JP2021088623A - 新規澱粉分解物及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明の課題は、DE値が非常に低いにもかかわらず老化しにくく、飲食品に添加してもその外観及び食感に悪影響を及ぼさない、新規な澱粉分解物を提供することにある。【解決手段】 特定の原料澱粉をα-アミラーゼにより特定の条件下で二段分解することにより、目的の老化しにくい澱粉分解物が得られる。具体的には、原料澱粉を糯種タピオカ澱粉とし、分解処理物のDE値が0.8〜1.7となるまで液化酵素で加水分解して反応停止させた後、さらに分解処理物のDE値が1.5〜1.8となるまで液化酵素で加水分解する。【選択図】図1

Description

本発明は、新規な澱粉分解物及びその製造方法に関する。
澱粉分解物を飲食品に用いることは従来から行われている。そして、その澱粉分解物は、原料となる澱粉懸濁液にα−アミラーゼ(液化酵素)やグルコアミラーゼ(糖化酵素)、酸を作用させることにより、所望するDE値の澱粉分解物として得ることができる。
例えば、特許文献1には、澱粉懸濁液をα−アミラーゼで二段加水分解して得られる、DE値5〜18の老化しにくい澱粉分解物が開示されている。また、特許文献2には、α-アミラーゼ又は酸を用いて澱粉を分解する第1分解工程と、少なくとも枝切り酵素を用いて分解する第2分解工程とからなるグルコースポリマーの製造方法により製造される、DE値27以下であって、かつ分子量5,000以上の糖組成物含有量が固形分当たり18重量%以下であり、さらに含まれる単糖類が固形分当たり6重量%以下であることを特徴とするグルコースポリマーが開示されている。
特許文献3には、でんぷんをオリゴ糖へと加水分解する第一のでんぷん加水分解酵素、及び、でんぷん又はオリゴ糖をグルコースへと加水分解する第二のでんぷん加水分解酵素により、澱粉懸濁液を処理して単糖リッチなシロップを製造したことが開示されている。また、特許文献4には、高いデキストロース含有量を有する澱粉加水分解物の生産法として、澱粉懸濁液を酵素による液化及び糖化後にナノ濾過透過物として得る方法が開示されている。
さらに、特許文献5には、透明性に優れた澱粉分解物を得ることを目的として、澱粉懸濁液を澱粉分解酵素で処理し、約2〜5万ダルトンの分子量を有するDE値が約8より小さいマルトデキストリンを分離して得る方法が開示されている。特許文献6には、濃厚感を有するデキストリンを作成することを目的として、澱粉加水分解物に分岐酵素を反応させてDE値が2〜9で所定の粘度の分岐デキストリンを作成したことが記載されている。
特開昭49−19049号公報 特開2007−182563号公報 特開2004−248673号公報 特開2000−308499号公報 特開平6−209784号公報 特開2014−80518号公報
一般に、分解度の低い澱粉分解物、すなわち、DE値の低い澱粉分解物は甘味がほとんどないものの、飲食物の味質に厚み(濃厚感)を付与したい場合に用いられることがある。ところが、低DE値の澱粉分解物は、水に一旦溶解させることができても経時的に老化して白濁するため、飲食品の外観及び食感に悪影響を及ぼすという問題があった。
従って、本発明の目的は、これまでの澱粉分解物よりDE値が非常に低いにもかかわらず、老化しにくい新規な澱粉分解物を提供することにある。
本発明者らは、かかる課題を解決すべく種々検討したところ、特定の原料澱粉を特定の条件下でα-アミラーゼにより加水分解してそのDE値を所定範囲内としたのち、さらにα-アミラーゼによりDE値を所定範囲内となるまで加水分解することにより、老化しにくい澱粉分解物が得られることを見いだした。
すなわち、本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、以下〔1〕〜〔6〕から構成される。
〔1〕下記(A)から(C)の数値を満たす澱粉分解物:
