JP2021091996A - 繊維構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形性や保形性に優れるとともに、良好な手触り感を備えた繊維構造体を提供する。【解決手段】上層2と、下層3と、この上層2及び下層3を連結する連結部4とから構成される立体構造を備えた繊維構造体1である。この繊維構造体1は、上層2または下層3の内、少なくとも一方の層はその一部又は全部が180℃×15分で20%以上の収縮率を有する高収縮糸から構成されるとともに、少なくとも他方の層には複数の開口部が点在し、単位面積当たりの前記開口部の面積比率が10〜60%の範囲内となるように形成される。【選択図】図1A
Description
本発明は、上層及び下層、並びにこれら上層及び下層を連結する連結部から構成される立体構造を備えた繊維構造体に関する。
従来、上記立体構造を有する繊維構造体として、特開2017−14676号公報に開示される繊維構造体が知られている。
この繊維構造体は、基部と、この基部上に、編み立て方向に沿って相互に平行に形成された複数の凸条部とを有する編地であり、前記凸条部は、編み立て方向に沿って延びた編み列からなる頂部と、編み立て方向に沿って延び、前記基部側が該基部に編み込まれるとともに、前記頂部側が該頂部に係止され、該基部と頂部とを連結するように編成された編み列からなる2つの側壁部とから構成され、前記頂部及び2つの側壁部のうち、少なくとも1つの部位は、他の部位と異なる色が配置されている。
この編地では、凸条部を構成する頂部及び2つの側壁部のうち、少なくとも1つの部位について、他の部位と異なる色を配置することによって、観察者が編み立て方向と交差する方向から当該編地を見る際に、その位置に応じて視認される色が変化するという色彩効果が発現される。
また、この編地では、前記各凸条部における頂部の一部と、この凸条部に隣接する他の凸条部における頂部の一部との間に前記連結糸を架け渡すことにより、メッシュ部を形成することができる。この態様の編地では、凸条部同士が相互に隣接する他の凸条部とメッシュ部によって連結された状態となるため、凸条部の形状安定性をより高めることができ、また、メッシュ部が形成されることにより、当該メッシュ部の開口部分を通して凸条部が視認されるようになるため、メッシュ部がない場合と比較して、複雑な模様が表現される。
そして、このような編地はファッション性の高い衣服や鞄、帽子、靴などに好適に適用することができる。
ところで、上述した従来の編地を、例えば、靴に適用する場合、当該編地を幾つかのパーツに裁断した後、裁断された各パーツを縫製することによって、所望の靴が製造される。したがって、パーツが細分化され、複雑な形状となる場合には、工程が細分化されて複雑となり、また、編地から靴を完成するまでに長時間を要するという問題を生じ、結果として製造コストが増加することになる。
このように、上述した編地は見た目の審美性やファッション性には優れるものの、その加工性については、更なる改善の余地があった。また、手触りなどの感触的な面での改善や、商品としての耐久性に係る保形性についても更なる改善が求められていた。
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであって、成形性や保形性に優れるとともに、良好な手触り感を備えた繊維構造体の提供を、その目的とする。
上記課題を解決するための本発明は、上層と、下層と、該上層及び下層を連結する連結部とから構成される立体構造を備えた繊維構造体であって、前記上層または下層の内、少なくとも一方の層はその一部又は全部が180℃×15分で20%以上の収縮率を有する高収縮糸から構成されているとともに、少なくとも他方の層には複数の開口部が点在し、単位面積当たりの前記開口部の面積比率が10〜60%の範囲内となるように形成された繊維構造体に係る。
この繊維構造体によれば、少なくとも前記一方の層がその一部又は全部が180℃×15分で20%以上の収縮率を有する高収縮糸から構成されているので、例えば、この繊維構造体を用いて靴を製造する場合には、当該繊維構造体を裁断して、靴本体を製造するために考えられる必要最低限の個数のパーツ、例えば、アッパー部材及び底部材を製作した後、これらを縫製して袋状の中間品を製造し、次に、この中間品を成形型に装着して熱セットすることにより、当該中間品が熱収縮して成形型に倣った靴本体が成形される。その際、少なくとも他方の層に上記開口部を形成しているので、繊維構造体が熱収縮する際に、熱収縮に伴う応力がこの開口部によって緩和され、これにより、熱収縮に伴って当該繊維構造体(特に、他方の層)に皺が形成されるのが防止される。
