JP2021093287A - 被覆活物質の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電極活物質粒子間の液架橋の形成を抑制して、電極活物質粒子の表面に均一に被覆を形成することが可能な、被覆活物質の製造方法を提供する。【解決手段】ここに開示される被覆活物質の製造方法は、電極活物質粒子を準備する工程と、被覆化合物の前駆体と溶媒とを含有する塗工液を準備する工程と、前記塗工液を、噴霧装置を用いて前記電極活物質粒子の表面に噴霧し、乾燥して前記電極活物質粒子を前記前駆体で被覆する工程と、前記前駆体を前記被覆化合物に変換する工程と、を包含する。前記被覆する工程において、前記電極活物質粒子の温度(℃)における前記塗工液の飽和蒸気量と、前記噴霧装置の前記塗工液の噴霧速度と、前記噴霧装置の給気風量とを用いて下記式から求められる湿度が、29.3%以下である。湿度(%)=〔(噴霧速度(g/分)/給気風量(m3/分))/飽和蒸気量(g/m3)〕×100【選択図】図1

Description

本発明は、被覆活物質の製造方法に関する。
近年、リチウム二次電池等の二次電池は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。
二次電池の電極活物質には、電荷担体となるイオン(例、リチウムイオン)を吸蔵および/または放出可能な物質が用いられている。二次電池を高性能化するために、電極活物質の表面を、リチウムイオン伝導性酸化物などの種々の化合物により被覆することが行われている。その例として特許文献1には、少なくともアルコキシド化合物と液体水とを混合したアルコキシド溶液を塗工液として準備する工程と、乾燥雰囲気下、当該塗工液を電極活物質表面に塗布および乾燥する工程と、を含む表面がイオン伝導性酸化物で被覆された電極活物質の製造方法が開示されている。特許文献1には、塗工液の塗布および乾燥を噴霧装置によって行うこと、および乾燥雰囲気の露点温度が−30℃以下であることが記載されている。
国際公開第2012/164760号
しかしながら本発明者が検討した結果、従来技術において、被覆形成時間を短縮するには、塗工液の噴霧速度を上げることが効果的であるが、その場合、液架橋が発生して電極活物質粒子の凝集が起こることを見出した。そして、電極活物質粒子の凝集が起こると、塗工液が電極活物質粒子の凝集物の表面に塗工されて、個々の電極活物質粒子の表面においては被覆が形成されない部分が生じることを見出した。すなわち、従来技術においては、電極活物質粒子間の液架橋の形成を抑制して、電極活物質粒子の表面に均一に被覆を形成することにおいて改善の余地があった。電極活物質粒子の表面に均一に被覆が形成されていないと、被覆による電池特性向上効果が小さくなる。
上記事情に鑑み、本発明は、電極活物質粒子間の液架橋の形成を抑制して、電極活物質粒子の表面に均一に被覆を形成することが可能な、被覆活物質の製造方法を提供することを目的とする。
ここに開示される被覆活物質の製造方法は、電極活物質粒子を準備する工程と、被覆化合物の前駆体と溶媒とを含有する塗工液を準備する工程と、前記塗工液を、噴霧装置を用いて前記電極活物質粒子の表面に噴霧し、乾燥して前記電極活物質粒子を前記前駆体で被覆する工程と、前記前駆体を前記被覆化合物に変換する工程と、を包含する。前記被覆する工程において、前記電極活物質粒子の温度(℃)における前記塗工液の飽和蒸気量と、前記噴霧装置の前記塗工液の噴霧速度と、前記噴霧装置の給気風量とを用いて下記式から求められる湿度が、29.3%以下である。
湿度(%)=〔(噴霧速度(g/分)/給気風量(m/分))/飽和蒸気量(g/m)〕×100
このような構成によれば、電極活物質粒子間の液架橋の形成を抑制して、電極活物質粒子の表面に均一に被覆を形成することが可能な、被覆活物質の製造方法が提供される。
本発明の一実施形態に係る被覆活物質の製造方法の各工程を示すフローチャートである。
以下、図面を参照しながら、本発明による実施の形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
図1に、本実施形態に係る被覆活物質の製造方法の各工程を示す。