(A)DE値が1.2〜1.7、
(B)30℃における30質量%水溶液の粘度が250〜700mPa・s、及び
(C)30質量%水溶液の冷解凍1回実施後の濁度が1.0以下。
〔2〕さらに下記(D)の数値を満たす、上記[1]記載の澱粉分解物:
(D)分子量5,000以上の糖組成物含有量が固形分当たり90質量%以上。
〔3〕糯種タピオカ澱粉を原料澱粉とする、上記[1]又は[2]に記載の澱粉分解物。
〔4〕エネルギー補給用又はエネルギー持続用である、上記[1〕〜〔3〕のいずれかに記載の澱粉分解物。
〔5〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の澱粉分解物を含む飲食品。
〔6〕原料澱粉を液化酵素で加水分解してその分解処理物のDE値が0.8〜1.7にあるときに加水分解反応を停止させ、さらに液化酵素で加水分解してその分解処理物のDE値が1.5〜1.8にあるときに加水分解反応を停止させる、上記[1〕〜〔4〕のいずれかに記載の澱粉分解物の製造方法。
一般に、低DE値の澱粉分解物の水溶液は老化しやすいが、本発明の澱粉分解物は、これまでの澱粉分解物よりも低DE値でありながら老化しにくく、その溶液の透明性は良好であるため、飲食品の外観及び飲食品本来の風味を損なうことなく濃厚感を付与することができる。また、当該方法により得られる澱粉分解物は、分画等の工程を要しないため、歩留が良好で経済的にも有利である。
澱粉分解物30質量%水溶液の冷解凍1回後の状態の写真を示す。(左から順に、比較例1、実施例3、実施例5、パインデックス#100及びフードテックス) 試料摂取後120分後までの血糖値の変化を示す。 試料摂取後120分後までのインスリンの変化を示す。
本発明における「澱粉分解物」は、「水飴」、「デキストリン」、「マルトデキストリン」などとも呼ばれ、澱粉を酵素により加水分解して得られるものを指す。
本発明の澱粉分解物の「DE値」は、1以上2未満が好ましく、より好ましくは1.2〜1.7であり、最も好ましくは1.3〜1.6である。上記範囲であれば、甘味がなく、飲食品に添加した場合にも飲食品の風味及び外観を損なうことなく濃厚感を付与できる。なお、本発明における「DE」値とは、「[(直接還元糖(ブドウ糖として表示)の質量)/(固形分の質量)]×100」の式により求められる値で、後述するウイルシュテッターシューデル法による分析値である。
本発明の澱粉分解物の製造工程における一段目の加水分解工程で得られる分解処理物のDE値は、一段目分解工程終了後の水溶液を用いて測定したDE値である。当該DEは、好ましくは0.5〜1.9、より好ましくは0.7〜1.8、さらに好ましくは0.8〜1.7である。
本発明の澱粉分解物の製造工程における二段目の加水分解工程で得られる分解処理物のDE値は、二段目分解工程終了後の水溶液を用いて測定したDE値である。当該DEは、好ましくは1.3〜2.1、より好ましくは1.4〜1.9、さらに好ましくは1.5〜1.8である。なお、最終的に得られる本発明の澱粉分解物のDE値が、二段目分解工程時の分解処理物のDE値より若干小さくなる理由は、二段目分解工程後の精製工程に起因する。
本発明における「澱粉分解物」の粘度は、澱粉分解物の30質量%水溶液の30℃におけるBM型粘度計による測定値である。当該粘度は、240mPa・sを越えて800mPa・s未満が好ましく、より好ましくは250〜700mPa・s、さらに好ましくは250〜600mPa・s、より好ましくは300〜550mPa・sである。上記範囲であると、飲食品の食感を変化させることなく適度な濃厚感を付与できる澱粉分解物を提供することができる。
本発明における「濁度」とは、澱粉分解物の30質量%水溶液の720nm(10cmセル)における吸光度であり、本発明の澱粉分解物の30質量%水溶液を−18℃で一晩冷凍した後に自然解凍(以下、「冷凍解凍1回実施後」ともいう。)した際の濁度は、1.0以下である。なお、当該濁度は、より好ましくは0.9以下、さらに好ましくは0.7以下、最も好ましくは0.5以下である。
