JP2021095440A - 樹脂組成物、伸縮性導体、電子デバイスおよび粘着フィルム - Google Patents

樹脂組成物、伸縮性導体、電子デバイスおよび粘着フィルム Download PDF

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Kazutoshi Oba
一敏 大庭
雪恵 松田
Yukie Matsuda
雪恵 松田
雄貴 水野
Yuki Mizuno
雄貴 水野
睦 中里
Mutsumi Nakazato
睦 中里
後藤 淳
Atsushi Goto
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Abstract

【課題】伸縮性に優れ、伸長時にクラックの発生を効果的に抑制できる樹脂組成物、伸縮性導体、電子デバイスおよび粘着フィルムを提供する。【解決手段】本発明に係る樹脂組成物は、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を主体とするブロック共重合体(C)を含有し、ブロック共重合体(C)に対するヨウ素含有率(質量%)が特定範囲にある。ブロック共重合体(C)は、有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤残基を含み、水酸基等の官能基(K)を有し、Mnを特定範囲とし、ブロック構造がA−B−Aのトリブロック構造または[A−B]qXの星形ブロック構造である(但し、qは2〜6の整数であり、重合体ブロック(A)のTgは20℃以上であり、トリブロック構造の場合の重合体ブロック(B)のTgが20℃未満、星形ブロック構造の場合の[B]qXのTgが20℃未満であり、Xは開始剤残基等である)。【選択図】図1

Description

本発明は、ブロック共重合体(C)を含む樹脂組成物に関する。更に、前記樹脂組成物から形成されてなる伸縮性導体、当該伸縮性導体を有する電子デバイス、前記樹脂組成物から形成された粘着層を有する粘着フィルムに関する。
様々な産業分野において粘着材料や導電材料が用いられており、これらの材料の更なる高機能化に関して種々の提案がなされている。例えば、粘着材料として、水酸基またはカルボキシル基を有するリビングラジカル重合により得られた(メタ)アクリル系の粘着テープ(特許文献1)や、偏光板用粘着剤組成物としてカルボキシル基を有するトリブロックポリマーを用いた粘着剤が提案されている(特許文献2)。
また、導電材料として、伸縮性を有する基材と、特定の高導電性材料からなる第一導電層と、特定の高伸長性導電材料からなる第二導電層を有する導電層を備えてなる柔軟導電部材が開示されている(特許文献3)。更に、エラストマーからなる伸縮部と、この伸縮部に分散された少なくとも1種類の導電粒子とからなる混合物から構成され、この混合物が有する界面の1つもしくは複数の位置に、この混合物の内部側よりも導電粒子を密に集合させた導通部が形成された伸縮性導電体が提案されている(特許文献4)。
更に、X−Y−Xで表されるブロック共重合体(C)(但し、XおよびXは各々独立して、ガラス転移点Tgが0℃以上のポリマー単位を表し、Yはガラス転移点Tgが0℃未満のポリマー単位を表す)、およびスチレン系エラストマー等の官能基含有エラストマーの少なくとも一方と、タップ密度が2.0g/cm以下である連鎖状銀粉とを含有する導電性組成物が開示されている(特許文献5)。また、重量平均分子量が120万〜1000万の(メタ)アクリル系エラストマーおよび導電材を含有する導電性材料が提案されている(特許文献6)。
国際公開第2016/067406号 特開2017−19974号公報 国際公開第2015/119217号 国際公開第2014/080470号 国際公開第2017/026420号 国際公開第2018/055890号
生体センシング等のヘルスケア機器、ウェアラブル機器、並びにロボティックスなどの分野の進展に伴い、伸縮性に優れた導電材料および粘着材料が求められている。これらの用途においては、それぞれの材料の特性(導電性、粘着性)に加えて、加工時または/および使用時に曲面部や可動部に追随可能な伸縮性が求められる。
曲面部や可動部に導電材料や粘着材料を用いると、繰り返し伸縮に伴う樹脂の構造破壊によって、樹脂自身にクラックが発生しやすいという問題がある。特に、導電材料の場合には導電材を添加するため、伸長時に樹脂から導電材が剥離して樹脂中に空隙(ボイド)が発生し、そこを起点としてクラックが生じやすくなる。また、粘着材料は、伸長に伴うクラックの他に伸縮に伴って被着体から剥離しやすいという問題もある。
なお、上記においては導電材料や粘着材料における課題について述べたが、それ以外の用途の樹脂組成物に対しても同様の課題が生じ得る。
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、伸縮性に優れ、伸長時にクラックの発生を効果的に抑制できるブロック共重合体(C)を含有する樹脂組成物、粘着フィルム並びに前記樹脂組成物から形成されてなる伸縮性導体およびこの伸縮性導体を含む電子デバイスを提供することを目的とする。
本発明者が鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
[1]: エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を主体とするブロック共重合体(C)を含有する樹脂組成物であって、
ブロック共重合体(C)は、数平均分子量が5,000〜500,000であり、有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤残基を含み、且つブロック構造が、重合体ブロック(A)−重合体ブロック(B)−重合体ブロック(A)のトリブロック構造、または[重合体ブロック(A)−重合体ブロック(B)]Xの星形ブロック構造であり(但し、qは2以上6以下の整数であり、重合体ブロック(A)のガラス転移温度は20℃以上であり、前記トリブロック構造の場合の重合体ブロック(B)のガラス転移温度および前記星形ブロック構造の場合の[重合体ブロック(B)]Xのガラス転移温度が20℃未満であり、Xは開始剤残基または/およびカップリング剤残基、またはその誘導体である。)、
ブロック共重合体(C)に、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ビニル基、加水分解性シリル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、エポキシ基、オキセタン基、フリル基、アセトアセチル基、オキサゾリジン基、ニトリル基およびリン酸基の少なくともいずれかの官能基(K)を少なくとも1以上有し、
ブロック共重合体(C)に対するヨウ素含有率が0.0001〜10,000質量ppmである、樹脂組成物。
[2]: ブロック共重合体(C)は、前記有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤残基を含む、以下の一般式(1)〜(3)のいずれかに記載の構造を有する、
Figure 2021095440
Figure 2021095440
Figure 2021095440
但し、Polymerization unitは、一般式(3)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を主体とする重合体ユニットであり、
は、Yからの分岐毎にそれぞれ独立に、エステル基、ケトン基およびアミド基からなる群より選択される2価の基、または直接結合であり、
Qは1価の分子末端基であり、Yからの分岐毎にそれぞれ独立に、前記分子末端基は、官能基、官能基を有していてもよい炭化水素基またはヨード基であり、
Yはp価の、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、
pは2〜6の整数であり、
、RおよびRはそれぞれ独立に、一般式(3)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、水素原子または置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であり、
およびRはそれぞれ独立に、一般式(3)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基または−CORであり、
は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基、−COR、シアノ基またはニトロ基であり、
とR、RとR4、とRおよびRとRはそれぞれ独立に、一般式(3)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、互いに結合して環を形成していてもよく、
は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基または置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であり、
11は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、
12はアルキレン基、アリーレン基およびアルキレンオキシ基からなる群より選ばれる2価の炭化水素基、または直接結合であり、
前記炭化水素基は、複素環を有していてもよく、それぞれ独立に、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基および芳香族炭化水素基の少なくともいずれかを有する、
ことを特徴とする[1]に記載の樹脂組成物。
[3]: 重合体ブロック(A)は官能基(K)を有し、重合体ブロック(B)には官能基(K)を有しないことを特徴とする[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]: 官能基(K)が、分子末端の少なくとも一部に導入されたことを特徴とする、[1]〜[3]いずれかに記載の樹脂組成物。
[5]: 重合体ブロック(A)が、メタクリル酸エステル由来の構造単位を50質量%以上含み、重合体ブロック(B)がアクリル酸エステル由来の構造単位を70質量%以上含むことを特徴とする、[1]〜[4]いずれかに記載の樹脂組成物。
[6]: 重合体ブロック(A)中にメチルメタクリレート由来の構造単位を50質量%以上含み、且つ重合体ブロック(B)中にブチルアクリレート由来の構造単位を70質量%以上含むことを特徴とする、[1]〜[5]いずれかに記載の樹脂組成物。
[7]: 前記エチレン性不飽和単量体の90質量%以上が、疎水性のエチレン性不飽和単量体であることを特徴とする、[1]〜[6]いずれかに記載の樹脂組成物。
[8]: 多分散度(Mw/Mn)が2.5以下であることを特徴とする[1]〜[7]いずれかに記載の樹脂組成物。
[9]: ブロック共重合体(C)中の重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)に対する重合体ブロック(A)の含有率が1〜50質量%の範囲にあることを特徴とする[1]〜[8]いずれかに記載の樹脂組成物。
[10]: ブロック共重合体(C)1gあたりに含有される官能基(K)のモル濃度が、0.00001〜3.0mmol/gの範囲にあることを特徴とする[1]〜[9]いずれかに記載の樹脂組成物。
[11]: ブロック共重合体(C)と架橋し得る架橋剤を含有することを特徴とする[1]〜[10]いずれかに記載の樹脂組成物。
[12]: 更に、導電性微粒子および導電性ナノワイヤからなる群より選ばれる少なくとも1種の導電材を含有する、[1]〜[11]いずれかに記載の樹脂組成物。
[13]: [12]に記載の樹脂組成物から形成されてなる伸縮性導体。
[14]: [13]記載の伸縮性導体を有する電子デバイス。
[15]: [1]〜[12]のいずれかに記載の樹脂組成物から形成された粘着層を有する粘着フィルム。
本発明によれば、伸縮性に優れ、伸長時にクラックの発生を効果的に抑制できる樹脂組成物、粘着フィルム並びに前記樹脂組成物から形成されてなる伸縮性導体およびこの伸縮性導体を含む電子デバイスを提供できるという優れた効果を有する。
製造例1に係るブロック共重合体(C)の製造方法を説明するための模式図。 製造例2に係るブロック共重合体(C)の製造方法を説明するための模式図。 製造例4に係るブロック共重合体(C)の製造方法を説明するための模式図。 製造例5に係るブロック共重合体(C)の製造方法を説明するための模式図。 製造例5に係るブロック共重合体(C)の製造方法を説明するための模式図。
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。本明細書において特定する数値は、実施形態または実施例に開示した方法により求められる値である。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれる。また、本発明のフィルムは、シート、テープおよびラベルと同義である。また、特に言及しない限り、各種成分は、それぞれ独立に、単独または2種類以上を併用できる。
<樹脂組成物>
本発明に係る樹脂組成物は、以下のブロック共重合体(C)を含有し、且つ、ブロック共重合体(C)に対するヨウ素含有率が0.0001〜10,000質量ppm(以下、ppm)である。ブロック共重合体(C)は、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を主体とし、ブロック共重合体(C)に、以下の官能基(K)を少なくとも1以上有する。即ち、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ビニル基、加水分解性シリル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、エポキシ基、オキセタン基、フリル基、アセトアセチル基、オキサゾリジン基、ニトリル基およびリン酸基の少なくともいずれかの官能基(K)を少なくとも1以上有する。官能基(K)は、ブロック共重合体(C)のいずれかに含まれていればよく、重合体ブロック(A)または/および重合体ブロック(B)の他、開始剤残基およびカップリング剤残基に含まれていてもよい。
ここで、重合体ブロック(A)の連鎖末端に官能基(K)が形成されている態様は、重合体ブロック(A)に官能基(K)を有しているものとする。ブロック共重合体(C)には、官能基(K)以外の官能基(以下、官能基(L)という)を含んでいても、含んでいなくてもよい。
ブロック共重合体(C)の数平均分子量は5,000〜500,000である。また、ブロック共重合体(C)のブロック構造は重合体ブロック(A)−重合体ブロック(B)−重合体ブロック(A)のトリブロック構造、または[重合体ブロック(A)−重合体ブロック(B)]Xの星形ブロック構造である。但し、qは2以上6以下の整数である。また、重合体ブロック(A)のガラス転移温度を20℃以上とし、前記トリブロック構造の場合の重合体ブロック(B)のガラス転移温度を20℃未満とし、前記星形ブロック構造の場合の[重合体ブロック(B)]Xのガラス転移温度を20℃未満とする。Xは開始剤残基または/およびカップリング剤残基、またはその誘導体である。なお、以降の説明において重合体ブロック(A),重合体ブロック(B)をそれぞれ、単にA,Bと表記することがある。
本明細書において「エチレン性不飽和単量体」とは、重合性のエチレン性不飽和基を分子内に1つ以上有する単量体をいう。なお、非重合性のエチレン性不飽和基が含まれていてもよいことは言うまでもない。また、「主体とする」とは、ブロック共重合体(C)の合計質量に基づいてエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を70質量%以上含むことをいう。また、「トリブロック構造」とは、ブロック構造のうち、重合体ブロック(A)−重合体ブロック(B)−重合体ブロック(A)の3つのブロックからなる構造をいい、「星形ブロック構造」とは重合体ブロック(B)−重合体ブロック(A)のジブロック体が、Xを起点として複数(2〜6)結合されてなる(Xと重合体ブロック(B)が結合されてなる)構造をいう。
更に、「開始剤残基」とは、開始剤由来の部分構造をいい、ブロック共重合体(C)中の開始剤に由来する残基を意味する。また、「カップリング剤残基」とは、カップリング剤由来の部分構造をいい、ブロック共重合体(C)中のカップリング剤に由来する残基を意味する。また、「その誘導体」とは、開始剤残基または/およびカップリング剤残基の一部が化学変換された構造をいう。例えば、ブロック共重合体(C)の合成時に、開始剤残基または/およびカップリング剤残基の一部が置換、付加された構造が含まれる。ブロック共重合体(C)のいずれかに他の官能基(L)(例えば、メルカプト基、ヒドラジド基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、アジリジン基、アセタール基、スピロオルトエステル基、活性エステル基、活性エーテル基、環状カーボネート基、イソプロペニル基、アルデヒド基、プロパルギル基、アジド基、アルコキシシリル基、アミド基、ハロゲンなど)を含んでいてもよい。ここで、活性エステル、活性エーテル基とは、架橋反応に利用できる活性化されたエステル結合をいう。例えば、メチルアクリルアミドメトキシ酢酸などの化合物が挙げられ、二重結合、活性エステル基、活性エーテル基を持っているモノマーであり、アクリル樹脂の架橋に利用されている。なお、広義には、エステル結合、エーテル結合なども官能基(L)に分類され得るが、重合体ブロック(A)または/および重合体ブロック(B)にこれらの結合が含まれていてもよいことは言うまでも無い。
また、本明細書において「エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位」には、エチレン性不飽和単量体の残基の他、エチレン性不飽和単量体の残基の一部分をブロック共重合体(C)の重合時または重合後に反応性化合物と反応させて得られたエチレン性不飽和単量体の残基の誘導体も含む。例えば、エチレン性不飽和単量体の残基の一部分に、単量体に元々含まれていない官能基(K)、官能基(L)または/および置換基が導入された構造単位も含まれる。なお、単量体自体に官能基(K)、官能基(L)または/および置換基が含まれていてもよいことは言うまでもない。また、ブロック共重合体(C)内の側基同士、側鎖同士、または側基と側鎖が互いにまたは反応性化合物を介して結合して環を形成した構造を含む。
重合体ブロック(A)のガラス転移温度(以下、Tgともいう)が20℃以上であるとは、ブロック共重合体(C)中のそれぞれの重合体ブロック(A)のTgが20℃以上であることをいう。重合体ブロック(A)のTgは、重合体ブロック(A)のブロックが得られた段階でTgを測定することにより確認することができる。ここで、それぞれの重合体ブロック(A)が20℃以上である場合、ブロック共重合体(C)から求められる重合体ブロック(A)全体のTgも20℃以上となる。即ち、各重合体ブロック(A)を合計した全体の重合体ブロック(A)(以下、<重合体ブロック(A)>Totalと表記する)のTgと、それぞれの重合体ブロック(A)のTgは相関関係があり、<重合体ブロック(A)>TotalのTgを求め、このTgにより、重合体ブロック(A)それぞれのTgが20℃以上の条件を満たすか否かを判断することができる。
本明細書における重合体ブロック(A)のTgは、ブロック共重合体(C)が得られた段階でDSC測定して得られた曲線において認められる<重合体ブロック(A)>TotalのTgであり、JIS K 7121:2012プラスチックの転移温度測定方法に基づき測定を行い、当該JIS 9.3記載の補外ガラス転移開始温度(Tig)により求められる値とする。<重合体ブロック(A)>Totalに由来するTgは、同様の化学構造を有するブロックではない重合体のTgと同一または近傍の数値となるので、トリブロック構造の場合には重合体ブロック(B)のTg、星形ブロック構造の場合には[重合体ブロック(B)]XのTgと容易に区別が付けられる。<重合体ブロック(A)>Totalの上記Tg、およびそれぞれの重合体ブロック(A)のTgは、ブロック共重合体(C)の連鎖末端、即ち、重合体ブロック(A)の連鎖末端の構造によって値は大きく変わらないので、本明細書においては、重合体ブロック(A)の連鎖末端も含めて、それぞれの重合体ブロック(A)のTgおよび<重合体ブロック(A)>TotalのTgを判断するものとする。
但し、各重合体ブロック(A)の単量体に由来する構造単位がブロック毎に異なるケースなどにおいて、DSC測定して得られた曲線において、複数のTgが観測される場合には、<重合体ブロック(A)>TotalのTgに代えて、それぞれの重合体ブロック(A)のTgにより判断するものとする。その場合には、各重合体ブロック(A)の重合が完了した時点でサンプリングしてTgを求める。或いは、それぞれの重合体ブロック(A)と同様の化学構造を有する重合体のTgと相関があるので、それぞれの対応する重合体のTgをFoxの式より求め、Tgが20℃以上であるか否かにより判断してもよい。FOXの式は、下記式(1)から求められる値である。
1/(Tg+273.15)=Σ[W/(Tg+273.15)] ・・・(1)
式(1)中、Tgは重合体ブロック(A)のTg(℃)であり、Wは重合体ブロック(A)を構成する単量体aの質量分率であり、Tgは単量体aの単独重合体(ホモポリマー)のTg(℃)である。なお、Tgはホモポリマーの特性値として広く知られており、例えば、「POLYMERHANDBOOK、THIRDEDITION」に記載されている値や、メーカのカタログ値を用いることができる。
ブロック共重合体(C)がトリブロック構造の場合には重合体ブロック(B)そのもののTgを20℃未満とし、星形ブロック構造の場合には[重合体ブロック(B)]XのTgを20℃未満とする。ここで、トリブロック構造の重合体ブロック(B)、および星形ブロック構造の[重合体ブロック(B)]Xを総称して<重合体ブロック(B)[X]>と表記する。
<重合体ブロック(B)[X]>のTgは、ブロック共重合体(C)が得られた段階でDSC測定して得られた曲線において認められる<重合体ブロック(B)[X]>のTgであり、JIS K 7121:2012プラスチックの転移温度測定方法に基づき測定を行い、当該JIS 9.3記載の補外ガラス転移開始温度(Tig)により求められる値とする。<重合体ブロック(B)[X]>のTgは、同様の化学構造を有する重合体のTgと同一または近傍の数値となるので重合体ブロック(A)に由来するTgと容易に区別が付けられる。
ブロック共重合体(C)を用いることにより、伸縮性に優れ、伸長時にクラックの発生を効果的に抑制できる。以下、ブロック共重合体(C)の好適な実施形態についてさらに詳細に説明する。
ブロック共重合体(C)は、ブロック構造が、A−B−Aのトリブロック構造、または[A−B]Xの星形ブロック構造であればよく、重合体ブロック(A)の連鎖末端に開始剤残基またはその誘導体、官能基(K)、官能基(L)、不活性基、架橋性基、置換基などを有していてもよいことは言うまでもない。
星形ブロック構造の場合の開始剤残基または/およびカップリング剤残基、またはその誘導体Xの分子量は特に限定されない。例えば、50〜2,500とすることができる。重合体ブロック(A)の連鎖末端に任意で有していてもよい開始剤残基またはその誘導体の分子量も同様に特に限定されず、例えば、50〜2,500程度とすることができる。
重合体ブロック(A)のTgは20℃以上であり、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが更に好ましく、100℃以上であることが特に好ましい。重合体ブロック(A)のTgの上限値は特に限定されないが、例えば300℃、250℃または200℃とすることができる。この重合体ブロック(A)のTgは、前述したように<重合体ブロック(A)>TotalのTgに読み替えられる(以降においても同様とする。)。即ち、<重合体ブロック(A)>Totalは20℃以上であり、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが更に好ましく、100℃以上であることが特に好ましい。同様に、<重合体ブロック(A)>Totalの上限値は特に限定されないが、例えば300℃、250℃または200℃とすることができる。
