JP2021079633A - 積層体及びプレス成形法 - Google Patents

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Abstract

【課題】積層体同士が付着しにくく、取扱い性に優れた積層体を提供する。【解決手段】23℃における貯蔵弾性率が1000MPa以上である樹脂(a)を主成分とする層(A)と貯蔵弾性率が100MPa以下である樹脂(b)を主成分とする層(B)とを含む積層体であって、該層(A)の少なくとも一方の面の表面の粗さが以下の(i)、(ii)のいずれか又は両方の要件を満たすことを特徴とする積層体。(i)10点平均粗さ(Rz)が0.3μm以上である(ii)算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上である【選択図】なし

Description

本発明は、プリント配線板、電気・電子製品に組み込まれるIC、半導体、受動部品等のディスプレー・タッチパネル関連製品部材やLED照明製品部材等において、プレス成形に利用するための各種離型材、緩衝材(以下「離型材等」という)として好適に使用できる積層体に関する。
シリコーンゴムに代表されるシリコーン樹脂は、耐熱性や電気的性質に優れていることから、離型材等の用途に使用されている。
しかしながら、シリコーンゴム単体からなるシートをそのままプレス成形の離型材等として使用しようとすると、ゴム製品であるがために変形を生じ、組みつけ寸法精度が悪くなったり、しわが生じたりして、作業性に問題があった。
そこで、上記の問題点を解消できるシリコーンゴム複合体として、特許文献1では、結晶性ポリエステル樹脂を主体とするシートあるいはフィルムの少なくとも片面に、下塗り層と下塗り層に対して親和性が高く、かつシリコーン樹脂を含有する薄膜層を順に形成し、特定の硬度を有するシリコーンエラストマー樹脂からなるシリコーンゴム層を形成し、上記シートあるいはフィルムとシリコーンゴム層が一体化してなるシリコーンゴム複合体が提案されている。この複合体は、通常、重ねて段積み保管され、プレス成形等の使用の際に上から1枚ずつ取り出され、プレス成形用の金型に設置される。
特開平11−20082号公報
しかし、特許文献1のシリコーン複合体のように、弾性率の低い樹脂、すなわちゴム弾性を有する樹脂と弾性率の高い樹脂とを積層すると、条件によっては以下の問題が発生する場合あり、作業性が不十分であることが本発明者らの検討で明らかとなった。
・段積みされたシリコーン複合体使用の際に上から取り出そうとすると、段積みされた下の複合体がくっついてしまい一度に複数枚取り出されてしまう。
・静電吸着力により積層体同士が付着しはがれ難く、取扱いにくい。
・プレス成形後金型やプレス板を開いて製品を取り出す際に、シリコーン複合体が金型・プレス板側に付着したままとなる。
また上記の問題は、弾性率の高い樹脂と低い樹脂間の比誘電率差が大きいほど顕著であることも、本発明者等の検討で明らかとなった。
本発明者等は、上記した課題を解決すべく鋭意検討したところ、弾性率の異なる層を含む樹脂積層体において、弾性率の高い方の層の表面粗さを特定の範囲にすることにより、使用の際に複数枚取り出される問題や金型・プレス板への付着の問題が改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の[1]〜[14]を要旨とする。
[1] 23℃における貯蔵弾性率が1000MPa以上である樹脂(a)を主成分とする層(A)と23℃における貯蔵弾性率が100MPa以下である樹脂(b)を主成分とする層(B)とを含む積層体であって、該層(A)の少なくとも一方の面の表面の粗さが以下の(i)、(ii)のいずれか又は両方の要件を満たすことを特徴とする積層体。
(i)10点平均粗さ(Rz)が0.3μm以上である
(ii)算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上である
[2] 前記層(A)の少なくとも一方の面の表面の最大高さ粗さ(Ry)が0.3μm以上である、[1]に記載の積層体。
[3] 前記層(A)の少なくとも一方の面の表面の凹凸の平均間隔(Sm)が90μm以下である、[1]又は[2]に記載の積層体。
[4] 前記層(B)の少なくとも一方の面の表面の粗さが以下の(iii)、(iv)のいずれか又は両方の要件を満たす、[1]〜[3]のいずれかに記載の積層体。
(iii)10点平均粗さ(Rz)が0.3μm以上である
(iv)算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上である
[5] 前記層(B)の少なくとも一方の面の表面の最大高さ粗さ(Ry)が0.4μm以上である、[1]〜[4]のいずれかに記載の積層体。
[6] 前記層(B)の少なくとも一方の面の表面の凹凸の平均間隔(Sm)が70μm以下である、[1]〜[5]のいずれかに記載の積層体。
[7] 一方の積層体の前記層(A)側の面と他方の積層体の前記層(B)側の面との静止摩擦係数が2.1以下である、[1]〜[6]のいずれかに記載の積層体。
[8] 一方の積層体の前記層(A)側の面と他方の積層体の前記層(B)側の面との動摩擦係数が1.8以下である、[1]〜[7]のいずれかに記載の積層体。
[9] 前記層(A)と前記層(B)との比誘電率差が0.15以上である、[1]〜[8]のいずれかに記載の積層体。
[10] 前記樹脂(a)がポリエステル樹脂である、[1]〜[9]のいずれかに記載の積層体。
[11] 前記樹脂(b)がシリコーン樹脂である、[1]〜[10]のいずれかに記載の積層体。
[12] 前記樹脂(a)がポリエチレンテレフタレート樹脂である、[1]〜[11]のいずれかに記載の積層体。
プレス成形に用いる、[1]〜[12]のいずれかに記載の積層体。
[14] [1]〜[13]のいずれかに記載の積層体を用いたプレス成形法であって、前記層(B)側が成形体側となるように該積層体と該積層体の間に成形体を配置することを特徴とするプレス成形法。
本発明によれば、積層体同士が付着しにくく、取扱い性に優れた積層体を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本発明において「主成分」とは、対象の層中に最も多く含まれている成分をさし、好ましくは対象の層中の50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%であり、特に好ましくは90質量%以上である。
本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものとする。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特に断らない限り、「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特に断らない限り、「好ましくはYより小さい」の意を包含するものとする。
本発明における貯蔵弾性率とは、シート状の試験サンプルを用い、JIS K7244−4:1999に準じて、温度範囲−100〜250℃、昇温速度3℃/分、振動周波数1Hz、歪み0.1%、チャック間距離25mm、引張法の条件で測定した際の23℃における貯蔵弾性率をいう。
本発明における10点平均粗さ(Rz)、算術平均粗さ(Ra)、最大高さ粗さ(Ry)、凹凸の平均間隔(Sm)は、旧JIS B0601:1994に準拠し、接触式粗さ計で測定される値をいう。
本発明における静止摩擦係数及び動摩擦係数は、JIS K7125:1999を参照し、後述の実施例に記載の方法で測定される値をいう。
本発明における表面抵抗率とは、JIS K6911:2006(5.13)に準拠して測定される値をいう。
本発明における比誘電率とは、JIS C2138:2007に準じて、20℃、相対湿度65%、印加電圧1V、周波数1MHzの条件で測定される値をいう。
本発明の積層体は、23℃における貯蔵弾性率が1000MPa以上である樹脂(a)を主成分とする層(A)と23℃における貯蔵弾性率が100MPa以下である樹脂(b)を主成分とする層(B)とを含む積層体であって、該層(A)の少なくとも一方の面の表面の粗さが以下の(i)、(ii)のいずれか又は両方の要件を満たすものである。
(i)10点平均粗さ(Rz)が0.3μm以上である
(ii)算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上である
<層(A)>
層(A)は、23℃における貯蔵弾性率が1000MPa以上である樹脂(a)を主成分とする層である。樹脂(a)の貯蔵弾性率は、プレス成形時、離型材として使用する際の積層体変形抑制等のハンドリング性や寸法精度を向上させる観点から、好ましくは2000MPa以上であり、より好ましくは3000MPa、さらに好ましくは4000MPa以上である。また、好ましくは10000MPa以下であり、より好ましくは8500MPa以下、さらに好ましくは7000MPa以下、特に好ましくは6000MPa以下である。
23℃における貯蔵弾性率が1000MPa以上の樹脂(a)としては特に限定されるものではなく、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアリールエーテルケトン系樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられるが、耐熱性や機械的強度の観点からポリエステル樹脂であることが好ましく、結晶性のポリエステル樹脂であることがより好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等が挙げられる。中でも、耐熱性、フィルムのこし、平滑性、商業的入手のしやすさ等に加え、後述するシリコーン樹脂層、特にシリコーンエラストマー樹脂層との接着性の観点から、ポリエチレンテレフタレート樹脂であることが特に好ましい。