本発明の澱粉分解物は、澱粉の分解により生じる糖からなる組成物であり、分子量5,000以上の糖組成物(画分)の含有量が、固形分当たり90質量%以上であることが好ましく、93質量%以上であればより好ましい。かかる範囲であれば、飲食品の味質をぼやけたものとすることなく、好ましい濃厚感を付与することができる。
本発明における分子量5,000以上の糖組成物含有量は、ゲルろ過によるHPLC(株式会社島津製作所製)で得られる分子量分布から求めることができる。HPLCの分析条件は以下であり、プルラン標準品、マルトトリオース及びグルコースを用いて検出時間に対する分子量の検量線を作成し、この検量線に基づいて分子量5,000の検出時間を算出し、この算出された検出時間より前に検出されるピークの面積%を分子量5,000以上の糖組成物含有量とした。
[カラム]:TSKgel G2500PWXL,G3000PWXL、
G6000PWXL(東ソー(株)製)
[カラム温度]:80℃、
[移動相]:蒸留水、
[流速]:0.5ml/min、
[検出器]:示差屈折率計、
[サンプル注入量]:1質量%水溶液100μL、
[検量線]:プルラン標準品(昭和電工(株)製)、マルトトリオース及びグルコース
本発明における「浸透圧」とは、澱粉分解物の10質量%水溶液における氷点降下法によって得られる測定値である。
本発明の澱粉分解物を得るための原料となる澱粉(原料澱粉)は、自然界に見出される天然澱粉その他遺伝子工学技術を含む標準的育種技術により得られた藻類を含む植物由来のものであればいずれでもよく、その代表的な供給源は、穀類、塊茎、根、藻、豆果及び果物である。より具体的には、トウモロコシ、エンドウ、ジャガイモ、サツマイモ、バナナ、オオムギ、コムギ、米、サゴ、アマランス、タピオカ、カンナ、モロコシ、及びこれらの糯種が挙げられる。
本発明の澱粉分解物を得るための好ましい原料澱粉は、ワキシータピオカ澱粉、ワキシーコーン澱粉、ワキシーポテト澱粉といった糯種澱粉であり、そのなかでもワキシータピオカ澱粉が好ましい。ワキシータピオカ澱粉を原料澱粉とすれば、低DE値でありながら水溶液として高い透明性を有する澱粉分解物を得ることができる。本発明でいう澱粉分解物の原料澱粉には、ヒドロキシプロピル澱粉などの加工澱粉は含まない。
本発明の澱粉分解物を得るために用いられる液化酵素は、α−アミラーゼである。「α−アミラーゼ」とは、澱粉のα−1,4グルコシド結合を加水分解するエンド型の酵素をいい、例えば、クライスターゼSD−KM(天野エンザイム社製)や、ターマミル120L(ノボザイムズジャパン社製)などが挙げられる。このα−アミラーゼの使用量は、一段目の分解工程においては、原料澱粉の固形分質量に対して0.01〜0.1質量%であることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.09質量%であり、二段目の分解工程においては、原料の固形分質量に対して0.004〜0.05質量%であることが好ましく、より好ましくは0.007〜0.02質量%である。
上記の各分解工程のいずれにおいても、温度は、好ましくは70〜100℃、より好ましくは80〜95℃であり、pHは、好ましくは5.0〜7.0、より好ましくは5.5〜6.5であり、その処理時間は、好ましくは3〜40分、より好ましくは5〜30分である。一段目の分解工程における原料澱粉の濃度は、15〜40質量%程度であることが好ましい。これらの分解工程においては、加熱加圧蒸煮釜やジェットクッカーなどの加熱装置を用いてもよい。
一段目の分解工程では、分解処理物のDEが所定の範囲、例えば、0.5〜1.9に到達した時点で、0.1MPa程度の加圧処理又はシュウ酸などの酸により反応を終了させてもよい。