トリブロック構造の場合の重合体ブロック(B)のTg、並びに星形ブロック構造の場合の[重合体ブロック(B)]XのTg、即ち、<重合体ブロック(B)[X]>のTgは、20℃未満であり、10℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、−10℃以下であることが更に好ましく、−20℃以下であることが特に好ましい。<重合体ブロック(B)[X]>のTgの下限値は特に限定されないが、例えば−100℃、−90℃または−80℃とすることができる。
ブロック共重合体(C)におけるTgを前述のように調整し、且つ官能基(K)を有することにより、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)がミクロ相分離構造を形成し、応力緩和点を含む構造を形成し得る物理架橋を形成することができる。ブロック共重合体(C)が、ミクロ相分離構造を有し、且つ物理架橋を形成することによって、ブロック共重合体(C)の伸縮性を優れたものとすることができる。自己組織化(セグメントの集合)によって官能基(K)を互いに接近させることができる。官能基(K)の分布によって凝集力と応力緩和を更に付与し、ブロック共重合体(C)自体に自己粘着性を付与することができる。
重合体ブロック(A)のTgと<重合体ブロック(B)[X]>のTgの温度差は特に限定されないが、75℃以上であることが好ましく、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは125℃以上、特に好ましくは150℃以上である。75℃以上とすることにより、ミクロ相分離構造を促進し、物理架橋による効果をより効果的に引き出すことができる。
本明細書でいう数平均分子量(Mn)は、後述する実施例により求められる方法で求められる値である。ブロック共重合体(C)のMnは、5,000〜500,000とする。この範囲とすることにより、ブロック共重合体(C)を例えばフィルムとした場合に、伸縮性と強度を両立することができる。Mnの好ましい範囲は10,000〜400,000であり、より好ましい範囲は30,000〜300,000である。多分散度(Mw/Mn)は特に限定されないが、1〜2.5であることが好ましく、1〜2.0であることがより好ましく、1〜1.8であることが更に好ましく、ミクロ相分離構造の形成を促進する観点からは多分散度を1〜1.5、1〜1.3とすることが特に好ましい。
各重合体ブロック(A)のMnはそれぞれ異なっていてもよいが、伸縮性の観点からは実質的に同一であることが好ましい。同様に、各重合体ブロック(B)のMnはそれぞれ異なっていてもよいが、伸縮性の観点からは実質的に同一であることが好ましい。
エチレン性不飽和単量体中のエチレン性不飽和基の具体例としては、エチレン基、プロペニル基、ブテニル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリル基、アリルエーテル基、ビニルエーテル基、マレイル基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基、アセチルビニル基およびビニルアミド基が例示できる。「エチレン性不飽和単量体」は、(メタ)アクリル基がより好ましい。なお、「(メタ)アクリル」は「アクリル」、「メタクリル」およびこれらの混合物の両方を包含する。また、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」、「メタクリレート」およびこれらの混合物の両方を包含する。
各重合体ブロック(A)の単量体に由来する構造単位は、ブロック毎に異なる単量体に由来する構造単位から構成されていてもよいし、ブロック間で同一の単量体に由来する構造単位から構成されていてもよい。好ましくは、重合体ブロック(A)同士は、単量体に由来する構造単位の60質量%以上が互いに共通していることが好ましく、70質量%が共通していることがより好ましく、80質量%以上が共通していることが更に好ましい。なお、ここで共通するとは、単量体の配列までは問わず、成分が共通していることを意味する。
同様に、重合開始剤残基または/およびカップリング剤残基、またはその誘導体Xを有する場合において、重合体ブロック(B)は、ブロック毎に異なる単量体に由来する構造単位から構成されていてもよいし、ブロック間で同一の単量体に由来する構造単位から構成されていてもよい。好ましくは、重合体ブロック(B)同士は、単量体に由来する構造単位の60質量%以上が互いに共通していることが好ましく、70質量%以上が共通していることがより好ましく、80質量%以上が共通していることが更に好ましい。
ブロック共重合体(C)の結合形式は、伸縮性および機械的強度をより効果的に高める観点からは、A−B−A型のトリブロック構造、[A−B]Xのうちのq=2の2分岐構造、q=3の3分岐構造が好ましい。重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)はそれぞれ独立に、1種単独または2種以上の単量体由来の構造単位を有する。
ブロック共重合体(C)の合計質量に基づいてエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位の含有量は、ブロック共重合体(C)の合計質量に対して80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であり、重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)のミクロ相分離構造をより効果的に促進する観点からは、開始剤残基または/およびカップリング剤残基、またはその誘導体Xおよびブロック共重合体(C)の末端の構造以外がエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位(100質量%)からなるブロック共重合体(C)が好ましい。
(官能基(K))
ブロック共重合体(C)は、少なくとも1以上の官能基(K)基を有する。官能基(K)基は、重合体ブロック(A)または/および重合体ブロック(B)の主鎖に直結する側基、主鎖の側鎖、開始剤残基、カップリング剤残基、分子末端の少なくともいずれかに導入できる。ここで分子末端とは、ブロック共重合体(C)の分子末端部をいい、重合体ブロック(A)の連鎖末端に結合する態様の他、重合体ブロック(A)と結合する重合開始剤残基などの分子末端部も含む。また、分子末端の少なくとも一部とは、トリブロック構造または星型ブロック構造に由来して2〜6有する分子末端の少なくとも1つに官能基(K)が、または官能基(K)を含む基が導入されていることをいう。
重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)の相分離構造を促進する観点からは、官能基(K)が重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)のいずれか一方に含まれていることが好ましい。ブロック共重合体(C)自身の自己粘着特性を引き出す観点から、また、架橋剤と組み合わせて耐久性および伸縮性を高める観点からは、重合体ブロック(A)に官能基(K)を導入させ、重合体ブロック(B)に官能基(K)を導入させない態様が好ましい。官能基(K)は、1種単独または2種以上を併用できる。
ブロック共重合体(C)に官能基(K)を導入する方法としては、官能基(K)を有する単量体を用いて直接官能基(K)を導入する方法、官能基(K)の保護基を有する単量体を用いて前記保護基を導入し、任意のタイミングで官能基(K)に変換する方法がある。また、例えば、下記化学式(10)のような官能基(K)を有する重合開始剤(XI)を用いて単量体を共重合する方法、官能基(K)を有するカップリング剤を用いてブロック共重合体(C)を製造する方法、変性(化学変換)により官能基(K)を導入する方法が挙げられる。変性による導入方法は、官能基(K)に応じて適宜選択すればよい。変性により官能基(K)を導入する方法は、後述する。
Figure 2021095440
水酸基を含む単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)に水酸基が結合している単量体を含む、以下の例が挙げられる。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルヘキシル)−メチルアクリレート、クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート類、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート類、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、α位水酸基メチル置換アクリレート類が挙げられる。
カルボキシル基を含む単量体としては、メタクリル酸、アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)にカルボキシル基が結合している単量体を含む、以下の例が挙げられる。例えば、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチル−コハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−フタル酸が挙げられる。
アミノ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)にアミノ基が結合している単量体が例示できる。具体的には、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート四級化物が挙げられる。
ビニル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)にビニル基が結合している単量体、2個以上の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンのポリアルキレングリコール付加物のメタクリル酸エステル等の、2個以上の付加重合性基を有するメタクリル酸系モノマー類が挙げられる。
また、各種ビニル基を変性(化学変換)によって導入してもよい。具体的には、反応性を有する基を有するブロック共重合体(C)を合成した後、その反応性を有する基を変性(化学変換)してビニル基を導入する方法が例示できる。例えば、水酸基を含むブロック共重合体(C)を得た後、このブロック共重合体(C)をイソシアネートと(メタ)アクリレートを持つ化合物と反応させることで、ブロック共重合体(C)にビニル基を導入する方法が挙げられる。ブロック共重合体(C)への導入位置は、主鎖中の側鎖、分子末端、開始剤残基、カップリング剤残基などが例示できる。
加水分解性シリル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)に加水分解性シリル基が結合している単量体が挙げられる。具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する単量体が例示できる。また、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、が挙げられる。
イソシアネート基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)にイソシアネート基が結合している(メタ)アクリレートが挙げられる。例えば、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナートが挙げられる。
また、ブロックイソシアネート基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)にブロックイソシアネート基が結合している単量体が挙げられる。ブロックイソシアネート基は、遊離のイソシアネート基を反応させないためにブロック剤でイソシアネート基をブロックした構造を有する基である。ブロックイソシアネート基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)に、ブロックイソシアネート基を含む基が結合している単量体を使用できる。例えば、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート、2−[0−(1'−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチルメタクリレートが挙げられる。
エポキシ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)にエポキシ基が結合している単量体が挙げられる。例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸のC1〜C24グリシジルエステルが挙げられる。
オキセタン基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)にオキセタン基が結合している単量体が挙げられる。例えば、(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
フリル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)にフリル基が結合している単量体が挙げられる。例えば、フルフリルアルコールと2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートの反応物、フルフリルアルコールと2−メタクロイルオキシエチルイソシアネートの反応物、フルフリルアミンと2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートの反応物、フルフリルアミンと2−メタクロイルオキシエチルイソシアネートの反応物、フルフリルアルコールとグリシジルメタクリレートの反応物、フルフリルアミンとグリシジルメタクリレートの反応物、2−フランカルボン酸とグリシジルメタクリレートの反応物、コハク酸変性フルフリルアルコールとグリシジルメタクリレートの反応物、コハク酸変性フルフリルアミンとグリシジルメタクリレートの反応物、カプロラクトン変性フルフリルアルコールとグリシジルメタクリレートの反応物、カプロラクトン変性フルフリルアミンとグリシジルメタクリレートの反応物、カプロラクトン変性フルフリルアルコールと2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートの反応物、カプロラクトン変性フルフリルアミンと2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートの反応物、カプロラクトン変性フルフリルアルコールと2−メタクロイルオキシエチルイソシアネートの反応物、カプロラクトン変性フルフリルアミンと2−メタクロイルオキシエチルイソシアネートの反応物、フルフリル(メタ)アクリレート等のフリル基を有する(メタ)アクリレート、ビニルフルフリルエーテル、アリルフルフリルエーテルが例示できる。単量体自身の安定性の点と、良好な重合性が得られる点からフルフリルメタクリレートを使用することがさらに好ましい。
アセトアセチル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好適には1〜8)に、アセトアセチル基が結合している単量体がある。例えば、(メタ)アクリル酸2−アセトアセトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−アセトアセトキシプロピルが例示できる。また(メタ)アクリルアミドの窒素原子に、アセトアセチル基を有するアルキル基(炭素数は好適には1〜8)が結合している単量体も使用できる。例えば、メタクリル酸2-シアノアセトアセトキシエチル、N−(2−アセトキシアミノエチル)(メタ)アクリルアミドがある。また、アセト酢酸エステルのエステル部分がエチレン系炭化水素基(炭素数は好適には1〜8)である単量体が挙げられる。例えば、アセト酢酸アリル、アセト酢酸ビニルがある。アクリル系単量体と共重合し易い観点からは、メタクリル酸2−アセトアセトキシエチルが好ましい。
オキサゾリジン基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好適には1〜8)に、オキサゾリジン基が結合している単量体がある。例えば、(2,2−ペンタメチレン−1,3−オキサゾリジル−3)エチルメタクリレートが例示できる。
ニトリル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)にニトリル基が結合している単量体や、(メタ)アクリロニトリルが例示できる。
リン酸基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)にリン酸基が結合している単量体や、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ポリエチレングリコールモノメタクリレートのリン酸エステル、ポリエチレングリコールモノアクリレートのリン酸エステル、ポリプロピレングリコールモノメタクリレートのリン酸エステル、ポリプロピレングリコールモノアクリレートのリン酸エステルが挙げられる。
官能基(K)を有することにより、例えば、導電材を添加した導電性の樹脂組成物を形成する場合に、導電材とブロック共重合体(C)の官能基(K)との結合を促し、或いは導電材とブロック共重合体(C)の官能基(K)とのファンデルワールス力等の相互作用を促し、伸縮性および強靱性を兼ね備えた樹脂組成物を提供できる。
また、官能基(K)を有することにより、例えば、ブロック共重合体(C)の官能基(K)と反応して結合する官能基を有する架橋剤と組み合わせることにより、架橋構造を構築したフィルム、シート、成形体等を得ることができる。
ブロック共重合体(C)1gあたりに含有される官能基(K)のモル濃度(mmol/g)は特に限定されないが、ミクロ相分離構造を形成し、且つ官能基(K)の上記効果を両立する観点からは0.00001〜3.0mmol/gの範囲にあることが好ましい。より好ましい範囲は0.0001〜1.0mmol/gであり、更に好ましい範囲は0.005〜0.1mmol/gである。
(重合体ブロック(A))
重合体ブロック(A)は前述したTgを満たし、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を主体とする、ハードセグメントとして機能するブロックである。単量体は1種単独または2種以上を併用して用いられる。単量体の具体例として、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、スチレン、スチレン誘導体、マレイミドおよびアクリロニトリルからなる群から選択される少なくとも1つが例示できる。メタクリル酸エステルとしては、炭素数が1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルキル基が例示できる。また、スチレン誘導体としては、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレンおよびビニルトルエンが例示できる。また、次に説明する重合体ブロック(B)で例示する単量体をその一部に好適に含むことができる。
(重合体ブロック(B))
重合体ブロック(B)は前述したTgを満たし、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を主体とする、ソフトセグメントとして機能するブロックである。単量体は1種単独または2種以上を併用して用いられる。単量体の具体例として、アクリル酸エステル、オレフィン化合物、ジエン化合物およびアルキレンオキシドからなる群から選択される少なくとも1つが例示できる。アクリル酸エステルとしては、炭素数が1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルアクリレートが例示できる。オレフィン化合物およびジエン化合物としては、炭素数が1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のオレフィン化合物およびジエン化合物が例示できる。また、アルキレンオキシドとしては、炭素数が1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルキレン基を有するアルキレンオキシドが例示できる。また、前述の重合体ブロック(A)で例示する単量体をその一部に好適に含むことができる。
(ブロック共重合体(C))
ブロック共重合体(C)の好適例として、重合体ブロック(A)がメタクリル酸エステル由来の構造単位を50質量%以上含み、重合体ブロック(B)がアクリル酸エステル由来の構造単位を70質量%以上含むブロック共重合体(C)が例示できる。重合体ブロック(A)中のメタクリル酸エステル由来の構造単位は、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上である。また、メタクリル酸エステル由来の構造単位を100質量%としてもよい。
また、重合体ブロック(B)中のアクリル酸エステル由来の構造単位は、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上である。また、アクリル酸エステル由来の構造単位を100質量%としてもよい。重合体ブロック(A)がメタクリル酸エステル由来の構造単位を50質量%以上含み、且つ重合体ブロック(B)がアクリル酸エステル由来の構造単位を70質量%以上含み、且つ官能基(K)を有することによって、伸縮性に優れ、クラックの発生を効果的に防止することができる。また、ミクロ相分離を促して機能分離することによって、自己粘着性を高めることができる。
重合体ブロック(A)のメタクリル酸エステル由来の構造単位を形成する単量体として、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ノルマルブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ターシャリブチルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ノルマルヘキシルメタクリレート、イソヘキシルメタクリレート、イソヘプチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、ノルマルオクチルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、べへニルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、t−ブチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、イソボロニルメタアクリレート、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、シクロデシルメタクリレート、シクロデシルメチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、t−ブチルベンゾトリアゾールフェニルエチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アリルメタクリレートなどの、脂肪族、脂環族、芳香族アルキルメタクリレート類が例示できる。また、メトキシメチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、メトキシプロピルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、エトキシプロピルメタクリレートなどのアルコキシ基の炭素数が1〜4であり、アルキル基の炭素数が1〜4であるアルコキシアルキルメタクリレートなどのアルコキシアルキルメタクリレート類;(ポリアルキレン)グリコールモノアルキル、アルキレン、アルキンエーテルまたはエステルのモノメタクリレート類;酸素原子含有のメタクリル酸系モノマー類;窒素原子含有のメタクリル酸系モノマー類等を用いることができる。
