JP2021095458A - ポリウレタン及び硬化性組成物 - Google Patents

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Ritsuko Higashi
律子 東
哲夫 和田
Tetsuo Wada
哲夫 和田
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誠 新津
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Yoshitaka Ishibashi
圭孝 石橋
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和弥 木村
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Abstract

【課題】優れた低汚染性及び低付着性をオーバーコート膜に付与することができるポリウレタンの提供。【解決手段】ポリウレタンは、ジイソシアネート化合物及びポリオール化合物から得られる第1のウレタン構造単位と、下記式(2)で表される第2のウレタン構造単位と、下記式(3)で表される第3のウレタン構造単位と、を有する。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリウレタン及びその製造方法、硬化性組成物、硬化物、オーバーコート膜、並びにフレキシブル配線板及びその製造方法に関する。
フレキシブル配線板には、表面保護のためにオーバーコート膜が被覆される。このオーバーコート膜は、配線が形成されたフレキシブル基板の表面に硬化性組成物を印刷法等によって膜状に塗工し硬化させることによって形成される。
近年、ディスプレイの解像度の高精細化とともに、フレキシブル配線板の配線幅と配線間距離の微細化が進んでいるが、配線幅と配線間距離の微細化によって、より小面積で配線数を多く確保することができる。
配線幅と配線間距離の微細化と並行して、フレキシブル配線板の両面を配線化(2−metal法)することによって、配線数を多くすることができる。通常はフレキシブル配線板の片面を配線化するが(1−metal法)、両面に配線を形成することによって、片面に配線を形成する場合に比べて、配線加工可能な面積を理論上2倍にすることができる。
この2−metal法は、ディスプレイの解像度の高精細化に対して非常に有効な方法であるが、2−metal法によるフレキシブル配線板の製造方法には、いくつかの重要な課題がある。その課題について以下に説明する。
国際公開第2017/110591号
まず、2−metal法によるフレキシブル配線板の製造方法の一例を示す。フレキシブル基板の表面(塗工面A)に印刷版を用いて硬化性組成物を膜状に塗工し、塗工面Aに塗工した硬化性組成物を加熱硬化させた後に、フレキシブル基板の裏面(塗工面B)に硬化性組成物を膜状に塗工して加熱硬化させる。その後、塗工面A側にはんだバンプ処理を施し、ドライバーICを接合する(チップマウント工程)。チップマウント工程は、チップボンダーに取り付けられたドライバーICがはんだバンプに接合される工程である。
チップマウント工程において、ドライバーICは、はんだ金属が溶融可能な250℃以上の温度に加熱され、塗工面A側のはんだバンプに接合される。よって、加熱されたドライバーICに近接するオーバーコート膜は、局所的に高温に晒される。この高温局所過熱によってオーバーコート膜が熱分解し、オーバーコート膜自身の機械物性及び信頼性の低下が起こるとともに、アウトガス、油状物等の分解物が発生する場合がある。そのため、周辺機器(ドライバーICチップボンダーや接合ステージ装置など)に分解物による汚染が生じ、異物の発生や生産性の低下を引き起こすおそれがある。よって、オーバーコート膜には、優れた熱的安定性を有していて分解物の発生量が少なく、周辺を分解物で汚染させにくいこと(以下、「低汚染性」と記すこともある)が求められる。
また、チップマウント工程においては、塗工面Bを基材(接合ステージ)で支えながら、ドライバーICを塗工面A側のはんだバンプに接合する。よって、塗工面B側のオーバーコート膜が接合ステージに高温下で圧接されるため、塗工面Bと接合ステージとの間で付着が生じる場合がある。塗工面Bと接合ステージとの間で付着が生じた場合には、フレキシブル配線板の変形が起こり、製品形状が劣化するおそれがあるとともに、接合ステージが汚染する。よって、塗工面B側に形成されたオーバーコート膜には、チップマウント工程において、接合ステージからの離れやすさ、すなわち高い離型性(以下、「低付着性」と記すこともある)が求められる。
従来、フレキシブル配線板のオーバーコート膜を形成するための硬化性組成物が多数提案されており、例えば特許文献1には、ジイソシアネート化合物と複数種のジオール化合物とを反応させて得られるポリウレタンを含有する硬化性組成物が開示されている。特許文献1に開示の硬化性組成物を用いれば、優れた低汚染性及び低付着性を有するフレキシブル配線板用オーバーコート膜を得ることができる。しかしながら、オーバーコート膜の低汚染性及び低付着性については、近年さらなる向上が求められている。
本発明は、優れた低汚染性及び低付着性を硬化物及びオーバーコート膜に付与することができるポリウレタン及びその製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、優れた低汚染性及び低付着性を有する硬化物及びオーバーコート膜を製造することができる硬化性組成物を提供することを併せて課題とする。さらに、本発明は、優れた低汚染性及び低付着性を有する硬化物及びオーバーコート膜を提供することを併せて課題とする。さらに、本発明は、優れた製品形状を有するフレキシブル配線板及びその製造方法を提供することを併せて課題とする。
本発明の一態様は、以下の[1]〜[18]の通りである。
[1] 1分子中に2個のイソシアナト基を有するジイソシアネート化合物OCN−R1−NCO及び下記式(1)で表されるポリオール化合物をモノマーとして反応してウレタン結合を形成して得られる第1のウレタン構造単位と、下記式(2)で表される第2のウレタン構造単位と、下記式(3)で表される第3のウレタン構造単位と、を有し、
前記第1のウレタン構造単位中のR1は、炭素数6以上14以下の2価の有機基を示し、R2は、炭素数1以上14以下のn価の有機基を示し、nは3以上の整数であり、
前記第2のウレタン構造単位中のR3は、炭素数6以上14以下の2価の有機基を示し、R4は、炭素数1以上14以下の3価の有機基を示し、
前記第3のウレタン構造単位中のR5は、炭素数6以上14以下の2価の有機基を示し、R6は、その構造中にカルボキシ基を有さず、炭素数1以上14以下の2価の有機基を示し、
z平均分子量Mzと重量平均分子量Mwの比Mz/Mwが5.0以下であるポリウレタン。
Figure 2021095458
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[2] 前記第1のウレタン構造単位中のR2のうち少なくとも1個が、下記式(4)、下記式(5)、下記式(6)、又は下記式(7)で表される化学構造を有する[1]に記載のポリウレタン。
Figure 2021095458
Figure 2021095458
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[3] 当該ポリウレタン中の前記R2のモル量をx、前記R4のモル量をy、前記R6のモル量をzとしたとき、0.001≦x/(x+y+z)≦0.1なる関係を満たす[1]又は[2]に記載のポリウレタン。
[4] 数平均分子量が10000以上50000以下である[1]〜[3]のいずれか一項に記載のポリウレタン。
[5] 酸価が10mgKOH/g以上70mgKOH/g以下である[1]〜[4]のいずれか一項に記載のポリウレタン。
[6] [1]〜[5]のいずれか一項に記載のポリウレタンの製造方法であって、ポリウレタンを製造する重合反応を重合停止剤によって停止する重合停止工程を備え、前記重合停止剤としてオキシム化合物を用いるポリウレタンの製造方法。
[7] [1]〜[5]のいずれか一項に記載のポリウレタン(a)と、溶剤(b)と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)と、を含有する硬化性組成物。
[8] 前記エポキシ化合物(c)が、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を含む[7]に記載の硬化性組成物。
[9] 前記ポリウレタン(a)と前記溶剤(b)と前記エポキシ化合物(c)との総量に対する前記溶剤(b)の含有量の割合が25質量%以上75質量%以下であり、前記ポリウレタン(a)と前記エポキシ化合物(c)との総量に対する前記ポリウレタン(a)の含有量の割合が40質量%以上99質量%以下である[7]又は[8]に記載の硬化性組成物。
[10] 無機微粒子及び有機微粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の微粒子(d)をさらに含有する[7]〜[9]のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
[11] 前記微粒子(d)がシリカ微粒子を含む[10]に記載の硬化性組成物。
[12] 前記微粒子(d)がハイドロタルサイト微粒子を含む[10]に記載の硬化性組成物。
[13] 前記ポリウレタン(a)と前記溶剤(b)と前記エポキシ化合物(c)と前記微粒子(d)との総量に対する前記溶剤(b)の含有量の割合が25質量%以上75質量%以下、前記微粒子(d)の含有量の割合が0.1質量%以上60質量%以下であり、
前記ポリウレタン(a)と前記エポキシ化合物(c)との総量に対する前記ポリウレタン(a)の含有量の割合が40質量%以上99質量%以下である[10]〜[12]のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
[14] [7]〜[13]のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化物。
[15] [14]に記載の硬化物を含有するオーバーコート膜。
[16] 配線が形成されたフレキシブル基板の表面のうち前記配線が形成されている部分が、[15]に記載のオーバーコート膜によって被覆されたフレキシブル配線板。
[17] 前記配線が錫メッキ銅配線である[16]に記載のフレキシブル配線板。
[18] [7]〜[13]のいずれか一項に記載の硬化性組成物を、配線が形成されたフレキシブル基板の表面のうち前記配線が形成されている部分に膜状に配した後に、前記膜状の硬化性組成物を硬化させてオーバーコート膜とするフレキシブル配線板の製造方法。
本発明に係るポリウレタンは、優れた低汚染性及び低付着性を硬化物及びオーバーコート膜に付与することができる。また、本発明に係るポリウレタンの製造方法は、優れた低汚染性及び低付着性を硬化物及びオーバーコート膜に付与することができるポリウレタンを製造することができる。
さらに、本発明に係る硬化性組成物は、優れた低汚染性及び低付着性を有する硬化物及びオーバーコート膜を製造することができる。さらに、本発明に係る硬化物及びオーバーコート膜は、優れた低汚染性及び低付着性を有する。
さらに、本発明に係るフレキシブル配線板は、優れた製品形状を有する。さらに、本発明に係るフレキシブル配線板の製造方法は、優れた製品形状を有するフレキシブル配線板を製造することができる。
本発明の一実施形態について以下に説明する。なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するポリウレタンが、優れた低汚染性及び低付着性を硬化物及びオーバーコート膜に付与することができることを見出し、本発明を完成するに至った。また、該ポリウレタンを含有する硬化性組成物を用いれば、優れた低汚染性及び低付着性を有する硬化物及びオーバーコート膜を製造することができ、優れた製品形状を有するフレキシブル配線板を製造することができることを見出した。
I.ポリウレタン
本実施形態のポリウレタンは、1分子中に2個のイソシアナト基を有するジイソシアネート化合物OCN−R1−NCO及び上記式(1)で表されるポリオール化合物をモノマーとして反応してウレタン結合を形成して得られる第1のウレタン構造単位と、上記式(2)で表される第2のウレタン構造単位と、上記式(3)で表される第3のウレタン構造単位と、を有し、且つ、z平均分子量Mzと重量平均分子量Mwの比Mz/Mwが5.0以下である。なお、本発明の効果を妨げない範囲内であれば、本実施形態のポリウレタンは、他の構造単位をさらに有してもよい。