二段目の分解工程では、分解処理物のDEが所定の範囲、例えば、1.3〜2.1に到達した時点で、0.1MPa程度の加圧処理又はシュウ酸などの酸により反応を終了させてもよい。
上記両分解工程を経て得られた反応溶液は、精製工程としての珪藻土によるろ過及びイオン交換樹脂による脱塩を経て、濃縮して液状品とするか、噴霧乾燥等により粉末化して粉末品とすることができる。そして、その精製後の澱粉分解物の液をそのまま還元(水素添加)して還元型澱粉分解物とすることもできる。
このようにして得られる本発明の澱粉分解物は、30℃における30質量%水溶液の粘度が250〜700mPa・sであり、DE値が1.2〜1.7と非常に低い。そして、DE値が非常に低いにもかかわらず、その水溶液の透明性は非常に高く、一晩−18℃で冷凍した後、自然解凍した際の濁度は1.0以下であり、老化しにくい。
なお、低DE値の澱粉分解物の代表例としては、松谷化学工業株式会社製の「パインデックス#100」がある。「パインデックス#100」は、DE値が約4と非常に低く、30℃における30質量%水溶液の粘度は100mPa・sである。そして、この溶液を−18℃で一晩冷凍した後に自然解凍した際の濁度は2.33である。つまり、パインデックス#100に代表される既存の「低DE値」の澱粉分解物は、本発明の澱粉分解物と比べて非常に老化しやすいといえる。
一方、上記「パインデックス#100」と同じくDE値が約4である、加工澱粉の酵素分解品として、松谷化学工業株式会社製の「フードテックス」がある。その30℃における30質量%水溶液の粘度は250mPa・sであって、「パインデックス#100」より高く、この溶液を−18℃で一晩冷凍した後に自然解凍した際の濁度は0.06である。つまり、「フードテックス」は、「低DE値」であるにもかかわらず、その溶液の透明性は非常に高いといえる。しかし、その原料澱粉は加工澱粉であるヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉であることから、これを加水分解等して得られるものは食品添加物であり、利用目的によっては使用できないことがある。
以上より、本発明の澱粉分解物は、既存の低DE値の澱粉分解物とは全く異なる新規の、食品の範疇にある低DE値の澱粉分解物であるといえる。
本発明の他の態様としては、本発明である澱粉分解物を含む飲食品が挙げられる。飲食品の種類は特に限定されないが、例えば、コーヒー、紅茶、ジュース等の清涼飲料、アルコール飲料などの飲料、アイスクリーム、ミルクプリン、カスタードクリーム、ヨーグルト、ムース等の乳含有食品、ゼリーなどのデザート製品、つゆ・たれ類、すし酢、ドレッシング、ケチャップ、ソース等の調味料、カレー、シチューなどが挙げられる。特に、飲料、ムースなどのデザート製品、つゆ・たれ類、ソース、ドレッシングなどの透明性が重視される飲食品においては、濃厚感に優れるだけでなく透明性が良好となるため、有利である。
これら飲食品における本発明の澱粉分解物の含有量は、好ましくは1〜30量%、より好ましくは2〜15質量%、さらに好ましくは2〜11質量%であり、その場合に、透明感を損なうことなく濃厚感に優れた飲食品を得ることができる。
また、本発明の別の態様は、本発明である澱粉分解物を含む濃厚流動食、経腸栄養剤、エナジー系スポーツ飲料などである。本発明の澱粉分解物は、低DEであることから浸透圧が低く、他の澱粉分解物に比べて対象製品に対して多く配合できるとともに、血糖値が長時間低下しないことから、持続的なエネルギー補給が期待される。したがって、エネルギー補給を必要とする老人や病後回復期の病者、運動家にとって、非常に有利に利用できる。
以下、本発明の実施形態を記載するが、実施例に特に限定されるものではない。実施例内において特に説明がない場合には、「%」は「質量%」を意味する。
(実施例1)