重合体ブロック(A)の好適な例として、メチルメタクリレート由来の構造単位を50質量%以上含む態様が挙げられる。より好ましくはメチルメタクリレート由来の構造単位が60質量%以上であり、80質量%以上であることが更に好ましい。また、重合体ブロック(A)の100質量%がメチルメタクリレート由来の構造単位であってもよい。
重合体ブロック(B)のアクリル酸エステル由来の構造単位を形成する単量体として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ノルマルブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ターシャリブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、ペンチルアクリレート、ノルマルヘキシルアクリレート、イソヘキシルアクリレート、イソヘプチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ノルマルオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、テトラデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、べへニルアクリレート、イソステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、t−ブチルシクロヘキシルメチルアクリレート、イソボロニルアクリレート、トリメチルシクロヘキシルアクリレート、シクロデシルアクリレート、シクロデシルメチルアクリレート、ベンジルアクリレート、t−ブチルベンゾトリアゾールフェニルエチルアクリレート、フェニルアクリレート、ナフチルアクリレート、アリルアクリレートなどの、脂肪族、脂環族、芳香族アルキルアクリレート類が例示できる。
また、水酸基を含有するアクリル酸系モノマー類;グリコール基を有するアクリル酸系モノマー類;(ポリアルキレン)グリコールモノアルキル、アルキレン、アルキンエーテルまたはエステルのモノアクリレート類;アクリル酸やアクリル酸二量体を含む酸基(カルボキシル基、スルホン酸、リン酸)を有するアクリル酸系モノマー類;酸素原子含有のアクリル酸系モノマー類;アミノ基を有するアクリル酸系モノマー類;窒素原子含有のアクリル酸系モノマー類等を用いることができる。更に、その他、3個以上の水酸基をもつモノアクリレート類、ハロゲン原子含有アクリレート類、ケイ素原子含有のアクリル酸系モノマー類、紫外線を吸収する基を有するアクリル酸系モノマー類、α位水酸基メチル置換アクリレート類も例示できる。また、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンのポリアルキレングリコール付加物のアクリル酸エステル等の、2個以上の付加重合性基を有するアクリル酸系モノマー類を用いてもよい。
重合体ブロック(B)のアクリル酸エステル由来以外の構造単位としては、アクリル酸エステルと重合し得る他の単量体を用いることができる。例えば、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸等が挙げられる。
重合体ブロック(B)の好適な例として、ブチルアクリレート由来の構造単位を70質量%以上含む態様が挙げられる。より好ましくはブチルアクリレート由来の構造単位が80質量%以上であり、90質量%以上であることが更に好ましい。また、重合体ブロック(B)の100質量%がブチルアクリレート由来の構造単位であってもよい。
ブロック共重合体(C)の好適な例として、重合体ブロック(A)中にメチルメタクリレート由来の構造単位を50質量%以上含み、且つ重合体ブロック(B)中にブチルアクリレート由来の構造単位を70質量%以上含む態様が例示できる。このようなブロック共重合体(C)によれば、収縮性がより効果的に優れたフィルム等を提供できる。重合体ブロック(A)中のメチルメタクリレート由来の構造単位は、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上としてもよく、100質量%以上としてもよい。重合体ブロック(B)中のブチルアクリレート由来の構造単位は、80質量%以上、90質量%以上としてもよく、100質量%としてもよい。
ブロック共重合体(C)を用いることによって、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)が海島構造(体心立方)、シリンダー(ヘキサゴナル)、ジャイロイド、ラメラ相等の分子レベルでの相分離構造(ミクロ相分離構造)を形成することができる。ミクロ相分離構造を形成することによって、優れた伸縮性を付与し、クラック発生を効果的に抑制できるブロック共重合体(C)および樹脂組成物を提供できる。伸縮性をより効果的に高める観点からは、重合体ブロック(A)が島、重合体ブロック(B)が海に相当する海島構造であることがより好ましい。なお、ミクロ相分離構造は、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope、AFM)を用いて観察することにより確認できる。
ブロック共重合体(C)の重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)に対する重合体ブロック(A)の含有率は特に限定されないが、ミクロ相分離構造を容易に得る観点からは、1〜50質量%であることが好ましく、15〜30質量%であることがより好ましい。また、粘着性を効果的に引き出す観点からは、ブロック共重合体(C)中の重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)に対する重合体ブロック(A)の含有率が1〜35質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。
ブロック共重合体(C)における重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の含有比率は特に限定されないが、ミクロ相分離構造を容易に得る観点からは、ブロック共重合体(C)の全質量に対して、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)全体の含有率が90.0〜99.9質量%であることが好ましく、98.0〜99.9質量%であることがより好ましい。
ブロック共重合体(C)を後述する導電性の樹脂組成物のバインダー樹脂として用いる場合には、導電性を良好に保つ観点から、ブロック共重合体(C)のエチレン性不飽和単量体の90質量%以上が疎水性のエチレン性不飽和単量体であることが好ましい。ここで「疎水性のエチレン性不飽和単量体」とは、20℃での水中への溶解性が6.5g/100mL以下の単量体をいう。疎水性のエチレン性不飽和単量体としては、上述したアルキル(メタ)アクリレート類、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類、酢酸ビニル、塩化ビニル等のビニル類、スチレン等の芳香族類等が例示できる。
[ブロック共重合体(C)の製造方法]
以下、本実施形態のブロック共重合体(C)の製造方法の一例について説明するが、本発明のブロック共重合体(C)は以下の製造方法に限定されるものではない。
重合起点を2〜6有するいずれかの重合開始剤を用いて重合体ブロック(B)および重合体ブロック(A)をこの順に逐次重合により得る工程を含む[A−B]Xで表されるブロック共重合体(C)の製造方法がある(以下、方法(I))。
別の方法として、重合開始剤(XI)を起点として、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)、重合体ブロック(A)をこの順に逐次重合により得る工程を含むA−B−A型のトリブロック構造で表されるブロック共重合体(C)の製造方法がある(以下、方法(II))。
また、重合体ブロック(B)、重合体ブロック(A)を任意の順に逐次重合することによりA−B型のジブロック構造を得る。そして、A−B型のジブロック構造の分子末端に必要に応じて反応性末端を導入し、この反応性末端と反応性を示す連結ユニットを3〜6有するいずれかのカップリング剤を用いてカップリング反応を行う工程を含む[A−B]Xで表されるブロック共重合体(C)の製造方法がある(以下、方法(III))。
ブロック共重合体(C)の製造は、有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤を用いたヨウ素移動重合RCMP(可逆配位媒介重合)法またはRTCP(可逆移動触媒重合)法により行う。 RCMP法(又はRTCP法)は、特殊な材料や金属系の触媒が不要であり、有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤を用いる。有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤は、触媒と混合し、必要に応じて加温することで、ヨウ素と直結していた炭素にラジカルが生じ、それによって重合性モノマーの重合が開始される。そして、持続性のヨウ素ラジカルとラジカル連鎖末端とが一時的に結合を形成し、ラジカル連鎖末端とヨウ素ラジカルが可逆的に再結合する特性により、ラジカル重合の進行を制御できる。重合温度は、例えば60〜120℃で行うことができる。
重合の終了は、通常重合温度を制御することにより終了する。重合体の連鎖末端は、ラジカル連鎖末端とヨウ素ラジカルとの再結合が形成されている。連鎖末端のアルキルラジカルとヨウ素ラジカルに再開裂する可能性があるので、連鎖末端は不活性処理することが好ましい。不活性処理は、例えば、連鎖末端を非重合性基に変換する方法がある。また、連鎖末端に所望の官能基を導入してもよい。
RCMP法(又はRTCP法)によれば、低コストであり、金属を使わずに合成することが可能となる。また、一般的なラジカル重合と同じ温度条件下で重合することが可能であり、既存の生産設備が使うことが可能である。以下、詳細な製造方法の一例について説明する。
まず、重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)の原料、並びに有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤(以下、単に重合開始剤(XI)ともいう)、触媒(m)、必要に応じて溶媒、重合開始剤(XI)以外のラジカル重合開始剤、単体ヨウ素等を用意する。触媒(m)としては、例えば、ラジカルを発生させて重合開始剤(XI)からヨウ素を引き抜く化合物、重合開始剤(XI)のヨウ素に配位して重合開始剤からヨウ素を引き抜く化合物などが挙げられる。触媒(m)として、ヨウ素ラジカルのドーマント作用を促進する化合物を更に有していてもよい。
重合開始剤(XI)は、炭素−ヨウ素結合を有する有機ヨウ素化合物であり、触媒(m)の存在下で重合が進行し、ラジカル重合のドーマント種になり得る化合物である。重合開始剤(XI)として、下記一般式(4)〜(6)で表される化合物を例示できる。重合開始剤(XI)は1種単独または2種以上を併用して用いられる。
Figure 2021095440
Figure 2021095440
Figure 2021095440
但し、Zは、Yからの分岐毎にそれぞれ独立に、エステル基、ケトン基およびアミド基からなる群より選択される2価の基、または直接結合であり、
Yはp価の置換基を有していてもよい炭化水素基であり、
pは2〜6の整数であり、
、RおよびRはそれぞれ独立に、一般式(6)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、水素原子または置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であり、
およびRはそれぞれ独立に、一般式(6)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基または−CORであり、
は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基、−COR、シアノ基またはニトロ基であり、
とR、RとR4、とRおよびRとRはそれぞれ独立に、一般式(6)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、互いに結合して環を形成していてもよく、
は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基または置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であり、
11は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、
12はアルキレン基、アリーレン基およびアルキレンオキシ基からなる群より選ばれる2価の炭化水素基、または直接結合であり、
前記炭化水素基は、複素環を有していてもよく、それぞれ独立に、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基および芳香族炭化水素基の少なくともいずれかを有する。一般式(4)、一般式(5)は、ヨウ素−炭素結合を1つ有する例であり、一般式(6)はヨウ素−炭素結合が2〜6つ有する例である。所望とするブロック共重合体(C)の構造に応じて、適切な重合開始剤(XI)を選定すればよい。
本明細書において「置換基」とは、別途の定義がない限り、有機基中の一以上の水素原子が、複素環基、炭素数1〜12の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数1〜12の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数1〜12の環状脂肪族炭化水素基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアラルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアミノ基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアシル基、炭素数1〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜12のアルキロイルオキシ基、炭素数1〜12のアリーロイルオキシ基または炭素数1〜12のアルキルシリル基(削除から復活)で置換されていることを意味する。置換基には、官能基(K)または/および官能基(L)を有していてもよい。複素環基は特に限定されないが、官能基(K)または/および官能基(L)を有していてもよい炭素数5〜18の芳香族複素環が例示できる。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が例示できる。複素環の具体例としては、フラン、チオフェン、ピロール、ピリジンが挙げられる。
重合開始剤(XI)の具体例としては、エチレンビス(2−ヨードイソブチレート)、エチレンビス(2−ヨード−2−フェニルアセテート)、p−キシリレンジヨージド、1,4−ビス(1’−ヨードエチル)ベンゼン、2,5−ジヨードアジピン酸ジエチル、グリセロールトリス(2−ヨードイソブチレート)、1,3,5−トリス(1’−ヨードエチル)ベンゼン2−ヨード−2−(4’−(2”−ヨードプロピオニルオキシ)フェニル)酢酸メチル、2−ヨードイソ酪酸4−ヨードブチル、2−ヨード−2−(4’−(2”−ヨードプロピオニルオキシ)フェニル)酢酸メチル、2−ヨードイソ酪酸4−ヨードブチル、2−ヨード−2−(4’−(4”−ヨードブタノイルオキシ)フェニル)酢酸メチル、2−ヨードフェニル酢酸4−ヨードブチル、2−ヨード−2−フェニル酢酸2−(ヨードアセトキシ)エチル、エチル2−ヨードアセテート、エチル2−ヨードプロパノエート、エチル2−ヨードブチレート、エチル2−ヨードバレレート、エチル2−ヨードイソブチレート、メチル2−ヨードアセテート、エチル2−ヨードイソブチレート、ベンジル2−ヨードイソブチレート、2−ヨード酢酸、2−ヨードプロピオン酸、2−ヨードイソ酪酸、α−ヨード−γ−ブチロラクトン、2−ヨードプロピオンアミド、2−ヨードアセトニトリル、2−ヨードプロピオニトリル、2−ヨードイソブチロニトリル、2-ヨードアセトフェノン、ベンジルヨージド、(1−ヨードエチル)ベンゼン、4−ニトロベンジルヨージド、2−ヒドロキシエチル2−ヨードイソブチレート、2−ヒドロキシエチル2−ヨード−2−フェニルアセテート、エチル2−ヨード−2−フェニルアセテート、エチル2−ヨード2−(4’−メチルフェニル)アセテート、エチル2−ヨード−2−(4’−ニトロフェニル)アセテート、2−ヨード−2−フェニル酢酸、ヨードジフェニルメタン、9−ヨード−9H-フルオレン、α−ヨードベンジルシアニド、ジエチル2−ヨード−2−メチルメロネート、エチル2−ヨード−2−メチルアセトアセテート、p−キシレンヂヨージド、ジエチル2,5−ジヨードアジペート(Diethyl 2,5-Diiodoadipate)、1,4−ビス(1’−ヨードエチル)ベンゼン、エチレングリコールビス(2−ヨードイソブチレート)、エチレングリコールビス(2−ヨード−2−フェニルアセテート)(Glycerol Tris(2-iodoisobutyrate))、1,3,5−トリス(1’−ヨードエチル)ベンゼン、2−ヒドロキシエチル−2−ヨードイソ酪酸塩、2−ヒドロキシエチル−2−ヨード−2−フェニル酢酸塩、2−ヨードー2−アミジノプロパン、4−ヨード−4−シアノ−ペンタン酸、2−ヨード−2−メチルプロパンアミド、2−ヨード−2−シアノブタノール、2−ヨード−2−メチル−N−(2−ヒドロキシメチル)プロピオンアミド4−メチルペンタン、2−ヨード−2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド4−メチルペンタン、ヨード酢酸、2−ヨードプロパン酸、2−ヨードプロンアミドが例示できるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、特開2018−111806号公報に開示の有機ヨウ素化合物を好適に利用できる。重合開始剤のヨウ素に直結する炭素は、第3級炭素、第2級炭素または電子吸引基と直結している第1級炭素が好ましい。
重合開始剤(XI)は、重合開始剤(XI)を合成するための原料を仕込み、重合中にin situ、即ち反応溶液中で重合開始剤(XI)を生成させて、それをこの重合法の重合開始剤(XI)として使用することもできる。例えば、アゾ化合物とヨウ素を原料として仕込み、その両者の反応により重合開始剤(XI)を重合中にin situで生成させ、それをこの重合法の重合開始剤(XI)として使用することができる。即ち、本発明の製造方法では、例えばヨウ素とアゾ化合物とを反応させることにより、本重合工程において重合開始剤(XI)を生成する工程を含んでいてもよい。
重合開始剤(XI)を生成させるために用いるアゾ化合物としては、例えば、アゾ系ラジカル重合開始剤が例示できる。アゾ系ラジカル重合開始剤(例えば、AIBN)のように他の開始剤を用いて重合開始剤(XI)を生成させる場合には、他の開始剤を消費して重合開始剤(XI)が充分に得られてからモノマーを添加して重合体生成を行う方法が好適である。
アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メトキシプロパンアミド]、2,2’−アゾビス(2−メチル−2−プロペニルプロパンアミド)、2,2’−ビス(2−イミダゾリン−2−イル)[2,2’−アゾビスプロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス(プロパン−2−カルボアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]、2,2’−アゾビス[2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン二塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−2−プロペニルプロパンアミド〕、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩が例示できる。
有機ヨウ素化合物のヨウ素に配位して重合開始剤(XI)からヨウ素を引き抜く触媒(m)は、RCMP法において通常用いられる有機アミン化合物、ヨウ化物イオンとのイオン結合を有する非金属化合物を制限無く用いることができる。この非金属化合物中の非金属原子がカチオンの状態であり、ヨウ化物イオンとイオン結合を形成している触媒が好適である。
有機アミン化合物からなる触媒(m)としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,1,2,2−テトラキス(ジメチルアミノ)エテン、1,4,8,11−テトラメチル−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルジアミノメタン、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリス(2−(メチルアミノ)エチル)アミン、ヘマトポルフィリンが例示できる(国際公開第2011/016166号)。
ヨウ化物イオンとのイオン結合を有する非金属化合物であって、該非金属化合物中の非金属原子がカチオンの状態であり、ヨウ化物イオンとイオン結合を形成している触媒としては、具体的にはアンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられ、より具体的には、テトラブチルアンモニウムヨーダイド、テトラブチルアンモニウムトリヨーダイド、テトラブチルアンモニウムブロモジヨーダイド、1−メチル−3−メチル−イミダゾリウムヨーダイド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、2−クロロ−1−メチルピリジニウムヨーダイド、ヘキサフェニルジホスファゼニウムクロリド、メチルトリブチルホスホニウムヨーダイド、テトラフェニルホスホニウムヨーダイド、トリブチルスルホニウムヨーダイド、ジフェニルヨードニウムヨーダイド等を挙げることができる(国際公開WO2013/027419号公報参照)。
RTCP法(可逆移動触媒重合)で重合する場合は、触媒に連鎖移動能をもつ有機分子を用いる。この場合は、触媒とラジカル発生剤(アゾ化化合物など)を組み合わせて、触媒から触媒ラジカルを発生させ、この触媒ラジカルを休眠種の活性化剤として利用する。
ラジカルを発生させて重合開始剤(XI)からヨウ素を引き抜く化合物(触媒)としては、例えば、RTCP法に用いられるリン、窒素、炭素、酸素、ゲルマニウム、スズおよびアンチモンから選択される少なくとも1種の中心原子と、当該中心原子に結合したヨウ素原子と、を含む化合物からなる触媒が挙げられる。
ゲルマニウム、スズまたはアンチモンから選択される中心元素とする触媒としては、
例えば、ゲルマニウム、スズまたはアンチモンから選択される少なくとも1つの中心元
素と、当該中心元素に結合した少なくとも1つのヨウ素原子を含む化合物などが挙げられ、具体的にはヨウ化ゲルマニウム(II)、ヨウ化ゲルマニウム(IV)、ヨウ化スズ(II)、ヨウ化スズ(IV)が例示できる(特開2007−92014号公報参照)。これらの触媒は1種単独または2種類以上を併用してもよい。
窒素またはリンを中心元素とする触媒としては、窒素またはリンから選択される少なく
とも1つの中心元素と、当該中心元素に結合した少なくとも1つのヨウ素原子とを含む化
合物が挙げられ、具体的には、ヨウ化リンなどのハロゲン化リン;ヨウ化ホスフィンなどのホスファイト系化合物;エトキシフェニルフォスフィネート、フェニルフェノキシフォ
スフィネートなどのホスフィネート系化合物;ヨウ化窒素、ヨウ化亜リン酸、ヨウ化アミ
ン、ヨードスクシンイミドなどのヨウ化イミド誘導体; ヒダントイン系化合物などが挙げ
られる(国際公開第2008/139980号参照)。これらの触媒は1種単独または2種類以上を併用できる。