上記第1のウレタン構造単位中のR1は、炭素数6以上14以下の2価の有機基を示し、R2は、炭素数1以上14以下のn価の有機基を示し、nは3以上の整数である。nは3以上の整数であるので、上記式(1)の化合物は、1分子中に3個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物である。
上記第2のウレタン構造単位中のR3は、炭素数6以上14以下の2価の有機基を示し、R4は、炭素数1以上14以下の3価の有機基を示す。
上記第3のウレタン構造単位中のR5は、炭素数6以上14以下の2価の有機基を示し、R6は、その構造中にカルボキシ基を有さず、炭素数1以上14以下の2価の有機基を示す。
上記式(1)の化合物が、1分子中に3個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物であることから、このポリオール化合物と、1分子中に2個のイソシアナト基を有するジイソシアネート化合物OCN−R1−NCOとが付加反応して得られる重合体である第1のウレタン構造単位は、R2を中心点として3本以上の分子鎖が延びる分岐鎖状構造を複数有する架橋構造を有する。このような分岐鎖状構造を有するポリウレタンは、合成時に反応できる官能基が多いので低分子量成分が少なく、分子量が大きくても粘度が小さいなどの特徴がある。そして、このような分岐鎖状構造を有するポリウレタンは、各モノマーが複雑に反応し合うため、多種多様の最終構造が有り得、その最終構造を特定することは非常に困難である。
さらに、第1のウレタン構造単位を有する本実施形態のポリウレタンは、エポキシ化合物と反応させて硬化させる以前の段階で、上記の架橋構造を既に有している。そのため、本実施形態のポリウレタンとエポキシ化合物とを反応させて硬化させた場合には、硬化時の架橋構造の構築が迅速に進行しやすく、また、得られる硬化物の架橋度合いが高度なものとなりやすい。
なお、上記第1のウレタン構造単位中のR1は、炭素数6以上14以下の2価の有機基を示すが、炭素数6以上14以下の2価の有機基としては、例えば、鎖状脂肪族の2価の有機基、芳香環を有する2価の有機基、脂環構造を有する2価の有機基等を挙げることができる。鎖状脂肪族の2価の有機基の例としては、下記式(8)〜(11)を挙げることができる。芳香環を有する2価の有機基の例としては、下記式(12)〜(15)を挙げることができる。脂環構造を有する2価の有機基の例としては、下記式(16)〜(20)を挙げることができる。上記ポリウレタン中のR1は、全部が同一であってもよいし、一部が異なっていてもよい。
Figure 2021095458
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また、上記第1のウレタン構造単位中のR2は、炭素数1以上14以下のn価の有機基を示すが、炭素数1以上14以下の有機基としては、例えば、上記式(4)〜(7)が好ましい。すなわち、上記式(1)のポリオール化合物としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが、入手の容易性の観点から好ましい。上記ポリウレタン中のR2は、全部が同一であってもよいし、一部が異なっていてもよい。ここで、nは、3以上の整数であり、好ましくは3又は4であり、上記式(1)のポリオール化合物がポリマーのように分子量分布を有する場合には、nの平均値は3以上4以下が好ましい。
上記第1のウレタン構造単位は、上記式(1)のポリオール化合物と、1分子中に2個のイソシアナト基を有するジイソシアネート化合物OCN−R1−NCOとを、例えば反応溶媒中で付加反応して得られるが、ポリウレタン製造時の反応溶媒への溶解性、硬化剤との反応性の調整の点から、上記式(1)のポリオール化合物としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンがより好ましい。
上記式(2)中のR3は、炭素数6以上14以下の2価の有機基を示すが、炭素数6以上14以下の2価の有機基としては、例えば、鎖状脂肪族の2価の有機基、芳香環を有する2価の有機基、脂環構造を有する2価の有機基等を挙げることができる。R3の具体例は、上記第1のウレタン構造単位のR1の場合と同様であるので、詳細な説明は省略する。
上記第1のウレタン構造単位と上記式(2)で表される第2のウレタン構造単位を合成する際に、同一のジイソシアネート化合物を原料として用いることにより、R1とR3を同一のものとしてもよい。
上記ポリウレタン中のR3は、全部が同一であってもよいし、一部が異なっていてもよい。
上記式(2)中のR4は、炭素数1以上14以下の3価の有機基を示す。上記式(2)で表される第2のウレタン構造単位は、分子中にカルボキシ基を1個以上有し且つヒドロキシ基を2個有するカルボキシ基含有ジオールとジイソシアネート化合物(OCN−R3−NCO)とを反応させることにより、合成することができる。カルボキシ基含有ジオールの種類は特に限定されるものではないが、例えば、ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸等を挙げることができる。上記ポリウレタン中のR4は、全部が同一であってもよいし、一部が異なっていてもよい。
カルボキシ基含有ジオールは、これらの中の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらのカルボキシ基含有ジオールの中では、ポリウレタン製造時の反応溶媒への溶解性の点から、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸がより好ましい。
上記式(3)中のR5は、炭素数6以上14以下の2価の有機基を示すが、炭素数6以上14以下の2価の有機基としては、例えば、鎖状脂肪族の2価の有機基、芳香環を有する2価の有機基、脂環構造を有する2価の有機基等を挙げることができる。R5の具体例は、上記第1のウレタン構造単位中のR1や上記式(2)中のR3の場合と同様であるので、詳細な説明は省略する。
上記第1のウレタン構造単位と上記式(2)で表される第2のウレタン構造単位と上記式(3)で表される第3のウレタン構造単位を合成する際に、同一のジイソシアネート化合物を原料として用いることにより、R1とR3とR5を同一のものとしてもよい。
上記ポリウレタン中のR5は、全部が同一であってもよいし、一部が異なっていてもよい。
上記式(3)中のR6は、その構造中にカルボキシ基を有さず、炭素数1以上14以下の2価の有機基を示すが、炭素数1以上14以下の2価の有機基としては、例えば、鎖状脂肪族の2価の有機基、芳香環を有する2価の有機基、脂環構造を有する2価の有機基等を挙げることができる。また、例えばポリエチレングリコール、ポリエステルポリオール等のポリマー構造を有するジオールを、第3のウレタン構造単位の原料として使用することができるので、R6の例として、ポリマー構造を有する2価の有機基を挙げることができる。このポリマー構造を有するジオールについては、後に詳述する。
上記ポリウレタン中のR6は、全部が同一であってもよいし、一部が異なっていてもよい。
本実施形態のポリウレタンの合成方法は特に限定されるものではないが、例えば、ジブチル錫ジラウリレート等のウレタン化触媒の存在下又は非存在下で、1分子中に2個のイソシアナト基を有するジイソシアネート化合物(すなわち、OCN−R1−NCO、OCN−R3−NCO、OCN−R5−NCO)と、複数種のポリオールとを溶媒中で重合させる方法が挙げられる。
ここで、前述したポリマー構造を有するジオールについて、詳細に説明する。上記式(3)で表される第3のウレタン構造単位は、原料化合物として、エステル構造を含むジオールを選択することでも製造することができる。原料化合物としては、以下のジカルボン酸の群より選ばれる少なくとも1種と、以下のジオールの群より選ばれる少なくとも1種とを組み合わせてエステル化反応を行って得られるポリエステルジオールを挙げることができる。
ジカルボン酸としては、例えば、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、3−メチル−ベンゼン−1,2−ジカルボン酸、4−メチル−ベンゼン−1,2−ジカルボン酸、4−メチル−ベンゼン−1,3−ジカルボン酸、5−メチル−ベンゼン−1,3−ジカルボン酸、2−メチル−ベンゼン−1,4−ジカルボン酸等を挙げることができる。上記のジカルボン酸の中では、オルトフタル酸、3−メチル−ベンゼン−1,2−ジカルボン酸、4−メチル−ベンゼン−1,2−ジカルボン酸がより好ましく、オルトフタル酸がさらに好ましい。
また、ジオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール等を挙げることができる。
上記のジオールの中では、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールがより好ましく、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールがさらに好ましく、1,6−ヘキサンジオールが特に好ましい。
これらジオールは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらポリエステルジオールの数平均分子量は、800以上5000以下であることが好ましく、800以上3000以下であることがより好ましく、900以上2500以下であることがさらに好ましい。
また、上記式(3)で表される第3のウレタン構造単位は、原料化合物として、カーボネート構造を含むジオールを選択することでも製造することができる。原料化合物としては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルなどの炭酸ジエステル類、ホスゲンなどの炭酸ジハロゲン化物類の群より選ばれる少なくとも1種と、前記ポリエステルジオールの原料化合物として前述したジオールの群より選ばれる少なくとも1種とを組み合わせてエステル化反応を行って得られるポリカーボネートジオールを挙げることができる。
上記のポリカーボネートジオールの数平均分子量は、800以上5000以下であることが好ましく、800以上3000以下であることがより好ましく、900以上2500以下であることがさらに好ましい。
本実施形態のポリウレタンは、3個以上のヒドロキシ基を1分子中に有するポリオール化合物から合成される上記第1のウレタン構造単位と、上記式(2)で示されるカルボキシ基含有ジオールから合成される第2のウレタン構造単位と、上記カルボキシ基含有ジオール以外のジオール化合物から合成される上記(3)式で示される第3のウレタン構造単位とを、同一分子鎖内に有する。
上記第1のウレタン構造単位と上記第2のウレタン構造単位と上記第3のウレタン構造単位の比率は、使用する原料の上記ポリオール化合物(1分子中に3個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物)、上記カルボキシ基含有ジオール(分子中にカルボキシ基を1個以上有し且つヒドロキシ基を2個有するカルボキシ基含有ジオール)、上記カルボキシ基含有ジオール以外のジオール化合物のモル量を変化させることによって調整することができる。
これら3種のポリオール化合物の量の比は、上記ポリウレタン中のR2のモル量をx、R4のモル量をy、R6のモル量をzとしたとき、それらx、y、zの比率で表すことができる。x、y、zが0.001≦x/(x+y+z)≦0.1なる関係を満たす場合は、硬化前のポリウレタンの状態において架橋構造を有するため、硬化時の架橋構造の構築が迅速に進行しやすい。よって、本実施形態のポリウレタンを含有する硬化性組成物を硬化させて得た硬化物及びオーバーコート膜は、優れた熱的安定性を有していて熱による分解物の発生量が少なく(優れた低汚染性を有する)、且つ、高い離型性を有している(すなわち、優れた低付着性を有する)。
また、x、y、zが0.001≦x/(x+y+z)≦0.1なる関係を満たす場合は、本実施形態のポリウレタンの合成時に、架橋構造の構築による高分子量化に伴うゲル化が抑制される。