図示されるように、本実施形態に係る被覆活物質の製造方法は、電極活物質粒子を準備する工程(以下、「活物質準備工程」ともいう)S101と、被覆化合物の前駆体と溶媒とを含有する塗工液を準備する工程(以下、「塗工液準備工程」ともいう)S102と、当該塗工液を、噴霧装置を用いて当該電極活物質粒子の表面に噴霧し、乾燥して当該電極活物質粒子を当該前駆体で被覆する工程(以下、「被覆工程」ともいう)S103と、当該前駆体を被覆化合物に変換する工程(以下、「変換工程」ともいう)S104を包含する。
被覆工程S103において、当該電極活物質粒子の温度(℃)における当該塗工液の飽和蒸気量と、当該噴霧装置の当該塗工液の噴霧速度と、当該噴霧装置の給気風量とを用いて下記式から求められる湿度が、29.3%以下である。
湿度(%)=〔(噴霧速度(g/分)/給気風量(m/分))/飽和蒸気量(g/m)〕×100
まず、活物質準備工程S101について説明する。
電極活物質としては、リチウムイオン等の電荷担体となるイオンを吸蔵および/または放出可能な物質を特に制限なく用いることができ、二次電池の電極活物質として使用されている公知のものを用いてよい。
電極活物質の具体例としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(例、LiNi1/3Mn1/3Co1/3等)などの層状構造のリチウム複合酸化物;LiMn、Li1+xMn2−x−y(Mは、Al、Mg、Co、Fe、Ni、およびZnからなる群より選ばれる少なくとも一種)で表される異種元素置換Li−Mnスピネル(例、LiNi0.5Mn1.5等)などのスピネル構造のリチウム複合酸化物;チタン酸リチウム(LiTiO、例、LiTi12等);LiMPO(Mは、Fe、Mn、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも一種)等のオリビン構造のリチウム複合化合物;酸化バナジウム(V)、酸化モリブデン(MoO)等の遷移金属酸化物;硫化チタン(TiS)等の遷移金属硫化物;メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、グラファイト、高配向性熱分解グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料;LiCoN等のリチウムコバルト窒化物;LiSi等のリチウムシリコン酸化物;リチウム金属(Li);リチウム合金(LiM、Mは、Sn、Si、Al、Ge、Sb、P等);MgM(Mは、Sn、Ge、Sb等)、NSb(Nは、In、Cu、Mn等)などのリチウム貯蔵性金属間化合物とそれらの誘導体;等が挙げられる。
ここで電極活物質に関し、正極活物質と負極活物質には明確な区別はなく、2種類の化合物の充放電電位を比較して貴な電位を示すものを正極活物質として用い、卑な電位を示すものを負極活物質として用いて、任意の電圧の電池を構成することができる。
本実施形態においては、電極活物質は、正極活物質として用いることが好ましい。
正極活物質としては、層状構造のリチウム複合酸化物、スピネル構造のリチウム複合酸化物、およびオリビン構造のリチウム複合化合物が好ましく、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物がより好ましい。
負極活物質としては、炭素材料が好ましく、グラファイトがより好ましい。
当該工程S101で準備される電極活物質は、粒子の形態にある。
電極活物質粒子の平均粒子径は、特に限定されず、例えば0.1μm〜30μm程度であり、1μm〜15μm程度が好ましく、2μm〜10μm程度がより好ましい。
なお、本明細書において「平均粒子径」は、特に断りがない限り、レーザ回折・光散乱法に基づく粒度分布測定により測定した体積基準の粒度分布において、微粒子側からの累積50%に相当する粒径(D50粒径、メジアン径ともいう)のことをいう。
電極活物質粒子は、例えば、公知方法に従って作製して準備することができる。
次に、塗工液準備工程S102について説明する。
被覆化合物の種類には特に制限はなく、改良したい電池特性に応じて適宜選択してよい。被覆化合物としては、電極活物質の被覆に用いられている公知の化合物を用いてよい。被覆化合物は、好ましくは、リチウムイオン伝導性酸化物である。リチウムイオン伝導性酸化物の被覆を備える被覆活物質を、硫化物固体電解質を備える全固体電池に用いた場合には、当該被覆がリチウムイオン伝導性を有するとともに、電極活物質粒子と硫化物固体電解質との反応を抑制できるため、有利である。