炭素を中心元素とする触媒としては、例えば、ヨードベンゼン、4−メチル−
1−ヨードベンゼン、2,4,6−トリメチルヨードベンゼン、3−シアノヨードベンゼ
ン、4−シアノヨードベンゼン、4−ヨードアニソール、テトラヨードメタン、トリフルオロヨードメタン、ジフルオロジヨードメタン、1,4−シクロヘキサジエン、ジフェニルメタン、ジメシチルメタン、キサンテン、チオキサンテン、マロン酸ジエチル、フルオレン;アセチルアセトンなどのアセトアセチル系化合物が例示できる。これらの触媒は1種単独または2種類以上を併用できる。
酸素を中心とする触媒の具体例としては、例えば、フェノール、ヒドロキノン、tert−ブチルフェノールなどのフェノール系化合物;チモールジアイオダイドなどのアイオ
ドオキシフェニル化合物;ビタミンEなどのビタミン類や、N−コハク酸イミドなどが例示できる。これらの触媒は1種単独または2種以上を併用できる。
触媒(m)の添加量は、重合速度を適切なものとし、且つ未反応単量体の残存量を低減させる観点から、重合開始剤(XI)100モルに対して、0.01〜2,500モルが好ましく、より好ましくは0.05〜1,000モル、さらに好ましくは0.1〜500モルである。
重合開始剤(XI)の量は、ブロック共重合体(C)のブロック構造および所望とするMnの値等により変動し得るが、全単量体の100質量部あたり、例えば0.01〜10質量部とすることができる。重合開始剤(XI)の分子量は特に限定されず、好適な範囲はブロック共重合体(C)のMnによっても変動し得るが、例えば、150〜1,500とすることが好適である。
重合条件は、用いる単量体および重合開始剤(XI)の種類によって適宜設定すればよい。重合温度は、例えば室温〜200℃、より好ましくは60〜120℃である。また、重合雰囲気は、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス下で行うことが好ましい。反応時間は、単量体の転化率を指標に適宜設定すればよい。例えば、30分〜120時間である。
重合は、バルク重合でも溶液重合でもよい。また、乳化重合、分散重合、懸濁重合などにより重合してもよい。溶液重合に用いる溶媒は特に限定されないが、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン原子含有溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジグライム等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が例示できる。溶媒は、1種単独または2種以上が併用して用いられる。
ブロック共重合体(C)への官能基(K)の導入は、前述したように、重合に供する単量体中に官能基(K)を有するものを用いる方法、官能基(K)が保護基により保護された単量体を用いて、任意のタイミングで官能基(K)に変換する方法がある。また、官能基(K)を有する重合開始剤または/およびカップリング剤を用いて、重合開始剤残基または/およびカップリング剤残基に官能基(K)を導入する方法がある。更に、重合時または重合後に、変換反応により所望の部位に官能基(K)を導入する方法がある。また、ブロック共重合体(C)の連鎖末端に官能基(K)を導入する方法が例示できる。
重合体を得た後、必要に応じて、ドーマント種であるヨウ素ラジカルを不活性化する。重合体末端がドーマント種であるヨウ素が残っていてもよい場合には、ヨウ素ラジカルの不活性化工程は省略できる。また、重合体ブロック(A)の連鎖末端は、任意のタイミングで不活性基、官能基(K)、官能基(L)などに末端処理する工程を行うことができる。
前述の一般式(4)〜(6)の重合開始剤(XI)を用い、且つラジカル重合性単量体としてエチレン性不飽和単量体のみを用いた場合、上記工程によって以下の一般式(1)〜(3)のいずれかに記載の構造を有するブロック共重合体(C)が得られる。
Figure 2021095440
Figure 2021095440
Figure 2021095440
但し、Polymerization unitは、一般式(3)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、エチレン性不飽和単量体に由来する単量体を主体とする重合体ユニットであり、
Qは1価の分子末端基であり、Yからの分岐毎にそれぞれ独立に、前記分子末端基は、官能基、官能基を有していてもよい炭化水素基またはヨード基であり、その他の記号は、一般式(4)〜(6)で説明した通りである。なお、ここでいう官能基は、官能基(L)と官能基(K)のいずれも含まれる。ブロック共重合体(C)は、一般式(1)〜(3)で示される重合体の構造単位としてエチレン性不飽和単量体由来の構造単位に限定されず、その他のラジカル重合性単量体が含まれていてもよい。好適な方法として、以下の方法が例示できる。
重合開始剤(XI)の炭素−ヨウ素結合が2つの場合には、重合体ブロック(B)、重合体ブロック(A)の順にブロックを重合することにより、[A−B]Xの星形ブロック構造が得られる。同様にして、重合開始剤(XI)の炭素−ヨウ素結合が3つの場合には、重合体ブロック(B)、重合体ブロック(A)の順にブロックを重合することにより、[A−B]Xの星形ブロック構造が得られる。重合開始剤(XI)の炭素−ヨウ素結合が4〜6の場合、qが4〜6の星形ブロック構造が得られる。
[方法(I)]
(製造例1:ハードセグメントに官能基(K)を有するブロック共重合体(C))
図1に、方法(I)により、ハードセグメント(重合体ブロック(A))の側鎖に官能基(K)を有するブロック共重合体(C)の製造法の一例を示す。図1に示すように、まず、重合体ブロック(B)を形成するための単量体1に、炭素−ヨウ素結合が2つある重合開始剤3および触媒4を加えて重合を行う。単量体1の種類は1種単独または2種以上とすることができる。当該重合により、開始剤残基Xおよび単量体1由来の構造単位1を有する重合体ブロック(B)並びにその連鎖末端にドーマント種としてのヨウ素が結合された重合体31が得られる(工程(a))。
重合体31を得た後、重合体ブロック(A)を形成するための単量体2を加える。単量体2は、官能基(K)を含む単量体21と、官能基(K)を含まない単量体22とを含む。単量体2を加えることにより、重合体31の連鎖末端を基点としたリビングラジカル重合が進行し、[A−B]Xの星形ブロック構造を有し、連鎖末端にドーマント種としてのヨウ素が結合され、単量体2由来の構造単位21*、22*有する重合体32が得られる(工程(b))。
本製造例1では、官能基(K)の導入工程(工程(c))は、工程(b)に連動して行われる。即ち、単量体21の重合体ブロック(B)への導入に伴って工程(c)が行われる。
なお、官能基(K)は、2つの分岐鎖の両方に入っていることは必須ではなく、どちらか一方に官能基(K)が導入されていてもよい。また、官能基(K)を有する単量体21由来の構造単位21の位置は重合体ブロック(A)において任意である。単量体21と単量体22の投入タイミングを調整することにより、重合体ブロック(A)の所望の位置に官能基(K)を導入してもよい。
次いで、重合体32の連鎖末端の重合性基を不活性基(非重合性基)に変換する(不図示)ことにより、ブロック共重合体(C)を得る。なお、連鎖末端にドーマント種としてのヨウ素が結合されていてもよい場合には、この工程は省略できる。
なお、製造例1では、重合体ブロック(A)に官能基(K)を導入する例を挙げたが、重合体ブロック(B)または重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の両者に官能基(K)を導入してもよい。
また、官能基(K)を有する単量体を用いて官能基(K)を導入する方法に代えて又は併用して、重合体ブロック(B)および重合体ブロック(A)の重合後に、化学変換反応によって官能基(K)を導入してもよい、例えば、アルケニル基を側鎖に重合体ブロック(A)または/および重合体ブロック(B)を重合時に導入し、その後、例えば、官能基(K)化試薬として2−メルカプトエタノールの水酸基化試薬用い、エンチオール反応により、水酸基を側鎖に導入したブロック共重合体(C)を得てもよい。当該例は一例であり、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)への化学変換反応による官能基(K)の導入方法は公知の方法を適用できる。
また、重合体ブロック(A)または/および重合体ブロック(B)と合わせて、又はこれらに代えて、重合開始剤残基または/およびカップリング剤残基に官能基(K)を導入してもよい。
また、製造例1では、開始剤を1種用いる例について説明したが、2種以上を用いてもよい。2種以上用いる場合において、炭素−ヨウ素結合部位の数が同一のものを用いる他、炭素−ヨウ素結合部位の数が異なる開始剤を併用してもよい。
(製造例2:連鎖末端に官能基(K)を有するブロック共重合体(C))
次に、連鎖末端に官能基(K)を有するブロック共重合体(C)の製造法の一例について図2を用いつつ説明する。製造例2では、製造例1の工程(a)、即ち重合体31を得る工程までは同一である。次いで、単量体2を添加して重合体ブロック(A)の重合を行う。ここでは、官能基(K)を有しない単量体のみを用いた例について説明する。単量体2を加えることにより、重合体31の連鎖末端を基点としたリビングラジカル重合が進行し、[A−B]Xの星形ブロック構造を有し、連鎖末端にドーマント種としてのヨウ素が結合された単量体2に由来する構造単位2を有する重合体35が得られる(工程(b))。
重合体35を得た後、連鎖末端に官能基(K)を導入しやすい単量体7、例えば、アクリレートモノマーをごく微量加え、連鎖末端に単量体7を導入することにより重合体36を得る(工程(b’))。なお、工程(b’)を行わず、工程(b)後の重合体35の連鎖末端に官能基(K)を導入してもよいことはいうまでもない。
次いで、重合体36に対して鎖状末端変換反応を行って官能基(K)を導入する(工程(c))。ここでは、末端にアミノ基を導入する例として、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを用いるが、例えば下記一般式(11)の化合物を好適に用いることができる。
N−R13−官能基(K) 一般式(11)
但し、R13は、2価の有機基である。好適な例として、置換基を有していてもよい、アルキレン基(シクロアルキレン基を含む(以下同様))、アリーレン基、複素環基およびアルキレンオキサイド基の少なくとも1つを有し、炭素数が2〜12である2価の有機基である。
連鎖末端の単量体として例えばブチルアクリレートを用い、一般式(11)の化合物を用いた例で説明すると、例えば以下の一般式(12)のような反応によりブロック共重合体(A)を末端変換して官能基(K)を導入できる。これらの工程を経て、ブロック共重合体(C)が得られる。
Figure 2021095440
(製造例3:3〜6分岐のブロック共重合体(C)の製造例)
3〜6分岐のブロック共重合体(C)は、炭素−ヨウ素結合がそれぞれ3〜6つ有する重合開始剤(XI)を用いる以外は、製造例1、2と同様の方法により製造できる。
RCMP法(又はRTCP法)によれば、重金属が実質的に含まれないブロック共重合体(C)が得られるという利点がある。このため、人体と直接接触する用途、例えば医療用途などに特に好適である。また、RCMP法(又はRTCP法)によれば、リビングラジカル重合ができるので多分散度の狭いブロック共重合体(C)を得ることが可能である。
[方法(II)]
(製造例4:開始剤残基Xが連鎖末端にあるトリブロック構造を有するブロック共重合体(C))
まず、図3に示すように、重合体ブロック(A)を形成するための単量体2に、炭素−ヨウ素結合が1つある重合開始剤3、および触媒4を加えて重合を行う。単量体2の種類は1種単独または2種以上とすることができる。当該重合により、開始剤残基Xを有する重合体ブロック(A)およびその連鎖末端にドーマント種としてのヨウ素が結合され、単量体2由来の構造単位2を有する重合体37が得られる(工程(g))。
重合体37が得られた後、重合体ブロック(B)を形成するための単量体1を加える。図中、単量体1のうち、非ラジカル重合性のアルケニル基を有する単量体を符号12とし、その他の単量体を符号11で表す。単量体11、12はそれぞれ独立に、1種単独または2種以上とすることができる。図3の例では、単量体12としてアリルメタクリレートを用いた例について説明する。単量体1を加えることにより、重合体37の連鎖末端を基点としたリビングラジカル重合が進行し、連鎖末端にドーマント種としてのヨウ素が結合された単量体1に由来する構造単位11、12を有する重合体38が得られる(工程(h))。
重合体38が得られた後、重合体ブロック(A)を形成するための単量体2を加える。単量体2を加えることにより、重合体38の末端を基点としたリビングラジカル重合が進行し、連鎖末端に開始剤残基およびドーマント種としてのヨウ素が結合されたA−B−A型のトリブロック構造の重合体39が得られる(工程(i))。
次いで、重合体39の連鎖末端の重合性基を不活性基(非重合性基)に変換する(不図示)。なお、連鎖末端にドーマント種としてのヨウ素が結合されていてもよい場合には、この工程は省略できる。
その後、官能基(K)化試薬5(ここでは2−アミノエタンチオール)を添加して、チオールエン反応により、−O−CH−CH=CHの基13中のアルケニル基とメルカプト基を反応させることにより、アミノ基が側鎖に導入されたブロック共重合体(C)が得られる(工程(c))。図3の例では、官能基(K)化試薬5として2−アミノエタンチオールを用いた例について説明したが、例えば官能基(K)化試薬5として上記一般式(11)の化合物を好適に用いることができる。
方法(II)によれば、2つの重合体ブロック(A)の分子量を互いに変更することが容易であるというメリットがある。また、2つの重合体ブロック(A)の単量体成分の構成を変更できるので設計自由度が高いという利点がある。
なお、製造例3においては、重合体ブロック(B)にアミノ基を導入する例を述べたが、重合体ブロック(A)のみまたは重合体ブロック(A),Bの両者にアミノ基を導入してもよい。また、アミノ基は一例であって、官能基(K)を導入できることは言うまでもない。
[方法(III)]
(製造例5:カップリング剤残基Xを有する星型ブロック構造を有するブロック共重合体(C))
図4,図5に、方法(III)の一例を示す。図4に示すように、まず、重合体ブロック(A)を形成するための単量体2に、炭素−ヨウ素結合が1つある重合開始剤3および必要に応じて触媒(不図示)を加えて重合を行う。図4の例では、重合開始剤3として2−ヨード−2−メチルプロピオニトリルを用いた例を示しているが、例えば前述したヨウ素−炭素結合を1つ有するヨウ素系重合開始剤を好適に用いることができる。当該重合により、開始剤残基Xを有する重合体ブロック(A)およびその連鎖末端にヨウ素Iが結合された重合体44が得られる(工程(d))。
重合体44が得られた後、重合体ブロック(B)を形成するための単量体1を加える。単量体1を加えることにより、重合体44の連鎖末端を基点としたリビングラジカル重合が進行し、A−B型のジブロック構造を有し、連鎖末端にヨウ素Iが結合された重合体45が得られる(工程(e))。そして、必要に応じて、カップリング剤と反応させるための官能基を連鎖末端の片末端に導入する(工程(d’))。製造例5では、2−アミノエタノールを反応させることにより、連鎖末端に水酸基およびXを有するA−B型のジブロック構造46を得た例について説明しているが、この官能基は、官能基(K)であっても、官能基(L)であってもよい。
続いて、図5に示すように、カップリング剤と結合し得る官能基を連鎖末端の一方に有するA−B型のジブロック構造46を、カップリング剤とカップリングさせ、星型ブロック構造を得る(工程(f))。製造例5では、カップリング剤として4官能のテトライソシアネート化合物6を用いた例について説明する。カップリング反応により、図5に示すように、重合体ブロック(A)の分子末端に開始剤残基Xを有し、且つ4分岐の[A−B]Xを有する構造体47が得られる。なお、[A−B]XのXはカップリング剤残基の誘導体であり、重合体ブロック(A)の分子末端の開始剤残基Xとは互いに構造が異なる。
この構造体47に対し、官能基(K)化試薬5である2−アミノエタンチオールを添加して、チオールエン反応を行う(工程(c))ことにより、重合体ブロック(A)のアルケニル基の少なくとも一つにアミノ基を有するブロック共重合体(C)が得られる。官能基(K)化試薬5として、上記一般式(11)の化合物等を好適に用いることができる。製造例4ではアミノ基の例を挙げたが、他の官能基(K)についても同様に製造することができる。なお、官能基(K)の導入は、製造例1のように、官能基(K)を有する単量体を用いて行ってもよいことは言うまでもない。
方法(III)の製造方法によれば、ジブロック構造の設計自由度を大幅に高められるので、用途やニーズに応じて分子設計しやすいという利点がある。製造例5では、カップリング剤を1種用いる例について説明したが、2種以上を用いてもよい。この場合において、カップリング剤の反応部位が同一のものを用いる他、反応部位の数が異なるカップリング剤を併用してもよい。
[樹脂組成物(D)の組成等]
樹脂組成物(D)は、少なくともブロック共重合体(C)とヨウ素を含む樹脂組成物であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の化合物を含有できる。溶剤を含んでいてもよいし、無溶剤でもよい。
樹脂組成物(D)は、液状、ペースト状、フィルム状または成形体である。樹脂組成物(D)は、粘着剤、塗料、導電性ペースト等の各種ペースト、保護フィルム、成形材料、樹脂改質剤、添加剤などの最終製品前の製品または用途を含む。また、樹脂組成物(D)は、電極、配線等の部材、層、フィルム或いは成形物などの部材そのものであってもよい。
ブロック共重合体(C)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、トリブロック構造を有するブロック共重合体(C)と、3分岐の星形ブロック構造を有するブロック共重合体(C)を併用することができる。
樹脂組成物(D)に含まれる任意の他の成分として、ブロック共重合体(C)以外の樹脂、溶剤、添加剤、架橋剤、フィラー、導電材、磁性材、熱伝導材が例示できる。
前記ブロック共重合体(C)以外の樹脂としては、本発明に該当しないブロック共重合体(C)、例えば、官能基(K)を有しないブロック共重合体(e)、分子量が5,000〜500,000の範囲外のブロック共重合体(e)、その他のアクリル樹脂が例示できる。また、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリブタジエン、セルロース、ポリウレタンポリウレア、粘着付与樹脂等の樹脂が例示できる。
前記溶剤は、例えば、樹脂組成物(D)を液状またはペースト状とする場合、或いは加工性を改善するために用いることができる。溶剤は、ブロック共重合体(C)および他の成分を考慮して1種単独または2種以上を併用して用いる。具体的には、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、その他の炭化水素系溶剤等の有機溶剤がある。
樹脂組成物(D)の塗工方法は、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレード方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピコート方式、およびディップコート方式等が好ましい。また、塗工後、必要に応じて乾燥を行う。前記乾燥は、熱風オーブンおよび赤外線ヒーター等公知の乾燥機を使用できる。
印刷方法は、特に限定されないが、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、コーティング法などの印刷法が挙げられる。
前記添加剤は、用途に応じて本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各種添加剤を制限なく用いることができる。例えば、紫外線防止剤、帯電防止剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、重合禁止剤、顔料、着色剤、可塑剤、軟化剤、加工助剤、消泡剤、充填剤、粘度調整剤、分散剤、レベリング調整剤、反射防止剤、蛍光剤、光拡散剤、光安定剤、屈折率調整剤、艶消し剤、フィラー、界面活性剤が例示できる。前記架橋剤の好適な例として、後述する架橋剤が挙げられる。前記導電材、磁性材、熱伝導材の好適例として、後述する導電材、磁性材、熱伝導材が挙げられる。
ヨウ素含有率は、ヨウ素由来の着色を抑制する観点から、ブロック共重合体(C)に対して0.0001ppm以上、10,000ppm以下とする。凝集力向上の観点からは、下限は0.0001ppmとする。ヨウ素含有率の下限値は0.01ppmであることが好ましく、0.1ppmであることがより好ましく、1ppmであることが更に好ましく、10ppm若しくは100ppmであることが特に好ましい。また、ヨウ素含有率の上限は5,000ppmであることがより好ましく、2,000ppmあることが更に好ましく、1,000ppm以下であることが特に好ましい。
また、凝集力向上以外の観点からも、樹脂組成物中にヨウ素を0.0001〜10,000ppm含有することで、抗菌性の向上効果がある。また、後述する導電性の樹脂組成物のバインダー樹脂として用いる場合には、導電性を良好に保つ効果も期待できる。
本明細書においてブロック共重合体(C)に対するヨウ素含有率は、蛍光X線分析装置を用いて微量ヨウ素の検出法によりヨウ素含有率を求める。当該測定法によってヨウ素が検出されなかった場合には、検出限界値が0.0001ppm未満である(少なくとも0.0001ppmのヨウ素を検出可能な)装置を用いてヨウ素含有率を求める。本発明においては、蛍光X線分析装置を用いてヨウ素が検出されなかった場合には、後述する実施例に記載のICP−MS又はICP−MS/MS測定装置により求めた。
樹脂組成物(D)は、伸縮性に優れ、伸長時にクラックの発生を効果的に抑制できるブロック共重合体(C)を含有するので、製造時または/および使用時に曲面形状に追随性が求められる用途に好適である。また、伸縮性が求められる用途、例えばストレッチャブル材、ウェアラブル材、メディカル分野やロボティックス分野の可動部(例えば、人工筋肉、人工皮膚、各種アクチュエータ)に好適である。更には、屈曲性、フレキシブル性が要求される部材、曲面形状への追随性が求められる用途に好適に用いられる。また、段差構造がある複雑な形状の被着体への被覆性が求められる用途にも好適である。
また、樹脂組成物(D)に含まれるブロック共重合体(C)は、樹脂自体に粘着性を有することから、粘着剤、粘着層としても好適である。粘着剤は、溶剤型および無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプおよび非架橋タイプのいずれでもよい。粘着材用途として用いる場合には、ブロック共重合体(C)と架橋剤を含有する樹脂組成物(後述する樹脂組成物(D1))が好適である。
その他、樹脂組成物(D)は、ブロック共重合体(C)の伸縮性に優れた特性を生かして各種用途に用いることができる。例えば、光学部材用粘着剤、各種プラスチックシート、一般ラベル・シール、塗料、弾性壁材、塗膜防水材、床材、粘着剤、積層構造体用粘着剤、ホットメルト粘着剤、シーリング剤、成形材料、表面改質用コーティング剤、バインダー(磁気記録媒体、インキバインダー、鋳物バインダー、焼成レンガバインダー、グラフト材、マイクロカプセル、グラスファイバーサイジング等)、ウレタンフォーム(硬質、半硬質、軟質)、ウレタンRIM、UV・EB硬化樹脂、ハイソリッド塗料、熱可塑性エラストマー、熱硬化型エラストマー、マイクロセルラー、繊維加工剤、可塑剤、吸音材料、制振材料、界面活性剤、ゲルコート剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用耐衝撃性付与剤、インキ用樹脂、量子ドット用樹脂、フィルム(ラミネート粘着剤、保護フィルム等)、合わせガラス用樹脂、反応性希釈剤、各種成形材料、弾性繊維、人工皮革、合成皮革等の原料として、また、各種樹脂添加剤およびその原料等としても有用である。