これらの特性をより良好なものとするためには、x、y、zが0.006≦x/(x+y+z)≦0.06なる関係を満たすことがより好ましい。また、x、y、zが0.3≦y/(x+y+z)≦0.8なる関係を満たすことがより好ましい。
このような構造の第1、第2、及び第3のウレタン構造単位を有する本実施形態のポリウレタンは、分子量分布が狭く、前述したように、z平均分子量Mzと重量平均分子量Mwの比Mz/Mwが5.0以下である。
また、第1、第2、及び第3のウレタン構造単位を有する本実施形態のポリウレタンは、低分子量成分の含有量が少ない。
本実施形態のポリウレタンの数平均分子量は特に限定されるものではないが、後述する本実施形態の硬化性組成物の粘度調整の容易さを考慮すると、10000以上50000以下であることが好ましく、10000以上40000以下であることがより好ましく、10000以上30000以下であることがさらに好ましい。
数平均分子量が上記範囲内であると、ポリウレタンの溶剤溶解性が良好であるとともに、ポリウレタン溶液の粘度が高くなりにくいので、後述する硬化性組成物を後述するオーバーコート膜やフレキシブル配線板の製造に使用する際に好適である。さらに、後述する硬化物及びオーバーコート膜の伸度、可撓性、及び強度が良好となりやすい。
ここで言う「数平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と記す。)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量である。なお、本明細書においては、特に断りのない限り、GPCの測定条件は以下の通りである。z平均分子量Mzと重量平均分子量Mwの比Mz/Mwも、同様の測定方法によって得ることができる。
装置名:日本分光株式会社製HPLCユニット HSS−2000
カラム:昭和電工株式会社製ShodexカラムLF−804×3本(直列)
移動相:テトラヒドロフラン
流速 :1.0mL/min
検出器:日本分光株式会社製RI−2031Plus
温度 :40.0℃
試料量:サンプルループ 100μL
試料濃度:約0.1質量%
本実施形態のポリウレタンの酸価は特に限定されるものではないが、10mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であることが好ましく、10mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることがより好ましく、15mgKOH/g以上45mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
酸価が上記範囲内であれば、本実施形態のポリウレタンはエポキシ基との十分な反応性を有する。よって、後述する硬化性組成物において、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物等の他の成分との反応性が低下しにくいので、硬化性組成物の硬化物の耐熱性が維持されやすく、且つ、硬化性組成物の硬化物の脆化を抑制できる。
なお、本明細書においては、ポリウレタンの酸価は、JIS K0070に規定された電位差滴定法で測定された酸価の値である。
本実施形態のポリウレタンを合成する重合反応は溶媒中で行うことができ、使用可能な溶剤の種類は、本実施形態のポリウレタンを溶解できる溶剤であれば特に限定されない。本実施形態のポリウレタンを合成する際に使用される溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤や、デカヒドロナフタリン等の炭化水素系溶剤や、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤が挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの溶剤の中では、ポリウレタンの分子量の調整の容易さ、及び、後述の硬化性組成物のスクリーン印刷時の印刷性を考慮すると、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましく、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテルがより好ましく、γ−ブチロラクトンの単独溶剤、γ−ブチロラクトンとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの2種混合溶剤、γ−ブチロラクトンとジエチレングリコールジエチルエーテルの2種混合溶剤、及びγ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテルの3種混合溶剤がさらに好ましい。
本実施形態のポリウレタンの合成直後のポリウレタン溶液の固形分濃度は特に限定されるものではないが、10質量%以上90質量%以下が好ましく、15質量%以上70質量%以下がより好ましく、20質量%以上60質量%以下がさらに好ましい。また、固形分濃度が20質量%以上60質量%以下のポリウレタン溶液を使用して、後述の硬化性組成物を製造する場合は、ポリウレタンの溶液の粘度は、実施例の項に後述する測定条件において、例えば5千mPa・s以上百万mPa・s以下であることが、均一分散の観点から好ましい。
また、本実施形態のポリウレタンを合成する重合反応を行う際のモノマーの仕込みモル比は、目的とするポリウレタンの分子量及び酸価に応じて調節する。ポリウレタンの分子量の調節のために、本実施形態のポリウレタンの原料としてモノヒドロキシ化合物を用いてもよい。すなわち、モノヒドロキシ化合物を重合停止剤として使用することが可能であり、モノヒドロキシ化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の1価のアルコールや、メチルエチルケトオキシム等のオキシム化合物が挙げられる。
重合停止剤としてオキシム化合物を選択すれば、オキシム化合物とジイソシアネート化合物が速やかに反応し、重合の停止を円滑且つ速やかに行うことができる。重合の停止に要する時間を短時間とすることにより、鎖長の過剰な伸長を抑制することができるので、重合停止剤としてオキシム化合物を使用すれば、本実施形態のポリウレタンを含有する硬化性組成物を印刷する場合に好適な粘度や分子量分布を有するポリウレタンを、容易に合成することができる。重合停止剤としてオキシム化合物を使用すれば分子量分布を制御することができるので、結果的に、糸引き性が低く且つ消泡性に優れるため印刷性が良好な硬化性組成物を得ることができる。
重合停止剤としてモノヒドロキシ化合物を使用する場合は、ポリウレタンの全原料が有するヒドロキシ基の総数からモノヒドロキシ化合物が有するヒドロキシ基の総数を差し引いたヒドロキシ基の総数(すなわち、ポリウレタンの原料である1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する化合物が有するヒドロキシ基の総数)よりも、ポリウレタンの全原料が有するイソシアナト基の総数を少なくしてもよいし、同じにしてもよいし、あるいは多くしてもよい。
過剰量のモノヒドロキシ化合物を使用した場合には、未反応のモノヒドロキシ化合物が残存する結果となるが、この場合には、過剰のモノヒドロキシ化合物をそのまま溶媒の一部として使用してもよいし、あるいは、蒸留等の操作により除去してもよい。
モノヒドロキシ化合物は、反応溶液中に30℃以上150℃以下、好ましくは70℃以上140℃以下で少量ずつ加え、その後上記温度で保持して反応を完結させる。
すなわち、重合停止剤としてモノヒドロキシ化合物を使用してポリウレタンを製造する場合には、ジイソシアネート化合物と複数種のポリオールとを重合させポリウレタンを製造する重合工程を行い、ポリウレタンの分子量が目的とする数平均分子量になったら(あるいは、目的とする数平均分子量に近づいたら)、モノヒドロキシ化合物を上記の温度条件で添加し、重合反応を重合停止剤によって停止する重合停止工程を行えばよい。
重合停止剤としてオキシム化合物を用いることにより、Mz/Mwが5.0以下の分子量分布が狭いポリウレタンを容易に製造することができる。分子量分布が狭いポリウレタンは、低分子量成分及び高分子量成分が少ないので、低分子量成分によってオーバーコート膜の低汚染性及び低付着性が低下したり、高分子量成分によって硬化性組成物の印刷性(糸引き性、消泡性)が低下したりすることが起こりにくい。よって、重合停止剤としてオキシム化合物を用いて製造したMz/Mwが5.0以下のポリウレタンを用いれば、優れた印刷性を有する硬化性組成物や、優れた低汚染性及び低付着性を有するオーバーコート膜を容易に得ることができる。
また、ポリウレタンの分子量の調節のために、本実施形態のポリウレタンの原料としてモノイソシアネート化合物を用いてもよい。その場合には、モノイソシアネート化合物を添加する時点のポリウレタンの分子末端がヒドロキシ基となるように、ポリウレタンの全原料が有するヒドロキシ基の総数よりも、ポリウレタンの全原料が有するイソシアナト基の総数からモノイソシアネート化合物が有するイソシアナト基の総数を差し引いたイソシアナト基の総数(すなわち、ポリウレタンの原料である1分子中に2個以上のイソシアナト基を有する化合物が有するイソシアナト基の総数)を少なくする必要がある。
ポリウレタンの全原料が有するヒドロキシ基とジイソシアネート化合物のイソシアナト基との反応がほぼ終了した時点で、製造中のポリウレタンの分子末端に残存しているヒドロキシ基とモノイソシアネート化合物のイソシアナト基とを反応させる。そのためには、ポリウレタン製造中のポリウレタン溶液の温度を30℃以上150℃以下、好ましくは70℃以上140℃以下とした後に、ポリウレタン溶液にモノイソシアネート化合物を少量ずつ加え、その後上記温度に保持して反応を完結させる。
本実施形態のポリウレタンの原料であるポリオール化合物及びジオール化合物が有するヒドロキシ基の総数と、本実施形態のポリウレタンの原料であるジイソシアネート化合物が有するイソシアナト基の総数との比は、ヒドロキシ基:イソシアナト基=1:0.9〜0.9:1であることが好ましく、ヒドロキシ基:イソシアナト基=1:0.92〜0.92:1であることがより好ましい。
本実施形態のポリウレタンは上記種々の特性を有するため、優れた低汚染性及び低付着性を硬化物及びオーバーコート膜に付与することができる。よって、本実施形態のポリウレタンを含有する硬化性組成物を硬化させて得た硬化物及びオーバーコート膜は、優れた熱的安定性を有していて熱による分解物の発生量が少なく、周辺を分解物で汚染させにくい(すなわち、優れた低汚染性を有する)。また、本実施形態のポリウレタンを含有する硬化性組成物を硬化させて得た硬化物及びオーバーコート膜は、高い離型性を有している(すなわち、優れた低付着性を有する)。また、本実施形態のポリウレタンは分子量分布が狭いので、糸引き性が低く且つ消泡性に優れる硬化性組成物を得ることができる。
このように、本実施形態のポリウレタンを含有する硬化性組成物を硬化させて得た硬化物及びオーバーコート膜は、優れた低汚染性及び低付着性を有するので、フレキシブル配線板の製造方法におけるチップマウント工程において、周辺を分解物で汚染させにくく、且つ、オーバーコート膜が接合ステージから離れやすい。よって、本実施形態のポリウレタンを含有する硬化性組成物及び該硬化性組成物を硬化させて得たオーバーコート膜は、2−metal法によるフレキシブル配線板の製造に好適に使用することができ、優れた製品形状を有するフレキシブル配線板を製造することができる。
II.硬化性組成物
本実施形態の硬化性組成物は、上記本実施形態のポリウレタン(a)と、溶剤(b)と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)と、を含有する組成物である。
(1)溶剤(b)
本実施形態の硬化性組成物の必須成分の1つである溶剤(b)の種類は、本実施形態のポリウレタン(a)を溶解可能であるならば特に限定されるものではないが、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤を挙げることができる。
また、溶剤(b)としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤を挙げることができる。
さらに、溶剤(b)としては、デカヒドロナフタリン等の炭化水素系溶剤や、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤を挙げることができる。
