JP2021075725A - ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、前記課題を解決し、経時的な複素弾性率E*変化を抑制できるゴム組成物及び空気入りタイヤを提供することを目的とする。
下記式(1)で表される耐熱老化性指数が27以下であることを特徴とするゴム組成物に関する。
耐熱老化性指数=|(熱処理後のゴム組成物の複素弾性率E*−熱処理前のゴム組成物の複素弾性率E*)|/熱処理前のゴム組成物の複素弾性率E*×100 式(1)
ここで、上記複素弾性率E*は、ゴム組成物の0℃における複素弾性率E*であり、上記熱処理は、ゴム組成物を、温度90℃、酸素濃度20%の条件下に336時間静置することにより行う処理である。
上記共重合体が、重量平均分子量が20万〜200万、水素添加率が60モル%以上の水素添加スチレンブタジエンゴムであり、
上記水素添加スチレンブタジエンゴムと、上記軟化剤のハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)より下記式(2)を用いて算出したAが4.5未満であることが好ましい。
A=√(α2+β2+γ2) 式(2)
α=水素添加スチレンブタジエンゴムのδdと軟化剤のδdの差の絶対値
β=水素添加スチレンブタジエンゴムのδpと軟化剤のδpの差の絶対値
γ=水素添加スチレンブタジエンゴムのδhと軟化剤のδhの差の絶対値
δd:分子間の分散力によるエネルギー
δp:分子間の双極子相互作用によるエネルギー
δh:分子間の水素結合によるエネルギー
耐熱老化性指数=|(熱処理後のゴム組成物の複素弾性率E*−熱処理前のゴム組成物の複素弾性率E*)|/熱処理前のゴム組成物の複素弾性率E*×100 式(1)
ここで、上記複素弾性率E*は、ゴム組成物の0℃における複素弾性率E*であり、上記熱処理は、ゴム組成物を、温度90℃、酸素濃度20%の条件下に336時間静置することにより行う処理である。
従来から、所定値以上のウェットグリップ性能を維持できるか否かを確かめる目的で、80℃、2週間の条件によりゴム組成物を熱処理し、硬度の変化を調査することが行われてきた。しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、上記熱処理条件では実際のタイヤの使用時を再現した試験とはなっていないことが判明した。本発明者らが、この点について更に鋭意検討した結果、本願特定の条件で熱処理を行うことにより、実際にタイヤを使用した際の状況を好適に再現でき、非常に相関性よく経時的な複素弾性率E*変化を評価できることを見出した。
そして、本発明者らが更に鋭意検討した結果、本願特定の条件で熱処理を行い、熱処理前後のゴム組成物の複素弾性率E*の変化が小さければ、実際に5万kmタイヤ走行した場合であっても、経時的な複素弾性率E*変化を抑制できることを見出した。より具体的には、本願特定の条件で熱処理を行い、熱処理前後のゴム組成物の複素弾性率E*により算出した上記式(1)で表される耐熱老化性指数が27以下であれば、実際に5万kmタイヤ走行した場合であっても、経時的な複素弾性率E*変化を抑制できることを見出した。
以上のとおり、本願特定の条件で行った熱処理前後のゴム組成物の複素弾性率E*により算出した上記式(1)で表される耐熱老化性指数が27以下であれば、経時的な複素弾性率E*変化を抑制できる。
なお、本明細書において、ゴム組成物の複素弾性率E*は、加硫後のゴム組成物の複素弾性率E*を意味する。
本明細書において、熱処理は、ゴム組成物(加硫後)を、温度90℃、酸素濃度20%の条件下に336時間静置することにより行う。
例えば、温度、酸素濃度を制御可能な恒温槽を用いて行えばよい。具体的には、恒温槽の温度、酸素濃度を上記条件とし、恒温槽内に加硫後のゴム組成物を上記時間、静置すればよい。
本明細書において、ゴム組成物(加硫後)の複素弾性率E*は、初期歪み10%、動的歪振幅(動歪み)1%、周波数10Hz、温度0℃で粘弾性測定を行った際の複素弾性率E*を意味する。
なお、上記式(1)で表される耐熱老化性指数の下限は特に限定されず、0に近いほど好ましく、0であってもよい。
上記複素弾性率E*が上記範囲内であると、効果がより好適に得られると共に、タイヤ用ゴムとして要求される耐久性等も好適に得られる傾向がある。
上記M300が上記範囲内であると、効果がより好適に得られると共に、タイヤ用ゴムとして要求される耐久性等も好適に得られる傾向がある。
上記TBが上記範囲内であると、効果がより好適に得られると共に、タイヤ用ゴムとして要求される耐久性等も好適に得られる傾向がある。
上記EBが上記範囲内であると、効果がより好適に得られると共に、タイヤ用ゴムとして要求される耐久性等も好適に得られる傾向がある。