層(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、可塑剤、核剤、滑剤、顔料、染料等の添加剤や、23℃における貯蔵弾性率が1000MPa未満の樹脂を含んでいてもよい。また、機械的強度の観点から、層(A)は少なくとも一軸に、特に二軸延伸されていることが好ましい。
本発明においては、層(A)の少なくとも一方の面の表面の粗さは、以下の(i)、(ii)のいずれか又は両方の要件を満たす。
(i)10点平均粗さ(Rz)が0.3μm以上である
(ii)算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上である
なお、後述するが、層(A)に帯電防止層(A1)が付与されている場合は、該帯電防止層(A1)の表面の粗さをいう。
Rzは、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることがさらに好ましく、2.5μm以上であることが特に好ましく、3μm以上であることが最も好ましい。Rzが0.3μm以上であると、本発明の積層体同士を重ねた際、凸部が点接触することにより、積層体同士の付着が抑制され、剥離性に優れた積層体が得られやすい。また、積層体を1枚ずつ取り出す際等の取扱い性に優れる積層体となりやすい。また、プレス成形後金型・プレス板を開いて製品を取り出す際に、積層体が金型・プレス板側に付着する問題も改善され、生産性も向上する傾向となる。さらに、成形体やプレス板・金型への接触状態を良好とし、プレス成形品上での位置合わせがしやすくなる利点もある。
また、Rzは10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましく、6μm以下であることがさらに好ましく、5.5μm以下であることが特に好ましい。Rzが10μm以下であると、成形体やプレス板・金型に配置する際のハンドリング性が良好となりやすく、また、プレス成形体の寸法安定性が良好となる傾向にあり好ましい。
上記と同様の理由で、層(A)の少なくとも一方の面の表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.1μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがより好ましく、0.4μm以上であることがさらに好ましく、0.5μm以上であることが特に好ましく、0.6μm以上であることが最も好ましい。また、Raは5μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらに好ましく、2μm以下であることが特に好ましく、1.5μm以下であることが最も好ましい。
さらに、上記と同様の理由で、層(A)の少なくとも一方の面の表面の最大高さ粗さ(Ry)、凹凸の平均間隔(Sm)は、以下の範囲であることが好ましい。
Ryは、0.3μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることがさらに好ましく、3μm以上であることが特に好ましく、4μm以上であることが最も好ましい。また、Ryは10μm以下であることが好ましく、9μm以下であることがより好ましく、8μm以下であることがさらに好ましく、7μm以下であることが特に好ましく、6.5μm以下であることが最も好ましい。
Smは、90μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、70μm以下であることがさらに好ましく、65μm以下であることが特に好ましく、60μm以下であることが最も好ましい。また、Smは1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。
上記のような表面粗さを有する層(A)を得る方法としては、例えば、サンドブラスト処理、ショットブラスト処理、エッチング処理、彫刻処理、エンボスロール転写、エンボスベルト転写、エンボスフィルム転写、表面結晶化等種々の方法を用いることができる。特に、有機溶剤を用いず環境にやさしい加工方法であり、また、ロールフィルムを送り出しながら連続的に均一に表面凹凸を形成可能である等の点から、サンドブラスト処理による方法が好ましい。
サンドブラスト処理においては、サンドブラスト粒子の粒径やブラスト圧力等を調整することによって、所望の表面粗さを有する層(A)を得ることができる。
層(A)の厚みは、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。層(A)の厚みが10μm以上であると、層(A)の表面に後述の層(B)等の他の層を積層させる際、しわ等が発生しにくくなり好ましい。一方、厚みは350μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、250μm以下であることがさらに好ましい。層(A)の厚みが350μm以下であると、得られる積層体が硬すぎることなく、後述する下塗り層等を塗工しやすくなるため好ましい。
本発明においては、層(A)の層(B)が積層されていない側の表面抵抗率が低く調整されていることも好ましく、具体的には、表面抵抗率が1×1013Ω未満であることが好ましい。表面抵抗率を1×1013Ω未満とすることにより、本発明の積層体同士を重ねた際の付着が抑制され剥離性に優れた積層体が得られる傾向となる。また、積層体を1枚ずつ取り出す際等の取扱い性にも優れる積層体となりやすい。また、プレス成形後金型・プレス板を開いて製品を取り出す際に、積層体が金型・プレス板側に付着する問題も発生しにくく、生産性も向上する傾向となる。さらに、成形体やプレス板・金型への接触状態を良好とし位置合わせがしやすくなる利点もある。
表面抵抗率はより好ましくは1×1012Ω以下、さらに好ましくは1×1011Ω以下、特に好ましくは5×1010Ω以下、とりわけ好ましくは1×10Ω以下、最も好ましくは1×10Ω以下である。また、表面抵抗率は、本発明の積層体を用いた際の帯電を抑制する観点から1×10Ω以上であることが好ましく、1×10Ω以上であることがより好ましく、1×10Ω以上であることがさらに好ましい。
上記のような表面抵抗率を有する層(A)を得る方法としては、例えば、以下の(1)〜(4)の方法を採用することが好ましい。
(1)帯電防止層(A1)を、層(A)上に形成する。
(2)界面活性剤等の帯電防止剤を、層(A)に配合する。
(3)グラファイト、カーボンブラック、炭素繊維、金属酸化物、金属粉末、金属繊維等の導電性フィラーを、層(A)に配合する。
(4)導電性ポリマーを、層(A)に配合する。
上記(1)〜(4)の方法の中でも、表面抵抗率が安定的に得られる点、より低い表面抵抗率を達成しやすい点、表面抵抗率の経時変化が起こりにくい点、帯電防止剤のブリードアウトの問題が起こりにくい点から、(1)の方法を採用することが好ましい。以下、(1)について説明する。
<帯電防止層(A1)>
層(A)上に帯電防止層(A1)を形成する方法としては、従来公知の塗工方式を用いることができるが、好ましくは層(A)をフィルムやシート状に形成した後に帯電防止の塗布層を設ける所謂オフラインコーティングと、層(A)をフィルムやシート状に製膜中に塗布層を設ける所謂インラインコーティングが挙げられる。好ましくはインラインコーティング、特に塗布後に延伸を行う塗布延伸法により設けられることが好ましい。
インラインコーティングは、フィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、樹脂を溶融押出ししてから延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻上前のフィルムの何れかにコーティングする。
以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と帯電防止層塗設を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、コーティング後に延伸を行うために薄膜で均一なコーティングとなり、帯電防止層(A1)の特性が安定しやすい。また、延伸される前のフィルム上を、まず帯電防止層(A1)を構成する樹脂層で被覆し、その後フィルムと帯電防止層を同時に延伸することで、基材フィルムと帯電防止層(A1)が強固に密着しやすいという利点もある。
フィルムの二軸延伸は、テンタークリップ等によりフィルム端部を把持しつつ横方向に延伸することで、フィルムが長手/横手方向に拘束されており、熱固定においてしわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。それゆえ、コーティング後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、帯電防止層の造膜性が向上し、また帯電防止層(A1)とフィルムが強固に密着しやすい傾向となる。
塗布延伸法の場合、用いる塗布液は、取扱い上、作業環境上、安全上の理由から水溶液又は水分散液であることが好ましく、水を主たる媒体とすることが好ましい。なお、本発明の要旨を越えない範囲であれば、有機溶剤を含有していてもよい。
帯電防止層(A1)は、層(A)のどちらかの面にあればよいが、両面に有していてもよい。特に両面に有している場合は、層(B)との接着性に優れるためより好ましい。
帯電防止層(A1)は特に限定されるものではなく、導電性高分子、イオン性液体、イオン性界面活性剤、四級アンモニウム塩等が挙げられる。中でも好ましくは、導電高分子並びにイオン性液体及びイオン性界面活性剤等のイオン性帯電防止剤である。
導電性高分子としては、チオフェンもしくはチオフェン誘導体からなる化合物に他の陰イオン化合物によりドーピングされた重合体又はチオフェンもしくはチオフェン誘導体からなる化合物中に陰イオン基を持ち自己ドープされた重合体(A1−1)を含有するものが好ましい。これらの物質は、優れた導電性を示し好適である。例えば、下記一般式(1)又は(2)の化合物を、ポリ陰イオンの存在下で重合して得られるものが挙げられる。