これらの溶剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの溶剤の中では、スクリーン印刷時の印刷性及び溶剤の揮発性のバランスを考慮すると、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましく、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテルがより好ましく、γ−ブチロラクトンの単独溶剤、γ−ブチロラクトンとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの2種混合溶剤、γ−ブチロラクトンとジエチレングリコールジエチルエーテルの2種混合溶剤、及びγ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテルの3種混合溶剤がさらに好ましい。
これらの好ましい溶剤の組み合わせは、スクリーン印刷用インクの溶剤として優れているために好適である。
また、本実施形態の硬化性組成物が含有する溶剤(b)の一部又は全部として、本実施形態のポリウレタン(a)を製造する際に使用する合成用の溶剤をそのまま使用することが可能であり、その方が本実施形態の硬化性組成物の製造が容易となるためプロセス的に好ましい。
本実施形態の硬化性組成物における溶剤(b)の含有量は、本実施形態の硬化性組成物の総量に対して、25質量%以上75質量%以下であることが好ましく、35質量%以上65質量%以下であることがより好ましい。ここで、本実施形態の硬化性組成物の総量とは、ポリウレタン(a)と、溶剤(b)と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)との総量である。ただし、本実施形態の硬化性組成物が、後述する微粒子(d)等のその他の成分を含有する場合には、本実施形態の硬化性組成物の総量とは、ポリウレタン(a)と、溶剤(b)と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)と、微粒子(d)等のその他の成分との総量である。
溶剤(b)の含有量が、本実施形態の硬化性組成物の総量に対して25質量%以上75質量%以下の範囲内であると、硬化性組成物の粘度がスクリーン印刷法での印刷に対して良好な粘度となり、且つ、スクリーン印刷後の硬化性組成物のにじみによる広がりがそれほど大きくならない。その結果、硬化性組成物を塗工したい部位(すなわち印刷版の形状)よりも、実際に印刷した硬化性組成物の印刷面積の方が大きくなるという現象が生じにくく、好適である。
(2)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)
本実施形態の硬化性組成物の必須成分の1つであるエポキシ化合物(c)は、ポリウレタン(a)が有するカルボキシ基又はヒドロキシ基と反応し、硬化性組成物において硬化剤として機能するものである。
1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)を用いることから、ポリウレタン(a)とエポキシ化合物(c)との間で架橋反応が促進されて、架橋構造が速やかに構築される。その結果、低分子量のポリウレタンの生成やエポキシ化合物(c)の残存が抑制され、揮発成分の量が少なくなるので、本実施形態のポリウレタンを含有する硬化性組成物を硬化させて得た硬化物及びオーバーコート膜は、優れた熱的安定性を有していて熱による分解物の発生量が少なく(優れた低汚染性を有する)、且つ、高い離型性を有している(優れた低付着性を有する)。このような作用がより奏されるためには、エポキシ化合物(c)は、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物であることがより好ましく、1分子中のエポキシ基の数は10個以下でもよく、5個以下でもよい。
エポキシ化合物(c)の種類は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されるものではないが、例えば、ノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂が挙げられ、ノボラック型エポキシ樹脂の具体例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、ノボラック樹脂とは、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを、酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂である。
さらに、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)としては、例えば、フェノール類のジグリシジルエーテルやアルコールのグリシジルエーテルが挙げられる。ここで、上記のフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換又は非置換のビフェノール、スチルベン系フェノール類等が挙げられる。すなわち、これらフェノール類のジグリシジルエーテルは、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、スチルベン型エポキシ化合物である。また、上記のアルコールとしては、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
さらに、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂や、アニリン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、イソシアヌル酸等が有する窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換した化合物であるグリシジル型又はメチルグリシジル型のエポキシ樹脂や、p−アミノフェノール等のアミノフェノール類が有する窒素原子に結合した活性水素及びフェノール性ヒドロキシ基が有する活性水素をそれぞれグリシジル基で置換した化合物であるグリシジル型又はメチルグリシジル型のエポキシ樹脂が挙げられる。
さらに、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)としては、例えば、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂が挙げられる。これら脂環型エポキシ樹脂は、分子中にオレフィン結合を有する脂環式炭化水素化合物のオレフィン結合をエポキシ化して得られる。
さらに、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)としては、例えば、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル、テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル、多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテルが挙げられる。
さらに、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)としては、例えば、ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、ペンタエリスリトール型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂(分子中にオレフィン結合を有する線状脂肪族炭化水素化合物のオレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られるもの)、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂が挙げられる。
さらに、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)としては、例えば、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物や、硫黄原子含有エポキシ樹脂や、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールのジグリシジルエーテルや、アダマンタン構造を有するエポキシ樹脂が挙げられる。アダマンタン構造を有するエポキシ樹脂の例としては、1,3−ビス(1−アダマンチル)−4,6−ビス(グリシジロイル)ベンゼン、1−[2’,4’−ビス(グリシジロイル)フェニル]アダマンタン、1,3−ビス(4’−グリシジロイルフェニル)アダマンタン、及び1,3−ビス[2’,4’−ビス(グリシジロイル)フェニル]アダマンタン等が挙げられる。
これらのエポキシ化合物(c)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらのエポキシ化合物(c)の中でも、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し且つ芳香環構造及び/又は脂環構造を有するエポキシ化合物が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が、硬化性組成物を硬化したときの付着性低減の観点でより好ましい。
本実施形態の硬化物の長期絶縁性能を重視する場合には、吸水率の低い硬化物が得られることから、トリシクロデカン構造及び芳香環構造を有する化合物が好ましい。
1分子中に2個以上のエポキシ基を有し且つトリシクロデカン構造及び芳香環構造を有する化合物の具体例としては、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル(すなわち、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し且つトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン構造及び芳香環構造を有する化合物)や、1,3−ビス(1−アダマンチル)−4,6−ビス(グリシジロイル)ベンゼン、1−[2’,4’−ビス(グリシジロイル)フェニル]アダマンタン、1,3−ビス(4’−グリシジロイルフェニル)アダマンタン、及び1,3−ビス[2’,4’−ビス(グリシジロイル)フェニル]アダマンタン等のアダマンタン構造を有するエポキシ樹脂(すなわち、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し且つトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン構造及び芳香環構造を有する化合物)や、下記式(21)で表される化合物が挙げられる。これらの中では、下記式(21)で表される化合物が特に好ましい。なお、下記式(21)中のkは1以上の整数であり、10以下の整数であることが好ましい。
Figure 2021095458
一方、ポリウレタンとの反応性を重視する場合には、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し且つ芳香環構造及び/又は脂環構造を有するエポキシ化合物の中でも、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し且つ芳香環構造を有する化合物が好ましい。
本実施形態の硬化性組成物中のポリウレタン(a)とエポキシ化合物(c)との総量に対するエポキシ化合物(c)の含有量の割合は、1質量%以上60質量%以下であることが好ましく、2質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましい。すなわち、本実施形態の硬化性組成物中のポリウレタン(a)とエポキシ化合物(c)との総量に対するポリウレタン(a)の含有量の割合は、40質量%以上99質量%以下であることが好ましく、50質量%以上98質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上97質量%以下であることがさらに好ましい。
ポリウレタン(a)とエポキシ化合物(c)との総量に対するエポキシ化合物(c)の含有量の割合が、1質量%以上60質量%以下であると、後述のオーバーコート膜が被覆されている後述のフレキシブル配線板の低反り性と配線の断線抑制性とのバランスをとることができる。