以下、架橋剤を含有する樹脂組成物(D1)、導電材を含有する樹脂組成物(D2)、磁性材を含有する樹脂組成物(D3)、熱伝導材を含有する樹脂組成物(D4)について説明する。これらの樹脂組成物は、特に断りが無い限り、任意の他の成分を含み得る。好適な例として、前述の樹脂、溶剤および添加剤が挙げられる。また、樹脂組成物(D1)〜樹脂組成物(D4)は互いに組み合わせて用いてもよい。なお、樹脂組成物(D)は、樹脂組成物(D1)〜樹脂組成物(D4)を包括する樹脂組成物である。
[樹脂組成物(D1)]
樹脂組成物(D1)は、ブロック共重合体(C)とこのブロック共重合体(C)と架橋し得る架橋剤を少なくとも含有する樹脂組成物である。ブロック共重合体(C)と架橋剤との架橋反応は、熱または/および紫外線等の活性エネルギー線照射により促進させることができる。活性エネルギー線は、紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線が挙げられる。樹脂組成物(D1)の段階において、架橋剤とブロック共重合体(C)の一部が既に架橋していてもよい。
架橋剤とブロック共重合体(C)を併用した樹脂組成物(D1)を用いて伸縮性を維持したまま架橋構造を構築することにより、凝集力を促進して粘着性を高め、更に耐溶剤性および耐熱性に優れる部材を提供できる。樹脂組成物(D1)の用途は限定されないが、粘着性に優れることから、粘着フィルムまたは粘着部材を形成するための粘着剤、特にストレッチャブル向けの粘着剤として好適である。
前記架橋剤は、ブロック共重合体(C)の官能基(K)と架橋し得る官能基を有する。架橋剤の種類は、ブロック共重合体(C)の架橋剤(K)の種類により変わり得る。官能基(K)が水酸基、アミノ基の場合には、架橋剤は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物が好ましく、
官能基(K)がカルボキシ基、リン酸基の場合には、架橋剤は金属キレート化合物、イソシアネート化合物が好ましく、官能基(K)がエポキシ基、オキセタン基の場合には、架橋剤はアミン系化合物が好ましく、官能基(K)がイソシアネート基、ブロックイソシアネート基の場合には、架橋剤は水酸基系化合物が好ましく、官能基(K)がビニル基、フリル基、アセトアセチル基の場合には、架橋剤は多官能アクリレート系のモノマー化合物が好ましく、官能基(K)が加水分解性シリル基の場合には、架橋剤はシランカップリング剤系化合物が好ましい。官能基(K)がニトリル基の場合には、架橋剤はフェノール樹脂系化合物が好ましい。
前記イソシアネート化合物としては2以上のイソシアネート基を有する化合物が好適であり、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等のイソシアネートモノマー、およびビュレット体、ヌレート体およびアダクト体が例示できる。
前記イソシアネート化合物の具体的としては、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類;
トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類;
ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ポリイソシアネート類;
3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI、イソホロンジイソシアネート)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ポリイソシアネート類が挙げられる。
前記ビュレット体は、イソシアネートモノマーが自己縮合したビュレット結合を有する自己縮合物をいう。具体的には、例えばヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体などが挙げられる。
前記ヌレート体は、イソシアネートモノマーの3量体をいい、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体イソホロンジイソシアネートの3量体トリレンジイソシアネートの3量体などが挙げられる。
前記アダクト体は、イソシアネートモノマーと2官能以上の低分子活性水素含有化合物が反応した2官能以上のイソシアネート化合物をいい、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物(トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、1,6−ヘキサンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物などが挙げられる。
前記エポキシ化合物は、2以上のエポキシ基を有する化合物が好適である。グリシジル基を有する化合物、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が例示できる。
具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA/ビスフェノールF共重合型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂類;
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂類;
エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1、3−ビス(N、N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリシジルアミノフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、ビフェニルジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとこれと共重合可能なビニル単量体との共重合体等のグリシジル基を有する化合物類が挙げられる。
前記金属キレート化合物としては、例えばアルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物が挙げられる。具体的には、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレートが挙げられる。
前記多官能アクリレート系のモノマーとしては、例えば、多官能アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の2官能型;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能型;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能型などが挙げられる。
多官能アクリレート系モノマー化合物とブロック共重合体(C)の官能基(K)とをエンチオール反応させることにより架橋させることができる。
架橋剤の中でも、保存安定性、硬化性の観点からイソシアネート化合物がより好ましい。
官能基(K)と架橋剤中の官能基(架橋剤)と反応し得る官能基のモル比(官能基(K)/官能基(架橋剤))は、ミクロ相分離構造促進の観点から0.01〜10.0であることが好ましく、0.5〜2.0であることがより好ましい。
ブロック共重合体(C)100質量部に対して、例えば架橋剤は0.01〜50.0質量部含有させることができる。より好ましくはブロック共重合体(C)100質量部に対して0.1〜10.0質量部であり、さらに好ましくは0.5〜1.5質量部である。
ブロック共重合体(C)の伸縮性および粘着性をより効果的に引き出す観点からは、架橋剤は、官能基(K)が存在し得る重合体ブロック(A)または重合体ブロック(B)との親和性が高い方がより好ましい。例えば、溶解度パラメータ値を参考に親和性(相溶性)を選定することが可能である。
架橋反応を促進させるために架橋促進剤を加えてもよい。架橋促進剤としては、有機錫系触媒、無機金属触媒、無機錫化合物、酸系触媒、有機塩基系触媒、酸無水物系触媒等が例示できる。
樹脂組成物(D1)は、ブロック共重合体(C)と架橋剤のみからなる組成物とし、例えばホットメルト粘着剤として用いてもよい。また、樹脂組成物(D1)に溶剤を加えた組成物とし、例えば粘度を調整した粘着剤として用いてもよい。また、粘着付与剤等の他の成分を含有して用いてもよい。ブロック共重合体(C)以外の樹脂の好適な例、溶剤、添加剤の好適な例は樹脂組成物(D)において説明した化合物が例示できる。
ブロック共重合体(C)の含有量は、樹脂組成物(D1)の固形分の全体に対して10.0〜99.99質量%の範囲が好ましく、50.0〜99.99質量%の範囲がより好ましく、90.0〜99.99質量%の範囲が更に好ましい。
[樹脂組成物(D2)]
樹脂組成物(D2)は、ブロック共重合体(C)と導電材(E)を少なくとも含む樹脂組成物である。樹脂組成物(D2)はそれ自身で導電性を有している態様の他、導電性を有していない態様も含み得る。例えば液状またはペースト状物の段階では非導電性であるが、フィルム、成形物とした段階で導電性を発現する態様がある。
導電材(E)とブロック共重合体(C)を併用した樹脂組成物(D2)を用いることにより、伸縮性に優れ、且つ導電性に優れる部材を提供できる。樹脂組成物(D2)の用途は限定されないが、導電性を付与できることから、配線、電極等の伸縮性導体、電磁波シールドフィルム、熱伝導性フィルムとして好適である。
導電材(E)は、導電性微粒子および導電性ナノワイヤからなる群より選ばれる少なくとも1種の導電材が用いられる。導電材の種類としては、金属(合金を含む)、カーボン、ドーピングされた半導体材料、導電性高分子、導電性セラミックスが例示できる。具体例は、銀、金、白金、銅、パラジウム、コバルト、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、鉛、錫などの金属、黄銅、青銅、白銅、半田などの合金、銀コート銅粉などの2種以上のハイブリッド材料、金属等にメッキ処理(金メッキ等)を行った材料、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、カーボンブラック等のカーボン粒子、ITO、IZO等の導電性セラミックフィラーが挙げられる。導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリンが例示できる。
伸長時のクラックをより効果的に抑制する観点からは、導電材(E)は、銅または銀を含む材料が好ましい。銅または銀を含む材料を用いることにより、ブロック共重合体(C)の官能基(K)との結合をより効果的に高められる。官能基(K)との結合および導電性の観点から、特に好ましくは、銀または銀コート銅などの銀を含む材料である。導電材(E)は、1種単独または2種以上を併用して用いられる。
前記導電性微粒子は、粒子状のフィラーである。上記材料の他、金属メッキした高分子粒子、金属メッキしたガラス粒子、金属被覆したセラミック粒子を用いてもよい。導電性微粒子の形状としては、球状、連鎖・球状、フレーク(鱗片)状、樹枝(デンドライト)状、コイル状(螺旋形状、スパイラル形状含む)の粒子が例示できる。樹枝状とは、棒状の主枝から分岐枝が2次元または3次元方向に延びた形状をいう。導電性微粒子の形状は、導電性フィラー同士の接触しやすさの観点からフレーク状または/および連鎖・球状粒子が好ましい。また、伸長したときの抵抗値の増加を抑制する観点からはコイル状粒子が好適である。
前記導電性微粒子の平均粒子径D50は、例えば0.5〜50μm程度とすることができる。導電性フィラー同士の接触しやすさの観点からは、1〜12μmが好ましく、フィルムの厚みを薄くする観点からは1〜6μmが好ましい。
前記導電性ナノワイヤは、直径がナノメートルサイズであり、その形状が線状の導電性構造体である。材料としては、前述の導電性微粒子で例示した金属、半導体、導電性高分子、CNTが例示できる。導電性ナノワイヤは、導電性ナノワイヤ同士が隙間を形成して網の目状とすることで良好な電気伝導経路を形成することが可能である。また、導電性ナノワイヤは、網の目状とすることにより、網の目の隙間に開口部を形成することが可能となるので、光透過率の高い導電層とすることも可能である。
前記導電性ナノワイヤの直径(太さ)dと長さLとの比(アスペクト比:L/d)は、好ましくは10〜100,000であり、より好ましくは50〜100,000であり、特に好ましくは100〜10,000である。アスペクト比の大きい導電性ナノワイヤを用いることにより、網の目状に導電性ナノワイヤのネットワークを構築することが可能となり、少量の導電性ナノワイヤにより高い導電性を発現させることができる。また、伸縮性および伸張性を高めつつ、クラックの発生を効果的に低減することができる。なお、前記直径は、導電性ナノワイヤの断面が楕円状である場合はその長径を、多角形の場合には最も長い対角線をいうものとする。導電性ナノワイヤの直径および長さは、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡によって測定することが可能である。
導電性ナノワイヤの直径は、好ましくは500nm未満であり、より好ましくは200nm未満であり、更に好ましくは10〜100nmである。導電性ナノワイヤの長さは、好ましくは2.5μm〜1000μmであり、より好ましくは10μm〜500μmであり、特に好ましくは20μm〜100μmである。これにより、透明導電層の導電性を高めることができる。
導電材(E)には、更に分散性や導電安定性向上の観点から、メルカプト基、アミノ基またはニトリル基等の官能基を導電材の表面に導入し、表面処理を行ってもよい。
ブロック共重合体(C)の伸縮性と導電性をより効果的に引き出す観点からは、導電材(E)は銀が好適であり、更に好ましい形状としては、公知のフレーク状(リン片状)、球状、凝集状(球状の1次粒子が3次元状に凝集した形状)などを挙げることができる。
導電材(E)に用いる銀の市販品としては、例えば、福田金属箔粉工業社製のシルコートAgC−G(凝集状)、AgC−A(フレーク状)、Ag−XF301S(フレーク状)等が挙げられる。
樹脂組成物(D2)の全質量に対して、ブロック共重合体(C)の含有率は0.01〜99質量%の範囲にあることが好ましく、1〜95質量%であることがより好ましく、5〜80質量%であることが更に好ましい。
導電性の樹脂組成物(D2)の全質量に対して、導電材(E)の含有率は1〜99.99質量%の範囲にあることが好ましく、5〜99質量%であることがより好ましく、20〜95質量%であることが更に好ましい。
樹脂組成物(D2)をフィルム状にして被着体と密着させて用いる場合には、密着性、接着性あるいは粘着性を高めるための化合物を含有していてもよい。例えば、シランカップリング剤、シリル化合物、リン酸、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などが挙げられる。
樹脂組成物(D2)は、更に架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤を含むことにより、凝集力を促進して粘着性を高め、更に耐溶剤性および耐熱性を高めることができる。従って、樹脂組成物(D2)は、導電性粘着材としても好適である。架橋剤としては、ブロック共重合体(C)の側鎖、側基または末端に導入された官能基(K)または官能基(L)と反応し得る架橋剤を好適に用いることができる。ブロック共重合体(C)の官能基(K)または官能基(L)と反応する架橋剤として、樹脂組成物(D1)で例示した架橋剤が例示できる。
導電性の樹脂組成物(D2)のブロック共重合体(C)100質量部に対して、架橋剤を含む場合には、架橋剤は0.01〜30質量%用いることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましく、0.5〜2質量%であることが更に好ましい。
樹脂組成物(D2)は、溶剤を加えて、粘度を調整することができる。また、用途に応じて、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で添加剤を加えることができる。溶剤、他の添加剤の好適な例は樹脂組成物(D)において説明した化合物が例示できる。樹脂組成物(D2)を用いて、後述する伸縮性導体などを形成できる。
樹脂組成物(D2)は、例えば、剥離性シート上に塗工・印刷等により導電性樹脂フィルムを形成することができる。なお、本明細書においてフィルムとは、シート、テープ等も包括するものとする。
前記導電性樹脂フィルムの厚みは特に限定されず、用途に応じて適宜設計できる。ストレッチャブル導電材用途の場合には、例えば1〜300μm程度とすることができる。樹脂組成物(D2)に架橋剤を加えている場合には、必要に応じて架橋処理を行うことができる。これらの工程により、導電性を有するフィルムが得られる。また、所望の形状の成形物を得ることもできる。
樹脂組成物(D2)は、製造時または製造後に伸縮性が求められ、且つ得られる製品において導電性が必要とされるフィルム、成形物等に特に好適に用いられる。導電性を有するストレッチャブル材料に特に好適である。特に、ブロック共重合体(C)が官能基(K)を有していることから、金属フィラー等の導電性フィラーを含有してもクラックの発生を効果的に抑制できる。また、架橋剤を添加することにより伸縮性と強度を兼ね備えるフィルムや構造体を得ることができる。
[樹脂組成物(D3)]
樹脂組成物(D3)は、ブロック共重合体(C)と磁性材を少なくとも含む樹脂組成物である。樹脂組成物(D3)はそれ自身で磁性を有している態様の他、磁性を有していない態様も含み得る。例えば液状またはペースト状物の段階では非磁性であるが、フィルム、成形物とした段階で磁性を発現する態様がある。
磁性材とブロック共重合体(C)を併用した樹脂組成物(D3)を用いることにより、伸縮性に優れ、且つ磁性特性を有する部材を提供できる。樹脂組成物(D3)の用途は限定されないが、磁性を付与できることから、電磁波遮蔽フィルム、電磁波シールドフィルムとして好適である。樹脂組成物(D3)は、更に架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤を含むことにより、凝集力を促進して粘着性を高め、更に耐溶剤性および耐熱性を高めることができる。
磁性材は、磁性微粒子および磁性ナノワイヤからなる群より選ばれる少なくとも1種の磁性材が用いられる。磁性材の種類としては、鉄、コバルト、ニッケルの少なくとも1つの金属を含む。FeCo合金、FeNi合金、CoNi合金、FeCoNi合金であってもよい。また、上記金属または合金に他の元素を含めたFeSi合金、FeSiCr合金を含んでいてもよい。また、任意の添加元素として、あるいは不可避不純物として、たとえば、Cr、Mo、Mn、Cu、Sn、Zn、Al、P、B,Vなどを含んでいてもよい。
前記磁性微粒子は、粒子状のフィラーである。上記材料の他、金属メッキした高分子粒子、金属メッキしたガラス粒子、金属被覆したセラミック粒子を用いてもよい。磁性微粒子の形状は、樹脂組成物(D2)の導電性微粒子の形状で例示した粒子が挙げられる。前記磁性微粒子の平均粒子径D50の好適な範囲は、導電性微粒子と同様である。
前記磁性ナノワイヤは、直径がナノメートルサイズであり、その形状が線状の磁性構造体である。磁性ナノワイヤは、磁性ナノワイヤ同士が隙間を形成して網の目状とすることで良好な磁気特性を発現することが可能である。また、磁性ナノワイヤは、網の目状とすることにより、網の目の隙間に開口部を形成することが可能となるので、光透過率の高い導電層とすることも可能である。
前記磁性ナノワイヤの直径(太さ)dと長さLとの比(アスペクト比:L/d)、および直径は、導電性ナノワイヤの好適な範囲と同一である。
樹脂組成物(D3)の全質量に対して、ブロック共重合体(C)の含有率および磁性材の含有率の好適な例は、樹脂組成物(D2)の導電材を磁性材と読み替えた範囲である。また、樹脂組成物(D3)をフィルム状にして被着体と密着させて用いる場合には、密着性、接着性あるいは粘着性を高めるための化合物の例示は、樹脂組成物(D2)と同じである。
樹脂組成物(D3)は、樹脂組成物(D2)と同様、更に架橋剤を添加することができる。架橋剤を添加することにより、強度と伸縮性の両立をより効果的に図ることができる。架橋剤の導入部位、好適な例、好適な含有量は、樹脂組成物(D2)と同様である。
樹脂組成物(D3)は、樹脂組成物(D2)で例示した方法により磁性樹脂フィルムを形成することができる。塗工方法の具体例も樹脂組成物(D2)と同様の方法が例示できる。
前記磁性樹脂フィルムの厚みは特に限定されず、用途に応じて適宜設計できる。ストレッチャブル磁性材用途の場合には、例えば1〜300μm程度とすることができる。樹脂組成物(D3)に架橋剤を加えている場合には、必要に応じて架橋処理を行うことができる。これらの工程により、磁性を有するフィルムが得られる。また、所望の形状の成形物を得ることもできる。
樹脂組成物(D3)は、製造時または製造後に伸縮性が求められ、且つ得られる製品において磁性が必要とされるフィルム、成形物等に特に好適に用いられる。磁性を有するストレッチャブル材料に特に好適である。特に、ブロック共重合体(C)が官能基(K)を有していることから、金属フィラー等の磁性フィラーを含有してもクラックの発生を効果的に抑制できる。また、架橋剤を添加することにより伸縮性と強度を兼ね備えるフィルムや構造体を得ることができる。
[樹脂組成物(D4)]
樹脂組成物(D4)は、ブロック共重合体(C)と熱伝導材を少なくとも含む樹脂組成物である。樹脂組成物(D4)はそれ自身で熱伝導性を有している態様の他、熱伝導性を有していない態様も含み得る。例えば液状またはペースト状物の段階では非熱伝導性であるが、フィルム、成形物とした段階で熱伝導性を発現する態様がある。
熱伝導材とブロック共重合体(C)を併用した樹脂組成物(D4)を用いることにより、伸縮性に優れ、且つ熱伝導性を有する部材を提供できる。樹脂組成物(D4)の用途は限定されないが、熱伝導性を付与できることから、放熱性フィルム、放熱性部材として好適である。樹脂組成物(D4)は、更に架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤を含むことにより、凝集力を促進して粘着性を高め、更に耐溶剤性および耐熱性を高めることができる。
熱伝導材は、熱伝導性の観点から、熱伝導率が10W/m・K以上であることが好ましく、15W/m・K以上であることがより好ましく、20W/m・K以上であることが更に好ましい。熱伝導性フィラーとしては、熱伝導性無機系フィラー、熱伝導性有機無機ハイブリッド系フィラーを用いることができる。
熱伝導性無機系フィラーの具体例としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ベリリア、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの金属酸化物や金属窒化物;水和金属化合物;溶融シリカ、結晶性シリカ、非結晶性シリカ等のシリカ系;炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化チタン、ダイヤモンド、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブなどの窒化系や炭素系フィラーが例示できる。これらの中でもアルミナ、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素がより好ましく、アルミナ、窒化ホウ素が耐熱性、熱伝導性および低誘電率性の観点から特に好ましい。アルミナと窒化ホウ素の併用も好適である。熱伝導性フィラーは、1種単独でまたは複数種を併用して用いられる。
熱伝導性有機無機ハイブリッド系フィラーの具体例としては、上記に挙げた無機系フィラーの表面を樹脂や分散剤でコーティングしたフィラーが例示できる。熱伝導性無機系フィラーの表面を樹脂や分散剤でコーティングする方法としては、公知の方法を適用できる。この場合、熱伝導性無機フィラーの熱伝導特性を効果的に引き出すために、無機系フィラーが露出していることが好ましい。熱伝導性無機系フィラーの表面は、例えば、シラン系、チタネート系およびアルミネート系カップリング剤などで表面処理を行うことができる。表面処理により、ブロック共重合体(C)に対する熱伝導性フィラーの分散性を高めることができる。また、ブロック共重合体(C)と熱伝導性フィラーとの界面接着強度を高めることもできる。
シランカップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン;p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン等が例示できる。
チタネートカップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ジイソプロピルビス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート等が例示できる。
また、熱伝導性無機系フィラーの表面にフッ素系樹脂を被覆する態様も好適である。熱伝導性を良好に保つ観点から、熱伝導性無機フィラー同士が接触する部分は熱伝導性無機フィラーが露出していることが好ましい。
前記熱伝導性粒子は、粒子状のフィラーである。熱伝導性粒子の平均粒子径D50の好適な範囲は、樹脂組成物(D2)で例示した導電性微粒子と同様である。また、密着性、接着性あるいは粘着性を高めるための化合物の好適な例として、樹脂組成物(D2)で例示した化合物があげられる。
樹脂組成物(D4)には、更に架橋剤を添加することができる。架橋剤を添加することにより、強度と伸縮性の両立をより効果的に図ることができる。架橋剤の導入位置、好適な具体例、好適な含有量については樹脂組成物(D2)と同様である。
樹脂組成物(D4)は、樹脂組成物(D2)で例示した方法により熱伝導性樹脂フィルムを形成することができる。塗工方法の具体例も樹脂組成物(D4)と同様の方法が例示できる。
前記熱伝導性樹脂フィルムの厚みは特に限定されず、用途に応じて適宜設計できる。また、所望の形状の成形体としてもよい。樹脂組成物(D4)に架橋剤を加えている場合には、必要に応じて架橋処理を行うことができる。これらの工程により、熱伝導性を有するフィルムまたは成形物を得ることができる。
樹脂組成物(D4)は、製造時または製造後に伸縮性が求められ、且つ得られる製品において熱伝導性が必要とされるフィルム、成形物等に特に好適に用いられる。特に、ブロック共重合体(C)が官能基(K)を有していることから、フィラーを含有してもクラックの発生を効果的に抑制できる。また、架橋剤を添加することにより伸縮性と強度を兼ね備えるフィルムや構造体を得ることができる。
<粘着フィルム>
本実施形態の粘着フィルムは、本実施形態に係る樹脂組成物(D)から形成された粘着層を少なくとも有する粘着フィルム(F)である。粘着フィルム(F)によれば、官能基(K)を有するブロック共重合体(C)を含有するので、粘着性、伸縮性に優れた粘着フィルム(F)を提供できる。
ブロック共重合体(C)に対するヨウ素含有率が0.0001〜10,000質量ppmの範囲にある樹脂組成物(D)を用いることができる。また、樹脂組成物(D)として、ブロック共重合体(C)と架橋し得る架橋剤を含有する樹脂組成物(D1)を用いることができる。更に、樹脂組成物(D)として、導電性微粒子および導電性ナノワイヤからなる群より選ばれる少なくとも1種の導電材を含有する樹脂組成物(D2)を用いてもよい。また、樹脂組成物(D3)、樹脂組成物(D4)を用いてもよい。また、ブロック共重合体(C)に、前記成分を任意の組み合わせで好適に用いることができる。
樹脂組成物(D)が架橋剤を含有する場合、粘着層はブロック共重合体(C)と架橋剤により形成された架橋構造を有する層である。架橋構造を有することにより、ブロック共重合体(C)の凝集力を促進させて粘着力を高め、耐熱性および耐溶剤性を高めることができる。
粘着フィルム(F)は、基材と粘着層が積層された積層体から構成されていてもよい。また、帯電防止層、保護層など、任意の1または複数の層との積層体としてもよい。粘着層は1層の単層または2層以上の積層体とすることができる。
前記基材は、伸縮性に優れた材料であることが好ましく、エラストマー、プラスチック、繊維、フッ素ゴム、シリコーンゴム、天然ゴム等が例示できる。基材は、板状、フィルム状など任意の部材を選択できる。基材の形状は、平面状の他、曲面形状または複雑な形状であってもよい。基材は、単独または2種以上の積層体を使用できる。
基材の厚みは特に制限されないが、例えば1〜500μmとすることができる。また、10〜100μm、20〜50μmとしてもよい。基材フィルムの厚みが上記範囲であると、フィルムの巻き取り性、加工性の点で優れる。一方、基材フィルムが薄いと強度が不足する傾向がある。また、基材フィルムが厚すぎると柔軟性が悪く、基材フィルムが被着体の形状に追随しなくなる虞がある。
前記プラスチックは、例えばポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート、ポリノルボルネン、ポリアリレート、ポリアクリル、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、ポリアミド、およびポリイミド等が挙げられる。
粘着層の形成方法は、特に制限は無く、溶剤により粘度を調整した樹脂組成物(D)を例えば基材または離型シートに、例えばマイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、およびスピンコーター等を用いて形成できる。基材に塗工する場合には、基材に帯電防止処理、プラズマ処理、密着付与プライマー処理、コロナ処理等を施してもよい。塗工に際して乾燥工程を行うことが好ましい。乾燥装置は、特に制限は無く、例えば熱風乾燥機、赤外線ヒーターおよび減圧法等が挙げられる。乾燥温度は、通常60〜160℃程度である。本実施形態の粘着フィルム(F)における粘着層の乾燥後の膜厚は、5〜30μmとすることが好ましい。
粘着層の架橋反応は、上記乾燥工程時に熱により行ってもよいし、別途、エージング処理や熱圧着を行ってもよい。また、活性光線照射により架橋を行ってもよい。
粘着層は、基材の片面に形成する態様の他、両面に形成することもできる。粘着層上には、被着体に貼付する直前まで、剥離性シートを積層させておくことが好ましい。剥離性シートは、例えば、上質紙等の紙またはプラスチックフィルムに剥離剤をコーティングしてなる公知の剥離紙または剥離フィルムを用いることができる。
被着体は特に限定されないが、人体、SUS(ステンレス鋼),ガラス、プラスチックフィルム等が挙げられる。プラスチックフィルムは、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA),ポリカーボネートがある。また、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィンも好適である。
粘着フィルム(F)は、人体やロボットの可動部や曲面部への追随性が求められるストレッチャブルやウェアラブルな粘着材として好適である。粘着フィルム(F)の用途としては、粘着性光学フィルム、一般ラベル・シール等がある。
粘着フィルムが、電子デバイス用途の場合には、帯電防止剤を添加することが好ましい。帯電防止剤としては、例えば、化研産業社製のPR−IL1汎用帯電防止剤(イオン性液体)等が例示できる。
粘着フィルム(F)によれば、ブロック共重合体(C)を含有する樹脂組成物(D)から形成された粘着層を有するので、製造時または/および製品において優れた伸縮性を有する。樹脂組成物(D)として架橋剤を更に加えた樹脂組成物(D1)を用いることにより、粘着フィルム(F)の耐溶剤性、耐熱性を高め、更に粘着性を高めることができる。粘着フィルム(F)は、伸縮性を有し、伸長時のクラック発生を抑制でき、更に被着体との密着性に優れるので、曲面形状を有する被着体、可動部に対する粘着フィルム(F)として特に好適である。
なお、上記においては、粘着フィルム(F)の粘着層として樹脂組成物(D)を用いる例を述べたが、ブロック共重合体(C)自身を粘着層として用いることも可能である。
<伸縮性導体(G)>
本実施形態の伸縮性導体(G)は、樹脂組成物(D2)から形成されてなる。伸縮性導体(G)は導電性材料であり、ブロック共重合体(C)を含む樹脂組成物(D2)を用いることにより、製造時または/および製品において伸縮性および導電性を兼ね備える。伸縮性導体(G)は、それ自体が製品であってもよいし、部材として用いてもよい。伸縮性導体(G)は、例えば、伸縮性配線、伸縮性電極として好適である。また、伸縮性導体(G)は伸縮性電磁波シールド層、伸縮性放熱層などのフィルムとして利用できる。また、所望の形状の導電性を有する成形体として用いることができる。
伸縮性導体(G)は、支持体上に積層して積層体として用いてもよい。支持体は特に限定されないが、伸縮性導体(G)の伸縮性を生かすために伸縮性材料であることが好ましい。具体例としては、伸縮性プラスチックフィルム、伸縮性繊維が例示できる。伸縮性繊維はテキスタイル生地でもよい。また、支持体に凹部を設け、この凹部に伸縮性導体を埋設してもよい。
伸縮性導体(G)と支持体の接合は、伸縮性導体(G)の粘着性を利用して接合してもよいし、ラミネートにより接合してもよい。また、接着層、易接着層を介して接合することもできる。
伸縮性導体(G)としてブロック共重合体(C)に導電材が充填されている樹脂組成物(D2)を用いることにより、伸縮された場合でも優れた導電性を示す。
<電子デバイス(H)>
本実施形態の電子デバイス(H)は、伸縮性導体(G)を有する。伸縮性導体(G)を用いることにより、導電部に屈曲性、可撓性、伸縮性を付与できる。このため、導電部に屈曲性、可撓性または/よび伸縮性が求められる電子デバイス全般に好適に用いられる。例えば、身体やロボットに貼付するセンサー、衣服に内装するウエアラブルセンサー、生体情報取得デバイスに好適である。
また、エレクトロニクス分野において、フレキシブルディスプレイ、フレキシブル配線板、柔軟なトランスデューサ、屈曲性のあるモバイル機器への利用が好適である。また、電磁気で駆動するモータやアクチュエータ、圧電効果を利用したスピーカ、バイブレータ、超音波発生装置等に適用可能である。
電子デバイス(H)における伸縮性導体(G)は、導電性が要求される部材に制限無く利用できる。例えば、配線、電極、導電性接着剤、ビア、電磁波シールドフィルム、熱伝導性フィルムに用いられる。
電極を金属層により構成すると導電性は優れるものの、伸縮性がないため、その利用が限定されていた。一方、導電体として伸縮性導体(G)を用いることにより、伸縮性を顕著に改善できる。更に、柔軟性を有しており人体にもフィットしやすいという優位点がある。
なお、電子デバイス(H)において、伸縮性、屈曲性または/および可撓性が求められる粘着層、保護層などに、導電材を含まない樹脂組成物(D1)などの樹脂組成物(D)を好適に用いることができる。
[アクチュエータ(J)]
本実施形態のアクチュエータ(J)は電子デバイス(H)の一態様であり、伸縮性導体(G)を有する。アクチュエータ(J)は、入力されたエネルギーを物理的な運動に変換する、機械・電気回路を構成する機械ヨウ素である。アクチュエータ(J)の電極層や配線に伸縮性導体(G)が用いられる。アクチュエータ(J)は、電圧の印加により物理的な運動に変換できるので、人体やロボットに貼付して動作または機能を補助するために好適である。また、タッチパネル、点字ブロック装置などのユーザーの入力に応じて触感を再現できる触覚フィードバック用アクチュエータ、人工筋肉としても好適である。また、ブザー、ポンプ、バルブ等の音響、流量の精密コントロール、半導体製造用の微少位置決め装置、発電システム等に利用することもできる。
アクチュエータ(J)の一例として、伸縮性樹脂層を、伸縮性導体(G)からなる一対の伸縮性電極で挟持した構造が例示できる。一対の伸縮性電極に電圧を印加すると、クーロン力によって一対の伸縮性電極に挟持された伸縮性樹脂層を変形させることができる。伸縮性樹脂層には電歪伸縮ポリマーが好適であり、ポリウレタン、アクリル樹脂、シリコーンゴムが例示できる。伸縮性電極として伸縮性導体(G)を用いることにより、伸縮しても導電性を保持することができ、繰り返しの収縮性にも優れるので、人工筋肉等に好適である。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、以降の説明において特に断りが無い場合には、「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」を意味するものとする。また、溶剤以外は不揮発分換算値である。
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)およびMw/Mnの測定]
GPC(商品名:GPCV−2000、日本ウォーターズ社製、カラム:TSKgel、α−3000、移動相:10mMトリエチルアミン/ジメチルホルムアミド溶液)を用い、標準物質としてポリスチレン(分子量427,000、190,000、96,400、37,400、10,200、2,630、440、92)を使用して検量線を作成し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定した。この測定値から多分散度(PDI=Mw/Mn)を算出した。
[ガラス転移温度の測定]
ガラス転移温度は、JIS K 7121(2012)プラスチックの転移温度測定方法に準拠して測定を行い、当該JIS 9.3記載の補外ガラス転移開始温度(Tig)により求められる温度でガラス転移温度を求めた。測定には、示差走査熱量計(TAインスツルメント社製、DSC Q2000)を用いた。
上記方法により、<重合体ブロック(A)>TotalのTg、およびトリブロック構造の場合には重合体ブロック(B)のTg、星形ブロック構造の場合には[重合体ブロック(B)]XのTgが求められる。
[官能基(K)濃度の測定]
ブロック共重合体(C)1gあたりに含有される各種官能基(K)のモル濃度(mmol/g)は、NMR測定装置(日本電子社、ECZ400S)により求めた。例えば、官能基(K)として、水酸基を有するアクリル酸−2−ヒドロキシエチルを共重合させた実施例S1を例に算出方法を説明する。
具体的には、重クロロホルム溶媒中のブロック共重合体(C)のH−NMRスペクトルを測定し、アクリル酸2−ヒドロキシエチル由来の単位のアルキル基に帰属される3.8ppmの領域の積分強度と、メチルメタクリレート由来の単位のアルキル基に帰属される3.6ppmの領域の積分強度と、ブチルアクリレート由来の単位のアルキル基に帰属される4.0ppmの領域の積分強度の比率から、ブロック共重合体(C)の水酸基濃度を算出した。水酸基以外の官能基濃度に関しても、実施例S1と同様、各官能基に由来する帰属ピークから算出した。
但し、連鎖末端(ポリマー分子末端を含む)に官能基(K)を有するブロック共重合体(C)において、連鎖末端基は極微量しか存在しないことから、感度に問題があったり、他のシグナルと重なったりした場合、NMR解析では解析困難となる場合がある。
この場合には、MALDI−TOFMS(BRUKER社 ultraFleXtreme)を用いて測定を実施し、各成分のピーク強度の相対比から、連鎖末端解析を行うことで、連鎖末端の官能基濃度を算出することができる。少なくとも、ブロック共重合体(C)1gあたりに含有される官能基(K)について、0.00001mmol/g以上が検出できる測定方法で行う。
[ヨウ素含有率の測定]
各実施例・比較例で得られた樹脂組成物をメチルエチルケトンに溶解させて樹脂組成物の濃度が2.5質量%の溶液を調製した。得られた溶液を蛍光X線分析装置(フィリップス社製、品番:PW2404)で測定し、各実施例・比較例で得られたブロック共重合体(C)の質量に対するヨウ素含有率(ppm)を求めた。
また、蛍光X線分析装置によりヨウ素が検出されなかったサンプルは、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析)装置(アジレント・テクノロジー社製、Agilent 7900)で測定し、ブロック共重合体(C)に対するヨウ素含有率(質量ppm)を求めた。
更に、ICP−MS装置によりヨウ素が検出されなかったサンプルは、ICP−MS/MS装置(アジレント・テクノロジー社製、Agilent 8900 ICP−QQQ を MS/MS モードで使用)で測定し、ブロック共重合体(C)に対するヨウ素含有率(質量ppm)を求めた。
ICP−MS、ICP−MS/MSの測定条件としては、ブロック共重合体(C)約0.25gを精秤し、マイクロウェーブ湿式分解装置を用いた酸分解法により処理後、蒸留水で50mL定溶とし、ICP測定を行った。
ブロック共重合体(C)の原料の略称は、以下の通りである。
(単量体)
MMA:メチルメタクリレート(住友化学社製)
BMA:ブチルメタクリレート(三菱ケミカル社製)
HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(日本触媒社製)
MOI:2−イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工社製)
MOI−BP:2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート(昭和電工社製)
DMAEMA:ジメチルアミノエチルメタクリレート(三菱ガス化学社製)
3−TMSPM:3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)
OXE−30:(3−エチルオキセタン−3−イル)メタクリル酸メチル(大阪有機化学社製)
FMA:フルフリルメタクリレート(東京化成工業社製)
AAEM:2−アセトアセトキシエチルメタクリレート(三菱ケミカル社製)
MA−128:(2,2−ペンタメチレン−1,3−オキサゾリジル−3)エチルメタクリレート(化薬アクゾ社製)
PAM−200:ポリオキシプロピレンモノリン酸エステルモノメタクリル酸エステル(ソルベイ日華社製)
BA:ブチルアクリレート(日本触媒社製)
MA:メチルアクリレート(日本触媒社製)
St:スチレン(中央化成品社製)
AN:アクリロニトリル(三菱ケミカル社製)
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート(日本触媒社製)
LMA:ラウリルメタクリレート(三菱ケミカル社製)
2−MTA:メトキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業社製)
(重合開始剤)
合成2:4分岐有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤
合成3:5分岐有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤
合成4:6分岐有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤
CP−I:2−ヨード−2−メチルプロピオニトリル(東京化成工業社製)
BM1448: 4−シアノ−4−[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタンサンメチル(BORON MOLECULAR社製)
EMA−II:エチレンビス(2−ヨードイソブチレート)(合同資源社製)
PhE−II:エチレンビス(2−ヨード−2−フェニルアセテート)(合同資源社製)
EMA−III:グリセロールトリス(2−ヨードイソブチレート)(合同資源社製)
3f−BiB:1,1,1−Tris(2-bromoisobutyryloxymethyl)ethane(Aldrich社製、No. 723185)
4f−BiB:Pentaerythritol tetrakis(2-bromoisobutyrate)(Aldrich社製、No. 723193)
6f−BiB:Dipentaerythritol hexakis(2-bromoisobutyrate)(Aldrich社製、No. 723207)
HO−BriBu:2−ブロモイソ酪酸2−ヒドロキシエチル(Aldrich社製、No. 723150)
AIBN:2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(和光純薬社製)
V65:2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬社製)
(カップリング剤)
2C−(a)(2官能イソシアネート(a)):ヘキサメチレンジイソシアネート(東ソー社製)
3C−(b)(3官能イソシアネート(b)):TDI−TMPアダクト体(日本ポリウレタン工業社製)
4C−(c)(4官能イソシアネート(c)):合成7
6C−(d)(6官能イソシアネート(d)):合成8
(重合開始剤の合成)
合成2:4分岐有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤
窒素ガス導入管、撹拌機を備えた200mLフラスコに、4f-BiB:Pentaerythritol tetrakis(2-bromoisobutyrate)(Aldrich社製、No. 723193)5.19g(7.1mmol)、ヨウ化ナトリウム(和光純薬社製)5.09g(34mmol)をアセトニトリル20mLに溶解させ、窒素置換後、80℃で8時間加熱攪拌した。反応終了後、濾過精製し、減圧下で溶媒を濃縮し、白色固体物4.98g(収率87.2%)の合成2の化合物を得た。目的物の生成は、H−NMRより確認した。
合成3:5分岐有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤
窒素ガス導入管、撹拌機を備えた500mLフラスコに、2−ブロモイソブチリルブロミド(東京化成工業社製)50.0g(0.22mol)とα−D−グルコース(Aldrich社製)5.0g(0.028mol)、ピリジン50mLをクロロホルム100mLに溶解させ、窒素置換後、60℃で12時間加熱攪拌した。反応終了後、濾過生成し、減圧下で溶媒を濃縮し、白色固体物2.25g(収率30.0%)の中間体化合物を得た。次いで、窒素ガス導入管、撹拌機を備えた100mLフラスコに、中間体化合物0.50g(0.54mmol)ヨウ化ナトリウム0.5g(3.3mmol)をアセトニトリル50mLに溶解させ、窒素置換後、80℃で12時間加熱攪拌した。反応終了後、濾過精製し、減圧下で溶媒を濃縮し、白色固体物0.38g(収率79.2%)の合成3の化合物を得た。目的物の生成は、H−NMRより確認した。
合成4:6分岐有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤
窒素ガス導入管、撹拌機を備えた200mLフラスコに、6f-BiB:Dipentaerythritol hexakis(2-bromoisobutyrate)(Aldrich社製、No. 723207)8.15g(7.1mmol)、ヨウ化ナトリウム(和光純薬社製)5.09g(34mmol)をアセトニトリル20mLに溶解させ、窒素置換後、80℃で8時間加熱攪拌した。反応終了後、濾過精製し、減圧下で溶媒を濃縮し、白色固体物7.98g(収率84.2%)の合成4の化合物を得た。目的物の生成は、H−NMRより確認した。
合成7:4官能イソシアネート(c)
窒素ガス導入管、撹拌機を備えた100mLフラスコに、L−1,2,3,4−ブタンテトラオール(東京化成工業社製)12.2g(100mmol)、トリレン−2,4−ジイソシアナート(東京化成工業社製)76.6g(440mmol)を入れ、窒素置換後、100℃で3時間加熱攪拌した。反応終了後、濾過精製し、目的物を80.1g(収率87.2%)の合成7の化合物を得た。目的物の生成は、H−NMRより確認した。
合成8:6官能イソシアネート(d)
窒素ガス導入管、撹拌機を備えた500mLフラスコに、ジペンタエリトリトール(東京化成工業社製)25.4g(100mmol)、トリレン−2,4−ジイソシアナート(東京化成工業社製)114.9g(660mmol)をトルエン100mLに溶解させ、窒素置換後、60℃で3時間加熱攪拌した。反応終了後、濾過精製し、目的物を100.7g(収率70.2%)の合成8の化合物を得た。目的物の生成は、H−NMRより確認した。