Figure 2021079633
(一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立して、水素又は炭素原子数が1〜20の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基を表す。)
Figure 2021079633
(一般式(2)において、nは1〜4の整数を表す。)
重合時に使用するポリ陰イオンの供給源としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリマレイン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸等が挙げられる。かかる重合体の製造方法としては、例えば、特開平7−90060号公報に示されるような方法が採用できる。
本発明において、好ましい様態として、上記一般式(2)の化合物においてnが2であり、ポリ陰イオンの供給源としてポリスチレンスルホン酸を用いたものが挙げられる。
また、これらのポリ陰イオンの一部又は全てが中和されていてもよい。中和に用いる塩基としてはアンモニア、有機アミン類、アルカリ金属水酸化物が好ましい。
チオフェン又はチオフェン誘導体からなる化合物中に陰イオン基を持ち自己ドープされた重合体としては、上記一般式(1)又は(2)の化合物に陰イオン基がドープされたものが挙げられる。
また、帯電防止層(A1)は、下記(A1−2)及び/又は(A1−3)を含有するものであることも好ましい。
(A1−2):グリセリン、ポリグリセリン、グリセリン又はポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物及びポリアルキレンオキサイドの群から選ばれる1種以上の化合物
(A1−3):ポリウレタン樹脂
グリセリン、ポリグリセリン、グリセリン又はポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物及びポリアルキレンオキサイドの群から選ばれる化合物(A1−2)の中でも、ポリグリセリン、グリセリン又はポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物を含有することがより好ましい。
グリセリン、ポリグリセリンとは、下記一般式(3)で表される化合物である。
Figure 2021079633
一般式(3)のn=1の化合物がグリセリンであり、nが2以上の化合物がポリグリセリンである。本発明においては、nは2〜20であることが好ましく、2〜10であることがより好ましい。
グリセリン又はポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物とは、一般式(3)で表されるグリセリン又はポリグリセリンのヒドロキシル基にアルキレンオキサイドを付加重合した構造を有するものである。
ここで、グリセリン又はポリグリセリン骨格のヒドロキシル基ごとに付加されるアルキレンオキサイドの構造は異なっていてもよい。また、少なくとも分子中一つのヒドロキシル基に付加されていればよく、全てのヒドロキシル基にアルキレンオキサイド又はその誘導体が付加されていなくてもよい。
グリセリン又はポリグリセリンに付加されるアルキレンオキサイドとして好ましいものは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドである。アルキレンオキサイドのアルキレン鎖が長くなりすぎると、疎水性が強くなり、塗布液中での均一に分散しにくくなり、帯電防止層(A1)の帯電防止性や透明性が悪化する傾向がある。中でも好ましくはエチレンオキサイドである。また、その付加数は、最終的な付加物としての質量平均分子量で200〜2000になるものが好ましく、300〜800のものがさらに好ましい。
ポリアルキレンオキサイドとして好ましいものは、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドである。アルキレンオキサイドのアルキレン鎖が長くなりすぎると、疎水性が強くなり、塗布液中での均一に分散しにくくなり、帯電防止層(A1)の帯電防止性や透明性が悪化する傾向がある。より好ましくはポリエチレンオキサイドである。質量平均分子量としては、200〜2000のものが好ましい。
ポリウレタン樹脂(A1−3)としては特に限定はなく、ウレタン結合を分子内に有するものであればよく、水分散性又は水溶性のものが好ましい。
水分散性又は水溶性を付与させるためには、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホニル基、リン酸基、エーテル基等の親水性基をポリウレタン樹脂に導入することが好ましい。これら親水性基の中でも、塗膜物性、密着性の点からカルボキシル基、スルホン酸基が好ましい。
ポリウレタン樹脂(A1−3)は、水酸基とイソシアネートとの反応により得られるものが好ましい。原料として用いられる水酸基としては、ポリオールが好適に用いられ、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオールが挙げられ、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが好ましく、中でもポリエステルポリオールがより好ましく、芳香環を有するポリエステルポリオールがさらに好ましい。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、多価カルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)又はこれらの酸無水物と多価アルコールとの反応から得られるものが挙げられる。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、多価アルコール類とジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等とから、脱アルコール反応によって得られるポリカーボネートジオール、例えば、ポリ(1,6−ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
ポリウレタン樹脂(A1−3)を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。
また、ポリウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用してもよく、鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基又はアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。
アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
また、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等を用いて、ウレタン骨格にカルボキシル基を導入し、後に塩基性化合物で中和してウレタンを親水化する手法も好ましく用いられる。
帯電防止層(A1)は、塗布性を改良するために界面活性剤(A1−4)を含有していてもよい。界面活性剤(A1−4)としては、特にその構造中に(ポリ)アルキレンオキサイドや(ポリ)グリセリン、これらの誘導体を含むものを使用すると、得られる帯電防止層(A1)の帯電防止性を阻害せずより好ましい。
本発明における帯電防止層(A1)を形成するための塗布液には、必要に応じて、架橋反応性化合物を含んでいてもよい。架橋反応性化合物は主に、他の樹脂や化合物に含まれる官能基との架橋反応や自己架橋によって、帯電防止層の凝集性、表面硬度、耐擦傷性、耐溶剤性、耐水性を改良することができる。
架橋反応性化合物としては、メラミン系、ベンゾグアナミン系、尿素系等のアミノ樹脂や、イソシアネート系、オキサゾリン系、エポキシ系、グリオキサール系等が好適に用いられる。他のポリマー骨格に反応性基を持たせた、ポリマー型架橋反応性化合物も含まれる。
さらに必要に応じて、ポリウレタン樹脂(A1−3)以外のバインダー樹脂を併用することもできる。バインダー樹脂としては、例えば、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂等が挙げられる。これらは、それぞれの骨格構造が共重合等により実質的に複合構造を有していてもよい。複合構造を持つバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂グラフトポリエステル、ビニル樹脂グラフトポリエステル等が挙げられる。これらの樹脂を含有することで、得られる帯電防止層の強度や層(A)への密着性が向上しやすい傾向となる。
帯電防止層(A1)は、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、離型剤、有機粒子、無機粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤を含有していてもよい。また、これら添加剤としては、その構造中に、(ポリ)アルキレンオキサイドや(ポリ)グリセリン、これらの誘導体を含むものを使用すると、得られる帯電防止層(A1)の帯電防止性を阻害せずより好ましい。
中でも、帯電防止層(A1)は、ブロッキング、滑り性改良を目的として有機粒子、無機粒子等の粒子を含有することが好ましい。粒子の平均粒径(D50)は、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.2μm以下である。また、滑り性をより効果的に向上させる観点から、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上である。粒子としては、シリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、有機粒子等が挙げられ、シリカが好ましい。