(3)微粒子(d)
本実施形態の硬化性組成物には、無機微粒子及び有機微粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の微粒子(d)を添加してもよい。微粒子(d)を添加することにより、硬化性組成物の印刷時の粘度及びチクソトロピーを調整し、硬化性組成物(すなわちインク)が流れ出すことを抑制することができる。
無機微粒子としては、例えば、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)、チタニア(TiO2)、酸化タンタル(Ta25)、ジルコニア(ZrO2)、窒化珪素(Si34)、チタン酸バリウム(BaO・TiO2)、炭酸バリウム(BaCO3)、チタン酸鉛(PbO・TiO2)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸、ランタン鉛(PLZT)、酸化ガリウム(Ga23)、スピネル(MgO・Al23)、ムライト(3Al23・2SiO2)、コーディエライト(2MgO・2Al23・5SiO2)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、チタン酸アルミニウム(TiO2−Al23)、イットリア含有ジルコニア(Y23−ZrO2)、珪酸バリウム(BaO・8SiO2)、窒化ホウ素(BN)、炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸カルシウム(CaSO4)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸マグネシウム(MgO・TiO2)、硫酸バリウム(BaSO4)、有機ベントナイト、カーボン(C)、ハイドロタルサイトなどが挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機微粒子としては、アミド結合、イミド結合、エステル結合又はエーテル結合を有する耐熱性樹脂の微粒子が好ましい。これらの樹脂の例としては、耐熱性及び機械特性の観点から、ポリイミド樹脂若しくはその前駆体、ポリアミドイミド樹脂若しくはその前駆体、又はポリアミド樹脂が挙げられる。
これらの微粒子の中でもシリカ微粒子、ハイドロタルサイト微粒子が好ましく、本実施形態の硬化性組成物は、シリカ微粒子及びハイドロタルサイト微粒子から選ばれる少なくとも一方を含有することが好ましい。
本実施形態の硬化性組成物に使用されるシリカ微粒子は、粉末状であり、表面に被覆物を設けたシリカ微粒子や有機化合物により化学的に表面処理を施したシリカ微粒子でもよい。
本実施形態の硬化性組成物に使用されるシリカ微粒子は、硬化性組成物中で分散してペーストを形成するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、日本アエロジル株式会社より提供されているアエロジル(商品名)等を挙げることができる。アエロジル(商品名)に代表されるシリカ微粒子は、硬化性組成物にスクリーン印刷時の印刷性を付与するために使用されることもあり、その場合にはチクソ性の付与を目的として使用される。
本実施形態の硬化性組成物に使用されるハイドロタルサイト微粒子は、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O等に代表される天然に産出する粘土鉱物の一種であり、層状の無機化合物である。また、ハイドロタルサイトは合成でも得ることができ、例えばMg1-xAlx(OH)2(CO3x/2・mH2O等は合成で得ることができる。すなわち、ハイドロタルサイトは、Mg/Al系層状化合物であり、層間にある炭酸基とのイオン交換により、塩化物イオン(Cl-)及び/又は硫酸イオン(SO4 -)の陰イオンを固定化できる。この機能を使用して、銅や錫のマイグレーションの原因となる塩化物イオン(Cl-)や硫酸イオン(SO4 -)を捕捉し、硬化物の長期絶縁信頼性を向上することができる。
ハイドロタルサイトの市販品としては、例えば、堺化学株式会社のSTABIACE HT−1、STABIACE HT−7、STABIACE HT−Pや、協和化学工業株式会社のDHT−4A、DHT−4A2、DHT−4C等が挙げられる。
これらの無機微粒子、有機微粒子の質量平均粒子径は、好ましくは0.01〜10μm、さらに好ましくは0.1〜5μmである。
本実施形態の硬化性組成物中の微粒子(d)の含有量は、ポリウレタン(a)と溶剤(b)とエポキシ化合物(c)と微粒子(d)との総量に対して、0.1質量%以上60質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の硬化性組成物中の微粒子(d)の含有量が上記の範囲内であれば、硬化性組成物の粘度がスクリーン印刷法での印刷に対して良好な粘度となり、且つ、スクリーン印刷後の硬化性組成物のにじみによる広がりがそれほど大きくならない。その結果、硬化性組成物を塗工したい部位(すなわち印刷版の形状)よりも、実際に印刷した硬化性組成物の印刷面積の方が大きくなるという現象が生じにくく、好適である。
(4)硬化促進剤
本実施形態の硬化性組成物には硬化促進剤(e)を添加してもよい。硬化促進剤の種類は、ポリウレタン(a)が有するカルボキシ基とエポキシ化合物(c)が有するエポキシ基との反応を促進する化合物であれば特に限定されるものではないが、例えば下記の化合物が挙げられる。
すなわち、硬化促進剤の例としては、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、2,4−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のトリアジン化合物が挙げられる。
また、硬化促進剤の例としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−アミノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−(シアノエチルアミノエチル)−2−メチルイミダゾール、N−[2−(2−メチル−1−イミダゾリル)エチル]尿素、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾリウムトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテート、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、N,N’−ビス(2−メチル−1−イミダゾリルエチル)尿素、N,N’−ビス(2−メチル−1−イミダゾリルエチル)アジポアミド、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール・イソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾール・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチル−4−フォルミルイミダゾール、2−エチル−4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルフォルミルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、ビニルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、1−アリルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、2−ブチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール臭化水素塩、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド等のイミダゾール化合物が挙げられる。
さらに、硬化促進剤の例としては、ジアザビシクロアルケン及びその塩等のシクロアミジン化合物及びその誘導体が挙げられる。ジアザビシクロアルケンとしては、例えば、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5や1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7が挙げられる。
さらに、硬化促進剤の例としては、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン化合物が挙げられる。
さらに、硬化促進剤の例としては、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミン化合物や、ジシアンジアジドが挙げられる。
これらの硬化促進剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの硬化促進剤の中では、その硬化促進作用及び後述する本実施形態の硬化物の電気絶縁性能の両立を考慮すると、メラミン、イミダゾール化合物、シクロアミジン化合物及びその誘導体、ホスフィン化合物、及びアミン化合物が好ましく、メラミン、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5及びその塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7及びその塩がより好ましい。
本実施形態の硬化性組成物中の硬化促進剤(e)の含有量は、硬化促進効果が奏されれば特に限定されるものではないが、本実施形態の硬化性組成物の硬化性及び後述する本実施形態の硬化物、オーバーコート膜の電気絶縁特性や耐水性の観点から、ポリウレタン(a)とエポキシ化合物(c)の総量を100質量部として、硬化促進剤(e)を0.05質量部以上5質量部以下の範囲内で配合することが好ましく、0.1質量部以上3質量部以下の範囲内で配合することがより好ましい。
本実施形態の硬化性組成物中の硬化促進剤(e)の含有量が上記範囲内であれば、本実施形態の硬化性組成物を短時間で硬化させることができるとともに、後述する本実施形態の硬化物、オーバーコート膜の電気絶縁特性や耐水性が良好である。
(5)その他の添加剤
本実施形態の硬化性組成物には、微粒子(d)、硬化促進剤(e)の他に各種添加剤を添加してもよい。本実施形態の硬化性組成物に配合可能な添加剤について、以下に説明する。
本実施形態の硬化性組成物を硬化させると、電気絶縁特性の良好な硬化物を得ることができるため、本実施形態の硬化性組成物は、例えば、配線の絶縁保護用レジストインキ用途などの組成物として使用可能である。本実施形態の硬化性組成物を配線の絶縁保護用レジストインキ用途の組成物(すなわち、フレキシブル配線板用オーバーコート剤)として使用する場合には、印刷の際に泡の発生を防止又は抑制する目的で、消泡剤(f)を添加してもよい。
消泡剤の種類は、フレキシブル配線板の製造時においてフレキシブル基板の表面に本実施形態の硬化性組成物を印刷して塗工する際に、泡の発生を防止又は抑制することができるならば特に限定されるものではないが、例えば下記の消泡剤が例として挙げられる。
すなわち、消泡剤の例としては、BYK−077(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、SNデフォーマー470(サンノプコ株式会社製)、TSA750S(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、シリコーンオイルSH−203(東レ・ダウコーニング株式会社製)等のシリコーン系消泡剤や、ダッポーSN−348(サンノプコ株式会社製)、ダッポーSN−354(サンノプコ株式会社製)、ダッポーSN−368(サンノプコ株式会社製)、ディスパロン230HF(楠本化成株式会社製)等のアクリル重合体系消泡剤や、サーフィノールDF−110D(日信化学工業株式会社製)、サーフィノールDF−37(日信化学工業株式会社製)等のアセチレンジオール系消泡剤や、FA−630等のフッ素含有シリコーン系消泡剤等を挙げることができる。
本実施形態の硬化性組成物中の消泡剤(f)の含有量は、特に限定されるものではないが、ポリウレタン(a)、溶剤(b)、エポキシ化合物(c)、及び微粒子(d)の総量を100質量部として、消泡剤(f)を0.01質量部以上5質量部以下の範囲内で配合することが好ましく、0.05質量部以上4質量部以下の範囲内で配合することがより好ましく、0.1質量部以上3質量部以下の範囲内で配合することがさらに好ましい。
