の左右と臀部の左右の押し圧力がそれぞれかかる位置に1チャンネル単位ずつ配置された4つのチャンネル単位)毎の荷重刺激の大きさを示すデータを、所定の横臥姿勢を規定する形式に当てはめて、これらのデータを適宜組み合わせて取り込んだ形で、上記横臥姿勢の推定と評価をコンピュータにおいて行う処理である。
マイクロコンピュータ24で生成した、推定された横臥姿勢を規定するデータは、無線モジュール23へ転送され、さらに上記のように所望の端末にデータ転送される。
(2)本発明のAIモデル(横臥面)
本発明のセンシングシステムによって得たデータを用いて、人工知能(AI)を用いた推測システムを構築することができる。すなわち、本発明のセンシングシステムによって得た(a)横臥姿勢を規定するデータと、(b)電気シグナルのデータの組合せを訓練データとして、コンピュータにおいて教師あり学習を実行することにより、横臥姿勢を推定するための学習済みモデル(本発明の横臥AIモデル)が構築される。
上記(b)電気シグナルのデータは、チャンネル単位毎のデータであることが好ましい。所定のデータ形式をチャンネル単位共通にして揃え、当該チャンネル単位全ての電気シグナルのデータの組から導かれる、所定の(a)横臥姿勢を規定するデータ、との組み合わせを訓練データとして、コンピュータにおける教師あり学習を実行することができる。
上記の「所定のデータ形式」は、特に限定されないが、可能な限り初発の電気シグナルをそのまま反映したデータであることが、生成された学習済みモデルの実用性が高まり好適であるが、学習済みモデルの推定の確度を向上させるために初発の電気シグナル波形等の電気シグナルデータに対して、トリミング、サイズ変換、重ね合わせ等のデータ処理を施すことも可能である。当該データ処理は、OpenCV等のデータ処理用ライブラリを用いて行うことが可能である。
コンピュータにおける教師あり学習(事前に与えられたデータをいわば例題とみなして、それをガイドに学習、すなわちデータへのフィッティングを行う手法)の内容は特に限定されず、必要に応じて適切な手段を選択することが可能である。本発明の横臥AIモデルは、適切な骨盤の状態又は横臥姿勢を推定する「識別問題」に関わるものである。例えば、ニューラル・ネットワーク[深層学習(ディープラーニング)を含む]、サポート・ベクタ・マシン、ロジスティック回帰、決定木、ランダムフォレスト、k近傍法(k−NN)等のアルゴリズムを用いることができるが、これらに限定されるものではない。ニューラル・ネットワークにおける演算に用いられる活性化関数としては、ステップ関数、シグモイド関数、正規化線形関数(ReLU)、恒等写像、双曲線正接関数、LReLU、ソフトマックス関数等が例示されるが、これらに限定されるものではない。ニューラル・ネットワークのアルゴリズムとしては、RNN(リカレント・ニューラル・ネットワーク)、LSTM(長・短期記憶)、GRU(ゲート付き再帰ユニット)等の再帰接続を持つものを用いることも好適である。さらに、CNN(畳み込みニューラル・ネットワーク)、MLP(多層パーセプトロン)等を用いることも可能である。また、逆誤差伝搬法を行うことも好適である。
教師あり学習により生成された本発明の横臥AIモデルは、検証データと評価用データを用いて評価することが好適である。検証データと評価用データとして、ストックされた「(a)横臥姿勢を規定するデータと(b)電気シグナルのデータの組合せ」の一部を用いることができる。データ数が少ない場合は、例えば、交差確認法を行って、データ数の少なさをカバーすることができる。
このようにして、本発明の横臥AIモデルが提供される。
また、上述した本発明の横臥面訓練データの生産方法により、本発明の横臥AIモデルを提供するための訓練データを生成することができる。
(3)本発明のAIシステム(横臥面)