リチウムイオン伝導性酸化物の例としては、ニオブ酸リチウム、チタン酸リチウム、ランタンジルコン酸リチウム、タンタル酸リチウム、タングステン酸リチウムなどが挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。電極活物質粒子と硫化物固体電解質との反応抵抗をより低減できることから、リチウムイオン伝導性酸化物としては、ニオブ酸リチウムが好ましい。
被覆化合物の前駆体は、加熱等によって被覆化合物に最終的に変換可能な物質である。前駆体は、一度の反応により被覆化合物に変換されるものであってよいし、2段階以上の反応を経て被覆化合物に変換されるものであってよい。
また、前駆体は単独の物質であってもよいし、2種以上の物質の混合物であってもよい。
被覆化合物が、リチウムイオン伝導性酸化物である場合には、その前駆体は、例えば、リチウムアルコキシドと、リチウムイオン伝導性酸化物に含まれるリチウム以外の金属元素を含有するアルコキシド化合物との混合物(以下、「アルコキシド混合物」ともいう);リチウムイオン伝導性酸化物に含まれるリチウム以外の金属元素を含有するペルオキソ錯体とリチウムとの混合物等である。これらは最終的に、例えば焼成等の熱処理によって酸化物に変換することができる。
例えば、リチウムイオン伝導性酸化物がニオブ酸リチウムである場合、ニオブのペルオキソ錯体の合成には、ニオブ酸と、アンモニア水と、過酸化水素水とを用いることができる。ニオブ酸としては、種々の含水率を有するものを用いることができる。アンモニア水の濃度と添加量は適宜調整すればよい。また、リチウム源として、水酸化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム等のリチウム塩を用いることができる。
溶媒は、被覆化合物の前駆体の種類に応じて適宜決定すればよい。例えば、被覆化合物がリチウムイオン伝導性酸化物であり、その前駆体がアルコキシド混合物である場合には、溶媒としてアルコール類(例、エタノール等)などを用いることができる。例えば、被覆化合物がリチウムイオン伝導性酸化物であり、その前駆体が上記ペルオキソ錯体とリチウムの混合物である場合には、溶媒として水(例、イオン交換水等)などを用いることができる。
塗工液は、例えば、公知方法に従って調整することができる。特に、アルコキシド混合物と溶媒とを含有する塗工液、および上記ペルオキソ錯体とリチウムとの混合物および溶媒を含有する塗工液は公知であり、よって、この公知のものを塗工液として用いてもよい。
なお、活物質準備工程S101および塗工液準備工程S102の実施の順序は、特に限定されない。活物質準備工程S101を先に実施してもよいし、塗工液準備工程S102を先に実施してもよい。活物質準備工程S101および塗工液準備工程S102を同時に実施してもよい。
次に、被覆工程S103について説明する。
当該工程S103では、上記で準備した塗工液を、噴霧装置を用いて上記で準備した電極活物質粒子の表面に噴霧し、乾燥する。これにより、当該電極活物質粒子を上記被覆化合物で被覆する。
噴霧装置としては、公知の噴霧機構を備えるコーティング装置を用いてよく、その好適な例としては、スプレー造粒タイプの流動層造粒装置(例、パウレック社製転動流動造粒コーティング装置「マルチプレックス(MP)」、フロイント産業社製流動層乾燥装置「フローコーター(FLOW COATER)」等)などが挙げられる。また、噴霧装置として、スプレードライヤーを用いることもできる。
当該噴霧装置内で、塗工液を電極活物質粒子の表面に噴霧し、乾燥を行う。塗工液の噴霧と乾燥は、一度のみ行われてもよいし、所望の被覆厚さを得るために、塗工液の噴霧と乾燥が繰り返し行われてもよい。
このときの噴霧条件は、電極活物質粒子の温度(℃)における塗工液の飽和蒸気量(実質的に、塗工液が含有する溶媒の飽和蒸気量ともいえる)と、噴霧装置の塗工液の噴霧速度と、噴霧装置の給気風量とを用いて下記式から求められる湿度が、29.3%以下となるような条件で行う。
湿度(%)=〔(噴霧速度(g/分)/給気風量(m/分))/飽和蒸気量(g/m)〕×100
次に、変換工程S104について説明する。当該変換工程104では、電極活物質を被覆している前駆体を被覆化合物に変換する。当該変換は、前駆体の種類に応じて、公知方法に従って適宜行うことができる。例えば、被覆化合物が、リチウムイオン伝導性酸化物であり、その前駆体が、アルコキシド混合物、またはペルオキソ錯体とリチウムの混合物であった場合には、焼成等の熱処理を行うことによって被覆化合物であるリチウムイオン伝導性酸化物に変換することができる。