通常のジエン系ゴムは、不飽和結合を多く含むため、再架橋により経時的な複素弾性率E*変化(硬化)が生じるものの、不飽和結合の少ないゴム成分は、不飽和結合が少ないため、再架橋が生じにくく、タイヤ使用時に発生する熱によって架橋密度が変化しにくく、経時的な複素弾性率E*変化を抑制できる。
ゴム成分と相溶性の高い軟化剤は、軟化剤のブルームが抑制され、経年によるゴムの硬化を防ぐことが可能となる。
シリカは、カーボンブラックに比べて発熱が少ないため、再架橋の進行を抑制でき、経時的な複素弾性率E*変化を抑制できる。
また、硫黄と加硫促進剤の配合量を調整することによっても、複素弾性率E*変化を調整できる。
水添共重合体は、不飽和結合が少ないため、タイヤ使用時に発生する熱によって架橋密度が変化しにくく、経時的な複素弾性率E*変化を抑制できる。
なお、本明細書において、水添と、水素添加は同義である。
例えば、水素添加スチレンブタジエンゴム(本明細書においては、水添スチレンブタジエンゴム、水素添加SBR、水添SBRともいう)は二重結合が少ないため、通常のSBRに相溶する軟化剤を水素添加SBRと共に配合すると、相溶せずにブルームする可能性があり、経年によるゴムの硬化が起こりやすくなるおそれがある。
一方、水添共重合体と共に、水添共重合体と相溶性の高い軟化剤を使用すると、軟化剤がブルームしにくくなり、経年によるゴムの硬化を防ぐことが可能となる。そして、このような水添共重合体と相溶性の高い軟化剤は、ハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)に基づいて選択可能である。具体的には、水添共重合体(例えば、水素添加SBR)のHSP値に近いHSP値を有する軟化剤を選定すればよい。選定した軟化剤は、水添共重合体に相溶しやすく、軟化剤のブルームが抑制され、経年によるゴムの硬化を防ぐことが可能となる。
上記Aは、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.5以下、特に好ましくは3.1以下、最も好ましくは2.6以下、より最も好ましくは2.1以下、更に最も好ましくは1.9以下であり、下限は特に限定されず、0に近いほど好ましく、0であってもよい。
これにより、好適に上記式(1)で表される耐熱老化性指数を27以下とすることが可能となる。
ここで、ゴム成分、軟化剤として、複数の成分が存在する場合は、最も含有量の多い成分によりAを算出する。
A=√(α2+β2+γ2) 式(2)
α=水素添加スチレンブタジエンゴムのδdと軟化剤のδdの差の絶対値([(J/cm3)1/2])
β=水素添加スチレンブタジエンゴムのδpと軟化剤のδpの差の絶対値([(J/cm3)1/2])
γ=水素添加スチレンブタジエンゴムのδhと軟化剤のδhの差の絶対値([(J/cm3)1/2])
δd:分子間の分散力によるエネルギー([(J/cm3)1/2])
δp:分子間の双極子相互作用によるエネルギー([(J/cm3)1/2])
δh:分子間の水素結合によるエネルギー([(J/cm3)1/2])
なお、本明細書において、ハンセン溶解度パラメータδd、δp、δhは、Hansen solubility sphere法により算出された298.15K、101.3kPaにおける値である。
ゴム成分と架橋可能な不飽和結合を有する軟化剤の場合、具体的には、液状ジエン系重合体の場合、その配合量は特に限定されない。
一方、ゴム成分と架橋可能な不飽和結合を有さない軟化剤の場合、具体的には、樹脂の場合、配合量は、ゴム成分100質量部に対して20質量部以下とすることが好ましい。
以下、使用可能な薬品について説明する。
上記の通り、水添共重合体を用いることにより、経時的な複素弾性率E*変化を抑制しやすいことから、以下においては、共重合体が、水添共重合体である場合を中心に説明するが、共重合体として、非水添共重合体の使用を排除するものではない。
ここで、ゴム成分は、重量平均分子量(Mw)が15万以上が好ましく、より好ましくは35万以上のゴムである。Mwの上限は特に限定されないが、好ましくは400万以下、より好ましくは300万以下である。
水添共重合体は、水添処理により二重結合部が減らされていることで、再架橋の反応点が少ない。これにより、経時的な複素弾性率E*変化を抑制できる。
なお、水素添加率は、H1−NMRを測定して得られたスペクトルの不飽和結合部のスペクトル減少率から計算することができる。
なお、共重合体のガラス転移温度(Tg)は、後述の実施例の記載の方法により測定される。
なお、スチレン含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