さらに、本実施形態の硬化性組成物には、必要に応じて、レベリング剤等の界面活性剤や、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の着色剤を添加することができる。
また、ポリウレタン(a)の酸化劣化及び加熱時の変色を抑制することが必要な場合には、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等の酸化防止剤を本実施形態の硬化性組成物に添加することが好ましい。
さらに、本実施形態の硬化性組成物には、必要に応じて、難燃剤や滑剤を添加することもできる。
本実施形態の硬化性組成物は、配合する成分(すなわち、ポリウレタン(a)、溶剤(b)、エポキシ化合物(c)、及び微粒子(d)等)のうち一部又は全部をロールミル、ビーズミル等で均一に混練、混合することによって得ることができる。配合する成分の一部を混合した場合には、本実施形態の硬化性組成物を実際に使用するときに、残りの成分を混合することができる。
<硬化性組成物の粘度>
本実施形態の硬化性組成物の25℃における粘度は、10000mPa・s以上200000mPa・s以下が好ましく、20000mPa・s以上150000mPa・s以下がより好ましい。
なお、本明細書においては、本実施形態の硬化性組成物の25℃における粘度は、特に断りがない限り、コーン/プレート型粘度計(Brookfield社製、型式DV−II+Pro、スピンドルの型番CPE−52)を用いて、回転速度10rpmの条件で、回転開始から7分経過後に測定した粘度である。
III.硬化物
本実施形態の硬化物は、本実施形態の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物であり、低汚染性や低付着性が良好である。本実施形態の硬化性組成物を硬化させる方法は特に限定されるものではなく、熱や活性エネルギー線(例えば紫外線、電子線、X線)によって硬化させることができる。よって、本実施形態の硬化性組成物には、熱ラジカル発生剤、光ラジカル発生剤等の重合開始剤を添加してもよい。
本実施形態の硬化物は、絶縁保護膜(オーバーコート膜)として用いることができる。特に、例えばチップオンフィルム(COF)のようなフレキシブル配線板の配線の全部又は一部を被覆することにより、本実施形態の硬化物を配線の絶縁保護膜として用いることができる。
IV.オーバーコート膜並びにフレキシブル配線板及びその製造方法
本実施形態のオーバーコート膜は、本実施形態の硬化物を含有する膜であり、本実施形態の硬化性組成物を硬化させることによって製造することができる。詳述すると、本実施形態のオーバーコート膜は、本実施形態の硬化性組成物を、配線が形成されたフレキシブル基板の表面のうち配線が形成されている部分の全部又は一部に膜状に配した後に、膜状の硬化性組成物を加熱等により硬化させて膜状の硬化物とすることによって製造することができる。本実施形態のオーバーコート膜は、フレキシブル配線板用のオーバーコート膜として好適である。
本実施形態のフレキシブル配線板は、配線が形成されたフレキシブル基板の表面のうち配線が形成されている部分の全部又は一部が、オーバーコート膜によって被覆されたものである。
本実施形態のフレキシブル配線板は、本実施形態の硬化性組成物とフレキシブル基板から製造することができる。詳述すると、本実施形態のフレキシブル配線板は、本実施形態の硬化性組成物を、配線が形成されたフレキシブル基板の表面のうち配線が形成されている部分の全部又は一部に膜状に配した後に、膜状の硬化性組成物を硬化させてオーバーコート膜とすることによって製造することができる。なお、オーバーコート膜によって被覆される配線は、配線の酸化防止及び経済的な面を考慮すると、錫メッキ銅配線であることが好ましい。
本実施形態のオーバーコート膜及びフレキシブル配線板の製造方法の一例を、以下に説明する。本実施形態のオーバーコート膜及びフレキシブル配線板は、例えば、以下の工程1、工程2、工程3を経て、形成することができる。
(工程1)本実施形態の硬化性組成物を、フレキシブル基板の配線パターン部の少なくとも一部に印刷することで、該配線パターン部上に印刷膜を形成する印刷工程。
(工程2)工程1で得られた印刷膜を40〜100℃の雰囲気下におくことで、印刷膜中の溶剤の一部又は全部を蒸発させる溶剤除去工程。
(工程3)工程1で得られた印刷膜又は工程2で得られた印刷膜を、100〜170℃で加熱することによって硬化させ、オーバーコート膜を形成する硬化工程。
工程1での硬化性組成物の印刷方法に特に制限はなく、例えば、スクリーン印刷法、ロールコーター法、スプレー法、カーテンコーター法などにより、本実施形態の硬化性組成物をフレキシブル基板に塗工して印刷膜を得ることができる。
工程2は必要に応じて行われる操作であり、工程1の後にすぐに工程3を行い、工程3において硬化反応と溶剤の除去とを同時に行ってもよい。工程2を行う場合は、その温度は、溶剤の蒸発速度及び熱硬化の操作への速やかな移行を考慮すると、40℃以上100℃以下であることが好ましく、60℃以上100℃以下であることがより好ましく、70℃以上90℃以下であることがさらに好ましい。工程3や工程2において溶剤を蒸発させる時間は特に限定されるものではないが、10分以上120分以下であることが好ましく、20分以上100分以下であることがより好ましい。
工程3における熱硬化の温度は、メッキ層の拡散を防ぎ、且つ、オーバーコート膜に保護膜として好適な低反り性、柔軟性を付与する観点から、105℃以上160℃以下であることが好ましく、110℃以上150℃以下であることがより好ましい。工程3で行われる熱硬化の時間は、特に限定されるものではないが、10分以上150分以下であることが好ましく、15分以上120分以下であることがより好ましい。
上記のような方法により、配線が形成されたフレキシブル基板の表面のうち配線が形成されている部分の全部又は一部が、オーバーコート膜によって被覆されたフレキシブル配線板を得ることができる。このようにして得られたオーバーコート膜は柔軟性、可撓性が優れているため、本実施形態のフレキシブル配線板も柔軟性、可撓性が優れているとともに、フレキシブル配線板が揺り動かされたとしても配線の断線が生じにくい(配線の断線抑制性に優れる)。よって、本実施形態のフレキシブル配線板は、クラックが生じにくく、例えばチップオンフィルム(COF)等の技術に用いられるフレキシブルプリント配線板に好適である。
さらに、本実施形態の硬化性組成物は硬化時に収縮が生じにくいので、本実施形態のフレキシブル配線板は反りが小さい。よって、本実施形態のフレキシブル配線板にICチップを搭載する工程において、ICチップの搭載位置の位置合わせが容易である。さらに、オーバーコート膜の長期絶縁信頼性が優れているため、本実施形態のフレキシブル配線板も長期絶縁信頼性が優れている。
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をより詳細に説明する。
<ポリウレタンの合成>
(実施合成例1)
攪拌装置、温度計及びコンデンサーを備えた反応容器に、下記の各種原料と、溶媒であるγ−ブチロラクトン(三菱化学株式会社製)510.0g及びジエチレングリコールジエチルエーテル(日本乳化剤株式会社製)90.0gと、を仕込み、100℃に加熱してすべての原料を溶媒に溶解させて、原料溶液を得た。
第1のウレタン構造単位の原料として、1分子中に3個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物であるトリメチロールエタン(三菱ガス化学株式会社製)を2.4g仕込んだ。
また、第2のウレタン構造単位の原料として、カルボキシ基含有ジオールである2,2−ジメチロールブタン酸(日本化成株式会社製)を42.2g仕込んだ。
さらに、第3のウレタン構造単位の原料として、ポリカーボネートジオール(株式会社クラレ製クラレポリオールC−1015N(分子量2130)、原料ジオールの仕込みモル比;1,9−ノナンジオール:2−メチル−1,8−オクタンジオール=15:85、水酸基価112.3mgKOH/g)を220.4g仕込んだ。
原料溶液の温度を90℃まで下げた後に、ジイソシアネート化合物であるメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(住化バイエルウレタン株式会社製のジイソシアネート化合物デスモジュール−W(商品名))133.7gを、滴下ロートを用いて30分間かけて原料溶液に滴下した。
120℃で9時間反応を行い、イソシアナト基のC=O伸縮振動に由来する吸収がほぼ観測されなくなったことを赤外分光法(IR)により確認したら、重合停止剤であるメチルエチルケトオキシム(宇部興産株式会社製)2.0gを滴下し、さらに100℃で1時間反応を行った。これにより、カルボキシ基を有するポリウレタンを含有する溶液(以下、「ポリウレタン溶液A1」と記す。)を得た。
得られたポリウレタン溶液A1の粘度は14000mPa・sであった。また、ポリウレタン溶液A1中に含有されるカルボキシ基を有するポリウレタン(以下、「ポリウレタンAU1」と記す。)の数平均分子量(Mn)は14000、重量平均分子量(Mw)は120000であり、分子量分布の広がりを表すパラメータMz/Mwは4.55と算出された。ポリウレタンAU1の酸価は40.0mgKOH/gであった。
また、ポリウレタンAU1の原料として使用した3種のポリオール化合物の量の比は、第1のウレタン構造単位のR2のモル量(すなわちトリメチロールエタンのモル量)x、第2のウレタン構造単位のR4のモル量(すなわち2,2−ジメチロールブタン酸のモル量)y、及び第3のウレタン構造単位中のR6のモル量(すなわちC−1015Nのモル量)zを用いて表すことができ、ポリウレタンAU1のx/(x+y+z)は0.049である。なお、x、y、zの値を表2、3に示す。
(比較合成例1)
重合停止剤としてメチルエチルケトオキシムに代えてイソブタノール(和光純薬株式会社製)を用いた点以外は、実施合成例1と同様にして、カルボキシ基を有するポリウレタンを含有する溶液(以下、「ポリウレタン溶液B1」と記す。)を得た。
得られたポリウレタン溶液B1の粘度は21000mPa・sであった。また、ポリウレタン溶液B1中に含有されるカルボキシ基を有するポリウレタン(以下、「ポリウレタンBU1」と記す。)の数平均分子量(Mn)は17000、重量平均分子量(Mw)は190000であり、分子量分布の広がりを表すパラメータMz/Mwは7.42と算出された。ポリウレタンBU1の酸価は40.0mgKOH/gであった。また、ポリウレタンBU1のx/(x+y+z)は0.049である。
実施合成例1と比較合成例1との対比により、分岐鎖状構造を有するポリウレタンの合成において、重合停止剤としてオキシム化合物を使用することにより、生成するポリウレタンの分子量分布を制御することが可能であることが分かる。そして、分子量分布の狭いポリウレタンを用いれば、フレキシブル基板への塗工時の糸引き性が低く、消泡性が良好な硬化性組成物を得ることができる。
(比較合成例2)
トリメチロールエタンをポリカーボネートジオール(株式会社クラレ製クラレポリオールC−1015N)に置き換えた点以外は、実施合成例1と同様にして、カルボキシ基を有するポリウレタンを含有する溶液(以下、「ポリウレタン溶液B2」と記す。)を得た。
得られたポリウレタン溶液B2の粘度は18000mPa・sであった。また、ポリウレタン溶液B2中に含有されるカルボキシ基を有するポリウレタン(以下、「ポリウレタンBU2」と記す。)の数平均分子量(Mn)は13000、重量平均分子量(Mw)は140000であり、分子量分布の広がりを表すパラメータMz/Mwは6.44と算出された。ポリウレタンBU2の酸価は40.0mgKOH/gであった。また、ポリウレタンBU2のx/(x+y+z)は0である。
(実施合成例2)
攪拌装置、温度計及びコンデンサーを備えた反応容器に、1分子中に3個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物であるペンタエリスリトール(パーストープ社製)0.16gと、カルボキシ基含有ジオールである2,2−ジメチロールプロパン酸(パーストープ社製)6.57gと、ポリエステルジオール(DIC株式会社製のポリライト(登録商標)OD−X−2900、水酸基価53.4mgKOH/g、分子量2105)61.97gと、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル株式会社製、商品名BPEF)10.84gと、ジイソシアネート化合物であるメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(三井化学株式会社製)29.42gと、溶媒であるγ−ブチロラクトン(三菱化学株式会社製)110.0gと、を仕込んだ。