また、被覆活物質をドライ雰囲気下で扱う場合には、公知の非暴露式の熱処理方法を採用すればよい。例えば、グローブボックス内でホットプレート等により熱処理する、真空引きした密閉容器内で熱処理する等の方法を採用すればよい。
以上のようにして、電極活物質の表面が被覆化合物で被覆された、被覆活物質を得ることができる。
本実施形態に係る被覆活物質の製造方法によれば、被覆工程S103における噴霧条件を、湿度が29.3%以下となるように行うことにより、電極活物質間の液架橋の形成を抑制して、電極活物質粒子の表面に均一に被覆を形成することができる。よって、得られた被覆活物質においては、被覆が均一に形成されている。被覆が均一に形成されることにより、被覆による特性向上効果が高くなるため、このような被覆活物質を二次電池(特にリチウム二次電池)に用いることにより、二次電池は電池特性(例、出力特性等)に優れたものとなる。
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイス一般をいい、いわゆる蓄電池ならびに電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を包含する用語である。また、本明細書において「リチウム二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。
リチウム二次電池は、正極と、負極と、固体電解質層とを備える全固体電池であってもよく、正極と、負極と、セパレータと、非水電解質とを備える非水系電池であってもよい。公知の全固体電池または非水系電池において、正極活物質および/または負極活物質に代えて、本実施形態に係る製造方法により得られる被覆活物質を用いることにより、全固体電池または非水系電池を構築することができる。
被覆化合物がリチウムイオン伝導性酸化物である場合には、二次電池は、硫化物固体電解質(例、LiS−P系材料、LiS−GeS系材料、LiS−GeS−P系材料、LiS−SiS系材料、LiS−B系材料、LiPO−P系材料等の硫化物材料、および当該硫化物材料にハロゲン化リチウムを添加した材料など)を備える全固体電池であることが有利である。
二次電池は、各種用途に利用可能である。好適な用途としては、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)等の車両に搭載される駆動用電源が挙げられる。二次電池は、複数個が電気的に接続された組電池の形態で使用することもできる。
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<実施例1>
〔活物質準備工程および塗工液準備工程〕
電極活物質として、層状構造のリチウム複合酸化物であるLiNi1/3Mn1/3Co1/3を用意した。
また、濃度30質量%の過酸化水素水870.4gへ、イオン交換水987.4gおよびニオブ酸(Nb・3HO;Nb含有率72%)44.2gを添加した。次いで、そこへ濃度28質量%のアンモニア水87.9gを添加して、十分に撹拌して透明溶液を得た。得られた透明溶液に水酸化リチウム・1水和物(LiOH・HO)10.1gを加えて、ニオブ錯体とリチウムとを含有する水溶液を、塗工液として得た。得られた水溶液のLiおよびNbのモル濃度は、それぞれ0.12mol/kgであった。
〔被覆工程〕
上記作製した塗工液2840gを、転動流動造粒コーティング装置「MP−01」(パウレック社製)を用いて、電極活物質2kgに対して噴霧し、乾燥した。運転条件は、雰囲気ガス:露点−65℃以下のドライエア、給気温度:200℃、給気風量:0.45m/分、ロータ回転数:400rpm、噴霧速度19.2g/分とした。また、下記式に基づいて算出された湿度は、16.1%であった。
湿度(%)=〔(塗工液の噴霧速度(g/分)/給気風量(m/分))/電極活物質粒子の温度での塗工液の飽和蒸気量(g/m)〕×100
〔変換工程〕
マッフル炉を用いて230℃で6時間焼成して被覆をニオブ酸リチウムに変換し、大気雰囲気下に曝すことなく粒子を回収した。
以上のようにして、リチウムイオン伝導性酸化物であるニオブ酸リチウムで被覆されたLiNi1/3Mn1/3Co1/3を、被覆活物質として得た。
<実施例2および3ならびに比較例1および2>