帯電防止層(A1)中の重合体(A1−1)の含有量は、0.5mg/m以上であることが好ましく、1mg/m以上であることがより好ましく、2mg/m以上であることがさらに好ましい。重合体(A1−1)の含有量を0.5mg/m以上とすることにより、帯電防止性が十分となり、積層体同士の付着が抑制されやすい。また、15mg/m以下であることが好ましく、9mg/m以下であることがより好ましく、5mg/m以下であることがさらに好ましい。重合体(A1−1)の含有量を15mg/m以下とすることにより、低コストで着色しにくい傾向となる。
帯電防止層(A1)を形成する塗布液中の不揮発成分に対する重合体(A1−1)の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましく、4質量%以上であることが特に好ましい。重合体(A1−1)の含有量を1質量%以上とすることにより、帯電防止層(A1)の強度、層(A)との密着性、帯電防止性能が十分となる傾向となる。一方、重合体(A1−1)の含有量は80質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。含有量を80質量%以下とすることにより、得られる積層体の外観の悪化や積層体製造時のブロッキングが起こりにくく好ましい。
化合物(A1−2)を含む場合、塗布液中の不揮発成分に対する化合物(A1−2)含有量は、帯電防止性能と外観の点から、1質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。また、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましく、55質量%以下であることが特に好ましい。
ポリウレタン樹脂(A1−3)を含む場合、塗布液中の不揮発成分に対するポリウレタン樹脂(A1−3)の含有量は、帯電防止性能、強度、耐水性の点から、2質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、35質量%以上であることが特に好ましい。また、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましく、60質量%以下であることが特に好ましい。
界面活性剤(A1−4)を含む場合、塗布液中の不揮発成分に対する界面活性剤(A1−4)含有量は、帯電防止性能、塗工性の点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、1質量%以上であることが特に好ましい。また、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
なお、上記した塗布液中の不揮発成分に対する(A1−1)〜(A1−4)の含有割合は、帯電防止層(A1)中の含有割合とも同義として扱うことができる。
イオン性帯電防止剤としても、特に限定はなく、従来公知のイオン性液体、イオン性界面活性剤が挙げられる。
イオン性液体は、液体で存在する塩をいい、アニオンとカチオンからなる。
イオン性液体のアニオンとしては、例えば、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、クロライド、テトラクロロアルミネート、ブロマイド、ヨーダイド等のハロゲン、トリフルオロメタンスルホンイミド等のイミド、シアナミド、トリフルオロメチルスルホニルアミド等のアミド、ブチルサルフォネート、メチルサルフェート、エチルサルフェート、ハイドロゲンサルフェート、オクチルサルフェート、アルキルサルフェート等のサルフェート、ブチルホスフェート等のホスフェート、ナイトレート、チオシアネート、アセテート、アミノアセテート、ラクテート等が挙げられる。中でも、帯電防止性に優れることから、イミド、アミド、サルフェートが好ましく、イミド、サルフェートがより好ましい。
イオン性液体のカチオンとしては、例えば、アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ホスホニウム塩、ピリジニウム塩、ピロリジニウム塩、ピロリニウム塩、トリアゾニウム塩等が挙げられ、中でも、帯電防止性に優れることから、アンモニウム塩、イミダゾリウム塩が好ましく、アンモニウム塩がより好ましい。
アンモニウム塩としては、例えば、ブチルトリメチルアンモニウム、エチルジエチルプロピルアンモニウム、2−ヒドロキシエチル−トリエチルアンモニウム、メチル−トリオクチルアンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラヘプチルアンモニウム、トリブチルメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、トリス(2−ヒドロキシ)メチルアンモニウム等が挙げられる。
イミダゾリウム塩としては、例えば、1−アリル−3−メチルイミダゾリウム、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウム、1、3−ビス(シアノメチル)イミダゾリウム、1、3−ビス(シアノプロピル)イミダゾリウム、1−ブチル−2、3−ジメチルイミダゾリウム、4−(3−ブチル)−1−イミダゾリウム、1−(3−シアノプロピル)−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム、1、3−ジエトキシイミダゾリウム、1、3−ジメトキシ−2−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム等が挙げられる。
ホスホニウム塩としては、例えば、テトラブチルホスホニウム、トリブチルメチルホスホニウム、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム等が挙げられる。
ピリジウム塩としては、例えば、1−ブチル−3−メチルピリジウム、1−ブチル−4−メチルピリジウム、1−ブチルピリジウム、1−エチルピリジウム、1−(3−シアノプロピル)ピリジウム、3−メチル−4−プロピルピリジウム等が挙げられる。
ピロリジニウム塩としては、例えば、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、2−メチルピロリジニウム、3−フェニルピロリジニウム等が挙げられる。
ピロリニウム塩としては、例えば、2−アセチルピロリニウム、3−アセチルピロリニウム、1−(2−ニトロフェニル)ピロリニウム等が挙げられる。
イオン性界面活性剤としては、例えば、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
上述したようなイオン性帯電防止剤としては、スルホン酸塩基を含有するものも好ましい。スルホン酸塩基含有帯電防止剤としては、公知の低分子型スルホン酸塩基含有化合物のほかに、高分子型帯電防止剤であるポリスチレンスルホン酸塩のような分子内にスルホン酸塩基成分を含有する樹脂を用いることができる。これらの中でも、高分子型帯電防止剤であるポリスチレンスルホン酸塩を主成分とする高分子化合物が、親水性のスルホン酸成分が多い点から好ましい。
分子内にスルホン酸塩基成分を含有する樹脂としては、ポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等のホモポリマー、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル等のアクリル系単量体とスチレンスルホン酸単量体との共重合物、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸の各種金属/アミン塩と不飽和単量体の共重合体等が挙げられる。スルホン酸塩は金属塩とアミン塩の混合物であってもよい。
帯電防止層(A1)の厚みは、最終的に得られる積層体上の帯電防止層の厚みとして、0.003〜1μmであることが好ましく、0.005〜0.5μmであることがより好ましく、0.01〜0.1μmであることがさらに好ましい。厚みを0.003μm以上とすることにより、良好な帯電防止性能が得られやすく、1μm以下とすることにより、外観の悪化や積層体製造時のブロッキングの問題が発生しにくく好ましい。
層(A)に帯電防止層(A1)を設ける場合、帯電防止層(A1)を設ける工程、サンドブラスト処理等の表面粗さを付与する工程、どちらを先に行ってもよいが、均一な粗さと帯電防止層(A1)確保の点から、先に表面粗さを付与する工程を行った後、次に帯電防止層(A1)を設ける工程を行うことが好ましい。
<層(B)>
層(B)は、23℃における貯蔵弾性率が100MPa以下である樹脂(b)を主成分とする層である。樹脂(b)の貯蔵弾性率は、プレス成形時の成形体への追従性、密着性や層(B)の表面タック性の観点から、好ましくは70MPa以下であり、より好ましくは50MPa以下であり、さらに好ましくは30MPa以下であり、特に好ましくは10MPa以下である。また、好ましくは0.1MPa以上であり、より好ましくは0.5MPa以上であり、さらに好ましくは1MPa以上である。
23℃における貯蔵弾性率が100MPa以下の樹脂(b)としては特に限定されるものではなく、例えば、オレフィン系エラストマー樹脂、スチレン系エラストマー樹脂、ポリエステル系エラストマー樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素系エラストマー樹脂等が挙げられるが、耐熱性、絶縁性等の電気的特性、離型性等に優れる点から、シリコーン樹脂が好ましい。シリコーン樹脂としては特に限定はなく従来公知のものが使用できるが、特に下記一般式(4)で示されるシロキサン骨格を有するシリコーンエラストマー樹脂が好ましく、これを硬化して層(B)とすることがより好ましい。下記一般式(4)において、式中のRの全てがメチル基であるポリジメチルシロキサンの他に、メチル基の一部が他のアルキル基、ビニル基、フェニル基、フルオロアルキル基等の1種又は2種以上で置換された各種ポリジメチルシロキサンを適宜選択することもできる。