変性共重合体としては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有する共重合体であればよく、例えば、共重合体の少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性共重合体(末端に上記官能基を有する末端変性共重合体)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性共重合体や、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性共重合体(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性共重合体)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性共重合体等が挙げられる。
また、上記水添共重合体は、例えば、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を重合して得られた重合体に水素添加処理を施すことで合成でき、具体的には以下の方法で合成できる。
(重合方法)
芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物の共重合体の重合方法については特に制限はなく、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができるが、特に溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。
アニオン重合を行う場合、重合開始剤としては特に制限はないが、有機リチウム化合物が好ましく用いられる。前記有機リチウム化合物としては、炭素数2〜20のアルキル基を有するものが好ましく、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチルーフェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物などが挙げられるが、これらの中で、入手容易性、安全性等の観点からn−ブチルリチウムまたはsec−ブチルリチウムが好ましい。
前記重合開始剤を用いてアニオン重合し、共重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、例えばブチルリチウムを重合開始剤とし、必要に応じてランダマイザーの存在下でスチレン及び1,3−ブタジエン等をアニオン重合させることにより、スチレンブタジエン共重合体等の目的の共重合体を得ることができる。
前記炭化水素系溶剤としては、炭素数3〜8のものが好ましく、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、前記ランダマイザーとは、共重合体中の共役ジエン部分のミクロ構造制御、例えばブタジエンにおける1,2−結合、イソプレンにおける3,4−結合の増加など、あるいは共重合体におけるモノマー単位の組成分布の制御、例えばスチレンブタジエン共重合体におけるスチレン単位、ブタジエン単位のランダム化などの作用を有する化合物のことである。このランダマイザーとしては、特に制限はなく、従来ランダマイザーとして一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを用いることができる。例えば、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタンなどのエーテル類及び第三級アミン類などを挙げることができる。また、カリウム−t−アミレート、カリウム−t−ブトキシドなどのカリウム塩類、ナトリウム−t−アミレートなどのナトリウム塩類も用いることができる。これらのランダマイザーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ランダマイザーの使用量は、有機リチウム化合物1モル当たり、0.01モル当量以上が好ましく、0.05モル当量以上がより好ましい。また、ランダマイザーの使用量は、有機リチウム化合物1モル当たり1000モル当量以下が好ましく、500モル当量以下がより好ましい。
アニオン重合の際の反応温度は、好適に反応が進行する限り特に限定はないが、通常−10℃〜100℃であることが好ましく、25℃〜70℃であることがより好ましい。
上記アニオン重合は、この分野で通常使用する反応停止剤の添加により、停止させることができる。そのような反応停止剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールまたは酢酸などの活性プロトンを有する極性溶媒およびこれらの混液、またはそれらの極性溶媒とヘキサン、シクロヘキサンなどの無極性溶媒との混液が挙げられる。反応停止剤の添加量は、通常、アニオン重合開始剤に対し、同モル量もしくは2倍モル量程度で充分である。
なお、公知の方法により変性を行ってもよい。
上記共重合体の製造方法においては、単量体の重合開始から、後述する重合体の回収までに、共重合体の炭化水素溶液にカップリング剤を添加してもよい。カップリング剤としては、下記式(3−1)で表される化合物を挙げることができる。