原料となるワキシータピオカ澱粉の22質量%水懸濁液を消石灰でpH6.0に調整し、原料固形分に対して0.09質量%となるようα−アミラーゼ(クライスターゼSD−KM、天野エンザイム社製)を添加した。この酵素−澱粉水懸濁液を、80℃に保温された加熱加圧蒸煮釜へ投入して酵素反応を行い、0.1MPaにて酵素を失活して一段分解液を得た(以上、一段目の分解工程)。酵素失活させてその分解処理物のDE値を測定したところ、1.7であった。
次に、この分解液を、蓚酸または消石灰を用いてpHを6.0に調整し、原料固形分に対して0.009質量%となるよう上述のα−アミラーゼを再度添加し、85℃で反応後、蓚酸を添加し、pH3.5以下に調整して酵素を失活することにより二段分解液を得た(以上、二段目の分解工程)。酵素失活させてその分解処理物のDE値を測定したところ、1.8であった。
得られた二段分解液を、珪藻土によるろ過及びイオン交換樹脂による脱塩によって精製した後、15質量%まで濃縮し、噴霧乾燥により粉末化して得た澱粉分解物のDE値は1.6、30℃における30質量%水溶液の粘度は300mPa・sであった。
(実施例2〜5及び比較例1〜2)
表1記載の条件及び上記実施例1の工程に従って、各澱粉分解物を調製した。各澱粉分解物について、(1)一段目の分解工程での酵素の添加量、(2)一段目の分解工程を終了させたときの分解処理物のDE値、(3)二段目の分解工程での酵素の添加量及び(4)二段目の分解工程を終了させたときの分解処理物のDE値を測定した結果を表1に示す。なお、比較例2は二段目の分解工程後の粘度が非常に高く、その後の精製工程にすすめることが非常に困難であったことから、この段階で操作を中断した。
Figure 2021088623
(澱粉分解物の水溶液の粘度)
各澱粉分解物の粘度は、その30質量%水溶液を30℃に保ち、60回転/分に設定した粘度計(BM形 東機産業社製)及びローター番号2又は3を用いて30秒間測定した。
(分解処理物又は澱粉分解物のDE値)
製造工程段階の分解処理物、又は最終的に得られる澱粉分解物のDE値は、ウイルシュテッターシューデル法(「澱粉糖関連工業分析法」、食品化学新聞社発行(平成3年11月1日発行))により測定した。
(官能評価)
各澱粉分解物の5質量%水溶液について、よく訓練されたパネラー5名により官能評価を行った。官能評価項目は、「濃厚感」(試料溶液を口に含んだ瞬間に感じるコクの強さ)とした。評価は、フードテックスの水溶液を基準(0点)とし、−2、−1、0、+1、+2の5段階評価で実施した。パネラー5名の平均値が0を超えたときを「○」とした。
(老化耐性)
各澱粉分解物の30質量%水溶液をガラス製のバイアル瓶に入れて−18℃で一晩冷凍後、自然解凍した際の溶液を、10cmのプラスティック材質のセルに入れ、720nmの波長における吸光度を分光光度計(U−2900、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて測定し、この測定値を「濁度」とした。
(分子量5,000以上の糖組成物含有量)
分子量5,000以上の糖組成物含有量は、ゲルろ過によるHPLCより得られる分子量分布から求めた。HPLCの分析条件は以下であり、プルラン標準品、マルトトリオース及びグルコースを用いて検出時間に対する分子量の検量線を作成し、この検量線より分子量5,000の検出時間を算出したのち、算出された検出時間より前に検出されるピークの面積%を分子量5,000以上の糖組成物含有量とした。
[カラム]:TSKgel G2500PWXL,G3000PWXL、G6000PWXL(東ソー(株)製)
[カラム温度]:80℃、
[移動相]:蒸留水、
[流速]:0.5ml/min、
[検出器]:示差屈折率計、
[サンプル注入量]:1質量%水溶液100μL、
[検量線]:プルラン標準品(昭和電工(株)製)、マルトトリオース及びグルコース
(澱粉分解物の浸透圧)
各澱粉分解物の浸透圧は、10質量%水溶液を浸透圧計(ModelOsmometer3250、ADVANCED INSTRUMENTS社製)により測定した。