このように、本発明に係る繊維構造体によれば、これを用いた繊維製品を製造する際に、その必要最低限の個数のパーツに当該繊維構造体を裁断し、ついでこれらを縫製した後、熱セットすることにより所望の形状に成形することができるので、その製造工程を簡略化することができ、当該繊維製品を短時間で製造することができる。また、熱収縮に伴う応力が開口部によって緩和されるので、当該繊維構造体は良好な加熱成形性を備えたものとなっている。
本発明において、前記連結部は、前記上層と下層とをその間隔が1〜10mmの範囲内となるように連結しているのが好ましい。このようにすることで、繊維構造体を嵩高くすることができ、これによって、柔らかい手触り感を創出することができる。また、熱セットすることにより、上層または下層の内、一方が他方の層に追従し、すべての層を所望の形状に成形することができる。
また、前記連結部は、その少なくとも一部がマルチフィラメントから構成されているのが好ましい。このような構成によっても柔らかい手触り感を創出することができる。
また、前記上層及び下層は、それぞれ複数の糸から構成され、その一部又は全部が融着糸から構成されているのが好ましい。この態様によれば、当該繊維構造体を熱セットした際に、融着糸によって糸同士が融着されるので、成形性に加えて、保形性に優れた繊維製品を製造することができる。
また、前記融着糸は、その少なくとも一部がエラストマーから形成された弾性糸とすることができる。このようにすれば、成形性及び保形性に加えて柔軟性に優れた繊維製品を製造することができる。
また、前記弾性糸にはモノフィラメントを採用することができる。更に、前記弾性糸は芯成分と鞘成分とからなる芯鞘複合モノフィラメントとすることができ、この場合、鞘成分は、その融点が芯成分の融点よりも少なくとも10℃低く設定されているのが好ましい。
また、前記弾性糸の前記鞘成分はポリエステル系エラストマーであることができ、同様に、前記弾性糸の前記芯成分はポリエステル系エラストマーであることができる。
また、前記一方の層は、少なくとも一方向の熱収縮率が10〜60%の範囲内であるのが好ましい。
本発明における繊維構造体は織物又は編物であることでき、特に経編物とすることができる。
本発明に係る繊維構造体によれば、これを用いた繊維製品を製造する際に、その必要最低限の個数のパーツに当該繊維構造体を裁断し、ついでこれらを縫製した後、熱セットすることにより所望の形状に成形することができるので、その製造工程を簡略化することができ、当該繊維製品を短時間で製造することができる。また、熱収縮に伴う応力が開口部によって緩和されるので、当該繊維構造体は良好な加熱成形性を備えたものとなっている。
以下、本発明の一実施の形態について説明する。図1A〜図1E及び図2〜図5は、本実施形態に係る繊維構造体としての経編地1の組織を示した説明図である。これら図1A〜図1Eに示すように、本実施形態に係る経編地1は、上層2と、下層3と、これら上層2及び下層3を連結する連結部4とから構成される。
上層2は編立方向と直角方向であるコース方向に延びるように形成され、且つコース方向に並んだ状態に設けられる複数の鎖編み列2a、及び鎖編み列2aに挿入される挿入糸2b、2cから構成され、同様に、下層3は編立方向と直角方向であるコース方向に延びるように形成され、且つコース方向に並んだ状態に設けられる複数の鎖編み列3a、及びに鎖編み列3aに挿入される挿入糸3b、3cから構成される。そして、上層2の挿入糸2b、2cと下層3の挿入糸3b、3cとが連結部4を構成する連結糸4a、4bによって連結される。また、本例の経編地1では、上層2及び下層3の内、少なくとも一方の層の糸に熱収縮性を有する糸が含まれている。
尚、図1Aにおいて、上層の鎖編み列2aはその3列のみを図示し、その他の鎖編み列2aについては、構造の分かり易さを優先して、その図示を省略し、また、下層の鎖編み列3aについても同様に、その3列のみを図示し、その他の鎖編み列3aについては図示を省略している。また、連結部4についてもコース方向に並んだ状態で設けられるが、図1Aでは、一列のみを図示し、他の列についてはその図示を省略している。また、図1B〜図1Eにおいても、構造の分かり易さを優先して、一部の糸の図示を省略している。図1Bでは、上層2の鎖編み列2aと挿入糸2b、2cとの関係が分かるようにこれらを拡大して示し、図1Cでは、連結糸4a、4bと挿入糸2b、2c、3b、3cとの関係、及び開口部5が分かり易くなるように、これらを拡大して示し、図1Dでも同様に、下層3の鎖編み列3aと挿入糸3b、3cとの関係、及び開口部6が分かり易くなるように、これらを拡大して示している。また、図1Eでは、上層2と下層3との間隔hの定義を示している。