Figure 2021079633
また、シリコーン樹脂は、ビニル基を含有するポリジメチルシロキサンを主成分とするシリコーン樹脂、特にシリコーンエラストマー樹脂であることも、圧縮永久歪みの調整の観点から好ましい。ビニル基を含有する場合は、ポリジメチルシロキサン全量に対するビニル基の含有量は、0.05モル%以上であることが好ましく、0.1モル%以上であることがより好ましく、0.5モル%以上であることがさらに好ましく、1モル%以上であることが特に好ましい。ビニル基の含有量が0.05モル%であれば、シリコーンエラストマー樹脂の架橋密度を調整しやすくなり、所望の圧縮永久歪みを有するシリコーンエラストマー樹脂を得ることができる。一方、ビニル基の含有量は5モル%以下であることが好ましく、4モル%以下であることがより好ましく、3モル%以下であることがさらに好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。5モル%以下であれば、シリコーンエラストマー樹脂が過度に硬化することがないため好ましい。
シリコーンエラストマー樹脂を硬化する手段としては、硬化触媒を添加する方法、高温加熱する方法、架橋剤を添加する方法、そして放射線照射による架橋方法等が挙げられる。なかでも、放射線により硬化させることが好ましい。放射線による硬化は、触媒や架橋剤の残渣等による耐熱、耐光信頼性を損なう懸念がない。また、硬化時に熱が加わらないため、熱劣化の懸念もなく好ましい。
放射線としては、例えば電子線、X線、γ線等が挙げられる。これらの放射線は工業的にも広く利用されているものであり、容易に利用可能であり、エネルギー効率の良い方法である。これらの中でも、吸収損失がほとんどなく、透過性が高いという観点から、γ線を利用することが好ましい。
γ線の照射線量としては、樹脂種や架橋基の量、そして線源の種類により、適宜選択して決定することができる。例えば、γ線の照射線量は、20kGy以上であることが好ましく、50kGy以上であることがより好ましく、60kGyであることがさらに好ましい。照射線量が20kGy以上であれば、シリコーンエラストマー樹脂を十分に硬化させることができ、結果として所望の圧縮永久歪を得ることができる。一方、γ線の照射線量は150kGy以下であることが好ましく、120kGy以下であることがより好ましく、100kGy以下であることがさらに好ましい。照射線量が150kGy以下でれば、分解反応による低分子量成分の増加を抑制しやすい傾向となる。
このように硬化させて得られる層(B)の硬さは、JIS K6253−3:2012に基づいて測定されるタイプAデュロメータ硬さで3以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以上であることがさらに好ましい。一方、90以下であることが好ましく、80以下であることがより好ましく、70以下であることがさらに好ましい。硬さが3以上であることにより、層(B)の表面タック性が抑制され、得られる積層体の取扱い性が向上しやすい傾向となる。一方、硬さが90以下であれば、プレス成形時等の成形体への追従性、密着性が向上しやすい。
なお、層(B)の硬さを直接測定できない場合は、層(B)に用いる原料樹脂を同様の硬化条件で硬化させたものに対して、タイプAデュロメータ硬さを測定すればよいものとする。
層(B)のタイプAデュロメータ硬さを調整する方法としては、例えば、前記した放射線の照射量を調整する方法、シリコーンエラストマー樹脂に補強材として配合するシリカ等のフィラーの充填量を調整する方法、原料のシリコーンエラストマー樹脂の種類を適宜選択する方法、具体的には、フェニル基を有する樹脂を採用しフェニル基の含有量を調整する方法等が好ましく挙げられるが、放射線照射量を調整する方法が簡便でより好ましい。
さらに、好ましく用いられる上記シリコーンエラストマー樹脂は、フュームドシリカ、沈殿シリカ、ケイソウ土、石英粉等の補強性充填剤や各種加工助剤、耐熱性向上剤等の他、エラストマーとしての機能性を持たせる各種添加剤を含有していてもよい。この機能性添加剤としては、難燃性付与剤、放熱性フィラー、導電性フィラー等が挙げられる。
このようなシリコーンエラストマー樹脂として、市販品を使用することもできる。市販品としては、信越化学工業社製ミラブル型シリコーンコンパウンドやモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製ミラブル型シリコーンゴムを使用することができる。
層(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、可塑剤、核剤、滑剤、顔料、染料等の添加剤や、23℃における貯蔵弾性率が100MPa超の樹脂を含んでいてもよい。
層(B)の少なくとも一方の面の表面の粗さは、以下の(iii)、(iv)のいずれか又は両方の要件を満たすことが好ましい。
(iii)10点平均粗さ(Rz)が0.3μm以上である
(iv)算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上である
Rzは、0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがさらに好ましく、2μm以上であることが特に好ましく、3μm以上であることが最も好ましい。Rzが0.3μm以上であると、本発明の積層体同士を重ねた際、凸部が点接触することにより、積層体同士の付着が抑制されやすく、取扱い性に優れる傾向となるため好ましい。また、成形体やプレス板・金型への接触状態を良好とし位置合わせがしやすくなるとともに、成形体の生産性や寸法安定性が向上しやすい傾向となり好ましい。特に、プレス成形する際に、積層体と成形体との滑り性が十分に確保され位置合わせがしやすくなる点が好ましい。また、Rzは10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましく、7μm以下であることがさらに好ましく、6μm以下であることが特に好ましい。Rzが10μm以下であると、成形体やプレス板・金型に配置する際のハンドリング性が良好であり、プレス成形体の寸法安定性が良好となる傾向にあり好ましい。
同様の理由で、層(B)の少なくとも一方の面の算術平均粗さ(Ra)、最大高さ粗さ(Ry)、凹凸の平均間隔(Sm)は、以下の範囲であることが好ましい。
Raは、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、0.3μm以上であることがさらに好ましく、0.4μm以上であることが特に好ましく、0.5μm以上であることが最も好ましい。また、Raは5μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらに好ましく、2μm以下であることが特に好ましく、1.5μm以下であることが最も好ましい。
Ryは、0.4μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることがさらに好ましく、3μm以上であることが特に好ましく、3.5μm以上であることが最も好ましい。また、Ryは10μm以下であることが好ましく、9μm以下であることがより好ましく、8μm以下であることがさらに好ましく、7μm以下であることが特に好ましい。
Smは、70μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましく、55μm以下であることがさらに好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。また、Smは1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。
上記のような表面粗さを有する層(B)を得る方法としては、例えば、サンドブラスト処理、ショットブラスト処理、エッチング処理、彫刻処理、エンボスロール転写、エンボスベルト転写、エンボスフィルム転写、表面結晶化等種々の方法を用いることができる。特に、積層体を外力や汚染から保護し、搬送、巻き取り、貯蔵さらには積層体使用時のハンドリング性を改良できる点から、カバーシートを用いたエンボスフィルム転写による方法が好ましい。
カバーシートは、エンボスフィルムであることが好ましく、層(B)にカバーシートを転写させることによって、所望の表面粗さの層(B)を得ることができる。
好ましいカバーシートとしては、それ自体が非粘着性(シートどうしが粘着しない)で強度が高いものが好ましく用いられる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチックフィルム、あるいはアルミ箔、銅箔等の金属箔が好適である。剥離性を向上させる目的で、表面にフッ素等の離型層を設けることも可能である。
さらに、層(B)に所望の表面粗さを転写するための凹凸を有していることが重要である。カバーシートの表面凹凸を形成させる方法としては、従来知られているブラスト法やケミカル法を用いることができる。
カバーシートの厚さは、その材質、使用目的等に応じて適宜決定され、例えば、PETフィルム等のプラスチックフィルムであれば5〜500μm程度、アルミ箔、銅箔等の金属箔であれば5〜100μm程度であることが好ましい。
なお、樹脂(b)として例えばシリコーンエラストマー樹脂を使用し、該樹脂を架橋して層(B)を形成する場合、例えば、層(A)/架橋前のシリコーンエラストマー樹脂層(B)/カバーシート順に積層し、この積層に放射線を照射して架橋硬化させることが、架橋前の層(B)の形状を固定・保持する点、生産性の点から好ましい。