以上の各澱粉分解物の官能評価及び目視評価の結果並びに分析値を、以下の表2に示す。
Figure 2021088623
表2より、DE値が2未満であって、30℃における30質量%水溶液の粘度が240mPa・sを超えて700mPa・sまでの範囲にあり、分子量5,000以上の割合(%)が90以上のときに、その澱粉分解物は老化耐性が高く、官能評価において十分な濃厚感があった。すなわち、上記のDE、粘度、分子量分布の範囲内にある本発明の澱粉分解物にあっては、飲食品の風味や味質に影響を与えることなく濃厚感を与え、高い老化耐性を有することがわかった。
一方、比較例の結果からわかるように、上記範囲の何れかを満たさない澱粉分解物にあっては、老化耐性はあるものの、官能評価において十分な濃厚感が得られなかった。
(食品例1:レトルトコーンスープ)
実施例3及び比較例1の各澱粉分解物と、対照としてパインデックス#100及びフードテックスを用いて、表3の配合でレトルトコーンスープを作製した。具体的には、原料すべてをホモミキサーで5000rpm・5分間処理し、次いで高圧ホモジナイザーによる150kgf/cm2の均質化処理後、缶に充填して125℃・20分間のレトルト殺菌を行った。
Figure 2021088623
得られたコーンスープについて、訓練されたパネラー5名の官能評価により、「濃厚感」について評価を行った。評価結果を表4に示す。なお、以降の食品の評価は、前述した澱粉分解物の評価方法に準じて行った。
Figure 2021088623
その結果、実施例3の澱粉分解物を使用したコーンスープは、しっかりと濃厚感が付与されていた。一方、比較例1の澱粉分解物を用いたコーンスープは、フードテックスに比べて濃厚感は低かった。なお、澱粉分解物溶液の官能評価では、パインデックス#100のほうがフードテックスより濃厚感があったものの、コーンスープではフードテックスのほうがパインデックス#100より濃厚感があった。
(食品例2:アイスクリーム)
実施例3及び比較例1の各澱粉分解物と、対照としてパインデックス#100及びフードテックスを用い、表5の配合でアイスクリームを作製した。具体的には、まず、無塩バター、生クリーム及びバニラフレーバー以外の原料を混合して60℃に達するまで撹拌加熱し、無塩バターと生クリームを加えて85℃に達するまで加熱撹拌した。次いで、ホモミキサーによる8000rpm・5分間処理と、高圧ホモジナイザーによる150kgf/cm2の均質化処理の後、冷水で5℃まで冷却してから冷蔵庫(5℃)で12時間静置した。その後、バニラフレーバーを添加してアイスクリームフリーザーで−4℃まで冷却し、これをカップ充填してから−30℃の急速冷凍庫で1時間硬化させて各アイスクリームを作製した。
Figure 2021088623
得られたアイスクリームについて、訓練されたパネラー5名の官能評価により、「濃厚感」について評価を行った。評価結果を表6に示す。
Figure 2021088623
その結果、実施例3の澱粉分解物を使用したアイスクリームは、濃厚感が付与されていた。一方、比較例1の澱粉分解物を使用したアイスクリームの濃厚感はフードテックスより低かった。なお、パインデックス#100については、前述のコーンスープと同様に、フードテックスより濃厚感は低かった。
(食品例3:コーヒー飲料)
実施例3及び比較例1の各澱粉分解物と、対照としてパインデックス#100及びフードテックスを用いて、表7の配合でコーヒー飲料を作製した。具体的には、まず、コーヒー豆を10倍量の85℃熱水で5分間抽出し、冷却後にろ過してコーヒー抽出液を得て、さらに他の原料を加えて混合溶解した後、水で全量補正した。これを60℃まで加熱後、ホモジナイザーでの5000rpm・5分間処理と高圧ホモジナイザーによる200kgf/cm2の均質化処理後に缶充填し、125℃・20分間のレトルト殺菌を行った。
Figure 2021088623