R1 aML4−a (3−1)
(式(3−1)中、R1はアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基またはアリール基を表し、Mはケイ素原子またはスズ原子を表し、Lはハロゲン原子またはヒドロカルビルオキシ基を表し、aは0〜2の整数を表す。)
水添共重合体の製造方法においては、これまでに説明した共重合体を水素添加して、水添共重合体を得る。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販されているものとしては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより良好に得られる傾向がある点から、スルフィド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドなどのジスルフィド結合を有するジスルフィド系シランカップリング剤がより好ましい。
カーボンブラックとしては、特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、カーボンブラックのN2SAは、JIS K6217−2:2001に準拠して測定される値である。
液状ジエン系重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1.0×103以上であることが好ましく、3.0×103以上であることがより好ましく、5.0×103以上であることが更に好ましく、1.0×104以上であることが特に好ましく、2.0×104以上であることが最も好ましく、2.0×105以下であることが好ましく、1.0×105以下であることがより好ましく、5.0×104以下であることが更に好ましく、3.5×104以下であることが特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
また、液状ジエン系重合体は、水添されていてもよい。
また、樹脂は、水添されていてもよい。
なかでも、水添共重合体と相溶性の高い樹脂、具体的には、水素添加SBRのHSP値に近いHSP値を有する樹脂、より具体的には、上記式(2)を用いて算出したAが4.5未満である樹脂、すなわち、テルペン系樹脂が好ましい。
なお、樹脂の軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
なお、軟化剤の含有量には、ゴム(油展ゴム)に含まれるオイルの量も含まれる。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′−ビス(α,α′−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
加硫促進剤としては特に限定されないが、例えば、グアニジン類、スルフェンアミド類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、チオウレア類、キサントゲン酸塩類等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより良好に得られるという理由から、グアニジン類、スルフェンアミド類、チアゾール類、チウラム類が好ましい。
n−ヘキサン:関東化学(株)製
スチレン:関東化学(株)製
ブタジエン:東京化成工業(株)製の1,3−ブタジエン
TMEDA:関東化学(株)製のN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン
n−ブチルリチウム溶液:関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液
エタノール:関東化学(株)製
2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール:大内新興化学工業(株)製のノクラック200
四塩化炭素を溶媒として用いて15質量%濃度の溶液を調製して、100MHzのH1−NMRの不飽和結合部のスペクトル減少率から算出した。
25℃にてJEOL JNM−A 400NMR装置を用いてH1−NMRを測定し、そのスペクトルより求めた6.5〜7.2ppmのスチレン単位に基づくフェニルプロトンと4.9〜5.4ppmのブタジエン単位に基づくビニルプロトンの比からスチレン含有量を決定した。
共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めた。
ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に従い、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量計(Q200)を用いて昇温速度10℃/分で昇温しながら測定することにより、ガラス転移開始温度として求めた。