層(B)の厚みは、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましく、60μm以上であることが特に好ましく、70μm以上であることが最も好ましい。層(B)の厚みが10μm以上であると、積層体としてのゴム弾性の性質を得やすくなり、プレス成形等の際のクッション性や追従性が良好となりやすい。一方、厚みは、用途、コスト及び成形品の厚み精度の点から好ましくは1000μm以下であり、より好ましくは750μm以下であり、さらに好ましくは500μm以下、特に好ましくは300μm以下である。なお、本発明において厚みとは、任意の10点の厚みを測定したときの平均厚みをいう。
本発明では、23℃における貯蔵弾性率が1000MPa以上である樹脂(a)がポリエステル樹脂であり、23℃における貯蔵弾性率が100MPa以下である樹脂(b)がシリコーン樹脂、特にシリコーンエラストマー樹脂である場合、層(A)と層(B)との間に、層(A)側から下塗り層及び/又は薄膜層をこの順に有することが、両者の接着性・密着性を向上させる点から好ましい。層(A)が帯電防止層(A1)を有する場合は、帯電防止層(A1)/層(A)/下塗り層及び/又は薄膜層/層(B)の順に積層されることが好ましい。また驚くべきことに、層(A)と層(B)との間に帯電防止層(A1)が存在すると、具体的には、層(A)/帯電防止層(A1)/下塗り層及び/又は薄膜層/層(B)、帯電防止層(A1)/層(A)/帯電防止層(A1)/下塗り層及び/又は薄膜層/層(B)の構成とすることで、層(A)と層(B)との接着性・密着性がより良好となることが明らかとなった。
<下塗り層>
下塗り層は、非晶性ポリマーを主成分として含むことが好ましい。非晶性ポリマーとしては、層(A)に均一に塗布できるものであれば特に限定されるものではなく、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂等実質的に結晶性のないポリマーから適宜選択すればよい。
具体例としては、ポリエステル樹脂及び/又はポリエーテル樹脂をウレタン結合等で直鎖状に高分子量化したポリウレタン樹脂、アクリル酸及び/又はメタクリル酸エステルの共重合体からなるアクリル樹脂、酸成分あるいはグリコール成分が2種類以上の単量体よりなる共重合ポリエステル樹脂が挙げられる。これら非晶性樹脂は、薄膜に塗工されるので、通常有機溶剤で希釈した状態、あるいは水中に乳化又は可溶化させて適度な濃度に調整したものが使用される。
下塗り層は、耐熱性、耐溶剤性を向上させる目的で、架橋構造を持つものであってもよく、この場合、上記非晶性ポリマーは、主鎖あるいは側鎖にカルボキシル基、水酸基、アミノ基等架橋性官能基を持つものであり、架橋剤としては、ポリイソシアネート、メラミン、多官能エポキシ樹脂、金属化合物等から適時選択される。また、塗工液には、上記架橋剤のほか、界面活性剤等からなるレベリング剤、シリカ等ブロッキング防止剤、増粘剤等が添加されていてもよい。
下塗り層の乾燥後の厚みは、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることがさらに好ましい。下塗り層の厚みが0.01μm以上であれば、塗布厚みの調整が容易であり、また、後述するシリコーン樹脂を含有する薄膜層との接着性も良好となるため好ましい。また、乾燥後の厚みは5μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらに好ましい。乾燥後の厚みが5μm以下であれば、下塗り層の塗工がより容易になり好ましい。
また、塗布方法としては、使用する塗工液に応じて公知の方法を適用することができる。塗工液のレベリング性や密着性を上げる目的で、層(A)の塗工面にあらかじめコロナ処理等の表面処理を施すこともできる。
<薄膜層>
薄膜層は、シリコーン樹脂を主成分として含有することが好ましい。シリコーン樹脂としては、塗布後、加熱又はUV照射等で架橋被膜を形成するものや、層(B)がシリコーンエラストマー樹脂である場合は、層(B)架橋時に同時に架橋被膜を形成するもの等が挙げられる。
上記の薄膜層に使用可能なシリコーン樹脂の例として、付加型シリコーン樹脂、縮合型シリコーン樹脂、UV硬化型シリコーン樹脂等が挙げられる。付加型のシリコーン樹脂としては、ビニル基を含有するポリジメチルシロキサンをベースポリマーとし、架橋剤としてポリメチルハイドロジェンシロキサンを配合し、白金触媒の存在下反応硬化させて得られるものが挙げられ、縮合型シリコーン樹脂としては、末端にシラノール基を含有するポリジメチルシロキサンをベースポリマーとし、架橋剤としてポリメチルハイドロジェンシロキサンを配合し、有機スズ触媒存在下で加熱硬化して得られるものが挙げられる。
UV硬化型シリコーン樹脂としては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を含有するポリジメチルシロキサンをベースポリマーとするもの、メルカプト基とビニル基を含有するポリジメチルシロキサンをベースポリマーとするもの、上記の付加型シリコーン樹脂配合物、あるいはカチオン硬化機構で硬化するエポキシ基を含有するポリジメチルシロキサンをベースポリマーとするもの等に光重合開始剤を配合し、紫外線を照射することによって硬化させるものが挙げられる。
上述のシリコーン樹脂配合物に溶剤を適時添加することにより塗工液を調整し、ポリエステル樹脂層(A)上に塗工することにより薄膜層を形成する。
該塗工液には、前記下塗り層との親和性を上げる目的で、シランカップリング剤等の添加剤が含まれることが好ましい。この目的を満たすシランカップリング剤は、一般式YRSiXで表される化合物で、Yはビニル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基等の有機官能基、Rはメチレン、エチレン、プロピレン等アルキレン基、Xはメトキシ基、エトキシ基等加水分解性官能基あるいはアルキル基である。具体的化合物として、例えばビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γーグリシジルプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
薄膜層の厚みは、溶剤乾燥後で0.01μm以上であることが好ましく、0.03μm以上であることがより好ましく、0.05μm以上であることがさらに好ましい。塗布厚みが0.01μm以上であれば、均一な厚みの硬化被膜が得られ、かつ、層(B)との接着力も十分に得られやすい。また、前記組成のシリコーン樹脂は一般に膜強度がそれほど強くないため、積層体の剥離強度を評価する際樹脂層(B)で凝集破壊が起こる傾向にあるが、その厚みが1μm以下であれば、層(B)の凝集破壊を抑制し、積層体として十分な強度を得やすい傾向となる。かかる観点から、薄膜層の溶剤乾燥後の厚みは0.7μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましい。
薄膜層の塗工方法としては、前記下塗り層と同様に薄膜が精度よく得られる方法であれば特に限定されるものではなく、公知の塗工方法が適用できる。
<摩擦係数>
本発明の積層体は、一方の積層体の前記層(A)側の面と他方の積層体の前記層(B)側の面との静止摩擦係数が2.1以下であることが、積層体同士の剥離性、位置合わせ等のハンドリング性の点から好ましい。静止摩擦係数は1.8以下であることがより好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.3以下であることがさらに好ましく、1.2以下であることが特に好ましく、1以下であることが最も好ましい。静止摩擦係数は、積層体の運搬時や位置合わせ等のハンドリング性の点から0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、0.7以上であることがさらに好ましい。
また、本発明の積層体は、一方の積層体の前記層(A)側の面と他方の積層体の前記層(B)側の面との動摩擦係数が1.8以下であることが、積層体同士の剥離性、位置合わせ等のハンドリング性の点から好ましい。動摩擦係数は1.5以下であることがより好ましく、1.3以下であることがさらに好ましく、1.1以下であることが特に好ましく、0.9以下であることとりわけ好ましく、0.8以下であることが最も好ましい。動摩擦係数は、積層体の運搬時や位置合わせ等のハンドリング性の点から0.2以上であることが好ましく、0.4以上であることがより好ましく、0.6以上であることがさらに好ましい。
なお、前述したように、層(A)に帯電防止層(A1)が付与されている場合は、一方の積層体の該帯電防止層(A1)側の面と他方の積層体の前記層(B)側の面との摩擦係数をいう。
<比誘電率>
本発明においては、前記層(A)と前記層(B)との比誘電率差が0.15以上である場合に、本発明の効果が顕著となる。本発明の課題である積層体同士の付着、すなわち両者の剥離性の低下は、層(A)と層(B)との誘電率差が要因で発生する静電気が原因のひとつとして考えらえるためである。このような理由から、前記層(A)と前記層(B)との比誘電率差が0.2以上、さらには0.23以上、特に0.25以上である場合に、本発明の効果が顕著となる。
<積層構成>
本発明の積層体の層構成は特に限定されないが、本発明の効果が得られやすい点から、層(A)が最外層となる構成が好ましく、特に、層(A)と層(B)との両方が最外層となる構成であることが好ましい。例えば、層(A)/層(B)の2層構成や、層(A)と層(B)との間にその他の樹脂層を備えた構成が挙げられる。その他の樹脂層も特に限定されないが、例えば、上述した下塗り層や薄膜層、帯電防止層(A1)を適宜備えていることが好ましい。
また、前記したように、層(A)の層(B)が積層されている側と反対の面に帯電防止層(A1)が積層されていることも好ましく、この場合は、帯電防止層(A1)が最外層となる構成であることが好ましい。
<製造方法>