120〜130℃で12.5時間反応を行った後に、イソシアナト基のC=O伸縮振動に由来する吸収がほぼ観測されなくなったことを赤外分光法(IR)により確認したら、重合停止剤であるメチルエチルケトオキシム(宇部興産株式会社製)0.9gを滴下し、さらに100℃で0.5時間反応を行った。これにより、カルボキシ基を有するポリウレタンを含有する溶液(以下、「ポリウレタン溶液A2」と記す。)を得た。
得られたポリウレタン溶液A2の粘度は103000mPa・sであった。また、ポリウレタン溶液A2中に含有されるカルボキシ基を有するポリウレタン(以下、「ポリウレタンAU2」と記す。)の数平均分子量(Mn)は14000、重量平均分子量(Mw)は85000であり、分子量分布の広がりを表すパラメータMz/Mwは3.93と算出された。ポリウレタンAU2の酸価は25.0mgKOH/gであった。また、ポリウレタンAU2のx/(x+y+z)は0.011である。
(比較合成例3)
重合停止剤としてメチルエチルケトオキシムに代えてイソブタノール(和光純薬株式会社製)を用いた点以外は、実施合成例2と同様にして、カルボキシ基を有するポリウレタンを含有する溶液(以下、「ポリウレタン溶液B3」と記す。)を得た。
得られたポリウレタン溶液B3の粘度は212000mPa・sであった。また、ポリウレタン溶液B3中に含有されるカルボキシ基を有するポリウレタン(以下、「ポリウレタンBU3」と記す。)の数平均分子量(Mn)は21000、重量平均分子量(Mw)は110000であり、分子量分布の広がりを表すパラメータMz/Mwは5.25と算出された。ポリウレタンBU3の酸価は24.8mgKOH/gであった。また、ポリウレタンBU3のx/(x+y+z)は0.011である。
(実施合成例3)
攪拌装置、温度計及びコンデンサーを備えた反応容器に、1分子中に3個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物であるペンタエリスリトール(パーストープ社製)0.43gと、カルボキシ基含有ジオールである2,2−ジメチロールプロパン酸(パーストープ社製)6.57gと、ポリエステルジオール(DIC株式会社製のポリライト(登録商標)OD−X−2900、水酸基価53.4mgKOH/g)61.00gと、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル株式会社製、商品名BPEF)10.67gと、ジイソシアネート化合物であるメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(三井化学株式会社製)30.29gと、溶媒であるγ−ブチロラクトン(三菱化学株式会社製)110.0gと、を仕込んだ。
115〜125℃で10時間反応を行った後に、イソシアナト基のC=O伸縮振動に由来する吸収がほぼ観測されなくなったことを赤外分光法(IR)により確認したら、重合停止剤であるメチルエチルケトオキシム(宇部興産株式会社製)0.9gを滴下し、さらに100℃で0.5時間反応を行った。これにより、カルボキシ基を有するポリウレタンを含有する溶液(以下、「ポリウレタン溶液A3」と記す。)を得た。
得られたポリウレタン溶液A3の粘度は89000mPa・sであった。また、ポリウレタン溶液A3中に含有されるカルボキシ基を有するポリウレタン(以下、「ポリウレタンAU3」と記す。)の数平均分子量(Mn)は12000、重量平均分子量(Mw)は110000であり、分子量分布の広がりを表すパラメータMz/Mwは5.00と算出された。ポリウレタンAU3の酸価は25.0mgKOH/gであった。また、ポリウレタンAU3のx/(x+y+z)は0.030である。
(比較合成例4)
重合停止剤としてメチルエチルケトオキシムに代えてイソブタノール(和光純薬株式会社製)を用いた点以外は、実施合成例3と同様にして、カルボキシ基を有するポリウレタンを含有する溶液(以下、「ポリウレタン溶液B4」と記す。)を得た。
得られたポリウレタン溶液B4の粘度は112000mPa・sであった。また、ポリウレタン溶液B4中に含有されるカルボキシ基を有するポリウレタン(以下、「ポリウレタンBU4」と記す。)の数平均分子量(Mn)は16000、重量平均分子量(Mw)は190000であり、分子量分布の広がりを表すパラメータMz/Mwは8.12と算出された。ポリウレタンBU4の酸価は25.1mgKOH/gであった。また、ポリウレタンBU4のx/(x+y+z)は0.030である。
(実施合成例4)
攪拌装置、温度計及びコンデンサーを備えた反応容器に、1分子中に3個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物であるポリエステルポリオール(株式会社クラレ製クラレポリオールF−510、水酸基価339.7mgKOH/g、1分子当たり平均約3個のヒドロキシ基を有する、分子量495)0.80gと、カルボキシ基含有ジオールである2,2−ジメチロールプロパン酸(パーストープ社製)6.57gと、ポリエステルジオール(DIC株式会社製のポリライト(登録商標)OD−X−2900、水酸基価53.4mgKOH/g)61.40gと、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル株式会社製、商品名BPEF)10.87gと、ジイソシアネート化合物であるメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(三井化学株式会社製)29.36gと、溶媒であるγ−ブチロラクトン(三菱化学株式会社製)110.0gと、を仕込んだ。
110〜130℃で13.5時間反応を行った後に、イソシアナト基のC=O伸縮振動に由来する吸収がほぼ観測されなくなったことを赤外分光法(IR)により確認したら、重合停止剤であるメチルエチルケトオキシム(宇部興産株式会社製)0.9gを滴下し、さらに100℃で0.5時間反応を行った。これにより、カルボキシ基を有するポリウレタンを含有する溶液(以下、「ポリウレタン溶液A4」と記す。)を得た。
得られたポリウレタン溶液A4の粘度は80000mPa・sであった。また、ポリウレタン溶液A4中に含有されるカルボキシ基を有するポリウレタン(以下、「ポリウレタンAU4」と記す。)の数平均分子量(Mn)は12000、重量平均分子量(Mw)は61000であり、分子量分布の広がりを表すパラメータMz/Mwは3.42と算出された。ポリウレタンAU4の酸価は25.0mgKOH/gであった。また、ポリウレタンAU4のx/(x+y+z)は0.015である。
(比較合成例5)
重合停止剤としてメチルエチルケトオキシムに代えてイソブタノール(和光純薬株式会社製)を用いた点以外は、実施合成例4と同様にして、カルボキシ基を有するポリウレタンを含有する溶液(以下、「ポリウレタン溶液B5」と記す。)を得た。
得られたポリウレタン溶液B5の粘度は99000mPa・sであった。また、ポリウレタン溶液B5中に含有されるカルボキシ基を有するポリウレタン(以下、「ポリウレタンBU5」と記す。)の数平均分子量(Mn)は16000、重量平均分子量(Mw)は93000であり、分子量分布の広がりを表すパラメータMz/Mwは6.33と算出された。ポリウレタンBU5の酸価は25.1mgKOH/gであった。また、ポリウレタンBU5のx/(x+y+z)は0.015である。
(実施合成例5)
攪拌装置、温度計及びコンデンサーを備えた反応容器に、1分子中に3個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物であるポリエステルポリオール(株式会社クラレ製クラレポリオールF−3010、水酸基価57.6mgKOH/g、1分子当たり平均約3個のヒドロキシ基を有する、分子量2922)4.72gと、カルボキシ基含有ジオールである2,2−ジメチロールプロパン酸(パーストープ社製)6.57gと、ポリエステルジオール(DIC株式会社製のポリライト(登録商標)OD−X−2900、水酸基価53.4mgKOH/g)57.93gと、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル株式会社製、商品名BPEF)10.88gと、ジイソシアネート化合物であるメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(三井化学株式会社製)28.91gと、溶媒であるγ−ブチロラクトン(三菱化学株式会社製)110.0gと、を仕込んだ。
110〜130℃で12時間反応を行った後に、イソシアナト基のC=O伸縮振動に由来する吸収がほぼ観測されなくなったことを赤外分光法(IR)により確認したら、重合停止剤であるメチルエチルケトオキシム(宇部興産株式会社製)0.9gを滴下し、さらに100℃で0.5時間反応を行った。これにより、カルボキシ基を有するポリウレタンを含有する溶液(以下、「ポリウレタン溶液A5」と記す。)を得た。
得られたポリウレタン溶液A5の粘度は82000mPa・sであった。また、ポリウレタン溶液A5中に含有されるカルボキシ基を有するポリウレタン(以下、「ポリウレタンAU5」と記す。)の数平均分子量(Mn)は12000、重量平均分子量(Mw)は80000であり、分子量分布の広がりを表すパラメータMz/Mwは4.45と算出された。ポリウレタンAU5の酸価は25.0mgKOH/gであった。また、ポリウレタンAU5のx/(x+y+z)は0.016である。
(酸価の測定)
合成したポリウレタンの酸価の測定方法について説明する。ポリウレタン溶液中の溶媒を加熱下で減圧留去してポリウレタンを得て、JIS K0070に規定された電位差滴定法に準拠して酸価を測定した。電位差滴定法による酸価の測定には、例えば、京都電子工業社製の電位差自動滴定装置AT−510と複合ガラス電極C−173を用いることができる。
(ポリウレタンの数平均分子量、重量平均分子量、Mz/Mwの測定)
ポリウレタンの数平均分子量、重量平均分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算の数平均分子量、重量平均分子量である。Mz/MwもGPCによって測定される。GPCの測定条件は、前述の通りである。
(ポリウレタン溶液の粘度の測定)
ポリウレタン溶液の粘度は、コーン/プレート型粘度計(Brookfield社製、型式DV−II+Pro、スピンドルの型番CPE−52)を用いて、温度25.0℃、回転速度5rpmの条件で測定した。なお、測定値は、スピンドルの回転開始から7分経過後に測定した粘度である。また、粘度の測定においては、ポリウレタン溶液を約0.8g使用した。
<主剤配合物の製造>
ポリウレタン溶液A1にγ−ブチロラクトンを添加して固形分濃度を40質量%に調整したもの160.0質量部と、シリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名アエロジルR−974)6.3質量部と、硬化促進剤であるメラミン(日産化学工業株式会社製)0.72質量部と、ジエチレングリコールジエチルエーテル8.4質量部とを、三本ロールミル(株式会社井上製作所製、型式S−4 3/4×11)を用いて混合した。そこに、消泡剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名TSA750S)2.0質量部を添加して、スパチュラを用いて混合して、主剤配合物C1を得た。
ポリウレタン溶液に含有されるポリウレタンが有するカルボキシ基と硬化促進剤とが同モル量になるように、硬化促進剤の添加量を調整した点以外は、主剤配合物C1と同様にして、ポリウレタン溶液A2〜A5又はB1〜B5と上記の他の成分とを混合して、主剤配合物C2〜C5及びD1〜D5をそれぞれ得た。ポリウレタン溶液に含有されるポリウレタンが有するカルボキシ基のモル量は、ポリウレタンの酸価を用いて算出した。
<硬化剤溶液の製造>