本発明の横臥AIシステムは、横臥面に適用される本発明のセンシングシステム(上記)の例におけるマイクロコンピュータ24にアルゴリズムとして記憶された「抽出手段と推定手段」に代えて、上記の本発明の横臥AIモデルを記憶させて、これに横臥面である力覚表面から発信された電気シグナルのデータが適用されて、横臥姿勢を推測するためのAIシステムである。ハードウエアの構成等は、本発明のセンシングシステムに準ずることができる。

Claims (29)

  1. 基材の全部又は一部に、PEDOT−pTS(poly(3,4-ethylene-dioxythiophene)-p-toluenesulfonate)が付着している導電性材であって、上記基材の全部又は一部に対するする荷重刺激に応じた電気シグナルを上記導電性材から発信する力覚素子が1チャンネル単位以上備えられている、力覚表面。
  2. 前記基材のPEDOT−pTSが付着している部分は、編物又は織物を含んでいる、請求項1に記載の力覚表面。
  3. 前記基材のPEDOT−pTSが付着している部分は、紙を含有する基材を含んでいる、請求項1又は2に記載の力覚表面。
  4. 前記紙は和紙である、請求項3に記載の力覚表面。
  5. 前記基材のPEDOT−pTSが付着している部分は、PEDOT−pTSが付着している上撚りされた糸又は仮撚糸が、全部若しくは一部を構成する糸として用いられている編物又は織物を含んでいる、請求項1又は2に記載の力覚表面。
  6. 前記上撚りされた糸又は仮撚糸の表面素材は、絹又は紙である、請求項5に記載の力覚表面。
  7. 前記上撚りされた糸は、絹糸のらせん状の複数層重ね巻きにより中空状に形成され、重ね合わせた各巻層の巻回方向が交互に逆方向に形成されている絹加工糸である、請求項6に記載の力覚表面。
  8. 前記基材を展開させた形状が略二次元形状であり、PEDOT−pTSが上記二次元平面の少なくとも一方に付着している、請求項1−7のいずれかに記載の力覚表面。
  9. 前記力覚表面における力覚素子が、PEDOT−pTS(poly(3,4-ethylene-dioxythiophene)-p-toluenesulfonate)が付着している導電性材と電気的に接続された電圧印加部及び信号変換部を備え、上記信号変換部は上記電圧印加部において印加された電圧の上記導電性材が電気的に介在したことによる変化に基づいて、上記力覚素子から所定の電気シグナルを生成させる、請求項1−8のいずれか1項に記載の力覚表面。
  10. 前記所定の電気シグナルは、静電容量値又は電気抵抗値の経時的な変化を示すデータである、請求項9に記載の力覚表面。
  11. 前記導電性材の外側に荷重伝搬材が備えられている、請求項1−10のいずれか1項に記載の力覚表面。
  12. 前記力覚表面は、座面である、請求項11に記載の力覚表面。
  13. 前記座面は、椅子又はクッションの座面である、請求項12に記載の力覚表面。
  14. 前記座面に配置される、基材にPEDOT−pTSが付着している導電性材は1−10チャンネル単位であって、着座時の臀部の前方左右と後方左右の押圧力がそれぞれかかる位置に1チャンネル単位ずつ配置されている、請求項12又は13に記載の力覚表面。
  15. 前記力覚表面は横臥面である、請求項11に記載の力覚表面。
  16. 前記横臥面は、マットレス又は敷き布団の横臥面である、請求項15に記載の力覚表面。
  17. 前記横臥面に配置される、基材にPEDOT−pTSが付着している導電性材は4チャンネル単位であって、横臥時の臀部の左右と背部左右の押圧力がそれぞれかかる位置に1チャンネル単位ずつ配置されている、請求項15又は16に記載の力覚表面。
  18. 請求項1−17のいずれか1項に記載の力覚表面、及び、データ抽出手段が備わっている、荷重刺激のセンシングシステムであって、上記力覚表面から得られた電気シグナルのデータから、上記データ抽出手段によって、加重刺激の経時的変化に関連付けられた力覚素子のチャンネル単位毎に与えられた荷重刺激の大きさがコンピュータにおいて抽出される、センシングシステム。