また、図1A〜E(特に図1B)に示すように、前記挿入糸2b、2cは上層2の複数の鎖編み列2aに跨るように挿入されており、図1Cに示すように、この挿入糸2b、2cが挿入されていない部分が上層2で開口する開口部5となる(例えば、図1Cにおける破線の楕円の部分を参照)。そして、上層2には、このようにして形成される開口部5が多数点在するように設けられている。また、図1Dに示すように、下層3についても同様に、複数の鎖編み列3aに跨るように挿入糸3b、3cが挿入され、この挿入糸3b、3cが挿入されていない部分が下層3で開口する開口部6となっており(例えば、図1Dにおける破線の楕円の部分を参照)、当該下層3にも多数の開口部6が点在するように設けられている。
このような構造の経編地1は、複数の編針を有する、相互に対向して配置された2列の針床、及び当該針床に所定の糸を供給する供給機構を備えた公知のダブルラッシェル編み機を用いて編成することができる。
具体的には、一方の針床(表側の針床)において、供給機構から供給される編糸により、上層2の鎖編み列2aを編成しつつ、ウェール方向に編成された複数の鎖編み列2aに対して挿入糸2b、2cを挿入する。そして、他方の針床(裏側の針床)において、供給機構から供給される編糸により、下層3の鎖編み列3aを編成しつつ、ウェール方向に編成された複数の鎖編み列3aに対して挿入糸3b、3cを挿入するとともに、連結糸4a、4bによって上層2と下層3とを連結する。
その際、連結糸4a、4bは上層2の挿入糸側(表側の針床と対向する側)にループが形成され、このループが挿入糸2b、2cの編目に挿入されることによって、挿入糸2b、2cに係止され、一方、当該連結糸4a、4bを下層3の挿入糸3b、3cに編み込むことによって、当該連結糸4a、4bと挿入糸3b、3cとが結接され、これにより、上層2と下層3とが連結糸4a、4bによって連結された立体的な経編地1が編成される。
以上の構成を備えた本例の経編地1によれば、上層2及び下層3の内、少なくとも一方の層が熱収縮性を備えているので、例えば、この経編地1を用いて靴を製造する場合には、当該経編地1を裁断して、靴本体を製造するために考えられる必要最低限の個数のパーツ、例えば、アッパー部材及び底部材を製作した後、これらを縫製して袋状の中間品を製造し、次に、この中間品を成形型に装着して熱セットすることにより、当該中間品が熱収縮して成形型に倣った靴本体が成形される。
このように、本例の経編地1によれば、これを用いた繊維製品を製造する際に、その必要最低限の個数のパーツに当該経編地1を裁断し、ついでこれらを縫製した後、熱セットすることにより所望の形状に成形することができるので、その製造工程を簡略化することができ、当該繊維製品を短時間で製造することができる。また、上層2及び下層3に多数の開口部5、6を形成しているので、経編地1を熱セットする際に、熱収縮に伴う応力がこの開口部5、6によって緩和され、これにより、熱収縮に伴って当該経編地1に皺が形成されるのが防止される。
本例の経編地1において、前記鎖編み列2a,3a及び連結糸4a、4b並びに挿入糸2b、2c,3b、3cに用いられる糸としては、何ら制限はないが、ポリエステル糸やナイロン糸、レーヨン糸等のフィラメント糸の他、紡績糸などを例示することができる。但し、上層2を構成する鎖編み列2aに用いられる糸及び挿入糸2b、2c、並びに下層3を構成する鎖編み列3aに用いられる糸及び挿入糸3b、3cの内、少なくとも一層を構成する糸に熱収縮糸が用いられる。
この熱収縮性を有する糸としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂繊維などの熱収縮性に優れた繊維を含むことが好ましい。なお、このような熱収縮性は、テレフタル酸とエチレングリコールとの縮合重合物であるポリエチレンテレフタレート樹脂のみならず、テレフタル酸の一部を別のジカルボン酸に置き換えたタイプのポリエチレンテレフタレート樹脂や、エチレングリコールの一部を別のジオールに置き換えたタイプのポリエチレンテレフタレート樹脂でも同じように発揮される。
特に、前記収縮糸に優れた熱収縮性を発揮させることが容易になる点において、前記熱収縮性繊維を形成するポリエチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸の一部をイソフタル酸などの別のジカルボンに変更するとともにエチレングリコールの一部を2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどの別のジオールに変更したポリエチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。また、180℃×15分で20%以上の収縮率を有する高収縮糸であるのが好ましく、180℃×15分で40%以上の収縮率を有する高収縮糸であるのがより好ましい。このような収縮率を有する糸を用いることで、熱収縮による良好な成形性を得ることができる。