攪拌装置、温度計及びコンデンサーを備えた容器に、表1に示すエポキシ化合物(硬化剤)と、溶解後のエポキシ化合物の濃度が12質量%となる量のジエチレングリコールジエチルエーテルとを投入し、攪拌しながら容器の内温を40℃に昇温した後に、30分間攪拌を継続した。エポキシ化合物が完全に溶解したことを確認したら容器の内温を室温まで冷却し、エポキシ化合物溶液を得た。これらのエポキシ化合物溶液を硬化剤溶液E1〜E5とする。なお、各エポキシ化合物の化学式を以下に示す。エポキシ化合物と化学式の対応は、表1に示すとおりである。
Figure 2021095458
Figure 2021095458
Figure 2021095458
Figure 2021095458
<硬化性組成物の製造>
90.0質量部の主剤配合物C1と4.0質量部の硬化剤溶液E1とをプラスチック容器に入れ、スパーテルを用いて室温で5分間攪拌して混合し、硬化性組成物F1を得た。硬化性組成物F1の25℃における粘度は、37000mPa・sであった。
硬化性組成物の粘度は、コーン/プレート型粘度計(Brookfield社製、型式DV−II+Pro、スピンドルの型番CPE−52)を用いて、温度25.0℃、回転速度10rpmの条件で測定した。なお、測定値は、スピンドルの回転開始から7分経過後に測定した粘度である。また、粘度の測定においては、硬化性組成物を約0.6g使用した。
また、表2、3に示すように、主剤配合物として主剤配合物C2〜C5及びD1〜D5のいずれかを用い、硬化剤溶液として硬化剤溶液E1〜E5のいずれかを用い、硬化剤溶液の使用量を下記式で算出される量として、硬化性組成物F1の場合と同様の操作により硬化性組成物F2〜F9及びG1〜G5を得た。
主剤配合物90.0質量部に対する硬化剤溶液の使用量=〔使用する主剤配合物中のポリウレタンの酸価/40(ポリウレタンAU1の酸価)〕×〔使用する硬化剤溶液のエポキシ当量/120(硬化剤溶液E1のエポキシ当量)〕
なお、上記式で算出される使用量は、硬化性組成物F2〜F9及びG1〜G5を製造する際に使用する硬化剤溶液の量が、硬化性組成物F1を製造する際に使用した硬化剤溶液の量の何倍量であるかを示すものである。
Figure 2021095458
Figure 2021095458
<硬化性組成物の消泡性の評価>
次に、硬化性組成物F1〜F9及びG1〜G5の印刷時の消泡性を評価した。評価方法を以下に説明する。
ポリイミド基材(東レ・デュポン社製のカプトン(登録商標))上にスクリーン印刷版を載置し、さらにスクリーン印刷版上に硬化性組成物15gを乗せて、ステージ移動時間0.5秒の条件で仮印刷を行った。その後、別のポリイミド基材上にスクリーン印刷版を移し、さらにスクリーン印刷版上に硬化性組成物15gを乗せて、ステージ移動時間0.5秒の条件で本印刷を行った。このとき、ポリイミド基材上に印刷された硬化性組成物に生じた泡が消失するまでの時間(消泡時間)を、目視により測定した。
消泡時間の測定が終わったら、さらに別のポリイミド基材上にスクリーン印刷版を移し、同様に印刷を行って消泡時間を測定した。この操作を繰り返して、消泡時間の測定を合計9回行い、これらの平均値をその硬化性組成物の消泡時間とし、消泡時間の長さで硬化性組成物の消泡性を評価した。結果を表2、3に示す。
なお、使用したスクリーン印刷版は、線径60μm、メッシュ数150本/インチのステンレスメッシュ版(SUS#150−線径60番)である。
<硬化性組成物の糸引き性の評価>
次に、硬化性組成物F1〜F9及びG1〜G5の印刷時の糸引き性を評価した。評価方法を以下に説明する。
上記の消泡性の評価の印刷時において、スクリーン印刷版をポリイミド基材から引き離すステージ移動の際に、ポリイミド基材上に印刷された硬化性組成物とスクリーン印刷版との間に、繊維状の硬化性組成物が残存する糸引き現象が発生するか否かを観察した。本印刷を9回行うが、糸引き現象が発生するまでの印刷回数により、糸引き性を評価した。結果を表2、3に示す。
<オーバーコート膜とフレキシブル配線板の評価>
硬化性組成物F1〜F9及びG1〜G5を用いて、オーバーコート膜を有するフレキシブル配線板(実施例1〜9及び比較例1〜5)を製造し、印刷時に発生する汚染物と付着性の評価を行った。
(印刷時に発生する汚染物の評価)
フレキシブル銅張り積層板(住友金属鉱山株式会社製、グレード名:エスパーフレックス、銅厚8μm、ポリイミド厚38μm)のポリイミド上に、乾燥後の膜厚が10μmになるように、硬化性組成物をスクリーン印刷により塗工した。硬化性組成物が印刷されたフレキシブル銅張り積層板を、温度80℃の熱風循環式乾燥機に30分間入れ、その後に温度120℃の熱風循環式乾燥機に60分間入れて、硬化性組成物を硬化(1次硬化)させた。
上記試験片を、オーバーコート膜が形成されている面を内側にしてV字状に折り曲げ、ガラス製プレパラート上に置いた。その際には、試験片のオーバーコート膜が形成されている面とガラス製プレパラートの板面とが対向するようにした。すなわち、V字状に折り曲げられた試験片の2つの端部が、ガラス製プレパラートの板面に接し、屈曲部がガラス製プレパラートの板面から最も離れた位置に配されるように、試験片をガラス製プレパラート上に置いた。そして、試験片の屈曲部とガラス製プレパラートの板面との距離が5mmとなるように、屈曲部の折り曲げ角度を調整して、試験片の2つの端部をガラス製プレパラートの板面にポリイミドテープで固定した。これにより、試験片上のオーバーコート膜とガラス製プレパラートの板面とは直接接触しない状態となる。
続いて、試験片の屈曲部に対して、250℃に加熱された加熱体(圧着機(SEIWA社製ZH−50))を、上方からガラス製プレパラートの板面に向かって垂直に押し当て、試験片の屈曲部とガラス製プレパラートの板面との距離が4mmとなったところで静止させ、30秒間保持した。
次に、ガラス製プレパラートに付着した油状物を目視で確認することで、汚染物の発生を評価した。評価結果を表2、3に示す。
表2、3においては、付着物(油状物)が確認されなかった場合は「A」、若干の付着物が確認された場合は「B」、付着物が確認された場合は「C」で示してある。
(付着性の評価)
上記試験片上のオーバーコート膜に、アセトンを十分に含ませた綿棒を約100gの荷重を掛けて押しつけた状態で、1cmの距離を10往復擦った。そして、綿棒に色が付着するか否か目視で確認した。評価結果を表2、3に示す。
表2、3においては、綿棒に着色が確認されなかった場合は「A」、綿棒が僅かに着色するか又はオーバーコート膜に擦り跡が残った場合は「B」、綿棒に着色が確認されるか又は試験片のベース基材が露出した場合は「C」で示してある。
表2、3に示す結果から、硬化性組成物F1〜F9の硬化物からなるオーバーコート膜を有するフレキシブル配線板(実施例1〜9)は、硬化性組成物G1〜G5の硬化物からなるオーバーコート膜を有するフレキシブル配線板(比較例1〜5)と同等以上の優れた印刷性(糸引き性が低く且つ消泡性に優れる)、低汚染性、及び低付着性を有することが分かる。よって、硬化性組成物F1〜F9の硬化物からなる膜は、フレキシブル配線板用の絶縁保護膜として有用であり、特に、2−metal法によるフレキシブル配線板の絶縁保護膜として有用である。

Claims (18)

  1. 1分子中に2個のイソシアナト基を有するジイソシアネート化合物OCN−R1−NCO及び下記式(1)で表されるポリオール化合物をモノマーとして反応してウレタン結合を形成して得られる第1のウレタン構造単位と、下記式(2)で表される第2のウレタン構造単位と、下記式(3)で表される第3のウレタン構造単位と、を有し、
    前記第1のウレタン構造単位中のR1は、炭素数6以上14以下の2価の有機基を示し、R2は、炭素数1以上14以下のn価の有機基を示し、nは3以上の整数であり、
    前記第2のウレタン構造単位中のR3は、炭素数6以上14以下の2価の有機基を示し、R4は、炭素数1以上14以下の3価の有機基を示し、
    前記第3のウレタン構造単位中のR5は、炭素数6以上14以下の2価の有機基を示し、R6は、その構造中にカルボキシ基を有さず、炭素数1以上14以下の2価の有機基を示し、
    z平均分子量Mzと重量平均分子量Mwの比Mz/Mwが5.0以下であるポリウレタン。
    Figure 2021095458
    Figure 2021095458
    Figure 2021095458
  2. 前記第1のウレタン構造単位中のR2のうち少なくとも1個が、下記式(4)、下記式(5)、下記式(6)、又は下記式(7)で表される化学構造を有する請求項1に記載のポリウレタン。
    Figure 2021095458
    Figure 2021095458
    Figure 2021095458
    Figure 2021095458
  3. 当該ポリウレタン中の前記R2のモル量をx、前記R4のモル量をy、前記R6のモル量をzとしたとき、0.001≦x/(x+y+z)≦0.1なる関係を満たす請求項1又は請求項2に記載のポリウレタン。
  4. 数平均分子量が10000以上50000以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリウレタン。
  5. 酸価が10mgKOH/g以上70mgKOH/g以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリウレタン。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリウレタンの製造方法であって、ポリウレタンを製造する重合反応を重合停止剤によって停止する重合停止工程を備え、前記重合停止剤としてオキシム化合物を用いるポリウレタンの製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリウレタン(a)と、溶剤(b)と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)と、を含有する硬化性組成物。
  8. 前記エポキシ化合物(c)が、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を含む請求項7に記載の硬化性組成物。
  9. 前記ポリウレタン(a)と前記溶剤(b)と前記エポキシ化合物(c)との総量に対する前記溶剤(b)の含有量の割合が25質量%以上75質量%以下であり、前記ポリウレタン(a)と前記エポキシ化合物(c)との総量に対する前記ポリウレタン(a)の含有量の割合が40質量%以上99質量%以下である請求項7又は請求項8に記載の硬化性組成物。
  10. 無機微粒子及び有機微粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の微粒子(d)をさらに含有する請求項7〜9のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
  11. 前記微粒子(d)がシリカ微粒子を含む請求項10に記載の硬化性組成物。
  12. 前記微粒子(d)がハイドロタルサイト微粒子を含む請求項10に記載の硬化性組成物。
  13. 前記ポリウレタン(a)と前記溶剤(b)と前記エポキシ化合物(c)と前記微粒子(d)との総量に対する前記溶剤(b)の含有量の割合が25質量%以上75質量%以下、前記微粒子(d)の含有量の割合が0.1質量%以上60質量%以下であり、
    前記ポリウレタン(a)と前記エポキシ化合物(c)との総量に対する前記ポリウレタン(a)の含有量の割合が40質量%以上99質量%以下である請求項10〜12のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
  14. 請求項7〜13のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化物。
  15. 請求項14に記載の硬化物を含有するオーバーコート膜。
  16. 配線が形成されたフレキシブル基板の表面のうち前記配線が形成されている部分が、請求項15に記載のオーバーコート膜によって被覆されたフレキシブル配線板。
  17. 前記配線が錫メッキ銅配線である請求項16に記載のフレキシブル配線板。
  18. 請求項7〜13のいずれか一項に記載の硬化性組成物を、配線が形成されたフレキシブル基板の表面のうち前記配線が形成されている部分に膜状に配した後に、前記膜状の硬化性組成物を硬化させてオーバーコート膜とするフレキシブル配線板の製造方法。
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