[ブロック共重合体(C)中の(疎水性)エチレン性不飽和単量体の含有率(%)]
重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)を構成するエチレン性不飽和単量体の合計仕込み量に対する、疎水性のエチレン性不飽和単量体の含有率を求めた。
[重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)に対する重合体ブロック(A)の含有率(質量%)]
ブロック共重合体(C)中の重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)に対して、重合体ブロック(A)の含有率を算出した。具体的には、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)を構成するエチレン性不飽和単量体の合計仕込み量に対する、重合体ブロック(A)の含有率を求めた。
(実施例S1)
窒素ガス導入管、撹拌機を備えた2Lフラスコに、EMA−IIを0.93g、ヨウ素を0.001g、テトラブチルアンモニウムヨージドを16.1gおよびBAを133.0g、HEAを7.0g混合し、110℃で24時間反応させてプレポリマーを得た。1H−NMRから算出したBA、HEAの転化率はどちらも100%であった。
次いで、2段目モノマーとしてMMAを60.0g、トルエン溶媒200gをプレポリマー溶液全量に加え、110℃で更に12時間反応させた。H−NMRから算出した2段目モノマーMMAの転化率も100%であった。
その後、室温まで冷却後、アルミナ粉(Aldrich社製)を添加し、1時間攪拌した後、濾過、洗浄および乾燥によって重合体ブロック(B)の主鎖中に水酸基を有する、2分岐の[A−B]Xの星形ブロック構造を有するブロック共重合体(C)を得た。目的物の生成は、H−NMRより確認した。
合成したブロック共重合体(C)のH−NMRスペクトルデータを以下に示す。
H−NMR(400MHz、重クロロホルム溶媒)δppm:4.21、4.03、3.85、3.60、2.27、1.90、1.60、1.38、0.94(シグナルは全てブロード)。
実施例S1の<重合体ブロック(A)>TotalのTg、<重合体ブロック(B)[X]<のTgを表1に示す。また、重合体ブロック(A)のメタクリル酸エステルの単量体の仕込み率、メチルメタクリレートの仕込み率、重合体ブロック(B)のアクリル酸エステルの単量体の仕込み率、ブチルアクリレートの仕込み率を表1に示す。
また、実施例S1のブロック共重合体(C)のMn、Mw/Mn、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の仕込み量に対する重合体ブロック(A)の含有率(質量%)、官能基(K)濃度(mmol/g)およびヨウ素含有率(質量ppm)を求めた。これらの結果を表2に示す。また、ブロック共重合体(C)の重合に用いたエチレン性不飽和単量体中の疎水性のエチレン性不飽和単量体の含有率(質量%)、官能基(K)の種類、官能基(K)を導入したブロック、官能基(K)の導入位置も表2に合わせて示す。表中、官能基(K)を主鎖の側基または側鎖に導入した場合を「主鎖」とし、官能基(K)を末端に導入した場合を「末端」と記載する。以下の実施例も同様とした。
(実施例S2〜S5,S10〜17、S19、比較例S1〜S3、S5〜S8、S10)
実施例S1と同様RCMP法により、表1、3、5に示す条件で重合し、主鎖中に官能基(K)を有する、分岐構造の[A−B]Xの星形ブロック構造を得た。表2、4、6に実施例S1と同様の特性値を示す(以下同様)。
(実施例S6)
窒素ガス導入管、撹拌機を備えた2Lフラスコに、合成3で得た重合開始剤を0.78g、ヨウ素を0.002g、テトラブチルアンモニウムヨージドを8.1gおよびBAを135.0g、MMAを18.0g、2EHAを27.0g混合し、110℃で24時間反応させてプレポリマーを得た。H−NMRから算出したBA、MMA、2EHAの転化率は全て100%であった。
次いで、2段目モノマーとしてMMAを15.0gおよびHEMAを5.0g、トルエン溶媒200gをプレポリマー溶液全量に加え、110℃で12時間反応させた。H−NMRから算出した2段目モノマーMMA、HEMAの転化率は全て100%であった。
その後、室温まで冷却後、アルミナ粉(Aldrich社製)を添加し、1時間攪拌した後、濾過、洗浄および乾燥によって5分岐の[A−B]Xの星形ブロック構造を有する前駆体ポリマーを得た。
更に、得られた前駆体ポリマー全量に、ビニル基導入剤として、MOIを4.4g、ウレタン化錫触媒(ネオスタンU−810)を0.05g添加し、70℃で4時間反応させた。その後、IR分析により、反応原料となるイソシアネート基由来のピークが消失していることを確認した。その後、室温まで冷却し、アルミナ粉(Aldrich社製)を添加して1時間攪拌した後、濾過、洗浄および乾燥によって重合体ブロック(A)の主鎖中にビニル基(メタクリロイル基)を有する、5分岐の[A−B]Xの星形ブロック構造を有するブロック共重合体(C)を得た。目的物の生成は、H−NMRより確認した。
合成したブロック共重合体(C)のH−NMRスペクトルデータを以下に示す。
H−NMR(400MHz、重クロロホルム溶媒)δppm:8.03、6.48、6.40、4.58、4.36、4.31、4.03、3.85、3.60、3.15、2.27、2.07、2.01、1.90、1.60、1.38、0.94(シグナルは全てブロード)。
(実施例S7)
窒素ガス導入管、撹拌機を備えた2Lフラスコに合成4で得た重合開始剤を0.54g、ヨウ素を0.001g、テトラブチルアンモニウムヨージド5.6gおよびBAを130.0g混合し、110℃で24時間反応させてプレポリマーを得た。H−NMRから算出したBAの転化率は100%であった。
次いで、2段目モノマーとしてMMAを63.0gおよびBAを7.0g、トルエン溶媒200gをプレポリマー溶液全量に加え、110℃で12時間反応させた。H−NMRから算出した2段目モノマーMMA、BAの転化率はどちらも100%であった。
その後、室温まで冷却後、アルミナ粉(Aldrich社製)を添加し、1時間攪拌した後、濾過、洗浄および乾燥によって6分岐の[A−B]Xの星形ブロック構造を有する前駆体ポリマーを得た。
更に、得られた前駆体ポリマー100.0gに1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(東京化成工業社製)を0.5g、DMF溶媒100.0gを添加し、40℃で24時間反応させた。その後、室温まで冷却後、アルミナ粉(Aldrich社製)を添加し、1時間攪拌した後、濾過、洗浄および乾燥によって重合体ブロック(A)の末端にアミノ基を有する、6分岐の[A−B]Xの星形ブロック構造を有するブロック共重合体(C)を得た。目的物の生成は、H−NMR、MALDI−TOFMSより確認した。
合成したブロック共重合体(C)のH−NMRスペクトルデータを以下に示す。
H−NMR(400MHz、重クロロホルム溶媒)δppm:4.03、3.60、2.27、1.90、1.60、1.38、0.94(シグナルは全てブロード)。
(比較例S9)
実施例S7と同様RCMP法により、表5に示す条件で重合し、末端にアミノ基を有する、2分岐の分岐構造の[A−B]Xの星形ブロック構造を得た。表6に実施例S7と同様の特性値を示す(以下同様)。
(実施例S8)
窒素ガス導入管、撹拌機を備えた2Lフラスコに、EMA−IIを1.59g、ヨウ素を0.015g、テトラブチルアンモニウムヨージドを13.8gおよびBAを96.0g、BMAを24.0g混合し、110℃で24時間反応させてプレポリマーを得た。H−NMRから算出したBA、BMAの転化率はどちらも100%であった。
次いで、2段目モノマーとしてMMAを80.0g、トルエン溶媒200gをプレポリマー溶液全量に加え、110℃で更に12時間反応させた。H−NMRから算出した2段目モノマーMMAの転化率も100%であった。
その後、室温まで冷却後、アルミナ粉(Aldrich社製)を添加し、1時間攪拌した後、濾過、洗浄および乾燥によって、2分岐の[A−B]Xの星形ブロック構造を有するブロック共重合体(C)を有する前駆体ポリマーを得た。
更に、得られた前駆体ポリマー100.0gに3−アミノプロピルトリエトキシシラン(東京化成工業社製)を0.7g、DMF溶媒100.0gを添加し、40℃で24時間反応させた。その後、室温まで冷却し、濾過、洗浄および乾燥によって重合体ブロック(A)の末端に加水分解性シリル基を有する、2分岐の[A−B]Xの星形ブロック構造を有するブロック共重合体(C)を得た。目的物の生成は、H−NMR、MALDI−TOFMSより確認した。
合成したブロック共重合体(C)のH−NMRスペクトルデータを以下に示す。
H−NMR(400MHz、重クロロホルム溶媒)δppm:4.03、3.60、2.27、1.90、1.60、1.38、0.94(シグナルは全てブロード)。
(実施例S9)
窒素ガス導入管、撹拌機を備えた2Lフラスコに、EMA−IIIを0.96g、ヨウ素を0.001g、テトラブチルアンモニウムヨージドを13.7gおよびBAを109.5g、LMAを14.6g、2EHAを21.9g混合し、110℃で24時間反応させてプレポリマーを得た。H−NMRから算出したBA、LMA、2EHAの転化率は全て99.5%以上であった。
次いで、2段目モノマーとしてMMAを48.6g、HEMAを5.4g、トルエン溶媒200gをプレポリマー溶液全量に加え、110℃で更に18時間反応させた。H−NMRから算出した2段目モノマーMMA、HEMAの転化率も全て99.5%以上であった。
その後、室温まで冷却後、アルミナ粉(Aldrich社製)を添加し、1時間攪拌した後、濾過、洗浄および乾燥によって重合体ブロック(A)の主鎖中に水酸基を有する、3分岐の[A−B]Xの星形ブロック構造を有するブロック共重合体(C)を有する前駆体ポリマーを得た。
更に、得られた前駆体ポリマー100.0gに2−アミノエタノール(東京化成工業社製)を0.6g、DMF溶媒100.0gを添加し、40℃で24時間反応させた。その後、室温まで冷却後、アルミナ粉(Aldrich社製)を添加し、1時間攪拌した後、濾過、洗浄および乾燥によって重合体ブロック(A)の主鎖中と連鎖末端の両部位に水酸基を有する、3分岐の[A−B]Xの星形ブロック構造を有するブロック共重合体(C)を得た。目的物の生成は、H−NMR、MALDI−TOFMSより確認した。
合成したブロック共重合体(C)のH−NMRスペクトルデータを以下に示す。
H−NMR(400MHz、重クロロホルム溶媒)δppm:4.21、4.03、3.85、3.60、2.27、2.07、1.90、1.60、1.38、1.26、0.94(シグナルは全てブロード)。
(実施例S18、比較例S4)
実施例S9と同様RCMP法により、表3、4に示す条件で重合し、連鎖末端に官能基(K)を有する、分岐構造の[A−B]Xの星形ブロック構造を得た。
(比較例S11)RAFT法
RAFT法によりブロック共重合体(C)を合成した。具体的には、窒素ガス導入管、撹拌機を備えた2Lフラスコに、RAFT開始剤としてBM1448を0.82g、AIBNを0.52gおよびMMAを24.3g、MAAを2.7g、トルエン溶媒50gを混合し、80℃で6時間反応させてプレポリマーを得た。H−NMRから算出したMMA、MAAの転化率はどちらも99.0%以上であった。
次いで、AIBNを0.50gおよびBAを146.0g、トルエン溶媒150gをプレポリマー溶液全量に加え、80℃で更に12時間反応させた。H−NMRから算出した2段目モノマーBAの転化率は99.5%以上であった。
更に、AIBNを0.15gおよびMMAを24.3g、MAAを2.7g、トルエン溶媒50gを混合し、80℃で6時間反応させた。H−NMRから算出した3段目モノマーMMA、MAAの転化率はどちらも99.5%以上であった。その後、室温まで冷却後、濾過、洗浄および乾燥によって重合体ブロック(A)の主鎖中にカルボキシル基を有する、A−B−Aトリブロック構造を有するブロック共重合体(C)を得た。目的物の生成は、H−NMRより確認した。
合成したブロック共重合体(C)のH−NMRスペクトルデータを以下に示す。
H−NMR(400MHz、重クロロホルム溶媒)δppm:11.15、4.03、3.60、2.27、1.90、1.60、1.38、0.94(シグナルは全てブロード)。
(比較例S12)ATRP法
ATRP法によりブロック共重合体(C)を合成した。具体的には、窒素ガス導入管、撹拌機を備えた2Lフラスコに、3分岐のATRP開始剤として3f−BiB:1,1,1−Tris(2−bromoisobutyryloxymethyl)ethane(Aldrich社製、No. 723185)3.6g、臭化銅(I)1.0g、N,N,N’、N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン1.2g、およびBAを164.0g、トルエン溶媒150gを混合し、90℃で20時間反応させてプレポリマーを得た。H−NMRから算出したBAの転化率は99.5%以上であった。
次いで、MMA34.6gおよびHEMA1.4g、トルエン溶媒50gをプレポリマー溶液全量に加え、90℃で10時間反応させた。その後、室温まで冷却後、アルミナ粉(Aldrich社製)を添加し、1時間攪拌した後、濾過、洗浄および乾燥によって重合体ブロック(A)の主鎖中に水酸基を有する、3分岐の[A−B]Xの星形ブロック構造を有するブロック共重合体(C)を得た。目的物の生成は、H−NMRより確認した。
合成したブロック共重合体(C)のH−NMRスペクトルデータを以下に示す。
H−NMR(400MHz、重クロロホルム溶媒)δppm:4.21、4.03、3.85、3.60、2.27、1.90、1.60、1.38、0.94(シグナルは全てブロード)。
Figure 2021095440
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次に、カップリング反応によりブロック共重合体(C)を得た製造例の一例について説明する。
(実施例S20)
カップリング反応によりブロック共重合体(C)を合成した。具体的には、窒素ガス導入管、撹拌機を備えた2Lフラスコに、CP−Iを0.46g、ヨウ素を0.002g、テトラブチルアンモニウムヨージド6.2g、MMAを57.0gおよびMA3.0gをトルエン溶媒50g中で、75℃で12時間反応させることにより重合体ブロック(A)を得た。H−NMRから算出したMMA、MAの転化率はどちらも100%であった。次いで、BA133.0gおよびAA7.0gをプレポリマー溶液全量に加え、110℃で24時間反応させ、室温まで冷却後、アルミナ粉(Aldrich社製)を添加し、1時間攪拌した後、濾過、洗浄、および乾燥によって重合体ブロック(B)にカルボキシル基を含むA−Bジブロックポリマーを得た。H−NMRから算出したBA、AAの転化率はどちらも100%であった。
得られたジブロックポリマー100.0gに2−アミノエタノール6.2g、ジグライム150.0gを添加し、110℃で8時間反応させ、室温まで冷却した後、濾過、洗浄、および乾燥によって重合体ブロック(B)の末端に水酸基を有するA−Bジブロックポリマーを得た。
次いで、水酸基を末端に有するA−Bジブロックポリマー100gに対して、脱水トルエン200g、カップリング剤として2官能イソシアネート(a)0.24g、および触媒としてジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレート0.01gを添加し、80℃で10時間反応させることによりカップリング反応を行った。その後、トルエンを留去し、得られた重合体のHNMR分析およびIR分析より、主鎖中にウレタン結合であるカップリング剤残基Xと、重合体ブロック(B)の主鎖中にカルボキシル基を有する[A−B]Xの星形ブロックポリマーを得た。目的物の生成は、H−NMR、GPC、IR分析により確認した。
合成したブロック共重合体(C)のH−NMRスペクトルデータを以下に示す。
H−NMR(400MHz、重クロロホルム溶媒)δppm:11.15、4.03、3.60、2.27、1.90、1.60、1.38、0.94(シグナルは全てブロード)。
(実施例S21)
表7に示す条件に変更し、実施例S20と同様の方法によりRCMP法により、表7,8に示すような重合体ブロック(A)とBの主鎖中に、アミノ基を有する2分岐の[A−B]Xの星形構造を有するブロック共重合体(C)を得た。
(実施例S22)
カップリング反応によりブロック共重合体(C)を合成した。具体的には、窒素ガス導入管、撹拌機を備えた2Lフラスコに、CP−Iを0.21g、ヨウ素を0.005g、テトラブチルアンモニウムヨージド5.1g、MMA24.0gおよびFMA6.0gをトルエン溶媒50g中で、75℃で12時間反応させることにより重合体ブロック(A)を得た。H−NMRから算出したMMA、FMAの転化率はどちらも100%であった。
次いで、LMA42.5gおよびBA127.5gをプレポリマー溶液全量に加え、110℃で16時間反応させ、室温まで冷却後、アルミナ粉(Aldrich社製)を添加し、1時間攪拌した後、濾過、洗浄、および乾燥によって重合体ブロック(A)にフリル基を含むA−Bジブロックポリマーを得た。H−NMRから算出したLMA、BAの転化率はどちらも99.5%以上であった。
得られたジブロックポリマー100.0gに2−アミノエタノール4.2g、ジグライム150.0gを添加し、110℃で8時間反応させ、室温まで冷却した後、濾過、洗浄、および乾燥によって重合体ブロック(B)の末端に水酸基を有するA−Bジブロックポリマーを得た。
次いで、水酸基を末端に有するA−Bジブロックポリマー100gに対して、脱水トルエン200g、カップリング剤として3官能イソシアネート3C−(b)0.18g、および触媒としてジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレート0.01gを添加し、80℃で10時間反応させることによりカップリング反応を行った。その後、トルエンを留去し、主鎖中にウレタン結合であるカップリング剤残基Xと、重合体ブロック(A)の主鎖中にフリル基を有する3分岐の[A−B]Xの星形構造を有するブロック共重合体(C)を得た。目的物の生成は、H−NMR、GPC、IR分析により確認した。
合成したブロック共重合体(C)のH−NMRスペクトルデータを以下に示す。
H−NMR(400MHz、重クロロホルム溶媒)δppm:7.67、6.47、6.39、5.16、4.03、3.97、3.60、2.27、1.90、1.60、1.38、0.94(シグナルは全てブロード)。
(実施例S23、S24、比較例S13)
表7に示す条件に変更し、実施例S22と同様の方法によりRCMP法により、表7,8に示すようなブロックイソシアネート基、ニトリル基を有する4分岐または6分岐の星形構造を有するブロック共重合体(C)を得た。また、比較例S13では官能基を有さない3分岐の星形構造を有するブロック共重合体(C)を得た。
(比較例S14)ATRP法
ATRP法のカップリング反応によりブロック共重合体(C)を合成した。具体的には、窒素ガス導入管、撹拌機を備えた2Lフラスコに、ATRPの水酸基開始剤として、HO−BriBuを0.51g、臭化銅(I)1.2g、N,N,N’、N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン1.6g、およびBAを134.9g、AAを7.1g、トルエン溶媒150gを混合し、90℃で20時間反応させてプレポリマーを得た。H−NMRから算出したBA、AAの転化率はどちらも99.5%以上であった。
次いで、MMA55.1gおよびMA2.9g、トルエン溶媒50gをプレポリマー溶液全量に加え、90℃で10時間反応させた。その後、室温まで冷却後、アルミナ粉(Aldrich社製)を添加し、1時間攪拌した後、濾過、洗浄および乾燥によって重合体ブロック(B)の主鎖中にカルボキシル基を含み、重合体ブロック(B)の末端(開始剤残基)に水酸基を有するA−Bジブロックポリマーを得た。H−NMRから算出したMMA、MAの転化率はどちらも99.5%以上であった。
次いで、水酸基を末端に有するA−Bジブロックポリマー100gに対して、脱水トルエン200g、カップリング剤として2官能イソシアネート2C−(a)0.15g、および触媒としてジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレート0.01gを添加し、80℃で10時間反応させることによりカップリング反応を行った。その後、トルエンを留去し、主鎖中にウレタン結合であるカップリング剤残基Xと、重合体ブロック(B)の主鎖中にカルボキシル基を有する2分岐の[A−B]Xの星形構造を有するブロック共重合体(C)を得た。目的物の生成は、H−NMR、GPC、IR分析により確認した。
合成したブロック共重合体(C)のH−NMRスペクトルデータを以下に示す。
H−NMR(400MHz、重クロロホルム溶媒)δppm:11.15、4.03、3.60、2.27、1.90、1.60、1.38、0.94(シグナルは全てブロード)。
Figure 2021095440
Figure 2021095440
<ブロック共重合体(C)の膜物性および自己粘着物性>
実施例S1〜S24の各ブロック共重合体(C)および比較例S1〜S14に係るブロック共重合体(C)のフィルムを以下の方法により作製し、膜物性および自己粘着性について、以下の基準により評価した。その結果を表9に示す。
(樹脂フィルムの製造)
各実施例および比較例に係るブロック共重合体(C)100部を300mLのトルエンに加えた樹脂組成物を得た。そして、各実施例および比較例に係る樹脂組成物をそれぞれ、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離性フィルム基材(製品名「SP−PET382050」、リンテック社製)の剥離処理面上に、ドクターブレードにて乾燥後の厚みが65μmと、1mmの2水準のサンプルが得られるようにそれぞれ塗工した。次いで、25℃で100時間乾燥することにより、樹脂フィルムを有する2水準の積層体を得た。
(引張破断強さおよび引張破断伸度)
厚み1mmの各実施例および比較例に係る積層体を、250mm×700mmのサイズにカットし、ダンベル3号型試験片を繰り出すことで試験片αを作製した。そして、試験片αから剥離性フィルムを剥がした樹脂フィルムに対し、引張試験機(RTG1310、AND社製)を用いて、23℃湿度50%、サンプルのチャック間距離40mm、速度50mm/minの条件で引張試験を行うことにより、樹脂フィルムの引張破断強さおよび引張破断伸度を測定した。測定によって樹脂フィルムが破断した際の強度を引張破断強さとし、破断した際の伸度を引張破断伸度とした。
(粘着力/180°剥離試験)
厚みが65μmの各実施例および比較例に係る積層体を、25mm×100mmのサイズにカットして試験片βを作製した。次いで、JIS G4305及びJIS B0601に準拠したステンレス板(SUS304、表面仕上げBA、表面粗さ50nm、サイズ50mm×125mm)上に、樹脂フィルムがステンレス板と対向した状態となるように載せた。次いで、試験片β上に300mm/分の速度で2kgのゴムローラーを一往復させることにより、試験片βとステンレス板とを貼り合わせた。更に、試験片βから剥離性フィルムを剥がし、JIS Z0237に準じて、樹脂フィルム上に厚さ25μmのJIS C2318に規定するポリエチレンテレフタレートフィルムを重ねた。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に300mm/分の速度で2kgのゴムローラーをもう一往復させることにより、180°剥離強度評価用サンプルγを得た。続いて、引張試験機(RTG1250A、AND社製)を用いて、温度23℃、湿度50%で24時間静置し、JIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行い、180°剥離強度(N/25mm)を測定した。
(保持力)