本発明の積層体の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、層(A)を作製し、これとは別に層(B)を作製し、これらを積層してもよく、層(A)を作製し、この層(A)上に層(B)を作製すると共に積層一体化してもよく、逆に層(B)を作製し、この層(B)上に層(A)を作製すると共に積層一体化してもよく、層(A)と層(B)を作製しつつこれらを積層一体化してもよい。
層(A)、層(B)を作製する工程としては、原料樹脂を溶融混練して、単軸又は二軸押出機により押出す方法が挙げられる。
層(A)と層(B)は、共押出、押出ラミネート、熱ラミネート、ドライラミネート等により積層することができる。具体的には、フィードブロック方式又はマルチマニホールド方式等によりブロック層(A)と層(B)を同時に混練・共押出して積層一体化してもよいし、層(A)と層(B)の作製をそれぞれ別々に行い層(A)と層(B)とを得た後、それらをラミネートして積層する方法であってもよい。
共押出の場合、層(A)と層(B)とを、複数台の押出機を用いてフィードブロックやマルチマニホールドダイを通じ樹脂を合流させ、積層体を作製することができる。
押出ラミネートの場合、樹脂(b)を単軸或いは二軸押出機を用いてTダイ、Iダイ等から押出を行った後、ロール法、テンター法、チューブラー法等を用いて層(B)となる単層体を得る。続いて、樹脂(a)を、単軸或いは二軸押出機を用いてTダイ、Iダイ等から押出す際、キャスティングと同時に前記層(A)をラミネートすることで本発明の積層体を得ることができる。
熱ラミネート、ドライラミネートの場合、樹脂(b)を、単軸又は二軸押出機を用いてTダイ、Iダイ等から押出し、層(B)となる単層体を得る。また、同様の方法を用いて樹脂(a)からなる層(A)を作製する。続いて、層(A)及び層(B)を、加熱下または層間に接着層等を配置することでラミネートを行い、本発明の積層体を得ることができる。
本発明において、23℃における貯蔵弾性率が1000MPa以上である樹脂(a)がポリエステル樹脂であり、23℃における貯蔵弾性率が100MPa以下である樹脂(b)がシリコーン樹脂、特にシリコーンエラストマー樹脂である場合、例えば、以下の様な方法を用いることができる。
具体的な製造方法としては、層(A)の少なくとも片面に、下塗り層、薄膜層、層(B)をこの順に設け、該層(B)をγ線照射により硬化させることが好ましい。
まず、層(A)の少なくとも片面に、下塗り層としての塗工液を塗布し、次いで乾燥、さらに必要に応じて熱架橋させることにより、下塗り層を形成させる。塗布方法としては、塗工液に適した公知の方法が適用でき、別工程で製膜されたプラスチックシート又はフィルムに塗布してもよいし、該プラスチックシート又はフィルムの未延伸シートに直接塗工液を塗布した後に延伸して、下塗り層を形成させたものであってもよい。また、塗工液のレベリング性や密着性を上げる目的で塗工面にあらかじめコロナ処理等の表面処理を施すこともできる。
次に、下塗り層上に、好ましくはシリコーン樹脂を含有する薄膜層を塗工する。塗布方法としては、前記の下塗り層と同様に、公知の方法を使用することができる。
さらに、層(B)を、次の方法により形成する。樹脂(b)がシリコーンエラストマー樹脂である場合、まず、薄膜層の上に未架橋状態でシリコーンエラストマー樹脂からなる層(B)を積層する。積層方法としては、上記未架橋シリコーンエラストマー樹脂を押出成形、射出成形、カレンダー成形、プレス成形等によってシート状に成形した後に薄膜層の上に積層してもよく、また公知のコーティング方法によって、薄膜層の上に直接製膜するという方法であってもよい。
次いで、放射線により硬化させ、本発明の積層体を得ることができる。放射線としては、γ線、電子線、X線等が好適に使用できる。
上記のように、本発明においては、層(B)としてシリコーン樹脂、特にシリコーンエラストマー樹脂を用い、シリコーンエラストマー樹脂層(B)をγ線照射により硬化させることが好ましい。γ線の照射線量は、シリコーンエラストマー樹脂層(B)において所望の圧縮永久歪みを得る観点から、20kGy以上で照射することが好ましく、50kGy以上がより好ましく、60kGy以上であることがさらに好ましく、150kGy以下で照射することが好ましく、120kGy以下がより好ましく、100kGy以下であることがさらに好ましい。
また、この照射線量の選定には、シリコーンエラストマーの架橋密度の他、基材として使用するプラスチックフィルムの耐放射線性も考慮に入れる必要がある。この点、層(A)がポリエステル樹脂からなるものである場合は、一般に放射線に対する耐性に優れ、本発明の目的に極めて適合した基材である。
本発明の積層体は、前記したように、積層体同士が付着しにくく、1枚ずつ取り出して使用する際に複数枚取り出されることがなく、また、積層体同士が付着しはがれ難いといった問題も発生することがないため、プレス成形時等の作業性・取扱い性に優れている。また、プレス成形後金型やプレス板を開いて製品を取り出す際に、積層体が金型・プレス板側に付着したままとなるといった問題も発生しにくいため、金型やプレス板を使用したプレス成形に好適に用いることができる。
具体的には、層(B)側が成形体側となるように積層体と積層体の間に成形体を配置して成形を行うプレス成形法が好適に使用できる。
本発明の積層体は、プレス成形時の離型材として優れた特性を有しているので、例えば、電気・電子製品に組み込まれるIC、半導体、受動部品等のディスプレー・タッチパネル関連製品部材やLED照明製品部材等の成形体の製造に好適に用いることができる。
貯蔵弾性率、比誘電率及びタイプAデュロメータ硬さ、得られた積層体表面の粗さ、摩擦係数及び積層体の重ね取り試験は、下記方法で行った。
<評価方法>
貯蔵弾性率:
粘弾性スペクトロメーター「DVA−200(アイティー計測制御(株)製)」により、JIS K7244−4:1999に準じて、温度範囲−100〜250℃、昇温速度3℃/分、振動周波数1Hz、歪み0.1%、チャック間距離25mm、引張法の条件で測定した際の23℃における貯蔵弾性率を得た。なお、二軸延伸PETフィルムについては、フィルムのMD方向について測定を行った。
比誘電率:
Hewlett Packard社 4284A(電極部はAgilent technology社製 Dielectric test fixture 16451B)により、JIS C2138:2007に準じて、温度20℃、相対湿度65%、印加電圧1V、周波数1MHzの条件で測定した。
タイプAデュロメータ硬さ:
JIS K6253−3:2012に基づき、タイプAデュロメータ(高分子計器社製)を用い測定した。
表面粗さ:
下記記載の方法で得られた積層体の表裏の表面粗さを、サーフコーダET4000A((株)小坂研究所製)で測定した。なお、表1中、Smが「−」は、測定値が200μmを超えることを意味する。
摩擦係数:
下記記載の方法で得られた積層体から試験片を2枚切り出して行った。JIS K7125:1999を参照し、一方の試験片の層(A)側の面と他方の試験片の層(B)側の面とを試験開始前に15秒間接触保持させたのち、以下の条件で測定した。
装置:インテスコ社製すべり試験機
滑り片:全質量200g(接触面積が一辺63mmの正方形)
接触面積:40cm
試験速度:100mm/min
温度:23℃±2℃
相対湿度:50%±10%
重ね取り試験:
下記記載の方法で得られた積層体から10cm×10cmの試験片を切り出し、これを表裏同じ方向にして10枚重ねた。30分後、10枚重ねられた1番上の試験片の四隅のうちの1つを手でつまんで持ち上げて評価した。持ち上げた試験片のみ取り出された場合を「○」、下の試験片も付着し複数枚持ち上がり取り出された場合を「×」として評価した。
また、樹脂(a)としてPET、樹脂(b)としてシリコーンエラストマー樹脂を用いる場合の例として、以下の条件で作製した測定用サンプルを用いたが、測定用サンプルの作製方法はこれらに限定されるものではない。
<貯蔵弾性率及び比誘電率測定用のサンプル>
層(A):
積層体の製造に用いた二軸延伸PETフィルムをそのまま用いた。
比誘電率測定用のサンプルには、真空蒸着機(アルバック機工社製 VTR−350M)を使用し、アルミニウムにより45mmφの電極の形成を行った。
層(B):
径100mmの2本カレンダに沿って供給された2枚の二軸延伸PETフィルム(三菱ケミカル(株)製ダイアホイルT−100)との間に、原料として用いるシリコーンエラストマー樹脂を供給し、ロール温度80℃の条件でロールにバンクを形成させ、PETフィルム/シリコーンエラストマー樹脂層(厚み100μm)/PETフィルムの積層体を作成した。得られた積層体に、吸収線量が50kGyとなるようにγ線を照射し、シリコーンエラストマー樹脂を架橋させた後、両面のPETフィルムを剥がし、測定用サンプルを得た。
比誘電率測定用のサンプルには、厚み10μm、45mmφのアルミ箔をそのまま貼り付け、電極の形成を行った。
<タイプAデュロメータ硬さ測定用のサンプル>
原料として用いるシリコーンエラストマー樹脂を、2枚の二軸延伸PETフィルム(三菱ケミカル(株)製ダイアホイルT−100)ではさみ、200℃のプレス成形により厚み10mmのシリコーンエラストマー樹脂のシートを作成した。得られたシートに吸収線量が50kGyとなるようにγ線を照射して、測定用サンプルを得た。
以下に実施例の積層体について詳細を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。実施例・比較例の積層体は、下記記載の方法により製造した。
実施例1:
<下塗り層及び薄膜層を有するPETフィルムの製造>
層(A)として、コロナ処理を施した厚み100μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱ケミカル(株)製 ダイアホイルT−100、貯蔵弾性率4950MPa、比誘電率3.16)を用い、該PETフィルムのコロナ処理が施されていない側の面にサンドブラスト処理を施した。