前記連結部4は、前記上層2と下層3とをその間隔が1〜10mmの範囲内となるように連結しているのが好ましい。また、連結糸4a、4b、鎖編み列2a及び鎖編み列3aに用いられる糸は、マルチフィラメントから構成されているのが好ましく、ポリエステル系のマルチフィラメントであるのがより好ましい。マルチフィラメントの単糸繊度は1dtex以上10dtex以下であることが望ましく、2dtex以上6dtex以下であることがより望ましい。マルチフィラメントの単糸繊度が1dtex以上であると、必要な曲げ剛性が確保し易く、一方の糸のクリンプ形状を形成し易くなる。マルチフィラメントの単糸繊度が10dtex以下であると、手触りのごわつき感が出にくく、柔らかい風合いが得られ易い。
マルチフィラメントの総繊度は、100dtex以上2000dtex以下であることが望ましく、150dtex以上1700dtex以下であることがより望ましく、さらに望ましくは、300dtex以上1000dtex以下である。マルチフィラメントの総繊度が、100dtex以上であると、必要な曲げ剛性が確保し易く、2000dtex以下であると織物製造上での取り扱いが容易となる。
このような構成とすることで、上層2及び下層3の双方が熱収縮性を有するとともに、嵩高性に富み、また柔軟性に優れた手触り感の良い編地とすることができる。
前記上層2及び下層3は、それぞれその一部又は全部が融着糸から構成されているのが好ましい。例えば、上層2及び下層3を構成する編糸の一部又は全部を低融点のポリエステル系の糸(融着糸)とすることができる。更に、上層2及び下層3に用いる融着糸の少なくとも一方は、その少なくとも一部がエラストマーから形成された弾性糸であるのが好ましい。例えば、上層2の挿入糸2b、2c及び下層3の挿入糸3b、3cの内、少なくともいずれか一方を弾性糸とすることができる。以上のような構成とすることで、当該経編地1を用いて所望の繊維製品を製造する際に、熱成形性及び保形性に優れた繊維製品とすることができる。尚、弾性糸は生地全体の20〜25重量%含まれているのが好ましい。
前記弾性糸はモノフィラメントであることが好ましく、より好ましくは芯成分と鞘成分とからなる芯鞘複合モノフィラメントであることが好ましい。そして、芯鞘複合モノフィラメントとする場合には、鞘成分及び芯成分の一方又は双方をポリエステル系エラストマーから構成することができる。ただし、芯成分と鞘成分の接着性を高める観点から、芯成分と鞘成分は同成分を含んでいることが望ましく、芯成分と鞘成分が同成分で構成されていることがより望ましい。なかでも芯成分と鞘成分がそれぞれ共通する構成成分を含む複数の構成成分から構成される共重合体で、それら複数の構成成分の組成比等をかえることにより融点の異なる芯成分、鞘成分とすることがさらに望ましい。更に、鞘成分の融点は芯成分の融点よりも少なくとも10℃低く設定されているのが好ましく、なかでも融点190〜250℃のポリエステル系エラストマーからなる芯成分と融点140〜190℃のポリエステル系エラストマーからなる鞘成分を有する芯鞘複合繊維であることが熱セット時の接着性と糸強度の点から最も好ましい。通常モノフィラメントの鞘部分全体がその他の糸に融着することが望ましいが、前記モノフィラメントの鞘成分の融点が、前記モノフィラメントの芯成分の融点+10℃未満であると、熱セット温度が芯成分の融点を超えた場合に熱セット時に芯成分まで溶けてしまい、融着部分で強度が低下する懸念がある。なお、上記芯鞘複合糸あるいは非複合糸であるモノフィラメントは、いずれも融着させない場合にも用いることができる。また、180℃×15分で20%以上の収縮率を有するものが好ましく、180℃×15分で40%以上の高収縮率を有するものがより好ましい。
また、上層2及び下層3の内、熱収縮糸を用いて編成される層は、少なくとも一方向の熱収縮率が10〜60%の範囲内であることが好ましい。このようにすることで、熱セットの際の成形性を極めて良好なものとすることができる。
また、下層3が熱収縮性を有する場合の、単位面積当たりの上層2の開口部5の面積比率(=100×単位面積中の開口部5の面積/単位面積)、及び上層2が熱収縮性を有する場合の、単位面積当たりの下層3の開口部6の面積比率(=100×単位面積中の開口部6の面積/単位面積)は、それぞれ10〜60%の範囲内であるのが好ましい。このようにすることで、熱セットの際に経編地1に皺が生成されるのを、より効果的に防止することができる。
(実施例1〜6及び比較例1−2)