合成例1(SBR1の合成:水素添加率0モル%)
十分に窒素置換した耐熱反応容器にn−ヘキサン2000ml、スチレン60g、ブタジエン140g、TMEDA0.93g、n−ブチルリチウム0.45mmolを加えて、50℃で5時間攪拌し、重合反応を行った。その後、エタノールを加えて反応を止め、反応溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、再沈殿精製によりSBR1を得た。得られたSBR1は重量平均分子量(Mw)490,000、スチレン含有量30質量%であった。
得られた重合体を水素添加する以外は、SBR1と同様の処方にて水添SBR1を得た。すなわち、SBR1において重合転化反応後、エタノールを加えて重合反応を停止させず、次いで、水素ガスを0.4MPa−Gaugeの圧力で供給しながら20分間撹拌し、未反応のポリマー末端リチウムと反応させ、水素化リチウムとした。水素ガス供給圧力を0.7MPa−Gauge、反応温度を90℃とし、チタノセンジクロリドを主体とする触媒を用いて水素添加を行った。水素の吸収が目的の水素添加率となる積算量に達した時点で、反応温度を常温とし、水素圧を常圧に戻して反応容器より抜き出し、反応溶液を水中に撹拌投入して溶媒をスチームストリッピングにより除去することによって、水添SBR1を得た。得られた水添SBR1の水素添加率は95モル%であり、重量平均分子量(Mw)は450,000であった。
目的の水素添加率となるように、水素の吸引の積算量を調整した以外は、水添SBR1と同様の処方により、水添SBR2を得た。得られた水添SBR2の水素添加率は80モル%であり、重量平均分子量(Mw)は480,000であった。
目的の水素添加率となるように、水素の吸引の積算量を調整した以外は、水添SBR1と同様の処方により、水添SBR3を得た。得られた水添SBR3の水素添加率は60モル%であり、重量平均分子量(Mw)は450,000であった。
SBR1:上記方法で合成した非水添SBR
水添SBR1〜3:上記方法で合成した水添SBR
シリカ1:エボニックデグッサ社製のVN3(N2SA:175m2/g)
シリカ2:ソルベイジャパン(株)製の115GR(N2SA:115m2/g)
シリカ3:エボニックデグッサ社製の9000GR(N2SA:235m2/g)
軟化剤1:出光興産(株)製のダイアナプロセスAH−24(アロマオイル)
軟化剤2:出光興産(株)製のPS−32(ミネラルオイル)
軟化剤3:アリゾナケミカル社製のSYLVARES SA85(αメチルスチレン系樹脂(α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体)、軟化点:85℃)
軟化剤4:Rutgers Chemicals社製のNOVARES C100(クマロンインデン樹脂、軟化点:95〜105℃)
軟化剤5:クラレ社製のクラプレンLIR30(液状IR、重量平均分子量:29000)
軟化剤6:KRATON社製のsylvatraxx 4150(ポリテルペン樹脂、軟化点:150℃)
軟化剤7:サートマー社製のRICON100(液状SBR、スチレン含量:20質量%、ビニル含量:70質量%、重量平均分子量:4500)
軟化剤8:DRT社製のDercolyte L120(ポリリモネン樹脂、軟化点:120℃)
シランカップリング剤1:エボニックデグッサ社製のSi266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
シランカップリング剤2:エボニックデグッサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
シランカップリング剤3:エボニックデグッサ社製のSi363(3−[エトキシビス(3,6,9,12,15−ペンタオキサオクタコサン−1−イルオキシ)シリル]−1−プロパンチオール、下記式で表される化合物)
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:ハクスイテック(株)製の酸化亜鉛3種
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:三新化学工業(株)製のサンセラーTBZTD(テトラベンジルチウラムジスルフィド)
加硫促進剤3:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDT(1,3−ジ−o−トリルグアニジン)
加硫促進剤4:大内新興化学工業(株)製のノクセラーM−P(2−メルカプトベンゾチアゾール)
加硫促進剤5:大内新興化学工業(株)製のノクセラーTOT−N(テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド)