転動流動造粒コーティング装置の給気温度、給気風量、および噴霧速度を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして被覆活物質を作製した。上記式に基づいて算出された湿度も併せて表1に示す。
〔評価用電池の作製〕
上記作製した被覆活物質と、硫化物固体電解質(10LiI−15LiBr−37.5LiPS)とを、6:4の体積比となるように用意し、これらを、3質量%の導電助剤としての気相法炭素繊維(VGCF)(昭和電工社製)および0.7質量%のバインダとしてのブタジエンラバー(JSR社製)と共にヘプタン中に投入した。次いで、これらを混合することにより正極スラリーを作製した。作製したスラリーを超音波ホモジナイザーで十分に分散させた後、アルミ箔上に塗工し、100℃にて30分乾燥させた。その後、1cmの大きさに打ち抜くことによって正極を得た。
負極活物質(層状炭素)と、硫化物固体電解質(10LiI−15LiBr−37.5LiPS)とを、6:4の体積比となるように用意し、これらを、1.2質量%のバインダとしてのブタジエンラバー(JSR社製)と共にヘプタン中に投入した。次いで、これらを混合することにより負極スラリーを作製した。作製したスラリーを超音波ホモジナイザーで十分に分散させた後、銅箔上に塗工し、100℃にて30分乾燥させた。その後、1cmの大きさに打ち抜くことによって負極を得た。
内径断面積1cmの筒状セラミックスに硫化物固体電解質(10LiI−15LiBr−37.5LiPS)64.8mgを入れ、平滑にした後、1tonでプレスし、固体電解質層を形成した。固体電解質層の片方の面に上記作製した正極を、もう片方の面に上記作製した負極を重ね合わせ、4.3tonで1分間プレスした。次いで、両極にステンレス棒を入れ、1tonで拘束して全固体リチウムイオン電池を得た。
〔被覆活物質の粒径評価〕
上記作製した各実施例および比較例の被覆活物質の体積基準の粒度分布をレーザ回折・光散乱装置を用いて測定した。この測定した体積基準の粒度分布おいて、微粒子側からの累積90%に相当する粒径(D90粒径)を求めた。
〔評価用電池の出力測定〕
上記作製した電池について、開回路電圧(OCV)を3.66Vに調整した後、定電力放電を実施し、5秒間で放電可能な最大の電力値を電池出力として測定した。なお、カットオフ電圧は2.5Vとした。実施例1の出力値を100とした場合のその他の実施例および比較例の電力値の比を算出した。結果を表1に示す。
Figure 2021093287
表1の結果が示すように、湿度が29.3%を超える比較例1および比較例2では、粒径測定においてD90の増加が見られた。これは、活物質粒子の一部が液架橋によって凝集したことによるものであるといえる。
また、湿度が29.3%以下の実施例1〜3は、湿度が29.3%を超える比較例1および比較例2よりも、電池出力が顕著に高くなっていることがわかる。被覆を構成するニオブ酸リチウムは、リチウムイオン伝導性酸化物であるために、被覆の均一性は、出力特性に影響を及ぼす。すなわち、被覆が均一である方が、出力は高くなる。このことから、実施例1〜3では、活物質粒子間の液架橋が抑制され、活物質粒子の表面に被覆が均一に形成されていることがわかる。
よって、ここに開示される被覆活物質の製造方法によれば、電極活物質粒子間の液架橋の形成を抑制して、電極活物質粒子の表面に均一に被覆を形成することが可能であることがわかる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。

Claims (1)

  1. 電極活物質粒子を準備する工程と、
    被覆化合物の前駆体と溶媒とを含有する塗工液を準備する工程と、
    前記塗工液を、噴霧装置を用いて前記電極活物質粒子の表面に噴霧し、乾燥して前記電極活物質粒子を前記前駆体で被覆する工程と、
    前記前駆体を前記被覆化合物に変換する工程と、
    を包含し、
    前記被覆する工程において、前記電極活物質粒子の温度(℃)における前記塗工液の飽和蒸気量と、前記噴霧装置の前記塗工液の噴霧速度と、前記噴霧装置の給気風量とを用いて下記式から求められる湿度が、29.3%以下である、
    被覆活物質の製造方法。
    湿度(%)=〔(噴霧速度(g/分)/給気風量(m/分))/飽和蒸気量(g/m)〕×100
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