ダブルラッシェル編み機を用いて実施例1−6及び比較例1−2に係る経編地を編成した。実施例1に係る経編地は、上述した編成方法によって編成した。即ち、図2に示すように、鎖編糸をフルセットで導糸する鎖編筬L3により、鎖編み列2aを編成し、挿入糸2b、2cをそれぞれ3イン1アウトで糸抜きして導糸する2枚の挿入糸筬L1、L2により、前記鎖編筬L3による鎖編の各ウエールに対して、それぞれ挿入糸2b、2cを該ウエールに沿って数コースにわたりジグザグ状に挿入するとともに、開口部5に対応する所要コース毎に1もしくは数ウエールにわたって左右交互に横振りしながら挿入し、上層2を形成した。下層3においても、上層2と同様に、鎖編糸をフルセットで導糸する鎖編筬L6により、鎖編み列3aを編成し、挿入糸3b、3cをそれぞれ1イン1アウトで糸抜きして導糸する2枚の挿入糸筬L7、L8により、前記鎖編筬L6による鎖編の各ウエールに対して、それぞれ挿入糸3b、3cを該ウエールに沿って数コースにわたりジグザグ状に挿入するとともに、開口部6に対応する所要コース毎に1もしくは数ウエールにわたって左右交互に横振りしながら挿入し、下層3を形成する。更に、上層2の挿入糸2b、2cと下層3の挿入糸3b、3cとを連結糸4a、4bをそれぞれ1イン1アウトで糸抜きして導糸する2枚の連結糸筬L4、L5によって連結し、開口部5、6を形成した。
ダブルラッシェル編み機を用いて実施例1−6及び比較例1−2に係る経編地を編成した。実施例1に係る経編地は、上述した編成方法によって編成した。即ち、図2に示すように、鎖編糸をフルセットで導糸する鎖編筬L3により、鎖編み列2aを編成し、挿入糸2b、2cをそれぞれ3イン1アウトで糸抜きして導糸する2枚の挿入糸筬L1、L2により、前記鎖編筬L3による鎖編の各ウエールに対して、それぞれ挿入糸2b、2cを該ウエールに沿って数コースにわたりジグザグ状に挿入するとともに、開口部5に対応する所要コース毎に1もしくは数ウエールにわたって左右交互に横振りしながら挿入し、上層2を形成した。下層3においても、上層2と同様に、鎖編糸をフルセットで導糸する鎖編筬L6により、鎖編み列3aを編成し、挿入糸3b、3cをそれぞれ1イン1アウトで糸抜きして導糸する2枚の挿入糸筬L7、L8により、前記鎖編筬L6による鎖編の各ウエールに対して、それぞれ挿入糸3b、3cを該ウエールに沿って数コースにわたりジグザグ状に挿入するとともに、開口部6に対応する所要コース毎に1もしくは数ウエールにわたって左右交互に横振りしながら挿入し、下層3を形成する。更に、上層2の挿入糸2b、2cと下層3の挿入糸3b、3cとを連結糸4a、4bをそれぞれ1イン1アウトで糸抜きして導糸する2枚の連結糸筬L4、L5によって連結し、開口部5、6を形成した。
実施例2に係る経編地は、実施例1の経編地における下層の挿入糸3b、3cを図3に示すように挿入した。
実施例3−4に係る経編地は、実施例1の経編地における下層3の挿入糸3b、3cをそれぞれ3イン1アウトで糸抜きして導糸する2枚の挿入糸筬L7、L8により、前記鎖編筬L6による鎖編の各ウエールに対して、図4に示すように、それぞれ挿入糸3b、3cを該ウエールに沿って数コースにわたりジグザグ状に挿入するとともに、開口部6に対応する所要コース毎に1もしくは数ウエールにわたって左右交互に横振りしながら挿入し、下層3を形成した。
実施例5−6に係る経編地は、実施例1の経編地における下層3の挿入糸3b、3cをそれぞれ3イン1アウトで糸抜きして導糸する2枚の挿入糸筬L7、L8により、前記鎖編筬L6による鎖編の各ウエールに対して、図5に示すように、それぞれ挿入糸3b、3cを該ウエールに沿って数コースにわたりジグザグ状に挿入するとともに、開口部6に対応する所要コース毎に1もしくは数ウエールにわたって左右交互に横振りしながら挿入し、下層3を形成した。
比較例2に係る経編地は、実施例1の経編地における下層の挿入糸3b、3cを図6に示すように挿入した。
また、比較例1の経編地は、実施例1の経編地における下層3の挿入糸3b、3cをそれぞれフルセットで導糸する挿入糸筬L7により、前記鎖編筬L6による鎖編の各ウエールに対して、図7に示すように、それぞれ挿入糸を該ウエールに沿って数コースにわたりジグザグ状に挿入し、下層3を形成した。この比較例1の経編地では、下層3に開口部6は形成されていない。
実施例1−6及び比較例1−2の経編地の上層2を構成する鎖編み列2a及び下層3を構成する鎖編み列3a、並びに上層2及び下層3を連結する連結糸4a、4bに用いる各編糸として167dtex−48のポリエステルからなるマルチフィラメント糸を用いた。また、実施例1−6及び比較例2の下層3を構成する挿入糸3b、3c並びに比較例1の下層3に用いられる挿入糸3b、3cに同様の167dtex−48のポリエステルからなるマルチフィラメント糸を用いた。このマルチフィラメント糸は180℃×15分で40%以上の収縮率を有する高収縮糸である。