  19. 前記センシングシステムにおいて得た力覚素子のチャンネル単位毎の荷重刺激の大きさに関連付けた、着座時の骨盤の状態又は着座姿勢のコンピュータにおける推測手段が設けられている、請求項18に記載のセンシングシステム。
  20. 請求項18に記載のセンシングシステムにおいて用いられるコンピュータプログラムであって、力覚表面から得られた電気シグナルのデータから、力覚素子のチャンネル単位毎の荷重刺激の大きさをコンピュータにおいて抽出するアルゴリズムをコンピュータに実行させる、コンピュータプログラム。
  21. 請求項19に記載のセンシングシステムにおいて用いられるコンピュータプログラムであって、算出された力覚素子のチャンネル単位毎の荷重刺激の大きさのデータを、それぞれ所定の着座時の骨盤の状態又は着座姿勢を規定する形式に当てはめて、上記骨盤の状態又は着座姿勢の推定又は評価を行うアルゴリズムをコンピュータに実行させる、コンピュータプログラム。
  22. 請求項19に記載のセンシングシステムにより得た、(1)着座時の骨盤の状態又は着座姿勢を規定するデータと、(2)電気シグナルのデータの組合せ、を訓練データとするコンピュータにおける教師あり学習により導出される、請求項12−14のいずれか1項に記載の力覚表面上における、着座時の骨盤の状態又は着座姿勢を推測するための学習済みモデル。
  23. 請求項22に記載の学習済みモデルに対し、請求項12−14のいずれか1項に記載の力覚表面から得た電気シグナルのデータが適用されて、着座時の骨盤の状態又は着座姿勢がコンピュータにおいて推測される、推測システム。
  24. 請求項12−14のいずれか1項の記載の力覚表面から得た電気シグナルのデータから、加重刺激の経時的変化に関連付けられた力覚素子のチャンネル単位毎の荷重刺激の大きさがコンピュータにおいて抽出され、これに関連付けて着座時の骨盤の状態又は着座姿勢がコンピュータにおいて推定され、この推定された着座時の骨盤の状態又は着座姿勢を規定するデータと、これらに対応する上記電気シグナルのデータの組合せ、を上記力覚表面から別個に得た電気シグナルのデータから、着座時の骨盤の状態又は着座姿勢を推測する学習済みモデルを生成するための訓練データとする、訓練データの生産方法。
  25. 前記センシングシステムにおいて得た力覚素子のチャンネル単位毎の荷重刺激の大きさに関連付けた、横臥姿勢のコンピュータにおける推測手段が設けられている、請求項18に記載の荷重刺激のセンシングシステム。
  26. 請求項25に記載のセンシングシステムにおいて用いられるコンピュータプログラムであって、算出された力覚素子のチャンネル単位毎の荷重刺激の大きさのデータを、それぞれ所定の横臥姿勢を規定する形式に当てはめて、上記横臥姿勢の推定又は評価を行うアルゴリズムをコンピュータに実行させる、コンピュータプログラム。
  27. 前記センシングシステムにより得た、(1)横臥姿勢と、(2)電気シグナルのデータの組合せ、を訓練データとするコンピュータにおける教師あり学習により導出される、請求項15−17のいずか1項に記載の力覚表面上における横臥姿勢を推測するための学習済みモデル。
  28. 請求項27に記載の学習済みモデルに対し、請求項15−17のいずれか1項に記載の力覚表面から得た電気シグナルのデータが適用されて、横臥姿勢がコンピュータにおいて推測される、推測システム。
  29. 請求項15−17のいずれか1項の力覚表面から得た電気シグナルのデータから、加重刺激の経時的変化に関連付けられた力覚素子のチャンネル単位毎の荷重刺激の大きさがコンピュータにおいて抽出され、これに関連付けて横臥姿勢がコンピュータにおいて推測され、この推測された横臥姿勢を規定するデータと、これらに対応する上記電気シグナルのデータの組合せ、を上記力覚表面から別個に得た電気シグナルのデータから、横臥姿勢を推測する学習済みモデルを生成するための訓練データとして生産する、訓練データの生産方法。
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