試験片βを、上述するJIS G4305及びJIS B0601に準拠したステンレス板に25mm×25mmで貼り付け、試験片β上に300mm/分の速度で2kgのゴムローラーを一往復させることにより、試験片βとステンレス板とを貼り合わせた。更に、試験片βから剥離性フィルムを剥がし、JIS Z0237に準じて、樹脂フィルム上に厚さ25μmのJIS C2318に規定するポリエチレンテレフタレートフィルムを重ねた。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に300mm/分の速度で2kgのゴムローラーをもう一往復させた。その後、温度23℃、湿度50%で24時間静置し、保持力評価用サンプルδを作製した。そして、保持力評価用サンプルδを100℃、相対湿度50%の条件で、荷重1kgの重りを吊り下げ、おもりが落下するまでの時間から求めた。20時間後で重りが落下しない場合は、20時間後の試験片βとステンレス板のずれ距離を測長し、以下の基準により保持力を評価した。
+++:ずれ距離が1.0mm以下。
++:ずれ距離が1.0mmを超えて、10.0mm以下。
+:ずれ距離が10.0mmを超えて、20.0mm以下。
NG:ずれ距離が20.0mmを超える、又は重りが落下。
同様にして、保持力評価用サンプルδを120℃、相対湿度50%の条件で上記基準により保持力を評価した。
Figure 2021095440
<樹脂組成物(D1)および粘着フィルムの作製および特性評価>
表10、11に示す各ブロック共重合体(C)100部に、表10、11に示す配合量で架橋剤を加えることにより、実施例Y25〜Y48および比較例Y15〜Y28に係る樹脂組成物(D1)を得た。また、これらの樹脂組成物から粘着層を形成し、膜物性および粘着物性を評価した。評価結果を表12、13に示す。
(架橋剤)
各実施例および比較例に係る架橋剤としては、IPDIヌレート(イソホロンジイソシアネートのヌレート体、Degussa AG社製、T1890)、TETRAD-X(エポキシ系、三菱ガス化学社製)、1,4−BDDA(多官能アクリレート、大阪有機化学社製、ビスコート195)、KBE−403(シランカップリング剤、信越化学工業社製)、トリメチロールプロパン(多官能水酸基、東京化成工業社製)、ST11(アミン系エポキシ樹脂硬化剤、三菱ケミカル社製)、アジピン酸(カルボン酸系、東京化成工業社製)、TD−2093−60M(フェノールノボラック、DIC社製)、アルミキレートD(アルミニウム有機化合物、川研ファインケミカル社製)を用いた。
(粘着フィルムの製造)
各実施例および比較例に係る樹脂組成物をそれぞれ厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離性フィルム基材(製品名「SP−PET382050」、リンテック社製)の剥離処理面上に、ドクターブレードにて乾燥後の厚みが65μmと、1mmになるように塗工した2水準のフィルムを準備した。そして、両フィルムを25℃で100時間乾燥することにより各膜厚の粘着層(樹脂フィルム)を有する積層体である粘着フィルムを得た。
(引張破断強さおよび引張破断伸度)
上述した樹脂フィルムと同様の方法により上記樹脂組成物(D1)で形成した厚み1mmの粘着層を用いて測定した。具体的には、ポリエチレンテレフタレート製剥離性フィルム基材を剥離してから試験を行った。
(ゲル分率)
ゲル分率は、ポリエチレンテレフタレート製剥離性フィルム基材を剥離した粘着層に対し、トルエン浸漬前、およびトルエンに室温下で24時間浸漬した後、80℃で5時間乾燥した後の質量をそれぞれ求め、下記の式から求めた。
ゲル分率(%)=[A/B]×100
A:粘着層のトルエン浸漬後における乾燥質量(トルエンの質量は含まない)
B:粘着層のトルエン浸漬前の質量
(粘着力/180°剥離試験および保持力)
粘着フィルムの粘着層に対し、上述した樹脂フィルムと同様の方法により上記樹脂組成物(D1)で形成した厚み65μmの粘着層(フィルム)を用いて測定した。
また、以下の基準により粘着層の保持力を評価した。温度を150℃に変更した以外は樹脂フィルムと同様の方法により測定した。
+++:ずれ距離が1.0mm以下。
++:ずれ距離が1.0mmを超えて、10.0mm以下。
+:ずれ距離が10.0mmを超えて、20.0mm以下。
NG:ずれ距離が20.0mmを超える、又は重りが落下する。
Figure 2021095440
Figure 2021095440
Figure 2021095440
Figure 2021095440
<樹脂組成物、伸縮性導体、アクチュエータの特性評価>
表14〜17に示すブロック共重合体(C)100部に、表14〜17に示す架橋剤および導電材、溶剤としてエチルジグリコールアセテートを全固形分が80質量%となるように配合した後、3本ロールミルにて混練することにより、実施例Y49〜Y76および比較例Y29〜52に係る樹脂組成物を得た。用いた架橋剤および導電材の含有量は表14〜17に示す通りとした。
また、伸縮性導体およびアクチュエータそれぞれの評価用サンプルを、各実施例および比較例の樹脂組成物を用いて作製した。評価結果を表14〜17に示す。
(伸縮性導体の作製)
得られた樹脂組成物(D2)を、ウレタンフィルム基材にスクリーン印刷で塗布し、80℃で30分間熱処理して、厚みが25μmの伸縮性導体を形成した。
(誘電弾性体形成用ペーストの作製)
チタン酸バリウム(BaTiO/強誘電体粒子)と、クラレ社製のLA2330のブロック共重合体(C)を、質量比45/15の比率で配合し、溶剤としてエチルジグリコールアセテートを全固形分が80質量%となるように更に配合した後、3本ロールミルにて混練することにより誘電弾性体形成用ペーストを作製した。
(アクチュエータの作製)
得られた樹脂組成物(D2)を、離型ポリエステルフィルム基材に、スクリーン印刷にて所定のパターンを印刷で塗布し、80℃で30分間熱処理して、厚みが15μmの伸縮性導体を形成した。次いで、得られた伸縮性導体の上に、上記誘電弾性体形成用ペーストを用いて上記同様に、印刷、乾燥硬化を行い、厚みが25μmの誘電弾性体層を形成した。更に、樹脂組成物(D2)を用いて上記同様の印刷乾燥硬化を行い、厚みが15μmの伸縮性導体層を形成し、三層構造のコンデンサを形成した。得られたコンデンサを離型ポリエステルフィルムから剥離し、所定形状となるように裁断し単層の誘電アクチュエータを得た。得られた誘電アクチュエータの電極に0〜1000Vの電圧を印加し、その時の当該アクチュエータの変位量の変化率、動作を確認した。
(体積抵抗率)
各実施例および比較例に係る伸縮性導体の体積抵抗率を測定した。具体的には、伸縮性導体シートを幅10mm、長さ140mmにカットして試験片を作製した。表面抵抗測定器(品番:ロレスタAP MCP−T400、プローブ:ASPプローブ(4探針プローブ、三菱化学社製)を用い、温度が25℃および相対湿度が50%の雰囲気中で、JIS K7194に準拠して得られた試験片の体積抵抗率を測定した。
初期状態について以下の基準により評価した。
・初期の評価基準:
+++:2.0×10−4Ω・cm未満
++:2.0×10−4Ω・cm以上、9.9×10−4Ω・cm未満
+:9.9×10−4Ω・cm以上、9.9×10−3Ω・cm未満
NG:9.9×10−3Ω・cm以上
また、上記伸縮性導体に対し、85℃、相対湿度85%の環境下で10日経過後の体積抵抗率を同様の方法で測定し、初期からの変化率(試験後変化)について、以下の基準により評価した。
[変化率(%)]
=[(試験前の試験片の体積抵抗率)−(試験後の試験片の体積抵抗率)]÷[(試験前の試験片の体積抵抗率)]
+++:変化率が20%以下。
++:変化率が20%を超えて、50%以下。
+:変化率が50%を超えて、100%以下。
NG:変化率が100%を超える。
(抵抗値変化)
各実施例および比較例に係る伸縮性導体を20mm×60mmサイズのサンプルとし、その端部をテンシロン引張試験装置に固定して、25℃、相対湿度50%、速度4mm/sの速さで50%まで伸長し、その後2s保持し、そしてその後4mm/sの速さで除荷し、2s保持する伸縮サイクルを1000回繰り返し、1000回後の変化率を以下の式により算出した。
[変化率(%)]=[(R1000)−(R)]÷[(R)]×100
ここで、R1000は1000回繰り返した伸縮サイクル直後の抵抗値、Rは測定開始前の同フィルムを用いた抵抗値を示す。以下の基準により評価した。
+++:変化率が20%以下。
++:変化率が20%を超えて、50%以下。
+:変化率が50%を超えて、100%以下。
NG:変化率が100%を超える。
また、上記1000回収縮後の伸縮性導体の外観を試験前の状態と比較して以下の基準により評価した。
+++:外観に全く変化が見られない
++:外観にクラック等の亀裂がごく僅かに生じている
+:外観に一部クラック等の亀裂が少なくとも生じている
NG:外観にひび割れやクラックが完全に生じており、塗膜が剥がれかけている
(アクチュエータの応答性|アクチュエータの変位量およびその変化率)
各実施例および比較例に係るアクチュエータの変位量およびその変化率を求めた。具体的には、アクチュエータの一方の電極に変位量測定用マーカーを取り付け、電極間に電圧アンプ(品番:HEOPS−10B2、松定プレシジョン社製)で直流電圧を500V印加した時のマーカーの変位量(mm)を変位計(品番:LK−GD500、キーエンス社製)で測定し、以下の計算式で変化率を計算することで評価した。
[変位量の変化率(%)]
=[変位量(mm)÷電圧印加前の電極の半径(mm)]×100に基づいて変位量の変化率を求めた。
+++:変位量の変化率が5.0%以上。
++:変位量の変化率が2.0%以上で5.0%未満。
+:変位量の変化率が0.5%以上で2.0%未満。
NG:変位量の変化率が0.5%未満。
(アクチュエータの応答性|連続動作)
更に、各実施例および比較例に係るアクチュエータの応答性に関し、連続動作を行った場合の動作停止時間を求めた。連続動作条件は、得られたアクチュエータに振幅500V、周波数5kHzの正弦交番電界を印加し、500分の連続動作試験として評価した。
Figure 2021095440
Figure 2021095440
Figure 2021095440
Figure 2021095440
[付記]
本明細書は、上記実施形態から把握される以下に示す技術思想の発明も開示する。
[付記1]
ブロック共重合体(C)の製造方法であって、
炭素−ヨウ素結合を2〜6有する少なくともいずれかの有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤と、重合体ブロック(B)を重合するためのエチレン性不飽和単量体を主体とする単量体を混合して、リビングラジカル重合を開始して、前記有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤残基Xを基点とした重合体ブロック(B)を有する星型ブロック構造を得る工程(a)、
工程(a)後に、重合体ブロック(A)を重合するためのエチレン性不飽和単量体を主体とする単量体を加えて、リビングラジカル重合により重合体ブロック(A)を合成する工程(b)、
任意のタイミングで、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ビニル基、加水分解性シリル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、エポキシ基、オキセタン基、フリル基、アセトアセチル基、オキサゾリジン基、ニトリル基およびリン酸基の少なくともいずれかの官能基(K)を少なくとも1以上導入する工程(c)を含み、
前記重合体ブロック(A)のガラス転移温度は20℃以上であり、
前記星形ブロック構造の[重合体ブロック(B)]X(但し、qは2以上6以下の整数)のガラス転移温度が20℃未満であり、
工程(c)の官能基(K)は、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)および前記有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤の少なくともいずれかの原料に由来して導入する、および/または重合体ブロック(A)および/または重合体ブロック(B)の化学変換により側基、側鎖または分子末端に導入する、ブロック共重合体(C)の製造方法。
[付記2]
ブロック共重合体(C)の製造方法であって、
炭素−ヨウ素結合を1つ有する有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤と、重合体ブロック(A)を重合するためのエチレン性不飽和単量体を主体とする単量体、または重合体ブロック(B)を重合するためのエチレン性不飽和単量体を主体とする単量体、のいずれか一方を混合して、リビングラジカル重合を開始して、前記有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤の残基を基点とした重合体ブロック(A)または重合体ブロック(B)を得る工程(d)、
工程(d)後に、工程(d)で重合体ブロック(A)を重合した場合には重合体ブロック(B)を重合するためのエチレン性不飽和単量体を主体とする単量体を加え、工程(d)で重合体ブロック(B)を重合した場合には重合体ブロック(A)を重合するためのエチレン性不飽和単量体を主体とする単量体を加えて、リビングラジカル重合を行って重合体ブロック(A)−重合体ブロック(B)のジブロック構造体を得る工程(e)、
前記ジブロック構造体を、結合部位を2〜6有するカップリング剤とカップリングさせることにより星型ブロック構造を得る工程(f)、
任意のタイミングで、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ビニル基、加水分解性シリル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、エポキシ基、オキセタン基、フリル基、アセトアセチル基、オキサゾリジン基、ニトリル基およびリン酸基の少なくともいずれかの官能基(K)を少なくとも1以上導入する工程(c)を含み、
前記重合体ブロック(A)のガラス転移温度は20℃以上であり、
前記星形ブロック構造の[重合体ブロック(B)]X(但し、qは2以上6以下の整数)のガラス転移温度が20℃未満であり、
工程(c)の官能基(K)は、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)および前記有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤の少なくともいずれかの原料に由来して導入する、および/または重合体ブロック(A)および/または重合体ブロック(B)の化学変換により側基、側鎖または分子末端に導入する、ブロック共重合体(C)の製造方法。
[付記3]
ブロック共重合体(C)の製造方法であって、
炭素−ヨウ素結合を2有する少なくともいずれかの有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤と、重合体ブロック(A)を重合するためのエチレン性不飽和単量体を主体とする単量体を混合して、リビングラジカル重合を開始して重合体ブロック(A)を合成する工程(g)、
工程(g)後に、重合体ブロック(B)を重合するためのエチレン性不飽和単量体を主体とする単量体を加えて、リビングラジカル重合により重合体ブロック(B)を合成する工程(h)、
工程(h)後に、重合体ブロック(A)を重合するためのエチレン性不飽和単量体を主体とする単量体を加えて、リビングラジカル重合により重合体ブロック(A)−重合体ブロック(B)−重合体ブロック(A)のトリブロック構造体を得る工程(i)、
任意のタイミングで、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ビニル基、加水分解性シリル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、エポキシ基、オキセタン基、フリル基、アセトアセチル基、オキサゾリジン基、ニトリル基およびリン酸基の少なくともいずれかの官能基(K)を少なくとも1以上導入する工程(c)を含み、
前記重合体ブロック(A)のガラス転移温度は20℃以上であり、
前記トリブロック構造の重合体ブロック(B)のガラス転移温度が20℃未満であり、
工程(c)の官能基(K)は、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)および前記有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤の少なくともいずれかの原料に由来して導入する、および/または重合体ブロック(A)および/または重合体ブロック(B)の化学変換により側基、側鎖または分子末端に導入する、ブロック共重合体(C)の製造方法。
[付記4]
付記1〜3のいずれかに記載の製造方法により得られるブロック共重合体(C)。
1、2、7、11、12、21、22:単量体、
、2、7、11、12、21、22:単量体由来の構造単位
3:重合開始剤、
4:触媒、
5:官能基(K)化試薬、
6:カップリング剤、
31、32、35〜39、44、45:重合体、
46:ジブロック構造、
47:構造体

Claims (15)

  1. エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を主体とするブロック共重合体(C)を含有する樹脂組成物であって、
    ブロック共重合体(C)は、数平均分子量が5,000〜500,000であり、有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤残基を含み、且つブロック構造が、重合体ブロック(A)−重合体ブロック(B)−重合体ブロック(A)のトリブロック構造、または[重合体ブロック(A)−重合体ブロック(B)]Xの星形ブロック構造であり(但し、qは2以上6以下の整数であり、重合体ブロック(A)のガラス転移温度は20℃以上であり、前記トリブロック構造の場合の重合体ブロック(B)のガラス転移温度および前記星形ブロック構造の場合の[重合体ブロック(B)]Xのガラス転移温度が20℃未満であり、Xは開始剤残基または/およびカップリング剤残基、またはその誘導体である。)、
    ブロック共重合体(C)に、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ビニル基、加水分解性シリル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、エポキシ基、オキセタン基、フリル基、アセトアセチル基、オキサゾリジン基、ニトリル基およびリン酸基の少なくともいずれかの官能基(K)を少なくとも1以上有し、
    ブロック共重合体(C)に対するヨウ素含有率が0.0001〜10,000質量ppmである、樹脂組成物。
  2. ブロック共重合体(C)は、
    前記有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤残基を含む、以下の一般式(1)〜(3)のいずれかに記載の構造を有する、
    Figure 2021095440
    Figure 2021095440
    Figure 2021095440
    但し、Polymerization unitは、一般式(3)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を主体とする重合体ユニットであり、
    は、Yからの分岐毎にそれぞれ独立に、エステル基、ケトン基およびアミド基からなる群より選択される2価の基、または直接結合であり、
    Qは1価の分子末端基であり、Yからの分岐毎にそれぞれ独立に、前記分子末端基は、官能基、官能基を有していてもよい炭化水素基、またはヨード基であり、
    Yはp価の、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、
    pは2〜6の整数であり、
    、RおよびRはそれぞれ独立に、一般式(3)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、水素原子または置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であり、
    およびRはそれぞれ独立に、一般式(3)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基または−CORであり、
    は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基、−COR、シアノ基またはニトロ基であり、
    とR、RとR4、とRおよびRとRはそれぞれ独立に、一般式(3)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、互いに結合して環を形成していてもよく、
    は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基または置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であり、
    11は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、
    12はアルキレン基、アリーレン基およびアルキレンオキシ基からなる群より選ばれる2価の炭化水素基、または直接結合であり、
    前記炭化水素基は、複素環を有していてもよく、それぞれ独立に、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基および芳香族炭化水素基の少なくともいずれかを有する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 重合体ブロック(A)は官能基(K)を有し、重合体ブロック(B)には官能基(K)を有しないことを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 官能基(K)が、分子末端の少なくとも一部に導入されたことを特徴とする、請求項1〜3いずれかに記載の樹脂組成物。
  5. 重合体ブロック(A)が、メタクリル酸エステル由来の構造単位を50質量%以上含み、重合体ブロック(B)がアクリル酸エステル由来の構造単位を70質量%以上含むことを特徴とする、請求項1〜4いずれかに記載の樹脂組成物。
  6. 重合体ブロック(A)中にメチルメタクリレート由来の構造単位を50質量%以上含み、且つ重合体ブロック(B)中にブチルアクリレート由来の構造単位を70質量%以上含むことを特徴とする、請求項1〜5いずれかに記載の樹脂組成物。
  7. 前記エチレン性不飽和単量体の90質量%以上が、疎水性のエチレン性不飽和単量体であることを特徴とする、請求項1〜6いずれかに記載の樹脂組成物。
  8. 多分散度(Mw/Mn)が2.5以下であることを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の樹脂組成物。
  9. ブロック共重合体(C)中の重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)に対する重合体ブロック(A)の含有率が1〜50質量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の樹脂組成物。
  10. ブロック共重合体(C)1gあたりに含有される官能基(K)のモル濃度が、0.00001〜3.0mmol/gの範囲にあることを特徴とする請求項1〜9いずれかに記載の樹脂組成物。
  11. ブロック共重合体(C)と架橋し得る架橋剤を含有することを特徴とする請求項1〜10いずれかに記載の樹脂組成物。
  12. 更に、導電性微粒子および導電性ナノワイヤからなる群より選ばれる少なくとも1種の導電材を含有する、請求項1〜11いずれかに記載の樹脂組成物。
  13. 請求項12に記載の樹脂組成物から形成されてなる伸縮性導体。
  14. 請求項13記載の伸縮性導体を有する電子デバイス。
  15. 請求項1〜12のいずれかに記載の樹脂組成物から形成された粘着層を有する粘着フィルム。
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