また、実施例1−6及び比較例1−2の経編地において、上層2を構成する挿入糸2b、2cに、400dtexの透明なポリエステル系のモノフィラメント弾性糸を用いた。このモノフィラメント弾性糸は、熱可塑性ポリエステル系エラストマーとして、東レ・デュポン製の“ハイトレル”(登録商標)6347(融点215℃)を芯成分とし、同じく“ハイトレル”(登録商標)4056(融点153℃)を鞘成分とした弾性糸であり、それぞれのペレットを乾燥した後、別々のエクストルーダーで溶融し、それぞれギヤポンプで計量して複合パック中に流入させて押出機に供給し、その質量比率が芯:鞘=70:30となるように押し出すことによって製糸される。
尚、上記弾性糸の乾熱寸法変化率は41%であった。この糸の乾熱寸法変化率は、JIS L 1013 8.18.2 B法に従って算出される。即ち、上記弾性糸に初荷重をかけ、正しく500mmを測って2点を打ち、初荷重を取り除いた後180℃の乾燥機中につり下げ、15分間放置後取り出して、室温まで冷却後再び初荷重をかけて2点間の長さを測り、次の式によって算出される5回の単純平均値を弾性糸の乾熱寸法変化率(%)とした。
ここに、ΔLは乾熱寸法変化率(%)、Lは2点間の長さ(mm)である。
ここに、ΔLは乾熱寸法変化率(%)、Lは2点間の長さ(mm)である。
また、実施例1−6及び比較例2の経編地は、編地の組織を調整し、下層3の隣接する鎖編み列3aの間の連結割合を調整することによって、開口部6の大きさを図9に示すように種々変化させた態様の編地である。尚、比較例1の経編地は、意図的には開口部6を形成していないが、編目としての開口が存在している。
そして、実施例1−6及び比較例1−2の経編地をそれぞれ靴のアッパー素材と底部素材とに裁断した後、これらを袋状に縫製し、ついで袋状に縫製された部材を靴型に嵌めて、180℃で15分間熱処理を行って靴本体としてのシューズ素材を得た。
そして、この実施例1−6及び比較例1−2に係る熱処理後の各シューズ素材について、「上層2と下層3との間の間隔」、「単位面積当たりの下層3の開口部6の面積比率」、「乾熱寸法変化率」、「融着の有無」、「成形性」、「手触り性」及び「下層3の防皺性」を評価した。その結果を図4に示す。尚、各評価は以下の方法及び基準とした。
(上層2と下層3との間の間隔)
実施例1−6及び比較例1−2に係る経編地を、それぞれ30cm×30cmの大きさでサンプリングし、サンプリングした経編地全体を、JIS L 1096 A法に従って、0.7kPaの圧力で10秒間の加圧した後、その厚さ(mm)を3箇所計測して、その単純平均値を上層2と下層3との間の間隔とした。図1Eに示したhが上層2と下層3との間の間隔に相当する。
実施例1−6及び比較例1−2に係る経編地を、それぞれ30cm×30cmの大きさでサンプリングし、サンプリングした経編地全体を、JIS L 1096 A法に従って、0.7kPaの圧力で10秒間の加圧した後、その厚さ(mm)を3箇所計測して、その単純平均値を上層2と下層3との間の間隔とした。図1Eに示したhが上層2と下層3との間の間隔に相当する。
(融着の有無)
実施例1−6及び比較例1−2に係る経編地を、10mm×10mmの大きさでサンプリングし、得られたサンプルの断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い100倍の倍率で観察して、繊維間の融着の有無を確認し、十分な融着を「◎」、良好な融着を「○」、不十分な融着を「△」、融着なしを「×」で評価した。
実施例1−6及び比較例1−2に係る経編地を、10mm×10mmの大きさでサンプリングし、得られたサンプルの断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い100倍の倍率で観察して、繊維間の融着の有無を確認し、十分な融着を「◎」、良好な融着を「○」、不十分な融着を「△」、融着なしを「×」で評価した。
(単位面積当たりの下層3の開口部6の面積比率)
実施例1−6及び比較例1−2に係る経編地を、それぞれ30cm×30cmの大きさでサンプリングし、サンプリングした経編地全体を画素数1920×1080でカラー写真を撮影し、その写真を画像処理により上層2の面に該当する部分(単位面積に相当)を黒色、下層3の開口部6に該当する部分(開口部6の面積に相当)を白色に塗り、上層2に該当する黒色の画素、下層3の開口部6に該当する白色の画素をそれぞれ計数し、計数された画素数の比をとって、面積比率(=単位面積中の開口部6の面積/単位面積)を算出した。尚、黒色と白色に塗る際に、下層3部と開口部6との境界線が確認しづらい場合には、倍率400倍まで画像拡大し、境界線を確認した。また、白色及び黒色の画素数の算出には、画像処理ソフト「JTrim」を使用し、2階調化における境界しきい値は100に設定した。また、面積比は、上記評価方法を5回試行し、各試行で得られた値を単純平均した。また、上述したように、比較例1の経編地については、意図的に形成された開口部6は存在しないが、編目としての開口を開口部6に相当するものとして算出している。