加硫促進剤6:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3−ジフェニルグアニジン)
表2に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で10分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
更に、得られた加硫ゴム組成物を温度90℃、酸素濃度20%の条件下のオーブン中で336時間静置することにより熱処理を行い、熱処理後の加硫ゴム組成物を得た。
(株)上島製作所製スペクトロメータを用いて、初期歪み10%、動的歪振幅(動歪み)1%、周波数10Hz、温度0℃で加硫ゴム組成物(試験片)、熱処理後の加硫ゴム組成物(試験片)の複素弾性率E*を測定した。
走行前後E*変化代=|(5万km走行後の試験用タイヤから切り出した試験片の複素弾性率E*−未走行の試験用タイヤから切り出した試験片の複素弾性率E*)|/未走行の試験用タイヤから切り出した試験片の複素弾性率E*×100
JIS K6251(2010)に基づいて、得られた加硫ゴム組成物から3号ダンベル型試験片を作製し、該試験片を用いて23℃において引張試験を実施して300%伸張時応力(M300)、破断時の引張強度(TB)、破断時伸び(EB)を測定した。
Claims (15)
- 芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体を含むゴム組成物であって、
ゴム成分100質量部に対して、軟化剤を30質量部以上含有し、
下記式(1)で表される耐熱老化性指数が27以下であることを特徴とし、
前記共重合体が、重量平均分子量が20万〜200万、水素添加率が60モル%以上の水素添加スチレンブタジエンゴムであり、
前記水素添加スチレンブタジエンゴムと、前記軟化剤のハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)より下記式(2)を用いて算出したAが4.5未満であるゴム組成物。
耐熱老化性指数=|(熱処理後のゴム組成物の複素弾性率E*−熱処理前のゴム組成物の複素弾性率E*)|/熱処理前のゴム組成物の複素弾性率E*×100 式(1)
ここで、前記複素弾性率E*は、ゴム組成物の0℃における複素弾性率E*であり、前記熱処理は、ゴム組成物を、温度90℃、酸素濃度20%の条件下に336時間静置することにより行う処理である。
A=√(α2+β2+γ2) 式(2)
α=水素添加スチレンブタジエンゴムのδdと軟化剤のδdの差の絶対値
β=水素添加スチレンブタジエンゴムのδpと軟化剤のδpの差の絶対値
γ=水素添加スチレンブタジエンゴムのδhと軟化剤のδhの差の絶対値
δd:分子間の分散力によるエネルギー
δp:分子間の双極子相互作用によるエネルギー
δh:分子間の水素結合によるエネルギー
ここで、ゴム成分、軟化剤として、複数の成分が存在する場合は、最も含有量の多い成分によりAを算出する。 - 前記耐熱老化性指数が25以下である請求項1記載のゴム組成物。
- 前記耐熱老化性指数が20以下である請求項1記載のゴム組成物。
- 前記耐熱老化性指数が15以下である請求項1記載のゴム組成物。
- 前記耐熱老化性指数が10以下である請求項1記載のゴム組成物。
- ゴム成分100質量%中のスチレンブタジエンゴムの含有量が60質量%以上である請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
- ゴム成分100質量部に対して、シリカを50質量部以上含有する請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物。
- ゴム成分100質量部に対して、シリカを70質量部以下含有する請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物。
- ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が3質量部以下である請求項1〜8のいずれかに記載のゴム組成物。
- ゴム成分100質量部に対するオイルの含有量が5質量部以下である請求項1〜9のいずれかに記載のゴム組成物。
- シランカップリング剤を含有する請求項1〜10のいずれかに記載のゴム組成物。
- 前記軟化剤として、樹脂を含む請求項1〜11のいずれかに記載のゴム組成物。
- トレッド用ゴム組成物である請求項1〜12のいずれかに記載のゴム組成物。
- 請求項1〜12のいずれかに記載のゴム組成物で少なくとも一部が構成されたタイヤ部材を有する空気入りタイヤ。
- 前記タイヤ部材がトレッドである請求項14記載の空気入りタイヤ。
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