非晶性ポリエステル樹脂、(東洋紡績(株)製、バイロン240)14質量部、ポリイソシアネート(東ソー(株)製、コロネートL)2質量部を溶剤(MEK/トルエン=1/4(質量比))84質量部に希釈し下塗り層用の塗工液とした。
上記PETフィルムのコロナ処理が施された面に上記塗工液を乾燥後の厚みが1.0μmになるようにバーコーターで塗工し、ギアオーブン中で、100℃×10分間溶剤乾燥及び架橋を行ない下塗り層を形成した。
縮合型シリコーン樹脂組成物(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製、商品名SRX290)20質量部及び硬化剤(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製、商品名SRX242C)1.2質量部を溶剤(トルエン)78.8質量部に希釈して薄膜層用の塗工液を得た。この塗工液を上記下塗り層の上に乾燥後の厚みが0.2μmになるようにバーコーターで塗工し、ギアオーブン中で100℃×10分間乾燥・架橋を行い薄膜層を形成し、PET/下塗り層/薄膜層のPETフィルムを得た。
<積層体の製造>
層(B)の原料として、ミラブル型シリコーンエラストマー樹脂(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 TSE2571−5U、貯蔵弾性率3.5MPa、比誘電率2.87、タイプAデュロメータ硬さ55)を使用し、径100mmの2本カレンダに沿って供給された上記PETフィルムの薄膜層上と、カバーシートとしてケミカル処理を施した二軸延伸PETフィルム(Ra=0.95μm)との間に上記シリコーンエラストマー樹脂を供給し、ロール温度80℃の条件でロールにバンクを形成させ、PETフィルム/シリコーンエラストマー樹脂層/カバーシートの積層体を作製した。
得られた積層体に、吸収線量が50kGyとなるようにγ線を照射し、シリコーンエラストマー樹脂を架橋させることによりPETフィルムとシリコーンエラストマー樹脂層とが一体化された積層体(層(A)/下塗り層/薄膜層/層(B)/カバーシート)を得た。層(B)の厚みは100μmであった。
この積層体からカバーシートを剥離し、評価用の層(A)/下塗り層/薄膜層/層(B)の積層体とした。
得られた積層体について、上記方法で評価した結果を表1に示す。
実施例2:
実施例1において、カバーシートをケミカル処理が施されていない二軸延伸PETフィルム(三菱ケミカル(株)製 ダイアホイルT−100)に代えた以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。
得られた積層体について、上記方法で評価した結果を表1に示す。
比較例1:
実施例1において、用いるPETフィルムにサンドブラスト処理を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。
得られた積層体について、上記方法で評価した結果を表1に示す。
比較例2:
実施例1において、用いるPETフィルムにサンドブラスト処理を施さず、カバーシートをケミカル処理が施されていない二軸延伸PETフィルムに代えた以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。
得られた積層体について、上記方法で評価した結果を表1に示す。
Figure 2021079633
層(A)側の表面粗さが所望の範囲内である実施例1、2では、重ね取り試験において良好な結果が得られた。
一方、層(A)側の粗さが小さい比較例1、2では、重ね取り試験において積層体が複数枚取り出されるという結果となった。
上記結果をふまえると、さらに次のような実施形態の場合も、上記実施例と同様の効果を得ることができると考えられる。
(例1、2)
実施例1、2において、ミラブル型シリコーンエラストマー樹脂として、信越シリコーン社製 KE−581−U(貯蔵弾性率6.0MPa、タイプAデュロメータ硬さ80)を用いる以外は実施例1、2と同様の方法で製造される積層体。
(例3、4)
実施例1、2において、ミラブル型シリコーンエラストマー樹脂として、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 TSE2913−U(貯蔵弾性率1.2MPa、比誘電率2.69、タイプAデュロメータ硬さ20)を用いる以外は実施例1、2と同様の方法で製造される積層体。
(例5、6)
実施例1、2において、積層体の製造に用いるPETフィルムのサンドブラスト処理が施された面に帯電防止層(A1)としてアニオン性の帯電防止剤を使用した帯電防止層を設ける以外は実施例1、2と同様の方法で製造される積層体。
なお、帯電防止層(A1)側の表面抵抗率の測定方法は以下の通りとし、層(A)の表面粗さは、帯電防止層(A1)の表面粗さとして測定する。
表面抵抗率:
得られた積層体から試験片を切り出し、試験箱レジスティビティ・チェンバー R12702A/Bに入れ、デジタル超高抵抗/微小電流計 R8340/8340A(ともに、エーディーシー社製)を用いて、電圧500V、温度23℃、湿度50%の条件で、JIS K6911:2006(5.13)に準拠し表面抵抗率を測定する。
(例7、8)
上記例5、6において、ミラブル型シリコーンエラストマー樹脂として、信越シリコーン社製 KE−581−U(貯蔵弾性率6.0MPa、タイプAデュロメータ硬さ80)を用いる以外は例5、6と同様の方法で製造される積層体。
(例9、10)
上記例5、6において、ミラブル型シリコーンエラストマー樹脂として、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 TSE2913−U(貯蔵弾性率1.2MPa、比誘電率2.69、タイプAデュロメータ硬さ20)を用いる以外は例5、6と同様の方法で製造される積層体。

Claims (14)

  1. 23℃における貯蔵弾性率が1000MPa以上である樹脂(a)を主成分とする層(A)と23℃における貯蔵弾性率が100MPa以下である樹脂(b)を主成分とする層(B)とを含む積層体であって、該層(A)の少なくとも一方の面の表面の粗さが以下の(i)、(ii)のいずれか又は両方の要件を満たすことを特徴とする積層体。
    (i)10点平均粗さ(Rz)が0.3μm以上である
    (ii)算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上である
  2. 前記層(A)の少なくとも一方の面の表面の最大高さ粗さ(Ry)が0.3μm以上である、請求項1に記載の積層体。
  3. 前記層(A)の少なくとも一方の面の表面の凹凸の平均間隔(Sm)が90μm以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
  4. 前記層(B)の少なくとも一方の面の表面の粗さが以下の(iii)、(iv)のいずれか又は両方の要件を満たす、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
    (iii)10点平均粗さ(Rz)が0.3μm以上である
    (iv)算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上である
  5. 前記層(B)の少なくとも一方の面の表面の最大高さ粗さ(Ry)が0.4μm以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体。
  6. 前記層(B)の少なくとも一方の面の表面の凹凸の平均間隔(Sm)が70μm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体。
  7. 一方の積層体の前記層(A)側の面と他方の積層体の前記層(B)側の面との静止摩擦係数が2.1以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層体。
  8. 一方の積層体の前記層(A)側の面と他方の積層体の前記層(B)側の面との動摩擦係数が1.8以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層体。
  9. 前記層(A)と前記層(B)との比誘電率差が0.15以上である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層体。
  10. 前記樹脂(a)がポリエステル樹脂である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の積層体。
  11. 前記樹脂(b)がシリコーン樹脂である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の積層体。
  12. 前記樹脂(a)がポリエチレンテレフタレート樹脂である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の積層体。
  13. プレス成形に用いる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の積層体。
  14. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の積層体を用いたプレス成形法であって、前記層(B)側が成形体側となるように該積層体と該積層体の間に成形体を配置することを特徴とするプレス成形法。
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JP2019028423A (ja) * 2017-07-27 2019-02-21 ギュ キム、ソン 無線制御型透明電光装置

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