実施例1−6及び比較例1−2に係る経編地を、それぞれ30cm×30cmの大きさでサンプリングし、サンプリングした経編地全体を画素数1920×1080でカラー写真を撮影し、その写真を画像処理により上層2の面に該当する部分(単位面積に相当)を黒色、下層3の開口部6に該当する部分(開口部6の面積に相当)を白色に塗り、上層2に該当する黒色の画素、下層3の開口部6に該当する白色の画素をそれぞれ計数し、計数された画素数の比をとって、面積比率(=単位面積中の開口部6の面積/単位面積)を算出した。尚、黒色と白色に塗る際に、下層3部と開口部6との境界線が確認しづらい場合には、倍率400倍まで画像拡大し、境界線を確認した。また、白色及び黒色の画素数の算出には、画像処理ソフト「JTrim」を使用し、2階調化における境界しきい値は100に設定した。また、面積比は、上記評価方法を5回試行し、各試行で得られた値を単純平均した。また、上述したように、比較例1の経編地については、意図的に形成された開口部6は存在しないが、編目としての開口を開口部6に相当するものとして算出している。
(乾熱寸法変化率)
JIS L 1013 8.18.2 B法に従い、実施例1−6及び比較例1−2に係る経編地を、20cm×20cmの大きさでサンプリングして、上層及び下層のタテ方向(ウェール方向)及びヨコ方向(コース方向)の各方向に正しく100mmを測って、各方向に対し2点を打ち、180℃の乾燥機中につり下げ、5分間放置した後取り出して、室温まで冷却した後2点間の長さを測り、次の式により算出される各層の5回の単純平均値zを乾熱寸法変化率とした。
ここで、ΔLは乾熱寸法変化率(%)、Lは2点間の長さ(mm)である。
JIS L 1013 8.18.2 B法に従い、実施例1−6及び比較例1−2に係る経編地を、20cm×20cmの大きさでサンプリングして、上層及び下層のタテ方向(ウェール方向)及びヨコ方向(コース方向)の各方向に正しく100mmを測って、各方向に対し2点を打ち、180℃の乾燥機中につり下げ、5分間放置した後取り出して、室温まで冷却した後2点間の長さを測り、次の式により算出される各層の5回の単純平均値zを乾熱寸法変化率とした。
ここで、ΔLは乾熱寸法変化率(%)、Lは2点間の長さ(mm)である。
(成形性、手触り性及び上層2の皺の生成性)
「成形性」及び「上層2の防皺性」については目視により評価し、「手触り性」については実際の手触りの感触により評価した。いずれも、十分な場合を「◎」、良好な場合を「○」、やや不十分と思われる場合を「△」、不十分な場合を「×」として評価した。
「成形性」及び「上層2の防皺性」については目視により評価し、「手触り性」については実際の手触りの感触により評価した。いずれも、十分な場合を「◎」、良好な場合を「○」、やや不十分と思われる場合を「△」、不十分な場合を「×」として評価した。
図9に示すように、実施例1−2は、それぞれ上層2と下層3との間の間隔は6.10mm、5.89mmであり、単位面積当たりの開口部6の面積比率はそれぞれ14%、13%、コース方向の熱収縮率はそれぞれ42%、43%ウェール方向の熱収縮率はそれぞれ9%、10%であった。そして、熱処理後の各シューズ素材は、前足部の形状が再現でき、即ち、靴型に倣った成形性が良好であり、また、保形性(融着性)も良好であった。また、手触りは非常に高いものであり、上層2の防皺性については、良好であった。
また、実施例3及び4は、それぞれ上層2と下層3との間の間隔は3.41mm、3.69mmであり、単位面積当たりの開口部6の面積比率はそれぞれ13%、13%、コース方向の熱収縮率はそれぞれ38%、40%、ウェール方向の熱収縮率はそれぞれ10%、9%であった。そして、熱処理後の各シューズ素材は、靴型に倣った成形性が十分なものであり、また、保形性(融着性)については良好であった。また、手触りについても良好であり、上層2の防皺性については十分なものであった。
実施例5及び6は、それぞれ上層2と下層3との間の間隔は3.45mm、3.71mmであり、単位面積当たりの開口部6の面積比率はそれぞれ13%、19%であり、コース方向の熱収縮率はそれぞれ37%、44%であり、ウェール方向の熱収縮率はそれぞれ9%、11%であった。そして、熱処理後の各シューズ素材は、靴型に倣った成形性が十分なものであり、また、保形性(融着性)については良好であった。また、手触りについては良好であり、上層2の防皺性については十分なものであった。