得られたコーヒー飲料について、訓練されたパネラー5名の官能評価により、「濃厚感」について評価を行った。評価結果を表8に示す。
Figure 2021088623
その結果、実施例3の澱粉分解物を使用したコーヒー飲料は、濃厚感が付与されていた。一方、比較例1の澱粉分解物を使用したコーヒー飲料の濃厚感はフードテックスより低かった。なお、パインデックス#100については、前述のコーンスープおよびアイスクリームと同様に、フードテックスより濃厚感は低かった。
(糖負荷試験)
健常成人男女7名(平均年齢38.1±2.6歳)には、試験前日午後9時以降、水以外の飲食を禁止した。実施例3の澱粉分解物(DE1.5、浸透圧:4mOSmol/kg(10質量%))又は通常の澱粉分解物(松谷化学工業社製「グリスターP」、DE15、浸透圧:92mOSmol/kg(10質量%))各50gを水に溶解して200gとしたものを試料とし、試験当日午前9時に摂取した。試料摂取前、試料摂取15分後、30分後、45分後、60分後、90分後、120分後に、それぞれ指先からヘマトクリット管へ採血し、血中グルコース濃度および血中インスリン濃度を測定した。その結果を図2及び図3に示す。なお、グリスターPは、エネルギー補給目的で栄養剤などによく使用される澱粉分解物であり、比較対照試料として選択した。
一般的に、浸透圧が高い食品を摂取した場合、胃内で浸透圧の調整が行われる、すなわち、胃内に摂取された食品が滞留することから、胃を通過する速度が遅くなる。一方、浸透圧の低い食品を摂取した場合、胃内での浸透圧調整がさほど必要とならないため、浸透圧の高い食品に比べて胃を通過する速度が速くなる。したがって、浸透圧の低い実施例3の澱粉分解物を摂取したときには、血糖値は比較的早く上昇するものと予想された。しかし、実際には、摂取後の血糖値の上昇は、浸透圧の高い一般的な澱粉分解物を摂取したときに比べて緩やかであることに加え、血糖値が長時間にわたって低下しなかった。特に、摂取後90分では、t検定において有意な差が認められた。
一方、血中インスリン濃度は、実施例3の澱粉分解物が血糖値で低値を示した0〜45分において、一般的な澱粉分解物摂取時に比べて低値を示し、血糖値が高値を示した45〜120分においては、一般的な澱粉分解物摂取時と同等の値を示した。すなわち、血糖値を下げるためのインスリンの過剰分泌は確認されなかった。
以上の結果から、本発明の澱粉分解物は、インスリンを過剰分泌することなく長時間血中グルコースとして栄養源を供給できる長時間持続型のエネルギー補給用として有用であると考えられ、特に、栄養補助食品、ダイエット食品、スポーツドリンクなどのエネルギー持続型食品に有利に利用できる。

Claims (6)

  1. 下記(A)から(C)の数値を満たす澱粉分解物:
    (A)DE値が1.2〜1.7、
    (B)30℃における30質量%水溶液の粘度が250〜700mPa・s、及び
    (C)30質量%水溶液の冷解凍1回実施後の濁度が1.0以下。
  2. さらに下記(D)の数値を満たす、請求項1記載の澱粉分解物:
    (D)分子量5,000以上の糖組成物含有量が固形分当たり90質量%以上。
  3. 糯種タピオカ澱粉を原料澱粉とする、請求項1又は2に記載の澱粉分解物。
  4. エネルギー補給用又はエネルギー持続用である、請求項1〜3のいずれかに記載の澱粉分解物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の澱粉分解物を含む飲食品。
  6. 原料澱粉を液化酵素で加水分解してその分解処理物のDE値が0.8〜1.7にあるときに加水分解反応を停止させ、さらに液化酵素で加水分解してその分解処理物のDE値が1.5〜1.8にあるときに加水分解反応を停止させる、請求項1〜4のいずれかに記載の澱粉分解物の製造方法。
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