一方、比較例1、2は、それぞれ上層2と下層3との間の間隔は5.18mm、5.87mmであり、単位面積当たりの開口部6の面積比率はそれぞれ2%、5%であり、コース方向の熱収縮率はそれぞれ42%、44%であり、ウェール方向の熱収縮率はそれぞれ13%、11%であった。そして、熱処理後のシューズ素材は、靴型に倣った成形性が良好であり、保形性(融着性)についても良好であり、手触りについては十分なものであったが、上層2の防皺性については不十分であった。
以上のことから、少なくとも上層2が熱収縮性を有する場合の、単位面積当たりの下層3の開口部6の面積比率が、少なくとも10%以上である場合に、成形性が良く、また、上層2に皺が生成されるのをより効果的に防止するこができることが分かる。
以上、本発明の具体的な実施の形態について説明したが、本発明が採り得る態様は何ら上例のものに限定されるものではない。
例えば、上述した実施形態では、上層2に開口部5を設けるとともに、下層3に開口部6を形成したが、これに限られるものではなく、上層2にのみ熱収縮糸が用いられる場合には、下層3にのみ開口部6を形成するようにしても良く、逆に、下層3にのみ熱収縮糸が用いられる場合には、上層2にのみ開口部5を形成するようにしても良い。
また、経編地1の組織は図1に図示したものに限られるものではなく、当然のことながら本発明の特徴を有する他の編組織を採用することができる。特に、挿入糸2b、2c、3b、3cの挿入方法は開口部5、6を形成することができれば、どのような挿入方法であっても良い。
また、上述した実施形態では、経編地としたがこれに限られるものではなく、本発明は、緯編地や織物として具現化することができる。
1 経編地
2 上層
2a 鎖編み列
2b、2c 挿入糸
3 下層
3a 鎖編み列
3b、3c 挿入糸
4 連結部
4a、4b 連結糸
5、6 開口部
2 上層
2a 鎖編み列
2b、2c 挿入糸
3 下層
3a 鎖編み列
3b、3c 挿入糸
4 連結部
4a、4b 連結糸
5、6 開口部
Claims (13)
- 上層と、下層と、該上層及び下層を連結する連結部とから構成される立体構造を備えた繊維構造体であって、
前記上層または下層の内、少なくとも一方の層はその一部又は全部が180℃×15分で20%以上の収縮率を有する高収縮糸から構成されているとともに、少なくとも他方の層には複数の開口部が点在し、単位面積当たりの前記開口部の面積比率が10〜60%の範囲内となるように形成されていることを特徴とする繊維構造体。 - 前記連結部は、前記上層と下層とをその間隔が1〜10mmの範囲内となるように連結していることを特徴とする請求項1記載の繊維構造体。
- 前記連結部は、その少なくとも一部がマルチフィラメントから構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の繊維構造体。
- 前記上層及び下層は、それぞれ複数の糸から構成され、その一部又は全部が融着糸から構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の繊維構造体。
- 前記融着糸の少なくとも一部がエラストマーから形成された弾性糸であることを特徴とする請求項4記載の繊維構造体。
- 前記弾性糸がモノフィラメントであることを特徴とする請求項5に記載の繊維構造体。
- 前記弾性糸は、芯成分と鞘成分とからなる芯鞘複合モノフィラメントであることを特徴とする請求項5に記載の繊維構造体。
- 前記弾性糸の前記鞘成分はその融点が芯成分の融点よりも少なくとも10℃低いことを特徴とする請求項7に記載の繊維構造体。
- 前記弾性糸の前記鞘成分はポリエステル系エラストマーからなることを特徴とする請求項7又は8に記載の繊維構造体。
- 前記弾性糸の前記芯成分はポリエステル系エラストマーからなることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の繊維構造体。
- 前記一方の層は、少なくとも一方向の熱収縮率が10〜60%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の繊維構造体。
- 前記繊維構造体が織物又は編物であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の繊維構造体。
- 前記繊維構造体が経編物であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の繊維構造体。
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